特許異議申立
2023-700319
窒化珪素基板およびその製造方法
- 審判番号
- 2023-700319
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-038027
- 登録番号
- 7143960
- 請求日
- 2023年03月28日
- 審決日
- 2023年06月06日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日立金属株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人筒井国際特許事務所
- 【異議申立人】青木 眞理
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 河本 充雄
- 審判官 立木 林
- 分類
- P1652.121-Y (C04B) / P1652.537-Y (C04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7143960号発明「窒化珪素基板およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7143960号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7143960号の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和4年2月25日に出願した特願2022-27436号(以下、「本件特許に係る原出願」という。)の一部を令和4年3月11日に新たな特許出願としたものであって、同年9月20日にその特許権の設定登録がされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~4に係る特許に対し、令和5年3月28日に特許異議申立人 青木 眞理(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第7143960号の請求項1~4の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1~4」といい、まとめて、「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する窒化珪素基板であって、
平面形状は、それぞれの辺が100mm以上の矩形形状であり、
熱伝導率は、110W/(m・K)以上であり、
前記第1面と前記第2面のうちの少なくとも一方の面において、中央部と縁部との色差をΔE*abとすると、各角部から中央部の方向に15mm内側の位置である縁部のすべてで0<ΔE*ab≦1.5である、窒化珪素基板。
【請求項2】
請求項1に記載の窒化珪素基板において、
0<ΔE*ab≦0.8である、窒化珪素基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の窒化珪素基板において、
前記中央部と前記縁部のそれぞれの明度は、70以上である、窒化珪素基板。
【請求項4】
請求項1または2に記載の窒化珪素基板において、
前記中央部と前記縁部のそれぞれの彩度は、10以上である、窒化珪素基板。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証~甲第2号証を提出し、以下の理由により、請求項1~4に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
1 申立理由1(サポート要件)
本件発明1~4は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 申立理由2(進歩性)
本件発明1~4は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
[証拠方法]
甲第1号証:
[図:0001399421000001.jpg]
、[online]、平成30年9月8日、[令和5年3月22日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20180907235120/https://www.sic.cas.cn/xwzx/kydt/201808/t20180831_5061676.html
甲第2号証:特許第6399252号
第4 申立理由1(サポート要件)
1 本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」ともいう。)には以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化珪素基板およびその製造技術に関し、例えば、熱伝導率が110W/(m・K)以上の窒化珪素基板およびその製造技術に適用して有効な技術に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0010】
以上のように、窒化珪素基板の表面に色むらがあると、精度の高い外観検査を実施することが困難になることがわかる。したがって、外観検査を精度良く実施するためには、窒化珪素基板の表面に生じる色むらを低減することが重要である。
【0011】
発明の目的は、窒化珪素基板の表面に生じる色むらを低減することにある。」
「【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施の形態における窒化珪素基板は、シート状の成形体に含まれる珪素を窒化してなる窒化珪素基板であって、第1面と、第1面とは反対側の第2面とを有する。ここで、第1面と第2面のうちの少なくとも一方の面において、中央部と縁部との色差をΔE*abとすると、ΔE*ab≦1.5である。」
「【発明の効果】
【0014】
一実施の形態によれば、窒化珪素基板の表面に生じる色むらを低減できる。」
「【0034】
<関連技術の説明>
まず、窒化珪素基板を製造する関連技術について説明する。
【0035】
本明細書でいう「関連技術」とは、公知技術ではないが、本発明者が見出した課題を有する技術であって、本願発明の前提となる技術である。
・・・
【0040】
上述した関連技術で製造される窒化珪素基板の熱伝導率は、90W/(m・K)程度である。」
「【0064】
以上のようにして、窒化珪素基板を製造することができる。特に、本実施の形態における窒化珪素基板の製造方法によれば、純度の高い珪素粉末を使用していることから、例えば、熱伝導率が110W/(m・K)以上の窒化珪素基板を製造することができる。ただし、本発明者が検討したところ、上述した窒化珪素基板の製造方法には、改善の余地が存在することが明らかになったので、以下では、この点について説明する。」
「【0076】
<具体的態様>
以下では、この基本思想を具現化した具体的態様について説明する。
【0077】
前記「<実施の形態における窒化珪素基板の製造方法>」に記載の方法で実施例1、実施例2及び比較例の窒化珪素基板を製造した。各窒化珪素基板は、第1面と、第2面とを有しており、平面形状は、矩形形状であった。各窒化珪素基板の各辺の長さは、長辺200mm、短辺140mmであった。各窒化珪素基板の厚さは、0.32mmであった。
【0078】
各窒化珪素基板を製造するとき、珪素、希土類酸化物、マグネシウム化合物の合計に対して希土類酸化物のモル比は1.2mol%であり、マグネシウム化合物のモル比は9.8mol%であった。
【0079】
実施例1の窒化珪素基板を製造するとき、窒化工程S204において、加熱時間の経過とともに順次ステップ状に加熱温度を上昇させる態様で、最高加熱温度まで加熱温度を上昇させた。最高加熱温度は1400℃であった。1270℃から1340℃までの昇温範囲における加熱温度の傾きの平均は、2.99℃/hであった。図7は、所定の温度領域における成形体の実測温度、炉の実測温度、及び、成形体と炉との温度差を示す。図7における横軸は、加熱温度となる炉の実測温度が1300℃付近に到達した基準時からの経過時間を示す。炉の実測温度が1300℃近傍のとき、炉の実測温度と炉内の成形体の温度との温度差は、20℃以下となっていた。実施例1では、窒化処理における成形体の急激な昇温が生じておらず、「熱暴走」は生じていなかった。実施例1の窒化珪素基板の熱伝導率は129W/(m・K)であった。
【0080】
実施例2の窒化珪素基板を製造するとき、窒化工程S204において、加熱時間の経過とともに順次ステップ状に加熱温度を上昇させる態様で、最高加熱温度まで加熱温度を上昇させた。最高加熱温度は1400℃であった。1270℃から1340℃までの昇温範囲における加熱温度の傾きの平均は、3.02℃/hであった。図8は、所定の温度領域における成形体の実測温度、炉の実測温度、及び、成形体と炉との温度差を示す。図8における横軸は、加熱温度となる炉の実測温度が1300℃付近に到達した基準時からの経過時間を示す。炉の実測温度が1300℃近傍のとき、炉の実測温度と炉内の成形体の温度との温度差は、20℃以下となっていた。実施例2では、窒化処理における成形体の急激な昇温が生じておらず、「熱暴走」は生じていなかった。実施例2の窒化珪素基板の熱伝導率は126W/(m・K)であった。
【0081】
比較例の窒化珪素基板を製造するとき、窒化工程S204において、加熱時間の経過とともに順次ステップ状に加熱温度を上昇させる態様で、最高加熱温度まで加熱温度を上昇させた。最高加熱温度は1400℃であった。1270℃から1340℃までの昇温範囲における加熱温度の傾きの平均は、4.67℃/hであった。図9は、所定の温度領域における成形体の実測温度、炉の実測温度、及び、成形体と炉との温度差を示す。図9における横軸は、加熱温度となる炉の実測温度が1300℃付近に到達した基準時からの経過時間を示す。炉の実測温度が1300℃近傍のとき、炉の実測温度と炉内の成形体の温度との温度差が20℃を超えて最大44.9℃となっていた。すなわち、比較例では、窒化処理における急激な成形体の昇温が生じて、「熱暴走」が発生していた。比較例の窒化珪素基板の熱伝導率は120W/(m・K)であった。」
「【0093】
<<<色差ΔE*ab>>>
「色差ΔE*ab」とは、基準色との色の差を示す指標であり、「明度L*」、「クロマティクネス指数a*」および「クロマティクネス指数b*」に基づいて算出される。
【0094】
図11は、窒化珪素基板100を模式的に示す図であり、「位置1」は中央部に相当する領域を示している一方、「位置2」、「位置3」、「位置4」および「位置5」は4つの縁部に相当する領域を示している。本実施の形態では、「位置1」の色を基準色として、「位置2」~「位置5」における「色差ΔE*ab」を算出している。
【0095】
具体的に、「位置1」~「位置5」は、以下に示す位置として定義される。
「位置1」:表面において、対角線が交差する位置
「位置2」:表面において、角部CNR1から「位置1」の方向に15mm内側の位置
「位置3」:表面において、角部CNR2から「位置1」の方向に15mm内側の位置
「位置4」:表面において、角部CNR3から「位置1」の方向に15mm内側の位置
「位置5」:表面において、角部CNR4から「位置1」の方向に15mm内側の位置
【0096】
なお、測定範囲は、「位置1」~「位置5」のそれぞれの位置を中心とした20mm×20mmの領域である。」
「【0097】
<<色むらの検証結果>>
以下では、上述した「色空間」の構成パラメータを使用して、サンプル#1~サンプル#4についての色むらの検証を行ったので、この検証結果について説明する。
【0098】
「サンプル#1」は、実施例1の加熱条件で窒化処理を行って製造された窒化珪素基板であり、「サンプル#2」は、実施例2の加熱条件で窒化処理を行って製造された窒化珪素基板である。また、「サンプル#3」および「サンプル#4」は、比較例の加熱条件で窒化処理を行って製造された窒化珪素基板である。
【0099】
【表1】
[図:0001399421000002.jpg]
【0100】
表1は、「サンプル#1」~「サンプル#4」に関する色むらの検証結果を示す表である。表1に示すように、「サンプル#1」~「サンプル#4」のいずれにおいても、130W/(m・K)の熱伝導率を実現できている。
【0101】
ただし、比較例を示す「サンプル#3」および「サンプル#4」において、「色差ΔE*ab」は、1.5よりも大きくなっている位置が存在している。これは、比較例における窒化処理の加熱条件で製造された窒化珪素基板では、高い熱伝導率を得ることができる一方で、色むらが顕在化することを意味している。
【0102】
これに対し、実施例1を示す「サンプル#1」において、「色差ΔE*ab」は、「位置2」~「位置5」のすべてで1.5以下となっている。
【0103】
また、実施例2を示す「サンプル#2」において、「色差ΔE*ab」は、「位置2」~「位置5」のすべてで0.8以下となっている。
【0104】
このことは、実施例1あるいは実施例2における窒化処理の加熱条件で製造された窒化珪素基板では、高い熱伝導率を得ることができるとともに、色むらも低減できることを意味する。したがって、実施例1および実施例2によれば、放熱特性に優れた窒化珪素基板を得ることができるだけでなく、色むらに起因する外観検査の誤検出を低減できる。
【0105】
さらに、実施例1および実施例2において、中央部(位置1)と縁部(位置2~位置5)のそれぞれの「明度L *」は70以上であるともに、「彩度C *」は10以上である。これにより、異物や汚れとのコントラストが明瞭となる結果、外観検査の異物あるいは汚れの検出精度を向上できるという顕著な効果を得ることができる。
【0106】
ここで、本明細書でいう「縁部」とは、上述した「位置2」~「位置5」のすべてを含む概念として記載されている。すなわち、本明細書でいう「縁部」には、「位置2」~「位置5」のすべてが含まれる。また、「中央部」とは、「位置1」を含む概念として記載されている。したがって、「中央部と縁部との色差をΔE*abとすると、ΔE*ab≦1.5である」という記載は、「位置1」と「位置2」の色差が1.5以下であり、「位置1」と「位置3」の色差が1.5以下であり、「位置1」と「位置4」との色差が1.5以下であり、「位置1」と「位置5」との色差が1.5以下であることを意味している。
」
「【0109】
<総括>
本実施の形態では、窒化処理における昇温工程のうち、1270℃から1340℃までの範囲において、加熱温度の傾きの平均を3.1℃/h以下となるように工夫が施されている。
【0110】
これにより、本実施の形態によれば、「色差ΔE*ab」が1.5以下、さらに言えば、0.8以下となる窒化珪素基板を得ることができる。したがって、本実施の形態における技術的思想は、色むらを低減できる点で優れている。つまり、本実施の形態における技術的思想は、色むらを低減できることを通じて、外観検査の異物あるいは汚れの検出精度を向上できる点で大きな技術的意義を有しているということができる。
【0111】
なお、本実施の形態における技術的思想は、サイズの大きな窒化珪素基板に適用して有効である。具体的に、本実施の形態における技術的思想は、例えば、図2に示すように、3相インバータ回路を構成する6つの半導体装置を1つの窒化珪素基板に搭載する構成などに適用して有効である。なぜなら、サイズの大きな窒化珪素基板を使用する場合、色むらが発生するポテンシャルが大きくなると考えられるからである。
【0112】
この点に関し、色むらの発生ポテンシャルの大きなサイズの大きな窒化珪素基板の製造において、本実施の形態における技術的思想を適用すれば、色むらの発生を低減する観点から有効であると考えられる。特に、本実施の形態における技術的思想は、矩形形状のそれぞれの辺の長さが100mm以上の窒化珪素基板の製造に適用して有効である。」
「【図11】
[図:0001399421000003.jpg]
」
2 本件発明が解決しようとする課題
発明の詳細な説明(上記1)の【0011】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題(以下、「本件課題」という。)は、「窒化珪素基板の表面に生じる色むらを低減すること」である。
3 本件発明1について
(1)発明の詳細な説明(上記1)の【0001】には、本発明は、窒化珪素基板に関し、例えば、熱伝導率が110W/(m・K)以上の窒化珪素基板に適用して有効な技術に関するものであること、同【0012】には、一実施の形態における窒化珪素基板は、第1面と、第1面とは反対側の第2面とを有し、ここで、第1面と第2面のうちの少なくとも一方の面において、中央部と縁部との色差をΔE*abとすると、ΔE*ab≦1.5であること、同【0014】には、一実施の形態によれば、窒化珪素基板の表面に生じる色むらを低減できることが記載されている。
また、同【0112】には、本実施の形態における技術的思想は、矩形形状のそれぞれの辺の長さが100mm以上の窒化珪素基板の製造に適用して有効であることが記載されている。
(2)同【0093】~【0095】には、色差ΔE*abについて、窒化珪素基板における「位置1」は中央部に相当する領域、「位置2」、「位置3」、「位置4」及び「位置5」は4つの縁部に相当する領域であり、本実施の形態では、「位置1」の色を基準色として、「位置2」~「位置5」における「色差ΔE*ab」を算出していること、具体的に、「位置1」~「位置5」は、以下に示す位置として定義されることが記載されている。
「位置1」は、表面において、対角線が交差する位置
「位置2」:表面において、角部CNR1から「位置1」の方向に15mm内側の位置
「位置3」:表面において、角部CNR2から「位置1」の方向に15mm内側の位置
「位置4」:表面において、角部CNR3から「位置1」の方向に15mm内側の位置
「位置5」:表面において、角部CNR4から「位置1」の方向に15mm内側の位置
また、同【0106】には、「縁部」には、上述した「位置2」~「位置5」のすべてが含まれることが記載されている。
ここで、上記(1)によれば、ΔE*abは、窒化珪素基板の第1面と、第1面とは反対側の第2面のうちの少なくとも一方の面における、中央部と縁部との色差であり、当該窒化珪素基板は、ΔE*ab≦1.5であり、その表面に生じる色むらを低減できるものである。そして、もともと色むらの生じるものにおいて、色差は0にはなり得ない。
そうすると、窒化珪素基板は、各角部から中央部の方向に15mm内側の位置である縁部のすべてで0<ΔE*ab≦1.5であるといえる。
(3)以上によれば、発明の詳細な説明には、第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する窒化珪素基板であって、平面形状は、それぞれの辺が100mm以上の矩形形状であり、熱伝導率は、110W/(m・K)以上であり、前記第1面と前記第2面のうちの少なくとも一方の面において、中央部と縁部との色差をΔE*abとすると、各角部から中央部の方向に15mm内側の位置である縁部のすべてで0<ΔE*ab≦1.5である、窒化珪素基板(以下、「本件窒化珪素基板」という。)は、その表面に生じる色むらを低減できることが記載されているといえる。
そして、本件窒化珪素基板が、その表面に生じる色むらを低減できることは、発明の詳細な説明(上記1)の【0076】~【0081】の具体的態様、及び、同【0097】~【0104】の色むらの検証結果で裏付けられている。
そうすると、発明の詳細な説明に記載されている本件窒化珪素基板は、上記本件課題を解決し得るものであるといえる。
(4)上記(1)~(3)から、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されている本件窒化珪素基板であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
4 本件発明2~4について
本件発明2は、発明の詳細な説明(上記1)の【0103】、【0110】に、本件発明3、4は、同【0105】にそれぞれ記載されている。
また、本件発明2~4は、いずれも本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様に、上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。
5 申立人の主張について
(1)申立人は、特許異議申立書5ページ16行~6ページ9行において、本件発明1の構成Dである「熱伝導率は、110W/(m・K)」について、本件明細書の【0081】には、「比較例では、窒化処理における急激な成形体の昇温が生じて、「熱暴走」が発生していた。比較例の窒化珪素基板の熱伝導率は120W/(m・K)であった。」との記載があり、このように、120W/(m・K)は熱暴走が発生した場合の熱伝導率を示すものであるにもかかわらず、上記構成Dは、熱伝導率120W/(m・K)を除外しておらず、出願時の技術常識を鑑みても、本件明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を、かのような構成Dについてまで拡張ないし一般化することはできないから、本件発明1は発明の詳細な説明に記載されたものではない旨主張している。
(2)しかし、上記3で検討したとおり、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されている本件窒化珪素基板であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。
また、発明の詳細な説明(上記1)の【0035】の「本明細書でいう「関連技術」とは、公知技術ではないが、本発明者が見出した課題を有する技術であって、本願発明の前提となる技術である」、同【0040】の「関連技術で製造される窒化珪素基板の熱伝導率は、90W/(m・K)程度である」、及び、同【0064】の「本実施の形態における窒化珪素基板の製造方法によれば、純度の高い珪素粉末を使用していることから、例えば、熱伝導率が110W/(m・K)以上の窒化珪素基板を製造することができる」、同【0100】の「表1に示すように、「サンプル#1」~「サンプル#4」のいずれにおいても、130W/(m・K)の熱伝導率を実現できている」との記載、同【0102】の「実施例1を示す「サンプル#1」」、同【0103】の「実施例2を示す「サンプル#2」」、同【0104】の「実施例1あるいは実施例2における窒化処理の加熱条件で製造された窒化珪素基板では、高い熱伝導率を得ることができるとともに、色むらも低減できることを意味する」との記載によれば、窒化珪素基板の熱伝導率は、110W/(m・K)以上であれば十分に高い値であるといえる。
そして、同【0101】の「比較例における窒化処理の加熱条件で製造された窒化珪素基板では、高い熱伝導率を得ることができる一方で、色むらが顕在化することを意味している」との記載によれば、比較例の窒化珪素基板は、高い熱伝導率を有しているものの、色むらが顕在化するため比較例となっているものである。
そうすると、本件発明1において、窒化珪素基板の熱伝導率が110W/(m・K)以上であることは妥当であり、比較例の窒化珪素基板の熱伝導率が110W/(m・K)以上であるからといって、本件発明1の窒化珪素基板の熱伝導率を110W/(m・K)以上に拡張ないし一般化することはできないとはいえない。
したがって、申立人の上記(1)の主張は採用できない。
6 まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~4は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものである。
したがって、請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
よって、申立理由1は、理由がない。
第5 申立理由1(進歩性)について
1 甲号証の記載、甲号証に記載された発明等
(1) 甲第1号証(
[図:0001399421000004.jpg]
)
ア 本件特許に係る原出願の出願前に公知となった甲第1号証には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。なお、甲第1号証の記載は、当審の訳文で示す。
「中国科学院上海陶磁器研究所の研究者であるZeng Yuping氏のチームは、長い研究開発期間を経て、高性能窒化ケイ素基板材料の分野で重要な進歩を遂げました。研究チームは、材料成分の設計、微細構造の調整、成形及び焼結プロセスの精密な制御と最適化を通じて、大規模な高熱伝導率窒化ケイ素セラミック基板の開発のための重要な技術を突破し、高い安定性を備えたセラミック基板の開発に成功しました。現在、窒化ケイ素基板の平均熱伝導率は95W/(m・k)であり、最適値は120W/(m・k)に達し、サイズは120×120mm2に達し、厚さは0.32mmであり、外形寸法は、実際のニーズに応じて調整できます。同時に、窒化ケイ索基板の銅被覆化も実現し、熱伝導率の高い窒化ケイ素基板の量産化への道筋が開かれました。現在、市販の窒化ケイ素セラミック基板の熱伝導率は一般的に80~90W/(m・k)です(東芝の窒化ケイ素基板(TSN-90)の熱伝導率は90W/(m・k)など)。この製品は、製品化のニーズを十分に満たすことができます。高熱伝導窒化ケイ素セラミック基板の研究の成功は、国内の高出力半導体デバイス、特にIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)の生産と開発に強力なサポートを提供し、強力な経済的及び社会的利益が期待されます。」(本文5~12行)
「
[図:0001399421000005.jpg]
高熱伝導窒化ケイ素基板」
イ 甲第1号証に記載された発明
上記アの記載によれば、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「平均熱伝導率は95W/(m・k)であり、最適値は120W/(m・k)に達し、サイズは120×120mm2に達する窒化ケイ素基板。」
(2)甲第2号証(特許第6399252号)
ア 本件特許に係る原出願の出願前に公知となった甲第2号証には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
1辺が120mmの正方形よりも大きい形状の主面を有し、前記主面における中央部の密度dcと端部の密度deの比dc/deが0.98以上であり、前記主面における中央部のボイド率vcが1.80%以下であり、端部のボイド率veが1.00%以下である、窒化ケイ素焼結基板を用いた回路基板であって、8.0kV以上の絶縁破壊耐圧および6以上の絶縁破壊耐圧のワイブル係数を有する回路基板。」
(イ)「【0024】
さらに、密度およびボイド率の面内均一性が高く、外形の大きな窒化ケイ素焼結基板を作製するためには、窒化ケイ素焼結基板の製造時にグリーンシートとともに積層される窒化ホウ素粉末層の厚さを制御すること、および、焼結時の炭素含有量を制御することが重要であることが分かった。これらの検討結果に基づき、本願発明者は、大きなサイズを有し、高耐圧および高絶縁信頼性を有し、これらの面内ばらつきが小さい窒化ケイ素焼結基板およびその製造方法を想到した。以下、本実施形態の窒化ケイ素焼結基板およびその製造方法の一例を説明する。本発明は、以下の実施形態に限られず、種々の改変または変更が行われてもよい。
・・・
【0073】
(d) 徐熱域
脱炭素域Pcを用いた加熱の終了後、焼結炉内の雰囲気温度を徐熱域P0の温度プロファイルで制御する。徐熱域P0は、グリーンシート1に含まれる焼結助剤が窒化ケイ素粒子の表面の酸化層と反応して液相を生成する温度域である。徐熱域P0では、窒化ケイ素の粒成長が抑えられ、液相化した焼結助剤中で窒化ケイ素粒子が再配列して緻密化する。その結果、第1および第2の温度保持域P1、P2を経て、空孔径および気孔率が小さく、曲げ強度および熱伝導率の高い窒化ケイ素焼結基板が得られる。徐熱域P0の温度T0を、第1の温度保持域P1の温度T1より低い1400℃以上1600℃以下の範囲内とし、徐熱域P0における加熱速度を300℃/hr以下とし、加熱時間t0を0.5時間以上30時間以下とするのが好ましい。加熱速度は0℃/hrを含んでも良く、すなわち徐熱域P0が一定温度に保持する温度保持域でも良い。徐熱域P0における加熱速度は1~150℃/hrがより好ましく、1~100℃/hrが最も好ましい。加熱時間t0は1~25時間がより好ましく、5~20時間が最も好ましい。
・・・
【0093】
作製した窒化ケイ素焼結基板の密度、密度比、ボイド率、ボイド比、炭素含有率、部分放電開始電圧、部分放電消滅電圧を測定した。また、絶縁破壊耐圧を測定し、絶縁破壊耐圧のワイブル係数を求めた。結果を表1に示す。実施例3~28、参考例1、2、51、52および比較例53~55の窒化ケイ素焼結基板における、炭素含有量およびボイド率(中央)を横軸及び縦軸にとったグラフを図12に示す。また、実施例3、5、10、12、14および参考例1、51、52の窒化ケイ素焼結基板について、基板の外形寸法を横軸にとり、上述した測定結果を縦軸にとったグラフを作成した。結果を図13(a)、(b)、および図14(a)、(b)に示す。
【0094】
【表1】
[図:0001399421000006.jpg]
」
イ 甲第2号証に記載された発明
上記ア(ア)の記載によれば、甲第2号証には、以下の発明(以下、甲2発明)という。)が記載されていると認められる。
「1辺が120mmの正方形よりも大きい形状の主面を有し、前記主面における中央部の密度dcと端部の密度deの比dc/deが0.98以上であり、前記主面における中央部のボイド率vcが1.80%以下であり、端部のボイド率veが1.00%以下である、窒化ケイ素焼結基板を用いた回路基板であって、8.0kV以上の絶縁破壊耐圧および6以上の絶縁破壊耐圧のワイブル係数を有する回路基板。」
2 甲1発明を主引用発明とした場合の進歩性について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「窒化ケイ素基板」が、第1面と、当該第1面と反対側の第2面とを有することは自明の事項であるから、本件発明1と甲1発明とは、「第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する窒化珪素基板」である点で共通する。
(イ)甲1発明の「窒化ケイ素基板」の「サイズは120×120mm2に達する」から、その平面形状は、それぞれの辺が100mm以上の矩形形状であるといえる。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「平面形状は、それぞれの辺が100mm以上の矩形形状」である点で共通する。
(ウ)甲1発明の「窒化ケイ素基板」の「平均熱伝導率」の「最適値は120W/(m・k)に達」するものであるから、その熱伝導率は、110W/(m・K)以上であるといえる。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「熱伝導率は、110W/(m・K)以上」である点で共通する。
(エ)以上から、本件発明1と甲1発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する窒化珪素基板であって、
平面形状は、それぞれの辺が100mm以上の矩形形状であり、
熱伝導率は、110W/(m・K)以上であり、
窒化珪素基板。」
<相違点>
相違点1:本件発明1は、「前記第1面と前記第2面のうちの少なくとも一方の面において、中央部と縁部との色差をΔE*abとすると、各角部から中央部の方向に15mm内側の位置である縁部のすべてで0<ΔE*ab≦1.5」であるのに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
イ 相違点1についての判断
相違点1に係る本件発明1の構成、すなわち、「前記第1面と前記第2面のうちの少なくとも一方の面において、中央部と縁部との色差をΔE*abとすると、各角部から中央部の方向に15mm内側の位置である縁部のすべてで0<ΔE*ab≦1.5」とすることは、甲第1号証及び甲第2号証のいずれにも、記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえないし、また、甲1発明に甲2発明を適用して、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものともいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、相違点1について、特許異議申立書の7ページ下から2行~8ページ9行において、甲第1号証の写真「高熱伝導窒化ケイ素基板」には、第1面と第2面のうち一方の面において、中央部と縁部とで色むらが発生し、色差が存在する窒化珪素基板が記載されているため、当業者は、窒化珪素基板の特性として、第1面と第2面のうち一方の面において、窒化珪素基板の中央部と縁部との色差に容易に着目することができ、また、第1面と第2面のうち一方の面において、窒化珪素基板の中央部と縁部とで均一性(例えば、色、密度、及びボイド等の均一性)が求められることは周知の事実であるため、「各角部から中央部の方向に15mm内側の位置である縁部のすべてで0<ΔE*ab≦l.5」という記載は、甲1発明において、窒化珪素基板の面内均一性を向上させるという一定の課題を解決するための数値範囲の最適化又は好適化にすぎない旨主張している。
(イ)確かに、申立人が主張するように、甲第1号証の写真「高熱伝導窒化ケイ素基板」には、第1面と第2面のうち一方の面において、中央部と縁部とで色むらが発生していることが見て取れる。
しかし、甲第1号証には、窒化ケイ素基板表面の色むらの均一性について何ら記載も示唆もされていないし、仮に、窒化ケイ素基板において、表面の色むらの均一性が求められていることが周知の事実であったとしても、「各角部から中央部の方向に15mm内側の位置である縁部のすべてで0<ΔE*ab≦l.5」とすることは、本件特許に係る原出願の出願時において公知又は周知であったとはいえない。
したがって、甲1発明において、窒化珪素基板の面内均一性を向上させるという課題を解決するために、「各角部から中央部の方向に15mm内側の位置である縁部のすべてで0<ΔE*ab≦l.5」とすることは、数値範囲の最適化又は好適化にすぎないとはいえない。
したがって、申立人の上記(ア)の主張は採用できない。
エ 小括
以上から、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないし、また、甲1発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)本件発明2~4について
本件発明2~4は、いずれも本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではないし、また、甲1発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものでもない。
3 甲2発明を主引用発明とした場合の進歩性について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「窒化ケイ素焼結基板を用いた回路基板」が、第1面と、当該第1面と反対側の第2面とを有することは自明の事項であるから、本件発明1と甲2発明とは、「第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する窒化珪素基板」である点で共通する。
(イ)甲2発明の「窒化ケイ素焼結基板を用いた回路基板」は、「1辺が120mmの正方形よりも大きい形状の主面を有し」ているから、その平面形状は、それぞれの辺が100mm以上の矩形形状であるといえる。
したがって、本件発明1と甲2発明とは、「平面形状は、それぞれの辺が100mm以上の矩形形状」である点で共通する。
(ウ)以上から、本件発明1と甲2発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する窒化珪素基板であって、
平面形状は、それぞれの辺が100mm以上の矩形形状である、窒化珪素基板。」
<相違点>
相違点2-1:本件発明1は、「熱伝導率は、110W/(m・K)以上」であるのに対し、甲2発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
相違点2-2:本件発明1は、「前記第1面と前記第2面のうちの少なくとも一方の面において、中央部と縁部との色差をΔE*abとすると、各角部から中央部の方向に15mm内側の位置である縁部のすべてで0<ΔE*ab≦1.5」であるのに対し、甲2発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
イ 相違点についての判断
相違点2-1及び相違点2-2は、いずれも「窒化珪素基板」の特性に関するものであるからまとめて検討する。
相違点2-1及び相違点2-2に係る本件発明1の構成、すなわち、「熱伝導率」を「110W/(m・K)以上」とし、かつ、「前記第1面と前記第2面のうちの少なくとも一方の面において、中央部と縁部との色差をΔE*abとすると、各角部から中央部の方向に15mm内側の位置である縁部のすべてで0<ΔE*ab≦1.5」とすることは、甲第1号証及び甲第2号証のいずれにも、記載も示唆もされていない。
したがって、甲2発明において、相違点2-1及び相違点2-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえないし、また、甲2発明に甲1発明を適用して、相違点2-1及び相違点2-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものともいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、相違点2-1及び相違点2-2について、特許異議申立書の8ページ16行~同ページ下から2行において、甲第2号証の【0073】には、熱伝導率の高い窒化珪素基板を得ることが記載されているため、相違点2-1に係る本件発明1の構成は、甲2発明において、一定の課題を解決するための数値範囲の最適化又は好適化にすぎないし、また、甲第2号証の【0094】の【表1】の実施例には、第1面と第2面のうち一方の面において、中央部の密度dcと端部の密度deの比dc/deが0.99以上1.00以下である、窒化珪素基板が記載されており、同【0024】には、第1面と第2面のうち一方の面において、窒化珪素基板の中央部と縁部とで密度及びボイド等の均一性が求められることが記載されているため、「各角部から中央部の方向に15mm内側の位置である縁部のすべてで0<△E*ab≦l.5」という構成は、甲2発明において、窒化珪素基板の面内均一性を向上させるという一定の課題を解決するための数値範囲の最適化又は好適化にすぎない旨主張している。
(イ)確かに、申立人が主張するように、甲第2号証(上記1(2)ア(イ))の【0073】、【0093】、【0094】の【表1】の実施例、【0024】には、熱伝導率の高い窒化ケイ素焼結基板が得られること、窒化ケイ素焼結基板の密度比(中央部/端部)が0.99~1.00であること、窒化ケイ素焼結基板の中央部と縁部とで密度及びボイド率の面内均一性が求められることが記載されている。
しかし、甲第2号証には、窒化ケイ素焼結基板の色差の面内均一性については、何ら記載も示唆もされていない。
また、窒化ケイ素焼結基板において、「熱伝導率」を「110W/(m・K)以上」とし、かつ、「各角部から中央部の方向に15mm内側の位置である縁部のすべてで0<ΔE*ab≦1.5」とすることは、本件特許に係る原出願の出願前において公知又は周知であったとはいえない。
したがって、甲2発明において、「熱伝導率」を「110W/(m・K)以上」とし、かつ、「各角部から中央部の方向に15mm内側の位置である縁部のすべてで0<ΔE*ab≦1.5」とすることは、窒化珪素基板の面内均一性を向上させるという一定の課題を解決するための数値範囲の最適化又は好適化にすぎないとはいえない。
よって、申立人の上記(ア)の主張は採用できない。
エ 小括
以上から、本件発明1は、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではないし、また、甲2発明及び甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)本件発明2~4について
本件発明2~4は、いずれも本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではないし、また、甲2発明及び甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものでもない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、申立理由2は、理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700319