特許拒絶査定不服審判
2024-009213
電気機器、機器ユニット及び制御システム
- 審判番号
- 2024-009213
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-028141
- 請求日
- 2024年06月04日
- 審決日
- 2025年02月25日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【請求人代理人】新居 広守
- 【請求人代理人】寺谷 英作
- 【請求人代理人】道坂 伸一
- 審判長/審判官
- 審判長 篠塚 隆
- 審判官 野崎 大進
- 審判官 山澤 宏
- 分類
- P18 .121-Z (H05K) / P18 .575-Z (H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 28141「電気機器、機器ユニット及び制御システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月 9日出願公開、特開2021-132182〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年2月21日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 5年 9月26日付け:拒絶理由通知
令和 5年12月 4日 :意見書、手続補正書の提出
令和 6年 2月29日付け:拒絶査定
令和 6年 6月 4日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年6月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年6月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
施設に設けられた照明装置を含む設備システムを制御する電気機器であって、
筐体と、
制御回路が実装される第1基板と、
記憶媒体が挿入される挿入コネクタが実装される第2基板とを備え、
前記挿入コネクタは、前記記憶媒体の挿入方向が前記第2基板の基板面に沿った方向となるように、前記第2基板に実装され、
前記第1基板は、前記第1基板の基板面が前記筐体の前面部に沿った姿勢で、前記筐体内に配置され、
前記第2基板は、前記第2基板の基板面が前記第1基板の基板面の延長面に対して交差する姿勢で、前記筐体内に配置され、
前記挿入コネクタの挿入口は、前記筐体の前記前面部から露出している
電気機器。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和5年12月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
施設に設けられる設備システムを制御する電気機器であって、
筐体と、
制御回路が実装される第1基板と、
記憶媒体が挿入される挿入コネクタが実装される第2基板とを備え、
前記挿入コネクタは、前記記憶媒体の挿入方向が前記第2基板の基板面に沿った方向となるように、前記第2基板に実装され、
前記第1基板は、前記第1基板の基板面が前記筐体の前面部に沿った姿勢で、前記筐体内に配置され、
前記第2基板は、前記第2基板の基板面が前記第1基板の基板面の延長面に対して交差する姿勢で、前記筐体内に配置され、
前記挿入コネクタの挿入口は、前記筐体の前記前面部から露出している
電気機器。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明の「設備システム」について、「照明装置を含む」との限定を付加するものであり、そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。したがって、請求項1についての本件補正は特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か(特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否か)を検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献、引用発明
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載事項
原査定の理由において引用された、特開2019-80790号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審において付加した。以下、同じ。)
A 「【図1】
[図:0001422224000001.jpg]
」
B「【図2】
[図:0001422224000002.jpg]
」
C 「【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る制御装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0010】
[制御装置10および表示器12の概略構成]
本実施の形態の制御装置10と表示器12との概略構成について、図1~図5を参照しながら説明する。
【0011】
制御装置10は、表示器12を制御するための制御装置である。表示器12は、前面14に配置される表示画面16(図2参照)を有する液晶表示ユニットである。なお、表示器12は、他の種類の表示ユニットであってもよい。制御装置10は、例えば、CNC(コンピュータ数値制御)の工作機械の数値制御装置に適用される。この場合、表示器12は、工作機械の操作盤に設けられる。なお、以下の説明では、図2のように、表示器12の表示画面16を正面から見た方向にしたがって、上下、左右および前後の方向を説明する。」
D 「【図4】
[図:0001422224000003.jpg]
」
E 「【0015】
[制御装置10の構成]
制御装置10について、図5~図7を参照しながら説明する。制御装置10は、筐体22と、筐体22内に収納され、表示器12を制御する制御部30と、筐体22内に収納され、制御部30に接続されるバックボード32とを有する。筐体22は、筐体22の前側(表示器12の背面18側)が開口された箱型のケース本体22aと、ケース本体22aの開口部分を塞ぐ底板22bとから構成される。この場合、底板22bの背面18側の面が底面24となる。筐体22(ケース本体22a)において、底面24に隣接する側面のうち、ファンユニット28が取り付けられる側面25に隣接する下側の側面(下面33)には、形状または大きさが異なる複数の開口34が形成されている。
・・・中略・・・
【0019】
制御部30は、複数のスロット36の各々に挿抜可能に収納され、表示器12を制御するメインボード38と複数の制御ボード168とを有する。複数のスロット36(開口34)の形状または大きさが互いに異なるので、メインボード38および複数の制御ボード168の各々は、該当するスロット36に挿入されるように、開口34の形状または大きさに応じた形状または大きさを有する。なお、図1、図4および図5に示すように、制御装置10において、メインボード38は、最も大きなサイズの基板42を有し、かつ、底面24側のスロット36に収納される。また、複数の制御ボード168は、メインボード38よりも小さなサイズの基板42を有する。」
F 「【図13】
[図:0001422224000004.jpg]
」
G 「【図14】
[図:0001422224000005.jpg]
」
H 「【0049】
[表示器12およびユーザ・インターフェース・ユニット20の構成]
表示器12およびユーザ・インターフェース・ユニット20について、図1~図6および図13~図16を参照しながら説明する。
【0050】
表示器12は、図4および図16に示すように、表示器12内の表示画面16(図2参照)よりも背面18側に設けられた制御基板70を有する。制御基板70の表示画面16とは反対側の面(背面18側の面)には、制御装置10を制御基板70に接続するためのコネクタ60と、ユーザ・インターフェース・ユニット20を制御基板70に接続するためのコネクタ72とが設けられている。なお、表示器12は、図2に示すように、前面14に設けられるタッチパネル71と、タッチパネル71の周囲に設けられる複数のソフトキー73とを有する。
【0051】
図4、図6および図14に示す制御基板70は、表示器12の各部(例えば、図2のタッチパネル71および複数のソフトキー73)を制御する制御部である。図3に示すように、表示器12の背面18における左右の係止部64および2つの位置決め部66の内側には、背面板74が装着されている。制御基板70は、背面板74によって後方から覆われることで、表示器12内に収納される。なお、図4および図16では、表示器12から背面板74を取り外した状態を図示している。
【0052】
コネクタ60は、前述のように、制御装置10のコネクタ58(図6参照)に接続されるコネクタである。コネクタ60は、制御基板70の背面18側の面における上側の箇所に設けられ、背面板74の一部を切り欠いた部分から後方に露出している(図3参照)。コネクタ72は、制御基板70の背面18側の面における下側の箇所に設けられ、背面板74の一部を切り欠いた部分から後方に露出している。したがって、表示器12の背面18には、2つのインターフェース接続用のコネクタ60、72が、異なる場所にそれぞれ配置されている。
【0053】
表示器12のコネクタ72近傍には、図4、図13および図14に示すように、前後方向に貫通する断面矩形状の開口部76が形成されている。図2に示すように、表示器12の前面14には、開口部76を前方から覆う蓋78が設けられている。
【0054】
ユーザ・インターフェース・ユニット20は、図13~図15に示すように、表示器12側に開口する袋状の樹脂製のケース80と、表示器12の前後方向に延びてケース80内に収納されるインターフェース用基板82と、インターフェース用基板82の一方の面(表示器12の左側の面)に設けられる2つのインターフェース接続部84、86と、インターフェース用基板82の他方の面(表示器12の右側の面)に設けられるコネクタ88とを有する。2つのインターフェース接続部84、86は、インターフェース用基板82の一方の面において、上下方向に並んで配置されている。また、ケース80は、コネクタ88を収納するため、右側に膨出した形状を有する。
【0055】
インターフェース接続部84は、インターフェース用基板82の一方の面において、前後方向に設けられたUSB(Universal Serial Bus)コネクタである。一方、インターフェース接続部86は、インターフェース用基板82の一方の面において、前後方向に設けられたメモリカードコネクタである。なお、各インターフェース接続部84、86は、他の種類のインターフェースコネクタであってもよい。
【0056】
コネクタ88は、制御基板70のコネクタ72に接続されるコネクタである。この場合、コネクタ88は、コネクタ72との接続時における誘い込み、位置ズレの吸収および挿入性の向上のため、フローティングコネクタであることが望ましい。また、前述のように、インターフェース用基板82が表示器12の前後方向に延び、一方で、制御基板70が表示器12の背面18と平行に延びている。そのため、制御基板70のコネクタ72と、ユーザ・インターフェース・ユニット20のコネクタ88とは、垂直接続コネクタであることが望ましい。
【0057】
ここで、前述のように、表示器12の背面18に制御装置10を取り付けると、制御装置10のコネクタ58と、制御基板70のコネクタ72とが接続される。
【0058】
一方、ユーザ・インターフェース・ユニット20を表示器12の背面18に接近させ、コネクタ88と、制御基板70のコネクタ72とを接続すると、制御基板70に対してインターフェース用基板82が垂直に配置された状態で、インターフェース用基板82と制御基板70とが接続される。これにより、ユーザ・インターフェース・ユニット20が表示器12の背面18に取り付けられる。この場合、開口部76およびコネクタ88は、ケース80によって後方から覆われる。また、2つのインターフェース接続部84、86は、開口部76に配置される。
【0059】
したがって、表示器12を正面から見た状態でオペレータが蓋78を開いた場合、開口部76を介して、2つのインターフェース接続部84、86を視認することができる。オペレータは、表示器12の前面14から開口部76を介して、USBコネクタ90をインターフェース接続部84に差し込むことができる。なお、USBコネクタ90は、メモリまたはキーボード等の外部装置に接続される。また、オペレータは、表示器12の前面14から開口部76を介して、SD(SecureDigital)カード等のメモリカード92をインターフェース接続部86に挿入することができる。
【0060】
このように、本実施の形態では、簡単な構成で、表示器12と制御装置10、ならびに、表示器12とUSBコネクタ90およびメモリカード92とを接続することができる。また、オペレータが開口部76を介して2つのインターフェース接続部84、86に容易にアクセスできるので、インターフェース接続部84、86と、USBコネクタ90およびメモリカード92とを一層容易に接続することができる。さらに、制御基板70から、各コネクタ72、88、インターフェース用基板82およびインターフェース接続部84、86を介して、制御装置10の信号または情報をUSBコネクタ90経由で外部装置に出力し、または、情報をメモリカード92に記憶することができる。なお、情報が記憶されたメモリカード92は、インターフェース接続部86から取り出され、外部装置に接続される。」
I 上記C、図1の記載から、引用文献1には、制御装置10と表示器12を有する電気機器、が記載されているといえる。
(イ)引用発明
以上、上記(ア)から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「制御装置10と表示器12を有する電気機器であって、
制御装置10は、表示器12を制御するための制御装置であって、
制御装置10は、筐体22と、筐体22内に収納され、表示器12を制御する制御部30と、筐体22内に収納され、制御部30に接続されるバックボード32とを有し、
表示器12は、表示器12内の表示画面16よりも背面18側に設けられた制御基板70を有し、
制御基板70の表示画面16とは反対側の面(背面18側の面)には、制御装置10を制御基板70に接続するためのコネクタ60と、ユーザ・インターフェース・ユニット20を制御基板70に接続するためのコネクタ72とが設けられており、
表示器12は、前面14に設けられるタッチパネル71と、タッチパネル71の周囲に設けられる複数のソフトキー73とを有し、
制御基板70は、表示器12の各部(例えば、タッチパネル71および複数のソフトキー73)を制御する制御部であって、
表示器12の背面18における左右の係止部64および2つの位置決め部66の内側には、背面板74が装着され、制御基板70は、背面板74によって後方から覆われることで、表示器12内に収納されており、
コネクタ60は、制御基板70の背面18側の面における上側の箇所に設けられ、背面板74の一部を切り欠いた部分から後方に露出しており、コネクタ72は、制御基板70の背面18側の面における下側の箇所に設けられ、背面板74の一部を切り欠いた部分から後方に露出しているものであって、
表示器12のコネクタ72近傍には、前後方向に貫通する断面矩形状の開口部76が形成され、表示器12の前面14には、開口部76を前方から覆う蓋78が設けられており、
ユーザ・インターフェース・ユニット20は、表示器12側に開口する袋状の樹脂製のケース80と、表示器12の前後方向に延びてケース80内に収納されるインターフェース用基板82と、インターフェース用基板82の一方の面(表示器12の左側の面)に設けられる2つのインターフェース接続部84、86と、インターフェース用基板82の他方の面(表示器12の右側の面)に設けられるコネクタ88とを有し、
インターフェース接続部86は、インターフェース用基板82の一方の面において、前後方向に設けられたメモリカードコネクタであって、
ユーザ・インターフェース・ユニット20を表示器12の背面18に接近させ、コネクタ88と、制御基板70のコネクタ72とを接続すると、制御基板70に対してインターフェース用基板82が垂直に配置された状態で、インターフェース用基板82と制御基板70とが接続されるものであって、
表示器12を正面から見た状態でオペレータが蓋78を開いた場合、開口部76を介して、2つのインターフェース接続部84、86を視認することができ、また、オペレータは、表示器12の前面14から開口部76を介して、SD(Secure Digital)カード等のメモリカード92をインターフェース接続部86に挿入することができるものである、
電気機器。」
イ 参考文献1、参考文献2
(ア)参考文献1
本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2013-220513号公報(以下、「参考文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
A 「【図1】
[図:0001422224000006.jpg]
」
B 「【図2】
[図:0001422224000007.jpg]
」
C 「【0020】
<CNC旋盤の構成>
まず、本実施形態のCNC旋盤の構成について説明する。図1に、本実施形態のCNC旋盤の外観斜視図を示す。図2に、同CNC旋盤の内部斜視図を示す。図1、図2に示すように、CNC旋盤1は、制御装置と、全体カバー3と、工具台4と、照明装置5と、主軸台6と、ベッド7と、表示装置8と、仕切壁9と、を備えている。」
(イ)参考文献2
本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2013-154412号公報(以下、「参考文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
A 「【図1】
[図:0001422224000008.jpg]
」
B 「【0017】
(1)工作機械の構成:
図1~8は、本発明に係る工作機械をNC(Numerical Control)旋盤1に適用した例を示している。図1では、所定位置にNC装置10が設けられたNC旋盤1の外観の一例を正面から簡易的に示している。NC装置10は、操作受付部20や表示部30を備えるコンピュータであり、加工部122の動作を数値制御する際の制御主体となる。NC装置10は、インターロック条件成立時に加工部122の動作を制限又は禁止するインターロック手段U1を備える。また、NC装置10は、モーメンタリスイッチ(イネーブルスイッチSW1,SW2)のモーメンタリ動作時にインターロック手段U1による制限又は禁止の少なくとも一部を解除可能な解除手段U2を備える。
【0018】
NC旋盤1は、外装110に略全体が覆われている。外装110の内部には、加工室120が形成されている。外装110は、加工室120の上側を開閉可能な可動式保護ガード(扉)130を有している。図1に示すガード130は、加工室120を閉鎖した状態(閉状態)であり、NC旋盤1の一部を上から覆う箱状の蓋体とされている。ガード130には、把手130aが形成されている。
なお、ガードに覗き窓を取り付けると、この覗き窓を通して目視確認しながら作業を行うことができる。
【0019】
加工室120内には、ワークW1を加工するための加工部122が収容されている。この加工部122を照らすため、照明装置150がNC旋盤1に設けられている。」
(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「制御装置10と表示器12を有する電気機器」と、本件補正発明の「施設に設けられた照明装置を含む設備システムを制御する電気機器」とは、後記の点で相違するものの、「電気機器」の点では共通する。
イ 引用発明の実施例である図1、図2を参照すると、「制御装置10と表示器12を有する電気機器」の外装は、「表示器12」の「前面14」、「表示器12」の枠状の側面、「表示器12」の「背面18」に取り付けられている「制御装置10」、「ユーザ・インターフェース・ユニット20」の外装からなっており、これらの部分が「制御装置10と表示器12を有する電気機器」の筐体を構成しているものと認められる。
そして、引用発明のこの筐体は、本件補正発明の「筐体」に相当する。
ウ 引用発明の「制御基板70」は、「表示器12の各部(例えば、タッチパネル71および複数のソフトキー73)を制御する制御部」であるから、「制御基板70」には何らかの制御回路が実装されていることは明らかである。
したがって、引用発明の「制御基板70」は、本件補正発明の「制御回路が実装される第1基板」に相当する。
エ 引用発明の「メモリカード92」は、本件補正発明の「記憶媒体」に相当する。
また、引用発明の「インターフェース接続部86」は、「メモリカードコネクタ」であるから、本件補正発明の「記憶媒体が挿入される挿入コネクタ」に相当する。
そして、引用発明の「インターフェース用基板82」は、「一方の面において、前後方向に」「メモリカードコネクタ」が設けられるものであるから、引用発明の「インターフェース用基板82」は、本件補正発明の「記憶媒体が挿入される挿入コネクタが実装される第2基板」に相当する。
オ また、引用発明は、「インターフェース接続部86は、インターフェース用基板82の一方の面において、前後方向に設けられ」るものであって、また、「メモリカード92」は「表示器12の前面14」の「前後方向に貫通する」「開口部76」から挿入されるものであるから、「インターフェース接続部86」は、「メモリカード92」の挿入方向が「インターフェース用基板82」の基板面に沿った方向となるように、「インターフェース用基板82」に実装されているといえる。
したがって、上記ウの点も踏まえると、引用発明の「インターフェース接続部86は、インターフェース用基板82の一方の面において、前後方向に設けられ」ることは、本件補正発明の「前記挿入コネクタは、前記記憶媒体の挿入方向が前記第2基板の基板面に沿った方向となるように、前記第2基板に実装され」ることに相当する。
カ 引用発明の「制御基板70」は、「表示器12内に収納され」ているものであって、また、引用発明の実施例である図4を参照すると、基板面が「表示器12」の「前面14」に沿った姿勢で、「表示器12」内に配置されている。
したがって、上記イの点も踏まえると、引用発明の「制御基板70」が「表示器12内に収納され」ることは、本件補正発明の「前記第1基板は、前記第1基板の基板面が前記筐体の前面部に沿った姿勢で、前記筐体内に配置され」ることに相当する。
キ また、引用発明は「制御基板70に対してインターフェース用基板82が垂直に配置された状態で、インターフェース用基板82と制御基板70とが接続されるものであ」って、また、「インターフェース用基板82」の「インターフェース接続部86」には「メモリカード92」が挿入されるものであるから、引用発明の「インターフェース用基板82」は、「インターフェース用基板82」の基板面、又は基板面の延長面が「制御基板70」の延長面に対して交差する姿勢で、「表示器12」内に配置されているといえる。
してみると、上記イの点も踏まえると、引用発明の「制御基板70に対してインターフェース用基板82が垂直に配置された状態で、インターフェース用基板82と制御基板70とが接続される」ことと、本件補正発明の「前記第2基板は、前記第2基板の基板面が前記第1基板の基板面の延長面に対して交差する姿勢で、前記筐体内に配置され」ることとは、後記の点で相違するものの、「前記第2基板は、前記第2基板の基板面を含む面が前記第1基板の基板面の延長面に対して交差する姿勢で、前記筐体内に配置され」ることの点では共通する。
ク 引用発明では、「表示器12を正面から見た状態でオペレータが蓋78を開いた場合、開口部76を介して、2つのインターフェース接続部84、86を視認することができ」るものであるから、引用発明の「インターフェース接続部84」の「メモリカード92」を挿入する挿入口は、「表示器12」の「前面14」から露出可能といえる。
してみると、上記イの点も踏まえると、引用発明と、本件補正発明の「前記挿入コネクタの挿入口は、前記筐体の前記前面部から露出している」こととは、後記の点で相違するものの、「前記挿入コネクタの挿入口は、前記筐体の前記前面部から露出可能である」ことの点では共通する。
したがって、本件補正発明と引用発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致し、また、相違している。
<一致点>
「電気機器であって、
筐体と、
制御回路が実装される第1基板と、
記憶媒体が挿入される挿入コネクタが実装される第2基板とを備え、
前記挿入コネクタは、前記記憶媒体の挿入方向が前記第2基板の基板面に沿った方向となるように、前記第2基板に実装され、
前記第1基板は、前記第1基板の基板面が前記筐体の前面部に沿った姿勢で、前記筐体内に配置され、
前記第2基板は、前記第2基板の基板面を含む面が前記第1基板の基板面の延長面に対して交差する姿勢で、前記筐体内に配置され、
前記挿入コネクタの挿入口は、前記筐体の前記前面部から露出可能である
電気機器。」
<相違点1>
「電気機器」が、本件補正発明では、「施設に設けられた照明装置を含む設備システムを制御する」ものであるのに対して、引用発明では、その旨の特定がされていない。
<相違点2>
「基板面を含む面」が、本件補正発明では、「基板面」であるのに対して、引用発明では、基板面、又は基板面の延長面である点。
<相違点3>
「前記挿入コネクタの挿入口」が、本件補正発明では、「前記筐体の前記前面部から露出している」のに対して、本件補正発明では、「蓋78を開いた場合」に、露出している点。
(4)判断
上記各相違点について検討する。
<相違点1>について
引用発明の電気機器をどのような装置に用いるかは、当業者が適宜選択なし得た事項であって、さらに、引用文献1の段落【0011】には、「制御装置10は、例えば、CNC(コンピュータ数値制御)の工作機械の数値制御装置に適用される。この場合、表示器12は、工作機械の操作盤に設けられる。」と記載されている。してみると、引用発明の電気機器は、工場(施設)に設けられるCNC(コンピュータ数値制御)の工作機械の数値制御装置(設備システム)の操作盤として用いることができるものであって、また、操作盤として引用発明の電気機器を用いた際には、表示器12は数値制御装置の制御をしているといえる。
また、通常、CNC(コンピュータ数値制御)の工作機械の数値制御装置は照明装置を含むものである(必要であれば、参考文献1、2(上記(2)イ(ア)、(イ))等参照)。
してみると、引用発明の電気機器を、照明装置を含む通常のCNC(コンピュータ数値制御)の工作機械の数値制御装置に用いることで、上記相違点1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点2>について
引用発明の実施例である図4を参照すると、「インターフェース用基板82」の基板面が「制御基板70」の延長面に対して交差していることが看取でき、相違点2は実施的な相違点ではない。
また、引用発明が、「インターフェース用基板82」の基板面の延長面と、「制御基板70」の基板面の延長面が交差しているとしても、引用発明において、「開口部76」に対して「インターフェース接続部84、86」を有する「インターフェース用基板82」をどの程度近づけて配置するかは、「メモリカード92」の挿入のし易さ等を鑑みて、当業者が設計時に適宜変更なし得る事項である。
したがって、引用発明において、「インターフェース用基板82」に「開口部76」を近づけて配置することで、上記相違点2の構成とすることも、当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点3>について
引用発明においては、「蓋78を開いた場合」には、「開口部76」が露出しており実質的な相違点とはいえない。
仮に相違点であるとしても、記憶媒体を挿入する挿入口に蓋を設けられないようにすることは、当業者によく知られおり、蓋を設けるか否かは設計的事項に過ぎない。
したがって、本件補正発明は、引用発明において「蓋78」を設けないことで上記相違点3の構成とすることも、当業者が容易に想到し得たことである。
また、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
よって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、上記相違点1に関して、以下のように主張している。
「(c)本願発明と引用発明との対比
本願発明の電気機器は、施設に設けられた照明装置を含む設備システムを制御する電気機器でありますが、引用文献1は上述したように液晶表示ユニットを制御する制御装置を開示するものであり、本願発明とは相違しております。
・・・中略・・・
しかしながら、引用文献1に記載された発明は、各プリント配線板ユニットが同じ大きさであるため、接続対象のプリント配線板ユニットを、他のプリント配線板ユニットが挿入されるガイド溝に挿入してバックボードに誤接続する可能性があるという課題を解決するものであり(段落0004)、このバックボードは液晶表示ユニットを制御する制御装置に関する発明であります。
これに対し本願発明は、筐体の前面と基板面とが平行となるように回路基板を筐体に配置する場合、筐体の前面に対する側面から記憶媒体を挿入することとなるため、電気機器に対して記憶媒体を取付け及び取外し難くなるという課題を解決するものであり(段落0004)、照明装置を制御する制御装置に関する発明であります。
してみると、引用文献1の課題と本願発明の課題とが全く異なるものであり、引用文献1の「液晶表示ユニット」に関する技術分野と、本願発明の「照明装置」に関する技術分野とが異なるものであると思料致します。
このため、当業者が引用文献1に基づいて「液晶表示ユニット」を「照明装置」に置き換える動機付けが存在せず、当業者が本願発明を容易に想到できるものではないと思料致します。したがって、本願発明は引用文献1に対して、進歩性を有するものと思料致します。」
上記主張について検討するに、前記第2の2(4)で述べたように、引用発明の電気機器は、工場(施設)に設けられた照明を含む工作機械の数値制御装置(設備システム)に用いることができるものであるから、本件補正発明は、当業者が、引用発明に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、上記主張は、採用することができない。
(6)結語
以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和6年6月4日付けの手続補正(本件補正)は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、令和5年12月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は上記第2の1(2)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由の概要
(進歩性)この出願の請求項1-6、9、10に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献Aに記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A:特開2019-80790号公報
3 引用文献、引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献Aの記載事項及び引用発明は、上記第2の2(2)アで引用文献1として記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の2で検討した本件補正発明の「設備システム」について「照明装置を含む」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-009213