特許異議申立
2025-700287
多層配線基板及び多層配線基板の製造方法
- 審判番号
- 2025-700287
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-050875
- 登録番号
- 7548854
- 請求日
- 2025年03月10日
- 審決日
- 2025年11月18日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】イビデン株式会社
- 【権利者代理人】松浦 弘
- 【権利者代理人】軸見 可奈子
- 【異議申立人】渡辺 陽子
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 寺谷 大亮
- 審判官 衣鳩 文彦
- 分類
- P1651.113-YAA(H05K) / P1651.121-YAA(H05K) / P1651.536-YAA(H05K) / P1651.537-YAA(H05K) / P1651.841-YAA(H05K) / P1651.855-YAA(H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7548854号発明「多層配線基板及び多層配線基板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7548854号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3〕、〔2、4、5〕、6、7について訂正することを認める。
特許第7548854号の請求項2、4、5及び7に係る特許を維持する。
特許第7548854号の請求項1、3及び6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7548854号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和3年3月24日に出願され、令和6年9月2日にその特許権の設定登録がされ、令和6年9月10日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和7年 3月10日 :特許異議申立人 渡辺 陽子(以下「申立
人」という。)による請求項1~7に係る特
許に対する特許異議の申立て
同年 6月13日付け:取消理由通知書
同年 8月 6日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 9月22日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 請求の内容
令和7年8月6日の訂正請求の趣旨は、特許第7548854号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求めるものであり、その訂正(「以下「本件訂正」という。)の内容は次のとおりであると認める。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「請求項1に記載の多層配線基板であって、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している。」とあるのを、「導体層同士の間に配される単一層の絶縁層を貫通し、先細り形状をなして内側面がレーザー加工面になっているビアホールに導体が充填されて形成され、先端面と、前記ビアホールの真上の範囲に配される基端面とを備える複数のビアが積み重なってなるスタックビアを有する多層配線基板であって、前記スタックビアに含まれる第1と第2のビアのうち前記第2のビアの先端面が重なる前記第1のビアの基端面が凹状又は凸状に湾曲し、前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれていると共に、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している。」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から3の何れか1の請求項に記載の多層配線基板であって、前記第1のビアの基端面は凸状に湾曲し、前記第2のビアは、前記第1のビアの形状に対し、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に拡径される形状を有する。」とあるのを、「先細り形状をなして内側面がレーザー加工面になっているビアホールに導体が充填されて形成され、先端面と、前記ビアホールの真上の範囲に配される基端面とを備える複数のビアが積み重なってなるスタックビアを有する多層配線基板であって、前記スタックビアに含まれる第1と第2のビアのうち前記第2のビアの先端面が重なる前記第1のビアの基端面が凸状に湾曲し、前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれていると共に、前記第2のビアは、前記第1のビアの形状に対し、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に拡径されて、非軸対称形状になっている。」に訂正する。(請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から4の何れか1の請求項に記載の多層配線基板であって、前記第2のビアの基端面の面積は、前記第1のビアの基端面の面積より大きい。」とあるのを、「請求項2又は4に記載の多層配線基板であって、前記第2のビアの基端面の面積は、前記第1のビアの基端面の面積より大きく、前記スタックビアに含まれる複数のビアは、先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が交互に反対側に傾斜している。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「請求項6に記載の多層配線基板の製造方法であって、前記第1のビアを、その基端面が凸状に湾曲する形状になるように形成することと、前記第1のビアの基端面に照射されるレーザー光が、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に反射して前記第2の貫通孔が非軸対称形状に形成されることと、を含む。」とあるのを、「第1の絶縁層に先細り形状の第1の貫通孔をレーザー光にて穿孔しかつ前記第1の貫通孔を導電体で満たして、先端面と、前記第1の貫通孔の真上の範囲に配される基端面とを備える第1のビアを形成することと、前記第1のビアの形成の後に、前記第1のビアの基端面を覆う第2の絶縁層に、前記第1のビアの基端面に到達する先細り形状の第2の貫通孔をレーザー光にて穿孔しかつ前記第2の貫通孔を導電体で満たして、先端面と、前記第2の貫通孔の真上の範囲に配される基端面とを備える第2のビアを形成することと、前記第1及び第2のビアを含むスタックビアを形成することと、を含む多層配線基板の製造方法であって、前記第1のビアを、その基端面が凸状に湾曲する形状になるように形成することと、前記第1のビアの基端面のうち中心からずれた位置を焦点にしてレーザー光を照射して、前記第2の貫通孔を形成することと、前記第1のビアの基端面に照射されるレーザー光が、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に反射して前記第2の貫通孔が非軸対称形状に形成されることと、を含む。」に訂正する。
(8)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~5は、請求項1を引用するものであって、訂正事項1により記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、請求項1~5は、一群の請求項である。
本件訂正前の請求項7は、請求項6を引用するものであって、訂正事項6により記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものであるから、請求項6及び7は一群の請求項である。
(9)別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項2、4、5及び7については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2について、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるとともに、「先細り形状の複数のビア」について、「導体層同士の間に配される単一層の絶縁層を貫通し」と「内側面がレーザー加工面になっているビアホールに導体が充填されて形成され、先端面と、前記ビアホールの真上の範囲に配される基端面とを備える」との限定を付加し、また、特許請求の範囲の記載上、明瞭ではなかった「ビアの基端面」を、「ビアホールの真上の範囲に配される基端面」と正して、その本来の意を明らかにするものである。
よって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア)訂正事項2の「導体層同士の間に配される単一層の絶縁層を貫通し、先細り形状をなして内側面がレーザー加工面になっているビアホールに導体が充填されて形成され、先端面と、前記ビアホールの真上の範囲に配される基端面とを備える複数のビア」は、本件特許明細書の【0026】の「コア基板11の表裏の両面(第1面11F及び第2面11S)の導電層12の上に、層間絶縁層21としてのプリプレグと、銅箔26と、が積層される。そして、その積層体が、加熱プレスされ、コア基板11の表裏の両面上に層間絶縁層21が形成される。」、【0027】の「コア基板11の表裏の両側の銅箔26上からレーザー光が照射されることで、銅箔26及び層間絶縁層21を貫通するビアホール25Hが穿孔される。・・・ビアホール25Hは、コア基板11側に先細りする形状に形成される。」、【0028】のレーザー、この反射したレーザー光によってビアホール25Hの内面が偏レーザーされ、ビアホール25Hが非軸対称形状に形成される。・・・このビアホール25Hの中心軸は、第1ビア25Aの中心軸Jに対して傾斜する。」、【0029】の「また、この電解めっき処理により、電解めっきでビアホール25H内が満たされてビア25(第2ビア25B)が形成され、第2ビア25Bが第1ビア25Aに積み重なることでスタックビア30が形成される。第2ビア25Bは、第1ビア25Aの基端面25Kに向かって先細り形状に形成されると共に、第2ビア25Bの中心軸Jが、第1ビア25Aの中心軸Jに対して傾斜するように形成される(図8(B)参照)。」、【0031】の「そして、残された電解めっき膜22D、無電解めっき膜及び銅箔26により、層間絶縁層21上に導電層22が形成される」との記載、【0032】~【0035】及び【0037】の上記と同様の記載並びに図2、3等に基づくものであるから、訂正事項2は、新規事項の追加に該当しない。
(イ)訂正事項2の「ビアホールの真上の範囲に配される基端面」について、詳しくは次のとおりである。
本件特許明細書の【0028】の「このビアホール25Hの中心軸は、第1ビア25Aの中心軸Jに対して傾斜する。」及び【0029】の「電解めっきでビアホール25H内が満たされてビア25(第2ビア25B)が形成され、・・・第2ビア25Bの中心軸Jが、第1ビア25Aの中心軸Jに対して傾斜するように形成される」との記載によれば、ビアホール25Hの中心軸が第1ビア25Aの中心軸に対して傾斜していることにより、このビアホール25Hを電解めっきで満たして形成した第2ビア25Bの中心軸も第1ビア25Aの中心軸に対して傾斜するのであるから、第2ビア25Bの中心軸は、ビアホール25Hの中心軸に略一致すると解される。第2ビア25Bの上記中心軸は、「先細り形状」(【0029】)の「先端面25Sと基端面25Kの中心S,K同士を通る軸」(【0016】)であり、同様に、ビアホール25Hの上記中心軸は、「先細りする形状」(【0027】)の先端面と開口端面それぞれの中心を通る軸であると解され、第2ビア25Bとビアホール25Hは先端面及びその中心が同じであるから、第2ビア25Bの基端面及びその中心は、ビアホール25Hの開口端面及びその中心に略一致している。そのため、第2ビア25Bの基端面は、平面視においてビアホール25Hの開口端面に一致する領域、すなわち、ビアホール25Hの真上の範囲に配される領域であると解釈するのが合理的であり、図3等の記載とも整合する。これは、他のビアについても当てはまる。
よって、訂正事項2の「ビアホールの真上の範囲に配される基端面」は、本件特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(ウ)訂正事項2は、前記アのとおり、訂正前の請求項2について引用関係を解消するとともに、特許請求の範囲を減縮し、明瞭でない記載の釈明をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項4について、引用請求項を一部削除した上で、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるとともに、「先細り形状の複数のビア」について、「内側面がレーザー加工面になっているビアホールに導体が充填されて形成され、先端面と、前記ビアホールの真上の範囲に配される基端面とを備える」との限定を付加し、「第2のビア」について、「非軸対称形状になっている」との限定を付加し、また、特許請求の範囲の記載上、明瞭ではなかった「ビアの基端面」を、「ビアホールの真上の範囲に配される基端面」と正して、その本来の意を明らかにするものである。
よって、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4の「先細り形状をなして内側面がレーザー加工面になっているビアホールに導体が充填されて形成され、先端面と、前記ビアホールの真上の範囲に配される基端面とを備える複数のビア」は、訂正事項2について前記(2)イ(ア)及び(イ)に示したのと同様、本件特許明細書【0027】~【0029】、【0033】~【0035】、図2及び3等に基づくものである。また、訂正事項4の「第2のビアは・・・、非軸対称形状になっている」は、本件特許明細書の【0016】の「また、スタックビア30において、ビア25の凸状に湾曲した基端面25Kに重ねられる上側のビア25は、非軸対称形状になっていると共に、」等の記載に基づくものである。
よって、訂正事項4は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項4は、訂正前の請求項4について引用関係を解消するとともに、特許請求の範囲を減縮し、明瞭でない記載の釈明をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項5について、引用請求項を一部削除するとともに、「複数のビア」について、「先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が交互に反対側に傾斜している」との限定を付加するものである。
よって、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5の「前記スタックビアに含まれる複数のビアは、先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が交互に反対側に傾斜している」は、本件特許明細書の【0019】の「同じ向きのビア群において第1ビア25Aに上側から積み重なる複数のビア25は、非軸対称形状になっていると共に、それら複数のビア25の中心軸が多層配線基板10の厚み方向に対して交互に反対側に傾斜するように積み重なっている。」、図2及び3等の記載に基づくものであるから、訂正事項5は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項5は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、特許請求の範囲の請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的
訂正事項7は、特許請求の範囲の請求項7について、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるとともに、特許請求の範囲の記載上、明瞭ではなかった「ビアの基端面」を、「ビアホールの真上の範囲に配される基端面」と正して、その本来の意を明らかにするものである。
よって、訂正事項7は、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項7の「先端面と、前記第1の貫通孔の真上の範囲に配される基端面とを備える第1のビア」及び「先端面と、前記第2の貫通孔の真上の範囲に配される基端面とを備える第2のビア」は、訂正事項2について前記(2)イ(ア)及び(イ)に示したように、本件特許明細書【0027】~【0029】、【0033】~【0035】、図3等に基づくものであるから、訂正事項7は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項7は、訂正前の請求項7について引用関係を解消するとともに、明瞭でない記載の釈明をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1~7について特許異議申立てがされているので、訂正事項1~6について、独立特許要件は課されない。
4 申立人の訂正要件違反の主張について
(1)主張の概要
申立人は、意見書において、本件訂正が訂正要件に違反するとして、以下を主張する。
ア 「ビアホールの真上の範囲に配される基端面」とする訂正は、ビアホールの真上の範囲、凹状又は凸状の湾曲面の範囲、水平方向延伸部分を含む範囲等のいずれを指すのか不明であったものから「ビアホールの真上の範囲」を選択するものであり、新たな技術的事項を導入するものであるとともに、実質上特許請求の範囲を変更するものである。(意見書11~15頁)
イ 「導体層同士の間に配される単一層の絶縁層」とする訂正は、本件特許明細書等にそのような記載はないから、新たな技術的事項を導入するものである。(意見書15頁)
ウ 「レーザー加工面」とする訂正は、本件特許明細書等に直接的な記載はないから、新たな技術的事項を導入するものである。(意見書15~16頁)
(2)主張についての検討
ア 前記(1)アの主張について、前記2(2)イ(イ)のとおり、「ビアホールの真上の範囲に配される基端面」は、本件特許明細書等に記載した事項から導出されるものであるから、「ビアホールの真上の範囲に配される基端面」とする訂正は、新規事項の追加には該当せず、また、当該訂正は、前記2(2)アのとおり、特許請求の範囲の記載上、明瞭ではなかった訂正前の「ビアの基端面」を、本来の意を明らかにするものであるから、実質上特許請求の範囲を変更するものでもない。仮に、「基端面」を、凹状又は凸状の湾曲面の範囲又は水平方向延伸部分を含む範囲であると解釈した場合、(平面視の)形状がビアホールの開口端面とは異なり得るために、「基端面」の中心が必ずしもビアホールの開口端面の中心に略一致せず、その結果、ビアの中心軸が、ビアホールの中心軸と同様に傾斜するとは限らないから、該解釈は採り得ない。
したがって、前記(1)アの主張は、理由がない。
イ 前記(1)イの主張について、導電体のことを導体ともいうとの技術常識に照らせば、「導体層同士の間に配される単一層の絶縁層」の「導体層」が、本件特許明細書等の「導電層」(【0020】等)のことであることは明らかである。また、前記2(2)イ(ア)のとおり、「導電層12の上に、層間絶縁層21としてのプリプレグと、銅箔26と、が積層される。そして、その積層体が、加熱プレスされ、コア基板11の表裏の両面上に層間絶縁層21が形成される。」(【0026】)、「残された電解めっき膜22D、無電解めっき膜及び銅箔26により、層間絶縁層21上に導電層22が形成される」(【0031】)等の記載によれば、導電層12と導電層22の間の層間絶縁層21が、プリプレグから形成される単一層であることも自明である。
したがって、前記(1)イの主張も、理由がない。
ウ 前記(1)ウの主張について、「そして、この反射したレーザー光によってビアホール25Hの内面が偏って除去され、」(【0028】)等の記載によれば、ビアホールの内側面が、レーザー光によって加工されたものであることは明らかである。
したがって、前記(1)ウの主張は、理由がない。
5 訂正の適否のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3〕、〔2、4、5〕、6、7について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項2、4、5及び7に係る発明(以下「本件発明2」等といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1~7の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
導体層同士の間に配される単一層の絶縁層を貫通し、先細り形状をなして内側面がレーザー加工面になっているビアホールに導体が充填されて形成され、先端面と、前記ビアホールの真上の範囲に配される基端面とを備える複数のビアが積み重なってなるスタックビアを有する多層配線基板であって、
前記スタックビアに含まれる第1と第2のビアのうち前記第2のビアの先端面が重なる前記第1のビアの基端面が凹状又は凸状に湾曲し、前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれていると共に、
前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
先細り形状をなして内側面がレーザー加工面になっているビアホールに導体が充填されて形成され、先端面と、前記ビアホールの真上の範囲に配される基端面とを備える複数のビアが積み重なってなるスタックビアを有する多層配線基板であって、
前記スタックビアに含まれる第1と第2のビアのうち前記第2のビアの先端面が重なる前記第1のビアの基端面が凸状に湾曲し、前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれていると共に、
前記第2のビアは、前記第1のビアの形状に対し、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に拡径されて、非軸対称形状になっている。
【請求項5】
請求項2又は4に記載の多層配線基板であって、
前記第2のビアの基端面の面積は、前記第1のビアの基端面の面積より大きく、
前記スタックビアに含まれる複数のビアは、先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が交互に反対側に傾斜している。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
第1の絶縁層に先細り形状の第1の貫通孔をレーザー光にて穿孔しかつ前記第1の貫通孔を導電体で満たして、先端面と、前記第1の貫通孔の真上の範囲に配される基端面とを備える第1のビアを形成することと、
前記第1のビアの形成の後に、前記第1のビアの基端面を覆う第2の絶縁層に、前記第1のビアの基端面に到達する先細り形状の第2の貫通孔をレーザー光にて穿孔しかつ前記第2の貫通孔を導電体で満たして、先端面と、前記第2の貫通孔の真上の範囲に配される基端面とを備える第2のビアを形成することと、
前記第1及び第2のビアを含むスタックビアを形成することと、を含む多層配線基板の製造方法であって、
前記第1のビアを、その基端面が凸状に湾曲する形状になるように形成することと、
前記第1のビアの基端面のうち中心からずれた位置を焦点にしてレーザー光を照射して、前記第2の貫通孔を形成することと、
前記第1のビアの基端面に照射されるレーザー光が、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に反射して前記第2の貫通孔が非軸対称形状に形成されることと、を含む。」
第4 特許異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書に記載した取消理由
1 特許異議申立書に記載された申立理由の概要
特許異議申立書に記載された申立理由の概要及び証拠方法は、次のとおりである。なお、以下では、甲第1号証~甲第7号証を、「甲1」等という。
(1)申立理由1(甲1に基づく新規性、進歩性)
請求項1~5に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~5に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
請求項1~7に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
(2)申立理由2(甲2に基づく新規性、進歩性)
請求項1、2、5、6に係る発明は、甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、5、6に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
請求項1、2、5、6に係る発明は、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、5、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
(3)申立理由3(甲3に基づく新規性、進歩性)
請求項1~4に係る発明は、甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
請求項1~7に係る発明は、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
(4)申立理由4(甲4に基づく新規性、進歩性)
請求項1、2、5、6に係る発明は、甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、5、6に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
請求項1、2、5、6に係る発明は、甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、5、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
(5)申立理由5(甲5に基づく新規性、進歩性)
請求項1~5に係る発明は、甲5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~5に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
請求項1~5に係る発明は、甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号)
(6)申立理由6(記載要件)
ア 申立理由6-1(サポート要件)
請求項1~7に係る発明は、以下の点で発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法第113条第4号)
(ア)請求項1に係る発明は、「第1のビアの基端面が凹状又は凸状に湾曲し、前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれている」としか特定されておらず、「ずれ」及び「凹状又は凸状」の曲率が、それぞれ極めて小さい場合、又は極めて大きい場合に課題を解決し得ないから、請求項1に係る発明は、課題を解決し得ない態様を包含する。請求項2~7に係る発明についても同様である。
請求項1~7に係る発明の「湾曲」についても同様である。
請求項2~5に係る発明の「傾斜」についても同様である。
請求項4、5に係る発明の「拡径」についても同様である。
請求項5に係る発明の「面積」についても同様である。
請求項7に係る発明の「反射」についても同様である。
(イ)請求項1~7に係る発明は、「凹状」の場合に課題を解決し得ないから、課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
(ウ)請求項1~7に係る発明は、「第1のビア」及び「第2のビア」の2層のみの関係を特定するだけであり、課題を解決し得ない態様を包含する。
イ 申立理由6-2(明確性要件)
請求項1~7に係る発明は、以下の点で明確でないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法第113条第4号)
(ア)請求項1に係る発明の「前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれている」の「ずれ」の程度が不明確であり、従来の製造時に生じるズレとどのように異なるのか区別することができない。請求項2~7に係る発明についても同様である。
請求項1~7に係る発明の「湾曲」についても同様である。
請求項2~5に係る発明の「傾斜」についても同様である。
請求項4、5に係る発明の「拡径」についても同様である。
請求項5に係る発明の「面積」の大小についても同様である。
請求項7に係る発明の「反射」についても同様である。
(イ)請求項1~7に係る発明は、「基端面」が本件特許の図に記載されるような鍔部を含む面なのか含まない面なのかが不明確であり、「基端面の中心」が断面の中心なのか面積の中心なのかも不明確である。
(ウ)請求項4、5に係る発明の「中心軸から離れる側に拡径される形状」の「離れる側」の意味が不明確である。
(エ)請求項1~5に係る発明の「前記第1のビア」が何を指すのか不明確である。
ウ 申立理由6-3(実施可能要件)
本件特許の発明の詳細な説明は、以下の点で請求項1~7に係る発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法第113条第4号)
(ア)請求項1に係る発明は、「第1のビアの基端面が凹状又は凸状に湾由し、前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれている」と特定しているが、当該構成により、なぜ多層配線基板のスタックビアの近傍の劣化を抑制することができるのか、当業者が実施できる程度に説明されていない。請求項2~7に係る発明についても同様である。
(イ)請求項1に係る発明は、「第1のビアの基端面が凹状又は凸状に湾曲し、前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれている」と特定しているが、発明の詳細な説明には、1つの実施例及び評価もなく、「凹状又は凸状」の曲率、ずれの寸法、レーザーの反射角等の寸法が、当業者が実施できる程度に記載されておらず、従来の、製造時に生じるずれや、凹状又は凸状とどのように異なるのか、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に記載されていない。請求項2~7に係る発明についても同様である。
請求項2~5に係る発明の「傾斜」についても同様である。
請求項4、5に係る発明の「拡径」についても同様である。
請求項5に係る発明の「面積」の大小についても同様である。
請求項7に係る発明の「反射」についても同様である。
(ウ)請求項1に係る発明は、「第1のビアの基端面が凹状又は凸状に湾曲し」と特定しているが、「凹状」の場合には「凸状」の場合と著しく態様が異なり、発明の詳細な説明には当業者が実施できる程度に記載されているといえない。請求項2~7に係る発明についても同様である。
(7)証拠方法
甲1:Hiroshi Kudo他、「A Characterized Redistribution Layer Architecture for Advanced Packaging Technologies」、2016 IEEE 66th Electronic Components and Technology Conference、2016年
甲2:特開2014-75515号公報
甲3:特開2003-258430号公報
甲4:再公表特許2011/089795号
甲5:特開2013-172073号公報
甲6:特開2007-142399号公報
甲7:特開2020-161730号公報
2 取消理由通知書に記載した取消理由の概要
(1)取消理由1(明確性)
請求項1~7に係る発明は、以下の点で明確でないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1に係る発明の「基端面の中心」について、「基端面」の範囲が明確でなく、その結果、「基端面」の「中心」が明確でない。請求項2~7に係る発明の「基端面の中心」、「基端面のうち中心からずれた位置」の「中心」についても同様である。
(2)取消理由2(甲1に基づく新規性、進歩性)
請求項1~3に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
請求項1~5に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)取消理由3(甲2に基づく新規性、進歩性)
請求項1、2、5に係る発明は、甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、5に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
請求項1、2、5に係る発明は、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(4)取消理由4(甲3に基づく新規性、進歩性)
請求項1、2に係る発明は、甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
請求項1~5に係る発明は、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(5)取消理由5(甲4に基づく新規性、進歩性)
請求項1、2、5、6に係る発明は、甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、5、6に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
請求項1、2、5、6に係る発明は、甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、5、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第5 甲各号証の記載
1 甲1
(1)甲1の記載事項
甲1には次の記載がある。なお、訳は、申立人が提出したものを参考に当審で作成したものであり、下線及び図中の破線は、当審で付与したものである(以下、同じ。)。
ア 「I. INTRODUCTION
Current redistribution layer (RDL) architectures based on a semi-additive or damascene process are expected to be applicable to advanced packaging technologies such as 2.5D IC interposer and wafer level packaging (WLP).」
(訳:
I.はじめに
セミアディティブまたはダマシンプロセスによって形成された近年の再分配層(RDL)構造は、2.5Dインターポーザやウェーハレベルパッケージ(WLP)のような高度なパッケージング技術への適用が期待されている。)
イ 「III. BUILDUP FLOW OF CHARACTERIZED RDL ARCHITECTURE
The buildup flow of the enhanced RDL architecture is illustrated in Fig. 2. A Cu wire was basically fabricated using SAP (Fig. 2 (a)). The fabricated wire was covered with a double layer as described above and then spin-coated with a photo-sensitive organic dielectric (Fig. 2 (b)). After via opening of the organic dielectric by photolithography (Fig. 2 (c)), the double layer was selectively etched using plasma reactive ion etching (Fig. 2 (d)). A second level Cu wire was then fabricated by SAP in the same manner as the first level one (Fig. 2 (e)). Repetition of steps (a) to (e) resulted in the building of a single-sided nine-level RDL embedded with fully stacked vias (Fig. 3). This successful buildup was mainly due to the controlled compressive stress of the second dielectric. The fully stacked vias have a fine pitch of 40 μm and can accommodate advanced high-bandwidth I/O interfaces.」
(訳:
III.特徴的なRDL構造の形成工程
強化型RDL構造の形成工程を図2に示す。基本的にはSAPを用いてCu配線を作製している(図2(a))。作製した配線を上記のように二重層で覆い、感光性有機誘電体をスピンコートした(図2(b))。フォトリソグラフィーで有機誘電体にビア開口を形成した後(図2(c))、プラズマ反応性イオンエッチングで二重層を選択的にエッチングした(図2(d))。
続いて、SAPにより第1層と同様の方法で第2層のCu配線を作製した(図2(e))。(a)から(e)のステップを繰り返すことで、多層スタックビアが埋め込まれた片面9レベルのRDLを構築した(図3)。このビルドアップを可能にしたポイントは、主に第2誘電体を圧縮応力に制御したことによる。多層スタックビアは40μmの微細ピッチで、高度な高帯域幅1/Oインターフェースに対応できる。)
ウ 「VII. CONCLUSION
We have developed an enhanced redistribution layer (RDL) architecture in which the Cu wires are directly covered with a double layer consisting of two types of dielectrics. The first dielectric suppresses surface diffusion of electrically activated Cu and prevents Cu from migrating into
the organic dielectric between the Cu wires. The former effect increases electro-migration resistance while the latter stabilizes the dielectric strength. The second dielectric, which has a high elastic modulus and a low coefficient of thermal expansion, increases the thermal stability of the fully stacked vias, which are vulnerable to thermal stressing. In addition, the controlled compressive stress of the second dielectric prevents substrate warpage, enabling the construction of a single-sided nine-level RDL embedded with fully stacked vias. The overall result greatly increased flexibility of the wiring layout.」
(訳:
VII.結論
我々は、Cu配線を2種類の誘電体からなる二重層で直接被覆する強化型再配分層(RDL)構造を開発した。第1誘電体は、電気的に活性化されたCuの表面拡散を抑制し、Cu配線間の有機誘電体へのCuのマイグレーションを防止する。前者の効果はエレクトロマイグレーション耐性を高め、後者は誘電体強度を安定させる。高い弾性率と低い熱膨張係数を持つ第2誘電体は、熱応力に弱い完全積層ビアの熱安定性を高める。さらに、第2誘電体の圧縮応力を制御することにより、基板の反りを防止し、多層スタックビアを埋め込んだ片面9層のRDLを構築することが可能となる。その結果、配線レイアウトの柔軟性が大幅に向上する。)
エ 「
[図:0001432075000001.jpg]
」
(訳:
(a)第1Cu配線をSAPで形成
(b)Cu配線を誘電体で被覆
(c)フォトリソグラフィーでビア開口を形成
(d)第1、第2誘電体をプラズマ反応性イオンエッチング
(e)第2Cu配線をSAPで形成
図2.強化型RDL構造の形成工程。)
オ 「
[図:0001432075000002.jpg]
」
(訳:
図3.多層スタックビア(40μmピッチ)を組み込んだ片面9層構成のRDL。)
(2)甲1発明
前記(1)エの図2(b)によれば、前記(1)イの「二重層」とは、第1誘電体(First dielectric)と第2誘電体(Second dielectric)の二重層のことであることは明らかである。
前記(1)オの図3は、「多層スタックビア(40μmピッチ)を組み込んだ片面9層構成のRDL」の側断面図と解され、前記(1)の下線部の記載を踏まえ、左端の多層スタックビアの破線で囲んだL3(L3-L2間)のCu配線(以下「Cu(L3)配線」という。)とL4(L4-L3間)のCu配線(以下「Cu(L4)配線」という。)に着目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明]
(a)SAPを用いてCu配線を作製し、(b)作製した配線を第1誘電体と第2誘電体の二重層で覆い、感光性有機誘電体をスピンコートし、(c)フォトリソグラフィーで有機誘電体にビア開口を形成し、(d)プラズマ反応性イオンエッチングで二重層をエッチングし、(e)SAPにより第1層と同様の方法でCu配線を作製し、(a)から(e)のステップを繰り返すことで構築した、多層スタックビアが埋め込まれた片面9レベルの再分配層(RDL)であって、(前記(1)ア、(1)イ)
多層スタックビアはCu(L3)配線とCu(L4)配線を含み、(図3)
Cu(L3)配線はL3側端面からL2側端面に向かって細くなっており、Cu(L4)配線はL4側端面からL3側端面に向かって細くなっており、(図3)
Cu(L3)配線のL3側端面及びCu(L4)配線のL4側端面は、凸状に膨らんでおり、(図3)
Cu(L4)配線のL3側端面は、Cu(L3)配線のL3側端面に重なっており、(図3)
Cu(L4)配線のL3側端面の中心は、Cu(L3)配線のL3端面の中心から右側にずれている(図3)
RDL。
2 甲2
(1)甲2の記載事項
甲2には次の記載がある。
「【0011】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態を図1~図10に従って説明する。
(第1実施形態に係る配線基板の製造方法)
図1に示すように、配線基板1では、配線層と絶縁層とが交互に多数積層され、絶縁層に設けられビアによって配線層同士が電気的に接続されている。本例の配線基板1では、7層の配線層20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G,20Hと7層の絶縁層31~37とが交互に積層され、絶縁層31~37にそれぞれ設けられたビア41~47によって配線層20A~20Hが電気的に接続されている。
【0012】
詳述すると、最外層(ここでは、最下層)の絶縁層31の下面に最下層の配線層20Aが積層され、上記絶縁層31の上面に積層された絶縁層32の下面32Aに配線層20Bが積層されている。これら配線層20Aと配線層20Bとは、絶縁層31に設けられた貫通孔VH1に充填されたビア41によって電気的に接続されている。絶縁層32の上面32Bに配線層20Cが形成され、絶縁層32に設けられた貫通孔VH2に充填されたビア42によって配線層20Bと配線層20Cとが電気的に接続されている。絶縁層32の上面32B上に積層された絶縁層33の上面に配線層20Dが積層され、絶縁層33に設けられた貫通孔VH3に充填されたビア43によって配線層20Cと配線層20Dとが電気的に接続されている。絶縁層34の上面に配線層20Eが積層され、絶縁層34に設けられた貫通孔VH4に充填されたビア44によって配線層20Dと配線層20Eとが電気的に接続されている。絶縁層35の上面に配線層20Fが積層され、絶縁層35に設けられた貫通孔VH5に充填されたビア45によって配線層20Eと配線層20Fとが電気的に接続されている。絶縁層36の上面に配線層20Gが積層され、絶縁層36に設けられた貫通孔VH6に充填されたビア46によって配線層20Fと配線層20Gとが電気的に接続されている。最外層(ここでは、最上層)の絶縁層37の上面に最上層の配線層20Hが積層され、絶縁層37に設けられた貫通孔VH7に充填されたビア47によって配線層20Gと配線層20Hとが電気的に接続されている。」
「【0038】
また、これら絶縁層34,35,36,37に設けられた貫通孔VH4,VH5,VH6,VH7は、図1(a)において上側(配線層20H側)から下側(配線層20C側)に向かうに連れて径が小さくなるテーパ上に形成されている。具体的には、貫通孔VH4~VH7は、下側の開口端の開口径が上側の開口端の開口径よりも小径となる円錐台形状に形成されている。これら貫通孔VH4,VH5,VH6,VH7の底部(下部)には、配線層20D,20E,20F,20Gの下面(当審注:「上面」の誤記と認める。)に形成された凹部20Yがそれぞれ露出されている。これら配線層20D,20E,20F,20Gの凹部20Yは、上記配線層20Cの凹部20Yと同様に、対応する貫通孔VH4,VH5,VH6,VH7と連通するとともに、対応する貫通孔VH4,VH5,VH6,VH7の底部よりも大径に形成されている。
【0039】
そして、配線層20Cよりも上側に形成されたビア44,45,46,47は、対応する貫通孔VH4,VH5,VH6,VH6(当審注:「VH7」の誤記と認める。)及び凹部20Yを充填するように形成されている。このため、ビア44~47の底部B2(凹部20Yに充填された部分のビア44~47)がいわゆる釘や雄ネジの頭のような形状となり、それら底部B2の周縁部の下面が対応する絶縁層34~37の下面と接触する。」
「【0067】
続いて、図4(a)に示す工程では、CO2レーザやUV-YAGレーザ等によるレーザ加工法により、金属箔66に開口部66X(第1開口部)を形成するとともに、その開口部66Xに連通し絶縁層33を厚さ方向に貫通して下層の配線層20Cの上面RB(第1面)を露出する貫通孔VH3(第1貫通孔)を形成する(第5工程)。このとき、金属箔66(銅箔)よりも絶縁層33の方がレーザ加工されやすい特性やレーザの熱による影響により、図4(a)に示すように、絶縁層33に形成された貫通孔VH3が金属箔66の開口部66Xから外側に食い込むように形成される。すなわち、貫通孔VH3の上部において、金属箔66の鍔部66Aが貫通孔VH3の内側にリング状に突出する構造、いわゆるオーバーハング構造が形成される。また、レーザ加工法により貫通孔VH3を形成すると、図4(b)に示すように、レーザにより切断されたガラスクロス38の端部が貫通孔VH3の側壁から突出する。
【0068】
次いで、図4(c)に示す工程では、図4(a)に示した構造体に対してレーザ加工の後処理を施す。具体的には、上述したオーバーハング構造(鍔部66A)を除去するように、且つ、配線層20Cの上面RBに凹部20Y(第1凹部)を形成するように、図4(a)に示した構造体に対してエッチング処理を施す(第6工程)。本例では、金属箔66の開口部66Xの開口径が貫通孔VH3の上側の開口端よりも大径となるように、且つ凹部20Yの開口径が貫通孔VH3の下側の開口端よりも大径となるようにエッチング処理が行われる。例えば、金属箔66の上面66Bに除去すべき領域の金属箔66のみを露出するレジスト層(図示略)を形成し、そのレジスト層をエッチングマスクとして金属箔66及び配線層20Cをエッチングする。このとき、配線層20Cが金属箔66よりも厚く形成されている。このため、本工程におけるエッチング量を増やした場合であっても、エッチングにより配線層20Cが貫通されるのが抑制される。したがって、本工程では、エッチング量を増やして上記オーバーハング構造(鍔部66A)を好適に除去することができる。本工程のエッチング処理は、例えばウェットエッチングにより行うことができる。このようなウェットエッチングを配線層20Cに対して施した場合には、エッチングが配線層20Cの面内方向に進行するサイドエッチ現象により、配線層20Cの凹部20Yを貫通孔VH3の底部から外側に食い込むように形成することができる。」
「【0077】
次に、図7(a)に示した構造体の上下両面に形成された絶縁層36,32及び金属箔70,63に対して、図4(a)の工程と同様の製造工程を実施する(第9工程)。詳述すると、レーザ加工法により、金属箔63に開口部63X(第2開口部)を形成するとともに、その開口部63Xに連通し絶縁層32を厚さ方向に貫通して上層の配線層20Cの下面RA(第2面)を露出する貫通孔VH2(第2貫通孔)を形成する。また、レーザ加工法により、金属箔70に開口部70X(第3開口部)を形成し、その開口部70Xに連通し絶縁層36を厚さ方向に貫通して下層の配線層20F(最外層の第4配線層)の上面を露出する貫通孔VH6(第3貫通孔)を形成する。このとき、貫通孔VH2の下部において金属箔63の鍔部63Cが貫通孔VH2の内側に突出され、貫通孔VH6の上部において金属箔70の鍔部70Aが貫通孔VH6の内側に突出される。」
「【0081】
続いて、図8(b)に示した構造体の上下両面に対して、図3(e)~図6(a)に示した工程と同様の製造工程を実施する。これにより、図9(a)に示すように、絶縁層36の上面36B上に絶縁層37と配線層20Hを順に積層し、絶縁層32の下面32A上に絶縁層31と配線層20Aを順に積層する。」
「【図1】
[図:0001432075000003.jpg]
」
「【図4】
[図:0001432075000004.jpg]
」
「【図7】
[図:0001432075000005.jpg]
」
「【図8】
[図:0001432075000006.jpg]
」
「【図9】
[図:0001432075000007.jpg]
」
(2)甲2発明
前記(1)の【0081】によれば、貫通孔VH7は、図4(a)に示す工程と同様に、レーザ加工法により形成される(【0067】)と解される。
前記(1)の下線部及び第1実施形態の配線基板を示す概略断面図を示す図1(a)右上のビア46とビア47に着目すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲2発明]
配線基板1であって、(【0011】)
配線基板1では、7層の配線層20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G,20Hと7層の絶縁層31~37とが交互に積層され、(【0011】)
絶縁層36の上面に配線層20Gが積層され、絶縁層36に設けられた、レーザ加工法により形成された貫通孔VH6に充填されたビア46によって配線層20Fと配線層20Gとが電気的に接続され、最外層(ここでは、最上層)の絶縁層37の上面に最上層の配線層20Hが積層され、絶縁層37に設けられた、レーザ加工法により形成された貫通孔VH7に充填されたビア47によって配線層20Gと配線層20Hとが電気的に接続され、(【0012】、【0067】、【0077】、【0081】)
絶縁層36,37に設けられた貫通孔VH6,VH7は、上側(配線層20H側)から下側(配線層20C側)に向かうに連れて径が小さくなるテーパ状に形成され、(【0038】)
貫通孔VH6,VH7の底部(下部)には、配線層20F,20Gの上面に形成された凹部20Yがそれぞれ露出されており、配線層20F,20Gの凹部20Yは、対応する貫通孔VH6,VH7と連通するとともに、対応する貫通孔VH6,VH7の底部よりも大径に形成されており、(【0038】)
ビア46,47は、対応する貫通孔VH6,VH7及び凹部20Yを充填するように形成されており、ビア46,47の底部B2(凹部20Yに充填された部分のビア46,47)がいわゆる釘や雄ネジの頭のような形状となり、(【0039】)
ビア46,47は、積み重なっており、(図1(a))
配線層20Gの上面の凹部20Yに接するビア47の底部B2の下面の中心は、配線層20Gの上面の中心に対して右側にずれている(図1(a)、【0039】)
配線基板1。
3 甲3
(1)甲3の記載事項
甲3には、次の記載がある。
「【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の配線基板101について、図1に部分断面図を示す。また、図2に主面側第2絶縁層124に覆われたフィルドビア導体123近傍の部分拡大断面図を、図3に主面側第3絶縁層127に覆われたフィルドビア導体126近傍の部分拡大断面図を示す。
【0022】この配線基板101は、図1中に破線で示すICチップICが搭載される基板主面102と、図示しないマザーボードに接続される基板裏面103とを有する略矩形の略板形状である。配線基板101は、その中心にガラス-エポキシ樹脂からなる厚さ約800μmのコア基板111を備える。このコア基板111のコア主面112上には、エポキシ樹脂等からなる厚さ約35μmの主面側第1絶縁層121が積層され、その上には、同じくエポキシ樹脂等からなる厚さ約35μmの主面側第2絶縁層124が積層され、さらにその上には、同じくエポキシ樹脂等からなる厚さ約25μmの主面側第3絶縁層(主面側ソルダーレジスト層)127が積層されている。また同様に、コア基板111のコア裏面113上には、エポキシ樹脂等からなる厚さ約35μmの裏面側第1絶縁層141が積層され、その上には、同じくエポキシ樹脂等からなる厚さ約35μmの裏面側第2絶縁層144が積層され、さらにその上には、同じくエポキシ樹脂等からなる厚さ約25μmの裏面側第3絶縁層(裏面側ソルダーレジスト層)147が積層されている。」
「【0025】主面側第1絶縁層121には、図1及び図2に示すように、これを貫通する開口径約65μmの多数のビアホール122が所定の位置に形成され、その内部及びその上には、Cuからなるフィルドビア導体123がそれぞれ形成されている。具体的には、各々のフィルドビア導体123は、ビアホール122内に形成された略円錐台状の円錐台部123Pと、その上に形成された直径約125μm、厚さ約14.5μmの円盤状の円盤部123Qとを有する。さらに、円盤部123Qの中央上には、凸状に膨らみ、底面の直径が約55μm、高さが約5μmの膨出部123Rを有する。つまり、このフィルドビア導体123は、表面が凸状に膨らんだ膨出部123Rを有する形状とされている。また、フィルドビア導体123の表面全面は、主面側第2絶縁層124との密着性を向上させるため、表面粗さRa=約0.5μmの粗化面とされている。これらのフィルドビア導体123には、その表面全体が主面側第2絶縁層124で覆われたもの(図2参照)と、その表面に後述するフィルドビア導体126が接続されたものとがある。表面全体が主面側第2絶縁層124で覆われたフィルドビア導体123について見ると、その膨出部123R上に積層された主面側第2絶縁層124の厚さは、約15.5μmと十分に厚くなっている。
【0026】また、図1及び図3に示すように、主面側第2絶縁層124にも、これを貫通する開口径約65μmの多数のビアホール125が所定の位置に形成され、その内部及びその上には、Cuからなるフィルドビア導体126がそれぞれ形成されている。具体的には、このフィルドビア導体126も、ビアホール125内に形成された略円錐台状の円錐台部126Pと、その上に形成された直径約125μm、厚さ約14.5μmの円盤状の円盤部126Qと、その中央上に凸状に膨らみ、底面の直径が約55μm、高さが約5μmの膨出部126Rとを有する。つまり、このフィルドビア導体126も、表面が凸状に膨らんだ膨出部126Rを有する形状とされている。また、フィルドビア導体126の表面全面は、主面側第3絶縁層127との密着性を向上させるため、表面粗さRa=約0.5μmの粗化面とされている。これらのフィルドビア導体126には、その表面全体が主面側第3絶縁層127で覆われたもの(図3参照)と、その表面に後述する主面側Niメッキ層129が被着したものとがある。表面全体が主面側第3絶縁層127で覆われたフィルドビア導体126について見ると、その膨出部126R上に積層された主面側第3絶縁層127の厚さは、約5.5μmと十分に厚くなっている」
「【0031】コア基板111と主面側第1絶縁層121との層間には、Cuからなる厚さ約35μmの主面側第1導体層161が形成されている。この主面側第1導体層161は、電源電位とされる電源プレーン層であり、略ベタ状に形成されている。主面側第1導体層161は、コア基板111のスルーホール導体116の一部及び主面側第1絶縁層121のフィルドビア導体123の一部と接続している。また、主面側第1絶縁層121と主面側第2絶縁層124との層間には、Cuからなる厚さ約14.5μmの主面側第2導体層163が形成されている。この主面側第2導体層163は、配線等を有する所定パターンの配線層である。主面側第2導体層163は、主面側第1絶縁層121のフィルドビア導体123及び主面側第2絶縁層124のフィルドビア導体126と接続している。また、主面側第2絶縁層124と主面側第3絶縁層127との層間には、Cuからなる厚さ約14.5μmの主面側第3導体層165が形成されている。この主面側第3導体層165は、配線等を一部に有する所定パターンの導体層である。主面側第3導体層165は、主面側第2絶縁層124のフィルドビア導体126等と接続している。」
「【0042】次に、第1絶縁層形成工程において、コア主面112及び主面側第1導体層161上に、公知のフォトリソグラフィ法により、ビアホール122を所定の位置に有する主面側第1絶縁層121を形成する。また同様にして、コア裏面113及び裏面側第1導体層171上に、ビアホール142を所定の位置に有する裏面側第1絶縁層141を形成する。」
「【0046】次に、第2絶縁層形成工程において、図6に示すように、Cuメッキにより、主面側第1絶縁層121及び主面側第2導体層163上に、公知の真空ラミネート及びフォトリソグラフィ法により、ビアホール125を所定の位置に有する主面側第2絶縁層124を形成する。また同様にして、裏面側第1絶縁層141及び裏面側第2導体層173上に、ビアホール145を所定の位置に有する裏面側第2絶縁層144を形成する。具体的には、真空ラミネートにより、主面側第1絶縁層121及び主面側第2導体層163上に未硬化の主面側第2絶縁層を積層すると共に、裏面側第1絶縁層141及び裏面側第2導体層173上に未硬化の裏面側第2絶縁層を積層する。その際、搬送ローラや真空シールローラが、基板の表裏面に接触するので、フィルドビア導体123,143の頂部にもそれぞれ接触するが、膨出部123R等の高さが5μm以下に抑えられているので、膨出部123R等は潰れず、表面粗さの低下が防止される。その後、公知のフォトリソグラフィ法により、ビアホール125を有する所定パターンの主面側第2絶縁層124と、ビアホール145を有する所定パターンの裏面側第3絶縁層144を形成する。」
「【図1】
[図:0001432075000008.jpg]
」
「【図2】
[図:0001432075000009.jpg]
」
「【図3】
[図:0001432075000010.jpg]
」
(2)甲3発明
前記(1)の下線部及び配線基板101の部分断面図を示す図1に着目すると、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲3発明]
配線基板101であって、(【0022】)
配線基板101は、コア基板111を備え、このコア基板111のコア主面112上には、主面側第1絶縁層121が積層され、その上には、主面側第2絶縁層124が積層され、さらにその上には、主面側第3絶縁層(主面側ソルダーレジスト層)127が積層されており、(【0022】)
コア基板111と主面側第1絶縁層121との層間には、主面側第1導体層161が形成されており、この主面側第1導体層161は、電源プレーン層であり、主面側第1絶縁層121と主面側第2絶縁層124との層間には、主面側第2導体層163が形成されており、この主面側第2導体層163は、配線等を有する所定パターンの配線層であり、主面側第2絶縁層124と主面側第3絶縁層127との層間には、主面側第3導体層165が形成されており、この主面側第3導体層165は、配線等を一部に有する所定パターンの導体層であり、(【0031】)
主面側第1絶縁層121には、フィルドビア導体123がそれぞれ形成されており、各々のフィルドビア導体123は、フォトリソグラフィ法によるビアホール122内に形成された略円錐台状の円錐台部123Pと、その上に形成された円盤状の円盤部123Qとを有し、さらに、円盤部123Qの中央上には、凸状に膨らんだ膨出部123Rを有し、(【0025】、【0042】)
主面側第2絶縁層124にも、フィルドビア導体126がそれぞれ形成されており、このフィルドビア導体126も、フォトリソグラフィ法によるビアホール125内に形成された略円錐台状の円錐台部126Pと、その上に形成された円盤状の円盤部126Qと、その中央上に凸状に膨らんだ膨出部126Rとを有し、(【0026】、【0046】)
フィルドビア導体123とフィルドビア導体126は、積み重なっており、(図1)
フィルドビア導体126の円錐台部126Pの下面が、フィルドビア導体123の円盤部123Qの膨出部123Rの表面に重なっている(図1)
配線基板101。
4 甲4
(1)甲4の記載事項
甲4には次の記載がある。
「【0020】
本実施形態の配線板100は、プリント配線板である。配線板100は、図1に示すように、第1基板10と、第2基板20と、第3基板30と、絶縁層40a、50aと、配線層41、51と、フィルド導体42、52(第4導体)と、を備える。第1基板10、第2基板20、及び第3基板30は、コア部に相当する。コア部よりも上層の絶縁層40a及び50a等は、ビルドアップ部に相当する。」
「【0025】
第3基板30は、第3絶縁層30aと、配線層31、32と、第3フィルド導体33(第3導体)と、を有する。第3絶縁層30aには、第3絶縁層30aを貫通する第3孔33aが形成されている。第3フィルド導体33は、第3孔33aにめっきが充填されて構成される。第3フィルド導体33の第1面側にはランド331が接続され、第3フィルド導体33の第2面側にはランド332が接続される。ランド331は配線層31に含まれ、ランド332は配線層32に含まれる。」
「【0032】
第1絶縁層10aの第1面側には絶縁層40aが積層され、第3絶縁層30aの第2面側には絶縁層50aが積層される。絶縁層40a、50aは、層間絶縁層に相当する。絶縁層40aには、絶縁層40aを貫通する孔42aが形成されている。また、絶縁層50aには、絶縁層50aを貫通する孔52aが形成されている。絶縁層40aはフィルド導体42を有し、絶縁層50aは、フィルド導体52を有する。フィルド導体42は、孔42aにめっきが充填されて構成され、フィルド導体52は、孔52aにめっきが充填されて構成される。絶縁層40aの第1面に配線層41が形成され、絶縁層50aの第2面に配線層51が形成される。
【0033】
配線層41及び51は、例えば銅箔及び銅のめっきからなる。また、絶縁層40a及び50aの材料としては、例えばガラス繊維又はアラミド繊維等の基材に、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、イミド樹脂(ポリイミド)、フェノール樹脂、又はアリル化フェニレンエーテル樹脂(A-PPE樹脂)等の樹脂を含浸させたものを用いることができる。
【0034】
フィルド導体42及び52は、例えば銅のめっきからなる。フィルド導体42の形状は、例えば第2面側から第1面側に向かって広がるようにテーパしたテーパ円柱(円錐台)である。フィルド導体52の形状は、例えば第1面側から第2面側に向かって広がるようにテーパしたテーパ円柱(円錐台)である。
【0035】
フィルド導体42、第1フィルド導体13、第2フィルド導体21、第3フィルド導体33、及びフィルド導体52は、軸L1上及び軸L2上を第1面側から第2面側に向かって順に積層される。隣接するフィルド導体同士は密着(接触)し、互いに導通する。軸L1上にはフィルドスタックS1が形成され、軸L2上にはフィルドスタックS2が形成される。フィルドスタックS1及びS2の各々は、全層のフィルド導体が同軸上に配置された構造、いわゆるフルスタック構造になっている。このため、配線スペースの確保が容易になり、配線パターンの設計自由度が高くなる。また、X方向又はY方向の配線を省略できるため、層間接続における配線長の短縮を図ることができる。なお、フルスタック構造は必須の構造ではない(後述の図17参照)。」
「【0048】
めっきによりフィルド導体を形成する場合、フィルド導体の表面に窪みが生じ易い。そこで、本実施形態では、そうした窪みが形成された場合について説明する。すなわち、図3に示すように、第1フィルド導体13の第1面側端面(ランド131の表面)の中央部には窪み131bが形成され、第1フィルド導体13の第2面側端面(ランド132の表面)の中央部には窪み132bが形成される。第3フィルド導体33の第1面側端面(ランド331の表面)の中央部には窪み331bが形成され、第3フィルド導体33の第2面側端面(ランド332の表面)の中央部には窪み332bが形成される。こうした窪み132b等は、ボイド発生の原因となり易い。しかしながら、配線板100のコア部における第2フィルド導体21は、流動性の高い導電性ペーストからなる。そして、第2フィルド導体21の導電性ペーストが、窪み132b及び331bに入り込んでいる。このため、導電性ペーストで窪み132b及び331bが平坦化され、ボイドの発生が抑制される。」
「【0058】
続けて、図8Bに示すように、レーザにより、両面銅張積層板1000に孔1003を形成する。孔1003は、両面銅張積層板1000を貫通する。その後、必要に応じて、デスミアやソフトエッチをする。
【0059】
続けて、図8Cに示すように、銅のパネルめっき(スルーホールめっき及び全面めっき)により、孔1003にめっき1004を充填する。図示は省略するが、前述の窪み131b、132b、331b、332bが形成される場合には、このタイミングで、めっき1004の表面(特に孔1003の中央部)に形成される。第1基板10及び第3基板30のいずれを製造する場合でも、ここまでの製造工程は同じである。ここで、絶縁層1000aは、第1絶縁層10a又は第3絶縁層30aに相当する。孔1003に充填されためっき1004は、第1フィルド導体13又は第3フィルド導体33に相当する。」
「【0065】
図12Aに示すように、例えばレーザにより、絶縁層40aに孔42aを形成し、絶縁層50aに孔52aを形成する。その後、必要に応じて、デスミアやソフトエッチをする。
【0066】
続けて、図12Bに示すように、例えば銅のパネルめっき(例えば化学銅めっき及び電気銅めっき)により、孔42aにめっき3003を充填し、孔52aにめっき3004を充填する。これにより、フィルド導体42及び52が形成される。フィルド導体42及び52は、第1フィルド導体13、第2フィルド導体21、及び第3フィルド導体33と同軸(軸L1及び軸L2)上に配置される。」
「【0081】
フィルド導体の縦断面の形状も任意である。例えば図21に示すように、第1フィルド導体13及び第3フィルド導体33の形状をテーパ円柱(円錐台)にしてもよい。また、第2フィルド導体21の形状を円柱にしてもよい。さらに、図22に示すように、第1フィルド導体13及び第3フィルド導体33の形状を鼓形にしてもよい。また、第2フィルド導体21の形状を鼓形にしてもよい。孔の形状を鼓形にすると、開口部の径が孔の中間部の径よりも大きくなるため、めっきのフィルド性が向上する。その結果、表面の平坦性が高まる。」
「【図1】
[図:0001432075000011.jpg]
」
「【図3】
[図:0001432075000012.jpg]
」
「【図8B】
[図:0001432075000013.jpg]
」
「【図8C】
[図:0001432075000014.jpg]
」
「【図12A】
[図:0001432075000015.jpg]
」
「【図12B】
[図:0001432075000016.jpg]
」
「【図21】
[図:0001432075000017.jpg]
」
(2)甲4発明
前記(1)の【0025】には「第3フィルド導体33は、第3孔33aにめっきが充填されて構成される」とあり、【0059】には「孔1003に充填されためっき1004は、第1フィルド導体13又は第3フィルド導体33に相当する。」とあるから、「第3孔33a」は「孔1003」と同じものであり、「レーザにより」「形成」(【0058】)されると認められる。
前記(1)の下線部及びフィルド導体の縦断面の形状の第1の別例を示す図21に着目すると、甲4には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲4発明]
配線板100であって、(【0020】)
第1基板10と、第2基板20と、第3基板30と、絶縁層40a、50aと、配線層41、51と、フィルド導体42、52(第4導体)と、を備え、(【0020】)
第3基板30は、第3絶縁層30aと、配線層31、32と、第3フィルド導体33(第3導体)と、を有し、第3絶縁層30aには、第3絶縁層30aを貫通する第3孔33aがレーザにより形成されており、第3フィルド導体33は、第3孔33aにめっきが充填されて構成され、(【0025】、【0058】)
第3フィルド導体33の形状は、第1面側から第2面側に向かって広がるテーパ円柱(円錐台)であり、(【0025】、【0035】、【0081】、図21)
第3絶縁層30aの第2面側には絶縁層50aが積層され、絶縁層50aには、絶縁層50aを貫通する孔52aがレーザにより形成されており、絶縁層50aは、フィルド導体52を有し、フィルド導体52は、孔52aにめっきが充填されて構成され、(【0032】、【0065】)
フィルド導体52の形状は、第1面側から第2面側に向かって広がるようにテーパしたテーパ円柱(円錐台)であり、(【0034】)
第3フィルド導体33、及びフィルド導体52は、軸L上を第1面側から第2面側に向かって順に積層され、隣接するフィルド導体同士は密着(接触)し、互いに導通し、軸L上にはフィルドスタックSが形成され、(【0035】)
第3フィルド導体33の第2面側端面の中央部には窪み332bが形成され、(【0048】)
フィルド導体52の第1面側端面の中心は、第3フィルド導体33の第2面側端面の中心に対してずれており、(図21)
フィルド導体52の第2面側端面の面積は、第3フィルド導体33の第2面側端面の面積より大きい(図21)
配線板100。
5 甲5
(1)甲5の記載事項
甲5には次の記載がある。
「【0009】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係るプリント配線板が図6の断面図を参照して説明される。
図6はプリント配線板(パッケージ基板)10を示す。」
「【0023】
プリント配線板10の製造方法が図1~図6を参照して説明される。(以下、略)」
「【0027】
(4)次に、CO2ガスレーザにて層間樹脂絶縁層50A,50Bにそれぞれビア導体用の開口51A,51Bが形成される(図1(D))。
【0028】
(5)層間樹脂絶縁層50A,50Bの表面とビア導体用の開口51A,51Bの内壁に無電解めっき膜52,52が形成される(図1(E))。
【0029】
(6)無電解めっき膜52上にめっきレジスト54が設けられる(図2(A))。
【0030】
(7)めっきレジスト54から露出する無電解めっき膜52上に、電解めっき膜56が形成される(図2(B))。
【0031】
(8)めっきレジスト54が除去される。電解めっき膜間の無電解めっき膜がエッチングで除去されることで、複数の導体回路を有する導体層58A,58B及びビア導体60A,60Bが形成される(図2(C))。上側のビルドアップ層と下側のビルドアップ層が完成する。層間樹脂絶縁層50Aが最上の層間樹脂絶縁層であり、導体層58Aが最上の導体層である。層間樹脂絶縁層50Bが最下の層間樹脂絶縁層であり、導体層58Bが最下の導体層である。」
「【0046】
[第4実施形態]
第1実施形態から第3実施形態のプリント配線板のビルドアップ層は1層である。それに対し、図15,図16に示されるように第4実施形態のプリント配線板のビルドアップ層は2層である。第4実施形態のBGAパッドやBGAバンプは第1実施形態から第3実施形態のプリント配線板と同様である。
【0047】
上側のビルドアップ層はコア基板30の第1面Fと第1導体層34A上に形成されている上側の層間樹脂絶縁層150Aと上側の層間樹脂絶縁層150A上の上側の導体層158Aと上側の層間樹脂絶縁層150Aを貫通し上側の導体層とコア基板の第1導体層やスルーホール導体とを接続する上側のビア導体160Aと上側の導体層と上側の層間樹脂絶縁層150A上に形成されている最上の層間樹脂絶縁層50Aと最上の層間樹脂絶縁層50A上の最上の導体層58Aと最上の層間樹脂絶縁層50Aを貫通し最上の導体層と上側の導体層や上側のビア導体とを接続する最上のビア導体60Aを有する。
【0048】
下側のビルドアップ層はコア基板30の第2面Sと第2導体層34B上に形成されている下層の層間樹脂絶縁層150Bと下側の層間樹脂絶縁層150B上の下側の導体層158Bと下側の層間樹脂絶縁層150Bを貫通し下側の導体層とコア基板の第2導体層やスルーホール導体とを接続する下側のビア導体160Bと下側の導体層と下側の層間樹脂絶縁層150B上に形成されている最下の層間樹脂絶縁層50Bと最下の層間樹脂絶縁層50B上の最下の導体層58Bと最下の層間樹脂絶縁層50Bを貫通し最下の導体層と下側の導体層や下側のビア導体とを接続する最下のビア導体60Bを有する。」
「【図1】
[図:0001432075000018.jpg]
」
「【図2】
[図:0001432075000019.jpg]
」
「【図6】
[図:0001432075000020.jpg]
」
「【図15】
[図:0001432075000021.jpg]
」
「【図16】
[図:0001432075000022.jpg]
」
(当審注:図16中の符号「50」(「50A」及び「50B」。以下同じ。)、「58」、「60」、「150」、「158」及び「160」は、正しくは、図15中の符号と同様「150」、「158」、「160」、「50」、「58」及び「60」であると認める。)
(2)甲5発明
第4実施形態(【0046】~【0048】)は、「プリント配線板のビルドアップ層」を「2層」(【0046】)にしたものであるところ、「導体層158B」、「ビア導体160B」、「導体層58B」及び「ビア導体60B」は、「プリント配線板のビルドアップ層」が「1層」の第1実施形態における「導体層」「58B」、「ビア導体」「60B」と同様の方法(【0027】~【0031】)により形成されるものと解される。
図15及び16から、「ビア導体160B」及び「ビア導体60B」は、「コア基板30」に向かって細くなる形状であることが見て取れる。以下では、「ビア導体160B」及び「ビア導体60B」それぞれの細くなっている側の端面を「先端面」といい、該先端面に対向する端面、すなわち「導体層158B」及び「導体層58B」それぞれの表面のうち「ビア導体用の開口」(【0027】)の真上の範囲を「基端面」という。
図15及び16から、「ビア導体60B」の先端面の中心は、「ビア導体160B」の基端面の中心に対してずれていることが見て取れる。
以上を踏まえ、前記(1)の下線部に着目すると、甲5には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲5発明]
プリント配線板であって、(【0046】)
下側のビルドアップ層は、コア基板30の第2面Sと第2導体層34B上に形成されている下層の層間樹脂絶縁層150Bと、下側の層間樹脂絶縁層150B上の下側の導体層158Bと、下側の層間樹脂絶縁層150Bを貫通し下側の導体層とコア基板の第2導体層やスルーホール導体とを接続する下側のビア導体160Bと、下側の導体層と下側の層間樹脂絶縁層150B上に形成されている最下の層間樹脂絶縁層50Bと、最下の層間樹脂絶縁層50B上の最下の導体層58Bと、最下の層間樹脂絶縁層50Bを貫通し最下の導体層と下側の導体層や下側のビア導体とを接続する最下のビア導体60Bを有し、(【0048】)
複数の導体回路を有する導体層158B、58B及びビア導体160B、60Bは、CO2ガスレーザにて層間樹脂絶縁層150B、50Bにそれぞれビア導体用の開口が形成され、層間樹脂絶縁層150B、50Bの表面とビア導体用の開口の内壁に無電解めっき膜が形成され、無電解めっき膜上に、電解めっき膜が形成されることで形成され、(【0027】、【0028】、【0031】、【0048】)
ビア導体160B、60Bは、基端面から先端面に向かって細くなる形状であり、(図15、16)
ビア導体60Bの先端面の中心は、ビア導体160Bの基端面の中心に対してずれている(図15、16)
プリント配線板。
6 甲6
甲6には次の記載がある。
「【0092】
図7は、本発明の好ましい一実施形態によるペーストバンプを用いた印刷回路基板の全層IVH構造を示す写真であり、図8は、本発明の好ましい他の実施形態によるペーストバンプを用いた印刷回路基板の全層IVH構造を示す写真であり、図9は本発明の好ましい一実施形態によるペーストバンプを用いた印刷回路基板のディンプルカバレージ(dimple coverage)を示す写真である。図7ないし図9を参照すると、メッキ層18、ペーストバンプ32が示されている。」
「【図7】
[図:0001432075000023.jpg]
」
7 甲7
甲7には次の記載がある。
「【0010】
すなわち、図3A~3Bに拡大図が示されるように、ビア導体7(くびれ付きビア導体7aとくびれの無いビア導体7bの両方を含む)の上の導体層11、12の上面(コア層10と反対側の表面)にはリセス(第1リセス416、又は第2リセス316)が形成される。この第1又は第2のリセス416、316が形成される理由は後述されるが、第1リセス416及び第2リセス316で、その形状が異なっている。第1リセスは図2Aに示される第1積層構造を有する第1導体層11、すなわち第1又は第2の外側導体層41、42に多く、第2リセス316は図2Bに示される第2積層構造を有する第2導体層12、すなわち内層導体層50a、50bなどに多い。なお、図9にくびれ付きビア導体7aとくびれの無いビア導体7bの断面写真が示されている。図9から明らかなように、ビア導体と一体に形成される導体層が厚い場合にくびれが形成されやすく、導体層が薄い場合には、くびれが形成され難い。」
「【図9】
[図:0001432075000024.jpg]
」
第6 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由1(明確性)について
本件発明は、「基端面」について、「前記ビアホールの真上の範囲に配される基端面」(請求項2、4)、「前記第1の貫通孔の真上の範囲に配される基端面」及び「前記第2の貫通孔の真上の範囲に配される基端面」(請求項7)と特定している。そのため、本件発明における「基端面」の範囲は明確であり、その結果、「基端面の中心」(請求項2、4、5、7)及び「基端面のうち中心からずれた位置」(請求項7)の「中心」も、また明確である。
よって、本件発明は、不明確ではないから、取消理由1は理由がない。
2 取消理由2(甲1に基づく新規性、進歩性)について
(1)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
(ア)「導体層同士の間に配される単一層の絶縁層を貫通し、先細り形状をなして内側面がレーザー加工面になっているビアホールに導体が充填されて形成され、先端面と、前記ビアホールの真上の範囲に配される基端面とを備える」「ビア」について
甲1発明の「Cu配線」は、本件発明2の「導体層」に相当する。
甲1発明の「第1誘電体と第2誘電体の二重層」及びそこに「スピンコート」される「感光性有機誘電体」は、いずれも絶縁性を有すると解されるから、本件発明2の「絶縁層」に相当する。これら3層の「誘電体」(以下「甲1誘電体層」という。)は、「Cu配線」を「覆」うとともに、その上に「Cu配線」が「作製」されており、該「Cu配線」と「Cu配線」の間に存在するものであるから、本件発明2の「絶縁層」と甲1誘電体層は、「導体層同士の間に配される」点で一致する。他方、甲1誘電体層は、3層の誘電体からなるから「単一層」ではない。
甲1発明では、「(c)」の「有機誘電体」への「ビア開口」の「形成」、及び「(d)」の「二重層」の「エッチング」により、甲1誘電体層にビアホール(図2参照。以下「甲1ビアホール」という。)が形成されていると解されるから、甲1ビアホールは、本件発明2の「ビアホール」に相当する。甲1ビアホールの形状は、甲1ビアホールに対して「SAPにより作製したCu配線」の「Cu(L3)配線」及び「Cu(L4)配線」が、いずれも一方の「端面に向かって細くなって」いる形状をしていることからも明らかなように、「ビア開口」から端面に向かって細くなっているといえるから、本件発明2の「ビアホール」と甲1ビアホールは、「先細り形状をなして」いる点で一致する。他方、甲1ビアホールは、「有機誘電体」を「フォトリソグラフィー」によりエッチングし、「二重層」を「プラズマ反応性イオンエッチング」で「エッチング」して形成したものであるため、その「内側面がレーザー加工面」であるとはいえない。
甲1発明の「Cu配線」は、前記のとおり甲1ビアホールに「SAPにより作製した」ものであり、甲1ビアホールに導体である「Cu」が充填されて形成されたものと解されるから、本件発明2の「ビアホールに導体が充電されて形成され」た「ビア」に相当する。また、「Cu配線」のうち、細くなっている側の端面は、本件発明2の「ビア」の「先端面」に相当し、もう一方の、甲1ビアホールの「ビア開口」の真上の範囲の端面は、本件発明2の「ビア」の「前記ビアホールの真上の範囲に配される基端面」に相当するから、本件発明2の「ビア」と甲1発明の「Cu配線」は、「先端面と、前記ビアホールの真上の範囲に配される基端面とを備える」点で一致する。また、甲1ビアホールは、エッチングによって、甲1誘電体層の「有機誘電体」と「第1誘電体と第2誘電体の二重層」を貫通しており、「Cu配線」も、当然甲1誘電体層を貫通するから、本件発明2の「ビア」と甲1発明の「Cu配線」は、「絶縁層を貫通」する点で一致する。
以上によれば、本件発明2と甲1発明とは、「ビア」が「導体層同士の間に配される絶縁層を貫通し、先細り形状なすビアホールに導体が充填されて形成され、先端面と、前記ビアホールの真上の範囲に配される基端面とを備える」ものである点で一致する。他方、甲1発明は、ビアが貫通する絶縁層が「単一層」ではなく、ビアホールが「レーザー加工面」になっていない点で、本件発明2と相違する。
(イ)「複数のビアが積み重なってなるスタックビアを有する多層配線基板」について
甲1発明の「多層スタックビア」は、本件発明2の「スタックビア」に相当する。
甲1発明の「再分配層(RDL)」は、「基板の反りを防止し、多層スタックビアを埋め込んだ片面9層のRDLを構築することが可能となる」(前記第5の1(1)ウ)との記載からも明らかなように基板の構造であり、「9レベル」の「Cu配線」を有するものであるから、本件発明2の「多層配線基板」に相当する。
よって、本件発明2と甲1発明は、「複数のビアが積み重なってなるスタックビアを有する多層配線基板」である点で一致する。
(ウ)「前記スタックビアに含まれる第1と第2のビアのうち前記第2のビアの先端面が重なる前記第1のビアの基端面が凹状又は凸状に湾曲し」について
甲1発明の「Cu(L4)配線」は、「L4側端面からL3側端面に向かって細くなって」いるから、「Cu(L4)配線のL3側端面」は、「Cu(L4)配線」の先端面ということができ、該「Cu(L4)配線のL3側端面」は「Cu(L3)配線のL3側端面に重なって」いることを踏まえると、「Cu(L4)配線」及び「Cu(L4)配線のL3側端面」は、それぞれ本件発明2の「第2のビア」及び「第2のビアの先端面」に相当する。また、前記「Cu(L4)配線のL3側端面」が「重なって」いる「Cu(L3)配線のL3側端面」は、「Cu(L3)配線」が「L2側端面に向かって細くな」る基端側といえることを踏まえれば、「Cu(L3)配線」及び「Cu(L3)配線のL3側端面」(甲1ビアホールの「ビア開口」の真上の範囲の端面)は、それぞれ本件発明2の「第1のビア」及び「第1のビアの基端面」に相当する。そして、「Cu(L3)配線のL3側端面」は「凸状に膨らんで」いるから、本件発明2と甲1発明とは、「前記スタックビアに含まれる第1と第2のビアのうち前記第2のビアの先端面が重なる前記第1のビアの基端面が凹状又は凸状に湾曲し」ている点で一致する。
(エ)「前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれている」について
甲1発明は、「Cu(L4)配線のL3側端面の中心は、Cu(L3)配線のL3端面の中心から右側にずれて」いるから、本件発明2と甲1発明は、「前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれている」点で一致する。
(オ)「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」について
前記(エ)のとおり、甲1発明の「Cu(L3)配線」及び「Cu(L3)配線のL3側端面」は、それぞれ本件発明2の「第1のビア」及び「第1のビアの基端面」に相当し、甲1発明の「Cu(L4)配線」及び「Cu(L4)配線のL3側端面」は、それぞれ本件発明2の「第2のビア」及び「第2のビアの先端面」に相当する。また、甲1発明の「Cu(L3)配線」の「L2側端面」は、本件発明2の「第1のビアの先端面」に、甲1発明の「Cu(L4)配線」の「L4側端面」(甲1ビアホールの「ビア開口」の真上の範囲の端面)は、本件発明2の「第2ビア」の「基端面」にそれぞれ相当する。
他方、甲1発明は、本件発明2の「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」に相当する構成は特定されていない。それ以前に、「ビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸」に関する特定すらない。また、甲1の図3(第5の1(1)オ)等から、「Cu(L3)配線」の「L2側端面」の中心と「L3側端面」の中心とを通る線に対して、「Cu(L4)配線」の「L3側端面」の中心と「L4側端面」の中心とを通る線が傾斜していることが、外形的に明らかでもない。
したがって、甲1発明は、本件発明2の上記事項に相当する構成を有しない。
(カ)一致点、相違点
前記(ア)~(オ)によれば、本件発明2と甲1発明とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「 導体層同士の間に配される絶縁層を貫通し、先細り形状をなしているビアホールに導体が充填されて形成され、先端面と、前記ビアホールの真上の範囲に配される基端面とを備える複数のビアが積み重なってなるスタックビアを有する多層配線基板であって、
前記スタックビアに含まれる第1と第2のビアのうち前記第2のビアの先端面が重なる前記第1のビアの基端面が凹状又は凸状に湾曲し、前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれている。」
[相違点]
(相違点1)ビアが貫通する「絶縁層」が、本件発明2は「単一層」であるのに対し、甲1発明は3つの誘電体からなり、「単一層」ではない点。
(相違点2)ビアホールの「内側面」が、本件発明2は「レーザー加工面」になっているのに対し、甲1発明はエッチングで加工されており、「レーザー加工面」ではない点。
(相違点3)本件発明2は、「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有しない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
相違点3は、本件発明2である多層配線基板の構成に係るものであって、また、甲1発明が、相違点3に係る構成を実質的に有していると認める証拠もないから、相違点3は実質的な相違点である。
次に、相違点3に係る構成の容易想到性に関し、相違点3に係る構成は、甲1~7のいずれの証拠にも記載も示唆もされていない。これについて、甲6及び甲7は、技術常識を示すための証拠であるが、甲6の図7(前記第5の6)、甲7の図9(前記第5の7)は、相違点3に係る構成を外形的に明示しているとはいえないし、甲6及び甲7は「ビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸」についての記載もない。そのため、甲1発明に甲1~7の記載事項を如何に組み合わせても、相違点3に係る構成には至らない。そのほか、相違点3に係る構成が技術常識であると認める証拠はない。よって、相違点3に係る構成は、当業者といえども甲1発明及び甲1~7の記載事項に基づいて容易に想到し得たものではない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明4について
本件発明4は、本件発明2の「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」(相違点3)と同じ発明特定事項を有しないが、かわりに「前記第2のビアは、前記第1のビアの形状に対し、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に拡径されて、非軸対称形状になっている」との発明特定事項を有するものである。これに対し、甲1発明は、この発明特定事項に相当する構成は特定されておらず、また、甲1の図から見て取ることもできない。よって、本件発明4と甲1発明とは、甲1発明が上記発明特定事項に相当する構成を有しない点で少なくとも相違する。
相違点について検討するに、上記発明特定事項は、本件発明4の「多層配線基板」の構成を具体的に特定するものであるから、この相違点は、実質的な相違点である。また、上記発明特定事項に相当する構成は、甲1~7のいずれにも記載も示唆もなく、また、該構成が技術常識であるとも認められないから、相違点に係る該構成は、甲1発明及び甲1~7に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものでもない。
よって、本件発明4は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明5について
本件発明5は、本件発明2又は4と同一の構成を有し、さらに限定を付したものであるから、本件発明5に係る発明も、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明7について
本件発明7は、「多層配線基板の製造方法」であって、本件発明2の「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」又は本件発明4の「前記第2のビアは、前記第1のビアの形状に対し、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に拡径されて、非軸対称形状になっている」と同じ発明特定事項を有しないが、かわりに「前記第1のビアの基端面に照射されるレーザー光が、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に反射して前記第2の貫通孔が非軸対称形状に形成されること」との発明特定事項を有する。この発明特定事項は、本件特許明細書【0028】等によれば、「第2の貫通孔」の中心軸が「第1のビア」の「中心軸」に対して傾斜することを暗に特定するものと解される。これに対し、甲1発明は、上記発明特定事項に相当する構成は特定されていない。さらに、甲1発明は、前記(1)ア(オ)のとおり、「Cu(L4)配線」(第2のビア)の中心軸が「Cu(L3)配線」(第1のビア)の中心軸に対して傾斜するものではないから、上記発明特定事項に相当する構成を示唆するものでもない。よって、本件発明7と甲1発明とは、甲1発明が上記発明特定事項に相当する構成を有しない点で少なくとも相違する。
相違点について、上記発明特定事項に相当する構成は、甲1~7のいずれにも記載も示唆もなく、また、該構成が技術常識であるとも認められないから、相違点に係る当該構成は、甲1発明及び甲1~甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものでもない。
よって、本件発明7は、甲1に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)取消理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由2は、理由がない。
3 取消理由3(甲2に基づく新規性、進歩性)について
(1)本件発明2について
ア 事案に鑑み、「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」との発明特定事項について、以下、検討する。
イ 甲2発明の「ビア46」及び「ビア47」は、本件発明2の「第1のビア」及び「第2のビア」にそれぞれ相当し、「ビア46,47の底部B2」の下面は、本件発明2の「先端面」に相当し、「配線層20G」及び「配線層20H」の「上面」(「貫通孔VH6,VH7」の真上の範囲)は、本件発明2の「基端面」に相当する。
他方、甲2発明は、本件発明2の「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」に相当する構成は特定されておらず、「ビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸」についての特定もない。また、甲2の図面からは、「ビア46」の「底部B2」の下面の中心と、「配線層20G」の「上面」の中心とを通る線に対して、「ビア47」のそれぞれの面の中心を通る線が傾斜していることが、外形的に明らかでもない。
よって、甲2発明は、本件発明2の前記アの発明特定事項に相当する構成を有しておらず、少なくともこの点で本件発明2と甲2発明とは相違する。
ウ 前記イの相違点は実質的な相違点であるから、本件発明2は、甲2発明と同一ではない。
また、該相違点に係る構成、すなわち、本件発明2の「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」との構成は、前記2(1)イのとおり、甲1~7のいずれにも記載も示唆もされておらず、技術常識でもない。よって、本件発明2は、甲2発明及び甲1~7の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 以上のとおり、本件発明2は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明4、5について
本件発明4の「前記第2のビアは、前記第1のビアの形状に対し、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に拡径されて、非軸対称形状になっている」との発明特定事項(前記2(2))について、甲2発明は、上記発明特定事項に相当する構成は特定されておらず、また、甲2の図面から見て取ることもできない。よって、本件発明4と甲2発明とは、甲2発明が上記発明特定事項に相当する構成を有しない点で少なくとも相違する。そして、前記2(2)のとおり、この相違点は、実質的な相違点であり、また、上記発明特定事項に相当する構成は、甲1~7のいずれにも記載も示唆もなく、該構成が技術常識であるとも認められないから、本件発明4は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
本件発明5は、前記2(3)のとおり、本件発明2又は4と同一の構成を備えているから、本件発明5も、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)取消理由3についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由3は、理由がない。
4 取消理由4(甲3に基づく新規性、進歩性)について
(1)本件発明2について
ア 事案に鑑み、「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」との発明特定事項について、以下、検討する。
イ 甲3発明の「フィルドビア導体123」及び「フィルドビア導体126」は、本件発明2の「第1のビア」及び「第2のビア」にそれぞれ相当し、「円錐台部123P」及び「円錐台部126P」それぞれの下面は、本件発明2の「先端面」に相当し、「円盤部123Q」の上面(「ビアホール122」の真上の範囲)、「円盤部126Q」の上面(「ビアホール125」の真上の範囲)は、それぞれ本件発明2の「基端面」に相当する。
他方、甲3発明は、本件発明2の「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」に相当する構成は特定されておらず、「ビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸」についての特定もない。また、甲3の図面からは、「フィルドビア導体123」の「円錐台部123P」の下面の中心と「円盤部123Q」の上面の中心とを通る線に対して、「フィルドビア導体126」のそれぞれの面の中心を通る線が傾斜していることが、外形的に明らかでもない。
よって、甲3発明は、本件発明2の前記アの発明特定事項に相当する構成を有しておらず、少なくともこの点において、本件発明2と甲3発明とは相違する。
ウ 前記イの相違点は、実質的な相違点であるから、本件発明2は、甲3発明と同一ではない。
また、該相違点に係る構成、すなわち、本件発明2の「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」との構成は、前記2(1)イのとおり、甲1~7のいずれにも記載も示唆もされておらず、技術常識でもない。よって、本件発明2は、甲3発明及び甲1~7の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 以上のとおり、本件発明2は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明4、5、7について
本件発明4の「前記第2のビアは、前記第1のビアの形状に対し、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に拡径されて、非軸対称形状になっている」との発明特定事項(前記2(2))について、甲3発明は、上記発明特定事項に相当する構成は特定されておらず、また、甲3の図面から見て取ることもできない。よって、本件発明4と甲3発明とは、甲3発明が上記発明特定事項に相当する構成を有しない点で少なくとも相違する。そして、前記2(2)のとおり、この相違点は、実質的な相違点であり、また、上記発明特定事項に相当する構成は、甲1~7のいずれにも記載も示唆もなく、該構成が技術常識であるとも認められないから、本件発明4は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
本件発明5は、前記2(3)のとおり、本件発明2又は4と同一の構成を備えているから、本件発明5も、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
本件発明7の「前記第1のビアの基端面に照射されるレーザー光が、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に反射して前記第2の貫通孔が非軸対称形状に形成されること」との発明特定事項(前記2(4))について、甲3発明は、上記発明特定事項に相当する構成は特定されておらず、また、該構成を示唆するものでもない。そして、上記発明特定事項に相当する構成は、甲1~7のいずれにも記載も示唆もなく、また、該構成が技術常識であるとも認められないから、本件発明7は、甲3に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)取消理由4についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由4は、理由がない。
5 取消理由5(甲4に基づく新規性、進歩性)について
(1)本件発明2について
ア 事案に鑑み、「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」との発明特定事項について、以下、検討する。
イ 甲4発明の「第3フィルド導体33」及び「フィルド導体52」は、本件発明2の「第1のビア」及び「第2のビア」にそれぞれ相当し、「第3フィルド導体33」及び「フィルド導体52」それぞれの「第1面側端面」は、本件発明2の「先端面」に相当し、「第3フィルド導体33」の「第2面側端面」(「第3孔33a」の真上の範囲)及び「フィルド導体52」の「第2面側端面」(「孔52a」の真上の範囲)は、それぞれ本件発明2の「基端面」に相当する。
他方、甲4発明は、本件発明2の「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」に相当する構成は特定されておらず、「ビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸」についての特定もない。また、甲4の図面からは、「第3フィルド導体33」の「第1面側端面」の中心と「第2面側端面」のうち「第3孔33a」の真上の範囲の中心とを通る線に対して、「フィルド導体52」のそれぞれの面の中心を通る線が傾斜していることが、外形的に明らかでもない。
よって、甲4発明は、本件発明2の前記アの発明特定事項に相当する構成を有しておらず、少なくともこの点で本件発明2と甲4発明とは相違する。
ウ 前記イの相違点は、実質的な相違点であるから、本件発明2は、甲4発明と同一ではない。
また、該相違点に係る構成、すなわち、本件発明2の「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」との構成は、前記2(1)イのとおり、甲1~7のいずれにも記載も示唆もされておらず、技術常識でもない。よって、本件発明2は、甲4発明及び甲1~7の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 以上のとおり、本件発明2は、甲4に記載された発明ではなく、また、甲4に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明4、5について
本件発明4の「前記第2のビアは、前記第1のビアの形状に対し、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に拡径されて、非軸対称形状になっている」との発明特定事項(前記2(2))について、甲4発明は、上記発明特定事項に相当する構成は特定されておらず、また、甲4の図面から見て取ることもできない。よって、本件発明4と甲4発明とは、甲4発明が上記発明特定事項に相当する構成を有しない点で少なくとも相違する。そして、前記2(2)のとおり、この相違点は、実質的な相違点であり、また、上記発明特定事項に相当する構成は、甲1~7のいずれにも記載も示唆もなく、該構成が技術常識であるとも認められないから、本件発明4は、甲4に記載された発明ではなく、また、甲4に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
本件発明5は、前記2(3)のとおり、本件発明2又は4と同一の構成を備えているから、本件発明5も、甲4に記載された発明ではなく、また、甲4に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)取消理由5についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由5は、理由がない。
6 取消理由通知書に記載した取消理由についてのまとめ
前記1~5のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由は、いずれも理由がないから、当該取消理由で本件特許を取り消すことはできない。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知書に記載した取消理由1は、特許異議申立書に記載された申立理由6-2の一部に対応し、同取消理由2~5は、同申立理由1~4にそれぞれ対応する。
以下では、取消理由通知において採用しなかった申立理由5、申立理由6-1、申立理由6-2(残りの部分)及び申立理由6-3についての判断を示す。
1 申立理由5(甲5に基づく新規性、進歩性)について
(1)本件発明2について
ア 事案に鑑み、「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」との発明特定事項について、以下、検討する。
イ 甲5発明の「ビア導体160B」及び「ビア導体60B」は、本件発明2の「第1のビア」及び「第2のビア」にそれぞれ相当し、「ビア導体160B」及び「ビア導体60B」それぞれの「先端面」は、本件発明2の「先端面」に相当し、「ビア導体160B」及び「ビア導体60B」それぞれの「基端面」は、本件発明2の「基端面」に相当する。
他方、甲5発明は、本件発明2の「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」に相当する構成は特定されておらず、「ビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸」についての特定もない。また、甲5の図面からは、「ビア導体160B」の「先端面」の中心と「基端面」の中心とを通る線に対して、「ビア導体60B」のそれぞれの面の中心を通る線が傾斜していることが、外形的に明らかでもない。
よって、甲5発明は、本件発明2の前記アの発明特定事項に相当する構成を有しておらず、少なくともこの点で本件発明2と甲5発明とは相違する。
ウ 前記イの相違点は、実質的な相違点であるから、本件発明2は、甲5発明と同一ではない。
また、当該相違点に係る構成、すなわち、本件発明2の「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」との構成は、前記第6の2(1)イのとおり、甲1~7のいずれにも記載も示唆もされておらず、技術常識でもない。
よって、本件発明2は、甲5発明及び甲1~7の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)本件発明4、5について
本件発明4の「前記第2のビアは、前記第1のビアの形状に対し、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に拡径されて、非軸対称形状になっている」との発明特定事項(前記第6の2(2))について、甲5発明は、上記発明特定事項に相当する構成は特定されておらず、また、甲5の図面から見て取ることもできない。よって、本件発明4と甲5発明とは、甲5発明が上記発明特定事項に相当する構成を有しない点で少なくとも相違する。そして、前記第6の2(2)のとおり、この相違点は、実質的な相違点であり、また、上記発明特定事項に相当する構成は、甲1~7のいずれにも記載も示唆もなく、該構成が技術常識であるとも認められないから、本件発明4は、甲5に記載された発明ではなく、また、甲5に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
本件発明5は、前記第6の2(3)のとおり、本件発明2又は4と同一の構成を備えているから、本件発明5も、甲5に記載された発明ではなく、また、甲5に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)申立理由5についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由5は、理由がない。
2 申立理由6-1(サポート要件)について
(1)本件発明が解決しようとする課題及び解決手段
本件特許の発明の詳細の説明の記載によれば、本件発明は、「スタックビアとその周りの絶縁層との間で熱変形による応力が大きくな」ることに起因する「多層配線基板のスタックビアの近傍の劣化」を「抑制する」(【0004】)ことを解決しようとする課題とすると解される。
上記課題に対し、発明の詳細な説明の【0041】等の記載によれば、スタックビアの第2のビアの先端面が重ねられる第1のビアの基端面が湾曲し、第2のビアの先端面の中心が第1のビアの基端面の中心に対してずれたものにするとの手段により、スタックビアの複数のビアの熱変形量を一方向に加算され難くするとの作用効果を奏し、これによって上記課題が解決できることが理解できる。
上記手段に加えて、第1のビアと第2のビアの中心軸同士が互いに傾斜したものにするとの手段は、上記熱変形量をより一方向に加算され難くするとの作用効果を奏し(【0041】)、また、第2のビアを第1のビアの中心軸から離れる側に拡径される形状非軸対称形状にする(【0018】)との手段も、同様に該熱変形量をより一方向に加算され難くするとの作用効果をもたらすと推認されるから、これらの手段も上記課題の解決に資するものと理解できる。
そして、以上のことは、仕組みとして首肯できるものであり、上記作用効果の大小こそ生じ得るものの、上記ずれ、湾曲、傾斜及び拡径の程度、湾曲の形状(凸状か凹状か)、さらにはスタックビアの層数の如何によらず、上記手段は課題を解決し得ると認められる。
(2)検討
本件発明は、課題解決手段である、スタックビアの第2のビアの先端面が重ねられる第1のビアの基端面が湾曲し、第2のビアの先端面の中心が第1のビアの基端面の中心に対してずれたものとする構成又はこれに対応する構成を有する。さらに、本件発明はいずれも、前記第6の2(2)~(4)のとおり、第1のビアの中心軸に対して第2のビアの中心軸が傾斜している構成と第2のビアを第1のビアの中心軸から離れる側に拡径される形状非軸対称形状にする構成のいずれか、又はこれに対応する構成を有する。
よって、本件発明は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
(3)申立人の主張について
申立人は、(ア)「ずれ」及び「凹状又は凸状」の曲率等が、それぞれ極めて小さい場合、又は極めて大きい場合に課題を解決し得ない、(イ)「凹状」の場合に課題を解決し得ない、(ウ)「第1のビア」及び「第2のビア」の2層のみの関係を特定するだけであり、課題を解決し得ない旨主張する(前記第4の1(6)ア)。
しかしながら、前記(1)及び(2)に示したとおりである。なお、本件発明における「ずれ」や「湾曲」等が、スタックビアの本来の機能を果たさなくなるような極めて大きいものを含まないことは当然であり、また、本件発明5の「面積」は、課題解決に直接的に関係するものではない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(4)申立理由6-1についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由6-1は、理由がない。
3 申立理由6-2(明確性要件)について
(1)申立人は、本件発明は、「前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれている」の「ずれ」の程度が不明確であり、従来の製造時に生じるズレとどのように異なるのか区別することができないとして、本件発明は明確でない旨主張する(前記第4の1(6)イ(ア))。
しかしながら、本件発明が、上記「ずれ」の程度に依らず課題が解決できることは、前記2(1)のとおりであり、仮に、従来の製造時にずれが生じるとしても、本件発明の「ずれ」が製造時のずれと区別可能かどうかは、本件発明の「ずれ」の明確性を左右しない。
同様のことは、本件発明の「湾曲」、「傾斜」、「拡径」、「面積」及び「反射」についてもいえる。
(2)申立人は、本件発明の「基端面」が鍔部を含む面なのか含まない面なのかが不明確であり、「基端面の中心」が断面の中心なのか面積の中心なのかも不明確である旨主張する(前記第4の1(6)イ(イ))。
しかしながら、本件発明の「基端面」は、「貫通孔の真上の範囲に配される基端面」と特定されており、申立人がいう上記鍔部を含まないことは明らかであり、その範囲が明確であることは、前記第6の1のとおりである。また、本件発明の「基端面の中心」について、技術常識を踏まえれば、基端面の面積の中心と解するのが妥当であるから、不明確とはいえない。
(3)申立人は、請求項4の「中心軸から離れる側に拡径される形状」の「離れる側」の意味が不明確である旨主張する(前記第4の1(6)イ(ウ))。
本件発明4は、「前記第2のビアは、前記第1のビアの形状に対し、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に拡径されて、非軸対称形状になっている」と特定され、該「拡径」は「第2のビア」の「径」が大きくなることであるから、上記事項における「中心軸から離れる側」とは、「第2のビア」の「径」の方向、すなわち多層配線基板における水平方向において、「第2のビア」の中心軸を基準として「第1のビア」の「中心軸」から離れる側(要するに「第1のビア」の「中心軸」とは反対側)を意味すると解釈される。そして、本件発明4の「前記第2のビアは、前記第1のビアの形状に対し、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に拡径されて」とは、「第2のビア」が、その中心軸を基準とした「径」が「第1のビア」の「中心軸から離れる側」の方が大きくなっている構成を特定したものと解され、これは、「第2のビア」が「非軸対称形状になっている」こととも、本件特許の図3等の記載とも整合する。
よって、本件発明4の「中心軸から離れる側に拡径される」との事項は、不明確であるとはいえない。
(4)申立人は、本件発明の「前記第1のビア」が何を指すのか不明確である旨主張するが(前記第4の1(6)イ(エ))、「第1と第2のビア」のうちの「第1」の「ビア」を指すことは明白である。
(5)以上のとおり、本件発明は、申立人の主張する点で不明確であるといえるものではないから、申立理由6-2は、理由がない。
4 申立理由6-3(実施可能要件)について
(1)申立人は、本件発明の「第1のビアの基端面が凹状又は凸状に湾由し、前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれている」との構成により、なぜ多層配線基板のスタックビアの近傍の劣化を抑制することができるのか、当業者が実施できる程度に説明されていない旨主張する(前記第4の1(6)ウ(ア))。
しかしながら、前記2(1)のとおり、本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明が、上記構成によってスタックビアの複数のビアの熱変形量を一方向に加算され難くするとの作用効果を奏することで、多層配線基板のスタックビアの近傍の劣化を抑制することができることが、当業者が理解できるように記載されており、上記構成の作り方も記載されている(【0021】~【0040】等)。
よって、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明の「第1のビアの基端面が凹状又は凸状に湾由し、前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれている」との構成を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである。
(2)申立人は、発明の詳細な説明には、1つの実施例及び評価もなく、「凹状又は凸状」の曲率、ずれの寸法、レーザーの反射角等の寸法が、当業者が実施できる程度に記載されておらず、従来の、製造時に生じるずれや、凹状又は凸状とどのように異なるのか、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に記載されていない旨主張する。
しかしながら、前記2(1)のとおり、本件発明は、「湾曲」の曲率や「ずれ」の寸法等が特定のものでなければならないものではないし、また、仮に、製造時に生じるずれや、凹状又は凸状が存在するとしたとしても、本件発明の「湾曲」や「ずれ」が、製造時に生じるものと必ず異なる寸法等のものでなければならない理由もない。そして、前記(1)のとおり、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明の「第1のビアの基端面が凹状又は凸状に湾由し、前記第2のビアの先端面の中心が前記第1のビアの基端面の中心に対してずれている」との構成を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである。これは、本件発明の「傾斜」、「拡径」、「面積」及び「反射」についてもいえる。
(3)申立人は、「第1のビアの基端面」の「湾曲」が「凹状」の場合について、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に記載されていない旨主張する。
しかしながら、本件特許の発明の詳細な説明の【0028】及び図7には、凸状に湾曲した基端面の中心から一側方にずれた位置を焦点にしてレーザー光を照射すると、一側方側に反射され易くなる結果、ビアホールの中心軸が傾斜することがされており、これが基端面が凹状に湾曲している場合にも当てはまることは自明である。そのため、発明の詳細な説明の記載に接した当業者であれば、「第1のビアの基端面」の「湾曲」が「凹状」の場合も、「第2のビアの先端面の中心」を「第1のビアの基端面の中心に対してずれ」たものとし、「第2のビア」の「中心軸」を「第1のビア」の「中心軸」に対して「傾斜」したものにできることが理解できるから、上記主張は採用できない。
(4)以上のとおり、本件特許の発明の詳細な説明は、申立人の主張する点で本件発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえないから、申立理由6-3は、理由がない。
第8 申立人の意見書による主張について
1 明確性要件違反について
(1)申立人が意見書において新たに主張する明確性要件違反は、概略次のとおりである。
ア 訂正発明2等の「ビアホールの真上の範囲」は、どの範囲を指すのか不明確である。(意見書16頁)
イ 訂正発明2の「導体層同士の間に配される単一層の絶縁層」は、どの構成を指しているのか不明確である。(意見書17~18頁)
ウ 訂正発明2等の「レーザー加工面」は、明細書に直接的に記載する箇所は見出せず不明確である。(意見書18頁)
エ 訂正発明5の「交互に反対側に傾斜」は、どの方向が反対方向なのかが不明確である。(意見書18頁)
オ 訂正発明7の「中心からずれた位置」は、「ずれた位置」の程度を特定していない結果、発明の課題を解決し得ないものを包含する。(意見書18~19頁)
(2)前記(1)の主張について検討する。
本件発明の「ビアホールの真上の範囲」は、「多層配線基板」に開けられる「ビアホール」の開口端の「真上」の範囲、より詳しくは「多層配線基板」に対する垂線方向で確定される範囲を意味すると解され、これに反するような記載は本件特許明細書等にないから、本件発明の「ビアホールの真上の範囲」は、不明確ではない。
本件発明2の「導体層同士の間に配される単一層の絶縁層」について、「導体層同士」とは、隣接する2つの「導体層」(発明の詳細な説明における「導電層」)のことであると当然に解されるから、上記事項は、隣接する2つの「導体層」の間の「絶縁層」が「単一」の「層」として形成されたものであることを特定したものと明確に把握できる。
本件発明2の「レーザー加工面」は、「レーザー加工」(【0022】)された「面」を意味するものと明確に解される。また、申立人は、レーザー加工を施した面であれば、物の発明として形状的な特徴、例えば傾斜の具体的な角度、加工面の状態などを表すことが可能で実際的であるとも主張するが、その根拠は示されておらず、技術常識ともいえないから、当該主張は採用できない。
本件発明5の「交互に反対側に傾斜」は、「ビア」の「中心軸」についての記載であることを踏まえれば、該「中心軸」が「多層配線基板」を真上から見た平面図上において交互に反対側の方向に傾斜していることを特定したものと解され、これは、【0041】の「複数のビア25の熱変形量を、一方向に加算され難くする」等の記載とも整合するから、不明確とはいえない。
本件発明7の「中心からずれた位置」についての主張は、訂正により生じた理由ではなく、適切な取消理由を構成することが一見して明らかでもなく、実質的に新たな理由を主張するものであるから、採用しない。
以上のとおりであるから、申立人の前記(1)の主張は採用できない。
2 サポート要件違反について
(1)申立人が意見書において新たに主張するサポート要件違反は、概略次のとおりである。
ア 発明の詳細な説明によれば、基端面が、ビアホールと関係しない凹状又は凸状湾曲部、又は凹状又は凸状湾曲部と延伸部分を含む面を意味すると解されるから、訂正発明2等の「ビアホールの真上の範囲」は、発明の詳細な説明に記載したものでない。(意見書19頁)
イ 訂正発明2の「導体層同士の間に配される単一層の絶縁層」は、特許時明細書等にそのような記載はない。(意見書19~20頁)
ウ 訂正発明2等の「レーザー加工面」は、発明の詳細な説明に説明がない。(意見書20頁)
(2)前記(1)の主張について検討する。
本件発明の「ビアホールの真上の範囲」、「レーザー加工面」及び本件発明2の「導体層同士の間に配される単一層の絶縁層」との事項が、発明の詳細な説明に記載されたものであることは、第2の2(2)イのとおりである。
よって、申立人の前記(1)の主張は採用できない。
3 実施可能要件違反について
(1)申立人が意見書において新たに主張する実施可能要件違反は、概略次のとおりである。
訂正発明2は、基端面が「ビアホールの真上」であると特定しているが、この場合、基端面の中心近傍では反射レーザー光は傾斜しないし、湾曲面の曲率が小さいとほとんど傾斜しないが、発明の詳細な説明には、湾曲面の曲率及び照射位置をずらす程度が記載されておらず、その結果、どの程度中心軸が傾斜し又は交互に傾斜し、非軸対称形状になるのか、当業者が実施できる程度に記載されていない。(意見書20頁)
(2)前記(1)の主張について検討する。
発明の詳細な説明の【0028】及び図7には、湾曲した基端面の中心から一側方にずれた位置を焦点にしてレーザー光を照射すると、一側方側に反射され易くなる結果、ビアホールが非軸対称形状に形成され、その中心軸が傾斜する原理が記載されている。そして、申立人も認めるように、レーザー光の反射の傾斜は、レーザー光が照射される位置の基端面の曲率に依存することは明らかであるから、所望の傾斜の中心軸や非軸対称形状となるように、基端面の曲率を調整したりレーザー光を照射する基端面の位置を調整したりすればよいことは、発明の詳細な説明に接した当業者であれば理解でき、「基端面」が「ビアホールの真上の範囲に配される」ものであることによって上記調整に過度の試行錯誤を要するとはいえない。
よって、申立人の前記(1)の主張は採用できない。
4 新規性又は進歩性欠如について
(1)申立人は、意見書22~36頁において、訂正発明2は、甲1~4の各々より新規性を有さず、訂正発明4、5は、甲1、3の各々より新規性を有さず、訂正発明2、4、5は、甲1~4の各々より進歩性を有しない旨主張し、その理由として概略次の点を主張する。
ア 訂正発明2の「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」構成は、甲1、6、7に記載されており、訂正発明4の「前記第2のビアは、前記第1のビアの形状に対し、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に拡径されて、非軸対称形状になっている」構成は、甲1~4に記載されている。
イ 訂正発明2、4の「ビアホール」が「レーザー加工面」であることは、物としての相違点を構成せず、また、レーザー加工面になっているビアホールは、従来周知である。
(2)前記(1)の主張について検討する。
本件発明2の「前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸に対して、前記第2のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸が、傾斜している」構成が、甲1、6、7に記載されているといえないことは、前記第6の2(1)で説示したとおりである。甲1、6、7には、そもそも「ビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸」について記載したものではなく、甲1、6、7に示された必ずしも鮮明とはいえない写真から前記構成が理解できるとするのは、本件発明を知得したためといわざるを得ず、採用できない。
本件発明4の「前記第2のビアは、前記第1のビアの形状に対し、前記第1のビアの先端面の中心と基端面の中心とを通る中心軸から離れる側に拡径されて、非軸対称形状になっている」構成が、甲1~7のいずれにも記載されているといえないことは、前記第6の2~5の各(2)及び前記第7の1(2)において説示したとおりである。申立人は、上記構成は明示されていなくても甲1のように普通に発生するものである旨主張するが、上記構成は甲1に示されておらず、また、上記構成が普通に発生することを示す証拠もない。
したがって、前記(1)イの本件発明2、4の「ビアホール」が「レーザー加工面」である点について検討するまでもなく、本件発明2、4及び5は、甲1~甲4に記載された発明に対して新規性及び進歩性を有するから、申立人の前記(1)の主張は採用できない。なお、本件発明5の甲3による新規性欠如、本件発明4の甲2、甲4による進歩性欠如の主張は、訂正により生じた理由ではなく、適切な取消理由を構成することが一見して明らかでもなく、実質的に新たな理由を主張するものであるから、採用しない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項2、4、5及び7に係る特許を取り消すことはできない。
また、請求項1、3及び6に係る特許は、前記第2のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1、3及び6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700287