特許異議申立
2022-701277
窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法
- 審判番号
- 2022-701277
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-148684
- 登録番号
- 7088245
- 請求日
- 2022年12月20日
- 審決日
- 2023年03月06日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日立金属株式会社
- 【権利者代理人】高石 橘馬
- 【権利者代理人】高石 健二
- 【異議申立人】青木 眞理
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 山田 正文
- 審判官 畑中 博幸
- 分類
- P1651.537-Y (H05K) / P1651.113-Y (H05K) / P1651.121-Y (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7088245号発明「窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7088245号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7088245号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成28年3月14日(優先権主張平成27年3月31日)に出願した特願2016-49805号の一部を令和1年11月27日に新たな特許出願とした特願2019-214110号の一部を令和2年9月4日に新たな特許出願としたものであって、令和4年6月13日にその特許権が設定登録され、令和4年6月21日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年12月20日に特許異議申立人青木眞理(以下、「申立人」という。)により、請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7088245号の請求項1ないし4の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
矩形状の窒化珪素系セラミックス焼結基板から所定のサイズの窒化珪素系セラミックス集合基板を製造する方法において、
前記窒化珪素系セラミックス焼結基板の外縁部に、前記窒化珪素系セラミックス集合基板の四辺に対応する、スクライブ孔からなる連続溝状の辺ブレークラインを形成するとともに、隣接する辺ブレークラインの交点近傍に前記隣接する辺ブレークラインの両方と交差するスリット状の角ブレークラインを形成し、
前記窒化珪素系セラミックス焼結基板を前記辺ブレークラインに沿って折ることにより、前記辺ブレークライン及び前記角ブレークラインより内側の窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分と外側のマージン部とに分割し、前記窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分の表面をクリーニングすることを特徴とする窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法において、前記クリーニングはブラスト処理によって行うことを特徴とする窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法において、前記ブラスト処理によって前記窒化珪素系セラミックス集合基板の表面粗さ調整を行うことを特徴とする窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法において、前記角ブレークラインの形成は前記辺ブレークラインを形成した後に行うことを特徴とする窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法。」
第3 申立理由の概要
申立人の特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
1 申立理由1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
請求項1ないし4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
よって、請求項1ないし4に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 申立理由2 特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について
請求項1ないし4に係る発明は、明確でない。
よって、請求項1ないし4に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
3 申立理由3 特許法第29条第1項第3号(新規性)について
本件請求項1、2、4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものである。
よって、請求項1、2、4に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
4 申立理由4 特許法第29条第2項(進歩性)について
本件請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
よって、請求項1ないし4に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
[証拠]
甲第1号証:特開2008-198905号公報
甲第2号証:特開平9-11221号公報
甲第3号証:西村通喜、長田和真、寺澤章裕、経常研究 製品内側のバリ取り技術の開発、富士吉田:山梨県富士工業技術センター、2015年度、p.56-58
甲第4号証:特開2007-45160号公報
甲第5号証:特開2003-1202号公報
甲第6号証:特開2010-50164号公報
第4 申立理由についての判断
1 申立理由1について
(1)申立人の主張
申立人はサポート要件について、概略以下のように主張している。
本件特許明細書段落0043には、「上記の分離作業の後、アルミナ砥粒を用いた湿式ブラスト処理により、窒化珪素系セラミックス集合基板12の表面および裏面のクリーニングと表面粗さ調整を行った。」との記載がある。このように、製造方法で用いられているクリーニング方法はアルミナ砥粒のみであるにも関わらず、請求項1においてクリーニングがどのような方法まで含むのかが記載されていない。出願時の技術常識を鑑みても、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を、このような構成まで拡張ないし一般化することはできない。その結果、請求項1に係る特許発明は発明の詳細な説明に記載されたものではない。請求項2~4に係る特許発明もまた、請求項1に係る特許発明と同様に発明の詳細な説明に記載されたものではない。(異議申立書第7頁第1ないし14行)
(2)当審の判断
ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、次のとおり記載されている。
「【0009】
従って、本発明の目的は、窒化珪素系セラミックス焼結基板から角部における亀裂や欠けを抑制した窒化珪素系セラミックス集合基板を簡単かつ確実に製造する方法、及びかかる方法により得られた窒化珪素系セラミックス集合基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、発明者等は、窒化珪素系セラミックス焼結基板にスクライブ孔からなる連続溝状の辺ブレークラインとスリット状の角ブレークラインを形成し、窒化珪素系セラミックス焼結基板を辺ブレークラインに沿って分割すると、窒化珪素系セラミックス集合基板を亀裂や欠けなしに分離できることを発見し、本発明に想到した。」
イ 上記段落【0009】、【0010】の記載から、本件の特許発明が解決しようとする課題は、窒化珪素系セラミックス焼結基板から角部における亀裂や欠けを抑制した窒化珪素系セラミックス集合基板を製造することであり、当該課題を解決するための構成は、窒化珪素系セラミックス焼結基板にスクライブ孔からなる連続溝状の辺ブレークラインとスリット状の角ブレークラインを形成し、窒化珪素系セラミックス焼結基板を辺ブレークラインに沿って分割し窒化珪素系セラミックス集合基板を分離することであるといえる。
してみると、請求項1に係る特許発明はクリーニングする手段が如何なるクリーニング手段であっても課題を解決し得るものであり、当該クリーニング手段は窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分の表面をクリーニングし得る手段であれば如何なるクリーニング手段でもよいことは当業者には明らかである。
したがって、請求項1においてクリーニングがどのような方法まで含むのかが記載されていなくとも、請求項1に係る特許発明は発明の詳細な説明に記載されたものである。請求項2~4に係る特許発明も同様である。
よって、請求人の主張は採用できない。
2 申立理由2について
(1)申立人の主張
申立人は明確性要件について、概略以下のように主張している。
ア 請求項1は「前記窒化珪素系セラミックス焼結基板の外縁部に、前記窒化珪素系セラミックス集合基板の四辺に対応する、スクライブ孔からなる連続溝状の辺ブレークラインを形成する」ことを特徴とするが、辺ブレークラインが四辺の各辺の全体的に連続しているものなのか、各辺の部分的に連続しているものなのかが不明である。本件特許明細書の段落0038には「スクライブ孔からなる連続溝状の辺ブレークライン13」と単に記載されているのみで「連続溝状」に関して定義が記載されていない。さらに、段落0021には「各辺ブレークライン13は、・・・ファイバレーザのビームスポットを微小移動させながら連続的に照射することにより形成するのが好ましい。・・・ファイバレーザによる連続溝は、・・・溶融及び飛散物を少なくできる。」と「連続溝」という表現が使用されているが、「連続溝」と「連続溝状」との違いがどのようなものであるかが明白ではなく、「連続溝状」に関して定義されているとはいえない。特に、「状」という表現が、「連続溝」にどの程度近しいものを指すのかが不明瞭である。したがって、全体として連続である場合のみならず、部分的に連続である場合も含むのか否かが不明であり、請求項1に係る特許発明は明確ではない。なお、本件特許図1の辺ブレークラインを示す線は「連続」しておらず断続した点線で示されている。(異議申立書第7頁第21行ないし第8頁第15行)
イ 本件特許図5(a)によると辺ブレークラインは、符号24としてその他の箇所にも存在している。とすれば、その他の辺ブレークラインにおいても同様に連続溝状である辺ブレークラインが存在してもよいものと考えられる。これらを考慮するとブレークラインとは請求項1に係る特許発明に記載の箇所以外にも存在しても良いものであると考えられる。一方、角ブレークラインについては集合基板上の四隅のみに配置したものしか記載されていない。とすれば、請求項1に係る特許発明は角ブレークラインと辺ブレークラインの関係やその配置を限定するのか否が明確ではない。(異議申立書第8頁第15ないし23行)
ウ 請求項1において辺ブレークラインの交点近傍に角ブレークラインを配置させることを記載しているが本件特許図面を参照すると、辺ブレークラインの交点より角ブレークラインの全体が外縁部側にしか実施されていない。本件特許で示す交点近傍とは交点より外縁部側のみを指すのか否かが明細書を参酌してもその定義はなく明確ではない。さらには、近傍とは角ブレークラインのどの場所が近ければ良いのかまた、辺ブレークラインと角ブレークラインがどの程度近ければ近傍と呼ぶのかが明確ではない。加えて、本件特許図9が比較例として示されているように、交点近傍に角ブレークラインが設けられているもののうち、辺ブレークラインの内側に角ブレークラインが施されているものを排除するような特許請求の範囲に限定すべきである。(異議申立書第9頁第3ないし12行)
エ 請求項1は「前記窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分の表面をクリーニングする」ことを特徴とする。当該特徴について表面のどの部分をクリーニングしているのかが不明であり、請求項1に係る特許発明は明確ではない。本件特許明細書を参酌してみても、表面のどの部分をクリーニングしているのかを特定することができない。
また、クリーニングがどのような方法まで含むのかが不明であり、請求項1に係る特許発明は明確ではない。(異議申立書第9頁第13行ないし第10頁第5行)
オ 請求項2~4に係る特許発明は、請求項1に係る特許発明に従属するものであり、かつ、請求項1に係る特許発明を明確にするものでもない。そのため、請求項2~4に係る特許発明もまた明確ではない。(異議申立書第10頁第7ないし9行)
(2)当審の判断
ア 「(1)ア」の主張について
本件特許明細書の段落【0021】の「各辺ブレークライン13は、・・・ファイバレーザのビームスポットを微小移動させながら連続的に照射することにより形成するのが好ましい。辺ブレークライン13は、ミクロ的にはファイバレーザのビームスポットにより形成された多数のスクライブ孔が重なり合った連続した溝となる。・・・ファイバレーザによる連続溝は、・・・溶融及び飛散物を少なくできる。」との記載によれば、辺ブレークラインは、レーザのビームスポットを微小移動させながら連続的に照射することにより形成された多数のスクライブ孔が重なり合った連続溝であるから、ビームスポットの移動範囲で連続した線状の溝であることは明らかである。
してみると、請求項1に記載された辺ブレークラインは、窒化珪素系セラミックス集合基板の四辺に対応する全体的に連続している溝であることは明らかである。
そして、「連続溝状」とは「連続溝の形状」であることを表していると解するのが自然である。
また、本件の図1は辺ブレークライン13の位置を表しているに過ぎず、辺ブレークラインの溝の状態を表した図面であるとは認められない。
よって、請求人の主張は採用できない。
イ 「(1)イ」の主張について
本件の図5は「窒化珪素系セラミックス集合基板を」表す図であり、「窒化珪素系セラミックス焼結基板」を表す図ではない。また、図5の符号24として示されるのは「第二のブレークライン」であり「辺ブレークライン」ではない。
そして、請求項1に記載された辺ブレークラインは、窒化珪素系セラミックス焼結基板の外縁部に形成され窒化珪素系セラミックス集合基板の四辺に対応するブレークラインであるから、請求項1に係る特許発明の「辺ブレークライン」と窒化珪素系セラミックス焼結基板の四隅のみに配置された「角ブレークライン」との関係やその配置は明確である。
よって、請求人の主張は採用できない。
ウ 「(1)ウ」の主張について
請求項1の「隣接する辺ブレークラインの交点近傍に前記隣接する辺ブレークラインの両方と交差するスリット状の角ブレークライン」なる記載より、角ブレークラインは、隣接する2つの辺ブレークラインの交点近傍にあり当該両辺ブレークラインと交差する長さを有するものであることが理解できる。
また、請求項1の「前記辺ブレークラインに沿って折ることにより、前記辺ブレークライン及び前記角ブレークラインより内側の窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分と外側のマージン部とに分割」なる記載より、辺ブレークライン及び角ブレークラインの外側がマージン部であると理解できる。ここで、角ブレークラインが隣接する2つの辺ブレークラインの交点より外側に形成された場合、角ブレークライン全体がマージン部に位置することを考慮すると、角ブレークラインは前記交点より内側に形成されると解するのが自然である。そしてこのことは、本件の図1に角ブレークラインを辺ブレークラインの交点より内側に形成した窒化珪素系セラミック焼結基板が示されていることと整合する。
以上のことより、請求項1の角ブレークラインは、隣接する2つの辺ブレークラインの交点近傍内側にあり当該2つの辺ブレークラインそれぞれと交差する長さを有するものであることが理解できる
そして、請求項1の上記記載によれば、辺ブレークライン及び角ブレークラインの内側は窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分であるから、請求項1における「交点近傍」とは、当該近傍の位置に角ブレークラインを形成した場合に、窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分が必要とされる面積以上となり得る位置であると当業者には理解できる。
また、本件の特許明細書段落【0053】に「比較例1 図9に示すように、窒化珪素系セラミックス焼結基板101に形成する辺ブレークライン113及び角ブレークライン114をいずれも、幅35μm及び深さ120μmの連続溝とした(基板を貫通していない)。」と記載されるように、本件の図9は角ブレークラインを基板を貫通していない連続溝とした比較例であり、辺ブレークラインの内側に角ブレークラインが施されているために比較例となるものではない。
よって、請求人の主張は採用できない。
エ 「(1)エ」の主張について
請求項1の「前記窒化珪素系セラミックス焼結基板を・・・前記辺ブレークライン及び前記角ブレークラインより内側の窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分と外側のマージン部とに分割し、記窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分の表面をクリーニングする」なる記載より、請求項1は窒化珪素系セラミックス焼結基板表面の窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分をクリーニングするものであることは明らかである。
また、上記「1(2)イ」で検討したように、クリーニング手段が窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分の表面をクリーニングし得る手段であれば如何なるクリーニング手段でもよいことは当業者には明らかである。
よって、請求人の主張は採用できない。
オ 「(1)オ」の主張について
上記アないしエより、請求項1に係る特許発明は明確であるから、請求項2ないし4に係る特許発明も明確である。
よって、請求人の主張は採用できない。
3 申立理由3および4について
(1)甲第1号証の記載事項、甲第1号証に記載された発明
ア 記載事項
甲第1号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
(ア)「【0027】
まず、セラミックス回路基板の製造方法について述べる。ここではセラミックス基板として窒化珪素基板を用いた場合について示す。ただし、その組成や製造方法・製造条件は下記の例に限定されるものではない。
まず、窒化ケイ素粉末を主成分とする原料粉末に、酸化物系のマグネシア(MgO)、イットリア(Y2O3)のセラミックス焼結助剤粉末を加え、これに更に分散剤、粘結助剤、溶剤等を添加しボールミルで混合・粉砕し、所定粘度のスラリーを作製した。
次に、脱泡工程を経て、前記スラリーの粘度を更に基準範囲内に調整し、その後シート成形法によりグリーンシート(以下ではシートと表現することがある)を作製した。このシート成形時の条件を各種変更し、1枚のシート単体で用いたり、重ねたシートを圧着する積層工程により、焼結体サイズで厚さ0.1~3.2mmtとなるように各種シートを作製する。ただし、基板としては、せいぜい厚くとも0.63mmt厚さの基板の需要が一般的である。完成したグリーンシートは適切なサイズに切断後、脱脂処理および焼結工程を経て窒化珪素基板の焼結体とした。焼結体のサイズは、基板の取り数や基板厚さにもよるが、焼結後の厚さ0.32mmtの場合には、現在最大で300mm程度まで可能である。ただしハンドリング工程の改善や、焼成炉の大型化により更に大きい基板サイズも製造可能である。
【0028】
その後、レーザー加工により所望の集合基板(1個取りや多数個取りの場合もある)に加工される。例えば9個取りの場合は図8、図9に示す集合基板5となる。ここで集合基板5の外周は、製造過程での位置合わせ精度の関係により切断加工としたが、寸法精度の問題が生じないようであれば、部分的にあるいは全てスクライビング加工で形成しても良い。尚、レーザー加工は後工程の途中や最後に実施しても、前記同様に寸法精度に問題なければ、どの段階で実施しても良い。ここでは、焼結後にレーザー加工を実施した場合について示す。即ち、レーザー加工により集合基板の片方の面にスクライビング加工により未貫通孔を所望形状に格子状に形成した。またCやRの面取り加工が必要な場合には、面取り部をレーザー切断加工によりくり貫いて形成する。ただし、この切断加工は後の工程で別途実施しても構わない。
【0029】
その後、あらかじめ脱脂・焼結前にシート表面に塗布しておいたh-BN等の潤滑物質等を湿式ブラスト処理で基板表面の清浄化と平滑化を行った。仮に顧客先にて基板単体で使用する場合には、以上の状態から個々の基板に分割して使用することができる。この窒化珪素基板1の特性は、3点曲げ強度700MPa以上、熱伝導率が90W/(m・K)以上、破壊靭性値が5MPa√m以上であった。ちなみに前記セラミックス基板であるが、焼結条件や助剤量や成分により熱伝導率が120W/(m・K)、のものから60W/(m・K)のものまで用途に応じて作製することが可能である。」
(イ)「【0040】
次に、この基板に面取り部(CまたはR面取り)を形成したセラミックス集合基板について説明する。
図8は1枚の集合基板5から9個のセラミックス基板1を作製する9個取りの一例である。集合基板の外周側面は、製造工程での基板寸法精度や回路基板パターン精度および位置合わせ精度を改善するためにレーザー切断加工で形成してある。また、基板の外周側の枠部には捨て代となる余肉部2を設けている。これは基板強度低下防止の観点から全ての基板側面を切断加工部ではなくスクライビング加工部にするためである。その理由は、既述したようにレーザー切断加工では熱応力によるマイクロクラックの生成で、基板強度が低下するためである。またそれ以外の理由として、ハンドリング性の改善、前記ハンドリングによる基板または回路基板の落下・突き当てによる欠け防止、回路基板を製造する際の金属/セラミックス接合部のボイド不良の低減なども理由として挙げられる。
【0041】
断続的なスクライビング孔による分割線3は格子状に形成され、格子状の分割線によって個々のセラミックス基板1が区画されている。スクライビング孔の加工部は基板厚さによって加工条件は異なるが、最深部に曲率を有する円錐状のノッチ状の孔(以下では凹部と表現することもある)を、所望の孔径で、所望の深さで、所望のピッチ間隔で導入するもので、通常は基板を貫通するものではない。また、前記孔の表面周囲には黒色のドロス状の物質が付着することもある。また、基板表面の加工孔周囲に盛り上がり箇所が出来ることもある。これらは基板中の酸化物や、分解した窒化物の残留物が付着したものであるが、アシストガスによる除去や、適正化した加工条件で加工した基板においては、基板の絶縁性能に問題を及ぼすものではないことを確認済みである。
【0042】
次に、四隅の面取り部については、板厚を貫通するレーザー切断加工により形成する。但し、面取り部の形状が大きく手作業での分割が容易である場合には、面取り部もスクライビング加工で対応しても良い。
レーザー切断加工では基板四隅の面取り部に位置する箇所を菱形状に加工してC面取り4を形成する。ここで、四隅のみを狙って面取りするのでも良いが、分割時の欠け不良を低減させるためには、図8に示すように余肉部2にも対称形状になるように面取り部4’を形成した方が好ましい。これは図9で示すようにR面取り6を設ける場合も同様で、四隅の加工部は対称形状になるようにし、余肉部2についてもR面取り部6’を施すことが望ましい。」
(ウ)「【0043】
以下、本発明によるセラミックス基板を試作して試験した実施例について説明する。
実施例の集合基板は、図8に示す9個取りの50×30mmの集合基板であって、セラミックス基板の材質は窒化珪素、面取り有りの場合はC1.0mmの切断加工とし、余肉部にもC面取り加工を施したものを用いた。
次に、面取り部の端部から10mm以内の箇所を、スクライビング加工で、深さ、隣接する孔のピッチを種々変更した例を作製し、個々の基板に分割した。そして各基板に対する分割に起因する欠けなどの不良率を調査し評価した。
また、面取り加工が無い基板も上記と同様に、角部近傍のスクライビング加工条件を変化させて作製した。この面取りが無い場合の加工条件は全てスクライビング加工である。評価方法は上記と同様に実施した。
さらに、面取り加工が無い基板ではあるが、スクライビング孔加工の格子線(分割線)の交点に貫通孔を設けたものも作製した。」
(エ)「【図8】
[図:0001396332000001.jpg]
」
イ 上記摘記事項の記載より、甲第1号証には。次の技術的事項が記載されているといえる。
(ア)上記「ア(ア)」ないし「ア(ウ)」によれば、引用文献1には窒化珪素基板のセラミックス焼結体から50×30mmのセラミックス集合基板5を加工し、該セラミックス集合基板5から9個のセラミックス基板1を作製する方法について記載されている。
(イ)上記「ア(ア)」、「ア(イ)」によれば、セラミックス集合基板5の片方の面に断続的なスクライビング孔の分割線3を格子状に形成し、格子状の分割線によって個々のセラミックス基板1が区画されるとともに全てのセラミックス基板1の側面をスクライビング加工とすることが記載されている。
また、セラミックス基板1の四隅の面取り部に位置する箇所を菱形状に切断加工してC面取り4を形成するとともに余肉部2にも対称形状になるように面取り部4’を形成することが記載され、図8より余肉部2はセラミックス集合基板5の外周側の枠部に設けられていることが見てとれる。
(ウ)上記「ア(ア)」、「ア(イ)」によれば、湿式ブラスト処理でセラミック集合基板5表面の清浄化と平滑化を行った状態からセラミックス集合基板5を分割線3で個々のセラミックス基板1に分割することが記載されている。
ウ 上記イによれば、上記「ア(ア)ないし(ウ)」の記載事項および図面を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「窒化珪素基板のセラミックス焼結体から50×30mmのセラミックス集合基板5を加工し、該セラミックス集合基板5から9個のセラミックス基板1を作製する方法であって、
セラミックス集合基板5の片方の面に断続的なスクライビング孔の分割線3を格子状に形成し、格子状の分割線によって個々のセラミックス基板1が区画されるとともに全てのセラミックス基板1の側面をスクライビング加工とし、セラミックス基板1の四隅の面取り部に位置する箇所を菱形状に切断加工してC面取り4を形成するとともに外周側の枠部に設けられた余肉部2にも対称形状になるように面取り部4’を形成し、
湿式ブラスト処理でセラミック集合基板5表面の清浄化と平滑化を行った状態からセラミックス集合基板5を分割線3で個々のセラミックス基板1に分割して作製する方法。」
(2)当審の判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明における「窒化珪素基板のセラミックス焼結体から50×30mmのセラミックス集合基板5を加工」することは、「セラミックス集合基板5」が「窒化珪素基板」から形成された「矩形状」の「セラミックス焼結体」であると言えるから、加工された「セラミックス集合基板5」は本件発明1の「矩形状の窒化珪素系セラミックス焼結基板」に相当する。
また、甲1発明の「9個のセラミックス基板1」はセラミックス基板1の集合体であるから、本件発明1の「窒化珪素系セラミックス集合基板」に相当する。
よって、「該セラミックス集合基板5から9個のセラミックス基板1を作製する方法」は、本件発明1の「矩形状の窒化珪素系セラミックス焼結基板から所定のサイズの窒化珪素系セラミックス集合基板を製造する方法」に相当する。
b 甲1発明における「セラミックス集合基板5の片方の面に断続的なスクライビング孔の分割線3を格子状に形成し、格子状の分割線によって個々のセラミックス基板1が区画されるとともに全てのセラミックス基板1の側面をスクライビング加工」とすることは、セラミックス基板1の全ての側面にスクライビング孔の分割線3を形成することであり、図8も参照すれば、余肉部2とセラミックス基板1との間に形成されたスクライビング孔の分割線3は9個のセラミックス基板1の集合体の四辺に対応し、且つセラミックス集合基板5の外縁部に設けられているから、本件発明1の「前記窒化珪素系セラミックス焼結基板の外縁部に、前記窒化珪素系セラミックス集合基板の四辺に対応する、スクライブ孔からなる辺ブレークラインを形成」することに相当する。
ただし、辺ブレークラインが、本件発明1では「連続溝状」であるのに対して、甲1発明では断続的なスクライビング孔である点で相違する。
c 甲1発明における「セラミックス基板1の四隅の面取り部に位置する箇所を菱形状に切断加工してC面取り4を形成するとともに外周側の枠部に設けられた余肉部2にも対称形状になるように面取り部4’を形成」することは、図8も参照すれば、面取り部4’は隣接するスクライビング孔の分割線3の両方と交差していることから、本件発明1の「隣接する辺ブレークラインの交点近傍に前記隣接する辺ブレークラインの両方と交差する角ブレークを形成」することに相当する。
ただし、角ブレークが、本件発明1では隣接する辺ブレークラインの両方と交差する「スリット状の角ブレークライン」としているのに対して、甲1発明では菱形状に切断加工されている点で相違する。
d 甲1発明における「セラミックス集合基板5を分割線3で個々のセラミックス基板1に分割する」ことは、本件発明1の「前記窒化珪素系セラミックス焼結基板を前記辺ブレークラインに沿って折ることにより」「分割する」ことに相当する。
ただし、本件発明1が、前記窒化珪素系セラミックス焼結基板を前記辺ブレークラインに沿って折ることにより「前記辺ブレークライン及び前記角ブレークラインより内側の窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分と外側のマージン部とに」分割しているのに対し、甲1発明は分割することについては記載されているものの、窒化珪素セラミックス集合基板に相当する部分と外側のマージン部とに分割することについて特定されていない点で相違する。
e 甲1発明における「湿式ブラスト処理でセラミック集合基板5表面の清浄化と平滑化を行」うことは、本件発明1の「前記窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分の表面をクリーニングする」ことに相当する。
f 上記aないしeより、本件発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点を有しているものと認められる。
〈一致点〉
「矩形状の窒化珪素系セラミックス焼結基板から所定のサイズの窒化珪素系セラミックス集合基板を製造する方法において、
前記窒化珪素系セラミックス焼結基板の外縁部に、前記窒化珪素系セラミックス集合基板の四辺に対応する、スクライブ孔からなる辺ブレークラインを形成するとともに、隣接する辺ブレークラインの交点近傍に前記隣接する辺ブレークラインの両方と交差する角ブレークを形成し、
前記窒化珪素系セラミックス焼結基板を前記辺ブレークラインに沿って折ることにより分割し、前記窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分の表面をクリーニングする窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉
辺ブレークラインが、本件発明1では「連続溝状」であるのに対して、甲1発明では断続的なスクライビング孔である点。
〈相違点2〉
角ブレークが、本件発明1では隣接する辺ブレークラインの両方と交差する「スリット状の角ブレークライン」としているのに対して、甲1発明では菱形状に切断加工されている点。
〈相違点3〉
本件発明1が、前記窒化珪素系セラミックス焼結基板を前記辺ブレークラインに沿って折ることにより「前記辺ブレークライン及び前記角ブレークラインより内側の窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分と外側のマージン部とに」分割しているのに対し、甲1発明は分割することについては記載されているものの、窒化珪素セラミックス集合基板に相当する部分と外側のマージン部とに分割することについて特定されていない点。
(イ)新規性についての判断
上記(ア)のとおり、本件発明1と甲1発明とは相違点1ないし3を有するものであるから、請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明ではない。
(ウ)進歩性についての判断
a 相違点2について
事案に鑑み、相違点2について検討する。
甲1発明における「面取り部4’」は菱形状に切断加工されたものであって「スリット状の」「ブレークライン」ではない。また、甲1発明における「面取り部4’」を「スリット状の」「ブレークライン」とする動機付けも見いだせず、甲1発明から上記相違点1の構成とすることが容易と言える理由もない。
更に、甲第2号証(段落【0015】ないし【0019】、図1参照)や甲第3号証、甲第4号証(請求項1、3参照)、甲第5号証(請求項2、【0008】、【0043】参照)、甲第6号証(【0002】、【0003】)にも、面取り部を「スリット状の」「ブレークライン」とする点について、記載も示唆もされていない。
この点について、申立人は特許異議申立書(第11頁第1ないし3行)にて、甲第1号証には、段落0042、図8には、隣接する辺ブレークラインの交点近傍に隣接する辺ブレークラインの両方と交差するスリット状の面取り部(角ブレークライン)を形成することが記載されていると主張している。
しかしながら、甲第1号証に記載された面取り部は、レーザー切断加工により基板の四隅をくり貫いて形成されるものであって、本件発明1のスリット(切れ目)状のブレークラインとは異なるものであり、両者は一致するものではない。
よって、特許異議申立人の主張は採用することができない。
b 小括
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明および甲第2号証から甲第5号証に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2ないし4について
請求項2ないし4は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2ないし4は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2および4は甲第1号証に記載された発明ではなく、また、本件発明2ないし4は甲1発明および甲第2号証から甲第6号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701277