特許異議申立
2025-701091
銅回路、プリント配線板及び多層基板
- 審判番号
- 2025-701091
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-041598
- 登録番号
- 7683070
- 請求日
- 2025年11月25日
- 審決日
- 2026年02月13日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】JX金属株式会社
- 【権利者代理人】アクシス国際弁理士法人
- 【異議申立人】メック株式会社
- 【異議申立人代理人】井澤 眞樹子
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 寺谷 大亮
- 審判官 行武 哲太郎
- 分類
- P1651.113-Y (H05K) / P1651.121-Y (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7683070号発明「銅回路、プリント配線板及び多層基板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7683070号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7683070号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和6年3月15日に出願され、令和7年5月16日にその特許権の設定登録がされ、同年5月26日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年11月25日に特許異議申立人 メック株式会社(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てをし、令和8年1月13日に手続補正書(方式)を提出した。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~8の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、請求項1の符号1A~1C及び請求項2の符号2A~2Cは、請求項1及び2を分説するために当審で付与したものであり、分説した発明特定事項を、以下では「発明特定事項1A」のように参照する。
「【請求項1】
1A 回路パターンの延在方向に直交する断面において以下の式1で定義される窪み幅が2.5μm以上であり、
1A1 [式1] 窪み幅=(トップ幅-最小幅)/2
1B 回路パターンの延在方向に直交する断面において以下の式2で定義される第1の窪み比が0.05以上である、
1C 銅回路。
1B1 [式2] 第1の窪み比=窪み幅/回路高さ
1B2 ([式2]において、窪み幅=(トップ幅-最小幅)/2である。)
【請求項2】
2A 回路パターンの延在方向に直交する断面において以下の式1で定義される窪み幅が2.5μm以上であり、
2A1 [式1] 窪み幅=(トップ幅-最小幅)/2
2B 前記断面のトップとサイドとのなす角度が50~75°である、
2C 銅回路。
【請求項3】
前記断面の前記トップと、両側の前記サイドとのなす角度の差分が15°未満である、請求項2に記載の銅回路。
【請求項4】
前記断面において以下の式3で定義される第2の窪み比が0.08以上である、請求項1または2に記載の銅回路。
[式3] 第2の窪み比=窪み幅/トップ幅
([式3]において、窪み幅=(トップ幅-最小幅)/2である。)
【請求項5】
前記断面のボトム幅が80μm以下である、請求項1または2に記載の銅回路。
【請求項6】
多層基板に用いられる、請求項1または2に記載の銅回路。
【請求項7】
絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられた請求項1または2に記載の銅回路と、を備える、プリント配線板。
【請求項8】
請求項7に記載のプリント配線板を備える多層基板。」
第3 申立理由及び証拠方法
特許異議申立書に記載された申立理由の概要及び証拠方法は、次のとおりである。なお、以下では、甲第1号証の1~甲第5号証を「甲1の1」、「甲5」等という。
1 申立理由の概要
(1)申立理由1(新規性欠如)
ア 申立理由1-1(甲1の1に基づく新規性欠如)
本件発明1~8は、甲1の1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~8に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
イ 申立理由1-2(甲2の1に基づく新規性欠如)
本件発明1~5は、甲2の1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~5に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
(2)申立理由2(進歩性欠如)
ア 申立理由2-1(甲1の1に基づく進歩性欠如)
本件発明6~8は、甲1の1に記載された発明に基づいて、特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
イ 申立理由2-2(甲2の1に基づく進歩性欠如)
本件発明1~5は、甲2の1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
2 証拠方法
甲1の1:「ADEKA 銅エッチング剤」、株式会社ADEKA
甲1の2:「陳述書」、メック株式会社 従業員 尾崎史郎、令和7年11月1日
甲1の3:「「JPCA Show 2014」(東京ビッグサイト)に出展」と題するウェブページ、URL:https://www.adeka.co.jp/news/2014/05/jpca-show-2014.html、株式会社ADEKA、平成26年5月21日
甲1の4:「件名:測定報告書」、メック株式会社 従業員 中澤幹人、令和7年11月1日
甲2の1:特開2017-48409号公報
甲2の2:「件名:分析報告書」、メック株式会社 従業員 中澤幹人、令和7年11月1日
甲3:特開2021-89912号公報
甲4:特許第7683070号公報
甲5:特許第7683070号登録原簿
第4 当審の判断
1 甲号証の記載事項
甲1の1~甲3の記載事項は、以下のとおりである。
(1)甲1の1
甲1の1には、次の記載がある。
「
[図:0001433140000001.jpg]
」
(2)甲1の2
甲1の2には、次の記載がある。
「各種パンフレットの管理状況については以下の通りです。
当社の社員が業務で訪問した展示会等で入手したパンフレット類は、研究開発本部に属する研究管理グループに提出することになっており、研究管理グループはパンフレット類を企業別にまとめてファイリングし、本社書庫のキャビネット内に保管しています。その際、入手年月日等の必要な情報を手書き等でメモする場合もあります。
今回特許庁へ提出する甲第1号証の1のパンフレットは、「旭電化/アデカ」の企業別ファイルの中に保管されております。さらに、その右上に赤マジックで「JPCA2014」と手書きされております。
以上の状況からみて、甲第1号証の1のADEKA銅エッチング剤カタログは、確かに、当社社員が業務の一環として、JPCA Show 2014 第44回国際電子回路産業展を見学し、情報収集のため株式会社ADEKAのブースを訪れ、かかる甲第1号証の1を入手してきたことに間違いありません。」(1頁5~17行)
(3)甲1の3
甲1の3には、次の記載がある。
「
[図:0001433140000002.jpg]
」
(4)甲1の4
甲1の4には、次の記載がある。
「5.分析内容
(1)測定方法
甲第1号証の1 ADEKA 銅エッチング剤カタログ記載の銅回路のうち、以下の銅回路の断面(以下、対象断面ともいう。)の各種サイズ(A~D、及びθ1、2)を測定した。
測定方法は、対象断面の写真(2個)の写真上のサイズを定規で測定して、銅厚み(C)を35μmとして、測定した値から銅回路のA、B及びDのサイズを換算した。
角度θ1及び2は、本件特許公報に記載のとおり、対象断面の写真上にトップに沿った線を引き、このトップに沿った線と、トップの端部から断面においてサイドに接するように引いた線とのなす角を左右両側とも測定した。
写真中の2個の銅配線について各測定を行い、平均値を算出した。
(対象断面)
[図:0001433140000003.jpg]
さらに、測定結果(平均値)から、本件特許公報に記載の以下のような各式を用いて、窪み幅、第1の窪み比、第2の窪み比、角度の差分及び窪み角度平均の値を算出した。
…(略)…
結果を表に示す。
(表)
[図:0001433140000004.jpg]
」(1頁13行~3頁2行)
(5)甲2の1
甲2の1には、次の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造において、フォトエッチング法で銅配線パターンを形成する場合、エッチング液として塩化鉄系エッチング液、塩化銅系エッチング液、アルカリ性エッチング液等が用いられている。これらのエッチング液を使用すると、サイドエッチングとよばれるエッチングレジスト下の銅が配線パターンの側面から溶解する場合があった。即ち、エッチングレジストでカバーされることによって、本来エッチングで除去されないことが望まれる部分(即ち、銅配線部分)が、エッチング液により除去されて、当該銅配線の底部から頂部になるに従い幅が細くなる現象が生じていた。特に銅配線パターンが微細な場合、このようなサイドエッチングはできる限り少なくしなければならない。このサイドエッチングを抑制するために、特許文献1では、複素芳香5員環化合物であるアゾール化合物が配合されたエッチング液が提案されている。」
「【0007】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、銅配線の直線性を低下させることなくサイドエッチングを抑制でき、かつ、銅配線底部の配線幅(W1)のばらつきを抑制できる、エッチング液とその補給液、及び銅配線の形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、銅のエッチング液であって、前記エッチング液は、酸と、酸化性金属イオンと、臭化物イオンと、脂肪族非環式化合物、脂肪族複素環式化合物、及び複素芳香族化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを含む水溶液であり、前記脂肪族非環式化合物は、ヘテロ原子として窒素のみを2つ以上有する炭素数2~10の飽和の脂肪族非環式化合物(A)であり、前記脂肪族複素環式化合物は、環を構成するヘテロ原子として窒素を1つ以上有する5~7員環を含む脂肪族複素環式化合物(B)であり、前記複素芳香族化合物は、環を構成するヘテロ原子として窒素を1つ以上有する複素芳香6員環を含む複素芳香族化合物(C)であるエッチング液、に関する。」
「【0015】
図1は本発明のエッチング液によりエッチングした後の銅配線の一例を示す断面図である。銅配線1上には、エッチングレジスト2が形成されている。そして、エッチングレジスト2の端部の直下における銅配線1の側面に、保護皮膜3が形成されている。一般的な塩化銅系エッチング液又は塩化鉄系エッチング液で銅配線を形成すると、エッチングの進行とともに、第一銅イオン及びその塩が生成する。配線間では液の入れ替わりが遅くなるため、特に微細配線では第一銅イオン及びその塩による影響で、垂直方向のエッチングが次第に進行しにくくなり、結果としてサイドエッチングが大きくなる。」
「【0076】
本発明の銅配線の形成方法は、銅層のエッチングレジストで被覆されていない部分をエッチングする銅配線の形成方法において、上述した本発明のエッチング液を用いてエッチングすることを特徴とする。これにより、上述したように、銅配線の直線性を低下させることなくサイドエッチングを抑制でき、かつ、銅配線底部の配線幅(W1)のばらつきを抑制できる。また、本発明の銅配線の形成方法を採用した銅配線形成工程において、本発明のエッチング液を連続又は繰り返し使用する場合は、上述した本発明の補給液を添加しながらエッチングすることが好ましい。前記エッチング液の各成分比が適正に保たれるため、上述した本発明のエッチング液の効果を安定して維持できるからである。」
「【実施例】
【0079】
次に、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0080】
表1~2に示す組成の各エッチング液を調製し、後述する条件でエッチングを行い、後述する評価方法により各項目について評価した。なお、表1~2に示す組成の各エッチング液において、残部はイオン交換水である。また、表1~2に示す塩酸の濃度は、塩化水素としての濃度である。
【0081】
(使用した試験基板)
厚み12μmの電解銅箔(三井金属鉱業社製、商品名3EC-III)を積層した銅張積層板を用意し、前記銅箔をパラジウム触媒含有処理液(奥野製薬社製、商品名:アドカッパーシリーズ)で処理した後、無電解銅めっき液(奥野製薬社製、商品名:アドカッパーシリーズ)を用いて無電解銅めっき膜を形成した。次いで、電解銅めっき液(奥野製薬社製、商品名:トップルチナSF)を用いて、前記無電解銅めっき膜上に厚み10μmの電解銅めっき膜を形成し、銅層の総厚みを22.5μmとした。得られた電解銅めっき膜の表面を厚み25μmのドライフィルムレジストで被覆した。その後、ライン/スペース(L/S)=36μm/24μmのガラスマスクを使用して露光し、現像処理により未露光部を除去することでL/S=36μm/24μmのエッチングレジストパターンを作製した。
【0082】
(エッチング条件)
エッチングは扇形ノズル(いけうち社製、商品名:ISVV9020)を使用して、スプレー圧0.20MPa、処理温度45℃の条件で行った。エッチング加工時間は、エッチング後の銅配線底部の配線幅(W1)が30μmに至る時点を目標に設定した。エッチング後、水洗、乾燥を行って、以下に示す評価を行った。
【0083】
(サイドエッチング量)
エッチング処理した各試験基板を50℃の3重量%水酸化ナトリウム水溶液に60秒間浸漬し、エッチングレジストを除去した。その後、塩酸(塩化水素濃度:7重量%)を用い、扇形ノズル(いけうち社製、商品名:ISVV9020)で、スプレー圧0.12MPa、処理温度30℃、処理時間10秒で保護皮膜を除去した。そして、各試験基板の一部を切断し、これをポリエステル製冷間埋め込み樹脂に埋め込み、銅配線の断面を観察できるように研磨加工を行った。そして、光学顕微鏡を用いて200倍で前記断面を観察し、銅配線頂部の配線幅(W2)を計測して、銅配線底部の配線幅(W1)との差(W1-W2)をサイドエッチング量(μm)とした(図1参照)。結果を表1~2に示す。サイドエッチング量は、10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましい。
【0084】
(頂部幅直線性)
サイドエッチング量の評価と同様に、エッチングレジスト除去し、保護被膜除去した。そして、光学顕微鏡を用いて200倍で試験基板上面を観察し、銅配線頂部の配線幅(W2)を40μm間隔で8列の配線を1配線に対して5箇所、計40箇所計測し、その標準偏差を頂部幅直線性(μm)とした。結果を表1~2に示す。頂部幅直線性は、1.0μm以下が好ましく、0.7μm以下がより好ましい。
【0085】
(底部幅ばらつき)
サイドエッチング量の評価と同様に、エッチングレジスト除去し、保護被膜除去した。そして、光学顕微鏡を用いて200倍で試験基板上面を観察し、銅配線底部の配線幅(W1)を40μm間隔で8列の配線を1配線に対して5箇所、計40箇所計測し、その標準偏差を底部幅ばらつき(μm)とした。底部幅ばらつきは、1.5μm以下が好ましく、1.2μm以下がより好ましい。
【0086】
【表1】
[図:0001433140000005.jpg]
」
「【図1】
[図:0001433140000006.jpg]
」
(6)甲2の2
甲2の2には、次の記載がある。
「5.試験内容
(1)試験方法
特許公開2017-48409の明細書段落番号0086 表1に実施例3として記載されている以下のエッチング液を調製した。
(エッチング液)
銅濃度 2.00mol/L
塩酸濃度 1.97mol/L
HBr 0.69mol/L
4-メチルピリミジン 2g/L
残 イオン交換水
試験基板は、特許公開2017-48409の実施例に記載の基板(明細書段落番号0081)において、銅箔と電解銅めっきの総銅厚みが、試験1、2及び7は23μm、試験3~5は35μm、試験6は100μmになるよう電解銅めっき膜を形成した。
電解銅めっき膜は、特許公開2017-48409の実施例に記載のとおり、銅箔をパラジウム触媒含有処理液(奥野製薬社製、商品名:アドカッパーシリーズ)で処理した後、無電解銅めっき液(奥野製薬社製、商品名:アドカッパーシリーズ)を用いて無電解銅めっき膜を形成し、次いで、電解銅めっき液(奥野製薬社製、商品名:トップルチナSF)を用いて、上記各銅厚み(電解めっき厚み+銅箔厚み)となるような電解めっき膜とした。
また、ドライフィルムレジスト(厚み25μm、レゾナック社製)のパターンは、表に記載の各L/Sで設計し、エッチング処理時間は、表に記載の各狙いボトム幅になるようなエッチング時間を設定した。
試験7は、特許公開2017-48409の実施例3の再現実験になるようにL/S、銅厚み、エッチング時間を設定した。
その他の処理方法は、特許公開2017-48409の実施例に記載したとおり、エッチング処理、エッチングレジストの除去、及び、保護皮膜を除去し、さらに、基板を切断し、これをポリエステル製冷間埋め込み樹脂に埋め込み、銅配線の断面を観察できるように研磨加工を行った。
光学顕微鏡を用いて1000倍(試験6のみ500倍)で前記断面写真を撮影した。断面の任意の3個所において、同日付「測定報告書」(甲第1号証の4)に記載の測定方法(5.分析内容(1)測定方法)と同様の方法で写真から各種サイズ(A~D、及びθ1、2:測定報告書 対象断面を参照)を測定した。尚、各サイズの値は同倍率で撮影したスケールを基準として用いて換算した。さらに、測定結果(3個所の平均値)から、本件特許公報に記載の以下のような各式を用いて、窪み幅、第1の窪み比、第2の窪み比、角度の差分及び窪み角度平均の値を算出した。
…(略)…
結果を表に示す。また、断面写真を示す。
(表)
[図:0001433140000007.jpg]
(断面写真)
[図:0001433140000008.jpg]
※ 写真1、2及び5の上部に写っている帯状の金属は、複数基板を樹脂に埋め込んだ状態で断面を作成するために写りこんだ別の基板の断面である。」(1頁15行~5頁2行)
(7)甲3
甲3には、次の記載がある。
「【0007】
また、本発明に係るプリント配線板の製造方法は、ビルトアップ層からなる基板の基部絶縁層上に、回路パターンを構成する導体層を形成し、導体層上の回路パターンを形成すべき位置以外の位置にドライレジストを形成し、銅エッチング阻害剤を含むエッチング液を用い、ドライレジストを介して導体層をエッチングして、回路パターンとなる導体層の側面に銅エッチング阻害被膜を形成するとともに、導体層の側面に、オーバーハング部、最小パターン部および底パターン部を形成し、導体層の表面に残ったドライレジストを除去し、導体層の側面に残った銅エッチング阻害被膜を除去する、ことを含む。」
「【0011】
図1に示す一実施形態において、本発明のプリント配線板10は、回路パターンを構成する導体層14の導体パターン幅方向の断面形状が、導体パターンの厚み方向で、中心付近に最もパターン幅の小さい最小パターン部Bと、底部付近に最小パターン部Bのパターン幅より大きいパターン幅の底パターン部Cと、最表面付近に最小パターン部Bのパターン幅より大きいが底パターン部Cのパターン幅より小さいパターン幅のオーバーハング部Aと、を有する。」
「【0022】
図4は、本発明のプリント配線板の製造方法の一実施形態における銅エッチング阻害被膜とエッチング液の流れを説明するための図である。図4に示すように、導体層14に対しドライレジスト18を介してエッチングすると、ドライレジスト18の開口から導体層14に流れ込むエッチング液は、導体層14の側面を形成する際、導体層14の側面の中心付近には早く流れ込み、導体層14の側面の最表面付近および底部付近には遅く流れ込む。すなわち、オーバーハング部A近辺のエッチング液は、ドライレジスト18の陰になるため流れが遅くなり、底パターン部C近辺のエッチング液は、導体層14の開口が深いため液まわりが悪くなり流れが遅くなる。一方、最小パターン部B近辺のエッチング液は、液まわりがよいため流れが早くなる。」
「【図1】
[図:0001433140000009.jpg]
」
「【図4】
[図:0001433140000010.jpg]
当審注:符号「16」は「18」の誤記と認められる。」
2 甲号証に記載された発明
(1)甲1発明
ア 甲1の1が特許出願前に頒布された刊行物であること
甲1の1が、特許法第29条第1項第3号に規定する「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物」に該当するか検討する。
(ア)甲1の1は、株式会社ADEKAが、自社の銅エッチング剤製品である「アデカケルミカTFE-5000シリーズ」及び「アデカケルミカFE-200」を説明するために作成したものと認められる。
甲1の1には、右上に手書きの赤字で「JPCA2014」との記載が、右下に「JP 0614」との記載が見て取れる。
(イ)甲1の3によれば、株式会社ADEKAは、2014年6月4日~6日に東京ビッグサイトで開催されたJPCA Show 2014に出展し、厚銅用エッチング剤を含む各種エッチング剤の製品を展示したと推認される。
(ウ)展示会において、出展した企業等が、出展ブースにおいて出展製品のパンフレット等を来場者に配布することは、一般に行われていることである。
(エ)前記(ア)~(ウ)を踏まえると、甲1の1の右上の「JPCA2014」及び右下の「JP 0614」は、株式会社ADEKAが出展した2014年6月に開催されたJPCA Show 2014を示し、甲1の1は、JPCA Show 2014において、株式会社ADEKAが来場者に配布したパンフレットであるとの推認が可能であり、甲1の2の陳述内容は、一応の合理性が認められる。
(オ)以上によれば、甲1の1は、株式会社ADEKAが作成し、2014年6月4日~6日に開催されたJPCA Show 2014において、不特定多数の来場者に配布した、銅エッチング剤製品のパンフレットであると推認できるから、甲1の1は、特許法第29条第1項第3号に規定する「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物」に該当する。
イ 甲1発明の認定
申立人は、甲1の1に記載された発明(以下「甲1発明」という。)を、甲1の1の「銅厚に対するADEKA薬剤の技術マップ」のグラフ中に記載されている角丸四角形の4つの図のうちの右側の上から2番目の図(以下「甲1の1図」という。)に基づいて認定しているので(申立書8~9頁)、以下、甲1の1図に基づいて甲1発明を認定する。
(ア)甲1の1図の左右に配置されている2個の図形は、該図形の下の「Cu Thickness=35μm」及びグラフの「銅厚に対するADEKA薬剤の技術マップ」との名称等の記載を勘案すると、銅エッチング剤でエッチングされた銅回路の断面写真であると解される。
(イ)甲1の1図の銅回路の断面写真の下には、「Top/Bottom=43μm/47μm」及び「Cu Thickness=35μm」との記載があり、これらは、銅回路の断面における上端/下端の幅(以下、それぞれ「トップ幅」、「ボトム幅」という。)、厚さ(以下「回路高さ」という。)のことであると解される。
他方、甲1の1図の銅回路の断面写真からは、左右どちらの断面においても、トップ幅とボトム幅の比は、明らかに43μm:47μmではなく、これよりもトップ幅に対してボトム幅が大きいことが見て取れる。
そのため、甲1の1図の銅回路の断面写真は、トップ幅、ボトム幅及び回路高さが、断面写真の下に記載された「43μm」、「47μm」及び「35μm」の銅回路の断面写真であると解することはできない。
(ウ)甲1の4の表(前記1(4))に示される数値は、申立人の従業員が、甲1の1図の断面写真を定規で測定して、銅厚み(高さ)を35μmとして、測定値から換算した値とされるものである。この表によれば、トップ幅(A)が43.0μm、ボトム幅(D)が47.0μm、回路高さ(C)が35.0μmであり、甲1の1図に記載された数値と一致する。
しかしながら、前記(イ)のとおり、甲1の1図の断面写真の銅回路のトップ幅とボトム幅の比は、明らかに43μm:47μmではない上、甲1の4には、表の数値が、甲1の1図の断面写真の具体的にどの箇所を如何にして定規で測定したものによるか記載されていないから、甲1の4の表の数値の根拠は不明といわざるをえない。よって、甲1の1図の断面写真で示される銅回路が、甲1の4の表の数値に示されたものであるとは認められない。
(エ)以上のとおり、証拠からは、甲1の1図の断面写真の銅回路のトップ幅等の各値を特定することはできない。
(オ)甲1の1図の断面写真からは、銅回路の断面において、トップ幅及びボトム幅よりも小さい幅の部分を有する銅回路が見て取れる。
したがって、甲1の1には、次の甲1発明が記載されていると認められる。
[甲1発明]
「 銅回路の断面において、
トップ幅及びボトム幅よりも小さい幅の部分を有する
銅回路」
ウ 申立人の主張について
申立人は、甲1発明として、申立書8頁36行~9頁13行に記載した発明(以下「甲1発明(申立人)」という。)を主張する。
しかしながら、甲1発明(申立人)は、甲1の4の表の数値に基づくものであり(申立書8頁24~34行)、該数値の根拠が不明であることは、前記イ(ウ)のとおりであるから、甲1発明(申立人)を採用することはできない。
(2)甲2発明
ア 甲2発明の認定
申立人は、甲2の1に記載された発明(以下「甲2発明」という。)を、実施例3に基づいて認定しているので(申立書9~11頁)、以下、甲2の1の実施例3に基づいて甲2発明を認定する。
(ア)甲2の1に記載された実施例3は、「銅張積層板」の「銅層の総厚みを22.5μmとし」、その「表面を厚み25μmのドライフィルムレジストで被覆し」、「L/S=36μm/24μmのエッチングレジストパターンを作製し」(【0081】)、「エッチング後の銅配線底部の配線幅(W1)が30μmに至る時点を目標に設定した」「エッチング加工時間」で「エッチング」した「銅配線」(【0082】)である。
表1によれば、実施例3のエッチング加工時間は「165.2」秒であり、「銅配線の断面」の「銅配線頂部の配線幅(W2)」の「計測」値と「銅配線底部の配線幅(W1)」との「差(W1-W2)」である「サイドエッチング量(μm)」(【0083】)は「6.4」μmであり、「銅配線頂部の配線幅(W2)」の「標準偏差」である「頂部幅直線性(μm)」(【0084】)は「0.32」μmであり、「銅配線底部の配線幅(W1)」の「標準偏差」である「底部幅ばらつき」(【0085】)は「0.99」μmである。
(イ)他方、甲2の1には、実施例3の銅配線頂部の配線幅(W2)及び銅配線底部の配線幅(W1)の測定値は記載されていない。
甲2の1には、前記アのとおり、「エッチング加工時間は、エッチング後の銅配線底部の配線幅(W1)が30μmに至る時点を目標に設定した」とあるが、エッチングを行いながら、銅配線底部の配線幅(W1)を測定することは通常不可能であるし、前記(ア)のとおり、エッチング後の銅配線底部の配線幅(W1)は、0.99μmの底部幅ばらつきがあること等に鑑みると、実施例3の銅配線底部の配線幅(W1)が、実際に30μmであるかどうかは定かではない。この点に関して、甲2の1には何も記載がない。
そのため、甲2の1の実施例3は、前記(ア)のとおり、サイドエッチング量が6.4μmであることは特定できる一方、銅配線底部の配線幅(W1)が30μmであり、銅配線頂部の配線幅(W2)が23.6μm(=30μm-6.4μm)であるとは特定できない。
(ウ)甲2の2によれば、試験7は、「特許公開2017-48409の実施例3の再現実験になるようにL/S、銅厚み、エッチング時間を設定した」もの、すなわち、甲2の1の実施例3を再現実験したものである。
しかしながら、試験7は、総銅層厚み(表中の「回路高さ」)が23μmであり、甲2の1の実施例3の22.5μm(前記ア)とは異なる厚みのものを用いてエッチングを行ったものである。また、表中の「接液時間」はエッチング時間であると解されるところ、エッチング時間は、試験7が132秒であるのに対し、甲2の1の実施例3は165.2秒(前記(ア))であり、サイドエッチング量は、試験7が4.3μm(=ボトム幅D30.2μm-トップ幅A25.9μm)であるのに対し、甲2の1の実施例3は6.4μm(前記(ア))と、いずれも誤差の範疇とはいえない差が存在する。よって、甲2の2に示されるその他の数値等を考慮しても、甲2の2の試験7は、甲2の1の実施例3を再現実験したものと認めることはできないから、試験7の測定結果を、甲2の1の実施例3のものとして採用することはできない。
(エ)したがって、甲2の1には、次の甲2発明が記載されていると認められる。
[甲2発明]
「 銅張積層板の銅層の総厚みを22.5μmとし、その表面を厚み25μmのドライフィルムレジストで被覆し、L/S=36μm/24μmのエッチングレジストパターンを作製し、エッチング後の銅配線底部の配線幅(W1)が30μmに至る時点を目標に設定したエッチング加工時間でエッチングした銅配線であって、
銅配線の断面の銅配線頂部の配線幅(W2)の計測値と銅配線底部の配線幅(W1)との差(W1-W2)であるサイドエッチング量(μm)が6.4μmである
銅配線」
イ 申立人の主張について
申立人は、甲2発明として、申立書11頁1~16行に記載した発明(以下「甲2発明(申立人)」という。)を主張する。
しかしながら、甲2発明(申立人)は、甲2の2の試験7の測定結果に基づくものであるところ(申立書10頁5~32行)、該試験7が甲2の1の実施例3を再現したものといえないことは、前記ア(ウ)のとおりであるから、甲2発明(申立人)を採用することはできない。
3 申立理由1-1(甲1の1に基づく新規性欠如)、申立理由2-1(甲1の1に基づく進歩性欠如)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)発明特定事項1Cについて
甲1発明の「銅回路」は、後述の相違点を除いて、本件発明1の「銅回路」に相当するから、本件発明1と甲1発明とは「銅回路」である点で一致する。
(イ)発明特定事項1A、1A1について
a 甲1発明の「銅回路の断面」は、「銅回路」が配置される基板表面に直交する面と解され、「銅回路」が配置される基板表面は、回路パターンの延在方向といえるから、甲1発明の「銅回路の断面」は、本件発明1の「回路パターンの延在方向に直交する断面」に相当する。
b 本件発明1の「式1で定義される窪み幅」は、「回路パターンの延在方向に直交する断面」における「最小幅」部分での「トップ」からの「窪み」の幅であるから、「最小幅」は「トップ幅」よりも小さい幅であると当然に解される。
これに対し、甲1発明は、「トップ幅及びボトム幅よりも小さい幅の部分を有する」から、この部分はトップから窪んだ部分ということができ、該部分における最小幅は、本件発明1の「最小幅」に相当する。しかしながら、甲1発明は、「トップ幅」及び前記最小幅の値は不明であるから、本件発明1の「式1で定義される窪み幅」に相当する値も不明である。
c よって、本件発明1と甲1発明は、「回路パターンの延在方向に直交する断面において、窪んだ最小幅の部分を有する」点で共通するが、本件発明1は、最小幅について「式1で定義される窪み幅が2.5μm以上」であるのに対し、甲1発明は、該「窪み幅」の値が不明である点で相違する。
(ウ)発明特定事項1B、1B1、1B2について
本件発明1の「式2で定義される第1の窪み比」は、「回路パターンの延在方向に直交する断面」における「回路高さ」に対する「窪み幅」の割合である。
他方、甲1発明は、前記(イ)のとおり、本件発明1の「窪み幅」に相当する値は不明であり、また、回路高さも不明であるから、本件発明1の上記「第1の窪み比」に相当する値も当然不明である。
(エ)一致点、相違点
前記(ア)~(ウ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
回路パターンの延在方向に直交する断面において、窪んだ最小幅の部分を有する
銅回路。
[相違点]
(相違点1-1)最小幅について、本件発明1は「式1で定義される窪み幅が2.5μm以上」であるのに対し、甲1発明は該「窪み幅」の値が不明である点。
(相違点1-2)相違点1-1に関連して、本件発明1は「式2で定義される第1の窪み比が0.05以上」であるのに対し、甲1発明は該「第1の窪み比」の値が不明である点。
イ 相違点についての判断
(ア)事案に鑑み、相違点1-1について検討する。
前記ア(イ)のとおり、甲1発明は、トップ幅、最小幅及び窪み幅は不明である。そして、甲1発明の銅回路の窪み幅が2.5μm以上であることを示す証拠はなく、また、技術常識でもないから、相違点1-1は、実質的な相違点である。
(イ)したがって、その余の相違点について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明と同一ではない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、甲1の1に記載された発明ではない。
(2)本件発明2について
本件発明2の発明特定事項2A及び2A1は、本件発明1の発明特定事項1A及び1A1と同じである。そのため、本件発明2と甲1発明とには、少なくとも前記(1)ア(エ)の相違点1-1と同じ相違点が存在し、該相違点については、前記(1)イ(ア)のとおりである。
したがって、本件発明2は、甲1の1に記載された発明ではない。
(3)本件発明3~5について
本件発明3は、本件発明2と同一の構成を有し、さらに限定を付加したものであり、本件発明4及び5は、本件発明1又は2と同一の構成を有し、さらに限定を付加したものであるから、本件発明3~5は、甲1の1に記載された発明ではない。
(4)本件発明6~8について
請求項6~8は、請求項1又は2を直接的又は間接的に引用するため、本件発明6~8は、本件発明1又は2と同一の構成を有する。そのため、本件発明6~8は、甲1の1に記載された発明ではない。
また、本件発明1又は2と甲1発明との相違点に係る構成を当業者が容易に想到し得たとする証拠はないから、該構成を有する本件発明6~8は、甲1の1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立人の主張について
申立人は、申立理由1-1及び2-1に関して、甲1発明(申立人)に基づいて、本件発明1~8は新規性を有さず、また、本件発明6~8は進歩性しない旨主張する(申立書12~13頁等)。
しかしながら、甲1発明(申立人)が採用できないことは、前記2(1)ウのとおりであり、甲1発明(申立人)に基づく前記新規性欠如、進歩性欠如の主張は、前提を欠くものであるから、採用することができない。
(6)申立理由1-1及び2-1についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~8は、甲1の1に記載された発明ではなく、また、本件発明6~8は、甲1の1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由1-1及び2-1は、理由がない。
4 申立理由1-2(甲2の1に基づく新規性欠如)、申立理由2-2(甲2の1に基づく進歩性欠如)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)発明特定事項1Cについて
甲2発明の「銅配線」は、後述の相違点を除いて、本件発明1の「銅回路」に相当するから、本件発明1と甲2発明とは、「銅回路」である点で一致する。
(イ)発明特定事項1A、1A1について
a 甲2発明の「銅配線の断面」は、「銅配線」が形成される「銅張積層板」の表面に直交する面と解され、「銅張積層板」の表面は、回路パターンである配線の延在方向といえるから、甲2発明の「銅配線の断面」は、本件発明1の「回路パターンの延在方向に直交する断面」に相当する。
b 本件発明1の「式1で定義される窪み幅」は、「回路パターンの延在方向に直交する断面」における「最小幅」部分での「トップ」からの「窪み」の幅である。
これに対し、甲2発明は、「銅配線の断面」において、本件発明1の「最小幅」に相当する部分が存在することは特定されておらず、上記「式1で定義される窪み幅」の値は当然不明である。
c よって、「回路パターンの延在方向に直交する断面において」、本件発明1は、「式1で定義される窪み幅が2.5μm以上」であるのに対し、甲2発明は、「最小幅」部分が存在することは特定されておらず、該「最小幅」についての上記「窪み幅」の値が不明である点で相違する。
(ウ)発明特定事項1B、1B1、1B2について
本件発明1の「式2で定義される第1の窪み比」は、「回路パターンの延在方向に直交する断面」における「回路高さ」に対する「窪み幅」の割合である。
他方、甲2発明は、前記(イ)のとおり、本件発明1の「窪み幅」に相当する値は不明であるから、本件発明1の上記「第1の窪み比」に相当する値も当然不明である。
(エ)一致点、相違点
前記(ア)~(ウ)によれば、本件発明1と甲2発明とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
銅回路。
[相違点]
(相違点2-1)回路パターンの延在方向に直交する断面において、本件発明1は「式1で定義される窪み幅が2.5μm以上」であるのに対し、甲2発明は、「最小幅」部分が存在することは特定されておらず、該「最小幅」についての上記「窪み幅」の値が不明である点。
(相違点2-2)相違点2-1に関連して、本件発明1は「式2で定義される第1の窪み比が0.05以上」であるのに対し、甲2発明は該「第1の窪み比」の値が不明である点。
イ 相違点についての判断
(ア)事案に鑑み、相違点2-1について検討する。
a 甲2発明は、銅配線の断面において最小幅部分が存在することは特定されていないが、「本発明のエッチング液によりエッチングした後の銅配線の一例を示す断面図」(【0015】)である甲2の1の図1からは、トップからわずかに窪んだ最小幅部分が存在することが見て取れ、また、甲3の【0011】、【0022】、図1及び4に示されるように、導体層をエッチング液でエッチングすると、その断面においてトップから窪んだ最小幅部分が形成されることは周知技術であったことを踏まえると、甲2発明にも、銅配線の断面において最小幅部分が存在する蓋然性が高いといえる。
しかしながら、そうであったとしても、甲2発明の最小幅部分について、その窪み幅が2.5μm以上であるかどうかは、その他の証拠を参酌しても不明であるから、相違点2-1は実質的な相違点である。
b 次に、相違点2-1の容易想到性について検討する。
甲2の2には、甲2の1の実施例3の再現実験であるとする試験7のほか、総銅厚み及びライン/スペース(L/S)、狙いボトム幅及び接液時間を変え、その他の処理方法を甲2の1の実施例に記載したとおりのものとした試験1~6について、それぞれの測定結果が示され、試験1~7のいずれも、窪み幅は2.5μm以上である旨記載されている。
しかしながら、甲2の2の試験7が、甲2の1の実施例3(甲2発明)の再現実験といえないことは、前記2(2)ア(ウ)のとおりである。また、甲2の2の試験1~6はいずれも、狙いボトム幅に対するドライフィルムレジストのライン幅が2倍程度かそれ以上であり、甲2の1の実施例3(狙いボトム幅30μmに対し、ドライフィルムレジストのライン幅36μm)に比べると明らかに大きいものであるから、試験1~6に用いられたエッチングが、甲2の1の実施例3とエッチングと同等のものであるとはいえない。さらに、甲2の2の試験1~7のエッチングが、当該技術分野における一般的なものであるともいえない。
そうすると、甲2発明において、甲2の2の試験1~7で示された窪み幅が得られることが、当業者において自明であるとはいえない。また、前記aのとおり、導体層をエッチング液でエッチングすると、その断面においてトップから窪んだ最小幅部分が形成されることは、甲3に示されるように周知技術であったとしても、該最小幅部分の窪み幅が、甲2の2の試験1~7で示される数値になることは周知であるとは認められないから、相違点2-1に係る本件発明1の窪み幅が、甲2発明及び上記周知技術に基づいて容易に想到し得たものであるともいえない。これは、その他の証拠に左右されない。
(イ)したがって、その余の相違点について判断するまでもなく、本件発明1は、甲2発明と同一ではなく、また、甲2発明及び甲3に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、甲2の1に記載された発明ではない。また、本件発明1は、甲2の1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものはない。
(2)本件発明2について
本件発明2の発明特定事項2A及び2A1は、本件発明1の発明特定事項1A及び1A1と同じである。そのため、本件発明2と甲2発明とには、少なくとも前記(1)ア(エ)の相違点2-1と同じ相違点が存在し、該相違点については、前記(1)イ(ア)のとおりである。
したがって、本件発明2は、甲2の1に記載された発明ではなく、また、甲2の1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものはない。
(3)本件発明3~5について
本件発明3は、本件発明2と同一の構成を有し、さらに限定を付加したものであり、本件発明4及び5は、本件発明1又は2と同一の構成を有し、さらに限定を付加したものであるから、本件発明3~5は、甲2の1に記載された発明ではなく、また、甲2の1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものはない。
(4)申立人の主張について
申立人は、申立理由1-2及び2-2について、概略以下を主張する。
ア 本件発明1は、甲2の1に実質的に記載されている甲2発明(申立人)と同一である(申立書13~14頁)。本件発明2~5についても同様である。
イ 仮に、本件発明1の「窪み幅」及び「第1の窪み比」について、甲2発明(申立人)に明示がない点で相違するとしても、周知技術及び甲2の2によれば、その数値範囲のものが甲2発明(申立人)において当然に得られることは明らかである(申立書14~16頁)。また、本件発明1の「窪み幅」及び「第1の窪み比」の値には技術的意義はないから、該「窪み幅」及び「第1の窪み比」を有する銅回路を採用することは、甲2発明(申立人)から当業者であれば容易になし得るものである(申立書16~17頁)。本件発明2~5についても同様である。
しかしながら、甲2発明(申立人)が採用できないことは、前記2(2)イのとおりであり、甲2発明(申立人)に基づく前記アの新規性欠如の主張は、前提を欠くものであるから、採用することができない。
また、甲2発明において、少なくとも本件発明1の「窪み幅」が当然に得られることが当業者において自明ではないことは、前記(1)イ(ア)のとおりである。また、本件特許の発明の詳細な説明の【0016】及び【0021】には、本件発明1の「窪み幅」及び「第1の窪み比」の技術的意義について記載されており、その記載内容が技術常識に反するとはいえないし、また、その記載内容が正しくないことを裏付ける証拠もないから、本件発明1の「窪み幅」及び「第1の窪み比」に技術的意義がないとはいえない。これは、本件発明2~5についても同様である。よって、前記イの進歩性欠如の主張も採用することができない。
したがって、申立人の主張は、いずれも採用することができない。
(5)申立理由1-2及び2-2についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~5は、甲2の1に記載された発明ではなく、また、甲2の1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものはないから、申立理由1-2及び2-2は、理由がない。
第5 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に上記請求項に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-701091