特許拒絶査定不服審判
2017-016595
移動通信システム、プロセッサ及びユーザ端末
- 審判番号
- 2017-016595
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-075745外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年11月08日
- 審決日
- 2019年01月22日
- 公報発行日
- 2019年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】京セラ株式会社
- 【請求人代理人】キュリーズ特許業務法人
- 分類
- P18 .121-WZ (H04W)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017- 75745「移動通信システム、プロセッサ及びユーザ端末」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月17日出願公開、特開2017-143565〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年7月29日に出願された特願2013-156433号の一部を、平成29年4月6日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成29年4月27日 :手続補正書の提出
平成29年5月8日付け :拒絶理由通知書
平成29年7月13日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年8月3日付け :拒絶査定
平成29年11月8日 :拒絶査定不服審判の請求
平成30年9月18日付け:拒絶理由通知書(当審)
平成30年11月26日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成30年11月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項2に係る発明は、以下のとおりのものである。
「 ユーザ端末であって、
第1の基地局が管理する第1のセルから第2の基地局が管理する第2のセルへのハンドオーバ手続において、前記第2のセルとの接続が完了したことを示す通知を送信する際に、ランダムアクセスプリアンブル信号の送信を省略するか否かを判定するよう構成される制御部を備え、
前記制御部は、
前記第1のセルから前記第2のセルへハンドオーバを行う場合に、前記第1の基地局を介して前記第2の基地局から、リソース情報とタイミングアドバンス情報とのセットを受信し、
前記第2のセルとの接続を実行し、
前記通知を前記第2の基地局へ送信する、よう構成され、
前記リソース情報は、前記ユーザ端末が前記通知を前記第2の基地局へ送信するために用いられる無線リソースを示し、前記タイミングアドバンス情報は、前記通知の送信タイミングを調整するための情報であり、
前記制御部は、
前記タイミング情報に少なくとも基づいて、前記ランダムアクセスプリアンブル信号の送信を省略すると判定するとともに、前記通知の送信タイミングを調整し、
前記判定に応じて、前記無線リソース情報が示す無線リソースを用いて前記通知を前記第2の基地局へ送信するよう構成されるユーザ端末。」
ここで、請求項2には「前記制御部は、
前記タイミング情報に少なくとも基づいて、前記ランダムアクセスプリアンブル信号の送信を省略すると判定するとともに、前記通知の送信タイミングを調整し、」と記載されているが、この記載よりも前に「タイミング情報」の記載が無く、また、当該情報に基づいて通知の送信タイミングを調整する「前記タイミング情報」は、通知の送信タイミングを調整するための情報である「前記タイミングアドバンス情報」の誤記であることは明らかである。
したがって、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものであると認める。
「 ユーザ端末であって、
第1の基地局が管理する第1のセルから第2の基地局が管理する第2のセルへのハンドオーバ手続において、前記第2のセルとの接続が完了したことを示す通知を送信する際に、ランダムアクセスプリアンブル信号の送信を省略するか否かを判定するよう構成される制御部を備え、
前記制御部は、
前記第1のセルから前記第2のセルへハンドオーバを行う場合に、前記第1の基地局を介して前記第2の基地局から、リソース情報とタイミングアドバンス情報とのセットを受信し、
前記第2のセルとの接続を実行し、
前記通知を前記第2の基地局へ送信する、よう構成され、
前記リソース情報は、前記ユーザ端末が前記通知を前記第2の基地局へ送信するために用いられる無線リソースを示し、前記タイミングアドバンス情報は、前記通知の送信タイミングを調整するための情報であり、
前記制御部は、
前記タイミングアドバンス情報に少なくとも基づいて、前記ランダムアクセスプリアンブル信号の送信を省略すると判定するとともに、前記通知の送信タイミングを調整し、
前記判定に応じて、前記無線リソース情報が示す無線リソースを用いて前記通知を前記第2の基地局へ送信するよう構成されるユーザ端末。」
第3 拒絶の理由
平成30年9月18日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、「 4.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」であり、請求項2に対して以下の2、1が引用されている。
1.特開2011-40822号公報
2.国際公開第2010/150463号
第4 引用例の記載、引用発明、及び公知事項
1 引用例2の記載
当審拒絶理由で引用された国際公開第2010/150463号(以下「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
(1) 「[0001](省略)
背景技術
(省略)
[0009] 移動体通信においては、通信中(音声通話中やデータ通信中など)に移動局が移動した場合、移動局が通信する基地局を変更するハンドオーバー処理が行われる。LTEにおけるハンドオーバー処理について図14、図15を参照して説明する(非特許文献2)。
(省略)
[0012] 図15は、LTEにおいて、移動局200、基地局100A、100Bの処理を示すシーケンス図である。
まず、基地局100Aは、移動局200に対して、基地局100Aを含む周辺の基地局から送信される信号の受信品質や受信タイミングなどを測定するよう指示する(ステップS3001)。
移動局200は、ステップS3001の指示に基づいて、周辺の基地局から送信される信号の受信品質や、受信タイミングなどを測定する(ステップS3002)。受信品質の測定には、参照信号(RS)の受信レベルや、パスロスや、S/Nなどが用いられる。
[0013] 移動局200は、ステップS3002で測定した受信品質や受信タイミングを含む測定結果を、基地局100Aに送信する(ステップS3003)。
基地局100Aは、ステップS3003の測定結果報告に基づいて、ハンドオーバー処理を行うか否かについて決定する(ステップS3004)。例えば、基地局100Aは、基地局100Aが移動局200に送信する信号の受信品質よりも、隣接する基地局100Bが移動局200に送信する信号の受信品質が良くなった場合に、ハンドオーバー処理を行うことを決定する。
[0014] ステップS3004でハンドオーバー処理を行うと決定した場合、基地局100Aは、基地局100Bに対して、ハンドオーバー要求を送信する(ステップS3005)。
基地局100Bは、ハンドオーバーの準備を行い、準備が完了すると、基地局100Aに対して、ハンドオーバーの準備完了を通知するハンドオーバー応答を送信する(ステップS3006)。
基地局100Bからハンドオーバー応答を受信した基地局100Aは、移動局200に対して、ハンドオーバー指示を送信する(ステップS3007)。
移動局200は、基地局100Aとの通信を開放する(ステップS3008)。そして、移動局200は、基地局100Bとの同期をとるために、PRACHを、基地局100Bに送信する(ステップS3009)。
[0015] 基地局100Bは、移動局200との間で、ランダムアクセス処理を行う。ランダムアクセス処理では、基地局100Bは、移動局200に対して指示する送信タイミング変更量を算出する。具体的には、基地局100Bは、ステップS3009のランダムアクセス要求を受信し、移動局200から送信される信号の基地局100Bでの受信タイミングと、基地局100Bが期待する受信タイミングとの差を算出し、そのタイミング差から送信タイミング変更量を算出する(ステップS3010)。
基地局100Bは、算出した送信タイミング変更量を含むランダムアクセス応答を、移動局200に送信する(ステップS3011)。
そして、移動局200は、ステップS3011で受信したランダムアクセス応答に基づいて、基地局100Aへの送信タイミングと、ランダムアクセス応答に含まれる送信タイミング変更量とを元に、基地局100Bへの送信タイミングを算出する。そして、移動局200は、基地局100Bと無線接続し、基地局100Bとの通信を開始する(ステップS3012)。
そして、移動局200は、基地局100Bに対して、ハンドオーバー完了通知を送信する(ステップS3013)。
[0016] 次に、図16のように、複数の基地局が、1つの移動局に対して同時にデータを送信する下りCoMPの場合について説明する。
図16の状態1は、CoMPにおいて、基地局101A、101Bと、ハンドオーバー前の移動局201との間で送受信される信号を示している。
図16の状態1では、基地局101Aは、PDSCH、PCFICH、PDCCH、PHICH、RSの各信号やチャネルを、下り回線を用いて、移動局201に送信する。
また、図16の状態1では、移動局201は、PUSCH、PUCCH、RSの各信号やチャネルを、上り回線を用いて、基地局101Aに送信する。
また、図16の状態1では、基地局101Bは、PDSCH、RSの各信号やチャネルを、下り回線を用いて、移動局200に送信する。なお、基地局101Bは、PCFICH、PDCCHを、必要に応じて、移動局201に送信する。
[0017] 図16の状態2は、CoMPにおいて、基地局101A、101Bと、ハンドオーバー後の移動局201との間で送受信される信号を示している。
図16の状態2では、基地局101Aは、PDSCH、RSの各信号やチャネルを、下り回線を用いて、移動局201に送信する。また、基地局101Aは、PCFICH、PDCCHを、必要に応じて、移動局201に送信する。
また、図16の状態2では、基地局101Bは、PDSCH、PCFICH、PDCCH、PHICH、RSの各信号やチャネルを、下り回線を用いて、移動局201に送信する。
また、図16の状態2では、移動局201は、PUSCH、PUCCH、RSの各信号やチャネルを、上り回線を用いて、基地局101Bに送信する。
[0018] 図16の状態1では、上りリンクのデータは、基地局101Aが移動局201から受信する。移動局201が移動することにより、例えば、基地局101Aへの上りリンクの品質より、基地局101Bへの上りリンクの品質の方が良いと判定された場合、ハンドオーバー処理を行う。ハンドオーバー処理では、移動局201から送信される上りリンクのデータを受信する基地局であって、下りリンクの制御チャネル(PCFICH、PDCCH、PHICH)を移動局201に送信する基地局を、基地局101Aから基地局101Bに変更する。
一方、下りリンクのデータは、ハンドオーバー処理の前後で変更はない。つまり、移動局201は、基地局101Aと基地局101Bの両方から、下りリンクのデータを受信する。この状態で、LTEでのハンドオーバー処理を行うと、ランダムアクセス処理を行うために、移動局201は、一旦通信を開放する必要がある。その際に、移動局201は、変更の必要がない下りリンクのデータについても通信を中断しなければならない。
(省略)
発明が解決しようとする課題
[0020] 本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、移動局が基地局に対して、ランダムアクセスを行う必要がなく、迅速にハンドオーバーを行うことができる通信システム、移動局、基地局及び通信方法を提供することを目的とする。」
(2) 「[0035] 図2は、本発明の第1の実施形態による移動局400の構成を示す概略ブロック図である。移動局400は、アンテナ401、無線部402、信号処理部403、品質・タイミング測定部404、制御部405を備えている。
[0036] アンテナ401は、基地局300A、300Bが送信する信号を受信し、無線部402に出力する。また、アンテナ401は、無線部402が出力する信号を、無線信号として、基地局300A、300Bに送信する。
無線部402は、アンテナ401が出力する信号に対して、ダウンコンバートを行い、信号処理部403に出力する。また、無線部402は、信号処理部403が出力する信号に対して、アップコンバートを行い、アンテナ401に出力する。
信号処理部403は、無線部402が出力する信号に対して復調の処理を行い、制御部405、品質・タイミング測定部404に出力する。また、信号処理部403は、移動局400が基地局300A、300Bに送信するデータを、制御部405から取得し、変調の処理を行い、無線部402に出力する。」
(3) 「[0044] また、上りリンクについては、DFT(Discrete Fourier Transform)-Precoded OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)の採用が検討されている。そのため、基地局側は、複数の移動局からの信号を同時に受信する必要があり、それらの信号がCP長以内に収まっている必要がある。
従って、基地局が主導で各移動局に送信タイミング変更量を指示することにより、基地局での受信のタイミングを調整する。ここでは、基地局300Aと基地局300Bの送受信のタイミングが、すべて一致している場合について説明する。
[0045] この場合、ハンドオーバー前においては、移動局400の信号の送信タイミングは、基地局300Aから指示されて決定される。その送信タイミングは、基地局300Aでの受信のタイミングに対して、基地局300Aと移動局400の間の上り伝播遅延時間TA_Uだけ時間的に前になるように、設定される。
また、ハンドオーバー後においては、移動局400の信号の送信タイミングは、基地局300Bから指示されて決定される。その送信タイミングは、基地局300Bでの受信のタイミングに対して、基地局300Bと移動局400の間の上り伝播遅延時間TB_Uだけ時間的に前になるように設定される。
[0046] 図4は、本発明の第1の実施形態による通信システムのハンドオーバーの処理を示すシーケンス図である。
始めに、基地局300Aの制御部305は、移動局400に対して、信号処理部303、無線部302、アンテナ301を介して、測定指示を送信する(ステップS6001)。この測定指示は、基地局300Aを含む周辺の基地局(基地局300Bなど)から送信される信号の受信品質や受信タイミングなどを測定することを、移動局400に指示するものである。
移動局400の制御部405は、ステップS6001で基地局300Aが送信した測定指示を、受信する。そして、移動局400の品質・タイミング測定部404は、周辺の基地局300A、300Bから送信される信号(RS)の受信品質や受信タイミングを測定する(ステップS6002)。受信品質の測定には、参照信号(RS)の受信レベルや、パスロスや、S/Nなどが用いられる。
[0047] 移動局400の制御部405は、ステップS6002で測定した受信品質や受信タイミングを含む測定結果を、信号処理部403、無線部402、アンテナ401を介して、基地局300Aに送信する(ステップS6003)。例えば、移動局400は、図3の信号5に示すように、基地局300Aと基地局300Bとから送信される信号のタイミング差(時間TD)を、基地局300Aに送信する。なお、基地局300Aと基地局300Bとから送信される信号のタイミング情報(移動局400内のカウンタの値など)を基地局300Aに送信することにより、基地局300Aにおいて、信号のタイミング差(時間TD)を算出するようにしてもよい。
基地局300Aの制御部305は、ステップS6003の測定結果報告に基づいて、ハンドオーバー処理を行うか否かについて決定する(ステップS6004)。例えば、基地局300Aの制御部305は、基地局300Aが送信する信号の移動局400での受信品質よりも、隣接する基地局300Bが送信する信号の移動局400での受信品質が良くなった場合に、ハンドオーバー処理を行うと決定する。
ここで、ハンドオーバー処理を行うか否かについて決定する際には、移動局400からの報告以外にも、通信の混雑状況など様々な要素を考慮に入れて決定しても良い。
[0048] ステップS6004でハンドオーバー処理を行うと決定した場合、基地局300Aの制御部305は、基地局300Bに対して、信号処理部303、無線部302、アンテナ301を介して、ステップS6003で移動局400から受信したタイミング情報を含むハンドオーバー要求を送信する(ステップS6005)。
CoMPを行っている場合には、様々な情報(スケジューリング情報やCQIなど)を、基地局300Aと基地局300Bとの間で定期的に情報交換する。従って、タイミング情報を、ステップS6005でハンドオーバー要求を行う時に通知するのではなく、前もって定期的に、基地局300Aから基地局300Bに通知しても良い。
[0049] 基地局300Bの送信タイミング変更量算出部304は、基地局300Aから受信したタイミング情報に基づいて、送信タイミング変更量を算出する(ステップS6006)。送信タイミング変更量は、移動局400が基地局300Aから基地局300Bにハンドオーバーを行い、基地局300Bに信号を送信する際に必要な情報である。本実施形態では、各基地局300A、300Bの送受信タイミングが同期している。そのため、図3の信号5に示すように、ハンドオーバー後の送信タイミングは、ハンドオーバー前の送信タイミングに対して、時間TUだけ時間的に前になるように変更する必要がある。時間TUは、上りリンクの伝播遅延時間TB_Uと伝播遅延時間TA_Uとの差である。
(省略)
[0051] ステップS6005でハンドオーバー要求を受信した基地局300Bの制御部305は、ハンドオーバーに関する準備が完了すると、ステップS6006で算出したタイミング情報を含むハンドオーバー応答を、信号処理部303、無線部302、アンテナ301を介して、基地局300Aに送信する(ステップS6007)。
ステップS6007でハンドオーバー応答を受信した基地局300Aの制御部305は、送信タイミング変更量を含むハンドオーバー指示を、信号処理部303、無線部302、アンテナ301を介して、移動局400に送信する(ステップS6008)。
移動局400の制御部405は、基地局300Aとの物理チャネルを開放し、指示された送信タイミング変更量に基づいて送信タイミングを変更し、基地局300Bとの物理チャネルを接続する(ステップS6009)。これにより、移動局400は、基地局300Aから基地局300Bにハンドオーバーを行う。
そして、移動局400の制御部405は、ハンドオーバー完了通知を、信号処理部403、無線部402、アンテナ401を介して、基地局300Bに送信する(ステップS6010)。」
2 引用発明
(1) 上記1(1)の段落0012~0015には、LTEにおいて、基地局Aからハンドオーバー指示を受信した移動局が、基地局BにPRACHを送信し、基地局Bから送信タイミング変更量を含むランダムアクセス応答を受信し、前記送信タイミング変更量を元に、基地局100Bへ送信タイミングを算出し、ハンドオーバー完了通知を送信するとの背景技術が記載されている。
また、上記1(1)の段落0016~0018には、移動局201が、基地局101Aと基地局101Bの両方から下りリンクのデータを受信する状態、すなわち、下りCoMPの状態で、LTEでのハンドオーバー処理を行うと、ランダムアクセス処理を行うために、移動局201は、一旦通信を開放する必要があり、その際に、移動局201は、変更の必要がない下りリンクのデータについても通信を中断しなければならないとの、前記背景技術における事情が記載されている。
そして、上記1(1)の段落0020の発明が解決しようとする課題についての記載を踏まえると、引用例2には、「下りCoMP状態で、移動局が基地局に対して、ランダムアクセスを行う必要がなく、迅速にハンドオーバーを行うことができる移動局」の発明が記載されているといえる。
(2) 上記1(2)の段落0035によると、引用例2には、移動局400が制御部405を備えていることが記載されているといえる。
(3) 上記1(2)の段落0036の記載によると、基地局300A、300Bが送信する信号は、アンテナ401、無線部402、信号処理部403を介して制御部405に受信されるといえる。
そして、上記1(3)の段落0051のステップS6007、S6008の記載によると、引用例2には、制御部405が、基地局300Aを介して基地局300Bから送信タイミング変更量を含むハンドオーバー指示を受信することが記載されているといえる。
(4) 上記1(3)段落0044~45によると、引用例2には、送信タイミング変更量が、移動局400の信号の送信タイミングを、基地局300Bでの受信のタイミングに対して、基地局300Bと移動局400の間の上り伝播遅延時間TB_Uだけ時間的に前になるように設定するためのものであることが記載されているといえる。
(5) 上記1(3)の段落0051のステップS6009、S6010の記載によると、引用例2には、制御部405は、「指示された送信タイミング変更量に基づいて送信タイミングを変更し、基地局300Bとの物理チャネルを接続し、ハンドオーバー完了通知を、基地局300Bに送信する」ことが記載されているといえる。
以上を踏まえると、引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「下りCoMP状態で、移動局が基地局に対して、ランダムアクセスを行う必要がなく、迅速にハンドオーバーを行うことができる移動局であって、
制御部を備え、
前記制御部は、
基地局300Aを介して基地局300Bから送信タイミング変更量を含むハンドオーバー指示を受信し、
前記送信タイミング変更量が、移動局の信号の送信タイミングを、基地局300Bでの受信のタイミングに対して、基地局300Bと移動局の間の上り伝播遅延時間TB_Uだけ時間的に前になるように設定するためのものであり、
指示された送信タイミング変更量に基づいて送信タイミングを変更し、基地局300Bとの物理チャネルを接続し、ハンドオーバー完了通知を基地局300Bに送信する、
移動局。」
3 引用例1の記載
当審拒絶理由で引用された特開2011-40822号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
「【0010】
ランダムアクセスチャネルの使用目的は、上りリンクにおいて移動局装置-基地局装置間を同期させること(移動局装置から基地局装置への上りリンクの送信タイミングを調整すること)を目的としている。ランダムアクセス手順には、図18に示すような競合ランダムアクセス(Contention based Random Access)と図19に示すような非競合ランダムアクセス(Non-contention based Random Access)の2つがある。Contention based Random Accessは、移動局装置間で衝突する可能性があり、通常行われるランダムアクセスである。Non-contention based Random Accessは、移動局装置間で衝突が発生しないランダムアクセスであり、迅速に移動局装置-基地局装置間の同期をとるためにハンドオーバー等の特別な場合に基地局装置から指示されて行われる(たとえば特許文献2参照)。
【0011】
移動局装置は、ランダムアクセスチャネルRACHにアクセスする場合、ランダムプリアンブルのみ送信する。ランダムアクセスプリアンブルは、プリアンブル部とCP(Cyclic prefix)部から構成される。プリアンブル部には、情報を表す信号パターンであるCAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation Zone Code)シーケンスを用い、64種類のシーケンスを用意して6ビットの情報を表現するようにしている。
(中略)
【0014】
具体的にContention based Random Access手順を説明する。まず、移動局装置が、下りリンクのパスロスやメッセージ3のサイズに基づいて、シーケンスグループを選択する。次に、選択したシーケンスグループの中から1つのCAZACシーケンスをランダムに選択し、選択したCAZACシーケンスを元にランダムアクセスプリアンブルを生成する。そして、ランダムアクセスチャネルRACHでランダムアクセスプリアンブルを送信する(メッセージ1(M1))。
【0015】
基地局装置は、移動局装置からのランダムアクセスプリアンブルを検出すると、ランダムアクセスプリアンブルから移動局装置-基地局装置間の送信タイミングずれ量を算出する。そして、L2/L3(Layer2/Layer3)メッセージを送信するためスケジューリング(上りリンクの無線リソース位置、送信フォーマット(メッセージサイズ)等の指定)を行い、Temporary C-RNTI(Cell-Radio Network Temporary Identity:移動局装置識別情報)を割り当てる。そして、下りリンク制御チャネルPDCCHにランダムアクセスチャネルRACHのランダムアクセスプリアンブルを送信した移動局装置宛の応答(ランダムアクセスレスポンス)を示すRA-RNTI(Random Access-Radio Network Temporary Identity)を配置する。そして、下りリンク共用データチャネルPDSCHに送信タイミングずれ情報、スケジューリング情報、Temporary C-RNTIおよび受信したプリアンブルのプリアンブル番号(シーケンス番号)を含んだランダムアクセスレスポンスメッセージを送信する(メッセージ2(M2))。なお、このランダムアクセスレスポンスで移動局装置に割り当てられる無線リソースは、1リソースブロック(1サブフレーム)分だけである。
【0016】
移動局装置は、下りリンク制御チャネルPDCCHにRA-RNTIがあることを検出すると、下りリンク共用データチャネルPDSCHに配置されたランダムアクセスレスポンスメッセージの中身を確認する、確認の結果、送信したランダムアクセスプリアンブルに対応するプリアンブル番号が含まれている場合、メッセージ情報を抽出し、送信タイミングずれを補正し、スケジューリングされた無線リソースと送信フォーマットでC-RNTI(またはTemporary C-RNTI)または、IMSI(International Mobile Subscriber Identity)等の移動局装置を識別する情報を含むL2/L3メッセージを送信する(メッセージ3(M3))。なお、移動局装置は、基地局装置からのランダムアクセスレスポンスメッセージを一定期間待ち続け、送信したランダムアクセスプリアンブルのプリアンブル番号を含んだランダムアクセスレスポンスメッセージを受信しない場合は、再度、ランダムアクセスプリアンブルを送信する。
(中略)
【0020】
移動局装置は、ハンドオーバーコマンドメッセージを受信するとハンドオーバーを実行するために、まず、基地局装置2の下りリンクに同期するための同期処理を行い、その後、ハンドオーバーコマンドメッセージに含まれているランダムアクセスに関する情報をもとに基地局装置2に対してランダムアクセスを行う。この時、ハンドオーバーコマンドにランダムアクセスプリアンブル番号と使用するランダムアクセスチャネル番号が含まれている場合は、非競合ランダムアクセス(Non-contention based Random Access)手順を行い、含まれていない場合は、競合ランダムアクセス(Contention based Random Access)手順を実行する。
【0021】
移動局装置は、ランダムアクセスプリアンブルを送信後、ランダムアクセスレスポンスを受信し、ランダムアクセスレスポンスに含まれている上りリンクの無線リソース割り当て情報をもとにハンドオーバー完了メッセージを基地局装置2に送信し、ハンドオーバーが完了する。なお、ハンドオーバーコマンドには、ハンドオーバーで使用するタイマーが含まれており、基地局装置2からのランダムアクセスレスポンスが受信できない場合は、タイマーが満了するまでランダムアクセスプリアンブル送信処理、ランダムアクセスレスポンス受信処理を繰り返す。タイマーが満了してもランダムアクセスレスポンスが受信できない場合、ハンドオーバーが失敗したとして、基地局装置の検索から始める。」
4 公知事項
上記3によると、「送信タイミングずれ情報、及びスケジューリング情報(上りリンクの無線リソース位置、送信フォーマット(メッセージサイズ)等の指定)を含むランダムアクセスレスポンスメッセージを受信し、ランダムアクセスレスポンスに含まれている上りリンクの無線リソース割り当て情報を元にハンドオーバー完了メッセージを送信する移動局装置。」は公知事項と認める。
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
1 引用発明の「移動局」は、本願発明の「ユーザ端末」に対応する。
2 引用発明のハンドオーバー元の「基地局300A」、及びハンドオーバー先の「基地局300B」は、本願発明のハンドオーバ手続きにおけるハンドオーバー元の基地局である「第1の基地局」、及びハンドオーバー先の基地局である「第2の基地局」にそれぞれ相当する。
また、ハンドオーバーは、ハンドオーバー元の基地局が管理するセルから、ハンドオーバー先の基地局が管理するセルへユーザ端末に対応する移動局の接続を切り替える処理であるから、引用発明の「ハンドオーバー完了通知」は、本願発明の「第1の基地局が管理する第1のセルから第2の基地局が管理する第2のセルへのハンドオーバ手続において、前記第2のセルとの接続が完了したことを示す通知」に相当する。
してみると、引用発明の「ハンドオーバー完了通知を基地局300Bに送信する」制御部と、本願発明の「前記通知を前記第2の基地局へ送信するよう構成される」制御部とは、「第1の基地局が管理する第1のセルから第2の基地局が管理する第2のセルへのハンドオーバ手続において、前記第2のセルとの接続が完了したことを示す通知を送信する際に、ランダムアクセスプリアンブル信号の送信を省略するか否かを判定するよう構成される」と特定されていないものの、いずれも「第1の基地局が管理する第1のセルから第2の基地局が管理する第2のセルへのハンドオーバ手続において、前記第2のセルとの接続が完了したことを示す通知を送信する」よう構成される制御部といえる点で共通する。
3 「指示された送信タイミング変更量に基づいて送信タイミングを変更し、基地局300Bとの物理チャネルを接続し、ハンドオーバー完了通知を基地局300Bに送信する」引用発明の、移動局の信号の送信タイミングを、基地局300Bでの受信のタイミングに対して、基地局300Bと移動局の間の上り伝播遅延時間TB_Uだけ時間的に前になるように設定するためのものである「送信タイミング変更量」は、本願発明の、「前記通知の送信タイミングを調整するための情報」である「タイミングアドバンス情報」に相当する。
また、制御部が「基地局300Aを介して基地局300Bから送信タイミング変更量を含むハンドオーバー指示を受信」する引用発明は、リソース情報をタイミングアドバンス情報とセットとして受信する点が特定されていないものの、「前記第1のセルから前記第2のセルへハンドオーバを行う場合に、前記第1の基地局を介して前記第2の基地局から、タイミングアドバンス情報を受信」するよう構成された制御部を備えるといえる点で本願発明と共通する。
4 「基地局300Bとの物理チャネルを接続し、ハンドオーバー完了通知を基地局300Bに送信する」制御部を備える引用発明は、「前記第2のセルとの接続を実行し、前記通知を前記第2の基地局へ送信する、よう構成され」た制御部を備えるといえる点で本願発明と共通する。
5 「指示された送信タイミング変更量に基づいて送信タイミングを変更し、基地局300Bとの物理チャネルを接続し、ハンドオーバー完了通知を基地局300Bに送信する」引用発明の「送信タイミング変更量」は、ハンドオーバー完了通知の送信タイミングを調整するための情報であるから、引用発明は、「前記ランダムアクセスプリアンブル信号の送信を省略すると判定する」こと、及び「前記判定に応じて、前記無線リソース情報が示す無線リソースを用いて」前記通知を前記第2の基地局へ送信することが特定されていないものの、「前記タイミングアドバンス情報に少なくとも基づいて、前記通知の送信タイミングを調整し」「前記通知を前記第2の基地局へ送信するよう構成される」制御部を備える点で本願発明と共通する。
以上を踏まえると、本願発明と引用発明とは以下の点で一致し、相違する。
「 ユーザ端末であって、
第1の基地局が管理する第1のセルから第2の基地局が管理する第2のセルへのハンドオーバ手続において、前記第2のセルとの接続が完了したことを示す通知を送信するよう構成される制御部を備え、
前記制御部は、
前記第1のセルから前記第2のセルへハンドオーバを行う場合に、前記第1の基地局を介して前記第2の基地局から、タイミングアドバンス情報を受信し、
前記第2のセルとの接続を実行し、
前記通知を前記第2の基地局へ送信する、よう構成され、
前記タイミングアドバンス情報は、前記通知の送信タイミングを調整するための情報であり、
前記制御部は、
前記タイミングアドバンス情報に少なくとも基づいて、前記通知の送信タイミングを調整し、
前記通知を前記第2の基地局へ送信するよう構成されるユーザ端末。」
相違点
(相違点1) 一致点である制御部が、本願発明では「第1の基地局が管理する第1のセルから第2の基地局が管理する第2のセルへのハンドオーバ手続において、前記第2のセルとの接続が完了したことを示す通知を送信する際に、ランダムアクセスプリアンブル信号の送信を省略するか否かを判定するよう構成され」、「前記タイミングアドバンス情報に少なくとも基づいて、前記ランダムアクセスプリアンブル信号の送信を省略すると判定」し、「前記判定に応じて、」前記通知を前記第2の基地局へ送信するよう構成されるのに対し、
引用発明では、下りCoMP状態でハンドオーバーを行う際にランダムアクセスを行わなわず、ランダムアクセスプリアンブル信号の送信を省略するものの、タイミングアドバンス情報に相当する送信タイミング変更量に基づいて、ランダムアクセスプリアンブルの送信を省略するか否かの判定し、前記判定に応じてハンドオーバー完了通知を第2基地局に相当する基地局300Bへ送信するように制御部が構成されることが特定されていない点。
(相違点2) 一致点である、制御部が「前記第1のセルから前記第2のセルへハンドオーバを行う場合に、前記第1の基地局を介して前記第2の基地局から」受信するものが、本願発明では、「前記ユーザ端末が前記通知を前記第2の基地局へ送信するために用いられる無線リソースを示」す「リソース情報」とタイミングアドバンス情報との「セット」であり、制御部が「前記無線リソース情報が示す無線リソースを用いて」前記通知を前記第2の基地局へ送信するよう構成されるのに対し、引用発明では、リソース情報を受信すること、及び、どの無線リソースを用いてハンドオーバ完了通知を送信するように構成されるのか特定されていない点。
第6 判断
1 相違点1について
「下りCoMP状態で、移動局が基地局に対して、ランダムアクセスを行う必要がなく、迅速にハンドオーバーを行うことができる移動局」である引用発明が、下りCoMP状態では、送信タイミング変更量を含むハンドオーバー指示を受信し、ランダムアクセス、すなわちランダムアクセスプリアンブルの送信を行わず省略し、「下りCoMP」以外の状態では、第4 2(1)の背景技術と同様に、送信タイミング変更量を含まないハンドオーバー指示を受信し、ランダムアクセスプリアンブルの送信を行ってランダムアクセスを行い、送信タイミング変更量を得ることは当業者にとって明らかな事項である。
してみると、移動局が受信するハンドオーバー指示に送信タイミング変更量が含まれている場合には、送信タイミング変更量を得るためのランダムアクセスプリアンブルの送信を省略することでき、送信タイミング変更量が含まれていない場合には、送信タイミング変更量を得るためにランダムアクセスプリアンブルを送信する必要があるとの関連性から、引用発明のハンドオーバー指示に、タイミングアドバンス情報に相当する送信タイミング変更量が含まれているか、否かに基づいて、ランダムアクセスプリアンブルの送信を省略すると判定し、判定に基づいてハンドオーバ完了通知を基地局300Bに送信することは、当業者が容易に想到し得る事項といえる、
そして、当該事項は、送信タイミング変更量に相当する「前記タイミングアドバンス情報に少なくとも基づいて、前記ランダムアクセスプリアンブル信号の送信を省略すると判定する」との事項に含まれる。
したがって、引用発明の制御部を「第1の基地局が管理する第1のセルから第2の基地局が管理する第2のセルへのハンドオーバ手続において、前記第2のセルとの接続が完了したことを示す通知を送信する際に、ランダムアクセスプリアンブル信号の送信を省略するか否かを判定するよう構成」し、「前記タイミングアドバンス情報に少なくとも基づいて、前記ランダムアクセスプリアンブル信号の送信を省略すると判定」し、「前記判定に応じて、」前記通知を前記第2の基地局へ送信するよう構成することは、当業者が容易に想到し得る事項といえる。
2 相違点2について
上記第4 4によると、送信タイミング変更量といえる送信タイミングずれ情報、及び、リソース情報といえるスケジューリング情報(上りリンクの無線リソース位置、送信フォーマット(メッセージサイズ)等の指定)をセットとして含むランダムアクセスレスポンスメッセージを受信し、ランダムアクセスレスポンスに含まれている上りリンクの無線リソース割り当て情報を元にハンドオーバー完了通知といえるハンドオーバー完了メッセージを送信する移動局装置は公知事項である。
そして、下りCoMP状態で、ランダムアクセスすなわちランダムアクセスプリアンブルの送信を行わない引用発明において、ハンドオーバー完了通知を送信するためのリソース情報が必要なことは明らかであるから、引用発明が受信する、送信タイミング変更量を含むハンドオーバー指示に、上記公知事項のランダムアクセスレスポンスメッセージと同様に、送信タイミング変更量とともに、ハンドオーバー完了通知を送信するための無線リソースを示すリソース情報を、セットとして含め、当該リソース情報を用いてハンドオーバー完了通知を送信すること、すなわち、引用発明の制御部が「前記第1のセルから前記第2のセルへハンドオーバを行う場合に、前記第1の基地局を介して前記第2の基地局から」受信するものを、「前記ユーザ端末が前記通知を前記第2の基地局へ送信するために用いられる無線リソースを示」す「リソース情報」とタイミングアドバンス情報との「セット」とし、制御部を「前記無線リソース情報が示す無線リソースを用いて」前記通知を前記第2の基地局へ送信するよう構成することは、当業者が容易に想到し得る事項といえる。
したがって、本願発明は、引用発明、及び公知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-016595