特許異議申立
2022-701206
半導体実装材料用フィラー及びその製造方法並びに半導体実装材料
- 審判番号
- 2022-701206
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-522231
- 登録番号
- 7082257
- 請求日
- 2022年12月05日
- 審決日
- 2024年05月15日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社アドマテックス
- 【権利者代理人】弁理士法人 共立特許事務所
- 【異議申立人】末成 幹生
- 【異議申立人】星 正美
- 【異議申立人】御代川 友美
- 審判長/審判官
- 審判長 瀧内 健夫
- 審判官 松永 稔
- 審判官 中野 浩昌
- 分類
- P1651.161-ZAA(H01L) / P1651.841-ZAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条の2、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7082257号発明「半導体実装材料用フィラー及びその製造方法並びに半導体実装材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7082257号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、〔6~8〕について訂正することを認める。
特許第7082257号の請求項1~8に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 特許第7082257号の請求項1~8に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)12月8日(優先権主張 令和2年12月10日)を国際出願日とする出願であって、令和4年5月30日にその特許権の設定登録がされ、同年6月7日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~8に係る特許について、同年12月5日に特許異議申立人末成幹生(以下「申立人1」という。)、同年12月7日に特許異議申立人星正美(以下「申立人2」という。)、及び特許異議申立人御代川友美(以下「申立人3」という。)により特許異議の申立てがされた。
2 当審は、令和5年3月15日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年5月18日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人2は同年7月10日に、また、申立人1及び申立人3は同年7月12日に、それぞれ意見書を提出した。
3 その後、当審は、令和5年8月23日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年10月27日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)に対して、申立人2と申立人3は、令和6年1月4日にそれぞれ意見書を提出した。
4 当審は、令和6年1月31日付けで本件訂正請求についての訂正拒絶理由を通知し、それに対し特許権者は同年3月7日に意見書を提出した。
なお、特許法第120の5条第7項の規定により、令和5年5月18日にされた訂正の請求は取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は訂正請求書の記載のとおり。)
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に(a)「400mLのエタノール中に50g分散させた分散液に対して、38kHz、300Wの超音波を20分間照射した後に24時間静置したときの上澄み液中に含まれる20μm以上の炭素を含有する着色異物が10個以下であり、体積平均粒径が0.1μm以上40μm以下、球形度が0.85以上である金属酸化物を主成分とし、」とあるのを「前記粒子材料は、400mLのエタノール中に50g分散させた分散液に対して、38kHz、300Wの超音波を20分間照射した後に24時間静置したときの上澄み液を目開き20μmのナイロンメッシュスクリーンにて濾過し、スクリーン上に残った炭素を含有する着色異物が10個以下であり、体積平均粒径が0.1μm以上40μm以下、球形度が0.85以上である金属酸化物を主成分とし、」とし、
(b)「20%以上含有する可燃性ガス」とあるのを「100%含有する可燃性ガス」とし、
(c)「半導体実装材料用フィラーの製造方法。」とあるのを「半導体実装材料用フィラーの製造方法(前記原料粒子材料が破砕シリカに煙霧シリカを添加し、混合したものを除く。)(前記原料粒子材料が煙霧シリカであるものを除く。)。」と記載する。
更に、特許請求の範囲の請求項1に(d)「樹脂材料中に分散して半導体実装材料を形成する粒子材料」とあるのを「樹脂材料中に分散して半導体実装材料を形成する粒子材料(粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子を含むものを除く)(粒径3μm以下の粒子が粒子全体の少なくとも70重量%を占め、粒径48μmを超える粒子が実質的に存在せず、平均粒径が0.5~2.5μmの範囲にあり、比表面積が5~30m2/gの範囲にあり、そして水媒体中レーザー回折散乱法により測定した凝集性が300秒以下であることを特徴とする微細球状溶融シリカを除く)」とし、
(e)「溶融させることで前記粒子材料を形成する球状化工程を有する」とあるのを「溶融させることで第1粒子材料を形成する球状化工程と、
前記第1粒子材料に対してシラン化合物により表面処理を行い前記粒子材料を得る表面処理工程と、
を有する」と記載する(訂正後の請求項1)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記可燃性ガスは、前記炭素非含有ガスを100%含有する」とあるのを「前記可燃性ガスは、アンモニアである」と記載する(訂正後の請求項3)。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「前記炭素非含有ガスは、アンモニア及び/又は水素である請求項1~3のうちの何れか1項に」とあるのを「前記炭素非含有ガスは、水素である請求項1又は2に」と記載する(訂正後の請求項4)。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に(a)「400mLのエタノール中に50g分散させた分散液に対して、38kHz、300Wの超音波を20分間照射した後に24時間静置したときの上澄み液中に含まれる20μm以上の炭素を含有する着色異物が10個以下であり、体積平均粒径が0.1μm以上40μm以下、球形度が0.85以上である」とあるのを「400mLのエタノール中に50g分散させた分散液に対して、38kHz、300Wの超音波を20分間照射した後に24時間静置したときの上澄み液を目開き20μmのナイロンメッシュスクリーンにて濾過し、スクリーン上に残った炭素を含有する着色異物が10個以下であり、体積平均粒径が0.1μm以上40μm以下、球形度が0.85以上である」と記載する。
更に、特許請求の範囲の請求項6に(b)「金属酸化物を主成分とする粒子材料」とあるのを「金属酸化物を主成分とし、シラン化合物により表面処理されている粒子材料」と記載し、
(c)「半導体実装材料用フィラー。」とあるのを「半導体実装材料用フィラー(粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子を実質的に含むものを除く)(粒径3μm以下の粒子が粒子全体の少なくとも70重量%を占め、粒径48μmを超える粒子が実質的に存在せず、平均粒径が0.5~2.5μmの範囲にあり、比表面積が5~30m2/gの範囲にあり、そして水媒体中レーザー回折散乱法により測定した凝集性が300秒以下であることを特徴とする微細球状溶融シリカを除く)。」と記載する(訂正後の請求項6)。
(5) 一群の請求項、及び独立特許要件について
訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正前の請求項6~8について、請求項7、8は、請求項6を引用しているものであって、訂正事項4によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項6~8に対応する訂正後の請求項6~8は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、本件特許異議申立事件においては、訂正前の請求項1~8が特許異議申立の請求の対象とされているので、訂正前の請求項1~8に係る訂正事項1~4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
2 訂正拒絶理由について
(1) 訂正拒絶理由の要旨
令和6年1月31日付けで、本件訂正請求について通知した訂正拒絶理由の要旨は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しないから、訂正後の請求項〔1~5〕、〔6~8〕についての本件訂正請求は認められない、というものである。
ア 訂正後の請求項〔1~5〕について
訂正事項1(d)のうち、訂正前の請求項1の「樹脂材料中に分散して半導体実装材料を形成する粒子材料」について、「(粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子を含むものを除く)」との事項(以下「訂正事項A」という。)を付加する訂正について、訂正事項Aを付加することにより、訂正後の請求項1に係る発明は、「粒子材料」が「粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子」を含まないものになった。
ここで、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)には、本実施形態の粒子材料の結晶化度が3%以下であることが好ましく(段落0030)、原料粒子材料が結晶破砕シリカであり、製造した球状化粒子の溶融度(全体を基準とした非晶質の割合)が92.8~96.9%である実施例1~6、8が記載されている。
しかしながら、本件明細書等には、粒子径が45μm以上75μm以下の範囲にある非晶質の粒子材料を除去する事項については何ら記載も示唆もされていない。
また、結晶質と非晶質とを含む粒子材料から、粒子径が所定の範囲の、非晶質の粒子材料のみを除去することは技術常識ともいえないから、訂正事項Aを付加することが「本件明細書等の記載から自明な事項」ともいえない。
そうすると、訂正事項Aを含む、訂正後の請求項〔1~5〕についての本件訂正請求は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものといえ、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正とはいえないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
また、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項である訂正事項Aを付加する、訂正後の請求項〔1~5〕についての本件訂正請求は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものといえるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しない。
イ 訂正後の請求項〔6~8〕について
訂正事項4(c)のうち、訂正前の請求項6の「半導体実装材料用フィラー」について、「(粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子を実質的に含むものを除く)」との事項(以下「訂正事項B」という。)を付加する訂正についても、訂正事項Aと同様に、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5、6項の規定に適合しないから、訂正事項Bを含む、訂正後の請求項〔6~8〕についての本件訂正請求は認められない。
(2) 特許権者の主張
上記訂正拒絶理由に対して、特許権者は、令和6年3月7日に提出した意見書(3ページ11行~5ページ最下行)において次の主張をした。(下線は、意見書の記載のとおり。)
「当審の判断における訂正事項Aの解釈としては、(あ)や(え)などの下線部分に記載された通り「樹脂材料中に分散して半導体実装材料を形成する粒子材料」から「(粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子」のみを除くことを限定していると判断していると思われます。
訂正事項Bについても訂正事項Aと同様の解釈によって「(粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子」のみを除くことを限定していると判断していると思われます。
しかながら、訂正事項A及びBは、その字句の通り「樹脂材料中に分散して半導体実装材料を形成する粒子材料」から「粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子を含むもの」を除くことを限定しています。
つまり、訂正事項A及びBは、「粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にあり」且つ「非晶質球状シリカ質粒子を含むもの」を除く限定です。
ここで、本願の請求項1や6における粒子材料は当審の認定の通り非晶質の粒子材料を主とする材料であり、「粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある」粒子材料が存在するとすれば、それには必ず非晶質の粒子材料を含有するものとなります。
従って、訂正事項A及びBにおいて「粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にあり」且つ「非晶質球状シリカ質粒子を含むもの」を除くという記載は、「粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にあるすべての粒子材料」を除くものであることを意味します。
・・・(中略)・・・
更に、本願願書に添付した明細書の0025段落に「本実施形態の粒子材料は、体積平均粒径が0.1μm以上40μm以下である。体積平均粒径の測定は、レーザー回折法により測定する。体積平均粒径の上限値は、40μm、20μm、10μm、5μmであることが好ましく、下限値は、0.1μm、0.3μm、0.5μm、2μmであることが好ましい。これらの上限値と下限値とは任意に組み合わせることが可能である。」と記載されているように、粒子材料についてその粒径の範囲を制限しようとする思想が開示されています。
従って、結果的に本願の請求項1、6が規定する粒子材料について甲1-11に記載の発明に基づき訂正事項A、Bを導入してその粒度分布を制限することは新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正に該当します。」
(3) 当審の判断
特許権者の主張により、訂正事項A及びBは、「粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にあるすべての粒子材料」を除くものであることを意味することが明らかになった。
そして、上記訂正拒絶理由は、訂正事項A及びBについて、「粒子径が45μm以上75μm以下の範囲にある非晶質の粒子材料」のみを除くものであることを前提としているから、上記訂正拒絶理由は解消した。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正事項1(a)について
(ア) 訂正事項1(a)-1
a 訂正の目的
訂正前の請求項1の「400mLのエタノール中に50g分散させた分散液に対して、・・・金属酸化物を主成分とし、」について、「前記粒子材料は、400mLのエタノール中に50g分散させた分散液に対して、・・・金属酸化物を主成分とし、」とする訂正事項(以下「訂正事項1(a)-1」という。)は、令和5年3月15日付け取消理由通知書「第4の1(1)ア」で通知した「請求項1の「400mLのエタノール中に50g分散させた分散液に対して、・・・金属酸化物を主成分とし、」との記載が、「樹脂材料中に分散して半導体実装材料を形成する粒子材料を含む半導体実装材料用フィラーを製造する方法」における何を特定しているのか、すなわち、「原料粒子材料」であるのか、球状化工程で形成された「粒子材料」であるのか、あるいは、それ以外のものか明らかでない。」との取消理由を解消するための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b 新規事項の有無
訂正事項1(a)-1については、本件明細書等の段落0031の「本実施形態の粒子材料は、以下の方法により測定される20μm以上の着色異物の数が10個/50g以下であり、8個/50g以下、6個/50g以下、4個/50g以下、2個/50g以下であることが好ましい。」、及び、段落0032の「着色異物の数の測定は、分散媒としてのエタノール400mL中に粒子材料50gを分散させた分散液に対して、38kHz、300Wの超音波を20分間照射した後に24時間静置したときの上澄み液を目開き20μmのナイロンメッシュスクリーンにて濾過し、スクリーン上に残った異物の数として測定する。」との記載に基づくものであるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(イ) 訂正事項1(a)-2
a 訂正の目的
訂正前の請求項1の「20μm以上の炭素を含有する着色異物」について、「目開き20μmのナイロンメッシュスクリーンにて濾過し、スクリーン上に残った炭素を含有する着色異物」とする訂正事項(以下「訂正事項1(a)-2」という。)は、発明を特定するための事項を直列的に付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 新規事項の有無
訂正事項1(a)-2についても、本件明細書等の上記段落0032の記載に基づくものであるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
イ 訂正事項1(b)について
(ア) 訂正の目的
訂正前の請求項1の「炭素を含有しない可燃性の炭素非含有ガスを体積基準で20%以上含有する可燃性ガスを燃焼して得られる火炎」について、「炭素を含有しない可燃性の炭素非含有ガスを体積基準で100%含有する可燃性ガスを燃焼して得られる火炎」とする訂正事項(以下「訂正事項1(b)」という。)は、20%以上との炭素非含有ガスの含有量をさらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ) 新規事項の有無
訂正事項1(b)については、訂正前の請求項3の「前記可燃性ガスは、前記炭素非含有ガスを100%含有する請求項1又は2に記載の半導体実装材料用フィラーの製造方法。」、及び、本件明細書等の段落0035の「可燃性ガスは、水素やアンモニアなどの炭素非含有ガスを一部乃至全部として採用する。炭素非含有ガスは、可燃性ガスの全体の体積を基準として20%以上含有し、40%以上含有することが好ましく、60%以上含有することがより好ましく、80%以上含有することが更に好ましく、100%を炭素非含有ガスとすることが特に好ましい。」との記載に基づくものであるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項1(c)について
(ア) 訂正の目的
訂正前の請求項1の「半導体実装材料用フィラーの製造方法。」とあるのを「半導体実装材料用フィラーの製造方法(前記原料粒子材料が破砕シリカに煙霧シリカを添加し、混合したものを除く。)(前記原料粒子材料が煙霧シリカであるものを除く。)」とする訂正事項1(c)は、発明を特定するための事項である「原料粒子材料」をさらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ) 新規事項の有無
訂正事項1(c)については、本件明細書等の段落0037の「原料粒子材料は、アトマイザ、粉砕機、造粒機などにより金属や金属酸化物を粒子化したものを採用できる。例えば、原料を加熱して溶融した後、アトマイザにより微粒子化することができる。そして原料粒子材料よりも大きな材料に対して粉砕操作を行うことで原料粒子材料を得ることができる。また、原料粒子材料よりも粒径が小さい材料については、造粒して目的の大きさにすることができる。なお、造粒する場合には結着剤として炭素を含有しないものを採用することが望ましい。例えば水中に分散させた分散液を噴霧乾燥することで結着剤無しで造粒することが可能である。」との記載に基づくものであるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 訂正事項1(d)について
(ア) 訂正の目的
訂正前の請求項1の「樹脂材料中に分散して半導体実装材料を形成する粒子材料」とあるのを「樹脂材料中に分散して半導体実装材料を形成する粒子材料(粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子を含むものを除く)(粒径3μm以下の粒子が粒子全体の少なくとも70重量%を占め、粒径48μmを超える粒子が実質的に存在せず、平均粒径が0.5~2.5μmの範囲にあり、比表面積が5~30m2/gの範囲にあり、そして水媒体中レーザー回折散乱法により測定した凝集性が300秒以下であることを特徴とする微細球状溶融シリカを除く)」とする訂正事項1(d)は、発明を特定するための事項である「粒子材料」をさらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ) 新規事項の有無
上記2(3)のとおり、訂正事項1(d)のうち、「(粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子を含むものを除く)」点は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項1(d)のうち、「(粒径3μm以下の粒子が粒子全体の少なくとも70重量%を占め、粒径48μmを超える粒子が実質的に存在せず、平均粒径が0.5~2.5μmの範囲にあり、比表面積が5~30m2/gの範囲にあり、そして水媒体中レーザー回折散乱法により測定した凝集性が300秒以下であることを特徴とする微細球状溶融シリカを除く)」点は、本件明細書等に記載された粒子材料から特定のものを除くものであるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項1(d)は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
オ 訂正事項1(e)について
(ア) 訂正の目的
訂正前の請求項1の「溶融させることで前記粒子材料を形成する球状化工程を有する」とあるのを「溶融させることで第1粒子材料を形成する球状化工程と、
前記第1粒子材料に対してシラン化合物により表面処理を行い前記粒子材料を得る表面処理工程と、
を有する」する訂正事項1(e)は、発明を特定するための事項を直列的に付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ) 新規事項の追加
訂正事項1(e)は、本件明細書等の段落0027の「粒子材料は表面処理されていても良い。表面処理を行うことで粒子材料の表面の性質を好ましいものにすることができる。例えば、樹脂材料中に混合する場合には樹脂材料との親和性を向上するために疎水化(フェニル基、炭化水素基など)したり、樹脂との反応性をもつ官能基(ビニル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基など)を導入したりすることができる。表面処理の量は特に限定しないが目的の性質が実現できるように表面処理することができる。また、表面処理剤がフィラー材料の表面の官能基(OH基など)と反応する物である場合にはフィラー材料の表面に存在する官能基の量に応じて表面処理剤の量を選択することができる(表面の官能基の全量、半量、倍量など)。」、及び段落0028の「表面処理を行う表面処理剤はシラン化合物を採用することができる。シラン化合物としては、SiH、SiOH、SiOR(Rは炭化水素基)を有するいわゆるシランカップリング剤と称されるものやヘキサメチレンジシラザンなどのシラザン類が例示でき、シラン化合物がもつSiに任意の官能基が結合されている物が例示できる。」との記載に基づくものであり、また、球状化工程において製造されるものを「粒子材料」から「第1粒子材料」とするのは、表面処理工程後の粒子材料と区別するためであるから、新たな技術的事項を追加するものではない。
したがって、訂正事項1(e)は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
カ 訂正事項1についての特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記のとおり、訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明、又は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項3の「前記可燃性ガスは、前記炭素非含有ガスを100%含有する」との記載における炭素非含有ガスを「アンモニア」であると限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、本件明細書等の上記段落0035の記載に基づくものであり、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
加えて、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項4の「前記炭素非含有ガスは、アンモニア及び/又は水素である請求項1~3のうちの何れか1項に記載の半導体実装材料用フィラーの製造方法。」との記載における、「アンモニア及び/又は水素」との択一的記載の要素を削除し、また、多数項を引用している請求項の引用請求項の数を削減するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3は、本件明細書等の上記段落0035の記載に基づくものであり、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等の範囲内の訂正であるから、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
加えて、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(4) 訂正事項4について
訂正前の請求項6の「400mLのエタノール中に50g分散させた分散液に対して、38kHz、300Wの超音波を20分間照射した後に24時間静置したときの上澄み液中に含まれる20μm以上の炭素を含有する着色異物が10個以下であり、体積平均粒径が0.1μm以上40μm以下、球形度が0.85以上である」とあるのを「400mLのエタノール中に50g分散させた分散液に対して、38kHz、300Wの超音波を20分間照射した後に24時間静置したときの上澄み液を目開き20μmのナイロンメッシュスクリーンにて濾過し、スクリーン上に残った炭素を含有する着色異物が10個以下であり、体積平均粒径が0.1μm以上40μm以下、球形度が0.85以上である」とする訂正事項4(a)は、上記訂正事項1(a)-2と同様に、また、訂正前の請求項6の「金属酸化物を主成分とする粒子材料」とあるのを「金属酸化物を主成分とし、シラン化合物により表面処理されている粒子材料」とする訂正事項4(b)は、上記訂正事項1(e)と同様に、訂正前の請求項6の「半導体実装材料用フィラー。」とあるのを「半導体実装材料用フィラー(粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子を実質的に含むものを除く)(粒径3μm以下の粒子が粒子全体の少なくとも70重量%を占め、粒径48μmを超える粒子が実質的に存在せず、平均粒径が0.5~2.5μmの範囲にあり、比表面積が5~30m2/gの範囲にあり、そして水媒体中レーザー回折散乱法により測定した凝集性が300秒以下であることを特徴とする微細球状溶融シリカを除く)。」とする訂正事項4(c)は、上記訂正事項1(d)と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等の範囲内の訂正であるから、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
そして、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
4 まとめ
上記のとおり、訂正事項1~4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、〔6~8〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正請求による訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1~8に係る発明(以下、順に「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
樹脂材料中に分散して半導体実装材料を形成する粒子材料(粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子を含むものを除く)(粒径3μm以下の粒子が粒子全体の少なくとも70重量%を占め、粒径48μmを超える粒子が実質的に存在せず、平均粒径が0.5~2.5μmの範囲にあり、比表面積が5~30m2/gの範囲にあり、そして水媒体中レーザー回折散乱法により測定した凝集性が300秒以下であることを特徴とする微細球状溶融シリカを除く)を含む半導体実装材料用フィラーを製造する方法であって、
前記粒子材料は、400mLのエタノール中に50g分散させた分散液に対して、38kHz、300Wの超音波を20分間照射した後に24時間静置したときの上澄み液を目開き20μmのナイロンメッシュスクリーンにて濾過し、スクリーン上に残った炭素を含有する着色異物が10個以下であり、体積平均粒径が0.1μm以上40μm以下、球形度が0.85以上である金属酸化物を主成分とし、
前記金属酸化物に含まれる金属及び/又は前記金属酸化物を主成分とする原料粒子材料を、炭素を含有しない可燃性の炭素非含有ガスを体積基準で100%含有する可燃性ガスを燃焼して得られる火炎中に投入して燃焼及び/又は溶融させることで第1粒子材料を形成する球状化工程と、
前記第1粒子材料に対してシラン化合物により表面処理を行い前記粒子材料を得る表面処理工程と、
を有する半導体実装材料用フィラーの製造方法(前記原料粒子材料が破砕シリカに煙霧シリカを添加し、混合したものを除く。)(前記原料粒子材料が煙霧シリカであるものを除く。)。
【請求項2】
前記原料粒子材料は、前記金属酸化物を有する請求項1に記載の半導体実装材料用フィラーの製造方法。
【請求項3】
前記可燃性ガスは、アンモニアである請求項1又は2に記載の半導体実装材料用フィラーの製造方法。
【請求項4】
前記炭素非含有ガスは、水素である請求項1又は2に記載の半導体実装材料用フィラーの製造方法。
【請求項5】
前記金属酸化物はシリカである請求項1~4のうちの何れか1項に記載の半導体実装材料用フィラーの製造方法。
【請求項6】
400mLのエタノール中に50g分散させた分散液に対して、38kHz、300Wの超音波を20分間照射した後に24時間静置したときの上澄み液を目開き20μmのナイロンメッシュスクリーンにて濾過し、スクリーン上に残った炭素を含有する着色異物が10個以下であり、体積平均粒径が0.1μm以上40μm以下、球形度が0.85以上である金属酸化物を主成分とし、シラン化合物により表面処理されている粒子材料を有し、
樹脂材料中に分散して半導体実装材料を形成する半導体実装材料用フィラー(粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子を含むものを除く)(粒径3μm以下の粒子が粒子全体の少なくとも70重量%を占め、粒径48μmを超える粒子が実質的に存在せず、平均粒径が0.5~2.5μmの範囲にあり、比表面積が5~30m2/gの範囲にあり、そして水媒体中レーザー回折散乱法により測定した凝集性が300秒以下であることを特徴とする微細球状溶融シリカを除く)。
【請求項7】
前記金属酸化物はシリカである請求項6に記載の半導体実装材料用フィラー。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の半導体実装材料用フィラーと、
前記半導体実装材料用フィラーを分散する前記樹脂材料と、
を有する半導体実装材料。」
第4 取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正請求による訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、当審が令和5年8月23日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。(ただし、理由4(サポート要件)については、実質的に、令和5年3月15日付け取消理由通知書「第4の2」で通知したものである。また、申立人1が提出した甲第1号証~甲第12号証をそれぞれ「甲1-1」~「甲1-12」と、申立人2が提出した甲第1号証~甲第14号証をそれぞれ「甲2-1」~「甲2-14」と、申立人3が提出した甲第1号証~甲第4号証をそれぞれ「甲3-1」~「甲3―4」という。)
<引用文献等一覧>
甲1-2 特開2000-191317号公報
甲1-6 特開2005-306923号公報
甲1-8 特開2004-59343号公報
甲1-9 特開2007-70159号公報
甲1-11 特開2018-65722号公報
甲2-5 特開2022-45619号公報
(特願2020-151303号)
甲2-2 特開2000-191316号公報
1 理由1(新規性)
本件発明1、2、4~8は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲2-2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、4~8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2 理由2(進歩性)
本件発明1、2、4~8は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲1-11、又は甲2-2に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、4~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 理由3(拡大先願)
本件発明1~8は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた甲2-5に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
4 理由4(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
発明の詳細な説明には、「導電性粒子の量を低減する必要がある。」(段落0009)という課題が記載され、「導電性粒子」は「炭素など」であり(段落0011)、「炭素としては、煤やグラファイトなど」である(段落0020)と記載されている。
しかしながら、煤(非晶質炭素)、グラファイト、エタノール、シリカの密度、及びエタノールの室温での粘度を踏まえると、「400mLのエタノール中に50g分散させた分散液に対して、38kHz、300Wの超音波を20分間照射した後に24時間静置した」に「20μm以上の炭素を含有する着色異物」はすべて沈降するから、「400mLのエタノール中に50g分散させた分散液に対して、38kHz、300Wの超音波を20分間照射した後に24時間静置したときの上澄み液中に含まれる20μm以上の炭素を含有する着色異物が10個以下であり、」と特定される本件発明1、6において、導電性粒子の量が低減したかは明らかでない。
そうすると、本件発明1、6には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、本件発明1、6は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。
したがって、本件発明1、6、及び請求項1、6を引用する本件発明2~5、7~8は発明の詳細な説明に記載された発明ではない。
第5 当審の判断
上記理由3(拡大先願)について検討する。
1 甲号証の記載、先願発明、周知技術
(1) 甲2-5の記載、及び先願発明
ア 甲2-5の記載
申立人2が甲第5号証として提出した特開2022-45619号公報(以下「甲2-5」という。)に係る特願2020-151303号(以下「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書(以下「先願明細書」という。)には次の記載がある。(下線は引用箇所を示すために当審において付加した。以下同様。)
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質球状化粒子製造装置、それを用いた無機質球状化粒子の製造方法、及び、それらによって得られる無機質球状化粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無機質球状化粒子を製造する方法として、例えば、無機質原料粉末を火炎中に通過させて表面を溶融し、球状化する装置・方法が採用されている(例えば、特許文献1~3を参照)。
このような装置・方法で無機質球状化粒子を製造した場合、製品粒子となる無機質球状化粒子の粒径は原料粉末の粒径にほぼ依存し、概ね原料粉末に近い粒径の製品粒子が得られることが知られている。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、無機質球状化粒子を製造するためのバーナには、一般的に、都市ガスやLPG等の気体燃料が用いられている。これは、気体燃料は燃焼性が良好であり、支燃性ガスに酸素ガスを用いると、高温の火炎を容易に形成できるためである。
しかしながら、都市ガスやLPG等の気体燃料は炭素源を含むため、このような炭素源を含む気体燃料を用いると、特に、不完全燃焼が生じた場合に、固体炭素である煤が発生し、不純物として無機質球状化粒子中に混入してしまうことから、製品品質が低下するという問題があった。
【0008】
また、近年では、バーナへの酸素の吹込み方法を工夫することで、煤の発生を抑制することも提案されているが、燃料に炭素源が含まれていることから、原理的に、煤を完全に無くすことはできなかった。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、製造設備や工程を複雑化させることなく、無機質球状化粒子中に固体炭素が混入するのを抑制でき、製品品質に優れた無機質球状化粒子を歩留まりよく且つ安全に製造することが可能な無機質球状化粒子製造装置、それを用いた無機質球状化粒子の製造方法、及び、それらによって得られる無機質球状化粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の態様を包含する。
即ち、請求項1に係る発明は、火炎中に無機質原料粉末が吹き込まれることで該無機質原料粉末を溶融・球状化する球状化用バーナを備えた球状化炉を有してなる無機質球状化粒子製造装置であって、前記球状化炉は、前記球状化用バーナに供給する燃料として、炭素源を含まない可燃性ガスを含有する気体燃料を供給することを特徴とする無機質球状化粒子製造装置である。
・・・(中略)・・・
【0019】
また、請求項9に係る発明は、請求項1~請求項8の何れかに記載の無機質球状化粒子製造装置であって、前記気体燃料に含有される、炭素源を含まない前記可燃性ガスが、アンモニアガス又は水素ガスの少なくとも何れかであることを特徴とする無機質球状化粒子製造装置である。
・・・(中略)・・・
【0086】
上記のように、本実施形態の製造方法においては、球状化炉2で生成した無機質球状化粒子Pを、球状化炉2の後段側に順次設けられたサイクロン6及びバグフィルター7を用いて分級することで、複数の特定粒径分布を有する無機質球状化粒子Pを、それぞれ別個の製品粒子とすることができる。
・・・(中略)・・・
【実施例】
【0092】
以下、実施例により、本発明に係る無機質球状化粒子製造装置、それを用いた無機質球状化粒子の製造方法、及び、それらによって得られる無機質球状化粒子についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
<実施例>
[製造条件]
本実施例においては、図1~図3に示すような、本発明に係る無機質球状化粒子製造装置1を用いて実験を行った。
具体的には、原料供給器83から原料供給管22に供給する無機質原料粉末Mとして、平均粒度:30μmのシリカ粉末:20kg/hを、酸素(キャリアガス):7.5Nm3/hで搬送した。
また、気体燃料供給管23に供給する気体燃料G1として、アンモニアガス(NH3):32Nm3/hを用いるとともに、支燃性ガス供給管24に供給する支燃性ガスG2として、酸素:24Nm3/hを用い、球状化部3の内部空間3Aに向けて火炎を形成した。
そして、無機質原料粉末Mを火炎中に噴出させて加熱することにより、溶解・球状化させることにより、無機質球状化粒子Pのサンプルを得た。
【0094】
[評価方法]
上記条件及び手順で得られた無機質球状化粒子Pについて、市販の測定装置を用い、従来公知に方法で、粒子中に含まれる炭素濃度を測定した。
【0095】
<比較例>
比較例においては、上記実施例と同様の構成を有する製造装置を用いるとともに、バーナの気体燃料供給管に供給する気体燃料として、液化プロパンガス(LPG):5Nm3/hを用いた点以外は、実施例と同様の条件及び手順で無機質球状化粒子を製造し、同様の方法で評価した。
【0096】
<評価結果>
上記評価試験の結果、本実施例で得られた無機質球状化粒子Pは、粒子中に含まれる炭素濃度が0.001(wt%)以下であり、非常に低く抑制されていることが確認できた。
ここで、本実施例では、球状化用バーナ21に供給する気体燃料G1として、炭素源を含まないNH3を用いていることから、無機質球状化粒子P中に含まれる微量の炭素も燃料に由来するものではなく、系外からの不純物等に由来するものと考えられる。
【0097】
一方、比較例の無機質球状化粒子は、粒子中に含まれる炭素濃度が0.018(wt%)であり、実施例に比べて非常に高濃度であることが確認された。
これは、本比較例においては、気体燃料としてLPGを用いているため、燃焼による排ガス中に、気体燃料中に含まれる炭素源に由来する大量の煤等が含まれることから、この煤が粒子中に大量に入り込むか、あるいは、粒子表面に大量に付着したものと考えられる。
【0098】
以上のような実施例の結果より、本発明に係る無機質球状化粒子製造装置を用いて無機質球状化粒子を製造することにより、粒子中に炭素が混入するのを抑制でき、製品品質に優れた無機質球状化粒子を製造できることが明らかとなった。」
イ 先願発明
上記アによると、先願明細書には次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているといえる。
「無機質球状化粒子の製造方法(段落0001)であって、
原料供給器83から原料供給管22に供給する無機質原料粉末Mとして、平均粒度:30μmのシリカ粉末:20kg/hを、酸素(キャリアガス):7.5Nm3/hで搬送し、
気体燃料供給管23に供給する気体燃料G1として、アンモニアガス(NH3):32Nm3/hを用いるとともに、支燃性ガス供給管24に供給する支燃性ガスG2として、酸素:24Nm3/hを用い、球状化部3の内部空間3Aに向けて火炎を形成し、
無機質原料粉末Mを火炎中に噴出させて加熱することにより、溶解・球状化させ(段落0093)、
生成した無機質球状化粒子を、球状化炉の後段側に順次設けられたサイクロン及びバグフィルターを用いて分級することで、複数の特定粒径分布を有する無機質球状化粒子を、それぞれ別個の製品粒子とすることができ(段落0086)、
粒子中に炭素が混入するのを抑制でき、製品品質に優れた無機質球状化粒子を製造できる(段落0098)
方法。」
(2) 甲1-2及び甲1-11に記載された周知技術
ア 甲1-2の記載
甲1-2には次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶融球状シリカの製造方法に関する。さらに詳しくは、諸性質の制御が容易で、生産性が大幅に向上した溶融球状シリカを破砕シリカから製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、半導体封止用樹脂組成物のフィラーとして、シリカを主体とするフィラーが使用されている。そして、半導体の高集積度化に伴って、上記したフィラーをより高充填した半導体封止用樹脂組成物が求められている。
【0003】そして近年、高充填化するためのフィラーとして、球状シリカを主体とするフィラーが研究・開発されている。上記した球状シリカを製造する方法のひとつとして、破砕シリカを溶融させて球状化させる方法が行われている。」
イ 甲1-11の記載
甲1-11には次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止材用球状シリカ質粉末、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体封止材として用いる樹脂には、例えば球状シリカ質粉末をフィラーとして充填することで流動性の向上が図られている。このような球状シリカ質粉末の製造方法としては、シリカ質原料粉末を高温の火炎中に噴出させ、溶融させて微細球状シリカ質粉末を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。」
ウ 甲1-2及び甲1-11に記載された周知技術
上記甲1-2及び甲1-11の記載によると、球状シリカのような「無機質球状化粒子を樹脂材料中に分散して半導体実装材料を形成する半導体実装材料用フィラーとして用いること」は、周知技術といえる。
(3) 甲1-6及び甲1-8に記載された周知技術
ア 甲1-6の記載
甲1-6には次の記載がある。
「【0001】
本発明は、無機質粉末、及びこれをゴム及び樹脂のいずれか一方に含有させてなる組成物に関する。詳しくは、無機質粉末の充填率が高くても流動性、成形性が良く、かつ成形時のバリが少ない半導体封止材料を得るために好適な無機質粉末及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型軽量化、高性能化の要求に対応して、半導体パッケージの小型化、薄型化、狭ピッチ化が益々加速している。また、その実装方法も配線基板などへの高密度実装に好適な表面実装が主流になりつつある。このように、半導体パッケージおよびその実装方法が進展する中、半導体封止材料にも高性能化、特に半田耐熱性、耐湿性、低熱膨張性、機械的特性、電気絶縁性などの機能向上が要求されている。これらの要求を満たすためエポキシ樹脂に無機質粉末、特に非晶質シリカ粉末を充填した樹脂組成物が一般に用いられており、半導体封止材料のほとんどがこの樹脂組成物によるものである。この半導体封止材料に充填される無機質粉末は、半田耐熱性、耐湿性、低熱膨張性、機械的強度向上の観点から、エポキシ樹脂に高充填させることが望ましい。
・・・(中略)・・・
【0024】
本発明の無機質粉末は球状であることが好ましい。「球状」の程度としては、平均球形度が0.85以上であることが好ましい。一般に無機質粉末の平均球形度を上げればゴム・樹脂組成物の転がり抵抗が少なくなり、溶融粘度が低下する傾向にある。本発明においては、平均球形度を0.90以上とすることが特に好ましい。
・・・(中略)・・・
【0029】
本発明の無機質粉末は、本発明で規定する特性を有していればどのような方法で製造されたものでもよい。その一例を示すと、高温火炎の形成とシリカ粉末原料の噴射とが可能な溶融炉と、溶融処理物の捕集系とからなる設備にて、シリカ粉末原料の粒度、原料供給量、炉内温度、炉内圧力、炉内風量条件等を調整して種々の粒度構成をもった非晶質シリカ粉末を製造し、それを更に分級、篩分け、混合して製造することができる。上記設備には多くの公知があり(例えば、特開平11-057451号公報)、それを採用することができる。」
イ 甲1-8の記載
甲1-8には次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無機質粉末およびこれを充填した樹脂組成物に関する。詳しくは、無機質粉末の充填率が高くても成形性が良く、かつ成形時のバリが少ない半導体封止材料を得るために好適な無機質粉末および樹脂組成物に関する。
・・・(中略)・・・
【0029】
本発明の無機質粉末は球状であることが好ましい。「球状」の程度としては、平均球形度が0.85以上であることが好ましい。一般に無機質粉末の平均球形度を上げれば半導体封止材料中での転がり抵抗が少なくなり、溶融粘度が低下する傾向にあるが、特に粉末の平均球形度を0.90以上とすることで、本発明の効果をより高めることができる。
・・・(中略)・・・
【0034】
本発明の無機質粉末は、本発明で規定する特性を有していればどのような方法で製造されたものでも良いが、非晶質シリカの場合の製造方法の一例をあげると、次のとおりである。高温火炎の形成ないしは高温火炎の形成と共にシリカ粉末原料を高温火炎に噴射することのできる加熱溶融炉と、加熱溶融処理物の捕集系とからなる公知の設備にて、シリカ粉末原料の粒度、原料供給量、炉内温度、炉内圧力、炉内風量条件などを調整して加熱溶融後、捕集した非晶質シリカ粉末を分級、篩分け、混合して製造することができる。なお捕集系には重量沈降室、サイクロン、バグフィルター、電気集塵機等の公知の設備を採用することができる。」
ウ 甲1-6及び甲1-8に記載された周知技術
上記甲1-6及び甲1-8の記載によると、「半導体封止材料における球状粒子の球形度を0.85以上とすること」は周知技術といえる。
(4) 甲1-1及び甲2-3に記載された周知技術
ア 甲1-1の記載
申立人1が甲第1号証として提出した国際公開第2019/167618号(以下「甲1-1」という)には次の記載がある。
「[0036] 本発明の溶融球状シリカ粉末は、樹脂との相溶性や反応性を高くする目的で、各種表面処理剤で処理されていてもよい。表面処理剤としては各種シラン化合物やシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、シリコーンオイル等が挙げられる。
・・・(中略)・・・
[0051] 表面処理は、用いるシラン化合物・シランカップリング剤に応じて公知の方法を適用すれば良く、乾式でも湿式でもよい。」
イ 甲2-3
申立人2が甲第3号証として提出した特開2017-95291号公報(以下「甲2-3」という。)には、次の記載がある。
「【0058】
3.樹脂組成物
前記シリカ粒子とマトリクス樹脂とを含む樹脂組成物も本発明の技術的範囲に包含される。本発明のシリカ粒子は、粗大な凝集物の割合が低減されているため、樹脂組成物に用いた場合にも均一性を高めやすくなり、添加効果、例えば充填密度を高めやすくなる。
前記樹脂組成物において、シリカ粒子は、さらにシランカップリング剤により表面処理されていてもよい。」
ウ 甲1-1及び甲2-3に記載された周知技術
上記甲1-1及び甲2-3の記載によると、「シリカ粒子をシランカップリング剤などのシラン化合物で表面処理すること」は、周知技術といえる。
(5) 甲2-2の記載
甲2-2には次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 粒径3μm以下の粒子が粒子全体の少なくとも70重量%を占め、粒径48μmを超える粒子が実質的に存在せず、平均粒径が0.5~2.5μmの範囲にあり、比表面積が5~30m2/gの範囲にあり、そして水媒体中レーザー回折散乱法により測定した凝集性が300秒以下であることを特徴とする微細球状溶融シリカ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微細球状溶融シリカに関する。詳しくは、凝集性が小さい微細球状溶融シリカに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、半導体封止用樹脂組成物のフィラーとして、シリカを主体とするフィラーが使用されており、そして、半導体の高集積度化により、上記したフィラーをより高充填した半導体封止用樹脂組成物が求められている。
・・・(中略)・・・
【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって、半導体封止用樹脂組成物に高充填化でき、高充填化しても成形不良をおこさない、凝集性が小さい微細シリカの開発が求められてきた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った結果、特定の性質を持つ微細溶融球状シリカにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、粒径3μm以下の粒子が粒子全体の少なくとも70重量%を占め、粒径48μmを超える粒子が実質的に存在せず、平均粒径が0.5~2.5μmの範囲にあり、比表面積が5~30m2/gの範囲にあり、そして水媒体中レーザー回折散乱法により測定した凝集性が300秒以下であることを特徴とする微細球状溶融シリカである。
・・・(中略)・・・
【0009】実施例1
添付図面の図1に示すような装置を用い、以下のような操作を行い微細溶融球状シリカを得た。中心管、円周管および外周管からなる3重管バーナーを設置した円筒状溶融炉(火炎反応装置)を用い、比表面積200m2/gの煙霧シリカ1(供給速度4.1kg/h)を酸素2(流量4m3/h)と共に同伴させて円周管より導入し、水素3(流速8m3/h)を中心管および外周管より供給して、火炎反応装置5中で火炎を形成させて溶融し、溶融球状シリカを生成した。次いで、該溶融球状シリカを火炎処理を実施した気体中に維持したまま、流速20m/sでサイクロン6に導き、溶融球状シリカ8と、微細溶融球状シリカを含むガス7とに固気分離した。そして、得られた微細溶融球状シリカを含むガス8をバグフィルター9に通すことにより、微細溶融球状シリカを捕集した。得られた微細溶融球状シリカの性状を表1に示す。
【0010】実施例2
煙霧シリカの供給速度を2.0kg/hとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた微細溶融球状シリカの性状を表1に示す。
【0011】実施例3
煙霧シリカの供給速度を1.1kg/hとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた微細溶融球状シリカの性状を表1に示す。
【0012】比較例1~2
金属シリコン粉末を火炎により酸化させて得られた球状シリカ市販品2種の性状を表1に示す。
【0013】
【表1】
[図:0001414141000001.jpg]
【0014】表1に示すように、本発明の微細溶融球状シリカは、非常に細かい平均粒径を有しているにもかかわらず、非常に優れた分散性(凝集性が小さい)を示す。同等の平均粒径と比表面積を有している比較例に示した球状シリカは、他の性質は本発明の微細溶融球状シリカと同等であるが、分散性が悪い(凝集性が大きい)。
【発明の効果】本発明の微細溶融球状シリカは、凝集性が小さいため、封止用樹脂に高充填することができ、かつ成形不良をおこさない。」
2 当審の判断
先願は、特許出願人大陽日酸株式会社により、萩原義之、斉藤岳志を発明者として、本件の優先権主張の日(令和2年12月10日)前の令和2年9月9日に特許出願され、その後、令和4年3月22日に出願公開されたものである。
(1) 本件発明1~5について
ア 対比
本件発明1と先願発明とを対比する。
(ア) 先願発明の「無機質球状化粒子」は「粒子材料」といえる。
(イ) 上記1(5)によると、甲2-2には、「半導体封止用樹脂組成物に高充填化でき、高充填化しても成形不良をおこさない、凝集性が小さい微細シリカ」(段落0004)の開発との課題を、「比表面積200m2/gの煙霧シリカ1(供給速度4.1kg/h)を酸素2(流量4m3/h)と共に同伴させて円周管より導入し、水素3(流速8m3/h)を中心管および外周管より供給して、火炎反応装置5中で火炎を形成させて溶融」(段落0009)することによって、「粒径3μm以下の粒子が粒子全体の少なくとも70重量%を占め、粒径48μmを超える粒子が実質的に存在せず、平均粒径が0.5~2.5μmの範囲にあり、比表面積が5~30m2/gの範囲にあり、そして水媒体中レーザー回折散乱法により測定した凝集性が300秒以下であることを特徴とする微細球状溶融シリカ。」(請求項1)を製造することにより解決する発明が記載されている。
そして、先願発明は、上記甲2-2に記載された発明が解決する課題を解決するものではなく、また無機質原料粉末Mとして煙霧シリカを用いるものではなく、製造方法が異なるから、先願発明の「無機質球状化粒子」が、甲2-2の請求項1に記載された「微細球状溶融シリカ」を含む蓋然性は低い。
したがって、先願発明の「無機質球状化粒子」は、「(粒径3μm以下の粒子が粒子全体の少なくとも70重量%を占め、粒径48μmを超える粒子が実質的に存在せず、平均粒径が0.5~2.5μmの範囲にあり、比表面積が5~30m2/gの範囲にあり、そして水媒体中レーザー回折散乱法により測定した凝集性が300秒以下であることを特徴とする微細球状溶融シリカを除く)」といえる点で、本件発明1の「粒子材料」と共通する。
(ウ) 先願発明のアンモニアガスは炭素非含有ガスであり、先願発明の溶解・球状化させる工程において炭素含有ガスを用いていない。
そうすると、先願発明の「原料供給器83から原料供給管22に供給する無機質原料粉末Mとして、平均粒度:30μmのシリカ粉末:20kg/hを、酸素(キャリアガス):7.5Nm3/hで搬送し、
気体燃料供給管23に供給する気体燃料G1として、アンモニアガス(NH3):32Nm3/hを用いるとともに、支燃性ガス供給管24に供給する支燃性ガスG2として、酸素:24Nm3/hを用い、球状化部3の内部空間3Aに向けて火炎を形成し、
無機質原料粉末Mを火炎中に噴出させて加熱することにより、溶解・球状化させる」工程は、本件発明1の「前記金属酸化物に含まれる金属及び/又は前記金属酸化物を主成分とする原料粒子材料を、炭素を含有しない可燃性の炭素非含有ガスを体積基準で100%含有する可燃性ガスを燃焼して得られる火炎中に投入して燃焼及び/又は溶融させることで第1粒子材料を形成する球状化工程」に相当する。
(エ) 先願発明の、平均粒度:30μmのシリカ粉末である無機質原料粉末Mは、破砕シリカに煙霧シリカを添加し、混合したものではなく、また、煙霧シリカでもない。
したがって、先願発明は、「(前記原料粒子材料が破砕シリカに煙霧シリカを添加し、混合したものを除く。)(前記原料粒子材料が煙霧シリカであるものを除く。)」といえる点で、本件発明1と共通する。
(オ) 一致点・相違点
以上を踏まえると、本件発明1と先願発明とは次の点で一致し、相違する。
a 一致点
「粒子材料(粒径3μm以下の粒子が粒子全体の少なくとも70重量%を占め、粒径48μmを超える粒子が実質的に存在せず、平均粒径が0.5~2.5μmの範囲にあり、比表面積が5~30m2/gの範囲にあり、そして水媒体中レーザー回折散乱法により測定した凝集性が300秒以下であることを特徴とする微細球状溶融シリカを除く)を製造する方法であって、
前記金属酸化物に含まれる金属及び/又は前記金属酸化物を主成分とする原料粒子材料を、炭素を含有しない可燃性の炭素非含有ガスを体積基準で100%含有する可燃性ガスを燃焼して得られる火炎中に投入して燃焼及び/又は溶融させることで第1粒子材料を形成する球状化工程を有する粒子材料の製造方法(前記原料粒子材料が破砕シリカに煙霧シリカを添加し、混合したものを除く。)(前記原料粒子材料が煙霧シリカであるものを除く。)。」
b 相違点A
本件発明1が「樹脂材料中に分散して半導体実装材料を形成する粒子材料を含む半導体実装材料用フィラー」を製造する方法であり、粒子材料について「(粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子を含むものを除く)」と特定されているのに対し、先願発明の製造方法に係る「無機質球状化粒子」の用途が「樹脂材料中に分散して半導体実装材料を形成する」「半導体実装材料用フィラー」と特定されておらず、また「(粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子を含むものを除く)」点についても特定されていない点。(以下「相違点A」という。)
c 相違点B
本件発明1の粒子材料が「400mLのエタノール中に50g分散させた分散液に対して、38kHz、300Wの超音波を20分間照射した後に24時間静置したときの上澄み液を目開き20μmのナイロンメッシュスクリーンにて濾過し、スクリーン上に残った炭素を含有する着色異物が10個以下であり、体積平均粒径が0.1μm以上40μm以下、球形度が0.85以上である金属酸化物を主成分と」する点が特定されているのに対し、先願発明の「無機質球状化粒子」にこのような特定がない点。(以下「相違点B」という。)
d 相違点C
本件発明1が、「前記第1粒子材料に対してシラン化合物により表面処理を行い前記粒子材料を得る表面処理工程」を有するのに対し、先願発明が表面処理工程を有していない点。(以下「相違点C」という。)
イ 相違点の検討
(ア) 相違点A
a 上記1(2)のとおり、「無機質球状化粒子を樹脂材料中に分散して半導体実装材料を形成する半導体実装材料用フィラーとして用いること」は、周知技術である。
そうすると、先願発明により製造される無機質球状化粒子を「樹脂材料中に分散して半導体実装材料を形成する半導体実装材料用フィラーとして用いること」は、周知技術の付加であって、新たな効果を奏するものではないから、課題解決のための具体化手段における微差といえる。
b 先願発明は、平均粒度:30μmのシリカ粉末を無機質原料粉末Mとするものであって、先願明細書段落0002の記載によると「概ね原料粉末に近い粒径の製品粒子が得られ」、また、「後段側に順次設けられたサイクロン及びバグフィルターを用いて分級することで、複数の特定粒径分布を有する無機質球状化粒子を、それぞれ別個の製品粒子とすることができる」から、粒径45μm未満のものを取り出し、「(粒子径が45[μm]以上75[μm]以下の範囲にある非晶質球状シリカ質粒子を含むものを除く)」ことは、当業者が適宜なし得る微差に過ぎない。
したがって、相違点Aに係る本件発明1の構成は、先願発明との実質的な相違ではない。
(イ) 相違点B
a 球形度
上記1(3)のとおり、半導体封止材料における球状粒子の球形度を0.85以上とすることは、周知技術であるから、球形度についての相違点Bに係る本件発明1の構成は、先願発明との実質的な相違ではない。
b 着色異物の数
先願発明は、無機質原料粉末Mとしてのシリカ粉末を溶解・球形化させる際に炭素含有ガスを用いない。そして、「可燃性ガスを炭化水素ガスに変えて水素やアンモニアなどの炭素を含有しない可燃性のガス(炭素非含有ガス)を採用することで、不完全燃焼が発生しても炭素などの導電性粒子が生成しない」(本件明細書段落0011)のであるから、先願発明により得られる無機質球状化粒子に含まれる「炭素を含有する着色異物」も本件発明1と同程度である蓋然性が高い。
そうすると、着色異物の数についての相違点Bに係る本件発明1の構成は、先願発明との実質的な相違ではない。
c 体積平均粒径
平均粒度:30μmのシリカ粉末を無機質原料粉末Mとし、「概ね原料粉末に近い粒径の製品粒子が得られ」る先願発明において、製造される無機質球状化粒子の体積平均粒径は0.1μm以上40μm以下となる蓋然性が高い。
また、先願発明は、「生成した無機質球状化粒子を、球状化炉の後段側に順次設けられたサイクロン及びバグフィルターを用いて分級することで、複数の特定粒径分布を有する無機質球状化粒子を、それぞれ別個の製品粒子とすることができ」るから、任意の体積平均粒径のものを製造し得る。
よって、体積平均粒径についての相違点Bに係る本件発明1の構成は、先願発明との実質的な相違ではない。
d 小括
以上のとおり、相違点Bに係る本件発明1の構成は、先願発明との実質的な相違ではない。
(ウ) 相違点Cについて
上記1(4)のとおり、「シリカ粒子をシランカップリング剤などのシラン化合物で表面処理すること」は周知技術である。
そうすると、相違点Cに係る本件発明1の構成は、周知技術の付加であって、新たな効果を奏するものではないから、課題解決のための具体化手段における微差といえる。
ウ まとめ 以上のとおり、上記相違点A~Cはいずれも実質的なものではないから、本件発明1と先願発明とは実質的に同一である。
エ 本件発明2~5について
(ア) 先願発明の、無機質原料粉末Mとしてのシリカ粉末、「無機質球状化粒子」はいずれも金属酸化物であるシリカである。
したがって、本件発明1と同様に、本件発明2、5も、先願発明と実質的に同一である。
(イ) 先願発明において、可燃性ガスは100%アンモニアガスである。
したがって、本件発明1と同様に、本件発明3も、先願発明と実質的に同一である。
(ウ) 甲2-5の段落0019の記載によると、先願明細書には、先願発明の気体燃料G1をアンモニアガスに代えて水素とした発明も記載されているといえる。
したがって、本件発明1と同様に、本件発明4も、先願発明と実質的に同一である。
(2) 本件発明6~8について
上記(1)イ(ア)aのとおり、先願明細書には、先願発明により製造される「無機質球状化粒子」の発明(以下「先願発明1」という。)、先願発明により製造される「無機質球状化粒子」を有する半導体実装材料の発明(以下「先願発明2」という。)も実質的に記載されているといえる。
そうすると、本件発明6、7は、先願発明1と実質的に同一であり、また、本件発明8は、先願発明2と実質的に同一である。
(3) 特許権者の主張
特許権者は、令和5年10月27日提出の意見書(4ページ19~最下行)で、理由3(拡大先願)について次の主張を行った。
「イ 本件発明1及び6との比較
本件発明1及び6では、シラン化合物により表面処理を行う表面処理工程を相違点として有している点で先願とは異なる発明です。
本件発明1では、上述の(4)で説明しましたように、通常の表面処理よりも樹脂との密着性が高い表面処理が実現できていますので、この相違点は新たな効果を奏するものと言えます。
従いまして、本件発明1及び6と先願発明とは同一発明ではないことはもちろん、実質的に同一な発明でもありません。」
しかしながら、上記(1)イ(ウ)のとおり、「シリカ粒子をシランカップリング剤などのシラン化合物で表面処理すること」は周知技術であって、相違点Cに係る本件発明1の構成は、周知技術の付加であり、新たな効果を奏するものではなく、課題解決のための具体化手段における微差といえるから、特許権者の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明1~8は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた甲2-5に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1~8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-701206