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特許拒絶査定不服審判

2024-016490

回路基板の製造方法

審判番号
2024-016490
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2023-026678
請求日
2024年10月15日
審決日
2025年03月28日
公報発行日
2025年06月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】日本発條株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 土居 仁士
  • 審判官 馬場 慎
  • 審判官 衣鳩 文彦
分類
P18 .121-Z (H05K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2023- 26678「回路基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 4月13日出願公開、特開2023- 54285〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和元年5月21日に出願した特願2019-95590号の一部を令和5年2月22日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和 5年 2月22日 上申書 令和 6年 4月16日付け 拒絶理由通知書 令和 6年 6月 6日 意見書、手続補正書 令和 6年 7月 8日付け 拒絶査定 令和 6年10月15日 審判請求書、手続補正書 以下では、令和6年7月8日付け拒絶査定を「原査定」という。 第2 本願発明 本願の請求項1~9に係る発明は、令和6年10月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 なお、請求項1の「回路の側周面」という記載は、明細書の「回路の周側面」という記載(【0015】、【0029】など)、「回路3の周側面3c」という記載(【0131】、【0174】)、「周側面3c」という記載(【0046】、【0133】など)から見て、「回路の周側面」の誤記であることが明らかであるから、誤記を正して認定した(下線部を参照)。 また、後の参照の便宜のため、本願発明を以下のA~Dに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。 「A 回路パターンに応じて配置された回路の周側面に樹脂を充填して樹脂モールド回路体を生成する工程と、 B 前記樹脂モールド回路体と絶縁層と金属基板とを積層して接着させる工程であって、 B1 前記金属基板は、複数のフィンを含むヒートシンク形状を備える、工程と、 C を備える、 D 回路基板の製造方法。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~10に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1及び2に記載された発明並びに引用文献3及び4に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1.特開2008-218907号公報 引用文献2.国際公開第2019/059384号 引用文献3.国際公開第2015/174198号 引用文献4.特開2016-1766号公報 第4 引用文献 1 引用文献1 (1)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-218907号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。 「【0008】 この発明に係る回路基板は、熱伝導シートと、この熱伝導シートの一面に設けられた電極と、前記熱伝導シートの他面に設けられたベース板とを備え、樹脂で封止される回路基板において、前記熱伝導シートの前記一面の前記電極を除く領域には、前記樹脂と接着する絶縁スペーサーが設けられている。 【0009】 この発明に係るパワーモジュールは、電極上に設けられたパワー半導体素子と、前記回路基板及び前記パワー半導体素子を封止した樹脂とを備えている。」 「【0011】 以下、この発明の各実施の形態について説明するが、各図において、同一または相当部材、部位については、同一符号を付して説明する。 実施の形態1. 図1はこの発明の実施の形態1における回路基板1の平面図、図2は図11のII-II線に沿った矢視断面図である。 【0012】 この回路基板1は、熱伝導シート2と、この熱伝導シート2の一面に設けられた電極3と、熱伝導シート2の他面に設けられたベース板4と、熱伝導シート2の前記一面の電極3を除く領域に設けられ熱可塑性樹脂からなるモールド樹脂と接着する絶縁スペーサー5とを備えている。 絶縁スペーサー5の厚さと電極3の厚さとは同じ厚さである。 【0013】 熱伝導シート2は、主に樹脂組成物と無機フィラーで構成されている。樹脂組成物としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーンゴム等の熱硬化性樹脂が用いられる。また、ポリエチレン、ポリイミド、アクリル系の熱可塑性樹脂等を用いてもよい。 また、無機フィラーとしては、良熱伝導性のアルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が用いられる。また、無機フィラーは、一種類でも2種類以上充填してもよい。 電極3及びベース板4は、例えば銅等の導電性金属で構成されている。 また、絶縁スペーサー5は、例えば熱可塑性樹脂であるPPS(ポリフェニレンサルファンド)で構成されたモールド樹脂に対して優れた密着性を有するガラスエポキシ基板で構成されている。 なお、絶縁スペーサー5の材料として、絶縁性、及びモールド樹脂に対して優れた密着性を有する例えばポリイミド樹脂等を用いてもよい。」 「【0020】 実施の形態4. 図7はこの発明の実施の形態4における回路基板10を示す断面図である。 この実施の形態の回路基板10では、絶縁スペーサー11bは、ガラスエポキシ基板12、硬化層13b及びガラスエポキシ基板12の3層構造の積層体である。 ここで、硬化層13bは、プリプレグ層13aが熱硬化処理され、完全に硬化されたプリプレグの硬化層をいう。 他の構成は、実施の形態1と同じである。 【0021】 次に、この実施の形態の回路基板10の製造手順について図8を用いて説明する。 先ず、図8(A)に示すように、ベース板4に熱伝導シート2を配置し、圧力を加えながら接着させる。 次に、熱伝導シート2に、ガラスエポキシ基板12、プリプレグ層13a及びガラスエポキシ基板12の3層構造の積層体からなる未硬化絶縁スペーサー11aを配置し(図8(B))、引き続き孔6に電極3をはめ込み、配置する(図8(C))。 最後に、電極3及び未硬化絶縁スペーサー11aに圧力をかけながら熱伝導シート2を高温で硬化させることで、図7に示す回路基板10を得ることができる。 【0022】 この実施の形態の回路基板10によれば、電極3及び未硬化絶縁スペーサー11aに圧力をかけながら熱伝導シート2を高温で硬化させる際に、プリプレグ層13aが軟化し、電極3の周側面と未硬化絶縁スペーサー11aとの隙間が埋められる。また、未硬化絶縁スペーサー11aのプリプレグ層13aも硬化して硬化層13bに変成する。その結果、熱伝導シート2の全面に均等に圧力が加わり、全面に渡って等しい厚さの熱伝導シート2を得ることができる。 また、モールド樹脂は、熱伝導シート2と接触することはなく、絶縁スペーサー11bに対する接着性が確保され、回路基板10の耐電圧特性、耐湿性が向上する。 なお、図9に示す回路基板80のように、絶縁スペーサー81は、硬化層13b及びガラスエポキシ基板12の2層構成の積層体であってもよい。」 「【0029】 実施の形態8. 図13(A)~図13(C)はこの実施の形態8における回路基板40の製造手順を示す図である。 この実施の形態の回路基板40では、図13(A)に示すように、ベース板4に熱伝導シート2を配置し圧力をかけながら接着させる。次に、電極3及び未硬化絶縁スペーサー11aに圧力及び温度を加えて予め一体化されたブロックを、熱伝導シート2上に配置し、圧力をかけながら熱伝導シート2を高温で硬化させることにより、プリプレグ層13aが硬化層13bになった絶縁スペーサー11bを有する回路基板40を得る(図13(B)、図13(C))。 【0030】 この実施の形態の回路基板40では、電極3及び未硬化絶縁スペーサー11aからなるブロックは、圧力及び温度を加えて一体化されており、熱伝導シート2の全面に均等に圧力が加わり、全面に渡って等しい厚さの熱伝導シート2を得ることができる。 【0031】 実施の形態9. 図14はこの発明の実施の形態9におけるパワーモジュール50を示す断面図である。 この実施の形態のパワーモジュール50は、図7に示された実施の形態4の回路基板10と、電極3上にはんだ51を用いて接着されたパワー半導体素子52と、パワー半導体素子52と電極3とをはんだ51を用いて電気的に接続したリード線54と、電極3にはんだ51を用いて接続されたリードフレーム53と、回路基板10、パワー半導体素子52及びリード線54を封止したPPS(ポリフェニレンサルファイド)からなる熱可塑性樹脂のモールド樹脂55とを備えている。 また、この実施の形態のパワーモジュール50では、ベース板4の反熱伝導シート2側にヒートスプレッダ56が接続されている。このヒートスプレッダ56は、金属製の放熱構造を有するものである。 【0032】 なお、上記パワーモジュール50では、実施の形態4の回路基板10がPPS樹脂で封止されているが、実施の形態1~3,5~8の回路基板1,60,70,10,80,90,20,30,40がPPS樹脂で封止されたものでもよい。 また、PPS樹脂に限定されるものではなく、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)やLCP(液晶ポリマー)等の熱可塑性樹脂を用いてもよい。 【0033】 上記構成のパワーモジュール50によれば、絶縁スペーサー11の最上層は、熱可塑性樹脂であるPPSに対して優れた接着性を有するガラスエポキシ基板12で構成されているので、PPSに対する接着性が確保され、電極3間の耐絶縁性が向上し、耐電圧特性、耐湿性が向上する。 また、上記特許文献1に記載のパワーモジュールと比較して、モールド樹脂の容量が小さくなり、小型化される。 なお、上記実施の形態9のモールド樹脂55は、熱可塑性樹脂に限定されるものではなく、例えば、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を用いてもよい。特に、実施の形態1に示した絶縁スペーサー5は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂に対して優れた接着性を有するガラスエポキシ基板で構成されているので、エポキシ樹脂に対する接着性が確保され、電極3間の耐絶縁性が向上し、耐電圧特性、耐湿性が向上する。 【0034】 次に、この発明における上記実施の形態1,2,4~8の各回路基板1,60,10,90,20,30,40の製造方法の具体例、並びに実施の形態9のパワーモジュール50の製造方法の具体例について以下に示す実施例1~8で説明する。」 「【0042】 実施例7. 実施の形態8に関する回路基板40の一例として、電極3と未硬化絶縁スペーサー11aとを予め一体化したブロックを用いた例を示す。 一体化するために、未硬化絶縁スペーサー11aにはプレス後の厚さが0.2mmのガラスエポキシ基板12を2枚とその間にプリプレグ層13aを1枚(プレス後仕上がり膜厚0.1mm)を配置し、絶縁スペーサー0.5mm厚に電極3をはめこみ、20kg/cm2で180℃,30分(室温まで戻してから圧力を開放する)加熱プレスを行った。ベース板4に35mm×45mmにカットした熱伝導シート2を置き、100kg/cm2(100℃,15分加熱)で真空プレスすることによって熱伝導シート2をベース板4に接着させた。 次に、電極3と未硬化絶縁スペーサー11aを一体化したブロック絶縁スペーサー11bを熱伝導シート2上に載置し、さらに200kg/cm2(100℃,15分加熱後、引き続き180℃,30分加熱の条件下)でプレスすることで、回路基板40を得た。」 「【図13】 [図:0001423368000001.jpg] 」 ・図13(C)より、回路基板40は、熱伝導シート2と、この熱伝導シート2の一面に設けられた電極3と、熱伝導シート2の他面に設けられたベース板4と、熱伝導シート2の前記一面の電極3を除く領域に設けられる絶縁スペーサー11bとを備えていることが、見てとれる。 ・図13(B)には、「電極3及び未硬化絶縁スペーサー11aに圧力及び温度を加えて予め一体化されたブロック」(【0029】)が示されており、同図より、電極3の周側面に未硬化絶縁スペーサー11aを有することが見てとれる。 「【図14】 [図:0001423368000002.jpg] 」 ・図14より、ヒートスプレッダ56は反ベース板4側に複数の凹凸(複数のフィン)を含むことが見てとれる。 (2)引用文献1に記載された発明 したがって、引用文献1において、「各実施の形態について説明するが、各図において、同一または相当部材、部位については、同一符号を付して説明する」(【0011】)ことを踏まえ、特に、実施の形態8の回路基板40の製造方法(【0029】、【0030】、図13)及びその具体例である実施例7(【0042】)に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明を以下のa~dに分説し、「構成a」のようにして参照する。 「a 回路基板40は、熱伝導シート2と、この熱伝導シート2の一面に設けられた電極3と、熱伝導シート2の他面に設けられたベース板4と、熱伝導シート2の前記一面の電極3を除く領域に設けられる絶縁スペーサー11bとを備えており、(図13(C)) a1 熱伝導シート2は、主に樹脂組成物と無機フィラーで構成され、(【0013】) a2 電極3及びベース板4は、導電性金属で構成され、(【0013】) a3 絶縁スペーサー11bは、ガラスエポキシ基板12、硬化層13b及びガラスエポキシ基板12の3層構造の積層体であり、(【0020】) b 回路基板40の製造手順は、ベース板4に熱伝導シート2を配置し圧力をかけながら接着させ、次に、電極3及び未硬化絶縁スペーサー11aに圧力及び温度を加えて予め一体化されたブロックを、熱伝導シート2上に配置し、圧力をかけながら熱伝導シート2を高温で硬化させることにより、回路基板40を得るものであり、(【0029】) b1 未硬化絶縁スペーサー11aは、ガラスエポキシ基板12、プリプレグ層13a及びガラスエポキシ基板12の3層構造の積層体からなり、(【0021】) b2 電極3と未硬化絶縁スペーサー11aとを予め一体化するために、未硬化絶縁スペーサー11aにはガラスエポキシ基板12を2枚とその間にプリプレグ層13aを配置し、絶縁スペーサーに電極3をはめこみ、加熱プレスを行い、(【0042】) b3 電極3及び未硬化絶縁スペーサー11aが予め一体化されたブロックは、電極3の周側面に未硬化絶縁スペーサー11aを有しており、(図13(B)) c ベース板4の反熱伝導シート2側にヒートスプレッダ56が接続されており、ヒートスプレッダ56は反ベース板4側に複数のフィンを含む、(【0031】、図14) d 回路基板40の製造方法。(【0034】)」 2 引用文献2 (1)引用文献2の記載 原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2019/059384号(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。 「[0003] 一方、電子機器の使用環境の多様化に伴い、回路基板の電流容量の増大(大電流化)が求められている。回路基板を大電流化する方法として、予め回路の状態に加工された金属部材を用いて大電流用回路(厚銅回路等)を作製する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、大電流用回路を作製する方法として、導電回路の形状に打ち抜いたガラスポリイミド樹脂からなる絶縁材に、導電回路を嵌め込み、絶縁層を介して金属基板に載置し、積層一体化する大電流用の回路基板の作製方法が記載されている。 先行技術文献 特許文献 [0004]特許文献1:特開平6-169148号公報 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0005] 大電流回路では、実装過程において高温(例えば、約285℃)ではんだ付け(リフロー処理)を行う。このとき、特に回路として銅を用いる厚銅回路において、銅の高い熱膨張率により、回路が変形するおそれがある。そのため、特に厚銅回路においては実装過程における回路の変形を抑制することが求められる。しかしながら、例えば特許文献1のようにガラスポリイミド樹脂からなる絶縁材に回路を嵌め込む方法では、回路の変形を充分に抑制できず、嵌め込み部材の剥離が発生する可能性がある。 本開示は上記事情に鑑み、回路の変形が抑制された保護材付き厚銅回路を提供することを課題とする。」 「[0015] <保護材付き厚銅回路> 本開示の保護材付き厚銅回路は、厚銅回路と、前記厚銅回路の間の空間に配置され、無機充填材を55体積%~95体積%含有する保護材と、を有する。本開示の保護材付き厚銅回路は、必要に応じてその他の構成を有していてもよい。 本開示の保護材付き厚銅回路によれば、実装過程における回路の変形を抑制することができる。この理由は明らかではないが、以下のように考えられる。本開示の保護材付き厚銅回路において、保護材は無機充填材を55体積%~95体積%含有しているため機械強度に優れる。また、保護材の熱膨張係数(CTE)を厚銅回路の熱膨張係数に近づけることができる。このため、熱膨張率の高い厚銅回路を用いた場合であっても、実装過程における回路の変形を抑えることができると考えられる。 [0016] 図1~図4に、それぞれ保護材付き厚銅回路の一例の概略断面図を示す。保護材付き厚銅回路10は、厚銅回路12と、厚銅回路の間の空間に配置される保護材14とを有する。保護材14は、無機充填材16を含有する。 図1及び図2に示される保護材付き厚銅回路10では、厚銅回路12の内側に保護材14が配置されている。このような保護材付き厚銅回路10は、例えば、外枠を有する形状に加工された厚銅回路の空間に保護材を配置することで作製することができる。 図3及び図4に示される保護材付き厚銅回路10では、厚銅回路12の内側と外側に保護材が配置されている。このような厚銅回路10は、例えば、外枠を有さない形状に加工された厚銅回路の内側と外側に保護材を配置することで作製することができる。厚銅回路の内側と外側に保護材が配置されている構成を有すると、厚銅回路が保護材で押さえつけられる構造となるため、保護材と厚銅回路との接着性がより向上し、剥離がより抑制される傾向にある。」 「[0018] 本開示の保護材付き厚銅回路は、別途に作製若しくは入手した絶縁層、又は本開示の保護材付き厚銅回路と一体成形された絶縁層を介して、金属基板に配置して、回路基板とすることができる。回路基板の用途は特に制限されず、産業用機器等の分野で好適に使用できる。」 「[0020] (厚銅回路) 本開示において厚銅回路とは、銅板を予め回路の状態に加工したものをいう。厚銅回路は購入したものであっても作製したものであってもよい。厚銅回路の厚さは特に制限されず、これを用いて製造される回路基板の用途等によって適宜選択することができる。回路基板の大電流化の観点からは、厚銅回路の厚さは350μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましく、1000μm以上であることがさらに好ましい。容積及び重量の観点からは、厚銅回路の厚さは、例えば、5000μm以下であってよい。 厚銅回路の場所によって上記の値が異なる場合は、任意に選択した5箇所で得られた測定値の算術平均値を上記の値とする。 上記回路の厚さは回路自体の厚さを意味し、隣接する部材に回路の一部が埋め込まれている場合は埋め込まれている部分の厚さも回路の厚さに含まれる。」 「[0022] 厚銅回路は、例えば、銅板を所望の形状の回路の状態に加工することで得られる。加工の方法は特に制限されず、打抜き、切削等の公知の方法から選択できる。厚銅回路は、加工工程の便宜に応じて、例えば、回路の周囲に外枠を有する形状に加工されたものとしてもよく、外枠のない形状に加工されたものとしてもよい。 [0023] (保護材) 保護材は、前述の厚銅回路の間の空間に配置され、無機充填材を55体積%~95体積%含有する。 本開示において「厚銅回路の間の空間」とは、厚銅回路の1又は複数の金属部材に挟まれた内側の空間を表す。保護材は必要に応じて厚銅回路の外縁部に配置されていてもよい。 [0024] 厚銅回路において、回路の間の空間に配置される保護材の割合は、厚銅回路の形状、回路基板の作製条件等によって異なり、特に制限されない。保護材は、厚銅回路の間の空間の全てに配置されていても、空間の一部に配置されていてもよい。絶縁信頼性をより向上させる観点からは、厚銅回路の間の空間全体の容積に占める保護材の割合が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。 [0025] 本開示において、「厚銅回路の間の空間全体の容積」とは、厚銅回路の平面図における厚銅回路の間の空間の面積に、厚銅回路の厚さを乗じて得られる容積とする。例えば、図6に例示的に示される厚銅回路12の平面図において、幅aと長さbを乗じて得られる面積から、厚銅回路12の占める面積を差し引いて得られる、厚銅回路の間の空間18の面積に、厚銅回路12の厚さを乗じて得られる値を「厚銅回路の間の空間全体の容積」という。なお、図6において、破線は厚銅回路の幅方向及び長さ方向の最外辺の延長線を便宜的に示している。 [0026] 保護材の厚さは、厚銅回路の厚さと同じであっても異なってもよい。厚銅回路の厚さの80%以上~120%以下であることが好ましく、90%以上~110%以下であることがより好ましく、95%以上~105%以下であることがさらに好ましい。保護材の場所によって上記の値が異なる場合は、任意に選択した5箇所で得られた測定値の算術平均値を上記の値とする。 [0027] 保護材は、厚銅回路の間の空間に加えてさらに厚銅回路の外側に配置されていてもよい。この場合、保護材は厚銅回路の間の空間に加えてさらに厚銅回路の周囲に配置されていることが好ましい。保護材が厚銅回路の周囲にも配置されていると、保護材と厚銅回路との接着性がより向上し、剥離がより抑制される傾向にある。 [0028] 厚銅回路の取り扱い性の観点からは、保護材は厚銅回路と一体化した状態である(保護材付き厚銅回路を一枚のシートとして扱うことができる)ことが好ましい。例えば、保護材付き厚銅回路における保護材が、厚銅回路の間の空間から外縁部まで連続して設けられた状態であることが好ましい。保護材付き厚銅回路における厚銅回路と保護材が一体化した状態であると、得られる厚銅回路の絶縁信頼性及び耐湿信頼性に優れ、沿面放電、部分放電、トラッキング、マイグレーション等の発生が抑制される傾向にある。」 「[0042] 保護材は、樹脂組成物又はその硬化物であることが好ましい。保護材が樹脂組成物又はその硬化物である場合、樹脂組成物は、無機充填材を含有する樹脂組成物であれば特に制限されない。特に、保護材は樹脂組成物のトランスファー成形体であることが好ましい。 [0043] 保護材が樹脂組成物又はその硬化物である場合、樹脂部に用いる樹脂は、特に制限されない。例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、イミド樹脂、アミドイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。樹脂部に用いる樹脂は、1種であっても2種以上であってもよい。電気絶縁性と接着性の観点からは、樹脂部に用いる樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アミドイミド樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、耐湿性の観点からはエポキシ樹脂、アクリル樹脂及びアミドイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。樹脂部に用いる樹脂は、1種のみでも2種以上であってもよい。 [0044] なかでも、樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材とを含有するエポキシ樹脂組成物(以下、本開示において単に「エポキシ樹脂組成物」ともいう)であることが好ましい。以下、エポキシ樹脂組成物に含有することができる各成分について説明する。」 「[0194] <保護材付き厚銅回路の作製方法> 保護材付き厚銅回路の作製方法は特に制限されない。例えば、以下のようにして作製することができる。 まず、銅板を打抜き、切削等により切断して所望の形状の回路の状態に加工する。次いで、粘着フィルム等の仮基材の上に作製した回路を配置する。必要に応じて回路形成の際に生じたバリ、残渣等を除去してもよい。その後、回路の間の空間及び必要に応じて回路の外縁部に保護材を形成し、必要に応じて硬化処理等を行う。その後、回路から仮基材を剥離する。次いで、必要に応じて樹脂部の形成時に生じたバリの除去、樹脂の後硬化処理等を行って、厚銅回路を得る。 [0195] 厚銅回路の間の空間に保護材を配置する方法は、特に制限されない。例えば、粉末等の固体状の樹脂材料を用いる方法として押出成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法、インサート成形方法等が挙げられ、液状の樹脂材料を用いる方法として注型法、塗布法、印刷法、埋め込み法等が挙げられる。厚銅回路の間の空間に保護材を配置する際は、厚銅回路を樹脂シート等の仮基材上に配置してもよい。特に、トランスファー成形法により保護材を厚銅回路に配置すると、回路間に空隙なく保護材を配置することができるため、厚銅回路との密着性が向上し、厚銅回路と保護材との界面におけるボイド等を抑制することができる傾向にある。そのため、絶縁信頼性が向上する傾向にある。」 (2)引用文献2に記載された技術 したがって、引用文献2には、次の技術(以下「文献2技術」という。)が記載されていると認められる。 「保護材付き厚銅回路10は、厚銅回路12と、厚銅回路の間の空間に配置される保護材14とを有し、([0016]) 保護材付き厚銅回路は、別途に作製若しくは入手した絶縁層を介して、金属基板に配置して、回路基板とすることができ、([0018]) 保護材は樹脂組成物のトランスファー成形体であること。([0042])」 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 1 発明特定事項A及びCについて (1)引用発明は、「回路基板40の製造手順」で「電極3及び未硬化絶縁スペーサー11aに圧力及び温度を加えて予め一体化されたブロック」を用いており(構成b)、「電極3と未硬化絶縁スペーサー11aとを予め一体化するために、未硬化絶縁スペーサー11a」「に電極3をはめこみ、加熱プレスを行」っている(構成b2)から、当該一体化されたブロックを生成する工程を備えることは明らかである。 (2)引用発明の「電極3」は、「回路基板40」に設けられており(構成a)、本願発明の「回路パターンに応じて配置された回路」に相当する。 (3)引用発明の「未硬化絶縁スペーサー11a」は、「ガラスエポキシ基板12、プリプレグ層13a及びガラスエポキシ基板12の3層構造の積層体からなり」(構成b1)、ガラスエポキシ基板、プリプレグ層は、何れも樹脂を材料としているから、「未硬化絶縁スペーサー11a」は「樹脂」であるということができる。 (4)引用発明の「電極3及び未硬化絶縁スペーサー11aが予め一体化されたブロックは、電極3の周側面に未硬化絶縁スペーサー11aを有しており」(構成b3)、前記(2)及び(3)によれば、「回路パターンに応じて配置された回路」の周側面に「樹脂」を有しているといえ、これを「樹脂回路体」と称することは、任意である。 (5)前記(1)~(4)によれば、本願発明と引用発明とは、「回路パターンに応じて配置された回路の周側面に樹脂を有する樹脂回路体を生成する工程」「を備える」点で共通する。 ただし、本願発明は、回路の間に樹脂を充填して、樹脂モールド回路体を生成するのに対し、引用発明は、樹脂(未硬化絶縁スペーサー11a)に回路(電極3)をはめこみ、樹脂回路体を生成する点で相違する。 2 発明特定事項B及びCについて (1)引用発明は、「回路基板40の製造手順」で「ベース板4に熱伝導シート2を配置し圧力をかけながら接着させ」、「次に、電極3及び未硬化絶縁スペーサー11aに圧力及び温度を加えて予め一体化されたブロックを、熱伝導シート2上に配置し、圧力をかけながら熱伝導シート2を高温で硬化させ」ている(構成b)。そして、「電極3及び未硬化絶縁スペーサー11a」が「予め一体化されたブロックを、熱伝導シート2上に配置し、圧力をかけながら熱伝導シート2を高温で硬化させ」ることで、熱伝導シート2と電極3及び未硬化絶縁スペーサー11aが予め一体化されたブロックとを接着させていることは、技術常識から明らかである。そうすると、引用発明は、ベース板4と熱伝導シート2とを積層して接着させ、次に、熱伝導シート2と電極3及び未硬化絶縁スペーサー11aが予め一体化されたブロックとを積層して接着させる工程を備えるといえる。 (2)引用発明の「ベース板4」は、「導電性金属で構成され」る(構成a2)から、本願発明の「金属基板」に相当する。 (3)引用発明の「熱伝導シート2」は、「主に樹脂組成物と無機フィラーで構成され」ており(構成a1)、その「一面に設けられた」「導電性金属で構成され」る「電極3」(構成a、a2)をその「他面に設けられた」「導電性金属で構成され」る「ベース板4」(構成a、a2)から電気的に絶縁する役割を果たすことが明らかであるから、本願発明の「絶縁層」に相当する。 (4)前記(1)~(3)、前記1(4)によれば、本願発明と引用発明とは、「前記樹脂回路体と絶縁層と金属基板とを接着させる工程」「を備える」点で共通する。 ただし、本願発明は、樹脂回路体と絶縁層と金属基板とを積層して接着させる、すなわち、樹脂回路体と絶縁層と金属基板とを同時に接着するのに対し、引用発明は、金属基板(ベース板4)と絶縁層(熱伝導シート2)とを積層して接着させ、次に、絶縁層(熱伝導シート2)と樹脂回路体とを積層して接着させる、すなわち、樹脂回路体と絶縁層と金属基板とを順次接着する点で相違する。 3 発明特定事項B1について (1)引用発明の「ベース板4」は、「反熱伝導シート2側にヒートスプレッダ56が接続されており、ヒートスプレッダ56は反ベース板4側に複数のフィンを含む」(構成c)から、複数のフィンを含むヒートスプレッダを備える(接続される)ものである。 (2)そうすると、本願発明と引用発明とは、「前記金属基板は、複数のフィンを含むヒートシンクを備える」点で共通する。 ただし、本願発明は、金属基板が複数のフィンを含むヒートシンク形状を備える、すなわち、金属基板自体が複数のフィンを含むのに対し、引用発明は、金属基板(ベース板4)に接続されたヒートスプレッダが複数のフィンを含む点で相違する。 4 発明特定事項Dについて 引用発明の「回路基板40の製造方法」(構成d)は、本願発明の「回路基板の製造方法」に相当する。 5 前記1~4によれば、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「回路パターンに応じて配置された回路の周側面に樹脂を有する樹脂回路体を生成する工程と、 前記樹脂回路体と絶縁層と金属基板とを接着させる工程であって、 前記金属基板は、複数のフィンを含むヒートシンクを備える、工程と、 を備える、 回路基板の製造方法。」 <相違点1> 本願発明は、回路の間に樹脂を充填して、樹脂モールド回路体を生成するのに対し、引用発明は、樹脂(未硬化絶縁スペーサー11a)に回路(電極3)をはめこみ、樹脂回路体を生成する点。 <相違点2> 本願発明は、樹脂回路体と絶縁層と金属基板とを積層して接着させる、すなわち、樹脂回路体と絶縁層と金属基板とを同時に接着するのに対し、引用発明は、金属基板(ベース板4)と絶縁層(熱伝導シート2)とを積層して接着させ、次に、絶縁層(熱伝導シート2)と樹脂回路体とを積層して接着させる、すなわち、樹脂回路体と絶縁層と金属基板とを順次接着する点。 <相違点3> 本願発明は、金属基板が複数のフィンを含むヒートシンク形状を備える、すなわち、金属基板自体が複数のフィンを含むのに対し、引用発明は、金属基板(ベース板4)に接続されたヒートスプレッダが複数のフィンを含む点。 第6 当審の判断 1 相違点についての判断 (1)相違点1について 引用発明は、樹脂(未硬化絶縁スペーサー11a)に回路(電極3)をはめこみ、樹脂回路体を生成している。 ここで、文献2技術は、「保護材付き厚銅回路10は、厚銅回路12と、厚銅回路の間の空間に配置される」「樹脂組成物のトランスファー成形体である」「保護材とを有し」ているから、「保護材付き厚銅回路10」は「厚銅回路」の周側面に「樹脂組成物」を有しているので「樹脂回路体」に相当するということができ、厚銅回路の間に樹脂組成物をトランスファー成形して保護材付き厚銅回路を生成する技術、すなわち、回路の間に樹脂をモールド成形により充填して樹脂回路体を生成する技術を示すものである。 そうすると、引用発明と文献2技術は、いずれも、樹脂回路体と絶縁層と金属基板とを積層した回路基板の製造方法に関するものであり、その技術分野が共通している。 加えて、引用文献2には、「絶縁材に回路を嵌め込む方法では、・・・嵌め込み部材の剥離が発生する可能性がある」([0005])ことが記載され、「トランスファー成形法により保護材を厚銅回路に配置すると、回路間に空隙なく保護材を配置することができるため、厚銅回路との密着性が向上」([0195])することが記載されているから、回路の剥離を防止するために、絶縁材に回路を嵌め込む方法に代えて、回路間にトランスファー成形法により保護材を配置する方法とすることが示唆されていると認められるところ、引用文献2には、樹脂に回路をはめこむ引用発明に対し、回路の間に樹脂をモールド成形により充填する文献2技術を適用することが、示唆されているといえる。 したがって、引用発明の樹脂回路体を生成する工程において、文献2技術を適用し、樹脂に回路をはめこむことに代えて、回路の間に樹脂をモールド成形により充填することは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)相違点2について 引用発明において、絶縁層(熱伝導シート2)の他面に金属基板(ベース板4)が接着され、絶縁層(熱伝導シート2)の一面に樹脂回路体(電極3及び絶縁スペーサー11b)が接着されている(構成a、b)。 そして、層Bの一面に層Aが接着され、層Bの他面に層Cが接着された積層体を製造するにあたり、層Bに対して層Aと層Cを順次接着するか、層Bに対して層Aと層Cとを同時に接着するかは、当業者が適宜設計し得ることであるところ、引用発明において、絶縁層(熱伝導シート2)に対して樹脂回路体(電極3及び絶縁スペーサー11b)と金属基板(ベース板4)とを同時に接着することは、当業者が適宜設計し得たことである。 (3)相違点3について 引用発明は、金属基板(ベース板4)に接続されたヒートスプレッダが複数のフィンを含んでいる。 ここで、絶縁層の一方の面に設けられる金属基板が、複数のフィンを含むヒートシンク形状を備えるようにすることは、周知技術である(必要であれば、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3の【0059】~【0062】、図5等、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4の【0014】~【0016】、図1等を参照。)。 そうすると、引用発明に対して、前記周知技術を適用し、金属基板(ベース板4)が、複数のフィンを含むヒートシンク形状を備えるようにすることは、当業者にとって容易である。 2 効果についての判断 上記の相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び文献2技術並びに周知技術から想到される構成から当業者が予想できた範囲のものであり、格別顕著なものということはできない。 3 請求人の主張について (1)請求人は、審判請求書において、上記相違点1について、以下のとおり主張している。 ア 「先ず、引用文献1及び引用文献2に記載の発明は、金属板からなる回路と樹脂を一体化したブロックを絶縁層及び金属基体に積層する点で共通であるからといって、引用文献1に記載の発明の上記ブロックを、引用文献2に記載のトランスファー成形体として構成することは、当業者が容易になし得るべきことであるとは、決していえません。なぜなら、引用文献1に記載の発明の上記ブロックを、引用文献2に記載のトランスファー成形体に置き換えたはずであることを示唆する開示が、引用文献1にも引用文献2にも全くないからです。」 イ 「更に、引用文献1と引用文献2との間には、組み合わせることを極めて困難にする技術的阻害要因があります。 引用文献1の例えば段落0015には、絶縁スペーサ5に、熱可塑性樹脂に対してアンカー効果により優れた接着性を有するガラスエポキシ基板を採用することが記載されています。アンカー効果とは、一般に、接着される部材(引用文献1においては絶縁スペーサ5)の表面の凹凸に接着材料(引用文献1においては熱可塑性樹脂であるPPS(ポリフェニレンサルファンド)で構成されたモールド樹脂)が侵入することで得られる物理的に強固な結合状態を実現することを指します。 一方、引用文献2のものは、回路12の周囲に保護材14がトランスファーモールドで形成されています。ここで、トランスファーモールドは、金型に樹脂を充填し硬化させるため、保護材14の表面はツルツルな平滑面となります。したがって、仮に引用文献1に記載された発明に引用文献2の技術を組み合わせようとすると、引用文献1の樹脂スペーサ5の表面に形成されていた凹凸形状を実現することができず、上述した引用文献1で必要なアンカー効果を得ることができません。このことから、引用文献1に記載されたブロックを、引用文献2に記載されたトランスファー成形体のようにトランスファーモールドを用いて構成することは技術的に無理があります。」 (2)上記主張について、判断する。 ア 前記1(1)のとおり、引用発明と文献2技術は、いずれも、樹脂回路体と絶縁層と金属基板とを積層した回路基板の製造方法に関するものであり、その技術分野が共通しているうえ、引用文献2には、樹脂に回路をはめこむ引用発明に対し、回路の間に樹脂をモールド成形により充填する文献2技術を適用することが、示唆されているといえるから、引用発明に文献2技術を適用する動機付けは存在するので、請求人の上記(1)アの主張は採用できない。 イ 引用文献1の【0015】には、「この実施の形態の回路基板1によれば、絶縁スペーサー5は、例えば熱可塑性樹脂であるPPS(ポリフェニレンサルファンド)に対して優れた接着性を有するガラスエポキシ基板で構成されている。PPSは、官能基を有していないので、他の化合物と化学結合ができず、他の化合物からなる熱伝導シートと強固に接着できないが、ガラスエポキシ基板との間で物理的な結合(アンカー効果)がなされ、絶縁スペーサー5に対する接着性が確保され、回路基板1は優れた耐電圧特性、耐湿性を得ることができる。」との記載があり、モールド樹脂として官能基を有していないPPSを用いる場合は、他の化合物と化学結合ができないので、物理的な結合(アンカー効果)がなされ、絶縁スペーサーに対する接着性が確保されることが記載されている。 ウ 一方で、引用文献1には、「PPS樹脂に限定されるものではなく、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)やLCP(液晶ポリマー)等の熱可塑性樹脂を用いてもよい」(【0032】)、「モールド樹脂55は、熱可塑性樹脂に限定されるものではなく、例えば、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を用いてもよい。特に、実施の形態1に示した絶縁スペーサー5は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂に対して優れた接着性を有するガラスエポキシ基板で構成されているので、エポキシ樹脂に対する接着性が確保され、電極3間の耐絶縁性が向上し、耐電圧特性、耐湿性が向上する。」(【0033】)との記載がある。 エ 前記ウによれば、モールド樹脂として官能基を有していないPPSを用いることは必須とされていないから、前記イにあるように、絶縁スペーサーを物理的な結合(アンカー効果)がなされるよう構成することが必須であるとは認められない。 オ 請求人の上記(1)イの阻害要因に関する主張は、引用文献1において、絶縁スペーサーが物理的な結合(アンカー効果)がなされるよう構成することを前提とするものであるが、前記エのとおり、当該構成は必須であるとは認められないので、当該主張はその前提を欠いており、採用できない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び文献2技術並びに周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-016490

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