特許異議申立
2022-700354
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマー発泡体
- 審判番号
- 2022-700354
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-539277
- 登録番号
- 6962922
- 請求日
- 2022年04月27日
- 審決日
- 2022年08月18日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】アルケマ フランス
- 【権利者代理人】弁理士法人ドライト国際特許事務所
- 【異議申立人】株式会社 エスケープランニング
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-Y (C08J) / P1651.121-Y (C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6962922号発明「ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマー発泡体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6962922号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6962922号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)1月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年1月29日 フランス国)を国際出願日とする出願であって、令和3年10月18日にその特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、同年11月5日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和4年4月26日付け(差出日 同年同月27日)で特許異議申立人 株式会社エスケープランニング(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし12)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
非架橋ポリアミドポリエーテルブロックコポリマーの発泡体であって、
-該コポリマーの該ポリアミドブロックは数平均分子量200~1500g/molを有し;
-該コポリマーの該ポリエーテルブロックは数平均分子量800~2500g/molを有し;そして
-該ポリエーテルブロックに対する該ポリアミドブロックの質量比は0.3~0.6である発泡体。
【請求項2】
請求項1に記載の発泡体であって、
-上記コポリマーの上記ポリアミドブロックが数平均分子量400~1000g/molを有し;
-上記コポリマーの上記ポリエーテルブロックが数平均分子量1000~2000g/molを有し;そして
-上記ポリエーテルブロックに対する上記ポリアミドブロックの質量比が0.3~0.6である発泡体。
【請求項3】
上記コポリマーの上記ポリアミドブロックが、ポリアミド11のブロック、又はポリアミド12のブロック、又はポリアミド6のブロック、又はポリアミド6.10のブロックである、請求項1又は2に記載の発泡体。
【請求項4】
上記コポリマーの上記ポリエーテルブロックが、ポリエチレングリコールのブロック又はポリテトラヒドロフランのブロックである、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項5】
上記発泡体が800kg/m3又はそれ未満の密度を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項6】
上記発泡体が、1種又はそれ以上の、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、エチレンとアクリレートとのコポリマー、及びエチレンとアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマーから選ばれる添加物を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の発泡体の製造法であって、溶融状態の上記コポリマーを、場合によっては1種又はそれ以上の添加物と共に、膨張剤と混合するステップ、及び該コポリマーと該膨張剤との混合物を発泡させるステップを含む製造法。
【請求項8】
上記膨張剤が、二窒素、二酸化炭素、炭化水素、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロカーボン、ヒドロフルオロカーボン及びヒドロクロロフルオロカーボンから選ばれる物理的膨張剤である、請求項7に記載の製造法。
【請求項9】
コポリマーと膨張剤との上記混合物を金型に射出するステップを含み、該混合物の発泡は該金型を開口することにより実施される、請求項7又は8に記載の製造法。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の発泡体から成る物品。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項に記載の発泡体から成る少なくとも1種の要素を含む物品。
【請求項12】
運動靴の靴底、ボール、グローブ、個人の保護用具、レールのパッド、自動車部品、建造物部品、及び電気・電子装置の部品から選ばれる、請求項10又は11に記載の物品。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和4年4月26日付け(差出日 同年同月27日)で特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4及び7ないし12に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4及び7ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第3号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項3ないし12に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項3ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲第4号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4及び7ないし12に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第4号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4及び7ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(甲第5号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4、7及び9ないし12に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第5号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4、7及び9ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 申立理由6(甲第6号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項3及び7ないし9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第6号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項3及び7ないし9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
7 証拠方法
甲第1号証:国際公開第2016/187442号
甲第2号証:国際公開第2013/160624号
甲第3号証:特許第6081674号公報
甲第4号証:米国特許第4309518号明細書
甲第5号証:特表平8-505333号公報
甲第6号証:特開2002-348397号公報
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第4 当審の判断
1 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
甲1の国際公開日は2016年11月24日であるから、甲1は本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものではない。
したがって、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、申立理由1によっては取り消すことはできない。
2 申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2には、おおむね次のとおり記載されている。なお、甲2は、外国語文献であるから、原文の摘記は省略し、訳文のみを摘記する。また、下線は当審で付したものである。他の証拠についても同様。
・「ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとのコポリマーとも呼ばれ、「PEBA」と略されるコポリエーテルブロックアミドは、反応性末端を有するポリアミドブロックと反応性末端を有するポリエーテルブロックとの重縮合から生じ、例えば、以下のようなものがあげられる。」(第7ページ第24ないし27行)
・「ポリアミドブロックの数平均モル質量Mnは、400~20000g/molであり、好ましくは500~10000g/molである。」(第8ページ第4ないし6行)
・「ポリエーテルブロックの質量Mnは、100~6000g/molであり、好ましくは200~3000g/molである。」(第10ページ第26及び27行)
・「好ましくは、ポリマーは、1~80質量%のポリエーテルブロックと20~99質量%のポリアミドブロックからなり、好ましくは4~80質量%のポリエーテルブロックと20~96質量%のポリアミドブロックからなる。」(第10ページ第28ないし31行)
・「試験1~3の条件により、ポリアミドの押出し時に取り込まれた超臨界CO2を用いた材料の膨張と発泡体の製造が可能であることがわかった。試験2および試験3から追加の混合ツールを使用することにより、過剰なCO2を押出機に取り込むことができる。高いCO2SCレベル(15%以上)では、混合物の良好な均質性が観察される。」(第20ページ第26ないし31行)
イ 甲2に記載された発明
甲2に記載された事項を整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」及び「甲2製造法発明」という。)が記載されていると認める。なお、特許異議申立人は甲2に記載された事項を摘記するだけで、本件特許発明1ないし12と対比する発明を具体的に認定していないので、当審で認定した。他の証拠に記載された発明についても同様。
<甲2発明>
「ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとのコポリマーとも呼ばれ、「PEBA」と略されるコポリエーテルブロックアミドからなる発泡体であって、ポリアミドブロックの数平均モル質量Mnは、400~20000g/molであり、ポリエーテルブロックの数平均モル質量Mnは、100~6000g/molであり、1~80質量%のポリエーテルブロックと20~99質量%のポリアミドブロックである発泡体。」
<甲2製造法発明>
「甲2発明の製造法。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明における「ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとのコポリマーとも呼ばれ、「PEBA」と略されるコポリエーテルブロックアミド」は本件特許発明1における「ポリアミドポリエーテルブロックコポリマー」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリアミドポリエーテルブロックコポリマーの発泡体。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2-1>
「ポリアミドポリエーテルブロックコポリマー」に関して、本件特許発明1においては、「非架橋」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2-2>
「ポリアミドポリエーテルブロックコポリマー」に関して、本件特許発明1においては、「-該コポリマーの該ポリアミドブロックは数平均分子量200~1500g/molを有し;
-該コポリマーの該ポリエーテルブロックは数平均分子量800~2500g/molを有し;そして
-該ポリエーテルブロックに対する該ポリアミドブロックの質量比は0.3~0.6である」と特定されているのに対して、甲2発明においては、「ポリアミドブロックの数平均モル質量Mnは、400~20000g/molであり、ポリエーテルブロックの数平均モル質量Mnは、100~6000g/molであり、1~80質量%のポリエーテルブロックと20~99質量%のポリアミドブロックからなる」と特定されている点。
イ 判断
そこで、事案に鑑み、相違点2-2について検討する。
甲2発明で特定される「ポリアミドブロックの数平均モル質量Mn」の「400~20000g/mol」という数値範囲は、本件特許発明1で特定される「該コポリマーの該ポリアミドブロック」の「数平均分子量200~1500g/mol」という数値範囲に包含されるわけではなく、その一部に重なる数値範囲があるにすぎない。
甲2発明で特定される「ポリエーテルブロックの数平均モル質量Mn」の「100~6000g/mol」という数値範囲は、本件特許発明1で特定される「該コポリマーの該ポリエーテルブロック」の「数平均分子量800~2500g/mol」という数値範囲に包含されるわけではなく、より広い数値範囲である。
甲2発明で特定される「1~80質量%のポリエーテルブロックと20~99質量%のポリアミドブロック」における「ポリエーテルブロック」に対する「ポリアミドブロック」の質量比の数値範囲は、本件特許発明1で特定される「該ポリエーテルブロックに対する該ポリアミドブロックの質量比」の「0.3~0.6」という数値範囲に包含されるわけではなく、計算上、重なる数値範囲があるにすぎない。
してみると、甲2発明で特定されるこれらの数値条件は、相違点2-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとはいえないから、相違点2-2は実質的な相違点である。
また、甲2には、甲2発明において、相違点2-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。
そして、本件特許発明1の奏する「下記の1つ又はそれ以上の有利な性質を有する低密度ポリマー発泡体を提供する:低拘束応力下で弾性エネルギーを戻す高い能力;低圧縮永久歪み;及び圧縮疲労に対する高い抵抗性。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0026】)という効果は、甲2発明及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができる範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2ないし4及び10ないし12について
本件特許発明2ないし4及び10ないし12は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明7について
本件特許発明7は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1及び本件特許発明1をさらに限定した発明の製造法の発明であり、甲2製造法発明は甲2発明の製造法の発明である。
したがって、本件特許発明1が甲2発明であるとはいえず、また、甲2発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明7は甲2製造法発明であるとはいえないし、甲2製造法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明8及び9について
本件特許発明8及び9は、請求項7を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明7の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明7と同様に、甲2製造法発明であるとはいえないし、甲2製造法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4及び7ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件特許の請求項1ないし4及び7ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。
3 申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)について
甲3の発行日は2017年(平成29年)2月15日であるから、甲3は本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものではない。
したがって、本件特許の請求項3ないし12に係る特許は、申立理由3によっては取り消すことはできない。
なお、甲3が国際出願の国際公開(国際公開第2016/052387号)であるとしても、その国際公開日は2016年(平成28年)4月7日であるから、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものではない。
4 申立理由4(甲4に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲4に記載された事項等
ア 甲4に記載された事項
甲4には、おおむね次のとおり記載されている。
・「これらの目的は、高分子量の線状ポリエステルおよびポリエーテルエステルアミドに基づく成形組成物を提供することによって本発明に従って達成され、成形組成物は、全組成物の重量に基づいて、60~97重量%のポリ(アルキレンテレフタレート)であるA及び全組成物の重量に基づいて、3~40重量%のポリエーテルエステルアミドであるBを含む。・・・ここで、成分Bは、(1)少なくとも10個の炭素原子のそれぞれがβ-アミノカルボン酸またはラクタムの基からの1つまたは複数のポリアミド形成化合物、(2)400~6000の分子量のポリ(アルキレングリコール)及び(3)1つまたは複数の他の脂肪族、脂環式または芳香族ジカルボン酸、ここで、成分B(1)と[B(2)+B(3)]の重量比は20:80から98:2であり、[B(2)+B(3)]のヒドロキシ基とカルボキシ基はほぼ同等の量で存在する。」(第2欄10ないし43行)
・「適切なポリアミド形成化合物[B(1)]は、オメガアミノカルボン酸および/またはラクタムであり、それぞれは一般に飽和脂肪族炭化水素に由来し、少なくとも10個の炭素原子、例えば10~17個のC原子、好ましくは11個の炭素原子のそれぞれである。または12個のC原子、好ましくは、ラウロラクタム、オメガアミノドデカン酸、またはオメガアミノウンデカン酸である。好ましい同等の成分は、単分子アミノカルボン酸の代わりに、500~20,000、好ましくは4,000~10,000の平均分子量(Mn)を有するそのポリマーである。」(第3欄第9ないし18行)
・「成分B(2)としてのポリ(アルキレングリコール)には、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、またはポリ(テトラヒドロフラン)ジオールが含まれ、それぞれ平均分子量は400~6,000、好ましくは500~2,500の範囲である。ポリ(テトラヒドロフラン)ジオールが好ましく、この化合物の平均分子量(Mn)は500から2,500の範囲である。」(第3欄第19ないし28行)
・「例えば、完全に従来の成形方法(例えば、射出成形、押し出しなど)技術的および工業的装置部品、導管被覆、プロファイル、電気的絶縁体などを含む無数の成形品を、作製しうる。」(第4欄第30ないし35行)
イ 甲4に記載された発明
甲4に記載された事項を整理すると、甲4には次の発明(以下、「甲4発明」及び「甲4製造法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲4発明>
「高分子量の線状ポリエステルおよびポリエーテルエステルアミドに基づく成形組成物の成形品であって、該成形組成物は、全組成物の重量に基づいて、60~97重量%のポリ(アルキレンテレフタレート)である成分A及び全組成物の重量に基づいて、3~40重量%のポリエーテルエステルアミドである成分Bを含み、成分Bは、少なくとも10個の炭素原子のそれぞれがβ-アミノカルボン酸またはラクタムの基からの1つまたは複数のポリアミド形成化合物である成分B(1)、ポリ(アルキレングリコール)である成分B(2)及び1つまたは複数の他の脂肪族、脂環式または芳香族ジカルボン酸である成分B(3)であり、成分B(1)と[成分B(2)+成分B(3)]の重量比は20:80から98:2であり、成分B(1)は、500~20,000の平均分子量(Mn)を有するポリマーであり、成分B(2)は、400~6,000の平均分子量(Mn)を有するポリマーである。」
<甲4製造法発明>
「甲4発明の製造法。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲4発明を対比する。
甲4発明における「少なくとも10個の炭素原子のそれぞれがβ-アミノカルボン酸またはラクタムの基からの1つまたは複数のポリアミド形成化合物である成分B(1)、ポリ(アルキレングリコール)である成分B(2)及び1つまたは複数の他の脂肪族、脂環式または芳香族ジカルボン酸である成分B(3)であり、成分B(1)と[B(2)+B(3)]の重量比は20:80から98:2であり、成分B(1)は、500~20,000の平均分子量(Mn)を有するポリマーであり、成分B(2)は、400~6,000の平均分子量を有するポリマー」である「ポリエーテルエステルアミドである成分B」は本件特許発明1における「ポリアミドポリエーテルブロックコポリマー」に相当する。
甲4発明における「成形品」は本件特許発明1における「発泡体」と、「成形体」という限りにおいて一致する。
甲4発明は「全組成物の重量に基づいて、60~97重量%のポリ(アルキレンテレフタレート)である成分A」及び「1つまたは複数の他の脂肪族、脂環式または芳香族ジカルボン酸である成分B(3)」を有するのに対し、本件特許発明1はそのような成分を有することが特定されていないが、本件特許の特許請求の範囲の【請求項6】及び発明の詳細な説明の【0072】等の記載によると、本件特許発明1はそのような成分を有することを排除していないので、この点は、相違点とはならない。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリアミドポリエーテルブロックコポリマーの成形体。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点4-1>
「成形体」に関して、本件特許発明1においては、「発泡体」と特定されているのに対し、甲4発明においては、「成形品」と特定されている点。
<相違点4-2>
「ポリアミドポリエーテルブロックコポリマー」に関して、本件特許発明1においては、「非架橋」と特定されているのに対し、甲4発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点4-3>
「ポリアミドポリエーテルブロックコポリマー」に関して、本件特許発明1においては、「-該コポリマーの該ポリアミドブロックは数平均分子量200~1500g/molを有し;
-該コポリマーの該ポリエーテルブロックは数平均分子量800~2500g/molを有し;そして
-該ポリエーテルブロックに対する該ポリアミドブロックの質量比は0.3~0.6である」と特定されているのに対して、甲4発明においては、「少なくとも10個の炭素原子のそれぞれがβ-アミノカルボン酸またはラクタムの基からの1つまたは複数のポリアミド形成化合物である成分B(1)、ポリ(アルキレングリコール)である成分B(2)及び1つまたは複数の他の脂肪族、脂環式または芳香族ジカルボン酸である成分B(3)であり、成分B(1)と[成分B(2)+成分B(3)]の重量比は20:80から98:2であり、成分B(1)は、500~20,000の平均分子量(Mn)を有するポリマーであり、成分B(2)は、400~6,000の平均分子量(Mn)を有するポリマーである」と特定されている点。
イ 判断
そこで、事案に鑑み、相違点4-3について検討する。
甲4発明で特定される「少なくとも10個の炭素原子のそれぞれがβ-アミノカルボン酸またはラクタムの基からの1つまたは複数のポリアミド形成化合物である成分B(1)」(本件特許発明1における「該コポリマーの該ポリアミドブロック」に相当する。)の「平均分子量(Mn)」の「500~20,000」という数値範囲は、本件特許発明1で特定される「該コポリマーの該ポリアミドブロック」の「数平均分子量200~1500g/mol」という数値範囲に包含されるわけではなく、その一部に重なる数値範囲があるにすぎない。
甲4発明で特定される「ポリ(アルキレングリコール)である成分B(2)」(本件特許発明1における「該コポリマーの該ポリエーテルブロック」に相当する。)の「平均分子量(Mn)」の「400~6,000」という数値範囲は、本件特許発明1で特定される「該コポリマーの該ポリエーテルブロック」の「数平均分子量800~2500g/mol」という数値範囲に包含されるわけではなく、より広い数値範囲である。
甲4発明においては「成分B(1)と[成分B(2)+成分B(3)]の重量比は20:80から98:2」であると特定されるものの、「成分B(2)」に対する「成分B(1)」の重量比の数値範囲は不明であり、本件特許発明1で特定される「該ポリエーテルブロックに対する該ポリアミドブロックの質量比」の「0.3~0.6」という数値範囲とどの程度重なっているのかも不明である。
してみると、甲4発明で特定されるこれらの数値条件は、相違点4-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとはいえないから、相違点4-3は実質的な相違点である。
また、甲4には、甲4発明において、相違点4-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。
そして、本件特許発明1の奏する「下記の1つ又はそれ以上の有利な性質を有する低密度ポリマー発泡体を提供する:低拘束応力下で弾性エネルギーを戻す高い能力;低圧縮永久歪み;及び圧縮疲労に対する高い抵抗性。」という効果は、甲4発明及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができる範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4発明であるとはいえないし、甲4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2ないし4及び10ないし12について
本件特許発明2ないし4及び10ないし12は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲4発明であるとはいえないし、甲4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明7について
本件特許発明7は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1及び本件特許発明1をさらに限定した発明の製造法の発明であり、甲4製造法発明は甲4発明の製造法の発明である。
したがって、本件特許発明1が甲4発明であるとはいえず、また、甲4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明7は甲4製造法発明であるとはいえないし、甲4製造法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明8及び9について
本件特許発明8及び9は、請求項7を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明7の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明7と同様に、甲4製造法発明であるとはいえないし、甲4製造法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)申立理由4についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4及び7ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件特許の請求項1ないし4及び7ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由4によっては取り消すことはできない。
5 申立理由5(甲5に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲5に記載された事項等
ア 甲5に記載された事項
甲5には、おおむね次のとおり記載されている。
・「本発明で特に適したものは、分子量300~15,000のジカルボキシルポリアミド11または12ブロックと分子量100~6,000のポリオキシテトラメチレングリコールブロックとを、ポリオキシテトラメチレングリコール5~85重量%に対してポリアミドブロックを95~15重量%の割合で重縮合させて得られるブロックポリエーテルエステルアミド(PEBAX)である。」(第5ページ第18ないし22行)
・「吸熱性発泡剤は当然加熱によって分解し、分解は熱供給を除去することによって停止する。一方、発熱性発泡剤は熱源を除去した後も分解が継続し、かなりの冷却が必要になる。吸熱性発泡剤で得られるフォームの特徴の中で特に顕著なものは極めて優れた表皮および極めて微細な気泡形成であり、この発泡剤で軽量化したPEBAXの密度は0.6である。」(第6ページ第4ないし8行)
イ 甲5に記載された発明
甲5に記載された事項を整理すると、甲5には次の発明(以下、「甲5発明」及び「甲5製造法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲5発明>
「分子量300~15,000のジカルボキシルポリアミド11または12ブロックと分子量100~6,000のポリオキシテトラメチレングリコールブロックとを、ポリオキシテトラメチレングリコール5~85重量%に対してポリアミドブロックを95~15重量%の割合で重縮合させて得られるブロックポリエーテルエステルアミド(PEBAX)の発泡剤で得られるフォーム。」
<甲5製造法発明>
「甲5発明の製造法。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲5発明を対比する。
甲5発明における「分子量300~15,000のジカルボキシルポリアミド11または12ブロックと分子量100~6,000のポリオキシテトラメチレングリコールブロックとを、ポリオキシテトラメチレングリコール5~85重量%に対してポリアミドブロックを95~15重量%の割合で重縮合させて得られるブロックポリエーテルエステルアミド(PEBAX)」は本件特許発明1における「ポリアミドポリエーテルブロックコポリマー」に相当する。
甲5発明における「発泡剤で得られるフォーム」は本件特許発明1における「発泡体」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリアミドポリエーテルブロックコポリマーの発泡体。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点5-1>
「ポリアミドポリエーテルブロックコポリマー」に関して、本件特許発明1においては、「非架橋」と特定されているのに対し、甲5発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5-2>
「ポリアミドポリエーテルブロックコポリマー」に関して、本件特許発明1においては、「-該コポリマーの該ポリアミドブロックは数平均分子量200~1500g/molを有し;
-該コポリマーの該ポリエーテルブロックは数平均分子量800~2500g/molを有し;そして
-該ポリエーテルブロックに対する該ポリアミドブロックの質量比は0.3~0.6である」と特定されているのに対して、甲5発明においては、「分子量300~15,000のジカルボキシルポリアミド11または12ブロックと分子量100~6,000のポリオキシテトラメチレングリコールブロックとを、ポリオキシテトラメチレングリコール5~85重量%に対してポリアミドブロックを95~15重量%の割合で重縮合させて得られる」と特定されている点。
イ 判断
そこで、事案に鑑み、相違点5-2について検討する。
甲5発明で特定される「ジカルボキシルポリアミド11または12ブロック」の「分子量」の「300~15,000」という数値範囲は、本件特許発明1で特定される「該コポリマーの該ポリアミドブロック」の「数平均分子量200~1500g/mol」という数値範囲に包含されるわけではなく、その一部に重なる数値範囲があるにすぎない。
甲5発明で特定される「ポリオキシテトラメチレングリコールブロック」の「分子量」の「100~6,000」という数値範囲は、本件特許発明1で特定される「該コポリマーの該ポリエーテルブロック」の「数平均分子量800~2500g/mol」という数値範囲に包含されるわけではなく、その一部に重なる数値範囲があるにすぎない。
甲5発明で特定される「ポリオキシテトラメチレングリコール5~85重量%に対してポリアミドブロックを95~15重量%」における「ポリオキシテトラメチレングリコール」に対する「ポリアミドブロック」の質量比の数値範囲は、本件特許発明1で特定される「該ポリエーテルブロックに対する該ポリアミドブロックの質量比」の「0.3~0.6」という数値範囲に包含されるわけではなく、計算上、重なる数値範囲があるにすぎない。
してみると、甲5発明で特定されるこれらの数値条件は、相違点5-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとはいえないから、相違点5-2は実質的な相違点である。
また、甲5には、甲5発明において、相違点5-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。
そして、本件特許発明1の奏する「下記の1つ又はそれ以上の有利な性質を有する低密度ポリマー発泡体を提供する:低拘束応力下で弾性エネルギーを戻す高い能力;低圧縮永久歪み;及び圧縮疲労に対する高い抵抗性。」という効果は、甲5発明及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができる範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲5発明であるとはいえないし、甲5発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2ないし4及び10ないし12について
本件特許発明2ないし4及び10ないし12は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲5発明であるとはいえないし、甲5発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明7について
本件特許発明7は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1及び本件特許発明1をさらに限定した発明の製造法の発明であり、甲5製造法発明は甲5発明の製造法の発明である。
したがって、本件特許発明1が甲5発明であるとはいえず、また、甲5発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明7は甲5製造法発明であるとはいえないし、甲5製造法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明9について
本件特許発明9は、請求項7を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明7の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明7と同様に、甲5製造法発明であるとはいえないし、甲5製造法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)申立理由5についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4、7及び9ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件特許の請求項1ないし4、7及び9ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由5によっては取り消すことはできない。
6 申立理由6(甲6に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲6に記載された事項等
ア 甲6に記載された事項
甲6には、おおむね次のとおり記載されている。
・「【請求項1】 (A)温度190℃及び剪断速度100s-1における溶融粘度が101~105Pa・sである熱可塑性ゴム50~95質量%と、発泡剤50~5質量%とを混練してなる発泡剤マスターバッチ及び(B)上記熱可塑性ゴムよりも溶融粘度の低い熱可塑性樹脂をブレンドした後、該熱可塑性樹脂の溶融温度以上の温度に加熱し、発泡剤により発泡させると共に、賦形することを特徴とする軽量成形体の製造方法。」
イ 甲6に記載された発明
甲6に記載された事項を整理すると、甲6には次の発明(以下、「甲6発明」及び「甲6製造法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲6発明>
「(A)温度190℃及び剪断速度100s-1における溶融粘度が101~105Pa・sである熱可塑性ゴム50~95質量%と、発泡剤50~5質量%とを混練してなる発泡剤マスターバッチ及び(B)上記熱可塑性ゴムよりも溶融粘度の低い熱可塑性樹脂をブレンドした後、該熱可塑性樹脂の溶融温度以上の温度に加熱し、発泡剤により発泡させると共に、賦形した軽量成形体。」
<甲6製造法発明>
「甲6発明の製造法。」
(2)本件特許発明1について
本件特許発明3及び7ないし9は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そこで、申立理由6の対象とはなっていないが、便宜上、まず、本件特許発明1について検討する。
ア 対比
本件特許発明1と甲6発明を対比する。
甲6発明における「(A)温度190℃及び剪断速度100s-1における溶融粘度が101~105Pa・sである熱可塑性ゴム50~95質量%と、発泡剤50~5質量%とを混練してなる発泡剤マスターバッチ及び(B)上記熱可塑性ゴムよりも溶融粘度の低い熱可塑性樹脂をブレンドした」ものは本件特許発明1における「非架橋ポリアミドポリエーテルブロックコポリマー」と、「ポリマー」という限りにおいて一致する。
甲6発明における「軽量成形体」は、「発泡剤により発泡させ」たものであるから、本件特許発明1における「発泡体」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリマーの発泡体。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点6-1>
「ポリマー」に関して、本件特許発明1においては、「非架橋ポリアミドポリエーテルブロックコポリマー」と特定されているのに対し、甲6発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点6-2>
「ポリマー」に関して、本件特許発明1においては、「-該コポリマーの該ポリアミドブロックは数平均分子量200~1500g/molを有し;
-該コポリマーの該ポリエーテルブロックは数平均分子量800~2500g/molを有し;そして
-該ポリエーテルブロックに対する該ポリアミドブロックの質量比は0.3~0.6である」と特定されているのに対して、甲6発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、事案に鑑み、相違点6-2について検討するに、相違点6-2が実質的な相違点であることは明らかである。なお、このことは、特許異議申立人も認めるところである(特許異議申立書第32ページ第25ないし30行)。
また、甲6には、甲6発明において、相違点6-2に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。
そして、本件特許発明1の奏する「下記の1つ又はそれ以上の有利な性質を有する低密度ポリマー発泡体を提供する:低拘束応力下で弾性エネルギーを戻す高い能力;低圧縮永久歪み;及び圧縮疲労に対する高い抵抗性。」という効果は、甲6発明及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができる範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲6発明であるとはいえないし、甲6発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲6発明であるとはいえないし、甲6発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明7について
本件特許発明7は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1及び本件特許発明1をさらに限定した発明の製造法の発明であり、甲6製造法発明は甲6発明の製造法の発明である。
したがって、本件特許発明1が甲6発明であるとはいえず、また、甲6発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明7は甲6製造法発明であるとはいえないし、甲6製造法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明8及び9について
本件特許発明8及び9は、請求項7を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明7の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明7と同様に、甲6製造法発明であるとはいえないし、甲6製造法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)申立理由6についてのむすび
したがって、本件特許発明3及び7ないし9は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件特許の請求項3及び7ないし9に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由6によっては取り消すことはできない。
第5 結語
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700354