特許訂正審判
2020-390042
主軸装置用アンギュラ玉軸受
- 審判番号
- 2020-390042
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2009-017771
- 登録番号
- 特許第5347538号(P5347538)
- 請求日
- 2020年05月29日
- 審決日
- 2020年08月17日
- 公報発行日
- 2020年11月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】日本精工 株式会社
- 【請求人代理人】松山 美奈子
- 審判長/審判官
- 審判長 平田 信勝
- 審判官 田村 嘉章
- 審判官 内田 博之
- 分類
- P141 .851-Y (F16C) / P141 .853-Y (F16C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項3号特許法126条5項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5347538号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5347538号の明細書、特許請求の範囲及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり訂正することを認める。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第5347538号は、平成21年1月29日(優先権主張 平成20年2月12日)の出願であって、平成25年8月30日にその特許権の設定登録がなされたものである。
そして、令和2年5月29日に本件訂正審判の請求がなされた。
2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5347538号の明細書、特許請求の範囲及び図面を、本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。
3 訂正の内容
本件訂正審判に係る訂正の内容は、次のとおりである。(下線部は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の【請求項1】を以下のように訂正する。なお、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2及び3においても同様に訂正する。
「【請求項1】
外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に接触角を持って配置される複数の玉と、
前記複数の玉を略等間隔で保持する外輪案内の保持器と、
を有し、工具を取り付け可能な回転軸をハウジングに対して回転自在に支持するとともに、オイル潤滑によって潤滑される主軸装置用アンギュラ玉軸受であって、
前記軸受の内部空間が、内輪間座の鍔部と外輪間座の内周面とで構成されるラビリンスシールによって、密封構造とされ、
前記外輪には、径方向に貫通形成される給油穴と、径方向に貫通形成され、且つ、カウンターボア側の内周面に開口する排油穴とが設けられ、
前記給油穴及び前記排油穴は、前記保持器が案内されていない前記外輪の内周面に開口し、
前記排油穴の開口は、その軸方向内端が前記外輪軌道面と前記保持器のポケットの軸方向内端面との間に位置し、且つ、その軸方向外端が前記保持器の軸方向外端面よりも軸方向内側に位置するように、前記外輪軌道面の近傍に配置され、
該排油穴内には、軸受外部からの吸引力によって、負圧が作用することを特徴とする主軸装置用アンギュラ玉軸受。」
(2)訂正事項2
明細書の段落【0008】の
「(1) 外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に接触角を持って配置される複数の玉と、
前記複数の玉を略等間隔で保持する外輪案内の保持器と、
を有し、工具を取り付け可能な回転軸をハウジングに対して回転自在に支持するとともに、オイル潤滑によって潤滑される主軸装置用アンギュラ玉軸受であって、
前記軸受の内部空間が密封構造とされ、
前記外輪には、径方向に貫通形成される給油穴と、径方向に貫通形成され、且つ、カウンターボア側の内周面に開口する排油穴とが設けられ、
前記給油穴及び前記排油穴は、前記保持器が案内されていない前記外輪の内周面に開口し、
前記排油穴の開口は、その軸方向内端が前記外輪軌道面と前記保持器のポケットの軸方向内端面との間に位置し、且つ、その軸方向外端が前記保持器の軸方向外端面よりも軸方向内側に位置するように、前記外輪軌道面の近傍に配置され、
該排油穴内には、軸受外部からの吸引力によって、負圧が作用することを特徴とする主軸装置用アンギュラ玉軸受。」を
「(1) 外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に接触角を持って配置される複数の玉と、
前記複数の玉を略等間隔で保持する外輪案内の保持器と、
を有し、工具を取り付け可能な回転軸をハウジングに対して回転自在に支持するとともに、オイル潤滑によって潤滑される主軸装置用アンギュラ玉軸受であって、
前記軸受の内部空間が、内輪間座の鍔部と外輪間座の内周面とで構成されるラビリンスシールによって、密封構造とされ、
前記外輪には、径方向に貫通形成される給油穴と、径方向に貫通形成され、且つ、カウンターボア側の内周面に開口する排油穴とが設けられ、
前記給油穴及び前記排油穴は、前記保持器が案内されていない前記外輪の内周面に開口し、
前記排油穴の開口は、その軸方向内端が前記外輪軌道面と前記保持器のポケットの軸方向内端面との間に位置し、且つ、その軸方向外端が前記保持器の軸方向外端面よりも軸方向内側に位置するように、前記外輪軌道面の近傍に配置され、
該排油穴内には、軸受外部からの吸引力によって、負圧が作用することを特徴とする主軸装置用アンギュラ玉軸受。」に訂正する。
(3)訂正事項3
明細書の段落【0012】の【図2】、同【0013】、同【0046】、同【0048】及び同【0053】の「第1実施形態」を「第1参考形態」に訂正し、明細書の段落【0014】、同【0017】、同【0039】及び同【0045】の「本実施形態」を「本参考形態」に訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の段落【0012】の【図9】、同【0053】、同【0054】、同【0055】、同【0056】、同【0058】及び同【0059】の「本考案品」を「参考品」に訂正する。
(5)訂正事項5
図面【図9】及び【図11】の「考案品」を「参考品」に訂正する。
4 当審の判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1の訂正前の発明特定事項「軸受の内部空間が密封構造とされ」を「軸受の内部空間が、内輪間座の鍔部と外輪間座の内周面とで構成されるラビリンスシールによって、密封構造とされ」と密封構造の構成を具体的に特定しさらに限定するものであるため、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものといえる。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正か否か
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1の発明特定事項の上記密封構造の構成を具体的に特定しさらに限定するものであるところ、当該密封構造の構成に係る説明として、訂正前の明細書の段落【0047】に「本実施形態のアンギュラ玉軸受270は、一対のシール部材を設ける代わりに、軸受270の両側側方に設けられた各内輪間座42の鍔部42a,42aの外周面と各外輪間座40の内周面とでラビリンスシールを構成し、軸受270の内部空間を密封している。」、及び、同【0048】に「軸受270の内部空間が各内輪間座42の鍔部42aと各外輪間座40とのラビリンスシールによって密封される」と記載されており、軸受の内部空間は、内輪間座の鍔部と外輪間座の内周面とで構成されるラビリンスシールによって密封構造とされることが開示されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を承けることができるか否か
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1の発明特定事項の密封構造の構成を具体的に特定しさらに限定するものであるから、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないとする理由は見いだせない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正前の明細書の段落【0008】には、訂正前の特許請求の範囲の記載に対応する記載がなされていたところ、訂正事項1により、特許請求の範囲の記載が訂正されたことに伴い、明細書の記載が訂正後の特許請求の範囲の記載と一致せず、不明瞭な記載となる。
訂正事項2は、明細書の記載を訂正後の特許請求の範囲と整合させるための訂正であるので、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものといえる。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正か否か
訂正事項2は、明細書の段落【0008】の記載を、訂正事項1により訂正された特許請求の範囲に対応する記載とするものであるから、訂正事項1と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正前の明細書に記載された「第1実施形態」は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1の実施形態であるところ、訂正事項1により請求項1の「軸受の内部空間が密封構造とされ」を「軸受の内部空間が、内輪間座の鍔部と外輪間座の内周面とで構成されるラビリンスシールによって、密封構造とされ」と密封構造の構成を具体的な態様に特定したことにより、もはや特許請求の範囲に含まれない、外輪の軸方向両側に取り付けられている一対のシール部材によって密封する構造の態様が、実施形態として記載されていることになり、発明の範囲を不明確にしている。
訂正事項3は、訂正後の特許請求の範囲に含まれない訂正前の明細書中の「第1実施形態」及び第1実施形態に対応する「本実施形態」を、「第1参考形態」及び「参考形態」とするものであり、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものといえる。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正か否か
訂正事項3は、訂正事項1による訂正後の特許請求の範囲に含まれなくなる形態を参考形態と訂正するものにすぎず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正前の明細書には、訂正前の特許請求の範囲の請求項1の実施形態である【図5】及び【図6】の外輪の軸方向両側に取り付けられている一対のシール部材によって密封する構造の態様の例が「本考案品」として記載されていたところ、訂正事項1により請求項1の「軸受の内部空間が密封構造とされ」を「軸受の内部空間が、内輪間座の鍔部と外輪間座の内周面とで構成されるラビリンスシールによって、密封構造とされ」と密封構造の構成を具体的な態様に特定したことに伴い、【図5】及び【図6】の例は訂正後の特許請求の範囲に含まれなくなるため、当該「本考案品」との記載は発明の範囲を不明確にしている。
訂正事項4は、訂正後の特許請求の範囲に含まれない訂正前の明細書中の「本考案品」を、「参考品」とするものであり、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものといえる。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正か否か
訂正事項4は、訂正後の特許請求の範囲に含まれなくなる例を参考品に訂正するものにすぎず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
したがって、訂正事項4は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正前の図面【図9】及び【図11】には、訂正前の特許請求の範囲の請求項1の実施形態である【図5】及び【図6】の例が「本考案品」として記載されていたところ、訂正事項1により請求項1の「軸受の内部空間が密封構造とされ」を「軸受の内部空間が、内輪間座の鍔部と外輪間座の内周面とで構成されるラビリンスシールによって、密封構造とされ」と密封構造の構成を具体的な態様に特定したことに伴い、【図5】及び【図6】の例が訂正後の特許請求の範囲に含まれなくなるため、当該図面の「本考案品」との記載は発明の範囲を不明確にしている。
訂正事項5は、訂正後の特許請求の範囲に含まれない訂正前の図面中の「本考案品」を、「参考品」とするものであり、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものといえる。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正か否か
訂正事項5は、訂正後の特許請求の範囲に含まれなくなる例を参考品に訂正するものにすぎず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
したがって、訂正事項5は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
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