特許異議申立
2026-700127
高通気性、弾力性、支持性を有する縦糸編みスペーサーメッシュファブリック
- 審判番号
- 2026-700127
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-540593
- 登録番号
- 7724291
- 請求日
- 2026年02月12日
- 審決日
- 2026年05月08日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】リア・コーポレーション
- 【権利者代理人】岡部 讓
- 【権利者代理人】本田 亜希
- 【権利者代理人】田村 修
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 松永 稔
- 審判官 中野 浩昌
- 審判官 緑川 隆
- 分類
- P1652.121-Y (D04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7724291号発明「高通気性、弾力性、支持性を有する縦糸編みスペーサーメッシュファブリック」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7724291号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許7724291号の請求項1~17に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、2021年(令和3年)9月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2021年4月11日 中国(CN))を国際出願日とする出願であって、令和7年8月6日にその特許権の設定登録がされ、同年8月15日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許のうち請求項1~7に係る特許に対し、令和8年2月12日に特許異議申立人 弁理士法人朝日奈特許事務所(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」という。)は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1のニット層と、
第2のニット層と、
該第1及び第2のニット層の間に伸びて連結するスペーサーヤーンと、
を含み、
該第1のニット層は、平坦なファブリック部分によって分離された複数の間隔をあけた開口部を含むメッシュ構造を有し、該平坦なファブリック部分の各々は、3本の糸の一連を含み、
該第2のニット層は、平坦な構造を有し、
該スペーサーファブリックは、5±2kPaの圧縮応力値及び≧3500mm/sの通気性を有する、スペーサーファブリック。
【請求項2】
前記開口部は、概して、円形、細長形、楕円形、正方形及び/又は長方形の形状である、請求項1に記載のスペーサーファブリック。
【請求項3】
前記開口部は、幅方向、開口中心で0.5mmから10mm間隔で配置され、長さ方向、開口中心で0.5mmから10mm間隔で配置される、請求項1に記載のスペーサーファブリック。
【請求項4】
前記第1及び第2のニット層は、前記スペーサーヤーンと共に、一体の3次元ネットワーク構造を形成する、請求項1に記載のスペーサーファブリック。
【請求項5】
前記スペーサーファブリックは、車両シートトリムカバー内のクッション層を含む、請求項1に記載のスペーサーファブリック。
【請求項6】
前記第1のニット層は、前記第2のニット層よりも高い通気性を有する、請求項1に記載のスペーサーファブリック。
【請求項7】
前記第1のニット層の前記複数の間隔をあけた開口部の各々は、3本のヤーン糸で仕切られている、請求項1に記載のスペーサーファブリック。」
第3 申立理由の概要
異議申立書に記載した申立理由の概要は、請求項1~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許についての出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである、というものである。
[証拠方法]
甲第1号証:国際公開第2018/235738号(以下「甲1」という。)
第4 当審の判断
1 甲1について
(1) 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。
「[0011] ダブルラッセル編地は、経編地の一種であり、表裏地組織すなわち表地組織と裏地組織とを有する。ダブルラッセル編地は、さらに、表地組織と裏地組織とを連結する連結部を有する。連結部は連結糸によって形成される。
[0012] 本発明のダブルラッセル編地では表地組織が開口部を有する。開口部は、編組織によって形成されるものであり、表地組織をその面に垂直な方向に貫通する。開口部は、例えば図1に符号Hの二点鎖線で示す場所のような、隣り合うループが緯方向に連結されていない場所に形成される。なお、図1は2枚の筬による編組織を示しており、これら2枚の筬にはそれぞれ糸が3in3outで配列されている。図1において、実線は1枚の筬から給糸された糸の組織を示し、破線は別の1枚の筬から給糸された糸の組織を示している。開口部を有する表地組織の編組織は、限定されないが、例えば2枚の筬から給糸された糸からなるネット組織等である。開口部を有する表地組織の具体的構成については後述する。」
「[0064] 製造された本発明のダブルラッセル編地は、例えばインテリア資材や車両内装材、靴として使用される。車両内装材としては、例えば座席の座面、背もたれ、ヘッドレストが挙げられる。本発明のダブルラッセル編地は、風合やクッション性に優れるのはもちろんのこと、表地組織に開口部を有するため通気性が良く発汗時の快適性もよい。そして上記の通り本発明のダブルラッセル編地は強度にも優れる。従って本発明のダブルラッセル編地は少なくとも上記の用途に適している。
・・・
[0066] [実施例1]
22ゲージのダブルラッセル編機(RD6DPLM-77E-22G、カールマイヤー社製)を使用してダブルラッセル編地を編成した。図8に示すように、筬L-1に167dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント糸をフルセットで配列して3針振りのコード編組織(1-0/3-4)を形成し、筬L-2に167dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント糸をフルセットで配列してデンビ編組織(0-1/2-1)を形成して、裏地組織を編成した。さらに、筬L-3に33dtex/1fのポリエステルモノフィラメント糸をフルセットで配列して表裏地組織を連結した。さらに、筬L-4に167dtex/48fのポリエステル加工糸を3in3outで配列し、筬L-5に167dtex/48fのポリエステル加工糸を3in3outで配列して表地組織を編成した。
[0067] 編成されたダブルラッセル編地をヒートセッターにて190℃で1分間プレセットしたのち、分散染料にて130℃で染色した後、乾燥し、ヒートセッターにて150℃で1分間仕上げセットして、仕上がり34コース/25.4mm、23ウエル/25.4mm、厚み3.0mmのダブルラッセル編地を得た。得られたダブルラッセル編地の性量、編地の構成を表1に記載した。」
「
[図:0001436225000001.jpg]
」
「
[図:0001436225000002.jpg]
」
(2) 甲1発明
上記(1)の記載によれば、甲1には、「ダブルラッセル編地」について、以下の事項が記載されている。
ア [0011]によれば、ダブルラッセル編地は、表地組織と、裏地組織と、表地組織と裏地組織とを連結する、連結糸によって形成される連結部を有するといえる。
イ [0012]によれば、表地組織は、編組織によって形成され、隣り合うループが緯方向に連結されていない場所に形成される開口部を有するといえる。
ウ [0066]によれば、裏地組織は、筬L-1に167dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント糸をフルセットで配列して3針振りのコード編組織(1-0/3-4)を形成し、筬L-2に167dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント糸をフルセットで配列してデンビ編組織(0-1/2-1)を形成して編成したものであり、連結部は、筬L-3に33dtex/1fのポリエステルモノフィラメント糸をフルセットで配列して表裏地組織を連結したものであり、表地組織は、筬L-4に167dtex/48fのポリエステル加工糸を3in3outで配列し、筬L-5に167dtex/48fのポリエステル加工糸を3in3outで配列して編成したものといえ、図8によれば、表地組織、裏地組織及び連結部は、所定の規則で編成したものといえる。
エ 以上によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
[甲1発明]
表地組織と、裏地組織と、表地組織と裏地組織とを連結する、連結糸によって形成される連結部を有し、
表地組織は、編組織によって形成され、隣り合うループが緯方向に連結されていない場所に形成される開口部を有し、
裏地組織は、筬L-1に167dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント糸をフルセットで配列して3針振りのコード編組織(1-0/3-4)を形成し、筬L-2に167dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント糸をフルセットで配列してデンビ編組織(0-1/2-1)を形成して編成したものであり、連結部は、筬L-3に33dtex/1fのポリエステルモノフィラメント糸をフルセットで配列して表裏地組織を連結したものであり、表地組織は、筬L-4に167dtex/48fのポリエステル加工糸を3in3outで配列し、筬L-5に167dtex/48fのポリエステル加工糸を3in3outで配列して編成したものであり、表地組織、裏地組織及び連結部は、所定の規則で編成したものである、
ダブルラッセル編地。
2 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
ア 甲1発明の「表地組織」及び「裏地組織」は、いずれもダブルラッセル編地における編組織、すなわちニットといえるから、それぞれ本件発明1の「第1のニット層」及び「第2のニット層」に相当する。
イ 甲1発明の「表地組織と裏地組織とを連結する、連結糸によって形成される連結部」は、表地組織と裏地組織との間にスペースを介して連結糸、すなわちヤーンにより連結したものであるから、本件発明1の「該第1及び第2のニット層の間に伸びて連結するスペーサーヤーン」に相当する。
ウ 甲1発明の「表地組織」の「編組織によって形成され、隣り合うループが緯方向に連結されていない場所に形成される開口部」は、「平坦なファブリック部分によって分離された複数の間隔をあけた開口部」といえる。
そして、甲1発明の「表地組織」は、開口部を含むから、「メッシュ構造」を有しているといえる。
また、甲1発明の「表地組織」は、「筬L-4に167dtex/48fのポリエステル加工糸を3in3outで配列し、筬L-5に167dtex/48fのポリエステル加工糸を3in3outで配列して編成したもの」であるから、「該平坦なファブリック部分の各々は、3本の糸の一連を含み」といえる。
したがって、甲1発明の「表地組織」は、本件発明1の「平坦なファブリック部分によって分離された複数の間隔をあけた開口部を含むメッシュ構造を有し、該平坦なファブリック部分の各々は、3本の糸の一連を含」む「第1のニット層」に相当する。
エ 甲1発明の「裏地組織」は、「筬L-1に167dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント糸をフルセットで配列して3針振りのコード編組織(1-0/3-4)を形成し、筬L-2に167dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント糸をフルセットで配列してデンビ編組織(0-1/2-1)を形成して編成したもの」であって、2つの筬のポリエステルマルチフィラメント糸をフルセットで配列して編成したものであるから、開口部のない平坦な構造であるといえる。
したがって、甲1発明の「裏地組織」は、本件発明1の「平坦な構造を有」する「第2のニット層」に相当する。
オ 甲1発明の「ダブルラッセル編地」は、上記ア、イの「表地組織」、「裏地組織」及び「連結部」を備える点で、本件発明1の「スペーサーファブリック」に相当する。
カ 以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
第1のニット層と、
第2のニット層と、
該第1及び第2のニット層の間に伸びて連結するスペーサーヤーンと、
を含み、
該第1のニット層は、平坦なファブリック部分によって分離された複数の間隔をあけた開口部を含むメッシュ構造を有し、該平坦なファブリック部分の各々は、3本の糸の一連を含み、
該第2のニット層は、平坦な構造を有する、
スペーサーファブリック。
[相違点]
本件発明1では、「該スペーサーファブリックは、5±2kPaの圧縮応力値及び≧3500mm/sの通気性を有する」と特定されているのに対し、甲1発明では、「ダブルラッセル編地」の圧縮応力値及び通気性について、具体的な数値が特定されていない点。
(2) 相違点についての判断
相違点に係る本件発明1の構成は、証拠に記載も示唆もされていないから、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 申立人の主張の検討
ア 「5±2kPaの圧縮応力値」について
(ア) 本件特許についての願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)には、次の記載がある。(特許異議申立書20~21頁において、申立人が付与した箇所と同じ箇所に下線を付与した。)
「【0020】
ある他の実施形態では、上層12及び下層14は、一般的なマルチストランドポリエステルフィラメントで作られる。少なくとも一実施形態では、上層12及び下層14は、サイズ83dtex/36Fを有する一般的なマルチストランドポリエステルフィラメント及びサイズ33-44 dtex/lFを有する中間連結モノフィラメント16で作られる。他のサイズ及び又は種類のヤーンを使用することができ、かつ、本開示と一致することを理解するべきである。」
「【0040】
3Dスペーサーファブリック10の弾力性及び支持性は、モノフィラメント16の剛性及びファブリックの構造及び垂直及び水平密度に関連する。上述の上部及び下部のファブリック構造12及び14は、連結モノフィラメント16を良好に保持することができ、それによって、外部圧力下でのフィラメント16の側方への滞留を抑制するのに役立ち、これは、ファブリックの弾力性及び支持性が不良になるのを抑制するのに役立つ。さらに、中間連結モノフィラメント16の剛性が大きすぎたり小さすぎたりすると、ファブリックの弾力性及び快適性が不良になる。ファブリックの垂直及び水平密度が増加すると、支持性はより強くなる。少なくとも1つの実施形態では、ファブリックの弾力性及び支持性は、5±2kPaの圧縮応力値によって測定されるが、この値に限定されるものではない。少なくとも1つの実施形態では、本開示のスペーサーファブリック10は、約4.2kPaの圧縮応力値を有する。」
(イ) ここで、申立人は、特許異議申立書20~21頁において、本件特許明細書の上記(ア)の記載を引用し、本件特許明細書には、連結糸の強度によって布帛の圧縮応力値を調整することができ(【0040】)、所定の圧縮応力値となるための中間連結モノフィラメントとして、33-44 dtex/lFであるモノフィラメントを用いたこと(【0020】)が示されているところ、甲1発明の具体例である実施例(実施例1)は、「さらに、筬L-3に33dtex/lfのポリエステルモノフィラメント糸をフルセットで配列して表裏地組織を連結した」([0066])ことが開示されており、本件特許発明と同様の連結糸が使用されているから、甲第1号証の実施例1に記載のダブルラッセル編地は、33dtex/lfのポリエステルモノフィラメント糸が用いられたことから、得られたダブルラッセル編地の圧縮応力値は、5±2kPaである蓋然性が極めて高いと主張している。
(ウ) 検討するに、本件特許明細書の上記(ア)の【0040】の「3Dスペーサーファブリック10の弾力性及び支持性は、モノフィラメント16の剛性及びファブリックの構造及び垂直及び水平密度に関連する。上述の上部及び下部のファブリック構造12及び14は、連結モノフィラメント16を良好に保持することができ、それによって、外部圧力下でのフィラメント16の側方への滞留を抑制するのに役立ち、これは、ファブリックの弾力性及び支持性が不良になるのを抑制するのに役立つ」との記載によれば、スペーサーファブリックの弾力性及び支持性は、連結モノフィラメント16の剛性のみに関連するものではなく、上部及び下部のファブリックの構造及び垂直及び水平密度にも関連する。
そうすると、連結糸として「33dtex/lfのポリエステルモノフィラメント糸」を用いたことのみをもって、甲1発明のダブルラッセル編地が「5±2kPaの圧縮応力値」を有する蓋然性が極めて高いということはできない。
したがって、上記(イ)の主張は採用できない。
イ 「≧3500mm/sの通気性」について
(ア) 本件特許明細書には、次の記載がある。(特許異議申立書21頁において、申立人が付与した箇所と同じ箇所に下線を付与した。)
「【0008】
少なくとも特定の実施形態において、本開示は、従来技術の認識された欠陥を克服し、比較的高い通気性と弾性回復を有する縦糸編み3Dファブリックを提供することを目的とする。」
「【0038】
少なくとも特定の他の実施形態では、柔らかく、快適で、弾力性があり、良好な通気性を有するスペーサーファブリック10を達成するために、層、及び特定の実施形態では上層12が、メッシュ開口部8及び平坦パターン6で配置されたファブリック層間隔を備え、メッシュが、ファブリックが優れた通気性を有することを可能にする。特定の実施形態では、メッシュサイズは、所望の換気要件に従って調整することができる。平坦編み部分は、中間連結モノフィラメント16及び上部ファブリック12をより安定かつ堅固にするのに役立つ。したがって、中間連結モノフィラメント16の安定性及び直線性は比較的良好であり、モノフィラメントが傾斜及び/又は束になるのを抑制することができる。メッシュの作用により、モノフィラメント16は比較的均等に分散され、力は比較的大きな表面積に分散され、局所的なつぶれを回避するのに役立つ。少なくとも特定の他の実施形態では、モノフィラメントは、平坦な組織強化により良好な安定性を有し、横方向に倒れにくく、ファブリックの弾性回復は、他のファブリックに比べて改善される。」
「【0041】
三次元スペーサーファブリック10の高い通気性は、上部ファブリック12と下部ファブリック14の間のギャップに関連している。一般的に言えば、ギャップが大きいほど通気性は良いが、ファブリックギャップのサイズは弾力性と支持性を制限する可能性がある。少なくとも一実施形態では、スペーサーファブリック10の通気性は一般的に≧3500mm/sであるが、この値に限定されない。少なくとも一実施形態では、本開示のスペーサーファブリック10は、約5000mm/sの通気性を有する。通気性は、試験方法:DIN EN ISO 9237 2mbar、試験試料:20cm2により測定することができる。」
(イ) ここで、申立人は、特許異議申立書21~22頁において、本件特許明細書の上記(ア)の【0038】の記載を引用し、本件特許明細書には、メッシュ部を有することにより、通気性を向上させ得ることが開示され、甲第1号証には、甲1発明のダブルラッセル編地に関して、「本発明のダブルラッセル編地は、風合いやクッション性に優れるのはもちろんのこと、表地組織に開口部を有するために通気性が良く発汗時の快適性もよい」([0064])と開示され、甲1発明がメッシュ部に相当する開口部を有するから、当業者において、甲1発明におけるメッシュ部の寸法等を調整することによって通気性を向上させ、≧3500mm/sの通気性とすることは適宜なし得る設計事項に過ぎないと主張している。
(ウ) 検討するに、本件特許明細書の上記(ア)の【0008】の「本開示は、従来技術の認識された欠陥を克服し、比較的高い通気性と弾性回復を有する縦糸編み3Dファブリックを提供することを目的とする。」との記載によれば、本件発明1は、通気性と弾性回復とをいずれも高くすることを課題とする発明であるところ、同【0041】の「一般的に言えば、ギャップが大きいほど通気性は良いが、ファブリックギャップのサイズは弾力性と支持性を制限する可能性がある。」との記載によれば、通気性を良くすることと、弾性回復に対応する弾力性及び支持性を良くすることとはトレードオフの関係にあるものといえる。
また、甲1には、通気性と弾性回復とをいずれも高くするという課題を解決することは、記載も示唆もされていない。
そうすると、申立人の、メッシュ部の寸法等を調整して通気性を向上させるとの主張は、弾力性及び支持性にも影響するメッシュ部の寸法等を調整するものであって、弾力性及び支持性も良くするという前提を欠くものであるから、採用できない。
ウ 小括
上記アで検討したとおり、甲1発明は、相違点に係る本件発明1の構成のうち、「5±2kPaの圧縮応力値」を有するとの事項を備えておらず、また、上記イで検討したとおり、甲1発明は、通気性と弾性回復とをいずれも高くするという課題を解決する発明ではないから、当業者であっても、甲1発明に基づいて、相違点に係る本件発明1の「該スペーサーファブリックは、5±2kPaの圧縮応力値及び≧3500mm/sの通気性を有する」との構成を導出することはできない。
(4) 本件発明1についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明2~7について
請求項2~7は、請求項1を引用するから、本件発明2~7は、本件発明1の構成を全て備えるものである。
したがって、本件発明2~7は、上記2(1)で示した相違点に係る構成を有するから、上記2(2)で検討した理由と同様の理由により、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2026-700127