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特許異議申立

2026-700341

ゴム発泡体、産業用ロボットの可撓性チューブ又はホース用の断熱材

審判番号
2026-700341
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-049787
登録番号
7759985
請求日
2026年04月21日
審決日
2026年06月19日
公報発行日
2026年07月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社イノアックコーポレーション
  • 【権利者代理人】弁理士法人グランダム特許事務所
  • 【異議申立人】福井 隆一
審判長/審判官
  • 審判長 松田 成正
  • 審判官 水野 明梨
  • 審判官 加藤 友也
分類
P1651.121-Y (C08J) / P1651.537-Y (C08J) / P1651.536-Y (C08J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
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特許第7759985号発明「ゴム発泡体、産業用ロボットの可撓性チューブ又はホース用の断熱材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7759985号の請求項1及び2に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7759985号(以下、「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、令和1年12月24日を出願日とする特願2019-232550号の一部を令和6年3月26日に新たな特許出願(特願2024-49787号)としたものであって、令和7年10月16日にその特許権の設定登録(請求項の数2)がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和8年4月21日に特許異議申立人 福井 隆一(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1及び2)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 アクリロニトリル-ブタジエンゴムと、ポリ塩化ビニルと、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤と、を含むゴム発泡体であって、 前記アクリロニトリル-ブタジエンゴムと前記ポリ塩化ビニルとの合計を100質量部とした場合に、前記アクリロニトリル-ブタジエンゴムは、50質量部以上90質量部以下であり、 前記ハロゲン系難燃剤の含有量は45質量部以上65質量部以下であり、前記アンチモン系難燃剤の含有量は10質量部以上20質量部以下であり、 熱伝導率0.032W/m・K以上0.043W/m・K以下である、ゴム発泡体。 【請求項2】 請求項1に記載のゴム発泡体を備える、産業用ロボットの可撓性チューブ又はホース用の断熱材。」 第3 特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由の概要等 令和8年4月21日に特許異議申立人から提出された特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載された特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許発明1及び2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件明細書において発明の課題を解決するための手段として実質的に記載されているのは、粒径の異なる2種以上のADCA粒子を用いた発泡制御による低比重化である。しかるに、請求項1及び2は、そのような具体的技術事項を反映しないまま、組成条件および熱伝導率によって広く一般化されたものにとどまる。そして、出願時の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明において開示された内容を請求項1及び2に係る範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。さらに、請求項1において、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求しているということができる。 したがって、請求項1及び2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであり、許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない。 3 申立理由3(明確性要件) 本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 請求項1は、ゴム発泡体を「熱伝導率0.032W/m・K以上0.043W/m・K以下」という数値によって特定している。したがって、当該熱伝導率がいかなる測定方法による値であるかは、請求項の技術的範囲を画する上で重要な事項である。 本件明細書には、当該熱伝導率について、「熱伝導率は、JIS-A1412-2に準拠して測定される値である。熱伝導率は、京都電子工業株式会社製 迅速熱伝導率計(QTM-500)を用いてプロープ法により測定した。」(【0038】)と記載されている。 しかしながら、JIS-A1412-2に規定される測定方法は定常法に基づくものであるのに対し、プロープ法は非定常法に基づく測定方法である。したがって、両者は測定原理を異にし、その結果得られる測定値も当然に一致するとは限らない。そうすると、請求項1にいう熱伝導率の数値範囲が、いずれの測定方法による値を意味するのかが一義的に明らかではない。 このように、請求項1において発明特定事項の中核を成す熱伝導率について、明細書中に測定原理の異なる複数の方法が併存し、どの方法によって把握される値を基準とすべきかが明らかでない以上、当業者は、あるゴム発泡体が請求項1の範囲に属するか否かを明確に判断することができない。したがって、請求項1は、その技術的範囲が明確でない。 本件特許発明2についても同様である。 以上のとおり、請求項1及び2は、熱伝導率という発明特定事項について、いかなる測定方法による値を意味するのかが一義的に明らかでなく、その技術的範囲を明確に把握することができない。したがって、請求項1及び2は、特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件を満たさない。 4 申立理由4(実施可能要件) 本件特許の請求項1及び2に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件明細書には、請求項1に記載された広い範囲のうち、少なくとも粒径の異なる2種以上のADCA粒子を用いた発泡制御という特定の実施態様についてのみが実施可能に記載されているにすぎず、それ以外の部分については、当業者が本件明細書および図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、どのように本件特許発明1を実施すればよいかを理解できない。 本件特許発明2についても同様である。 以上のとおり、本件明細書に、特定の実施の形態のみが実施可能に記載されているに過ぎず、請求項1に係る発明全体について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。したがって、本件特許発明1及び2は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない。 5 証拠方法 甲第1号証:欧州特許出願公開第3372631号明細書 甲第2号証:欧州特許出願公開第2450398号明細書 甲第3号証:特開平6-345979号公報 甲第4号証:特開2018-35208号公報 証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。 第4 申立理由1(甲1に基づく進歩性)について 1 甲1に記載された事項等 (1)甲1に記載された事項 甲1には、「FLEXIBLE FOAM WITH IMPROVED INSULATION PROPERTIES」(当審訳:断熱特性が向上した可とう性フォーム)に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲1は外国語文献のため、訳文のみを摘記した。下線は当審で付したものである。 ・「[0001]本発明は、少なくとも1種のエラストマーおよび少なくとも1種の高分子系難燃剤に基づく発泡ポリマー(ブレンド)を含む、断熱用の可とう性難燃材料、そのような材料の製造方法、ならびにそのような材料の用途に関する。」([0001]) ・「[0006]さらに、熱放射も低減することができる。熱放射は、セル内部のガスの特性、その組成、およびフォームのセル径の影響を受ける。前述したような低熱伝導性ガスまたはガス混合物を用いる際の問題があるため、このような手法は、可とう性フォームが必要とされる大半の断熱用途には有用ではない。したがって、熱放射を低減するためには、セル径の低減のみが残された手段となる。近年多くの改良がなされてきたものの、ガス分子同士が主として相互作用するのではなく、セル表面間を直線的に移動する場合にのみ、顕著な前進が達成され得る。この効果は、クヌーセン流(Knudsen flow)またはクヌーセン拡散(Knudsen diffusion)として知られている。ガス分子の平均自由行程とセル径との商が0.5未満になると、熱放射はもはや生じなくなる。このような特性を達成するには、セル径を(セル内ガスおよび温度に応じて詳細は異なるが)ナノメートル領域にする必要がある。そのような材料の加工の困難性、著しく高いフォーム密度(同一体積に対するセル壁量の増加に起因し、その結果セル壁が著しく薄くなることによる)、および柔軟性の欠如のため、それらは可とう性エラストマーフォーム(FEF)の代替とはならない。」([0006]) ・「[0016]アクリロニトリル・ブタジェンゴム(NBR)は、15~50重量%、好ましくは20~35重量%のアクリロニトリル含有量を有する。これは、この範囲においてPVCとの適合性が最も良好であり、かつ加硫速度、低温柔軟性等の特性のバランスが良好であるためである。ムーニー粘度(100℃におけるML1+4)は20~100、好ましくは40~80ムーニー単位である。ポリクロロプレン(CR)は、硫黄変性型、キサントゲン変性型、またはメルカプタン変性型から選択することができ、好ましくはメルカプタン変性グレードである。ポリクロロプレンは、100℃におけるML1+4で25~125ムーニー単位、好ましくは35~70ムーニー単位のムーニー粘度で用いることができる。エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)は、第三成分モノマー(ジエン)としてエチリデンノルボルネン(ENB)を含む。ジエン含有量は2重量%超、好ましくは5重量%超である。100℃におけるML1+4で20~100、好ましくは20~80ムーニー単位のムーニー粘度が適している。」([0016]) ・「[0018]本材料はさらに、少なくとも40phr、好ましくは少なくとも55phrの少なくとも1種の高分子系難燃剤を含む。 [0019]前記高分子系難燃剤は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも70重量%のハロゲン、好ましくは臭素を含有する。」([0018]及び[0019]) ・「[0028]本材料はさらに、ハロゲン含有可塑剤/ポリマーおよび高分子系難燃剤のための少なくとも1種のシナジストを含んでもよく、例えば三酸化アンチモン、スズ酸亜鉛、水酸化スズ酸亜鉛、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、ホウ酸亜鉛、オキシ塩化ビスマス等が挙げられる。好ましいのはアンチモン(Sb)系および/または亜鉛(Zn)系材料であり、特に好ましいのは三酸化アンチモンおよび/またはスズ酸亜鉛である。シナジストは、火災時の反応における煙抑制および/または発熱放出の観点から、難燃剤の効率を高める。所望の難燃性の程度によっては、相乗剤と従来の難燃剤との組合せのみが、所望の結果を達成し得る。ハロゲン化難燃剤と組み合わせて三酸化アンチモンを使用すると、最高レベルの難燃性を達成できる一方、スズ酸亜鉛を使用すると煙の発生が少なくなる。高分子系ハロゲン化難燃剤とシナジストとの重量比は、10:1~1:1、好ましくは7:1~2:1である。このような比率により、難燃性とコストの最良のバランスが得られる。」([0028]) ・「[0034]本材料は、ゴム工業において広く用いられている標準的方法、例えば密閉式(Banbury○R(当審注:Rを○で囲んだ記号である。))ミキサー、単軸もしくは二軸スクリュー押出機、またはロールにより混練することができ、好ましくは密閉式ミキサーである。本材料の成形は、押出機、プレス、カレンダー等で行うことができる。シートおよびチューブを容易に形成し、熱風炉、マイクロ波炉、塩浴等の中で連続的に加硫および発泡させることができるため、押出機が好ましい。中でも、追加の洗浄工程が不要であること等の理由から、熱風炉およびマイクロ波炉が好ましい。」([0034]) ・「[0047]本材料のもう一つの利点は、製造設備に関する汎用性である。例えば押出または共押出により、連続工程で経済的に製造することができる。本材料はまた、単層または多層システムとして、直接、積層、成形、共成形、オーバーモールド、溶着等を行うことができ、そのため、自動車、輸送、航空、建築・建設、海洋・オフショア、家具、機械工学その他多くの産業において、熱成形その他の成形方法によっても、各種表面に対して制限なく適用することができる。本材料は特に、様々な肉厚および内径を有するチューブおよびシートの形態で、連続工程により製造することができ、最も適した肉厚は3~50mmである。」([0047]) ・「[0050]押出は、ストリップ供給式単軸真空押出機を用いて行い、未発泡のシートおよびチューブを得た。これらを、5基の炉からなる熱風炉カスケード内で同時に架橋および発泡させ、肉厚25mmのシート、ならびに肉厚25mm・内径22mmのチューブとした。表1には、配合物に使用した原材料を示す。表2には、評価した配合物のレシピの概要を示し、表3および表4には、発泡・架橋後材料の技術特性を示す。 ・・・(略)・・・ [図:0001437447000001.jpg] 」([0050]) ・「[0051] ・・・(略)・・・ [図:0001437447000002.jpg] 」([0051]) (2)甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を、表2及び3に記載された比較例の1*又は3*に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「表2の比較例の1*又は3*に示すように、アクリロニトリル・ブタジエンゴムを60.0、ポリ塩化ビニルを15.0、塩素化パラフィンを60.0、三酸化アンチモンを7.0配合された原材料を押出し、同時に架橋および発泡させて得た、熱伝導率が0.0325W/m・K又は0.0328W/m・Kである可とう性のチューブ。」(当審注:「表2の比較例の1*又は3*」については上記(1)参照。) 2 本件特許発明1について (1)対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明における「アクリロニトリル・ブタジエンゴム」は本件特許発明1における「アクリロニトリル-ブタジエンゴム」に相当し、以下、同様に、「塩素化パラフィン」は「ハロゲン系難燃剤」に、「三酸化アンチモン」は「アンチモン系難燃剤」に、それぞれ相当する。 甲1発明における「アクリロニトリル・ブタジエンゴム」の「60.0」は、「アクリロニトリル・ブタジエンゴム」の「60.0」及び「ポリ塩化ビニル」の「15.0」の合計を100とした場合には、「80.0」と計算されるから、甲1発明は本件特許発明1における「前記アクリロニトリル-ブタジエンゴムと前記ポリ塩化ビニルとの合計を100質量部とした場合に、前記アクリロニトリル-ブタジエンゴムは、50質量部以上90質量部以下であり」という発明特定事項の条件を満たす。 甲1発明における「塩素化パラフィン」の「60.0」は、「アクリロニトリル・ブタジエンゴム」の「60.0」及び「ポリ塩化ビニル」の「15.0」の合計を100とした場合には、「80.0」と計算され、同様に「三酸化アンチモン」の「7.0」は「9.3」と計算されるから、甲1発明は本件特許発明1における「前記ハロゲン系難燃剤の含有量は45質量部以上65質量部以下であり、前記アンチモン系難燃剤の含有量は10質量部以上20質量部以下であり」という発明特定事項の条件を満たさない。 甲1発明の「熱伝導率が0.0325W/m・K又は0.0328W/m・Kである」は本件特許発明1における「熱伝導率0.032W/m・K以上0.043W/m・K以下である」という発明特定事項の条件を満たす。 甲1発明における「原材料を押出し、同時に架橋および発泡させて得た」「可とう性のチューブ」は本件特許発明1における「ゴム発泡体」に相当する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「アクリロニトリル-ブタジエンゴムと、ポリ塩化ビニルと、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤と、を含むゴム発泡体であって、 前記アクリロニトリル-ブタジエンゴムと前記ポリ塩化ビニルとの合計を100質量部とした場合に、前記アクリロニトリル-ブタジエンゴムは、50質量部以上90質量部以下であり、 熱伝導率0.032W/m・K以上0.043W/m・K以下である、ゴム発泡体。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点> 本件特許発明1においては「前記ハロゲン系難燃剤の含有量は45質量部以上65質量部以下であり、前記アンチモン系難燃剤の含有量は10質量部以上20質量部以下であり」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。 (2)判断 上記相違点について検討する。 甲1には、比較例の1*又は3*から認定した甲1発明において、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲1発明において、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものではない。 そして、本件特許発明1は「耐久性が良好で高断熱性を有する」(本件特許の発明の詳細な説明の【0006】)という本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 (3)特許異議申立人の主張について ア 特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、特許異議申立書の第28ページにおいて、おおむね次のとおり主張する。 「以上のとおり、甲第1号証には、本件特許発明1の技術的骨格であるNBR/PVC系発泡断熱材、ハロゲン系難燃剤、アンチモン系難燃剤および低熱伝導率が開示されている。 甲第3号証は、請求項、明細書本文並びに表1の実施例により、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの配合範囲およびその量調整の設計思想を具体的に示している。さらに、甲第4号証は、請求項、明細書本文並びに表3および表5の実施例により、本件特許発明1の構成要件である臭素系難燃剤とアンチモン系難燃剤とを併用することおよびそれらの配合量が、本件出願時の技術水準であったことを示している。しかも、甲第3号証および甲第4号証は、対象ポリマーこそ異なるものの、いずれも臭素系難燃剤とアンチモン系難燃剤との併用を前提とし、その量が少なすぎれば難燃性が不足し、多すぎれば物性が低下するという共通の技術課題を扱っている。 したがって、当業者は、甲第1号証に記載された発明に対し、甲第3号証が教示し、甲第4号証によって本件出願時の技術水準であったことが示された当該難燃剤配合の思想を適用し、難燃性と物性とのバランスをみて配合量を適宜設定することは設計変更に過ぎない。それにより奏される効果も、甲第1号証、甲第3号証および甲第4号証の記載から当業者が予測できる程度のものである。」 イ 特許異議申立人の主張についての判断 上記主張について検討する。 甲3及び4には、臭素系難燃剤とアンチモン系難燃剤とを併用すること及び臭素系難燃剤とアンチモン系難燃剤の含有量として、本件特許発明1において特定される数値範囲内のものが記載されているが、基材樹脂となる熱可塑性樹脂が、甲3はエチレン酢酸-ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体又はポリエチレンであり、甲4はポリプロピレン、ポリアミド66又はポリブチレンテレフタレートであり、本件特許発明1の基材樹脂であるアクリロニトリル-ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルの組み合わせとは全く異なるものであるし、臭素系難燃剤とアンチモン系難燃剤の含有量は基材樹脂の種類によらないという技術常識がある訳でもないから、甲3又は4に記載された事項を直ちに甲1発明に適用することは当業者といえども容易に想到し得たことであるとはいえず、「当業者は、甲第1号証に記載された発明に対し、甲第3号証が教示し、甲第4号証によって本件出願時の技術水準であったことが示された当該難燃剤配合の思想を適用し、難燃性と物性とのバランスをみて配合量を適宜設定することは設計変更に過ぎない。」とはいえない。 したがって、上記主張は採用できない。 (4)まとめ したがって、本件特許発明1は甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 本件特許発明2について 本件特許発明2は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4 申立理由1についてのむすび したがって、本件特許発明1及び2は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由1によっては取り消すことができない。 第5 申立理由2(サポート要件)について 1 サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 2 サポート要件の判断 (1)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲(以下、「特許請求の範囲」という。)の記載は上記第2のとおりである。 (2)発明の詳細な説明の記載 本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)には主に次の記載がある。 ・「【技術分野】 【0001】 本開示は、ゴム発泡体、及びゴム発泡体の製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 円筒形のゴム成形体として、例えば、特許文献1,2のホースが開示されている。 ・・・(略)・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかし、従来の断熱用の発泡体は、耐久性が必ずしも十分とは言えず、断熱性も必ずしも十分とは言えず、これらの物性について改良が望まれていた。 本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、耐久性が良好で高断熱性を有するゴム発泡体を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。」 ・「【課題を解決するための手段】 【0005】 〔1〕アクリロニトリル-ブタジエンゴムと、ポリ塩化ビニルと、を含むゴム発泡体であって、 前記アクリロニトリル-ブタジエンゴムと前記ポリ塩化ビニルとの合計を100質量部とした場合に、前記アクリロニトリル-ブタジエンゴムは、50質量部以上90質量部以下であり、 比重が、0.05以上0.15以下である、ゴム発泡体。」 ・「【発明の効果】 【0006】 本開示のゴム発泡体は、耐久性が良好で高断熱性を有する。」 ・「【発明を実施するための形態】 【0008】 ここで、本開示の望ましい例を示す。 〔2〕ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤からなる群より選ばれた少なくとも1種を含む、〔1〕に記載のゴム発泡体。 この構成とすると、ゴム発泡体の難燃性が高くなる。」 ・「【0012】 1.ゴム発泡体1 ゴム発泡体1は、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)と、ポリ塩化ビニル(PVC)と、を含む。アクリロニトリル-ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとの合計を100質量部とした場合に、アクリロニトリル-ブタジエンゴムは、ゴム発泡体1の低い熱伝導性を維持しつつ、優れた耐摩耗性を発揮させるという観点から、50質量部以上90質量部以下である。 ・・・(略)・・・ 【0014】 (2)アクリロニトリル-ブタジエンゴム アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)は、公知のものを適宜選択して使用すれば、特に制限されるものではない。アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)に含まれるアクリロニトリル量(AN含量)は特に限定されない。・・・(略)・・・ 【0015】 (3)難燃剤 ゴム発泡体1は、難燃剤を含有することが好ましい。難燃剤としては、任意の難燃剤を用いることができる。難燃剤の種類は特に限定されないが、発泡体の引張弾性率等の特性を低下させることなく少ない配合量で高い難燃効果を発揮させる観点から、ハロゲン系難燃剤とアンチモン系難燃剤を組み合わせて使用することが好ましい。 【0016】 ハロゲン系難燃剤としては、塩素化合物、臭素化合物が例示され、これらの2種以上を併用してもよい。 塩素化合物としては、塩素化パラフィン、パークロロペンタシクロデカンを好適に例示できる。 臭素化合物としては、テトラブロモビスフェノールA、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモシクロドデカン、臭素化ポリスチレンを好適に例示できる。 【0017】 アンチモン系難燃剤としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン等を例示することができる。 【0018】 ハロゲン系難燃剤とアンチモン系難燃剤を組み合わせて使用する場合において、ハロゲン系難燃剤の含有量(添加量)は、ゴム成分100質量部(アクリロニトリル-ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとの合計を100質量部)に対して、高い耐久性を維持しつつ、十分な難燃性を付与する観点から30質量部以上80質量部以下が好ましく、45質量部以上65質量部以下がより好ましい。 アンチモン系難燃剤の含有量(添加量)は、ゴム成分100質量部(アクリロニトリル-ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとの合計を100質量部)に対して、高い耐久性を維持しつつ、十分な難燃性を付与する観点から5質量部以上30質量部以下が好ましく、10質量部以上20質量部以下がより好ましい。」 ・「【0024】 (6)ゴム発泡体1の形状 ゴム発泡体1の形状は、特に限定されない。ゴム発泡体1の形状は、用途に応じて適宜変更できる。ゴム発泡体1の形状として、例えば円筒形を好適に採用できる(図1参照)。円筒形のゴム発泡体1は、断熱チューブとして使用できる。なお、断熱チューブは、産業用ロボット等用の可撓性チューブ、可撓性ホースの断熱に用いられる。 【0025】 (7)実施形態のゴム発泡体1の作用効果 ゴム発泡体1は、アクリロニトリル-ブタジエンゴムと、ポリ塩化ビニルと、を所定割合で含むから、耐久性が良好である。このゴム発泡体1は、EPDMスポンジよりも表面が滑りやすいため、耐摩耗性に優れている。」 ・「【0026】 2.ゴム発泡体1の製造方法 (1)ゴム発泡体1の製造方法 ゴム発泡体1の製造方法では、アクリロニトリル-ブタジエンゴムと、ポリ塩化ビニルと、アゾジカルボン酸アミドの粒子と、を含有する混合物を原料とする。アゾジカルボン酸アミドの粒子として、メジアン径が異なる2種以上の粒子を用いる。2種以上の粒子の各粒子のメジアン径は、互いに1μm以上15μm以下異なる。2種以上の粒子のいずれの粒子のメジアン径も、5μm以上40μm以下である。 このようにメジアン径が異なる2種以上のアゾジカルボン酸アミドの粒子を用いると、耐久性が良好で高断熱性を有するゴム発泡体1が得られる推測理由を説明する。 この製造方法では、まず、小さいメジアン径を有する粒子が発泡しながら、加硫が適度に進むと考えられる。この際、発泡体は、ガスを保持している。その後、小さいメジアン径を有する粒子の発泡が終わりかけたところで、大きいメジアン径を有する粒子が発泡することで、ゴム発泡体1の比重が低くなると考えられる。 ・・・(略)・・・ 【0029】 ゴム発泡体の好適な製造方法の一例を示す。まず、ゴム成分、相溶化剤、充填剤等をバンバリーミキサー、ニーダー等で一次混練する。その際、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、発泡剤、発泡助剤については含めない。一次混練の条件は、温度50℃~180℃、混練時間3分~30分が好ましい。その後、得られた一次混練物に、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、発泡剤、発泡助剤等を加えて二次混練する。二次混練の条件は、温度20℃~80℃、混練時間3分~30分が好ましい。得られた二次混練物は、カレンダー成形機、押出成形機等によって所望の形状にされる。その後、架橋・発泡金型に収容し、一次架橋・発泡と二次架橋・発泡を順に行い、ゴム発泡体を得る。一次架橋・発泡は、100℃~160℃、3分間~20分間が好ましい。二次架橋・発泡は、160℃~220℃、5分間~20分間が好ましい。」 ・「【実施例】 【0031】 以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。 【0032】 1.ゴム発泡体の作製(実施例1~8、及び比較例1~3) 表1に示す配合にて、各種ゴム発泡体を作製した。この際、実施例1~8、及び比較例1~3には、共通して表3の原材料を配合した。 表2には、表1に記載した原料の品名、及びメーカー名を示す。 表1において「DPT」は「N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン」を意味する。 【0033】 【表1】 [図:0001437447000003.jpg] ・・・(略)・・・ 【0037】 2.評価方法 (1)比重 JIS K7112のA法「水中置換法」によって、23℃の温度条件下において測定した。 【0038】 (2)熱伝導率 熱伝導率は、JIS-A1412-2に準拠して測定される値である。熱伝導率は、京都電子工業株式会社製 迅速熱伝導率計(QTM-500)を用いてプローブ法により測定した。 【0039】 (3)難燃性 ・・・(略)・・・ 【0040】 (4)耐摩耗性 ・・・(略)・・・ 【0041】 (5)総合判定 以下のように判定した。 「良」:以下の3項目を全て満たす。 「不可」:以下の3項目のうちで、いずれか1項目以上を満たさない。 <項目> 〔1〕熱伝導率:0.043W/m・K以下 〔2〕難燃性:V-0相当 〔3〕耐摩耗性の試験結果:良 【0042】 3.結果 結果を表4に記載する。 【0043】 【表4】 [図:0001437447000004.jpg] ・・・(略)・・・ 【0046】 (3)実施例1~8の結果及び考察 実施例1~8のゴム発泡体は、総合判定の結果が良好であった。実施例1~8のゴム発泡体は、熱伝導率が0.043W/m・K以下と低く、難燃性がV-0相当であり、且つ、耐摩耗性が優れていた。 ・・・(略)・・・ 【0047】 ・・・(略)・・・実施例1~8のゴム発泡体は、熱伝導率が低いとともに、難燃性が高く、耐摩耗性も高いことが確認された。」 (3)判断 発明の詳細な説明の【0001】ないし【0004】によると、本件特許発明1の解決しようとする課題は「耐久性が良好で高断熱性を有するゴム発泡体」を提供することであり、本件特許発明2の解決しようとする課題は該「ゴム発泡体」を備える「産業用ロボットの可撓性チューブ又はホース用の断熱材」を提供することである(以下、総称して、「発明の課題」という。)。 発明の詳細な説明の【0005】、【0008】及び【0024】の記載は上記(2)のとおりであり、発明の詳細な説明には、本件特許発明1及び2に対応する記載があるといえる。 発明の詳細な説明の【0012】には「アクリロニトリル-ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとの合計を100質量部とした場合に、アクリロニトリル-ブタジエンゴムは、ゴム発泡体1の低い熱伝導性を維持しつつ、優れた耐摩耗性を発揮させるという観点から、50質量部以上90質量部以下である。」と記載され、同【0015】には「発泡体の引張弾性率等の特性を低下させることなく少ない配合量で高い難燃効果を発揮させる観点から、ハロゲン系難燃剤とアンチモン系難燃剤を組み合わせて使用することが好ましい。」と記載され、同【0018】には「ハロゲン系難燃剤の含有量(添加量)は、ゴム成分100質量部(アクリロニトリル-ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとの合計を100質量部)に対して、高い耐久性を維持しつつ、十分な難燃性を付与する観点から30質量部以上80質量部以下が好ましく、45質量部以上65質量部以下がより好ましい。 アンチモン系難燃剤の含有量(添加量)は、ゴム成分100質量部(アクリロニトリル-ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとの合計を100質量部)に対して、高い耐久性を維持しつつ、十分な難燃性を付与する観点から5質量部以上30質量部以下が好ましく、10質量部以上20質量部以下がより好ましい。」と記載され、同【0041】には総合判定で「良」と評価する指標として「熱伝導率:0.043W/m・K以下」が記載されていることから、これらの箇所には、本件特許発明1の各発明特定事項の技術的意義が記載されているといえる。 発明の詳細な説明の【0031】ないし【0047】には、「アクリロニトリル-ブタジエンゴムと、ポリ塩化ビニルと、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤と、を含むゴム発泡体であって、 前記アクリロニトリル-ブタジエンゴムと前記ポリ塩化ビニルとの合計を100質量部とした場合に、前記アクリロニトリル-ブタジエンゴムは、50質量部以上90質量部以下であり、 前記ハロゲン系難燃剤の含有量は45質量部以上65質量部以下であり、前記アンチモン系難燃剤の含有量は10質量部以上20質量部以下であり、 熱伝導率0.043W/m・K以下である、ゴム発泡体」の条件を満たす実施例1ないし8のゴム発泡体は、熱伝導率が0.043W/m・K以下と低く、難燃性がV-0相当であり、且つ、耐摩耗性が優れていること、すなわち発明の課題を解決できることを確認する記載がある。 そうすると、発明の詳細な説明の記載から、当業者は「アクリロニトリル-ブタジエンゴムと、ポリ塩化ビニルと、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤と、を含むゴム発泡体であって、 前記アクリロニトリル-ブタジエンゴムと前記ポリ塩化ビニルとの合計を100質量部とした場合に、前記アクリロニトリル-ブタジエンゴムは、50質量部以上90質量部以下であり、 前記ハロゲン系難燃剤の含有量は45質量部以上65質量部以下であり、前記アンチモン系難燃剤の含有量は10質量部以上20質量部以下であり、 熱伝導率0.043W/m・K以下である、ゴム発泡体」は発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「ゴム発泡体」をさらに限定したものであるから、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 また、本件特許発明2は、上記「ゴム発泡体」をさらに限定した「ゴム発泡体」を備える「産業用ロボット等用の可撓性チューブ又はホース用の断熱材」であるから、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 したがって、本件特許発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1及び2に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 3 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の上記第3 2における主張について検討する。 発明の詳細な説明において、発明の課題を解決するための手段として記載されているのは、粒径の異なる2種以上のADCA粒子を用いた発泡制御による低比重化であるとしても、該粒径の異なる2種以上のADCA粒子を用いた発泡制御による低比重化は「熱伝導率0.043W/m・K以下である」という発明特定事項を実現するための手段に過ぎず、組成条件に加えて「熱伝導率0.043W/m・K以下である」という「熱伝導率」の条件を有していれば、発明の課題を解決できることは当業者に明らかである。 また、本件特許発明1及び2において特定される発明特定事項を有するだけでは、発明の課題を解決することはできないことを示す具体的な証拠が提示されている訳でもない。 したがって、「出願時の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明において開示された内容を請求項1及び2に係る範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。」とはいえないし、「請求項1において、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求している」ともいえない。 よって、特許異議申立人の上記第3 2における主張は採用できない。 4 申立理由2についてのむすび したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由2によっては取り消すことはできない。 第6 申立理由3(明確性要件)について 1 明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 2 判断 本件特許の請求項1及び2の記載は、上記第2のとおりであり、本件特許の請求項1及び2の記載には、それら自体に不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明の記載とも整合している。 したがって、本件特許発明1及び2に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 3 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の上記第3 3における主張について検討する。 本件特許の請求項1に記載された「熱伝導率」という記載自体は明確であるし、「熱伝導率」の実際の測定方法も発明の詳細な説明の【0038】の「熱伝導率は、JIS-A1412-2に準拠して測定される値である。熱伝導率は、京都電子工業株式会社製 迅速熱伝導率計(QTM-500)を用いてプローブ法により測定した。」という記載から一義的に理解できる。 したがって、特許異議申立人の上記第3 3における主張は採用できない。 4 申立理由3についてのむすび したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由3によっては取り消すことはできない。 第7 申立理由4(実施可能要件)について 1 実施可能要件の判断基準 上記第2のとおり、本件特許発明1及び2は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用をすることができる程度の記載があることを要する。 そこで、検討する。 2 判断 発明の詳細な説明の記載は上記第5 2(2)のとおりであり、発明の詳細な説明に本件特許発明1及び2の各発明特定事項について具体的に記載されている。すなわち、「アクリロニトリル-ブタジエンゴムと、ポリ塩化ビニルと」「を含むゴム発泡体」については発明の詳細な説明の【0012】に、「アクリロニトリル-ブタジエンゴム」及びその「含有量」については同【0014】に、「ハロゲン化難燃剤」及びその「含有量」については同【0015】、【0016】及び【0018】に、「アンチモン系難燃剤」及びその「含有量」については同【0015】、【0017】及び【0018】に、「熱伝導率」については同【0038】に、「産業用ロボットの可撓性チューブ又はホース用の断熱材」については同【0024】に、具体的に記載されている。 また、本件特許発明1である「ゴム発泡体」の製造方法については、発明の詳細な説明【0026】ないし【0029】に、具体的に記載されている。 さらに、発明の詳細な説明の【0032】ないし【0036】には、本件特許発明1の発明特定事項を全て有する実施例1ないし8のゴム発泡体の作製方法について具体的に記載されている。 したがって、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1及び2を生産し、使用をすることができる程度の記載があるといえる。 よって、本件特許発明1及び2に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 3 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の上記第3 4における主張について検討する。 発明の詳細な説明に、実施例として具体的に開示されているのが粒径の異なる2種以上のADCA粒子を用いた発泡制御という特定の実施態様についてのみであるとしても、上記2のとおり、発明の詳細な説明に本件特許発明1及び2の各発明特定事項について具体的に記載された上で、本件特許発明1の実施例が記載されている以上、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1及び2を生産し、使用をすることができる程度の記載があるといえる。 したがって、特許異議申立人の上記第3 4における主張は採用できない。 4 申立理由4についてのむすび したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由4によっては取り消すことはできない。 第8 結語 上記第4ないし7のとおり、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2026-700341

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