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特許異議申立

2020-700465

光学積層体、フレキシブル表示装置及び光学積層体の製造方法

審判番号
2020-700465
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-127768外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6640407
請求日
2020年07月08日
審決日
2022年01月21日
公報発行日
2022年05月27日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6640407号発明「光学積層体、フレキシブル表示装置及び光学積層体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第6640407号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第6640407号の請求項1、3~8に係る特許を維持する。
特許第6640407号の請求項2、9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 手続の経緯

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特許第6640407号の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成30年11月27日に出願された特願2018-221657号の一部を令和元年7月9日に新たな特許出願としたものであって、令和2年1月7日にその特許権の設定登録がされ、令和2年2月5日に特許掲載公報が発行された。

本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和2年7月8日 :特許異議申立人加藤浩志(以下「申立人」という。)による請求項1~9に係る特許に対する特許異議の申立て
令和2年10月13日付け:取消理由通知書
令和2年12月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年1月22日 :申立人による意見書の提出
令和3年3月12日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和3年5月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和3年6月30日 :申立人による意見書の提出

なお、令和2年12月18日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否

1 訂正の内容

本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。

(1)訂正事項1-1

本件訂正前の請求項1に記載された「フッ素原子を含むポリイミド系樹脂及び/又はフッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂を含む光学フィルムと、該光学フィルムの少なくとも片面に積層された、ハードコート機能を備える機能層とを有する光学積層体であって、」を、

「フッ素原子を含むポリイミド系樹脂及び/又はフッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂を含む光学フィルムと、該光学フィルムの片面に積層された、ハードコート機能を備える、厚さが11μm以下である機能層とを有する光学積層体であって、
前記フッ素原子を含むポリイミド系樹脂は式(1)で表される構成単位を有するポリイミド樹脂であり、前記フッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂は、式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂であり:
【化1】
[図:0001384019000001.jpg]
[式(1)及び式(2)において、Xは、互いに独立に、2価の有機基を表し、式(1)において、Yは4価の有機基を表し、式(2)において、Zは、2価の有機基を表す]
前記フッ素原子を含むポリイミド系樹脂及び/又はフッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂のイミド化率は90%以上であり、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~8も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項1-2

本件訂正前の請求項1に記載された「前記光学フィルムを用いて投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像において互いに直交する方向h及び方向vにおけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh及びラインプロファイルvとし、前記投影法において前記光学積層体を用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において互いに直交する方向h’及び方向v’におけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh’及びラインプロファイルv’とし」を、

「前記光学フィルムを用いて投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像において、該逆空間像の中心を通る互いに直交する方向h及び方向vにおけるラインプロファイルを補正して得たラインプロファイルを、それぞれラインプロファイルh及びラインプロファイルvとし、ここで、前記投影法は、暗室中、LED光源、光学フィルム、投影面及びカメラを配置し、該LED光源と該光学フィルムとの距離は250cmであり、該光学フィルムと該投影面との距離は30cmであり、該光学フィルムと該投影面とは平行に配置され、カメラは光源から投影面への法線の真下に設置し、カメラとして株式会社ニコン製「COOLPIX(登録商標)P600」を用いて行い、前記補正は、ラインプロファイルのYの値が最大となる周波数をXcenとし、その時のYの値をYcenとし、次に、Xcenを中心とし、両端50ピクセル分ずつの合計100ピクセルの領域について、Yの平均値を求め、該平均値をベースラインYbaseとし、Ycen=100、Ybase=0となるように、次の式:
【数1】
Y’=(Y-Ybase)×100/(Ycen-Ybase)
に従いラインプロファイルを補正して行い、
前記投影法において前記光学フィルムを用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において、該逆空間像の中心を通る互いに直交する方向h’及び方向v’におけるラインプロファイルを同様に補正して得たラインプロファイルを、それぞれラインプロファイルh’及びラインプロファイルv’とし」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~8も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項1-3

本件訂正前の請求項1に記載された「ラインプロファイルhからラインプロファイルh’を引いて得たラインプロファイル(h-h’)の最大強度をYmhとし、最大強度Ymhを示す周波数をXmhとし、ラインプロファイルvからラインプロファイルv’を引いて得たラインプロファイル(v-v’)の最大強度をYmvとし、最大強度Ymvを示す周波数をXmvとすると、」を、

「ラインプロファイルhからラインプロファイルh’を引いて得たラインプロファイル(h-h’)をスムージングして得たラインプロファイルの最大強度をYmhとし、最大強度Ymhを示す周波数をXmhとし、ラインプロファイルvからラインプロファイルv’を引いて得たラインプロファイル(v-v’)をスムージングして得たラインプロファイルの最大強度をYmvとし、最大強度Ymvを示す周波数をXmvとする、
ここで、前記スムージングは、次の式:
【数2】
yi=(Yni-10+Yni-9+‥‥+Yni-1+Yn+Yni+1+‥‥+Yni+9+Yni+10)/21
に従い、21個のデータの平均値であるyiを算出して行い、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~8も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項1-4

本件訂正前の請求項1に記載された「Ymh、Ymv、Xmh及びXmvは、次の関係:

【数1】

(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2≦25

を満たし、」を、

「Ymh、Ymv、Xmh及びXmvは、次の関係:
【数3】
(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2≦14
を満たし、Xmh及び/又はXmvが、次の関係:
【数4】
0.1cm-1≦|Xm-Xcen|≦10cm-1
を満たし、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~8も同様に訂正する。)。

(5)訂正事項2

本件訂正前の請求項2を削除する。

(6)訂正事項3

本件訂正前の請求項3に記載された「請求項1または2」を、「請求項1」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~8も同様に訂正する。)。

(7)訂正事項4

本件訂正前の請求項4に記載された「請求項1~3のいずれか」を、「請求項1又は3」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~8も同様に訂正する。)。

(8)訂正事項5

本件訂正前の請求項5に記載された「請求項1~4」を、「請求項1、3及び4」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~8も同様に訂正する。)。

(9)訂正事項6

本件訂正前の請求項6に記載された「請求項1~5」を、「請求項1及び3~5」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7及び8も同様に訂正する。)。

(10)訂正事項7

本件訂正前の請求項9を削除する。

(11)訂正事項8

本件訂正前の明細書の段落【0017】に記載された「水平方向(h1方向)のラインプロファイルにおける最大強度YmaxをYmh1とし、最大強度Ymh1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値Xcenを引いた値XmaxをXmh1とする。また、垂直方向(v1方向)のラインプロファイルにおける最大強度YmaxをYmv1とし、最大強度Ymv1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値Xcenを引いた値XmaxをXmv1とする。」を、

「水平方向(h1方向)のラインプロファイルにおける最大強度YmaxをYmh1とし、最大強度Ymh1を示す周波数をXmh1とする。また、垂直方向(v1方向)のラインプロファイルにおける最大強度YmaxをYmv1とし、最大強度Ymv1を示す周波数をXmv1とする。」に訂正する。

(12)訂正事項9

本件訂正前の明細書の段落【0191】に記載された「最大強度Ymh1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値Xcenを引いた値であるXmaxをXmh1とする。また、垂直方向(v1方向)のラインプロファイルにおける最大強度YmaxをYmv1とし、最大強度Ymv1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値Xcenを引いた値であるXmaxをXmv1とする」を、

「最大強度Ymh1を示す周波数をXmh1とする。また、垂直方向(v1方向)のラインプロファイルにおける最大強度YmaxをYmv1とし、最大強度Ymv1を示す周波数をXmv1とする」に訂正する。

(13)訂正事項10

本件訂正前の明細書の段落【0193】に記載された「これらの最大強度を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値Xcenを引いた値であるXmh及びXmvを用いて」を、

「これらの最大強度を示す周波数であるXmh及びXmvを用いて」に訂正する。

(14)訂正事項11

本件訂正前の明細書の段落【0229】に記載された「最大強度Ymh1及びYmv1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値Xcenを引いた値であるXmaxをそれぞれXmh1及びXmv1とした」を、

「最大強度Ymh1及びYmv1を示す周波数をそれぞれXmh1及びXmv1とした」に訂正する。

2 一群の請求項

本件訂正前の請求項1~9は、請求項2~9が、本件訂正請求の対象である請求項1を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~9〕について請求されたものである。そして、請求項2~9は、請求項1の記載を引用しているものであるから、訂正事項1-1~1-4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1-1について

本件訂正前の請求項1に係る発明に関する訂正事項1-1は、「光学フィルム」及び「機能層」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項1-1は、本件特許の明細書【0031】、【0033】、【0042】、【0050】、【0068】、【0098】、【0099】及び【0241】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という)に記載した事項の範囲内においてするものである。

また、訂正事項1-1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項1-2について

ア 本件訂正前の請求項1に係る発明に関する訂正事項1-2のうち、「前記投影法において前記光学積層体を用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において」を、「前記投影法において前記光学フィルムを用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において」に訂正する点について、本件特許の明細書には「前記投影法において前記光学フィルムを用いずに得た背景画像」(【0012】)と記載され、すなわち「背景画像」が「光学フィルムを用いずに得た」ものと記載されている。

そうすると、本件訂正前の請求項1の「前記光学積層体を用いずに得た」は、「前記光学フィルムを用いずに得た」が本来の記載である。

したがって、訂正事項1-2のうち上記の点は、誤記の訂正を目的とするものである。

そして、訂正事項1-2のうち上記の点は、本件特許の願書に最初に添付した明細書【0012】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 本件訂正前の請求項1に係る発明に関する訂正事項1-2のうち、「前記光学フィルムを用いて投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像において互いに直交する方向h及び方向vにおけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh及びラインプロファイルvとし」、「背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において互いに直交する方向h’及び方向v’におけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh’及びラインプロファイルv’とし」を、「前記光学フィルムを用いて投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像において、該逆空間像の中心を通る互いに直交する方向h及び方向vにおけるラインプロファイルを補正して得たラインプロファイルを、それぞれラインプロファイルh及びラインプロファイルvとし、ここで、前記投影法は、暗室中、LED光源、光学フィルム、投影面及びカメラを配置し、該LED光源と該光学フィルムとの距離は250cmであり、該光学フィルムと該投影面との距離は30cmであり、該光学フィルムと該投影面とは平行に配置され、カメラは光源から投影面への法線の真下に設置し、カメラとして株式会社ニコン製「COOLPIX(登録商標)P600」を用いて行い、前記補正は、ラインプロファイルのYの値が最大となる周波数をXcenとし、その時のYの値をYcenとし、次に、Xcenを中心とし、両端50ピクセル分ずつの合計100ピクセルの領域について、Yの平均値を求め、該平均値をベースラインYbaseとし、Ycen=100、Ybase=0となるように、次の式:【数1】Y’=(Y-Ybase)×100/(Ycen-Ybase)に従いラインプロファイルを補正して行い」、「背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において、該逆空間像の中心を通る互いに直交する方向h’及び方向v’におけるラインプロファイルを同様に補正して得たラインプロファイルを、それぞれラインプロファイルh’及びラインプロファイルv’とし」に訂正する点については、「ラインプロファイルh」、「ラインプロファイルv」、「ラインプロファイルh’」及び「ラインプロファイルv’」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項1-2のうち上記の点は、本件特許の明細書【0228】及び【0229】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項1-3について

本件訂正前の請求項1に係る発明に関する訂正事項1-3は、「最大強度」を特定する「ラインプロファイル」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項1-3は、本件特許の明細書【0229】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

また、訂正事項1-3は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項1-4について

本件訂正前の請求項1に係る発明に関する訂正事項1-4は、「(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2」、「Xmh」及び「Xmv」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項1-4は、本件特許の明細書【0019】及び【0020】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

また、訂正事項1-4は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

なお、申立人は、令和3年6月30日提出の意見書において「エ.よって、「(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2≦14」であって、かつ「0.1cm-1≦|Xm-Xcen|≦10cm-1」とする発明は、新たな組合せの発明であり、出願当初明細書に記載されておらず、また出願当初明細書から自明の事項でもない。」(7ページ末行~8ページ3行)と主張しているが、本件特許の明細書には「【0019】・・・(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2の値の上限は、光学的均質性をより高めやすい観点から、・・・、さらに好ましくは14以下、さらに好ましくは13以下、特に好ましくは9以下である。・・・本発明の光学積層体を測定フィルムとして用いて得られる上記Ymh、Ymv、Xmh及びXmvについても、上記好ましい記載が同様にあてはまる。」及び「【0020】・・・ここで、Xcenと上記のようにして得たXmh及びXmvとが、次の関係:0.1cm-1≦|Xm-Xcen|≦10cm-1を満たすことが好ましい。なお、上記の式中、XmはXmh又はXmvを表し、Xmh及びXmvのいずれもが上記式を満たすことが好ましい。・・・」と記載されているのであるから、当該主張は当を得ておらず、採用できない。

(5)訂正事項2及び7について

訂正事項2及び7は、それぞれ本件訂正前の請求項2及び9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)訂正事項3~6について

訂正事項3~6は、訂正事項2に係る訂正に伴い、それぞれ引用する請求項を整理するためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(7)訂正事項8について

本件特許の明細書【0247】【表2】には、本件特許に係る発明の実施例である実施例1の光学積層体1が、「最大強度Ymh」が21.0であり、「周波数Xmh」が41.7であることが記載されている。

そして、「実施例1の投影画像から得た規格化後のラインプロファイルから、実施例1の背景画像から得た規格化後のラインプロファイルを引いて得たラインプロファイルをスムージング化して得たラインプロファイルを示す図」(【0010】)である【図8】から、ラインプロファイルにおける「最大強度」が概ね21.0であり、その際の「周波数」が概ね41.7であることが看取され、上記本件特許の明細書【0247】【表2】の記載内容と整合している。

「【図8】
[図:0001384019000002.jpg]
」

そうすると、本件特許に係る発明の実施例である実施例1に関する記載に着目すれば、「最大強度Ymhを示す周波数をXmh」とするものが本来の記載であるといえる。

また、「Xmv」は「ラインプロファイルh」と直交する「ラインプロファイルv」から、「ラインプロファイルh’」と直交する「ラインプロファイルv’」を引くことにより得られる「ラインプロファイル(v-v’)」に基づく周波数であることから、「Xmv」と「Xmh」とは同様の操作がなされるものであり、「Xmv」は「最大強度Ymvを示す周波数をXmv」とするものが本来の記載であるといえる。

したがって、訂正事項8は、本件訂正前の「最大強度Ymh1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値Xcenを引いた値XmaxをXmh1」及び「最大強度Ymv1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値Xcenを引いた値XmaxをXmv1」を、本来の記載「最大強度Ymh1を示す周波数をXmh1」とし、また、「最大強度Ymv1を示す周波数をXmv1」と正すものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。

また、本件訂正請求のうち明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-9〕の全てについて請求されたものである。

そして、訂正事項8は、本件特許の願書に最初に添付した明細書【0012】、【0013】、【0017】、【0155】【0183】及び【0247】並びに同図面の【図8】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

また、訂正事項8は、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行うものである。

なお、申立人は、令和3年6月30日提出の意見書において「ウ.訂正事項8~11は、発明の詳細な説明から、Xmh、Xmvが最大強度Ymh、Ymvを示す周波数からXcenを引いたものであることを削除しているが(段落17、191,193,229)、 出願当初明細書等において著しく不明瞭であった発明をさらに不明瞭にする訂正であり、 出願当初明細書等に記載されていた事項でも、出願当初明細書等から自明な事項でもない。 特許権者は、訂正事項8~11が誤記の訂正であると主張しているが、・・・訂正事項8~11のように発明の内容を著しく変更する訂正は、「特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すこと」にも、「訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するもの」にも該当しない。」(6ページ12~24行)と主張しているが、前述のとおり、訂正事項8は、本件特許の明細書及び図面に記載されていた事項に基づくものであり、本来あるべき記載に訂正したものであるから、当該主張は採用できない。

(8)訂正事項9~11について

上記(7)と同様の理由により、訂正事項9~11は、誤記の訂正を目的とするものであり、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

また、訂正事項9~11は、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行うものである。

4.小括

上記のとおり、訂正事項1-1~11に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。

したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1、3~8に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、3~8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
フッ素原子を含むポリイミド系樹脂及び/又はフッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂を含む光学フィルムと、該光学フィルムの片面に積層された、ハードコート機能を備える、厚さが11μm以下である機能層とを有する光学積層体であって、
前記フッ素原子を含むポリイミド系樹脂は式(1)で表される構成単位を有するポリイミド樹脂であり、前記フッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂は、式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂であり:
【化1】
続きを表示(全37行)
[図:0001384019000003.jpg]
[式(1)及び式(2)において、Xは、互いに独立に、2価の有機基を表し、式(1)において、Yは4価の有機基を表し、式(2)において、Zは、2価の有機基を表す]
前記フッ素原子を含むポリイミド系樹脂及び/又はフッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂のイミド化率は90%以上であり、
前記光学フィルムを用いて投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像において、該逆空間像の中心を通る互いに直交する方向h及び方向vにおけるラインプロファイルを補正して得たラインプロファイルを、それぞれラインプロファイルh及びラインプロファイルvとし、ここで、前記投影法は、暗室中、LED光源、光学フィルム、投影面及びカメラを配置し、該LED光源と該光学フィルムとの距離は250cmであり、該光学フィルムと該投影面との距離は30cmであり、該光学フィルムと該投影面とは平行に配置され、カメラは光源から投影面への法線の真下に設置し、カメラとして株式会社ニコン製「COOLPIX(登録商標)P600」を用いて行い、前記補正は、ラインプロファイルのYの値が最大となる周波数をXcenとし、その時のYの値をYcenとし、次に、Xcenを中心とし、両端50ピクセル分ずつの合計100ピクセルの領域について、Yの平均値を求め、該平均値をベースラインYbaseとし、Ycen=100、Ybase=0となるように、次の式:
【数1】
Y’=(Y-Ybase)×100/(Ycen-Ybase)
に従いラインプロファイルを補正して行い、
前記投影法において前記光学フィルムを用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において、該逆空間像の中心を通る互いに直交する方向h’及び方向v’におけるラインプロファイルを同様に補正して得たラインプロファイルを、それぞれラインプロファイルh’及びラインプロファイルv’とし、ラインプロファイルhからラインプロファイルh’を引いて得たラインプロファイル(h-h’)をスムージングして得たラインプロファイルの最大強度をYmhとし、最大強度Ymhを示す周波数をXmhとし、ラインプロファイルvからラインプロファイルv’を引いて得たラインプロファイル(v-v’)をスムージングして得たラインプロファイルの最大強度をYmvとし、最大強度Ymvを示す周波数をXmvとする、
ここで、前記スムージングは、次の式:
【数2】
yi=(Yni-10+Yni-9+‥‥+Yni-1+Yn+Yni+1+‥‥+Yni+9+Yni+10)/21
に従い、21個のデータの平均値であるyiを算出して行い、
Ymh及びYmvはいずれも40以下であり、Ymh、Ymv、Xmh及びXmvは、次の関係:
【数3】
(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2≦14
を満たし、Xmh及び/又はXmvが、次の関係:
【数4】
0.1cm-1≦|Xm-Xcen|≦10cm-1
を満たし、
前記機能層は多官能(メタ)アクリレート系化合物の硬化物を含む層であり、
前記光学積層体の前記機能層を有する面の鉛筆硬度は2H以上である、光学積層体。
【請求項3】
光学積層体の黄色度は3.0以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項4】
幅方向の長さが20cm以上、長さ方向の長さが1m以上である、請求項1又は3に記載の光学積層体。
【請求項5】
フレキシブル表示装置の前面板用のフィルムである、請求項1、3及び4のいずれかに記載の光学積層体。
【請求項6】
請求項1及び3~5のいずれかに記載の光学積層体を備えるフレキシブル表示装置。
【請求項7】
タッチセンサをさらに備える、請求項6に記載のフレキシブル表示装置。
【請求項8】
偏光板をさらに備える、請求項6又は7に記載のフレキシブル表示装置。」

第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について

1 取消理由の概要

令和2年12月18日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び3~9に係る特許に対して、当審が令和3年3月12日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

(1)取消理由1(サポート要件)

本件特許は、特許請求の範囲の記載が、次の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

ア 上記本件特許の明細書【0229】に記載された方法では、「各ラインプロファイルにおいて最大強度YmaxをYmh1及びYmv1とし、最大強度Ymh1及びYmv1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値Xcenを引いた値であるXmaxをそれぞれXmh1及びXmv1とし」と記載されている。

これに対し、本件特許の請求項1には、「最大強度Ymhを示す周波数をXmhとし、」「最大強度Ymvを示す周波数をXmvとする」と記載されており、「全周波数の中央値Xcenを引いた値である」ことは記載されていない。

そうすると、本件特許の請求項1、3~9に係る発明の「Xmh」及び「Xmv」は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載された「Xmh」及び「Xmv」ではない。

イ ラインプロファイルの最大強度(Ymh1及びYmv1)の測定は、上記本件特許の明細書【0229】に記載された「規格化方法」によっている。これに対し、本件特許の請求項1、3~9に係る発明の「Ymh」及び「Ymh」については、その測定に必須の規格化方法について何ら特定されていない。

ウ 上記ア及びイから、本件特許の請求項1に記載された「Ymh及びYmvはいずれも40以下であり、」「(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2≦25を満たす」ものは、発明の詳細な説明に記載された「Ymh及びYmvはいずれも40以下であり、」「(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2≦25を満たす」ものと実質的に異なる意味であるから、請求項1、3~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。

エ 本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「光学的均質性に優れる」という性状を示すものについて、特定の樹脂や製造方法によるものが記載されており、本件特許の請求項1、3~9に係る発明が包含する、これら特定の樹脂や製造方法以外の樹脂や製造方法で製造された「光学的均質性に優れる」という性状を示すものは、記載も示唆もされていない。

オ 本件特許の請求項1、3~5に係る発明は「光学積層体」であるが、発明の詳細な説明に記載された「光学的均質性に優れる」ものは、「光学積層体」を構成する「光学フィルム」の製造方法が特定な場合のものであって、「光学積層体」を構成する「光学フィルム」ではなく、「機能層」が「光学的均質性に優れ」たことによって結果的に課題を解決することは記載されていないし、「機能層」を構成する材料や製造方法の相違や、「光学フィルム」を「機能層」の片面に備えた場合と両面に備えた場合とでは、「光学積層体」としての「光学的均質性」も変化するはずのところ、このような点は反映されていない。

カ 本件特許の請求項1、3~9に係る発明の「(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2」が「25」という上限を境に、課題を解決することが可能であることを、当業者が理解できるとはいえない。

キ 本件特許の請求項9に係る発明は、残存溶媒量が十分に低下できないにもかかわらず、「Ymh及びYmvはいずれも40以下であり、」かつ「(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2≦25を満たす」場合を包含する点で、課題を解決し得ない場合を包含しているものであり、課題を解決できると当業者が認識できる範囲を越えて特許を請求するものであると言わざるを得ない。

(2)取消理由2(明確性)

本件特許は、特許請求の範囲の記載が、次の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

請求項1には、「(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2≦25を満たす」と記載されているが、その技術的意義が不明であり、また、「(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2」を「25」としたものが、どのような「フッ素原子を含むポリイミド系樹脂及び/又はフッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂を含む光学フィルムと、該光学フィルムの少なくとも片面に積層された、ハードコート機能を備え、厚さが20μm以下である機能層とを有する光学積層体」になるのかも不明である。

(3)取消理由3(進歩性)

本件特許の請求項1~9に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2016-93992号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開2018-156829号公報(甲第2号証)
引用文献3:特開2018-119141(参考文献1)
引用文献4:特開2018-65993(参考文献2)

(4)取消理由4(実施可能要件)

本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、次の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

ア 発明の詳細な説明には、「Xcen」について、「最大強度Ymh1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値」及び「最大強度Ymv1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値」(本件特許の明細書【0017】及び【0229】)と「Yの値が最大となる周波数」(本件特許の明細書【0229】)という2つの異なる定義が記載されており、「Xcen」として、いずれの値を用いるべきか不明であって、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

イ 「Xmax」、すなわち「Xmh」及び「Xmv」が、どのような値であるのかが不明であって、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

ウ 「0.1cm-1≦|Xm-Xcen|≦10cm-1」について、「Xm」は、「最大強度Ymh1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値Xcenを引いた値Xmax」及び「最大強度Ymv1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値Xcenを引いた値Xmax」(本件特許の明細書【0017】及び【0229】)であるところ、「Xm-Xcen」は、「Xcen」を2回引いた値となり、技術的に瑕疵があると考えられるため、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

エ 「Xmh」及び「Xmv」は、何らかの値から「Xcenを引いた値である」はずのところ(本件特許の明細書【0017】及び【0229】)、実施例については、「Xcen」の具体的な値は記載されておらず、どのようにして「Xmh」及び「Xmv」を算出したのかが不明であって、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

2 当審の判断

以下、摘記内の下線は、当審が強調のために付した。

(1)取消理由1(サポート要件)について

ア 上記1(1)アについて

上記訂正事項8~11により、本件特許の発明の詳細な説明に記載された「Xmh1及びXmv1」は、「最大強度Ymh1及びYmv1を示す周波数」になったため、「Xmh1及びXmv1」が「最大強度Ymh1及びYmv1を示す周波数」である本件発明1、3~8は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

イ 上記1(1)イについて

上記訂正事項1-2により、本件発明1におけるラインプロファイルの最大強度(Ymh1及びYmv1)の測定は、本件特許の発明の詳細な説明(本件特許の明細書【0228】~【0229】)に記載された「規格化方法」によるものに訂正されたため、本件発明1、3~8は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

ウ 上記1(1)ウについて

上記訂正事項1-1及び上記訂正事項1-2により、本件発明1の「Ymh及びYmv」及び「(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2」は、本件特許の発明の詳細な説明に記載された「Ymh及びYmv」及び「(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2」になったため、本件発明1、3~8は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

エ 上記1(1)エ~カについて

本件特許の発明が解決しようとする課題は、「画像表示装置等における光学フィルムとして好適に使用される、光学的均質性に優れる光学積層体、該光学積層体を備えるフレキシブル表示装置、及び該光学積層体の製造方法を提供すること」(本件特許の明細書【0007】)である。

そして、「光学的均質性に優れる」という点について、本件特許の発明の詳細な説明には、次の記載がある。

「【0018】
本発明の光学積層体に含まれる光学フィルムを測定フィルムとして用いて得られる上記Ymh及びYmvは、いずれも40以下である。Ymh又はYmvが40を超える場合、光学フィルムの光学的均質性が十分であるとはいえず、光学積層体の光学的均質性が十分でない場合がある。特に、このような光学フィルムを含む光学積層体の光学的均質性が画像表示装置において使用するに十分であるとはいえず、画像の歪み等を十分に低減することができない。・・・
【0019】
本発明の光学積層体に含まれる光学フィルムを測定フィルムとして用いて、上記のようにして得たYmh、Ymv、Xmh及びXmvは、次の関係:
【数5】
(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2≦30
を満たす。(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2の値が30を超えると、光学的均質性が十分でないために画面の歪み等が生じやすい。(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2の値の上限は、光学的均質性をより高めやすい観点から、好ましくは25以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは20以下、さらに好ましくは19.5以下、さらに好ましくは19以下、さらに好ましくは18以下、さらに好ましくは17以下、さらに好ましくは16以下、さらに好ましくは14以下、さらに好ましくは13以下、特に好ましくは9以下である。・・・」
「【0068】
ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂のイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは96%以上である。光学フィルム及び/又は光学積層体の光学的均質性を高めやすい観点から、イミド化率が上記の下限以上であることが好ましい。また、イミド化率の上限は100%以下である。・・・」
「【0098】
<機能層>
本発明の光学積層体は、光学フィルムと該光学フィルムの少なくとも片面に積層された機能層とを有する。・・・フレキシブル表示装置の前面板として使用しやすい観点から、該機能層の少なくとも1つは、ハードコート機能、帯電防止機能、防眩機能、低反射機能、反射防止機能及び防汚機能からなる群から選択される少なくとも1つの機能を有する層であることが好ましい。・・・
【0099】
機能層の厚さは、目的とする機能に応じて適宜設定してよいが、光学積層体の軽量化及び光学的均質性を高めやすい観点からは、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。」
「【0233】
<製造例>
製造例1:ポリアミドイミド樹脂1の製造
・・・得られたポリアミドイミド樹脂1の重量平均分子量は400,000、イミド化率は99.0%であった。
【0234】
製造例2:ポリイミド樹脂1の製造
・・・また、ポリイミドのイミド化率は98.6%であった。」
「【0240】
実施例1
・・・光学積層体1における機能層の厚さは10μmであった。」

【0241】

実施例2

・・・光学積層体2における機能層の厚さは11μmであった。

【0242】

実施例3

・・・光学積層体3における機能層の厚さは9μmであった。」

「【0247】
【表2】
[図:0001384019000004.jpg]
」

以上の記載を総合すると、本件特許の発明の詳細な説明には、上記課題を解決するために、「フッ素原子を含むポリイミド系樹脂及び/又はフッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂を含む光学フィルムと、該光学フィルムの片面に積層された、ハードコート機能を備える、厚さが11μm以下である機能層とを有する光学積層体」において、「フッ素原子を含むポリイミド系樹脂及び/又はフッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂のイミド化率は90%以上であ」り、「Ymh及びYmvはいずれも40以下であり」、「(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2≦14」とすることが記載されている。

そうすると、「フッ素原子を含むポリイミド系樹脂及び/又はフッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂を含む光学フィルムと、該光学フィルムの片面に積層された、ハードコート機能を備える、厚さが11μm以下である機能層とを有する光学積層体」において、「フッ素原子を含むポリイミド系樹脂及び/又はフッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂のイミド化率は90%以上であ」り、「Ymh及びYmvはいずれも40以下であり」、「(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2≦14」であることを発明特定事項としている本件発明1、3~8は、上記課題を解決可能な発明である。

オ 上記1(1)キについて

上記訂正事項7により、本件特許の請求項9は削除された。

カ 小括

上記ア~オのとおりであるから、本件発明1、3~8は、発明の詳細な説明に記載したものである。

(2)取消理由2(明確性)について

上記訂正事項1-1~1-4により、本件特許の請求項1に記載された「Ymh」、「Ymv」、「Xmh」及び「Xmv」がどのように算出されるものか明確になった結果、「(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2≦14」も明確となった。

よって、本件発明1、3~8は、明確である。

(3)取消理由3(進歩性)について

ア 引用文献

(ア)引用文献1(申立人が提出した甲第1号証)

引用文献1には次の記載がある。

「【請求項1】

ポリイミド系高分子を含有する樹脂フィルムと、

該樹脂フィルムの少なくとも一方の主面側に設けられた機能層と、

を備える積層フィルム。

・・・

【請求項4】

当該積層フィルムから5cmの距離に設けられた出力40Wの光源によって、当該積層フィルムに前記機能層の側から313nmの光を24時間照射する光照射試験を行ったときに、当該積層フィルムが以下の条件:

(i)光照射試験後の当該積層フィルムが、550nmの光に対する85%以上の透過率を有する、及び、

(ii)光照射試験前の当該積層フィルムが5以下の黄色度を有し、当該積層フィルムの光照射試験前後での黄色度の差が2.5未満である、

を満たす請求項1~3のいずれか1項に記載の積層フィルム。

【請求項5】

光照射後の当該積層フィルムが1.0%以下のヘイズを有する請求項4に記載の積層フィルム。

・・・

【請求項10】

前記機能層が、紫外線吸収及び表面硬度のうち少なくともいずれか一方の機能を有する層である、請求項1~5、及び8のいずれか1項に記載の積層フィルム。

【請求項11】

前記樹脂フィルムと前記機能層との間に設けられたプライマー層を更に備える、請求項1~5、及び8~10のいずれか1項に記載の積層フィルム。

【請求項12】

前記プライマー層がシランカップリング剤を含む、請求項11に記載の積層フィルム。

・・・

「【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム、積層フィルム、光学部材、表示部材、前面板、及び積層フィルムの製造方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知のアクリル系樹脂を基材として有し、基材上に設けられた機能層を有する積層フィルムは、フレキシブルデバイスの表示部材又は前面板として用いるには屈曲性が必ずしも充分ではなかった。
【0005】
続きを表示(全12行)
そこで、本発明の一側面は、屈曲性に優れる積層フィルムを提供することを目的とする。
【0006】
また、積層フィルムをフレキシブルデバイスの表示部材又は前面板として用いるためには、屈曲時の良好な視認性を有することも求められる。しかし、優れた屈曲性を有する積層フィルムであっても、屈曲時にコントラスト及び色相の変化を生じることがあった。
【0007】
そこで、本発明の別の側面は、機能層を有する積層フィルムに関して、屈曲時の視認性を改善することを目的とする。
・・・
【0010】
本発明によれば、積層フィルムを用いた光学部材、表示部材及びフレキシブルデバイス用前面板も提供される。」
「【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、屈曲性に優れる積層フィルムを提供することができる。本発明の積層フィルムは、フレキシブルデバイスの光学部材、表示部材又は前面板に適用する場合に要求される透明性、耐紫外線特性、及び表面硬度等の機能を有することができる。本発明によれば、屈曲時の視認性に優れた積層フィルムを提供することができる。
【0021】
本発明によれば、各種機能層との密着性に優れた樹脂フィルム、その樹脂フィルムを用いた積層フィルム、及び積層フィルムの製造方法を提供することができる。本発明はさらに、積層フィルムを用いた光学部材、表示部材及び前面板を提供することができる。本発明で得られる樹脂フィルムは、優れた透明性及び屈曲性を有することができる。」
「【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0024】
続きを表示(全83行)
[第一の実施形態]
図1は、本実施形態の樹脂フィルムを示す概略断面図である。本実施形態の樹脂フィルム10は、ポリイミド系高分子を含有し、対向する一対の主面10a,10bを有する。
【0025】
樹脂フィルム10に含まれるポリイミド系高分子はポリイミドであってもよい。ポリイミドは、例えば、ジアミン類とテトラカルボン酸二無水物とを出発原料として、重縮合によって得られる縮合型ポリイミドである。ポリイミド系高分子として、樹脂フィルム形成のために用いられる溶媒に可溶なものを選択することができる。
【0026】
ジアミン類としては、特に制限はなく、ポリイミドの合成に通常用いられる芳香族ジアミン類、脂環式ジアミン類、脂肪族ジアミン類等を用いることができる。ジアミン類は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0027】
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を用いることができ、特に制限されることはない。テトラカルボン酸二無水物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。テトラカルボン酸二無水物に代えて、酸クロライド化合物等のテトラカルボン酸化合物類縁体から選ばれるテトラカルボン酸化合物を出発原料として用いてもよい。
【0028】
ジアミン類及びテトラカルボン酸化合物(テトラカルボン酸二無水物)のうち少なくともいずれか一方が、フッ素系置換基、水酸基、スルホン基、カルボニル基、複素環、炭素数1~10の長鎖アルキル基等からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を1つ又は複数有していてもよい。中でも透明性の観点から、官能基としてフッ素系置換基が導入されたジアミン類及びテトラカルボン酸化合物(テトラカルボン酸二無水物)が好ましい。フッ素系置換基は、フッ素原子を含む基であればよく、その具体例は、フッ素基(フッ素原子,-F)、及びトリフルオロメチル基である。
【0029】
溶剤に対する溶解性、樹脂フィルム10を形成した場合の透明性及び屈曲性の観点から、テトラカルボン酸化合物として、脂環式テトラカルボン酸化合物(脂環式テトラカルボン酸二無水物等)又は芳香族テトラカルボン酸化合物(芳香族テトラカルボン酸二無水物等)を用いることが好ましい。樹脂フィルムの透明性、及び着色の抑制の観点から、テトラカルボン酸二無水物として、フッ素系置換基を有する、脂環式テトラカルボン酸化合物又は芳香族テトラカルボン酸化合物を用いることがさらに好ましい。
【0030】
ジアミン類として、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミンを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。溶剤に対する溶解性、樹脂フィルム10を形成した場合の透明性及び屈曲性の観点から、ジアミン類として、脂環式ジアミン又は芳香族ジアミンを用いることが好ましい。樹脂フィルムの透明性、及び着色の抑制の観点から、ジアミン類として、フッ素系置換基を有する、脂環式ジアミン又は芳香族ジアミンを用いることがさらに好ましい。
【0031】
ポリイミド系高分子を使用すれば、特に優れた屈曲性を有し、高い光透過率(例えば、550nmの光に対して85%以上又は88%以上)、及び、低い黄色度(YI値、例えば5以下又は3以下)、低いヘイズ(例えば1.5%以下又は1.0%以下)の樹脂フィルムが得られ易い。
【0032】
上記ポリイミドは、下記(PI)式で表される繰り返し構造単位を有していてもよい。ここで、Gは4価の有機基であり、Aは2価の有機基である。
【0033】
【化1】
[図:0001384019000005.jpg]
【0034】
Gとしては、非環式脂肪族基、環式脂肪族基、及び、芳香族基からなる群から選ばれる4価の有機基が挙げられる。Gは、環式脂肪族基又は芳香族基であることが好ましい。芳香族基としては、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、および、2以上の芳香族環を有しそれらが直接または結合基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基等が挙げられる。樹脂フィルムの透明性、及び着色の抑制の観点から、Gは、環式脂肪族基であってもよいし、フッ素系置換基を有する、環式脂肪族基、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基又は非縮合多環式芳香族基であってもよい。より具体的には、飽和又は不飽和シクロアルキル基、飽和又は不飽和へテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、ヘテロアルキルアリール基、及び、これらの内の任意の2つの基(同一でもよい)が直接又は結合基により相互に連結された基が挙げられる。結合基としては、-O-、炭素数1~10のアルキレン基、-SO2-、-CO-又は-CO-NR-(Rは、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)が挙げられる。Gの炭素数は通常2~32であり、2~27であることが好ましく、5~10であることがより好ましく、6~8であることがさらに好ましく、3~8であることが特に好ましい。Gが環式脂肪族基又は芳香族基である場合、炭素原子の一部がヘテロ原子で置き換えられていてもよい。Gの例は、飽和又は不飽和シクロアルキル基、飽和又は不飽和へテロシクロアルキル基であり、これらは3~8の炭素原子を有することができる。ヘテロ原子の例は、O、N又はSが挙げられる。
【0035】
具体的には、Gは以下の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)又は式(26)で表される基であることができる。式中の*は結合手を示す。ここで、Zは、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-Ar-O-Ar-、-Ar-CH2-Ar-、-Ar-C(CH3)2-Ar-又は-Ar-SO2-Ar-を表す。Arは炭素数6~20のアリール基を表し、その例はフェニレン基(ベンゼン環)である。これらの基の水素原子のうち少なくとも1つが、フッ素系置換基で置換されていてもよい。
【0036】
【化2】
[図:0001384019000006.jpg]
【0037】
Aとしては、非環式脂肪族基、環式脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択された2価の有機基が挙げられる。Aで表される2価の有機基は、環式脂肪族基及び芳香族基であることが好ましい。芳香族基としては、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、および2以上の芳香族環を有しそれらが直接または結合基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基が挙げられる。樹脂フィルムの透明性、及び着色の抑制の観点から、Aの少なくとも一部には、フッ素系置換基が導入されていることが好ましい。
【0038】
より具体的には、Aは、飽和又は不飽和シクロアルキル基、飽和又は不飽和へテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、ヘテロアルキルアリール基、及び、これらの内の任意の2つの基(同一でもよい)が直接又は結合基により相互に連結された基が挙げられる。ヘテロ原子としては、O、N又はSが挙げられ、結合基としては、-O-、炭素数1~10のアルキレン基、-SO2-、-CO-又は-CO-NR-(Rはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)が挙げられる。
Aで表される2価の有機基の炭素数は、通常2~40であり、好ましくは5~32であり、より好ましくは12~28であり、さらに好ましくは24~27である。
【0039】
具体的には、Aは以下の式(30)、式(31)、式(32)、式(33)又は式(34)で表される基であることができる。式中の*は結合手を示す。ここで、Z1~Z3は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)であることができる。下記の基において、Z1とZ2、及び、Z2とZ3は、それぞれ、各環に対してメタ位又はパラ位にあることが好ましい。また、Z1と末端の単結合、Z2と末端の単結合、及び、Z3と末端の単結合とは、メタ位又はパラ位にあることが好ましい。1つの例は、Z1及びZ3が-O-であり、かつ、Z2が-CH2-、-C(CH3)2-又は-SO2-である。これらの基の水素原子のうち少なくとも1つが、フッ素系置換基で置換されていてもよい。
【0040】
【化3】
[図:0001384019000007.jpg]
【0041】
A及びGの少なくとも一方において、少なくとも1つの水素原子が、フッ素基及びトリフルオロメチル基などフッ素原子を含むフッ素系置換基、水酸基、スルホン基、炭素数1~10のアルキル基等からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基で置換されていてもよい。また、A及びGがそれぞれ環式脂肪族基又は芳香族基である場合に、上記A及びGの少なくとも一方がフッ素系置換基を有することが好ましく、A及びGの両方がフッ素系置換基を有することがより好ましい。
【0042】
ポリイミド系高分子は、式(PI)、式(a)、式(a’)又は式(b)で表される繰り返し構造単位を少なくとも1種含む重合体であってもよい。式(a)中のG2は3価の有機基を表し、A2は2価の有機基を表す。式(a’)中のG3は4価の有機基を表し、A3は2価の有機基を表す。式(b)中のG4及びA4は、それぞれ2価の有機基を表す。
【0043】
【化4】
[図:0001384019000008.jpg]
【0044】
式(a)中のG2は、3価の基である点以外は、式(PI)中のGと同様の基から選択することができる。例えば、G2は、Gの具体例として例示された式(20)~式(26)で表される基における4つの結合手のうちいずれか1つが水素原子に置き換わった基であってもよい。式(a)中のA2は式(PI)中のAと同様の基から選択することができる。
【0045】
式(a’)中のG3は、式(PI)中のGと同様の基から選択することができる。式(a’)中のA3は、式(PI)中のAと同様の基から選択することができる。
【0046】
式(b)中のG4は、2価の基である点以外は、式(PI)中のGと同様の基から選択することができる。例えば、G4は、Gの具体例として例示された式(20)~式(26)で表される基における4つの結合手のうちいずれか2つが水素原子に置き換わった基であってもよい。式(b)中のA4は、式(PI)中のAと同様の基から選択することができる。
【0047】
式(PI)、式(a)、式(a’)又は式(b)で表される繰り返し構造単位を少なくとも1種含む重合体であるポリイミド系高分子は、ジアミン類と、テトラカルボン酸化合物又はトリカルボン酸化合物(酸クロライド化合物およびトリカルボン酸無水物などのトリカルボン酸化合物類縁体を含む)の少なくとも1種類とを重縮合させることにより得られる縮合型高分子であってもよい。出発原料としては、これらに加えて、さらにジカルボン酸化合物(酸クロライド化合物などの類縁体を含む)を用いることもある。式(a’)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン類及びテトラカルボン酸化合物から誘導される。式(a)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン類及びトリカルボン酸化合物から誘導される。式(b)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン類及びジカルボン酸化合物から誘導される。ジアミン類及びテトラカルボン酸化合物の具体例は、上述のとおりである。
【0048】
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂環式トリカルボン酸、非環式脂肪族トリカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロライド化合物、酸無水物等が挙げられる。トリカルボン酸化合物は、好ましくは芳香族トリカルボン酸、脂環式トリカルボン酸、非環式脂肪族トリカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロライド化合物である。トリカルボン酸化合物は、2種以上併用してもよい。
【0049】
溶剤に対する溶解性、樹脂フィルム10を形成した場合の透明性及び屈曲性の観点から、トリカルボン酸化合物は、脂環式トリカルボン酸化合物及び芳香族トリカルボン酸化合物であることが好ましい。樹脂フィルムの透明性及び着色の抑制の観点から、トリカルボン酸化合物は、フッ素系置換基を有する脂環式トリカルボン酸化合物及びフッ素系置換基を有する芳香族トリカルボン酸化合物であることが好ましい。
【0050】
ジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、非環式脂肪族ジカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロライド化合物、酸無水物等が挙げられる。ジカルボン酸化合物は、好ましくは芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、非環式脂肪族ジカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロライド化合物である。ジカルボン酸化合物は、2種以上併用してもよい。
【0051】
溶剤に対する溶解性、樹脂フィルム10を形成した場合の透明性及び屈曲性の観点から、ジカルボン酸化合物は、脂環式ジカルボン酸化合物及び芳香族ジカルボン酸化合物であることが好ましい。樹脂フィルムの透明性及び着色の抑制の観点から、ジカルボン酸化合物は、フッ素系置換基を有する脂環式ジカルボン酸化合物及びフッ素系置換基を有する芳香族ジカルボン酸化合物であることが好ましい。
【0052】
ポリイミド系高分子は、異なる種類の複数の上記の繰り返し単位を含む共重合体でもよい。ポリイミド系高分子の重量平均分子量は、通常10,000~500,000である。ポリイミド系高分子の重量平均分子量は、好ましくは、50,000~500,000であり、さらに好ましくは100,000~500,000又は70,000~400,000である。重量平均分子量は、GPCで測定した標準ポリスチレン換算分子量である。ポリイミド系高分子の重量平均分子量が大きい方が高い屈曲性を得られやすい傾向があり、ポリイミド系高分子の重量平均分子量が大きすぎると、ワニスの粘度が高くなり、加工性が低下する傾向がある。
【0053】
ポリイミド系高分子は、上述のフッ素系置換基等によって導入できるフッ素原子等のハロゲン原子を含んでいてもよい。ポリイミド系高分子がハロゲン原子を含むことにより、樹脂フィルムの弾性率を向上させ且つ黄色度を低減させることができる。これにより、樹脂フィルムにキズ及びシワ等が発生することを抑制し、且つ、樹脂フィルムの透明性を向上させることができる。例えばフッ素原子は、ジアミン類及びテトラカルボン酸二無水物の少なくとも一方として、フッ素基又はトリフルオロメチル基等のフッ素系置換基を有する化合物を用いることで、ポリイミドの分子内に導入することができる。ポリイミドにおけるハロゲン原子(又はフッ素原子)の含有量は、ポリイミド系高分子の質量を基準として、1質量%~40質量%であることが好ましく、1質量%~30質量%であることがより好ましい。
・・・
【0063】
次に、本実施形態の樹脂フィルム10の製造方法の一例を説明する。
公知のポリイミドの合成手法を用いて重合された溶媒可溶なポリイミドを溶媒に溶解し、ポリイミドワニスを調製する。溶媒は、ポリイミドを溶解する溶媒であればよく、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、又はそれらの組み合わせ(混合溶媒)であることができる。
【0064】
無機材料(ケイ素材料)を含有する樹脂フィルムを製造する場合、次いで、ポリイミド系高分子ワニスに、無機材料を添加し、公知の撹拌法により撹拌及び混合して、ケイ素材料が均一に分散された分散液を調製する。
【0065】
ポリイミド系高分子ワニス又は分散液におけるポリイミドと無機材料の配合比は、質量比で、1:9~9:1であることが好ましく、3:7~8:2であることがより好ましい。
【0066】
ポリイミド系高分子ワニス又は分散液は、添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤は、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤、難燃剤、滑剤、及びレベリング剤から選ばれる。ポリイミド系高分子ワニス又は分散液は、無機粒子(シリカ粒子等)同士の結合形成に寄与する、金属アルコキシド基を1個又は2個以上有するアルコキシシランなどの化合物を含んでいてもよい。このような化合物を含む分散液を用いることで、樹脂フィルムの透明性等の光学特性を維持しながら、無機粒子の配合割合を大きくすることができる。このような化合物の例としては、アミノ基を有するアルコキシシランがある。
【0067】
次いで、上記の分散液を、例えば公知のロール・ツー・ロールやバッチ方式により基材に塗布して塗膜を形成する。その塗膜を乾燥して、フィルムを形成する。その後、基材からフィルムを剥離することによって、樹脂フィルム10が得られる。基材は、例えば、PET基材、SUSベルト、又はガラス基材であってもよい。
【0068】
塗膜の乾燥、及び/又はベーキングのために、塗膜を加熱してもよい。塗膜を、温度50℃~350℃にて、適宜、不活性雰囲気又は減圧の条件下で加熱することができる。塗膜の加熱により溶媒を蒸発させることができる。塗膜を50~150℃で乾燥することと、乾燥後の塗膜を180~350℃でベーキングすることとを含む方法により、樹脂フィルムを形成してもよい。」
「【0072】
[第二の実施形態]
以下、図2を参照して、第二の実施形態に係る積層フィルムを説明する。
図2は、本実施形態の積層フィルムを示す概略断面図である。図2において、図1に示した第一の実施形態の樹脂フィルムと同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。本実施形態の積層フィルム30は、樹脂フィルム10と、樹脂フィルム10の一方の主面10aに積層された機能層20とから概略構成されている。
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【0073】
機能層20は、積層フィルム30をフレキシブルデバイスの光学部材、表示部材又は前面板として用いるときに、積層フィルム30にさらに機能(性能)を付与するための層であり得る。機能層20は、紫外線吸収、表面硬度、粘着性、色相調整、及び屈折率調整からなる群から選択される少なくとも1種の機能を有する層であることが好ましい。
【0074】
機能層20としての、紫外線吸収の機能を有する層(紫外線吸収層)は、例えば、紫外線硬化型の透明樹脂、電子線硬化型の透明樹脂、及び熱硬化型の透明樹脂から選ばれる主材と、この主材に分散した紫外線吸収剤とから構成される。機能層20として紫外線吸収層を設けることにより、光照射による黄色度の変化を容易に抑制することができる。
【0075】
紫外線吸収層の主材としての紫外線硬化型、電子線硬化型、又は熱硬化型の透明樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリ(メタ)アクリレートであってもよい。
紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、及びトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよい。
本明細書において、「系化合物」とは、当該「系化合物」が付される化合物の誘導体を指す。例えば、「ベンゾフェノン系化合物」とは、母体骨格としてのベンゾフェノンと、ベンゾフェノンに結合している置換基とを有する化合物を指す他の「系化合物」についても同様である。
【0076】
紫外線吸収層は、400nm以下の波長の光(例えば波長313nmの光)を95%以上吸収する層であってもよい。言い換えると、紫外線吸収層は、400nm以下の波長の光(例えば波長313nmの光)の透過率が5%未満である層であってもよい。紫外線吸収層は、このような透過率が得られるような濃度の紫外線吸収剤を含むことができる。光照射による積層フィルムの黄色度の増大を抑制する観点から、紫外線吸収層(機能層20)における紫外線吸収剤の割合は、紫外線吸収層の質量を基準として、通常1質量%以上であり、3質量%以上であることが好ましく、通常10質量%以下であり、8質量以下であることが好ましい。
【0077】
機能層20としての、表面硬度の機能(表面に高硬度を発現する機能)を有する層(ハードコート層)は、例えば、樹脂フィルムの表面の鉛筆硬度よりも高い鉛筆硬度を有する表面を積層フィルムに与える層である。ハードコート層の表面の鉛筆硬度は、例えば2H以上であってもよい。このハードコート層は、特に限定されないが、ポリ(メタ)アクリレート類に代表される、紫外線硬化型、電子線硬化型、又は熱硬化型の樹脂を含む。ハードコート層は、光重合開始剤、有機溶剤を含んでもよい。ポリ(メタ)アクリレート類は、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、及び他の多官能ポリ(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上の(メタ)アクリレート類から形成されるポリ(メタ)アクリレートである。ハードコート層は、上記成分の他に、シリカ、アルミナ、ポリオルガノシロキサン等の無機酸化物を含んでもよい。
【0078】
機能層20としての、粘着性の機能を有する層(粘着層)は、積層フィルム30を他の部材に接着させる機能を有する。粘着層の形成材料としては、通常知られたものを用いることができ、例えば、熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物を用いることができる。
【0079】
粘着層は、重合性官能基を有する成分を含む樹脂組成物から構成されていてもよい。この場合、積層フィルム30を他の部材に密着させた後に粘着層を構成する樹脂組成物をさらに重合させることにより、強固な接着を実現することができる。樹脂フィルム10と粘着層との接着強度は、0.1N/cm以上が好ましく、0.5N/cm以上がより好ましい。
【0080】
粘着層は、熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物を材料として含んでいてもよい。この場合、事後的にエネルギーを供給することで樹脂組成物を高分子化し硬化させることができる。
【0081】
粘着層は、感圧型接着剤(Pressure Sensitive Adhesive、PSA)と呼ばれる、押圧により対象物に貼着される層であってもよい。感圧型接着剤は、「常温で粘着性を有し、軽い圧力で被着材に接着する物質」(JIS K6800)である粘着剤であってもよく、「特定成分を保護被膜(マイクロカプセル)に内容し、適当な手段(圧力、熱等)によって被膜を破壊するまでは安定性を保持できる接着剤」(JIS K6800)であるカプセル型接着剤であってもよい。
【0082】
機能層20としての、色相調整の機能を有する層(色相調整層)は、積層フィルム30を目的の色相に調整することができる層である。色相調整層は、例えば、樹脂及び着色剤を含有する層である。この着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、弁柄、チタニウムオキサイド系焼成顔料、群青、アルミン酸コバルト、及びカーボンブラック等の無機顔料;アゾ系化合物、キナクリドン系化合物、アンスラキノン系化合物、ペリレン系化合物、イソインドリノン系化合物、フタロシアニン系化合物、キノフタロン系化合物、スレン系化合物及びジケトピロロピロール系化合物等の有機顔料;硫酸バリウム及び炭酸カルシウム等の体質顔料;塩基性染料、酸性染料及び媒染染料等の染料を挙げることができる。
【0083】
機能層20としての、屈折率調整の機能を有する層(屈折率調整層)は、樹脂フィルム10とは異なる屈折率を有し、積層フィルムに所定の屈折率を付与することができる層である。屈折率調整層は、例えば、適宜選択された樹脂、及び場合によりさらに顔料を含有する樹脂層であってもよいし、金属の薄膜であってもよい。
【0084】
屈折率を調整する顔料としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化タンタルが挙げられる。顔料の平均粒子径は、0.1μm以下であることが好ましい。顔料の平均粒子径を0.1μm以下とすることにより、屈折率調整層を透過する光の乱反射を防止し、透明度の低下を防止することができる。
【0085】
屈折率調整層に用いられる金属としては、例えば、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ケイ素、酸化インジウム、酸窒化チタン、窒化チタン、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素等の金属酸化物又は金属窒化物が挙げられる。
【0086】
機能層20は、積層フィルム30の用途に応じて、上記の機能を適宜有する。機能層20は、単層であっても、複数の層であってもよい。各層が1つの機能又は2つ以上の機能を有していてもよい。
【0087】
機能層20は、表面硬度及び紫外線吸収の機能を有することが好ましい。この場合の機能層20は、「表面硬度及び紫外線吸収の機能を有する単層」、「表面硬度を有する層と紫外線吸収を有する層とを含む多層」、又は、「表面硬度及び紫外線吸収の機能を有する単層と表面硬度を有する層とを含む多層」を含むことが好ましい。
【0088】
機能層20の厚さは、積層フィルム30が適用されるフレキシブルデバイスに応じて適宜調整されるが、例えば、1μm~100μmであることが好ましく、2μm~80μmであることがより好ましい。機能層20は、典型的には、樹脂フィルム10よりも薄い。
【0089】
積層フィルム30は、樹脂フィルム10の主面10a上に機能層20を形成することで、得ることができる。機能層20は、公知のロール・ツー・ロールやバッチ方式により、形成することができる。
【0090】
機能層20としての紫外線吸収層は、例えば、樹脂フィルム10の主面10aに、紫外線吸収剤と、紫外線吸収剤が分散される樹脂などの主材とを含む分散液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させる方法により、形成することができる。
【0091】
機能層20としてのハードコート層は、例えば、樹脂フィルム10の主面10aに、ハードコート層を形成する樹脂を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させる方法により、形成することができる。
【0092】
機能層20としての粘着層は、例えば、樹脂フィルム10の主面10aに、粘着層を形成する粘着剤を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させる方法により、形成することができる。
【0093】
機能層20としての色相調整層は、例えば、樹脂フィルム10の主面10aに、色相調整層を形成する顔料等と、顔料等が分散される樹脂などの主材とを含む分散液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させる方法により、形成することができる。
【0094】
機能層20としての屈折率調整層は、例えば、樹脂フィルム10の主面10aに、屈折率調整層を形成する無機粒子等と、無機粒子等が分散される樹脂等の主材とを含む分散液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させる方法により、形成することができる。
【0095】
機能層20としての、表面硬度及び紫外線吸収の機能を有する単層は、樹脂フィルム10の主面10aに、紫外線吸収剤と、紫外線吸収剤が分散される樹脂等の主材と、ハードコート層を形成する樹脂とを含む分散液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させる方法により、形成することができる。主材となる樹脂と、ハードコート層を形成する樹脂とは同じであってもよい。
【0096】
樹脂フィルム10の主面10aに、紫外線吸収剤と、紫外線吸収剤が分散される樹脂などの主材とを含む分散液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させることにより、紫外線吸収層を形成し、次いで、その紫外線吸収層に、ハードコート層を形成する樹脂を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させることにより、ハードコート層を形成してもよい。この方法により、表面硬度を有する層と紫外線吸収を有する層とを含む多層の機能層が形成される。
【0097】
樹脂フィルム10の主面10aに、紫外線吸収剤と、紫外線吸収剤が分散される樹脂などの主材と、ハードコート層を形成する樹脂とを含む分散液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させて、表面硬度及び紫外線吸収の機能を有する単層を形成し、さらに、その単層上に、ハードコート層を形成する樹脂を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させることにより、ハードコート層を形成してもよい。この方法により、表面硬度及び紫外線吸収の機能を有する層と表面硬度を有する層とを含む多層の機能層が形成される。
【0098】
このようにして得られる本実施形態の積層フィルム30は、屈曲性に優れる。積層フィルム30は、フレキシブルデバイスの光学部材、表示部材又は前面板に適用する場合に要求される透明性、耐紫外線特性、及び表面硬度等の機能性を有することができる。樹脂フィルム10の主面10aにおけるSi/Nが8以上である場合、樹脂フィルム10と機能層20との密着性も優れている。
【0099】
積層フィルム30から5cmの距離に設けられた出力40Wの光源によって、積層フィルム30に機能層20の側から313nmの光を24時間照射する光照射試験を行ったときに、積層フィルム30が以下の条件:(i)光照射試験後の積層フィルムが、550nmの光に対する85%以上の透過率、及び1.0%以下のヘイズを有する、及び、(ii)光照射試験前の積層フィルムが5以下の黄色度(YI値)を有し、積層フィルムの光照射試験前後での黄色度の差が2.5未満である、を満たしていてもよい。これら条件(i)及び(ii)を満たす積層フィルムは、屈曲時にコントラスト又は色相の変化を生じ難く、良好な視認性を維持することができる。
【0100】
例えば、紫外線吸収の機能を有する層を機能層20として設け、さらに、樹脂フィルム10及び機能層20として、550nmの光に対する85%以上の透過率、及び1.0%以下のヘイズを有しているものを用いると、条件(i)及び(ii)を満たす積層フィルムを容易に得ることができる。
【0101】
光照射試験後の積層フィルムの550nmの光に対する透過率は、90%以上であることが好ましく、100%以下、又は95%以下であってもよい。光照射試験後の積層フィルムのヘイズは、0.9以下であることが好ましく、0.1以上であってもよい。光照射試験前の積層フィルムが、550nmの光に対する85%以上の透過率、及び1.0以下のヘイズ値を有していてもよい。透過率、及びヘイズの測定方法の詳細は、後述の実施例において説明される。
【0102】
光照射試験前の積層フィルムの黄色度は、4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、0.5以上であってもよい。光照射試験前の黄色度がYI0で、光照射後の黄色度がYI1であるとき、積層フィルムの光照射試験前後での黄色度の差ΔYIは、式:ΔYI=YI1-YI0によって計算される。ΔYIは、2.2以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、0.1以上であってもよい。黄色度の測定方法の詳細は、後述の実施例において説明される。
【0103】
本実施形態では、樹脂フィルム10の一方の主面10aに機能層20が積層された構成を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、樹脂フィルムの両面に機能層が積層されていてもよい。
【0104】
本実施形態の積層フィルム30は、フレキシブルデバイスの光学部材、表示部材及び前面板として好適に用いられる。」
「【0105】
[第三の実施形態]
以下、図3を参照して、第三の実施形態に係る積層フィルムを説明する。
図3は、本実施形態の積層フィルムを示す概略断面図である。図3において、図2に示した第二の実施形態の積層フィルムと同一又は対応する構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。本実施形態の積層フィルム30は、樹脂フィルム10と、樹脂フィルム10の一方の主面10a側に設けられた機能層20と、樹脂フィルム10と機能層20との間に設けられたプライマー層25とから概略構成されている。プライマー層25は、樹脂フィルム10の一方の主面10aに積層されている。機能層20は、プライマー層25の樹脂フィルム10と接する主面とは反対側の主面(以下、「一方の主面」ということがある。)25aに積層されている。
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・・・
【0111】
プライマー層25の厚さは、機能層20に応じて適宜調整されるが、0.01nm~20μmであることが好ましい。エポキシ系化合物のプライマー剤を用いる場合には、プライマー層25の厚さは0.01μm~20μmであることが好ましく、0.1μm~10μmであることがより好ましい。シランカップリング剤を用いる場合には、プライマー層25の厚さは0.1nm~1μmであることが好ましく、0.5nm~0.1μmであることがより好ましい。
【0112】
次に、本実施形態の図3の積層フィルム30の製造方法を説明する。
まず、第一の実施形態と同様にして、樹脂フィルム10を作製する。次いで、公知のロール・ツー・ロールやバッチ方式により、樹脂フィルム10の一方の主面10aに、プライマー剤を溶解した溶液を塗布して第1の塗膜を形成する。第1の塗膜は、必要に応じて、やや硬化させてもよい。
【0113】
次いで、第一の実施形態と同様にして、第1の塗膜上に、機能層20の原料を塗布して第2の塗膜を形成する。第1の塗膜と第2の塗膜を同時に、または個別に硬化させることにより、プライマー層25と機能層20を形成し、積層フィルム30を得る。
【0114】
このようにして得られる本実施形態の積層フィルム30は、屈曲性に優れる。また、樹脂フィルム10と機能層20の間に、プライマー層25が設けられているので、樹脂フィルム10と機能層20の密着性が高い。積層フィルム30は、フレキシブルデバイスの光学部材、表示部材及び前面板に適用する場合に要求される透明性、耐紫外線特性、及び表面硬度等の機能性を有することができる。」
「【0116】
[第四の実施形態]
以下、図4を用いて、第四の実施形態に係る表示装置を説明する。
図4は、本実施形態の積層フィルムの適用例である表示装置の一例を示す概略断面図である。本実施形態の表示装置100は、有機EL装置50と、タッチセンサ70と、前面板90と、を有する。これらは通常、筐体に収容されている。有機EL装置50とタッチセンサ70との間、及びタッチセンサ70と前面板90との間は、たとえば不図示の光学接着剤(Optical Clear Adhesive、OCA)で接着されている。」
「【0134】
-検討1-
実施例1
公知文献(例えば、United States Patent; Patent No. US8,207,256B2)に準拠して、ポリイミドとシリカ粒子とを含有する樹脂フィルム(シリカ粒子含有量60質量%)を以下のように作製した。
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窒素置換した重合槽に、(1)式の酸無水物、(2)式及び(3)式のジアミン、触媒、溶媒(γブチロラクトン及びジメチルアセトアミド)を仕込んだ。仕込み量は、(1)式の酸無水物75.0g、(2)式のジアミン36.5g、(3)式のジアミン76.4g、触媒1.5g、γブチロラクトン438.4g、ジメチルアセトアミド313.1gとした。(2)式のジアミンと(3)式のジアミンとのモル比は3:7、ジアミン合計と酸無水物とのモル比は、1.00:1.02であった。
【0135】
【化5】
[図:0001384019000009.jpg]
【0136】
重合槽内の混合物を攪拌して原料を溶媒に溶解させた後、混合物を100℃まで昇温し、その後、200℃まで昇温し、4時間保温して、ポリイミドを重合した。この加熱中に、液中の水を除去した。その後、精製及び乾燥により、ポリイミドを得た。
【0137】
次に、濃度20質量%に調整したポリイミドのγブチロラクトン溶液、γブチロラクトンに固形分濃度30質量%のシリカ粒子を分散した分散液、及び、アミノ基を有するアルコキシシランのジメチルアセトアミド溶液を混合し、30分間攪拌した。
【0138】
ここで、シリカ粒子とポリイミドとの質量比を60:40、アミノ基を有するアルコキシシランの量をシリカ粒子及びポリイミドの合計100質量部に対して1.67質量部とした。
【0139】
混合溶液を、ガラス基板に塗布し、50℃で30分、140℃で10分加熱して溶媒を乾燥した。その後、フィルムをガラス基板から剥離し、金枠を取り付けて210℃で1時間加熱することで、厚み80μmの樹脂フィルムを得た。
【0140】
得られた樹脂フィルムの一方の面に、2液硬化型のプライマー(商品名:アラコートAP2510、荒川化学工業社製)を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させて、厚さ1μmのプライマー層を形成した。
次いで、プライマー層の上に、機能層形成用の溶液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させて、厚さ10μmの機能層(表面硬度及び紫外線吸収の機能を有する層)を形成して、実施例1の積層フィルムを得た。機能層形成用の溶液は、4官能アクリレート(商品名:A-TMMT、新中村化学社製)47.5質量部、3官能アクリレート(商品名:A-TMPT、新中村化学社製)47.5質量部、反応性ウレタンポリマー(商品名:8BR-600、大成ファインケミカル社製、40質量%品)12.5質量部、トリアジン系紫外線吸収剤(TINUVIN(登録商標)479、BASF社製)3質量部、光重合開始剤(IRGACURE(登録商標)184、チバスペシャリティケミカルズ社製)8質量部、レベリング剤(商品名:BYK-350、ビックケミージャパン社製)0.6質量部、及び、メチルエチルケトン107質量部を混合し、攪拌することで調製した。」
「【0142】
(評価)
鉛筆硬度の測定
実施例1及び比較例1の積層フィルムの、機能層側の表面の鉛筆硬度を、JIS K5600-5-4に準拠して測定した。鉛筆硬度の測定における荷重は1kgとした。結果を表1に示す。」
「【【0148】
【表1】
[図:0001384019000010.jpg]
」

以上の記載事項から、特に実施例1に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「窒素置換した重合槽に、(1)式の酸無水物、(2)式及び(3)式のジアミン、触媒、溶媒(γブチロラクトン及びジメチルアセトアミド)を仕込み、仕込み量は、(1)式の酸無水物75.0g、(2)式のジアミン36.5g、(3)式のジアミン76.4g、触媒1.5g、γブチロラクトン438.4g、ジメチルアセトアミド313.1gとし、(2)式のジアミンと(3)式のジアミンとのモル比は3:7、ジアミン合計と酸無水物とのモル比は、1.00:1.02であり、
[図:0001384019000011.jpg]
重合槽内の混合物を攪拌して原料を溶媒に溶解させた後、混合物を100℃まで昇温し、その後、200℃まで昇温し、4時間保温して、ポリイミドを重合し、この加熱中に、液中の水を除去し、その後、精製及び乾燥により、ポリイミドを得て、濃度20質量%に調整したポリイミドのγブチロラクトン溶液、γブチロラクトンに固形分濃度30質量%のシリカ粒子を分散した分散液、及び、アミノ基を有するアルコキシシランのジメチルアセトアミド溶液を混合し、30分間攪拌した混合溶液を、ガラス基板に塗布し、50℃で30分、140℃で10分加熱して溶媒を乾燥し、その後、フィルムをガラス基板から剥離し、金枠を取り付けて210℃で1時間加熱することで、厚み80μmの樹脂フィルムを得て、得られた樹脂フィルムの一方の面に、2液硬化型のプライマー(商品名:アラコートAP2510、荒川化学工業社製)を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させて、厚さ1μmのプライマー層を形成し、次いで、プライマー層の上に、4官能アクリレート(商品名:A-TMMT、新中村化学社製)47.5質量部、3官能アクリレート(商品名:A-TMPT、新中村化学社製)47.5質量部、反応性ウレタンポリマー(商品名:8BR-600、大成ファインケミカル社製、40質量%品)12.5質量部、トリアジン系紫外線吸収剤(TINUVIN(登録商標)479、BASF社製)3質量部、光重合開始剤(IRGACURE(登録商標)184、チバスペシャリティケミカルズ社製)8質量部、レベリング剤(商品名:BYK-350、ビックケミージャパン社製)0.6質量部、及び、メチルエチルケトン107質量部を混合し、攪拌することで調製した機能層形成用の溶液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させて、厚さ10μmの機能層(表面硬度及び紫外線吸収の機能を有する層)を形成して得た、機能層側の表面の鉛筆硬度が3Hである積層フィルム。」

(イ)引用文献2(申立人が提出した甲第2号証)

引用文献2には、次の記載がある。

「【請求項1】
金属酸化物粒子とシランカップリング剤とポリイミドとが含有されたフレキシブルディスプレイ前面板用の透明ポリイミドフィルムであって、
前記金属酸化物粒子は、平均1次粒径が10~100nmの範囲内であり、かつ、含有量が前記透明ポリイミドフィルム中の全固形分(100質量%)に対し、20~70質量%の範囲内であり、
透明ポリイミドフィルムの投影画像を解析したとき、8bitグレースケールにおけるグレーバリューの標準偏差σが0.50~1.10の範囲内に、かつ2値化画像における黒部分の占有面積率が50%以下に調整されていることを特徴とするフレキシブルディスプレイ前面板用の透明ポリイミドフィルム。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルディスプレイ前面板用の透明ポリイミドフィルム及びその製造方法、並びに有機エレクトロルミネッセンスディスプレイに関し、より詳しくは、画像歪みを抑えるとともに、耐傷性にも優れたフレキシブルディスプレイ前面板用の透明ポリイミドフィルム及びその製造方法、並びに有機エレクトロルミネッセンスディスプレイに関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、画像歪みを抑えるとともに、耐傷性にも優れたフレキシブルディスプレイ前面板用の透明ポリイミドフィルム及びその製造方法、並びに有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを提供することである。」
「【0031】
《透明ポリイミドフィルム》
本発明のフレキシブルディスプレイ前面板用の透明ポリイミドフィルム(以下、単にポリイミドフィルム、フィルムともいう。)は、金属酸化物粒子とシランカップリング剤とポリイミドとが含有され、金属酸化物粒子の平均1次粒径が10~100nmの範囲内であり、透明ポリイミドフィルムの投影画像を評価したとき、8bitグレースケールにおけるグレーバリューの標準偏差σが0.50~1.10の範囲内に、かつ2値化画像における黒部分の占有面積率が50%以下に調整されていることを特徴とする。
ここで、透明とは、フィルムの全光線透過率が50%以上であることをいい、好ましくは70%以上であり、より好ましくは85%以上である。」
「【0392】
《評価》
以下のようにして、作製したポリイミドフィルム101~119について、グレーバリューの標準偏差σ、2値化画像における黒部分の占有面積率、耐傷性及び画像の歪みを評価した。
評価結果を表Iに示す。
続きを表示(全44行)
【0393】
〈グレーバリューの標準偏差σ及び2値化画像における黒部分の占有面積率〉
図1に示すフィルムの投影画像の解析手法にしたがい、グレーバリューの標準偏差σ及び2値化画像における黒部分の占有面積率を算出した。
具体的には、フィルム試料1(ポリイミドフィルム101~119)と白色光源2(株式会社日本技術センター製 S-light)との距離を60cmに調整し、白色光源2からフィルム試料1に対し、斜め45°方向から光照射した。フィルム試料1と、当該フィルム試料1と平行に配設された投影面3との距離を70cmに調整し、フィルム試料1の影を投影面3に投影した。
この投影画像を投影面3から90°の方向に80cmの距離で配設されたカメラ4(Canon製EOS KISS50、レンズEF-S18=55mm、ISO感度100、絞り5.6、シャッター速度1/10秒、ホワイトバランスマニュアル設定)にて撮影し撮影画像を得た。
【0394】
次いで、得られた投影画像について、以下の手順1~7に従って、グレーバリューの標準偏差σ及び2値化画像における黒部分の占有面積率K(%)を算出した。
【0395】
1.撮影画像をフリーソフトImageJを用いてパソコンに読み込んだ。
2.実際の撮影画像において1cm×5cmの矩形の評価エリアを設定した。このとき矩形の長辺がフィルム試料の搬送方向になるようにした。
3.フリーソフトImageJによって、8bitグレースケール化を行った。
4.フリーソフトImageJによってバックグラウンド補正を行った。
5.グレースケールにおけるグレーバリュー(画素値)の標準偏差σ及び平均値mを算出した。
6.平均値mを閾値として、矩形の評価エリアの2値化を行った。
7.2値化によって得られる黒部分(暗部)の面積を全体の面積で除して、黒部分の占有面積率K(%)を算出した。
【0396】
ここで、フリーソフトImageJとは、WayneRasband作成のImageJ1.32Sである。
【0397】
〈耐傷性の評価〉
作製したポリイミドフィルム101~119について、表面の耐傷性を耐スチールウール擦傷性試験により評価した。具体的には、学振型耐磨耗試験機(テスター産業社製)を用い、200g荷重をかけた#0000スチールウールをフィルム上にて10回往復させ、フィルムの表面の傷付き状態を目視にて観察し、以下の評価基準に従って評価した。
【0398】
○:傷が0~5本
×:傷が6本以上
【0399】
〈画像歪みの評価〉
作製したポリイミドフィルム101~119を用いて、それぞれ有機EL表示デバイス101~119を作製し、目視にて画像歪みの評価を行った。
【0400】
具体的には、透明基板として上記ポリイミドフィルム101~119を用いて、その上にクロムからなる反射電極、反射電極上に金属電極(陽極)としてITO(スズドープ酸化インジウム)を用いて金属電極を形成した。
有機機能層として、陽極上に正孔輸送層としてポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)をスパッタリング法で厚さ80nmで形成し、次いで、正孔輸送層上にシャドーマスクを用いて、RGBそれぞれの発光層R、G、Bを100nmの層厚で形成した。赤色発光層Rとしては、ホスト化合物としてトリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq3)と、発光性化合物として[4-ジシアノメチレン-2-メチル-6(4-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン](DCM)とを共蒸着(質量比99:1)して100nmの厚さで形成した。緑色発光層Gとしては、ホスト化合物としてAlq3と、発光性化合物としてクマリン6(3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン)とを共蒸着(質量比99:1)して100nmの厚さで形成した。青色発光層Bとしては、ホスト化合物としてBAlqと、発光性化合物としてペリレンとを共蒸着(質量比90:10)して厚さ100nmで形成した。
【0401】
さらに、有機機能層に電子が効率的に注入できるような仕事関数の低い第1の陰極としてカルシウムを真空蒸着法により4nmの厚さで成膜し、第1の陰極上に第2の陰極としてアルミニウムを2nmの厚さで形成した。ここで、第2の陰極として用いたアルミニウムは、その上に透明導電膜をスパッタリング法により成膜する際に、第1の陰極であるカルシウムが化学的変質を起こすことを防ぐ役割がある。次に、陰極上にスパッタリング法によって透明導電膜を80nmの厚さで成膜し透明電極とした。ここで透明導電膜としてはITOを用いた。さらに、透明電極上にCVD法によって窒化ケイ素を200nm成膜することで、絶縁層とし、20cm×20cm有機EL素子ユニットを作製した。
【0402】
次に、ガスバリアーフィルムとして、厚さ20μmのガスバリアー層付きポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、このガスバリアーフィルムの片面に、熱硬化型の液状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ25μmで付与した封止ユニットを作製した。
【0403】
次に、90℃、0.1MPaの減圧条件下で、透明基板から絶縁層まで形成した有機EL素子ユニットと封止ユニットとを積層して圧力をかけて5分間保持した。続いて、積層体を大気圧環境に戻し、更に90℃で30分間加熱して接着剤を硬化させて、有機EL表示デバイス101~119を作製した。
【0404】
作製した各有機EL表示デバイスを斜め45°の角度から目視にて観察し、以下の評価基準に従って評価した。
【0405】
○:画像の歪みが気にならないレベル
×:画像の歪みが気になるレベル」

(ウ)引用文献3(申立人が提出した参考資料1)

引用文献3には、次の記載がある。

「【請求項1】
ジアミンに由来する構成単位、ジカルボン酸に由来する構成単位、および、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を少なくとも有し、2次元NMRにより測定して95%以上のイミド化率を有するポリアミドイミド樹脂Aを含むフィルム。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドイミド樹脂を含むフィルム、ポリアミドイミド樹脂を含む樹脂組成物およびポリアミドイミド樹脂の製造方法に関する。」
「【0009】
そこで本発明は、特にフレキシブルディスプレイ等の前面板として好適に使用される、高いイミド化率を有するポリアミドイミド樹脂を含む、高い表面硬度を有するフィルムを提供することを目的とする。」
「【0014】
本発明のフィルムは、2次元NMRにより測定して95%以上のイミド化率を有するポリアミドイミド樹脂Aを含む。ポリアミドイミド樹脂Aのイミド化率が95%より低い場合、過度に柔軟な一次構造のポリアミドイミドとなる傾向があるために、該ポリアミドイミド樹脂を含むフィルムの表面硬度を十分に高めることができない。ポリアミドイミドワニスの安定性の観点から、ポリアミドイミド樹脂Aのイミド化率は、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらにより好ましくは99%以上である。該イミド化率は高ければ高いほどよく、その上限は特に限定されず、100%以下であればよい。ポリアミドイミド樹脂Aのイミド化率を上記の範囲に調整する方法としては、例えば後述するポリアミド樹脂組成物を用いてフィルムを製造した後、イミド化を行って製造する方法、後述する製造方法により製造したポリアミドイミド樹脂を含む組成物を用いてフィルムを製造する方法などが挙げられる。」
「【0063】
本発明の好ましい一実施態様において、本発明のフィルムに含まれるポリアミドイミド樹脂Aは、ジカルボン酸(酸クロライド等のジカルボン酸類縁体)、ジアミンおよびテトラカルボン酸(酸クロライド、テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸類縁体)との、場合によりさらにトリカルボン酸(酸クロライド化合物、トリカルボン酸無水物等のトリカルボン酸化合物類縁体)との、重縮合生成物である縮合型高分子である。この態様において、ポリアミドイミド樹脂Aは、式(5)で表される構成単位、および以下の式(6)で表される構成単位を有する。
【化26】
[図:0001384019000012.jpg]
[式(5)中、XおよびYは前記と同義である。]
【化27】
[図:0001384019000013.jpg]
[式(6)中、XおよびZは前記と同義である。]
式(5)および式(6)中のX、YおよびZは、それぞれ、式(3)中のX、式(4)中のYおよび式(2)中のZと同義であり、式(2)~式(4)中のX、YおよびZに関して上記に述べた好ましい記載が、式(5)および式(6)中のX、YおよびZについても同様にあてはまる。式(5)で表される構成単位は、通常、ジアミンおよびテトラカルボン酸に由来する構成単位であり、式(6)で表される構成単位は、通常、ジアミンおよびジカルボン酸に由来する構成単位である。」

(エ)引用文献4(申立人が提出した参考資料2)

引用文献4には、次の記載がある。

「【請求項1】
ポリイミド前駆体溶液を準備する工程と、
前記ポリイミド前駆体溶液中の、残留モノマーを低減することにより、精製されたポリイミド前駆体を得る工程と、
前記精製されたポリイミド前駆体と有機溶剤とを含有するポリイミド前駆体組成物を調製する工程と、
前記ポリイミド前駆体組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体塗膜を形成する工程と
前記ポリイミド前駆体塗膜を加熱することにより、ポリイミド前駆体をイミド化する工程と、を含む、ポリイミドフィルムの製造方法。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドフィルムの製造方法、ポリイミド前駆体の製造方法、積層体の製造方法及びディスプレイ用表面材の製造方法に関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、着色が抑制され、透明性が向上したポリイミドフィルムの製造方法を提供することを主目的とする。
続きを表示(全17行)
また、本発明は、前記ポリイミドフィルムの製造に適したポリイミド前駆体の製造方法、前記ポリイミドフィルムを有する積層体の製造方法、及び、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体であるディスプレイ用表面材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、ポリイミド前駆体溶液を準備する工程と、
前記ポリイミド前駆体溶液中の、残留モノマーを低減することにより、精製されたポリイミド前駆体を得る工程と、
前記精製されたポリイミド前駆体と有機溶剤とを含有するポリイミド前駆体組成物を調製する工程と、
前記ポリイミド前駆体組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体塗膜を形成する工程と、
前記ポリイミド前駆体塗膜を加熱することにより、ポリイミド前駆体をイミド化する工程と、を含む。
・・・
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、着色が抑制され、透明性が向上したポリイミドフィルムの製造方法を提供することができる。
また、本発明は、前記ポリイミドフィルムの製造に適したポリイミド前駆体の製造方法、前記ポリイミドフィルムを有する積層体の製造方法、及び、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体であるディスプレイ用表面材の製造方法を提供することができる。」
「【発明を実施するための形態】
【0018】
I.ポリイミドフィルムの製造方法
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、ポリイミド前駆体溶液を準備する工程(以下、ポリイミド前駆体溶液準備工程という)と、
前記ポリイミド前駆体溶液中の、残留モノマーを低減することにより、精製されたポリイミド前駆体を得る工程(以下、ポリイミド前駆体精製工程という)と、
前記精製されたポリイミド前駆体と有機溶剤とを含有するポリイミド前駆体組成物を調製する工程(以下、ポリイミド前駆体組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド前駆体組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド前駆体塗膜形成工程という)と、
前記ポリイミド前駆体塗膜を加熱することにより、ポリイミド前駆体をイミド化する工程(以下、イミド化工程という)と、を含む。
【0019】
本発明によれば、ポリイミド前駆体組成物として、精製されたポリイミド前駆体を再溶解させて得られる組成物を用い、且つ、ポリイミド前駆体のイミド化において、アミン等の触媒を用いず熱イミド化を行うことにより、着色が抑制され、透明性が向上したポリイミドフィルムを提供することができる。」
「【0138】
本発明に用いられる溶剤は、公知の溶剤から適宜選択して用いることができる。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、防眩剤、防汚剤、硬度を向上させるための無機又は有機微粒子、レベリング剤、各種増感剤等が挙げられる。」
「【0144】
4.積層体
本発明の製造方法により得られる積層体は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とが隣接して位置する積層体である。
本発明の製造方法により得られる積層体は、前記ポリイミドフィルムの一方の面のみに前記ハードコート層が隣接して積層されたものであってもよいし、前記ポリイミドフィルムの両面に前記ハードコート層が隣接して積層されたものであってもよい。
また、前記ハードコート層は、反射防止性、防眩性等の機能が付与されたものであってもよい。当該機能は、例えば、前記ハードコート層に公知の表面処理を施したり、無機又は有機微粒子等の添加剤を含有させること等により付与することができる。
また、本発明の製造方法により得られる積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ポリイミドフィルム及び前記ハードコート層の他に、更にウレタンやアクリル樹脂などを含むゲル等の他の層が積層されたものであってもよい。」

(オ)申立人が提出した甲第3号証(国際公開第2016/152459号)

甲第3号証には、次の記載がある。

「[0001] 本発明は、ポリイミド系光学フィルム、その製造方法及び有機エレクトロルミネッセンスディスプレイに関する。より詳しくは、本発明は、平面性が改善され、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の表面に用いた場合に、偏光サングラスを通して見たときのフィルムのムラが目立たず、視認性に優れるポリイミド系光学フィルムに関する。」

「[0005] 本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、平面性が改善され、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの表面に用いた場合に、偏光サングラスを通して見たときのフィルムのムラが目立たず、視認性に優れるポリイミド系光学フィルム、その製造方法及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを提供することである。」

「[0021] 本発明のポリイミド系光学フィルムは、イミド構造を有する透明耐熱性樹脂を含有するポリイミド系光学フィルムであって、前記ポリイミド系光学フィルムの投影画像から切り取った矩形エリアにおいて、グレースケールの標準偏差σが、0.50~1.10の範囲内であり、かつ前記矩形エリアの二値化画像における黒部分の占める面積が、50%以下に調整されたことを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項6までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。」

「[請求項1] イミド構造を有する透明耐熱性樹脂を含有するポリイミド系光学フィルムであって、
前記ポリイミド系光学フィルムの投影画像から切り取った所定の矩形エリアにおいて、グレースケールの標準偏差σが、0.50~1.10の範囲内であり、かつ前記矩形エリアの二値化画像における黒部分の占める面積が、50%以下に調整されたことを特徴とするポリイミド系光学フィルム。」

(カ)申立人が提出した甲第4号証(特開2005-96095号公報)

甲第4号証には、次の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルム及びその製造方法に関し、より詳しくは平面性に優れ、かつハードコート層と基材フィルム間で発生する干渉ムラを防止したハードコートフィルム及びその製造方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、平面性に優れ、かつハードコート層と基材フィルム間で発生する干渉ムラを防止したハードコートフィルム及びその製造方法を提供することにある。」
「【0145】
本発明者は、総アシル基置換度が2.7以下のセルロースエステルを用いることにより、該表層上に塗設されるハードコート層に用いられる有機溶剤により、前記特許文献3に開示されているような特別な有機溶剤を持ちいなくても、表層とハードコート層との界面がなくなり、屈折率を連続的に変化させて干渉ムラを防止することが出来ることを見出し、本発明を成すに至った次第である。」
「【0360】
《平面性指数;微小な凹凸評価》
レーザー変位計:キーエンス(株)、型式:LT-8100、分解能:0.2μmを用いて、幅手方向にレーザー変位計で走査して、表面の細かい起伏を測定し、ハードコートフィルムの平面性を評価した。
【0361】
続きを表示(全30行)
測定方法は、フィルムを平坦で水平の台の上に載せ、テープで幅手の両端を台に固定し、測定カメラを該台と平行にセットしたシグマ光機社製の移動レールに、カメラレンズと試料フィルムの間隔が25mmとなるようにセットし、移動速度5cm/分で走査し測定した。測定で得られる値はフィルム表面の微少な凹凸の状態と大きさである。
【0362】
◎:フィルムの変形による凹凸が0.5μm未満
○:フィルムの変形による凹凸が0.5~1.0μm未満
△:フィルムの変形による凹凸が1.0~3.0μm未満
×:フィルムの変形による凹凸が3.0μm以上
《平面性;目視評価》
幅90cm、長さ100cmの大きさに各試料を切り出し、50W蛍光灯を5本並べて試料台に45°の角度から照らせるように高さ1.5mの高さに固定し、試料台の上に各フィルム試料を置き、フィルム表面に反射して見える凹凸を目で見て、次のように判定した。この方法によって「つれ」及び「しわ」の判定が出来る。
【0363】
◎:蛍光灯が5本とも真っすぐに見えた
○:蛍光灯が少し曲がって見えるところがある
△:蛍光灯が全体的に少し曲がって見える
×:蛍光灯が大きくうねって見える
《干渉ムラの評価》
ハードコートフイルムNo.1~26について、裏面を黒スプレーにより黒く塗った後試料を水平台上に置き、3波長蛍光灯(パルック蛍光灯FLR40S-EX-DM松下電器産業(株)製)下で干渉ムラの発生の程度を目視にて評価した。
【0364】
○:干渉ムラが全く見られない
△:若干、干渉ムラが見えるが問題ないレベル
×:干渉ムラがはっきりと見られる
××:強い干渉ムラが見られる
以上より得られた結果を下記表4に示した。
【0365】
【表4】
[図:0001384019000014.jpg]
【0366】
上表から、比較例に対し、本発明のハードコートフィルムは平面性、平面性指数、干渉ムラが優れていることが分かった。」

(キ)申立人が提出した甲第5号証(特開平10-96696号公報)

甲第5号証には、次の記載がある。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、品質検査装置のむら欠陥の判定部に適用される対象物にあるむらを検査する方法および装置に関する。より具体的には、本発明は、印刷物や、LCD(液晶表示装置)用カラーフィルター、射出成形物等の、人間が視覚的に感じる「むら」が問題となる製品等の対象物を検査して、むらに起因する欠陥を発見するための装置に関する。」
「【0009】
【発明が解決しようとする課題】・・・
・・・
【0013】本発明の目的は、空間的な大きさによりむらに対する人間の視覚の感度が異なることに留意し、目視評価に近い判定結果を得ることである。
【0014】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の方法は、対象物の画像を画像データとして取り込むステップと、入力された空間座標の関数である該画像データに対して二次元フーリエ変換を行って周波数の関数であるパワースペクトルを算出するステップと、該パワースペクトルに対して視覚特性に対応した重み付け処理を行って重み付けスペクトルを得るステップと、該重み付けスペクトルについての評価値を算出するステップと、該評価値をあらかじめ設定した基準値と比較して欠陥の有無の判定を行うステップとを含む。」
「【0022】画像処理部9において、この画像データにシェーディング補正等の前処理を行い、図3(b)に示す画像データを生成する。この前処理の済んだ画像データに、二次元フーリエ変換部10において、二次元フーリエ変換を行い、周波数値ごとの(周波数の関数である)輝度の強度分布を示すパワースペクトル(図3(c))を算出する。図3(c)のパワースペクトルは、理解を助けるため、模式的に示されている。このパワースペクトルは、本実施例においては、画像データが離散的であるので、横方向の周波数uと縦方向の周波数vの関数として、次のような式で計算される。
【0023】
【数4】
[図:0001384019000015.jpg]
ここで、M×Nは、サンプリング周波数である。
【0024】これは、画像データの横または縦を、0周期、1周期、2周期、3周期、・・・というように、周波数が高くなって行く(波長が順次短くなって行く)成分をとっていって得られる周波数の関数としてのパワースペクトルである。画像データの物理的なサイズが、上述のようにWである場合、Wを0周期、1周期、2周期、・・・とするように、周波数をとって、その成分を求めたものになる。ついで、重み付け演算部11において、このパワースペクトルに対して重み付け処理を行う。この重み付けの演算処理については、後ほど詳述する。
【0025】その結果、図3(c)のパワースペクトルは、図3(d)に模式的に示す視覚特性を反映した別のスペクトルに変換される。評価値演算部12において、この新たなスペクトルに関して、例えば、上に述べた分散(V)や標準偏差(SD)といった評価値を計算し、比較部13において、あらかじめ設定された基準値14との比較を行い、むらの有無などの検査対象物の品質の良否の判定を行う。その結果を、例えばCRTといった判定結果表示装置15に表示するほか、他の装置の制御に利用することができる。」

(ク)申立人が提出した甲第6号証(特開2009-180583号公報)

甲第6号証には、次の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイの輝度ムラ評価方法および装置に関し、特に人間の視感特性に合わせて輝度ムラの評価を行う技術に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0004】
ところが、上記特許文献および上記非特許文献のいずれの評価方法においても、表示画面の背景輝度や画面サイズの影響を考慮し、かつ、輝度ムラの発生位置に応じた評価を同時に行うことができなかった。
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、ディスプレイの表示画面に生じる輝度ムラを、表示画面の背景輝度や画面サイズの影響を考慮しつつ、しかも発生位置に応じた評価基準で、人間の視覚特性に合わせた定量評価を可能とするディスプレイの輝度ムラ評価方法および装置を提供することを目的としている。」
「【0006】
このディスプレイの輝度ムラ評価方法によれば、まず、輝度分布情報と該輝度分布情報の背景輝度との差分から輝度変化量を求め、この輝度変化量と背景輝度との比を表すコントラスト画像を生成し、得られたコントラスト画像を2次元フーリエ変換して2次元フーリエスペクトルを求める。この2次元フーリエスペクトルに、背景輝度または表示画面のサイズの少なくともいずれかに応じて設定され人間の視覚特性に準じたコントラスト感度関数を乗算して畳み込みパワースペクトルを求め、この畳み込みパワースペクトルを2次元フーリエ逆変換して輝度ムラ成分の強度が輝度情報に含まれる評価用2次元画像を生成する。そして、この評価用2次元画像に基づいて輝度ムラを定量評価する。
このため、コントラスト感度関数を背景輝度や表示画面のサイズに応じて任意に設定できるので、ディスプレイの表示画面に生じる輝度ムラを、表示画面の背景輝度や画面サイズの影響を考慮しつつ、人間の視覚特性に合わせて定量評価することができる。また、評価用2次元画像は周波数空間から実空間に変換された画像であるので、輝度ムラの定量値の2次元的な分布が分かるようになる。これにより、高精度にディスプレイの輝度ムラ評価を行うことができる。
ここで、輝度変化量を求める際の背景輝度は表示画面内の局所位置に対する背景輝度であり、コントラスト画像を求める際の背景輝度は表示画面内の局所位置に対する背景輝度または表示画面全体の平均背景輝度のいずれかである。そして、コントラスト感度関数は表示画面全体の平均背景輝度に応じて設定される。」
「【0020】
次に、測定した輝度情報の画像データの各画素に対して輝度変化を算出する(S2)。具体的な処理内容について図3を用いて概念的に説明する。
図3(a)に示すように、S1で取得された輝度情報である撮像画像31には輝度勾配が発生することがあり、例えばラインLA上の輝度分布は画像内位置で右側ほど輝度が高くなっている。そこで、画像を複数のブロックに分割して、それぞれのブロックに対してブロック内の平均輝度を求める等して画像内の局所位置に対する背景輝度LAVを求め、この背景輝度LAVと撮像画像31の輝度との差分を輝度変化量ΔLとして求める。」
「【図4】
[図:0001384019000016.jpg]
」

(ケ)申立人が提出した甲第7号証(精密工学会誌第83巻第3号第258~262ページ、公益社団法人 精密工学会、2017年3月5日発行)

甲第7号証には、次の記載がある。

「本論文は,液晶ディスプレイの輝度むらを実験検討したものであり,周波数領域で画質を解析することにより,むら形状の多様性による定量評価の難しさを解決することを狙ったものである.最初にむら形状とフーリエスペクトルとの関係を概観する.つぎに視覚の空間周波数でのフィルタリングについて述べ,フィルタリング後の画像(視覚感度画像)の周波数平面での解析方法について周波数ヒストグラムと角度ヒストグラムについて定義する.そのあと,むらの周波数特徴のモデル実験結果を示し,周波数特徴からむらが評価できることを示す.さらに実サンプルを用いた評価実験の結果を示し,最後に,むらに含まれる周波数成分について考察する.」(258ページ右欄11~21行)

「2.むら形状とフーリエスペクトル
図1に各種むらとフーリエスペクトルとの関係を示す.画像例は円,エッジのぼけた円,斜め線,正方形の4種であり,むら部分のコントラストは5%である.フーリエスペクトルを見ると,エッジの立った円は,高い周波数成分までスペクトルが確認できる.一方,ぼけた円では,低周波成分にエネルギーが集まっており,高周波成分はほとんど見られない.斜め線については,スペクトルは90°回転して,ほぼ45°の斜め成分のみ見られる.正方形は,画像として,縦線と横線の成分を持つので,原画像の縦線はフーリエスペクトルとしては横線(0°)として観測され,横線は縦(90°)の線状スペクトルとして観測される.本例に示すようにむら形状とフーリエスペクトルには一定の関係があることが分かる.」(258ページ右欄22行~259ページ左欄1行)
「3.3 周波数ヒストグラム
周波数ヒストグラムp(r)は空間周波数毎のパワースペクトル値で,以下の式によって計算する.
[図:0001384019000017.jpg]
図4(a)に積分範囲を示す.rは空間周波数であり,rの値が大きくなるにつれ周波数が高くなる.図4(b)にむら不良品と良品の特定を示す.不良品の場合,欠陥部があるため,中間周波数でのパワースペクトル値は良品より大きくなる.」(259ページ右欄30~37行)
「5.実験
5.1 実験サンプル
製造工程の点灯検査で,パネル面に対し直角方向からカメラ(2752×2204画素)でパネル全面を撮像した画像を使用する.撮像画面からパネル部分を1920×1080画素で切取り,原画像として使用した.実験サンプル62枚は,すべて同一製品であり,アスペクト比16:9の13.3インチ(1920×1080画素)のパネルである.
評価を行うのは良品29枚,不良品33枚の合計62枚であり,むらのコントラストは小さいもので0.5%程度である.欠陥の基本形状は図7に示す3種である.円形や楕円形のものは各種サイズがある.すじむらは,太さと長さが各種あり,角度は垂直・水平のものと,角度が不定なななめのものがある.
5.2 実験方法
図8に評価方法を示す.原画像はフーリエ変換し,CSFフィルタを適用して人間の見ている画像に変換する.つぎに周波数スペクトルを解析するため,周波数ヒストグラムと角度ヒストグラムを計算する.このあと,逆フーリエ変換により原画像をCSFフィルタリングした画像(視覚感度画像)に変換し,周波数ヒストグラムと角度ヒストグラムを用いて画質むらを評価する.13.3インチのパネルなので,50cmから観察すると視野角は32.8°となる.画像データは8bitであり,フーリエ変換は4の倍数サイズで高速変換が可能なfftwを用いた.図9にコントラスト1%の斜めすじの原画像と視覚感度画像を示す.視覚感度原画像では原画像のシェーディングが除かれているため,欠陥が見やすくなっている.
5.3 実験結果
5.3.1 周波数ヒストグラムによる解析
図10(a)に良品の周波数ヒストグラムを,(b)に不良品の周波数ヒストグラムを示す.良品の場合は,特徴的なヒストグラムは示さず,周波数とともにパワースペクトル値は減少する.不良品は,不良の種類によりさまざまなスペクトル形状を示す.赤の破線は低周波域r=10(0.3cpd),高周波域r=60(1.8cpd)の空間周波数を示す.」(261ページ左欄1行~右欄8行)

(コ)申立人が提出した甲第8号証(特開2016-167053号公報)

甲第8号証には、次の記載がある。

「【請求項6】
面内が複数の画素で区分された発光体と、保護フィルムとを備えた表示装置を作製する方法であって、
前記発光体の光出射面上に前記保護フィルムを配置するステップと、
次のステップA~Fを含む評価方法を行うステップと、を含み、
続きを表示(全11行)
ステップA:発光体を点灯した状態で撮影手段により保護フィルムを介して発光体を撮影してカラー画像データを得るステップ、
ステップB:ステップAで取得した前記カラー画像データに対しフーリエ変換し、フーリエ変換後のデータから前記画素の配列に相当する周波数成分を除去した後、逆フーリエ変換を施すステップ、
ステップC:ステップBで得たデータのRBG値の標準偏差値及びその平均値を算出するステップ、
ステップD:前記発光体に前記保護フィルムを配置しないで前記ステップA~Cを実行し、RBG値の標準偏差値の平均値を参照値として算出するステップ、
ステップE:ステップCで算出したRBG値の標準偏差値の平均値とステップDで算出した前記参照値とのずれ量をギラツキ指数として算出するステップ、および
ステップF:ステップCで算出したRGB値の標準偏差の差をバラツキ幅として算出するステップ、
前記保護フィルムを配置するステップは、前記保護フィルムとして、前記評価方法のステップで評価したときのギラツキ指数が3.0以下かつバラツキ幅が1.1以下である保護フィルムを用いることを特徴とする、表示装置を作製する方法。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、プラズマ表示装置、EL表示装置、ブラウン管表示装置、LED表示装置等の表示装置に係り、特に、ギラツキ(スパークル)を防止する保護フィルムを備えた表示装置に関する。」
「【0010】
本発明の目的は、所定のギラツキ評価方法を用いて決定したギラツキ指数およびバラツキ幅を所定の範囲にすることにより、発光体と保護フィルムとを組み合わせた表示装置においてギラツキを防止することにある。」
「【発明の効果】
【0016】
本発明は、所定のギラツキ評価方法を用いて決定したギラツキ指数およびバラツキ幅を所定の範囲にすることにより、発光体と保護フィルムとを組み合わせた表示装置においてギラツキを防止する表示装置を提供できる。」
「【0034】
次に、上記構成の表示装置のギラツキ指数およびバラツキ幅を決定するためのギラツキ評価方法を図8を参照して説明する。ギラツキ評価方法は、主に、発光体23を点灯した状態で撮影手段により保護フィルム1を介して発光体23を撮影してカラー画像データを得るステップA(図8のS1)と、ステップAで取得したカラー画像データに対しフーリエ変換し、フーリエ変換後のデータから画素の配列に相当する周波数成分を除去した後、逆フーリエ変換を施すステップB(図8のS2)と、ステップBで得たデータのRBG値の標準偏差値及びその平均値を算出するステップC(図8のS3)と、発光体23に保護フィルム1を配置しないでステップAからステップCを実行し、RBG値の標準偏差値の平均値を参照値として算出するステップD(図8のS4)と、ステップCで算出したRBG値の標準偏差値の平均値とステップDで算出した上記参照値とのずれ量をギラツキ指数として算出するステップE(図8のS5)と、ステップCで算出したRGB値の標準偏差の差をバラツキ幅として算出するステップF(図8のS6)とを含む。」
「【0039】
(ステップB)
次に、画像データ処理手段63は、撮影手段61が取得したカラー画像データから任意の測色領域を取り出す。測色領域として、例えば、500ピクセル×500ピクセルの測色領域を取り出すことができる。取り出した領域に対して、画像データ処理手段63により、2次元フーリエ変換処理を行う。この処理によって、2次元のフーリエスペクトルを得ることができる。続いて、画像データ処理手段63は、得られたそれぞれの2次元のフーリエスペクトルから発光体23に表示される画像の画素により生じる規則的な周期成分である高周波成分を除去する。
【0040】
続きを表示(全38行)
このような処理を行うことで、2次元のフーリエスペクトルから、画素同士の隙間や配線から生じる特定のパターン(格子状パターン等)を取り除くことができる。また、従来のように輝線のある周波数のみを除去するギラツキ評価方法に比べて、高精度な評価が行える。
【0041】
その後、画像データ処理手段63は、高周波成分が除去された2次元のフーリエスペクトルに対し、逆フーリエ変換処理を行う。このような処理を行うことで、評価に余分な特定のパターンが取り除かれた状態の画像を取得できる。
【0042】
(ステップC)
続いて、本実施形態では、逆フーリエ変換処理により得られた画像データに対し、画像データ処理手段63においてデータ処理を行う。このデータ処理は、ギラツキ評価値の算出を行うデータ処理である。
【0043】
データ処理の流れとしては、まず、逆フーリエ変換処理した画像データから、各画素(ピクセル)のR値、G値、B値、およびR値の標準偏差、G値の標準偏差、B値の標準偏差を算出する。
次に、算出されたRGB標準偏差の値からRGBの標準偏差値の平均値を算出する。各RGBの標準偏差値をXR、XG、XBとすると、RGBの標準偏差値の平均値(Y)は以下の式を用いて算出できる。
[数1]
Y=(XR+XG+XB)/3 (式1)
【0044】
(ステップD)
保護フィルム1が発光体23の光出射面上に配置されていない表示装置24において、上記ステップAからステップCを実行し、各画素(ピクセル)のR値、G値、B値、およびR値の標準偏差、G値の標準偏差、B値の標準偏差を算出する。算出されたRGB標準偏差の値からRGBの標準偏差値の平均値を参照値として算出する。各RGBの標準偏差値をXRref、XGref、XBrefとすると、RGBの標準偏差値の平均値である参照値(Yref)は次のとおりである。
[数2]
Yref=(XRref+XGref+XBref)/3 (式2)
【0045】
(ステップE)
ステップCで算出したRGBの標準偏差値の平均値(Y)とステップDで算出したRGBの標準偏差値の平均値の参照値(Yref)とのずれ量をギラツキ指数(S)として算出する。例えば、ギラツキ指数(S)は、次の式に示すようにYとYrefとの差を算出することにより得られる。
[数3]
S=Y―Yref (式3)
【0046】
ギラツキ指数(S)は、保護フィルム1が無い表示装置24と保護フィルム1を有する表示装置24と比較して、RGB各画素の発光のバラツキ具合がどの程度一致しているかを示す指標となる。
したがって、保護フィルム1を有する表示装置24のY値と保護フィルム1を除いた表示装置24のYref値との差分の値が大きいほどギラツキ度合いが大きく、小さいほどギラツキ度合いが小さいという評価値となる。
【0047】
本実施形態の表示装置24は、上述したギラツキ評価方法により測定されたギラツキ指数が、3.0以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下である。ギラツキ指数を3.0以下にすることにより、多様なPPIを有する発光体23を用いた表示装置24でもギラツキを防ぐことができる。
【0048】
(ステップF)
次に、ステップCから算出されたRGB値の標準偏差を用いてRGB値の標準偏差の差をバラツキ幅(D)として算出する。バラツキ幅は、同一面内においてRGB各画素の発光のばらつき具合を示す指標であるため、バラツキ幅を決定することにより、ギラツキ評価の精度をあげることができる。
具体的には、ステップCにおいて算出されたRGB値の各標準偏差XR、XG、XBのうち最大値をXmax、最小値をXminとする場合、最大値(Xmax)と最小値(Xmin)との差分をバラツキ幅(D)として算出する。例えば、バラツキ幅(D)は次の式を用いて算出することができる。
[数4]
D=Xmax-Xmin (式4)
【0049】
本実施形態の表示装置24は、バラツキ幅(D)が1.1以下、好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.5以下である。1.1以下にすることにより、目視でのギラツキ評価と比較して、ギラツキ評価の精度をあげることができる。」
「【0052】
上述した、ギラツキ防止効果などを得るための保護フィルム1の具体的な構成を説明する。保護フィルム1の主な構成要素である凹凸層2は、バインダー樹脂4とマット剤3を含む(図7参照)。バインダー樹脂4としては、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等があげられる。
【0053】
なお、凹凸層2は、硬化性組成物(硬化性樹脂前駆体)の硬化物で構成されており、マット剤3に起因した凸部を表面に複数個備える。ここで、硬化物とは、硬化主剤としての硬化型樹脂とともに、該硬化型樹脂の硬化に必要な、重合開始剤や、重合促進剤(紫外線増感剤など)、硬化剤などの硬化助剤をも含む概念で用いる。」

イ 本件発明1ついて

(ア)対比

引用発明の「窒素置換した重合槽に、(1)式の酸無水物、(2)式及び(3)式のジアミン、触媒、溶媒(γブチロラクトン及びジメチルアセトアミド)を仕込み、仕込み量は、(1)式の酸無水物75.0g、(2)式のジアミン36.5g、(3)式のジアミン76.4g、触媒1.5g、γブチロラクトン438.4g、ジメチルアセトアミド313.1gとし、(2)式のジアミンと(3)式のジアミンとのモル比は3:7、ジアミン合計と酸無水物とのモル比は、1.00:1.02であり、

[図:0001384019000018.jpg]

重合槽内の混合物を攪拌して原料を溶媒に溶解させた後、混合物を100℃まで昇温し、その後、200℃まで昇温し、4時間保温して、ポリイミドを重合し、この加熱中に、液中の水を除去し、その後、精製及び乾燥により、ポリイミドを得て、濃度20質量%に調整したポリイミドのγブチロラクトン溶液、γブチロラクトンに固形分濃度30質量%のシリカ粒子を分散した分散液、及び、アミノ基を有するアルコキシシランのジメチルアセトアミド溶液を混合し、30分間攪拌した混合溶液を、ガラス基板に塗布し、50℃で30分、140℃で10分加熱して溶媒を乾燥し、その後、フィルムをガラス基板から剥離し、金枠を取り付けて210℃で1時間加熱することで」「得」た「厚み80μmの樹脂フィルム」と、本件発明1の「フッ素原子を含むポリイミド系樹脂は式(1)で表される構成単位を有するポリイミド樹脂であり、」「フッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂は、式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂であり:

【化1】

[図:0001384019000019.jpg]

[式(1)及び式(2)において、Xは、互いに独立に、2価の有機基を表し、式(1)において、Yは4価の有機基を表し、式(2)において、Zは、2価の有機基を表す]

前記フッ素原子を含むポリイミド系樹脂及び/又はフッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂のイミド化率は90%以上であ」る「フッ素原子を含むポリイミド系樹脂及び/又はフッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂を含む光学フィルム」とは、「ポリイミド系樹脂を含む光学フィルム」の限りで一致する。

引用発明の「4官能アクリレート(商品名:A-TMMT、新中村化学社製)47.5質量部、3官能アクリレート(商品名:A-TMPT、新中村化学社製)47.5質量部、反応性ウレタンポリマー(商品名:8BR-600、大成ファインケミカル社製、40質量%品)12.5質量部、トリアジン系紫外線吸収剤(TINUVIN(登録商標)479、BASF社製)3質量部、光重合開始剤(IRGACURE(登録商標)184、チバスペシャリティケミカルズ社製)8質量部、レベリング剤(商品名:BYK-350、ビックケミージャパン社製)0.6質量部、及び、メチルエチルケトン107質量部を混合し、攪拌することで調製した機能層形成用の溶液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させて、」「形成した」「厚さ10μmの機能層(表面硬度及び紫外線吸収の機能を有する層)」は、本件発明1の「多官能(メタ)アクリレート系化合物の硬化物を含む層」である「該光学フィルムの片面に積層された、ハードコート機能を備える、厚さが11μm以下である機能層」に相当する。

引用発明の「機能層側の表面の鉛筆硬度が3Hである」ことは、本件発明1の「前記光学積層体の前記機能層を有する面の鉛筆硬度は2H以上である」ことに相当する。

したがって、本件発明1と引用発明とは、次の点で一致し、相違点で相違する。

[一致点]

「ポリイミド系樹脂を含む光学フィルムと、該光学フィルムの片面側に積層された、ハードコート機能を備え、厚さが11μm以下である機能層とを有する光学積層体であって、
前記機能層は多官能(メタ)アクリレート系化合物の硬化物を含む層であり、
前記光学積層体の前記機能層を有する面の鉛筆硬度は2H以上である、光学積層体。」

[相違点1]

「ポリイミド系樹脂を含む光学フィルム」について、本件発明1は、「フッ素原子を含むポリイミド系樹脂及び/又はフッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂を含む光学フィルム」であり、「前記フッ素原子を含むポリイミド系樹脂は式(1)で表される構成単位を有するポリイミド樹脂であり、前記フッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂は、式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂であり:
【化1】
[図:0001384019000020.jpg]
[式(1)及び式(2)において、Xは、互いに独立に、2価の有機基を表し、式(1)において、Yは4価の有機基を表し、式(2)において、Zは、2価の有機基を表す]
前記フッ素原子を含むポリイミド系樹脂及び/又はフッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂のイミド化率は90%以上であ」るのに対し、引用発明は、「窒素置換した重合槽に、(1)式の酸無水物、(2)式及び(3)式のジアミン、触媒、溶媒(γブチロラクトン及びジメチルアセトアミド)を仕込み、仕込み量は、(1)式の酸無水物75.0g、(2)式のジアミン36.5g、(3)式のジアミン76.4g、触媒1.5g、γブチロラクトン438.4g、ジメチルアセトアミド313.1gとし、(2)式のジアミンと(3)式のジアミンとのモル比は3:7、ジアミン合計と酸無水物とのモル比は、1.00:1.02であり、
[図:0001384019000021.jpg]
重合槽内の混合物を攪拌して原料を溶媒に溶解させた後、混合物を100℃まで昇温し、その後、200℃まで昇温し、4時間保温して、ポリイミドを重合し、この加熱中に、液中の水を除去し、その後、精製及び乾燥により、ポリイミドを得て、濃度20質量%に調整したポリイミドのγブチロラクトン溶液、γブチロラクトンに固形分濃度30質量%のシリカ粒子を分散した分散液、及び、アミノ基を有するアルコキシシランのジメチルアセトアミド溶液を混合し、30分間攪拌した混合溶液を、ガラス基板に塗布し、50℃で30分、140℃で10分加熱して溶媒を乾燥し、その後、フィルムをガラス基板から剥離し、金枠を取り付けて210℃で1時間加熱することで」「得」た「厚み80μmの樹脂フィルム」」である点。

[相違点2]

本件発明1の「ハードコート機能を備える、厚さが11μm以下である機能層」は、「該光学フィルムの片面に積層された」ものであるのに対し、引用発明の「厚さ10μmの機能層(表面硬度及び紫外線吸収の機能を有する層)」は、「厚み80μmの樹脂フィルムの一方の面に、」「形成」された「厚さ1μmのプライマー層の上に、」「形成した」ものである点。

[相違点3]

本件発明1は、「前記光学フィルムを用いて投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像において、該逆空間像の中心を通る互いに直交する方向h及び方向vにおけるラインプロファイルを補正して得たラインプロファイルを、それぞれラインプロファイルh及びラインプロファイルvとし、ここで、前記投影法は、暗室中、LED光源、光学フィルム、投影面及びカメラを配置し、該LED光源と該光学フィルムとの距離は250cmであり、該光学フィルムと該投影面との距離は30cmであり、該光学フィルムと該投影面とは平行に配置され、カメラは光源から投影面への法線の真下に設置し、カメラとして株式会社ニコン製「COOLPIX(登録商標)P600」を用いて行い、前記補正は、ラインプロファイルのYの値が最大となる周波数をXcenとし、その時のYの値をYcenとし、次に、Xcenを中心とし、両端50ピクセル分ずつの合計100ピクセルの領域について、Yの平均値を求め、該平均値をベースラインYbaseとし、Ycen=100、Ybase=0となるように、次の式:

【数1】

Y’=(Y-Ybase)×100/(Ycen-Ybase)

に従いラインプロファイルを補正して行い、

前記投影法において前記光学フィルムを用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において、該逆空間像の中心を通る互いに直交する方向h’及び方向v’におけるラインプロファイルを同様に補正して得たラインプロファイルを、それぞれラインプロファイルh’及びラインプロファイルv’とし、ラインプロファイルhからラインプロファイルh’を引いて得たラインプロファイル(h-h’)をスムージングして得たラインプロファイルの最大強度をYmhとし、最大強度Ymhを示す周波数をXmhとし、ラインプロファイルvからラインプロファイルv’を引いて得たラインプロファイル(v-v’)をスムージングして得たラインプロファイルの最大強度をYmvとし、最大強度Ymvを示す周波数をXmvとする、

ここで、前記スムージングは、次の式:

【数2】

yi=(Yni-10+Yni-9+‥‥+Yni-1+Yn+Yni+1+‥‥+Yni+9+Yni+10)/21

に従い、21個のデータの平均値であるyiを算出して行い、

Ymh及びYmvはいずれも40以下であり、Ymh、Ymv、Xmh及びXmvは、次の関係:

【数3】

(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2≦14

を満たし、Xmh及び/又はXmvが、次の関係:

【数4】

0.1cm-1≦|Xm-Xcen|≦10cm-1

を満た」すのに対して、引用発明はその点不明である点。

(イ)判断

まず、相違点3について検討する。

引用発明の「厚み80μmの樹脂フィルム」は、「窒素置換した重合槽に、(1)式の酸無水物、(2)式及び(3)式のジアミン、触媒、溶媒(γブチロラクトン及びジメチルアセトアミド)を仕込み、仕込み量は、(1)式の酸無水物75.0g、(2)式のジアミン36.5g、(3)式のジアミン76.4g、触媒1.5g、γブチロラクトン438.4g、ジメチルアセトアミド313.1gとし、(2)式のジアミンと(3)式のジアミンとのモル比は3:7、ジアミン合計と酸無水物とのモル比は、1.00:1.02であり、

[図:0001384019000022.jpg]

重合槽内の混合物を攪拌して原料を溶媒に溶解させた後、混合物を100℃まで昇温し、その後、200℃まで昇温し、4時間保温して、ポリイミドを重合し、この加熱中に、液中の水を除去し、その後、精製及び乾燥により、ポリイミドを得て、濃度20質量%に調整したポリイミドのγブチロラクトン溶液、γブチロラクトンに固形分濃度30質量%のシリカ粒子を分散した分散液、及び、アミノ基を有するアルコキシシランのジメチルアセトアミド溶液を混合し、30分間攪拌した混合溶液を、ガラス基板に塗布し、50℃で30分、140℃で10分加熱して溶媒を乾燥し、その後、フィルムをガラス基板から剥離し、金枠を取り付けて210℃で1時間加熱することで」「得」たものであるが、当該「厚み80μmの樹脂フィルム」の原料や加熱方法等の製造条件の全てが、本件発明1の実施例の原料や製造条件と同一ではなく、当該「厚み80μmの樹脂フィルム」の原料や製造条件であれば、当該「厚み80μmの樹脂フィルム」が相違点3に係る本件発明1の構成を備えることを示す証拠があるわけでもないから、引用発明が相違点3に係る本件発明1の構成を備えているとはいえず、相違点3は実質的な相違点である。

そして、上記2(1)エで述べたように、相違点3に係る本件発明1の構成は、「光学的均質性に優れる」構成であるところ、引用文献1には「光学的均質性に優れる」ことについて何ら記載されていないから、「光学的均質性に優れる」構成である相違点3に係る本件発明1の構成とする動機付けがない。

しかも、相違点3に係る本件発明1の構成は、引用文献2~4並びに申立人が提出した甲第3~8号証には記載されておらず、かつ、本件特許に係る出願前における周知技術でもない。

したがって、引用発明において、相違点3に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

よって、相違点1~2を検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献1に記載された発明に基いて、もしくは引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明3~8について

本件発明3~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものであるから、上記イで検討したのと同じ理由により、引用文献1に記載された発明に基いて、もしくは引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)取消理由4(実施可能要件)について

上記訂正事項8~11により、本件特許の発明の詳細な説明に記載された「Xcen」は、「最大強度Ymh1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値」及び「最大強度Ymv1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値」であり、本件特許の発明の詳細な説明に記載された「Xmh1及びXmv1」は、「最大強度Ymh1及びYmv1を示す周波数」になったため、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1、3~8を当業者が実施できる程度に記載されたものである。

第5 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について

1 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由の概要

(1)申立理由1(明確性)

本件特許は、特許請求の範囲の記載が、次の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

ア 本件訂正前の請求項1に係る発明の「前記光学フィルムを用いて投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像において互いに直交する方向h及び方向vにおけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh及びラインプロファイルvとし、前記投影法において前記光学積層体を用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において互いに直交する方向h’及び方向v’におけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh’及びラインプロファイルv’とし、ラインプロファイルhからラインプロファイルh’を引いて得たラインプロファイル(h-h’)の最大強度をYmhとし、最大強度Ymhを示す周波数をXmhとし、ラインプロファイルvからラインプロファイルv’を引いて得たラインプロファイル(v-v’)の最大強度をYmvとし、最大強度Ymvを示す周波数をXmvとすると、Ymh及びYmvはいずれも40以下であり」及び「Ymh、Ymv、Xmh及びXmvは、次の関係:【数1】(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2≦25を満た」す(以下「構成要件B」という。)は、光学的均質性を高くするという課題を示すにすぎず、本件訂正前の請求項1に係る発明は、課題を解決するための発明特定事項が不足していることが明らかであり明確でない。(申立書68ページ8~末行)

イ 本件訂正前の請求項1に係る発明の「少なくとも片面」について、本件訂正前の請求項1に係る発明において特定された評価パラメータYmh、Ymv、(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2は、発明の詳細な説明によればポリアミドイミドフィルムの一方の面のみに機能層を設けた光学積層体についての評価パラメータであり、当該評価パラメータと光学積層体の層構造との関係が明確でない。(申立書69ページ12~17行)

(2)申立理由2(実施可能要件)

本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、次の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

ア 発明の詳細な説明には、光学的均質性に影響を与える影響要因のどれがどのように組み合わされた場合に構成要件Bの数値条件を満足するのかが、当業者が本件訂正前の請求項1に係る発明を実施し得る程度に記載されていない(申立書74ページ1行~75ページ14行)。

イ 発明の詳細な説明には、光学積層体の「(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2」の実施例として、「4.7」の実施例1が1点記載されているのみであり、より高い数値で視認性が良好か否か説明されていない(申立書75ページ15~17行)。

(3)申立理由3(サポート要件)

本件特許は、特許請求の範囲の記載が、次の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

ア 発明の詳細な説明には、本件訂正前の請求項1に係る発明に関して実施例1が記載されているのみであり、当該実施例1は特定のワニスを特定の製造条件で製造した例を1例示すのみであり、出願時の技術常識に照らしても、本件訂正前の請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。(申立書77ページ18行~78ページ1行)

イ 本件訂正前の請求項1に係る発明の「少なくとも片面」について、実施例1はポリアミドイミドフィルムの一方の面のみに機能層を設けた積層体であり、積層体のどちらの面から評価するか両面に機能層を設けるか否か等で結果が異なると思われるところ、発明の詳細な説明の記載からはどちらの面から評価するかが特定されておらず、サポート要件を満たしていない。(申立書78ページ6~12行)

2 当審の判断

(1)上記1(1)アについて

本件特許の「画像表示装置等における光学フィルムとして好適に使用される、光学的均質性に優れる光学積層体、該光学積層体を備えるフレキシブル表示装置、及び該光学積層体の製造方法を提供する」という課題を解決する構成である、本件発明1の「前記光学積層体を用いて投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像において、該逆空間像の中心を通る互いに直交する方向h及び方向vにおけるラインプロファイルを補正して得たラインプロファイルを、それぞれラインプロファイルh及びラインプロファイルvとし、ここで、前記投影法は、暗室中、LED光源、光学積層体、投影面及びカメラを配置し、該LED光源と該光学積層体との距離は250cmであり、該光学積層体と該投影面との距離は30cmであり、該光学積層体と該投影面とは平行に配置され、カメラは光源から投影面への法線の真下に設置し、カメラとして株式会社ニコン製「COOLPIX(登録商標)P600」を用いて行い、前記補正は、ラインプロファイルのYの値が最大となる周波数をXcenとし、その時のYの値をYcenとし、次に、Xcenを中心とし、両端50ピクセル分ずつの合計100ピクセルの領域について、Yの平均値を求め、該平均値をベースラインYbaseとし、Ycen=100、Ybase=0となるように、次の式:

【数1】

Y’=(Y-Ybase)×100/(Ycen-Ybase)

に従いラインプロファイルを補正して行い、

前記投影法において前記光学積層体を用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において、該逆空間像の中心を通る互いに直交する方向h’及び方向v’におけるラインプロファイルを同様に補正して得たラインプロファイルを、それぞれラインプロファイルh’及びラインプロファイルv’とし、ラインプロファイルhからラインプロファイルh’を引いて得たラインプロファイル(h-h’)をスムージングして得たラインプロファイルの最大強度をYmhとし、最大強度Ymhを示す周波数をXmhとし、ラインプロファイルvからラインプロファイルv’を引いて得たラインプロファイル(v-v’)をスムージングして得たラインプロファイルの最大強度をYmvとし、最大強度Ymvを示す周波数をXmvとする、

ここで、前記スムージングは、次の式:

【数2】

yi=(Yni-10+Yni-9+‥‥+Yni-1+Yn+Yni+1+‥‥+Yni+9+Yni+10)/21

に従い、21個のデータの平均値であるyiを算出して行い、

Ymh及びYmvはいずれも40以下であり、Ymh、Ymv、Xmh及びXmvは、次の関係:

【数3】

(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2≦14

を満たし、Xmh及び/又はXmvが、次の関係:

【数4】

0.1cm-1≦|Xm-Xcen|≦10cm-1

を満た」す構成(以下「構成要件b」という)により、本件訂正後の本件発明1は、課題を解決するための技術的事項が具体化されて特定されており明確である。

(2)上記1(1)イ及び1(3)イについて

本件発明1は「フッ素原子を含むポリイミド系樹脂及び/又はフッ素原子を含むポリアミドイミド樹脂を含む光学フィルムと、該光学フィルムの片面に積層された、ハードコート機能を備える、厚さが11μm以下である機能層とを有する光学積層体」であるから、本件発明1は、明確でありまた、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1を当業者が実施できる程度に記載されている。

(3)上記1(2)ア及びイ並びに1(3)アについて

本件特許の発明の詳細な説明には、実施例1の積層体の構成が【0240】に記載され、【0247】の【表1】に「(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2=4.7であることが記載され、「実施例1の投影画像から得た規格化後のラインプロファイルから、実施例1の背景画像から得た規格化後のラインプロファイルを引いて得たラインプロファイルをスムージング化して得たラインプロファイルを示す図」(【0010】)である【図8】から、0.1cm-1≦|Xm-Xcen|≦10cm-1であることが看取され、当該実施例1の構成により、本件特許の「画像表示装置等における光学フィルムとして好適に使用される、光学的均質性に優れる光学積層体、該光学積層体を備えるフレキシブル表示装置、及び該光学積層体の製造方法を提供する」という課題を解決するから、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1を実施できる程度に記載されており、また、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

第6 むすび

以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1、3~8に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1、3~8に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。

また、請求項2及び9に係る特許は、本件訂正により削除された。これにより、申立人による請求項2及び9に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

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2020-700465

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