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特許異議申立

2017-700630

パワーモジュール用基板、ヒートシンク付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びパワーモジュール用基板の製造方法、並びに、銅部材接合用ペースト

審判番号
2017-700630
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-127751外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年06月21日
審決日
2017年08月28日
公報発行日
2017年10月27日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-Y (C04B) / P1651.121-Y (C04B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6048541号発明「パワーモジュール用基板、ヒートシンク付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びパワーモジュール用基板の製造方法、並びに、銅部材接合用ペースト」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6048541号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6048541号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成24年12月6日(優先権主張 平成24年2月1日)に出願した特願2012-267298号の一部を平成26年7月11日に新たな特許出願した特願2014-143522号の一部を、さらに平成27年6月25日に特許出願したもので、平成28年12月2日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人飯田進(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 特許第6048541号の請求項1~8の特許に係る発明(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明8」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるとおりのものである。そのうち、本件特許発明1(パワーモジュール用基板の発明)及びその本件特許発明1を引用した本件特許発明4(パワーモジュール用基板の製造方法の発明)は以下のとおりのものである。 「【請求項1】 セラミックス基板の表面に銅または銅合金からなる銅板が積層されて接合されたパワーモジュール用基板であって、 前記セラミックス基板は、Si3N4で構成されており、 前記銅板と前記セラミックス基板との間において、前記セラミックス基板の表面に窒化物層が形成されているとともに、前記窒化物層に積層するようにAg-Cu共晶組織層が形成され、 前記銅板と前記セラミックス基板の界面のEPMAによる反射電子像から、倍率2000倍の視野において接合界面に連続的に形成された前記Ag-Cu共晶組織層の面積を測定して測定視野の幅の寸法で除し、得られた値の5つの視野の平均値から求められた前記Ag-Cu共晶組織層の厚さが1μm未満とされており、 前記窒化物層は、Ti、Hf、Zr、Nbから選択される1種又は2種以上の元素の窒化物を含有していることを特徴とするパワーモジュール用基板。」 「【請求項4】 請求項1に記載のパワーモジュール用基板の製造方法であって、 前記セラミックス基板の接合面及び前記銅板の接合面のうち少なくとも一方に、Agと窒化物形成元素とを含有するAg及び窒化物形成元素層を形成するAg及び窒化物形成元素層形成工程と、 このAg及び窒化物形成元素層を介して前記セラミックス基板と前記銅板と積層する積層工程と、 積層された前記セラミックス基板と前記銅板を積層方向に加圧するとともに加熱し、前記セラミックス基板と前記銅板との界面に溶融金属領域を形成する加熱工程と、 この溶融金属領域を凝固させることによって、前記セラミックス基板と前記銅板とを接合する凝固工程と、を有し、 前記窒化物形成元素は、Ti、Hf、Zr、Nbから選択される1種又は2種以上の元素であり、 前記加熱工程において、加熱温度を790℃以上850℃以下の範囲内とし、前記セラミックス基板と前記銅板を積層方向に1~35kgf/cm2で加圧し、Agを前記銅板側に拡散させることにより前記セラミックス基板と前記銅板との界面に前記溶融金属領域を形成するとともに、前記窒化物層に積層するようにAg-Cu共晶組織層を形成し、 前記銅板と前記セラミックス基板の界面のEPMAによる反射電子像から、倍率2000倍の視野において接合界面に連続的に形成された前記Ag-Cu共晶組織層の面積を測定して測定視野の幅の寸法で除し、得られた値の5つの視野の平均値から求められる前記Ag-Cu共晶組織層の厚さを1μm未満とすることを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠として、次の甲第1号証~甲第4号証(以下「甲1」~「甲4」という。)を提出し、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に「(3)申立ての根拠」として、 「全請求項 条文 特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号) 証拠 甲第1号証ないし甲第3号証 条文 特許法第29条第2項(同法第113条第2号) 証拠 甲第1号証ないし甲第4号証」(10頁2~7行) と記載した上で、その具体的理由として、 特許法第29条第1項第3号について(以下「理由1」という。)は、本件特許発明1~6及び8は、甲1又は2に記載された発明であり、本件特許発明1~3は、甲3に記載された発明であると主張し、 特許法第29条第2項について(以下「理由2」という。)は、本件特許発明3は、甲1及び甲3に基づいて、本件特許発明4は、甲1又は甲2と、甲3に基づいて、本件特許発明5及び7は、甲1又は甲2と、甲4に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものであると主張している。 甲1:特開2003-55058号公報 甲2:特開2003-55059号公報 甲3:特開2003-192462号公報 甲4:特開2005-112677号公報 第4 甲号証の記載事項 1 甲1について (1)甲1には、以下の事項が記載されている。なお、(2)の甲1発明の認定に関係する部分に当審において下線を付した。 (甲1ア)「【請求項1】窒化アルミニウム又は窒化珪素を主体とするセラミック体と銅板とを、金属成分として、銀50~89%、銅1~30%、ビスマス0.05~0.7%、チタン、ジルコニウム及びハフニウムから選ばれた少なくとも1種の活性金属10~30%を含んでなるろう材を介して積層し、それを1.0MPa以上の圧力で加圧しながら、酸素濃度100~1000ppmの窒素雰囲気下、昇温速度及び降温速度を5.5℃/分以上にして接合することを特徴とするセラミック体と銅板の接合方法。 (甲1イ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、パワーモジュールに使用される回路基板の製造に好適なセラミック体と銅板との接合方法に関する。」 (甲1ウ)「【0011】本発明において、活性金属はセラミック体に拡散し、ビスマスは、他の金属成分に比較して蒸気圧が高いので、蒸気化したビスマスは回路基板縁部まで行き渡り、活性金属とセラミックスの接合を阻害する雰囲気中の微量な酸素と結びつき、回路基板縁部の接合不良を改善する。」 (甲1エ)「【0016】接合は、例えば温度750~900℃で0.5~2時間保持して行われる。750℃未満では接合が十分でなく、また900℃を超えると、銀や錫の銅板への拡散が過度となり、接合層が脆弱なものとなる。この温度範囲における保持時間が0.5時間よりも短いと接合が不十分となり、また2時間よりも長くなると、同様に銀や錫の銅板への拡散が過度となり、接合層が脆弱なものとなる。 【0017】本発明においては、昇温開始から750℃までの昇温速度と、750℃から室温等の取り出し温度までの冷却速度が、いずれも5.5℃/分以上にして行われる。昇温速度が5.5℃/分未満であると、ろう材が酸化されてしまい、接合が不十分となる。また、冷却速度が5.5℃/分未満であると、600℃以上の温度範囲において、ろう材のAgやSn等の成分が銅板側へ拡散してしまうため、基板としての信頼性が低下する。また、600℃よりも低温域において冷却速度が遅いことは生産性の向上につながらない。」 (甲1オ)【0020】本発明によって製造される接合体は、接合層の厚みが8~13μmであることが好ましい。接合層の厚み8μm未満であると接合が不十分となり、また13μmを超えると、銅と錫の金属間化合物の生成量が増大し、接合層が脆弱なものとなる。接合層の厚みは、ろう材厚みによって容易に調節することができる。」 (2)甲1発明について 甲1には、上記摘記事項(下線部参照)から、以下の発明が記載されていると認められる。 「窒化珪素を主体とするセラミック体と銅板とを接合したパワーモジュールに使用される回路基板であって、 窒化珪素を主体とするセラミック体と銅板とを、金属成分として、銀50~89%、銅1~30%、ビスマス0.05~0.7%、チタン、ジルコニウム及びハフニウムから選ばれた少なくとも1種の活性金属10~30%を含んでなるろう材を介して積層し、それを1.0MPa以上の圧力で加圧しながら、酸素濃度100~1000ppmの窒素雰囲気下、温度750~900℃、昇温速度及び降温速度を5.5℃/分以上にして接合し、 接合層の厚みが8~13μmである、 パワーモジュールに使用される回路基板。」(以下「甲1発明」という。) 2 甲2について (1)甲2には、以下の事項が記載されている。なお、(2)の甲2発明の認定に関係する部分に当審において下線を付した。 (甲2ア)「【0003】 【発明が解決しょうとする課題】しかしながら、上記活性金属法又はDBC法は、セラミックス基板と金属板との積層体を1ユニットとして加熱接合されるものであるため生産性が劣った。この欠点を解決するには、2以上のユニットを積層し加熱処理すればよいが、この場合には、金属同士が融着し剥離が困難となる。」 (甲2イ)「【0031】 【実施例】以下、実施例と比較例をあげて更に具体的に説明する。 【0032】実施例1 窒化アルミニウム基板(70mm×30mm×厚み0.635mm)の表裏両面に、銀粉末72部、銅粉末28部、ジルコニウム粉末25部、テレピネオール15部及び有機結合剤としてエチルセルロースのトルエン溶液を固形分で1部混合して得られたろう材ペーストを7mg/cm2(乾燥後)塗布し乾燥後、銅板(70mm×30mm×厚み0.25mm)を表裏両面に積層した。 【0033】 得られた積層体を1ユニットとする25ユニットを各ユニット間にスペーサーを介在させて積層し、所定の圧力で加圧し、高真空中、900℃、30分加熱して接合体を製造した。スペーサーは、2枚の窒化ケイ素板(1枚の厚みを表1に記載)の間に黒鉛シート(東洋炭素社製:加重25MPaにおける圧縮率と厚みを表1に記載)を挟んだものを使用した。 【0034】 得られた接合体の銅板上に紫外線硬化型のエッチングレジストをスクリーン印刷にて回路パターンに塗布後、塩化第2銅溶液を用いてエッチング処理を行って銅箔不要部分を溶解除去し、銅回路を形成した。更に、銅回路間に残留した不要ろう材及び活性金属成分と窒化アルミニウム基板の反応物を60℃の10%フッ化アンモニウム溶液に10分間浸漬して除去した後、エッチングレジストを剥離し、銅回路を有する接合体を製造した。 【0035】 得られた25枚の銅回路を有する接合体について、銅回路の表面状態、銅回路の接合状態を観察した。それらの結果を表1に示す。 【0036】 実施例2~10 比較例1~6 窒化アルミニウム基板又は窒化ケイ素基板(70mm×30mm×厚み0.635mm)の表裏両面に、表1に示される回路材質の金属板を接合した。回路材質が銅である場合は、実施例1に準じて銅回路を有する接合体を製造した。それらの結果を表1に示す。」 (甲2ウ)「【0040】 表1から、次のことがわかる。本発明の実施例1~10と比較例1~6の対比から、構成材料が同じスペーサーであってもそれらの構成比が違うと、金属の表面状態、金属とセラミックスの接合状態が異なり、本発明の実施例が優れている。特に、セラミックスペーサーの厚みが薄く、黒鉛スペーサーの圧縮率が大きいものを用いると、接合性の効果が顕著となる(実施例4、9)。一方、スペーサーの構成材料を本発明と違えると、追従性が十分に確保できないため、接合不良が生じ(比較例7~9)、スペーサー厚みが薄いと加圧時に破損が生じた(比較例7、8)。カーボンスプレーを用いた比較例10では、良好な接合状態は得られたが、Al表面にカーボンの付着が認められ、Al表面の研削を行う必要があった。」 (2)甲2発明について 甲2には、上記摘記事項(下線部参照)から、以下の発明が記載されていると認められる。 「窒化ケイ素基板と銅回路を有する接合体であって、 窒化ケイ素基板の表裏両面に、銀粉末72部、銅粉末28部、ジルコニウム粉末25部、テレピネオール15部及び有機結合剤としてエチルセルロースのトルエン溶液を固形分で1部混合して得られたろう材ペーストを塗布し乾燥後、銅板を表裏両面に積層し、 得られた積層体を1ユニットとする25ユニットを各ユニット間にスペーサーを介在させて積層し、所定の圧力で加圧し、高真空中、900℃、30分加熱して製造した、 接合体。」(以下「甲2発明」という。) 3 甲3について (1)甲3には、以下の事項が記載されている。なお、(2)の甲3発明の認定に関係する部分に当審において下線を付した。 (甲3ア)「【請求項1】窒化珪素基板の少なくとも一方の面に厚さ0.5mm以上の銅板が接合された窒化珪素回路基板において、前記銅板と窒化珪素基板とがAg、Cuおよび活性金属を含む接合層により接合されていることを特徴とする窒化珪素回路基板。」 (甲3イ)「【0002】 【従来の技術】近年、パワートランジスタモジュールやスイッチング電源用モジュール等の比較的高電力を扱う半導体モジュールにおいて、セラミックス基板の表裏に銅板等の金属板または金属回路板を接合したセラミックス回路基板が使用されている。」 (甲3ウ)「【0018】図1は本発明の窒化珪素回路基板を示した断面図である。本発明の窒化珪素回路基板1は、窒化珪素基板2の少なくとも一方の面に、接合層3により銅板4が接合されてなるものである。銅板4は、例えば回路板等として使用されるものであり、その厚さは少なくとも0.5mm以上である。本発明では、このような厚めの銅板4を使用することで、高い放熱性、電流容量を得ることができ、レーザーダイオードやパワートランジスタ等の比較的大電力を必要とするものを搭載することができる。」 (甲3エ)図1として、以下の図面が記載されている。 【図1】 (甲3オ)「【0020】本発明の窒化珪素回路基板1においては、窒化珪素基板2と銅板4とは接合層3を介して接合されている。この接合層3は、Ag、Cuおよび活性金属等からなるものである。活性金属としては、Ti、Zr、HfおよびNbから選択される少なくとも1種であることが好ましい。 【0021】この接合層3はより具体的には、Ag-Cu-活性金属の混在層5と活性金属窒化物層6(TiN等)とからなるものである。活性金属窒化物層6は、接合層3のうち窒化珪素基板2側に形成されるものであり、窒化珪素基板2と銅板4とを接合する際に使用した活性金属ろう材等に含まれていた活性金属と窒化珪素基板の窒素とが反応して形成されたものである。このようなTiN層等を形成することで、比較的高い接合強度を得ることができる。 【0022】また、窒化珪素基板2に接合層3を介して接合される銅板4は、より具体的には、Ag成分が拡散したことにより形成されたAg拡散層7と、Ag成分が拡散していない非拡散層8とからなるものであることが好ましい。このAg拡散層7は、窒化珪素基板2と銅板4とを接合する際に、活性金属ろう材等に含まれていたAg成分の拡散により、あるいは窒化珪素基板2と銅板4とを接合した後に、熱処理により接合層3に含まれていたAg成分を拡散させることにより形成されたものである。 【0023】このAg成分が拡散されたAg拡散層7は、銅板(Ag成分が拡散されていない部分)の熱膨張率と窒化珪素基板の熱膨張率の間の熱膨張率を有するものである。このようなAg拡散層7を銅板4に形成することで、例えば窒化珪素回路基板の構成を、銅板から窒化珪素基板へ向かって順に、銅板、銅板+Ag、Ag+Cu、TiN、SiNのようにすることが可能となる。このように、徐々に熱膨張率を変化させていくことで、銅板と窒化珪素基板との熱膨張率の差に起因する熱応力の発生を緩和させることができ、窒化珪素基板へのクラックの発生や、銅板の剥離等を有効に抑制することが可能となる。また、板厚0.5mm以上と厚い銅板を接合しているにも関わらず熱応力の発生が緩和されるために、窒化珪素基板の板厚をこれまでよりも薄くすることが可能となる。このため、回路板として接合された板厚0.5mm以上の厚い銅板がヒートシンクの役割も果たし、さらに窒化珪素基板の板厚を薄くできるので回路基板としての熱抵抗を大幅に改善できる。 【0024】Ag成分の銅板への拡散は、銅板4の厚さをt1とし、Ag成分が拡散した層の厚さ、すなわちAg拡散層7の厚さをt2とした場合、以下の式で示されるような範囲となるようにすることが好ましい。なお、銅板4の厚さt1とは、Ag拡散層7および非拡散層8の厚さを合わせたものである。 0.5 ≧ t2/t1 > 0.01」 (甲3カ)「【0036】本発明に用いられる活性金属ろう材としては、一般的な活性金属ろう材に比べてCuの含有量を少なめとし、Ag成分を多めにすることが好ましく、例えば上記活性金属を1~10質量%、Cuを10~20質量%、残部が実質的にAgから成るろう材組成物が好適である。 【0037】 本発明では、一般的な活性金属ろう材に比べてCuの含有量を若干少なめとし、Ag成分を多めにすることで、次に行われる銅板へのAg成分の拡散を適切かつ容易に行うことができる。特にAgとCuは約72:28の割合で所定温度に加熱すると共晶合金を形成する。そのため、従来はろう材中のAgとCuの割合を72:28の近傍となるようにしていた。そこで本発明ではろう材中のCu量を若干少なめにすることにより余ったAgが共晶合金を作ろうと銅板中に拡散していく性質を利用したのである。」 (2)甲3発明について 甲3には、上記摘記事項(下線部参照)から、以下の発明が記載されていると認められる。 「窒化珪素基板の少なくとも一方の面に銅板が接合されたパワートランジスタモジュールに使用される窒化珪素回路基板であって、 前記銅板と窒化珪素基板とがAg、Cuおよび活性金属を含む接合層により接合されているもので、前記活性金属はTi、Zr、HfおよびNbから選択される少なくとも1種であり、 前記接合層は、Ag-Cu-活性金属の混在層5と活性金属窒化物層6(TiN等)とからなり、活性金属窒化物層6は、接合層3のうち窒化珪素基板2側に形成されるものであり、 AgとCuは約72:28の割合で所定温度に加熱すると共晶合金を形成する割合よりCu量を若干少なめにすることにより余ったAgが共晶合金を作ろうと銅板中に拡散していくようにして、銅板から窒化珪素基板へ向かって順に、銅板、銅板+Ag、Ag+Cu、TiN、SiNのようにした、 窒化珪素回路基板。」 4 甲4について 甲4には、以下の事項が記載されている (甲4ア)「【請求項1】 セラミックス基板の少なくとも一方の面にろう材層を介して、予め所定の回路パターンを形成した金属板を接合してなるセラミックス回路基板に用いられるろう材であって、Cu:25~55質量%、In:5~25質量%、Ti:0.2~2.0質量%、残部Ag及び不可避不純物からなる平均粒子径15~40μmの合金粉末に、さらに平均粒子径1~15μmのCu粉末粒子を5~30質量%添加したことを特徴とするセラミックス基板用ろう材。」 (甲4イ)「【0023】 活性金属としては、周期律表第IVa族に属する元素を用いることができ、一般にはチタン、ジルコニウム、ハフニウムが用いられる。この中でも特にチタンは窒化アルミニウム基板や窒化ケイ素基板との反応性が高く、接合強度を非常に高くすることができるため本発明ではチタン(Ti)を用いている。さらにチタンの水素化物、即ち水素化チタンを用いれば、接合工程中における酸素の影響による酸化が起こり難くなり、より好適な接合状態が得られる。これは水素化チタンは接合工程での加熱処理によって初めて水素を放出して活性な金属チタンとなり、これが窒化アルミニウム基板や窒化ケイ素基板と反応するためである。更に、これら活性金属成分を予め合金粉末中に含有させると、Ag-Cu―In-Tiの比が均一となり、加熱昇温時において、基板あるいは金属板に印刷されたろう材粉末の局所的な溶融むらが抑制でき、しいてはろう材融液中を拡散するTiを容易に制御することができるため、望ましい。AgとCuおよびInの合計量100質量%に対する活性金属粉末の添加量は、活性金属粉末による窒化アルミニウム基板/窒化ケイ素基板-ろう材-銅板の間の接合強度を十分に保つためには、0.2~2.0質量%が好ましい。より好ましくは0.6~1.5質量%である。」 第5 申立理由についての判断 1 申立理由1について (1)本件特許発明1について ア 甲1発明に対して (ア)対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 a 甲1発明の「窒化珪素を主体とするセラミック体と銅板とを接合したパワーモジュールに使用される回路基板」は、本件特許発明1の「Si3N4で構成されて」いる「セラミックス基板の表面に銅または銅合金からなる銅板が積層されて接合されたパワーモジュール用基板」に相当する。 b 本件特許発明1と甲1発明とは、 (一致点) 「セラミックス基板の表面に銅または銅合金からなる銅板が積層されて接合されたパワーモジュール用基板であって、 前記セラミックス基板は、Si3N4で構成されている。 パワーモジュール用基板。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 銅板とセラミックス基板との間について、本件特許発明1は「前記銅板と前記セラミックス基板との間において、前記セラミックス基板の表面に窒化物層が形成されているとともに、前記窒化物層に積層するようにAg-Cu共晶組織層が形成され、前記銅板と前記セラミックス基板の界面のEPMAによる反射電子像から、倍率2000倍の視野において接合界面に連続的に形成された前記Ag-Cu共晶組織層の面積を測定して測定視野の幅の寸法で除し、得られた値の5つの視野の平均値から求められた前記Ag-Cu共晶組織層の厚さが1μm未満とされており、前記窒化物層は、Ti、Hf、Zr、Nbから選択される1種又は2種以上の元素の窒化物を含有している」のに対し、甲1発明は、「金属成分として、銀50~89%、銅1~30%、ビスマス0.05~0.7%、チタン、ジルコニウム及びハフニウムから選ばれた少なくとも1種の活性金属10~30%を含んでなるろう材を介して積層し、それを1.0MPa以上の圧力で加圧しながら、酸素濃度100~1000ppmの窒素雰囲気下、温度750~900℃、昇温速度及び降温速度を5.5℃/分以上にして接合し、接合層の厚みが8~13μmである」点。 (イ)相違点についての判断 甲1発明の「接合層」について、摘記(甲1ウ)の「活性金属はセラミック体に拡散」するとの記載から、活性金属はセラミック体に拡散してしまうこと、摘記(甲1エ)の「900℃を超えると、銀や錫の銅板への拡散が過度となり、接合層が脆弱なものとなる。この温度範囲における保持時間が0.5時間よりも短いと接合が不十分となり、また2時間よりも長くなると、同様に銀や錫の銅板への拡散が過度となり、接合層が脆弱なものとなる」との記載から、ろう材である金属を銅板の方へ拡散させるのではなく、接合層として存在させるものであることに鑑みると、甲1発明の「接合層」は、ろう材である主に銀及び銅からなるものといえる。そして、銀及び銅が「Ag-Cu共晶組織」を形成することは(Ag-Cu状態図から)技術常識であるから、甲1発明の「厚みが8~13μm」の「接合層」は主に「Ag-Cu共晶組織」を含むものといえる。 してみれば、甲1発明の「この接合層の厚みが8~13μmである」ことと、本件特許発明1の「前記銅板と前記セラミックス基板の界面のEPMAによる反射電子像から、倍率2000倍の視野において接合界面に連続的に形成された前記Ag-Cu共晶組織層の面積を測定して測定視野の幅の寸法で除し、得られた値の5つの視野の平均値から求められた前記Ag-Cu共晶組織層の厚さが1μm未満」であることとが同じことであるとは判断できない。 よって、上記相違点は実質的な相違点である。 なお、申立人は、申立書で「本件特許発明1は、本件特許発明4に係る方法で製造されたものである。(ア)で述べた通り、本件特許発明4は甲1発明に該当するので、本件特許発明1は甲1号証に記載された発明であり、特許法第29条の規定に違反してなされたものである。」(申立書26頁16~19行)と主張しているが、本件特許明細書の【表1】~【表12】に記載されているように、共晶組織層の厚さが1μm未満である本件特許発明1は、本件特許発明4が特定する製造工程において、接合用ペーストの合金粉配合比(Cuが含有されていない点に留意されたい。)、合金粉末中の最大粒径、ペースト中の粉末成分割合、接合条件(温度、荷重)、ペーストの膜厚等を調整することにより実現されているものであり、甲1発明の製造工程が本件特許発明4の製造工程を満たしても、当該調整をしていると認められない以上、甲1発明が上記相違点の構成を有するとはいえない。 (ウ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明とはいえない。 イ 甲2発明に対して (ア)対比 本件特許発明1と甲2発明とを対比する。 a 甲2発明の「窒化ケイ素基板の表裏両面に」「銅板を」「積層し」「接合」させた「窒化ケイ素基板と銅回路を有する接合体」と、本件特許発明1の「Si3N4で構成されて」いる「セラミックス基板の表面に銅または銅合金からなる銅板が積層されて接合されたパワーモジュール用基板」とは、「Si3N4で構成されて」いる「セラミックス基板の表面に銅または銅合金からなる銅板が積層されて接合された基板」の点で共通する。 b 本件特許発明1と甲2発明とは、 (一致点) 「セラミックス基板の表面に銅または銅合金からなる銅板が積層されて接合された基板であって、 前記セラミックス基板は、Si3N4で構成されている、 基板。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 銅板とセラミックス基板との間について、本件特許発明1は「前記銅板と前記セラミックス基板との間において、前記セラミックス基板の表面に窒化物層が形成されているとともに、前記窒化物層に積層するようにAg-Cu共晶組織層が形成され、前記銅板と前記セラミックス基板の界面のEPMAによる反射電子像から、倍率2000倍の視野において接合界面に連続的に形成された前記Ag-Cu共晶組織層の面積を測定して測定視野の幅の寸法で除し、得られた値の5つの視野の平均値から求められた前記Ag-Cu共晶組織層の厚さが1μm未満とされており、前記窒化物層は、Ti、Hf、Zr、Nbから選択される1種又は2種以上の元素の窒化物を含有している」のに対し、甲2発明では、「銀粉末72部、銅粉末28部、ジルコニウム粉末25部、テレピネオール15部及び有機結合剤としてエチルセルロースのトルエン溶液を固形分で1部混合して得られたろう材ペースト」を「所定の圧力で加圧し、高真空中、900℃、30分加熱して」接合している点。 (相違点2) 基板が、本件特許発明1では「パワーモジュール用」基板であるのに対し、甲2発明ではパワーモジュール用かどうか不明である点。 (イ)相違点についての判断 相違点1について検討するに、甲2発明は、摘記(甲2ア)に記載されているとおり、セラミックス基板と金属板との積層体を1ユニットとして加熱接合すると生産性が劣ることから、「得られた積層体を1ユニットとする25ユニットを各ユニット間にスペーサーを介在させて積層し」て加熱接合するものであり、甲2に記載されている事項から理解できることは、摘記(甲2ウ)に記載されているとおり、スペーサーの構成材料及び構成比、スペーサーの厚み、スペーサーの圧縮率によって、金属とセラミックスの接合状態が異なってくるということである。 甲2発明においては「銀粉末72部、銅粉末28部、ジルコニウム粉末25部、テレピネオール15部及び有機結合剤としてエチルセルロースのトルエン溶液を固形分で1部混合して得られたろう材ペースト」を用いていることから、上記甲1発明と同様に、Ag-Cu共晶組織層が生成するものと想定されるところではあるが、上記のとおり、甲2の記載から理解できることは、窒化ケイ素基板と銅板を加圧しながら加熱して接合しても、スペーサーの構成材料及び構成比、スペーサーの厚み、スペーサーの圧縮率によって、金属とセラミックスの接合状態が異なってくるということであり、甲2の記載事項から、甲2発明の接合体が「セラミックス基板と金属板の界面のEPMAによる反射電子像から、倍率2000倍の視野において接合界面に連続的に形成された前記Ag-Cu共晶組織層の面積を測定して測定視野の幅の寸法で除し、得られた値の5つの視野の平均値から求められた前記Ag-Cu共晶組織層の厚さが1μm未満」であるとはいえない。 してみれば、本件特許発明1の「前記銅板と前記セラミックス基板の界面のEPMAによる反射電子像から、倍率2000倍の視野において接合界面に連続的に形成された前記Ag-Cu共晶組織層の面積を測定して測定視野の幅の寸法で除し、得られた値の5つの視野の平均値から求められた前記Ag-Cu共晶組織層の厚さが1μm未満」であることを含む上記相違点の構成を甲2発明が有しているとすることはできない。 よって、上記相違点は実質的な相違点である。 なお、申立人は、申立書で上記甲1発明と同様に、「本件特許発明1は、本件特許発明4に係る方法で製造されたものである。(キ)で述べた通り、本件特許発明4は甲2発明と同じであるので、本件特許発明1は甲2号証に記載された発明であり、特許法第29条の規定に違反してなされたものである。」(申立書31頁7~10行)と主張しているが、本件特許明細書の【表1】~【表12】に記載されているように、共晶組織層の厚さが1μm未満である本件特許発明1は、本件特許発明4が特定する製造工程において、接合用ペーストの合金粉配合比(Cuが含有されていない点に留意されたい。)、合金粉末中の最大粒径、ペースト中の粉末成分割合、接合条件(温度、荷重)、ペーストの膜厚等を調整することにより実現されているものであり、甲2発明の製造工程が本件特許発明4の製造工程を満たしても、当該調整をしていると認められない以上、甲2発明が上記相違点の構成を有するとはいえないことは、上記ア(イ)でも述べたとおりである。 (ウ)小括 したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2に記載された発明とはいえない。 ウ 甲3発明に対して (ア)対比 本件特許発明1と甲3発明とを対比する。 a 甲3発明の「窒化珪素基板の少なくとも一方の面に銅板が接合されたパワートランジスタモジュールに使用される窒化珪素回路基板」は、本件特許発明1の「Si3N4で構成されて」いる「セラミックス基板の表面に銅または銅合金からなる銅板が積層されて接合されたパワーモジュール用基板」に相当する。 b 甲3発明の「窒化珪素基板2側に形成される」「活性金属窒化物層6(TiN等)」は、本件特許発明1の「前記銅板と前記セラミックス基板との間において、前記セラミックス基板の表面に」「形成されている」「窒化物層」に相当する。 そして、甲3発明の「活性金属窒化物層6(TiN等)」は、「活性金属」が「Ti、Zr、HfおよびNbから選択される少なくとも1種」であるから、本件特許発明1の「Ti、Hf、Zr、Nbから選択される1種又は2種以上の元素の窒化物を含有している」「前記窒化物層」に相当する c 甲3発明の「AgとCuは約72:28の割合で所定温度に加熱すると共晶合金を形成する割合よりCu量を若干少なめにすることにより余ったAgが共晶合金を作ろうと銅板中に拡散していくようにして、銅板から窒化珪素基板へ向かって順に、銅板、銅板+Ag、Ag+Cu、TiN、SiNのようにした」ところの「Ag+Cu」すなわち「Ag-Cu-活性金属の混在層5」は、AgとCuの共晶合金を形成していることから、本件特許発明1の「前記窒化物層に積層するようにAg-Cu共晶組織層」に相当する。 d 本件特許発明1と甲3発明とは、 (一致点) 「セラミックス基板の表面に銅または銅合金からなる銅板が積層されて接合されたパワーモジュール用基板であって、 前記セラミックス基板は、Si3N4で構成されており、 前記銅板と前記セラミックス基板との間において、前記セラミックス基板の表面に窒化物層が形成されているとともに、前記窒化物層に積層するようにAg-Cu共晶組織層が形成され、 前記窒化物層は、Ti、Hf、Zr、Nbから選択される1種又は2種以上の元素の窒化物を含有しているパワーモジュール用基板。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) Ag-Cu共晶組織層の厚さが、本件特許発明1では「前記銅板と前記セラミックス基板の界面のEPMAによる反射電子像から、倍率2000倍の視野において接合界面に連続的に形成された前記Ag-Cu共晶組織層の面積を測定して測定視野の幅の寸法で除し、得られた値の5つの視野の平均値から求められた前記Ag-Cu共晶組織層の厚さが1μm未満」であるのに対し、甲3発明では不明である。 (イ)相違点についての判断 甲3発明における「Ag+Cu」すなわち「Ag-Cu-活性金属の混在層5」は、「 前記銅板と窒化珪素基板とがAg、Cuおよび活性金属を含む接合層により接合されている」ものであるから接合層としての役割を担い、そして、摘記(甲3オ)に「銅板から窒化珪素基板へ向かって順に、銅板、銅板+Ag、Ag+Cu、TiN、SiNのようにすることが可能となる。このように、徐々に熱膨張率を変化させていくことで、銅板と窒化珪素基板との熱膨張率の差に起因する熱応力の発生を緩和させることができ、窒化珪素基板へのクラックの発生や、銅板の剥離等を有効に抑制する」と記載されているように甲3発明の課題を解決するためになくてはならない層である。 また、摘記(甲3オ)に記載の式(0.5 ≧ t2/t1 > 0.01)から計算されるAg拡散層7の厚さであるt2は、銅板4の厚さをt1を最小の0.5mmとしても、5μmより大きいことになり、上記図1は模式図であるが、Ag拡散層7より大きく描かれている「Ag-Cu-活性金属の混在層5」を「1μm未満」であるとは推認できない。 よって、上記相違点である「前記銅板と前記セラミックス基板の界面のEPMAによる反射電子像から、倍率2000倍の視野において接合界面に連続的に形成された前記Ag-Cu共晶組織層の面積を測定して測定視野の幅の寸法で除し、得られた値の5つの視野の平均値から求められた前記Ag-Cu共晶組織層の厚さが1μm未満」であることは、実質的な相違点である。 (ウ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲3に記載された発明とはいえない。 ウ まとめ 以上のことより、本件特許発明1は、甲1~3のいずれに記載された発明ともいえないことから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 (2)本件特許発明2~8について 本件特許発明2は本件特許発明1を引用するヒートシンク付パワーモジュール用基板の発明、本件特許発明3は本件特許発明1を引用するパワーモジュールの発明、本件特許発明4は本件特許発明1を引用するパワーモジュール用基板の製造方法の発明、本件特許発明5~7は本件特許発明4を直接又は間接的に引用するパワーモジュール用基板の製造方法の発明、本件特許発明8は本件特許発明6又は7を引用するパワーモジュール用基板の製造方法で使用される銅部材接合用ペーストの発明であり、本件特許発明2~8のいずれも本件特許発明1を直接又は間接的に引用する発明である。その本件特許発明1が、甲1~3のいずれに記載された発明ともいえないことから、本件特許発明2~8のいずれも、甲1~3のいずれに記載された発明ともいえない。すなわち、申立人が具体的理由として主張している、本件特許発明1~6及び8は、甲1又は2に記載された発明でもなく、本件特許発明1~3は、甲3に記載された発明でもない。 よって、本件特許発明2~8は、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 2 申立理由2について (1)本件特許発明1について ア 本件特許発明1は、本件特許明細書に記載されている「このAg-Cu共晶組織層は非常に硬いことから、上述のパワーモジュール用基板に冷熱サイクルが負荷された際に、セラミックス基板と銅板との熱膨張係数の差に起因するせん断応力が作用したときに、Ag-Cu共晶組織層が変形せずに、セラミックス基板に割れ等が発生する」(【0007】)という問題を解決するために、「前記銅板と前記セラミックス基板の界面のEPMAによる反射電子像から、倍率2000倍の視野において接合界面に連続的に形成された前記Ag-Cu共晶組織層の面積を測定して測定視野の幅の寸法で除し、得られた値の5つの視野の平均値から求められた前記Ag-Cu共晶組織層の厚さが1μm未満」と特定したものであり、本件特許明細書の【表10】~【表12】には本発明例である共晶厚さが<1μmであるものが、「セラミックス割れ」について「冷熱サイクル(-45℃←→125℃)を500回繰り返す毎にクラックの発生の有無を確認し、クラックが確認された回数で評価」(【0007】)したところ、いずれも4000回を上回るという格別顕著な効果も記載されている。 一方、「申立理由1について」で述べたように、甲1発明~甲3発明はいずれも「前記銅板と前記セラミックス基板の界面のEPMAによる反射電子像から、倍率2000倍の視野において接合界面に連続的に形成された前記Ag-Cu共晶組織層の面積を測定して測定視野の幅の寸法で除し、得られた値の5つの視野の平均値から求められた前記Ag-Cu共晶組織層の厚さが1μm未満」(上記1のア(ア)、イ(ア)及びウ(ア)の(相違点)参照)とする事項を有しないところ、上記甲1~甲4のいずれにも、Ag-Cu共晶組織層は非常に硬いことから、当該層の厚さをできるだけ薄くする(1μm未満)ことによりセラミックス割れを抑えるという技術思想について記載も示唆もない。 してみれば、甲1発明における「接合層」であるAg-Cu共晶組織層、甲2発明における「銀粉末72部、銅粉末28部」を「混合して得られたろう材ペースト」から生成されるAg-Cu共晶組織層、甲3発明における「Ag-Cu-活性金属の混在層5」であるAg-Cu共晶組織層をできるだけ薄くするとの動機付けはないことから、甲1発明~甲3発明において上記事項に係る相違点を解消することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 イ 小括 よって、本件特許発明1は、甲1~甲4の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえないことから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。 (2)本件特許発明2~8について 本件特許発明2は本件特許発明1を引用するヒートシンク付パワーモジュール用基板の発明、本件特許発明3は本件特許発明1を引用するパワーモジュールの発明、本件特許発明4は本件特許発明1を引用するパワーモジュール用基板の製造方法の発明、本件特許発明5~7は本件特許発明4を直接又は間接的に引用するパワーモジュール用基板の製造方法の発明、本件特許発明8は本件特許発明6又は7を引用するパワーモジュール用基板の製造方法で使用される銅部材接合用ペーストの発明であり、本件特許発明2~8のいずれも本件特許発明1を直接又は間接的に引用する発明である。その本件特許発明1が、上記(1)のとおり、甲1~4の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえないことから、本件特許発明2~8のいずれも、甲1~甲4の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。すなわち、申立人が具体的理由として主張している、本件特許発明3は、甲1及び甲3に基づいて、本件特許発明4は、甲1又は甲2と、甲3に基づいて、本件特許発明5及び7は、甲1又は甲2と、甲4に基づいて、いずれも当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 よって、本件特許発明2~8は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。 第6 むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~8に係る特許が、特許法第113条第2号の規定に該当するものとして取り消すことはできない。 また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700630

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