特許訂正審判
2018-390022
転動装置用生分解性グリース組成物及び転動装置
- 審判番号
- 2018-390022
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2008-028968外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年01月31日
- 審決日
- 2018年04月05日
- 公報発行日
- 2018年06月29日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P141 .851-Y (C10M) / P141 .852-Y (C10M) / P141 .853-Y (C10M) / P141 .856-Y (C10M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項2号特許法126条1項3号特許法126条5項特許法126条6項特許法126条7項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5358965号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5358965号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯等
1 本件特許
本件訂正審判に係る特許は、発明の名称を「転動装置用生分解性グリース組成物及び転動装置」とする特許第5358965号(以下、「本件特許」という。)であって、平成20年2月8日を出願日とする特願2008-28968号について、平成25年9月13日、設定登録を受けたものである(設定登録時の請求項の数は2である。)。
2 本件訂正審判における手続の経緯
本件訂正審判の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成30年 1月31日 審判請求書提出
同年 2月16日付け 手続補正指令(方式)
同年 2月23日 手続補正書提出
第2 本件訂正審判の請求の趣旨と訂正内容
1 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。
2 本件訂正の内容
本件訂正審判に係る明細書及び特許請求の範囲の訂正の内容は、以下に示す、訂正事項1ないし8である(以下、これらを併せて「本件訂正」という。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲【請求項1】の「植物油及びエステル油の少なくとも一方からなる基油」との記載を、「菜種油」に訂正する(請求項1を引用する請求項2についても同様に訂正する)。
(2) 訂正事項2
明細書段落【0006】の「(1)植物油及びエステル油の少なくとも一方からなる基油」との記載を、「(1)菜種油」に訂正する。
(3) 訂正事項3
明細書段落【0010】の「基油には、生分解性に優れることから植物油及びエステル油の少なくとも一方を用いる。」との記載を、「基油には、生分解性に優れることから菜種油を用いる。」に訂正する。
(4) 訂正事項4
明細書段落【0011】の「植物油としては、菜種油,ひまわり油,大豆油,綿実油,コーン油,ひまし油等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して用いることができる。但し、低温での流動性と酸化安定性とのバランスに優れた菜種油、ひまし油が特に好ましい。」との記載を、「低温での流動性と酸化安定性とのバランスに優れた菜種油が特に好ましい。」に訂正する。
(5) 訂正事項5
明細書段落【0012】の記載を削除する。
(6) 訂正事項6
明細書段落【0020】の「(実施例1~6、比較例1~3)」との記載を、「(実施例1、4、参考例2~3、5~6、比較例1~3)」に訂正し、同段落の「実施例1~3では生分解性の基油(植物油またはエステル油)」との記載を、「実施例1、参考例2~3では生分解性の基油(植物油またはエステル油)」に訂正し、同段落の「実施例4~6では生分解性の基油(植物油またはエステル油)」との記載を、「実施例4、参考例5~6では生分解性の基油(植物油またはエステル油)」に訂正し、同段落【0023】の【表1】中の「実施例2」との記載を、「参考例2」に訂正し、同表中の「実施例3」との記載を、「参考例3」に訂正し、同表中の「実施例5」との記載を、「参考例5」に訂正し、同表中の「実施例6」との記載を、「参考例6」に訂正する。
(7) 訂正事項7
明細書段落【0024】の「植物油またはエステル油」との記載を、「菜種油」に訂正する。
(8) 訂正事項8
明細書段落【0020】の「比較襟3」との記載を、「比較例3」に訂正する。
第3 当審の判断
前記訂正事項1ないし8が、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものであるか否か(訂正の目的の適否)、同条第5項(新規事項の追加の有無)、同条第6項(特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無)及び同条第7項(独立特許要件充足性)の各規定に適合するものであるか否かについて、訂正事項1から順に以下検討をする。
1 訂正事項1
(1) 訂正の目的の適否
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1の「植物油及びエステル油の少なくとも一方からなる基油」を「菜種油」に限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるといえる。
また、特許請求の範囲の請求項2は、請求項1を引用するものであるから、訂正事項1は、請求項2についても、上記請求項1と同様の訂正を行うものであるところ、当該訂正も、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
(2) 新規事項の追加の有無
明細書段落【0023】の【表1】(同表の説明は同段落【0020】参照)の実施例1、4には、菜種油を基油とし、N-2-エチルヘキサノイル-L-グルタミン酸ジブチルアミドあるいはN-ラウロイル-L-グルタミン酸-α,γ-n―ジブチルアミドを増ちょう剤としたグリース(不混和ちょう度をNLGI No.2に調整したもの)が具体例として記載され、同表には、それらの生分解性評価試験及びトルク試験の結果が併記されている。そして、図面【図2】及び【図3】(同図の説明は同段落【0022】参照)には、これら実施例1、4を封入した試験軸受のトルクの変動について記載され、同【0024】には、当該実施例のグリースは生分解性に優れ、更にこれらを封入した試験軸受も低トルクで、かつ、トルクが早期に安定していることについて記載されている。
また、図面【図4】(同図の説明は同段落【0025】参照)及び図面【図5】(同図の説明は同段落【0026】参照)には、菜種油を基油とし、N-2-エチルヘキサノイル-L-グルタミン酸ジブチルアミドあるいはN-ラウロイル-L-グルタミン酸-α,γ-n―ジブチルアミドを増ちょう剤として得られたグリースの増ちょう剤量と不混和ちょう度との関係について記載され、同段落【0027】には、当該増ちょう剤を用いることにより、2~5質量%という少ない量で、転がり軸受用として一般的なNLGI No.2程度のちょう度が得られることについて記載されている。
このように、N-2-エチルヘキサノイル-L-グルタミン酸ジブチルアミドあるいはN-ラウロイル-L-グルタミン酸-α,γ-n―ジブチルアミドを増ちょう剤としたグリースにおいて、菜種油を基油とすることは、明細書において具体例をもって示されていた事項であるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。
(3) 特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項1は、特許請求の範囲に記載された「植物油及びエステル油の少なくとも一方からなる基油」を「菜種油」に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないといえる。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。
(4) 独立特許要件充足性
訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、先行技術との関係において、特許要件を満たさなくなるような事情は存在せず、また、訂正事項1により、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載に新たな記載不備が生じるわけでもない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第7項に規定する要件を満たすものである。
2 訂正事項2
(1) 訂正の目的の適否
本件訂正前の明細書段落【0006】には、本件訂正前の請求項1に対応する「(1)植物油及びエステル油の少なくとも一方からなる基油」との記載がなされていたところ、当該請求項1は前記訂正事項1により訂正されたため、両者は整合しないものとなった。
訂正事項2は、当該不整合を解消するためのものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。
(2) 新規事項の追加の有無
前記「1(2)」のとおり、基油を菜種油とすることは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項であるから、訂正事項2は、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。
(3) 特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項2は、前記訂正事項1により減縮された特許請求の範囲の記載に明細書の記載を整合させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。
3 訂正事項3
(1) 訂正の目的の適否
本件訂正前の明細書段落【0010】には、本件訂正前の請求項1に対応する「基油には、生分解性に優れることから植物油及びエステル油の少なくとも一方を用いる。」との記載がなされていたところ、当該請求項1は前記訂正事項1により訂正されたため、両者は整合しないものとなった。
訂正事項3は、当該不整合を解消するためのものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。
(2) 新規事項の追加の有無
前記「1(2)」のとおり、基油を菜種油とすることは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項であるから、訂正事項3は、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。
(3) 特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項3は、前記訂正事項1により減縮された特許請求の範囲の記載に明細書の記載を整合させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。
4 訂正事項4
(1) 訂正の目的の適否
本件訂正前の明細書段落【0011】には、本件訂正前の請求項1に対応する「植物油としては、菜種油,ひまわり油,大豆油,綿実油,コーン油,ひまし油等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して用いることができる。
但し、低温での流動性と酸化安定性とのバランスに優れた菜種油、ひまし油が特に好ましい。」との記載がなされていたところ、当該請求項1は前記訂正事項1により訂正されたため、両者は整合しないものとなった。
訂正事項4は、当該不整合を解消するためのものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。
(2) 新規事項の追加の有無
前記「1(2)」のとおり、基油を菜種油とすることは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項であるから、訂正事項4は、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。
(3) 特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項4は、前記訂正事項1により減縮された特許請求の範囲の記載に明細書の記載を整合させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。
5 訂正事項5
(1) 訂正の目的の適否
本件訂正前の明細書段落【0012】には、本件訂正前の請求項1に対応するエステル油に関する記載がなされていたところ、当該請求項1は前記訂正事項1により訂正されたため、両者は整合しないものとなった。
訂正事項5は、当該不整合を解消するためのものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。
(2) 新規事項の追加の有無
訂正事項5は、本件訂正後の特許請求の範囲の記載と整合しない明細書の記載を削除するものであるから、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。
(3) 特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項5は、前記訂正事項1により減縮された特許請求の範囲の記載に明細書の記載を整合させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。
6 訂正事項6
(1) 訂正の目的の適否
前記訂正事項1により、特許請求の範囲に記載された基油は、菜種油に減縮されたところ、本件訂正前の明細書の実施例2、3、5及び6は、基油として菜種油以外の植物油またはエステル油を用いているから、これらは本件訂正後の特許請求の範囲に係る発明の実施例にあたらない。
訂正事項6は、当該発明の技術的範囲に含まれなくなる実施例を参考例とし、当該訂正事項1による訂正後の特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させるものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。
(2) 新規事項の追加の有無
訂正事項6は、前記訂正事項1による訂正後の特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために、当該発明の技術的範囲に含まれなくなる実施例を参考例に訂正するものである。
したがって、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。
(3) 特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項6は、単に、訂正事項1による訂正後の特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項6は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。
7 訂正事項7
(1) 訂正の目的の適否
本件訂正前の明細書段落【0024】には、本件訂正前の請求項1に対応させて「植物油またはエステル油」との記載がなされていたところ、当該請求項1は前記訂正事項1により訂正されたため、両者は整合しないものとなった。
訂正事項7は、当該不整合を解消するためのものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。
(2) 新規事項の追加の有無
前記「1(2)」のとおり、基油を菜種油とすることは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項であるから、訂正事項7は、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。
(3) 特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項7は、前記訂正事項1により減縮された特許請求の範囲の記載に明細書の記載を整合させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項7は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。
8 訂正事項8
(1) 訂正の目的の適否
本件訂正前の明細書段落【0020】には、「比較襟3」と記載されているが、日本語として意味をなさず、文脈からみて「比較例3」の誤記であることは明白である。
訂正事項8は、明白な誤記を本来の正しい意味に正すものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものといえる。
(2) 新規事項の追加の有無
訂正事項8は、単に、日本語として意味をなさない明白な誤記である「比較襟3」を、本来の意味である「比較例3」に正すものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。
(3) 特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
訂正事項8は、単なる誤記の訂正にすぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項8は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。
(4) 独立特許要件充足性
訂正事項8は、単に、日本語として意味をなさない明白な誤記を、本来の意味に正すものであるから、これにより独立特許要件を充足しなくなるような事情は認められない。
したがって、訂正事項8は、特許法第126条第7項に規定する要件を満たすものである。
第4 結び
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号、第2号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第5項から第7項までの規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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