2023-701001
無方向性電磁鋼板、鉄心、鉄心の製造方法、モータ、およびモータの製造方法
- 審判番号
- 2023-701001
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-558029外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7243936
- 請求日
- 2023年09月21日
- 審決日
- 2024年05月31日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1652.113-YAA(C22C) / P1652.121-YAA(C22C) / P1652.537-YAA(C22C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
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特許第7243936号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、2022年(令和 4年) 7月28日(優先権主張 令和 3年 7月30日)を国際出願日とする出願(特願2022-558029号。以下、「本願」という。)であって、令和 5年 3月13日にその特許権の設定登録がなされ、同年 3月22日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和 5年 9月21日に、特許異議申立人 前田 洋志(以下、「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~4、6~10に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。
出
なお、令和 6年 3月18日付け訂正請求があった旨の通知に対して、申立人から意見書の提出はなかった。
第2 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
令和 6年 3月11日になされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、特許第7243936号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1から10について訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所には、当審が下線を付した。
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に
「Si:1.0%以上5.0%以下、」とあるのを、
「Si:3.25%超5.0%以下、」に訂正する。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に
「無方向性電磁鋼板」とあるのを、
「ロータ鉄心用無方向性電磁鋼板」に訂正する。
(それぞれ、請求項1の記載を引用する請求項3、6~10も同様に訂正される。なお、請求項2は削除される。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「無方向性電磁鋼板」とあるのを、
「ロータ鉄心用無方向性電磁鋼板」に訂正する。
(4)訂正事項4
ア 訂正事項4-1
請求項4は請求項1の記載を引用する請求項の記載であるが、請求項1の記載を引用しない独立形式のものとする。
イ 訂正事項4-2
特許請求の範囲の請求項4に
「無方向性電磁鋼板」とあるのを、
「ロータ鉄心用無方向性電磁鋼板」に訂正する。
(5)訂正事項5
ア 訂正事項5-1
請求項5は請求項1の記載を引用する請求項の記載であるが、請求項1の記載を引用しない独立形式のものとする。
イ 訂正事項5-2
特許請求の範囲の請求項5に
「無方向性電磁鋼板」とあるのを、
「ロータ鉄心用無方向性電磁鋼板」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「無方向性電磁鋼板」とあるのを、
「ロータ鉄心用無方向性電磁鋼板」に訂正する。
(7)訂正事項7
ア 訂正事項7-1
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1から請求項6」とあるのを、
「請求項1、請求項3から請求項6」に訂正する。
イ 訂正事項7-2
特許請求の範囲の請求項7に
「無方向性電磁鋼板」とあるのを、
「ロータ鉄心用無方向性電磁鋼板」に訂正する。
ウ 訂正事項7-3
特許請求の範囲の請求項7に
「鉄心」とあるのを、
「ロ―タ鉄心」に訂正する。
(8)訂正事項8
ア 訂正事項8-1
特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1から請求項6」とあるのを、
「請求項1、請求項3から請求項6」に訂正する。
イ 訂正事項8-2
特許請求の範囲の請求項8に
「無方向性電磁鋼板」とあるのを、
「ロータ鉄心用無方向性電磁鋼板」に訂正する。
ウ 訂正事項8-3
特許請求の範囲の請求項8に
「鉄心」とあるのを、
「ロ―タ鉄心」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に
「鉄心」とあるのを、
「ロ―タ鉄心」に訂正する。
(10)訂正事項10
ア 訂正事項10-1
特許請求の範囲の請求項10に
「請求項1から請求項6」とあるのを、
「請求項1、請求項3から請求項6」にする。
イ 訂正事項10-2
特許請求の範囲の請求項10に
「無方向性電磁鋼板」とあるのを、
「ロータ鉄心用無方向性電磁鋼板」にする。
ウ 訂正事項10-3
特許請求の範囲の請求項10に
2か所に「鉄心」とあるのを、
それぞれ、「ロ―タ鉄心」に訂正する。
3 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1-1に係る訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1-1に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1について、Si含有量の下限を、「1.0%以上」から「3.25%超」に限定して特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項1-1に係る訂正は、本件訂正前の請求項2の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項1-1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項1-2に係る訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1-2に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1について、「無方向性電磁鋼板」との記載をその用途を限定して、「ロータ鉄心用無方向性電磁鋼板」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項1-2に係る訂正は、本願の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の段落【0047】に記載される、「無方向性電磁鋼板を、25t連続順送プレス機にて、250ストローク/分の打ち抜き速度で、外径79.5mmの円板状(真円)の金型で打ち抜く。打ち抜き品60枚を積んで、コアとしてかしめる。得られた円板状のコアは、モータにおけるロータ鉄心を模擬しており、外周円の真円度がステータ鉄心とのエアギャップ精度の指標となり得る」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項1-2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項2に係る訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項2に係る訂正は、請求項2を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項3、4-2、5-2、6、7-2、8-2、10-2に係る訂正について
これらの訂正事項に係る訂正は、上記(2)で検討した、訂正事項1-2と同様の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項4-1に係る訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項4-1に係る訂正は、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改める訂正であるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項4-1に係る訂正は、単に、請求項間の引用関係を解消する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
訂正事項4-1に係る訂正は、単に、請求項間の引用関係を解消する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(6)訂正事項5-1に係る訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項5-1に係る訂正は、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改める訂正であるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項5-1に係る訂正は、単に、請求項間の引用関係を解消する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
訂正事項5-1に係る訂正は、単に、請求項間の引用関係を解消する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(7)訂正事項7-1に係る訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項7-1に係る訂正は、本件訂正前の請求項7が請求項1から請求項6までのいずれかの記載を引用するものであるところ、訂正事項2で請求項2が削除されて請求項2の記載を引用できなくなったことに伴い、削除された請求項2の記載を引用しているという不明瞭な状態を解消する訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項7-1に係る訂正は、請求項7を請求項2の記載を引用しないものに改める訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項7-1に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(8)訂正事項7-3に係る訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項7-3に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項7について、「鉄心」との記載をその用途をさらに限定して、「ロータ鉄心」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項7-3に係る訂正は、本件明細書の段落【0047】に記載される、「無方向性電磁鋼板を、25t連続順送プレス機にて、250ストローク/分の打ち抜き速度で、外径79.5mmの円板状(真円)の金型で打ち抜く。打ち抜き品60枚を積んで、コアとしてかしめる。得られた円板状のコアは、モータにおけるロータ鉄心を模擬しており、外周円の真円度がステータ鉄心とのエアギャップ精度の指標となり得る」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項7-3に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(9)訂正事項8-1、10-1に係る訂正について
これらの訂正事項に係る訂正は、上記(7)で検討した、訂正事項7-1と同様の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(10)訂正事項8-3、9、10-3に係る訂正について
これらの訂正事項に係る訂正は、上記(8)で検討した、訂正事項7-3と同様の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(11)独立特許要件について
ア 本件においては、本件訂正前の請求項1~4、6~10について特許異議の申立てがされているので、本件訂正前の請求項1~4、6~10に対応する、訂正後の請求項1~4、6~10に係る発明については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
イ 一方、本件訂正前の請求項5については特許異議の申立てがされていないので、訂正事項5-1、5-2に係る訂正後の請求項5に係る発明については、訂正事項5-2に係る訂正が、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるため、独立特許要件が課されるところ、以下の第5の2(3)に示すように、新規性及び進歩性を有し、また、以下の第5の1に示すように、他の記載不備も存在しないため、独立特許要件を満たすものである。
(12)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~10は、請求項1の記載を引用するものであり、訂正事項1-1、1-2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~10は一群の請求項である。
そして、本件訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
4 訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項~第7号の規定に適合する。そして、本件訂正請求においては、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めがされていない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正は、上記第2で検討したとおり適法なものであるから、本件特許の請求項1~10に係る発明は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項1~10に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」といい、総称して「本件発明」ともいう。)。
【請求項1】
質量%で、
C :0.005%以下、
P :0.3%以下、
S :0.01%以下、
N :0.01%以下、
B :0.10%以下、
O :0.10%以下、
V :0.10%以下、
W :0.10%以下、
Y :0.10%以下、
を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
板厚が0.10mm以上0.35mm以下であり、
平均結晶粒径が30μm以上200μm以下であり、
下記(式1)で規定されるX1値が0.800以上0.845未満であり、
下記(式2)で規定されるX2値が0.800以上0.833以下であり、
磁束密度1.0T、周波数1kHzで励磁した際の鉄損W10/1kが80W/kg以下である
ことを特徴とするロータ鉄心用無方向性電磁鋼板。
X1=(2×B50L+B50C)/(3×Is) (式1)
X2=(B50L+2×B50D+B50C)/(4×Is) (式2)
(ここで、
B50Lは磁化力5000A/mで磁化した際の圧延方向の磁束密度、
B50Cは磁化力5000A/mで磁化した際の圧延直角方向の磁束密度、
B50Dは磁化力5000A/mで磁化した際の圧延方向から45°方向の磁束密度、
Isは室温における自発磁化である。)
【請求項2】
(削 除)
【請求項3】
前記化学組成として、質量%で、
C :0.0010%以上0.005%以下、
P :0.0010%以上0.3%以下、
S :0.0001%以上0.01%以下、
N :0.0015%超0.01%以下、
B :0.0001%以上0.10%以下、
O :0.0001%以上0.10%以下、
V :0.0001%以上0.10%以下、
W :0.002%以上0.10%以下、
Y :0.002%以上0.10%以下、
の少なくとも1種を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載のロータ鉄心用無方向性電磁鋼板。
【請求項4】
質量%で、
C :0.005%以下、
P :0.3%以下、
S :0.01%以下、
N :0.01%以下、
B :0.10%以下、
O :0.10%以下、
V :0.10%以下、
W :0.10%以下、
Y :0.10%以下、
を含有し、
Siおよびsol.Alの合計含有量が4.0%超であり、
残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
板厚が0.10mm以上0.35mm以下であり、
平均結晶粒径が30μm以上200μm以下であり、
下記(式1)で規定されるX1値が0.800以上0.845未満であり、
下記(式2)で規定されるX2値が0.800以上0.833以下であり、
磁束密度1.0T、周波数1kHzで励磁した際の鉄損W10/1kが80W/kg以下である
ことを特徴とするロータ鉄心用無方向性電磁鋼板。
X1=(2×B50L+B50C)/(3×Is) (式1)
X2=(B50L+2×B50D+B50C)/(4×Is) (式2)
(ここで、
B50Lは磁化力5000A/mで磁化した際の圧延方向の磁束密度、
B50Cは磁化力5000A/mで磁化した際の圧延直角方向の磁束密度、
B50Dは磁化力5000A/mで磁化した際の圧延方向から45°方向の磁束密度、
Isは室温における自発磁化である。)
【請求項5】
質量%で、
C :0.005%以下、
P :0.3%以下、
S :0.01%以下、
N :0.01%以下、
B :0.10%以下、
O :0.10%以下、
V :0.10%以下、
W :0.10%以下、
Y :0.10%以下、
を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
板厚が0.10mm以上0.35mm以下であり、
平均結晶粒径が30μm以上200μm以下であり、
下記(式1)で規定されるX1値が0.800以上0.830未満であり、
下記(式2)で規定されるX2値が0.800以上0.833以下であり、
磁束密度1.0T、周波数1kHzで励磁した際の鉄損W10/1kが80W/kg以下である
ことを特徴とするロータ鉄心用無方向性電磁鋼板。
X1=(2×B50L+B50C)/(3×Is) (式1)
X2=(B50L+2×B50D+B50C)/(4×Is) (式2)
(ここで、
B50Lは磁化力5000A/mで磁化した際の圧延方向の磁束密度、
B50Cは磁化力5000A/mで磁化した際の圧延直角方向の磁束密度、
B50Dは磁化力5000A/mで磁化した際の圧延方向から45°方向の磁束密度、
Isは室温における自発磁化である。)
【請求項6】
前記X2値が0.805以上0.825以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のロータ鉄心用無方向性電磁鋼板。
【請求項7】
請求項1、請求項3から請求項6までのいずれかに記載のロータ鉄心用無方向性電磁鋼板を含むロータ鉄心。
【請求項8】
請求項1、請求項3から請求項6までのいずれかに記載のロータ鉄心用無方向性電磁鋼板を加工し、積層する工程を有するロータ鉄心の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載のロータ鉄心を含むモータ。
【請求項10】
請求項1、請求項3から請求項6までのいずれかに記載のロータ鉄心用無方向性電磁鋼板を加工し、積層してロータ鉄心を製造する工程および前記ロータ鉄心を組み立てる工程を有するモータの製造方法。
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
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1 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証~甲第5号証を提出し、以下の申立理由1~3により、本件訂正前の請求項1~4、6~10に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
(1)申立理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1~4、6~10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件訂正前の請求項1~4、6~10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(進歩性)
本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)証拠方法
2 令和 5年12月28日付けで通知した取消理由の概要
(1)取消理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1、3、6~10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(サポート要件)
ア 本件明細書の記載によれば、本件訂正前の請求項1~10に係る発明が解決しようとする課題は、モータの鉄心用として、磁気的な異方性が小さく且つ機械的な異方性が小さい無方向性電磁鋼板、鉄心、鉄心の製造方法、モータ、およびモータの製造方法を提供することであると認められる(段落【0008】)。
イ ここで、上記アにおける「モータの鉄心」とは、本件明細書の以下の記載を踏まえると、「回転子(ロータ)の鉄心」であると解される。なお、下線は当審が付与した(以下、同様である。)。
(ア)「回転子用の鉄心としては、例えば、永久磁石埋め込みモータ(IPMモータ)用のロータ鉄心がある。」(段落【0004】)
(イ)「IPMモータ用のロータ鉄心は、鋼板ブランクを円板状に打抜加工することで形成される。」(段落【0005】)
(ウ)「機械的な異方性として、真円打抜加工後の真円度が、0.9997超1.0000以下であることが好ましい。具体的には、外径79.5mmの円板状の金型で打抜加工して打ち抜き品を60枚積層してかしめて成形したとき、成形品の外周円の直径の最小値を、成形品の外周円の直径の最大値で割った値(真円度)が、0.9997超1.0000以下であることが好ましい。」(段落【0045】)
(エ)「得られた円板状のコアは、モータにおけるロータ鉄心を模擬しており、外周円の真円度がステータ鉄心とのエアギャップ精度の指標となり得る。」(段落【0047】)
(オ)「機械的な異方性として、真円度を上述した円板状コアの外周円の直径の最大値と最小値の比と定義して、以下の基準により真円度を評価した。」(段落【0071】)
ウ 一方、本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、「無方向性電磁鋼板、鉄心、鉄心の製造方法、モータ、およびモータの製造方法」に係る発明であり、「ロータ鉄心用」との特定を有しないから、本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、上記課題が生じる前提を欠くものと認められる。
エ したがって、本件訂正前の請求項1~4、6~10に係る発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
オ 以上のとおり、本件訂正前の請求項1~4、6~10係る発明については、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
以下に述べるように、特許異議申立書に記載した申立理由及び当審から通知した取消理由によっては、本件特許の請求項1、3、4、6~10に係る特許を取り消すことはできない。また、請求項2が本件訂正により削除されたことにより、申立人による請求項2に係る特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
1 取消理由2(サポート要件)
(1)ア 取消理由通知において、「本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、「無方向性電磁鋼板、鉄心、鉄心の製造方法、モータ、およびモータの製造方法」に係る発明であり、「ロータ鉄心用」との特定を有しないから、本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、上記課題が生じる前提を欠くものと認められる。
したがって、本件訂正前の請求項1~4、6~10係る発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。」旨指摘した。
イ 以下、検討する。
上記第2及び第3で述べたとおり、本件訂正により、本件発明1、3~10は、「ロータ鉄心用」無方向性電磁鋼板との発明特定事項を有するものとなり、また、本件発明7~10は、「ロータ」鉄心との発明特定事項を有するものとなった。
そうすると、本件発明1、3~10は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
ウ よって、上記の点に関するサポート要件の取消理由は解消した。
(2)取消理由2(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおり、取消理由2(サポート要件)によっては、本件特許の請求項1、3、4、6~10に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由1(新規性)、申立理由2、3(進歩性)、取消理由1(新規性)について
(1)甲第1号証に記載された発明
本願の優先日前に公知となった甲第1号証には、「無方向性電磁鋼板およびその製造方法」(発明の名称)に関する記載があり、その【請求項1】、段落【0001】の記載を前提とし、特に、【表1】、【表2】に記載された「鋼板No.7」に着目すると、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
質量%で、C:0.002%、Si:2.9%、Mn:0.2%、sol.Al:1.1%、P:0.01%、S:0.001%およびN:0.002%を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
平均結晶粒径が98μmである鋼組織を有し、
下記式(1)~(3)の磁気特性を有し、
板厚が0.30mmである分割鉄心型モータの固定子用無方向性電磁鋼板。
B50L=1.711 (1)
B50L/B50C=1.711/1.599=1.070 (2)
{(2×B50L+B50C)/3}/{(B50L+2×B50D+B50C)/4}={(2×1.711+1.599)/3}/{(1.711+2×1.571+1.599)/4}=1.6736/1.613=1.038 (3)
(ここで、
である。)
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比・判断
(ア)対比
a 甲1発明における、「質量%で、C:0.002%、Si」「、Mn:0.2%、sol.Al:1.1%、P:0.01%、S:0.001%およびN:0.002%を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有」することは、本件発明1における、「質量%で、
C :0.005%以下、
Si、
P :0.3%以下、
S :0.01%以下、
N :0.01%以下、
B :0.10%以下、
O :0.10%以下、
V :0.10%以下、
W :0.10%以下、
Y :0.10%以下、
を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有」することに相当する。
b 甲1発明における、「平均結晶粒径が98μmである鋼組織を有」することは、本件発明1における、「平均結晶粒径が30μm以上200μm以下であ」ることに相当する。
c 甲1発明における、「板厚が0.30mmである」ことは、本件発明1における、「板厚が0.10mm以上0.35mm以下であ」ることに相当する。
d そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「質量%で、C :0.005%以下、Si、sol.Al:2.5%未満、続きを表示(全30行)Mn:3.0%以下、P :0.3%以下、S :0.01%以下、N :0.01%以下、B :0.10%以下、O :0.10%以下、Mg:0.10%以下、Ca:0.01%以下、Ti:0.10%以下、V :0.10%以下、Cr:5.0%以下、Ni:5.0%以下、Cu:5.0%以下、Zr:0.10%以下、Sn:0.10%以下、Sb:0.10%以下、Ce:0.10%以下、Nd:0.10%以下、Bi:0.10%以下、W :0.10%以下、Mo:0.10%以下、Nb:0.10%以下、Y :0.10%以下、を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、板厚が0.10mm以上0.35mm以下であり、平均結晶粒径が30μm以上200μm以下である無方向性電磁鋼板。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
Siの含有量(質量%)について、本件発明1は、「3.25%超5.0%以下」であるのに対し、甲1発明は、「2.9%」である点。
<相違点2>
本件発明1は、「下記(式1)で規定されるX1値が0.800以上0.845未満であり、下記(式2)で規定されるX2値が0.800以上0.833以下」であるのに対し、甲1発明は、上記X1値が0.800以上0.845未満、上記X2値が0.800以上0.833以下であることが特定されていない点。
X=(2×B50L+B50C)/(3×Is) (式1)
X2=(B50L+2×B50D+B50C)/(4×Is)(式2)
(ここで、
B50Lは磁化力5000A/mで磁化した際の圧延方向の磁束密度、
B50Cは磁化力5000A/mで磁化した際の圧延直角方向の磁束密度、
B50Dは磁化力5000A/mで磁化した際の圧延方向から45°方向の磁束密度、
Isは室温における自発磁化である。)
<相違点3>
本件発明1は、「磁束密度1.0T、周波数1kHzで励磁した際の鉄損W10/1kが80W/kg以下である」のに対し、甲1発明は、その鉄損が不明である点。
<相違点4>
本件発明1は、「ロータ鉄心用無方向性電磁鋼板」であるのに対し、甲1発明は、「分割鉄心型モータの固定子用無方向性電磁鋼板」である点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点4を検討する。
a 相違点4が実質的な相違点であるか否かについて
(a)本件発明1の無方向性電磁鋼板は、モータのロータ鉄心(回転子)に用いられるものであるのに対し、甲1発明の無方向性電磁鋼板は、分割鉄心型モータの固定子(ステータ)に用いられるものである。
(b)上記(a)のとおり、本件発明1の無方向性電磁鋼板と甲1発明の無方向性電磁鋼板とは、モータ鉄心における適用部位が異なるから、相違点4は実質的な相違点である。
b 相違点4の容易想到性について
(a)甲第1号証には、分割鉄心型モータの固定子に用いられる無方向性電磁鋼板に要求される磁気特性について、以下の事項が記載されている。
「多極モータのモータ効率は固定子(ステータ)のティース部の磁気特性の影響を大きく受けることが知られている。」(段落【0003】)
「一体打抜きの場合、各々のティース部の方向は電磁鋼板の圧延方向に対して様々な方向をとることになる。このため、一体打抜き型の鉄心材料には全周方向の磁気特性が良好な無方向性電磁鋼板が求められてきた。」(段落【0003】)
「分割鉄心の場合、ティース部の方向を電磁鋼板の磁気特性が良好な方向、例えば圧延方向(L方向)に一致させることが可能となる。この場合、ティース部の方向に次いで相当量の磁束が流れるヨーク部の方向が圧延直角方向(C方向)に一致する。磁束は主にL方向とC方向に流れ、特にL方向に多く流れ、圧延方向に対して45°方向(以下、「D方向」ともいう。)にはあまり流れない。したがって、分割鉄心用材料には、L方向の磁気特性が優れ、L方向の磁気特性がC方向の磁気特性よりも優れる無方向性電磁鋼板が適している。さらに、L方向に重み付けを行ったL方向とC方向とを加重平均した磁気特性を全周方向の平均磁気特性により規格化した値が大きい無方向性電磁鋼板が適している。」(段落【0009】)
「本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題はエアコンや冷蔵庫などのコンプレッサーモータ、電気自動車やハイブリッド自動車などの駆動モータおよび発電機など、主に高効率分割鉄心型モータの固定子(ステータ)鉄心に使用することが好適な、L方向の磁気特性が優れ、L方向の磁気特性がC方向の磁気特性よりも優れ、さらに、L方向に重み付けを行ったL方向とC方向とを加重平均した磁気特性を全周方向の平均磁気特性により規格化した値が大きい無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することにある。」(段落【0014】)
(b)上記(a)の記載を踏まえると、甲第1号証には、多極モータのモータ効率は固定子(ステータ)のティース部の磁気特性の影響を大きく受けるが、固定子(ステータ)鉄心を、一体打抜きで製造する場合には、各々のティース部の方向は電磁鋼板の圧延方向に対して様々な方向をとることになるため、一体打抜き型の鉄心材料には全周方向の磁気特性が求められる一方、分割打抜きで製造する場合には、ティース部の方向を電磁鋼板の磁気特性が良好な方向、例えば圧延方向(L方向)に一致させることが可能となり、この場合、ティース部の方向に次いで相当量の磁束が流れるヨーク部の方向が圧延直角方向(C方向)に一致することになるため、このような方向に分割打抜きする際には、L方向の磁気特性が優れ、L方向の磁気特性がC方向の磁気特性よりも優れる無方向性電磁鋼板が適しており、さらに、L方向に重み付けを行ったL方向とC方向とを加重平均した磁気特性を全周方向の平均磁気特性により規格化した値が大きい無方向性電磁鋼板が適していることが記載されている。
そのため、甲1発明は、特に、圧延方向の磁束密度B50Lが大きく、圧延方向に磁気特性の異方性を有する無方向性電磁鋼板であるといえる。
(c)それに対し、ロータ鉄心(回転子)は、使用時に回転するため、磁気特性の異方性の低減が求められていることは技術常識である。甲第1号証には、甲1発明の無方向性電磁鋼板をロータ鉄心(回転子)に適用することについては、記載も示唆もない。
そうすると、分割鉄心型モータの固定子(ステータ)に用いられる甲1発明の無方向性電磁鋼板をロータ鉄心(回転子)に適用する動機付けがあるとはいえない。
(d)また、本件発明は、モータの鉄心用として、磁気的な異方性が小さく且つ機械的な異方性が小さい無方向性電磁鋼板、鉄心、鉄心の製造方法、モータ、およびモータの製造方法を提供することができるという、甲1発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項からみて当業者が予測することができる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。
したがって、相違点1~3について検討するまでもなく、甲1発明の無方向性電磁鋼板を「ロータ鉄心用」とすることは、当業者が容易に想到することであるとはいえない。また、このことは、甲第2、3号証におけるIs(室温における自発磁化)に係る記載を考慮しても、変わるものではない。
イ 小括 よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明3~10について
本件発明3~10は、「ロータ鉄心用無方向性電磁鋼板」、「ロータ鉄心」、「ロータ鉄心の製造方法」、「ロータ鉄心を含むモータ」、「ロータ鉄心を組み立てる工程を有するモータの製造方法」であるところ、本件発明3~10は、いずれも、「ロータ鉄心用無方向性電磁鋼板」との発明特定事項を有するものである。
ア 本件発明3~10と甲1発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明3~10と甲1発明とを対比すると、本件発明3~10は、「ロータ鉄心用無方向性電磁鋼板」との発明特定事項を有するのに対し、甲1発明は、「分割鉄心型モータの固定子用無方向性電磁鋼板」であって、「ロータ鉄心用無方向性電磁鋼板」との発明特定事項を有しない点(以下、「相違点5」という。)で少なくとも相違する。
(イ)判断
上記相違点5について検討すると、上記(2)ア(イ)aで相違点4について述べたとおり、ロータ鉄心(回転子)と分割鉄心型モータの固定子(ステータ)とは、モータ鉄心における適用部位が異なるから、相違点5は実質的な相違点である。
また、甲1発明の無方向性電磁鋼板を「ロータ鉄心用」とすることが、当業者が容易に想到することであるとはいえないことも、上記(2)ア(イ)bで相違点4について述べたとおりである。
そうすると、本件発明3~10は、甲1発明であるとはいえず、また、甲1発明及び甲第2、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。また、このことは、甲第4、5号証における任意添加元素に係る記載を考慮しても、変わるものではない。
イ 小括
よって、本件発明3~10は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明3~10は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)申立理由1(新規性)、申立理由2、3(進歩性)、取消理由1(新規性)についてのまとめ
以上のとおり、申立理由1(新規性)、申立理由2、3(進歩性)、取消理由1(新規性)によっては、本件特許の請求項1、3、4、6~10に係る特許を取り消すことはできない。
第6 まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由及び当審から通知した取消理由によっては、本件特許の請求項1、3、4、6~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、3、4、6~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項2が本件訂正により削除されたことにより、申立人による請求項2に係る特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701001