特許異議申立
2017-700698
パワーモジュール用基板の製造方法
- 審判番号
- 2017-700698
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-043339外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月18日
- 審決日
- 2017年12月14日
- 公報発行日
- 2018年03月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱マテリアル株式会社
- 【権利者代理人】青山 正和
- 【異議申立人】飯田 進
- 分類
- P1651.536-YAA(B23K) / P1651.121-YAA(B23K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6060739号発明「パワーモジュール用基板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6060739号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。
特許第6060739号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6060739号の請求項1~6に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成25年 3月 5日に特許出願され、平成28年12月22日に特許権の設定登録がされ、平成29年 1月18日に特許掲載公報が発行され、その後、同年 7月18日付けで本件特許に対し、特許異議申立人である飯田進(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年 9月12日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年10月17日付けで意見書の提出及び訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)があり、これに対して申立人から同年11月29日付けで意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1~3のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の発明の詳細な説明の段落【0042】における「0.01~0.35MPa(1~35kgf/cm2)」を「0.01~0.35MPa」に訂正する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の発明の詳細な説明の段落【0043】における「0.01~0.35MPa(1~35kgf/cm2)」を「0.01~0.35MPa」に訂正する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の発明の詳細な説明の段落【0044】における「0.01~0.35MPa(1~35kgf/cm2)」を「0.01~0.35MPa」に訂正する。
2 訂正の目的の適否,新規事項の追加の有無,特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア そもそも、単位の換算は当業者の技術常識であるところ、本件訂正前の発明の詳細な説明の段落【0042】にある「0.01~0.35MPa(1~35kgf/cm2)」という記載における前半部分の「0.01~0.35MPa」という圧力範囲を「kgf/cm2」を単位とする圧力範囲に換算すると「Pa」と「kgf/cm2」の関係は、例えば、申立人が提出した甲第7号証(国際科学振興財団編,科学大辞典,丸善株式会社,昭和60年 3月 5日発行,1501頁)における「圧力の換算」と題する表にあるように、
1Pa=1.01972×10-5kgf・cm-2
であるから、上記前半部分の「0.01~0.35MPa」という圧力範囲の換算結果は、小数第1位までの値で「0.1~3.6kgf/cm2」となり、上記記載の後半部分の「(1~35kgf/cm2)」という圧力範囲とは異なる。
したがって、上記段落【0042】の「0.01~0.35MPa(1~35kgf/cm2)」という記載に接した当業者は、前半部分の「0.01~0.35MPa」という記載と後半部分の「(1~35kgf/cm2)」という記載のいずれかに誤りがあることを理解する。
イ ここで、特許請求の範囲及び本件訂正前の発明の詳細な説明の段落【0017】,【0018】には、圧力の単位として「MPa」が単独で記載されている一方で「kgf/cm2」を単位とする圧力範囲は、段落【0042】,【0043】,【0044】に、MPaで記載された圧力範囲に対する括弧書きという補足的な形態で記載されているのみであるから、特許請求の範囲及び本件訂正前の発明の詳細な説明の記載に接した当業者であれば、本件特許における圧力の主たる単位はMPaであって、括弧書きで付されたkgf/cm2を単位とする圧力範囲の記載は補足的なものにすぎないことを理解する。
ウ 以上によれば、本件訂正前の発明の詳細な説明の段落【0042】にある「0.01~0.35MPa(1~35kgf/cm2)」という記載における「0.01~0.35MPa」という記載に誤りはなく、「(1~35kgf/cm2)」という括弧書きの記載に単位換算の誤りに起因する誤記があることは、当業者にとって明らかである。
エ したがって、訂正事項1に係る本件訂正は、本件訂正前の発明の詳細な説明の段落【0042】にある「0.01~0.35MPa(1~35kgf/cm2)」という記載から、誤記である「(1~35kgf/cm2)」という括弧書きの記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2,3について
訂正事項2,3に係る本件訂正についても、訂正事項1に係る本件訂正と同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、本件訂正請求による訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明(以下、「本件発明1~6」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
銅又は銅合金からなる銅金属板とセラミックス基板とを接合するパワーモジュール用基板の製造方法であって、
Ag、活性金属及び樹脂を含有してなるろう材層を有し、単位面積当たりのAg及び活性金属の含有量は、Agが1mg/cm2以上15mg/cm2以下とされ、活性金属が0.5mg/cm2以上6mg/cm2以下とされるろう付用シートの一方の面に、前記ろう材層と接触するように支持基材を積層してなるシート構成体を用意し、
前記銅金属板に前記シート構成体の前記支持基材とは反対側の表面を接触させて加熱圧着することにより前記銅金属板と前記シート構成体とが積層された金属板積層体を形成する金属板積層工程と、
前記金属板積層体を前記支持基材ごと回路パターン形状に打抜き加工する打抜工程と、
打抜き加工後の前記金属板積層体から前記支持基材を剥がして前記ろう材層を露出させ、
該ろう材層を前記セラミックス基板に接触させ、
これらの積層方向に0.01~0.35MPaの圧力で加圧した状態で加熱することにより前記銅金属板と前記セラミックス基板との界面に溶融金属領域を形成し、
該溶融金属領域を凝固させることにより前記銅金属板と前記セラミックス基板とをろう付けして、前記銅金属板と前記セラミックス基板との接合部に厚み15μm以下のAg-Cu共晶層を形成する接合工程
とを備えることを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項2】
銅又は銅合金からなる銅金属板とセラミックス基板とを接合するパワーモジュール用基板の製造方法であって、
Ag、活性金属及び樹脂を含有してなるろう材層を有し、単位面積当たりのAg及び活性金属の含有量は、Agが1mg/cm2以上15mg/cm2以下とされ、活性金属が0.5mg/cm2以上6mg/cm2以下とされるろう付用シートの一方の面に、前記ろう材層と接触するように支持基材を積層してなるシート構成体を用意し、
前記シート構成体を回路パターン形状に打抜き加工する打抜工程と、
打抜き加工後の前記シート構成体の前記支持基材とは反対側の表面を予め回路パターン形状に形成された前記銅金属板に接触させて加熱圧着することにより、前記銅金属板と前記シート構成体とが積層された金属板積層体を形成する金属板積層工程と、
前記金属板積層体から前記支持基材を剥がして前記ろう材層を露出させ、
該ろう材層を前記セラミックス基板に接触させ、
これらの積層方向に0.01~0.35MPaの圧力で加圧した状態で加熱することにより前記銅金属板と前記セラミックス基板との界面に溶融金属領域を形成し、
該溶融金属領域を凝固させることにより前記銅金属板と前記セラミックス基板とをろう付けして、前記銅金属板と前記セラミックス基板との接合部に厚み15μm以下のAg-Cu共晶層を形成する接合工程
とを備えることを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項3】
前記活性金属は、Ti、Hf、Zr、Nbから選択される1種又は2種以上の元素であることを特徴とする請求項1又は2に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項4】
前記ろう材層にCuが含まれており、前記Agと前記Cuとの配合比率は、Agが100重量部に対し、Cuが1を超え100以下の重量部とされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項5】
前記ろう材層の一方の面に、樹脂層が積層されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項6】
前記ろう材層の厚みと前記樹脂層の厚みとを合計した総厚みが、300μm以下であることを特徴とする請求項5に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。」
2 取消理由の内容
平成29年 9月12日付けで当審から特許権者に通知した取消理由の内容は以下のとおりである。
「第3 取消理由
(実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
記
発明の詳細な説明の【0042】【0043】【0044】における『0.01~0.35MPa(1~35kgf/cm2)』という記載では『0.01~0.35MPa』と『1~35kgf/cm2』が異なる圧力範囲となっており整合していない。
その理由は、特許異議申立書第27頁第2行~第28頁第1行に記載のとおりである。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1~6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」
3 当審の判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 取消理由通知において引用した申立理由の概要
取消理由通知において引用した特許異議申立書第27頁第2行~第28頁第1行に記載された申立理由の概要は、以下のとおりである。
(ア)本件特許公報の段落【0042】には「0.01~0.35MPa(1~35kgf/cm2)の圧力で加圧」と記載されているが、甲第7号証の記載によれば、1~35kgf/cm2=0.1~3.5MPaとなるから、上記記載における「(1~35kgf/cm2)」という記載は、本件発明1,2の「0.01~0.35MPa」をkgf/cm2の単位に換算したものではなく、当該「0.01~0.35MPa」のうちの好ましい範囲にも該当しない不明瞭な記載である。
(イ)本件発明1,2の「0.01~0.35MPa」という圧力範囲には、特別な加圧手段を伴わない常圧(1atm=0.1MPa)も含まれ、また、本件特許公報の実施例の記載には、加圧工程の説明がないから、本件発明1,2における「加圧した状態」とは加圧手段を要するのか否かが不明確である。
(ウ)以上のことから、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~6を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず、本件特許は、特許法第36条第4項第1項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
イ 当審の判断
(ア)前記「ア」「(ア)」の申立理由について
前記「第2」のとおり、本件訂正によって、本件訂正前の発明の詳細な説明の段落【0042】,【0043】,【0044】における「0.01~0.35MPa(1~35kgf/cm2)」という記載から、当業者にとって明らかな誤記であると認められる「(1~35kgf/cm2)」という記載が削除されたから、前記「ア」「(ア)」の申立理由は本件訂正によって解消した。
(イ)前記「ア」「(イ)」の申立理由について
a 本件発明1,2における「これらの積層方向に0.01~0.35MPaの圧力で加圧した状態で加熱すること」に関し、本件訂正後の発明の詳細な説明には以下の記載がある。なお「・・・」は記載の省略を表す。
「【0042】
(接合工程)
次に・・・これらの積層方向(厚み方向)に0.01~0.35MPaの圧力で加圧した状態で真空加熱炉内に装入して加熱する。ここで、真空加熱炉内の圧力は10-6Pa以上10-3Pa以下の範囲内に設定し、加熱温度は790℃以上850℃以下の範囲内に設定している。
・・・」
b 前記「a」の記載によれば、本件発明1,2の「銅金属板」,「ろう材層」及び「セラミックス基板」が積層された積層体(以下「積層体」という。)の接合工程では、積層体は、積層方向(厚み方向)に0.01~0.35MPaの圧力範囲に加圧された状態で真空加熱炉内に装入して加熱され、真空炉内の圧力(以下「炉内圧力」という。)は当該圧力範囲を大きく下回る10-6Pa以上10-3Pa以下に設定されているから、特段の加圧手段を用いない場合は、積層体は上記炉内圧力の範囲で加圧されるのにとどまり、積層体を上記圧力範囲で加圧することはできない。
したがって、積層体を上記圧力範囲に加圧した状態で真空炉内に装入して加熱するためには、当該圧力範囲に常圧(0.1MPa)が含まれることとは無関係に、加圧手段による加圧が必要になることは当業者にとって明らかなことである。
c このような加圧手段について、本件訂正後の発明の詳細な説明には具体的な記載はされていない。
しかし、例えば、申立人が提出した甲第3号証(特開2003-55059号公報)に「本発明で使用されるセラミックス基板、金属板、活性金属を含むろう材等については従来のもので充分であ・・・る。」(【0010】),「接合時の加熱条件は、活性金属法又はメタライズ法によるユニットの積層体の場合には、1×10-5Torrの高真空下、温度800~950℃、0.1~1時間であ・・・る。」「【0016】」,「加圧方法はセラミックス基板に垂直な方向であり、その方法等は特に限定するものではない。重しを載せる方法、治具等を用いて機械的に挟み込む方法等が採用される。」(【0025】)と記載されているように、本件特許の出願時において、上記加圧手段として、重しを載せる方法、治具等を用いて機械的に挟み込む方法等は、当業者に周知の手段であったと認められる。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件訂正後の発明の詳細な説明は、本件発明1,2及びこれらを引用する本件発明3~6を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないということはできず、本件特許は、特許法第36条第4項第1項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。
(エ)意見書における申立人の主張について
a 平成29年11月29日付け意見書において申立人は以下の主張をしている。
(a)本件発明の圧力範囲には常圧(1atm=0.1MPa)が含まれているから、常圧より低い圧力にすることが、雰囲気を減圧下にすることを示しているのか、例えば、甲第3号証に記載されるように重しを載せることを示しているのか不明である。
(b)実施例3と比較例3とを比較すると、比較例3では単位面積当たりのAg含有量が1mg/cm2以上15mg/cm2以下の範囲から外れる0.5mg/cm2であるものの、ろう付け用シートの厚み(13μm)は実施例3のろう付け用シートの厚み(12μm)と同程度であるから、比較例3においても厚さ15μm以下のAg-Cu共晶層が得られるように見受けられるにもかかわらず、それぞれの接合工程における具体的条件が記載されていないために厚さ15μm以下のAg-Cu共晶層が得られる条件が不明のままであるから、当業者は、銅金属板とセラミックス基板との接合部に厚み15μm以下のAg-Cu共晶層を形成するために必要なAg及び活性金属の単位面積当たりの含有量、並びに、接合工程における加圧力を設定することに過度の試行錯誤を必要とする。
b 前記(a)の主張が、本件訂正後の発明の詳細な説明の段落【0042】の記載を正解しないことによるものであって根拠を欠くことは、前記「(イ)」で検討したとおりである。
c 前記(b)の主張についても、本件訂正後の発明の詳細な説明の段落【0063】の表3によれば、比較例3では、単位面積当たりのAg含有量(0.5mg/cm2)が実施例3よりも少ないことに起因して初期接合率が実施例3の97.1%を大きく下回る48.7%となっており、これは、銅金属板とセラミックス基板との接合部にAg-Cu共晶層が均一に形成されていないことを意味するから、当業者であれば、両者の差違は明確に理解することができる。
そして、本件発明では、銅金属板とセラミックス基板との接合部に厚み15μm以下のAg-Cu共晶層を形成すること、そのために必要なAg及び活性金属の単位面積当たりの含有量、並びに積層体を加熱する際の積層方向の圧力が特定されており、加熱温度の範囲についても、本件訂正後の発明の詳細な説明の段落【0042】に「加熱温度は790℃以上850℃以下の範囲内に設定している」と記載されているから、当業者は、銅金属板とセラミックス基板との接合部に厚み15μm以下のAg-Cu共晶層を形成するために必要なAg及び活性金属の単位面積当たりの含有量、並びに、接合工程における加圧力を設定することに過度の試行錯誤を必要とするとはいえない。
d 以上のとおり、意見書における申立人の主張には、いずれも理由がないから、これを採用することはできない。
(2)取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
ア 証拠方法
甲第2号証:特開2005-213107号公報
甲第3号証:特開2003-55059号公報
甲第4号証:特開2003-192462号公報
甲第5号証:特開2004-335928号公報
甲第6号証:特開平6-177513号公報
イ 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由の概要
申立人は、本件特許の出願の出願日前に頒布された刊行物である前記「ア」の甲第2号証~甲第6号証(以下、「甲2~甲6」と略記する。)を提出し、特許異議申立書の第7頁第8行~第27頁第1行において、本件発明1~6は進歩性を有さない旨の特許異議申立理由を主張するところ、その概要は以下のとおりである。
(ア)本件発明1及びこれを引用する本件発明3~6は、甲2に記載された発明に、甲3及び甲5、甲3~甲5、又は、甲3~甲6に記載された公知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)本件発明1及びこれを引用する本件発明3~6は、甲6に記載された発明に、甲3及び甲5、又は、甲3~甲5に記載された公知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)本件発明2及びこれを引用する本件発明3~6は、甲2に記載された発明に、甲3~甲5、又は、甲3~甲6に記載された公知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(エ)本件発明2及びこれを引用する本件発明3~6は、甲6に記載された発明に、甲3~甲5に記載された公知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 当審の判断
(ア)本件発明1及びこれを引用する本件発明3~6の進歩性について
本件発明1は、「ろう材層と接触するように支持基材を積層してなるシート構成体」を用意した上で、「銅又は銅合金からなる銅金属板」「に前記シート構成体の前記支持基材とは反対側の表面を接触させて加熱圧着することにより前記銅金属板と前記シート構成体とが積層された金属板積層体を形成する金属板積層工程」と、これに続く「前記金属板積層体を前記支持基材ごと回路パターン形状に打抜き加工する打抜工程」という一連の工程を備えているところ、前記「ア」の甲2~甲6のいずれを参照しても、上記の一連の工程に相当する工程は記載も示唆もされていない。
そして、上記の一連の工程を備える本件発明1は「取り扱い性を阻害することなくAg-Cu共晶層の厚みを薄く形成でき、セラミックス基板に生じる割れを抑制することができるとともに、銅金属板とセラミックス基板とを確実に接合することができる」(本件訂正後の発明の詳細な説明の段落【0019】)という格別の効果を奏する。
したがって、本件発明1及び本件発明1の発明特定事項を全て備える本件発明3~6は、甲2~甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件発明2及びこれを引用する本件発明3~6の進歩性について
本件発明2は、「ろう材層と接触するように支持基材を積層してなるシート構成体」を用意した上で、「前記シート構成体を回路パターン形状に打抜き加工する打抜工程」と、これに続く「打抜き加工後の前記シート構成体の前記支持基材とは反対側の表面を予め回路パターン形状に形成された」「銅又は銅合金からなる銅金属板」「に接触させて加熱圧着することにより、前記銅金属板と前記シート構成体とが積層された金属板積層体を形成する金属板積層工程」という一連の工程を備えているところ、前記「ア」の甲2~甲6のいずれを参照しても、上記の一連の工程に相当する工程は記載も示唆もされていない。
そして、上記の一連の工程を備える本件発明2は「取り扱い性を阻害することなくAg-Cu共晶層の厚みを薄く形成でき、セラミックス基板に生じる割れを抑制することができるとともに、銅金属板とセラミックス基板とを確実に接合することができる」(本件訂正後の発明の詳細な説明の段落【0019】)という格別の効果を奏する。
したがって、本件発明2及び本件発明2の発明特定事項を全て備える本件発明3~6は、甲2~甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第4 結論
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700698