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特許異議申立

2025-701141

多孔質炭素系材料

審判番号
2025-701141
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-084867
登録番号
7693390
請求日
2025年12月16日
審決日
2026年04月27日
公報発行日
2026年05月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】イビデン株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人栄光事務所
  • 【異議申立人】金田 綾香
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 金 公彦
  • 審判官 増山 淳子
分類
P1651.112-Y (C04B) / P1651.113-Y (C04B) / P1651.121-Y (C04B) / P1651.536-Y (C04B) / P1651.537-Y (C04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7693390号発明「多孔質炭素系材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7693390号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7693390号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和3年5月19日の出願であって、令和7年6月9日に特許権の設定登録がされ、同年同月17日に特許掲載公報が発行された。 その後、その全請求項に係る特許に対し、令和7年12月16日に特許異議申立人である金田綾香(以下、「申立人」という)により、甲第1~12号証を証拠方法として特許異議の申立てがされ、令和8年2月10日に、申立人より特許異議申立書の手続補正書が提出されたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~3に係る発明は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、請求項1~3に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)。 「【請求項1】 炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成する多孔質炭素系材料であって、 前記2次粒子は、独立することなく互いに結合しており、 前記多孔質炭素系材料は、最大気孔径が50~1000μmである、多孔質炭素系材料。 【請求項2】 前記多孔質炭素系材料は、かさ密度が1.0~1.5g/cm3である、請求項1に記載の多孔質炭素系材料。 【請求項3】 前記多孔質炭素系材料は、曲げ強度が2~30MPaである、請求項1または2に記載の多孔質炭素系材料。」 第3 特許異議申立理由の概要 1 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について (1)甲第1号証を主引例とした場合について 本件発明1~3は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)甲第2号証を主引例とした場合について 本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)甲第3号証を主引例とした場合について ア 本件発明1は、甲第3号証に記載された発明であるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件発明2は、甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 本件発明2は、甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証又は甲第5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 本件発明3は、甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)甲第5号証を主引例とした場合について ア 本件発明1、2は、甲第5号証に記載された発明であるか、甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件発明3は、甲第5号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)甲第6~9号証から把握される発明に基づいた場合について 本件発明1~3は、甲第6~9号証から把握される、本件特許出願前に公然実施された発明である。 (6)甲第7号証、甲第8号証を主引例とした場合について 本件発明1~3は、甲第7号証又は甲第8号証に記載された発明である。 2 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について (1)「2次粒子の定義」について 本件特許明細書には、「2次粒子」の定義は記載されていない。 ここで、本件特許明細書の段落【0036】の記載(下記第4の2(2)エ)によれば、「2次粒子」は、原料粉を焼成あるいは黒鉛化したものと理解できるし、段落【0046】、【0051】、【0053】及び【図3】の記載(下記第4の2(2)エ、ク)によれば、原料粉は、成形段階で「2次粒子」と称される状態となっているとも理解できるし、段落【0043】の記載(下記第4の2(2)エ)によれば、粒度調整された原料粉が「2次粒子」と称される状態となっているとも理解できる。 これに加えて、本件発明1における「2次粒子」は、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダ」とから構成されることが特定されている一方、当該「炭素系粒子」及び「炭素質バインダ」が、焼成又は黒鉛化されたものであるか否か等は、特定されていない。 そうすると、本件発明1における「2次粒子」の構成が不明確であるから、本件発明1は明確でない。 更に、本件発明2~3について検討しても事情は同じである。 (2)「前記2次粒子は、独立することなく互いに結合しており」との特定事項について 本件発明1が、「前記2次粒子は、独立することなく互いに結合して」いる、との発明特定事項(以下、「発明特定事項B」という。)を有することは、「2次粒子」が独立することなく互いに結合している状態であることを意味している。 しかしながら、本件発明1が発明特定事項Bを有するか否かを確認する方法は、本件特許明細書の実施例以外には記載されていない。 そして、段落【0071】~【0073】の記載(下記の第4の2(2)オ)によれば、前記実施例には、以下のア及びイの2つの方法で、本件発明1が発明特定事項Bを有するか否かを確認している。 ア 断面の偏光顕微鏡写真を観察すること。 イ 水を用いた超音波洗浄によって気孔からのパーティクルが発生するか否かを確認すること。 ところが、「2次粒子」が「独立することなく互いに結合した」状態であることを、前記ア及びイの双方で確認する必要があるのか、いずれか一方の方法のみで確認すればよいのかは不明である。 また、特に前記アの方法では、観察する断面が異なると観察結果が変化することが推認されるから、同一の「多孔質炭素系材料」を観察しても、観察結果が異なることが推認されるものである。 そうすると、本件発明1が発明特定事項Bを有するか否かは、その確認方法によって結果が異なるものであるのに対して、本件発明1においては、本件発明1が発明特定事項Bを有するか否かを確認するための確認方法が特定されていないのであるから、本件発明1は不明確である。 更に、本件発明2~3について検討しても事情は同じである。 3 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について (1)「前記2次粒子は、独立することなく互いに結合しており」との特定事項について 本件特許明細書の段落【0016】、【0022】~【0023】(下記第4の2(2)ウ)には、原料粉を成形型に入れ、ピッチの軟化点よりも高い温度に加熱し、所定の形状の成形体を得る成形工程で10分以上加熱することにより、発明特定事項Bを達成できることが記載されている。また、段落【0048】(下記第4の2(2)エ)には、成形工程は、成形工程として別に準備することは必須ではなく、後の焼成工程の初期段階を成形工程とすることができることが記載されている。 一方、本件特許明細書に記載された比較例1では、成形工程でのピッチの軟化点以上の温度での加熱はしていないものの、実施例と同様に900℃で焼成して「多孔質炭素系材料」を得ており、900℃はピッチの軟化点以上の温度である。そうすると、比較例1の焼成の初期段階は、原料粉を成形型に入れ、ピッチの軟化点よりも高い温度に加熱する工程といえるから、成形工程に相当するといえるものである。してみれば、前記比較例1で製造された「多孔質炭素系材料」は、ピッチが溶融し、「2次粒子」が独立することなく互いに結合して」いるとの発明特定事項Bを有していると推認できる。 また、本件特許明細書の段落【0007】、【0028】(下記第4の2(2)ア、ウ)には、本件発明は、発明特定事項Bを有することで、材料の内部から「2次粒子」が脱落しにくく、材料の外部に出てくることが抑制されることにより、微粉末の発生を防止する、という本件発明の課題を解決できることが記載されている。 ところが、本件特許明細書の段落【0072】(下記第4の2(2)オ)には、前記比較例1で製造された「多孔質炭素系材料」は、遊離した「2次粒子」が気孔の内部に残留し、水を用いて超音波洗浄したとき、気孔からパーティクルが発生したことが確認されたことが記載されている。 そうすると、前記比較例1で製造された「多孔質炭素系材料」は、発明特定事項Bを有しているにもかかわらず、材料の内部から「2次粒子」が脱落し、材料の外部に出てきているから、本件発明の課題を解決できていないので、本件発明1は、本件発明の課題を解決しないものを包含するものである。 したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえないから、サポート要件を満たさない。 更に、本件発明2~3について検討しても事情は同じである。 (2)「最大気孔径」について 本件発明1において、「前記多孔質炭素系材料は、最大気孔径が50~1000μmである」と特定されており、本件特許明細書の段落【0061】(下記第4の2(2)エ)には、「最大気孔径」が「50~1000μm」の範囲である場合に、多孔質炭素系材料として様々な用途で好適に利用でき、かつ、十分な比表面積が得られ、気孔内部の表面を十分に利用できるという効果を有することが記載されている。 一方、本件特許明細書の実施例(段落【0070】、【表1】、下記第4の2(2)オ)においては、「多孔質炭素系材料」の「最大気孔径」は206μmの1点のみであり、比較例1の「多孔質炭素系材料」の「最大気孔径」も本件発明1において特定された範囲である255μmであり、更に、本件特許明細書には、実施例の「多孔質炭素系材料」が前記効果を奏することは記載されていない。 また、本件特許明細書には、「最大気孔径」が「50~1000μm」であることによって前記効果を奏する理由は記載されておらず、そうすることの臨界的意義も記載されていない。 したがって、当業者は、「多孔質炭素系材料」の「最大気孔径」を前記実施例に記載された206μmから、本件発明1の特定事項である「50~1000μm」の範囲に拡張乃至一般化することはできない。 更に、本件特許明細書には、「最大気孔径」を「50~1000μm」の範囲とすることと本件発明の課題の関係も記載されておらず、「最大気孔径」が「50~1000μm」であることにより、本件発明の課題の解決に寄与していることは記載されていないから、「最大気孔径」を「50~1000μm」の範囲とすることは本件発明の課題の解決に寄与しない発明特定事項である。 これらのことから、「最大気孔径」を「50~1000μm」の範囲とすることに格別の意義はないから、本件発明1は、「最大気孔径」に関して、サポート要件を満たさない。 更に、本件発明2~3について検討しても事情は同じである。 (3)「かさ密度」について 本件発明2においては、「多孔質炭素系材料のかさ密度が、1.0~1.5g/cm3である」と特定されている。また、本件特許明細書の段落【0014】(下記第4の2(2)イ)には、「かさ密度」が「1.0~1.5g/cm3」の範囲である場合に、多孔質材料として形状を維持するだけの十分な強度が得られ、かつ、十分な気孔の体積が得られるので、多孔質炭素系材料として機能を発揮できるという効果を奏することが記載されている。 一方、本件特許明細書には、「かさ密度」が「1.0~1.5g/cm3」の範囲である場合に前記効果を奏する理由は記載されておらず、そうすることの臨界的意義も記載されていない。 これらのことから、「かさ密度」を「1.0~1.5g/cm3」の範囲とすることに格別な意義はないから、本件発明2は、「かさ密度」について、サポート要件を満たさない。 本件発明1、3について検討しても事情は同じである。 (4)「曲げ強度」について 本件発明3においては、「多孔質炭素系材料の曲げ強度が、2~30MPa」と特定されており、本件特許明細書の段落【0015】(下記第4の2(2)イ)には、「曲げ強度」が「2~30MPa」の範囲である場合に、十分な強度を備えているので、構造物、各種物品などとして好適に利用でき、かつ、容易に加工できるので、容易に目的の形状を得ることができるという効果を奏することが記載されている。 一方、本件特許明細書の実施例(段落【0070】、【表1】、下記第4の2(2)オ)においては、「多孔質炭素系材料」の「曲げ強度」は10MPaの1点のみであり、比較例1の「多孔質炭素系材料」の「曲げ強度」も本件発明3において特定された範囲である5MPaであり、更に、本件特許明細書には、実施例の「多孔質炭素系材料」が前記効果を奏することは記載されていない。 更に、本件特許明細書には、曲げ強度が前記範囲内であることによって前記効果を奏する理由は記載されていないし、その臨界的意義を示す事項も示されていない。 したがって、当業者は、「多孔質炭素系材料」の「曲げ強度」を前記実施例に記載された10MPaから、本件発明3の特定事項である「2~30MPa」の範囲に拡張乃至一般化することはできず、本件発明3は、「曲げ強度」に関して、サポート要件を満たさない。 4 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について 本件特許明細書に記載された比較例1で得た「多孔質炭素系材料」は、その製造工程からみれば、前記3(1)に記載したのと同様の理由により、前記発明特定事項Bを有していると推認できる一方、本件発明の課題を解決できていないことは、前記3(1)に記載したとおりである。 一方、前記比較例1で得た「多孔質炭素系材料」が本件発明の課題を解決できていないことからみれば、前記比較例1は発明特定事項Bを有さないとも考えられる。 そうすると、当業者は、発明特定事項Bを有する「多孔質炭素系材料」を製造する方法を理解することができないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 更に、本件発明2~3について検討しても事情は同じであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない。 5 証拠方法 甲第1号証:特開2004-18354号公報 甲第2号証:特開2007-137691号公報 甲第3号証:特開平2-236292号公報 甲第4号証:特開平3-53090号公報 甲第5号証:特開平11-140681号公報 甲第6号証:Carbon and Graphite Products for the High Temperature Furnace Market、 Morgan社のカタログ 甲第7号証:特許第6226959号公報 甲第8号証:Morgan Advanced Materials SAFTY DATA SHEET、2015年、Morgan社 甲第9号証:実験成績証明書、金田綾香作成 甲第10号証:JIS K 2439:2006、「クレオソート油・加工タール・タールピッチ」、2006年、日本規格協会 甲第11号証:特願2021-084868号の審査過程における令和6年12月12日付けの拒絶理由通知書 甲第12号証:特願2021-084868号の審査過程における令和7年1月10日提出の手続補正書 第4 当審の判断 1 特許第29条1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について (1)甲各号証に記載された事項等 ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 (ア)甲第1号証には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下、同様。)。 a「【請求項1】 平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)との混合物を加熱硬化させ、非酸化性雰囲気下での炭化焼成により得られたカーボン多孔体吸着板であって、(i)JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗度が、カーボン多孔体吸着板の板厚5mmのとき、1.5~100秒であり、かつ(ii)曲げ強度が70~150MPaであることを特徴とする真空チャック用カーボン多孔体吸着板。」 b「【0008】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、上記従来のセラミック多孔体、プラスチック多孔体、金属多孔体やカーボン多孔体が持つ真空チャック用吸着板としての問題点を解消し、軽量かつ高強度、透気抵抗度が低く、均一な気孔と導電性を有する真空チャック用カーボン多孔体吸着板、及び該カーボン多孔体吸着板を容易且つ経済的に得られる製造方法を提供することにある。」 c「【0019】 本発明のカーボン多孔体吸着板は、下記の製造方法により得ることができる。その高い気孔率を有するカーボン多孔体(吸着板)の製造方法は、図1に示すように次の4(I~IV)又は5(I~V)工程からなることを特徴とし、中でも最大の特徴は、原料の一つとして、平均粒径が20~500μmの熱硬化樹脂粒子(a)を用い、特に、分級して粒度分布を狭くした熱硬化樹脂粒子を用いることである。例えば平均粒径20μmの場合、標準偏差を0.3以下、あるいは平均粒径60μmの場合、標準偏差を20以下、あるいは平均粒径100μmの場合、標準偏差を35以下にする。このように、分級して粒度分布を狭くした熱硬化樹脂粒子が原料であるカーボン多孔体は、未分級の樹脂粒子が原料であるカーボン多孔体と比較して、バインダー量、平均粒径、平均気孔径が同様の場合、透気抵抗度を低くすることができる。また、同様の透気抵抗度の場合、気孔率を小さくすることができ、その結果、強度を高くすることができる。 【0020】 [工程] (I)混合(又は混練)工程:平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを混合又は混練する工程 (II)予備成形する工程:工程(I)で得られた樹脂混合物を、所望形状の成形容器又は金型に入れ、予備成形する工程 (III)成形(熱硬化)工程:工程(II)の予備成形された樹脂混合物を、離型可能な硬さまで熱硬化し、所望形状の多孔性熱硬化物を得る工程 (IV)焼成工程:工程(III)で得られた多孔性熱硬化物を、不活性ガス雰囲気中にて、800~2500℃の温度で焼成する工程 (V)成形加工工程:工程(IV)で得られたカーボン多孔体を、所定の形状、例えば円板に成形加工する工程 【0021】 1.混合(又は混練)工程 本発明の高い気孔率を有するカーボン多孔体吸着板の製造方法では、先ず、平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーである熱硬化性樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを混合又は混練する工程、すなわち混合(又は混練)工程が行われる。 【0022】 (1)固体状原料(A) 高い気孔率を有するカーボン多孔体吸着板の原料の一つとして用いられる固体状原料(A)は、平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有したものである。 本発明においては、前記したように、この平均粒径が20~500μmの熱硬化樹脂粒子(a)であって、分級して粒度分布を狭くした熱硬化樹脂粒子を用いることにより、高い気孔率を有するカーボン多孔体吸着板が得られることに特徴がある。このように、分級して粒度分布を狭くした熱硬化樹脂粒子が原料であるカーボン多孔体は、未分級の樹脂粒が原料であるカーボン多孔体と比較して、バインダー量、平均粒径、平均気孔径が同様の場合、透気抵抗度を低くすることができる。また、同様の透気抵抗度の場合、気孔率を小さくすることができ、強度を高くすることができる。 また、熱硬化樹脂粒子(a)を用いずに、通常の熱硬化性樹脂のみで製造したカーボン多孔体は、緻密であり、その気孔率が非常に小さくなり、即ち透気度が小、透気抵抗度が大となる。 ・・・ 【0028】 混合機としては、固体状原料(A)、熱硬化性樹脂(B)、及び更に溶剤(C)を均一に分散、混合できるものであれば、特に限定されない。そのような混合機としては、ボールミル、ペブルミル、リボンミキサー、スーパーミキサーなどが挙げられる。 また、固体状原料(A)、熱硬化性樹脂(B)、及び更に溶剤(C)を均一に分散、混合できるものであれば、混練機を用いてもよく、混練機としては、ミキシングロール、バンバリミキサー、インターナルミキサー、ニ軸連続ミキサーなどが挙げられる。 ・・・ 【0034】 本発明のカーボン多孔体吸着板の製造方法により、得られたカーボン多孔体吸着板は、原料により、球状カーボンの集合体、或いは球状カーボン、繊維状カーボン、アルミナ粒子、シリカ粒子などの集合体である。 また、得られたカーボン多孔体吸着板の物性としては、種々の製造条件、例えば原料としての固体状原料(A)や熱硬化性樹脂(B)の配合割合等により異なるが、例えば、JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗度が1.5~100秒であり、気孔径分布が40~1200μmの範囲であり、換算気孔率が30~60%であり、かさ密度が0.75~1.2Mg/m3であり、曲げ強度が70~150MPaであり、固有抵抗が25~1500μΩ・mであり、真空チャック用の吸着板として好適である。また、800℃以上の温度で焼成しているために、純度的に高品質であり、すなわち、耐熱性や耐薬品性に優れており、機械的強度にも優れている。さらに、カーボン多孔体吸着板の製造方法自体も、上述したように、複雑な工程がなく、容易かつ経済的である。」 d「【0037】 [実施例1] 固体状原料(A)として、平均粒子径60μm(標準偏差17.9)のフェノール樹脂のビーズを90重量部と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)として、硬化剤添加ノボラック系フェノール樹脂粉末を10重量部とを十分に混合し、金型で、15N/cm2、160℃,1時間の条件で加熱加圧成形することにより、樹脂多孔体を作製した。その後、この樹脂多孔体を真空中で1000℃まで4℃/時間で昇温して炭化焼成し、カーボン多孔体吸着板を得た。得られたカーボン多孔体吸着板の物性等を測定評価した。JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗度は、72.3秒、曲げ強度は、91.7MPaなどであった。樹脂混合物の組成とカーボン多孔体吸着板の物性評価結果を表1に示す。 ・・・ 【0044】 【表1】 [図:0001435210000001.jpg] 」 (イ)上記(ア)aの記載によれば、甲第1号証には、平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)との混合物を加熱硬化させ、非酸化性雰囲気下での炭化焼成により得られたカーボン多孔体吸着板であって、(i)JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗率が、カーボン多孔体の板厚5mmのとき、1.5~100秒であり、かつ(ii)曲げ強度が70~150MPaである、カーボン多孔質体吸着板が記載されている。 また、前記(ア)b~cの記載によれば、前記カーボン多孔質体吸着板は、従来のセラミック多孔体、プラスチック多孔体、金属多孔体やカーボン多孔体が持つ真空チャック用吸着板としての問題点を解消し、軽量かつ高強度、透気抵抗度が低く、均一な気孔と導電性を有する真空チャック用カーボン多孔体吸着板を提供することを目的とするものであって、その製造方法は、以下の4(I~IV)又は5(I~V)工程からなるものである。 (I)混合(又は混練)工程:平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを混合又は混練する工程 (II)予備成形する工程:工程(I)で得られた樹脂混合物を、所望形状の成形容器又は金型に入れ、予備成形する工程 (III)成形(熱硬化)工程:工程(II)の予備成形された樹脂混合物を、離型可能な硬さまで熱硬化し、所望形状の多孔性熱硬化物を得る工程 (IV)焼成工程:工程(III)で得られた多孔性熱硬化物を、不活性ガス雰囲気中にて、800~2500℃の温度で焼成する工程 (V)成形加工工程:工程(IV)で得られたカーボン多孔体を、所定の形状、例えば円板に成形加工する工程 すなわち、前記カーボン多孔体吸着板の製造方法では、まず、平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを混合又は混練する工程、すなわち混合(又は混練)工程が行われるものであり、平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)であって、分級して粒度分布を狭くした熱硬化性樹脂を用いることにより、高い気孔率を有するカーボン多孔体吸着板が得られることに特徴があるものであり、前記(I)混合(又は混練)工程における混合機としては、固体状原料(A)と、バインダーである熱硬化性樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを均一に分散、混合できるものであれば特に限定されないものであり、固体状原料(A)と、バインダーである熱硬化性樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを均一に分散、混合できるものであれば、混練機を用いてもよいものであり、前記製造方法により得られたカーボン多孔質体吸着板の物性は、JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗度が1.5~100秒であり、気孔径分布が40~1200μmの範囲であり、換算気孔率が30~60%であり、かさ密度が0.75~1.2Mg/m3であり、曲げ強度が70~150MPaであり、固有抵抗が25~1500μΩ・mであり、真空チャック用の吸着板として好適であり、800℃以上の温度で焼成しているために、純度的に高品質であり、すなわち、耐熱性や耐薬品性に優れており、機械的強度にも優れているものである。 さらに、前記(ア)dに記載された実施例1に注目すると、前記真空チャック用カーボン多孔体吸着板は、固体状原料(A)として、平均粒子径60μm(標準偏差17.9)のフェノール樹脂のビーズを90重量部と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)として、硬化剤添加ノボラック系フェノール樹脂粉末を10重量部とを十分に混合し、金型で、15N/cm2、160℃、1時間の条件で加熱加圧成形することにより、樹脂多孔体を作製し、その後、この樹脂多孔体を真空中で1000℃まで4℃/時間で昇温して炭化焼成し、カーボン多孔体吸着板を得たものであり、その物性は、固有抵抗が580μΩ・m、換算気孔率が44.4%、嵩密度が0.853Mg/m3、曲げ強さが91.7MPa、JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗度が72.3sec、チャック用吸着板としての使用可否が可であったものである。 (ウ)前記(イ)によれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)との混合物を加熱硬化させ、非酸化性雰囲気下での炭化焼成により得られたカーボン多孔体吸着板であって、(i)JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗率が、カーボン多孔体の板厚5mmのとき、1.5~100秒であり、かつ(ii)曲げ強度が70~150MPaである、カーボン多孔質体吸着板であって、 前記カーボン多孔質体吸着板は、従来のセラミック多孔体、プラスチック多孔体、金属多孔体やカーボン多孔体が持つ真空チャック用吸着板としての問題点を解消し、軽量かつ高強度、透気抵抗度が低く、均一な気孔と導電性を有する真空チャック用カーボン多孔体吸着板を提供することを目的とするものであり、 その製造方法は、以下の4(I~IV)又は5(I~V)工程からなるものであり、 (I)混合(又は混練)工程:平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを混合又は混練する工程 (II)予備成形する工程:工程(I)で得られた樹脂混合物を、所望形状の成形容器又は金型に入れ、予備成形する工程 (III)成形(熱硬化)工程:工程(II)の予備成形された樹脂混合物を、離型可能な硬さまで熱硬化し、所望形状の多孔性熱硬化物を得る工程 (IV)焼成工程:工程(III)で得られた多孔性熱硬化物を、不活性ガス雰囲気中にて、800~2500℃の温度で焼成する工程 (V)成形加工工程:工程(IV)で得られたカーボン多孔体を、所定の形状、例えば円板に成形加工する工程 前記カーボン多孔体吸着板の製造方法では、まず、平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを混合又は混練する工程、すなわち混合(又は混練)工程が行われるものであり、 平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)であって、分級して粒度分布を狭くした熱硬化性樹脂を用いることにより、高い気孔率を有するカーボン多孔体吸着板が得られることに特徴があるものであり、 前記(I)混合(又は混練)工程における混合機としては、固体状原料(A)と、バインダーである熱硬化性樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを均一に分散、混合できるものであれば特に限定されないものであり、固体状原料(A)と、バインダーである熱硬化性樹脂(B)及び、更に、溶剤(C)を均一に分散、混合できるものであれば、混練機を用いてもよいものであり、 前記製造方法により得られたカーボン多孔質吸着板は、原料により、球状カーボンの集合体、或いは、球状カーボン、繊維状カーボン、アルミナ粒子、シリカ粒子などの集合体であり、 得られたカーボン多孔質体吸着板の物性は、JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗度が1.5~100秒であり、気孔径分布が40~1200μmの範囲であり、換算気孔率が30~60%であり、かさ密度が0.75~1.2Mg/m3であり、曲げ強度が70~150MPaであり、固有抵抗が25~1500μΩ・mであり、真空チャック用の吸着板として好適であり、800℃以上の温度で焼成しているために、純度的に高品質であり、すなわち、耐熱性や耐薬品性に優れており、機械的強度にも優れているものであり、 前記真空チャック用カーボン多孔体吸着板は、固体状原料(A)として、平均粒子径60μm(標準偏差17.9)のフェノール樹脂のビーズを90重量部と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)として、硬化剤添加ノボラック系フェノール樹脂粉末を10重量部とを十分に混合し、金型で、15N/cm2、160℃、1時間の条件で加熱加圧成形することにより、樹脂多孔体を作製し、その後、この樹脂多孔体を真空中で1000℃まで4℃/時間で昇温して炭化焼成し、カーボン多孔体吸着板を得たものであり、 その物性は、固有抵抗が580μΩ・m、換算気孔率が44.4%、嵩密度が0.853Mg/m3、曲げ強さが91.7MPa、JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗度が72.3sec、チャック用吸着板としての使用可否が可であったものである、真空チャック用カーボン多孔体吸着板。」(以下、「甲1発明」という。) イ 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明 (ア)甲第2号証には、以下の記載がある。 a「【請求項1】 メソフェーズピッチにカーボンナノファイバーが混入され、メソフェーズピッチが孔径のほぼ揃った連続多孔質構造体に形成され、メソフェーズピッチの壁の厚み内に、壁表面に突出することなく前記カーボンナノファイバーが封止込められていることを特徴とする多孔質体。 ・・・ 【請求項3】 メソフェーズピッチに、カーボンナノファイバーが20wt%以下混入されていることを特徴とする請求項1または2記載の多孔質体。 【請求項4】 請求項1~3いずれか1項記載の多孔質体が不活性ガス下1000℃~3000℃の温度範囲で加熱されてメソフェーズピッチが炭化または黒鉛化されていることを特徴とする多孔質体。 【請求項5】 メソフェーズピッチとカーボンナノファイバーとを混合する混合工程と、該混合工程で混合された材料を不活性ガス下370℃~470℃の温度で加熱する前加熱工程と、該前加熱工程で加熱処理された材料を不活性ガスによる加圧下で加温してメソフェーズピッチを発泡させる後加熱工程とを含むことを特徴とする多孔質体の製造方法。 ・・・ 【請求項7】 前記後加熱工程で、前記メソフェーズピッチが溶融する温度で所要時間加熱し、次いでメソフェーズピッチが固化する温度で所用時間加熱する2段階熱処理を行うことを特徴とする請求項5または6記載の多孔質体の製造方法。 【請求項8】 メソフェーズピッチに、カーボンナノファイバーを20wt%以下混入させることを特徴とする請求項5~7いずれか1項記載の多孔質体の製造方法。 【請求項9】 請求項5~8いずれか1項記載の多孔質体の製造方法によって得られた多孔質体を不活性ガス下1000℃~3000℃の温度で加熱してメソフェーズピッチを炭化または黒鉛化させる工程を含むことを特徴とする多孔質体の製造方法。」 b「【背景技術】 【0002】 カーボンナノファイバー(カーボンナノチューブ等のナノファイバー:以下CNFという)は優れた機械的特性、熱伝導性、および電気伝導性を有するため、ナノテクノロジーを代表する新機能材料として、エレクトロニクスや医療など、様々な分野での利用が期待されている。複合材料のフィラーとしての利用は従来の炭素繊維と比較して少量の添加で諸特性を改善するため、種々の母材(樹脂、ゴム、金属、セラミックス、炭素など)にCNFを添加した先進複合材料の開発が進められている。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 発明者らは先に、上記化学合成されたメソフェーズピッチ(AR)中にCNFを添加し、黒鉛化処理を施すことで、熱伝導性に優れた炭素または黒鉛によりCNFを結合させたC/CNFフォーム(多孔質体)を検討した。このフォームにおいて、CNF添加量が10wt%までの範囲ではCNFは均一に分散され、連続的な気孔構造を形成した。しかしながら、CNFの添加により、メソフェーズの粘度が部分的に高くなったり低くなったりして不均一になり、その結果生じる気孔の大きさが不揃いになり、圧縮強度が低下するという課題がある。そこで本発明は上記課題を解決すべくなされたもので、その目的とするところは、CNFが混入すると共に孔径のほぼ揃った連続多孔質構造体をなす多孔質体およびその製造方法を提供するにある。」 c「【実施例】 【0019】 マトリクス樹脂として、メソフェーズピッチであるAR(Aromatic Resin)を用い、このARにフィラーとして気相成長炭素繊維のVGCF(平均直径150nm、平均長さ10~20μm:昭和電工株式会社製)を10wt%添加し、2軸押出機により混練りした。 固化成形時のガス発生量を抑制するため、上記混合材料を炉中、不活性ガス(アルゴン)雰囲気中、460℃で30分間、前加熱処理を行った。図1は一連の温度プロファイルを示す。この前加熱処理により、ARはその温度域までに発生するガスを出しながら溶融した。 【0020】 冷却後、固形化した材料を粉砕機により粉砕した。 この粉砕した材料12を、図2に示す加熱炉10に収容し、後加熱処理を行った。加熱炉10内にはArガスを導入し、加熱炉10内を3MPaのアルゴンガス雰囲気とした。ヒーター14により加熱炉10内を、図1に示す温度プロファイルにより加熱した。すなわち、炉内温度が290℃となる1次加熱により20分間加熱し、次いで炉内温度が600℃となる2次加熱により20分間加熱し、冷却して多孔質体を得た。なお、図2において、16は圧力計、18は圧力逃がし弁である。1次加熱の際には加熱炉10内の圧力はわずかしか上昇しないが、2次加熱の際にはARが発泡してガスが発生することにより炉内圧力は上昇する。その際、ガスが圧力逃がし弁18から放出されるので、加熱炉10内は一定の圧力に維持される。 次に、多孔質体をさらに3000℃の温度で、不活性ガス雰囲気下(圧力は大気圧)で焼成し、ARが黒鉛化した黒鉛化多孔質体を得た。 なお、比較例として、ARにVGCFを混入しないもの、およびVGVFを10wt%混入したものとにおいて、共に前加熱処理を行わないものの多孔質体(焼成工程無し)と炭化多孔質体のサンプルを作成した。 【0021】 図3は、ARとVGCF(10wt%)とを2軸押出機で混練りした後の混合材料の表面のSEM写真である。図3から明らかなように、VGCFはほぼ均一にAR中に混入されている。VGCFの端部はAR表面から露出している。 ・・・ 【0023】 図5は、VGCFの混入の有り、無し、前加熱処理の有り、無しで、600℃の後加熱処理により作製したサンプルの表面のSEM写真である。 ・・・ 【0025】 図6は、図5に示すサンプルをさらに3000℃の温度で不活性ガス雰囲気中、大気圧下で焼成処理し、ARの部位を黒鉛化させたサンプルの表面のSEM写真である。」 (イ)前記(ア)aによれば、甲第2号証には、メソフェーズピッチにカーボンナノファイバーが混入され、メソフェーズピッチが孔径のほぼ揃った連続多孔質構造体に形成され、メソフェーズピッチの壁の厚み内に、壁表面に突出することなく前記カーボンナノファイバーが封止込められていることを特徴とする多孔質体であって、 メソフェーズピッチに、カーボンナノファイバーが20wt%以下混入されており、多孔質体は不活性ガス下1000℃~3000℃の温度範囲で加熱されてメソフェーズピッチが炭化又は黒鉛化されていることを特徴とする多孔質体が記載されているといえる。 また、前記(ア)cによれば、甲第2号証には、マトリクス樹脂として、メソフェーズピッチであるAR(Aromatic Resin)を用い、このARにフィラーとして気相成長炭素繊維のVGCF(平均直径150nm、平均長さ10~20μm:昭和電工株式会社製)を10wt%添加し、2軸押出機により混練りし、固化成形時のガス発生量を抑制するため、上記混合材料を炉中、不活性ガス(アルゴン)雰囲気中、460℃で30分間、前加熱処理を行った。図1は一連の温度プロファイルを示す。この前加熱処理により、ARはその温度域までに発生するガスを出しながら溶融し、冷却後、固形化した材料を粉砕機により粉砕し、この粉砕した材料を、加熱炉に収容し、炉内温度が290℃となる1次加熱により20分間加熱し、次いで炉内温度が600℃となる2次加熱により20分間加熱し、冷却して多孔質体を得た後、多孔質体をさらに3000℃の温度で、不活性ガス雰囲気下(圧力は大気圧)で焼成し、ARが黒鉛化した黒鉛化多孔質体を得たことが記載されている。 (ウ)前記(イ)によれば、甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「メソフェーズピッチにカーボンナノファイバーが混入され、メソフェーズピッチが孔径のほぼ揃った連続多孔質構造体に形成され、メソフェーズピッチの壁の厚み内に、壁表面に突出することなく前記カーボンナノファイバーが封止込められていることを特徴とする多孔質体であって、 メソフェーズピッチに、カーボンナノファイバーが20wt%以下混入されており、多孔質体は不活性ガス下1000℃~3000℃の温度範囲で加熱されてメソフェーズピッチが炭化又は黒鉛化されている多孔質体であって、 マトリクス樹脂として、メソフェーズピッチであるAR(Aromatic Resin)を用い、このARにフィラーとして気相成長炭素繊維のVGCF(平均直径150nm、平均長さ10~20μm:昭和電工株式会社製)を10wt%添加し、2軸押出機により混練りし、固化成形時のガス発生量を抑制するため、上記混合材料を炉中、不活性ガス(アルゴン)雰囲気中、460℃で30分間、前加熱処理を行い、この前加熱処理により、ARはその温度域までに発生するガスを出しながら溶融し、冷却後、固形化した材料を粉砕機により粉砕し、この粉砕した材料を、加熱炉に収容し、炉内温度が290℃となる1次加熱により20分間加熱し、次いで炉内温度が600℃となる2次加熱により20分間加熱し、冷却して多孔質体を得た後、多孔質体をさらに3000℃の温度で、不活性ガス雰囲気下(圧力は大気圧)で焼成し、ARが黒鉛化して得られる黒鉛化多孔質体。」(以下、「甲2発明」という。) ウ 甲第3号証の記載事項及び甲第3号証に記載された発明 (ア)甲第3号証には、以下の記載がある。 a「(1)原料炭素質骨材に粘結材を配合し、混捏、加圧成形、焼成して電極板を得るに際し、炭素質骨材原料として74μm~1mmの範囲の粒径を有する石油コークス、ピッチコークスまたはこれらの混合物の粒子を使用し、これに適宜の粘結剤を原料骨材100部に対し8~22部の割合で加えて混捏し、次いで成形温度95~115℃で所望の電極板形状に加圧成形し、しかる後この成形品を1000~1500℃の温度範囲で焼成することを特徴とするフッ素電解製造用炭素質電極板の製造法。」(特許請求の範囲) b「(作 用) 一般に炭素質骨材と粘結材とを適宜の割合で配合し、混捏、加圧成形、焼成の各工程を経て得られた炭素質電極板には、通常その表面に製造過程において生ずる小は数μmから大は数mmに及ぶ無数の開口気孔が存在するが、本発明においては前記したように、原料として使用する炭素質骨材の粒径や粘結材の配合割合を特定の範囲内とし、 さらに必要に応じ原料混捏後の加圧成形工程での成形圧力を特定の範囲に調整するなど特別の製造条件下で電極板の製造を行なうことによって、目的とする孔径分布、即ちその50%が50um乃至150μmの孔径範囲にあるような開口気孔の形成された炭素質電極を得ることに成功したものである。 本発明においては原料骨材として粒径74μm以上1mm以下の範囲に粒度調整された破砕石油コークスまたは破砕ピッチコークスまたはこれらの混合物粒子が使用される。粒径が上記範囲における上限を超えると得られる電極板の開口気孔径が大きくなり過ぎ、また下限未満であると気孔径が小さくなり過ぎていずれの場合においても本発明の目的とする電極板が得られない。 なおこの場合において操作上74μm以下の粒径の微粒子の混入が避けられない場合があるが、このような場合においても不可避的な微粒子の量は最大5%に抑える必要がある。 また炭素質電極材科として一般に用いられる炭材に無煙炭があるが、発明者らの実験によると無煙炭を本発明の粒径範囲に破砕したものを骨材として使用して得られた電極板は機械的強度が劣るために好ましくなかった。 次に上記の骨材を適宜粒度配合してコールタールピッチまたは石油ピッチあるいはこれらにコールタールを添加した粘結材を原料骨材100重量部に対して8~22重量部を添加して常法により混捏する。 粘結材の添加量が8重量部未満であるときは、骨材に粘結材を均等にまぶすことができず、従って成形が困難となる。一方粘結材が22重量部を超えると粘結材に含まれる炭素分が焼成後も相当量残留し、電極板の開口気孔を塞ぐようになるために、結果的にその孔径を小さくするので不都合である。 次に、混捏して得られた炭材を所望の電極板の形状が得られるように加圧成形する。加圧成形に当たっての温度は95~115℃の範囲が適当である。また成形圧力は適用する加圧成形法の応じて適宜定められる。例えば加圧成形法として圧縮成形法を採用した場合には30~250kg/cm2の範囲、また振動成形法を採用した場合には0.03~0.5kg/cm2の範囲とするのが適当である。成形圧力が高くなると焼成後の電極板表面の開口気孔の孔径は大きくなる傾向を有するし、また成形圧力が低くなると孔径が小さくなる傾向を有するので、加圧成形に際しては上記した圧力範囲内に留めることが望ましい。 加圧成形品は通常一般に行なわれる炭素質電極焼成温度、つまり原料炭材が黒鉛化しない程度の温度の1000~1500℃、好ましくは1100~1400℃の温度範囲で焼成することによって、所期の表面開口気孔径を有するフッ素電解製造用の電極板を得ることができる。 焼成温度が1000℃未満であるときは焼成不十分であって電極板として必要な強度が不足し、また1500℃を超えると炭材が黒鉛化して孔径分布の如何に拘らず陽極効果の発生が短期的に起こるようになるので何れにしても好ましくない。 本発明の製造法により得られた電極板は、これを陽極としてフッ素電解槽に組み込み、常法によるフッ素電解を行なった場合に長期に亘って陽極効果発生による電解中断を起こし難く、従って従来フッ素電解において最も問題とされていた短時間の操業での陽極効果の発生による生産効率の低下の問題を解決し、長時間に亘る電解継続が可能になるので操業効率上きわめて有効である。」(2頁右下欄1行~3頁左下欄16行) c「(実施例2) 原料炭素質骨材として粒径が500~1000μmの粒子45%、297~500μmの粒子30%、74~297μmの粒子22%、(残り3%は不可避的に混入する74μm以下の微粒子)からなるような粒径分布を有する石油コークス破砕粒を用い、中ピッチ(JISk2439)粘結材を骨材100重量部に対して20重量部加えて混捏し、これを振動成形機を使用して、0.04kg/cm2の成形圧力をもって成形し、次いでこの成形物を焼成炉において1350℃にて焼成して長さ600mm、巾350mm、厚さ50mmの炭素質電極板を得た。 この電極板について、その表面開口気孔の孔径分布を水銀圧入法による気孔測定法によって測定したところ、孔径50μm以下のものが31%、50~150μmのものが65%、150μm以上のものが4%であった。」(4頁左下欄1~18行) (イ)前記(ア)aの記載によれば、甲第3号証には、原料炭素質骨材に粘結材を配合し、混捏、加圧成形、焼成して電極板を得るに際し、炭素質骨材材料として、炭素質骨材原料として74μm~1mmの範囲の粒径を有する石油コークス、ピッチコークス又はこれらの混合物の粒子を使用し、これに適宜の粘結剤を原料骨材100部に対し8~22部の割合で加えて混捏し、次いで成形温度95~115℃で所望の電極板形状に加圧成形し、しかる後この成形品を1000~1500℃の温度範囲で焼成することを特徴とするフッ素電解製造用炭素質電極板の製造法が記載されている。 そして、前記(ア)bの記載によれば、前記フッ素電解製造用炭素質電極板の製造法は、原料骨材として粒径74μm以上1mm以下の範囲に粒度調整された破砕石油コークス又は破砕ピッチコークス又はこれらの混合物粒子が使用されるものであり、次に上記の骨材を適宜粒度配合してコールタールピッチ又は石油ピッチあるいはこれらにコールタールを添加した粘結材を原料骨材100重量部に対して8~22重量部を添加して常法により混捏するものであり、次に、混捏して得られた炭材を所望の電極板の形状が得られるように加圧成形するものであり、加圧成形に当たっての温度は95~115℃の範囲が適当であり、成形圧力は適用する加圧成形法の応じて適宜定められるものであり、加圧成形法として圧縮成形法を採用した場合には30~250kg/cm2の範囲、また振動成形法を採用した場合には0.03~0.5kg/cm2の範囲とするのが適当であるものであり、加圧成形品は通常一般に行なわれる炭素質電極焼成温度、つまり原料炭材が黒鉛化しない程度の温度の1000~1500℃、好ましくは1100~1400℃の温度範囲で焼成することによって、所期の表面開口気孔径を有するフッ素電解製造用の電極板を得ることができるものであり、前記製造法により得られた電極板は、これを陽極としてフッ素電解槽に組み込み、常法によるフッ素電解を行なった場合に長期に亘って陽極効果発生による電解中断を起こし難く、従って従来フッ素電解において最も問題とされていた短時間の操業での陽極効果の発生による生産効率の低下の問題を解決し、長時間に亘る電解継続が可能になるので操業効率上きわめて有効であるものである。 更に、前記ア(c)の記載によれば、前記フッ素電解製造用炭素質電極板の製造法は、原料炭素質骨材として粒径が500~1000μmの粒子45%、297~500μmの粒子30%、74~297μmの粒子22%、(残り3%は不可避的に混入する74μm以下の微粒子)からなるような粒径分布を有する石油コークス破砕粒を用い、中ピッチ(JISk2439)粘結材を骨材100重量部に対して20重量部加えて混捏し、これを振動成形機を使用して、0.04kg/cm2の成形圧力をもって成形し、次いでこの成形物を焼成炉において1350℃にて焼成して長さ600mm、巾350mm、厚さ50mmの炭素質電極板を得たものであり、この電極板について、その表面開口気孔の孔径分布を水銀圧入法による気孔測定法によって測定したところ、孔径50μm以下のものが31%、50~150μmのものが65%、150μm以上のものが4%であったものである。 (ウ)そして、前記(イ)に記載されたフッ素電解製造用炭素質電極板の製造法により製造されたフッ素電解製造用炭素質電極板に注目すると、甲第3号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「原料炭素質骨材に粘結材を配合し、混捏、加圧成形、焼成して電極板を得るに際し、炭素質骨材材料として、炭素質骨材原料として74μm~1mmの範囲の粒径を有する石油コークス、ピッチコークス又はこれらの混合物の粒子を使用し、これに適宜の粘結剤を原料骨材100部に対し8~22部の割合で加えて混捏し、次いで成形温度95~115℃で所望の電極板形状に加圧成形し、しかる後この成形品を1000~1500℃の温度範囲で焼成することを特徴とするフッ素電解製造用炭素質電極板であって、 前記フッ素電解製造用炭素質電極板の製造法は、原料骨材として粒径74μm以上1mm以下の範囲に粒度調整された破砕石油コークス又は破砕ピッチコークス又はこれらの混合物粒子が使用されるものであり、 次に上記の骨材を適宜粒度配合してコールタールピッチ又は石油ピッチあるいはこれらにコールタールを添加した粘結材を原料骨材100重量部に対して8~22重量部を添加して常法により混捏するものであり、 次に、混捏して得られた炭材を所望の電極板の形状が得られるように加圧成形するものであり、加圧成形に当たっての温度は95~115℃の範囲が適当であり、成形圧力は適用する加圧成形法の応じて適宜定められるものであり、加圧成形法として圧縮成形法を採用した場合には30~250kg/cm2の範囲、また振動成形法を採用した場合には0.03~0.5kg/cm2の範囲とするのが適当であるものであり、 加圧成形品は通常一般に行なわれる炭素質電極焼成温度、つまり原料炭材が黒鉛化しない程度の温度の1000~1500℃、好ましくは1100~1400℃の温度範囲で焼成することによって、所期の表面開口気孔径を有するフッ素電解製造用の電極板を得ることができるものであり、 前記製造法により得られた電極板は、これを陽極としてフッ素電解槽に組み込み、常法によるフッ素電解を行なった場合に長期に亘って陽極効果発生による電解中断を起こし難く、従って従来フッ素電解において最も問題とされていた短時間の操業での陽極効果の発生による生産効率の低下の問題を解決し、長時間に亘る電解継続が可能になるので操業効率上きわめて有効であるものであり、 前記フッ素電解製造用炭素質電極板の製造法は、原料炭素質骨材として粒径が500~1000μmの粒子45%、297~500μmの粒子30%、74~297μmの粒子22%、(残り3%は不可避的に混入する74μm以下の微粒子)からなるような粒径分布を有する石油コークス破砕粒を用い、 中ピッチ(JISk2439)粘結材を骨材100重量部に対して20重量部加えて混捏し、 これを振動成形機を使用して、0.04kg/cm2の成形圧力をもって成形し、次いでこの成形物を焼成炉において1350℃にて焼成して長さ600mm、巾350mm、厚さ50mmの炭素質電慢板を得たものであり、 この電極板について、その表面開口気孔の孔径分布を水銀圧入法による気孔測定法によって測定したところ、孔径50μm以下のものが31%、50~150μmのものが65%、150μm以上のものが4%であったものである、フッ素電解製造用炭素質電極板。」(以下、「甲3発明」という。) エ 甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、以下の記載がある。 「2 特許請求の範囲 (1)フッ化水素を含む溶融塩を電解してフッ素を製造する方法において、電気抵抗異方比が1.3以下で、かつ多孔質である炭素を陽極材とすることを特徴とするフッ素の製造方法。 ・・・ (4)陽極材のかさ比重が1.0~1.3g/cm3である請求項1の製造方法。」 オ 甲第5号証の記載事項及び甲第5号証に記載された発明 (ア)甲第5号証には、以下の記載がある。 a「【請求項1】 コークス粒子とピッチの炭化物を結合材とする多孔質炭素基材の骨格表面に、ガラス状カーボンが被覆された複合構造を有することを特徴とする水処理用多孔質炭素電極。」 b「【0009】 【発明が解決しようとする課題】この水処理用多孔質炭素電極の処理能力の向上と耐閉塞性の改善を図るため、気孔径を大きくするためには粒径の大きなコークス粒子を用いることが必要であるが、その結果バインダーとの結合界面が相対的に小さくなって材質強度の低下を招き、水処理時に黒鉛粒子の脱落が生じる問題点がある。更に、水処理時の陽極酸化による黒鉛の腐食も均等に進行し難いので、黒鉛粒子の脱落が生じ易く被処理水が汚染される問題点もある。 【0010】本発明は、かかる問題点を解消して、微生物を電気化学的に殺菌処理する電解槽に用いる黒鉛質の多孔質炭素電極として、通水抵抗が小さい優れた気孔性状を備えるとともに材質強度が高く、耐蝕性に優れた水処理用多孔質炭素電極を提供することを目的とする。」 c「【0016】本発明の水処理用多孔質炭素電極は、次の方法により製造することができる。まず、原料となるコークス粒子とピッチとを所定の割合で混合して充分に混練する。混合比は目的とする気孔性状や強度特性により適宜な割合に設定されるが、通常コークス粒子100重量部にピッチを20~40重量部の割合で混合し、ニーダーなどの混練機を用いて充分に混練する。なお、多孔質炭素基材の気孔性状はコークス粒子の粒度特性により調整することができる。例えば、気孔分布が広くなると被処理水が多孔質電極内を偏流するために殺菌効果が減退するので、気孔分布はシャープであることが好ましく、気孔径分布をシャープ化し、気孔径を調整するためには粒度分布が狭いコークス粒子を原料として用いることが好ましい。 【0017】コークス粒子とピッチとの混練物は、所望の成形型に入れて非酸化性雰囲気下800℃以上の温度で熱処理することにより多孔質炭素基材が得られる。この多孔質炭素基材に熱硬化性樹脂溶液を浸透させ、乾燥、加熱硬化したのち非酸化性雰囲気中800℃以上の温度、好ましくは2000~2800℃の温度で熱処理して黒鉛化することにより多孔質炭素基材の骨格表面がガラス状カーボンで被覆された複合構造を有する本発明の水処理用多孔質炭素電極が製造される。」 d「【0022】実施例1~3 目開き35、60及び100メッシュの篩により篩分けして、粒度調整したコークス粒子を原料として、コークス粒子100重量部に石炭ピッチ30重量部を加えて130℃の温度で充分に混練した。混練物を成形型に入れて窒素ガス雰囲気中800℃の温度で熱処理したのち型から取り出し、縦横200mm、厚さ10mmのサンプルに加工して多孔質炭素基材を作製した。 【0023】炭化率45%のフェノール樹脂をエタノールに溶解して濃度の異なるフェノール樹脂溶液を調製し、該溶液中に上記多孔質炭素基材を10分間浸漬し、余剰の樹脂溶液を濾紙で吸い取ったのち、風乾し、180℃の温度で加熱硬化した。このようにして、異なる量比でフェノール樹脂を被着した多孔質炭素基材をアルゴン雰囲気下で2500℃の温度で熱処理してフェノール樹脂をガラス状カーボンに転化した。このようにして多孔質炭素基材の骨格表面がガラス状カーボンで被覆された水処理用多孔質炭素電極を製造した。表1に製造条件と気孔性状を対比して示した。 【0024】実施例4 60~100メッシュに粒度調整したコークス粒子を用いて実施例1~3と同一の条件で多孔質炭素基材を作製し、実施例2と同一濃度の樹脂溶液中に基材を浸漬してフェノール樹脂を被着したのちアルゴンガス雰囲気中で2700℃の温度により熱処理して、水処理用多孔質炭素電極を製造し、製造条件と気孔性状を対比して表1に併載した。 【0025】実施例5 35~60メッシュに粒度調整したコークス粒子を用いて実施例1~3と同一の条件で多孔質炭素基材を作製し、実施例2と同一濃度の樹脂溶液中に基材を浸漬してフェノール樹脂を被着したのちアルゴンガス雰囲気中で2000℃の温度により熱処理して、水処理用多孔質炭素電極を製造し、製造条件と気孔性状を対比して表1に併載した。 ・・・ 【0027】 【表1】 [図:0001435210000002.jpg] 【0028】このようにして製造した多孔質炭素電極の結晶性状、圧縮強度、固有抵抗等を測定して、その結果を表2に示した。なお、結晶性状は粉末X線回折法により測定した。 【0029】 【表2】 [図:0001435210000003.jpg] 【0030】これらの多孔質炭素電極について、下記の方法により水処理用多孔質炭素電極としての性能評価を行い、その結果を表3に示した。 (1)直径76mm、厚さ9mmの円板状に加工してサンプルを調製し、その上下面に白金のメッシュ状金網を被着して、図2に示した電解槽にスペーサーを介して8段に積層した。 (2)通水テスト;サンプルを8枚重ね、1.0Kg/cm2の水圧で水温20℃の水を流した時の通水量及び24時間通水した時の粒子の脱落状態を観察した。 ・・・ 【0031】 【表3】 [図:0001435210000004.jpg] 【0032】表1~3の結果から、本発明の水処理用多孔質炭素電極は、高い圧縮強度と優れた気孔性状を備えているので通水テスト時において粒子の脱落を生じることなく、また通水量の変化や腐食量も少ないので長期に亘って高い殺菌率で水を処理することが可能となる。」 (イ)前記(ア)aの記載によれば、甲第5号証には、コークス粒子とピッチの炭化物を結合材とする多孔質炭素基材の骨格表面に、ガラス状カーボンが被覆された複合構造を有する水処理用多孔質炭素電極が記載されている。 また、前記(ア)b~cの記載によれば、前記水処理用多孔質炭素電極は、微生物を電気化学的に殺菌処理する電解槽に用いる黒鉛質の多孔質炭素電極として、通水抵抗が小さい優れた気孔性状を備えるとともに材質強度が高く、耐蝕性に優れた水処理用多孔質炭素電極を提供することを目的とするものである。そして、その製造方法は、まず、原料となるコークス粒子とピッチとを所定の割合で混合して充分に混練し、混合比は目的とする気孔性状や強度特性により適宜な割合に設定され、通常コークス粒子100重量部にピッチを20~40重量部の割合で混合されるものであり、ニーダーなどの混練機を用いて充分に混練するものであり、多孔質炭素基材の気孔性状はコークス粒子の粒度特性により調整することができ、例えば、気孔分布が広くなると被処理水が多孔質電極内を偏流するために殺菌効果が減退するので、気孔分布はシャープであることが好ましいものであり、気孔径分布をシャープ化し、気孔径を調整するためには粒度分布が狭いコークス粒子を原料として用いることが好ましいものであり、得られたコークス粒子とピッチとの混練物は、所望の成形型に入れて非酸化性雰囲気下800℃以上の温度で熱処理することにより多孔質炭素基材が得られ、この多孔質炭素基材に熱硬化性樹脂溶液を浸透させ、乾燥、加熱硬化したのち非酸化性雰囲気中800℃以上の温度、好ましくは2000~2800℃の温度で熱処理して黒鉛化することにより多孔質炭素基材の骨格表面がガラス状カーボンで被覆された複合構造を有する水処理用多孔質炭素電極が製造されるものである。 更に前記(ア)dに記載された実施例1に注目すると、前記水処理用多孔質炭素電極は、目開き35、60及び100メッシュの篩により篩分けして、粒度調整したコークス粒子を原料として、コークス粒子100重量部に石炭ピッチ30重量部を加えて130℃の温度で充分に混練し、混練物を成形型に入れて窒素ガス雰囲気中800℃の温度で熱処理したのち型から取り出し、縦横200mm、厚さ10mmのサンプルに加工して多孔質炭素基材を作製し、炭化率45%のフェノール樹脂をエタノールに溶解して15Wt%のフェノール樹脂溶液を調製し、該溶液中に上記多孔質炭素基材を10分間浸漬し、余剰の樹脂溶液を濾紙で吸い取ったのち、風乾し、180℃の温度で加熱硬化して、フェノール樹脂を被着した多孔質炭素基材をアルゴン雰囲気下で2500℃の温度で熱処理してフェノール樹脂をガラス状カーボンに転化することで多孔質炭素基材の骨格表面がガラス状カーボンで被覆された水処理用多孔質炭素電極を製造したものであって、その物性は、気孔径が143μm、気孔率が39%、d002が0.338nm、Lc(002)が40nm、嵩密度が1.18g/cm3、圧縮強度が125Kg/cm2、固有抵抗が4.0mΩ・cm、通水テストで通水量7.8l/分で脱落粒子なし、水処理試験での通水量変化が98%、殺菌率が99.0%、腐食試験で腐食電流密度が0.42mA/m2、腐食量が0.20%であるものである。 (ウ)前記(イ)によれば、甲第5号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「コークス粒子とピッチの炭化物を結合材とする多孔質炭素基材の骨格表面に、ガラス状カーボンが被覆された複合構造を有する水処理用多孔質炭素電極であって、 前記水処理用多孔質炭素電極は、微生物を電気化学的に殺菌処理する電解槽に用いる黒鉛質の多孔質炭素電極として、通水抵抗が小さい優れた気孔性状を備えるとともに材質強度が高く、耐蝕性に優れた水処理用多孔質炭素電極を提供することを目的とするものであり、 その製造方法は、まず、原料となるコークス粒子とピッチとを所定の割合で混合して充分に混練し、混合比は目的とする気孔性状や強度特性により適宜な割合に設定され、通常コークス粒子100重量部にピッチを20~40重量部の割合で混合されるものであり、ニーダーなどの混練機を用いて充分に混練するものであり、多孔質炭素基材の気孔性状はコークス粒子の粒度特性により調整することができ、例えば、気孔分布が広くなると被処理水が多孔質電極内を偏流するために殺菌効果が減退するので、気孔分布はシャープであることが好ましいものであり、気孔径分布をシャープ化し、気孔径を調整するためには粒度分布が狭いコークス粒子を原料として用いることが好ましいものであり、得られたコークス粒子とピッチとの混練物は、所望の成形型に入れて非酸化性雰囲気下800℃以上の温度で熱処理することにより多孔質炭素基材が得られ、この多孔質炭素基材に熱硬化性樹脂溶液を浸透させ、乾燥、加熱硬化したのち非酸化性雰囲気中800℃以上の温度、好ましくは2000~2800℃の温度で熱処理して黒鉛化することにより製造されるものであり、 前記水処理用多孔質炭素電極は、目開き35、60及び100メッシュの篩により篩分けして、粒度調整したコークス粒子を原料として、コークス粒子100重量部に石炭ピッチ30重量部を加えて130℃の温度で充分に混練し、混練物を成形型に入れて窒素ガス雰囲気中800℃の温度で熱処理したのち型から取り出し、縦横200mm、厚さ10mmのサンプルに加工して多孔質炭素基材を作製し、炭化率45%のフェノール樹脂をエタノールに溶解して15Wt%のフェノール樹脂溶液を調製し、該溶液中に上記多孔質炭素基材を10分間浸漬し、余剰の樹脂溶液を濾紙で吸い取ったのち、風乾し、180℃の温度で加熱硬化して、フェノール樹脂を被着した多孔質炭素基材をアルゴン雰囲気下で2500℃の温度で熱処理してフェノール樹脂をガラス状カーボンに転化することで多孔質炭素基材の骨格表面がガラス状カーボンで被覆された水処理用多孔質炭素電極を製造したものであって、 その物性は、気孔径が143μm、気孔率が39%、d002が0.338nm、Lc(002)が40nm、嵩密度が1.18g/cm3、圧縮強度が125Kg/cm2、固有抵抗が4.0mΩ・cm、通水テストで通水量7.8l/分で脱落粒子なし、水処理試験での通水量変化が98%、殺菌率が99.0%、腐食試験で腐蝕電流密度が0.42mA/m2、腐食量が0.20%である水処理用多孔質炭素電極。」(以下、「甲5発明」という。) カ 甲第6号証の記載事項 甲第6号証には、以下の記載がある。 「 [図:0001435210000005.jpg] 」 (訳: [図:0001435210000006.jpg] [図:0001435210000007.jpg] ) キ 甲第7号証の記載事項 甲第7号証には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項11】 SiC原料物質とSiC種結晶とが間隔を置いて充填されるように構成される成長用るつぼ、及び 前記成長用るつぼを、前記成長用るつぼに前記SiC原料物質が充填される際に前記SiC原料物質が在留する供給区画と、前記成長用るつぼに前記SiC種結晶が充填される際に前記SiC種結晶が在留する結晶化区画とに分割する分割板を含み、 前記分割板は、前記SiC原料物質と前記SiC種結晶との両方から間隔を開けられており、 前記分割板は、中央部分を含み、該中央部分は、外側部分に囲まれており、 前記分割板の前記中央部分は、前記SiC種結晶にSiC結晶が昇華成長する間に前記SiC原料物質より生じるSiC含有蒸気の透過率が前記外側部分よりも大きく、 前記分割板の前記外側部分は、前記SiC種結晶に前記SiC結晶が昇華成長する間に前記SiC原料物質より生じるSiC含有蒸気の透過率が前記中央部分よりも小さく、 前記分割板の前記中央部分が、前記分割板の全面積の20%~50%を有しており、 前記分割板は、SiC含有蒸気流を、前記種結晶の中央の周囲において前記種結晶の全表面積の30%~60%である前記種結晶の表面の中央領域に実質的に制限するように構成され、 前記分割板の前記中央部分における前記SiC含有蒸気の質量輸送と、前記分割板の前記外側部分における前記SiC含有蒸気の質量輸送との比が50/1を下回らない、SiC昇華結晶成長システム。」 (イ)「【0045】 前記分割板は、前記SiC含有蒸気流から粒子を実質的に除去するように構成され得る。」 (ウ)「【0128】 分割板66の限定されない実施形態を図7に示す。該板は、望ましくは4~10mmの厚さであり、同心の2つの部分、すなわちリング部材66aと中央部材66bとを含む。リング部材66aは高密度グラファイトより作製される。このようなグラファイトとしては、限定されないが、Mersen USA Bay City-MI社(900 Harrison Street, Bay City, MI 48708)製グレード2020などが挙げられる。中央部材66bは多孔性グラファイトより作製される。このようなグラファイトとしては、限定されないが、NEC-Morgan Porous Carbon and Graphite Products社(200 North Town Street, Fostoria, OH 44830)製PG-25などが挙げられる。」 ク 甲第8号証の記載事項 甲第8号証には、以下の記載がある。 「 [図:0001435210000008.jpg] 」 (部分訳 このSDSに関連するNational製品グレード: C196、・・・PG-25、・・・ ・・・ 改定日:2015年3月31日 ・・・」 ケ 甲第9号証の記載事項 甲第9号証には、以下の記載がある。 「 [図:0001435210000009.jpg] [図:0001435210000010.jpg] 」 コ 甲第10号証の記載事項 甲第10号証には、以下の記載がある。 「 [図:0001435210000011.jpg] 」 サ 甲第11号証の記載事項 甲第11号証には、以下の記載がある。 「 [図:0001435210000012.jpg] [図:0001435210000013.jpg] [図:0001435210000014.jpg] [図:0001435210000015.jpg] 」 シ 甲第12号証の記載事項 甲第12号証には、以下の記載がある。 「 [図:0001435210000016.jpg] [図:0001435210000017.jpg] 」 (2)特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)についての判断 ア 甲第1号証を主引例とした場合について (ア)本件発明1について a 本件発明1と甲1発明とを比較すると、甲1発明における「カーボン多孔体吸着板」は「平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)との混合物を加熱硬化させ、非酸化性雰囲気下での炭化焼成により得られ」るものであって、「カーボン多孔体」であるのだから、本件発明1の「多孔質炭素材料」に相当する。 b 前記aによれば、本件発明1と甲1発明とは、 「多孔質炭素系材料。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1は、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」しているのに対し、甲1発明は「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」しているか否かが明らかでない点。 <相違点2> 本件発明1は「前記多孔質炭素系材料」の「前記2次粒子」が「独立することなく互いに結合」しているのに対して、甲1発明は「2次粒子」が「独立することなく互いに結合」しているか否かが明らかでない点。 <相違点3> 本件発明1は、「多孔質炭素系材料」の「最大気孔径が50~1000μm」であるのに対し、甲1発明は「多孔質炭素系材料」の「最大気孔径が50~1000μm」であるか否かが明らかでない点。 c まず、相違点1が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲第1号証には、甲1発明に係る「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」が、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」することは記載されていないし、このことをうかがわせる記載もない。 d ここで、本件発明1に係る「多孔質炭素系材料」の製造方法(以下、「本件製造方法」という。)と甲1発明に係る「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」の製造方法(以下、「甲1製造方法」という。)とが合致していれば、前記相違点1は実質的な相違点とはいえないから、これらを対比すると、本件特許明細書の段落【0016】~【0018】の記載(下記2(2)ウ)によれば、本件製造方法は、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混練し、原料粉を得る原料工程と、前記原料粉を炭素電極の形状の成形型に入れ、前記軟化点よりも高い温度に加熱し成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼成し焼成体を得る焼成工程と、を含むものである。 そして、本件製造方法によれば、炭素系粒子と、軟化点が70℃以上のピッチを混練して原料粉を得ているので、室温では付着し合うことはなく、室温で所定の粒子径となるように粒度調整をすることができ、また、軟化点が200℃以下のピッチを混練しているので、混練するためにピッチに溶融させるときにも高温に曝す必要がなく、ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行しにくく、軟化点の上昇を防止することができ、また、後の成形工程で熱で融着しやすく容易に所定のフッ素電解装置要炭素電極の形状を得ることができるものである。 更に、多孔質材料を得るために、加圧することなく熱で融着させて所定のフッ素電解製造用炭素質電極板の形状を得ているので、広い粒度分布の「2次粒子」であっても互いに結合した多孔体が得られるうえに、連続気孔が多数存在し、後の焼成工程で原料粉に含まれる揮発分を内部に蓄積することなく除去することができ、また、加圧による寸法変化がなく、型の形状がそのまま成形体の形となり、このため、焼成後に寸法精度の高いフッ素電解製造用炭素質電極板を得ることができるものである。 e 具体的には、本件特許明細書の段落【0040】~【0065】の記載(下記2(2)エ)によれば、原料工程における混練工程では、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混練して、焼成工程あるいは黒鉛化工程を経て得られる「2次粒子」に対応する、炭素系粒子がバインダにより互いに結合した粒子の集合体である原料粉を得るものであり、炭素系粒子と軟化点が70℃以上のピッチを混練して原料粉を得ることにより、原料粉が室温では付着しあうことを抑制し、室温で所定の粒子径となるように、原料粉の粒度調整をすることができるものであり、炭素系粒子と軟化点が200℃以下のピッチを混練して原料粉を得ることにより、混練するために原料粉を高温に曝す必要がなく、混練時、ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行することを抑制し、軟化点の上昇を防止することができるものであり、混練の温度は150~300℃でかつピッチの軟化点より高い温度で行うことが好ましいものであり、混練の温度を300℃以下とすることにより、ピッチの重縮合を防止し、原料粉の成形性を確保することができるものである。 また、フッ素電解製造用炭素質電極板である多孔質炭素系材料を得るために、主に熱による融着作用が中心になっており、殆ど加圧されていないので、広い粒度分布の「2次粒子」であっても互いに結合した多孔質体が得られるうえに、連続気孔ができやすく、後の焼成工程で原料粉に含まれる揮発分を内部に蓄積することなく除去することができるものであり、ピッチを溶融させながら一様に混合した段階で混練を終了することが好ましく、具体的には混練の時間は30分以下であることが好ましいものであり、混練の時間が30分以下であると、ピッチの重縮合を抑制し、原料粉の付着性の低下を防止することができるものである。 次に、原料工程で得られた原料粉は、必要に応じて粒度調整を行うことが好ましいものであり、粒度調整を行うことにより所定の気孔率、粒度分布の多孔質炭素系材料を得ることができるものであり、原料粉の平均粒子径は、50~1500μmであることが好ましいものであり、原料粉の平均粒子径が50μm以上であると、十分な大きさの気孔が得られ、様々な用途で利用しやすい多孔質炭素系材料を得ることができるものであり、原料粉の平均粒子径が1500μm以下であると、成形型に入れ成形したとき、表面にできる凹凸の大きさを小さくすることができ、表面の平滑なフッ素電解装置用多孔質炭素系材料を得ることができるものである。 次に、成形工程では、得られた原料粉を成形型に入れ、ピッチの軟化点よりも高い温度に加熱し、所定の形状の成形体を得るものであり、ピッチの軟化点よりも高い温度に加熱した状態で保持しているので、小さな原料粉や、バインダの剥がれた原料粉であっても遊離することなく互いに結合しあい、一体化しているものであり、原料粉に熱を加えているので、付着力のない原料粉であっても2次粒子に取り込まれ一体化することができ、独立し遊離した炭素系粒子の発生を抑制することができるものであり、成形工程において望ましい加熱時間は10分以上であり、成形工程では熱の作用で成形しているので、加熱時間を長くすることにより原料粉をより軟化させ、強固に融着させることができるものである。 更に、焼成工程は、得られた成形体を不活性雰囲気下で加熱し、焼成体を得るものであり、前記焼成体がフッ素電解装置用炭素電極の多孔質炭素系材料となるものであり、焼成の温度は例えば700~2000℃であることが好ましいものであり、焼成を700℃以上で行うことにより成形体から揮発分を十分に除去し、フッ素電解装置用多孔質炭素系材料として使用可能となるものであり、焼成を2000℃以下で行うことにより、多孔質炭素系材料に十分な硬度を与え、例えば電解電極で使用可能な多孔質炭素系材料を得ることができるものである。 なお、従来の多孔質炭素系材料においては、炭素系粒子とピッチとを混錬し、原料粉を得て、成形工程、焼成工程を行うものであるが、従来の方法においては、成形工程は、ピッチを溶融させることなく主に圧力の作用によって行われているので、圧力が加わった粒子の接点では強く結合するのに対し、圧力が加わらなかった粒子の接点では強く結合することができないものであり、多孔質炭素系材料の製造においては、粗い原料粉を使用するので、型に充填した段階で大きな空隙が形成され、大きな空隙に入り込んだ原料粉に十分に圧力が加わりにくいことから、他の粒子と一体化することができず遊離した「2次粒子」となって、素材の強度に寄与せず、パーティクルを生成させるだけの異物となるものである。 f 前記d~eによれば、本件製造方法においては、原料工程において、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混練して、「2次粒子」に対応する原料粉を得るとき、混練の温度は150~300℃でかつピッチの軟化点より高い温度で行うとともに、混練の時間が30分以下とすることで、混練時ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行することを抑制し軟化点の上昇を防止し、かつ、ピッチを十分に溶融させ、炭素系粒子同士を結合させ、原料粉の成形性を確保し、原料粉の付着性の低下を防止するものである。 g 一方、甲1発明の発明特定事項によれば、甲1製造方法は、「以下の4(I~IV)又は5(I~V)工程からなるものであり、 (I)混合(又は混練)工程:平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを混合又は混練する工程 (II)予備成形する工程:工程(I)で得られた樹脂混合物を、所望形状の成形容器又は金型に入れ、予備成形する工程 (III)成形(熱硬化)工程:工程(II)の予備成形された樹脂混合物を、離型可能な硬さまで熱硬化し、所望形状の多孔性熱硬化物を得る工程 (IV)焼成工程:工程(III)で得られた多孔性熱硬化物を、不活性ガス雰囲気中にて、800~2500℃の温度で焼成する工程 (V)成形加工工程:工程(IV)で得られたカーボン多孔体を、所定の形状、例えば円板に成形加工する工程」. 具体的には、甲1製造方法は、「固体状原料(A)として、平均粒子径60μm(標準偏差17.9)のフェノール樹脂のビーズを90重量部と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)として、硬化剤添加ノボラック系フェノール樹脂粉末を10重量部とを十分に混合し、金型で、15N/cm2、160℃、1時間の条件で加熱加圧成形することにより、樹脂多孔体を作製し、その後、この樹脂多孔体を真空中で1000℃まで4℃/時間で昇温して炭化焼成し、カーボン多孔体吸着板を得」るものである。 更に、甲1製造方法においては、「平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)であって、分級して粒度分布を狭くした熱硬化性樹脂を用いることにより、高い気孔率を有するカーボン多孔体吸着板が得られる」ものであり、「前記(I)混合(又は混練)工程における混合機としては、固体状原料(A)と、バインダーである熱硬化性樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを均一に分散、混合できるものであれば特に限定されないものであり、固体状原料(A)と、バインダーである熱硬化性樹脂(B)及び更に、溶剤(C)を均一に分散、混合できるものであれば、混練機を用いてもよい」ものである。 h ここで、甲1製造方法における「(I)混合(又は混練)工程における混合」は、本件製造方法における原料工程に相当し、「固体状原料(A)」及び「熱硬化性樹脂(B)は、それぞれ、本件製造方法における「炭素系粒子」及び「ピッチ」に相当するといえるが、前記eによれば、甲1製造方法における「(I)混合(又は混練)工程」は、平均粒径が20~500μmである熱硬化性樹脂(a)を少なくとも20重量%含有する「固体状原料(A)」と、バインダーとしての「熱硬化性樹脂(B)」と、所望に応じて「溶剤(C)」とを、均一に「混合又は混練する」ものであり、具体的には、「固体状原料(A)として、平均粒子径60μm(標準偏差17.9)のフェノール樹脂のビーズを90重量部と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)として、硬化剤添加ノボラック系フェノール樹脂粉末を10重量部とを十分に混合」するものである。 そうすると、前記「(I)混合(又は混練)工程」は、単に、「フェノール樹脂のビーズ」と「硬化剤添加ノボラック系フェノール樹脂粉末」とを混合するものにすぎないから、「2次粒子」を構成するものとはいえない。 また、甲1製造方法は、「平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)であって、分級して粒度分布を狭くした熱硬化性樹脂を用いることにより、高い気孔率を有するカーボン多孔体吸着板が得られることに特徴がある」ものである。 ところが、「固体状原料(A)」が「2次粒子」を構成した場合、その粒度分布が変化して、前記特徴を損なうこととなることが強く推認されるから、甲1製造方法は、「(I)混合(又は混練)工程」において「固体状原料(A)」と「熱硬化性樹脂(B)」が「2次粒子」を構成するものとはいえない。 これらのことからみれば、甲1製造方法は、そもそも、「2次粒子」に対応する原料粉を得るものとはいえないのであるから、原料工程が本件製造方法と合致しない。 そして、そのような甲1製造方法により製造された甲1発明に係る「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」も「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」するものとはいえないから、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するとはいえないので、前記相違点1は実質的な相違点である。したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではない。 i 次に、前記相違点1の容易想到性について検討すると、甲1製造方法ににおいて、「固体状原料(A)」が「2次粒子」を構成した場合、その粒度分布が変化して、その特徴を損なうこととなることが強く推認されることは、前記fに記載したとおりである。そのような甲1製造方法で作成された甲1発明に係る「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」を、あえて、「2次粒子を構成」するものとすることは想定されないので、甲1発明を、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明から当業者が容易に発明することができたものではない。 (イ)本件発明2~3について 本件発明2~3は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、前記(ア)に記載したのと同様の理由により、甲1発明ではないし、甲1発明から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)申立人の主張について a 申立人の主張の概要 甲第1号証を主引例とした場合の申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 甲第1号証に記載された「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」は、半導体ウエハーを吸着する真空チャックとして使用する場合に、当該半導体ウエハーに対する塵の付着及び化学的な汚染の原因の一つは「真空チャック」である「カーボン多孔体吸着板」から炭素系粒子が脱落することにより当該炭素系粒子が半導体ウエハーに付着することであると推認できるから、甲第1号証に記載された「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」は、炭素系粒子の脱落が防止されているといえる。 また、甲第1号証の実施例1~5では、炭素系粒子の前駆体であるフェノール樹脂のビーズと炭素質バインダーであるフェノール樹脂粉末又はフェノール液体樹脂との混合物を、特定の温度以上で加熱成形した後焼成する方法によって、「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」を製造しており、これらの「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」はチャック用基板として使用が可能なものであるから、炭素系粒子の脱落は防止されているといえる。 これらのことと、特許権者は、本件発明1に係る「多孔質炭素系材料」を炭素系粒子及び/又はその前駆体粒子と、炭素質バインダとの混合物を、特定の温度以上、具体的にはバインダーの軟化点以上の温度で加熱し、成形した後焼成する方法によって製造することで、「2次粒子を構成」し、発明特定事項Bを達成しているとみなしていることからみれば、甲第1号証に記載された「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」は、本件発明1と同様に「2次粒子を構成」しているとみなすことができるし、前記発明特定事項Bを備えていることが理解できる。 したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるし、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 b 申立人の主張についての判断 以下、前記aの主張について検討すると、前記aの主張は、甲第1号証に記載された「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」は「2次粒子を構成」しているとみなすことができ、発明特定事項Bを備えていることを前提として、本件発明1は甲第1号証に記載されていることをいうものであるといえる。 ところが、甲1発明に係る「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」は、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」するものとはいえないことは、前記(ア)fに記載したとおりである。 そして、甲第1号証に記載された「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」が、半導体ウエハーを吸着する真空チャックとして使用する場合に、当該半導体ウエハーに対する塵の付着及び化学的な汚染が発生することを防止できるものであり、半導体ウエハーに対する塵の付着及び化学的な汚染の原因の一つは「真空チャック」である「カーボン多孔体吸着板」から「炭素系粒子」が脱落することにより、当該「炭素系粒子」が半導体ウエハーに付着することであると推認できるとしても、また、甲第1号証の実施例1~5による「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」がチャック用基板として使用が可能なものであり、「炭素系粒子」の脱落が防止されてるといえるとしても、そのことだけで、これらの「炭素系粒子」が「2次粒子を構成」しているということはできないから、「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」が「2次粒子を構成」しているということはできない。 また、仮に、特許権者が、本件発明1に係る「多孔質炭素材料」を、炭素系粒子及び/又はその前駆体粒子と、炭素質バインダーとの混合物を、バインダーの軟化点以上の温度で加熱し、成形した後焼成する方法によって製造することで、「2次粒子を構成」し、発明特定事項Bを達成しているとみなしているとしても、前記(ア)fに記載したとおり、甲1製造方法は本件製造方法と合致しないから、甲第1号証に記載された「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」が「2次粒子を構成」していることを裏付ける証拠もないので、前記aの主張は、前提において誤っている。 そうすると、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明から当業者が容易に発明することができたものでもないから、申立人の前記aの主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、本件発明1~3は、甲第1号証に記載された発明ではないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第3の1(1)の特許異議申立理由は理由がない。 イ 甲第2号証を主引例とした場合について (ア)本件発明1について a 本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「メソフェーズピッチに、カーボンナノファイバーが20wt%以下混入されており」「メソフェーズピッチが」「黒鉛化されている多孔質体」は、黒鉛化されたメソフェーズピッチとカーボンナノファイバーからなる多孔質体であるので、本件発明1の「多孔質炭素系材料」に相当する。 b そうすると、本件発明1と甲2発明は、 「多孔質炭素系材料。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1’> 本件発明1は、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」しているのに対し、甲2発明は「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」しているか否かが明らかでない点。 <相違点2’> 本件発明1は「前記多孔質炭素系材料」の「前記2次粒子」が「独立することなく互いに結合」しているのに対して、甲2発明は「2次粒子」が「独立することなく互いに結合」しているか否かが明らかでない点。 <相違点3’> 本件発明1は、「多孔質炭素系材料」の「最大気孔径が50~1000μm」であるのに対し、甲2発明は「多孔質炭素系材料」の「最大気孔径が50~1000μm」であるか否かが明らかでない点。 c まず、相違点1’が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲第2号証には、甲2発明に係る「多孔質体」が、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」することは記載されていないし、このことをうかがわせる記載もない。 d ここで、本件製造方法と、甲2発明に係る「多孔質体」の製造方法(以下、「甲2製造方法」という。)とが合致していれば、前記相違点1’は実質的な相違点とはいえないから、これらを対比すると、前記ア(ア)d~eに記載したとおり、本件製造方法においては、原料工程において、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混練して、「2次粒子」に対応する原料粉を得るとき、混練の温度を150~300℃でかつピッチの軟化点より高い温度で行うとともに、混練の時間を30分以内とすることで、混練時ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行することを抑制し、軟化点の上昇を防止し、かつ、ピッチを十分に溶融させ、炭素系粒子同士を結合させ、原料粉の成形性を確保し、原料粉の付着性の低下を防止するものである。 e 一方、甲2発明の発明特定事項によれば、甲2製造方法は、「マトリクス樹脂として、メソフェーズピッチであるAR(Aromatic Resin)を用い、このARにフィラーとして気相成長炭素繊維のVGCF(平均直径150nm、平均長さ10~20μm:昭和電工株式会社製)を10wt%添加し、2軸押出機により混練りし、固化成形時のガス発生量を抑制するため、上記混合材料を炉中、不活性ガス(アルゴン)雰囲気中、460℃で30分間、前加熱処理を行い、この前加熱処理により、ARはその温度域までに発生するガスを出しながら溶融し、冷却後、固形化した材料を粉砕機により粉砕し、この粉砕した材料を、加熱炉に収容し、炉内温度が290℃となる1次加熱により20分間加熱し、次いで炉内温度が600℃となる2次加熱により20分間加熱し、冷却して多孔質体を得た後、多孔質体をさらに3000℃の温度で、不活性ガス雰囲気下(圧力は大気圧)で焼成し、ARが黒鉛化して得られる」るものである。 f ここで、甲2製造方法における「マトリクス樹脂として、メソフェーズピッチであるAR(Aromatic Resin)を用い、このARにフィラーとして気相成長炭素繊維のVGCF(平均直径150nm、平均長さ10~20μm:昭和電工株式会社製)を10wt%添加し、2軸押出機により混練りし、固化成形時のガス発生量を抑制するため、上記混合材料を炉中、不活性ガス(アルゴン)雰囲気中、460℃で30分間、前加熱処理を行い、この前加熱処理により、ARはその温度域までに発生するガスを出しながら溶融し、冷却後、固形化した材料を粉砕機により粉砕」する工程は、本件製造方法における原料工程に相当し、「気相成長炭素繊維のVGCF(平均直径150nm、平均長さ10~20μm:昭和電工株式会社製)」、「メソフェーズピッチであるAR」は、それぞれ、本件製造方法における「炭素系粒子」、「ピッチ」に相当するといえる。しかし、前記eによれば、甲2製造方法においては、前記工程は、単に、気相成長炭素繊維のVGCFと「メソフェーズピッチであるAR」とを混合するものにすぎないから、「2次粒子」を構成するものとはいえない。 また、甲第2号証には、「カーボンナノファイバー(カーボンナノチューブ等のナノファイバー:以下CNFという)は優れた機械的特性、熱伝導性、および電気伝導性を有するため、ナノテクノロジーを代表する新機能材料として、エレクトロニクスや医療など、様々な分野での利用が期待されている。複合材料のフィラーとしての利用は従来の炭素繊維と比較して少量の添加で諸特性を改善するため、種々の母材(樹脂、ゴム、金属、セラミックス、炭素など)にCNFを添加した先進複合材料の開発が進められている。」ことが記載されており(【0002】、前記(1)イ(ア)b)、気相成長炭素繊維のVGCFは、その機械的特性、熱伝導性、電気伝導性に関する物性を材料に付与するために添加されていることが理解でき、10wt%までの添加範囲ではCNFは均一に分散されたこと(【0004】、前記(1)イ(ア)b)、実施例において、2軸押出機で混練りした後の混合材料のSEM写真によれば、VGCFはほぼ均一にAR中に混入されていること(【0021】、前記(1)イ(ア)c)も記載されている。 そうすると、甲2発明においては、VGCFはAR中に均一に分散されることで、優れた機械的特性、熱伝導性、及び電気伝導性を均一に付与することを目指すものであり、実施例のSEM写真でも、均一に分散していることが観察されているところ、甲2発明の「マトリクス樹脂として、メソフェーズピッチであるAR(Aromatic Resin)を用い・・・冷却後、固形化した材料を粉砕機により粉砕」する工程によって、ARとVGCFが「2次粒子」を構成するものとはいえない。 これらのことからみれば、甲2製造方法は、そもそも、「2次粒子」に対応する原料粉を得るものとはいえないのであるから、原料工程が本件製造方法と合致しない。 そして、そのような甲2製造方法により製造された甲2発明に係る「多孔質体」も「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」するものとはいえないから、前記相違点1’に係る本件発明1の発明特定事項を有するとはいえないので、前記相違点1’は実質的な相違点である。したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明ではない。 g 次に、前記相違点1’の容易想到性について検討すると、甲2製造方法において、「VGCF」が「2次粒子」を構成した場合、VGCFが均一に分散することにより得られる「機械的特性、熱伝導性、電気伝導性」を損なうこととなることが強く推認されることは、前記fに記載したとおりである。そのような甲2製造方法で作成された甲2発明に係る「多孔質体」を、あえて、「2次粒子を構成」するものとすることは想定されないので、甲2発明を、前記相違点1’に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明から当業者が容易に発明することができたものではない。 (イ)申立人の主張について a 申立人の主張の概要 甲第2号証を主引例とした場合の申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 甲第2号証には、メソフェーズピッチにカーボンナノファイバーが混入されてなる多孔質体を加熱して、メソフェーズピッチを炭化又は黒鉛化させて得られる多孔質体が記載されており、前記「カーボンナノファイバー」は本件発明1の「炭素系粒子」に相当し、メソフェーズピッチはカーボンナノファイバーを互いに結合させるバインダとして機能することは自明である。 また、特許権者は、本件発明1に係る「多孔質炭素系材料」を炭素系粒子及び/又はその前駆体粒子と、炭素質バインダとの混合物を、特定の温度以上、具体的にはバインダーの軟化点以上の温度で加熱し、成形した後焼成する方法によって製造することで、「2次粒子を構成」し、発明特定事項Bを達成しているとみなしていることからみれば、甲第2号証に記載された「多孔質体」は、本件発明1と同様に「2次粒子を構成」しているとみなすことができるし、前記発明特定事項Bを備えていることが理解できる。 したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるし、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 b 申立人の主張についての判断 以下、前記aの主張について検討すると、前記aの主張は、甲第2号証に記載された「多孔質体」は「2次粒子を構成」しているとみなすことができ、発明特定事項Bを備えていることを前提として、本件発明1は甲第2号証に記載されていることをいうものであるといえる。 ところが、甲2発明に係る「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」は、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」するものとはいえないことは、前記(ア)fに記載したとおりである。 また、仮に、特許権者が、本件発明1に係る「多孔質炭素材料」を、炭素系粒子及び/又はその前駆体粒子と、炭素質バインダーとの混合物を、バインダーの軟化点以上の温度で加熱し、成形した後焼成する方法によって製造することで、「2次粒子を構成」し、発明特定事項Bを達成しているとみなしているとしても、前記(ア)fに記載したとおり、甲2製造方法は本件製造方法と合致しないから、甲第2号証に記載された「多孔質体」が「2次粒子を構成」していることを裏付ける証拠もないので、前記aの主張は、前提において誤っている。 そうすると、本件発明1は、甲2発明ではないし、甲2発明から当業者が容易に発明することができたものでもないから、申立人の前記aの主張は採用できない。 (ウ)小括 したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明ではないし、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第3の1(2)の特許異議申立理由は理由がない。 ウ 甲第3号証を主引例とした場合について (ア)本件発明1について a 本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明における「フッ素電解製造用炭素質電極板」は、「原料炭素質骨材に粘結材を配合し、混捏、加圧成形、焼成」して製造したものであって、「その表面開口気孔の孔径分布を水銀圧入法による気孔測定法によって測定したところ、孔径50μm以下のものが31%、50~150μmのものが65%、150μm以上のものが4%であった」ものであるから、「多孔質炭素系材料」であるといえるため、本件発明1における「多孔質炭素系材料」に相当する。 b 前記aによれば、本件発明1と甲3発明とは、 「多孔質炭素系材料。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1’’> 本件発明1は、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」しているのに対し、甲3発明は「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」しているか否かが明らかでない点。 <相違点2’’> 本件発明1は「前記多孔質炭素系材料」の「前記2次粒子」が「独立することなく互いに結合」しているのに対して、甲3発明は「2次粒子」が「独立することなく互いに結合」しているか否かが明らかでない点。 <相違点3’’> 本件発明1は、「多孔質炭素系材料」の「最大気孔径が50~1000μm」であるのに対し、甲3発明は「多孔質炭素系材料」の「最大気孔径が50~1000μm」であるか否かが明らかでない点。 c 事案に鑑み、始めに、前記bの相違点2’’が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲第3号証には、甲3発明に係る「フッ素電解製造用炭素質電極板」において、「前記2次粒子」が「独立することなく互いに結合」していることは記載されていないし、このことをうかがわせる記載もない。 d ここで、本件製造方法と甲3発明に係る「フッ素電解製造用炭素質電極板」の製造方法(以下、「甲3製造方法」という。)とが合致していれば、前記相違点2’’は実質的な相違点とはいえないから、これらを対比すると、前記ア(ア)d~eに記載したとおり、本件製造方法においては、原料工程において、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混練して、「2次粒子」に対応する原料粉を得るとき、混練の温度は150~300℃でかつピッチの軟化点より高い温度で行うとともに、混練の時間が30分以下とすることで、混練時ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行することを抑制し軟化点の上昇を防止し、かつ、ピッチを十分に溶融させ、炭素系粒子同士を結合させ、原料粉の成形性を確保し、原料粉の付着性の低下を防止するとともに、成形工程において、得られた原料粉を成形型に入れ、ピッチの軟化点よりも高い温度で10分以上加熱し、所定の形状の成形体を得ることで、小さな原料粉や、バインダの剥がれた原料粉であっても遊離することなく互いに結合しあい、一体化し、付着力のない原料粉であっても「2次粒子」に取り込まれ一体化することができるので、「前記2次粒子は、独立することなく互いに結合」している、との前記相違点2’’に係る本件発明1の発明特定事項を有する「多孔質炭素系材料」を製造できるものといえる。 e 一方、甲3発明の発明特定事項によれば、甲3製造方法は、「原料炭素質骨材に粘結材を配合し、混捏、加圧成形、焼成して電極板を得るに際し、炭素質骨材材料として、炭素質骨材原料として74μm~1mmの範囲の粒径を有する石油コークス、ピッチコークス又はこれらの混合物の粒子を使用し、これに適宜の粘結剤を原料骨材100部に対し8~22部の割合で加えて混捏し、次いで成形温度95~115℃で所望の電極板形状に加圧成形し、しかる後この成形品を1000~1500℃の温度範囲で焼成」するものである。 具体的には、甲3製造方法は、「原料炭素質骨材として粒径が500~1000μmの粒子45%、297~500μmの粒子30%、74~297μmの粒子22%、(残り3%は不可避的に混入する74μm以下の微粒子)からなるような粒径分布を有する石油コークス破砕粒を用い、中ピッチ(JISk2439)粘結材を骨材100重量部に対して20重量部加えて混捏し、これを振動成形機を使用して、0.04kg/cm2の成形圧力をもって成形し、次いでこの成形物を焼成炉において1350℃にて焼成」するものである。 f ここで、甲3製造方法において、「炭素質骨材原料として74μm~1mmの範囲の粒径を有する石油コークス、ピッチコークス又はこれらの混合物の粒子を使用し、これに適宜の粘結剤を原料骨材100部に対し8~22部の割合で加えて混捏」する工程、具体的には、「原料炭素質骨材として粒径が500~1000μmの粒子45%、297~500μmの粒子30%、74~297μmの粒子22%、(残り3%は不可避的に混入する74μm以下の微粒子)からなるような粒径分布を有する石油コークス破砕粒を用い、中ピッチ(JISk2439)粘結材を骨材100重量部に対して20重量部加えて混捏」する工程は、本件製造方法において、炭素系粒子とピッチとを混練する原料工程に相当するといえるが、混捏の際の温度は明らかでないし、混捏の時間も明らかでないから、混練の温度を150~300℃かつピッチの軟化点よりも高い温度とするものともいえないし、混練の時間を30分以下とするものともいえない。 そうすると、本件製造方法と甲3製造方法とは、原料工程が合致しない。 g また、甲3製造方法において、「成形温度95~115℃で所望の電極板形状に加圧成形」する工程、具体的には、「混捏」後の材料を「振動成形機を使用して、0.04kg/cm2の成形圧力をもって成形」する工程は、本件製造方法における成形工程に相当するといえる。 ここで、前記d~fによれば、本件製造方法は、原料工程において混練の温度を150~300℃でかつピッチの軟化点より高い温度で行うとともに、混練の時間を30分以内とすることで炭素系粒子同士を結合させるとともに、混練時ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行することを抑制し、軟化点の上昇を防止し、原料粉の付着性の低下を防止するものであり、そのようにして得られた原料粉をピッチの軟化点よりも高い温度で加熱して成形することにより前記相違点2’’に係る本件発明1の発明特定事項を有する「多孔質炭素系材料」を製造するものといえる。 ところが、甲3製造方法は、混捏の際の温度及び時間が明らかでないのであるから、前記中ピッチ(JISk2439)の縮合反応が進行することを抑制し、軟化点の上昇を防止しているとはいえない。 そうすると、もともと、前記中ピッチ(JISk2439)の軟化温度が甲第10号証(前記(1)コ)に記載されたとおり70~85℃であるとしても、混捏後の炭材を加圧成形する際の前記中ピッチ(JISk2439)の軟化温度よりも高い温度に加熱して成形しているとはいえない。 また、甲3製造方法における「成形温度95~115℃で所望の電極板形状に加圧成形」する工程の加熱時間も明らかでないから、前記工程が、中ピッチの軟化点よりも高い温度で10分以上加熱するものともいえない。 これらのことからみれば、本件製造方法と甲3製造方法とは、成形工程も合致しない。 h 前記d~gによれば、本件製造方法と甲3製造方法とは、少なくとも原料工程及び成形工程が合致しない。 そして、少なくとも原料工程及び成形工程が合致しない製造方法により製造された甲3発明に係る「フッ素電解製造用炭素質電極板」が「前記2次粒子は、独立することなく互いに結合」するとの前記相違点2’’に係る本件発明1の発明特定事項を有するとはいえないから、前記相違点2’’は、実質的な相違点である。 したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1が甲3発明であるとはいえない。 i 次に前記相違点2’’の容易想到性について検討すると、「フッ素電解製造用炭素質電極板」において、「前記2次粒子は、独立することなく互いに結合」しているものとすることを開示した証拠はないから、甲3発明を、前記相違点2’’に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に基づいて、又は、甲3発明及び甲第1、4、5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (イ)本件発明2~3について 本件発明2~3は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、前記(ア)に記載したのと同様の理由により、甲3発明ではないし、甲3発明及び甲第1、4、5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ)申立人の主張について a 申立人の主張の概要 甲第3号証を主引例とした場合の申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 本件発明1の発明特定事項Bについて、甲第3号証の実施例2では、原料炭素質骨材である石油コークス破砕粒と、結着材である中ピッチとを配合し、混捏して得られる混合物を0.04kPa/cm2の成形圧力で加圧成形した後、得られた成形品を1350℃で焼成して炭素質電極板を製造したことが記載されており、ここで、前記実施例2は実施例であるから、成形温度95~115℃で加圧成形されたものと理解できる。 また、甲第10号証には、中ピッチの軟化点が75~85℃であることが記載されているから、前記実施例2では、前記混合物を中ピッチの軟化点以上の温度で加圧成形した後焼成する方法で、「フッ素電解製造用炭素質電極板」を製造したことを理解できるし、前記実施例2で製造された「フッ素電解製造用炭素質電極板」は、炭素質骨材と粘結剤とを配合し、混捏、加圧成形、焼成の各工程を経て得られたものであるから、開口気孔を備えており、本件発明1に係る「多孔質炭素系材料」に相当するので、発明特定事項Bを備えていることが理解できる(特許異議申立書31頁4行~最終行)。 そして、甲第3号証に記載された「フッ素電解製造用炭素質電極板」は、本件発明1のそのほかの発明特定事項も有するから、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明であるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許異議申立書33頁5行~11行)。 b 申立人の主張についての判断 以下、前記aの主張について検討すると、前記主張は、甲第10号証には中ピッチの軟化点が75~85℃であることが記載されていることと、甲3製造方法における成形温度が95~115℃であることから、甲3製造方法が本件製造方法と合致していることをいうものであるといえる。 ところが、本件製造方法と甲3製造方法とは、少なくとも原料工程及び成形工程が合致しないことは前記(ア)d~gに記載したとおりであるから、甲第10号証の記載にかかわらず、本件製造方法と甲3製造方法は合致しないため、甲第3号証に記載された「フッ素電解製造用炭素質電極板」が発明特定事項Bを備えているということはできないし、このことを裏付ける証拠もないから、申立人の前記aの主張は、採用できない。 (エ)小括 したがって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明ではないし、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないし、本件発明2は、甲第3号証に記載された発明及び甲第1、4、5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないし、本件発明3は、甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第3の1(3)ア~エの特許異議申立理由はいずれも理由がない。 エ 甲第5号証を主引例とした場合について (ア)本件発明1について a 本件発明1と甲5発明とを対比すると、甲5発明における「水処理用多孔質炭素電極」は、本件発明1における「多孔質炭素系材料」に相当する。 b 前記aによれば、本件発明1と甲5発明とは、 「多孔質炭素系材料。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1’’’> 本件発明1は、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」しているのに対し、甲5発明は「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」しているか否かが明らかでない点。 <相違点2’’’> 本件発明1は、「前記多孔質炭素系材料」の「前記2次粒子」が「独立することなく互いに結合」しているのに対して、甲5発明は「2次粒子」が「独立することなく互いに結合」しているか否かが明らかでない点。 <相違点3’’’> 本件発明1は、「多孔質炭素系材料」の「最大気孔径が50~1000μm」であるのに対し、甲5発明は「多孔質炭素系材料」の「最大気孔径が50~1000μm」であるか否かが明らかでない点。 c まず、相違点1’’’が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲第5号証には、甲5発明に係る「水処理用多孔質炭素電極」が、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」することは記載されていないし、このことをうかがわせる記載もない。 d ここで、本件製造方法と甲5発明に係る「水処理用多孔質炭素電極」の製造方法(以下、甲5製造方法)という。)とが合致していれば、前記相違点1’’’は実質的な相違点とはいえないから、これらを対比すると、本件製造方法においては、原料工程において、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混練して、「2次粒子」に対応する原料粉を得るとき、混練の温度を150~300℃でかつピッチの軟化点より高い温度で行うとともに、混練の時間を30分以内とすることで、混練時ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行することを抑制し、軟化点の上昇を防止し、かつ、ピッチを十分に溶融させ、炭素系粒子同士を結合させ、原料粉の成形性を確保し、原料粉の付着性の低下を防止するものである。 e 一方、甲5発明の発明特定事項によれば、甲5製造方法は、「原料となるコークス粒子とピッチとを所定の割合で混合して充分に混練し、混合比は目的とする気孔性状や強度特性により適宜な割合に設定され、通常コークス粒子100重量部にピッチを20~40重量部の割合で混合されるものであり、ニーダーなどの混練機を用いて充分に混練するものであり、多孔質炭素基材の気孔性状はコークス粒子の粒度特性により調整することができ、例えば、気孔分布が広くなると被処理水が多孔質電極内を偏流するために殺菌効果が減退するので、気孔分布はシャープであることが好ましいものであり、気孔径分布をシャープ化し、気孔径を調整するためには粒度分布が狭いコークス粒子を原料として用いることが好ましいものであり、得られたコークス粒子とピッチとの混練物は、所望の成形型に入れて非酸化性雰囲気下800℃以上の温度で熱処理することにより多孔質炭素基材が得られ、この多孔質炭素基材に熱硬化性樹脂溶液を浸透させ、乾燥、加熱硬化したのち非酸化性雰囲気中800℃以上の温度、好ましくは2000~2800℃の温度で熱処理して黒鉛化する」ものである。 f ここで、甲5製造方法における「原料となるコークス粒子とピッチとを所定の割合で混合して充分に混練し、混合比は目的とする気孔性状や強度特性により適宜な割合に設定され、通常コークス粒子100重量部にピッチを20~40重量部の割合で混合されるものであり、ニーダーなどの混練機を用いて充分に混練」し「コークス粒子とピッチとの混練物」を得る工程は、本件製造方法における原料工程に相当し、「コークス原料」及び「ピッチ」、それぞれ、本件製造方法における「炭素系粒子」及び「ピッチ」に相当するといえるが、単に、「コークス原料」と「ピッチ」とを所定の割合で混合して十分に混練するものにすぎないから、「2次粒子」を構成するものとはいえない。 また、甲5製造方法は、「目開き35、60及び100メッシュの篩により篩分けして、粒度調整したコークス粒子」を原料として用いるものであり、「気孔分布が広くなると被処理水が多孔質電極内を偏流するために殺菌効果が減退するので、気孔分布はシャープであることが好ましいものであり、気孔径分布をシャープ化し、気孔径を調整するためには粒度分布が狭いコークス粒子を原料として用いることが好ましい」ものである。 ところが、「コークス粒子」が「2次粒子」を構成した場合、その粒度分布が変化して、前記特徴を損なうこととなることが強く推認されるから、甲5製造方法は、「コークス粒子とピッチとの混練物」を得る工程において「コークス粒子」と「ピッチ」が「2次粒子」を構成するものとはいえない。 これらのことからみれば、甲5製造方法は、そもそも、「2次粒子」に対応する原料粉を得るものとはいえないのであるから、原料工程が本件製造方法と合致しない。 そして、そのような甲5製造方法により製造された甲5発明に係る「水処理用多孔質炭素電極」も「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」するものとはいえないから、前記相違点1’’’に係る本件発明1の発明特定事項を有するとはいえないので、前記相違点1’’’は実質的な相違点である。したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明ではない。 g 次に、前記相違点1’’’の容易想到性について検討すると、「粒度分布が狭いコークス粒子を原料として用いることが好ましい」甲5製造方法において、「コークス粒子」が「2次粒子」を構成した場合、その粒度分布が変化して、その特徴を損なうこととなることが強く推認されることは、前記fに記載したとおりである。そのような甲5発明において、「水処理用多孔質炭素電極」を、あえて、「2次粒子を構成」するものとすることは想定されないので、甲5発明を、前記相違点1’’’に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明から当業者が容易に発明することができたものではない。 (イ)本件発明2~3について 本件発明2~3は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、前記(ア)に記載したのと同様の理由により、甲5発明ではないし、甲5発明及び甲第1号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)申立人の主張について a 申立人の主張の概要 甲第5号証を主引例とした場合の申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 本件発明1の発明特定事項Bについて、甲第5号証に記載の水処理用多孔質炭素電極は、コークス粒子とピッチとを混練してなる混練物を成形型に入れて800℃以上の温度で熱処理して得られる多孔質炭素基材に対して、熱硬化性樹脂溶液を浸透させ、乾燥、加熱硬化したのち800℃以上の温度で黒鉛化することにより得られるものであり、そのコークス粒子は本件発明1の「炭素系粒子」に該当し、ピッチの炭化物は、コークス粒子間に存在し、コークス粒子を互いに結合させることから、本件発明1における「炭素質バインダ」に相当し、熱硬化性樹脂は、多孔質炭素基材の内部に浸透した状態で硬化された後、黒鉛化によりガラス状カーボンに変化するため、ガラス状カーボンもまた、ピッチの炭化物と同様、コークス粒子間に存在し、コークス粒子を互いに結合させることから、本件発明1における「炭素質バインダ」に相当するといえる。したがって、甲第5号証における水処理用多孔質炭素電極は、「2次粒子」に該当する粒子から構成される。 また、甲第5号証の実施例1~5で製造された水処理用多孔質炭素電極は、その内部からの炭素系粒子であるコークス粒子の脱落が防止されている。 したがって、甲第5号証の実施例1~5で製造された水処理用多孔質炭素電極は、2次粒子から構成され、その内部からの炭素系粒子の脱落が防止されているといえることから、発明特定事項Bを備えている(特許異議申立書34頁8行~21行)。 そして、甲第5号証に記載された「水処理用多孔質炭素電極」は、本件発明1のそのほかの発明特定事項も有するから、本件発明1は、甲第5号証に記載された発明であるか、甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許異議申立書35頁2行~8行)。 b 申立人の主張についての判断 以下、前記aの主張について検討すると、前記主張は、コークス粒子間に炭素質バインダが存在し、コークス粒子が互いに結合されることから、コークス粒子が2次粒子に該当する粒子から構成されることをいうものであると理解される。 しかし、コークス粒子が炭素質バインダで互いに結合されていることは、ただちに2次粒子を構成することは意味しないし、本件製造方法と甲5製造方法とは、少なくとも原料工程及び成形工程が合致しないことは前記(ア)d~fに記載したとおりであるから、本件製造方法と甲5製造方法は合致しないため、甲第5号証に記載された「水処理用多孔質炭素電極」が発明特定事項Bを備えているということはできないし、このことを裏付ける証拠もないから、申立人の前記aの主張は、採用できない。 (エ)小括 したがって、本件発明1、2は、甲第5号証に記載された発明ではないし、甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないし、本件発明3は、甲第5号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第3の1(4)ア~イの特許異議申立理由はいずれも理由がない。 オ 甲第6~9号証から把握される発明に基づいた場合について (ア)甲第6~9号証から把握される発明について a 甲第6号証から把握される事項について 甲第6号証は、Morgan社のパンフレットであり、前記(1)カによれば、かさ密度1.08g/cc、空隙率48%、圧縮強度800lb/in2、曲げ強度400lb/in2、引張強度70lb/in2、平均孔径0.0047in、比抵抗1500hm-in×105、熱伝導率40BTU・ft/hr・ft2・°F、熱膨張率11×10ー7F、空気透過性10Ft3/ft2/min、水透過性90Gal/ft2/minの多孔質のグラファイトが「PG-25」であることが把握される。 b 甲第7号証から把握される事項について 甲第7号証は、2017年11月8日に発行された特許公報であり、前記(1)キによれば、SiC昇華結晶成長システムにおいて、成長用るつぼにSiC原料物質が充填される際に前記SiC原料物質が在留する供給区画と、前記成長用るつぼに前記SiC種結晶が充填される際に前記SiC種結晶が在留する結晶化区画とに分割する分割板を含み(前記(1)キ(ア))、分割板の中央部材として「PG-25」を使用することができ(前記(1)キ(イ))、前記分割板は、前記SiC含有蒸気流から粒子を実質的に除去するように構成され得ることが把握される。 c 甲第8号証から把握される事項について 甲第8号証は、前記(1)ク(ア)によれば、Morgan社の安全データシートであり、前記(1)ク(イ)によれば当該安全データシートはPG-25に関するものであり、前記(1)ク(ウ)によれば、2015年3月31日に改訂されたものである。 してみれば、2015年に、Morgan社のPG-25が知られていたことが把握される。 d 甲第9号証から把握される事項について 甲第9号証からは、前記(1)ケ(ア)によれば、Morgan社製の多孔質炭素材料「PG-25」はC:96.5mass%、O:3.5mass%からなるものであり、顕微鏡観察からは、遊離した2次粒子の存在が確認されず、最大気孔径は194μmであり、かさ密度は1.09Mg/m3であり、曲げ強度3MPaであることが把握される。 e 前記a~dによれば、甲第6~9号証から、2015年に、以下の発明が実施されていたといえる(以下、「実施発明」という。)。 「Morgan社製の多孔質グラファイトの「PG-25」であって、かさ密度1.08g/cc、空隙率48%、圧縮強度800lb/in2、曲げ強度400lb/in2、引張強度70lb/in2、平均孔径0.0047in、比抵抗150Ohm-in×105、熱伝導率40BTU・ft/hr・ft2・°F、熱膨張率11×10ー7F、空気透過性10Ft3/ft2/min、水透過性90Gal/ft2/minであって、 6.5mass%、O:3.5mass%からなるものであり、顕微鏡観察からは、遊離した2次粒子の存在が確認されず、最大気孔径は194μmであり、かさ密度は1.09Mg/m3であり、曲げ強度3MPaであり、 SiC昇華結晶システムにおいて、成長用るつぼにSiC原料物質が充填される際に前記SiC原料物質が在留する供給区画と、前記成長用るつぼに前記SiC種結晶が充填される際に前記SiC種結晶が在留する結晶化区画とに分割する分割板の中央部材として使用することができ、分割板はSiC含有蒸気流から炭素粒子を実質的に除去する役割があるもの。」 (イ)本件発明1について a 本件発明1と実施発明とを対比すると、実施発明における「多孔質グラファイト」は、本件発明1における「多孔質炭素系材料」に相当し、実施発明における「最大気孔径は194μm」は、本件発明1の「最大気孔径が50~1000μm」に相当する。 そうすると、本件発明1と実施発明とを比較すると、 「最大気孔径が50~1000μmである、多孔質炭素系材料。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1’’’’> 本件発明1は、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」しているのに対し、実施発明は「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」しているか否かが明らかでない点。 <相違点2’’’’> 本件発明1は、「前記多孔質炭素系材料」の「前記2次粒子」が「独立することなく互いに結合」しているのに対して、実施発明は「2次粒子」が「独立することなく互いに結合」しているか否かが明らかでない点。 b 上記相違点1’’’’について検討する。 甲第6~9号証には、PGー25が「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」していたことは記載されていないし、そのことをうかがわせる記載もないし、その製造方法も記載されておらず、本件製造方法で製造されたものといえない。してみれば、相違点1’’’’は実質的な相違点である。 次に相違点1’’’’の容易想到性について検討しても、甲第6~9号証には、PG-25を「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」するものとする動機付けになるような記載は何らないから、実施発明において、相違点1’’’’に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到しうることではない。 したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、実施発明ではないし、実施発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ)本件発明2~3について 本件発明2~3は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、前記(ウ)に記載したのと同様の理由により、実施発明ではないし、実施発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (エ)申立人の主張について a 申立人の主張の概要 申立人は、実施発明は「顕微鏡写真からは、遊離した2次粒子の存在は確認されなかった」とされるものであるから、実施発明の多孔性のグラファイトが、2次粒子が互いに結合しているものである旨主張している(異議申立書36頁12行~37頁11行)。 b 申立人の主張についての判断 以下、前記aの主張について検討すると、下記2(3)イ(イ)で検討したとおり、2次粒子が互いに結合しているというためには、偏光顕微鏡写真に加えて、水を用いた超音波洗浄で「遊離した2次粒子」が存在するか否かを確認する必要がある。したがって、「顕微鏡写真からは、遊離した2次粒子の存在は確認されなかった」ことは、「遊離した2次粒子」が顕微鏡で観察されなかったことは示しているとしても、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成する」ことを示すものであるとはいえない。 したがって、申立人の前記aの主張は、採用できない。 (オ)小括 したがって、本件発明1~3は、甲第6~9号証から把握される発明ではないし、甲第6~9号証から把握される発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第3の1(5)の特許異議申立理由は理由がない。 カ 甲第7号証又は甲第8号証を主引例とした場合について 前記オ(ア)b、cによれば、甲第7号証、甲第8号証には、「PG-25」が記載されているが、前記オ(カ)で記載したとおり、本件発明1~3は「PG-25」ではないし、「PG-25」から当業者が容易に発明し得るものでもない。 したがって、前記第3の1(6)の特許異議申立理由は理由がない。 2 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について (1)明確性要件の判断手法 特許請求の範囲の記載が明確性要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであるので、以下、この観点に立って検討する。 (2)本件特許明細書の記載事項 本件特許明細書には、以下の記載がある。 ア 「【0001】 本発明は、多孔質炭素系材料および多孔質炭素系材料の製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 炭素系材料は、各種薬品に対する耐食性、耐熱性を有しているため、半導体製造装置、各種電極材料、冶金分野、放電加工用電極、高温炉などの分野で広く利用されている。 【0003】 このような炭素系材料には、微粒子の原材料を用い、高い成形圧で等方的に成形して得られる緻密で高強度の等方性黒鉛材料が広く用いられている。一方、フィルタ、触媒担体などの分野では、多孔質の炭素系材料が必要とされ、低密度で強度を高くする様々な工夫が行われている。 ・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 特許文献1に記載の発明は、微粉が発生する課題に対して、ある一定の特性を持つ炭素質粉末を用いて成形、焼成または黒鉛化することにより高強度の炭素質炭素成形体が得られ、課題を解決するという内容の発明であるが、そもそも多孔体を製造するための原材料には、粗い粒子、細かい粒子が幅広く分布し、多孔質の炭素系材料を製造すると細かい粒子は素材に取り込まれることなく遊離しやすくなり、微粉末の発生源となる。 【0007】 本発明では上述した課題を鑑み、広い粒度分布の原料粉を使用した場合でも、微粉末の発生を防止できる多孔質炭素系材料および該多孔質炭素系材料の製造方法を提供することを目的とする。」 イ 「【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の多孔質炭素系材料は、 炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成する多孔質炭素系材料であって、 前記2次粒子は、独立することなく互いに結合している。 【0009】 本発明の多孔質炭素系材料では、2次粒子が独立することなく互いに結合しあっているので、内部から脱落した粒子が材料の外部に出てくることを抑制することができる。 【0010】 また、本発明の多孔質炭素系材料は、以下の態様であることが好ましい。 【0011】 前記多孔質炭素系材料は、最大気孔径が50~1000μmである。 【0012】 最大気孔径が50μm以上であると、多孔質炭素系材料として様々な用途で好適に利用できる。最大気孔径が1000μm以下であると、十分な比表面積が得られ、気孔内部の表面を十分に利用できる。 【0013】 前記多孔質炭素系材料は、かさ密度が1.0~1.5gcm3である。 【0014】 かさ密度が1.0gcm3以上であると、多孔質材料として形状を維持するだけの十分な強度が得られる。かさ密度が1.5gcm3以下であると、充分な気孔の体積が得られるので、多孔質材料として十分な機能を発揮することができる。 【0015】 前記多孔質炭素系材料は、曲げ強度が2~30MPaである。 曲げ強度が2MPa以上であると、十分な強度を備えているので、構造物、各種部品などとして好適に利用である。曲げ強度が30MPa以下であると、容易に加工できるので、容易に目的の形状を得ることができる。」 ウ 「【0016】 続いて、本発明の多孔質炭素系材料の製造方法は、 炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混錬し、原料粉を得る原料工程と、 前記原料粉を成形型に入れ、前記軟化点よりも高い温度に加熱し所定の形状の成形体を得る成形工程と、 前記成形体を焼成する焼成工程と、 を含む。 【0017】 本発明の多孔質炭素系材料の製造方法によれば、炭素系粒子と、軟化点が70℃以上のピッチを混錬して原料粉を得ているので、室温では付着しあうことはなく、室温で所定の粒子径となるように粒度調整をすることができる。また、軟化点が200℃以下のピッチを混錬しているので、混錬するためにピッチを溶融させるときにも高温に曝す必要がなく、ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行しにくく、軟化点の上昇を防止することができる。 【0018】 また、多孔質炭素系材料を得るために、主に熱による融着作用が中心でほとんど加圧されていないので、広い粒度分布の2次粒子であっても互いに結合した多孔体が得られるうえに、連続気孔ができやすく、後の焼成工程で原料粉に含まれる揮発分を内部に蓄積することなく除去することができる。 ・・・ 【0022】 前記成形工程では、10分以上加熱する。 【0023】 成形工程で10分以上加熱することにより、ピッチの融着を促進し、確実に2次粒子を互いに結合することができる。また成形工程では、型を伝播して熱源から直接原料粉を加熱することができるので、ピッチの縮合による高分子量化よりも早く融着でき、強固に結合することができる。 ・・・ 【発明の効果】 【0028】 本発明の多孔質炭素系材料によれば、2次粒子が独立することなく互いに結合しているため、材料の内部から2次粒子が脱落しにくく、材料の外部に出てくることが抑制される。 【0029】 また、本発明の多孔質炭素系材料の製造方法によれば、炭素系粒子と、軟化点が70℃以上のピッチを混錬して原料粉を得ているので、室温では付着しあうことはなく、室温で所定の粒子径となるように粒度調整をすることができる。さらに、軟化点が200℃以下のピッチを混錬しているので、混錬するためにピッチを溶融させるときにも高温に曝す必要がなく、ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行しにくく軟化点の上昇を防止することができる。 【0030】 また、製造過程において、主に熱による融着作用が用いられ、材料がほとんど加圧されていないので、広い粒度分布の2次粒子であっても互いに結合した多孔体が得られるうえに、連続気孔ができやすく、後の焼成工程で原料粉に含まれる揮発分を内部に蓄積することなく除去することができる。」 エ 「【0033】 図1(a)は、本発明の実施の形態1である炭素質の多孔質炭素系材料の製造工程を示し、図1(b)は、本発明の実施の形態2である黒鉛質の多孔質炭素系材料の製造工程を示す。 【0034】 図1(a)に示すように、実施の形態1の炭素質の多孔質炭素系材料は、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混錬し、原料粉を得る原料工程と、原料粉を成形型に入れ、軟化点よりも高い温度に加熱し所定の形状の成形体を得る成形工程と、成形体を焼成する焼成工程と、を経て製造される。 ・・・ 【0036】 (原料工程) 本実施の形態の混錬工程では、図2(a)に示すように、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混錬し、図2(b)に示す原料粉を得る。なお、原料粉は炭素系粒子がバインダにより互いに結合した粒子の集合体であり、焼成工程あるいは黒鉛化工程を経て得られる2次粒子に対応する。炭素系粒子は特に限定されないが、例えばピッチコークス、黒鉛、ガラス状カーボンなど粉砕した炭素系粒子を利用することができる。中でもピッチコークスは、ピッチとの馴染みがよく強固な結合が得られ、本発明の炭素系粒子として好適に利用することができる。 ・・・ 【0039】 本実施の形態で用いるピッチは、軟化点が70~200℃である。炭素系粒子と、軟化点が70℃以上のピッチを混錬して原料粉を得ることにより、原料粉が室温では付着しあうことを抑制し、室温で所定の粒子径となるように、原料粉の粒度調整をすることができる。軟化点は、90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。 また、炭素系粒子と、軟化点が200℃以下のピッチを混錬して原料粉を得ることにより、混錬するために原料粉を高温に曝す必要がなく、混錬時ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行することを抑制し、軟化点の上昇を防止することができる。軟化点は、180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。 【0040】 本実施の形態では、混錬の温度は、150~300℃でかつピッチの軟化点より高い温度で行うことが好ましい。混錬の温度を150℃以上でかつピッチの軟化点より高い温度とすることによりピッチを十分に溶融させ、炭素系粒子同士を結合させることができる。混錬の温度は、180℃以上がより好ましい。 混錬の温度を300℃以下とすることにより、ピッチの重縮合を防止し、原料粉の成形性を確保することができる。混錬の温度は、280℃以下がより好ましい。 【0041】 また、多孔質炭素系材料を得るために、主に熱による融着作用が中心となっており、ほとんど加圧されていないので、広い粒度分布の2次粒子であっても互いに結合した多孔体が得られるうえに、連続気孔ができやすく、後の焼成工程で原料粉に含まれる揮発分を内部に蓄積することなく除去することができる。 【0042】 本実施の形態では、ピッチを溶融させながら一様に混合した段階で混錬を終了することが好ましく、具体的には混錬の時間は30分以下であることが好ましい。混錬の時間が30分以下であると、ピッチの重縮合を抑制し、原料粉の付着性の低下を防止することができる。混錬の時間は、20分以下がより好ましく、10分以下がさらに好ましい。 【0043】 (粒度調整) 原料工程で得られた原料粉(図2(b))は、必要に応じて粒度調整を行うことが好ましい。粒度調整を行うことにより所定の気孔率、粒度分布の多孔質炭素系材料を得ることができる。粒度調整の方法は、分級、粉砕などの手法を利用できる。粉砕で粒度調整する場合、炭素系粒子をピッチで固めた原料粉を粉砕するので、炭素系粒子がピッチで絡められた付着力のある2次粒子が多く得られる一方、中には炭素系粒子を破壊したり、バインダであるピッチが剥がれた原料粉など、付着力のない原料粒子も同時に得られる。本発明の多孔質炭素系材料の製造方法では、主に熱による融着作用で成形しているので、このような付着力のない原料粉であっても独立することなく互いに結合することができる。 【0044】 本実施の形態で用いる原料粉の平均粒子径は、50~1500μmであることが好ましい。原料粉の平均粒子径が50μm以上であると、十分な大きさの気孔が得られ、様々な用途で利用しやすい多孔質炭素系材料を得ることができる。原料粉の平均粒子径は、80μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。 原料粉の平均粒子径が1500μm以下であると、成形型に入れ成形したとき、表面にできる凹凸の大きさを小さくすることができ、表面の平滑な多孔質炭素系材料を得ることができる。原料粉の平均粒子径は、1200μm以下がより好ましく、1000μm以下がさらに好ましい。 【0045】 (成形工程) 本実施の形態の成形工程では、得られた原料粉(図2(b))を成形型に入れ(図2(c))、ピッチの軟化点よりも高い温度に加熱し、図2(d)に示す所定の形状の成形体を得る。図2(d)に示すように、本実施の形態では、ピッチの軟化点よりも高い温度に加熱した状態で保持しているので、小さな原料粉や、バインダの剥がれた原料粉であっても遊離することなく互いに結合しあい、一体化している。 【0046】 本実施の形態では、原料粉に熱を加えているので、付着力のない原料粉であっても2次粒子に取り込まれ一体化することができ、独立し遊離した炭素系粒子の発生を抑制することができる。 【0047】 本実施の形態の成形工程において、望ましい加熱時間は10分以上である。成形工程では熱の作用で成形しているので、加熱時間を長くすることにより原料粉をより軟化させ、強固に融着させることができる。加熱時間は、20分以上がより好ましく、40分以上がさらに好ましい。 【0048】 本実施の形態の成形工程は、成形工程として別に準備することは必須ではなく、後の焼成工程の初期段階を成形工程とすることができる。図9に示すように例えば、強固な容器に原料粉を入れ、蓋をしたのちパッキング材に埋めて焼成してもよい。図9(a)では、可燃性の容器に原料粉を充填され、図9(b)では、パッキング材の充填された焼成容器に上記の容器が埋められ、図9(c)では、温度を上昇させ、原料粉が溶融し成形されるとともに焼成され焼成体が得られている。容器は、発生する生成ガスが蓄積しないよう通気性を有していることが好ましいが、加熱されることにより通気性になる素材であってもよい。焼成の初期段階で原料粉が互いに融着し、所定の形状に成形される。さらに温度を上げると、発生する生成ガスが通気性の容器を通り抜け、外部に排出されるとともに温度の上昇とともに成形体は熱収縮していく。また、容器は可燃性であることが好ましい。容器が可燃性であると焼成の過程で容器が炭化し原型をとどめなくなる。パッキング材に埋まっているので成形体の収縮に伴ってパッキング材が追随し、変形を防止することができる。通気性を有し、可燃性の容器としては、通気性を確保するために多数の穴を穿孔した厚紙などが利用できる。 【0049】 また、本実施の形態の成形工程では、熱だけでなく、圧力を併用して成形してもよい。圧力を加えることによって、成形型の形状を転写し、寸法精度の高い多孔質炭素系材料を得ることができる。 【0050】 以下、本発明の特徴を明確にするため、従来の多孔質炭素系材料、従来の緻密な等方性炭素系材料(等方性黒鉛材料)について、特に成形工程を中心に説明する 【0051】 従来の多孔質炭素系材料においては、図3(a)に示す炭素系粒子とピッチとを混錬し、図3(b)に示す原料粉を得る。そして、図3(c)及び(d)に示す成形工程、図3(e)に示す焼成工程を行う。図3(c)は成形前の段階、図3(d)は成形後の段階を示す。従来の方法においては、図3(c)及び(d)に示す成形工程は、ピッチを溶融させることなく主に圧力の作用によって行われている。このため圧力が加わった粒子の接点では強く結合するのに対し、圧力が加わらなかった粒子の接点では強く結合することができない。多孔質炭素系材料の製造においては、粗い原料粉を使用するので、型に充填した段階で大きな空隙が形成され、大きな空隙に入り込んだ原料粉に十分に圧力が加わりにくい。このため他の粒子と一体化することができず遊離した2次粒子となって、素材の強度に寄与せず、パーティクルを生成させるだけの異物となる。 【0052】 また、従来の等方性黒鉛材料においては、図4(a)に示す炭素系粒子とピッチとを強く混錬し、図4(b)に示すように塊状の混錬物が得られる。混錬物を微粉砕して図4(c)に示す原料粉を得る。その後、図4(d)及び(e)に示すように、原料粉を高い圧力で成形して成形体を得た後、図4(f)に示す焼成工程、必要に応じて黒鉛化することによって、等方性黒鉛材料が得られる。なお、図4(d)は成形前の段階、図4(e)は成形後の段階を示す。 【0053】 従来の黒鉛質の等方性炭素系材料(等方性黒鉛材料)では、粉砕後の原料粉が細かいので成形時に大きな空隙ができにくく、圧力が均等に伝播しやすいので遊離した粒子を生じさせにくい。また、空隙自体が細かいので、遊離した状態の2次粒子があっても内部に封じ込められ、パーティクルの原因となりにくい。 【0054】 (焼成工程) 本発明に係る本実施の形態の焼成工程は、得られた成形体(図2(d))を不活性雰囲気下で加熱し、図2(e)に示す焼成体を得る。本実施の形態では、焼成体が多孔質炭素系材料となる。 【0055】 焼成の温度は例えば700~2000℃であることが好ましい。焼成を700℃以上で行うことにより成形体から揮発分を十分に除去し、多孔質炭素系材料として使用可能となる。焼成の温度は、800℃以上がより好ましく、900℃以上がさらに好ましい。 【0056】 炭素系材料は、用途に応じて適切な黒鉛化度があり、例えば電解電極などでは黒鉛化度の低い炭素質の素材が望ましく、鋳造用では黒鉛化度の高い黒鉛質の素材が好ましい。焼成を2000℃以下で行うことにより、多孔質炭素系材料に十分な硬度を与え、例えば電解電極で使用可能な多孔質炭素系材料を得ることができる。焼成の温度は、1800℃以下がより好ましく、1500℃以下がさらに好ましい。 【0057】 本発明に係る本実施の形態の製造方法では原料粉を成形工程で軟化させるため、原料工程の段階でピッチを十分に重縮合させていない。このため多くの揮発分を含んでいるが、そもそも成形後の段階で多孔質であるので、速やかに分解ガスを外部に拡散させ、成形体内部で揮発分が炭素化することによる高密度化、気孔の封止を防止でき、クラックを防止することができる。 【0058】 本発明に係る本実施の形態の焼成工程では、パッキング材の平均粒子径が原料粉より粗い(大きい)ことが好ましい。パッキング材の平均粒子径が原料粉より粗いと、成形体から発生したタール状の生成物が成形体内にとどまらず速やかに拡散し、多孔体の気孔の形成を促進することができる。 【0059】 以上の工程を経て得られる多孔質炭素系材料は、少なくとも材料の内部において、2次粒子が独立することなく互いに結合しており、遊離した粒子の存在が抑えられている。よって、材料の表面から粒子、微粒末が漏れ出てくることを抑制することができる。 【0060】 (黒鉛化工程) 実施の形態2(図1(b)参照)は、焼成工程の後、さらに黒鉛化を行い、黒鉛質の多孔質炭素系材料が得られている。黒鉛化の温度は2000~3500℃であることが好ましい。2000℃以上の温度で黒鉛化することにより切削性が良好になり、焼き入れ鋼による切断加工や切削加工が容易にできるようになる。さらに黒鉛化を行うことにより、例えば溶融金属などに対する耐食性を高くしたり、熱伝導率、耐熱衝撃性を高くすることができ、冶金、鋳造などの用途でも好適に使用できる。黒鉛化の温度は、2200℃以上がより好ましく、2500℃以上がさらに好ましい。 【0061】 本実施の形態では、最大気孔径が50~1000μmであることが好ましい。最大気孔径が50μm以上であると、多孔質炭素系材料として様々な用途で好適に利用できる。最大気孔径は、80μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。 最大気孔径が1000μm以下であると、十分な比表面積が得られ、気孔内部の表面を十分に利用できる。最大気孔径は、800μm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。 なお、最大気孔径は水銀圧入法によって測定することができる。」 オ 「【0062】 (実施例) 炭素系粒子として平均粒子径300μmのアモルファス系のピッチコークス100重量部、バインダとして軟化点150℃のピッチ25重量部を原材料に用い、連続式ニーダーで混錬した。なお、連続式ニーダーの温度は250℃となるように設定した。連続式ニーダーに投入されたピッチは速やかに溶融し炭素系粒子と混合され、混錬物が得られた。なお、連続式ニーダーの混錬時間は1分であり、ピッチはほとんど重縮合を進行させなかった。 【0063】 次に得られた混錬物を粗粉砕し、2mmの篩を通し、粒度調整を行った。得られた原料粉の平均粒子径は900μmであった。 【0064】 得られた原料粉を開口が600×300mm、深さ80mmの金属製の型に充填し、金属製の蓋を被せ、周囲を200℃に加熱し、120分間保持したのち、ゆっくりと蓋を押し全体の形状を整えた。このときの加圧圧力は蓋の自重のみであり、2kPaであった。 【0065】 冷却後、型から取り出し、焼成缶に詰め、平均粒子径5mmのパッキングコークスに埋め900℃で焼成した。 【0066】 (比較例1) 成形工程を100℃、面圧15MPaで型押し成形した以外は実施例と同様に多孔質炭素系材料を製造した。 【0067】 (比較例2) 炭素系粒子として平均粒子径15μmのアモルファス系ピッチコークス100重量部に対し、バインダとしてピッチ60重量部を加え、200分混錬した。なお、混錬の過程でピッチは重縮合し軟化点は200℃以上に上昇していた。なお、本比較例では、原料工程では、粉状の原料粉が得られず、塊状の固い混錬物が得られ、そのままでは成形工程の原料粉として使用できなかった。 【0068】 得られた混錬物を粉砕し、平均粒子径25μmの原料粉を得た。原料粉をゴムバッグに充填し、100MPaの成形圧でCIP成形した。得られた成形体を900℃で焼成し緻密な炭素質材料を得た。 【0069】 表1は、得られた実施例及び比較例の炭素質材料の物性値を示す。図5は実施例及び比較例の気孔分布を示す。実施例は、比較例1および比較例2に対し、気孔率には大差はないが、大きな平均気孔径を示している。また、実施例は、比較例1に比べて高い曲げ強度を示している。 【0070】 【表1】 [図:0001435210000018.jpg] 【0071】 図6は、実施例で得られた多孔質炭素系材料の断面の偏光顕微鏡写真を示す。実施例の組織は、成形時に熱で互いに融着し角が丸まり、遊離した2次粒子の存在は見られなかった。また、水を用いて超音波洗浄しても、気孔からパーティクルが発生することはなかった。すなわち、2次粒子が独立することなく互いに結合していることが理解される。 【0072】 図7は、比較例1で得られた多孔質炭素系材料の断面の偏光顕微鏡写真を示す。比較例1で得られた多孔質炭素系材料では、パーティクルの原因となる細かな2次粒子が気孔の内部に残留していた(遊離した2次粒子)。さらに実施例と同様に水を用いて超音波洗浄したとき、気孔からパーティクルの発生が確認された。 【0073】 図8は、比較例2で得られた炭素系材料の断面の偏光顕微鏡写真を示す。比較例2で得られた緻密な炭素系材料では、そもそも大きな気孔の存在がなく、パーティクルの原因となる遊離した2次粒子の存在は確認できなかった。遊離した2次粒子が存在したとしても細かな気孔の内部に封じ込められ、外部に流出しにくくなっていると考えられる。 なお、実施例と同様に水を用いて超音波洗浄したとき、気孔からパーティクルの発生が確認された。強い洗浄力で気孔内部のパーティクルが外にただき出されたと推定される。」 カ 「【図1】 [図:0001435210000019.jpg] 」 キ 「【図2】 [図:0001435210000020.jpg] 」 ク 「【図3】 [図:0001435210000021.jpg] 」 (3)明確性要件の判断 ア 始めに第3の2(1)の特許異議申立理由から検討すると、技術常識からみて、「2次粒子」は、「1次粒子」が凝集、結合した粒子をいうものである。 そして、本件特許明細書の段落【0036】(前記(2)エ)の記載によれば、本件発明1における「2次粒子」は、「炭素系粒子」と、ピッチとを混錬して得られる原料粉が対応するものであるから、「炭素系粒子」が、ピッチ、すなわち「炭素系バインダ」により互いに凝集、結合した粒子をいうものと解するのが妥当である。 そして本件特許明細書の段落【0036】、【0043】、【0051】、【0053】及び【図3】(前記(2)エ、ク)に記載された原料粉は、前記「2次粒子」のうち、成形前の粒子をいうものと理解することができる。 してみれば、当業者は、本件発明1における「2次粒子」の意味を理解することができるから、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は明確性要件に適合するというべきである。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する本件特許請求の範囲2~3について検討しても事情は同じである。 イ 次に前記第3の2(2)の特許異議申立理由について検討する。 (ア)本件特許明細書の段落【0071】及び【0073】の記載(前記(2)オ)によれば、偏光顕微鏡写真の観察によれば、実施例の組織は、成形時に熱で互いに融着し角が丸まり、遊離した「2次粒子」の存在は見られなかったものであり、水を用いて超音波洗浄しても、気孔からパーティクルが発生することはなかったことから、「2次粒子」が独立することなく互いに結合していることが理解されるものである。 これに対して、偏光顕微鏡写真の観察によれば、比較例2で得られた炭素系材料では、そもそも大きな気孔の存在がなく、パーティクルの原因となる遊離した2次粒子の存在は確認できなかったのであるが、実施例と同様に水を用いて超音波洗浄したとき、気孔からパーティクルの発生が確認されたものであり、強い洗浄力で気孔内部のパーティクルが外にたたき出されたと推定されるものである。 (イ)前記(ア)によれば、実施例及び比較例2は、ともに、偏光顕微鏡写真の観察では遊離した「2次粒子」の存在は確認できなかったのであるが、更に水を用いて超音波洗浄することにより、実施例では遊離した「2次粒子」が存在することを確認できなかったものである。 してみれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、偏光顕微鏡写真の観察に加えて、水を用いた超音波洗浄を行うことにより、遊離した「2次粒子」が存在するか否か、すなわち「多孔質炭素系材料」が発明特定事項Bを有するか否かを確認するものであることを理解できるし、その場合、その確認方法によって結果が異なるものともいえないから、発明特定事項Bを有するか否かを確認する方法が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は明確性要件に適合するというべきである。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する本件特許請求の範囲2~3について検討しても事情は同じである。 (4)小括 したがって、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号所定の規定を満たすから、前記第3の2の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 3 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について (1)サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点により検討する。 (2)サポート要件の判断 ア 前記2(2)アの記載によれば、本件発明は、「多孔質炭素系材料」に関するものであって(段落【0001】)、従来技術において、多孔体を製造するための原材料には、粗い粒子、細かい粒子が幅広く分布し、多孔質の炭素系材料を製造すると細かい粒子は素材に取り込まれることなく遊離しやすくなり、微粉末の発生源となるものであったところ、本件発明では上述した課題に鑑み、広い粒度分布の原料粉を使用した場合でも、微粉末の発生を防止できる「多孔質炭素系材料」を提供することを目的とするものである(段落【0006】)。 イ そして、前記2(2)イの記載によれば、本件発明に係る「多孔質炭素系材料」は「炭素系粒子」と、それらを互いに結合する「炭素質バインダ」とが「2次粒子」を構成し、前記「2次粒子」は、独立することなく互いに結合しているものであり、「多孔質炭素系材料」が構成する「2次粒子」が独立することなく互いに結合しあっているので、内部から脱落した粒子や微粉末が材料の外部に出てくることを抑制することができるものである(【0008】~【0009】)。 ウ 前記ア~イによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明は、「原材料には、粗い粒子、細かい粒子が幅広く分布し、多孔質の炭素系材料を製造すると細かい粒子は素材に取り込まれることなく遊離しやすくなり、微粉末の発生源となる」という課題(以下、「本件課題」という。)を解決するものであって、広い粒度分布の原料粉を使用した場合でも、微粉末の発生を防止できる「多孔質炭素系材料」を提供することを目的とするものであり、「多孔質炭素系材料」を、「炭素系粒子」と前記「炭素系粒子」を互いに結合する「炭素質バインダ」とが「2次粒子」を構成し、前記「2次粒子」を、独立することなく互いに結合しているものとすることで、「多孔質炭素系材料」が構成する「2次粒子」が独立することなく互いに結合しあって、内部から脱落した粒子や微粉末が材料の外部に出てくることを抑制することができ、本件課題を解決できることを理解することができる。 そして、「多孔質炭素系材料」を「炭素系粒子」と、前記「炭素系粒子」を互いに結合する「炭素質バインダ」とが「2次粒子」を構成し、前記「2次粒子」を独立することなく互いに結合しているものとすることは、本件発明1の、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成する多孔質炭素系材料であって、前記2次粒子は、独立することなく互いに結合しており」との発明特定事項にほかならないから、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1の発明特定事項により、本件課題を解決できることを理解することができるのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合するというべきである。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する特許請求の範囲の請求項2~3について検討しても事情は同じである。 (3)申立人の主張について ア 始めに、申立人の前記第3の3(1)の主張について検討すると、前記主張は、比較例1の焼成の初期段階は本件製造方法の成形工程に相当し、その場合、多孔質炭素系材料が発明特定事項Bを有していることが推認できるが、それにもかかわらず、本件課題を解決できないことから、本件特許請求の範囲の記載は本件課題を解決しないものを包含するので、サポート要件を満たさないことをいうものといえる。 ところが、本件特許明細書の【0072】の記載(前記2(2)オ)によれば、比較例1で得られた多孔質炭素材料では、パーティクルの原因となる細かな2次粒子が気孔の内部に残留していた(遊離した2次粒子)のであり、更に、実施例と同様に水を用いて超音波洗浄したとき、気孔からパーティクルの発生が確認されたのであるから、そもそも発明特定事項Bを有していることが推認できるものではない。 そうすると、本件特許請求の範囲は、発明特定事項Bを有しない比較例1で得られた多孔質炭素系材料を含むものではないから、本件課題を解決しないものを包含するものではない。 そして、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合することは、前記(2)ウに記載したとおりであるから、前記第3の3(1)の主張は採用できない。 イ 次に、申立人の前記第3の3(2)の主張について検討すると、本件特許明細書の段落【0012】の記載(前記2(2)イ)によれば、当業者は、「多孔質炭素系材料」の「最大気孔径」が「50μm以上」であると、「多孔質炭素材料として様々な用途で好適に利用」でき、また、前記「最大気孔径」が「1000μm以下」であると、十分な比表面積が得られ、気孔内部の表面を十分に利用できることを理解することが理解できるから、本件特許明細書の実施例において「多孔質炭素系材料」の最大気孔径が206μmの一点のみであり、比較例1の「多孔質炭素系材料」の「最大気孔径」が本件発明1において特定された範囲である255μmであり、実施例の「多孔質炭素系材料」が前記効果を奏することは記載されていなくとも、本件特許請求の範囲の請求項1の記載がサポート要件を満たさないということはできない。 また、従来、微粒子の原材料によって緻密で高強度の黒鉛材料が用いられてきたところ(段落【0003】)、広い粒度分布を持つ原料粉を用いることで、最大気孔径が50~1000μmという大きさの最大気孔径を有する「多孔質炭素系材料」を製造しているのであるから、最大気孔径が50~1000μmであることは、広い粒度分布を持つ原料粉を用いることにより得られる物性であるため、「広い粒度分布を持つ原料粉」を用いるという本件課題と関連する物性であり、本件の課題の解決に寄与しないものとはいえない。 したがって、前記第3の3(2)の主張も採用できない。 ウ 次に、申立人の前記第3の3(3)の主張について検討すると、本件特許明細書の段落【0014】の記載(前記2(2)イ)の記載によれば、当業者は、「かさ密度」が「1.0g/cm3以上」であると、多孔質材料として形状を維持するだけの十分な強度が得られ、「1.5g/cm3以下」であると、充分な気孔の体積が得られるので、多孔質材料として十分な機能を発揮することができることを理解できるから、本件特許明細書の実施例において、かさ密度が記載されておらず、かさ密度が「1.0~1.5g/cm3」であることにより、上記【0014】(前記2(2)イ)に記載された効果を奏する理由も記載されておらず、そうすることの臨界的意義も記載されていないとしても、本件特許請求の範囲の請求項1の記載がサポート要件を満たさないということはできないから、前記第3の3(3)の主張も採用できない。 エ 最後に、申立人の前記第3の3(4)の主張について検討すると、本件特許明細書の段落【0015】の記載(前記2(2)イ)の記載によれば、当業者は、「曲げ強度」が「2~30MPa」であると、十分な強度を備えているため、構造物、各種部品などとして好適に利用でき、容易に加工できるため容易に目的の形状を得ることができることを理解できるから、本件特許明細書の実施例において「多孔質炭素系材料」の曲げ強度が10MPaの一点のみであり、比較例1の「多孔質炭素系材料」の「曲げ強度」が本件発明3において特定された範囲内である5MPaであり、実施例の「多孔質炭素系材料」が前記効果を奏することは記載されておらず、更に、「最大気孔径」が「2~30MPa」の範囲であることによって、本件特許明細書の段落【0015】(前記2(2)イ)に記載された効果を奏する理由も記載されておらず、そうすることの臨界的意義も記載されていないとしても、本件特許請求の範囲の請求項1の記載がサポート要件を満たさないということはできないから、前記第3の3(4)の主張も採用できない。 (4)小括 したがって、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号所定の規定を満たすから、前記第3の3の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 4 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について (1)申立人の主張について ア 申立人の前記第3の4の主張について検討すると、前記主張は、本件特許明細書の比較例1の多孔質炭素材料は、その製造工程からみれば、発明特定事項Bを有していると推認できる一方、本件特許明細書の段落【0072】の記載(前記2(2)オ)によれば、発明特定事項Bを有しないとも考えられるから、当業者は、発明特定事項Bを有する「多孔質炭素系材料」を製造する方法を理解することができないことをいうものといえる。 イ そこで、検討すると、本件特許明細書の段落【0048】の記載(前記2(2)エ)によれば、本件製造方法における成形工程は、成形工程として別に準備することは必須ではなく、後の焼成工程の初期段階を焼成工程とすることができるものであり、焼成の初期段階で原料粉が互いに融着し、所定の形状に成形され、更に温度を上げると、発生する生成ガスが通気性の容器を通り抜け、外部に排出されるとともに成形体は熱収縮していくものである。 そうすると、本件製造方法において成形工程を成形工程として別に準備しない場合、焼成工程は、焼成の初期段階で原料粉が互いに融着する程度の温度で実施され、所定の形状が形成された後に、更に温度を上げて焼成が行われるものといえる。 ウ これに対して、本件特許明細書の段落【0066】の記載(前記2(2)オ)によれば、比較例1は、成形工程を100℃、面圧15MPaで型押し成形した以外は実施例と同様に多孔質炭素系材料を製造したものであって、100℃、面圧15MPaで型押し成形する成形工程を有するから、そもそも、成形工程を成形工程として別に準備しない場合に該当しない。 そして、本件特許明細書の段落【0062】の記載(前記2(2)オ)によれば、実施例は、バインダとして軟化点150℃のピッチ25重量部を原材料に用いたものであって、前記段落【0066】の記載によれば、比較例1においても同様であるから、100℃、面圧15MPaで型押し成形した成形工程は、ピッチの軟化点よりも高い温度で成形を行うものではない。 また、本件特許明細書の段落【0065】の記載(前記2(2)オ)によれば、実施例における焼成工程は、冷却後、型から取り出し、焼成缶に詰め、平均粒子径5mmのパッキングコークスに埋め900℃で焼成し焼成体を得たものであり、焼成の初期段階で原料粉が互いに融着する程度の温度で実施され、所定の形状が形成された後に、更に温度を上げて焼成が行われたものとはいえない。 そして、比較例1の焼成工程も実施例と同様の工程であるから、焼成の初期段階で原料粉が互いに融着する程度の温度で実施され、所定の形状が形成された後に、更に温度を上げて焼成が行われたものとはいえないので、焼成工程の初期段階を成形工程としたものともいえない。 そうすると、比較例1は、ピッチの軟化点よりも高い温度で10分以上加熱する、という成形工程を有しないから、その製造方法が本件製造方法とは合致しないので、その製造方法からみても、発明特定事項Bを有しないものである。 エ そして、本件特許明細書の前記2(2)エ~オの記載からみれば当業者は、発明特定事項Bを有する「多孔質炭素系材料」を製造する方法を理解することができるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合するというべきであるので、申立人の前記第3の4の主張は採用できない。 (2)小括 したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号所定の規定に適合するから、前記第3の4の特許異議申立理由は理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、請求項1~3に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-701141

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  • 2025-701018異議申立 / 2026-05-29 / 訂正認容窒化ケイ素焼結体、回路基板、および窒化ケイ素焼結体の製造方法
    共通の審決分類: 113・C04B、121・C04B、536・C04B、537・C04B
  • 2025-701142異議申立 / 2026-03-24 / 維持フッ素電解装置用炭素電極
    共通の審決分類: 113・C04B、121・C04B、536・C04B、537・C04B
  • 2025-700643異議申立 / 2026-02-25 / 訂正認容接合体
    共通の審決分類: 113・C04B、121・C04B、536・C04B、537・C04B
  • 2025-701100異議申立 / 2026-02-13 / 維持窒化ケイ素焼結体、および、窒化ケイ素焼結体の製造方法
    共通の審決分類: 113・C04B、121・C04B、536・C04B、537・C04B
  • 2024-700993異議申立 / 2026-01-07 / 訂正認容セメント組成物、モルタル組成物、及び、コンクリート構造物の補修方法
    共通の審決分類: 113・C04B、121・C04B、536・C04B、537・C04B

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