審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2025-701142

フッ素電解装置用炭素電極

審判番号
2025-701142
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-084868
登録番号
7693391
請求日
2025年12月16日
審決日
2026年03月24日
公報発行日
2026年04月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】イビデン株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人栄光事務所
  • 【異議申立人】金田 綾香
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 金 公彦
  • 審判官 増山 淳子
分類
P1651.113-Y (C04B) / P1651.121-Y (C04B) / P1651.536-Y (C04B) / P1651.537-Y (C04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7693391号発明「フッ素電解装置用炭素電極」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7693391号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7693391号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和3年5月19日の出願であって、令和7年6月9日にその特許権の設定登録がされ、同年同月17日に特許掲載公報が発行され、その後、同年12月16日に、請求項1~3に係る特許について、特許異議申立人 金田 綾香(以下、「申立人」という。)により、甲第1~11号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされ、令和8年2月10日に、申立人より特許異議申立書の手続補正書が提出されたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~3に係る発明は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、請求項1~3に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)。 「【請求項1】 多孔質炭素系材料を含むフッ素電解装置用炭素電極であって、 前記多孔質炭素系材料は、炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成し、 前記2次粒子は、独立することなく互いに結合しており、 前記フッ素電解装置用炭素電極は、かさ密度が1.0~1.5g/cm3である、フッ素電解装置用炭素電極。 【請求項2】 前記フッ素電解装置用炭素電極は、取付部と浸漬部とを有し、 前記取付部は加工面を有し、前記浸漬部は未加工面を有している、請求項1に記載のフッ素電解装置用炭素電極。 【請求項3】 前記フッ素電解装置用炭素電極は、最大気孔径が50~1000μmである、請求項1または2に記載のフッ素電解装置用炭素電極。」 第3 特許異議申立理由の概要 1 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について (1) 甲第1号証を主引用例とした場合について ア 本件発明1~2は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件発明3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 甲第2号証を主引用例とした場合について ア 本件発明1及び3は、甲第2号証に記載された発明であるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件発明2は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 本件発明1及び3は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(当審注:特許異議申立書の29ページ下から2行目の「それゆえに、本件発明2は、」との記載は「それゆえに、本件発明3は、」の誤記と認める。)。 エ 本件発明2は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 甲第4号証を主引用例とした場合について 本件発明1~3は、甲第4号証に記載された発明及び甲第1~3号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第4号証に記載された発明及び甲第5~7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について (1) 「2次粒子」の定義について 本件特許明細書には、「2次粒子」の定義は記載されていない。 ここで、本件特許明細書の段落【0041】の記載(下記第4の2(2)エ)によれば、「2次粒子」は、原料粉を焼成あるいは黒鉛化したものと理解できるし、段落【0051】、【0056】、【0058】及び【図3】の記載(下記第4の2(2)エ、キ)によれば、原料粉は、成形段階で「2次粒子」と称される状態となっているとも理解できるし、段落【0048】の記載(下記第4の2(2)エ)によれば、粒度調整された原料粉が「2次粒子」と称される状態となっているとも理解できる。 これに加えて、本件発明1における「2次粒子」は、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダ」とから構成されることが特定されている一方、当該「炭素系粒子」及び「炭素質バインダ」が、焼成又は黒鉛化されたものであるか否か等は、特定されていない。 これらのことから、本件発明1における「2次粒子」の構成が不明確であるから、本件発明1は明確でない。 更に、本件発明2~3について検討しても事情は同じである。 (2) 「前記2次粒子は、独立することなく互いに結合しており、」との発明特定事項について 本件発明1が、「前記2次粒子は、独立することなく互いに結合して」いる、との発明特定事項(以下、「発明特定事項C」という。)を有することは、「2次粒子」が独立することなく互いに結合している状態であることを意味している。 しかしながら、本件発明1が発明特定事項Cを有するか否かを確認する方法は、本件特許明細書の実施例以外には記載されていない。 そして、段落【0088】~【0090】の記載(下記第4の2(2)オ)によれば、前記実施例には、以下のア及びイの2つの方法で、本件発明1が発明特定事項Cを有するか否かを確認している。 ア 断面の偏光顕微鏡写真を観察すること。 イ 水を用いた超音波洗浄によって気孔からのパーティクルが発生するか否かを確認すること。 ところが、「2次粒子」が「独立することなく互いに結合して」いる状態であることを、前記ア及びイの双方で確認する必要があるのか、いずれか一方の方法のみで確認すればよいのかは不明である。 また、特に前記アの方法では、観察する断面が異なると観察結果が変化することが推認されるから、同一の「多孔質炭素系材料」を観察しても、観察結果が異なることが推認されるものである。 そうすると、本件発明1が発明特定事項Cを有するか否かは、その確認方法によって結果が異なるものであるのに対して、本件発明1においては、本件発明1が発明特定事項Cを有するか否かを確認するための確認方法が特定されていないのであるから、本件発明1は不明確である。 更に、本件発明2~3について検討しても事情は同じである。 3 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について (1) 「前記2次粒子は、独立することなく互いに結合しており、」との発明特定事項について 本件特許明細書の段落【0016】、【0027】~【0028】(下記第4の2(2)ウ)には、原料粉を成形型にいれ、ピッチの軟化点よりも高い温度に加熱し、所定の形状の成形体を得る成形工程で10分以上加熱することにより、発明特定事項Cを達成できることが記載されている。また、段落【0053】(下記第4の2(2)エ)には、成形工程は、成形工程として別に準備することは必須ではなく、後の焼成工程の初期段階を成形工程とすることができることが記載されている。 一方、本件特許明細書に記載された比較例1では、成形工程でピッチの軟化点以上の温度で加熱していないものの、実施例と同様に900℃で焼成して「多孔質炭素系材料」を得ており、900℃はピッチの軟化点以上の温度である。そうすると、比較例1の焼成の初期段階は、原料粉を成形型に入れ、ピッチの軟化点よりも高い温度に加熱する工程といえるから、成形工程に相当するといえるものである。してみれば、前記比較例1で製造された「多孔質炭素系材料」は、ピッチが溶融し、「2次粒子」が「独立することなく互いに結合して」いる、との発明特定事項Cを有していると推認できる。 また、本件特許明細書の段落【0006】、【0033】(下記第4の2(2)ア、ウ)には、本件発明は、発明特定事項Cを有することで、材料の内部から「2次粒子」が脱落しにくく、材料の外部に出てくることが抑制されることにより、微粉末の発生を防止する、という本件発明の課題を解決できることが記載されている。 ところが、本件特許明細書の段落【0089】(下記第4の2(2)オ)には、前記比較例1で製造された「多孔質炭素系材料」は、遊離した「2次粒子」が機構の内部に残留し、水を用いて超音波洗浄したとき、気孔からパーティクルが発生したことが確認されたことが記載されている。 そうすると、前記比較例1で製造された「多孔質炭素系材料」は、発明特定事項Cを有しているにもかかわらず、材料の内部から「2次粒子」が脱落し、材料の外部に出てきているから、本件発明の課題を解決できていないので、本件発明1は、本件発明の課題を解決しないものを包含するものである。 したがって、本件発明1は発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえないから、サポート要件を満たさない。 更に、本件発明2~3について検討しても事情は同じである。 (2) 「かさ密度」について 本件発明1においては、「前記フッ素電解装置用炭素電極は、かさ密度が1.0~1.5g/cm3である」、と特定されている。また、本件特許明細書の段落【0015】(下記第4の2(2)イ)には、「かさ密度」が「1.0~1.5g/cm3」の範囲である場合に、多孔質材料として形状を維持するだけの十分な強度が得られ、かつ、十分な気孔の体積が得られるので、多孔質材料として機能を発揮できる、という効果を奏することが記載されている。 一方、本件特許明細書の実施例においては、「かさ密度」は記載されていないし、本件特許明細書には、「かさ密度」が「1.0~1.5g/cm3」の範囲である場合に前記効果を奏する理由が記載されておらず、そうすることの臨界的意義も記載されていない。 更に、本件特許明細書には、「かさ密度」を「1.0~1.5g/cm3」の範囲とすることと本件発明の課題の関係も記載されておらず、「かさ密度」を「1.0~1.5g/cm3」の範囲とすることが本件発明の課題の解決に寄与することを裏付ける記載もないから、「かさ密度」を「1.0~1.5g/cm3」の範囲とすることは、本件発明の課題の解決に寄与しない発明特定事項である。 これらのことから、「かさ密度」を「1.0~1.5g/cm3」の範囲とすることに各別な意義はないから、本件発明1は、「かさ密度」に関してサポート要件を満たさない。 更に、本件発明2~3について検討しても事情は同じである。 (3) 「最大気孔径」について 本件発明3においては、「前記フッ素電解装置用炭素電極は、最大気孔径が50~1000μmである」、と特定されており、本件特許明細書の段落【0013】(下記第4の2(2)イ)には、「最大気孔径」が「50~1000μm」の範囲である場合に、気孔内部に溶融塩が浸透しやすくなり、かつ、表面積の低下が抑えられるから、電解に関与する表面積を大きくすることができる、という効果を奏することが記載されている。 一方、本件特許明細書の実施例(段落【0087】、【表1】、下記第4の2(2)オ。)においては、「フッ素電解装置用炭素電極」の「最大気孔径」は206μmの一点のみであり、比較例1の「フッ素電解装置用炭素電極」の「最大気孔径」は、本件発明3において特定された範囲である255μmであり、更に、本件特許明細書には、実施例の「フッ素電解装置用炭素電極」が前記効果を奏することは記載されていない。 また、本件特許明細書には、「最大気孔径」が「50~1000μm」の範囲であることによって前記効果を奏する理由は記載されておらず、そうすることの臨界的意義も記載されていない。 したがって、当業者は、「フッ素電解装置用炭素電極」の「最大気孔径」を、前記実施例に記載された206μmから、本件発明3の発明特定事項である「50~1000μm」の範囲に拡張ないし一般化することはできないから、本件発明3は発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえないので、サポート要件を満たさない。 4 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について 本件特許明細書に記載された比較例1で得た「多孔質炭素系材料」は、その製造工程からみれば、前記3(1)に記載したのと同様の理由により、前記発明特定事項Cを有していると推認できる一方、本件発明の課題を解決できていないことは、前記3(1)に記載したとおりである。 一方、前記比較例1で得た「多孔質炭素系材料」が本件発明の課題を解決できていないことからみれば、前記比較例1は発明特定事項Cを有しないとも考えられる。 そうすると、当業者は、発明特定事項Cを有する「多孔質炭素系材料」を製造する方法を理解することができないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 更に、本件発明2~3について検討しても事情は同じであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない。 5 証拠方法 甲第1号証:特開2000-313981号公報 甲第2号証:特開平2-236292号公報 甲第3号証:特開平3-53090号公報 甲第4号証:特開2004-18354号公報 甲第5号証:特開平7-173664号公報 甲第6号証:特開平5-209291号公報 甲第7号証:再公表2008/132836号 甲第8号証:日本工業規格 JIS K2439:2006,「クレオソート油・加工タール・タールピッチ」 甲第9号証:本件特許出願である特願2021-084868号の審査過程における令和6年12月12日付けの拒絶理由通知書 甲第10号証:本件特許出願である特願2021-084868号の審査過程における令和7年1月10日提出の手続補正書 甲第11号証:炭素材料学会 カーボン用語辞典編集委員会編,「カーボン用語辞典」,第1版第1刷,2000年10月5日,株式会社 アグネ承風社,p.125 第4 特許異議申立理由についての当審の判断 1 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について (1) 甲各号証に記載された事項等 ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 (ア) 甲第1号証には、以下のa~cの記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 a 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 フッ素発生用電解浴の陽極として用いられる等方性炭素質材からなる電極であって、前記等方性炭素質材の通電可能な支持部材との接合部にメッキによる金属被覆膜が形成されてなるフッ素電解用炭素電極。 【請求項2】 前記等方性炭素質材が、嵩密度1.25~1.75g/cm3、平均気孔半径が1.5μm以下である請求項1記載のフッ素電解用炭素電極。」 b 「【0021】即ち、本発明の陽極用炭素質材は、例えば、粒径が3~20μmの微粉状の仮焼骨材コークス100重量部にコールタールピッチ、石油ピッチのようなピッチバインダー約80~130重量部を配合した2元系材料、又は変質ピッチやメソカーボンマイクロビーズのような一元系材料を約150~250℃で混捏した後冷却し、粉砕して粒度調整を行ったものを成形し、最終的に熱処理することにより製造することができる。成形は、CIP成形や金型成形により10~90MPa程度、好ましくは10~30MPa程度の低加圧下で等方性ブロック体に成形する。また熱処理温度は、通常1000℃~1500℃、好ましくは1000℃~1200℃である。このようにして得られた等方性炭素質材は、いわゆる押出成形によりブロック化された炭素材に比べるとはるかに緻密質でありながらも適度に多孔質であるという特徴ある構造体となっている。また、変質ピッチやメソカーボンマイクロビーズのような原料が球状に近い形状の一元系材料を用いることにより、金型成形であっても前述したように固有抵抗の縦方向、横方向の異方比が1.2以下の等方性を有することができる。」 c 「【0031】(実施例1)325メッシュ(Tyler)以下に粉砕した仮焼石油コークス粉100重量部に対して90重量部のコールタールピッチを加え、約150~250℃、好ましくは約180~220℃における加熱下で長時間混捏すると共に揮発分を調整し、常温まで冷却した。その後、再度粉砕して100メッシュ(Tyler)以下の粉砕品を分級・回収し、サンプル用炭素質ブロックの原料とした。次に、得られた原料をCIP成形により、圧力10MPaで、100×300×600mmの寸法品となるように成形し、得られた成形体を1000℃で焼成することにより210×80×20mmの陽極用炭素質材を製作した。この炭素質材の支持部材となるブスバー5との接触面にあたる一端の端面から20mmの範囲を、電解メッキ法によりニッケルを端面を含む全周にわたり厚さ150μmの被覆膜を形成した。試料表面の平均面粗さは基材加工後3μm、メッキ膜形成後で4μmであった。 ・・・ 【0035】表1に実施例1及び比較例1の電極の各特性をまとめて示す。 【0036】 【表1】 [図:0001434201000001.jpg] 」 (イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第1号証には、フッ素発生用電解浴の陽極として用いられる等方性炭素質材からなる電極であって、前記等方性炭素質材の通電可能な支持部材との接合部にメッキによる金属被覆膜が形成されてなるフッ素電解用炭素電極が記載されており、前記等方性炭素質材は、嵩密度1.25~1.75g/cm3、平均気孔半径が1.5μm以下であるものである。 そして、前記(ア)bの記載によれば、前記フッ素電解用炭素電極は、粒径が3~20μmの微粉状の仮焼骨材コークス100重量部にコールタールピッチ、石油ピッチのようなピッチバインダー約80~130重量部を配合した2元系材料を約150~250℃で混捏した後冷却し、粉砕して粒度調整を行ったものを成形し、最終的に熱処理することにより製造することができるものであり、成形は、CIP成形や金型成形により10~90MPa程度、好ましくは10~30MPa程度の低加圧下で等方性ブロック体に成形するものであり、また熱処理温度は、通常1000℃~1500℃、好ましくは1000℃~1200℃であり、このようにして得られた等方性炭素質材は、いわゆる押出成形によりブロック化された炭素材に比べるとはるかに緻密質でありながらも適度に多孔質であるという特徴ある構造体となっているものである。 更に、前記(ア)cの記載によれば、前記フッ素電解用炭素電極は、325メッシュ(Tyler)以下に粉砕した仮焼石油コークス粉100重量部に対して90重量部のコールタールピッチを加え、約150~250℃、好ましくは約180~220℃における加熱下で長時間混捏すると共に揮発分を調整し、常温まで冷却し、その後、再度粉砕して100メッシュ(Tyler)以下の粉砕品を分級・回収し、サンプル用炭素質ブロックの原料とし、次に、得られた原料をCIP成形により、圧力10MPaで、100×300×600mmの寸法品となるように成形し、得られた成形体を1000℃で焼成することにより210×80×20mmの陽極用炭素質材を製作し、この炭素質材の支持部材となるブスバーとの接触面にあたる一端の端面から20mmの範囲を、電解メッキ法によりニッケルを端面を含む全周にわたり厚さ150μmの被覆膜を形成したものであり、電極嵩密度が1.3g/cm3であり、金属被覆面形成方法が電解メッキであり、金属被覆面密着力が15MPaであり、金属被覆面平均面粗さが3μmであり、2.5月使用後も特に問題がなかったものである。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「フッ素発生用電解浴の陽極として用いられる等方性炭素質材からなる電極であって、前記等方性炭素質材の通電可能な支持部材との接合部にメッキによる金属被覆膜が形成されてなるフッ素電解用炭素電極であり、 前記等方性炭素質材は、嵩密度1.25~1.75g/cm3、平均気孔半径が1.5μm以下であり、 前記フッ素電解用炭素電極は、粒径が3~20μmの微粉状の仮焼骨材コークス100重量部にコールタールピッチ、石油ピッチのようなピッチバインダー約80~130重量部を配合した2元系材料を約150~250℃で混捏した後冷却し、粉砕して粒度調整を行ったものを成形し、最終的に熱処理することにより製造することができるものであり、 成形は、CIP成形や金型成形により10~90MPa程度、好ましくは10~30MPa程度の低加圧下で等方性ブロック体に成形するものであり、 熱処理温度は、通常1000℃~1500℃、好ましくは1000℃~1200℃であり、 このようにして得られた等方性炭素質材は、いわゆる押出成形によりブロック化された炭素材に比べるとはるかに緻密質でありながらも適度に多孔質であるという特徴ある構造体となっているものであり、 前記フッ素電解用炭素電極は、325メッシュ(Tyler)以下に粉砕した仮焼石油コークス粉100重量部に対して90重量部のコールタールピッチを加え、約150~250℃、好ましくは約180~220℃における加熱下で長時間混捏すると共に揮発分を調整し、常温まで冷却し、 その後、再度粉砕して100メッシュ(Tyler)以下の粉砕品を分級・回収し、サンプル用炭素質ブロックの原料とし、 次に、得られた原料をCIP成形により、圧力10MPaで、100×300×600mmの寸法品となるように成形し、 得られた成形体を1000℃で焼成することにより210×80×20mmの陽極用炭素質材を製作し、 この炭素質材の支持部材となるブスバーとの接触面にあたる一端の端面から20mmの範囲を、電解メッキ法によりニッケルを端面を含む全周にわたり厚さ150μmの被覆膜を形成したものであり、 電極嵩密度が1.3g/cm3であり、金属被覆面形成方法が電解メッキであり、金属被覆面密着力が15MPaであり、金属被覆面平均面粗さが3μmであり、2.5月使用後も特に問題がなかったものである、フッ素電解用炭素電極。」(以下、「甲1発明」という。) イ 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明 (ア) 甲第2号証には、以下のa~cの記載がある。 a 「(1)原料炭素質骨材に粘結材を配合し、混捏、加圧成形、焼成して電極板を得るに際し、炭素質骨材原料として74μm~1mmの範囲の粒径を有する石油コークス、ピッチコークスまたはこれらの混合物の粒子を使用し、これに適宜の粘結剤を原料骨材100部に対し8~22部の割合で加えて混捏し、次いで成形温度95~115℃で所望の電極板形状に加圧成形し、しかる後この成形品を1000~1500℃の温度範囲で焼成することを特徴とするフッ素電解製造用炭素質電極板の製造法。」(特許請求の範囲) b 「(作 用) 一般に炭素質骨材と粘結材とを適宜の割合で配合し、混捏、加圧成形、焼成の各工程を経て得られた炭素質電極板には、通常その表面に製造過程において生ずる小は数μmから大は数mmに及ぶ無数の開口気孔が存在するが、本発明においては前記したように、原料として使用する炭素質骨材の粒径や粘結材の配合割合を特定の範囲内とし、 さらに必要に応じ原料混捏後の加圧成形工程での成形圧力を特定の範囲に調整するなど特別の製造条件下で電極板の製造を行なうことによって、目的とする孔径分布、即ちその50%が50μm乃至150μmの孔径範囲にあるような開口気孔の形成された炭素質電極を得ることに成功したものである。 本発明においては原料骨材として粒径74μm以上1mm以下の範囲に粒度調整された破砕石油コークスまたは破砕ピッチコークスまたはこれらの混合物粒子が使用される。粒径が上記範囲における上限を超えると得られる電極板の開口気孔径が大きくなり過ぎ、また下限未満であると気孔径が小さくなり過ぎていずれの場合においても本発明の目的とする電極板が得られない。 ・・・ 次に上記の骨材を適宜粒度配合してコールタールピッチまたは石油ピッチあるいはこれらにコールタールを添加した粘結材を原料骨材100重量部に対して8~22重量部を添加して常法により混捏する。 粘結材の添加量が8重量部未満であるときは、骨材に粘結材を均等にまぶすことができず、従って成形が困難となる。一方粘結材が22重量部を超えると粘結材に含まれる炭素分が焼成後も相当量残留し、電極板の開口気孔を塞ぐようになるために、結果的にその孔径を小さくするので不都合である。 次に、混捏して得られた炭材を所望の電極板の形状が得られるように加圧成形する。加圧成形に当たっての温度は95~115℃の範囲が適当である。また成形圧力は適用する加圧成形法の応じて適宜定められる。例えば加圧成形法として圧縮成形法を採用した場合には30~250kg/cm2の範囲、また振動成形法を採用した場合には0.03~0.5kg/cm2の範囲とするのが適当である。成形圧力が高くなると焼成後の電極板表面の開口気孔の孔径は大きくなる傾向を有するし、また成形圧力が低くなると孔径が小さくなる傾向を有するので、加圧成形に際しては上記した圧力範囲内に留めることが望ましい。 加圧成形品は通常一般に行なわれる炭素質電極焼成温度、つまり原料炭材が黒鉛化しない程度の温度の1000~1500℃、好ましくは1100~1400℃の温度範囲で焼成することによって、所期の表面開口気孔径を有するフッ素電解製造用の電極板を得ることができる。 焼成温度が1000℃未満であるときは焼成不十分であって電極板として必要な強度が不足し、また1500℃を超えると炭材が黒鉛化して孔径分布の如何に拘らず陽極効果の発生が短期的に起こるようになるので何れにしても好ましくない。 本発明の製造法により得られた電極板は、これを陽極としてフッ素電解槽に組み込み、常法によるフッ素電解を行なった場合に長期に亘って陽極効果発生による電解中断を起こし難く、従って従来フッ素電解において最も問題とされていた短時間の操業での陽極効果の発生による生産効率の低下の問題を解決し、長時間に亘る電解継続が可能になるので操業効率上きわめて有効である。」(2ページ右下欄1行~3ページ左下欄16行) c 「(実施例2) 原料炭素質骨材として粒径が500~1000μmの粒子45%、297~500μmの粒子30%、74~297μmの粒子22%、(残り3%は不可避的に混入する74μm以下の微粒子)からなるような粒径分布を有する石油コークス破砕粒を用い、中ピッチ(JISk2439)粘結材を骨材100重量部に対して20重量部加えて混捏し、これを振動成形機を使用して、0.04kg/cm2の成形圧力をもって成形し、次いでこの成形物を焼成炉において1350℃にて焼成して長さ600mm,巾350mm,厚さ50mmの炭素質電極板を得た。 この電極板について、その表面間口気孔の孔径分布を水銀圧入法による気孔測定法によって測定したところ、孔径50μm以下のものが31%、50~150μmのものが65%、150μm以上のものが4%であった。」(4ページ左下欄1行~18行) (イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第2号証には、原料炭素質骨材に粘結材を配合し、混捏、加圧成形、焼成して電極板を得るに際し、炭素質骨材原料として74μm~1mmの範囲の粒径を有する石油コークス、ピッチコークス又はこれらの混合物の粒子を使用し、これに適宜の粘結剤を原料骨材100部に対し8~22部の割合で加えて混捏し、次いで成形温度95~115℃で所望の電極板形状に加圧成形し、しかる後この成形品を1000~1500℃の温度範囲で焼成する、フッ素電解製造用炭素質電極板の製造法が記載されている。 そして、前記(ア)bの記載によれば、前記フッ素電解製造用炭素質電極板の製造法は、原料骨材として粒径74μm以上1mm以下の範囲に粒度調整された破砕石油コークス又は破砕ピッチコークス又はこれらの混合物粒子が使用されるものであり、次に上記の骨材を適宜粒度配合してコールタールピッチ又は石油ピッチあるいはこれらにコールタールを添加した粘結材を原料骨材100重量部に対して8~22重量部を添加して常法により混捏するものであり、次に、混捏して得られた炭材を所望の電極板の形状が得られるように加圧成形するものであり、加圧成形に当たっての温度は95~115℃の範囲が適当であり、成形圧力は適用する加圧成形法の応じて適宜定められるものであり、加圧成形法として圧縮成形法を採用した場合には30~250kg/cm2の範囲、振動成形法を採用した場合には0.03~0.5kg/cm2の範囲とするのが適当であるものであり、加圧成形品は通常一般に行なわれる炭素質電極焼成温度、つまり原料炭材が黒鉛化しない程度の温度の1000~1500℃、好ましくは1100~1400℃の温度範囲で焼成することによって、所期の表面開口気孔径を有するフッ素電解製造用の電極板を得ることができるものであり、前記製造法により得られた電極板は、これを陽極としてフッ素電解槽に組み込み、常法によるフッ素電解を行なった場合に長期に亘って陽極効果発生による電解中断を起こし難く、従って従来フッ素電解において最も問題とされていた短時間の操業での陽極効果の発生による生産効率の低下の問題を解決し、長時間に亘る電解継続が可能になるので操業効率上きわめて有効であるものである。 更に、前記(ア)cの記載によれば、前記フッ素電解製造用炭素質電極板の製造法は、原料炭素質骨材として粒径が500~1000μmの粒子45%、297~500μmの粒子30%、74~297μmの粒子22%、(残り3%は不可避的に混入する74μm以下の微粒子)からなるような粒径分布を有する石油コークス破砕粒を用い、中ピッチ(JISk2439)粘結材を骨材100重量部に対して20重量部加えて混捏し、これを振動成形機を使用して、0.04kg/cm2の成形圧力をもって成形し、次いでこの成形物を焼成炉において1350℃にて焼成して長さ600mm、巾350mm、厚さ50mmの炭素質電極板を得たものであり、この電極板について、その表面間口気孔の孔径分布を水銀圧入法による気孔測定法によって測定したところ、孔径50μm以下のものが31%、50~150μmのものが65%、150μm以上のものが4%であったものである。 (ウ) そして、前記(イ)に記載されたフッ素電解製造用炭素質電極板の製造法により製造されたフッ素電解製造用炭素質電極板に注目すると、甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「原料炭素質骨材に粘結材を配合し、混捏、加圧成形、焼成して電極板を得るに際し、炭素質骨材原料として74μm~1mmの範囲の粒径を有する石油コークス、ピッチコークス又はこれらの混合物の粒子を使用し、これに適宜の粘結剤を原料骨材100部に対し8~22部の割合で加えて混捏し、次いで成形温度95~115℃で所望の電極板形状に加圧成形し、しかる後この成形品を1000~1500℃の温度範囲で焼成する、フッ素電解製造用炭素質電極板の製造法により製造された、フッ素電解製造用炭素質電極板であって、 前記フッ素電解製造用炭素質電極板の製造法は、原料骨材として粒径74μm以上1mm以下の範囲に粒度調整された破砕石油コークス又は破砕ピッチコークス又はこれらの混合物粒子が使用されるものであり、 次に上記の骨材を適宜粒度配合してコールタールピッチ又は石油ピッチあるいはこれらにコールタールを添加した粘結材を原料骨材100重量部に対して8~22重量部を添加して常法により混捏するものであり、 次に、混捏して得られた炭材を所望の電極板の形状が得られるように加圧成形するものであり、加圧成形に当たっての温度は95~115℃の範囲が適当であり、成形圧力は適用する加圧成形法の応じて適宜定められるものであり、加圧成形法として圧縮成形法を採用した場合には30~250kg/cm2の範囲、振動成形法を採用した場合には0.03~0.5kg/cm2の範囲とするのが適当であるものであり、 加圧成形品は通常一般に行なわれる炭素質電極焼成温度、つまり原料炭材が黒鉛化しない程度の温度の1000~1500℃、好ましくは1100~1400℃の温度範囲で焼成することによって、所期の表面開口気孔径を有するフッ素電解製造用の電極板を得ることができるものであり、 前記製造法により得られた電極板は、これを陽極としてフッ素電解槽に組み込み、常法によるフッ素電解を行なった場合に長期に亘って陽極効果発生による電解中断を起こし難く、従って従来フッ素電解において最も問題とされていた短時間の操業での陽極効果の発生による生産効率の低下の問題を解決し、長時間に亘る電解継続が可能になるので操業効率上きわめて有効であるものであり、 前記フッ素電解製造用炭素質電極板の製造法は、原料炭素質骨材として粒径が500~1000μmの粒子45%、297~500μmの粒子30%、74~297μmの粒子22%、(残り3%は不可避的に混入する74μm以下の微粒子)からなるような粒径分布を有する石油コークス破砕粒を用い、 中ピッチ(JISk2439)粘結材を骨材100重量部に対して20重量部加えて混捏し、 これを振動成形機を使用して、0.04kg/cm2の成形圧力をもって成形し、 次いでこの成形物を焼成炉において1350℃にて焼成して長さ600mm、巾350mm、厚さ50mmの炭素質電極板を得たものであり、 この電極板について、その表面間口気孔の孔径分布を水銀圧入法による気孔測定法によって測定したところ、孔径50μm以下のものが31%、50~150μmのものが65%、150μm以上のものが4%であったものである、フッ素電解製造用炭素質電極板。」(以下、「甲2発明」という。) ウ 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、以下の記載がある。 「2.特許請求の範囲 (1)フッ化水素を含む溶融塩を電解してフッ素を製造する方法において、電気抵抗異方比が1.3以下で、かつ多孔質である炭素を陽極材とすることを特徴とするフッ素の製造方法。 ・・・ (4)陽極材のかさ比重が1.0~1.3g/cm3である請求項1の製造方法。」 エ 甲第4号証の記載事項及び甲第4号証に記載された発明 (ア) 甲第4号証には、以下のa~dの記載がある。 a 「【請求項1】 平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)との混合物を加熱硬化させ、非酸化性雰囲気下での炭化焼成により得られたカーボン多孔体吸着板であって、(i)JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗度が、カーボン多孔体吸着板の板厚5mmのとき、1.5~100秒であり、かつ(ii)曲げ強度が70~150MPaであることを特徴とする真空チャック用カーボン多孔体吸着板。」 b 「【0008】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、上記従来のセラミック多孔体、プラスチック多孔体、金属多孔体やカーボン多孔体が持つ真空チャック用吸着板としての問題点を解消し、軽量かつ高強度、透気抵抗度が低く、均一な気孔と導電性を有する真空チャック用カーボン多孔体吸着板、及び該カーボン多孔体吸着板を容易且つ経済的に得られる製造方法を提供することにある。」 c 「【0019】 本発明のカーボン多孔体吸着板は、下記の製造方法により得ることができる。その高い気孔率を有するカーボン多孔体(吸着板)の製造方法は、図1に示すように次の4(I~IV)又は5(I~V)工程からなることを特徴とし、中でも最大の特徴は、原料の一つとして、平均粒径が20~500μmの熱硬化樹脂粒子(a)を用い、特に、分級して粒度分布を狭くした熱硬化樹脂粒子を用いることである。・・・ 【0020】 [工程] (I)混合(又は混練)工程:平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを混合又は混練する工程 (II)予備成形する工程:工程(I)で得られた樹脂混合物を、所望形状の成形容器又は金型に入れ、予備成形する工程 (III)成形(熱硬化)工程:工程(II)の予備成形された樹脂混合物を、離型可能な硬さまで熱硬化し、所望形状の多孔性熱硬化物を得る工程 (IV)焼成工程:工程(III)で得られた多孔性熱硬化物を、不活性ガス雰囲気中にて、800~2500℃の温度で焼成する工程 (V)成形加工工程:工程(IV)で得られたカーボン多孔体を、所定の形状、例えば円板に成形加工する工程 【0021】 1.混合(又は混練)工程 本発明の高い気孔率を有するカーボン多孔体吸着板の製造方法では、先ず、平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーである熱硬化樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを混合又は混練する工程、すなわち混合(又は混練)工程が行われる。 【0022】 (1)固体状原料(A) 高い気孔率を有するカーボン多孔体吸着板の原料の一つとして用いられる固体状原料(A)は、平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有したものである。 本発明においては、前記したように、この平均粒径が20~500μmの熱硬化樹脂粒子(a)であって、分級して粒度分布を狭くした熱硬化樹脂粒子を用いることにより、高い気孔率を有するカーボン多孔体吸着板が得られることに特徴がある。このように、分級して粒度分布を狭くした熱硬化樹脂粒子が原料であるカーボン多孔体は、未分級の樹脂粒が原料であるカーボン多孔体と比較して、バインダー量、平均粒径、平均気孔径が同様の場合、透気抵抗度を低くすることができる。また、同様の透気抵抗度の場合、気孔率を小さくすることができ、強度を高くすることができる。 また、熱硬化樹脂粒子(a)を用いずに、通常の熱硬化性樹脂のみで製造したカーボン多孔体は、緻密であり、その気孔率が非常に小さくなり、即ち透気度が小、透気抵抗度が大となる。 ・・・ 【0028】 混合機としては、固体状原料(A)、熱硬化樹脂(B)及び更に溶剤(C)を均一に分散、混合できるものであれば、特に限定されない。そのような混合機としては、ボールミル、ペブルミル、リボンミキサー、スーパーミキサーなどが挙げられる。 また、固体状原料(A)、熱硬化樹脂(B)及び更に溶剤(C)を均一に分散、混合できるものであれば、混練機を用いてもよく、混練機としては、ミキシングロール、バンバリミキサー、インターナルミキサー二軸連続ミキサーなどが挙げられる。 ・・・ 【0034】 本発明のカーボン多孔体吸着板の製造方法により、得られたカーボン多孔体吸着板は、原料により、球状カーボンの集合体、或いは球状カーボン、繊維状カーボン、アルミナ粒子、シリカ粒子などの集合体である。 また、得られたカーボン多孔体吸着板の物性としては、種々の製造条件、例えば原料としての固体状原料(A)や熱硬化性樹脂(B)の配合割合等により異なるが、例えば、JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗度が1.5~100秒であり、気孔径分布が40~1200μmの範囲であり、換算気孔率が30~60%であり、かさ密度が0.75~1.2Mg/m3であり、曲げ強度が70~150MPaであり、固有抵抗が25~1500μΩ・mであり、真空チャック用の吸着板として好適である。また、800℃以上の温度で焼成しているために、純度的に高品質であり、すなわち、耐熱性や耐薬品性に優れており、機械的強度にも優れている。さらに、カーボン多孔体吸着板の製造方法自体も、上述したように、複雑な工程がなく、容易かつ経済的である。」 d 「【0037】 [実施例1] 固体状原料(A)として、平均粒子径60μm(標準偏差17.9)のフェノール樹脂のビーズを90重量部と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)として、硬化剤添加ノボラック系フェノール樹脂粉末を10重量部とを十分に混合し、金型で、15N/cm2、160℃,1時間の条件で加熱加圧成形することにより、樹脂多孔体を作製した。その後、この樹脂多孔体を真空中で1000℃まで4℃/時間で昇温して炭化焼成し、カーボン多孔体吸着板を得た。得られたカーボン多孔体吸着板の物性等を測定評価した。JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗度は、72.3秒、曲げ強度は、91.7MPaなどであった。樹脂混合物の組成とカーボン多孔体吸着板の物性評価結果を表1に示す。 ・・・ 【0044】 【表1】 [図:0001434201000002.jpg] 」 (イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第4号証には、平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)との混合物を加熱硬化させ、非酸化性雰囲気下での炭化焼成により得られたカーボン多孔体吸着板であって、(i)JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗度が、カーボン多孔体吸着板の板厚5mmのとき、1.5~100秒であり、かつ(ii)曲げ強度が70~150MPaである、真空チャック用カーボン多孔体吸着板が記載されている。 また、前記(ア)b~cの記載によれば、前記真空チャック用カーボン多孔体吸着板は、従来のセラミック多孔体、プラスチック多孔体、金属多孔体やカーボン多孔体が持つ真空チャック用吸着板としての問題点を解消し、軽量かつ高強度、透気抵抗度が低く、均一な気孔と導電性を有する真空チャック用カーボン多孔体吸着板を提供することを目的とするものであって、その製造方法は、以下の4(I~IV)又は5(I~V)工程からなるものである。 (I)混合(又は混練)工程:平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを混合又は混練する工程 (II)予備成形する工程:工程(I)で得られた樹脂混合物を、所望形状の成形容器又は金型に入れ、予備成形する工程 (III)成形(熱硬化)工程:工程(II)の予備成形された樹脂混合物を、離型可能な硬さまで熱硬化し、所望形状の多孔性熱硬化物を得る工程 (IV)焼成工程:工程(III)で得られた多孔性熱硬化物を、不活性ガス雰囲気中にて、800~2500℃の温度で焼成する工程 (V)成形加工工程:工程(IV)で得られたカーボン多孔体を、所定の形状、例えば円板に成形加工する工程 すなわち、前記カーボン多孔体吸着板の製造方法では、まず、平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーである熱硬化樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを混合又は混練する工程、すなわち混合(又は混練)工程が行われるものであり、平均粒径が20~500μmの熱硬化樹脂粒子(a)であって、分級して粒度分布を狭くした熱硬化樹脂粒子を用いることにより、高い気孔率を有するカーボン多孔体吸着板が得られることに特徴があるものであり、前記(I)混合(又は混練)工程における混合機としては、固体状原料(A)、熱硬化樹脂(B)及び更に溶剤(C)を均一に分散、混合できるものであれば、特に限定されないものであり、固体状原料(A)、熱硬化樹脂(B)及び更に溶剤(C)を均一に分散、混合できるものであれば、混練機を用いてもよいものであり、前記製造方法により得られたカーボン多孔体吸着板は、原料により、球状カーボンの集合体、或いは球状カーボン、繊維状カーボン、アルミナ粒子、シリカ粒子などの集合体であり、得られたカーボン多孔体吸着板の物性は、JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗度が1.5~100秒であり、気孔径分布が40~1200μmの範囲であり、換算気孔率が30~60%であり、かさ密度が0.75~1.2Mg/m3であり、曲げ強度が70~150MPaであり、固有抵抗が25~1500μΩ・mであり、真空チャック用の吸着板として好適であり、また、800℃以上の温度で焼成しているために、純度的に高品質であり、すなわち、耐熱性や耐薬品性に優れており、機械的強度にも優れているものである。 更に、前記(ア)dに記載された実施例1に注目すると、前記真空チャック用カーボン多孔体吸着板は、固体状原料(A)として、平均粒子径60μm(標準偏差17.9)のフェノール樹脂のビーズを90重量部と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)として、硬化剤添加ノボラック系フェノール樹脂粉末を10重量部とを十分に混合し、金型で、15N/cm2、160℃、1時間の条件で加熱加圧成形することにより、樹脂多孔体を作製し、その後、この樹脂多孔体を真空中で1000℃まで4℃/時間で昇温して炭化焼成し、カーボン多孔体吸着板を得たものであり、その物性は、固有抵抗が580μΩ・m、換算気孔率が44.4%、嵩密度が0.853Mg/m3、曲げ強さが91.7MPa、JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗度が72.3sec、チャック用吸着板としての使用可否が可であったものである。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第4号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)との混合物を加熱硬化させ、非酸化性雰囲気下での炭化焼成により得られたカーボン多孔体吸着板であって、(i)JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗度が、カーボン多孔体吸着板の板厚5mmのとき、1.5~100秒であり、かつ(ii)曲げ強度が70~150MPaである、真空チャック用カーボン多孔体吸着板であって、 前記真空チャック用カーボン多孔体吸着板は、従来のセラミック多孔体、プラスチック多孔体、金属多孔体やカーボン多孔体が持つ真空チャック用吸着板としての問題点を解消し、軽量かつ高強度、透気抵抗度が低く、均一な気孔と導電性を有する真空チャック用カーボン多孔体吸着板を提供することを目的とするものであり、 その製造方法は、以下の4(I~IV)又は5(I~V)工程からなるものであり、 (I)混合(又は混練)工程:平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを混合又は混練する工程、 (II)予備成形する工程:工程(I)で得られた樹脂混合物を、所望形状の成形容器又は金型に入れ、予備成形する工程、 (III)成形(熱硬化)工程:工程(II)の予備成形された樹脂混合物を、離型可能な硬さまで熱硬化し、所望形状の多孔性熱硬化物を得る工程、 (IV)焼成工程:工程(III)で得られた多孔性熱硬化物を、不活性ガス雰囲気中にて、800~2500℃の温度で焼成する工程、 (V)成形加工工程:工程(IV)で得られたカーボン多孔体を、所定の形状、例えば円板に成形加工する工程、 前記カーボン多孔体吸着板の製造方法では、まず、平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーである熱硬化樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを混合又は混練する工程、すなわち混合(又は混練)工程が行われるものであり、 平均粒径が20~500μmの熱硬化樹脂粒子(a)であって、分級して粒度分布を狭くした熱硬化樹脂粒子を用いることにより、高い気孔率を有するカーボン多孔体吸着板が得られることに特徴があるものであり、 前記(I)混合(又は混練)工程における混合機としては、固体状原料(A)、熱硬化樹脂(B)及び更に溶剤(C)を均一に分散、混合できるものであれば、特に限定されないものであり、固体状原料(A)、熱硬化樹脂(B)及び更に溶剤(C)を均一に分散、混合できるものであれば、混練機を用いてもよいものであり、 前記製造方法により得られたカーボン多孔体吸着板は、原料により、球状カーボンの集合体、或いは球状カーボン、繊維状カーボン、アルミナ粒子、シリカ粒子などの集合体であり、 得られたカーボン多孔体吸着板の物性は、JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗度が1.5~100秒であり、気孔径分布が40~1200μmの範囲であり、換算気孔率が30~60%であり、かさ密度が0.75~1.2Mg/m3であり、曲げ強度が70~150MPaであり、固有抵抗が25~1500μΩ・mであり、真空チャック用の吸着板として好適であり、また、800℃以上の温度で焼成しているために、純度的に高品質であり、すなわち、耐熱性や耐薬品性に優れており、機械的強度にも優れているものであり、 前記真空チャック用カーボン多孔体吸着板は、固体状原料(A)として、平均粒子径60μm(標準偏差17.9)のフェノール樹脂のビーズを90重量部と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)として、硬化剤添加ノボラック系フェノール樹脂粉末を10重量部とを十分に混合し、金型で、15N/cm2、160℃、1時間の条件で加熱加圧成形することにより、樹脂多孔体を作製し、その後、この樹脂多孔体を真空中で1000℃まで4℃/時間で昇温して炭化焼成し、カーボン多孔体吸着板を得たものであり、 その物性は、固有抵抗が580μΩ・m、換算気孔率が44.4%、嵩密度が0.853Mg/m3、曲げ強さが91.7MPa、JIS P8117に準拠したガーレー試験機法による透気抵抗度が72.3sec、チャック用吸着板としての使用可否が可であったものである、真空チャック用カーボン多孔体吸着板。」(以下、「甲4発明」という。) オ 甲第5号証の記載事項 甲第5号証には、以下の(ア)~(イ)の記載がある。 (ア) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 炭素電極と金属クランプからなるフッ素電解用陽極において、上面にボルトねじ込み用穴を螺刻した炭素電極とその上部に位置するボルト用穴を有する金属クランプが、シート状パッキングを介してボルトにより螺着されていることを特徴とするフッ素電解用陽極。」 (イ) 「【0008】まず、本発明の対象となるフッ素電解の電解槽は、陽極に炭素電極が使用されているものであればよく、一般にフッ素電解用に使用されているものをそのまま適用できる。その場合、陰極には鉄が、また炭素電極と接合を行うブスバーとしては銅がよく使用されているが、その他の材料を使用しているものでもよい。使用されている炭素電極は、無定形の非結晶質炭素であるが、種々の処理を行ったものが使用されており、それらの中でも本発明に使用する炭素電極は、緻密で密度の比較的高い、気孔率の低いものが好ましい。」 カ 甲第6号証の記載事項 甲第6号証には、以下の(ア)~(イ)の記載がある。 (ア) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 溶融KF・2HF系電解浴からフッ素ガスを電解製造するための電解槽に使用する電極において、前記電極が以下の(1)~(3): (1)集電装置; (2)円筒状の非黒鉛炭素部分を含んで成るアノード;並びに (3)(a)隣接して配置されている前記アノードの一部と前記集電装置の一部とを被覆している金属スリーブ;及び(b)電解槽の前記アノード及び前記集電装置の隣接し且つ軸方向に並べられた部分を被覆している前記金属スリーブに円周方向の圧縮力を均一に加えて、前記アノードと前記集電装置との電気的接触を維持する手段(前記アノードの前記非黒鉛炭素部分と前記集電装置とはほぼ同じ外径を有する);を含んで成る電流キャリヤー;を含んで成る、フッ素ガスの電解製造用電極。」 (イ) 「【0017】アノードのある実施態様は、炭素表面に配置された複数の平行で且つ実質的に垂直な溝(このような溝が、発生したフッ素の流れ及びその捕集を容易にする)を有する非黒鉛炭素の一部分を含んで成るものである。非黒鉛炭素が低い透過性を有すること、すなわち典型的に1.4g・cm-3以上の密度及び典型的に22%以下の気孔率を有する炭素であることが好ましい。その炭素の透過性は、典型的には、5.0×102Pa(0℃、圧力760mmHg) において、厚み2.54cm(1インチ)のプレート中、0.03m3空気・m-2分(0.1ft3空気・ft-2分)である。電気抵抗は典型的には0.00414オームcmである。」 キ 甲第7号証の記載事項 甲第7号証には、以下の記載がある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 陽極または陰極のいずれか一方および他方である第1の炭素電極および第2の電極の間に電圧をかけて電解液を電気分解することにより前記第1の炭素電極で第1のガスを生成するガス生成装置であって、 前記第1の炭素電極には、前記電解液を通過せず、一方の面において生成された前記第1のガスを他方の面に選択的に通過する複数の気体微細流路が形成されているガス生成装置。 ・・・ 【請求項24】 前記第1の炭素電極および前記第2の電極の少なくとも一方は炭素材により構成され、前記気体微細流路はガスを選択的に通過する貫通孔であって、 前記貫通孔の開口幅は1000μm以下であることを特徴とする請求項1乃至23のいずれかに記載のガス生成装置。」 ク 甲第8号証の記載事項 甲第8号証には、以下の記載がある。 「 [図:0001434201000003.jpg] 」(5ページ目) ケ 甲第9号証の記載事項 甲第9号証には、以下の記載がある。 「 [図:0001434201000004.jpg] [図:0001434201000005.jpg] [図:0001434201000006.jpg] [図:0001434201000007.jpg] 」 コ 甲第10号証の記載事項 甲第10号証には、以下の記載がある。 「 [図:0001434201000008.jpg] [図:0001434201000009.jpg] 」 サ 甲第11号証の記載事項 甲第11号証には、以下の記載がある。 「混練(捏合,混捏,捏和)(Kneading) こんれん,ねつごう,こんねつ,ねっか 一般に粉粒体のフィラーと液状バインダーとの均質な分散を図る方法として,撹拌と共にせん断力を加えて練り合わせる手段を言う.炭素材料での配合した成形原料の混合分散操作は,混練のほか捏合,混捏,捏和などの用語が歴史的に使われてきている. 一般の炭素材料の製造では,骨材炭素材とバインダーピッチとをバインダーの軟化温度以上に加温した混合物の混練には,各種の混練機(ニーダー)が選択採用される.→ニーダ-,フィラー,バインダー」(125ページ左欄下から12行~右欄1行) (2) 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)の判断 ア 甲第1号証を主引用例とした場合について (ア) 本件発明1について a 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「等方性炭素質材」は、「いわゆる押出成形によりブロック化された炭素材に比べるとはるかに緻密質でありながらも適度に多孔質であるという特徴ある構造体となっている」ものであるから、本件発明1における「多孔質炭素系材料」に相当し、甲1発明における「フッ素発生用電解浴の陽極として用いられる等方性炭素質材からなる」「フッ素電解用炭素電極」は、本件発明1における「多孔質炭素系材料を含むフッ素電解装置用炭素電極」に相当する。 また、甲1発明において「電極嵩密度が1.3g/cm3」であることは、本件発明1において「前記フッ素電解装置用炭素電極は、かさ密度が1.0~1.5g/cm3である」ことを満たす。 b 前記aによれば、本件発明1と甲1発明とは、 「多孔質炭素系材料を含むフッ素電解装置用炭素電極であって、 前記フッ素電解装置用炭素電極は、かさ密度が1.0~1.5g/cm3である、フッ素電解装置用炭素電極。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1: 本件発明1は、「前記多孔質炭素系材料」が「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」している、との発明特定事項を有しているのに対して、甲1発明は、前記発明特定事項を有しているか否かが明らかでない点。 ・相違点2:本件発明1は、「前記2次粒子」が「独立することなく互いに結合」している、との発明特定事項を有しているのに対して、甲1発明は、前記発明特定事項を有しているか否かが明らかでない点。 c 事案に鑑み、始めに、前記bの相違点2が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲第1号証には、甲1発明に係る「フッ素電解用炭素電極」において、「前記2次粒子」が「独立することなく互いに結合」していることは記載されていないし、このことをうかがわせる記載もない。 d ここで、本件発明1に係る「フッ素電解装置用炭素電極」の製造方法(以下、「本件製造方法」という。)と、甲1発明に係る「フッ素電解用炭素電極」の製造方法(以下、「甲1製造方法」という。)とが合致していれば、前記相違点2は実質的な相違点とはいえないから、これらを対比すると、本件特許明細書の段落【0016】~【0018】の記載(下記2(2)ウ)によれば、本件製造方法は、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混錬し、原料粉を得る原料工程と、前記原料粉を炭素電極の形状の成形型に入れ、前記軟化点よりも高い温度に加熱し成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼成し焼成体を得る焼成工程と、を含むものである。 そして、本件製造方法によれば、炭素系粒子と、軟化点が70℃以上のピッチを混錬して原料粉を得ているので、室温では付着しあうことはなく、室温で所定の粒子径となるように粒度調整をすることができ、また、軟化点が200℃以下のピッチを混錬しているので、混錬するためにピッチに溶融させるときにも高温に曝す必要がなく、ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行しにくく、軟化点の上昇を防止することができ、また、後の成形工程で、熱で融着しやすく容易に所定のフッ素電解装置用炭素電極の形状を得ることができるものである。 更に、多孔質材料を得るために、加圧することなく熱で融着させて所定のフッ素電解装置用炭素電極の形状を得ているので、広い粒度分布の「2次粒子」であっても互いに結合した多孔体が得られるうえに、連続気孔が多数存在し、後の焼成工程で原料粉に含まれる揮発分を内部に蓄積することなく除去することができ、また、加圧による寸法変化がなく、型の形状がそのまま成形体の形状となり、このため、焼成後に寸法精度の高いフッ素電解装置用炭素電極を得ることができるものである。 e 具体的には、本件特許明細書の段落【0040】~【0065】の記載(下記2(2)エ)によれば、原料工程における混錬工程では、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混錬して、焼成工程あるいは黒鉛化工程を経て得られる「2次粒子」に対応する、炭素系粒子がバインダにより互いに結合した粒子の集合体である原料粉を得るものであり、炭素系粒子と軟化点が70℃以上のピッチを混錬して原料粉を得ることにより、原料粉が室温では付着しあうことを抑制し、室温で所定の粒子径となるように、原料粉の粒度調整をすることができるものであり、炭素系粒子と軟化点が200℃以下のピッチを混錬して原料粉を得ることにより、混錬するために原料粉を高温に曝す必要がなく、混錬時ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行することを抑制し、軟化点の上昇を防止することができるものであり、混錬の温度は、150~300℃でかつピッチの軟化点より高い温度で行うことが好ましいものであり、混錬の温度を150℃以上でかつピッチの軟化点より高い温度とすることによりピッチを十分に溶融させ、炭素系粒子同士を結合させることができるものであり、混錬の温度を300℃以下とすることにより、ピッチの重縮合を防止し、原料粉の成形性を確保することができるものである。 また、フッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料を得るために、主に熱による融着作用が中心となっており、ほとんど加圧されていないので、広い粒度分布の「2次粒子」であっても互いに結合した多孔体が得られるうえに、連続気孔ができやすく、後の焼成工程で原料粉に含まれる揮発分を内部に蓄積することなく除去することができるものであり、ピッチを溶融させながら一様に混合した段階で混錬を終了することが好ましく、具体的には混錬の時間は30分以下であることが好ましいものであり、混錬の時間が30分以下であると、ピッチの重縮合を抑制し、原料粉の付着性の低下を防止することができるものである。 次に、原料工程で得られた原料粉は、必要に応じて粒度調整を行うことが好ましいものであり、粒度調整を行うことにより所定の気孔率、粒度分布のフッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料を得ることができるものであり、原料粉の平均粒子径は、50~1500μmであることが好ましいものであり、原料粉の平均粒子径が50μm以上であると、十分な大きさの気孔が得られ、様々な用途で利用しやすいフッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料を得ることができるものであり、原料粉の平均粒子径が1500μm以下であると、成形型に入れ成形したとき、表面にできる凹凸の大きさを小さくすることができ、表面の平滑なフッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料を得ることができるものである。 次に、成形工程では、得られた原料粉を成形型に入れ、ピッチの軟化点よりも高い温度に加熱し、所定の形状の成形体を得るものであり、ピッチの軟化点よりも高い温度に加熱した状態で保持しているので、小さな原料粉や、バインダの剥がれた原料粉であっても遊離することなく互いに結合しあい、一体化しているものであり、原料粉に熱を加えているので、付着力のない原料粉であっても「2次粒子」に取り込まれ一体化することができ、独立し遊離した炭素系粒子の発生を抑制することができるものであり、成形工程において、望ましい加熱時間は10分以上であり、成形工程では熱の作用で成形しているので、加熱時間を長くすることにより原料粉をより軟化させ、強固に融着させることができるものである。 更に、焼成工程は、得られた成形体を不活性雰囲気下で加熱し、焼成体を得るものであり、前記焼成体がフッ素電解装置用炭素電極の多孔質炭素系材料となるものであり、焼成の温度は例えば700~2000℃であることが好ましいものであり、焼成を700℃以上で行うことにより成形体から揮発分を十分に除去し、フッ素電解装置用炭素電極の多孔質炭素系材料として使用可能となるものであり、焼成を2000℃以下で行うことにより、多孔質炭素系材料に十分な硬度を与え、例えば電解電極で使用可能な多孔質炭素系材料を得ることができるものである。 f なお、従来の多孔質炭素系材料においては、炭素系粒子とピッチとを混錬し、原料粉を得る成形工程及び焼成工程を行うものであるが、従来の方法においては、成形工程は、ピッチを溶融させることなく主に圧力の作用によって行われているので、このため圧力が加わった粒子の接点では強く結合するのに対し、圧力が加わらなかった粒子の接点では強く結合することができないものであり、多孔質炭素系材料の製造においては、粗い原料粉を使用するので、型に充填した段階で大きな空隙が形成され、大きな空隙に入り込んだ原料粉に十分に圧力が加わりにくいことから、他の粒子と一体化することができず遊離した「2次粒子」となって、素材の強度に寄与せず、パーティクルを生成させるだけの異物となるものである。 g 前記d~fによれば、本件製造方法においては、原料工程において、炭素系粒子と軟化点が70~200℃のピッチとを混錬して「2次粒子」に対応する原料粉を得るとき、混錬の温度を150~300℃でかつピッチの軟化点より高い温度で行うとともに、混錬の時間を30分以下とすることで、混錬時ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行することを抑制し、軟化点の上昇を防止し、かつ、ピッチを十分に溶融させ、炭素系粒子同士を結合させ、原料粉の成形性を確保し、原料粉の付着性の低下を防止するとともに、成形工程において、得られた原料粉を成形型に入れ、ピッチの軟化点よりも高い温度で10分以上加熱し、所定の形状の成形体を得ることで、小さな原料粉や、バインダの剥がれた原料粉であっても遊離することなく互いに結合しあい、一体化し、付着力のない原料粉であっても「2次粒子」に取り込まれ一体化することができるので、「前記2次粒子は、独立することなく互いに結合」している、との前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を有する「フッ素電解装置用炭素電極」を製造できるものといえる。 これに対して、ピッチを溶融させることなく主に圧力の作用によって行われる従来の成形工程では、圧力が加わった粒子の接点では強く結合するのに対し、圧力が加わらなかった粒子の接点では強く結合することができないものであり、多孔質炭素系材料の製造においては、粗い原料粉を使用するので、型に充填した段階で大きな空隙が形成され、大きな空隙に入り込んだ原料粉に十分に圧力が加わりにくいことから、他の粒子と一体化することができず遊離した「2次粒子」となって、素材の強度に寄与せず、パーティクルを生成させるだけの異物となるものである。 h 一方、甲1発明の発明特定事項によれば、甲1製造方法は、「粒径が3~20μmの微粉状の仮焼骨材コークス100重量部にコールタールピッチ、石油ピッチのようなピッチバインダー約80~130重量部を配合した2元系材料を約150~250℃で混捏した後冷却し、粉砕して粒度調整を行ったものを成形し、最終的に熱処理する」ものであり、「成形は、CIP成形や金型成形により10~90MPa程度、好ましくは10~30MPa程度の低加圧下で等方性ブロック体に成形するものであり、熱処理温度は、通常1000℃~1500℃、好ましくは1000℃~1200℃」であるものである。 具体的には、「325メッシュ(Tyler)以下に粉砕した仮焼石油コークス粉100重量部に対して90重量部のコールタールピッチを加え、約150~250℃、好ましくは約180~220℃における加熱下で長時間混捏すると共に揮発分を調整し、常温まで冷却し、その後、再度粉砕して100メッシュ(Tyler)以下の粉砕品を分級・回収し、サンプル用炭素質ブロックの原料とし、次に、得られた原料をCIP成形により、圧力10MPaで、100×300×600mmの寸法品となるように成形し、得られた成形体を1000℃で焼成することにより210×80×20mmの陽極用炭素質材を製作」して製造されるものである。 i ここで、甲1製造方法において、「粒径が3~20μmの微粉状の仮焼骨材コークス100重量部にコールタールピッチ、石油ピッチのようなピッチバインダー約80~130重量部を配合した2元系材料を約150~250℃で混捏」する工程、具体的には「325メッシュ(Tyler)以下に粉砕した仮焼石油コークス粉100重量部に対して90重量部のコールタールピッチを加え、約150~250℃、好ましくは約180~220℃における加熱下で長時間混捏」する工程は、本件製造方法において、炭素系粒子と、ピッチとを混錬する原料工程に相当するといえるが、ピッチの軟化点は明らかでないし、約150~250℃、好ましくは約180~220℃の加熱温度が、ピッチの軟化点以上であるかも明らかでないし、混捏の時間も明らかでないから、炭素系粒子と軟化点が70~200℃のピッチとを混錬するものとはいえないし、混錬の温度を150℃以上でかつピッチの軟化点より高い温度とするものともいえないし、混錬の時間を30分以下とするものともいえない。 そうすると、本件製造方法と甲1製造方法とは、原料工程が合致しない。 また、甲1製造方法において、「成形」を、「CIP成形や金型成形により10~90MPa程度、好ましくは10~30MPa程度の低加圧下で等方性ブロック体に成形する」工程、具体的には、「得られた原料をCIP成形により、圧力10MPaで、100×300×600mmの寸法品となるように成形」する工程は、本件製造方法における成形工程に相当するといえるが、「CIP成形」は、通常、加熱をともなうものではないから、得られた原料粉を成形型に入れ、ピッチの軟化点よりも高い温度で10分以上加熱し、所定の形状の成形体を得るものとはいえないし、加圧することなく熱で融着させて所定のフッ素電解装置用炭素電極の形状を得るものともいえず、むしろ、ピッチを溶融させることなく主に圧力の作用によって行われる従来の成形工程といえるものである。 そうすると、本件製造方法と甲1製造方法とは、成形工程も合致しない。 j 前記iによれば、本件製造方法と甲1製造方法とは、少なくとも原料工程及び成形工程が合致しない。 そして、少なくとも原料工程及び成形工程が合致しない製造方法により製造された甲1発明に係る「フッ素電解用炭素電極」は、原料工程において、混錬時ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行することを抑制し、軟化点の上昇を防止し、かつ、ピッチを十分に溶融させ、炭素系粒子同士を結合させ、原料粉の成形性を確保し、原料粉の付着性の低下を防止しているとはいえないし、成形工程において、小さな原料粉や、バインダの剥がれた原料粉であっても遊離することなく互いに結合しあい、一体化し、付着力のない原料粉であっても「2次粒子」に取り込まれて一体化しているともいえないから、甲1発明において、「前記2次粒子」が「独立することなく互いに結合」する、との前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を有するとはいえないので、前記相違点2は実質的な相違点である。 したがって、前記bの相違点1について検討するまでもなく、本件発明1が甲1発明であるとはいえない。 k 次に、前記相違点2の容易想到性について検討すると、「フッ素電解装置用炭素電極」において、「前記2次粒子」を「独立することなく互いに結合」しているものとすることを開示した証拠はないから、甲1発明を、前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、前記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 本件発明2~3について 本件発明2~3は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、前記(ア)に記載したのと同様の理由により、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ) 申立人の主張について a 申立人の主張の概要 甲第1号証を主引用例とした場合の申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 本件発明1の「前記2次粒子は、独立することなく互いに結合しており」、との発明特定事項(以下、特許異議申立書の記載にのっとって「構成要件C」という。)について、甲第1号証に記載された「フッ素電解用炭素電極」は、粒径が3~20μmの微粉状の仮焼骨材コークス又は仮焼石油コークス粉と、コールタールピッチとを約150~250℃、好ましくは約180~220℃で混捏し、成形し、その後1000℃の温度で熱処理する方法で製造されたものである。 ここで、当業者であれば、甲第1号証において混捏する際の約150~250℃の温度が、コールタールピッチの軟化点以上の温度であり得ることが理解できる。また、甲第11号証には、骨材炭素材とバインダーピッチとを混捏して炭素材料を製造する一般的な方法として、当該バインダの軟化点以上の温度で混捏することが開示されている。したがって、当業者であれば、骨材炭素材とバインダーピッチとを混捏して炭素材料を製造する方法において、バインダの軟化点未満の温度で混捏したことが特記されていない場合は、当然、バインダの軟化点以上の温度で混捏したものと判断するのであり、甲第1号証には、バインダの軟化点未満の温度で混捏したことは記載されていない。 してみれば、甲第1号証に記載された「フッ素電解用炭素電極」は、コールタールピッチの軟化点以上の温度で混捏されたものと理解できる。 また、甲第1号証に記載された「フッ素電解用炭素電極」の製造方法では、コールタールピッチをバインダとして使用しており、微粉状の仮焼骨材コークス又は仮焼石油コークス粉とともに加熱されていることから、前記コールタールピッチが溶融し、前記微粉状の仮焼骨材コークス又は仮焼石油コークス粉と融着していると考えられる。したがって、甲第1号証に記載された「フッ素電解用炭素電極」は、「2次粒子」が独立することなく、互いに結合していることは自明である。 よって、甲第1号証に記載された「フッ素電解用炭素電極」は、構成要件Cを有するものである(特許異議申立書18ページ3行~19ページ11行)。 更に、甲第1号証に記載された「フッ素電解用炭素電極」は、本件発明1のそのほかの構成要件も有するから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許異議申立書19ページ下から7行~最終行)。 b 申立人の主張についての判断 以下、前記aの主張について検討すると、前記主張は、甲1製造方法が本件製造方法と合致していることを前提として、甲第1号証に記載された「フッ素電解用炭素電極」において、「2次粒子」が独立することなく、互いに結合していることは自明であるから、前記「フッ素電解用炭素電極」が構成要件Cを有することをいうものといえる。 ところが、甲第1号証には、混捏する際の約150~250℃の温度がコールタールピッチの軟化点以上の温度であることは記載されていないし、仮にそうであるとしても、混捏の時間を30分以下とするものとはいえないから、本件製造方法と甲1製造方法は、原料工程が合致しないことに変わりはない。 また、甲1製造方法の成形工程は、「CIP成形」なのであるから、得られた原料粉を成形型に入れ、ピッチの軟化点よりも高い温度で10分以上加熱し、所定の形状の成形体を得るものとはいえないし、加圧することなく熱で融着させて所定のフッ素電解装置用炭素電極の形状を得るものとはいえず、むしろ、ピッチを溶融させることなく主に圧力の作用によって行われる従来の成形工程といえることも変わりはないから、本件製造方法と甲1製造方法は、成形工程も合致しないことに変わりはない。 そうすると、本件製造方法と甲1製造方法は合致しないから、前記aの主張は前提において誤っている。 そして、製造方法が合致しない甲第1号証に記載された「フッ素電解用炭素電極」において、「2次粒子」が独立することなく、互いに結合していることが自明であるということはできないし、このことを裏付ける証拠もないから、甲第1号証に記載された「フッ素電解用炭素電極」が構成要件Cを有しているということもできないので、申立人の前記aの主張は採用できない。 (エ) 小括 したがって、本件発明1~2は、甲第1号証に記載された発明ではないし、本件発明1~3は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第3の1(1)ア及びイの特許異議申立理由はいずれも理由がない。 イ 甲第2号証を主引用例とした場合について (ア) 本件発明1について a 本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「フッ素電解製造用炭素質電極板」は、「原料炭素質骨材に粘結材を配合し、混捏、加圧成形、焼成」して製造したものであって、「その表面間口気孔の孔径分布を水銀圧入法による気孔測定法によって測定したところ、孔径50μm以下のものが31%、50~150μmのものが65%、150μm以上のものが4%であった」ものであるから、「多孔質炭素系材料を含む」ものといえるので、本件発明1における「多孔質炭素系材料を含むフッ素電解装置用炭素電極」に相当する。 b 前記aによれば、本件発明1と甲2発明とは、 「多孔質炭素系材料を含むフッ素電解装置用炭素電極。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1’:本件発明1は、「前記多孔質炭素系材料」が、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダが2次粒子を構成」している、との発明特定事項を有しているのに対して、甲2発明は、前記発明特定事項を有しているか否かが明らかでない点。 ・相違点2’:本件発明1は、「前記2次粒子」が「独立することなく互いに結合」している、との発明特定事項を有しているのに対して、甲2発明は、前記発明特定事項を有しているか否かが明らかでない点。 ・相違点3:本件発明1は、「かさ密度が1.0~1.5g/cm3」である、との発明特定事項を有しているのに対して、甲2発明の「かさ密度」は明らかでない点。 c 事案に鑑み、始めに、前記bの相違点2’が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲第2号証には、甲2発明に係る「フッ素電解製造用炭素質電極板」において、「前記2次粒子」が「独立することなく互いに結合」していることは記載されていないし、このことをうかがわせる記載もない。 d ここで、本件製造方法と甲2発明に係る「フッ素電解製造用炭素質電極板」の製造方法(以下、「甲2製造方法」という。)とが合致していれば、前記相違点2’は実質的な相違点とはいえないから、これらを対比すると、前記相違点2’は、前記ア(ア)bの相違点2と、「前記2次粒子」が「独立することなく互いに結合」しているか否かに関する相違点である点で共通するものであって、本件製造方法においては、原料工程において、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混錬して、「2次粒子」に対応する原料粉を得るとき、混錬の温度を150~300℃でかつピッチの軟化点より高い温度で行うとともに、混錬の時間を30分以下とすることで、混錬時ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行することを抑制し、軟化点の上昇を防止し、かつ、ピッチを十分に溶融させ、炭素系粒子同士を結合させ、原料粉の成形性を確保し、原料粉の付着性の低下を防止するとともに、成形工程において、得られた原料粉を成形型に入れ、ピッチの軟化点よりも高い温度で10分以上加熱し、所定の形状の成形体を得ることで、小さな原料粉や、バインダの剥がれた原料粉であっても遊離することなく互いに結合しあい、一体化し、付着力のない原料粉であっても「2次粒子」に取り込まれ一体化することができるので、「前記2次粒子は、独立することなく互いに結合」している、との前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を有する「フッ素電解装置用炭素電極」を製造できるものといえることは、ア(ア)gに記載したとおりである。 e 一方、甲2発明の発明特定事項によれば、甲2製造方法は、「原料炭素質骨材に粘結材を配合し、混捏、加圧成形、焼成して電極板を得るに際し、炭素質骨材原料として74μm~1mmの範囲の粒径を有する石油コークス、ピッチコークス又はこれらの混合物の粒子を使用し、これに適宜の粘結剤を原料骨材100部に対し8~22部の割合で加えて混捏し、次いで成形温度95~115℃で所望の電極板形状に加圧成形し、しかる後この成形品を1000~1500℃の温度範囲で焼成」するものである。 具体的には、甲2製造方法は、「原料炭素質骨材として粒径が500~1000μmの粒子45%、297~500μmの粒子30%、74~297μmの粒子22%、(残り3%は不可避的に混入する74μm以下の微粒子)からなるような粒径分布を有する石油コークス破砕粒を用い、中ピッチ(JISk2439)粘結材を骨材100重量部に対して20重量部加えて混捏し、これを振動成形機を使用して、0.04kg/cm2の成形圧力をもって成形し、次いでこの成形物を焼成炉において1350℃にて焼成」するものである。 f ここで、甲2製造方法において、「炭素質骨材原料として74μm~1mmの範囲の粒径を有する石油コークス、ピッチコークス又はこれらの混合物の粒子を使用し、これに適宜の粘結剤を原料骨材100部に対し8~22部の割合で加えて混捏」する工程、具体的には「原料炭素質骨材として粒径が500~1000μmの粒子45%、297~500μmの粒子30%、74~297μmの粒子22%、(残り3%は不可避的に混入する74μm以下の微粒子)からなるような粒径分布を有する石油コークス破砕粒を用い、中ピッチ(JISk2439)粘結材を骨材100重量部に対して20重量部加えて混捏」する工程は、本件製造方法において、炭素系粒子と、ピッチとを混錬する原料工程に相当するといえるが、混捏の際の温度は明らかでないし、混捏の時間も明らかでないから、混錬の温度を150~300℃でかつピッチの軟化点より高い温度とするものともいえないし、混錬の時間を30分以下とするものともいえない。 そうすると、本件製造方法と甲2製造方法とは、原料工程が合致しない。 g また、甲2製造方法において、「成形温度95~115℃で所望の電極板形状に加圧成形」する工程、具体的には、「混捏」後の材料を「振動成形機を使用して、0.04kg/cm2の成形圧力をもって成形」する工程は、本件製造方法における成形工程に相当するといえる。 ここで、前記dによれば、本件製造方法は、原料工程において混錬の温度を150~300℃でかつピッチの軟化点より高い温度で行うとともに、混錬の時間を30分以下とすることで、炭素系粒子同士を結合させるとともに、混錬時ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行することを抑制し、軟化点の上昇を防止し、原料粉の付着性の低下を防止するものであり、そのようにして得られた原料粉を、ピッチの軟化点よりも高い温度に加熱して成形することにより、前記相違点2’に係る本件発明1の発明特定事項を有する「フッ素電解装置用炭素電極」を製造するものといえる。 ところが、甲2製造方法は、混捏の際の温度及び時間が明らかでないのであるから、前記中ピッチ(JISk2439)の縮合反応が進行することを抑制し、軟化点の上昇を防止しているとはいえない。 そうすると、もともと、前記中ピッチ(JISk2439)の軟化温度が、甲第8号証(前記(1)ク)に記載されたとおり70~85℃であるとしても、混捏後の炭材を加圧成形する際の前記中ピッチ(JISk2439)の軟化温度は明らかでないから、甲2製造方法における成形温度が95~115℃であるとしても、前記中ピッチ(JISk2439)の軟化温度よりも高い温度に加熱して成形しているとはいえない。 また、甲2製造方法における「成形温度95~115℃で所望の電極板形状に加圧成形」する工程の加熱時間も明らかでないから、前記工程が、中ピッチの軟化点よりも高い温度で10分以上加熱するものともいえない。 これらのことからみれば、本件製造方法と甲2製造方法とは、成形工程も合致しない。 h 前記f~gによれば、本件製造方法と甲2製造方法とは、少なくとも原料工程及び成形工程が合致しない。 そして、少なくとも原料工程及び成形工程が合致しない製造方法により製造された甲2発明に係る「フッ素電解製造用炭素質電極板」が、「前記2次粒子は、独立することなく互いに結合」する、との前記相違点2’に係る本件発明1の発明特定事項を有するとはいえないから、前記相違点2’は実質的な相違点である。 したがって、前記bのそのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1が甲2発明であるとはいえない。 i 次に、前記相違点2’の容易想到性について検討すると、「フッ素電解装置用炭素電極」において、「前記2次粒子は、独立することなく互いに結合」しているものとすることを開示した証拠はないから、甲2発明を、前記相違点2’に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基づいて、又は、甲2発明及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 本件発明2~3について 本件発明2~3は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、前記(ア)に記載したのと同様の理由により、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて、又は、甲2発明及び甲第1、3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ) 申立人の主張について a 申立人の主張の概要 甲第2号証を主引用例とした場合の申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 本件発明1の構成要件Cについて、甲第2号証の実施例2では、原料炭素質骨材である石油コークス破砕粒と、粘結剤である中ピッチ(JISk2439)を配合し、混捏して得られる混合物を、0.04kPa/cm2の成形圧力で加圧成形した後、得られた成形品を1350℃で焼成して炭素質電極板を製造したことが記載されており、ここで、前記実施例2は実施例であるから、成形温度95~115℃で加圧成形されたものと理解できる。 また、甲第8号証には、中ピッチの軟化点が75~85℃であることが記載されているから、前記実施例2では、前記混合物を中ピッチの軟化点以上の温度で加圧成形した後焼成する方法で、「フッ素電解製造用炭素質電極板」を製造したことを理解できるし、前記実施例2で製造された「フッ素電解製造用炭素質電極板」は、炭素質骨材と粘結剤とを配合し、混捏、加圧成形、焼成の各工程を経て得られたものであるから、開口気孔を備えており、本件発明1に係る「フッ素電解装置用炭素電極」に相当するので、構成要件Cを備えていることが理解できる。 更に、特許権者は、甲第2号証に記載された「フッ素電解製造用炭素質電極板」は構成要件C等が開示されていると推認される、との見解に基づく拒絶理由通知書である甲第9号証に対して、本件発明1の「かさ密度」についての構成要件を追加する手続補正書である甲第10号証による補正で応答しているから、甲第2号証に構成要件Cが開示されていることを自認しているといえる(特許異議申立書22ページ3行~23ページ12行)。 そして、甲第2号証に記載された「フッ素電解製造用炭素質電極板」は、本件発明1のそのほかの構成要件も有するから、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許異議申立書24ページ12行~18行)。 b 申立人の主張についての判断 以下、前記aの主張について検討すると、前記主張は、甲第8号証(前記(2)ク)には中ピッチの軟化点が75~85℃であることが記載されていることと、甲2製造方法における成形温度が95~115℃であることから、甲2製造方法が本件製造方法と合致していること、及び、甲第9~10号証(前記(1)ケ、コ)の記載から、特許権者が甲第2号証に構成要件Cが開示されていることを自認していることを前提として、甲第2号証に記載された「フッ素電解製造用炭素質電極板」が構成要件Cを有することをいうものといえる。 ところが、本件製造方法と甲2製造方法とは、少なくとも原料工程及び成形工程が合致しないことは、前記(ア)hに記載したとおりであるから、甲第8号証の記載事項に関わらず、甲2製造方法は本件製造方法と合致しない。 また、甲第9号証は、本件特許出願である特願2021-084868号の審査過程における令和6年12月12日付けの拒絶理由通知書であって、審査官の意見を記載したものにすぎず、同甲第10号証は、本件特許出願である特願2021-084868号の審査過程における令和7年1月10日提出の手続補正書であって、特許請求の範囲の手続補正の内容を記載したものにすぎず、いずれも、特許権者が甲第2号証に構成要件Cが開示されていることを自認していることを記載したものではないから、甲第9~10号証の記載から、特許権者が、甲第2号証に構成要件Cが開示されていることを自認しているということもできないので、前記aの主張は前提において誤っている。 そして、本件製造方法と製造方法が合致しない甲第2号証に記載された「フッ素電解製造用炭素質電極板」が構成要件Cを有しているということはできないし、このことを裏付ける証拠もないから、申立人の前記aの主張は採用できない。 (オ) 小括 したがって、本件発明1及び3は、甲第2号証に記載された発明ではないし、本件発明1~3は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第3の1(2)ア~エの特許異議申立理由はいずれも理由がない。 ウ 甲第4号証を主引用例とした場合について (ア) 本件発明1について a 本件発明1と甲4発明とを対比すると、甲4発明における「カーボン多孔体吸着板」は、「平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)との混合物を加熱硬化させ、非酸化性雰囲気下での炭化焼成により得られ」るものであって、「カーボン多孔体」であるのだから、本件発明1における「多孔質炭素系材料を含む」「炭素」に相当する。 また、甲4発明は、その「物性」が、「かさ密度が0.75~1.2Mg/m3」であり、「Mg/m3」を「g/cm3」に換算すると「0.75~1.2g/cm3」であるから、本件発明1において、「かさ密度が1.0~1.5g/cm3」であることを満たす。 b 前記aによれば、本件発明1と甲4発明とは、 「多孔質炭素系材料を含む炭素であって、 かさ密度が1.0~1.5g/cm3である、炭素。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1”:本件発明1は、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダが2次粒子を構成」しているのに対して、甲4発明は、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」しているか否かが明らかでない点。 ・相違点2”:本件発明1は、「前記多孔質炭素系材料」の「前記2次粒子」が「独立することなく互いに結合」しているのに対して、甲4発明は、「2次粒子」が「独立することなく互いに結合」しているか否かが明らかでない点。 ・相違点4:本件発明1は、「フッ素電解装置用炭素電極」に係る発明であるのに対して、甲4発明は、「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」に係る発明である点。 c 始めに、前記bの相違点1”が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲第4号証には、甲4発明に係る「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」が、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成」することは記載されていないし、このことをうかがわせる記載もない。 d ここで、本件製造方法と甲4発明に係る「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」の製造方法(以下、「甲4製造方法」という。)とが合致していれば、前記相違点1”は実質的な相違点とはいえないから、これらを対比すると、本件製造方法においては、原料工程において、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混錬して、「2次粒子」に対応する原料粉を得るとき、混錬の温度を150~300℃でかつピッチの軟化点より高い温度で行うとともに、混錬の時間を30分以下とすることで、混錬時ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行することを抑制し、軟化点の上昇を防止し、かつ、ピッチを十分に溶融させ、炭素系粒子同士を結合させ、原料粉の成形性を確保し、原料粉の付着性の低下を防止するものであることは、ア(ア)gに記載したとおりである。 e 一方、甲4発明の発明特定事項によれば、甲4製造方法は、「以下の4(I~IV)又は5(I~V)工程からなるものである。 (I)混合(又は混練)工程:平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する固体状原料(A)と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)とを、更に、所望に応じて溶剤(C)とを混合又は混練する工程 (II)予備成形する工程:工程(I)で得られた樹脂混合物を、所望形状の成形容器又は金型に入れ、予備成形する工程 (III)成形(熱硬化)工程:工程(II)の予備成形された樹脂混合物を、離型可能な硬さまで熱硬化し、所望形状の多孔性熱硬化物を得る工程 (IV)焼成工程:工程(III)で得られた多孔性熱硬化物を、不活性ガス雰囲気中にて、800~2500℃の温度で焼成する工程 (V)成形加工工程:工程(IV)で得られたカーボン多孔体を、所定の形状、例えば円板に成形加工する工程」 具体的には、甲4製造方法は、「固体状原料(A)として、平均粒子径60μm(標準偏差17.9)のフェノール樹脂のビーズを90重量部と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)として、硬化剤添加ノボラック系フェノール樹脂粉末を10重量部とを十分に混合し、金型で、15N/cm2、160℃、1時間の条件で加熱加圧成形することにより、樹脂多孔体を作製し、その後、この樹脂多孔体を真空中で1000℃まで4℃/時間で昇温して炭化焼成し、カーボン多孔体吸着板を得」るものである。 更に、甲4製造方法においては、「平均粒径が20~500μmの熱硬化樹脂粒子(a)であって、分級して粒度分布を狭くした熱硬化樹脂粒子を用いることにより、高い気孔率を有するカーボン多孔体吸着板が得られる」ものであり、甲4製造方法の「前記(I)混合(又は混練)工程における混合機」は、「固体状原料(A)、熱硬化樹脂(B)及び更に溶剤(C)を均一に分散、混合できるものであれば、特に限定されないものであり、固体状原料(A)、熱硬化樹脂(B)及び更に溶剤(C)を均一に分散、混合できるものであれば、混練機を用いてもよい」ものである。 f ここで、甲4製造方法における「(I)混合(又は混練)工程」は、本件製造方法における原料工程に相当し、「固体状原料(A)」及び「熱硬化樹脂(B)」は、それぞれ、本件製造方法における「炭素系粒子」及び「ピッチ」に相当するといえるが、前記eによれば、甲4製造方法における「(I)混合(又は混練)工程」は、平均粒径が20~500μmである熱硬化樹脂粒子(a)を少なくとも20重量%含有する「固体状原料(A)」と、バインダーとしての「熱硬化性樹脂(B)」と、所望に応じて「溶剤(C)」とを、均一に「混合又は混練する」ものであり、具体的には、「固体状原料(A)として、平均粒子径60μm(標準偏差17.9)のフェノール樹脂のビーズを90重量部と、バインダーとしての熱硬化性樹脂(B)として、硬化剤添加ノボラック系フェノール樹脂粉末を10重量部とを十分に混合」するものである。 そうすると、前記「(I)混合(又は混練)工程」は、単に、「フェノール樹脂のビーズ」と「硬化剤添加ノボラック系フェノール樹脂粉末」とを混合するものにすぎないから、「2次粒子」を構成するものとはいえない。 また、甲4製造方法は、「固体状原料(A)として、平均粒径が20~500μmの熱硬化樹脂粒子(a)であって、分級して粒度分布を狭くした熱硬化樹脂粒子を用いることにより、高い気孔率を有するカーボン多孔体吸着板が得られることに特徴がある」ものである。 ところが、「固体状原料(A)」が「2次粒子」を構成した場合、その粒度分布が変化して、前記特徴を損なうこととなることが強く推認されるから、甲4製造方法は、「(I)混合(又は混練)工程」において「固体状原料(A)」と「熱硬化性樹脂(B)」が「2次粒子」を構成するものとはいえない。 これらのことからみれば、甲4製造方法は、そもそも、「2次粒子」に対応する原料粉を得るものとはいえないのであるから、原料工程が本件製造方法と合致しない。 そして、そのような甲4製造方法により製造された甲4発明に係る「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」も、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダが2次粒子を構成」するものとはいえないから、前記相違点1”に係る本件発明1の発明特定事項を有するとはいえないので、前記相違点1”は実質的な相違点である。 g 次に、前記相違点1”の容易想到性について検討すると、甲4製造方法において「固体状原料(A)」が「2次粒子」を構成した場合、その粒度分布が変化して、その特徴を損なうこととなることが強く推認されることは、前記fに記載したとおりであるから、そのような甲4製造方法で製造された甲4発明に係る「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」を、あえて、「2次粒子を構成」するものとすることは想定されないので、甲4発明を、前記相違点1”に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、そのほかの甲号証の記載事項に関わらず、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、本件発明1は、甲4発明及び甲第1~3号証に記載された事項に基づいて、又は、甲4発明及び甲第5~7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、甲第4号証に記載された実施例2~5(摘記は省略した。)に注目して検討しても事情は同じである。 (イ) 本件発明2~3について 本件発明2~3は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、前記(ア)に記載したのと同様の理由により、甲4発明及び甲第1~3号証に記載された事項に基づいて、又は、甲4発明及び甲第5~7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ) 申立人の主張について a 申立人の主張の概要 甲第4号証を主引用例とした場合の申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 甲第4号証に記載された「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」は、半導体ウエハーを吸着する真空チャックとして使用する場合に、当該半導体ウエハーに対する塵の付着及び化学的な汚染が発生することを防止できるものであり、半導体ウエハーに対する塵の付着及び化学的な汚染の原因の一つは、「真空チャック」である「カーボン多孔体吸着板」から炭素系粒子が脱落することにより当該炭素系粒子が半導体ウエハーに付着することであると推認できるから、甲第4号証に記載された「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」は、炭素系粒子の脱落が防止されているといえる。 また、甲第4号証の実施例1~5では、炭素系粒子の前駆体であるフェノール樹脂のビーズと炭素質バインダーであるフェノール樹脂粉末又はフェノール液体樹脂との混合物を、特定の温度以上で加熱成形した後焼成する方法によって、「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」を製造しており、これらの「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」はチャック用基板として使用が可能なものであるから、炭素系粒子の脱落が防止されているといえる。 これらのことと、特許権者は、本件発明1に係る「フッ素電解装置用炭素電極」を、炭素系粒子及び/又はその前駆体粒子と、炭素質バインダとの混合物を、特定の温度以上、具体的にはバインダーの軟化点以上の温度で加熱し、成形した後焼成する方法によって製造することで、「2次粒子を構成」し、構成要件Cを達成していると見なしていることからみれば、甲第4号証に記載された「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」は、本件発明1と同様に、「2次粒子を構成」していると見なすことができるし、前記構成要件Cを備えていることが理解できる。 更に、甲第4号証に記載された「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」を「フッ素電解装置用炭素電極」として用いることは、甲第1~3号証又は甲第5~7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得ることであり、甲第4号証に記載された「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」の「かさ密度」は、本件発明1に係る「フッ素電解装置用炭素電極」の「かさ密度」と合致するから、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明及び甲第1~3号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第4号証に記載された発明及び甲第5~7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 b 申立人の主張についての判断 以下、前記aの主張について検討すると、前記aの主張は、甲第4号証に記載された「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」は「2次粒子を構成」していると見なすことができ、前記構成要件Cを備えていることを前提として、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明及び甲第1~3号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第4号証に記載された発明及び甲第5~7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであることをいうものといえる。 ところが、甲4発明に係る「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」は、「炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダが2次粒子を構成」するものとはいえないことは、前記(ア)fに記載したとおりである そして、甲第4号証に記載された「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」が、半導体ウエハーを吸着する真空チャックとして使用する場合に、当該半導体ウエハーに対する塵の付着及び化学的な汚染が発生することを防止できるものであり、半導体ウエハーに対する塵の付着及び化学的な汚染の原因の一つは、「真空チャック」である「カーボン多孔体吸着板」から「炭素系粒子」が脱落することにより当該「炭素系粒子」が半導体ウエハーに付着することであると推認できるとしても、また、甲第4号証の実施例1~5による「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」がチャック用基板として使用が可能なものであり、「炭素系粒子」の脱落が防止されているといえるとしても、そのことだけで、これら「炭素系粒子」が「2次粒子を構成」しているということはできないから、「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」が「2次粒子を構成」しているということはできない。 また、仮に、特許権者が、本件発明1に係る「フッ素電解装置用炭素電極」を、炭素系粒子及び/又はその前駆体粒子と、炭素質バインダとの混合物を、バインダーの軟化点以上の温度で加熱し、成形した後焼成する方法によって製造することで、「2次粒子を構成」し、構成要件Cを達成していると見なしているとしても、前記(ア)fに記載したとおり、甲4製造方法は本件製造方法と合致しないから、甲第4号証に記載された「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」が「2次粒子を構成」しているものとはいえないことに変わりはないし、甲第4号証に記載された「真空チャック用カーボン多孔体吸着板」が「2次粒子を構成」していることを裏付ける証拠もないので、前記aの主張は前提において誤っている。 そうすると、甲第1~3号証又は甲第5~7号証に記載された事項に関わらず、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明及び甲第1~3号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第4号証に記載された発明及び甲第5~7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立人の前記aの主張は採用できない。 (3) 小括 したがって、本件発明1~3は、甲第4号証に記載された発明及び甲第1~3号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第4号証に記載された発明及び甲第5~7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第3の1(3)の特許異議申立理由は理由がない。 2 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について (1) 明確性要件の判断手法 特許請求の範囲の記載が明確性要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであるので、以下、この観点に立って検討する。 (2) 本件特許明細書の記載事項 本件特許明細書には、以下のア~クの記載がある。 ア 「【0001】 本発明は、フッ素電解装置用炭素電極およびフッ素電解装置用炭素電極の製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 フッ素ガスは、半導体製造、ウラン濃縮、フッ素関連製品など様々な分野で使用されている。フッ素ガスは、フッ酸を含む溶融塩を電解することによって得られ、この反応では陽極に炭素電極が広く用いられている。 【0003】 特許文献1には、陽極材に炭素を用いてフッ素の電解製造を行う場合、陽極表面に電気絶縁性の被膜が生成して電流が急に流れなくなる現象、いわゆる陽極効果が起こりにくくかつ安定的に長期間継続できる製造方法として、電気抵抗異方比が1.3以下でかつ多孔質である炭素を陽極材とするフッ素の製造方法が記載されている。 ・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら特許文献1に記載されているように、陽極材は多孔質のものが用いられ、例えば、密度が1.0~1.3g/cm3であるものが望ましいとされている。このような低密度の炭素材料においては、炭素粒子の結合が弱く消耗が進むにつれて内部の粒子が脱落しやすくなる。 【0006】 本発明では上述した課題を鑑み、低密度であっても粒子が脱落しにくいフッ素電解装置用炭素電極およびフッ素電解装置用炭素電極の製造方法を提供することを目的とする。」 イ 「【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明のフッ素電解装置用炭素電極は、 多孔質炭素系材料を含むフッ素電解装置用炭素電極であって、 前記多孔質炭素系材料は、炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成し、 前記2次粒子は、独立することなく互いに結合している。 【0008】 本発明のフッ素電解装置用炭素電極では、多孔質炭素系材料が構成する2次粒子が独立することなく互いに結合しあっているので、内部から脱落した粒子や微粉末が材料の外部に出てくることを抑制することができる。このため、汚染の少ないフッ素電解装置用炭素電極を提供することができる。 ・・・ 【0013】 最大気孔径が50μm以上であると、気孔内部に溶融塩が浸透しやすく、電解に関与する表面積を大きくすることができる。最大気孔径が、1000μm以下であると、表面積の低下が抑えられ、電解に関与する表面積を大きくすることができる。 ・・・ 【0015】 かさ密度が1.0g/cm3以上であると、フッ素電解装置用炭素電極として十分な強度が得られる。かさ密度が1.5g/cm3以下であると、内部に十分な量の気孔を確保することができ、電極表面だけでなく気孔内部でも電解を生じさせ、効率よくフッ素を製造することができる。」 ウ 「【0016】 続いて、本発明のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法は、 炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混錬し、原料粉を得る原料工程と、 前記原料粉を炭素電極の形状の成形型に入れ、前記軟化点よりも高い温度に加熱し成形体を得る成形工程と、 前記成形体を焼成し焼成体を得る焼成工程と、 を含む。 【0017】 本発明のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法によれば、炭素系粒子と、軟化点が70℃以上のピッチを混錬して原料粉を得ているので、室温では付着しあうことはなく、室温で所定の粒子径となるように粒度調整をすることができる。また、軟化点が200℃以下のピッチを混錬しているので、混錬するためにピッチに溶融させるときにも高温に曝す必要がなく、ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行しにくく、軟化点の上昇を防止することができる。また、後の成形工程で、熱で融着しやすく容易に所定のフッ素電解装置用炭素電極の形状を得ることができる。 【0018】 また、多孔質材料を得るために、加圧することなく熱で融着させて所定のフッ素電解装置用炭素電極の形状を得ているので、広い粒度分布の2次粒子であっても互いに結合した多孔体が得られるうえに、連続気孔が多数存在し、後の焼成工程で原料粉に含まれる揮発分を内部に蓄積することなく除去することができる。 さらに、多孔質材料を得るために、加圧することなく熱で融着させて所定のフッ素電解装置用炭素電極の形状を得ているので、加圧による寸法変化がなく、型の形状がそのまま成形体の形状となる。このため、焼成後に寸法精度の高いフッ素電解装置用炭素電極を得ることができる。 ・・・ 【0027】 前記成形工程では、10分以上加熱する。 【0028】 成形工程で10分以上加熱することにより、ピッチの融着を促進し、確実に2次粒子を互いに結合することができる。また成形工程では、型を伝搬して熱源から直接原料粉に加熱することができるので、ピッチの縮合による高分子量化よりも早く融着でき、強固に結合することができる。 ・・・ 【発明の効果】 【0033】 本発明のフッ素電解装置用炭素電極によれば、多孔質炭素系材料が構成する2次粒子が独立することなく互いに結合しているので、電極の内部から脱落した粒子や微粉末が、電極の外部に出てくることが抑制される。このため、汚染の少ないフッ素電解装置用炭素電極を提供することができる。」 エ 「【0039】 図1は、本発明の実施の形態であるフッ素電解装置用炭素電極用の炭素質の多孔質炭素系材料の製造工程を示す。 【0040】 図1に示すように、本発明の実施の形態の炭素質の多孔質炭素系材料は、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混錬し、原料粉を得る原料工程と、原料粉を成形型に入れ、軟化点よりも高い温度に加熱し所定の形状の成形体を得る成形工程と、成形体を焼成する焼成工程と、を経て製造される。 【0041】 (原料工程) 本実施の形態の混錬工程では、図2(a)に示すように、炭素系粒子と、軟化点が70~200℃のピッチとを混錬し、図2(b)に示す原料粉を得る。なお、原料粉は炭素系粒子がバインダにより互いに結合した粒子の集合体であり、焼成工程あるいは黒鉛化工程を経て得られる2次粒子に対応する。炭素系粒子は特に限定されないが、例えばピッチコークス、黒鉛、ガラス状カーボンなど粉砕した炭素系粒子を利用することができる。中でもピッチコークスは、ピッチとの馴染みがよく強固な結合が得られ、本発明の炭素系粒子として好適に利用することができる。 ・・・ 【0044】 本実施の形態で用いるピッチは、軟化点が70~200℃である。炭素系粒子と、軟化点が70℃以上のピッチを混錬して原料粉を得ることにより、原料粉が室温では付着しあうことを抑制し、室温で所定の粒子径となるように、原料粉の粒度調整をすることができる。軟化点は、90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。 また、炭素系粒子と、軟化点が200℃以下のピッチを混錬して原料粉を得ることにより、混錬するために原料粉を高温に曝す必要がなく、混錬時ピッチを溶融する段階で縮合反応が進行することを抑制し、軟化点の上昇を防止することができる。軟化点は、180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。 【0045】 本実施の形態では、混錬の温度は、150~300℃でかつピッチの軟化点より高い温度で行うことが好ましい。混錬の温度を150℃以上でかつピッチの軟化点より高い温度とすることによりピッチを十分に溶融させ、炭素系粒子同士を結合させることができる。混錬の温度は、180℃以上がより好ましい。 混錬の温度を300℃以下とすることにより、ピッチの重縮合を防止し、原料粉の成形性を確保することができる。混錬の温度は、280℃以下がより好ましい。 【0046】 また、フッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料を得るために、主に熱による融着作用が中心となっており、ほとんど加圧されていないので、広い粒度分布の2次粒子であっても互いに結合した多孔体が得られるうえに、連続気孔ができやすく、後の焼成工程で原料粉に含まれる揮発分を内部に蓄積することなく除去することができる。 【0047】 本実施の形態では、ピッチを溶融させながら一様に混合した段階で混錬を終了することが好ましく、具体的には混錬の時間は30分以下であることが好ましい。混錬の時間が30分以下であると、ピッチの重縮合を抑制し、原料粉の付着性の低下を防止することができる。混錬の時間は、20分以下がより好ましく、10分以下がさらに好ましい。 【0048】 (粒度調整) 原料工程で得られた原料粉(図2(b))は、必要に応じて粒度調整を行うことが好ましい。粒度調整を行うことにより所定の気孔率、粒度分布のフッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料を得ることができる。粒度調整の方法は、分級、粉砕などの手法を利用できる。粉砕で粒度調整する場合、炭素系粒子をピッチで固めた原料粉を粉砕するので、炭素系粒子がピッチで絡められた付着力のある2次粒子が多く得られる一方、中には炭素系粒子を破壊したり、バインダであるピッチが剥がれた原料粉など、付着力のない原料粒子も同時に得られる。本発明のフッ素電解装置用炭素電極の製造方法では、主に熱による融着作用で成形しているので、このような付着力のない原料粉であっても独立することなく互いに結合することができる。 【0049】 本実施の形態で用いる原料粉の平均粒子径は、50~1500μmであることが好ましい。原料粉の平均粒子径が50μm以上であると、十分な大きさの気孔が得られ、様々な用途で利用しやすいフッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料を得ることができる。原料粉の平均粒子径は、80μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。 原料粉の平均粒子径が1500μm以下であると、成形型に入れ成形したとき、表面にできる凹凸の大きさを小さくすることができ、表面の平滑なフッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料を得ることができる。原料粉の平均粒子径は1200μm以下がより好ましく、1000μm以下がさらに好ましい。 【0050】 (成形工程) 本実施の形態の成形工程では、得られた原料粉(図2(b))を成形型に入れ(図2(c))、ピッチの軟化点よりも高い温度に加熱し、図2(d)に示す所定の形状の成形体を得る。図2(d)に示すように、本実施の形態では、ピッチの軟化点よりも高い温度に加熱した状態で保持しているので、小さな原料粉や、バインダの剥がれた原料粉であっても遊離することなく互いに結合しあい、一体化している。 【0051】 本実施の形態では、原料粉に熱を加えているので、付着力のない原料粉であっても2次粒子に取り込まれ一体化することができ、独立し遊離した炭素系粒子の発生を抑制することができる。 【0052】 本実施の形態の成形工程において、望ましい加熱時間は10分以上である。成形工程では熱の作用で成形しているので、加熱時間を長くすることにより原料粉をより軟化させ、強固に融着させることができる。加熱時間は、20分以上がより好ましく、40分以上がさらに好ましい。 【0053】 本実施の形態の成形工程は、成形工程として別に準備することは必須ではなく、後の焼成工程の初期段階を成形工程とすることができる。図12に示すように例えば、強固な容器に原料粉を入れ、蓋をしたのちパッキング材に埋めて焼成してもよい。図12(a)では、可燃性の容器に原料粉を充填され、図12(b)では、パッキング材の充填された焼成容器に上記の容器が埋められ、図12(c)では、温度を上昇させ、原料粉が溶融し成形されるとともに焼成され焼成体が得られている。容器は、発生する生成ガスが蓄積しないよう通気性を有していることが好ましいが、加熱されることにより通気性になる素材であってもよい。焼成の初期段階で原料粉が互いに融着し、所定の形状に成形される。さらに温度を上げると、発生する生成ガスが通気性の容器を通り抜け、外部に排出されるとともに温度の上昇とともに成形体は熱収縮していく。また、容器は可燃性であることが好ましい。容器が可燃性であると焼成の過程で容器が炭化し原型をとどめなくなる。パッキング材に埋まっているので成形体の収縮に伴ってパッキング材が追随し、変形を防止することができる。通気性を有し、可燃性の容器としては、通気性を確保するために多数の穴を穿孔した厚紙などが利用できる。 【0054】 また、本実施の形態の成形工程では、融着が起こる温度域であるならば、熱だけでなく、圧力を併用して成形してもよい。圧力を加えることによって、成形型の形状を転写し、寸法精度の高いフッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料を得ることができる。 【0055】 以下、本発明の特徴を明確にするため、従来の多孔質炭素系材料、従来の緻密な等方性炭素系材料(等方性黒鉛材料)について、特に成形工程を中心に説明する。 【0056】 従来の多孔質炭素系材料においては、図3(a)に示す炭素系粒子とピッチとを混錬し、図3(b)に示す原料粉を得る。そして、図3(c)及び(d)に示す成形工程、図3(e)に示す焼成工程を行う。図3(c)は成形前の段階、図3(d)は成形後の段階を示す。従来の方法においては、図3(c)及び(d)に示す成形工程は、ピッチを溶融させることなく主に圧力の作用によって行われている。このため圧力が加わった粒子の接点では強く結合するのに対し、圧力が加わらなかった粒子の接点では強く結合することができない。多孔質炭素系材料の製造においては、粗い原料粉を使用するので、型に充填した段階で大きな空隙が形成され、大きな空隙に入り込んだ原料粉に十分に圧力が加わりにくい。このため他の粒子と一体化することができず遊離した2次粒子となって、素材の強度に寄与せず、パーティクルを生成させるだけの異物となる。 【0057】 また、従来の等方性黒鉛材料においては、図4(a)に示す炭素系粒子とピッチとを混錬し、図4(b)に示すように塊状の混錬物が得られる。混錬物を微粉砕して図4(c)に示す原料粉を得る。その後、図4(d)及び(e)に示すように、原料粉を高い圧力で成形して成形体を得た後、図4(f)に示す焼成工程、必要に応じて黒鉛化することによって、等方性黒鉛材料が得られる。なお、図4(d)は成形前の段階、図4(e)は成形後の段階を示す。 【0058】 従来の黒鉛質の等方性炭素系材料(等方性黒鉛材料)では、粉砕後の原料粉が細かいので成形時に大きな空隙ができにくく、圧力が均等に伝播しやすいので遊離した粒子を生じさせにくい。また、空隙自体が細かいので、遊離した状態の2次粒子があっても内部に封じ込められ、パーティクルの原因となりにくい。 【0059】 (焼成工程) 本発明に係る本実施の形態の焼成工程は、得られた成形体(図2(d))を不活性雰囲気下で加熱し、図2(e)に示す焼成体を得る。本実施の形態では、焼成体がフッ素電解装置用炭素電極の多孔質炭素系材料となる。 【0060】 焼成の温度は例えば700~2000℃であることが好ましい。焼成を700℃以上で行うことにより成形体から揮発分を十分に除去し、フッ素電解装置用炭素電極の多孔質炭素系材料として使用可能となる。焼成の温度は、800℃以上がより好ましく、900℃以上がさらに好ましい。 【0061】 また、焼成を2000℃以下で行うことにより、多孔質炭素系材料に十分な硬度を与え、例えば電解電極で使用可能な多孔質炭素系材料を得ることができる。焼成の温度は、1800℃以下がより好ましく、1500℃以下がさらに好ましい。 【0062】 本発明に係る本実施の形態の製造方法では原料粉を成形工程で軟化させるため、原料工程の段階でピッチを十分に重縮合させていない。このため多くの揮発分を含んでいるが、そもそも成形後の段階で多孔質であるので、速やかに分解ガスを外部に拡散させ、成形体内部で揮発分が炭素化することによる高密度化、気孔の封止を防止でき、クラックを防止することができる。 【0063】 本発明に係る本実施の形態の焼成工程では、パッキング材の平均粒子径が原料粉より粗い(大きい)ことが好ましい。パッキング材の平均粒子径が原料粉より粗いと、成形体から発生したタール状の生成物が成形体内にとどまらず速やかに拡散し、多孔体の気孔の形成を促進することができる。 【0064】 以上の工程を経て得られるフッ素電解装置用炭素電極用の多孔質炭素系材料は、少なくとも材料の内部において、2次粒子が独立することなく互いに結合しており、遊離した粒子の存在が抑えられている。よって、材料の表面から粒子、微粒末が漏れ出てくることを抑制することができる。 【0065】 本実施の形態では、最大気孔径が50~1000μmであることが好ましい。最大気孔径が50μm以上であると、気孔内部に溶融塩が浸透しやすく、電解に関与する表面積を大きくすることができる。最大気孔径は、80μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。 最大気孔径が、1000μm以下であると、表面積の低下が抑えられ、電解に関与する表面積を大きくすることができる。最大気孔径は、800μm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。 なお、最大気孔径は水銀圧入法によって測定することができる。」 オ 「【0079】 (実施例) 炭素系粒子として平均粒子径300μmのアモルファス系のピッチコークス100重量部、バインダとして軟化点150℃のピッチ25重量部を原材料に用い、連続式ニーダーで混錬した。なお、連続式ニーダーの温度は250℃となるように設定した。連続式ニーダーに投入されたピッチは速やかに溶融し炭素系粒子と混合され、混錬物が得られた。なお、連続式ニーダーの混錬時間は1分であり、ピッチはほとんど重縮合を進行させなかった。 【0080】 次に得られた混錬物を粗粉砕し、2mmの篩を通し、粒度調整を行った。得られた原料粉の平均粒子径は900μmであった。 【0081】 得られた原料粉を開口が600×300mm、深さ80mmの金属製の型に充填し、金属製の蓋を被せ、周囲を200℃に加熱し、120分間保持したのち、ゆっくりと蓋を押し全体の形状を整えた。このときの加圧圧力は蓋の自重のみであり、2kPaであった。 【0082】 冷却後、型から取り出し、焼成缶に詰め、平均粒子径5mmのパッキングコークスに埋め900℃で焼成し焼成体を得た。 次に焼成体の一部を面加工し、取付部を形成するとともに残部を浸漬部とする加工工程をさらに含む、フッ素電解装置用炭素電極を製造した。 【0083】 (比較例1) 成形工程を100℃、面圧15MPaで型押し成形した以外は実施例と同様に多孔質炭素系材料を製造したのち、実施例1と同様に加工しフッ素電解装置用炭素電極を得た。 【0084】 (比較例2) 炭素系粒子として平均粒子径15μmのアモルファス系ピッチコークス100重量部に対し、バインダとしてピッチ60重量部を加え、200分混錬した。なお、混錬の過程でピッチは重縮合し軟化点は200℃以上に上昇していた。なお、本比較例では、原料工程では、粉状の原料粉が得られず、塊状の固い混錬物が得られ、そのままでは成形工程の原料粉として使用できなかった。 【0085】 得られた混錬物を粉砕し、平均粒子径25μmの原料粉を得た。原料粉をゴムバッグに充填し、100MPaの成形圧でCIP成形した。得られた成形体を900℃で焼成し緻密な炭素質材料を得たのち、実施例1と同様に加工しフッ素電解装置用炭素電極を得た。 【0086】 表1は、得られた実施例及び比較例の炭素質材料の物性値を示す。図8は実施例及び比較例の気孔分布を示す。実施例は、比較例1および比較例2に対し、気孔率には大差はないが、大きな平均気孔径を示している。また、実施例は、比較例1に比べて高い曲げ強度を示している。 【0087】 【表1】 [図:0001434201000010.jpg] 【0088】 図9は、実施例で得られた多孔質炭素系材料の断面の偏光顕微鏡写真を示す。実施例の組織は、成形時に熱で互いに融着し角が丸まり、遊離した2次粒子の存在は見られなかった。また、水を用いて超音波洗浄しても、気孔からパーティクルが発生することはなかった。すなわち、2次粒子が独立することなく互いに結合していることが理解される。 【0089】 図10は、比較例1で得られた多孔質炭素系材料の断面の偏光顕微鏡写真を示す。比較例1で得られた多孔質炭素系材料では、パーティクルの原因となる細かな2次粒子が気孔の内部に残留していた(遊離した2次粒子)。さらに実施例と同様に水を用いて超音波洗浄したとき、気孔からパーティクルの発生が確認された。 【0090】 図11は、比較例2で得られた炭素系材料の断面の偏光顕微鏡写真を示す。比較例2で得られた緻密な炭素系材料では、そもそも大きな気孔の存在がなく、パーティクルの原因となる遊離した2次粒子の存在は確認できなかった。遊離した2次粒子が存在したとしても細かな気孔の内部に封じ込められ、外部に流出しにくくなっていると考えられる。 なお、実施例と同様に水を用いて超音波洗浄したとき、気孔からパーティクルの発生が確認された。強い洗浄力で気孔内部のパーティクルが外にたたき出されたと推定される。」 カ 「【図1】 [図:0001434201000011.jpg] 」 キ 「【図2】 [図:0001434201000012.jpg] 」 ク 「【図3】 [図:0001434201000013.jpg] 」 (3) 明確性要件の判断 ア 始めに、前記第3の2(1)の特許異議申立理由から検討すると、技術常識からみて、「2次粒子」は、「1次粒子」が凝集、結合した粒子をいうものである。 そして、本件特許明細書の段落【0041】の記載によれば、本件発明1における「2次粒子」は、「炭素系粒子」とピッチとを混錬して得られる原料分が対応するものであるから、「炭素系粒子」がピッチ、すなわち「炭素質バインダ」により凝集、結合した粒子をいうものと解するのが妥当である。 そして、本件特許明細書の段落【0041】、【0048】、【00561】、【0056】、【0058】及び【図3】(前記(2)エ、ク)に記載された原料粉は、前記「2次粒子」のうち、成形前の粒子をいうものと理解することができる。 してみれば、当業者は、本件発明1における「2次粒子」の意味を理解することができるから、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は明確性要件に適合するというべきである。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する本件特許請求の範囲の請求項2~3について検討しても事情は同じである。 イ 次に、前記第3の2(2)の特許異議申立理由について検討する。 (ア) 本件特許明細書の段落【0088】及び【0090】の記載(前記(2)オ)によれば、偏光顕微鏡写真の観察によれば、実施例の組織は、成形時に熱で互いに融着し角が丸まり、遊離した「2次粒子」の存在は見られなかったものであり、水を用いて超音波洗浄しても、気孔からパーティクルが発生することはなかったことから、「2次粒子」が独立することなく互いに結合していることが理解されるものである。 これに対して、偏光顕微鏡写真の観察によれば、比較例2で得られた緻密な炭素系材料の組織は、そもそも大きな気孔の存在がなく、パーティクルの原因となる遊離した「2次粒子」の存在は確認できなかったのであるが、実施例と同様に水を用いて超音波洗浄したとき、気孔からパーティクルの発生が確認されたものであり、強い洗浄力で気孔内部のパーティクルが外にたたき出されたと推定されるものである。 (イ) 前記(ア)によれば、実施例及び比較例2は、ともに、偏光顕微鏡写真の観察では遊離した「2次粒子」の存在は確認できなかったのであるが、更に水を用いて超音波洗浄することにより、実施例では遊離した「2次粒子」が存在しないことを確認でき、比較例2では遊離した「2次粒子」が存在することを確認できたものである。 してみれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、偏光顕微鏡写真の観察に加えて、水を用いた超音波洗浄を行うことにより、遊離した「2次粒子」が存在するか否か、すなわち「多孔質炭素系材料」が発明特定事項Cを有するか否かを確認するものであることを理解できるし、その場合、その確認方法によって結果が異なるものともいえないから、発明特定事項Cを有するか否かを確認する方法が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は明確性要件に適合するというべきである。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する本件特許請求の範囲の請求項2~3について検討しても事情は同じである。 (4) 小括 したがって、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号所定の規定を満たすから、前記第3の2の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 3 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について (1) サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点により検討する。 (2) サポート要件の判断 ア 前記2(2)アの記載によれば、本件発明は、「フッ素電解装置用炭素電極」に関するものであって(段落【0001】)、従来、フッ素ガスは、フッ酸を含む溶融塩を電解することによって得られ、この反応では陽極に炭素電極が広く用いられており、陽極材に炭素を用いてフッ素の電解製造を行う場合、陽極材は多孔質のものが用いられ、例えば、密度が1.0~1.3g/cm3であるものが望ましいとされているのであるが、このような低密度の炭素材料においては、炭素粒子の結合が弱く消耗が進むにつれて内部の粒子が脱落しやすくなるものである(段落【0002】~【0005】)。 そこで、本件発明は、前記課題に鑑み、低密度であっても粒子が脱落しにくい「フッ素電解装置用炭素電極」を提供することを目的とするものである(段落【0006】)。 イ そして、前記2(2)イの記載によれば、本件発明に係る「フッ素電解装置用炭素電極」は、「多孔質炭素系材料」を含む「フッ素電解装置用炭素電極」であって、前記「多孔質炭素系材料」は、「炭素系粒子」と、前記「炭素系粒子」を互いに結合する「炭素質バインダ」とが「2次粒子」を構成し、前記「2次粒子」は、独立することなく互いに結合しているものであり、「多孔質炭素系材料」が構成する「2次粒子」が独立することなく互いに結合しあっているので、内部から脱落した粒子や微粉末が材料の外部に出てくることを抑制することができ、このため、汚染の少ない「フッ素電解装置用炭素電極」を提供することができるものである(段落【0007】~【0008】)。 ウ 前記ア~イによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明は、陽極材に炭素を用いてフッ素の電解製造を行う場合、陽極材は、密度が1.0~1.3g/cm3である多孔質のものが用いられるのであるが、このような低密度の炭素材料においては、炭素粒子の結合が弱く、消耗が進むにつれて内部の粒子が脱落しやすくなる、という課題(以下、「本件課題」という。)を解決するものであって、低密度であっても粒子が脱落しにくい「フッ素電解装置用炭素電極」を提供することを目的とするものであり、「多孔質炭素系材料」を含む「フッ素電解装置用炭素電極」の前記「多孔質炭素系材料」を、「炭素系粒子」と、前記「炭素系粒子」を互いに結合する「炭素質バインダ」とが「2次粒子」を構成し、前記「2次粒子」を、独立することなく互いに結合しているものとすることで、「多孔質炭素系材料」が構成する「2次粒子」が独立することなく互いに結合しあって、内部から脱落した粒子や微粉末が材料の外部に出てくることを抑制することができ、このため、汚染の少ないフッ素電解装置用炭素電極を提供することができ、本件課題を解決できることを理解することができる。 そして、「多孔質炭素系材料」を含む「フッ素電解装置用炭素電極」の前記「多孔質炭素系材料」を、「炭素系粒子」と、前記「炭素系粒子」を互いに結合する「炭素質バインダ」とが「2次粒子」を構成し、前記「2次粒子」を、独立することなく互いに結合しているものとすることは、本件発明1の「多孔質炭素系材料を含むフッ素電解装置用炭素電極であって、前記多孔質炭素系材料は、炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成し、前記2次粒子は、独立することなく互いに結合しており」、との発明特定事項にほかならないから、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1の発明特定事項により、本件課題を解決できることを理解することができるのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合するというべきである。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する特許請求の範囲の請求項2~3について検討しても事情は同じである。 (3) 申立人の主張について ア 始めに、申立人の前記第3の3(1)の主張について検討すると、前記主張は、比較例1の焼成の初期段階は本件製造方法の成形工程に相当し、その場合、多孔質炭素系材料が発明特定事項Cを有していることが推認できるが、それにもかかわらず、本件課題を解決できないことから、本件特許請求の範囲の記載は本件課題を解決しないものを包含するので、サポート要件を満たさないことをいうものといえる。 ところが、本件特許明細書の段落【0089】の記載(前記2(2)エ)によれば、比較例1で得られた多孔質炭素系材料では、パーティクルの原因となる細かな2次粒子が気孔の内部に残留していた(遊離した2次粒子)のであり、更に実施例と同様に水を用いて超音波洗浄したとき、気孔からパーティクルの発生が確認されたのであるから、そもそも発明特定事項Cを有していることが推認できるものではない。 そうすると、本件特許請求の範囲は、発明特定事項Cを有しない比較例1で得られた多孔質炭素系材料を含むものではないから、本件課題を解決しないものを包含するものではない。 そして、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合することは、前記(2)ウに記載したとおりであるから、前記第3の3(1)の主張は採用できない。 イ 次に、申立人の前記第3の3(2)の主張について検討すると、本件課題は、低密度の炭素材料においては、炭素粒子の結合が弱く、消耗が進むにつれて内部の粒子が脱落しやすくなる、というものであり、「フッ素電界装置用炭素電極」において、低密度の炭素材料を使用することを前提としたものといえる。 そして、本件発明1における「かさ密度が1.0~1.5g/cm3」である、との発明特定事項は、「フッ素電界装置用炭素電極」において低密度の炭素材料を使用することを特定したものといえるから、本件課題の前提を特定したものといえるので、本件課題の解決に寄与しないものとはいえない。 更に、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1の「多孔質炭素系材料を含むフッ素電解装置用炭素電極であって、前記多孔質炭素系材料は、炭素系粒子と、前記炭素系粒子を互いに結合する炭素質バインダとが2次粒子を構成し、前記2次粒子は、独立することなく互いに結合しており」、との発明特定事項により本件課題を解決できることを理解することができることは、前記(2)ウに記載したとおりである。 また、本件特許明細書の段落【0015】の記載(前記2(2)イ)の記載によれば、当業者は、「かさ密度」が「1.0g/cm3以上」であると、「フッ素電解装置用炭素電極」として十分な強度が得られ、「かさ密度」が「1.5g/cm3以下」であると、内部に十分な量の気孔を確保することができ、電極表面だけでなく気孔内部でも電解を生じさせ、効率よくフッ素を製造することができることを理解することができるから、本件発明1における「かさ密度」の技術的意義を理解することができる。 そうすると、本件特許明細書の実施例において、「かさ密度」が記載されておらず、本件特許明細書には、「かさ密度」が「1.0~1.5g/cm3」の範囲である場合に本件特許明細書の段落【0015】(前記2(2)イ)に記載された効果を奏する理由が記載されておらず、そうすることの臨界的意義も記載されていないとしても、また、本件特許明細書に、「かさ密度」を「1.0~1.5g/cm3」の範囲とすることと本件発明の課題の関係も記載されておらず、「かさ密度」を「1.0~1.5g/cm3」の範囲とすることが本件発明の課題の解決に寄与することを裏付ける記載もないとしても、本件発明1は、前記発明特定事項により本件課題を解決できることに変わりはないし、「かさ密度」を「1.0~1.5g/cm3」の範囲とすることに格別な意義はないともいえないから、本件特許請求の範囲の請求項1の記載がサポート要件を満たさないということはできない。 更に、本件特許請求の範囲の請求項2~3について検討しても事情は同じであるから、前記第3の3(2)の主張も採用できない。 ウ 最後に、申立人の前記第3の3(3)の主張について検討すると、本件特許明細書の段落【0013】の記載(前記2(2)イ)によれば、当業者は、「フッ素電解装置用炭素電極」の「最大気孔径」が「50μm以上」であると、気孔内部に溶融塩が浸透しやすくなって、電解に関与する表面積を大きくでき、また、前記「最大気孔径」が「1000μm以下」であると、「フッ素電解装置用炭素電極」の表面積が大きくなり、電解に関与する表面積を大きくできることを理解することができるから、本件特許明細書の実施例において、「フッ素電解装置用炭素電極」の「最大気孔径」が206μmの一点のみであり、比較例1の「フッ素電解装置用炭素電極」の「最大気孔径」が本件発明3において特定された範囲である255μmであり、実施例の「フッ素電解装置用炭素電極」が前記効果を奏することは記載されておらず、更に、最大気孔径」が「50~1000μm」の範囲であることによって本件特許明細書の段落【0013】(前記2(2)イ)に記載された効果を奏する理由も記載されておらず、そうすることの臨界的意義も記載されていないとしても、当業者は、「フッ素電解装置用炭素電極」の「最大気孔径」を、前記実施例に記載された206μmから、本件発明3の発明特定事項である「50~1000μm」の範囲に拡張ないし一般化できるといえる。 したがって、本件特許請求の範囲の請求項3の記載がサポート要件を満たさないということはできないから、前記第3の3(3)の主張も採用できない。 (4) 小括 よって、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号所定の規定に適合するから、前記第3の3の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 4 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について (1) 申立人の主張について ア 申立人の前記第3の4の主張について検討すると、前記主張は、本件特許明細書の比較例1の多孔質炭素系材料は、その製造工程からみれば、発明特定事項Cを有していると推認できる一方、本件特許明細書の段落【0089】の記載(前記2(2)オ)によれば、発明特定事項Cを有しないとも考えられるから、当業者は、発明特定事項Cを有する「多孔質炭素系材料」を製造する方法を理解することができないことをいうものといえる。 イ そこで、検討すると、本件特許明細書の段落【0053】の記載(前記2(2)エ)によれば、本件製造方法における成形工程は、成形工程として別に準備することは必須ではなく、後の焼成工程の初期段階を成形工程とすることができるものであり、焼成の初期段階で原料粉が互いに融着し、所定の形状に成形され、更に温度を上げると、発生する生成ガスが通気性の容器を通り抜け、外部に排出されるとともに温度の上昇とともに成形体は熱収縮していくものである。 そうすると、本件製造方法において成形工程を成形工程として別に準備しない場合、焼成工程は、焼成の初期段階で原料粉が互いに融着する程度の温度で実施され、所定の形状が形成された後に、更に温度を上げて焼成が行われるものといえる。 ウ これに対して、本件特許明細書の段落【0083】の記載(前記2(2)オ)によれば、比較例1は、成形工程を100℃、面圧15MPaで型押し成形した以外は実施例と同様に多孔質炭素系材料を製造したものであって、100℃、面圧15MPaで型押し成形する成形工程を有するから、そもそも、成形工程を成形工程として別に準備しない場合に該当しない。 そして、本件特許明細書の段落【0079】の記載(前記2(2)オ)によれば、実施例は、バインダとして軟化点150℃のピッチ25重量部を原材料に用いたものであって、前記段落【0083】の記載によれば、比較例1においても同様であるから、100℃、面圧15MPaで型押し成形した成形工程は、ピッチの軟化点よりも高い温度で成形を行うものではない。 また、本件特許明細書の段落【0082】の記載(前記2(2)オ)によれば、実施例における焼成工程は、冷却後、型から取り出し、焼成缶に詰め、平均粒子径5mmのパッキングコークスに埋め900℃で焼成し焼成体を得たものであり、焼成の初期段階で原料粉が互いに融着する程度の温度で実施され、所定の形状が形成された後に、更に温度を上げて焼成が行われたものとはいえない。 そして、比較例1の焼成工程も実施例と同様の工程であるから、焼成の初期段階で原料粉が互いに融着する程度の温度で実施され、所定の形状が形成された後に、更に温度を上げて焼成が行われたものとはいえないので、焼成工程の初期段階を成形工程としたものともいえない。 そうすると、比較例1は、ピッチの軟化点よりも高い温度で10分以上加熱する、という成形工程を有しないから、その製造方法が本件製造方法とは合致しないので、その製造方法からみても、発明特定事項Cを有しないものである。 エ そして、本件特許明細書の前記2(2)エ~オの記載からみれば、当業者は、発明特定事項Cを有する「多孔質炭素系材料」を製造する方法を理解することができるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合するというべきであるので、申立人の前記第3の4の主張は採用できない。 (4) 小括 したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号所定の規定に適合するから、前記第3の4の特許異議申立理由は理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、申立人の特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2025-701142

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決97件(イビデン株式会社、金田 綾香)
  • 2025-701141異議申立 / 2026-04-27 / 維持多孔質炭素系材料
    同じ当事者: イビデン株式会社、金田 綾香
  • 2026-700190異議申立 / 2026-09-18
    同じ当事者: 金田 綾香
  • 2026-700310異議申立 / 2026-06-29 / 維持磁性粉末、圧粉磁心及び圧粉磁心のリサイクル方法
    同じ当事者: 金田 綾香
  • 2025-701018異議申立 / 2026-05-29 / 訂正認容窒化ケイ素焼結体、回路基板、および窒化ケイ素焼結体の製造方法
    同じ当事者: 金田 綾香
  • 2026-700137異議申立 / 2026-05-12 / 維持情報処理方法、情報処理システム及びプログラム
    同じ当事者: 金田 綾香
同じ論点・分野の審決(審決分類)447件(113・C04B、121・C04B、536・C04B ほか)
  • 2025-701018異議申立 / 2026-05-29 / 訂正認容窒化ケイ素焼結体、回路基板、および窒化ケイ素焼結体の製造方法
    共通の審決分類: 113・C04B、121・C04B、536・C04B、537・C04B
  • 2025-701141異議申立 / 2026-04-27 / 維持多孔質炭素系材料
    共通の審決分類: 113・C04B、121・C04B、536・C04B、537・C04B
  • 2025-700643異議申立 / 2026-02-25 / 訂正認容接合体
    共通の審決分類: 113・C04B、121・C04B、536・C04B、537・C04B
  • 2025-701100異議申立 / 2026-02-13 / 維持窒化ケイ素焼結体、および、窒化ケイ素焼結体の製造方法
    共通の審決分類: 113・C04B、121・C04B、536・C04B、537・C04B
  • 2024-700993異議申立 / 2026-01-07 / 訂正認容セメント組成物、モルタル組成物、及び、コンクリート構造物の補修方法
    共通の審決分類: 113・C04B、121・C04B、536・C04B、537・C04B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存