特許異議申立
2025-700975
電磁鋼板及び接着積層コア製造方法
- 審判番号
- 2025-700975
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-514666
- 登録番号
- 7662770
- 請求日
- 2025年10月09日
- 審決日
- 2026年05月01日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本製鉄株式会社
- 【権利者代理人】松沼 泰史
- 【権利者代理人】大浪 一徳
- 【権利者代理人】勝俣 智夫
- 【権利者代理人】山口 洋
- 【権利者代理人】堀田 耕一郎
- 【権利者代理人】山口 健吾
- 【権利者代理人】飯田 恭宏
- 【権利者代理人】井口 翔太
- 【権利者】東亞合成株式会社
- 【権利者代理人】松沼 泰史
- 【権利者代理人】大浪 一徳
- 【権利者代理人】勝俣 智夫
- 【権利者代理人】山口 洋
- 【権利者代理人】堀田 耕一郎
- 【権利者代理人】山口 健吾
- 【権利者代理人】飯田 恭宏
- 【権利者代理人】井口 翔太
- 【異議申立人】前田 洋志
- 審判長/審判官
- 審判長 小宮 慎司
- 審判官 綿引 隆
- 審判官 緑川 隆
- 分類
- P1651.113-YAA(H02K) / P1651.121-YAA(H02K) / P1651.536-YAA(H02K) / P1651.537-YAA(H02K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7662770号発明「電磁鋼板及び接着積層コア製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7662770号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7662770号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7662770号の請求項1~6に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2022年(令和4年)4月13日(優先権主張 令和3年4月14日)を国際出願日とする出願であって、令和7年4月7日にその特許権の設定登録がされ、同年同月15日に特許掲載公報が発行されたものである。
その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和7年10月 9日 :特許異議申立人 前田 洋志(以下、「申立人」という。)による特許異議の申立て
同年12月17日付け:取消理由通知書
令和8年 2月 6日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出
同年 3月19日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和8年2月6日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、特許第7662770号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、本件訂正の内容は、次のとおりである(下線は訂正箇所を示すため合議体において付与した。)。
(1) 訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記硬化促進剤が、乾燥した状態で前記絶縁被膜内に封止されている」とあるのを、「前記硬化促進剤が、乾燥した状態で前記絶縁被膜内に封止されており、
前記絶縁被膜における前記硬化促進剤の含有量が、0.3wt%~80wt%である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正される)。
2 訂正の適否についての判断
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「硬化促進剤」について、「前記絶縁被膜における前記硬化促進剤の含有量が、0.3wt%~80wt%である」との限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか
訂正事項1は、本件明細書等の【0029】の「この処理液を用いて形成した固形状体における絶縁被膜における前記化合物の含有量を0.3wt%~80wt%とすることができる。」との記載に基づくものであって、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか
訂正事項1は、「硬化促進剤」について、「前記絶縁被膜における前記硬化促進剤の含有量が、0.3wt%~80wt%である」との限定を付加するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
エ 独立特許要件について
本件においては、全ての請求項1~6について特許異議の申立てがなされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2) 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正の請求は認められるから、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」という。)は、それぞれ訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
化学組成が、単位質量%で、
Si:2.5%~3.9%
Al:0.001%~3.0%
Mn:0.05%~5.0%
残部:Fe及び不純物
を含有し、
片面または両面に、硬化促進剤を含有する絶縁被膜が形成されており、
前記硬化促進剤が、乾燥した状態で前記絶縁被膜内に封止されており、
前記絶縁被膜における前記硬化促進剤の含有量が、0.3wt%~80wt%である
ことを特徴とする電磁鋼板。
【請求項2】
前記硬化促進剤が、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、モリブデン、ルテニウム、及びそれらの組み合わせから選択される、嫌気硬化を促進する有効成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板。
【請求項3】
片面または両面にプレス加工油を塗布した帯状鋼板にプレス加工を行い、前記帯状鋼板の前記片面に接着剤を塗布して複数枚の鋼板部品を得て、前記各鋼板部品を積層接着することによって接着積層コアを製造する方法であって、
前記帯状鋼板として請求項1または2に記載の電磁鋼板を用いる
ことを特徴とする接着積層コア製造方法。
【請求項4】
前記各鋼板部品が、第1鋼板部品及び第2鋼板部品を含み、
第1の面の側に前記絶縁被膜を有する前記第1鋼板部品を準備する第1の工程と、
第2の面の側に、前記絶縁被膜と、前記絶縁被膜上に塗布された前記プレス加工油と、前記プレス加工油上に塗布された前記接着剤と、を有する前記第2鋼板部品を準備する第2の工程と、
前記第1の面及び前記第2の面が互いに対向するように、前記第1鋼板部品及び前記第2鋼板部品を重ね合わせて接着する第3の工程と、
を有することを特徴とする請求項3に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項5】
前記各鋼板部品が、第3鋼板部品及び第4鋼板部品を含み、
第3の面の側に、前記絶縁被膜と、前記絶縁被膜上に塗布された前記プレス加工油と、を有する前記第3鋼板部品を準備する第4の工程と、
第4の面の側に、前記絶縁被膜と、前記絶縁被膜上に塗布された前記プレス加工油と、前記プレス加工油上に塗布された前記接着剤と、を有する前記第4鋼板部品を準備する第5の工程と、
前記第3の面及び前記第4の面が互いに対向するように、前記第3鋼板部品及び前記第4鋼板部品を重ね合わせて接着する第6の工程と、
を有することを特徴とする請求項3に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項6】
前記接着積層コアが、回転電機用の固定子であることを特徴とする請求項3に記載の接着積層コア製造方法。」
第4 申立理由及び取消理由の概要
1 申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証~甲第10号証(以下、「甲1」~「甲10」という。)を提出し、以下の理由により、本件特許を取り消すべきものである旨主張している。
申立理由1(新規性)
本件発明1~3、6は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3、6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
申立理由2(進歩性)
本件発明1~6は、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に基いて、本件発明2は、甲1に記載された発明及び甲2~甲8に基いて、本件発明3は、甲1に記載された発明及び甲2~甲5、甲9、甲10に基いて、本件発明4、5は、甲1に記載された発明及び甲2~甲5、甲10に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
申立理由3(実施可能要件)
本件特許の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~6を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
申立理由4(サポート要件)
本件発明1~6は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 取消理由通知書に記載した取消理由の概要
本件訂正前の特許請求の範囲に対して、令和7年12月17日付け取消理由通知書に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由1(進歩性)
本件発明1、2は、甲1に記載された発明及び甲1~甲5に基いて、本件発明3~6は、甲1に記載された発明及び甲1~甲5、甲10に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
3 証拠一覧
甲1:特開2011-23523号公報
甲2:特開2002-249881号公報
甲3:特開2016-125142号公報
甲4:特開2016-138333号公報
甲5:特開平2-232319号公報
甲6:特開2004-68032号公報
甲7:国際公開第2016/125783号
甲8:特開2018-90836号公報
甲9:特開2019-221069号公報
甲10:特開2006-334648号公報
第5 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明
1 甲1について
(1) 甲1の記載
甲1には、次の記載がある(下線は当審により付加。以下同じ。)。
ア 「【背景技術】
【0002】
電動機、発電機や変圧器では、コアの鉄損や巻き線の銅損などにより温度上昇が起こり、鉄損の小型化や高出力化の阻害要因となる。したがってステータコアの熱伝導性が重要である。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、電動機や発電機、変圧器において、高い積層方向熱伝導率と良好な占積率、積層強度を有するコアおよびその製造方法を提供することを課題とするものである。
・・・
【発明の効果】
【0016】
本発明により、コアの積層方向の熱伝導率が改善されるため、コアの抜熱性が高くなり、モータ等の高出力化に貢献できる。」
ウ 「【発明を実施するための形態】
【0018】
嫌気性接着剤とは、酸素のない条件下でFe等の金属イオンを触媒として硬化する接着剤であり、一般には溶剤を含まず、ねじのゆるみ止めや嵌合部の接着等の用途に用いられる。
嫌気性接着剤は、溶剤を含まないため硬化に際しガスを発生せず、接着層内に気泡が生ずるおそれがない。また、接着層厚さが薄い方が接着強度が得られると言われる。さらに、嫌気性条件下で硬化するため、積層した鋼板内部もきちんと接着することができる。
以上のことから、発明者らは、(a)積層鋼板間に間隙を生じること無く、(b)ミクロンオーダーの接着層厚さで鋼板を十分な接着でき、(c)積層コアの積層方向の熱伝導性が改善できると考えた。そして、これらの予想を以下の手順により確認した。
・・・
【0020】
嫌気性接着剤は硬化に際し、金属イオンの存在が必要と言われている。一方、電磁鋼板は表面に絶縁皮膜が施されているのが通例である。したがって、絶縁皮膜付き電磁鋼板を嫌気性接着剤で接着した場合、接着できない可能性がある。
【0021】
そこで、接着強度の絶縁皮膜依存性を調査した。絶縁皮膜を施さない電磁鋼板A、特許文献6等に記載されたクロム酸塩を主体とする絶縁皮膜を施した電磁鋼板B(当審注:「C」の誤記)、特許文献7等に記載されたリン酸塩を主体とする絶縁皮膜が施された電磁鋼板C(当審注:「B」の誤記)、の3種類の電磁鋼板を用意し、嫌気性接着剤により第1図に示すような接着試験片(接着層厚さ2μm)を作成し、引っ張り試験により接着強度を測定した。
【0022】
接着にあたっては、嫌気性接着剤のみを用いた場合と、接着剤塗布の前に銅塩と脂肪族アミンを主成分とする嫌気性接着剤用硬化促進剤をあらかじめ塗布乾燥した後嫌気性接着剤により接着した場合の、二つの場合を評価した。
【0023】
第1表に示すように、リン酸塩を主体とする絶縁皮膜が施された電磁鋼板は絶縁皮膜の無い電磁鋼板と概略同程度の接着強度が得られた。すなわち、リン酸塩を主体とする絶縁皮膜が施された電磁鋼板は、硬化促進剤を用いることなしに嫌気性接着剤による接着ができる利点があるといえる。クロム酸塩を主体とする絶縁皮膜の場合でも、硬化促進剤を併用すれば十分な接着強度が得られる。
【0024】
【表1】
[図:0001438296000001.jpg]
【0025】
リン酸塩を主体とする絶縁皮膜の場合に効果促進剤が不要となる理由は定かではない。おそらく、皮膜形成時にリン酸塩と鋼板とが反応し、皮膜中にリン酸鉄化合物のようなものが含有されているのではないかと想像され、リン酸鉄化合物が効果促進(当審注:「硬化促進」の誤記)の作用を有するのではないかと思われる。」
エ 「【0027】
(実施例1)
リン酸塩を主体とする絶縁皮膜を形成させたJIS規格35A300の電磁鋼板を用意した。前者の電磁鋼板より、かしめ積層したコア、溶接積層したコア、嫌気性接着剤により積層接着したコア、接着コートを塗布し加圧積層接着したコア、を作成した。
嫌気性接着剤による接着コアの場合は、嫌気性接着剤の塗布量を両面あたり0.15~25g/m2 の範囲で変更したものを用意した。接着コートによる接着コアの場合は、接着コートの塗布量を2~20g/m2 の範囲で変更したものを用意した。コアの熱伝導率測定には、積層コアにおける鋼板積層方向と鋼板面内方向の双方が評価できるホットディスク法を用いた。」
(2) 甲1発明の認定
上記(1)に摘記した甲1の記載によれば、甲1には次の事項が記載されていると理解できる。
ア 【0023】の「リン酸塩を主体とする絶縁皮膜が施された電磁鋼板は絶縁皮膜の無い電磁鋼板と概略同程度の接着強度が得られた。」との記載から、甲1には、「リン酸塩を主体とする絶縁皮膜が施された電磁鋼板」が記載されていると理解できる。
イ 【0020】の「電磁鋼板は表面に絶縁皮膜が施されているのが通例である。」との記載から、上記アの「電磁鋼板」は「表面に」絶縁皮膜が施されていると理解できる。
以上によれば、甲1には、以下の「甲1発明」が記載されているものと認められる。
「表面にリン酸塩を主体とする絶縁皮膜が施された電磁鋼板。」
2 甲2~甲10について
(1) 甲2の記載
甲2には、次の記載がある。
ア 「【0015】これは、多価金属リン酸塩を含む絶縁皮膜形成用処理液がかなり強い酸性であることに根本的な原因があると考えられる。この酸性の処理液を鋼板表面に塗布すると、処理液が鋼板表面を溶解し、乾燥途上にある皮膜中に鋼板からFeがイオン化して溶出する。そのため、焼付けにより形成された乾燥皮膜は、Feとリン酸との非晶質あるいは結晶質の塩を含むことになる。この塩は、絶縁皮膜中で微細な粒子を形成して、成膜性(白濁した皮膜の外観)や密着性(リン酸とFeの塩を基点として皮膜剥離が生じる)を阻害し、ひいては耐水性をも低下させる。Feの溶出量が多い、即ち、Fe/Pモル比が高いほど、上記の塩の生成量が増え、耐水性が低下する。」
イ 「【0049】上記説明した以外に、処理液中に必要に応じて防錆剤、消泡剤、処理液安定化剤等の他の添加剤を配合してもよい。本発明の絶縁皮膜付き電磁鋼板を製造する際には、本発明の処理液の多価金属リン酸塩ならびに必要に応じて使用される有機樹脂および添加剤(腐食抑制剤を含む)を配合した処理液を、素地鋼板の表面に塗布して焼付処理して絶縁皮膜を形成することができる。」
(2) 甲3の記載
甲3には、次の記載がある。
ア 「【0037】
次に、電磁鋼板1を製造する方法について説明する。この方法では、Mを含む多価金属りん酸塩、キレート剤並びに水からなる塗布液を電磁鋼の母材に塗布し、焼き付ける。水としては、Caイオン及びMgイオンの合計濃度が100ppm以下のものを用いる。多価金属りん酸塩としては、第一りん酸アルミニウム、第一りん酸亜鉛、第一りん酸マグネシウム及び第一りん酸カルシウムが例示される。以下、りん酸アルミニウム、りん酸亜鉛、りん酸マグネシウム、りん酸カルシウムは、それぞれ第一りん酸アルミニウム、第一りん酸亜鉛、第一りん酸マグネシウム、第一りん酸カルシウムを示す。」
イ 「【0041】
塗布液に含まれるキレート剤の量は、焼き付け後の絶縁被膜の質量に対して1質量%~30質量%である。りん酸塩を含む塗布液は酸性であるため、塗布液の乾燥が終了せず、かつ、塗布液が酸性に保持されている間、母材からFeが塗布液中に溶出する。そして、Feが過度に溶出し、キレート剤の反応限界を上回ると、りん酸鉄及び水酸化鉄が生成され、十分な耐錆性が得られない。このような現象はキレート剤の量が1質量%未満の場合に顕著である。従って、キレート剤の量は焼き付け後の絶縁被膜の質量に対して1質量%以上である。一方、キレート剤の量が30質量%超では、塗布液中のりん酸塩が70質量%未満であり、絶縁被膜に十分な耐熱性が得られない。従って、キレート剤の量は焼き付け後の絶縁被膜の質量に対して30質量%以下である。」
(3) 甲4の記載
甲4には、次の記載がある。
ア 「【0018】
水溶液の焼き付けの際にりん酸塩が脱水縮合反応で架橋して絶縁被膜が形成される。このとき、母材からFeが溶出し、このFeも絶縁被膜に取り込まれる。りん酸塩の架橋反応には、様々な因子が影響するが、耐食性、特に、耐錆性を高めるには、りん酸塩の架橋反応を促進して、腐食原因の水、塩分等が透過しにくい緻密で均一な架橋状態(被膜構造)を形成することが重要である。しかしながら、従来の製造方法では、緻密で均一な架橋状態(被膜構造)を形成することができない。」
イ 「【0034】
次に、電磁鋼板1を製造する方法について説明する。この方法では、Mを含む多価金属りん酸塩、キレート剤並びに水からなる塗布液を電磁鋼の母材に塗布し、焼き付ける。水としては、Caイオン及びMgイオンの合計濃度が100ppm以下のものを用いる。多価金属りん酸塩としては、第一りん酸アルミニウム、第一りん酸亜鉛、第一りん酸マグネシウム及び第一りん酸カルシウムが例示される。以下、りん酸アルミニウム、りん酸亜鉛、りん酸マグネシウム、りん酸カルシウムは、それぞれ第一りん酸アルミニウム、第一りん酸亜鉛、第一りん酸マグネシウム、第一りん酸カルシウムを示す。
【0035】
塗布液の焼き付けの際にりん酸塩の末端同士が脱水縮合反応で架橋して絶縁被膜が形成される。母材に、りん酸塩水溶液を主体とする塗布液を塗布し焼き付けて絶縁被膜を形成する際、母材から塗布液に溶出するFeは、化学式1に従ってイオン化する。その後、化学式2に従って、Fe3+まで酸化され、主に、りん酸第二鉄又は水酸化第二鉄となって、絶縁被膜中に固定されると考えらえる。
Fe → Fe2++2e- (化学式1)
Fe2++O → Fe3+ (化学式2)」
(4) 甲5の記載
甲5には、次の記載がある。
ア 「〔産業上の利用分野〕
本発明は磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板、より詳細にはJISに規定される50A350~50A270(35A300~35A230)級の鉄損が非常に低く且つ高磁束密度を有するフルプロセス無方向性電磁鋼板の製造方法に関する。」(第1頁右下欄第2行~第6行)
イ 「本発明では圧延の対象とする電磁鋼スラブの組成をC:0.0050wt%以下、Si:1.0~4.0wt%、Al:0.1~2.0wt%と規定する。
・・・
Siは、1.0wt%未満であると固有抵抗の減少により鉄損値の向上が少なく、一方、4.0wt%を超えると、冷間圧延性が極端に悪くなり、このため1.0~4.0wt%の範囲とする。
Alは、0.1wt%未満では製鋼段階で残存したNがAlとともに微細に析出するため、最終焼鈍時に良好な粒成長性が得られず、磁気特性が劣化する。Alが0.1wt%以上であれば、たとえ残存Nが存在したとしても.AlN粒子が粗大となるため特性の劣化を防ぐことができる。しかし、Alが2.0wt%を超えると冷延性が悪くなる。このためAl0.1~2.0wt%の範囲とする。」(第2頁左下欄第6行~右下欄第4行)
ウ 「実施例 1.
第1表に示される組成のスラブを1150℃に加熱して仕上温度790℃で熱間圧延後610℃で巻取り、酸洗した後1次冷圧し、次いで75%H2-25%N2(露点-20℃)の雰囲気中で加熱温度100℃/h、850℃×3hのオープンコイル焼鈍を行った後、2次冷圧し、その後25%H2-75%N2(露点-20℃)の雰囲気中で950℃×2minの仕上焼鈍を実施した。」(第3頁右下欄第18行~第4頁左上欄第7行)
エ 「
[図:0001438296000002.jpg]
」(第4頁左上欄)
(5) 甲6の記載
甲6には、次の記載がある。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁鋼板の表面に第1層として厚さ0.2~1μmのリン化合物を含む皮膜を形成し、更にその上層に第2層として厚さ0.1~2μmのケイ酸塩を含む皮膜を形成した複層皮膜を有することを特徴とする塩素イオン存在下での耐食性、歪取り焼鈍後の密着性に優れた絶縁皮膜付き電磁鋼板。
・・・
【請求項4】
前記リン化合物は、無機リン酸、無機リン酸塩、有機リン酸、有機リン酸塩の中から選ばれる1種また2種以上を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかの項に記載の絶縁皮膜付き電磁鋼板。
【請求項5】
前記無機リン酸塩は、Zn、Al、Mg、Mn、Mo、Ca、Sr、Ceの中から選ばれる1種または2種以上の金属元素を含む第一リン酸塩からなることを特徴とする、請求項4に記載の絶縁皮膜付き電磁鋼板。」
イ 「【0044】
【実施例】
(実施例1)
下層(第1層)絶縁皮膜形成用の処理液として表1、上層(第2層)絶縁皮膜形成用の処理液として表2に示す処理液を、各々調整し、これら処理液を板厚0.5mmの無方向性電磁鋼板の表面に、所定の皮膜厚となるように、ロールコーティング法により塗布した後、これを誘導加熱装置で焼付を行い、絶縁皮膜を形成した供試材を作成した。下層および上層の皮膜厚および焼付温度を表3及び表4に記載した。
【0045】
【表1】
[図:0001438296000003.jpg]
」
(6) 甲7の記載
甲7には、次の記載がある。
ア 「[請求項1] 無機塩、酸化物および有機樹脂のうちの1種または2種以上を含み、
無機塩および/または酸化物を、絶縁皮膜の総質量に対して合計50質量%以上含有し、
ふっ素濃度が2ppm~130ppmであり、かつ、
クロム系化合物を含有しない絶縁被膜を鋼板表面に有する、電磁鋼板。
[請求項2] りん酸金属塩と、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂およびポリエステル樹脂のうちの1種または2種以上の混合物もしくは共重合物とを、絶縁皮膜の総質量に対して合計50質量%以上含有する、請求項1に記載の電磁鋼板。
・・・
[請求項4] アルミニウム、亜鉛、カルシウム、コバルト、ストロンチウム、ジルコニウム、チタン、ニッケル、バリウム、マグネシウムおよびマンガンのうちの1種または2種以上の金属元素のりん酸金属塩100質量部と、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂およびポリエステル樹脂のうちの1種または2種以上の混合物もしくは共重合物1~50質量部とを、絶縁皮膜の総質量に対して合計50質量%以上含有する、請求項2に記載の電磁鋼板。」
イ 「[0072]
[表1]
[図:0001438296000004.jpg]
」
(7) 甲8の記載
甲8には、次の記載がある。
ア 「【請求項1】
表面に、
リン酸金属塩と、
平均粒径が2μm以下の無機化合物微粒子と、
水酸基を保持し、分子量が50~2000である低分子有機化合物と、
を含有し、
前記無機化合物微粒子の含有量が、前記リン酸金属塩100質量部に対し、0.5~20質量部であり、
前記低分子有機化合物の含有量が、前記リン酸金属塩100質量部に対し、0.05~10質量部であり、かつ、
クロムを含有しない無機絶縁被膜を有する、無方向性電磁鋼板。
【請求項2】
前記リン酸金属塩は、Al、Ba、Co、Fe、Mg、Mn、Ni、及び、Znからなる群より選択される1種又は2種以上の金属元素とリン酸との塩である、請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。」
イ 「【0051】
【表1】
[図:0001438296000005.jpg]
」
(8) 甲9の記載
甲9には、次の記載がある。
ア 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、パンチの摩耗抑制、打抜部材の打抜性向上等を目的として、コイル材にはプレス加工油(スタンピングオイルともいう。以下では単に「オイル」と称する。)が塗布されていることが一般的である。オイルが積層体に付着した状態のまま、後続の工程で積層体が熱処理されると、ススが発生したり、積層体に変色が生じてしまうことがある。この場合、オイルの大部分が揮発するまで(例えば1日以上)、積層体10を保管場所に保管してから、積層体を熱処理することが一般的であった。しかしながら、保管場所の確保のためのコストを要しうると共に、積層鉄心の製造効率(スループット)が低下しうる。」
(9) 甲10の記載
甲10には、次の記載がある。
ア 「【0002】
一般に、回転電機やソレノイドの積層鉄心、積層金型等は、フープ材(薄帯板)を素材として、順送り金型装置により製造される。例えば、回転電機の積層鉄心は、順送り金型装置内で、フープ材に対してパイロット穴やスロット部、内径ティース等の打抜き加工を順次行うことで鉄心薄板が連続的にかたちづくられ、外形打抜き後の鉄心薄板を所定の枚数積層して固着させることによって製造される。打抜き加工にあたっては、フープ材とパンチとの間のかじりや焼き付きの防止、パンチやダイの摩耗防止等を図るべく、フープ材の片面あるいは両面にプレス加工油が塗布される。」
イ 「【0015】
≪積層鉄心の製造工程≫
以下、図2および図3も併用して、積層鉄心SCの製造工程を説明する。
ロール装置2から供給されたフープ材W1には、加工油塗布装置3内でその片面あるいは両面にプレス加工油が塗布された後、順送り金型装置4内で外形を除く各種の打抜き加工が施される。すなわち、図2,図3に示すように、フープ材W1は、順送り金型装置内で間欠搬送されながら、先ず、パイロット穴Pの打抜き加工(1)、内径下穴d1および外形溝用小穴hの打抜き加工(2)、スロット部Sの打抜き加工(3)、内径dの打抜き加工(4)、内径ティースTの打抜き加工(5)を順次施される。
【0016】
これらの打抜き加工が完了すると、図3に示すように、フープ材W1の下面におけるスロット部S間の磁極部J部分には、接着剤塗布装置5によって嫌気性接着剤(以下、単に接着剤と記す)Eがスポット状に塗布される(6)。接着剤Eの塗布が完了すると、フープ材W1には外形打抜きパンチにより外形Dの打抜きが行われ、鉄心薄板W2が外形打抜きダイ8の抜き孔8a内に打抜かれる。外形打抜きダイ8はいわゆる回転ダイであり、鉄心薄板W2は、外形打抜きダイ8と伴に1枚ずつ(あるいは、複数枚ずつ)所定の角度(例えば、90°)回転した後、すでに積層されている鉄心薄板群W3の上に積層される。これにより、接着剤Eは、上下の鉄心薄板W2間で拡げられると同時に、外気から遮断されて固化し始める。
【0017】
外形打抜きダイ8内では、接着剤Eが塗布されていない鉄心薄板W2の存在により、所定の厚みをもった積層鉄心SCが形成される。なお、これは図示しない積層厚制御システムが、接着剤供給装置6から接着剤塗布装置5への接着剤の供給を停止させることにより行われる。積層鉄心SCは、鉄心薄板W2が外形打抜きダイ8に打抜かれるに連れて抜き孔8a内を徐々に下降してゆき、ついには外形打抜きダイ8から落下し、コンベア装置7によって組立ライン等に搬送される。」
「【図2】
[図:0001438296000006.jpg]
【図3】
[図:0001438296000007.jpg]
」
第6 申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)、及び、取消理由1(進歩性)について
1 本件発明1について
(1) 本件発明1と甲1発明との対比
ア 本件発明1と甲1発明は、ともに「電磁鋼板」の発明である点で一致する。
イ 甲1発明における「リン酸塩を主体とする絶縁皮膜」は、本件発明1における「絶縁被膜」に相当する。
ウ 甲1発明における「リン酸塩を主体とする絶縁皮膜」は、「電磁鋼板」の「表面」に施されたものであるから、本件発明1と甲1発明は、「片面または両面に」「絶縁被膜が形成されて」いる点で共通する。
エ 以上によれば、本件特許発明1と甲1発明の一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点]
「片面または両面に、絶縁被膜が形成されていることを特徴とする電磁鋼板。」
[相違点1]
本件発明1の「電磁鋼板」は、「化学組成が、単位質量%で、Si:2.5%~3.9%、Al:0.001%~3.0%、Mn:0.05%~5.0%、残部:Fe及び不純物を含有」しているのに対し、甲1発明の「電磁鋼板」は、化学組成が特定されていない点。
[相違点2]
本件発明1の「電磁鋼板」は、「硬化促進剤を含有する絶縁被膜が形成されており、前記硬化促進剤が、乾燥した状態で前記絶縁被膜内に封止されており、
前記絶縁被膜における前記硬化促進剤の含有量が、0.3wt%~80wt%である」のに対し、甲1発明の「電磁鋼板」は、そのように特定されていない点。
(2) 申立理由1(新規性)について
上記(1)のとおり、本件発明1と甲1発明とは、上記相違点1及び相違点2を有する。
したがって、本件発明1は、甲1発明であるとはいえない。
(3) 申立理由2(進歩性)、取消理由1(進歩性)について
事案に鑑み相違点2について検討する。
ア 本件発明1の「前記硬化促進剤が、乾燥した状態で前記絶縁被膜内に封止されている」との記載は、絶縁被膜がどのような状態にあることを意味するのかを具体的に把握することが困難な記載である。そこで、本件特許の願書に添付した明細書の記載を検討すると、本件明細書の実施例には、本件における絶縁被膜を具体化する手段について次のように記載されている。
「【実施例】
【0104】
まず、以下の表1に示す番号1~13の被膜成分を準備した。
そして、嫌気性接着剤の硬化促進作用を持つ化合物である番号7~11の何れかの被膜成分を予め乾燥させた後、これらを、絶縁被膜成分である番号1~5の被膜成分に加えた絶縁被膜溶液を調製した。そして、この絶縁被膜溶液に、適宜純水を加えて攪拌することで濃度調整を行い、絶縁被膜形成用の処理液とした。この絶縁被膜形成用の処理液の配合に際し、含有量は表1に示す通りとした。
同様に、嫌気性接着剤の硬化促進作用を持たない化合物である番号12,13の何れかの被膜成分を、絶縁被膜成分である番号1~5の被膜成分に加えた絶縁被膜溶液を調製した。そして、この絶縁被膜溶液に適宜、純水を加えて攪拌することで濃度調整を行い、絶縁被膜形成用の処理液とした。この絶縁被膜形成用の処理液の配合に際し、含有量は表1に示す通りとした。
・・・
【0106】
一方、平均質量%で、Si:3.1%、Al:0.6%、Mn:0.1%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、平均板厚が0.30mmであり、L方向及びC方向の平均表面粗度がRa(中心線平均粗さ)でそれぞれ0.28μmである無方向性電磁鋼板を複数枚、用意した。そして、これら無方向性電磁鋼板それぞれの表面に、上記した絶縁被膜形成用の処理液を、塗布量が平均1.2g/m2になるようにロールコーターで塗布した。その後、500℃の加熱炉中で無方向性電磁鋼板の板温が200℃又は350℃になるように60秒間焼き付けることで、絶縁被膜を形成した。ところで、この絶縁被膜の形成工程における好ましい処理液の塗布量としては、平均値が0.4g/m2~2.0g/m2の範囲内とすることが考えられる。また、加熱炉中における無方向性電磁鋼板の板温としては、140℃~330℃の範囲内とすることが考えられる。さらに、加熱炉中における無方向性電磁鋼板の焼き付け時間としては、15秒~60秒の範囲内とすることが考えられる。」
イ 以上の記載によれば、本件実施例の絶縁被膜は、絶縁被膜形成用の処理液を電磁鋼板に塗布し焼き付けて形成されたものであり、当該処理液は、嫌気性接着剤の硬化促進作用を持つ化合物を予め乾燥させた後、当該化合物を絶縁被膜成分に加えて溶液を調整し、適宜純水を加えて攪拌して調整されるものであるが、調整後の処理液は、物としては、嫌気性接着剤の硬化促進成分が含まれた液であるといえる。
そうすると、本件実施例の絶縁被膜と同様に、嫌気性接着剤の硬化促進成分を含む絶縁被膜形成用の処理液を電磁鋼板表面に焼き付けて形成された絶縁被膜は、本件特許発明1における「硬化促進剤を含有」し「硬化促進剤が、乾燥した状態で前記絶縁被膜内に封止されている」「絶縁被膜」であると理解できる。
以上の理解をふまえ、上記相違点2について検討する。
ウ 電磁鋼板の表面の絶縁被膜を、リン酸塩を含む処理液を電磁鋼板に塗布し、焼き付けることにより形成することは、甲2~甲4(上記第5の2の、(1)イ、(2)ア、(3)イ)にも記載された周知技術である。
また、甲2~甲4(上記第5の2の、(1)ア、(2)イ、(3)ア)によれば、リン酸塩を含む絶縁被膜形成用の塗布液を鋼板表面に塗布すると、鋼板からFeが塗布液中に溶出し、その後の焼付けにより形成される絶縁被膜に溶出したFeが取り込まれ、結果としてFeとリン酸の塩を含む絶縁被膜となることは、当業者の技術常識であるといえる。
エ 甲1発明の「リン酸塩を主体とする絶縁皮膜が施された」について、甲1には、処理液の塗布や焼き付けについての記載は見られないものの、リン酸塩を主体とする絶縁皮膜形成に関する上記ウの周知技術に照らすと、甲1に接した当業者であれば、甲1発明の「リン酸塩を主体とする絶縁皮膜が施された」は、リン酸塩を含む絶縁被膜形成用の塗布液を塗布し、焼き付けて形成された絶縁被膜が施されたものであると理解するといえる。
そして、甲1の【0025】(上記第5の1(1)ウ)の、「皮膜形成時にリン酸塩と鋼板とが反応し、皮膜中にリン酸鉄化合物のようなものが含有されているのではないかと想像され、リン酸鉄化合物が効果促進(当審注:「硬化促進」の誤記)の作用を有するのではないかと思われる。」との記載は、リン酸塩を含む絶縁被膜形成用処理液に関する上記ウの技術常識と整合的であり、当該記載に接した当業者であれば、甲1発明の「リン酸塩を主体とする絶縁皮膜」は、「硬化促進成分」である「鉄」を含む処理液を塗布し焼き付けて形成されたものと理解するといえる。
オ 以上によれば、甲1発明における「リン酸塩を主体とする絶縁皮膜」は、「嫌気性接着剤の硬化促進成分を含む絶縁皮膜形成用の処理液が電磁鋼板表面に焼き付けられて形成された絶縁被膜」であるといえる。そうすると、上記イの理解に照らし、甲1発明における「リン酸塩を主体とする絶縁皮膜」は、本件特許発明1における「硬化促進剤を含有」し「硬化促進剤が、乾燥した状態で前記絶縁被膜内に封止されている」「絶縁被膜」に相当するものといえる。
カ しかしながら、甲1には、甲1発明の「リン酸塩を主体とする絶縁皮膜」に、「硬化促進成分」である「鉄」がどの程度取り込まれるかについての記載はない。
また、甲2の【0015】(上記第5の2(1)ア)には、「この酸性の処理液を鋼板表面に塗布すると、処理液が鋼板表面を溶解し、乾燥途上にある皮膜中に鋼板からFeがイオン化して溶出する。そのため、焼付けにより形成された乾燥皮膜は、Feとリン酸との非晶質あるいは結晶質の塩を含むことになる。」と記載され、甲3の【0041】(上記第5の2(2)イ)には、「りん酸塩を含む塗布液は酸性であるため、塗布液の乾燥が終了せず、かつ、塗布液が酸性に保持されている間、母材からFeが塗布液中に溶出する。」と記載され、甲4の【0018】(上記第5の2(3)ア)には、「水溶液の焼き付けの際にりん酸塩が脱水縮合反応で架橋して絶縁被膜が形成される。このとき、母材からFeが溶出し、このFeも絶縁被膜に取り込まれる。」と記載されているものの、甲2~甲4には、鋼板から溶出したFeを、接着剤の硬化促進剤として利用することについての記載はなく、硬化促進剤の含有量を0.3wt%~80wt%とすることの示唆もない。
また、甲5にも相違点2に関する記載はない。
そうすると、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1~甲5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲6~甲10を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本件発明2~6について
本件発明2~6は、請求項1を引用するものであるから、本件発明2~6と甲1発明とを対比すると、上記1(1)の相違点2で少なくとも相違する。
したがって、本件発明2、3、6も、甲1発明であるとはいえない。
また、上記1(3)のとおりであるから、本件発明2~6も、甲1に記載された発明及び甲1~甲5の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲6~甲10を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 申立人の主張
(1) 申立人は、令和8年3月19日提出の意見書(第3ページ最終行~第5ページ第15行)において、「甲第1号証の表1の「硬化剤無し」では、「嫌気性接着剤用硬化促進剤をあらかじめ塗布乾燥」することなく、「嫌気性接着剤のみ」を用いて、図1の「接着試験片」を作製している(【0021】~【0022】)。
もっとも、本件明細書に記載されるように、「嫌気性接着剤を用いる場合の硬化促進剤には…鉄…が採用可能」である(【0030】)。
そして、「絶縁皮膜無し電磁鋼板A」では、「嫌気性接着剤」がダイレクトに鋼板表面に接触し、当然、鋼板表面は全面が鉄(Fe)であるから、『硬化促進剤の含有量=100wt%』と考えることができる。実際に、甲第1号証の表1を見ると、接着強度は「8.2MPa」と高く、硬化促進の作用が十分に発揮されていることが把握される。
一方、「クロム酸塩主体絶縁皮膜付電磁鋼板C」は、「絶縁皮膜」中にFeは存在しないので、『硬化促進剤の含有量=0wt%』と考えることができ、実際に、甲第1号証の表1に示された接着強度は「1.5MPa」と低い。
これら『硬化促進剤の含有量』と接着強度との関係を、以下の参考図に示す。
[図:0001438296000008.jpg]
上記参考図から明らかなように、「リン酸塩主体絶縁皮膜付電磁鋼板B」の接着強度「6.1MPa」は、『硬化促進剤の含有量=0wt%』である「クロム酸塩主体絶縁皮膜付電磁鋼板C」の「1.55MPa」よりも相当に大きい。
むしろ、『硬化促進剤の含有量=100wt%』である「絶縁皮膜無し電磁鋼板A」の「8.2MPa」に近く、「絶縁皮膜無し電磁鋼板A」と同様に、Feによる硬化促進の作用が、十分に発揮されていることが把握される。
そのうえで、上記参考図を踏まえると、「リン酸塩主体絶縁皮膜付電磁鋼板B」については、『硬化促進剤の含有量=68wt%』程度と類推される。これは訂正後の請求項1の「0.3wt%~80wt%」の範囲内であり、「0.3wt%」未満であるとは到底いえない(なお、訂正後の請求項1における「0.3wt%」という下限値の方が、むしろ「ごく微量」である)。
以上のことから、請求項1における「前記絶縁被膜における前記硬化促進剤の含有量が、0.3wt%~80wt%である」という訂正事項は、甲1発明との相違点になるものではない。
したがって、訂正後の請求項1(および、これを引用する請求項2~6)に係る発明は、依然として、進歩性を有するものではない。」と主張する。
しかしながら、申立人は、「クロム酸塩主体絶縁皮膜付電磁鋼板C」において、「クロム酸塩主体絶縁皮膜」中にFeが存在しないとする根拠を示していない。
また、申立人の主張のとおり、甲1の「クロム酸塩主体絶縁皮膜」中にFeが存在しないとしても、接着剤の硬化促進剤には、Fe以外の材料が含まれるから、「クロム酸塩主体絶縁皮膜付電磁鋼板C」において、「絶縁皮膜」中にFeは存在しないことが、『硬化促進剤の含有量=0wt%』と考えることができる理由とはいえない。
さらに、申立人は、甲1に記載された、「絶縁皮膜無し電磁鋼板A」、「リン酸塩主体絶縁皮膜付電磁鋼板B」及び「クロム酸塩主体絶縁皮膜付電磁鋼板C」における、硬化促進剤の含有量と接着強度との関係が、上記参考図のとおりの関係になる根拠についても示していない。
したがって、上記の主張は採用できない。
(2) また、申立人は、令和8年3月19日提出の意見書(第5ページ第16行~第8ページ第9行)において、「3.4 付言」として、本件明細書に実施例4として示されている「クロム」(クロム酸塩)を含有する絶縁被膜は、甲7の表1の参考例、参考資料1(特開2012-161138号公報)、参考資料2(特許第6524448号公報)、参考資料3(特許第3509475号公報)に示されているように、「従来から使用されており…珍しいものではない」から、本件発明1は、進歩性を有するものではない旨主張する。
しかしながら、甲1の【0023】(上記第5の1(1)ウ)に「クロム酸塩を主体とする絶縁皮膜の場合でも、硬化促進剤を併用すれば十分な接着強度が得られる。」と記載されているとおり、甲1の「クロム酸塩主体絶縁皮膜付電磁鋼板C」を用いる際には、十分な接着強度を得るために、硬化促進剤を併用する必要があるとされている。一方で、クロム酸塩が硬化促進作用を有することは記載されておらず、また、絶縁被膜中の含有量についての記載もない。
他方、甲7にも、クロムが接着剤の硬化促進剤として機能することについての記載はないから、甲7の参考例を、硬化促進剤の含有量として採用する動機付けはない。
そうすると、甲7に記載の参考例を、甲1の「クロム酸塩主体絶縁皮膜付電磁鋼板C」の「クロム酸塩主体絶縁皮膜」に適用し、本件発明1の「前記硬化促進剤が、乾燥した状態で前記絶縁被膜内に封止されており、前記絶縁被膜における前記硬化促進剤の含有量が、0.3wt%~80wt%である」との構成とすることは、当業者であっても容易であったとはいえない。
参考資料1~3についても同様である。
したがって、上記の主張は採用できない。
(3) また、申立人は、特許異議申立書(第19ページ第1行~第16行)において、甲6~甲8に記載されているよう、Zn、Mn、Mo等の金属元素を絶縁被膜に含有させることは、周知技術であり、本件発明2は、甲1発明の「絶縁被膜」と周知技術から、進歩性を欠如する旨主張する。
しかしながら、甲6~甲8には、Zn等の金属元素が、接着剤の硬化促進剤として機能することについての記載がないことから、甲1発明を、本件発明1の「前記硬化促進剤が、乾燥した状態で前記絶縁被膜内に封止されており、前記絶縁被膜における前記硬化促進剤の含有量が、0.3wt%~80wt%である」との構成とすることは、甲6~甲8の記載を参酌しても、当業者であっても容易であったとはいえない。
したがって、上記の主張は採用できない。
4 申立理由1、申立理由2及び取消理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)、及び、取消理由1(進歩性)によって、本件の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
第7 申立理由3(実施可能要件)及び申立理由4(サポート要件)について
1 当審における判断
(1) 実施可能要件について
発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、物の発明にあっては、当業者が本件明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づいて、その物を生産でき、かつ、使用できるように、それぞれ具体的に記載されていることが必要であると解されるところ、本件明細書の発明の詳細な説明には、実施例1~5として【0104】に「嫌気性接着剤の硬化促進作用を持つ化合物である番号7~11の何れかの被膜成分を予め乾燥させた後、これらを、絶縁被膜成分である番号1~5の被膜成分に加えた絶縁被膜溶液を調製した。」と記載され、【0106】に「無方向性電磁鋼板それぞれの表面に、上記した絶縁被膜形成用の処理液を、塗布量が平均1.2g/m2になるようにロールコーターで塗布した。その後、500℃の加熱炉中で無方向性電磁鋼板の板温が200℃又は350℃になるように60秒間焼き付けることで、絶縁被膜を形成した。」と記載されており、当該記載に基づいて、当業者が、本件発明1、2の「電磁鋼板」を生産でき、かつ、使用できるように、それぞれ具体的に記載されているといえる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1、2について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている。
また、発明の詳細な説明には、本件発明3~6の「接着積層コア製造方法」についても、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている。
(2) サポート要件について
ア 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 本件明細書の発明の詳細な説明の【0008】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、「接着積層コアの製造に際し、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性が得られる、電磁鋼板及び接着積層コア製造方法の提供を」行うこと(以下、「本件課題」という。)である。
ウ 本件明細書の発明の詳細な説明の【0009】には、「絶縁被膜に添加された硬化促進剤が、予め乾燥していてなおかつ絶縁被膜内に封入された状態にある。そのため、この電磁鋼板を用いて接着積層コアを製造する際、プレス加工前に塗布されるプレス加工油と混ざり合うことが抑制される。したがって、各鋼板部品を積層して接着する際に、硬化促進剤が高い濃度を維持したまま接着剤と混ざり合えるため、高い接着強度を早期に発現できる。よって、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性を得ることが可能である。」と記載されている。
エ また、本件明細書の発明の詳細な説明には、実施例に関し、【0104】に、「まず、以下の表1に示す番号1~13の被膜成分を準備した。
そして、嫌気性接着剤の硬化促進作用を持つ化合物である番号7~11の何れかの被膜成分を予め乾燥させた後、これらを、絶縁被膜成分である番号1~5の被膜成分に加えた絶縁被膜溶液を調製した。そして、この絶縁被膜溶液に、適宜純水を加えて攪拌することで濃度調整を行い、絶縁被膜形成用の処理液とした。この絶縁被膜形成用の処理液の配合に際し、含有量は表1に示す通りとした。」と記載され、【0105】【表1】に、実施例1~5は、硬化促進成分または硬化促進機能を持つ皮膜成分を含むのに対し、比較例1~4は硬化促進成分または硬化促進機能を持つ皮膜成分を含まないと記載され、【0106】に「一方、平均質量%で、Si:3.1%、Al:0.6%、Mn:0.1%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、平均板厚が0.30mmであり、L方向及びC方向の平均表面粗度がRa(中心線平均粗さ)でそれぞれ0.28μmである無方向性電磁鋼板を複数枚、用意した。そして、これら無方向性電磁鋼板それぞれの表面に、上記した絶縁被膜形成用の処理液を、塗布量が平均1.2g/m2になるようにロールコーターで塗布した。その後、500℃の加熱炉中で無方向性電磁鋼板の板温が200℃又は350℃になるように60秒間焼き付けることで、絶縁被膜を形成した。」と記載されている。
また、【0113】に「そして、表2において、初期接着強度では、1MPa以上の接着強度をGood(合格)とし、0.1MPa未満をBad(不合格)とし、その間をNot Goodと評価した。最終接着強度は、接着後の試験片に対し0.5MPaの圧力を加えた状態で24時間保持した後の接着強度を測定した。そして、測定の結果、5MPa以上の接着強度であったものをGood(合格)とし、5MPa未満の接着強度であったものをBad(不合格)とした。
一方、「100枚積層コア取り出し時間」については、20秒以下であったものをGood(合格)とし、60秒以上をBad(不合格)とし、その間をNot Goodとした。」と記載され、【0114】に「以上の評価結果の下、全ての評価項目でGoodであったものを総合評価Goodとし、少なくとも1つのNot Goodを含んだものを総合評価Not Goodとし、少なくとも1つのBadを含んだものを総合評価Badとした。」と記載されているところ、【0114】に、「表2に示した通り、実施例1~5の全てにおいて総合評価Goodが得られ、その一方で、比較例1~3では総合評価がBad、比較例4では総合評価がNot Goodとなった。」と記載されている。
オ そして、上記エによれば、発明の詳細な説明に実施例1~5として記載された発明は、嫌気性接着剤の硬化促進作用を持つ化合物を予め乾燥させた後、これらを、絶縁被膜成分に加えた絶縁被膜溶液を調製し、この絶縁被膜溶液に、適宜純水を加えて攪拌することで濃度調整を行い、絶縁被膜形成用の処理液とし、平均質量%で、Si:3.1%、Al:0.6%、Mn:0.1%を含有し、残部がFe及び不純物からなる電磁鋼板の表面に、上記した絶縁被膜形成用の処理液を塗布し、焼き付けることで、絶縁被膜を形成したものであり、絶縁被膜に添加された硬化促進剤が、予め乾燥していてなおかつ絶縁被膜内に封入された状態にあると、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性を得ることが可能であり、当業者が上記本件課題を解決し得ると認識できるといえる。
カ したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
本件発明2及び本件発明1、2を用いる本件発明3~6も、同様である。
よって、本件発明1~6は、発明の詳細な説明に記載したものである。
2 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書の第22ページ下から4行~第23ページ最終行で、甲1の記載及び本件明細書の表1、2の記載を参酌した上で、特許異議申立書の第24ページ第1行~第16行で、次の主張をする。
「 以上の点を踏まえると、本件特許発明1~2において、「クロム」や「鉄」どの「嫌気硬化を促進する有効成分」」である「硬化促進剤」は、「乾燥した状態で前記絶縁被膜内に封止されている」ものであるが、「嫌気硬化を促進」する作用を発現させて「十分な接着強度」を得るためには、「封止」の状態(「有効成分」の分散状態や「有効成分」の化合物としての形態など)について、何らかの条件を更に特定する必要がある蓋然性が高い。
そうすると、本件特許発明1~2は、「十分な接着強度」という課題(【0008】)を解決するための手段が反映されていないと言えるから、サポート要件を満足しない。これは、本件特許発明1~2を引用する本件特許発明3~6についても同様である。
また、構成[C]に関して説明したように、本件特許明細書には、「封止」の状態等に関して特に詳しい説明はないから、本件特許発明1~2を実施しようとした場合に、どのように実施するかを理解できず、当業者が実施することができる程度に特許明細書(発明の詳細な説明)が記載されていない。
したがって、本件特許発明1~2は、実施可能要件を満足しない。これは、本件特許発明1~2を引用する本件特許発明3~6についても同様である。」
しかしながら、上記1のとおりであるから、申立人の主張は採用できない。
3 申立理由3及び申立理由4についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由3(実施可能要件)及び申立理由4(サポート要件)によって、本件の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
第8 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由、取消理由通知に記載した取消理由及び異議申立人の提出した証拠によっては、本件の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に本件の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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