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特許異議申立

2023-701051

光学フィルム

審判番号
2023-701051
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-189790
登録番号
7251941
請求日
2023年10月02日
審決日
2024年12月26日
公報発行日
2025年06月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】住友化学株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人深見特許事務所
  • 【異議申立人】加藤 浩志
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 素川 慎司
  • 審判官 河原 正
分類
P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B) / P1651.536-YAA(G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7251941号発明「光学フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7251941号の明細書及び特許請求の範囲を、それぞれ訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。 特許第7251941号の請求項3~13に係る特許を維持する。 特許第7251941号の請求項1、2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7251941号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、平成30年10月5日の出願であって、令和5年3月27日にその特許権の設定登録がされ、同年4月4日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和5年10月2日に、特許異議申立人加藤浩志(以下「申立人」という。)による請求項1~13に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和5年10月 2日 :申立人による特許異議の申立て 同年11月24日付け:取消理由通知書(以下「1回目の取消理由通 知」という。) 令和6年 1月26日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年 3月 7日 :申立人による意見書の提出 同年 5月10日付け:取消理由通知書(決定の予告)(以下「2回 目の取消理由通知」という。) 同年 6月21日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下 「先の訂正請求書」という。)の提出 同年 8月 8日 :申立人による意見書の提出 同年 9月19日付け:取消理由通知書(決定の予告)(以下「先の 取消理由通知」という。) 同年11月 1日 :特許権者との応対(日付は初回応対日) 同月15日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下 「本件訂正請求書」という。)の提出 以下、先の訂正請求書による訂正請求及び訂正をそれぞれ「先の訂正請求」及び「先の訂正」といい、本件訂正請求書による訂正請求及び訂正をそれぞれ「本件訂正請求」及び「本件訂正」という。 なお、令和6年1月26日に提出された訂正請求書による訂正請求及び先の訂正請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 また、本件訂正請求については、既に申立人に意見書の提出の機会が与えられている場合であって、後記のとおり、訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したため、特許法120条の5第5項ただし書に規定する「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情」がある場合に該当するから、改めて申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。 第2 本件訂正について 1 本件訂正請求の趣旨 本件訂正に係る請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求めるものである。 2 本件訂正前の特許請求の範囲の記載 本件訂正前(すなわち、特許権の設定登録時)の特許請求の範囲の請求項1~13の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 第1液晶層を含む光学フィルムであって、 前記第1液晶層は、幅方向の一方の端部を含む第1端領域と、前記幅方向において前記第1端領域に隣接する第1隣接領域とを有し、 前記第1端領域と前記第1隣接領域とは、下記[a1]及び[b1]: [a1]前記第1端領域の反射率と前記第1隣接領域の反射率とが互いに異なる、 [b1]前記第1端領域の透過率と前記第1隣接領域の透過率とが互いに異なる、 のうちの少なくとも一方の関係を満たす、光学フィルム。 【請求項2】 前記第1端領域と前記第1隣接領域とは、下記[a2]及び[b2]: [a2]前記第1端領域の反射率が、前記第1隣接領域の反射率よりも高い、 [b2]前記第1端領域の透過率が、前記第1隣接領域の透過率よりも低い、 のうちの少なくとも一方の関係を満たす、請求項1に記載の光学フィルム。 【請求項3】 前記第1端領域と前記第1隣接領域とは、ヘイズ、明度、反射色相、色差、及び偏光度のうちの少なくとも一つの値が異なる、請求項1又は2に記載の光学フィルム。 【請求項4】 前記第1端領域は、前記第1液晶層の幅方向の両端部を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルム。 【請求項5】 前記第1隣接領域は、前記第1液晶層における前記第1端領域以外の全領域である、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学フィルム。 【請求項6】 さらに、第1基材層を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学フィルム。 【請求項7】 さらに、接着層及び樹脂フィルムを含み、 前記第1液晶層、前記接着層、及び前記樹脂フィルムをこの順に含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学フィルム。 【請求項8】 さらに、接着層及び樹脂フィルムを含み、 前記第1基材層、前記第1液晶層、前記接着層、及び前記樹脂フィルムをこの順に含む、請求項6に記載の光学フィルム。 【請求項9】 前記樹脂フィルムは、偏光層を含む、請求項7又は8に記載の光学フィルム。 【請求項10】 前記樹脂フィルムは、第2液晶層を含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の光学フィルム。 【請求項11】 前記第2液晶層は、幅方向の一方の端部を含む第2端領域と、前記幅方向において前記第2端領域に隣接する第2隣接領域とを有し、 前記第2端領域と前記第2隣接領域とは、下記[c1]及び[d1]: [c1]前記第2端領域の反射率と前記第2隣接領域の反射率とが互いに異なる、 [d1]前記第2端領域の透過率と前記第2隣接領域の透過率とが互いに異なる、 のうちの少なくとも一方の関係を満たす、請求項10に記載の光学フィルム。 【請求項12】 前記第2端領域と前記第2隣接領域とは、下記[c2]及び[d2]: [c2]前記第2端領域の反射率が、前記第2隣接領域の反射率よりも高い、 [d2]前記第2端領域の透過率が、前記第2隣接領域の透過率よりも低い、 のうちの少なくとも一方の関係を満たす、請求項11に記載の光学フィルム。 【請求項13】 前記樹脂フィルムは、さらに第2基材層を含み、 前記第2基材層は、前記第2液晶層の前記接着層側とは反対側に設けられている、請求項11又は12に記載の光学フィルム。」 3 本件訂正後の特許請求の範囲の記載 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~13の記載は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示す。 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 第1液晶層を含む光学フィルムであって、 前記第1液晶層は、幅方向の一方の端部を含む第1端領域と、前記幅方向において前記第1端領域に隣接する第1隣接領域とを有し、 前記第1端領域と前記第1隣接領域とは、下記[a2]及び[b2]: [a2]前記第1端領域の反射率が、前記第1隣接領域の反射率よりも0.1%以上高い、 [b2]前記第1端領域の透過率が、前記第1隣接領域の透過率よりも0.5%以上低い、 のうちの少なくとも一方の関係を満たし、 前記第1端領域と前記第1隣接領域とは、ヘイズ、明度、反射色相、色差、及び偏光度のうちの少なくとも一つの値が異なる、光学フィルム(但し、前記第1隣接領域が、面内遅相軸方向及び位相差の少なくとも一方が互いに異なる2つの位相差領域がストライプ状に交互に配置されているパターンを有する場合を除く。)。 【請求項4】 前記第1端領域は、前記第1液晶層の幅方向の両端部を含む、請求項3に記載の光学フィルム。 【請求項5】 前記第1隣接領域は、前記第1液晶層における前記第1端領域以外の全領域である、請求項3又は4に記載の光学フィルム。 【請求項6】 さらに、第1基材層を含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の光学フィルム。 【請求項7】 さらに、接着層及び樹脂フィルムを含み、 前記第1液晶層、前記接着層、及び前記樹脂フィルムをこの順に含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の光学フィルム。 【請求項8】 さらに、接着層及び樹脂フィルムを含み、 前記第1基材層、前記第1液晶層、前記接着層、及び前記樹脂フィルムをこの順に含む、請求項6に記載の光学フィルム。 【請求項9】 前記樹脂フィルムは、偏光層を含む、請求項7又は8に記載の光学フィルム。 【請求項10】 前記樹脂フィルムは、第2液晶層を含み、 前記樹脂フィルムが偏光層及び前記第2液晶層を含む場合、前記光学フィルムは、前記第1液晶層、前記接着層、前記第2液晶層、及び前記偏光層をこの順に含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の光学フィルム。 【請求項11】 前記第2液晶層は、幅方向の一方の端部を含む第2端領域と、前記幅方向において前記第2端領域に隣接する第2隣接領域とを有し、 前記第2端領域と前記第2隣接領域とは、下記[c1]及び[d1]: [c1]前記第2端領域の反射率と前記第2隣接領域の反射率との差が0.1%以上である、 [d1]前記第2端領域の透過率と前記第2隣接領域の透過率との差が0.5%以上である、 のうちの少なくとも一方の関係を満たす、請求項10に記載の光学フィルム。 【請求項12】 前記第2端領域と前記第2隣接領域とは、下記[c2]及び[d2]: [c2]前記第2端領域の反射率が、前記第2隣接領域の反射率よりも高い、 [d2]前記第2端領域の透過率が、前記第2隣接領域の透過率よりも低い、 のうちの少なくとも一方の関係を満たす、請求項11に記載の光学フィルム。 【請求項13】 前記樹脂フィルムは、さらに第2基材層を含み、 前記第2基材層は、前記第2液晶層の前記接着層側とは反対側に設けられている、請求項11又は12に記載の光学フィルム。」 4 本件訂正の内容 本件訂正は、一群の請求項〔1~13〕について訂正するものであり、特許請求の範囲及び明細書を訂正する次の訂正事項1~10からなる。 (1) 訂正事項1(請求項1の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2) 訂正事項2(請求項2の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3) 訂正事項3(請求項3の記載に係る訂正) 訂正事項3は、請求項3の記載に係る訂正事項であって、以下のアからウまでに示す訂正事項3-1~訂正事項3-3から構成される。 ア 訂正事項3-1 特許請求の範囲の請求項3について、次の(ア)の訂正前の記載を後記(イ)の訂正後の記載に訂正する(請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4~13も同様に訂正する。)。 (ア) 訂正前の記載 「前記第1端領域と前記第1隣接領域とは、ヘイズ、明度、反射色相、色差、及び偏光度のうちの少なくとも一つの値が異なる、請求項1又は2に記載の光学フィルム。」 (イ) 訂正後の記載 「第1液晶層を含む光学フィルムであって、 前記第1液晶層は、幅方向の一方の端部を含む第1端領域と、前記幅方向において前記第1端領域に隣接する第1隣接領域とを有し、 前記第1端領域と前記第1隣接領域とは、下記[a2]及び[b2]: [a2]前記第1端領域の反射率が、前記第1隣接領域の反射率よりも高い、 [b2]前記第1端領域の透過率が、前記第1隣接領域の透過率よりも低い、 のうちの少なくとも一方の関係を満たし、 前記第1端領域と前記第1隣接領域とは、ヘイズ、明度、反射色相、色差、及び偏光度のうちの少なくとも一つの値が異なる、光学フィルム。」 イ 訂正事項3-2 上記訂正事項3-1により訂正された訂正後の請求項3について、更に次の(ア)の訂正前の記載を後記(イ)の訂正後の記載に訂正する(請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4~13も同様に訂正する。)。 (ア) 訂正前の記載 「[a2]前記第1端領域の反射率が、前記第1隣接領域の反射率よりも高い、 [b2]前記第1端領域の透過率が、前記第1隣接領域の透過率よりも低い」 (イ) 訂正後の記載 「[a2]前記第1端領域の反射率が、前記第1隣接領域の反射率よりも0.1%以上高い、 [b2]前記第1端領域の透過率が、前記第1隣接領域の透過率よりも0.5%以上低い」 ウ 訂正事項3-3 請求項3について、その末尾の記載である次の(ア)の訂正前の記載を後記(イ)の訂正後の記載に訂正する(請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4~13も同様に訂正する。)。 (ア) 訂正前の記載 「光学フィルム。」 (イ) 訂正後の記載 「光学フィルム(但し、前記第1隣接領域が、面内遅相軸方向及び位相差の少なくとも一方が互いに異なる2つの位相差領域がストライプ状に交互に配置されているパターンを有する場合を除く。)。」 (4) 訂正事項4(請求項4の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項4について、次のアの訂正前の記載を後記イの訂正後の記載に訂正する(請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5~13も同様に訂正する。)。 ア 訂正前の記載 「請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルム。」 イ 訂正後の記載 「請求項3に記載の光学フィルム。」 (5) 訂正事項5(請求項5の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項5について、次のアの訂正前の記載を後記イの訂正後の記載に訂正する(請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6~13も同様に訂正する。)。 ア 訂正前の記載 「請求項1~4のいずれか1項に記載の光学フィルム。」 イ 訂正後の記載 「請求項3又は4に記載の光学フィルム。」 (6) 訂正事項6(請求項6の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項6について、次のアの訂正前の記載を後記イの訂正後の記載に訂正する(請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項8~13も同様に訂正する。)。 ア 訂正前の記載 「請求項1~5のいずれか1項に記載の光学フィルム。」 イ 訂正後の記載 「請求項3~5のいずれか1項に記載の光学フィルム。」 (7) 訂正事項7(請求項7の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項7について、次のアの訂正前の記載を後記イの訂正後の記載に訂正する(請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項9~13も同様に訂正する。)。 ア 訂正前の記載 「請求項1~5のいずれか1項に記載の光学フィルム。」 イ 訂正後の記載 「請求項3~5のいずれか1項に記載の光学フィルム。」 (8) 訂正事項8(請求項10の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項10について、次のアの訂正前の記載を後記イの訂正後の記載に訂正する(請求項10の記載を直接又は間接的に引用する請求項11~13も同様に訂正する。)。 ア 訂正前の記載 「前記樹脂フィルムは、第2液晶層を含む、」 イ 訂正後の記載 「前記樹脂フィルムは、第2液晶層を含み、 前記樹脂フィルムが偏光層及び前記第2液晶層を含む場合、前記光学フィルムは、前記第1液晶層、前記接着層、前記第2液晶層、及び前記偏光層をこの順に含む、」 (9) 訂正事項9(請求項11の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項11について、次のアの訂正前の記載を後記イの訂正後の記載に訂正する(請求項11の記載を直接又は間接的に引用する請求項12~13も同様に訂正する。)。 ア 訂正前の記載 「[c1]前記第2端領域の反射率と前記第2隣接領域の反射率とが互いに異なる、 [d1]前記第2端領域の透過率と前記第2隣接領域の透過率とが互いに異なる」 イ 訂正後の記載 「[c1]前記第2端領域の反射率と前記第2隣接領域の反射率との差が0.1%以上である、 [d1]前記第2端領域の透過率と前記第2隣接領域の透過率との差が0.5%以上である」 (10) 訂正事項10 明細書の段落【0032】における「0.5%であってもよく」との記載を、「0.5%以上であってもよく」に訂正する。 第3 本件訂正の適否についての当合議体の判断 1 訂正の目的 (1) 訂正事項1 訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1を削除する訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (2) 訂正事項2 訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項2を削除する訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (3) 訂正事項3 ア 訂正事項3-1 訂正事項3-1に係る訂正は、特許請求の範囲の、「請求項1の記載を引用する請求項2」の記載を引用する請求項3について、技術内容を変更すること無く「他の請求項の記載を引用しないもの」に書き改める訂正であり、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 イ 訂正事項3-2 訂正事項3-2に係る訂正は、上記訂正事項3-1により訂正された訂正後の請求項3に記載した「[a2]前記第1端領域の反射率が、前記第1隣接領域の反射率よりも高い」との特定事項について、その下限を「0.1%以上」に限定するとともに、「[b2]前記第1端領域の透過率が、前記第1隣接領域の透過率よりも低い」との特定事項についても、その上限を「0.5%以上」に限定する訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 ウ 訂正事項3-3 訂正事項3-3に係る訂正は、訂正前の請求項3に記載した事項から「前記第1隣接領域が、面内遅相軸方向及び位相差の少なくとも一方が互いに異なる2つの位相差領域がストライプ状に交互に配置されているパターンを有する場合を除く」ものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (4) 訂正事項4 訂正事項4に係る訂正は、訂正事項1及び2により請求項1及び2を削除したことに伴い、請求項4が引用する請求項を「請求項1~3のいずれか1項」から「請求項3」に訂正するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (5) 訂正事項5 訂正事項5に係る訂正は、訂正事項1及び2により請求項1及び2を削除したことに伴い、請求項5が引用する請求項を「請求項1~4のいずれか1項」から「請求項3又は4」に訂正するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (6) 訂正事項6 訂正事項6に係る訂正は、訂正事項1及び2により請求項1及び2を削除したことに伴い、請求項6が引用する請求項を「請求項1~5のいずれか1項」から「請求項3~5のいずれか1項」に訂正するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (7) 訂正事項7 訂正事項7に係る訂正は、訂正事項1及び2により請求項1及び2を削除したことに伴い、請求項7が引用する請求項を「請求項1~5のいずれか1項」から「請求項3~5のいずれか1項」に訂正するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (8) 訂正事項8 訂正事項8に係る訂正は、「樹脂フィルム」が「偏光層」及び「第2液晶層」を含む場合における「光学フィルム」の構成を、「前記第1液晶層、前記接着層、前記第2液晶層、及び前記偏光層をこの順に含む」構成に限定するものである。したがって、訂正事項8に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (9) 訂正事項9 訂正事項9に係る訂正は、「[c1]前記第2端領域の反射率と前記第2隣接領域の反射率とが互いに異なる」との特定事項について、その異なる程度を「0.1%以上」に限定するとともに、「[d1]前記第2端領域の透過率と前記第2隣接領域の透過率とが互いに異なる」との特定事項についても、その異なる程度を「0.5%以上」に限定する訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (10) 訂正事項10 訂正事項10に係る訂正は、第1端領域12aと第1隣接領域12bの透過率差について、訂正前の段落【0032】に「0.5%であってもよく」と記載されていたものを、「0.5%以上であってもよく」に訂正するものである。 ここで、同段落には、「透過率差が上記の範囲内であれば、光学フィルム10の搬送工程において検査機により測定可能となるため、好ましい」と記載されているところ、訂正前は、好適な透過率差(0.5%)をピンポイントで特定している。 また、同段落には、他の好適な透過率差について「1.0%以上であってもよく、1.5%以上であってもよく、2.0%以上であってもよく、2.5%以上であってもよく、3.0%以上であってもよく、4.0%以上であることが好ましく、5.0%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい」と記載され、下限が規定された数値範囲でのみ特定されている。 以上の点に鑑みれば、訂正前の「0.5%であってもよく」との記載は、「0.5%以上であってもよく」の誤記であることは当業者であれば明らかである。 したがって、訂正事項10に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。 2 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更 (1) 訂正事項1 訂正事項1に係る訂正は訂正前の請求項1を削除するものであるから、当該訂正が本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2) 訂正事項2 訂正事項2に係る訂正は訂正前の請求項2を削除するものであるから、当該訂正が本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3) 訂正事項3 ア 訂正事項3-1 訂正事項3-1に係る訂正は、請求項1及び2の記載を引用する訂正前の記載を当該請求項1及び2の記載を引用しないものとするものであるから、当該訂正が本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかである。 したがって、訂正事項3-1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 イ 訂正事項3-2 訂正事項3-2に係る訂正は、上記訂正事項3-1により訂正された訂正後の請求項3に記載した「[a2]前記第1端領域の反射率が、前記第1隣接領域の反射率よりも高い」との特定事項について、その下限を「0.1%以上」に限定するとともに、「[b2]前記第1端領域の透過率が、前記第1隣接領域の透過率よりも低い」との特定事項についても、その上限を「0.5%以上」に限定するものであるところ、当該訂正は、次に摘記する本件特許の明細書の段落【0031】及び上記訂正事項10に係る訂正により訂正される段落【0032】の記載に基づくものである。 「【0031】 反射率は、全反射率、拡散反射率、又は鏡面反射率のいずれであってもよい。反射率は、例えばSCE(正反射光除去)モード又はSCI(正反射光含む)モードで測定することができる。第1端領域12aと第1隣接領域12bの反射率差は、0.1%以上であってもよく、0.15%以上であってもよく、0.2%以上であってもよく、0.25%以上であってもよく、0.3%以上であってもよく、0.4%以上であってもよく、0.5%以上であってもよく、1.0%以上であってもよく、1.5%以上であってもよく、2.0%以上であってもよく、2.5%以上であってもよく、3.0%以上であってもよく、4.0%以上であることが好ましく、5.0%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。反射率差が上記の範囲内であれば、光学フィルム10の搬送工程において検査機により測定可能となるため、好ましい。 【0032】 透過率は、全光線透過率(Tt)、拡散透過率(Td)、又は直線透過率(Tp)のいずれであってもよい。第1端領域12aと第1隣接領域12bの透過率差は、0.5%以上であってもよく、1.0%以上であってもよく、1.5%以上であってもよく、2.0%以上であってもよく、2.5%以上であってもよく、3.0%以上であってもよく、4.0%以上であることが好ましく、5.0%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。透過率差が上記の範囲内であれば、光学フィルム10の搬送工程において検査機により測定可能となるため、好ましい。」 したがって、訂正事項3-2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 また、訂正事項3-2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項の規定に適合する。 ウ 訂正事項3-3 訂正事項3-3に係る訂正は、訂正前の請求項3に係る発明における「第1隣接領域」から、当該訂正事項に係る「第1隣接領域」を除外するものであって、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかである。 したがって、訂正事項3-3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4) 訂正事項4 訂正事項4に係る訂正は引用する請求項数を削減するものであるから、当該訂正が本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかである。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (5) 訂正事項5 訂正事項5に係る訂正は引用する請求項数を削減するものであるから、当該訂正が本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかである。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (6) 訂正事項6 訂正事項6に係る訂正は引用する請求項数を削減するものであるから、当該訂正が本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかである。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (7) 訂正事項7 訂正事項7に係る訂正は引用する請求項数を削減するものであるから、当該訂正が本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかである。 したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (8) 訂正事項8 訂正事項8において、「樹脂フィルム」が「偏光層」及び「第2液晶層」を含む場合における「光学フィルム」について、「前記第1液晶層、前記接着層、前記第2液晶層、及び前記偏光層をこの順に含む」と訂正することは、次に摘記する本件特許の明細書の段落【0096】の記載に基づくものである。 「【0096】 (変形例8) 図3に示す光学フィルム60では、樹脂フィルムが第2基材層及び第2液晶層を有する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第2基材層を剥離して、第2液晶層の接着層とは反対側に、他の接着層を介して偏光層等の光学機能性フィルムを設けたもの、すなわち、第2液晶層、他の接着層、及び光学機能性フィルムをこの順に有するものを樹脂フィルムとして用い、光学フィルムを、第1基材層、第1配向層、第1液晶層、接着層、第2液晶層、他の接着層、及び光学機能性フィルムをこの順に有するものとしてもよい。」 したがって、訂正事項8に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 また、訂正事項8に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項の規定に適合する。 (9) 訂正事項9 訂正事項9に係る訂正は、「[c1]前記第2端領域の反射率と前記第2隣接領域の反射率とが互いに異なる」との特定事項について、その異なる程度を「0.1%以上」に限定するとともに、「[d1]前記第2端領域の透過率と前記第2隣接領域の透過率とが互いに異なる」との特定事項についても、その異なる程度を「0.5%以上」に限定するものであるところ、当該訂正は、本件特許の明細書の段落【0080】の「反射率及び透過率は、先の実施形態でも説明した方法を用いて測定すればよい」との記載、及び、当該「先の実施形態でも説明した方法」に該当する前記(3)イに摘記した段落【0031】及び上記訂正事項10に係る訂正により訂正される段落【0032】の記載に基づくものである。 したがって、訂正事項9に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 また、訂正事項9に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項の規定に適合する。 (10) 訂正事項10 訂正事項10に係る明細書の段落【0032】についての訂正は、前記1(10)において検討したとおり当業者にとって明らかな誤記の訂正を目的とするものであるから、当該訂正が本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかである。 したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 3 独立特許要件 この特許異議の申立てにおいては、全請求項である請求項1~13について特許異議の申立てがされているから、本件訂正後における請求項3~13に記載されている事項により特定される発明について、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。 4 小括 前記1~3において検討したとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号~4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するから、本件訂正は適法なものである。 よって、前記結論のとおり、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。 第4 本件発明について 前記第3に示したとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項3~13に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明3」などという。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項3~13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項3~13の記載は、前記第2の3に摘記したとおりである。 第5 先の取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 本件訂正前(すなわち、先の訂正後)の請求項3~13に係る特許(以下、請求項の番号に従って「本件訂正前発明1」などという。)に対して、当審において令和6年9月19日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。 取消理由1(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載に不備があるため、本件訂正前発明11~13は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 本件訂正前発明11の課題は、「第1液晶層及び第2液晶層が形成された領域を認識しやすい光学フィルムを提供すること」である。 そして、本件訂正前発明11には、「前記第2端領域の反射率と前記第2隣接領域の反射率とが互いに異なる」又は「前記第2端領域の透過率と前記第2隣接領域の透過率とが互いに異なる」とのみ記載されており、第2端領域の反射率と第2隣接領域の反射率が互いを再現性よく識別できない程度の違いしかない構成、又は、第2端領域の透過率と第2隣接領域の透過率が互いを再現性よく識別できない程度の違いしかない構成を包含しているものと解される。 したがって、本件訂正前発明11~13についての特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 取消理由1についての当審の判断 本件発明3~13は、先の取消理由通知に記載した取消理由によって取り消すことはできないところ、その理由は次のとおり。 すなわち、本件訂正により、本件発明11は、「前記第2端領域の反射率と前記第2隣接領域の反射率との差」について「0.1%以上」であることが特定され、「前記第2端領域の透過率と前記第2隣接領域の透過率との差」について「0.5%以上」であることが特定された(前記訂正事項9)から、先の取消理由(決定の予告)は解消している。 第6 先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由等 1 先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由等の概要 先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由、申立人が訂正により新たに生じたとする取消理由、及び、申立人が主張するそのほかの取消理由の概要は、それぞれ以下の(1)から(3)までに示すとおりであり、申立人が提出した証拠はまとめて後記(4)に示す。 (1) 先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要 先の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、以下のアからオに示すとおりである。 ア 申立理由1(甲1を主引例とした新規性又は進歩性の欠如) (ア) 本件特許の請求項1~13に係る発明は、甲1号証に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、本件特許の請求項1~13に係る特許は特許法29条1項の規定に違反してされたものである。 (イ) 本件特許の請求項1~13に係る発明は、甲1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~13に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 イ 申立理由2(甲2を主引例とした新規性又は進歩性の欠如) (ア) 本件特許の請求項1~3、5及び6に係る発明は、甲2号証に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、本件特許の請求項1~3、5及び6に係る特許は特許法29条1項の規定に違反してされたものである。 (イ) 本件特許の請求項1~13に係る発明は、甲2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~13に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 ウ 申立理由3(甲3を主引例とした新規性又は進歩性の欠如) (ア) 本件特許の請求項1~4、6~8に係る発明は、甲3号証に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、本件特許の請求項1~4、6~8に係る特許は特許法29条1項の規定に違反してされたものである。 (イ) 本件特許の請求項1~4、6~8に係る発明は、甲3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~4、6~8に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 エ 申立理由4(甲4を主引例とした新規性又は進歩性の欠如) (ア) 本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲4号証に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、本件特許の請求項1~6に係る特許は特許法29条1項の規定に違反してされたものである。 (イ) 本件特許の請求項1~13に係る発明は、甲4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~13に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 オ 申立理由5(サポート要件違反及び明確性要件違反) 本件特許の請求項10~13に係る特許は、特許法36条6項1号及び2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。 (2) 申立人が訂正により新たに生じたとする取消理由の概要 申立人が訂正により新たに生じたとする取消理由の概要は、それぞれ以下のアからウに示すとおりである。 ア 訂正により生じたとする取消理由1(明確性要件違反) 令和6年1月26日の訂正請求書による訂正後の請求項3~13に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。 イ 訂正により生じたとする取消理由2(サポート要件違反) 先の訂正後の請求項3~13に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。 ウ 訂正により生じたとする取消理由3(実施可能要件違反) 先の訂正後の請求項3~13に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。 (3) 申立人が主張するそのほかの取消理由の概要 前記(1)及び(2)に示したもののほか、申立人は次の主張をしている。 本件訂正発明3~13は、参考文献5に記載された発明に対して新規性又は進歩性を有さないから、これらの発明に係る特許は、特許法29条1項又は2項の規定に違反してされたものである。 なお、参考文献5は、異議申立人が令和6年8月8日に意見書とともに新たに提示した文献である。 (4) 申立人が提出した証拠 申立人が提出した証拠は以下のとおりである。(以下、甲第1号証~甲第7号証を、それぞれ「甲1」~「甲7」という。) 甲1号証:特開2013-11800号公報 甲2号証:特開2013-68764号公報 甲3号証:特開2012-32445号公報 甲4号証:特開2005-34681号公報 甲5号証:再公表特許W02013/137464号 甲6号証:特開2014-78036号公報 甲7号証:特開2015-7700号公報 参考資料1:特開2014-164000号公報 参考資料2:特開2014-164002号公報 参考資料3:再公表特許W02014/061215号 参考文献1:特開2005-292423号公報 参考文献2:特開昭63-271265号公報 参考文献3:特開2015-14780号公報 参考文献4:国際公開第2018/150663号 参考文献5:特開2011-248198号公報 2 当審の判断 以下において検討するとおり、本件発明3~13は、前記1(1)及び(2)において示した特許異議申立理由等によっては取り消すことはできない。 (1) 申立理由1~5について 本件においては、1回目の取消理由通知において甲1文献に基づく取消理由(「申立理由1」に対応する。)及び甲4文献に基づく取消理由(「申立理由4」に対応する。)を通知し、2回目の取消理由通知において甲4文献に基づく取消理由を通知している。 そして、合計3回の取消理由通知書のいずれにおいても採用しなかった申立理由2、3については、申立人は、令和6年3月7日に提出した意見書及び同年8月8日に提出した意見書のいずれにおいても言及がない。 このような経緯及び特許異議申立書において甲1文献に基づく取消理由を第1に挙げていることに鑑み、続くアにおいて申立理由1について検討し、次にイにおいて申立理由4について検討し、その次にウにおいて申立理由2、3について検討し、最後にエにおいて申立理由5について検討する。 ア 申立理由1について (ア) 甲1発明の認定 甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「第1位相差領域14及び第2位相差領域15が、ストライプ状に且つピッチd1で交互に配置されている表示画素領域16と、第1及び第2位相差領域14、15の長手方向に沿って形成されている表示画素領域16から外側上下に、非表示画素領域17を有するパターン位相差フィルムであって、(【0026】(当審注:「非表示画素部17」は、「非表示画素領域17」の明らかな誤記である(【0014】など参照)。)) パターン位相差フィルムは、パターン光学異方性層12と、これを支持するポリマーフィルムからなる支持体フィルム13とを有し、(【0027】) パターン光学異方性層12は、第1位相差領域14及び第2位相差領域15が、ストライプ状に且つピッチd1で交互に配置されている表示画素領域16を構成するとともに、マーク17Aを含む非表示画素領域17を構成し、(【0027】) 非表示画素領域17には、長手方向、即ち、第1及び第2位相差領域14、15の長手方向に沿って形成されている線状のマーク17Aが存在し、(【0028】) パターン光学異方性層12は、単層構造であっても、2層以上の積層構造であってもよく、パターン光学異方性層12は、液晶化合物を主成分とする硬化性組成物の1種又は2複数種から形成することができ、液晶化合物のうち、重合性基を有する液晶化合物が好ましく、(【0032】) 線状のマーク17Aは、少なくとも光学的に識別可能であればよく、目視にて黒等の線として認識されるものを含み、レーザーによるレーザー痕や、カッター刃などによって形成される切込みであってもよく、(【0020】) 液晶表示装置のフロント側(親面側)偏光板と、接着剤を利用して一体化され、表示装置に組み込まれる、(【0081】) パターン位相差フィルム。」 (イ) 本件発明3について a 対比 本件発明3と甲1発明を対比すると、両者は、少なくとも次の相違点1において相違する。 <相違点1> 本件発明3においては、 「第1隣接領域」が、面内遅相軸方向及び位相差の少なくとも一方が互いに異なる2つの位相差領域がストライプ状に交互に配置されているパターンを有する場合を除くのに対して、 甲1発明においては、 前記「第1隣接領域」に相当する「表示画素領域16」は、第1位相差領域14及び第2位相差領域15が、ストライプ状に交互に配置されている(面内遅相軸方向及び位相差の少なくとも一方が互いに異なる2つの位相差領域がストライプ状に交互に配置されているパターンを有する)点。 b 判断 (a) 本件発明3の新規性について 本件発明3と甲1発明は、前記(ア)に示した相違点1において相違するから、本件発明3は、甲1発明に対して新規性を有する。 (b) 本件発明3の進歩性について i 甲1発明は、パターン位相差フィルムに関する発明であるところ、これは、甲1の【0001】から【0011】等の記載を参照すると、3D画像表示装置とするための部材であり、甲1発明においては、これは前提とする必須の構成であることは明らかである。 ii したがって、当然のことながら、甲1には、表示画素領域16として、第1位相差領域14及び第2位相差領域15がストライプ状に交互に配置されている構成のみ記載され、表示画素領域16を当該構成以外の構成にする点については記載も示唆もされていない。 iii そうすると、甲1発明の「表示画素領域16」について、2つの位相差領域がストライプ状に交互に配置されていない構成に設計変更し、相違点1に係る構成とすることは、甲1発明の必須の構成を毀損することにほかならないから、甲1発明に基づいては、「面内遅相軸方向及び位相差の少なくとも一方が互いに異なる2つの位相差領域がストライプ状に交互に配置されているパターンを有する場合を除く」ことは、当業者が思いもよらぬことである。 iv したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 c 申立人の主張について (a) 申立人の主張その1について i 申立人の主張その1の内容 申立人は、令和6年3月7日に提出した意見書において、次の主張をしている。 甲1発明は、光学フィルムの位置合わせのための線状のマークに関する発明であり、ストライプ状の位相差領域を有するものに拘わらずどのような光学フィルムにも用い得る技術的思想であることは技術常識からみて自明である。 仮に、上記除外事項が甲1に記載されているに等しい事項でないとしても、第1隣接領域を、2つの位相差領域がストライプ状に交互に配置されているパターンを有する場合とするか、それ以外の場合(例えば、参考資料1、2に例示されるような二つの偏光領域を有する場合)とするかは、当業者が適宜選択し得る程度の設計的事項にすぎない。 ii 申立人の主張その1についての検討 前記bにおいて検討したとおり、甲1発明における「表示画素領域16」において、「第1位相差領域14及び第2位相差領域15がストライプ状に交互に配置されている構成」は必須の構成であるから、これを、2つの位相差領域がストライプ状に交互に配置されていない構成に設計変更し、相違点1に係る構成とすることは、甲1発明の必須の構成を毀損することになる。そうすると、甲1発明に基づいては、「面内遅相軸方向及び位相差の少なくとも一方が互いに異なる2つの位相差領域がストライプ状に交互に配置されているパターンを有する場合を除く」ことは、当業者が思いもよらぬことである。 したがって、前記iに示した申立人の主張は、採用できない。 (b) 申立人の主張その2について i 申立人の主張その2の内容 申立人は、令和6年3月7日に提出した意見書において、次の主張をしている。 甲1発明の構成と本件発明3の構成については、その相当関係を次のように考えることができる。 <甲1発明> <本件発明3> パターン光学異方性層12のうち 第1端領域 マーク17Aが形成された部分 パターン光学異方性層12のうち 第1隣接領域 表示画素領域16とマーク17Aとの間の部分 この場合、甲1発明の「表示画素領域16とマーク17Aとの間の部分」は、「面内遅相軸方向及び位相差の少なくとも一方が互いに異なる2つの位相差領域がストライプ状に交互に配置されているパターンを有する場合」に該当しないから、甲1には上記相違点1に係る構成が記載されている。 [図:0001423437000001.jpg] ii 申立人の主張その2についての検討 甲1発明の「パターン光学異方性層12のうちマーク17Aが形成された部分」は、「「幅方向の端部」を含む領域」ではないから、甲1発明の「パターン光学異方性層12のうちマーク17Aが形成された部分」だけで本件発明3における「幅方向の一方の端部を含む第1端領域」に相当するとは認められない。 甲1発明における「幅方向の一方の端部を含む第1端領域」といえる領域は、「非表示画素領域17」であるというべきである。 したがって、前記iに示した申立人の主張は、採用できない。 d 小括 したがって、本件発明3は、甲1発明に対して新規性を有し、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ) 本件発明4~13について 本件発明4~13は、本件発明3の発明特定事項を全て含む発明であるから、前記(イ)において示したのと同様の理由により、甲1発明に対して新規性を有し、かつ、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 申立理由4について (ア) 甲4発明の認定 甲4には、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。 「光学補償シートであって、(【0059】) 長尺状の支持体であるウエブとバー塗布装置でウエブに塗布された塗布膜からなり、(【0001】、【0066】) 塗布膜端部の厚塗り部分44(L3の部分)の塗布厚み倍率は定常な塗布膜(L4の部分)の塗布厚みに比べて1~3倍程度であり、(【0047】) 厚塗り倍率(1.5倍~2.5倍)、厚塗り幅(7~10mm)であり、(【0080】) 次の工程で製造された、光学補償シート。 ウエブ16には、厚さ100μmのトリアセチルセルロース(フジタック、富士写真フイルム(株)製)を使用し、 ウエブ16の表面に、長鎖アルキル変性ボバール(MP-203、クラレ(株)製)の2重量パーセント溶液をウエブ16の1m2当り25ml塗布後、60°Cで1分間乾燥させて配向膜用樹脂層を形成し、このウエブ16を20m/分で搬送しながら、樹脂層表面にラビング処理を行って配向膜を形成し、(【0061】) 配向膜用樹脂層をラビング処理して得られた配向膜上に、バー塗布装置を使用して塗布液を塗布し、(【0062】) 塗布液は、ディスコティック化合物TE-8のR(1)とR(2)(次の化学式参照)の重量比で4:1の混合物に、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)を前記混合物に対して1重量パーセント添加した、液晶性ディスコティック化合物の塗布液であり、 [図:0001423437000002.jpg] (【0063】、【0086】) バー塗布装置で塗布液が塗布されたウエブ16は、100℃に調整された乾燥ゾーン及び、130℃に調整された加熱ゾーンを通過させてネマチック相を形成した後、この配向膜及び液晶性化合物相が塗布されたウエブ16を連続搬送しながら、液晶層の表面に紫外線ランプにより紫外線を照射する。(【0065】)」 (イ) 本件発明3について a 対比 本件発明3と甲4発明を対比すると、両者は、少なくとも次の相違点2において相違する。 <相違点2> 本件発明3においては、 第1端領域と第1隣接領域とは、下記[a2]及び[b2]: [a2]前記第1端領域の反射率が、前記第1隣接領域の反射率よりも0.1%以上高い、 [b2]前記第1端領域の透過率が、前記第1隣接領域の透過率よりも0.5%以上低い、 のうちの少なくとも一方の関係を満たし、 前記第1端領域と前記第1隣接領域は、ヘイズ、明度、反射色相、色差、及び偏光度のうちの少なくとも一つの値が異なるのに対して、 甲4発明においては、 それぞれ「第1端領域」と「第1隣接領域」に相当する、「塗布膜端部の厚塗り部分44(L3の部分)」と「定常な塗布膜(L4の部分)」が、上記[a2]又は[b2]の関係を満たすこと、並びに、ヘイズ、明度、反射色相、色差、及び偏光度のうちの少なくとも一つの値が異なることの明示の特定は無い点。 b 判断 (a) 本件発明3の新規性について 本件発明3と甲4発明は、前記(ア)に示した相違点2において相違するから、両者は同一の発明ではない。 (b) 本件発明3の進歩性について i 甲4発明の「塗布膜」には、トリフェニレン骨格を有する化合物である「TE-8のR(1)とR(2)」が含有されているところ、「トリフェニレン骨格を有する化合物は、紫外域に強い吸収帯を有すること」は技術常識であるから(「羽會部卓(研究代表者)、「超分子集積化による励起ダイナミクス制御と革新的光エネルギー変換機能発現」、科学研究費助成事業 研究成果報告書、平成28年4月18日」の2頁左欄20行目~24行目、3頁左欄6行目~9行目、Chart 1、Figure 2 等参照)、甲4発明の「液晶層」は、紫外域のいずれかの波長の光に対して強い吸収を示すものと認められ、当該波長の光に対しては、塗膜の厚みに応じて透過率が有意に変化するものと認められる。 すなわち、甲4発明において、「厚塗り部分44(L3の部分)」の透過率は「定常な塗布膜(L4の部分)」の透過率よりも低いと認められる。 ii しかしながら、甲4には、「厚塗り部分44(L3の部分)」と「定常な塗布膜(L4の部分)」の透過率の差について、具体的な数値は記載されておらず、「厚塗り部分44(L3の部分)」の塗布厚みについても、「定常な塗布膜(L4の部分)」の塗布厚みに比べて1~3倍程度であることは記載されているものの(段落【0047】等)、その具体的な厚みについては記載されていないから、「厚塗り部分44(L3の部分)」と「定常な塗布膜(L4の部分)」の透過率の差が「0.5%以上」であるといえるだけの十分な根拠を見出すことはできない。 さらに、甲4は、厚塗り部分44(L3の部分)の厚塗りを減少させること(段落【0018】等)を目的としていることに鑑みれば、当該透過率の差が「0.5%以上」である構成とすることを当業者が容易に想到し得たともいえない。 iii(i) 更に進んで検討すると、前記iのとおり、甲4発明の「塗布膜」は、紫外域のいずれかの波長の光に対しては塗布厚みに応じて透過率が有意に変化すると認められるが、可視域の波長の光に対しても塗布厚みに応じて透過率が有意に変化するとまでは認められない。 そうすると、「明度」、「反射色相」及び「色差」は、可視域の波長の光の透過性や反射性に関する指標であるから、甲4発明の「塗布膜」について、塗布厚みに応じてこれらの指標が有意に変化するとまでは認められない。 (ii) また、甲4発明の「塗布膜」は、「TE-8のR(1)とR(2)」と「イルガキュア907」を含有するものであって、散乱性や偏光特性を有する材料が含まれているとも認められない。 そうすると、甲4発明の「塗布膜」は、散乱性に関する指標である「ヘイズ」、及び、偏光特性に関する指標である「偏光度」が、塗布厚みに応じて変化するとは認められない。 iv よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 c 申立人の主張について (a) 申立人の主張内容 申立人は、令和6年8月8日に提出した意見書において、次の主張をしている。 光学フィルムの透過率は厚みに対して減少し、例えば、公知の参考文献1から参考文献4を参照すると、反比例の関係である。したがって、厚塗り部分44(L3の部分)の透過率は、定常な塗布膜(L4の部分)の透過率より大幅に低くなると解されるから「定常な塗布膜(L4の部分)」の透過率よりも0.5%以上低いことは明らかである。 また、参考文献4(国際公開第2018/150663号)に記載されているように、光学フィルムの厚みが増大すれば透過率が低下するとともにヘイズが増大するから、甲4における「厚塗り部分44(L3の部分)」のヘイズは「定常な塗布膜(L4の部分)」のヘイズと異なっている。 (b) 申立人の主張についての検討 i 前記bにおいて検討のとおり、甲4発明の「厚塗り部分44(L3の部分)」と「定常な塗布膜(L4の部分)」について、これらの透過率の差が「0.5%以上」であるといえるだけの十分な根拠を見出すことはできないし、当該構成とすることを当業者が容易に想到し得たともいえない。 ii また、光学フィルム内に散乱性の物質が含まれる場合、当該光学フィルムの厚みが増大すればヘイズも増大すると認められるが、前記bにおいて検討のとおり、甲4発明の「塗布膜」には、散乱性を有する物質は含まれていないから、「厚塗り部分44(L3の部分)」と「定常な塗布膜(L4の部分)」のヘイズが異なるとは認められない。 iii よって、申立人の主張は採用できない。 d 小括 したがって、本件発明3は、甲4発明に対して新規性を有し、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ) 本件発明4~13について 本件発明4~13は、本件発明3の発明特定事項を全て含む発明であるから、前記(イ)において示したのと同様の理由により、甲4発明に対して新規性を有し、かつ、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 申立理由2、3について (ア) 合計3回の取消理由通知書のいずれにおいても採用しなかった申立理由2、3については、申立人は、令和6年3月7日に提出した意見書及び同年8月8日に提出した意見書のいずれにおいても言及がないところ、これらの申立理由について検討しても、以下に示すとおり、甲2又は甲3に記載された発明(以下「甲2発明」などという。)を検討しても、本件発明3~14は、甲2発明及び甲3発明のいずれに対して新規性を有し、これらのいずれの発明に基づいても当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことはできない。 (イ) すなわち、少なくとも、次に示す構成(「本件発明3が備える構成A」という。)は、甲2文献及び甲3文献のいずれの文献にも記載も示唆もされておらず、また、これらにそのほかの甲号証に記載された技術事項を適用する動機は見いだせず、技術常識等から設計変更することにより当業者が適宜なし得たものといえる事情も見いだせないから、甲3発明は、甲2発明又は甲3発明に基づいて当業者が容易に想到できたものではない。 <本件発明3が備える構成A> 「前記第1液晶層は、幅方向の一方の端部を含む第1端領域と、前記幅方向において前記第1端領域に隣接する第1隣接領域とを有し、前記第1端領域と前記第1隣接領域とは、下記[a2]及び[b2]: [a2]前記第1端領域の反射率が、前記第1隣接領域の反射率よりも0.1%以上高い、 [b2]前記第1端領域の透過率が、前記第1隣接領域の透過率よりも0.5%以上低い、のうちの少なくとも一方の関係を満た[す]」 (ウ) したがって、本件発明3及び本件発明3の発明特定事項を全て含む本件発明4~13は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 申立理由5について (ア) 申立理由5-1 a 申立人は、設定登録時の請求項10は、「第2液晶層を含む」ことを特定しているが、請求項10が請求項9を引用する場合における「偏光層」と「第2液晶層」の配置関係が不明確である旨、及び、発明の詳細な説明には、第1液晶層、第2液晶層、偏光層がこの順に配置されることしか記載されておらず、サポートされていない旨を主張している。 b しかしながら、前記(ア)の主張は、本件訂正後の請求項10で「前記樹脂フィルムは、第2液晶層を含み、前記樹脂フィルムが偏光層及び前記第2液晶層を含む場合、前記光学フィルムは、前記第1液晶層、前記接着層、前記第2液晶層、及び前記偏光層をこの順に含む、」と特定されたことにより解消した。 (イ) 申立理由5-2 a 申立人は、設定登録時の請求項13は、「前記第2基材層は、前記第2液晶層の前記接着層側とは反対側に設けられている」ことを特定しているが、請求項13が間接的に請求項9を引用する場合における「第2基材層」と「偏光層」の配置関係が不明確である旨、及び、発明の詳細な説明には、第2基材層を剥離して偏光層を設けることしか記載されておらず、サポートされていない旨を主張している。 b しかしながら、本件特許の明細書の段落【0077】に、「第2基材層21は、その上に形成される第2液晶層22を支持する支持層としての機能を有し、第2液晶層22に対して剥離可能とすることができる。」と記載されているように、「第2基材層」を剥離しない光学フィルムも記載されているといえる。そして、そのような光学フィルムに「偏光層」を更に配置する場合、光学的に透明な「第2基材層」を剥離せずとも「偏光層」を「第2基材層」のいずれかの面上に配置できることは技術常識であるから、前記(ア)の主張は、採用できない。 (2) 申立人が訂正により新たに生じたとする取消理由について ア 訂正により生じたとする取消理由1について (ア) 申立人は、令和6年3月7日に提出した意見書において、「但し、前記第1隣接領域が、面内遅相軸方向及び位相差の少なくとも一方が互いに異なる2つの位相差領域がストライプ状に交互に配置されているパターンを有する場合を除く」との記載における「面内遅相軸方向及び位相差の少なくとも一方」は、複数の場合を包含しており、除かれる範囲が不明確である旨を主張している。 (イ) しかしながら、「面内遅相軸方向及び位相差の少なくとも一方が互いに異なる2つの位相差領域がストライプ状に交互に配置されているパターンを有する場合を除く」との記載は、ストライプ状に交互に配置されている2つの位相差領域が、面内遅相軸方向のみ異なる場合、位相差のみ異なる場合、及び、面内遅相軸方向及び位相差の両方が異なる場合のいずれの場合も除くことを意図していることは自明であって、前記アの主張は、採用できない。 イ 訂正により生じたとする取消理由2について (ア) 申立人は、令和6年8月8日に提出した意見書において、以下のa~cの点において本件特許の明細書等に実質的に記載されていない旨を主張している。 a ヘイズ、明度、反射色相、色差又は偏光度が互いを再現性よく識別できない程度の違いしかない構成を包含している。 b 反射率の差が0.1%、透過率の差が0.5%という、第1端領域の反射率と第1隣接領域の反射率が、互いを再現性よく識別できない程度の違いしかない構成、又は、第1端領域の透過率と第1隣接領域の透過率が、互いを再現性よく識別できない程度の違いしかない構成を包含している。 c 透過率差の算出根拠となる各領域の透過率について本件特許には記載がなく、そもそも技術的に、高い透過率の上限値における差か、例えばヘイズ等を伴う中程度から低い透過率の差であるのか、差の数値範囲を鑑みたときに【0030】を参照したとしても反射率、透過率の測定装置や測定条件を選択、設定することが困難である。 (イ)a 本件発明3は、各領域のヘイズ、明度、反射色相、色差又は偏光度の差を識別するものではなく、これらの差などによって生じた各領域の反射率又は透過率の差を識別するものであるから、前記(ア)aの主張は、採用できない。 b 反射率を0.1%以下の分解能で検出、又は、透過率を0.5%以下の分解能で検出することができる測定装置は、例示するまでもなく技術常識であるから、前記(ア)bの主張は、採用できない。 c 反射率又は透過率を測定するための測定装置や測定条件は当業者が適宜選択し得る事項にすぎないから、前記(ア)cの主張は、採用できない。 ウ 訂正により生じたとする取消理由3について a 申立人は、令和6年8月8日に提出した意見書において、「[a2]前記第1端領域の反射率が、前記第1隣接領域の反射率よりも0.1%以上高い、[b2]前記第1端領域の透過率が、前記第1隣接領域の透過率よりも0.5%以上低い、」と特定しているが、発明の詳細な説明には単に数値が羅列されているのみであって具体的な実施例が一例もなく、どの程度の反射率又は透過率の差があれば検出可能なのか、当業者が実施できる程度に記載されていない旨主張している。 b しかしながら、前記イ(イ)において検討したとおり、反射率を0.1%以下の分解能で検出、又は、透過率を0.5%以下の分解能で検出することができる測定装置は、例示するまでもなく技術常識であるから、前記aの主張は、採用できない。 (3) 申立人が主張するそのほかの取消理由について 参考文献5は、異議申立人が令和5年8月8日に意見書の提出と同時に新たに提出したものであり、本件訂正発明3~13は、参考文献5に記載された発明に対して新規性又は進歩性を有さないなどと主張する。 しかしながら、当該主張は、訂正の請求の内容に付随して生じる理由に係るものではなく、実質的に新たな理由及び証拠を提示するものといえる。 そして、参考文献5には、本件発明3が備える構成A(前記(1)ウ参照)は、少なくとも明示的には記載されておらず、直ちに理解できることでもないから、適切な取消理由を構成することが一見して明らかということもできない。 したがって、参考文献5は証拠として採用せず、同証拠に基づく主張は採用しない(審判便覧67―05.4の1.(2)参照)。 (4) 削除された請求項1、2に対する申立てについて 請求項1、2は本件訂正により削除されたので、請求項1、2に係る特許についての特許異議の申立ては、当該申立ての対象が存在しないものとなった。 このため、請求項1、2に係る特許についての特許異議の申立ては、不適法な特許異議の申立てであって、その補正をすることができないものであるといえる。 よって、請求項1、2に係る特許についての特許異議の申立ては、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。 第6 むすび 以上検討のとおり、本件発明3~13に係る特許は、先の取消理由通知で指摘した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由のいずれによっても取り消すことはできない。 また、他に本件発明3~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項1、2は、本件訂正により削除されたことにより、請求項1、2に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、不適法な特許異議の申立てであって、その補正をすることができないものであるといえるから、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701051

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