特許異議申立
2022-700148
窒化珪素系セラミックス集合基板
- 審判番号
- 2022-700148
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-214110
- 登録番号
- 6930573
- 請求日
- 2022年02月18日
- 審決日
- 2022年06月03日
- 公報発行日
- 2022年07月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日立金属株式会社
- 【権利者代理人】高石 橘馬
- 【権利者代理人】高石 健二
- 【異議申立人】青木 眞理
- 審判長/審判官
- 審判長 清水 稔
- 審判官 畑中 博幸
- 審判官 山本 章裕
- 分類
- P1651.121-Y (H05K) / P1651.536-Y (H05K) / P1651.537-Y (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6930573号発明「窒化珪素系セラミックス集合基板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6930573号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6930573号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成28年3月14日に出願した特願2016-49805号の一部を、令和1年11月27日に新たな特許出願したものであって、令和3年8月16日にその特許権の設定登録がされ、令和3年9月1日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年2月18日に特許異議申立人青木 眞理は、請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てを行った。
第2 本件特許発明
特許第6930573号の請求項1ないし4の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
多数の回路形成部を有する窒化珪素系セラミックス基板部と縁部とを有するとともに、前記縁部の外周部の四隅に面取り部を有する矩形状の窒化珪素系セラミックス集合基板であって、
前記面取り部の壁面がレーザ加工面で構成され、0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRaを有し、
前記面取り部を除いた基板側面が、基板表面から厚さ方向に順にレーザ加工面と破断面とで構成され、
前記基板側面の破断面が前記面取り部の壁面に直接接続し、
前記基板側面の破断面と前記面取り部の壁面とが接続する稜角部分が先鋭形状を有していることを特徴とする窒化珪素系セラミックス集合基板。
【請求項2】
請求項1に記載の窒化珪素系セラミックス集合基板であって、
前記面取り部の壁面の基板厚さ方向中央部での算術平均表面粗さRam、及び基板厚さ方向開口側での算術平均表面粗さRaoが、
Rao>Ram
を満たすことを特徴とする窒化珪素系セラミックス集合基板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の窒化珪素系セラミックス集合基板であって、
一方の面に回路を形成する第一の銅板が複数個接合され、
他方の面の前記第一の銅板と整合する位置に、放熱板となる複数個の第二の銅板が接合されていることを特徴とする窒化珪素系セラミックス集合基板。
【請求項4】
請求項3に記載の窒化珪素系セラミックス集合基板であって、
前記第一の銅板が接合された面(一方の面)に、個々の回路形成部に分割するための複数本の第二のブレークラインが形成されていることを特徴とする窒化珪素系セラミックス集合基板。」
第3 申立理由の概要
異議申立人の申立理由の概要は、次のとおりである。
(理由1) 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について
発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1ないし4に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
よって、請求項1ないし4に係る発明の特許は、発明の詳細な説明が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(理由2) 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
請求項1ないし4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
よって、請求項1ないし4に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(理由3) 特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について
請求項1ないし4に係る発明は、明確でない。
よって、請求項1ないし4に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(理由4) 特許法第29条第2項(進歩性)について
本件請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明、甲第5号証に記載された事項及び甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
よって、請求項1ないし4に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
第4 提出された証拠
異議申立人が提出した証拠は次のとおりである。
甲第1号証:特開平9-11221号公報(以下、「引用文献1」という。)
甲第2号証:再公表特許国際公開第2009/154295号(以下、「引用文献2」という。)
甲第3号証:特開2008-198905号公報(以下、「引用文献3」という。)
甲第4号証:特開2007-45160号公報(以下、「引用文献4」という。)
甲第5号証:2005年度精密工学会春季大会 学術講演会 講演論文集 p575~576(以下、「引用文献5」という。)
甲第6号証:特開2009-22978号公報(以下、「引用文献6」という。)
なお、異議申立書では甲第2号証として「国際公開第2009/154295号」と記載されているが、異議申立書に添付された甲第2号証は「再公表特許国際公開第2009/154295号」であるため、当審では甲第2号証を「再公表特許国際公開第2009/154295号」として、以下「第5 4」において「進歩性」の判断をした。
第5 申立理由についての判断
1 (理由1)実施可能要件違反について
(1)異議申立人の主張(異議申立書第6頁第26行ないし第7頁第12行)
本件特許明細書の段落0044には、算術平均粗さRaが、0.16~0.2μmのものしか公開されていないため、どのようにすれば「算術平均表面粗さ」が「0.1μm以上0.3μm未満」の範囲になるようにできるのか、当業者がその実施をできる程度に発明の詳細な説明に記載されていない。言い換えれば、発明の詳細な説明には、「算術平均表面粗さ」が「0.1μm以上0.3μm未満」の範囲全体のうち1/5の程度の範囲しか記載されていないため、どのようにすればこの特許請求の範囲に入る程度でレーザ条件を変えることができるのか、発明の詳細な説明からは不明瞭である。
よって、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件特許発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているものではない。
また、本件特許請求項1を引用する本件特許請求項2~4の実施についても同様である。
(2)当審の判断
ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、次のとおり記載されている。なお、下線は当審で付与した。(以下、同様)
「【0031】
亀裂や粒子状突起が少ない角ブレークライン14の内面(面取り部の壁面)は、複数回の走査により角ブレークライン14を形成する場合、加工部への入射エネルギーが低いものから比較的高いものまでのファイバレーザビームスポットを使用でき、入射エネルギーが高い場合には走査速度を高くできるので、0.1μm以上0.3μm未満と小さい算術平均表面粗さRaになり、加工時間も短縮できる。一方、一回の走査で角ブレークライン14を形成する条件では、加工部への入射エネルギー密度を抑えたファイバレーザビームスポットの照射により、0.5μm以上1.0μm未満の算術平均表面粗さRaにすることができる。しかし、角ブレークラインは基板を貫通させなければならないためにビームスポットの走査速度を高くできないので、熱衝撃による亀裂や粒子状突起が多く形成され易くなる。なお、算術平均表面粗さRaはJIS B0601:2001で規定されている。
【0032】
図3に示すように、角ブレークライン14を形成するファイバレーザのビームスポット14aの直径は10~100μmとするのが好ましい。角ブレークライン14の内壁面を滑らかに仕上げるために、複数回の走査により角ブレークライン14を形成する際には、ビームスポット14aの移動速度(走査速度とも表現する)を150 mm/秒以上とするのが好ましく、150~550 mm/秒とするのがより好ましい。ビームスポット14aの照射ピッチは、例えば3μmとする。
・・・(省略)・・・
【0035】
ファイバレーザのビームスポットの走査を複数回繰り返してスリットを形成する場合は、ビームスポットの1回の走査でスリットを形成する場合より、窒化珪素系セラミックス焼結基板1内部への時間当たりの入熱が少ないので、中央壁面部140mでの熱衝撃による微細クラックの発生が少なく、表面粗さも小さくなる。そのため、角ブレークライン14の寸法精度及び信頼性が向上する。
・・・(省略)・・・
【0042】
実施例1
・・・(省略)・・・。さらに、同じファイバレーザを用いて以下の条件でスリット状の角ブレークライン14を形成した。
ファイバレーザビームスポットの直径:35μm
ビームスポットの走査速度:200 mm/s
ビームスポットの照射ピッチ:4μm
ビームスポットの走査回数:10回
角ブレークラインの幅:35μm
角ブレークラインの全長:4.2 mm
角ブレークラインの進出長さL1:0.7 mm
角ブレークラインの辺ブレークラインに対する交差角:45°
・・・(省略)・・・。
【0044】
・・・(省略)・・・。面取り面140において、開口側壁面部の算術平均表面粗さRaoは0.2μmであり、中央壁面部の算術平均表面粗さRamは0.16μmであった。・・・(省略)・・・。
【0050】
実施例2
ファイバレーザのビームスポットの走査速度を33 mm/sとし、かつ照射エネルギー密度を実施例1より高くして、1回の走査で表裏貫通する角ブレークライン14を形成した以外実施例1と同様にして、辺ブレークライン13及び角ブレークライン14を有する窒化珪素系セラミックス焼結基板1を得た。
【0051】
・・・(省略)・・・。算術平均表面粗さRaは、それぞれ、面取り面140でRao=0.8μm、Ram=0.5μmであり、辺ブレークライン13のレーザ加工面でRa2=0.5μmであり、破断面でRa3=0.7μmであった。」
イ 上記段落【0031】、【0032】、【0035】の記載から、角ブレークライン14の内面である面取り部の壁面の算術平均表面粗さRaは、角ブレークライン14をファイバレーザにより形成する場合、そのビームスポットの走査回数、入射エネルギー及び走査速度により制御可能であり、入射エネルギーを高く、走査速度を150~550mm/秒に設定し、ビームスポットの走査を複数回繰り返して角ブレークライン14を形成することにより、より算術平均表面粗さRaを小さくできることは明らかである。そして、同段落【0042】ないし【0044】、【0050】ないし【0051】に記載された実施例1、及び、実施例1のビームスポットの走査速度等の条件を変更した実施例2における各面取り部の算術平均表面粗さRaがこれを裏付けている。
ウ そして、本件特許明細書の段落【0044】には、実施例1として、窒化珪素系セラミックス集合基板12の面取り面140の開口側壁面部の算術平均表面粗さRaoが「0.2μm」、中央壁面部の算術平均表面粗さRamが「0.16μm」であることが記載され、同段落【0042】には、当該算術平均表面粗さRao及びRamを得た際のファイバレーザのビームスポットの各条件が記載されているから、該条件を基に、入射ネルギー、走査速度及び走査回数を適宜変更し、「面取り部」の「算術平均表面粗さRa」が「0.1μm」や「0.3μm」である窒化珪素系セラミック集合基板を作成できるものと認められる。
エ よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1ないし4を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているから、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものではない。
2 (理由2)サポート要件について
(1)異議申立人の主張(異議申立書第7頁第13行ないし第8頁第9行)
ア 請求項1に記載のレーザ加工面の算術平均表面粗さRaは、研磨加工なくレーザ加工のみによって得られるものとレーザ加工の後に研磨加工を行って得られるものとの両方を含み得る。一方で、請求項1の「前記面取り部の壁面がレーザ加工面で構成され、0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRaを有」することについて、本件特許明細書段落0043の記載から、湿式ブラスト処理において研磨液がレーザ加工面にも接触するためレーザ加工面がレーザ加工のみによって得られた壁面ではないことは明らかである。
イ 発明の詳細な説明ではレーザ加工の後に研磨加工を行って得られるものと記載されているにもかかわらず、「前記面取り部の壁面がレーザ加工面で構成され、0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRaを有」することは、レーザ加工の後に研磨加工を行って得られるものであるという特定をしていない。出願時の技術常識を鑑みても、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を、かのような構成まで拡張ないし一般化することはできない。その結果、本件特許発明1は発明の詳細な説明に記載されたものではない。
ウ 本件特許発明2ないし4もまた、本件特許発明1と同様な理由により発明の詳細な説明に記載されたものではない。
(2)当審の判断
ア 本件発明1について
(ア)まず、本件発明1の「面取り部の壁面」に関し、本件特許明細書の段落【0031】に「角ブレークライン14の内面(面取り部の壁面)は、複数回の走査により角ブレークライン14を形成する場合、加工部への入射エネルギーが低いものから比較的高いものまでのファイバレーザビームスポットを使用でき、入射エネルギーが高い場合には走査速度を高くできるので、0.1μm以上0.3μm未満と小さい算術平均表面粗さRaになり、加工時間も短縮できる。」、同段落【0037】に「本発明の窒化珪素系セラミックス集合基板12は、図5(a) に示すように、多数の回路形成部19を有する窒化珪素系セラミックス基板部20と縁部21とを有するとともに、四隅に面取り部22を有し、角ブレークライン14により得られた面取り部22の壁面(面取り面)も0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRaを有するのが好ましい。」とそれぞれ記載され、同段落【0042】ないし【0044】には、「実施例1」として、ファイバレーザを用いて窒化珪素系セラミックス焼結基板1に4本の辺ブレークライン13及びスリット状の角ブレークライン14を形成し、分割して得た窒化珪素系セラミックス集合基板12の面取り面140において、開口側壁面部の算術平均表面粗さRaoが「0.2μm」、中央壁面部の算術平均表面粗さRamは「0.16μm」であったことが記載されている。
してみると、本件発明1の「前記面取り部の壁面がレーザ加工面で構成され、0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRaを有」するという発明特定事項は、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
(イ)次に、請求項1の「前記面取り部の壁面がレーザ加工面で構成され」との記載によれば、本件発明1の「面取り部の壁面」は「レーザ加工」で得られるものである。
ここで、本件特許明細書には、辺ブレークライン13及び角ブレークライン14を形成した窒化珪素系セラミックス焼結基板1を、窒化珪素系セラミックス集合基板12と辺マージン部16及び角マージン部17とに分割した後、角ブレークライン14により形成される「面取り部の壁面」を「研磨加工」することは全く記載されていない。
また、本件特許明細書の段落【0031】には、ファイバレーザを用いて角ブレークライン14の内面(面取り部の壁面)を形成することにより、0.1μm以上0.3μm未満と小さい算術平均表面粗さRaである面取り部の壁面が得られることが記載されており、ファイバーレーザによるレーザ加工の後にあえて「研磨加工」を行う理由も見当たらない。
そして、異議申立人は、窒化珪素系セラミックス焼結基板を分離し、窒化珪素系セラミックス集合基板を得た後、該窒化珪素系セラミックス集合基板の面取り部の壁面に「研磨加工」を施すことが技術常識であることを示す証拠も提出していない。
(ウ)本件特許明細書の段落【0043】には、「窒化珪素系セラミックス焼結基板1を各辺ブレークライン13に沿って折り、面取り部22を有する窒化珪素系セラミックス集合基板12と辺マージン部16及び角マージン部17とに分割した。角マージン部17は辺マージン部16に付着した状態で分離され、別個の端材にならなかった。上記の分離作業の後、アルミナ砥粒を用いた湿式ブラスト処理により、窒化珪素系セラミックス集合基板12の表面および裏面のクリーニングと表面粗さ調整を行った。」と記載されているものの、該段落以外に、「アルミナ砥粒を用いた湿式ブラスト処理」に係る記載や示唆は見当たらない。
そして同段落【0043】の「上記の分離作業の後、アルミナ砥粒を用いた湿式ブラスト処理により、窒化珪素系セラミックス集合基板12の表面および裏面のクリーニングと表面粗さ調整を行った。」との記載からすれば、「アルミナ砥粒を用いた湿式ブラスト処理」は「窒化珪素系セラミックス集合基板12の表面および裏面」に対して行われ、「窒化珪素系セラミックス集合基板12」の「面取り部」に対して行われるとはいえない。
また、異議申立人は、分離作業後の「窒化珪素系セラミックス集合基板」の「表面および裏面」に対してアルミナ砥粒を用いた湿式ブラスト処理を行うと、研磨液がレーザ加工面にも接触し面取り部が研磨加工されることを裏付ける証拠も提出していない。
(エ)したがって、「発明の詳細な説明にレーザ加工の後に研磨加工を行」うことが記載されているとはいえず、「前記面取り部の壁面がレーザ加工面で構成され、0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRaを有」する本件発明1は発明の詳細な説明に記載されたものである。
よって、異議申立人の主張は採用できない。
イ 本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4についても、本件発明1に対する理由と同様の理由で、異議申立人の主張は採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものではない。
3 (理由3)明確性について
(1)異議申立人の主張(異議申立書第8頁第10ないし21行)
ア 「(理由2)」で説明したように、請求項1に記載のレーザ加工面の算術平均表面粗さRaは、発明の詳細な説明に記載のようにレーザ加工の後に研磨加工を行って得られるものなのか、研磨加工なくレーザ加工のみによって得られるものなのかかが不明であり、その結果、本件特許発明は明確ではない。
イ 本件特許発明2ないし4もまた、本件特許発明1と同様に明確ではない。
(2)当審の判断
ア 本件発明1について
上記「2 (理由2)サポート要件について」の「(2)ア(ア)」で述べたように、請求項1の記載から「0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRa」を有する「前記面取り部の壁面」は「レーザ加工」で得られることは明らかであり、また、本件特許明細書には、窒化珪素系セラミックス焼結基板1を分割後、窒化珪素系セラミックス集合基板の面取り部の壁面を「研磨加工」することは記載されていない。
してみれば、請求項1に記載された「0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRa」を有する「面取り部の壁面」は、レーザ加工のみによって得られるものと認められ、本件発明1は明確である。
よって、異議申立人の主張は採用できない。
イ 本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4についても、本件発明1に対する理由と同様の理由で、異議申立人の主張は採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものではない。
4 (理由4)進歩性について
(1)引用文献の記載、引用発明
ア 引用文献1について
(ア)引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ブレーク溝入りセラミック基板に関し、詳しくは、チップ抵抗、ハイブリッドIC等の電子部品の製造に用いられるセラミック基板(以下、単に基板ともいう)に関する。
・・・(省略)・・・。
【0015】
【実施例】本発明に係る基板を具体化した実施例について、図1ないし図5を参照して詳細に説明する。図中、1は、本例の基板であって、周縁に沿って所定の幅のダミー部2を有し、このダミー部2に囲まれた内側において縦横に複数のブレーク溝3,3a,4,4aが格子状に形成されている。縦横のブレーク溝3,3a,4,4aのうち、最外側のブレーク溝3a,4a以外のブレーク溝3,4は、それぞれ最外側のブレーク溝3a,4aを横断して若干外側(外方)に延びており、ダミー部2の途中で止められている。
【0016】一方、最外側の縦横のブレーク溝3a,4aのなす4つの交点5,5においては、各ブレーク溝3a,4aが基板1の縦横の各辺の縁端部6,7に至る途中(略中間)まで縁端部6,7側(外側)に真直ぐ延びている。そして、各交点5とも基板1の縁端部6,7側には、縦横のブレーク溝3,3a,4,4aに対して本例では略45度で傾斜してなる傾斜ブレーク溝8が、最外側の縦横のブレーク溝3a,4aの先端3b,4b寄り部位を斜めに横断する形で形成されている。ただし、本例ではこの傾斜ブレーク溝8は、基板1の縦横の各辺の縁端部6,7まで直線状に延びている。しかして、本例では、傾斜ブレーク溝8がそれに沿ってブレークされた際のブレーク断面には、最外側の縦横の両ブレーク溝3a,4aが現出するように形成されている。
・・・(省略)・・・。
【0018】本例のセラミック基板1は、このようなグリーンシートを所定温度で焼成することにより得られるが、基板1の周縁に沿ってダミー部2があり、縦横のブレーク溝3,3a,4,4aが基板1の各辺の縁端部6,7に至っていないことから、これが補強部の役割を果たし、縦横のブレーク溝に起因する焼成過程での反りや割れの発生が防止される。一方、傾斜ブレーク溝8は、基板1の縦横各辺の縁端部6,7まで至っているが、その長さは縦又は横のブレーク溝3,3a,4,4aより著しく短く、したがって、この傾斜ブレーク溝8に起因する反りや割れの発生は殆どない。また、その後工程においてもダミー部2があることから割れの発生を有効に防止することができる。
【0019】なお、本例の基板1に後工程でチップ抵抗等を形成した後、各単位に分割するにあたっては、まず、傾斜ブレーク溝8に沿って基板1のダミー部2の隅角(四隅)9をブレークする(図1~3参照)。この際、傾斜ブレーク溝8は短いから簡単に折り取ることができる。また、図4に示したように、このブレークにより、そのブレーク断面8bには、最外側の縦又は横のブレーク溝3a,4aが現出する。したがって、現出した最外側の縦及び横のブレーク溝3a,4aに沿って折り取るようにすれば、周縁のダミー部2が除去され、基板1は図5に示したようにその本体部11のみとなる。以後は従来と同様に、縦又は横のブレーク溝3,4に沿ってブレークして基板1の本体部11を短冊状とし、さらにそのものを各ブレーク溝に沿って次々とブレークすれば、1枚の基板1から所望とする多数のチップ抵抗やハイブリッドIC等を得ることができる。
・・・(省略)・・・。
【0022】なお本例では、最外側の縦横のブレーク溝3a,4aのなす全交点5の基板1の縁端部6,7側(外側)に傾斜ブレーク溝8を設けたために、ダミー部2の除去が容易となる。もっとも、傾斜ブレーク溝8は、ブレーク効率が低下するものの、図6に示したように、1箇所のみとすることもできるし、図示はしないが対向する隅角の2箇所、さらには3箇所としてもよい。なお、図6に示した基板21においては、まず、傾斜ブレーク溝8に沿ってブレークし、そのブレーク断面(図4参照)に現出した最外側の縦横のブレーク溝3a,4aに沿って縦及び横のダミー部2,2を除去し、このダミー部2,2をブレークした際に現出する残りの最外側の縦横のブレーク溝3a,4aに沿ってその縦及び横のダミー部2,2を除去することにより、図5の状態にすることができる。
・・・(省略)・・・。
【0029】なお、上記においてブレーク溝は、基板の焼成前のグリーンシートのときにプレスにより形成した場合を例示したが、このブレーク溝は、基板の焼成後にレーザー加工等により形成することも可能である。本発明は、上記実施例のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、基板の大きさや部品の種類、取個数等に応じて適宜設計変更して具体化できる。」
図1
[図:0001386182000001.jpg]
図3
[図:0001386182000002.jpg]
図5
[図:0001386182000003.jpg]
(イ)引用文献1の上記記載事項及び図面によれば、次のことがいえる。
a 段落【0001】、【0018】によれば、引用文献1には「セラミック基板」が記載されている。また、図1、図3によれば「セラミック基板」は矩形状であることが見て取れる。
b 段落【0015】の「1は、本例の基板であって、周縁に沿って所定の幅のダミー部2を有し」、段落【0019】の「周縁のダミー部2が除去され、基板1は図5に示したようにその本体部11のみとなる」の各記載によれば、セラミック基板は、セラミック基板の周縁に沿った所定の幅のダミー部2と本体部11とを有する。
そして、段落【0019】の「本例の基板1に後工程でチップ抵抗等を形成した後、各単位に分割する・・・・、周縁のダミー部2が除去され、基板1は・・・本体部11のみとなる。以後は・・・、縦又は横のブレーク溝3,4に沿ってブレークして基板1の本体部11を短冊状とし、さらにそのものを各ブレーク溝に沿って次々とブレークすれば、・・・多数のチップ抵抗やハイブリッドIC等を得ることができる。」との記載から、「本体部11」は、ダミー部2を除去後縦又は横のブレーク溝3,4をブレークして多数のチップ抵抗やハイブリッドICに分割されるものである。
また、段落【0016】に「基板1の縁端部6,7側には、縦横のブレーク溝3,3a,4,4aに対して本例では略45度で傾斜してなる傾斜ブレーク溝8が、最外側の縦横のブレーク溝3a,4aの先端3b,4b寄り部位を斜めに横断する形で形成されている。」、段落【0019】に「各単位に分割するにあたっては、まず、傾斜ブレーク溝8に沿って基板1のダミー部2の隅角(四隅)9をブレークする(図1~3参照)。」とそれぞれ記載されている。そして、図3によれば、ダミー部2の外縁の四隅をそれぞれ斜めに横断する傾斜ブレーク溝8をブレークすることにより角部が除去されて、該四隅に傾斜部分が形成されたセラミック基板1が見て取れる。してみると、セラミック基板は、ダミー部2の外縁の四隅をそれぞれ斜めに横断する傾斜ブレーク溝8がブレークされ該四隅に形成された傾斜部分を有するといえる。
したがって、引用文献1には、セラミック基板の周縁に沿った所定の幅のダミー部2とダミー部2を除去後縦又は横のブレーク溝3,4をブレークして多数のチップ抵抗やハイブリッドICに分割される本体部11とを有するとともに、ダミー部2の外縁の四隅をそれぞれ斜めに横断する傾斜ブレーク溝8がブレークされ該四隅に形成された傾斜部分を有する矩形状のセラミック基板が記載されているといえる。
c 段落【0029】の「このブレーク溝は、基板の焼成後にレーザー加工等により形成することも可能である。」との記載によれば、傾斜ブレーク溝8をレーザー加工で形成した場合、図3に示された傾斜ブレーク溝8がブレークされダミー部2の外縁の四隅に形成された傾斜部分の断面は、レーザ加工された面と破断された面とで構成されることは明らかである。
よって、引用文献1には、傾斜部分の断面がレーザ加工された面と破断された面とで構成されることが記載されているといえる。
d 引用文献1の図3によれば、基板1の側面は、傾斜部分の断面に直接接続され、該側面と傾斜部分の断面とが接続する角部が尖った形状であることが見て取れる。
(ウ)よって、引用文献1の傾斜ブレーク溝8をブレークした基板1を示した図3に着目すると、上記「(イ)aないしd」から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「セラミック基板の周縁に沿った所定の幅のダミー部2とダミー部2を除去後縦又は横のブレーク溝3,4をブレークして多数のチップ抵抗やハイブリッドICに分割される本体部11とを有するとともに、ダミー部2の外縁の四隅をそれぞれ斜めに横断する傾斜ブレーク溝8がブレークされ該四隅に形成された傾斜部分を有する矩形状のセラミック基板であって、
傾斜部分の断面が、レーザ加工された面と破断された面とで構成され、
セラミック基板の側面は、傾斜部分の断面に直接接続され、該側面と傾斜部分の断面とが接続する角部が尖った形状であるセラミック基板。」
イ 引用文献2について
(ア)引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【請求項8】
セラミックス焼結基板の片面または両面に、回路基板を多数個取りするための分割用の連続溝がレーザ加工により設けられたセラミックス集合基板から分割されたセラミックス基板であって、少なくともその一つの側面は前記連続溝に沿って分割されて形成された面であり、該側面の算術平均粗さRaにおいて、前記連続溝加工部表面の算術平均粗さRa2の方が破断部表面の表面粗さ算術平均粗さRa1よりも小さいことを特徴とするセラミックス基板。
・・・(省略)・・・。
【請求項11】
前記セラミックスは窒化ケイ素であり、前記連続溝はファイバーレーザの照射で形成されていることを特徴とする請求項8乃至10の何れか1項に記載のセラミックス基板。」
「【0037】
次に、セラミックス基板1における品質特性について図2、図7を用いて説明する。
本集合基板10から分割されたセラミックス基板1は、少なくとも一側面がスクライブ溝21の分割面であり、通常、この側面は改めて加工されないため、分割面の面性状はセラミックス基板1の寸法精度、曲げ強度、絶縁耐圧など品質に影響する。分割面はスクライブ溝21のレーザ加工面211と分割時の破断面212とからなるが、本発明に係わるレーザスクライブは、高出力のパルスを高周期で発振して行うもので、例えば50KHzで発振させながら移動速度100mm/secでスクライブ加工を行うと、移動方向のずれ量(ピッチ)は2μmであり、側面及び底面の凹凸が小さな連続した溝が形成される。このようなスクライブ溝21に曲げ力を作用させると、スクライブ溝21の底部から破断されていくが、スクライブ溝底面は凹凸が少なく滑らかであるため、レーザ加工部と破断面との境界となる破断線部213は上下左右のぶれ量frが小さくほぼ直線状となる。これによって破断力の偏向性がなくなり、セラミックス基板1の寸法精度の悪化や、面粗さの増加そして強度の低下が抑制される。なお、移動速度は80~120mm/secまで変えてスクライブ加工を行ったが結果は変わらなかった。」
「【0040】
(評価試験1)
浅溝部214を形成したスクライブ溝21の分割性を評価した。表1にデータを示す。図1に示したものと同サイズで厚さが0.32mmの窒化ケイ素製焼結基板(焼結板)を準備し、図1に示したスクライブライン20のうち、X方向のライン(130mm)にガルバノミラー5でファイバーレーザ7を走査して集光レンズ6で焦点合わせをし、スクライブ溝21xを3本形成し、その後ホーニング処理工程で、集合基板10の表裏面にアルミナ等の砥粒を含んだ液体を加圧噴射し、集合基板10の表裏面の清浄化と平滑化を施し乾燥させた後、集合基板10を手で分割した。用いた焼結板の曲げ強度は焼結ロット平均で750MPa、破壊靭性値は6.5MPam 1/2 であった。ファイバーレーザ7の波長は1.06μmで、50KHzで発振させながら移動速度100mm/secの繰返速度で照射した。集光レンズ6をスクライブライン20の中央部上方に配置したり、一端部の上方に配置したり、また焦点距離の異なる集光レンズ6を用いたりして、浅溝部が形成されるようにした。いずれのスクライブ溝21も、溝幅cは0.1mmとなるような仕様で加工した。なお、溝深さは、図8に示すようにスクライブ溝21の分割後に、側面から破断線213の基板表面からの深さを観察し、最大溝深さdmaxと最小溝深さdminを実測した。以上の作業を3枚の焼結板に対して実施しスクライブ溝計9本に対して溝深さを測定し、その後各スクライブ溝21を手で分割した時の感触及び分割面の目視観察をもとに分割性を評価した。表1に示す溝深さは、9本の同一条件で形成した溝の平均値であり、分割性では代表的な状況を示した。また、基板厚さ0.2mmと、0.63mmの窒化ケイ素製焼結基板についても準備し、同じ条件でスクライブ溝21xを形成し、同様に溝深さを実測し、さらに手で分割した時の感触及び分割面の目視観察をもとに分割性を評価した。また、上記評価とは別に、溝入れ基板を各1枚ずつ作製し、コンクリート床への落下試験で、スクライブ部に割れやクラックが生じていないかを確認した。これはハンドリングのミスにより床にスクライブライン入りの基板を落とした場合でも、スクライブ溝にクラックが生じていなければ、製品として使用できることから、作業性、歩留まりの観点から実施したものである。
・・・(省略)・・・。
【0043】
(評価試験2)
スクライブ溝21の基準深さdm、溝幅c、底部曲率半径ρ等の性状の違いによる分割性を評価した。表2にデータを示す。評価試験1で用いたのと同様な焼結板を準備し、同様のファイバーレーザを用いて図1に示したと同様なスクライブ溝を21XY両方向に形成し、X方向スクライブ溝21xを手で分割した。焼結板をXY2軸テーブルに載置し、ファイバーレーザ光7をガルバノミラー5で走査させずに定点に照射し、焼結板の方をX方向スクライブラインに移動させ、浅溝部214を有しない基準深さdmとなるスクライブ溝21をXY方向に形成した点、及び焼結板3枚毎にレーザ強度、スポット径、加工速度など照射条件を変えて、基準深さdmや溝幅cが異なるスクライブ溝21を形成した事以外は評価試験1と同様である。
【0044】
表2に示す試料Noは同じ条件で形成したグループを示しており、焼結板3枚分、即ち9本のX方向スクライブ溝21xに対して手で分割し、スクライブラインに沿って割れなかった場合や分割面のクラックやバリの発生状態を目視で観察して分割性として評価した。なお、試料No.1~5は溝幅cを0.2mm狙いで加工したもの、No.6~11は0.13mm狙い、No.12~17は0.1mm狙い、No.18~23は0.07mm狙い、No.24~29は0.05mm狙いで加工したものである。また、No.30~35は、レーザ光7をスクライブ溝側面方向に傾斜させて照射し、溝最深部の位置を溝幅c中心線に対してずれるようにしたものであり、No.36~41は、溝幅cと熱影響層幅c1はほとんど等しくみえるので、スポット径と出力を調整して照射し、熱影響層幅c1を大きくするようにしたものである。熱影響層の幅c1は表面酸素量が5wt%以上となっている範囲とした。No.42~46は基板厚さ0.2mmの場合を、No.47~50は基板厚さ0.63mmの場合である。各試料におけるスクライブ溝形態の測定は、スクライブ溝が形成された3枚の焼結板の中から任意に選定した1枚の焼結板のX方向スクライブ溝21xで、焼結板中央部のXYスクライブ溝の交点から約10mm離れた箇所に対してレーザ変位計を用いて2次元の溝断面形態を測定し評価した。また、前記測定断面が不明瞭な場合には、溝断面研磨品の光学顕微鏡観察またはSEM観察の結果から溝形態を表す各パラメータを求めた。表2においてNo.1のΔdmは52μm(0.052mm)とした。その他のΔdmは10~50μmの範囲に調整した。
【0045】
[図:0001386182000004.jpg]
・・・(省略)・・・。
【0047】
(評価試験3)
スクライブ溝性状の違いによるセラミックス基板とされた時の品質特性を評価した。表3にデータを示す。評価試験2を行った後のX方向に分割された長尺焼結板を用い、Y方向スクライブ溝21yを手で分割してセラミックス基板とし、寸法精度、曲げ強度、分割面表面の算術平均粗さRa等を測定した。表3の試料Noは、表2に示す試料Noと対応しており、同一または同一条件で加工したセラミックス基板であることを示す。寸法精度については、分割して形成された計12枚のセラミックス基板(50×40mmサイズ、許容寸法公差±0.1mm)についてノギスで計測した結果から工程能力を算出し評価した。曲げ強度は既述した試験片サイズを別途作製し評価した。
分割面表面の粗さ測定は、評価試験2で溝形態を測定した箇所における分割面の一面に対するものであり、図7に示すようにレーザ加工面は基準溝深さdmの中間部近傍を長さ方向(220方向)に、破断面は破断面深さの中間部近傍を長さ方向(220方向)に、破断線はレーザ加工面と破断面の境界部近傍をそれぞれ測定した。
【0048】
【表3】
[図:0001386182000005.jpg]
(イ)引用文献2の【請求項8】、【請求項11】及び段落【0037】の記載によれば、引用文献2には、次の技術事項(以下、「引用文献2に記載された技術事項1」という。)が記載されている。
「セラミックス焼結基板の片面または両面に、回路基板を多数個取りするための分割用の連続溝がレーザ加工により設けられたセラミックス集合基板から分割されたセラミックス基板であって、前記セラミックスは窒化ケイ素であり、集合基板から分割されたセラミックス基板の分割面は溝のレーザ加工面と分割時の破断面とからなること。」
(ウ)引用文献2の段落【0040】、【0043】、【0044】、【0047】の記載及び【0045】の【表2】(「分割性 不良数で表示」の項を参照)、【0048】の【表3】(「レーザ加工面算術平均粗さ Ra2」の項を参照)によれば、引用文献2には、「試料No.16」について、次の技術事項(以下、「引用文献2に記載された技術事項2」という。)が記載されている。
「窒化ケイ素製焼結基板(焼結板)を準備し、波長は1.06μmで、50KHzで発振させながら移動速度100mm/secの繰返速度で照射するファイバーレーザを用いてスクライブ溝を21XY両方向に形成し、X方向スクライブ溝21xを手で分割し、さらにY方向スクライブ溝21yを手で分割したセラミックス基板において、分割面表面の算術平均粗さRaが0.4μm、分割時の不良が0であり、分割性をスクライブラインに沿って割れなかった場合や分割面のクラックやバリの発生状態を目視で観察して評価したこと。」
ウ 引用文献3について
(ア)引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0027】
まず、セラミックス回路基板の製造方法について述べる。ここではセラミックス基板として窒化珪素基板を用いた場合について示す。ただし、その組成や製造方法・製造条件は下記の例に限定されるものではない。
・・・(省略)・・・。
【0034】
図1は、面取り無し基板においてピッチと共に深さも変えた例を示している。(a)は分割後のセラミックス基板を示す上面図、(b)は基板の一側面を見た斜視図である。
・・・(省略)・・・。
【0036】
図3は、面取り無し基板においてスクライビング孔による凹部の深さを変えた例を示している。(a)はスクライビング孔の形態を示す上面図、(b)は一側面を見た斜視図である。この例ではスクライビング孔の深さ34を角部近傍から角部に向けて徐々に深くしている。従って、(b)に見られるように角部直近では凹部が深くなり、セラミックス基板の厚さに匹敵するようになっていると言える。このようなことからも欠け不良は生じ難くなる。
【0037】
既述したようにセラミック基板では角部に面取り施すことが望まれる場合がある。このとき面取り加工が切断加工で形成された場合には、基板強度はレーザー切断加工時の熱応力によるマイクロクラックの生成で、強度が低下する。抗折試験によれば、切断加工試料は、スクライビング加工試料と比較し1~2割以上も強度が低下することが分かっている。そのため、スクライビング加工のみの集合基板の分割よりも、面取り切断加工を有する集合基板の分割の方が欠け不良の発生頻度が高い。しかしスクライビング加工により面取りを施すことは手間と時間が掛かり新たな不良も招きかねない。そこでスクライビング加工と切断加工を組み合わせることが考えられる。
この点で図4の例は、スクライビング加工による分割線と切断加工による面取り部を取り入れた例を示している。(a)はC面取りを形成した基板を示す上面図、(b)(c)は一側面を見た斜視図である。ここで(b)のC面取り部13は切断加工により形成しており、分割線はスクライビング加工で、面取り部の近傍の凹部のピッチ16を中央部のピッチ15よりも狭くしたものである。(c)は同じくC面取り部13の近傍の凹部の深さ18を中央部の深さ17よりも深くしたものである。」
「【0040】
次に、この基板に面取り部(CまたはR面取り)を形成したセラミックス集合基板について説明する。
図8は1枚の集合基板5から9個のセラミックス基板1を作製する9個取りの一例である。集合基板の外周側面は、製造工程での基板寸法精度や回路基板パターン精度および位置合わせ精度を改善するためにレーザー切断加工で形成してある。また、基板の外周側の枠部には捨て代となる余肉部2を設けている。これは基板強度低下防止の観点から全ての基板側面を切断加工部ではなくスクライビング加工部にするためである。その理由は、既述したようにレーザー切断加工では熱応力によるマイクロクラックの生成で、基板強度が低下するためである。またそれ以外の理由として、ハンドリング性の改善、前記ハンドリングによる基板または回路基板の落下・突き当てによる欠け防止、回路基板を製造する際の金属/セラミックス接合部のボイド不良の低減なども理由として挙げられる。
【0041】
断続的なスクライビング孔による分割線3は格子状に形成され、格子状の分割線によって個々のセラミックス基板1が区画されている。スクライビング孔の加工部は基板厚さによって加工条件は異なるが、最深部に曲率を有する円錐状のノッチ状の孔(以下では凹部と表現することもある)を、所望の孔径で、所望の深さで、所望のピッチ間隔で導入するもので、通常は基板を貫通するものではない。また、前記孔の表面周囲には黒色のドロス状の物質が付着することもある。また、基板表面の加工孔周囲に盛り上がり箇所が出来ることもある。これらは基板中の酸化物や、分解した窒化物の残留物が付着したものであるが、アシストガスによる除去や、適正化した加工条件で加工した基板においては、基板の絶縁性能に問題を及ぼすものではないことを確認済みである。
【0042】
次に、四隅の面取り部については、板厚を貫通するレーザー切断加工により形成する。但し、面取り部の形状が大きく手作業での分割が容易である場合には、面取り部もスクライビング加工で対応しても良い。
レーザー切断加工では基板四隅の面取り部に位置する箇所を菱形状に加工してC面取り4を形成する。ここで、四隅のみを狙って面取りするのでも良いが、分割時の欠け不良を低減させるためには、図8に示すように余肉部2にも対称形状になるように面取り部4’を形成した方が好ましい。これは図9で示すようにR面取り6を設ける場合も同様で、四隅の加工部は対称形状になるようにし、余肉部2についてもR面取り部6’を施すことが望ましい。」
「【0054】
・・・(中略)・・・。
【図4】本発明のセラミックス基板のC面取りを有する集合基板分割後を示し、(a)はC面取り基板の外観斜視図、(b)は基板角部近傍の拡大斜視図(孔ピッチを変更)、(c)は基板角部近傍の拡大斜視図(孔深さを変更)である。」
図3
[図:0001386182000006.jpg]
図4
[図:0001386182000007.jpg]
図8
[図:0001386182000008.jpg]
引用文献3の図4(b)によれば、セラミックス基板1の面取り部を除いた基板側面が、レーザー加工によるスクライビング加工された面と破断された面で構成されること、セラミックス基板1の破断された面が面取り部の面に直接接続されていること、及びセラミックス基板1の基板側面の破断された面と面取り部の面とが接続する角部が尖った形状であること、がそれぞれ見て取れる。
また、同図8によれば、格子状の分割線によって個々のセラミックス基板1が区画され、該セラミックス基板1の四隅の面取り部に位置する箇所を菱形状に加工してC面取り4、4’を形成する
(イ)引用文献3の段落【0037】、【0040】ないし【0042】、【0054】及び図4、図8によれば、引用文献3には、次の技術事項(以下、「引用文献3に記載された技術事項」という。)が記載されている。
「1枚の集合基板から9個のセラミックス基板を作製する場合、集合基板の外周側の枠部には捨て代となる余肉部を設け、断続的な基板を貫通しないスクライビング孔による分割線を格子状に形成し、分割線によって個々のセラミックス基板を区画し、板厚を貫通するレーザー切断加工によりセラミックス基板四隅の面取り部に位置する箇所を菱形状に加工してC面取りを形成し、集合基板分割後のセラミックス基板では、レーザー切断加工によりC面取り部が形成され、セラミックス基板の面取り部を除いた基板側面が、レーザー加工によるスクライビング加工された面と破断された面で構成され、セラミックス基板の破断された面が面取り部の面に直接接続され、セラミックス基板の基板側面の破断された面と面取り部の面とが接続する角部が尖った形状であること。」
エ 引用文献4について
(ア)引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【請求項1】
セラミックス基板にスクライブ加工を施す工程、スクライブラインまたはスクライブドットに沿ってセラミックス基板を分割する工程、分割したセラミックス基板の側面に研磨加工を施しRa0.3~0.7μmかつRmax3.0~7.0μmにする工程を具備することを特徴とする、セラミックス基板の製造方法。
【請求項2】
前記のスクライブ加工がレーザ加工である、請求項1記載のセラミックス基板の製造方法。」
「【0031】
<実施例1~8、比較例1>
主成分となるセラミックス粉末、必要に応じ焼結助剤粉末および有機物バインダー等とを混合し、得られたスラリーをドクターブレード法によって、シート状に厚さ1.2mmに成形した。この成形体をプレスして長方形状に打ち抜いたものを脱脂、焼結を行って、縦50mm×横50mm×厚さ1mmのセラミックス基板形状とした後、セラミックス基板の側面部(外周面部分)について、研磨加工を行い、表1に示す表面粗さRaおよびRmaxを測定した。側面部の表面粗さRaおよびRmaxが所定の範囲内の基板と、比較のためにRaおよびRmaxが本発明の範囲外のものを用意した。
・・・(省略)・・・。
【0039】
<実施例17~19、比較例3>
セラミックス焼結体に対しレーザー加工によりスクライブ溝を形成した。その後、各焼結体を上記のスクライブ溝部分でブレイクすることによって、複数のセラミックス基板を得た。各基板に対し、その側面部を研磨した後、各セラミックス基板に対し、69wt%Ag-28wt%Cu-3wt%Tiろう材を用いた活性金属法により銅板を接合することによって、本発明の実施例に係るセラミックス回路基板を製造した。なお、実施例17~19に係るセラミックス基板の側面部のRaは0.5μmであり、Rmaxは6μmに統一した。
・・・(省略)・・・。
【0043】
<実施例20~24>
セラミックス基板の側面部のRaの最大値と最小値の差を表4のように変えた場合のセラミックス基板の3点曲げ強度のバラツキを測定した。なお、ここでの最大値、最小値とは、一つの側面部におけるRaを3点測定したときの平均値による値と、他の側面部のRaの平均値を比べたものである。言い換えると、一つのセラミックス基板において、個々の側面部のRaの平均値を比べたものである。
【0044】
[図:0001386182000009.jpg]
」
(イ)引用文献4の請求項1、請求項2、及び段落【0044】の表4によれば、引用文献4には、「実施例22」について、次の技術事項(以下、「引用文献4に記載された技術事項」という。)が記載されている。
「セラミックス基板にレーザ加工によるスクライブ加工を施し、スクライブラインまたはスクライブドットに沿ってセラミックス基板を分割し、分割したセラミックス基板の側面に研磨加工を施したセラミックス基板において、セラミックス基板の側面部のRaの最大値が0.3、最小値が0.2であること。」
オ 引用文献5について
(ア)引用文献5には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「1.はじめに
近年、電子・光学機器の高性能化、小型化に伴い、それらを構成するマイクロ部品の作製にマイクロ加工技術が必要となっている。特にSi3N4に代表される各種セラミックス材料は工業材料として多くの優れた特徴を持っているため、マイクロ加工への期待は大きい。そこで本研究では、微少なスポットに集光でき、高エネルギー密度が得られるYAGレーザ第四高調波を用いたSi3N4のマイクロ三次元加工を行い、新しい加工法として実現することを目的とする。
2.実験装置、供試材料、実験方法
・・・(省略)・・・。
2.2 実験方法
加工雰囲気及び各種加工パラメータが加工品位に及ぼす影響を調査するため、加工雰囲気を大気中及び流水中として穴あけ加工、溝加工、平面加工を行った。・・・(省略)・・・。また、溝加工及び平面加工を行い、レーザ光の走査条件が加工品位に及ぼす影響を調査した。溝加工においては、自動ステージをX軸方向に走査することにより溝を作製した。
・・・(省略)・・・。
3.2 溝・平面加工
Fig.5に、溝加工におけるレーザ光の走査速度と溝の底面粗さとの関係を示す。・・・(省略)・・・。また、大気中加工と比較して、流水中加工では底面粗さが小さい。これは流水によるデブリの除去及び試料への再付着防止により、レーザ光が加工部に均一に照射されるためであると考えられる。」
Fig.5
[図:0001386182000010.jpg]
Fig.5によれば、大気中でレーザ光の走査速度を6μm/sから60μm/s変化させた場合、溝の底面の表面粗さRaが略0.3μm以下であったことが見て取れる。
(イ)引用文献5の「1.」、「2.2」、「3.2」及びFig.5によれば、引用文献5には、次の技術事項(以下、「引用文献5に記載された技術事項」という。)が記載されている。
「大気中及び流水中においてYAGレーザ第四高調波を用いてSi3N4に溝加工を行う実験において、大気中でレーザ光の走査速度を6μm/sから60μm/s変化させた場合、溝の底面の表面粗さRaが略0.3μm以下であり、また、大気中加工と比較して、流水中加工では底面粗さが小さく、これは流水によるデブリの除去及び試料への再付着防止により、レーザ光が加工部に均一に照射されるためであること。」
カ 引用文献6について
(ア)引用文献6には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、例えば各種シート材料、回路基板、半導体ウエハ、ガラス基板、セラミック基板、金属基板、半導体レーザー等の発光あるいは受光素子基板、MEMS基板、半導体パッケージ、布、皮、紙などの被加工物を、レーザー光を用いて、例えばハーフカット加工等の形状加工をするレーザー加工方法及びレーザー加工品に関する。
・・・(省略)・・・。
【0017】
本実施の形態に係るレーザー加工方法は、被加工物に対し、レーザー光を用いて所定の深さ位置まで精度良く形状加工を行う方法であり、例えばハーフカット加工、マーキング、溝加工、又はスクライビング加工などに適用可能である。
・・・(省略)・・・
【0019】
レーザー光3としては特に限定されず、例えば、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、XeClエキシマレーザー、YAGレーザーの第3高調波若しくは第4高調波、YLF若しくはYVO4の固体レーザーの第3高調波若しくは第4高調波、Ti:Sレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー又は炭酸ガスレーザー等を使用することができる。これらのレーザー光のうち、本発明においては炭酸ガスレーザーが高出力による生産性向上の点で特に好ましい。
・・・(省略)・・・。
【0026】
レーザー加工は、レーザー光3を同一領域に対し複数回走査して行ってもよい。この場合、各走査毎に加工条件を種々変更してもよく、同一条件で行ってもよい。
・・・(省略)・・・。
【0028】
また、被加工物1としては、前記セパレータ付き偏光フィルム11の他に、レーザー光により加工できるものであれば特に限定なく適用することができる。具体的には、例えば各種シート材料、回路基板、半導体ウエハ、ガラス基板、セラミック基板、金属基板、半導体レーザー等の発光あるいは受光素子基板、MEMS(Micro Electro Mechanical System)基板、半導体パッケージ、布、皮、紙、単層若しくは多層のフィルム材料などが挙げられる。」
(イ)引用文献6の【0001】、【0017】、【0019】、【0026】、【0028】によれば、引用文献6には、次の技術事項(以下、「引用文献6に記載された技術事項」という。)が記載されている。
「回路基板、セラミック基板等の被加工物に対し、ファイバーレーザを使用したレーザー光を用いて所定の深さ位置まで精度良くスクライビング加工を行う方法において、レーザ加工はレーザー光を同一領域に対し複数回走査して行うこと。」
(2)進歩性についての当審の判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「多数のチップ抵抗やハイブリッドIC」は、本件発明1の「多数の回路形成部」に相当する。また、引用発明において「本体部11」は「セラミック基板」から「ダミー部2」が除去されたものであるから、「本体部11」がセラミックからなる基板である。してみると、引用発明の「ダミー部2を除去後縦又は横のブレーク溝3,4をブレークして多数のチップ抵抗やハイブリッドICに分割される本体部11」と本件発明1の「多数の回路形成部を有する窒化珪素系セラミックス基板部」とは、「多数の回路形成部を有するセラミックス基板部」である点で共通する。
ただし、セラミックス基板部に関し、本件発明1は「窒化珪素系」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
また、引用発明の「ダミー部2」は「セラミック基板の周縁に沿っ」ているから、本件発明1の「縁部」に相当する。
そして、引用発明は「ダミー部2の外縁の四隅をそれぞれ斜めに横断する傾斜ブレーク溝8がブレークされ該四隅に形成された傾斜部分を有する」ことと本件発明1の「縁部の外周部の四隅に面取り部を有する」こととは、「縁部の外周部の四隅の角部が除去された部分を有する」ことである点で共通する。
ただし、角部が除去された部分に関し、本件発明1は「面取り部」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
さらに、引用発明の「矩形状のセラミック基板」は、「ダミー部2を除去後縦又は横のブレーク溝3,4をブレークして多数のチップ抵抗やハイブリッドICに分割される本体部11」を有することから集合基板といえ、本件発明1と「矩形状のセラミックス集合基板」である点で共通する。
ただし、セラミック集合基板に関し、本件発明1は「窒化珪素系」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
してみると、引用発明の「セラミック基板の周縁に沿った所定の幅のダミー部2とダミー部2を除去後縦又は横のブレーク溝3,4をブレークして多数のチップ抵抗やハイブリッドICに分割される本体部11とを有するとともに、ダミー部2の外縁の四隅をそれぞれ斜めに横断する傾斜ブレーク溝8がブレークされ該四隅に形成された傾斜部分を有する矩形状のセラミック基板」と、本件発明1とは、「多数の回路形成部を有するセラミックス基板部と縁部とを有するとともに、縁部の外周部の四隅の角部が除去された部分を有する矩形状のセラミックス集合基板」である点で共通し、セラミックス基板部及びセラミックス集合基板に関し、本件発明1は「窒化珪素系」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違し、さらに、角部が除去された部分に関し、本件発明1は「面取り部」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
b 本件発明1は「前記面取り部の壁面がレーザ加工面で構成され、0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRaを有」するのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
c 本件発明1は「前記面取り部を除いた基板側面が、基板表面から厚さ方向に順にレーザ加工面と破断面とで構成され」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
d 上記aを踏まえれば、引用発明の「セラミック基板の側面は、傾斜部分の断面に直接接続され、該側面と傾斜部分の断面とが接続する角部が尖った形状である」ことと本件発明1の「前記基板側面の破断面が前記面取り部の壁面に直接接続し、前記基板側面の破断面と前記面取り部の壁面とが接続する稜角部分が先鋭形状を有している」こととは、「基板側面が角部が除去された部分の壁面に直接接続し、前記基板側面と角部が除去された部分の壁面とが接続する稜角部分が先鋭形状を有している」点で共通する。
ただし、直接接続され、稜角部分を形成する構成に関し、本件発明1は「基板側面の破断面」と「面取り部の壁面」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
上記aないしdにより、本件発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点を有しているものと認められる。
(一致点)
「多数の回路形成部を有するセラミックス基板部と縁部とを有するとともに、縁部の外周部の四隅の角部が除去された部分を有する矩形状のセラミックス集合基板であって、
基板側面が角部が除去された部分の壁面に直接接続し、前記基板側面と角部が除去された部分の壁面とが接続する稜角部分が先鋭形状を有しているセラミックス集合基板。」
(相違点1)
セラミックス基板部及びセラミックス集合基板に関し、本件発明1は「窒化珪素系」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。
(相違点2)
角部が除去された部分に関し、本件発明1は「面取り部」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。
(相違点3)
本件発明1は「前記面取り部の壁面がレーザ加工面で構成され、0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRaを有」するのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。
(相違点4)
本件発明1は「前記面取り部を除いた基板側面が、基板表面から厚さ方向に順にレーザ加工面と破断面とで構成され」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。
(相違点5)
直接接続され、稜角部分を形成する構成に関し、本件発明1は「基板側面の破断面」と「面取り部の壁面」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。
(イ)判断
事案に鑑み、まず相違点2及び相違点3について検討する。
a 相違点2について
(a)引用発明の「傾斜部分」は、ダミー部2の外縁の四隅をそれぞれ斜めに横断する傾斜ブレーク溝8がブレークされて形成されるものであるところ、引用文献1の段落【0019】には「各単位に分割するにあたっては、まず、傾斜ブレーク溝8に沿って基板1のダミー部2の隅角(四隅)9をブレークする(図1~3参照)。・・・したがって、現出した最外側の縦及び横のブレーク溝3a,4aに沿って折り取るようにすれば、周縁のダミー部2が除去され、基板1は図5に示したようにその本体部11のみとなる。」と記載されている。
してみると、「傾斜部分」は、セラミックス集合基板のダミー部2を除去する工程において傾斜ブレーク溝8をブレークして一時的に形成されるものであり、また、引用文献1の段落【0022】によれば、「傾斜ブレーク溝8」はダミー部2の除去を容易とするために設けられるものであるから、「傾斜部分」は「面取り部」とはいえない。
よって、引用発明は「縁部の外周部の四隅に面取り部を有する」ものではない。
(b)そして、引用文献1の記載を参酌しても、除去される「ダミー部2」の「外縁の四隅」に面取り部を形成する特段の理由も見当たらないことから、引用発明の「ダミー部2の外縁の四隅」にあえて面取り部を有するよう構成することは、当業者に動機づけられないことである。
さらに、引用文献2に記載された技術事項1ないし2(「(1)イ(イ)ないし(ウ)」を参照)、引用文献3に記載された技術事項(「(1)ウ(イ)」を参照)、引用文献4に記載された技術事項(「(1)エ(イ)」を参照)、引用文献5に記載された技術事項(「(1)オ(イ)」を参照)、引用文献6に記載された技術事項(「(1)カ(イ)」を参照)のいずれにも、「セラミックス集合基板」の「縁部の外周部の四隅」に「面取り部」を有するよう構成することは、記載も示唆もされていないから、引用発明に、引用文献2ないし6に記載された各技術事項を採用したとしても、相違点2に係る構成を導き出すことはできない。
b 相違点3について
(a)仮に、引用発明の「傾斜部分」と本願発明の「面取り部」とが実質的に同じであるとしても、以下に述べるように相違点3に係る構成を導き出すことはできない。
(b)甲第2、5、6号証に記載された各技術事項には、「セラミックス集合基板」の四隅の「面取り部の壁面をレーザ加工面」で構成すること、及び、「面取り部の壁面」が「0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRaを有」するよう構成することは何等記載されていない。
また、甲第3号証に記載された技術事項には、集合基板から分割されたセラミックス基板の四隅にレーザ切断加工により面取り部を形成することが記載されているものの、「面取り部の壁面」が「0.1μm以上0.3μmの算術平均表面粗さRaを有」するよう構成することは記載されていない。
そして、甲第4号証に記載された技術事項には、レーザ加工によるスクライブラインまたはスクライブドットに沿って分割されたセラミックス基板の側面に研磨加工を施し側面部の表面粗さRaの最大値を0.3、最小値を0.2μmとすることが記載されているものの、「セラミックス集合基板」の四隅の「面取り部の壁面をレーザ加工面」で構成することは記載されていない。
してみると、引用発明に、引用文献2ないし6に記載された各技術事項を採用したとしても、相違点3に係る構成を導き出すことはできない。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、相違点1、4、5について検討するまでもなく、引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし6に記載された各技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものではない。
イ 本件発明2ないし4
本件発明2ないし4は、本件発明1に係る構成を備えて更に限定したものであるから、本件発明1に対して述べた上記理由と同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし6に記載された各技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものではない。
(3)進歩性についての異議申立人の主張について
ア 甲第1号証に記載された発明について
異議申立人は、甲1発明は、段落0015~0019、図1、図5に、多数の要素を有する基板本体部11と、ダミー部2とを設け、回路基板を多数個取りするための分割用の連続溝がレーザ加工により設けられたセラミックス集合基板において、 ダミー部2の四隅に傾斜ブレーク溝8を形成する矩形の基板1を記載しており、本件発明1の「多数の回路形成部を有する窒化珪素系セラミックス基板部と縁部とを有」すること、「前記縁部の外周部の四隅に面取り部を有する矩形状の窒化珪素系セラミックス集合基板」とに一致している旨主張する。(異議申立書10頁18ないし25行を参照)
しかし、上記「(2)ア(イ)a(a)」で述べたように、引用発明は、「縁部の外周部の四隅に面取り部を有する」ものではない。
よって、異議申立人の主張は採用できない。
イ 甲第3号証に記載された発明について
異議申立人は、甲3発明は、段落0042、図3(b)、図8に、四隅の面取り部については、板厚を貫通するレーザ切断加工により形成し、セラミックス基板1の側面の破断面が面取り部の壁面に直接接続することを記載しており、本件発明1の「前記面取り部の壁面がレーザ加工面で構成され、0.1μm以上0.3/μm未満の算術平均表面粗さRaを有」することの一部と一致している旨主張する。(11頁15ないし21行を参照)
しかし、上記「(1)ウ(イ)」で述べたように、甲第3号証(引用文献3)に記載された「面取り部」は、集合基板が分割されたセラミックス基板の四隅に形成されるものであり、「セラミックス集合基板」の「四隅」に形成されるものではない。
そして、上記「(2)ア(イ)a(b)」で述べたように、甲第3号証には、「セラミックス集合基板」の「四隅」に「面取り部」を有するよう構成することは、記載も示唆もされていない。
よって、異議申立人の主張は採用できない。
ウ 甲第4号証に記載された発明について
異議申立人は、甲4発明は、段落003、0043、0044の表4「実施例22」に、レーザ加工面において、レーザ加工後に研磨加工を行った後のレーザ加工側面の表面粗さRaの最小値が0.2μmであり、Raの最大値が0.3μmあることを記載しており、本件特許発明1の「前記面取り部の壁面がレーザ加工面で構成され、0.1μm以上0.3/μm未満の算術平均表面粗さRaを有」することの他部と一致している旨主張する。(12頁4ないし9行を参照)
しかし、「(1)エ(イ)」で述べたように、引用文献4に記載された「実施例22」のセラミックス基板の側面は、「セラミックス基板にレーザ加工によるスクライブ加工を施し、スクライブラインまたはスクライブドットに沿ってセラミックス基板を分割し、分割したセラミックス基板の側面に研磨加工を施」されたものであるから、「レーザ加工面で構成され」ているとはいえない。
また、上記「(2)ア(イ)a(b)」で述べたように、甲第4号証(引用文献4)には、「セラミックス集合基板」の「縁部の外周部の四隅」に「面取り部」を有するよう構成することは、記載も示唆もされていない。
よって、異議申立人の主張は採用できない。
エ 甲第2号証に記載された発明について
(ア)甲異議申立人は、甲第2号証に記載された発明について以下のように主張する。
a 甲第2号証には、ファイバレーザの照射で形成された分割用の連続構が記載され、同段落0040に記載されたレーザ条件と本件特許明細書に記載の実施例1と異なっているのは繰返速度のみである。また、移動速度100mm/secにおいて、同段落0048の表3の試作No16でレーザ加工面の算術平均粗さRaが0.4μmのものが記載され、試作No16において、表2の「分割性 不良数で表示」の欄が「〇」であることが示され、同段落0044に、「スクライブラインに沿って割れなかったh場合や分割面のクラックやバリの発生状態を目視で観察して分割性として評価した」と記載されている。
そして、本件特許の出願段階で提出された意見書(2021年2月16日付提出)において、特許出願人は、「亀裂の進展や欠けの発生を抑制できる」と主張し、また本件特許明細書の段落0044、0051にバリや割れが抑制できることが記載されている。
してみると、本件特許明細書においてRaが0.4μmのものが比較例になっていないため、「前記面取り部の壁面がレーザ加工面で構成され、0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRaを有」することが示すRaが0.4μmの場合と0.3μm未満との分割性の違いはない。(12頁12行ないし13頁15行を参照)
b 本件特許明細書の段落0031の記載から、走査速度を変えれば表面粗さRaが制御できると考えられる。
ここで、甲第2号証の図10に、ファイバレーザを用いたスクライビングの高速化の具体的な数値として7200mm/分(秒単位に変換すると120mm/sec)が記載され、甲第2号証の段落0040に記載の実施例(移動速度100mm/sec)よりも高速化が可能であったこと、つまり、甲第2号証に記載の試作No16よりもさらに高い走査速度で操作が可能であったことが記載されている。
よって、甲第2号証には、表面粗さRaが0.4μmである試作品No16の場合よりも高い走査速度でRaを制御することが示唆されているといえる。
以上のように、甲第2号証には、本件特許発明1の「前記面取り部の壁面がレーザ加工面で構成され、0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRaを有し」が示唆されているといえる。(13頁16行ないし14頁4行を参照)
(イ)しかしながら、下記に述べるように異議申立人の上記主張は採用できない。
a まず、上記「(2)ア(イ)a(b)」で述べたように、甲第2号証には、「セラミックス集合基板」の「縁部の外周部の四隅」に「面取り部」を有するよう構成することは、記載も示唆もされていない。
b また、本件特許明細書の段落【0042】には、実施例1においてファイバレーザ(波長:1.06μm、出力100W、発振周波数:50kHz)を用いて、窒化珪素系セラミックス焼結基板1にスリット状の角ブレークライン14を形成する際の条件は、「ファイバレーザビームスポットの直径:35μm、ビームスポットの走査速度:200mm/s、ビームスポットの照射ピッチ:4μm、ビームスポットの走査回数:10回」であるところ、甲第2号証の表2及び表3に示された試料No16において、ファイバーレーザでスクライブ溝を形成する際の条件として段落【0040】に「ファイバーレーザ7の波長は1.06μmで、50KHzで発振させながら移動速度100mm/secの繰返速度で照射した。」と記載されているのみであり、ビームスポットの直径、照射ピッチ、走査回数等において本願明細書に記載された上記条件と一致しているか不明である。
そして、甲第2号証の表3によれば、レーザ加工面の算術平均粗さRa2の最小値は、試料No16の「0.4μm」であり、甲第2号証からレーザ加工面の算術平均粗さRa2が0.4μm未満のものが試料No16と同様な「分割性」を得られるのか不明であるところ、異議申立人は、甲第2号証において算術平均粗さRa2が0.4μm未満のものが試料No16と同様な「分割性」を得られることを裏付ける証拠を提示していない。
c さらに、甲第2号証の段落【0037】には「分割面はスクライブ溝21のレーザ加工面211と分割時の破断面212とからなるが、本発明に係わるレーザスクライブは、高出力のパルスを高周期で発振して行うもので、例えば50KHzで発振させながら移動速度100mm/secでスクライブ加工を行うと、移動方向のずれ量(ピッチ)は2μmであり、側面及び底面の凹凸が小さな連続した溝が形成される。このようなスクライブ溝21に曲げ力を作用させると、スクライブ溝21の底部から破断されていくが、スクライブ溝底面は凹凸が少なく滑らかであるため、レーザ加工部と破断面との境界となる破断線部213は上下左右のぶれ量frが小さくほぼ直線状となる。これによって破断力の偏向性がなくなり、セラミックス基板1の寸法精度の悪化や、面粗さの増加そして強度の低下が抑制される。なお、移動速度は80~120mm/secまで変えてスクライブ加工を行ったが結果は変わらなかった。」(下線は、当審で付与した)との記載されている。
してみると、甲第2号証の図10に、試作No16におけるファイバレーザの移動速度100mm/secより高い「7200mm/分」(秒単位に変換すると120mm/sec)が示されているとしても、当該「7200mm/sec」の移動速度でスクライブ加工を行い、試料No16の算術平均粗さRa0.4μmよりも小さいRaを得ることが可能であるか不明である。
d 以上から、甲第2号証には、本件発明1の「前記面取り部の壁面がレーザ加工面で構成され、0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRaを有」することが示唆されているとはいえない。
オ 甲第5号証に記載された発明について
異議申立人は、甲第5号証には、Fig5として空気中においてYAGレーザの第4高調波を走査させる方法において、走査速度を6μm/sから60μm/sにおいて実施し、Raが0.3μm未満にすることができることが示され、また、甲第5号証には、流水を用いることで空気中と比較して熱的影響を抑えることができることが記載されていることから、本件発明1の「前記面取り部の壁面がレーザ加工面で構成され、0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRaを有」することは単に「レーザ加工面」と限定しただけであるので、甲第5号証には、本件発明1の「前記面取り部の壁面がレーザ加工面で構成され、0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRaを有」することが示唆されているといえると主張する。
しかし、上記「(1)オ(イ)」で述べたように、甲第5号証(引用文献5)には、大気中においてYAGレーザ第四高調波を用いてSi3N4に溝加工を行い、走査速度を6μm/sから60μm/s変化させた場合、溝の底面の表面粗さRaが略0.3μm以下であることが記載されているものの、「セラミックス集合基板」及び「セラミックス集合基板」の四隅に形成する「面取り」に係る記載や示唆は何等記載されていない。
してみると、甲第5号証には、本件発明1の「前記面取り部の壁面がレーザ加工面で構成され、0.1μm以上0.3μm未満の算術平均表面粗さRaを有」することが示唆されているとはいえない。
よって、異議申立人の主張は採用できない。
カ 有利な効果について
異議申立人は、甲第6号証にレーザを複数回照射する方法が記載され、同段落0019にファイバレーザを用いてもよいことが、同段落0017には、その適用範囲としてスクライビングが、段落0001、0028に加工の対象物としてセラミックス基板や回路基板が記載されている。してみると、本件特許の特許出願人が提出した意見書に記載の「ファイバレーザを用いることの効果、及びファイバレーザを複数回走査させることの効果」は、甲第6号証に記載の方法から明白であり、甲6発明と比較して有利な効果とはいえない。よって、本件特許発明1により得られる作用効果は、甲第6号証から予測し得ない範囲のものではなく、格別な作用効果を奏するものともいえないと主張する。(16頁5ないし22行を参照)
ここで、本件特許明細書の段落【0016】によれば、本件発明1の効果は「窒化珪素系セラミックス焼結基板を辺ブレークラインに沿って折ることにより外側のマージン部を分割除去する際に、窒化珪素系セラミックス集合基板の角部に亀裂や欠けが発生するのが抑制され、もって窒化珪素系セラミックス集合基板の製造歩留りが向上する」ことである。そして、同段落【0026】の「窒化珪素系セラミックス焼結基板1を窒化珪素系セラミックス集合基板12と辺マージン部16とに分割する際に、窒化珪素系セラミックス集合基板12の四隅に亀裂や欠けが生じるのを防止するために、隣接する辺ブレークライン13の各交点15の近傍に、辺ブレークライン13の両方と交差する各角ブレークライン14を形成する。」、同段落【0031】の「亀裂や粒子状突起が少ない角ブレークライン14の内面(面取り部の壁面)は、・・・ファイバレーザビームスポットを使用でき」との各記載によれば、ファイバレーザにより角ブレークライン14を形成、即ち、ファイバレーザにより面取り部を形成することにより、窒化珪素系セラミックス焼結基の外側のマージン部を分割除去する際に、窒化珪素系セラミックス集合基板の角部に亀裂や欠けが発生することを抑制するという効果を奏するものといえる。
しかし、上記「(1)カ(イ)」で述べたように、甲第6号証には、回路基板、セラミック基板等の被加工物に対しファイバーレーザを使用してスクライビング加工を行う際、レーザー光を同一領域に対し複数回走査して行うことが記載されているものの、「セラミックス集合基板」の四隅に「面取り部の壁面」を「レーザ加工面」で構成することは全く記載されていない。
してみると、本件発明1の効果は、甲第6号証から当業者が容易に予測し得るものではなく、格別な作用効果を奏するものといえる。
よって、異議申立人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上から、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし請求項4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700148