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特許異議申立

2025-700986

リサイクルされたアルミニウム合金スクラップから製造されたアルミニウム合金

審判番号
2025-700986
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-549322
登録番号
7660581
請求日
2025年10月14日
審決日
2026年02月13日
公報発行日
2026年03月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ノベリス・インコーポレイテッド
  • 【権利者代理人】青木 篤
  • 【権利者代理人】三橋 真二
  • 【権利者代理人】関根 宣夫
  • 【異議申立人】スペイラ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
  • 【異議申立人代理人】越川 隆夫
審判長/審判官
  • 審判長 富永 泰規
  • 審判官 佐藤 陽一
  • 審判官 阿川 寛樹
分類
P1651.113-Y (C22C) / P1651.121-Y (C22C) / P1651.55 -Y (C22C) / P1651.537-Y (C22C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第113条第5号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7660581号発明「リサイクルされたアルミニウム合金スクラップから製造されたアルミニウム合金」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7660581号の請求項1~24に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件の特許第7660581号の請求項1~24に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2022-549322号。以下「本願」という。)は、2021年(令和 3年) 4月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2020年 4月15日(US)米国)を国際出願日とする外国語でされた国際特許出願(以下「外国語特許出願」という。)であって、令和 7年 4月 3日にその特許権の設定登録がされ、同年 4月11日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、令和 7年10月14日に、特許異議申立人である越川 隆夫(以下「申立人」という。)により本件特許の請求項1~24(全請求項)に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~24に係る発明は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~24に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、以下において、本件特許の請求項1~24に係る発明をそれぞれ「本件発明1」~「本件発明24」といい、これらを総称して「本件発明」という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。 「【請求項1】 アルミニウム材料としてリサイクルスクラップを使用するアルミニウム合金の製造方法であって、 前記製造方法が、均質化、熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理、予備時効、及び人工時効を含むプロセスを含み、 前記アルミニウム合金が、1.00重量%~2.50重量%のMg、0.20重量%~3.00重量%のSi、0.15重量%~0.50重量%のFe、0.001重量%~0.90重量%のCu、0.20重量%~0.80重量%のMn、最大0.15重量%のCr、最大0.10重量%のTi、最大0.08重量%のV、0.001重量%~0.50重量%のZn、最大0.15重量%の不純物、及びAlからなり、 前記アルミニウム合金が、0.05:1~0.60:1のSi:Mg重量%の比および0.60~1.20のSi+Mn-(Fe/2)を有し、 前記アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む、前記製造方法。 【請求項2】 前記アルミニウム合金が、1.40重量%~2.40重量%のMg、0.30重量%~2.50重量%のSi、0.20重量%~0.40重量%のFe、0.05重量%~0.75重量%のCu、0.40重量%~0.70重量%のMn、最大0.10重量%のCr、最大0.05重量%のTi、最大0.05重量%のV、0.005重量%~0.40重量%のZn、最大0.15重量%の不純物、及びAlからなる、請求項1に記載の製造方法。 【請求項3】 前記アルミニウム合金が、1.25重量%~2.50重量%のMg、0.20重量%~0.80重量%のSi、0.15重量%~0.50重量%のFe、0.01重量%~0.30重量%のCu、0.20重量%~0.80重量%のMn、最大0.15重量%のCr、最大0.10重量%のTi、最大0.05重量%のV、最大0.50重量%のZn、最大0.15重量%の不純物、及びAlからなる、請求項1または2に記載の製造方法。 【請求項4】 前記アルミニウム合金が、1.60重量%~2.40重量%のMg、0.30重量%~0.60重量%のSi、0.20重量%~0.40重量%のFe、0.05重量%~0.20重量%のCu、0.40重量%~0.70重量%のMn、最大0.10重量%のCr、最大0.05重量%のTi、最大0.03重量%のV、最大0.20重量%のZn、最大0.15重量%の不純物、及びAlからなる、請求項1及び3のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項5】 Si:Mg重量%の比が、0.20:1~0.45:1である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項6】 前記リサイクルスクラップが、前記リサイクルスクラップの総重量に基づいて、少なくとも50重量%の使用済み飲料缶スクラップを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項7】 前記リサイクルスクラップが、少なくとも25重量%の混合合金スクラップを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項8】 前記混合合金スクラップが、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、及び7xxxシリーズのアルミニウム合金のうちの1つまたは複数を含む、請求項7に記載の製造方法。 【請求項9】 前記混合合金スクラップにおいて、前記5xxxシリーズのアルミニウム合金と前記6xxxシリーズのアルミニウム合金との比率が1:3から3:1である、請求項8に記載の製造方法。 【請求項10】 前記混合合金スクラップが、前記リサイクルスクラップの総重量に基づいて、少なくとも18.75重量%の前記5xxxシリーズのアルミニウム合金を含む、請求項8または9のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項11】 前記混合合金スクラップが、前記リサイクルスクラップの総重量に基づいて、少なくとも18.75重量%の前記6xxxシリーズのアルミニウム合金を含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項12】 前記アルミニウム合金が、T4質別の場合、約185℃の温度で約20分間塗料焼き付けし、2%の予ひずみの後に、ISO 6892-1(2016)に従ってテストした場合、160MPaから250MPaの降伏強度(Rp0.2)を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項13】 前記アルミニウム合金が、少なくとも15%の破断伸びを有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項14】 前記アルミニウム合金が、全ての方向(圧延方向に対して、縦(L)、対角(D)、及び/または横(T))において、少なくとも0.40のr(10)値を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項15】 前記アルミニウム合金が、仕様VDA238-100による曲げ性試験のために、40°から100°のβ曲げ角度を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項16】 前記アルミニウム合金が、シート、プレート、電子機器装置ハウジング、自動車用構造部品、航空宇宙用構造部品、航空宇宙用非構造部品、海洋用構造部品、または海洋非構造部品である、請求項1~15のいずれかに記載の製造方法。 【請求項17】 前記アルミニウム合金が、熱間圧延後に冷間コイル状にされる、請求項1に記載の製造方法。 【請求項18】 前記アルミニウム合金が、寿命末期のアルミニウム物品、混合自動車スクラップ、UBCスクラップ、単収縮、及び熱交換器スクラップのうちの1つまたは複数からのリサイクルスクラップに由来する成分を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項19】 前記リサイクルスクラップが、前記寿命末期のアルミニウム物品を含み、前記寿命末期のアルミニウム物品が、アルミニウム多用車両に由来する、請求項18に記載の製造方法。 【請求項20】 前記リサイクルスクラップが、100重量%の前記寿命末期のアルミニウム製品に由来するスクラップを含む、請求項18または19のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項21】 前記リサイクルスクラップが、前記熱交換器スクラップを含み、前記熱交換器スクラップが、ろう付け合金スクラップを含む、請求項18~20のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項22】 前記リサイクルスクラップが、前記混合自動車スクラップを含み、前記混合自動車スクラップが、鍛造合金及び鋳造合金からのリサイクルスクラップを含む、請求項18~21のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項23】 前記アルミニウム合金が、最大25重量%の一次アルミニウム合金を含む、請求項17~19、21及び22のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項24】 前記アルミニウム合金が、一次アルミニウム合金を除外する、請求項17~19、21及び22のいずれか1項に記載の製造方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、下記5の甲第1~8号証(以下、それぞれを「甲1」~「甲8」という。)を提出し、以下の申立理由1~4により、本件特許の請求項1~24に係る特許を取り消すべきである旨主張している。 1 申立理由1(新規性) 本件発明1~24は、甲1~8に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 なお、特許異議申立書の第17~20頁において甲1~甲8の記載事項を認定した上で、第20~23頁の「ウ 本件特許発明と証拠に記載された発明との対比」において、甲1発明と本件発明1~5、甲2発明と本件発明1~5、甲3発明と本件発明17、甲4発明と本件発明6、16、18~22、甲5発明と本件発明1、6、7、18、20、21、甲6発明と本件発明1、8~16、19、20、22~24、甲7発明と本件発明6、甲8発明と本件発明1とが対比されている。 2 申立理由2(進歩性) 本件発明1~24は、甲1~甲8の記載事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 なお、特許異議申立書には上記1に記載した甲1~甲8の記載事項の認定及び対比が記載されるのみであり、甲1~8のいずれを主引用例とし、いずれを副引用例とするかは記載されていない。 3 申立理由3(新規事項) 令和 5年12月15日及び令和 6年 4月19日付け手続補正書でした補正は、以下の点で、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、本件発明に係る特許は、同法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。 令和 5年12月15日付け手続補正書でした補正は、本件特許の請求項1に「前記アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップを含む」なる事項を追加するものであるところ、本件明細書の表14の実施例47、49に記載されるのは、「UBCスクラップが100重量%」、「CBSスクラップが90重量%」である例であり、90%と100%の間の範囲については記載されていないし、異なるスクラップの含有量をまとめて90~100%とする補正は所謂新規事項の追加である。さらに、実施例47、49は表15によれば本件発明1の合金組成を有しておらず、実施例に該当しない例である。 また、令和 6年 4月19日付け手続補正書でした補正は、本件特許の請求項1に「前記アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む」なる事項を追加するものであるところ、本件明細書の段落0052の記載は「使用されるリサイクルスクラップにおけるEOLアルミニウム物品の含有量」を意味するものであり、本件特許の請求項1の「前記アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む」なる事項とは技術的意味が相違するから、前者に基づいて後者の補正を行うことは、所謂新規事項の追加である。 4 申立事項4(明確性) (1)Si、Mg、Feの含有量の範囲について 本件発明1は、「アルミニウム合金が、0.05:1~0.60:1のSi:Mg重量%の比および0.60~1.20のSi+Mn-(Fe/2)を有し」を必須要件とし、かつ「1.00重量%~2.50重量%のMg、0.20重量%~3.00重量%のSi、0.15重量%~0.50重量%のFe」であることを必須要件としているところ、例えばSiの上限値(3.00重量%)は前者を満たすことができず、整合が取れていないため明確ではない。 したがって、本件発明の請求項1に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)「航空宇宙用非構造部品」、「海洋非構造部品」について 本件発明16は、「前記アルミニウム合金が、シート、プレート、電子機器装置ハウジング、自動車用構造部品、航空宇宙用構造部品、航空宇宙用非構造部品、海洋用構造部品、または海洋非構造部品である」ことを必須要件としているところ、「航空宇宙用非構造部品」、「海洋非構造部品」なる用語は、当業者にとって意味が不明であり発明が不明確である。 したがって、本件発明の請求項16に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 5 証拠方法 甲1:国際公開第2016/140054号 甲2:国際公開第2015/041021号 甲3:特開2006-257470号公報 甲4:特開平11-293362号公報 甲5:特開平8-132106号公報 甲6:米国特許出願公開第2018/0274072号明細書 甲7:米国特許第4411707号明細書 甲8:国際公開第2019/010284号 第4 当合議体の判断 以下に述べるとおり、当合議体は、上記第3の申立理由1~4のいずれによっても、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 1 申立理由1(新規性)について 本件特許の請求項2~24は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用するものである。また、上記第3の1に記載したとおり、本件特許異議申立書において請求項1と対比されているのは甲1、2、5、6、8であり、甲3、4、7は、副引用例として記載されていることが明らかである。また、甲8については、特許異議申立書の第19~20頁の認定、第23頁の対比のいずれにおいても、溶体化処理及び人工時効を含む工程を経ることが記載されている点以外、何ら言及されておらず、実質的に副引用例として記載されていることが明らかである。 よって、本件発明1~24と、甲1、2、5、6に記載された発明とを対比する。 (1)甲1 ア 甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を総合的に勘案し、特に請求項1及び実施例6に着目すると、甲1には以下の発明が記載されていると認められる。 「Si0.22質量%、Fe0.29質量%、Cu0.29質量%、Mn0.57質量%、Mg1.23質量%、残部Al及び不可避不純物からなる合金組成を有するアルミニウム合金を溶解・鋳造して作製したスラブに均質化処理を施した後、熱間圧延、及び冷間圧延を行う、板厚0.250mmの缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法。」(以下「甲1発明」という。) イ 本件発明1と甲1発明との対比 (ア)甲1発明のアルミニウム合金板の製造方法における「均質化処理」、「熱間圧延」、「冷間圧延」は、それぞれ本件発明1のアルミニウム合金の製造方法における「均質化」、「熱間圧延」、「冷間圧延」に相当する。 (イ)甲1発明のアルミニウム合金のSi、Fe、Cu、Mn、Mgの含有量は、いずれも本件発明1のアルミニウム合金におけるSi、Fe、Cu、Mn、Mgの重量%の範囲内であり、これらと不純物及びAlを含むアルミニウム合金である限りにおいて、両者は一致する。 (ウ)甲1発明のSiとMgの質量%の比は0.22:1.23であるから、換算すると約0.18:1であり、本件発明1のSi:Mg重量%の比の範囲内である。 (エ)甲1発明のSiとMnとFeの質量%から計算したSi+Mn-(Fe/2)の値は0.645であるから、本件発明1のSi+Mn-(Fe/2)の値の範囲内である。 (オ)以上(ア)~(エ)を踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 A 一致点 アルミニウム合金の製造方法であって、 前記製造方法が、均質化、熱間圧延、冷間圧延を含むプロセスを含み、 前記アルミニウム合金が、1.00重量%~2.50重量%のMg、0.20重量%~3.00重量%のSi、0.15重量%~0.50重量%のFe、0.001重量%~0.90重量%のCu、0.20重量%~0.80重量%のMn、不純物及びAlを含むアルミニウム合金であり、 前記アルミニウム合金が、0.05:1~0.60:1のSi:Mg重量%の比および0.60~1.20のSi+Mn-(Fe/2)を有する、 前記製造方法。 B 相違点 (A)本件発明1の製造方法におけるアルミニウム合金は、「アルミニウム材料としてリサイクルスクラップを使用するアルミニウム合金」であって、「前記アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む」ものであるのに対し、甲1発明の製造方法におけるアルミニウム合金は、リサイクルスクラップを使用したものであるのか不明である点(相違点1-1)。 (B)本件発明1の製造方法は、「溶体化処理、予備時効、及び人工時効」を含むのに対し、甲1発明の製造方法ではこれらを含むのか不明である点(相違点1-2)。 (C)本件発明1の製造方法におけるアルミニウム合金は、Mg、Si、Fe、Cu、Mnに加えて「最大0.15重量%のCr、最大0.10重量%のTi、最大0.08重量%のV、0.001重量%~0.50重量%のZn、最大0.15重量%の不純物」を含み、これらと「Alからな」るものであるのに対し、甲1発明の製造方法におけるアルミニウム合金は、「残部Al及び不可避不純物からなる」ものであるものの、この「不可避不純物」中におけるCr、Ti、V、Zn、及びこれら以外の不純物の量が不明である点(相違点1-3)。 ウ 判断 相違点1-1について検討するに、アルミニウム合金の製造方法において、アルミニウム合金として90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含むものを用いるか否かは実質的な相違点である。 したがって、相違点1-2、1-3については検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 また、本件特許の請求項2~24は、本件特許の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明2~24についても、同様に甲1に記載された発明であるとはいえない。 (2)甲2 ア 甲2に記載された発明 甲2に記載された事項を総合的に勘案し、特に請求項1及び実施例1に着目すると、甲2には以下の発明が記載されていると認められる。 「Si0.24mass%、Fe0.35mass%、Cu0.20mass%、Mn0.69mass%、Mg1.31mass%、Zn0.19mass%、残部Al及び不可避不純物からなる合金成分を有するアルミニウム合金から作製したスラブに均質化熱処理、熱間圧延、及び冷間圧延を施す、板厚0.210mmの負圧缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法。」(以下「甲2発明」という。) イ 本件発明1と甲2発明との対比 (ア)甲2発明のアルミニウム合金板の製造方法における「均質化熱処理」、「熱間圧延」、「冷間圧延」は、それぞれ本件発明1のアルミニウム合金の製造方法における「均質化」、「熱間圧延」、「冷間圧延」に相当する。 (イ)甲2発明のアルミニウム合金のSi、Fe、Cu、Mn、Mg、Znの含有量は、いずれも本件発明1のアルミニウム合金におけるSi、Fe、Cu、Mn、Mg、Znの重量%の範囲内であり、これらと不純物及びAlを含むアルミニウム合金である限りにおいて、両者は一致する。 (ウ)甲2発明のSiとMgの含有量(mass%)の比は0.24:1.31であるから、換算すると約0.18:1であり、本件発明1のSi:Mg重量%の比の範囲内である。 (エ)甲2発明のSiとMnとFeの含有量(mass%)から計算したSi+Mn-(Fe/2)の値は0.755であるから、本件発明1のSi+Mn-(Fe/2)の値の範囲内である。 (オ)以上(ア)~(エ)を踏まえると、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 A 一致点 アルミニウム合金の製造方法であって、 前記製造方法が、均質化、熱間圧延、冷間圧延を含むプロセスを含み、 前記アルミニウム合金が、1.00重量%~2.50重量%のMg、0.20重量%~3.00重量%のSi、0.15重量%~0.50重量%のFe、0.001重量%~0.90重量%のCu、0.20重量%~0.80重量%のMn、0.001重量%~0.50重量%のZn、不純物及びAlを含むアルミニウム合金であり、 前記アルミニウム合金が、0.05:1~0.60:1のSi:Mg重量%の比および0.60~1.20のSi+Mn-(Fe/2)を有する、 前記製造方法。 B 相違点 (A)本件発明1の製造方法におけるアルミニウム合金は、「アルミニウム材料としてリサイクルスクラップを使用するアルミニウム合金」であって、「前記アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む」ものであるのに対し、甲2発明の製造方法におけるアルミニウム合金は、リサイクルスクラップを使用したものであるのか不明である点(相違点2-1)。 (B)本件発明1の製造方法は、「溶体化処理、予備時効、及び人工時効」を含むのに対し、甲2発明の製造方法ではこれらを含むのか不明である点(相違点2-2)。 (C)本件発明1の製造方法におけるアルミニウム合金は、Mg、Si、Fe、Cu、Mn、Znに加えて「最大0.15重量%のCr、最大0.10重量%のTi、最大0.08重量%のV、」「最大0.15重量%の不純物」を含み、これらと「Alからな」るものであるのに対し、甲2発明の製造方法におけるアルミニウム合金は、「残部Al及び不可避不純物からなる」ものであるものの、この「不可避不純物」中におけるCr、Ti、V、及びこれら以外の不純物の量が不明である点(相違点2-3)。 ウ 判断 相違点2-1について検討するに、アルミニウム合金の製造方法において、アルミニウム合金として90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含むものを用いるか否かは実質的な相違点である。 したがって、相違点2-2、2-3については検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。 また、本件特許の請求項2~24は、本件特許の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明2~24についても、同様に甲2に記載された発明であるとはいえない。 (3)甲5 ア 甲5に記載された発明 甲5に記載された事項を総合的に勘案し、特に比較例1に着目すると、甲5には以下の発明が記載されていると認められる。 「Si0.130wt%、Fe0.420wt%、Cu0.246wt%、Mn0.86wt%、Mg1.28wt%、Cr0.010wt%、Zn0.040wt%、Ti0.036wt%、残部Alの化学成分を有するUBC材(A)を、UBC材(A):純Alの重量比を100:0で混合して作製したスラブを熱間圧延及び冷間圧延する、厚さ300μmの箔地の製造方法。」(以下「甲5発明」という。) イ 本件発明1と甲5発明との対比 (ア)甲5発明の箔地の製造方法は、材料としてUBC材(A)100重量%を用いるものであり、UBC材がリサイクルスクラップであることは技術常識であるから、本件発明1の「アルミニウム材料としてリサイクルスクラップを利用するアルミニウム合金の製造方法」であって「前記アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む」製造方法に相当する。 (イ)甲5発明の箔地の製造方法における「熱間圧延」、「冷間圧延」は、それぞれ本件発明1のアルミニウム合金の製造方法における「熱間圧延」、「冷間圧延」に相当する。 (ウ)甲5発明の箔地のFe、Cu、Mg、Cr、Zn、Tiの含有量は、いずれも本件発明1のアルミニウム合金におけるFe、Cu、Mg、Cr、Zn、Tiの重量%の範囲内であり、これらとSi、Mn及びAlを含むアルミニウム合金である限りにおいて、両者は一致する。 (エ)甲5発明のSiとMgの含有量(wt%)の比は0.130:1.28であるから、換算すると約0.10:1であり、本件発明1のSi:Mg重量%の比の範囲内である。 (オ)甲5発明のSiとMnとFeの含有量(wt%)から計算したSi+Mn-(Fe/2)の値は0.78であるから、本件発明1のSi+Mn-(Fe/2)の値の範囲内である。 (カ)以上(ア)~(オ)を踏まえると、本件発明1と甲5発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 A 一致点 アルミニウム材料としてリサイクルスクラップを使用するアルミニウム合金の製造方法であって、 前記製造方法が、熱間圧延、冷間圧延を含むプロセスを含み、 前記アルミニウム合金が、1.00重量%~2.50重量%のMg、Si、0.15重量%~0.50重量%のFe、0.001重量%~0.90重量%のCu、Mn、最大0.15重量%のCr、最大0.10重量%のTi、0.001重量%~0.50重量%のZn及びAlを含むアルミニウム合金であり、 前記アルミニウム合金が、0.05:1~0.60:1のSi:Mg重量%の比および0.60~1.20のSi+Mn-(Fe/2)を有し、 前記アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む、 前記製造方法。 B 相違点 (A)本件発明1の製造方法は、「均質化」、「溶体化処理、予備時効、及び人工時効」を含むのに対し、甲5発明の製造方法ではこれらを含むのか不明である点(相違点3-1)。 (B)本件発明1の製造方法におけるアルミニウム合金は、Fe、Cu、Mg、Cr、Zn、Tiに加え、「0.20重量%~3.00重量%のSi」、「0.20重量%~0.80重量%のMn」、「最大0.08重量%のV」、「最大0.15重量%の不純物」を含み、これらと「Alからな」るものであるのに対し、甲5発明の製造方法におけるアルミニウム合金は、Si0.130wt%、Mn0.86wt%を含み、V及び不純物は含むのか不明である点(相違点3-2)。 ウ 判断 事案に鑑み、まず相違点3-2について検討するに、少なくともSi、Mnの含有量において、本件発明1と甲5発明とは相違しており、この点が実質的な相違点であることは明らかである。 したがって、相違点3-1については検討するまでもなく、本件発明1は、甲5に記載された発明であるとはいえない。 また、本件特許の請求項2~24は、本件特許の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明2~24についても、同様に甲5に記載された発明であるとはいえない。 (4)甲6 ア 甲6に記載された発明 甲6に記載された事項を総合的に勘案し、特にExample 1のUBC1、Example 2及びFig 3、並びに[0068]に着目すると、甲6には以下の発明が記載されていると認められる。 「リサイクルされたアルミニウムスクラップであるUBCスクラップに対し、約0.25wt%のCuと約0.15wt%のSiを添加して製造された、Cu0.37wt%、Fe0.3wt%、Mg1.5wt%、Mn0.8wt%、Si0.29wt%、Ti0.02wt%、Zn0.1wt%、Cr0.05wt%、Zr0.001wt%のアルミニウム合金であるUBC1(Example 1のTable 4)を、連続鋳造又は直接チル鋳造(Fig 3のブロック306,307)後、熱間圧延(Fig 3のブロック308)及び冷間圧延(Fig 3のブロック310)した後、熱処理(Fig 3のブロック312)してコイル巻き(Fig 3のブロック314)する、自動車部品や代替缶胴([0068]の「automotive parts or alternative can bodies」)として用いられる合金の製造方法。」(以下「甲6発明」という。) イ 本件発明1と甲6発明との対比 (ア)甲6発明の合金の製造方法は、材料としてリサイクルされたアルミニウムスクラップであるUBCスクラップに対して約0.25wt%のCuと約0.15wt%のSiを添加したものを用いるものであり、CuとSiの量は合計しても約0.40wt%であって残りはUBCスクラップ(リサイクルスクラップ)であるから、本件発明1の「アルミニウム材料としてリサイクルスクラップを利用するアルミニウム合金の製造方法」であって「前記アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む」「製造方法」に相当する。 (イ)甲6発明の合金の製造方法における「熱間圧延」、「冷間圧延」は、それぞれ本件発明1のアルミニウム合金の製造方法における「熱間圧延」、「冷間圧延」に相当する。 (ウ)甲6発明の合金のMg、Si、Fe、Cu、Mn、Cr、Ti、Znの含有量は、いずれも本件発明1のアルミニウム合金におけるMg、Si、Fe、Cu、Mn、Cr、Ti、Znの重量%の範囲内であり、これらとAlを含むアルミニウム合金である限りにおいて、両者は一致する。 (エ)甲6発明のSiとMgの含有量(wt%)の比は0.29:1.5であるから、換算すると約0.19:1であり、本件発明1のSi:Mg重量%の比の範囲内である。 (オ)甲6発明のSiとMnとFeの含有量(wt%)から計算したSi+Mn-(Fe/2)の値は0.94であるから、本件発明1のSi+Mn-(Fe/2)の値の範囲内である。 (カ)以上(ア)~(オ)を踏まえると、本件発明1と甲6発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 A 一致点 アルミニウム材料としてリサイクルスクラップを使用するアルミニウム合金の製造方法であって、 前記製造方法が、熱間圧延、冷間圧延を含むプロセスを含み、 前記アルミニウム合金が、1.00重量%~2.50重量%のMg、0.20重量%~3.00重量%のSi、0.15重量%~0.50重量%のFe、0.001重量%~0.90重量%のCu、0.20重量%~0.80重量%のMn、最大0.15重量%のCr、最大0.10重量%のTi、0.001重量%~0.50重量%のZn、及びAlを含むアルミニウム合金であり、 前記アルミニウム合金が、0.05:1~0.60:1のSi:Mg重量%の比および0.60~1.20のSi+Mn-(Fe/2)を有し、 前記アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む、 前記製造方法。 B 相違点 (A)本件発明1の製造方法は、「均質化」、「溶体化処理、予備時効、及び人工時効」を含むのに対し、甲6発明の製造方法ではこれらを含むのか不明である点(相違点4-1)。 (B)本件発明1の製造方法におけるアルミニウム合金は、Mg、Si、Fe、Cu、Mn、Cr、Ti、Znに加え、「最大0.08重量%のV」、「最大0.15重量%の不純物」を含み、これらと「Alからな」るものであるのに対し、甲6発明の製造方法における合金は、Zr0.001wt%を含み、V及び不純物は含むのか不明である点(相違点4-2)。 ウ 判断 相違点4-1について検討するに、合金の製造方法において、「均質化」、「溶体化処理、予備時効、及び人工時効」の有無は、明らかに実質的な相違点である。 したがって、相違点4-2については検討するまでもなく、本件発明1は、甲6に記載された発明であるとはいえない。 また、本件特許の請求項2~24は、本件特許の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明2~24についても、同様に甲6に記載された発明であるとはいえない。 (5)小括 以上(1)~(4)より、本件発明1~24は、甲1、2、5、6に記載された発明であるとはいえない。 よって、申立理由1によっては、本件特許の請求項1~24に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由2(進歩性)について (1)甲1~8号証に記載された発明、及びその他に記載された技術的事項について ア 甲1 (ア)甲1発明 甲1には、上記1(1)アに記載した「甲1発明」が記載されていると認められる。 (イ)甲1に記載されたその他の技術的事項 甲1の【0013】には、Siの含有量が0.05質量%未満の場合、アルミニウム合金板の原材料に使用できるスクラップ量が減少するとともに、アルミニウム地金の必要純度が高くなるため、コストが増大することが記載されていると認められる。 イ 甲2 (ア)甲2発明 甲2には、上記1(2)アに記載した「甲2発明」が記載されていると認められる。 (イ)甲2に記載されたその他の技術的事項 甲2の[0013]には、Siの含有量が0.10質量%未満の場合、アルミニウム合金板の原材料に使用できるスクラップ量が減少するとともに、アルミニウム地金の必要純度が高くなるため、コストが増大することが記載されていると認められる。 ウ 甲3 (ア)甲3に記載された技術的事項 甲3の請求項1には、所定のアルミニウム合金鋳塊に対し、所定の均質化処理後、熱間圧延を施し、コイル状に巻き上げる工程を含む、缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法が記載されていると認められる。 エ 甲4 (ア)甲4に記載された技術的事項 甲4の請求項1~5、【0014】、【0015】には、50%以上を自動車用アルミニウム合金鋳物屑で構成したアルミニウム合金鋳物屑に、アルミニウム合金展伸材屑もしくは地金を加えて溶解し、これに対して所定の純化精錬を行う、展伸材用アルミニウム合金の製造方法が記載されていると認められる。 オ 甲5 (ア)甲5発明 甲5には、上記1(3)アに記載した「甲5発明」(比較例)が記載されていると認められる。 (イ)甲5に記載されたその他の技術的事項 甲5の請求項1には、UBC材と純アルミニウム系合金材とを重量比で30:70~70:30の割合で混合することを含むアルミニウム合金箔の製造方法が記載されており、実施例1~7には、UBC:純Alの重量比が70:30、51:49又は30:70の例が示されていると認められる。 カ 甲6 (ア)甲6発明 甲6には、上記1(4)アに記載した「甲6発明」が記載されていると認められる。 (イ)甲6に記載されたその他の技術的事項 甲6のClaim 1には、「リサイクルされたアルミニウムを液体金属に溶融することと、改質液体金属を形成するために合金元素を前記液体金属に添加することであって、前記合金元素がマグネシウム、シリコン、または銅を含むこと」を含む、金属鋳造方法が記載されており、Example 1の「UBC1」においては、この改質液体金属を得るために、「UBCスクラップ」(100wt%)に対し、シリコンと銅を微量(合計0.40wt%)添加していることが把握される。 また、甲6発明の製造方法について記載されたFig3の熱処理工程(ブロック312)について、[0153]には任意選択的な工程であること、[0154]には冷間圧延された金属製品を溶体化(solutionizing)してもよいことが記載されており、さらに続くブロック314において、[0156]にはOEM先に配送されることが記載されていると認められる。 キ 甲7 (ア)甲7に記載された技術的事項 甲7のColumn 1 Lines 14-25には、本体素材及び缶末端素材の両者を含有する容器スクラップをうまく利用して新たな缶本体及び缶末端の成形に適した材料を得ることができるならば、スクラップを出発材料として用いることにより、所要エネルギーが少なくなり、コストが安くなることが記載されていると認められる。 ク 甲8 (ア)甲8に記載された技術的事項 甲8のClaim 1,20及びExample 3には、リサイクル内容物を含むアルミニウム合金製品を製造する際、第1の熱間圧延、及び第2の熱間圧延することを含む、自動車の車体部品に用いられるアルミニウム合金製品の製造方法であって、熱間圧延後に、さらに冷間圧延、溶体化、および人工時効にさらに供する方法が記載されていると認められる。 また、Page 5 Lines 5-23には、合金の調質または状態について、T1~T9等の種々の調質または状態について記載されていると認められる(ただし、熱間加工、冷間加工、溶体化処理、予備時効、及び人工時効を含む処理については記載されていない。)。 (2)甲1~甲8の組み合わせについて 上記第3の1に記載したとおり、本件特許異議申立書において請求項1と対比されているのは甲1、2、5、6、8であり、甲8は実質的に副引例として記載されている。よって、甲1、2、5、6を主引例とした場合について検討する。 ア 甲1を主引例とした場合について (ア)本件発明1 A 本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は上記1(1)イ(オ)に記載したとおり、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 (A)一致点 アルミニウム合金の製造方法であって、 前記製造方法が、均質化、熱間圧延、冷間圧延を含むプロセスを含み、 前記アルミニウム合金が、1.00重量%~2.50重量%のMg、0.20重量%~3.00重量%のSi、0.15重量%~0.50重量%のFe、0.001重量%~0.90重量%のCu、0.20重量%~0.80重量%のMn、不純物及びAlを含むアルミニウム合金であり、 前記アルミニウム合金が、0.05:1~0.60:1のSi:Mg重量%の比および0.60~1.20のSi+Mn-(Fe/2)を有する、 前記製造方法。 (B)相違点 a 本件発明1の製造方法におけるアルミニウム合金は、「アルミニウム材料としてリサイクルスクラップを使用するアルミニウム合金の製造方法であって」、「前記アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む」ものであるのに対し、甲1発明の製造方法におけるアルミニウム合金は、リサイクルスクラップを使用したものであると記載されていない点(相違点1-1)。 b 本件発明1の製造方法は、「溶体化処理、予備時効、及び人工時効」を含むのに対し、甲1発明の製造方法ではこれらを含まない点(相違点1-2)。 c 本件発明1の製造方法におけるアルミニウム合金は、Mg、Si、Fe、Cu、Mnに加えて「最大0.15重量%のCr、最大0.10重量%のTi、最大0.08重量%のV、0.001重量%~0.50重量%のZn、最大0.15重量%の不純物」を含み、これらと「Alからな」るものであるのに対し、甲1発明の製造方法におけるアルミニウム合金は、「残部Al及び不可避不純物からなる」ものであるものの、この「不可避不純物」中におけるCr、Ti、V、Zn、及びこれら以外の不純物の量は不明である点(相違点1-3)。 B 相違点1-1について検討する。 (A)甲1に記載されたその他の技術的事項について検討すると、上記(1)ア(イ)に記載したとおり、甲1にはSiが所定の量以上含まれることで、原材料に使用できるスクラップ量を増やすことができる旨が記載されているが、具体的にどのような量比でスクラップを用いることができるのかまでは当該記載からは把握できず、リサイクルスクラップに由来する成分を90重量%~100重量%とすることができるとはいえない。 (B)この点について、上記(1)カ(ア)、(イ)に記載したとおり、甲6には「UBCスクラップ」等のリサイクルされたアルミニウムを溶融した液体金属100wt%に対し、マグネシウム、シリコン又は銅を微量(例えば0.40wt%)添加することで、改質液体金属を得ることが記載されている。 そこで、甲6に記載された技術的事項を参考に、リサイクルされたアルミニウムである甲6の「UBCスクラップ」に対してマグネシウム、シリコン又は銅を添加することにより改質して、甲1発明の組成とすることが可能かを検討する。 a 甲6の「UBCスクラップ」の組成と甲1発明の組成とを対比する。 (a)Cuについて、UBCスクラップ0.15-0.20wt%に対して甲1発明0.29質量%であり、0.09-0.14wt%の銅の添加によって調整可能であることが把握される。 (b)Feについて、UBCスクラップ0.35-0.40wt%に対して甲1発明0.29質量%であり、仮にUBCスクラップ中の含有量が0.35wt%であったとしても、約1.2倍、希釈される必要があることが把握される。 (c)Mgについて、UBCスクラップ1.2-1.5wt%に対して甲1発明1.23質量%であり、用いるスクラップの実際の組成に応じて、マグネシウム添加要否、希釈要否が変わることが把握される。 (d)Mnについて、UBCスクラップ0.85wt%に対して甲1発明0.57質量%であり、約1.5倍、希釈される必要があることが把握される。 (e)Siについて、UBCスクラップ0.15-0.26wt%に対して甲1発明0.22質量%であり、用いるスクラップの実際の組成に応じて、シリコン添加要否、希釈要否が変わることが把握される。 b そうすると、特にFe、Mnについて、0.09-0.14wt%のCuの添加、及び要すればMg、Siの添加によって僅かに希釈されることがあるとしても、1.2倍乃至1.5倍まで希釈されることはあり得ないから、甲6に記載された技術的事項を参考に、甲1発明の組成とすることはできない。 c したがって、甲1発明において、甲6に記載された技術的事項を参考にしても、リサイクルスクラップに由来する成分を90~100重量%とすることができない。 d よって、甲1発明と甲6に記載された技術的事項とを組み合わせても、相違点1-1に想到することはできない。 (C)また、上記(1)オ(ア)、(イ)に記載したとおり、甲5にはUBC材(A)~(D)と純アルミニウム系合金材(A)~(D)とを重量比で30:70~70:30の割合で混合することを含むアルミニウム合金箔の製造方法、及びUBC材(A)又はUBC材(B)を用い当該比率を100:0とした比較例が記載されているが、甲1発明はアルミニウム合金板の製造方法の発明であるから、両者は合金箔と合金板で異なる製品の製造方法に関するものであり、甲1発明と甲5に記載された技術的事項とを組み合わせる動機付けは存在しない。 また仮に甲1発明と甲5に記載された技術的事項とを組み合わせたとしても、甲5のUBC材(A)、(B)の組成が甲1発明の組成と異なり、甲5に記載された技術的事項を参考にしても、リサイクルスクラップに由来する成分を90~100%にすることができない。さらに、甲5においてUBC材と純アルミニウム系合金材とを重量比で100:0とした例は比較例として記載されているから、甲1発明において、甲5の実施例ではなく比較例の態様を採用する動機付けは存在しない。 (D)また、上記(1)イ、エ、キの甲2、4、7に記載された技術的事項は、いずれもリサイクルスクラップを用い得ることが示唆されるに留まり、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含むことは記載されていないから、当該記載を踏まえても、当業者は「90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む」ことに想到することはできない。 (E)この点は、上記(1)ウ、クの甲3、8に記載された技術的事項を参酌しても同様である。 (F)よって、相違点1-1に係る点は、甲1~8に記載された技術的事項を踏まえても、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 C したがって、相違点1-2、1-3については検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲1~8の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)本件発明2~24について 本件発明2~24と甲1発明とは、少なくとも上記(ア)A(B)aの相違点1-1で相違するから、上記(ア)B、Cで検討したのと同様、本件発明2~24は、甲1発明及び甲1~8の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 甲2を主引例とした場合について (ア)本件発明1 A 本件発明1と甲2発明とを対比すると、両者は上記1(2)イ(オ)に記載したとおり、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 (A)一致点 アルミニウム合金の製造方法であって、 前記製造方法が、均質化、熱間圧延、冷間圧延を含むプロセスを含み、 前記アルミニウム合金が、1.00重量%~2.50重量%のMg、0.20重量%~3.00重量%のSi、0.15重量%~0.50重量%のFe、0.001重量%~0.90重量%のCu、0.20重量%~0.80重量%のMn、0.001重量%~0.50重量%のZn、不純物及びAlを含むアルミニウム合金であり、 前記アルミニウム合金が、0.05:1~0.60:1のSi:Mg重量%の比および0.60~1.20のSi+Mn-(Fe/2)を有する、 前記製造方法。 (B)相違点 a 本件発明1の製造方法におけるアルミニウム合金は、「アルミニウム材料としてリサイクルスクラップを使用するアルミニウム合金の製造方法であって」、「前記アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む」ものであるのに対し、甲2発明の製造方法におけるアルミニウム合金は、リサイクルスクラップを使用したものであると記載されていない点(相違点2-1)。 b 本件発明1の製造方法は、「溶体化処理、予備時効、及び人工時効」を含むのに対し、甲2発明の製造方法ではこれらを含まない点(相違点2-2)。 c 本件発明1の製造方法におけるアルミニウム合金は、Mg、Si、Fe、Cu、Mn、Znに加えて「最大0.15重量%のCr、最大0.10重量%のTi、最大0.08重量%のV、最大0.15重量%の不純物」を含み、これらと「Alからな」るものであるのに対し、甲2発明の製造方法におけるアルミニウム合金は、「残部Al及び不可避不純物からなる」ものであるものの、この「不可避不純物」中におけるCr、Ti、V、及びこれら以外の不純物の量は不明である点(相違点2-3)。 B 相違点2-1について検討する。 (A)甲2に記載されたその他の技術的事項について検討すると、上記(1)イ(イ)に記載したとおり、甲2にはSiが所定の量以上含まれることで、原材料に使用できるスクラップ量を増やすことができる旨が記載されているが、具体的にどのような量比でスクラップを用いることができるのかまでは当該記載からは把握できず、90重量%~100重量%とする動機付けを見いだすことはできない。 (B)この点について、上記(1)カ(ア)、(イ)に記載したとおり、甲6には「UBC スクラップ」等のリサイクルされたアルミニウムを溶融した液体金属100wt%に対し、マグネシウム、シリコン又は銅を微量(例えば0.40wt%)添加することで、改質液体金属を得ることが記載されている。 そこで、甲6に記載された技術的事項を参考に、リサイクルされたアルミニウムである甲6の「UBC スクラップ」に対してマグネシウム、シリコン又は銅を添加することにより改質して、甲2発明の組成とすることが可能かを検討する。 a 甲6の「UBC スクラップ」の組成と甲2発明の組成とを対比する。 (a)Cuについて、UBCスクラップ0.15-0.20wt%に対して甲2発明0.20質量%であり、0-0.05wt%の銅の添加によって調整可能であることが把握される。 (b)Feについて、UBCスクラップ0.35-0.40wt%に対して甲2発明0.35質量%であり、用いるスクラップの実際の組成に応じて、鉄添加要否が変わることが把握される。 (c)Mgについて、UBCスクラップ1.2-1.5wt%に対して甲2発明1.31質量%であり、用いるスクラップの実際の組成に応じて、マグネシウム添加要否、希釈要否が変わることが把握される。 (d)Mnについて、UBCスクラップ0.85wt%に対して甲2発明0.69質量%であり、約1.2倍、希釈される必要があることが把握される。 (e)Siについて、UBCスクラップ0.15-0.26wt%に対して甲2発明0.24質量%であり、用いるスクラップの実際の組成に応じて、シリコン添加要否、希釈要否が変わることが把握される。 b そうすると、特にMnについて、0-0.05wt%のCuの添加、及び要すればFe、Mg、Siの添加によって僅かに希釈されることがあるとしても、1.2倍まで希釈されることはあり得ないから、甲6に記載された技術的事項を参考に、甲2発明の組成とすることはできない。 c したがって、甲2発明において、甲6に記載された技術的事項を参考にしても、リサイクルスクラップに由来する成分を90~100重量%とすることができない。 d よって、甲2発明と甲6に記載された技術的事項とを組み合わせても、相違点2-1に想到することはできない。 (C)また、上記(1)オ(ア)、(イ)に記載したとおり、甲5にはUBC材(A)~(D)と純アルミニウム系合金材(A)~(D)とを重量比で30:70~70:30の割合で混合することを含むアルミニウム合金箔の製造方法、及びUBC材(A)又はUBC材(B)を用い当該比率を100:0とした比較例が記載されているが、甲2発明はアルミニウム合金板の製造方法の発明であるから、両者は合金箔と合金板で異なる製品の製造方法に関するものであり、甲2発明と甲5に記載された技術的事項とを組み合わせる動機付けは存在しない。 また仮に甲2発明と甲5に記載された技術的事項とを組み合わせたとしても、甲5のUBC材(A)、(B)の組成が甲1発明の組成と異なり、甲5に記載された技術的事項を参考にしても、リサイクルスクラップに由来する成分を90~100%にすることができない。さらに、甲5においてUBC材と純アルミニウム系合金材とを重量比で100:0とした例は比較例として記載されているから、甲2発明において、甲5の実施例ではなく比較例の態様を採用する動機付けは存在しない。 (D)また、上記(1)ア、エ、キの甲1、4、7に記載された技術的事項は、いずれもリサイクルスクラップを用い得ることが示唆されるに留まり、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含むことは記載されていないから、当該記載を踏まえても、当業者は「90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む」ことに想到することはできない。 (E)この点は、上記(1)ウ、クの甲3、8に記載された技術的事項を参酌しても同様である。 (F)よって、相違点2-1に係る点は、甲1~8の記載事項を踏まえても、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 C したがって、相違点2-2、2-3については検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲1~8の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)本件発明2~24について 本件発明2~24と甲2発明とは、少なくとも上記(ア)A(B)aの相違点2-1で相違するから、上記(ア)B、Cで検討したのと同様、本件発明2~24は、甲2発明及び甲1~8の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 甲5を主引例とした場合について (ア)本件発明1 A 本件発明1と甲5発明とを対比すると、両者は上記1(3)イ(カ)に記載したとおり、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 (A)一致点 アルミニウム材料としてリサイクルスクラップを使用するアルミニウム合金の製造方法であって、 前記製造方法が、熱間圧延、冷間圧延を含むプロセスを含み、 前記アルミニウム合金が、1.00重量%~2.50重量%のMg、0.15重量%~0.50重量%のFe、0.001重量%~0.90重量%のCu、最大0.15重量%のCr、最大0.10重量%のTi、0.001重量%~0.50重量%のZn、Si、Mn及びAlを含むアルミニウム合金であり、 前記アルミニウム合金が、0.05:1~0.60:1のSi:Mg重量%の比および0.60~1.20のSi+Mn-(Fe/2)を有し、 前記アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む、 前記製造方法。 (B)相違点 a 本件発明1の製造方法は、「均質化」、「溶体化処理、予備時効、及び人工時効」を含むのに対し、甲5発明の製造方法ではこれらを含まない点(相違点3-1)。 b 本件発明1の製造方法におけるアルミニウム合金は、Fe、Cu、Mg、Cr、Zn、Tiに加え、「0.20重量%~3.00重量%のSi」、「0.20重量%~0.80重量%のMn」、「最大0.08重量%のV」、「最大0.15重量%の不純物」を含み、これらと「Alからな」るものであるのに対し、甲5発明の製造方法におけるアルミニウム合金は、Si0.130wt%、Mn0.86wt%を含み、V及び不純物は含むのか不明である点(相違点3-2)。 B 相違点3-1、3-2について検討すると、上記(1)オ(ア)、(イ)に記載されるように、甲5発明は甲5において比較例として記載されているから、甲5発明と、甲5に記載された他の技術的事項や甲1~4、甲6~8に記載された技術的事項とを組み合わせる動機付けは存在しない。 C したがって、本件発明1は、甲5発明及び甲1~8の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)本件発明2~24について 本件発明2~24と甲5発明とは、少なくとも上記(ア)A(B)a、bの相違点3-1、3-2で相違するから、上記(ア)B、Cで検討したのと同様、本件発明2~24は、甲5発明及び甲1~8の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ 甲6を主引例とした場合について (ア)本件発明1 A 本件発明1と甲6発明とを対比すると、両者は上記1(4)イ(カ)に記載したとおり、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 (A)一致点 アルミニウム材料としてリサイクルスクラップを使用するアルミニウム合金の製造方法であって、 前記製造方法が、熱間圧延、冷間圧延を含むプロセスを含み、 前記アルミニウム合金が、1.00重量%~2.50重量%のMg、0.20重量%~3.00重量%のSi、0.15重量%~0.50重量%のFe、0.001重量%~0.90重量%のCu、0.20重量%~0.80重量%のMn、最大0.15重量%のCr、最大0.10重量%のTi、0.001重量%~0.50重量%のZn、及びAlを含むアルミニウム合金であり、 前記アルミニウム合金が、0.05:1~0.60:1のSi:Mg重量%の比および0.60~1.20のSi+Mn-(Fe/2)を有し、 前記アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む、 前記製造方法。 (B)相違点 a 本件発明1の製造方法は、「均質化」、「溶体化処理、予備時効、及び人工時効」を含むのに対し、甲6発明の製造方法ではこれらを含むと記載されていない点(相違点4-1)。 b 本件発明1の製造方法におけるアルミニウム合金は、Mg、Si、Fe、Cu、Mn、Cr、Ti、Znに加え、「最大0.08重量%のV」、「最大0.15重量%の不純物」を含み、これらと「Alからな」るものであるのに対し、甲6発明の製造方法における合金は、V及び不純物は含むのか不明である点(相違点4-2)。 B 相違点4-1について検討する。 (A)甲6に記載されたその他の技術的事項について検討すると、上記(1)カ(イ)に記載したとおり、甲6のFig3及び [0154]には、ブロック312において熱処理として冷間圧延された金属製品を溶体化してもよいことが記載されており、また[0156]にはブロック314においてOEM先に配送されることが記載されているから、甲6において、ブロック312の熱処理(溶体化処理)後には、予備時効や人工時効が予定されていないことが把握される。 よって、甲6に記載されたその他の技術的事項を参酌しても、当業者は甲6発明において「予備時効、及び人工時効」をさらに行うことに想到することはできない。 (B)また、上記(1)ク(ア)に記載したとおり、甲8には溶体化後に人工時効を行うことや、T1~T9等の種々の調質または状態について記載がされているが、上記(A)で記載したとおり、甲6ではブロック312の熱処理(溶体化処理)後にOEM先に配送されることが記載されており、予備時効や人工時効を行うことは予定されていないから、甲6発明と甲8に記載された技術的事項とを組み合わせる動機付けが存在しない。さらに、予備時効についてはいずれの文献にも記載されていない。 (C)この点は、上記(1)ア~オ、キの甲1~5、7に記載された技術的事項を参酌しても同様である。 C したがって、相違点4-2については検討するまでもなく、本件発明1は、甲6発明及び甲1~8の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)本件発明2~24について 本件発明2~24と甲6発明とは、少なくとも上記(ア)A(B)aの相違点4-1で相違するから、上記(ア)B、Cで検討したのと同様、本件発明2~24は、甲6発明及び甲1~8の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 小括 以上、ア~エで検討したとおり、甲1、2、5、6のいずれを主引例とした場合においても、本件発明1~24は、甲1~8に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、申立理由2によっては、本件特許の請求項1~24に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)についての補遺 上記1、2では、特許異議申立書において本件特許の請求項1と対比され、かつ明らかに副引例として記載されたものではない甲1、2、5、6を主引例として検討したが、予備的に甲3、4、7、8を主引例とする場合についても検討する。 上記2(1)ア~クに記載した甲1~8の記載事項を踏まえると、本件発明1~24は、甲3、4、7、8に記載された発明であるとはいえないし、甲3、4、7、8を主引例としても、甲1~8の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 よって、仮に甲3、4、7、8を主引例としたとしても、申立理由1、2によっては、本件特許の請求項1~24に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由3(新規事項)について 本件特許についての出願は、上記第1に記載したとおり外国語特許出願であり、特許法第113条第1号に「外国語書面出願を除く」(「外国語書面出願」とあるのは「第184条の4第1項の外国語特許出願」とする(同法第184条の18))と記載されているから、仮に特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をしていたとしても、そのことは異議申立理由とはならない。 よって、申立理由3によっては、本件特許の請求項1~24に係る特許を取り消すことはできない。 なお、「アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップを含む」、「前記アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む」という記載が特許法第113条第5号の原文新規事項に該当するかについて予備的に検討すると、本件特許についての外国語特許出願の国際出願日における明細書(国際公開第2021/211696号参照。)の[0054]に、「The aluminum alloy compositions described herein can include higher amounts of post-consumer scrap (e.g., UBC) and mixed alloy scrap with little or no additional primary aluminum and a reduced amount of more expensive recycled scrap (e.g., segregated recycled scrap from a metal casting facility or a metalworking facility). For example, an aluminum alloy may be produced from recycled scrap comprising at least 25 % post-consumer scrap (e.g., from 25 % to 100 %, from 30 % to 100 %, from 40 % to 100 %, from 50 % to 100 %, from 60 % to 100 %, or from 75 % to 100 % post-consumer scrap)」(当審仮訳:本件明細書に記載されたアルミニウム合金組成物は、追加の一次アルミニウムをほとんど又は全く含まずに使用済みスクラップ(例えばUBC)及び混合合金スクラップをより多く含有し、より高価なリサイクルスクラップ(例えば金属鋳造施設や金属加工施設からの、分離されたリサイクルスクラップ)をより少なく含有する。例えば、アルミニウム合金は、少なくとも25%の使用済みスクラップ(例えば、25%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、75%~100%の使用済みスクラップ)を含むリサイクルスクラップから製造され得る。)と記載されていることから、本件特許についての外国語特許出願の国際出願日における明細書には、リサイクルスクラップを75~100%のように100%を含む範囲で多量に使用すること自体は記載されていたといえる。 また、本件特許についての外国語特許出願の国際出願日における明細書の[0071]に、「In some embodiments, primary aluminum alloy can be used in combination with the recycled scrap to produce the aluminum alloys described herein. For example, up to 25 % (e.g., up to 20 %, up to 15 %, up to 12 %, up to 10 %, up to 8 %, up to 6 %, up to 4 %, up to 2 %, or up to 1 %) of primary aluminum alloy can be used to produce the aluminum alloys described herein.」(当審仮訳:いくつかの実施形態では、一次アルミニウム合金は、本件明細書に記載のアルミニウム合金を製造するために、リサイクルスクラップと組み合わせて使用され得る。例えば、最大25%(例えば、最大20%、最大15%、最大12%、最大10%、最大8%、最大6%、最大3%、最大2%、又は最大1%)の一次アルミニウム合金が、本件明細書に記載されたアルミニウム合金を製造するために使用され得る。)と記載されるように、一次アルミニウム合金を最大10%とする場合、組み合わせて使用されるリサイクルスクラップは90~100%となるから、この点からも、「90~100%」という範囲は本件特許についての外国語特許出願の国際出願日における明細書に記載されていたに等しい事項の範囲内であるといえる。 したがって、「アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップを含む」、「前記アルミニウム合金が、90重量%~100重量%のリサイクルスクラップに由来する成分を含む」という記載は、特許法第113条第5号の原文新規事項に該当しない。 5 申立理由4(明確性)について (1)Si、Mg、Feの含有量の範囲について 本件特許の請求項1の「1.00重量%~2.50重量%のMg、0.20重量%~3.00重量%のSi、0.15重量%~0.50重量%のFe、0.001重量%~0.90重量%のCu、0.20重量%~0.80重量%のMn、最大0.15重量%のCr、最大0.10重量%のTi、最大0.08重量%のV、0.001重量%~0.50重量%のZn、最大0.15重量%の不純物、及びAlからなり」という各元素の含有量の範囲の中に、「前記アルミニウム合金が、0.05:1~0.60:1のSi:Mg重量%の比および0.60~1.20のSi+Mn-(Fe/2)を有し」との規定を満たし得ない範囲が含まれていたとしても、そのような範囲で各元素を含む発明が本件発明1に含まれないことは明らかである。 よって、本件特許の請求項1の「1.00重量%~2.50重量%のMg、0.20重量%~3.00重量%のSi、0.15重量%~0.50重量%のFe、0.001重量%~0.90重量%のCu、0.20重量%~0.80重量%のMn、最大0.15重量%のCr、最大0.10重量%のTi、最大0.08重量%のV、0.001重量%~0.50重量%のZn、最大0.15重量%の不純物、及びAlからなり」、「前記アルミニウム合金が、0.05:1~0.60:1のSi:Mg重量%の比および0.60~1.20のSi+Mn-(Fe/2)を有し」との規定は明確である。 (2)「航空宇宙用非構造部品」、「海洋非構造部品」について 本件特許の請求項16の「航空宇宙用非構造部品」、「海洋非構造部品」について、「構造部品」とは、航空機における主翼、胴体、船舶における船底、甲板など、大型構造物の骨格構造を形成する部品であり、「非構造部品」とはこれに該当しない、例えば厨房、トイレ等の水回り、ダクトや配管、カバー材等に用いられる部品であることは明らかである(要すれば、https://www.nipponsteel.com/tech/report/pdf/418-06.pdfを参照。)。 よって、本件特許の請求項16の「航空宇宙用非構造部品」、「海洋非構造部品」との記載は明確である。 (3)小括 以上、(1)、(2)で検討したとおり、本件特許の請求項1、16の記載は明確である。 よって、申立理由4によっては、本件特許の請求項1、16に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上、第4の1~5で検討したとおり、申立人による特許異議の申立ての申立理由1~申立理由4のいずれによっても、本件特許の請求項1~24に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~24に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700986

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