特許訂正審判
2021-390092
ころ軸受及びその製造方法
- 審判番号
- 2021-390092
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2008-029904
- 登録番号
- 5233305
- 請求日
- 2021年06月24日
- 審決日
- 2021年10月22日
- 公報発行日
- 2022年02月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】日本精工 株式会社
- 【請求人代理人】松山 美奈子
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 井上 猛
- 審判官 祢屋 健太郎
- 分類
- P141 .841-Y (C22C) / P141 .851-Y (C22C) / P141 .853-Y (C22C) / P141 .854-Y (C22C) / P141 .855-Y (C22C) / P141 .856-Y (C22C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第5233305号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第5233305号の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第5233305号(以下、「本件特許」という。)は、平成20年2月12日の出願である特願2008-29904号の請求項1~2に係る発明について、平成25年4月5日に特許権の設定登録がされ、平成25年7月10日に特許掲載公報が発行されたものである。
そして、令和3年6月24日に本件訂正審判が請求されたものである。
第2 請求の趣旨、及び訂正の内容
1 請求の趣旨
結論と同旨。
2 訂正の内容
(1)訂正事項1
本件特許請求の範囲の請求項1の「1.006×X≦Y≦1.050×X」との記載を「1.006×X≦Y≦1.036×X」に訂正し、「300~900MPa」との記載を「300~810MPa」に訂正する。
(2)訂正事項2
本件特許請求の範囲の請求項2の「バレル研磨による仕上加工とピーニング加工とのうちの少なくとも一方の加工を上記ころ用中間素材に施す」との記載を「バレル研磨による仕上加工を上記ころ用中間素材に施す」に訂正し、「1.006×X≦Y≦1.050×X」との記載を「1.006×X≦Y≦1.036×X」に訂正し、「300~900MPa」との記載を「300~810MPa」に訂正する。
(3)訂正事項3
本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)【0010】の「1.006×X≦Y≦1.050×X」との記載を「1.006×X≦Y≦1.036×X」に訂正し、「300~900MPa」との記載を「300~810MPa」に訂正する。
(4)訂正事項4
本件明細書【0011】の「バレル研磨による仕上加工とピーニング加工とのうちの少なくとも一方の加工を上記ころ用中間素材に施す」との記載を「バレル研磨による仕上加工を上記ころ用中間素材に施す」に訂正し、「1.006×X≦Y≦1.050×X」との記載を「1.006×X≦Y≦1.036×X」に訂正し、「300~900MPa」との記載を「300~810MPa」に訂正する。
(5)訂正事項5
本件明細書【0012】の「表面の硬さを芯部の硬さの1.006~1.050倍程度に抑えても、この表面の硬さを十分に大きく(775~871Hvに)できる。又、ピーリングの発生を抑える為の圧縮残留応力の値を、表面から50μmの深さでの最大値で300~900MPaの範囲に抑えている。従って、異物混入潤滑環境下での転がり疲れ寿命の確保を図る為に必要な、上記表面の硬さ(775~871Hv)及び圧縮残留応力(最大値で300~900MPa)を、バレル研磨又は軽いピーニング加工により得るとしても、加工誘起マルテンサイト変態による残留オーステナイト量の減少を抑えられる。」との記載を「表面の硬さを芯部の硬さの1.006~1.036倍程度に抑えても、この表面の硬さを十分に大きく(775~860Hvに)できる。又、ピーリングの発生を抑える為の圧縮残留応力の値を、表面から50μmの深さでの最大値で300~810MPaの範囲に抑えている。従って、異物混入潤滑環境下での転がり疲れ寿命の確保を図る為に必要な、上記表面の硬さ(775~860Hv)及び圧縮残留応力(最大値で300~810MPa)を、バレル研磨加工により得るとしても、加工誘起マルテンサイト変態による残留オーステナイト量の減少を抑えられる。」と訂正する。
(6)訂正事項6
本件明細書【0014】の「実施例1~11」及び「比較例1~8」との記載を「実施例1~8」及び「比較例1~8及び参考例9~11」とそれぞれ訂正する。
(7)訂正事項7
本件明細書【0015】の「実施例9」、「実施例10~11」及び「実施例10」との記載を「参考例9」、「参考例10~11」及び「参考例10」とそれぞれ訂正する。
(8)訂正事項8
本件明細書【0019】の表1の「実施例9」、「実施例10」及び「実施例11」を「参考例9」、「参考例10」及び「参考例11」とそれぞれ訂正する。
(9)訂正事項9
本件明細書【0020】の「実施例1~11」との記載を「実施例1~8及び参考例9~11」と訂正する。
第3 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正のうち、
(1a)各ころの芯部の硬さのビッカース硬度での値Xと各ころの表面の硬さのビッカース硬度での値Yとの関係式について、訂正前の「1.006×X≦Y≦1.050×X」から、「1.006×X≦Y≦1.036×X」とする訂正、
(1b)各ころの表面から50μmの深さでの圧縮残留応力の最大値について、訂正前の「300~900MPa」から、「300~810MPa」とする訂正
は、いずれも、訂正前の各発明特定事項の数値範囲を、その範囲内でさらに狭い範囲に限定するものであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2)新規事項追加の有無について
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)には次の記載がある(当審注;下線は、当審が付与したものである。以下同様。)。
「【請求項1】
互いに対向する面をそれぞれ軌道面として互いに同心に配置された1対の軌道輪と、これら両軌道面同士の間に転動自在に設けられた複数本のころとを備えたころ軸受に於いて、これら各ころが、JISに規定した高炭素クロム軸受鋼2種製で、且つ、これら各ころの芯部の硬さの値Xが、ビッカース硬度で770~830Hvであり、これら各ころの表面の硬さのビッカース硬度での値をYとした場合に、1.006×X≦Y≦1.050×Xを満たすと共に、上記各ころの芯部の残留オーステナイト量が15~25容量%であり、且つ、これら各ころの表面から50μmの深さでの圧縮残留応力の最大値が300~900MPaである事を特徴とするころ軸受。」
「【実施例1】
【0014】
本発明の効果を確認する為に行った実験に就いて説明する。この実験では、ころの材料としてJIS G 4805に規定した高炭素クロム軸受鋼2種(SUJ2)を使用し、熱処理条件、及び、表面仕上の条件を後述する表1に示す様に各種異ならせ、各部の硬さ、芯部の残留オーステナイト量、表面から50μmの深さでの圧縮残留応力の最大値を各種異ならせた、本発明に属するもの11種類(実施例1~11)と、本発明から外れるもの8種類(比較例1~8)との、合計19種類の試料を作成した。そして、これら各試料を図2に示す様な試験装置に組み込み、耐久試験を行った。上記熱処理条件に関しては、820~900℃に加熱した後30~60min保持してから焼き入れし、次いで、120~200℃で60~120minの焼き戻しを行った。
【0015】
又、一部の試料(実施例1~8、比較例1~6)に関しては、ピーニング加工を施さず、仕上加工としてのバレル研磨のみを施す事で、表面の硬さを芯部の硬さよりも高めた。
これに対して、残りの試料のうち、実施例9及び比較例7~8に関しては、ピーニング加工として回転バレルを用い、5~120min のバレル加工を施し、更に仕上加工として上記バレル研磨を施す事により、表面の硬さを芯部の硬さよりも高めた。」
「【0018】
この様な条件で行った実験の結果を、各試料を造った条件、各試料の性状と共に、下記の表1に示した。尚、耐久試験の結果は、従来例としての比較例1に対する比で表した。又、上記各試料の芯部硬さは、切断した試料の断面中央部を、マイクロビッカース試験機により、測定荷重9.8N(1kgf)で測定した。又、表面硬さは、上記ころの表面を、ビッカース試験機により、測定荷重49N(5kgf)で測定し、JIS Z 2244に基づき平面硬さに補正した。更に、芯部の残留オーステナイト量、及び、圧縮残留応力は、X線回折装置により測定した。
【0019】
【表1】
[図:0001381605000001.jpg]
」
以上の記載から、訂正事項1に係る訂正のうち、上記(1a)は、上記請求項1のころ軸受の「ころ」に属する「実施例8」の「ころ」において、「表面硬さ/深部硬さ」(すなわち、「Y/X」)が「1.036」であったこと(特に、【0014】、【0019】をご参照。)に基づくものであり、また、上記(1b)は、上記請求項1のころ軸受の「ころ」に属する「実施例5」の「ころ」において、「表面から50μmの深さでの圧縮残留応力の最大値」が「810MPa」であったこと(特に、【0014】、【0019】をご参照。)に基づくものである。
してみれば、本件明細書等には、互いに対向する面をそれぞれ軌道面として互いに同心に配置された1対の軌道輪と、これら両軌道面同士の間に転動自在に設けられた複数本のころとを備えたころ軸受に於いて、これら各ころが、JISに規定した高炭素クロム軸受鋼2種製で、且つ、これら各ころの芯部の硬さの値Xが、ビッカース硬度で770~830Hvであり、これら各ころの表面の硬さのビッカース硬度での値をYとした場合に、「1.006×X≦Y≦1.036×Xを満たすと共に、上記各ころの芯部の残留オーステナイト量が15~25容量%であり、且つ、これら各ころの表面から50μmの深さでの圧縮残留応力の最大値が300~810MPaである事」について記載されているといえる。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否について
上記(1)のとおり、各発明特定事項の数値範囲を、その範囲内でさらに狭い範囲に限定する訂正事項1に係る訂正によって、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明1」という。)の技術的事項は減縮されており、訂正事項1に係る訂正は、実質上、特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件について
訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件訂正発明1は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなくてはならないところ、本件訂正発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は発見しない。
したがって、本件訂正発明1は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
2 訂正事項2について
(1)訂正の目的について
訂正事項2に係る訂正のうち、
(1a)ころの芯部の硬さのビッカース硬度での値Xところの表面の硬さのビッカース硬度での値Yとの関係式について、訂正前の「1.006×X≦Y≦1.050×X」から、「1.006×X≦Y≦1.036×X」とする訂正、
(1b)ころの表面から50μmの深さでの圧縮残留応力の最大値について訂正前の「300~900MPa」から、「300~810MPa」とする訂正
は、いずれも、本件訂正前の数値範囲をその範囲内でさらに狭い範囲に限定するものであって、
(1c)訂正前の「バレル研磨による仕上加工とピーニング加工とのうちの少なくとも一方の加工を上記ころ用中間素材に施す」との記載を「バレル研磨による仕上加工を上記ころ用中間素材に施す」とする訂正は、その選択肢の一部(「ピーニング加工」)を削除するものであるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2)新規事項追加の有無について
本件明細書等には次の記載がある。
「【請求項2】
JISに規定した高炭素クロム軸受鋼2種製の素材を所定の形状に加工して複数本のころ用中間素材とした後、これら各ころ用中間素材を、850~880℃に加熱保持後焼き入れしてから、140~180℃で焼き戻しを施し、更に、バレル研磨による仕上加工とピーニング加工とのうちの少なくとも一方の加工を上記ころ用中間素材に施す事により、芯部の硬さのビッカース硬度での値Xが770~830Hvであり、表面のビッカース硬度での値Yが1.006×X≦Y≦1.050×Xを満たし、芯部の残留オーステナイト量が15~25容量%であり、且つ、表面から50μmの深さでの圧縮残留応力の最大値が300~900MPaである複数本のころとした後、これら各ころを、1対の軌道輪に互いに対向する状態で設けた1対の軌道面同士の間に組み込む、ころ軸受の製造方法。」
「【実施例1】
【0014】
本発明の効果を確認する為に行った実験に就いて説明する。この実験では、ころの材料としてJIS G 4805に規定した高炭素クロム軸受鋼2種(SUJ2)を使用し、熱処理条件、及び、表面仕上の条件を後述する表1に示す様に各種異ならせ、各部の硬さ、芯部の残留オーステナイト量、表面から50μmの深さでの圧縮残留応力の最大値を各種異ならせた、本発明に属するもの11種類(実施例1~11)と、本発明から外れるもの8種類(比較例1~8)との、合計19種類の試料を作成した。そして、これら各試料を図2に示す様な試験装置に組み込み、耐久試験を行った。上記熱処理条件に関しては、820~900℃に加熱した後30~60min保持してから焼き入れし、次いで、120~200℃で60~120minの焼き戻しを行った。
【0015】
又、一部の試料(実施例1~8、比較例1~6)に関しては、ピーニング加工を施さず、仕上加工としてのバレル研磨のみを施す事で、表面の硬さを芯部の硬さよりも高めた。
これに対して、残りの試料のうち、実施例9及び比較例7~8に関しては、ピーニング加工として回転バレルを用い、5~120minのバレル加工を施し、更に仕上加工として上記バレル研磨を施す事により、表面の硬さを芯部の硬さよりも高めた。」
「【0018】
この様な条件で行った実験の結果を、各試料を造った条件、各試料の性状と共に、下記の表1に示した。尚、耐久試験の結果は、従来例としての比較例1に対する比で表した。又、上記各試料の芯部硬さは、切断した試料の断面中央部を、マイクロビッカース試験機により、測定荷重9.8N(1kgf)で測定した。又、表面硬さは、上記ころの表面を、ビッカース試験機により、測定荷重49N(5kgf)で測定し、JIS Z 2244に基づき平面硬さに補正した。更に、芯部の残留オーステナイト量、及び、圧縮残留応力は、X線回折装置により測定した。
【0019】
【表1】
[図:0001381605000002.jpg]
」
以上の記載から、訂正事項2に係る訂正のうち、上記(1a)は、上記請求項2のころ軸受の製造方法の「ころ」に属する「実施例8」の「ころ」において、「表面硬さ/深部硬さ」(すなわち、「Y/X」)が「1.036」であったこと(特に、【0014】、【0019】をご参照。)に基づくものであり、また、上記(1b)は、上記請求項2のころ軸受の製造方法の「ころ」に属する「実施例5」の「ころ」において、「表面から50μmの深さでの圧縮残留応力の最大値」が「810MPa」であったこと(特に、【0014】、【0019】をご参照。)に基づくものである。
そして、上記実施例5、8のころを含め、上記実施例1~8のころ(すなわち、訂正後の請求項2の発明特定事項を満たすころ)を製造するに際し、いずれも仕上加工として「バレル研磨」(すなわち、上記(1c)の訂正後に削除されずに残った選択肢)を行っている(【0015】)。
してみれば、本件明細書等には、「JISに規定した高炭素クロム軸受鋼2種製の素材を所定の形状に加工して複数本のころ用中間素材とした後、これら各ころ用中間素材を、850~880℃に加熱保持後焼き入れして0015から、140~180℃で焼き戻しを施し、更に、バレル研磨による仕上加工を上記ころ用中間素材に施す事」により、「芯部の硬さのビッカース硬度での値Xが770~830Hvであり、表面のビッカース硬度での値Yが1.006×X≦Y≦1.036×Xを満たし、芯部の残留オーステナイト量が15~25容量%であり、且つ、表面から50μmの深さでの圧縮残留応力の最大値が300~810MPaである複数本のころとする」ことについて記載されているといえる。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否について
上記(1)のとおり、訂正事項2に係る訂正によって、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項2に係る発明(以下、「本件訂正発明2」という。)の技術的事項は減縮されており、訂正事項2に係る訂正は、実質上、特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件について
訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件訂正発明2は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなくてはならないところ、本件訂正発明2が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は発見しない。
したがって、本件訂正発明2は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
3 訂正事項3について
(1)訂正の目的について
訂正事項3に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正により本件特許請求の範囲の請求項1を訂正することに伴い、本件明細書の【0010】の記載を、特許請求の範囲の記載と整合するように訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
(2)新規事項追加の有無について
訂正事項3に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1に対応する本件明細書の【0010】について、訂正事項1と同様の訂正をするものである。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正と同様の理由により、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否について
訂正事項3に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1に対応する本件明細書の【0010】について、訂正後の請求項1と整合させるために、訂正事項1と同様の訂正をするものである。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、訂正事項1と同様の訂正をするものであるから、実質上、特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。
4 訂正事項4について
(1)訂正の目的について
訂正事項4に係る訂正は、訂正事項2に係る訂正により本件特許請求の範囲の請求項2を訂正することに伴い、本件明細書の【0011】の記載を、特許請求の範囲の記載と整合するように訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
(2)新規事項追加の有無について
訂正事項4に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項2に対応する本件明細書の【0011】について、訂正事項2と同様の訂正をするものである。
したがって、訂正事項4に係る訂正は、訂正事項2に係る訂正と同様の理由により、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否について
訂正事項4に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項2に対応する本件明細書の【0011】について、訂正後の請求項2と整合させるために、訂正事項2と同様の訂正をするものである。
したがって、訂正事項4に係る訂正は、訂正事項2と同様の訂正をするものであるから、実質上、特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。
5 訂正事項5について
(1)訂正の目的について
訂正事項5に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正及び訂正事項2に係る訂正によって、本件特許請求の範囲の請求項1及び2を訂正することに伴い、本件明細書の【0012】の記載を、特許請求の範囲の記載と整合するように訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
(2)新規事項追加の有無について
訂正事項5に係る訂正のうち、
(2a)訂正前の「芯部の硬さを770~830Hv確保する事で、表面の硬さを芯部の硬さの1.006~1.050倍程度に抑えても、」との記載を「芯部の硬さを770~830Hv確保する事で、表面の硬さを芯部の硬さの1.006~1.036倍程度に抑えても、」とする訂正、
(2b)訂正前の「最大値で300~900MPa」との記載を「最大値で300~810MPa」とする訂正(2箇所)、及び、
(2c)訂正前の「バレル研磨又は軽いピーニング加工により得る」との記載を「バレル研磨加工により得る」とする訂正
については、訂正事項1に係る訂正及び訂正事項2に係る訂正と同様の理由により、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
訂正事項5に係る訂正のうち、表面の硬さについて、訂正前の「775~871Hv」を、「775~860Hv」とする訂正(2箇所)は、本件明細書【0012】の訂正前の「芯部の硬さを770~830Hv確保する事で、表面の硬さを芯部の硬さの1.006~1.050倍程度に抑えても、この表面の硬さを十分に大きく(775~871Hvに)できる。」との記載における上記「871Hv」(≒830Hv×1.050)について、上記(2a)の訂正に伴い、齟齬が生じないように上限値を整合させるために「860Hv」(≒830Hv×1.036)としたものであって、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項5に係る訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否について
訂正事項5に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1及び2に対応する本件明細書の【0012】について、訂正後の請求項1及び2と整合させるために、訂正事項1及び2と同様の訂正をし、さらに、その際に、上記(2)のとおり、文章全体に齟齬が生じないように数値を整合させる訂正をするものである。
したがって、訂正事項5に係る訂正は、訂正事項1及び2と同様の訂正、並びに、その際の数値を整合させる訂正をするものであるから、実質上、特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。
6 訂正事項6~9について
(1)訂正の目的について
訂正事項6~9に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正及び訂正事項2に係る訂正によって請求項1及び2の記載が訂正されたことに伴って、訂正前の明細書の【0014】、【0015】、【0019】の表1、【0020】に記載された「実施例1~11」のうち「実施例9~11」が、「実施例」に該当しないものとなったため、これらを「参考例9~11」に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
(2)新規事項追加の有無について
訂正事項6~9に係る訂正は、上記(1)のとおり、訂正前の「実施例9~11」を「参考例9~11」に訂正するものにすぎず、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項6~9に係る訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否について
訂正事項6~9に係る訂正は、上記(1)のとおり、訂正前の「実施例9~11」を「参考例9~11」に訂正するものにすぎず、実質上、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第126条第6項の規定に適合する。
第4 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、また同条第5ないし7項に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-390092