2023-700284
銅含有マスターバッチ及びその製造方法
- 審判番号
- 2023-700284
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-002606外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7141216
- 請求日
- 2023年03月15日
- 審決日
- 2023年05月26日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東洋製罐グループホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
- 【権利者】TOMATEC株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 分類
- P1652.113-Y (C08J) / P1652.121-Y (C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 9項目
第1 手続の経緯
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特許第7141216号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成30年1月11日の出願であって、令和4年9月13日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年3月15日に特許異議申立人 弁理士法人 朝日奈特許事務所(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし3)がされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】ポリアミド樹脂中に1価銅化合物を含有して成る、金属銅超微粒子形成に用いることを特徴とするマスターバッチ。【請求項2】前記1価銅化合物が、脂肪酸銅である請求項1記載のマスターバッチ。【請求項3】前記1価銅化合物が、0.1~5重量%の量で含有されている請求項1又は2に記載のマスターバッチ。」
第3 申立理由の概要
令和5年3月15日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1又は2号証に基づく新規性)
(1)申立理由1の1(甲第1号証に基づく新規性)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由1の2(甲第2号証に基づく新規性)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第1又は2号証に基づく進歩性)
(1)申立理由2の1(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2の2(甲第2号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 証拠方法
甲第4号証:コトバンク「ヨウ化銅(沃化銅)」「世界大百科事典 第2版「ヨウ化銅(沃化銅)」の解説」、https://kotobank.jp/word/%E3%83%A8%E3%82%A6%E5%8C%96%E9%8A%85%28%E6%B2%83%E5%8C%96%E9%8A%85%29-1213628、(株)DIGITALIO及び(株)C-POT、印刷日2023年3月6日
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第4 当審の判断
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「ポリアミドマスターバッチの製造方法およびポリアミド樹脂組成物の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
・「【請求項1】
10~100重量%が粒子径1000μm以下のポリアミド樹脂粉末であるポリアミド樹脂(A)100重量部と、平均粒径が100~1000μmであるハロゲン化カリウム(C)1~25重量部と、平均粒径が1~20μmであるハロゲン化銅(D)0.1~10重量部を攪拌羽付きの混合機で混合した後、溶融混練するポリアミドマスターバッチの製造方法。」
・「【0025】
ハロゲン化銅(D)としてはヨウ化第一銅を使用することが好ましく、配合量はポリアミド樹脂100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、さらに好ましくは1~5重量部である。範囲内にすることにより、ポリアミドマスターバッチ中の耐熱剤の分散、ポリアミドマスターバッチを配合したポリアミド樹脂組成物中の耐熱剤の分散および耐熱性が良好となる。また、ハロゲン化銅の平均粒径は1~20μmが好ましく、平均粒径は、ハロゲン化カリウムと同じ方法で求めることができる。」
・「【0035】
<実施例1>
以下の原材料、原材料の配合比率、混合装置・溶融混練装置にてポリアミドマスターバッチを得た。評価結果を表1に示す。
【0036】
(1-1)原材料
ポリアミド樹脂粉末は上記のポリアミド樹脂を冷凍粉砕して、目開き840μmの篩(JIS8801)を通すことによって得た、最大粒径840μmの粉末を使用した。
【0037】
(1-2)配合比率
ポリアミド樹脂ペレット:38.15部
水 :0.15部。
【0038】
(1-3)混合および溶融混練
ポリアミド樹脂ペレット、ポリアミド粉末、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化銅、水を攪拌羽付き混合機(三井鉱山(株)FM150J)を使用して混合した後、2軸押出機(池貝鉄工(株)PCM45)を使用して溶融混練した。」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「以下の原材料、原材料の配合比率にて得たポリアミドマスターバッチ。[原材料]ポリアミド樹脂:ナイロン6(東レ(株)アミランCM1001)ポリアミド樹脂粉末は上記のポリアミド樹脂を冷凍粉砕して、目開き840μmの篩(JIS8801)を通すことによって得た、最大粒径840μmの粉末を使用した。続きを表示(全12行)ハロゲン化カリウム:ヨウ化カリウム(伊勢化学工業(株)平均粒径500μm)ハロゲン化銅 :ヨウ化第一銅(日本化学産業(株)平均粒径2.5μm)[配合比率]ポリアミド樹脂ペレット:38.15部ポリアミド樹脂粉末 :50.00部ハロゲン化カリウム :10.30部ハロゲン化銅 :1.55部水 :0.15部」
(2)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2には、「ポリアミド樹脂組成物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
・「【請求項1】
(A1)ポリアミド樹脂と(B)炭素数で10から30である脂肪酸の金属塩および(C)炭素数で10から30である脂肪酸と炭素数10から30であるアルコールとのエステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を混練してなる摺動性付与マスターバッチ(I)並びに(A2)ポリアミド樹脂と(D)銅系熱安定剤を混練してなる耐熱性付与マスターバッチ(II)を、(A3)ポリアミド樹脂と混合して得られるポリアミド樹脂組成物であって、該樹脂組成物100質量部に対して(B)および(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種を0.01から5質量部含み、該樹脂組成物が銅系安定剤を銅元素として20から200ppm含み、且つ該樹脂組成物の98%硫酸相対粘度(1g/100ml)ηrが3.5以上6.0以下であることを特徴とする摺動部品用ポリアミド樹脂組成物。」
・「【0009】
さらに、上記力学的特性のほかに流動性にすぐれる摺動部品用ポリアミド樹脂組成物を得る観点から、好ましいポリアミド樹脂の組み合わせとして、(A1)および(A2)のポリアミド樹脂はポリアミド66、ポリアミド6またはポリアミド66/ポリアミド6共重合体から選ばれる少なくとも1種類であり、(A3)のポリアミド樹脂はポリアミド66である。この中でも、(A1)および(A2)のポリアミド樹脂は少なくともポリアミド6を含んでいることがさらに好ましい。例えば、(A1)がポリアミド66であり、(A2)がポリアミド6である組み合わせや、(A1)ポリアミド66であり、(A2)がポリアミド66/ポリアミド6共重合体などの組み合わせを挙げることができる。このとき、(A1)および(A2)両者のポリアミド樹脂中、ポリアミド66とポリアミド6の比率はポリアミド100質量部に対して、ポリアミド6が1から100質量部が好ましく、5から50質量部がさらに好ましく、10から30質量部がもっと好ましい。上記範囲内であれば、マスターバッチとして、(A3)ポリアミド樹脂と適度に交じり合いやすく、また力学的特性、流動性にすぐれるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。」
・「【0015】
本発明で用いられる(D)銅系熱安定剤としては例えば、塩化銅、臭化銅、フッ化銅、ヨウ化銅、チオシアン酸銅、硝酸銅、酢酸銅、ナフテン銅、カプリン酸銅、ラウリン酸銅、ステアリン酸銅、アセチルアセトン銅、酸化銅(I)、及び酸化銅(II)等が挙げられ、1種類で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いても良い。ここで優れた耐熱性を示す観点から、好ましいのは、ヨウ化銅等のハロゲン化銅、及び酢酸銅である。上記(D)銅系熱安定剤は、ハロゲン塩化合物と併用して、より耐熱性を向上させても差し支えない。このようなハロゲン塩化合物としては例えば、ハロゲンとしてヨウ素である場合、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化アンモニウムなどをあげることでき、ヨウ素単体でも良い。」
・「【0019】
本発明で用いられる耐熱性付与マスターバッチ(II)は(A2)ポリアミド樹脂と、(D)銅系熱安定剤を混練して得ることができる。一般に、銅系熱安定剤をポリアミド樹脂の重合中に加える方法が公知となっているが、本発明では、該銅系熱安定剤の配合量を自由に制御でき、かつ製法が容易であることから、溶融混練法による混練が好ましい。例えば、1軸押出機や2軸押出機、ロール、バンバリーミキサーなどを用いれば良い。好ましいマスターバッチとしては、(A2)中に(D)が微分散していることである。(A2)と、(D)の押出機への配合方法は特に限定されず、例えば両者の混合物をトップフィードする方法やセパレート式のフィーダーを使用する方法、片方をトップ、残りをサイドフィーダーから投入する方法などをあげることができる。ここで、(D)の分散性を向上させて、さらに(A2)に対する(D)の配合比を一定とする目的で、(A2)を凍結粉砕法によって粉末状として、(D)とヘンシェルミキサーなどによってブレンドした後に溶融混練することが好ましい。
【0020】
該マスターバッチ(II)における(A2)と、(D)の配合比は、特に限定されないが、好ましくは(A1)100質量部に対して、(D)が0.01から10質量部であり、さらに好ましくは0.05から7質量部であり、もっと好ましくは0.1から5質量部である。上記範囲内であれば、溶融混練機が腐食もしくは磨耗する傾向を抑えることができる。
ここで、該マスターバッチ(II)の製法において、(D)銅系熱安定剤以外に、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルなど公知の滑剤を加えることもできる。また、更なる熱劣化、熱時の変色防止、耐熱エージング性、耐候性の向上を目的に、ヒンダードフェノール化合物などのフェノール系安定剤、ホスファイト系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、トリアジン系安定剤、イオウ系安定剤などの公知の安定剤を加えることもできる。」
・「【0035】
製造例1-1 ポリアミド(イ)の製造
50質量%のポリアミド66の原料(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩)の水溶液30Kgを作製し、十分撹拌した。該ポリアミド66原料の水溶液を、撹拌装置を有し、かつ下部に抜出しノズルを有する70リットルのオートクレーブ中に仕込み、50℃の温度下、十分攪拌した。窒素で置換した後、撹拌しながら温度を50℃から約270℃まで昇温した。この際、オートクレーブ内の圧力は、ゲージ圧にして約1.77MPaになるが、圧力が1.77MPa以上にならないよう水を系外に除去しながら加熱を約1時間続けた。その後、約1時間をかけ、圧力を大気圧まで降圧し、更に約270℃、大気圧で約1時間保持した後、撹拌を停止し、下部ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行い、ペレットを得た。このペレットの98%硫酸相対粘度(1g/100ml)ηrは3.0であった。」
・「【0042】
製造例3-1 マスターバッチ(II-イ)の製造
製造例1-1で得たポリアミド(イ)ポリアミド92質量部に対して、(D)としてヨウ化銅0.90質量部、ヨウ化カリウム7.06質量部をヘンシェルミキサーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)にて、吐出量40kg/h、回転数300rpm、温度280℃で溶融混練してマスターバッチ(II-イ)得た。このマスターバッチのηrは2.5であった。このペレットに含まれる銅元素は高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析より、3000ppmであった。」
イ 甲2に記載された発明
甲2に記載された事項を、特に製造例3-1に関して整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。
<甲2発明>
「ポリアミド92質量部に対して、銅系熱安定剤であるヨウ化銅0.90質量部、ヨウ化カリウム7.06質量部をヘンシェルミキサーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35)にて、吐出量40kg/h、回転数300rpm、温度280℃で溶融混練して得たマスターバッチ。」
2 申立理由1の1(甲1に基づく新規性)及び申立理由2の1(甲1に基づく進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「ヨウ化第一銅」は、1価の銅化合物であるから、本件特許発明1の「1価銅化合物」に相当する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリアミド樹脂中に1価銅化合物を含有して成るマスターバッチ。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明1においては、「金属銅超微粒子形成に用いること」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、相違点1について検討する。
(ア)相違点1について
甲1には、「金属銅超微粒子形成に用いること」という用途に関して、何ら記載されていない。
また、甲1及び他の証拠に記載された事項から、甲1発明が相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有する蓋然性が高いとはいえない。
したがって、相違点1は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は甲1発明ではない。
そして、甲1には、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(イ)効果について
本件特許発明1の奏する「熱可塑性樹脂中に1価銅化合物を含有するマスターバッチとすることにより、樹脂の熱劣化などを生じることなく1価銅化合物が還元され、効率よく熱可塑性樹脂中に銅超微粒子を形成でき」、「樹脂に配合して加熱条件下で成形加工することにより成形物中に銅超微粒子が生成されると共に均一に分散され、吸着性能や抗菌性能が発揮される。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0009】)という効果は、甲1発明の奏する効果とは全く異なるものであり、また、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、「甲1発明の「平均粒径が1~20μmであり、ヨウ化第一銅等のハロゲン化銅」は、本件特許発明1の「金属銅超微粒子形成に用いること」に相当する(構成要件1B)。」(特許異議申立書第14ページ下から第1行ないし第15ページ第2行)と主張しているが、甲1発明の「ヨウ化第一銅」は、金属銅超微粒子の形成に用いるものではなく、本件特許発明1の「金属銅超微粒子形成に用いること」に相当しない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
エ まとめ
したがって、本件特許発明1は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)申立理由1の1及び2の1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし3は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由1の1及び2の1によっては取り消すことはできない。
3 申立理由1の2(甲2に基づく新規性)及び申立理由2の2(甲2に基づく進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明における「ヨウ化銅」は、1価の銅化合物であるから、本件特許発明1の「1価銅化合物」に相当する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリアミド樹脂中に1価銅化合物を含有して成るマスターバッチ。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2>
本件特許発明1においては、「金属銅超微粒子形成に用いること」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、相違点2について検討する。
(ア)相違点2について
甲2には、「金属銅超微粒子形成に用いること」に関して、何ら記載されていない。
また、甲2及び他の証拠に記載された事項から、甲2発明が相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を有する蓋然性が高いとはいえない。
したがって、相違点2は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は、甲2発明ではない。
そして、甲2には、甲2発明において、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲2及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲2発明において、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(イ)効果について
本件特許発明1の奏する「熱可塑性樹脂中に1価銅化合物を含有するマスターバッチとすることにより、樹脂の熱劣化などを生じることなく1価銅化合物が還元され、効率よく熱可塑性樹脂中に銅超微粒子を形成でき」、「樹脂に配合して加熱条件下で成形加工することにより成形物中に銅超微粒子が生成されると共に均一に分散され、吸着性能や抗菌性能が発揮される。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0009】)という効果は、甲2発明の奏する効果とは全く異なるものであり、また、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、「甲2発明の「(A2)ポリアミド樹脂中に微分散している(D)銅系熱安定剤」は、本件特許発明1の「金属銅超微粒子形成に用いること」に相当する(構成要件1B)。」(特許異議申立書第16ページ第3ないし5行)と主張しているが、甲2発明の「銅系熱安定剤であるヨウ化銅」は、金属銅超微粒子の形成に用いるものではなく、本件特許発明1の「金属銅超微粒子形成に用いること」に相当しない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
エ まとめ
したがって、本件特許発明1は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)申立理由1の2及び2の2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし3は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由1の2及び2の2によっては取り消すことはできない。
第5 結語
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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