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特許異議申立

2015-700212

攪拌装置

審判番号
2015-700212
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2009-172101外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2015年11月24日
審決日
2016年12月15日
公報発行日
2017年05月26日
結論
請求成立(取消)
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-ZAA(C08J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5724159号発明「攪拌装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5724159号の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書,訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[1-3]について,訂正することを認める。 特許第5724159号の請求項1に係る特許を取り消す。 特許第5724159号の請求項2及び3に係る特許についての申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 主な手続の経緯等 特許第5724159号(設定登録時の請求項の数は3。以下、「本件特許」という。)は、平成21年7月23日に出願された特願2009-172101号に係るものであって、平成27年4月10日に設定登録された。 特許異議申立人 星正美(以下、単に「異議申立人」という。)は、平成27年11月24日付けで、本件特許の請求項1ないし3に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。 当合議体において、平成28年1月21日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、同年3月28日付けで、訂正請求書及び意見書を提出したので、異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人は、同年5月16日付けで意見書を提出した。 当合議体は、平成28年7月11日付けで取消理由(決定の予告)を通知したところ、特許権者は、同年9月12日付けで、訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。)及び意見書を提出したので、異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人は、同年10月19日付けで意見書を提出した。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のア~オのとおりである。 ア 特許請求の範囲の請求項1に 「回転可能な回転軸を有し前記回転軸を回転させる動力部と、 前記動力部を槽外に備え、槽内にて樹脂組成物溶液を製造する攪拌槽と、 前記攪拌槽の槽外にて前記回転軸とカップリングにより接続され、前記動力部により槽内にて回転運動する攪拌翼と、 前記攪拌槽の槽外にて前記カップリングの下方に設置され、前記攪拌翼の軸部を回転可能に支持する軸受と、 を備える攪拌装置。」 とあるのを、 「回転可能な回転軸を有し前記回転軸を回転させる動力部と、 前記動力部を槽外に備え、槽内にて樹脂組成物溶液を製造する攪拌槽と、 前記攪拌槽の槽外にて前記回転軸とカップリングにより接続され、前記動力部により槽内にて回転運動する攪拌翼と、 前記攪拌槽の槽外にて前記カップリングの下方に設置され、縦方向に延びた前記攪拌翼の軸部を回転可能に支持する軸受とを備え、 前記軸受は前記攪拌翼の前記軸部を管状のスリーブを介して支持し、 前記スリーブは、スリーブ本体と、前記軸部を固定するための固定ボルト、シールガスケットから構成されており、 前記軸受の内輪及び回転輪と前記軸部との間に前記スリーブを設けており、 前記軸受を組み付けたスリーブを差し込み、分解可能に構成されている攪拌装置。」 に訂正する。 イ 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 ウ 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 エ 願書に添付した明細書の段落【0016】に、 「[1] 回転可能な回転軸を有し前記回転軸を回転させる動力部と、前記動力部を槽外に備え、槽内にて樹脂組成物溶液を製造する攪拌槽と、前記攪拌槽の槽外にて前記回転軸とカップリングにより接続され、前記動力部により槽内にて回転運動する攪拌翼と、前記攪拌槽の槽外にて前記カップリングの下方に設置され、前記攪拌翼の軸部を回転可能に支持する軸受と、を備える攪拌装置。」 とあるのを、 「[1] 回転可能な回転軸を有し前記回転軸を回転させる動力部と、前記動力部を槽外に備え、槽内にて樹脂組成物溶液を製造する攪拌槽と、前記攪拌槽の槽外にて前記回転軸とカップリングにより接続され、前記動力部により槽内にて回転運動する攪拌翼と、前記攪拌槽の槽外にて前記カップリングの下方に設置され、縦方向に延びた前記攪拌翼の軸部を回転可能に支持する軸受とを備え、前記軸受は前記攪拌翼の前記軸部を管状のスリーブを介して支持し、前記スリーブは、スリーブ本体と、前記軸部を固定するための固定ボルト、シールガスケットから構成されており、前記軸受の内輪及び回転輪と前記軸部との間に前記スリーブを設けており、前記軸受を組み付けたスリーブを差し込み、分解可能に構成されている攪拌装置。」 に訂正し、段落【0017】を削除する。 オ 願書に添付した明細書の段落【0030】に 「分解を用意にし」 とあるのを、 「分解を容易にし」 に訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項アについて 訂正事項アは、訂正前の請求項1に請求項2、3を加え、さらに「縦方向に延びた」と「前記軸受の内輪及び回転輪と前記軸部との間に前記スリーブを設けており、前記軸受を組み付けたスリーブを差し込み、分解可能に構成されている」と特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項アは、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項アは、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2) 訂正事項イについて 訂正事項イは、特許請求の範囲の請求項2を削除するというものであるから、当該訂正事項イは、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項イは、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3) 訂正事項ウについて 訂正事項ウは、特許請求の範囲の請求項3を削除するというものであるから、当該訂正事項ウは、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項ウは、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4) 訂正事項エについて 訂正事項エは、上記訂正事項ア~ウに係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0016】の記載を訂正事項アに対応するように訂正するとともに、段落【0017】を削除するものであるから、当該訂正事項エは、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、当該訂正事項エは、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5) 訂正事項オについて 訂正事項オは、願書に添付した明細書の段落【0030】に、「分解を用意にし」とあるのを、「分解を容易にし」と訂正するものであるから、当該訂正事項オは、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 そして、当該訂正事項オは、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6) 一群の請求項 訂正事項ア~オは、一群の請求項ごとに請求されたものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-3]について、訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は適法であるので、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、平成28年9月12日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「回転可能な回転軸を有し前記回転軸を回転させる動力部と、 前記動力部を槽外に備え、槽内にて樹脂組成物溶液を製造する攪拌槽と、 前記攪拌槽の槽外にて前記回転軸とカップリングにより接続され、前記動力部により槽内にて回転運動する攪拌翼と、 前記攪拌槽の槽外にて前記カップリングの下方に設置され、縦方向に延びた前記攪拌翼の軸部を回転可能に支持する軸受とを備え、 前記軸受は前記攪拌翼の前記軸部を管状のスリーブを介して支持し、 前記スリーブは、スリーブ本体と、前記軸部を固定するための固定ボルト、シールガスケットから構成されており、 前記軸受の内輪及び回転輪と前記軸部との間に前記スリーブを設けており、 前記軸受を組み付けたスリーブを差し込み、分解可能に構成されている攪拌装置。」 第4 取消理由(決定の予告) 平成28年7月11日付けで通知した取消理由(決定の予告)は、本件特許の請求項1に係る発明(平成28年3月28日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1に係る発明。)は、下記刊行物1又は2に記載の発明及び刊行物5の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであって取り消すべきであるを含む。 刊行物1: 「改訂二版化学装置便覧」第459~465頁、丸善株式会社、平成元年3月30日発行(異議申立書の証拠方法である甲第1号証。以下、単に「甲1」という。) 刊行物2: 特開平7-12137号公報(異議申立書の証拠方法である甲第2号証。以下、単に「甲2」という。) 刊行物5: 特開平11-287330号公報(異議申立書の証拠方法である甲第5号証。以下、単に「甲5」という。) 第5 当合議体の判断 本件発明は、取消理由(決定の予告)で通知した甲1又は甲2に記載の発明及び甲5に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであって取り消されるべきものである。 また、請求項2及び3は、本件訂正請求により削除され、異議申立ての対象が存在しないこととなったので、当該請求項2及び3に対する異議申し立てを却下する。 1 刊行物 甲1、甲2、甲5 2 刊行物の記載事項 本件特許の出願前に頒布されたことが明らかな刊行物である甲1には、以下の事項が記載されている。 ア 「11・4 反応器 ・・・ 11・4・2 反応器の構造 ・・・ a.攪拌機付き反応器 ・・・反応器は図11・53に示すように槽または塔の内部に攪拌機を設け、反応物を攪拌しながら反応を進行させる。・・・この形式の反応器は各種合成樹脂の重合缶、ベンゼンの塩素化など、あるいは、リン酸肥料製造の反応器などの無機、有機化学共、広く利用されている。」(第459頁右欄23行~第460頁右欄下から9行) 本件特許の出願前に頒布されたことが明らかな刊行物である甲2には、以下の事項が記載されている。 イ 「【請求項1】容器を貫通した撹拌軸を支持する軸受部と駆動装置との間に固定軸継手の一方が軸方向移動可能な固定軸継手を設け、この固定軸継手を介して駆動装置の出力軸と撹拌軸とを連結したことを特徴とする撹拌機用駆動装置。」(特許請求の範囲の請求項1) ウ 「【産業上の利用分野】本発明は、建屋内部等に設置するため高さが制約される竪型撹拌機に好適な撹拌機用駆動装置に関するものである。」(段落【0001】) エ 「【実施例】本発明の一実施例を図1により説明する。1は容器、2は容器1を貫通する撹拌軸3の軸封部、4は撹拌軸3のスラスト方向及びラジアル方向の荷重を支持する軸受で、軸受箱5及び軸受蓋6で固定される。7は撹拌軸3に挿入固着された下部固定軸継手で、駆動装置9に設置された軸受11に支持された出力軸10に隙間13を設けて遊合挿入された上部固定軸継手8にリーマーボルト12により連結され、撹拌部に加わるラジアル荷重は軸封部2上部の軸受4及び駆動装置9に設置された軸受11により支持され、回転は駆動装置9より上下固定軸継手8、7のリーマーボルト12を介して撹拌軸3に伝達される。運転中、軸受4、11間で撹拌軸3の温度上昇等により軸に熱膨張が生じた場合、出力軸10部の隙間13により上下固定軸継手8、7が動いて熱膨張を吸収することができ、軸受4、11への熱膨張により発生するスラスト荷重を無くし、かつ、軸封部2方向への軸移動が無くなり、軸封部2のメカニカルシールの洩れを防止することができる。 図2は固定軸継手のボス外周に軸方向移動可能なフランジを装着した他の実施例で、出力軸10に挿入固着されたカップリングボス16外周にキー14を介して動力伝達可能なフランジ15をカップリングボス16に遊合挿入したもので、それにより、軸受4、11間の熱膨張を容易に吸収することができ、かつ、カップリングボス16とフランジ嵌合部が軸方向移動等により摩耗した場合、駆動装置9の出力軸10を修正交換することなく、カップリングボス16とフランジ15のみを交換することが可能である。」(段落【0009】~【0010】) オ 「 」(図1) 本件特許の出願前に頒布されたことが明らかな刊行物である甲5には、以下の事項が記載されている。 カ 「【請求項1】 回転機器の軸封部機枠に取り付けられたシールケースと、 軸封部機枠を貫通する回転軸に軸線方向に相対移動可能に且つ相対回転不能に保持されたスリーブと、 シールケースとスリーブとを軸線方向に相対移動不能に且つ相対回転可能に連結する連結部材と、 スリーブに固定された回転密封環と、 シールケースに、回転密封環に対向した状態で、軸線方向に移動可能に且つ相対回転不能に保持された静止密封環と、 シールケースと静止密封環との間に静止密封環を回転密封環へと押圧附勢すべく介挿された附勢部材と、を具備することを特徴とするメカニカルシール。 【請求項2】 回転機器の軸封部機枠にこれを貫通する回転軸の軸線方向に移動可能に連結支持されたシールケースと、 シールケースと回転軸とを軸線方向に相対移動可能に且つ相対回転不能に連結する連結部材と、 回転軸に固定された回転密封環と、 シールケースに、回転密封環に対向した状態で、軸線方向に移動可能に且つ相対回転不能に保持された静止密封環と、 シールケースと静止密封環との間に静止密封環を回転密封環へと押圧附勢すべく介挿された附勢部材と、を具備することを特徴とするメカニカルシール。」(特許請求の範囲) キ 「本発明は、このような点に鑑み、回転軸の軸長が熱歪等により伸縮変化するような回転機器においても、両密封環の軸線方向における相対位置を適正に保持し得て、良好な軸封機能を発揮させることができるメカニカルシールを提供することを目的とするものである。」(段落【0009】) ク 「スリーブ6は、図1に示す如く、シールケース5の前後長と略同一長さの円筒体であり、シールケース5内に配して回転軸4に軸線方向に相対移動可能に嵌合保持されている。スリーブ6の前後端部内周には一対の環状シール材(Oリング又は膨張黒鉛製シール材等)26、27が係合保持されていて、スリーブ6と回転軸4との間を、スリーブ6の軸線方向における相対移動を許容する状態で、二次シールしている。また、図1及び図2に示す如く、シール材26、27間に配してスリーブ6に軸線方向に延びる長孔28を形成すると共に、回転軸4に長孔28に係合するボルト29を螺着することによって、スリーブ6の回転軸4に対する軸線方向の相対移動を許容しつつ、回転軸4に対する相対回転を阻止している。なお、長孔28の前後長つまりスリーブ6の軸線方向における相対移動範囲は、予測される回転軸4の熱歪による軸長変化量に応じて設定されている。また、ボルト29には保護リング30が嵌挿されていて、ボルト29が回転軸4の軸長変化により長孔28の前後端部に衝突するような事態が発生した場合にも、ボルト29の螺子部が破損しないように工夫されている。 連結部材7は、図1に示す如く、スリーブ6の後端部とベアリング支持体24との間に装填されたベアリング(この例では、スラストベアリングを使用)で構成されており、シールケース5とスリーブ6とを相対回転可能に且つ径方向及び軸線方向に相対変位不能に連結している。なお、スリーブ6とベアリング支持体24との間には、ベアリング7の前位に配して、オイルシール31が設けられており、シールケース5には、グリース等の潤滑材をベアリング7に注入させるための潤滑材注入孔32が形成されている。 回転密封環8は、図1~図3に示す如く、シールケース5内に配してスリーブ6の前端部に嵌合固定されている。」(段落【0019】~【0020】) ケ 「 」(図1、2) 3 甲1に記載された発明 上記2 アにおける「図11・53 攪拌機付反応器」の図面とその図面に関する具体的な説明の記載からみて、甲1には次のとおりの発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「回転可能な回転軸を有し前記回転軸を回転させるモータ-・減速機と、 前記モーター・減速機を攪拌機付反応器本体の外部に備え、攪拌機付反応器本体内にて合成樹脂の重合を行う攪拌機付反応器本体と、 モーター・減速機からの出力軸と攪拌翼の回転軸とが、接続部位を介して攪拌機付反応器本体外部で一直線上に接続され、モーター・減速機により反応器内で回転する攪拌翼と、 攪拌翼付反応器本体外部にて接続部より下方に設置され、縦方向に延びた攪拌翼の軸部を回転可能に支持する軸受と、 を備える攪拌機付反応器。」 4 甲2に記載された発明 甲2の上記2 イ~オの記載からみて、次のとおりの発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。 「回転可能な出力軸を有し前記出力軸を回転させる駆動装置と、 前記駆動装置を容器外に備え、容器内にて攪拌を行うものであり、 前記容器の容器外にて前記出力軸と上下軸継手により接続され、前記駆動装置により容器内にて回転運動する攪拌翼と、 前記容器の容器外にて前記上下軸継手の下方に設置され、縦方向に延びた前記攪拌翼の攪拌軸を回転可能に支持する軸受と、 を備える縦型攪拌機。」 5 甲5に記載の技術事項 上記2 カ~ケには、回転軸の軸長が熱歪等により伸縮変化するような回転機器においても、両密封環の軸線方向における相対位置を適正に保持し得て、良好な軸封機能を発揮させることができるメカニカルシールを提供するための軸受の回転軸への固定法として、回転軸(4)に対して環状のスリーブ(6)を介してベアリング(7)を取り付けるものであって、スリーブ(6)がスリーブ本体と、軸部を固定するためのボルト(29)、Oリング(26、27)からなるものであって、スリーブ(6)がベアリング(7)及び回転密封環(8)と回転軸(4)との間に設けられているものが記載されている。 そして、ベアリング(7)の内側がスリーブ(6)に取り付けられていることから、甲5には、スリーブ(6)は、スリーブ本体と、回転軸(4)を固定するための固定ボルト(29)、Oリング(26、27)から構成され、前記ベアリング(7)の内輪及び回転密封輪(8)と前記回転軸(4)との間に前記スリーブ(6)を設けているといえるし、スリーブ(6)は回転軸(4)に固定ボルト(29)で固定されるものであるから、ベアリング(7)を組み付けたスリーブ(6)を差し込んで固定されるものといえる。 上記甲5に記載の技術事項における「ベアリング(7)」、「Oリング(26、27)」、「回転軸(4)」、「回転密封環(8)」は、それぞれ、本件発明の「軸受」、「シールガスケット」、「軸部」、「回転輪」に相当する。 そうすると、甲5には、本件発明における部材名でいえば、以下の技術事項が記載されているといえる。 「軸受の軸部への固定法として、軸受は軸部を管状のスリーブを介して取り付け、スリーブは、スリーブ本体と、軸部を固定するための固定ボルト、シールガスケットから構成され、軸受の内輪及び回転輪と軸部との間にスリーブが設けられ、軸部に軸受を組み付けたスリーブを差し込むもの」 6 本件発明と甲1発明の対比・判断 本件発明と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「モーター・減速機」、「攪拌機付反応器本体」は、それぞれ、本件発明1の「動力部」、「攪拌槽」に相当する。 甲1発明の「合成樹脂の重合を行う」は、技術常識から、樹脂組成物溶液を製造する場合を包含している。 甲1発明の「接続部位」は、技術常識から「カップリング」を意味する。 そして、甲1発明の「攪拌機付反応器」は、本件発明1の「攪拌装置」に相当する。 そうすると、本件発明と甲1発明とは 「回転可能な回転軸を有し前記回転軸を回転させる動力部と、 前記動力部を槽外に備え、槽内にて樹脂組成物溶液を製造する攪拌槽と、 前記攪拌槽の槽外にて前記回転軸とカップリングにより接続され、前記動力部により槽内にて回転運動する攪拌翼と、 前記攪拌槽の槽外にて前記カップリングの下方に設置され、縦方向に延びた前記攪拌翼の軸部を回転可能に支持する軸受とを備え、 る攪拌装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点1> 軸部と軸受けの固定に関して、本件発明は「前記軸受は前記攪拌翼の前記軸部を管状のスリーブを介して支持し、前記スリーブは、スリーブ本体と、前記軸部を固定するための固定ボルト、シールガスケットから構成されており、前記軸受の内輪及び回転輪と前記軸部との間に前記スリーブを設けており、前記軸受を組み付けたスリーブを差し込み、分解可能に構成されて」いると特定するのに対し、甲1発明は、この点を特定しない点。 以下、相違点について検討する。 相違点1について 甲5には、上記5に記載の、回転軸の軸長が熱歪み等により伸縮変化するような回転機器における軸受の回転軸への固定法に関する技術事項が記載されている。 そして、本件特許の出願前の当業者にとって、回転軸に設けられた軸受の回転軸の熱歪み等により、回転軸が伸縮し、軸受との位置関係に狂いが生じる問題に対応することは、加熱下、多種の重合・攪拌条件で使用される樹脂の製造に使用される攪拌機においても求められることであるから、甲1に記載はなくとも当業者が考慮すべき技術事項であったといえる。 そうすると、甲1発明の回転軸と軸受との関係において、上記5に記載の軸受の回転軸への固定法(軸受は軸部を管状のスリーブを介して取り付け、スリーブは、スリーブ本体と、軸部を固定するための固定ボルト、シールガスケットから構成され、軸受の内輪及び回転輪と軸部との間にスリーブが設けられ、軸部に軸受を組み付けたスリーブを差し込むもの)を採用することは当業者が想到容易である。ここで、上記5に記載の軸受の回転軸への固定法は、分解可能であるとの記載はないが、スリーブは固定ボルトで軸部に取り付けるのであるから、スリーブと軸部は分解可能といえる。 効果について検討する。 本件特許の明細書の段落【0002】~【0012】において言及する【発明が解決しようとする課題】に対応するカップリングに起因する異物の発生を無くす点については、甲1発明のカップリングも攪拌槽外に設けられていることから、甲1発明においても奏される効果である。 本件特許の明細書の段落【0030】において言及する取り付け作業の容易性、現場での作業性の向上については、甲5に記載の固定法においても軸受をスリーブを介して組み付けるのであるから、甲1発明に甲5に記載の技術事項を適用することにより、当然に同様な効果が奏されるといえ、格別なものとはいえない。 したがって、本件発明は甲1発明及び甲5の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。 7 本件発明と甲2発明との対比・判断 本件発明と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「出力軸」、「駆動装置」、「容器」、「上下軸継手」、「攪拌翼の攪拌軸」、「縦型攪拌機」は、それぞれ本件発明の「回転軸」、「動力部」、「槽」、「カップリング」、「攪拌翼の軸部」、「攪拌装置」に相当する。 甲2発明の縦型攪拌機は、当業者の技術常識から、槽内にて樹脂組成物溶液を製造するものといえる。 そうすると、本件発明と甲2発明とは、上記6に記載の一致点で一致し、上記6に記載の相違点1で相違している。 そして、当該相違点1についての判断は、上記6のとおりである。 したがって、本件発明は甲2発明及び甲5の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。 第6 特許権者の意見書での主張について 1 特許権者は、平成28年9月12日提出の意見書において、概略以下の主張を行っている。 (1) 甲1、甲2は、本件特許のような0.10μm以下のレベルの微細加工に用いる樹脂組成物溶液を製造するための縦型の攪拌装置というわけではなく、「僅かな異物の発生も問題となる状況下で、カップリングに起因する異物の発生を無くす」という課題は存在せず、本件発明のように「前記軸受は前記攪拌翼の前記軸部を管状のスリーブを介して支持し、前記スリーブは、スリーブ本体と、前記軸部を固定するための固定ボルト、シールガスケットから構成されており、前記軸受の内輪及び回転輪と前記軸部との間に前記スリーブを設けており、前記軸受を組み付けたスリーブを差し込み、分解可能に構成されて」いるように構成する動機がない。 (2) 甲5は、本件特許のような外部からの異物持ち込みを避けるべくクリーンルーム環境下での使用は全く意図されておらず、図を見ても、かなり大掛かりで複雑なメカニカルシールであり、回転軸も横方向に延びるもので、本件のような簡単な構造でなく分解を容易にすることは想定されていない。さらに、クリーンルーム内という限られた狭い空間での作業性を向上することは及びもつかない。甲5のスリーブは大型の機器への適用は困難で、大型化により差込距離も伸びるため作業性は大きく低下し、通常は攪拌機に適用しようとは考えない。 (3) 本件発明は、大型攪拌機を視野に入れているのに対し、甲5は、図1をみても、軸受を組み付けたスリーブを差し込んだり、分解したりすることが容易にできる構成とはいえない。甲5は、回転軸に対してスリーブを摺動させ軸方向に相対移動をさせ他所の変形を吸収するのが目的の機構で、本件発明のような縦方向に回転軸を有する攪拌装置に適用することは到底考えられない。甲5には、具体的な分解性向上に関する記述はなく、甲5のスリーブ機構(摺動機構)が分解性向上に役立つという結論に辿り着くのは不自然で、甲1又は甲2と、甲5は全く関係ない技術であって、これらを組み合わせる動機もないし、横方向に回転軸を有する甲5を甲1又は甲2と組み合わせることに阻害要因がある。 2 当合議体の判断 本件発明は上記第3に記載のとおりであって、「0.10μm以下のレベルの微細加工に用いる樹脂組成物溶液を製造するための縦型の攪拌装置」であること、「クリーンルーム内で使用する」こと、「大型攪拌機」とは特定されていないから、特許権者の上記主張は請求項の記載に基づくものでなく、失当である。 そして、甲5に記載された技術事項として認定しているのは、上記第5 5に記載のとおりであって、大型であるとか、軸が横方向に延びるものであることは認定していない。そして、甲5は駆動軸の加熱による伸縮での駆動軸と軸受との位置関係に狂いが生じる問題に対処するための技術であるから、縦方向及び横方向いずれに延びた軸であろうが、軸の向きにかかわらず適用可能である。また、甲5の適用を検討している甲1発明又は甲2発明は、大型の機器とは特定されていないから、仮に大型の機器への適用が困難との特許権者の主張が正しいとしても、甲1発明又は甲2発明への適用が困難とはいえない。 また、甲5には、分解性向上についての言及はないが、甲5には、相違点に係る本件発明と同一の構成が記載されていて、その構成により分解性向上という効果が奏されることは当業者において自明といえる。 そうすると、特許権者の上記主張を検討しても、上記第5 6における相違点についての検討は妥当である。 第8 むすび 以上のとおりであるから、本件発明については、甲1発明又は甲2発明及び甲5の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件発明2及び3に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議の申立ての対象となる請求項が存在しないこととなったので、当該請求項2及び3に対する異議申し立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2015-700212

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