特許訂正審判
2023-390124
折畳み式テント
- 審判番号
- 2023-390124
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2013-183512
- 登録番号
- 5595570
- 請求日
- 2023年10月31日
- 審決日
- 2024年03月15日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】株式会社 ニード
- 【請求人代理人】神澤 淳子
- 審判長/審判官
- 審判長 古屋野 浩志
- 審判官 佐藤 史彬
- 審判官 住田 秀弘
- 分類
- P141 .851-Y (E04H) / P141 .852-Y (E04H) / P141 .853-Y (E04H) / P141 .854-Y (E04H) / P141 .855-Y (E04H) / P141 .856-Y (E04H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項2号特許法126条1項3号特許法126条5項特許法126条6項特許法126条7項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第131条の2第1項、特許法第126条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第5595570号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第5595570号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第5595570号(以下「本件特許」という。)は、平成25年9月4日に出願され、平成26年8月15日に特許権の設定登録がなされ、令和5年10月31日に本件訂正審判の請求がされたものであり、その後、同年11月24日に手続補正指令書(方式)を発送したところ、同年12月8日に本件訂正審判に係る審判請求書(以下「本件審判請求書」という。)を補正する手続補正書が提出されたものである。
第2 本件補正
1 本件補正の内容
令和5年12月8日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、本件審判請求書の「2 審判の請求に係る請求項の数」に「5」と記載されているのを、「4」に補正するとともに、訂正特許請求の範囲に記載された「請求項5」についての記載を削除するように訂正特許請求の範囲を補正するものである。
2 本件補正についての判断
本件補正は、審判請求書に記載された「請求の趣旨」の要旨を変更するものではなく、特許法第131条の2第1項の規定に適合するから、これを認める。
第3 請求の趣旨及び訂正の内容
上記のとおり、本件補正は認められるから、本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5595570号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、令和5年12月8日付けの手続補正書により補正された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものであって、その請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「角部が湾曲した略矩形状可撓性幕の外周縁に弾性に富んだ無端フレームが付設されて1枚の略矩形状壁面が形成され、4枚の略矩形状壁面の内、相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結されるとともに、前記相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁は、着脱可能な接合手段を介して接合されることにより、前記4枚の略矩形状壁面でもって筒状周壁部が構成され、」と記載されているのを、
「角部が湾曲した略矩形状可撓性幕の外周縁に弾性に富んだ無端フレームが付設されて1枚の略矩形状壁面が形成され、
4枚の略矩形状壁面の内、1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の3組の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結されるとともに、
前記1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁は、着脱可能な接合手段を介して接合されることにより、前記4枚の略矩形状壁面でもって筒状周壁部が構成され、」に訂正する。
2 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「(2-1)前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面のうち、前記接合手段を外すことにより外方に向かって開放可能な略矩形状壁面の下縁には、着脱可能な接合手段が存在せず、
(2-2)前記接合手段を介して接合される2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁の上下端部に存在する空隙を閉塞する上閉塞面および下閉塞面を具備し、
(2-3)前記上閉塞面は左右に分割された構成で、一方は前記扉部が形成された略矩形状壁面の上方に連結され、他方は前記扉部が形成された略矩形壁面と接合手段を介して接合される略矩形状壁面の上方に連結され、互いが着脱可能な接合手段を介して接合される2つの分割上閉塞面から成り、
前記下閉塞面は左右に分割された構成で、一方は前記扉部が形成された略矩形状壁面の下方に連結され、他方は前記扉部が形成された略矩形壁面と接合手段を介して接合される略矩形状壁面の下方に連結され、互いが着脱可能な接合手段を介して接合される2つの分割下閉塞面から成る」という限定を付して訂正する。(「(2-1)」~「(2-3)」は、分説のため当審で付した。)
3 訂正事項3
明細書の段落【0009】の記載を、
「請求項1記載の発明は、角部が湾曲した略矩形状可撓性幕の外周縁に弾性に富んだ無端フレームが付設されて1枚の略矩形状壁面が形成され、
4枚の略矩形状壁面の内、1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の3組の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結されるとともに、
前記1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁は、着脱可能な接合手段を介して接合されることにより、前記4枚の略矩形状壁面でもって筒状周壁部が構成され、
前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面の内、いずれか一方の略矩形状壁面には開閉自在な扉部が形成され、
前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面により開閉自在な両壁面開口部が設けられ、
前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面のうち、前記接合手段を外すことにより外方に向かって開放可能な略矩形状壁面の下縁には、着脱可能な接合手段が存在せず、
前記接合手段を介して接合される2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁の上下端部に存在する空隙を閉塞する上閉塞面および下閉塞面を具備し、
前記上閉塞面は左右に分割された構成で、一方は前記扉部が形成された略矩形状壁面の上方に連結され、他方は前記扉部が形成された略矩形壁面と接合手段を介して接合される略矩形状壁面の上方に連結され、互いが着脱可能な接合手段を介して接合される2つの分割上閉塞面から成り、
前記下閉塞面は左右に分割された構成で、一方は前記扉部が形成された略矩形状壁面の下方に連結され、他方は前記扉部が形成された略矩形壁面と接合手段を介して接合される略矩形状壁面の下方に連結され、互いが着脱可能な接合手段を介して接合される2つの分割下閉塞面から成ることを特徴とする折畳み式テントである。」と訂正する。
4 訂正事項4
明細書の段落【0032】の
「また、正方形の筒状周壁部1は、下記の作業により、厚円盤状に折畳むことができる。
4枚の壁面2、3、4、5の各両側縁2a、2b、3a、3b、4a、4b、5a、5bを相互に折畳み可能に接合し、4枚の壁面2、3、4、5では、各部にて湾曲した略矩形状の可撓性幕6の外周縁にベルト挿通部7を形成し、図示されない弾性に富んだ無端フレームに相当する厚さが1~2mm程度の無端フレームを構成する鋼製帯状無端ベルトを前記ベルト挿通部7に挿入することにより前記壁面2、3、4、5を形成したため、特許文献1~3記載のテントと同様に、前記筒状周壁部1は下記の作業を行うことにより、折畳むことができる。」という記載を、
「また、正方形の筒状周壁部1は、下記の作業により、厚円盤状に折畳むことができる。
4枚の壁面2、3、4、5の各両側縁2a、2b、3a、3b、4a、4b、5a、5bのうち、側縁3aと4b、4aと5b、5aと2bとを相互に折畳み可能に連結し、側縁2aと3bとを接合手段23で相互に折畳み可能に接合し、4枚の壁面2、3、4、5では、各部にて湾曲した略矩形状の可撓性幕6の外周縁にベルト挿通部7を形成し、図示されない弾性に富んだ無端フレームに相当する厚さが1~2mm程度の無端フレームを構成する鋼製帯状無端ベルトを前記ベルト挿通部7に挿入することにより前記壁面2、3、4、5を形成したため、特許文献1~3記載のテントと同様に、前記筒状周壁部1は下記の作業を行うことにより、折畳むことができる。」と訂正する。
第4 当審の判断
1 訂正事項2及び3の「略矩形壁面」の解釈
本件発明1には、「略矩形状壁面」との記載に加え、訂正事項2及び3に「前記扉部が形成された略矩形壁面」との記載があるところ、当該記載における「略矩形壁面」の意味について検討する。
本件特許明細書には、「また、4枚の壁面2、3、4、5では、角部にて湾曲した略矩形状の可撓性幕6の外周縁にベルト挿通部7が形成され、そのベルト挿通部7に、図示されない弾性に富んだ無端フレームに相当する厚さが1~2mm、幅が5~10mm程度の鋼製帯状無端ベルトが挿入されることによって、前記角部が湾曲した壁面2、3、4、5が構成されている。」(【0021】)、「筒状周壁部1における正壁面2には、図1、図2、図7および図8に図示されるように、U字の開放端が左方に向いたU字状ファスナー切断縁8が形成されて開閉扉部17が構成されている。」(【0025】)との記載がある。
(当審注:段落【0025】の「開閉扉部17」との記載は、段落【0028】の「開閉扉部9」、段落【0041】の「9…開閉扉部」との記載、及び図1、2、7、8の記載からすると、「開閉扉部9」の誤記であると認められる。)
本件特許明細書の上記段落【0021】及び【0025】の記載からすると、開閉扉部9が構成された正壁面2は、略矩形状の可撓性幕6により構成されるものであることが理解できる。そして、本件訂正前の本件特許明細書には、これ以外に「前記扉部が形成された略矩形壁面」に対応する記載はなく、「略矩形壁面」という用語も記載されていないことからすると、上記訂正事項2及び3の「略矩形壁面」は、略矩形状の正壁面2に対応するものであって、上記訂正事項2及び3の「略矩形壁面」が「略矩形状壁面」の誤記であることが明らかである。
以下では、訂正事項2及び3の「略矩形壁面」は「略矩形状壁面」を意味するものとして、検討を行う。
2 訂正事項1及び2
(1)訂正の目的
ア 訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明においては、「4枚の略矩形状壁面の内、相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結されるとともに、前記相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁は、着脱可能な接合手段を介して接合されることにより、前記4枚の略矩形状壁面でもって筒状周壁部が構成され、」と規定して、相互に折畳み可能に順次連続して連結される側縁が、相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の側縁であること、及び、互いに対応する側縁が着脱可能な接合手段を介して接合されることを特定しつつ、着脱可能な接合手段を介して接合される側縁である相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁が、4枚の略矩形状壁面の内のどの側縁であるのかを特定していないところ、訂正後の請求項1に係る発明においては、着脱可能な接合手段を介して接合される側縁である相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁が、4枚の略矩形状壁面の内の1組であることを限定するとともに、4枚の略矩形状壁面の内の残りの3組の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結されることを限定して、「4枚の略矩形状壁面の内、1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の3組の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結されるとともに、
前記1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁は、着脱可能な接合手段を介して接合されること」と訂正するものであるから、当該訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載された「前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面」について、「前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面のうち、前記接合手段を外すことにより外方に向かって開放可能な略矩形状壁面の下縁には、着脱可能な接合手段が存在せず、」と限定するとともに、
「前記接合手段を介して接合される2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁の上下端部に存在する空隙を閉塞する上閉塞面および下閉塞面を具備し、
前記上閉塞面は左右に分割された構成で、一方は前記扉部が形成された略矩形状壁面の上方に連結され、他方は前記扉部が形成された略矩形壁面と接合手段を介して接合される略矩形状壁面の上方に連結され、互いが着脱可能な接合手段を介して接合される2つの分割上閉塞面から成り、
前記下閉塞面は左右に分割された構成で、一方は前記扉部が形成された略矩形状壁面の下方に連結され、他方は前記扉部が形成された略矩形壁面と接合手段を介して接合される略矩形状壁面の下方に連結され、互いが着脱可能な接合手段を介して接合される2つの分割下閉塞面から成る」との構成を加える訂正であるから、当該訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)特許請求の範囲の拡張、変更の有無について
訂正事項1及び2は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。よって、訂正事項1及び2は、特許法第126条第6項に適合する。
(3)新規事項の追加
ア 訂正事項1
本願特許明細書の段落【0021】には、「筒状周壁部1では、図7に図示されるように、4枚の壁面2、3、4、5の各両側縁2a、2b、3a、3b、4a、4b、5a、5bの内、側縁3aと4b、4aと5b、5aと2bとを相互に折畳み可能に連結し、側縁2aと3bとを後述する接合手段23で接合することで筒状周壁部1が構成されている。」と記載されていることからみて、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
イ 訂正事項2
(ア)構成(2-1)
本願特許明細書の段落【0028】には、「図8に図示されるように、該接合手段23が設けられているいずれか一方の壁面を外方に向かって開放することができる。・・・また、この開放部分にはファスナー切断縁8が存在しないため、車椅子や運搬車等がテント内に出入しても、ファスナー切断縁8に設けられているファスナーに車椅子や運搬車等の車輪に接触することがなく、前記ファスナー切断縁8の変形や前記ファスナー切断縁8への土砂の付着が阻止される。」と記載され、また、図8には、「前記接合手段を介して接合される2枚の略矩形状壁面のうち、前記接合手段を外すことにより外方に向かって開放可能な略矩形状壁面」に対応する正壁面2及び分割下閉塞面19aの下縁に、「着脱可能な接合手段」に対応する部材が設けられていない構成が示されていることからみて、訂正事項2の構成(2-1)は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(イ)構成(2-2)
本件特許明細書の段落【0023】には、「壁面2、3、4、5の側縁上下端部は、壁面2、3、4、5の角部が湾曲した形状に形成されているため、壁面2、3、4、5の各隣接する側縁の上下端部に空隙部が存在するが、三角形に近い形状の上閉塞面20、下閉塞面19でもってこの上下の空隙部は閉塞されるようになっている。なお、正壁面2の右側縁2aと右壁面3の左側縁3bとの上下端部を塞ぐ二等辺三角形状の分割上閉塞面20a、分割下閉塞面19aは、三角形の頂角を通る中心線を境に2分割される。左右に分割された分割上閉塞面20a、分割下閉塞面19aは、前記接合手段23と同様な上閉塞面接合手段22、下閉塞面接合手段21によって、接合または分離可能に接合される。」と記載されていることからみて、訂正事項2の構成(2-2)は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(ウ)構成(2-3)
本件特許明細書の段落【0023】には、「なお、正壁面2の右側縁2aと右壁面3の左側縁3bとの上下端部を塞ぐ二等辺三角形状の分割上閉塞面20a、分割下閉塞面19aは、三角形の頂角を通る中心線を境に2分割される。左右に分割された分割上閉塞面20a、分割下閉塞面19aは、前記接合手段23と同様な上閉塞面接合手段22、下閉塞面接合手段21によって、接合または分離可能に接合される。」と記載されていることからみて、訂正事項2の構成(2-2)は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
ウ 小括
よって、訂正事項1及び2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合する。
(4)独立特許要件
上記(1)で検討したとおり、訂正事項1及び2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、特許法第126条第7項の規定により、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される請求項1~4に係る発明(以下「訂正後発明1」等という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであることが要件となるところ、当該要件について検討する。
なお、本件特許についての、特許権侵害差止請求事件(東京地裁令和4年(ワ)第15678号)において、新規性・進歩性の有無、補正要件、サポート要件、実施可能要件、明確性要件、及び本件特許発明の解釈が争点となったことを踏まえて、独立特許要件を満たしているかを検討する。
ア 訂正後発明1
訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される請求項1に係る発明は、次のとおりである。
「【請求項1】
角部が湾曲した略矩形状可撓性幕の外周縁に弾性に富んだ無端フレームが付設されて1枚の略矩形状壁面が形成され、
4枚の略矩形状壁面の内、1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の3組の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結されるとともに、
前記1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁は、着脱可能な接合手段を介して接合されることにより、前記4枚の略矩形状壁面でもって筒状周壁部が構成され、
前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面の内、いずれか一方の略矩形状壁面には開閉自在な扉部が形成され、
前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面により開閉自在な両壁面開口部が設けられ、
前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面のうち、前記接合手段を外すことにより外方に向かって開放可能な略矩形状壁面の下縁には、着脱可能な接合手段が存在せず、
前記接合手段を介して接合される2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁の上下端部に存在する空隙を閉塞する上閉塞面および下閉塞面を具備し、
前記上閉塞面は左右に分割された構成で、一方は前記扉部が形成された略矩形状壁面の上方に連結され、他方は前記扉部が形成された略矩形壁面と接合手段を介して接合される略矩形状壁面の上方に連結され、互いが着脱可能な接合手段を介して接合される2つの分割上閉塞面から成り、
前記下閉塞面は左右に分割された構成で、一方は前記扉部が形成された略矩形状壁面の下方に連結され、他方は前記扉部が形成された略矩形壁面と接合手段を介して接合される略矩形状壁面の下方に連結され、互いが着脱可能な接合手段を介して接合される2つの分割下閉塞面から成ることを特徴とする折畳み式テント。」
イ 新規性・進歩性
(引用文献等一覧)
引用文献1:米国特許第6782905号明細書
引用文献2:米国特許第7607446号明細書
(ア)引用文献1
a 記載事項
引用文献1には、以下の記載がある。(翻訳及び下線は当審で付した。以下同様。)
(a)第1欄5~6行
「The present invention is related to collapsible toy structures such as tents and playhouses.」
(翻訳)
「本発明は、テントやプレイハウスなどの折り畳み可能な玩具構造物に関するものである。」
(b)第1欄32~45行
「Accordingly, the present invention provides a portable and reversibly collapsible structure that contains a bottom panel and a plurality of side panels. Each of the side panels contain a fabric material attached to at least one frame with each frame foldable between an expanded position and a recoiled position. At least two side panels are hingedly connected to opposing sides of the bottom panel. At least one detachable side panel is further attached to the bottom panel and in a position that is in between the opposing side panels. The connection between the detachable side panel and the bottom panel is reversible and detachable by a user. The connection between the detachable side panel and one of the opposing side panels is also reversible according to the needs of a user.」
(翻訳)
「本発明は、ボトムパネルと複数のサイドパネルとを含む、携帯可能で可逆的に折り畳み可能な構造体を提供する。サイドパネルの各々は、各フレームが展開位置と巻き戻し位置との間で折り畳み可能な少なくとも1つのフレームに取り付けられた布材を含む。少なくとも2つのサイドパネルは、ボトムパネルの対向する側辺にヒンジ結合されている。少なくとも1つの着脱可能なサイドパネルが、ボトムパネルにさらに取り付けられ、対向するサイドパネルの間の位置にある。着脱式サイドパネルとボトムパネルとの間の接続は、ユーザーによってリバーシブルに着脱可能である。着脱式サイドパネルと対向するサイドパネルの一方との間の接続も、ユーザーのニーズに応じてリバーシブルである。」
(c)第3欄3~6行
「Referring first to FIG. 1A to 1E, one embodiment of the present invention contains two opposing side panels 22 and 24 that are connected theretogether by a rectangular shaped bottom fabric 26. 」
(翻訳)
「図1A~図1Eを参照すると、本発明の一実施形態は、長方形状のボトムパネル26によって互いに接続されている2つの対向するサイドパネル22及び24を含む。」
(d)第3欄14~21行
「The two side panels 22 and 24 are sewn together on opposing sides of a rectangular shaped bottom panel. Since the loops are rigid, the direction of movement for the two side panels relative to the bottom panel is typically a rotational movement about an axis defined by the bottom side of each side panel in the direction as shown by the arrow and is hereinafter referred to as a hinged connection.」
(翻訳)
「2つのサイドパネル22、24は、長方形状のボトムパネルの対向する辺に縫い合わされている。ループが剛強であるから、ボトムパネルに対する2つのサイドパネルの移動方向は、典型的には、各サイドパネルの底辺によって定義される軸を中心に、矢印で示すような方向に回転移動し、以下、ヒンジ接続と称する。」
(e)第3欄29~43行
「In this embodiment two long half zippers 28 and 30 are provided with one half sewn on either side of side panel 24 across bottom panel 26 and all the way along the sides 22d and 22b of the side panels 22 and 24 respectively. In greater detail as shown in FIGS. 1A and 1B, the half-zipper 30 starts from a corner fabric flap 24a of frame 24 and extend along the side 24b of panel 24 down to one end 26b of bottom panel 26 along the side 22b of panel 22 and ends with attachment to a fabric flap 22a that extends from the corner of side panel 22. Similarly, half-zipper 28 starts from a corner fabric flap 22c of frame 22 and extend along the side 22d of panel 22 down to the other end 26c of the bottom panel 26 along the side 24d of panel 24 and ends with attachment to a fabric flap 24c that extends from the comer of side panel 24.」
(翻訳)
「この実施形態では、2つの長いハーフジッパー28、30は、一方のハーフジッパーがサイドパネル24の一方の側部からボトムパネル26をまたぎ縫い付けられ、サイドパネル22とサイドパネル24のそれぞれの側辺22d、22bに至るようにして、設けられている。図1A及び1Bにより詳細に示すように、ハーフジッパー30は、フレーム24のコーナー織物フラップ24aから出発し、パネル24の側面24bに沿い、ボトムパネル26の一端部26bへ下がり、パネル22の側面22bに沿って延び、サイドパネル22の隅から延在する織物フラップ22aへ取り付けられると終了する。同様に、ハーフジッパー28は、フレーム22のコーナー織物フラップ22cから出発し、パネル22の側面22dに沿い、ボトムパネル26の他端部26cへ下がり、パネル24の側面24dに沿って延び、サイドパネル24の隅から延在する織物フラップ24cへ取り付けられると終了する。」
(f)第3欄44~49行
「End panels 32 and 34 as shown in FIG. 1B contains the other half-zipper 32a and 34a respectively that are adapted for complementary zipping with half-zippers 28 and 30 respectively. As shown in FIG. 1C, end panel 34 contains zipper 34a that allows the panel to be attached to flap 24a and side 24b of side panel 24.」
(翻訳)
「図1Bに示されるエンドパネル32および34は、それぞれハーフジッパー28および30との相補的なジッピングに適合された他のハーフジッパー32aおよび34aを含む。図1Cに示すように、エンドパネル34は、サイドパネル24のフラップ24a及びサイド24bにパネルを取り付けることを可能にするジッパー34aを含む。」
(g)第3欄51~55行
「The zipper 34a finally zip up from an extension flap 22c that extends from the upper top corner of side panel 22. Once the side panels are attached, a rectangularly shaped open structure is defined as shown in FIG. 1D.」
(翻訳)
「ジッパー34aは、最終的に、サイドパネル22の上部の角から延びる延長フラップ22cからジッパーアップする。サイドパネルが取り付けられると、図1Dに示されるように長方形状の開放構造が画定される。」
(h)第3欄60~62行
「In this embodiment, side panels 22 and 24 each consists of two loop frames that are shown as 40a to 40d are shown in FIGS. 1A and 1D.」
(翻訳)
「この実施の形態では、40a~40dに示す2個のループフレームからなる側部パネル22及び24は、図1A及び1Dに示されている。」
(i)第4欄3~7行
「Since the end panel 32 and 34 are completely detachable, they may also be put on top of these stacks of frames such that all the frames may now be twisted together to from concentric loops simultaneously for ease of storage.」
(翻訳)
「エンドパネル32および34は、完全に取り外し可能なため、これらのスタックフレームの上部に設置することもでき、全てのフレームについて、保存の容易さのために同時に同心ループを形成するために一緒に撚ることができる。」
(j)第5欄2~6行
「Although zippers are used in the examples and is the preferred means for attachment of the end panels to the bottom panel and the side panels, it is clear that other means of attachment, such as simple strings and lengths of fabric may be used to tie the side panels together.」
(翻訳)
「実施例ではジッパーが使用され、エンドパネルをボトムパネル及びサイドパネルに取り付けるための好ましい手段であるが、単純な紐や長さをもつ布などの他の取付手段を使用してサイドパネルを結び付けてもよいことは明らかである。」
(k)第5欄12~22行
「In addition to the completely detachable end panels as described above, it is also possible for the end panel to be detachable from the bottom panel and one of the side panel, while hingedly connected to the other side panel. This specific embodiment would not conveniently allow for changeability of the end panels, but would still allow the side panel to assume various lengths and shapes, since each end panel can still be folded together with the connected side panel. This can easily be done by changing to a shorter zipper and permanently sewing one side of the end panel to one side of a side panel.」
(翻訳)
「上記のような完全に着脱可能なエンドパネルに加えて、エンドパネルが、ボトムパネルおよび一方のサイドパネルから着脱可能であり、他方のサイドパネルにヒンジ結合されていることも可能である。この具体的な実施形態は、都合のよいエンドパネルの変更まで許容するものではないが、各エンドパネルが依然として連結されたサイドパネルと一緒に折り畳むことができるので、サイドパネルが様々な長さおよび形状を取ることを可能にするであろう。これは、短いジッパーに変更し、エンドパネルの一辺をサイドパネルの一辺に永久的に縫い付けることによって容易に行うことができる。」
(l)図1A~図1Dは以下のとおり。
図1A
「
[図:0001411200000001.jpg]
」
図1B
「
[図:0001411200000002.jpg]
」
図1C
「
[図:0001411200000003.jpg]
」
図1D
「
[図:0001411200000004.jpg]
」
b 図面から看取できる事項
(a)上記a(b)、(h)、及び(i)の記載を踏まえると、上記a(l)の図1A~図1Dから、サイドパネル22、24、及びエンドパネル32、34に含まれる布材に、角部が湾曲した略矩形状のループフレームが設けられることが看取できる。
(b)上記a(l)の図1Dから、サイドパネル22、24及びエンドパネル32、34により筒状周壁部が形成されることが看取できる。
(c)上記a(l)の図1Bから、エンドパネル34の中央部に上下方向に伸びるスリットが形成されていることが看取できる。
(d)上記a(g)の記載を踏まえると、上記a(l)の図1A及び図1Cから、サイドパネル22の上部の角から延びる延長フラップ22a、22cは、サイドパネル22、24と、エンドパネル32、34との互いに隣接する側縁の上端部に存在する空隙を閉塞するものであり、また、サイドパネル22の下部の角から延び、ボトムパネル26の角の部分に接続する部分は、サイドパネル22、24と、エンドパネル32、34との互いに隣接する側縁の下端部に存在する空隙を閉塞するものであることが看取できる。
c 引用文献1に記載された発明
上記a及びbから、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
<引用発明1>
「角部が湾曲した略矩形状であり、撚ることができるループフレームが設けられた布材を含む、サイドパネル22、24、及びエンドパネル32、34を有し、(上記a(b)、(i)、b(a))
サイドパネル22、24は、長方形状のボトムパネルの対向する辺に縫い合わされており、(上記a(d))
2つの長いハーフジッパー28、30は、一方のハーフジッパーがサイドパネル24の一方の側部からボトムパネル26をまたぎ縫い付けられ、サイドパネル22とサイドパネル24のそれぞれの側辺22d、22bに至るようにして、設けられ、ハーフジッパー30は、フレーム24のコーナー織物フラップ24aから出発し、パネル24の側面24bに沿い、ボトムパネル26の一端部26bへ下がり、パネル22の側面22bに沿って延び、同様に、ハーフジッパー28は、フレーム22のコーナー織物フラップ22cから出発し、パネル22の側面22dに沿い、ボトムパネル26の他端部26cへ下がり、パネル24の側面24dに沿って延び、(上記a(e))
エンドパネル32および34は、それぞれハーフジッパー28および30との相補的なジッピングに適合された他のハーフジッパー32aおよび34aを含み、エンドパネル34は、サイドパネル24のフラップ24a及びサイド24bにパネルを取り付けることを可能にするジッパー34aを含み、(上記a(f))
サイドパネル22、24及びエンドパネル32、34により筒状周壁部が形成され、(上記b(b))
サイドパネル22の上部の角から延びる延長フラップ22a、22cは、サイドパネル22、24と、エンドパネル32、34との互いに隣接する側縁の上端部に存在する空隙を閉塞するものであり、また、サイドパネル22の下部の角から延び、ボトムパネル26の角の部分に接続する部分は、サイドパネル22、24と、エンドパネル32、34との互いに隣接する側縁の下端部に存在する空隙を閉塞するものであり、(上記b(d))
完全に着脱可能なエンドパネルに加えて、エンドパネルが、ボトムパネルおよび一方のサイドパネルから着脱可能であり、他方のサイドパネルにヒンジ結合されていることも可能であり、(上記a(k))
エンドパネル34の中央部に上下方向に伸びるスリットが形成され、(上記b(c))
ジッパーがエンドパネルをボトムパネル及びサイドパネルに取り付けるための好ましい手段であるが、単純な紐などの他の取付手段を使用してサイドパネルを結び付けてもよい、(上記a(j))
折り畳み可能なテント。(上記a(a))」
(イ)引用文献2
a 記載事項
引用文献2には、以下の記載がある。
(a)第1欄6~10行
「The present invention relates to collapsible structures, and in particular, to covers, shades and similar apparatus that can be used to cover or surround another object, and which may be twisted and folded to reduce the overall size of the assembly to facilitate convenient storage and use.」
(翻訳)
「本発明は、特に物体を覆うか又は囲むために使用することができ、アセンブリの全体サイズを減少させ、便利な保管及び使用を容易にする、折り畳み可能な構造、特にカバー、シェード、及びそれらと同様な装置に関するものである。」
(b)第4欄55~63行
「The structures in FIGS. 6A and 7 can be further modified by hingedly connecting all four panels together, while leaving one free unattached side in two of the panels. For example, the panels 82a, 84a, 82b, 84b in FIG. 6A can all be hingedly attached to each other, with each of the panels 82a and 84b having one free unattached side that has connectors 98 provided therealong for connecting the two panels 82a, 84b when necessary. This is illustrated in FIG. 6B, with the panels 82a, 84a, 82b, 84b covering an object 96b.」
(翻訳)
「図6A及び7の構造のさらなる改善例として、すべての4枚のパネルをヒンジ連結することによって構成し、そのうち2枚のパネルにおいて、1つの結合されていない自由な側辺(one free unattached side)を残したままにすることができる。例えば、図6Aのパネル82a、84a、82b、84bは、全て互いにヒンジ結合し、パネル82aおよび84bの各々は1つの結合されていない自由な側辺を有し、この自由な側辺には、それに沿って、これら2枚のパネル82a、84bを必要に応じて接続するためのコネクタ98を設けることができる。これは図6Bに示されており、オブジェクト96Bを覆うパネル82a、84a、82b、84bが設けられている。」
(c)図6A、6B及び7は以下のとおり。
図6A及び図7
「
[図:0001411200000005.jpg]
」
図6B
「
[図:0001411200000006.jpg]
」
b 引用技術事項2
上記aから、引用文献2には次の技術事項(以下「引用技術事項2」という。)が記載されているといえる。
<引用技術事項2>
「パネル82a、84a、82b、84bは、全て互いにヒンジ結合し、パネル82aおよび84bの各々は1つの結合されていない自由な側辺を有し、この自由な側辺には、それに沿って、これら2枚のパネル82a、84bを必要に応じて接続するためのコネクタ98を設け、4枚のパネルをヒンジ連結することによって構成した、(上記a(b))
折り畳み可能な構造。(上記a(a))」
(ウ)訂正後発明1
a 対比
訂正後発明1と引用発明1とを対比する。
(a)引用発明1の「布材」のうち「角部が湾曲した略矩形状であ」る「ループフレーム」に囲まれる部分は、訂正後発明1の「角部が湾曲した略矩形状可撓性幕」に相当し、引用発明1の「布材」の当該部分に「撚ることができるループフレームが設けられる」ことは、訂正後発明1の「略矩形状可撓性幕の外周縁に弾性に富んだ無端フレームが付設されて」いることに相当し、引用発明1の「サイドパネル22、24、及びエンドパネル32、34」は、訂正後発明1の「略矩形状壁面」に相当する。
(b)引用発明1の「エンドパネルが、」「他方のサイドパネルにヒンジ結合されている」ことは、訂正後発明1の「4枚の略矩形状壁面の内、」「他の」「側縁が相互に折畳み可能に」「連結される」ことに相当し、引用発明1の「エンドパネルが、」「一方のサイドパネルから着脱可能であ」ることは、訂正後発明1の「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁は、着脱可能な接合手段を介して接合される」ことに相当し、引用発明1の「サイドパネル22、24及びエンドパネル32、34により筒状周壁部が形成され」ることは、訂正後発明1の「前記4枚の略矩形状壁面でもって筒状周壁部が構成され」ることに相当するから、訂正後発明1と引用発明1とは、「4枚の略矩形状壁面の内、」「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の」「側縁が相互に折畳み可能に」「連結されるとともに、」「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁は、着脱可能な接合手段を介して接合されることにより、前記4枚の略矩形状壁面でもって筒状周壁部が構成され」る点で一致する。
(c)テントに出入口が設けられることは当然であるから、引用発明1の「エンドパネル34の中央部に」「形成され」た「上下方向に伸びるスリット」が出入口であることは明らかであることを踏まえると、引用発明1の「エンドパネル34」に「スリット」が形成されることは、訂正後発明1の「前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面の内、いずれか一方の略矩形状壁面には開閉自在な扉部が形成され」ることに相当する。
(d)引用発明1において、「2つの長いハーフジッパー28、30は、一方のハーフジッパーがサイドパネル24の一方の側部からボトムパネル26をまたぎ縫い付けられ、サイドパネル22とサイドパネル24のそれぞれの側辺22d、22bに至るようにして、設けられ」、「エンドパネル32および34は、それぞれハーフジッパー28および30との相補的なジッピングに適合された他のハーフジッパー32aおよび34aを含」むことから、引用発明1の「サイドパネル22、24」と「エンドパネル32および34」とは、「ジッパー」によって、着脱可能に設けられるものであり、「ジッパー」を開けた際に「サイドパネル22、24」と「エンドパネル32および34」との間に開口部が形成されることは明らかであるところ、この開口部は、訂正後発明1の「前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面により開閉自在な両壁面開口部」に相当する。
(e)引用発明1の「サイドパネル22、24と、エンドパネル32、34との互いに隣接する側縁の上端部に存在する空隙を閉塞するものであ」る「サイドパネル22の上部の角から延びる延長フラップ22a、22c」は、訂正後発明1の「前記接合手段を介して接合される2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁の上」「端部に存在する空隙を閉塞する上閉塞面」に相当し、引用発明1の「サイドパネル22、24と、エンドパネル32、34との互いに隣接する側縁の下端部に存在する空隙を閉塞するものであ」る「サイドパネル22の下部の角から延び、ボトムパネル26の角の部分に接続する部分」は、訂正後発明1の「前記接合手段を介して接合される2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁の」「下端部に存在する空隙を閉塞する」「下閉塞面」に相当する。
(f)引用発明1の「折り畳み可能なテント」は、訂正後発明1の「折畳み式テント」に相当する。
以上より、訂正後発明1と引用発明1とは、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「角部が湾曲した略矩形状可撓性幕の外周縁に弾性に富んだ無端フレームが付設されて1枚の略矩形状壁面が形成され、
4枚の略矩形状壁面の内、相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の側縁が相互に折畳み可能に連結されるとともに、
前記相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁は、着脱可能な接合手段を介して接合されることにより、前記4枚の略矩形状壁面で筒状周壁部が構成され、
前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面の内、いずれか一方の略矩形状壁面には開閉自在な扉部が形成され、
前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面により開閉自在な両壁面開口部が設けられ、
前記接合手段を介して接合される2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁の上下端部に存在する空隙を閉塞する上閉塞面および下閉塞面を具備する
折畳み式テント。」
<相違点1>
訂正後発明1において、「4枚の略矩形状壁面の内、1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の3組の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結されるとともに、前記1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁は、着脱可能な接合手段を介して接合される」のに対して、引用発明1は、「エンドパネルが、ボトムパネルおよび一方のサイドパネルから着脱可能であり、他方のサイドパネルにヒンジ結合されている」ものであって、エンドパネルの少なくとも一方の側縁はサイドパネルに対して着脱可能であることからみて、ヒンジにより相互に直接結合されるサイドパネル及びエンドパネルの枚数は2枚あるいは3枚となり、これらのいずれの場合においても「相互に折畳み可能に」「連結される」「側縁」の組数は2組であり、「着脱可能な接合手段を介して接合される」「側縁」の組数は2組である点。
<相違点2>
訂正後発明1は「前記接合手段を介して接合される2枚の略矩形状壁面のうち、前記接合手段を外すことにより外方に向かって開放可能な略矩形状壁面の下縁には、着脱可能な接合手段が存在せず」と特定されるのに対して、引用発明1では、「2つの長いハーフジッパー28、30が」「ボトムパネル26の一端部26b」及び「ボトムパネル26の他端部26c」「に沿って延び」ており、「エンドパネル32および34は、それぞれハーフジッパー28および30との相補的なジッピングに適合された他のハーフジッパー32aおよび34aを含」むことから、エンドパネル32および34の下縁には、ボトムパネル26の一端部26b及びボトムパネル26の他端部26cに形成されるハーフジッパー28および30とのジッピングに適合された他のハーフジッパー32aおよび34aが存在している点。また、引用発明1の「エンドパネルをボトムパネル及びサイドパネルに取り付けるための」「手段」として、「単純な紐などの他の取付手段を使用してサイドパネルを結び付け」る構成においても、エンドパネルの側縁だけでなく下縁にも紐などの他の取付手段が設けられる点。
<相違点3>
訂正後発明1は「前記上閉塞面は左右に分割された構成で、一方は前記扉部が形成された略矩形状壁面の上方に連結され、他方は前記扉部が形成された略矩形壁面と接合手段を介して接合される略矩形状壁面の上方に連結され、互いが着脱可能な接合手段を介して接合される2つの分割上閉塞面から成り、
前記下閉塞面は左右に分割された構成で、一方は前記扉部が形成された略矩形状壁面の下方に連結され、他方は前記扉部が形成された略矩形壁面と接合手段を介して接合される略矩形状壁面の下方に連結され、互いが着脱可能な接合手段を介して接合される2つの分割下閉塞面から成る」のに対して、引用発明1では、そのような特定がなされていない点。
b 判断
上記相違点について検討する。
(a)相違点1
引用技術事項2の「パネル82a、84a、82b、84bは、全て互いにヒンジ結合し、パネル82aおよび84bの各々は1つの結合されていない自由な側辺を有」することは、訂正後発明1の「4枚の略矩形状壁面の内、1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の3組の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結される」ことに相当し、引用技術事項2の「この自由な側辺には、それに沿って、これら2枚のパネル82a、84bを必要に応じて接続するためのコネクタ98を設け」ることは、訂正後発明1の「前記1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁は、着脱可能な接合手段を介して接合される」ことに相当する。
ここで、引用技術事項2を引用発明1に適用し、サイドパネルとエンドパネルとの結合部分について、ヒンジ結合される部分、すなわち「相互に折畳み可能に」「連結される」「側縁」の組数を3組とし、「着脱可能な接合手段を介して接合される」「側縁」の組数を1組とする場合を検討する。この場合、引用発明1の一対のサイドパネルがボトムパネルの対向する辺に縫い合わされた構成、すなわち、一対のサイドパネルがボトムパネルの対向する辺にヒンジ結合された構成が前提となる。そうすると、この前提構成においてサイドパネルとエンドパネルとの結合部分の3組をヒンジ結合する場合、一対のサイドパネルは、サイドパネルの底面側で互いにボトムパネルにより着脱不能にヒンジ結合されるとともに、サイドパネルの一側方で互いにエンドパネルにより着脱不能にヒンジ結合される構成となり、この構成では折畳みが不可能となることが明らかである。しかしながら、引用発明1は「折畳み可能なテント」であるから、引用発明1を折畳み不可能にする引用技術事項2の適用には、阻害要因があるといえる。
また、仮に引用発明1に引用技術事項2を適用できたとしても、折畳みが不可能な構成では、本件訂正後発明1の「他の3組の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結される」構成にはなり得ないし、折畳み不可能なテントが、本件訂正後発明1の「折畳み式テント」であるともいえない。
よって、相違点1に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
(b)相違点2
引用文献1には、ハーフジッパー28、30及び他のハーフジッパー32a、34aを、エンドパネルの下縁に設けないようにすることについて、記載も示唆もされていない。また、側縁だけでなく下縁に設けられるジッパーに代えて、紐などの他の取付手段を採用する場合においても、紐などの他の取付手段を側縁にのみ設けて、下縁に設けないようにすることについては、記載も示唆もされていない。
また、引用文献2にも相違点2に係る構成について、記載も示唆もされていない。
よって、相違点2に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
(c)相違点3
引用文献1及び2には、相違点3に係る構成について、記載も示唆もされていない。
よって、相違点3に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
c 小括
以上のとおり、訂正後発明1は、引用発明1ではなく、また、引用発明1及び引用技術事項2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)訂正後発明2~4
訂正後発明2~4は、訂正後発明1に構成を付加したものであるところ、上記(ウ)のとおり、訂正後発明1は、引用発明1ではなく、また、引用発明1及び引用技術事項2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同様に訂正後発明2~4も、引用発明1ではなく、また、引用発明1及び引用技術事項2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ サポート要件
訂正後発明1の「4枚の略矩形状壁面の内、1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の3組の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結される」との構成における「除く」との用語の解釈に基づき、当該構成によって特定される事項について検討する。
まず、上記「4枚の略矩形状壁面」は、これらによって訂正後発明1の「筒状周壁部が構成され」るものであるから、当該「4枚の略矩形状壁面」同士の間には、4組の側縁が備わると解することができる。
そうしたところ、「除く」との文言が、「加えない。除外する。別にする。」ことを意味する(広辞苑 第七版)ことからみて、上記4組の側縁のうち1組が「1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」であれば、それ以外の残りの側縁が「除く他の3組の側縁」として特定されることは明らかである。
したがって、「4枚の略矩形状壁面の内、1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の3組の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結される」との構成は、「4枚の略矩形状壁面」のうち、「1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」があり、これを「除外し」たものである、「除く他の3組の側縁」が「相互に折畳み可能に順次連続して連結される」ことを特定するものであると認められる。
これに対して、本件特許明細書の段落【0021】には、「4枚の壁面2、3、4、5の各両側縁2a、2b、3a、3b、4a、4b、5a、5bの内、側縁3aと4b、4aと5b、5aと2bとを相互に折畳み可能に連結し、側縁2aと3bとを後述する接合手段23で接合することで筒状周壁部1が構成されている。」との記載があり、段落【0022】には、「この筒状周壁部1における正壁面2の右側縁2aと右壁面3の左側縁3bには、接合・分離が可能な面ファスナーのような接合手段23が設けられている。」との記載がある。これらの記載からすれば、訂正後発明1の「互いに対応する側縁」には、「接合手段23で接合する」「側縁2aと3b」が対応する一方、この「側縁2aと3b」とは異なる側縁である「側縁3aと4b、4aと5b、5aと2b」が「相互に折畳み可能に連結」するものである。したがって、上記の認定は、本件特許明細書のこれらの記載とも整合するものであるから、訂正後発明1の上記構成は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
なお、上記特許権侵害差止請求事件において、被告は「「除く」という語句の意義からすると、「互いに対応する側縁」は「相互に折畳み可能に順次連続して連結される」構成を含まないと解釈されるべきである。」とした上で、「本件明細書には、「互いに対応する側縁」が「相互に折畳み可能に順次連続して連結される」構成を含まない旨の記載も示唆もない」と主張している(上記特許権侵害差止請求事件の判決20頁16行~22行)。
しかしながら、「除く」との用語の解釈は上記のとおりであって、訂正後発明1の上記構成は、「4枚の略矩形状壁面の内、1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の3組の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結される」との構成は、「4枚の略矩形状壁面」のうち、「1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」があり、これを「除外し」たものである、「除く他の3組の側縁」が「相互に折畳み可能に順次連続して連結される」ことを特定するものであるから、この主張は採用できない。
エ 補正要件
平成26年7月9日付け手続補正書により補正された「4枚の略矩形状壁面の内、相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結されるとともに、」(下線は補正箇所を示す。)との構成について、出願当初の明細書の段落【0021】及び【0022】には、上記ウで摘記した事項と同一の記載があり、これらの記載からすれば、上記ウと同様に、「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」には、「接合手段23で接合する」「側縁2aと3b」が対応する一方、この「側縁2aと3b」とは異なる側縁である「側縁3aと4b、4aと5b、5aと2b」が「相互に折畳み可能に連結」するものである。
そして、「除く」の解釈についても上記ウで述べたとおりである。
よって、訂正後発明1は、出願当初の明細書、特許請求の範囲、及び図面に記載されたものであり、新たな技術的事項を導入するものではない。
なお、上記特許権侵害差止請求事件において、被告は「上記補正は出願当初の特許請求の範囲にない「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁が折り畳み可能に順次連続して連結しない」という新たな技術的事項を導入するものであ」ると主張している(上記特許権侵害差止請求事件の判決20頁3行~5行)。
しかしながら、補正された上記構成の認定は、以上に説明したとおりであるから、補正された上記構成は出願当初の明細書、特許請求の範囲、及び図面に記載されたものであり、新たな技術的事項を導入するものではなく、上記主張は採用できない。
オ 実施可能要件及び明確性要件
訂正後発明1の「4枚の略矩形状壁面の内、1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の3組の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結されるとともに、
前記1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁は、着脱可能な接合手段を介して接合される」との構成における、
「連続して連結」と「接合」との用語について、上記特許権侵害差止請求事件において、被告は「「連続して連結」(構成要件B)と「接合」(構成要件C)は、異なる意味を有することになるが、各側縁はどの壁面との関係を考慮するかによって、「対応する側縁」にも「他の側縁」にもなり得るのだから、互いに両立し得ない構成(「連続して連結」と「接合」)を同時に満たす必要があることになる。」と主張している(上記特許権侵害差止請求事件の判決21頁6行~10行)。
しかしながら、訂正後発明1の上記構成は、「1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」と、「1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の3組の側縁」が、どの側縁にもなり得ることを特定するものではなく、上記ウで説明したとおり、本件特許明細書の記載も考慮すれば、「4枚の略矩形状壁面」が有する「側縁」から、「着脱可能な接合手段を介して接合される」ことになる「1組の相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」を除外又は別にした「他の3組の側縁」が、「相互に折り畳み可能に順次連続して連結される」ことを規定するものであると解することができる。
したがって、各側縁はどの側縁にもなり得るものではなく、互いに両立し得ない構成(「連続して連結」と「接合」)を同時に満たす必要はない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が訂正後発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
また、上記特許権侵害差止請求事件において、被告は同様の理由から明確性違反となることを主張しているが(上記特許権侵害差止請求事件の判決21頁24行~26行)、以上のとおり、訂正後発明1の上記構成は、明確に理解することができるものである。
カ 小括
以上のとおり、訂正後発明1~4が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は発見しない。
したがって、訂正後発明1~4についての訂正事項1及び2は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
3 訂正事項3
訂正事項3は、訂正事項1及び2に係る訂正に伴って、訂正前の明細書の段落【0009】の記載を、訂正後の請求項1の記載に整合させる訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかであるから、特許法第126条第5項及び第6項に適合する。
4 訂正事項4
明細書の段落【0032】に記載された「4枚の壁面2、3、4、5の各両側縁2a、2b、3a、3b、4a、4b、5a、5bを相互に折畳み可能に接合し、」との記載は、段落【0021】の「4枚の壁面2、3、4、5の各両側縁2a、2b、3a、3b、4a、4b、5a、5bの内、側縁3aと4b、4aと5b、5aと2bとを相互に折畳み可能に連結し、側縁2aと3bとを後述する接合手段23で接合することで筒状周壁部1が構成されている。」との記載や、図7及び8等の記載からすると、誤記であることが明らかであるから、訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
そして、当該訂正事項4は、上記のとおり誤記の訂正を目的としたものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかであり、よって、特許法第126条第5項、第6項、及び第7項に適合する。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号、第2号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第5項、第6項及び第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-390124