2023-700175
フォルダブルディスプレイ用保護フィルムおよびこれを含むフォルダブルディスプレイ装置
- 審判番号
- 2023-700175
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-504772外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7120518
- 請求日
- 2023年02月17日
- 審決日
- 2023年12月01日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エルジー・ケム・リミテッド
- 【権利者代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
- 【異議申立人】安宅 稲子
- 分類
- P1651.83 -YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
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特許第7120518号の請求項1~11に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)10月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理平成30年10月11日、韓国(KR))を国際出願日とする出願であって、令和4年8月8日にその特許権の設定登録がされ、令和4年8月17日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~11に係る特許に対し、令和5年2月17日に特許異議申立人安宅稲子(以下「申立人」という。)により、本件特許異議の申立てがされた。
それ以降の経緯は以下とおりである。
なお、令和5年9月19日提出の訂正請求書を以下「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正自体を「本件訂正」という。
第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7120518号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-11について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。
(1) 訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「前記保護基材の前記粘着剤層と接する面の反対面に備えられた第1ハードコート層」との記載を「前記保護基材の前記粘着剤層側の面の反対面に備えられた第1ハードコート層」に訂正し、「前記粘着剤層の前記保護基材と接する面の反対面をPI基材に対して」との記載を「前記粘着剤層の前記保護基材側の面の反対面をPI基材に対して」に訂正する。また、請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2~11も同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「23℃、50RH%で測定した粘着力は、10gf/inch以上」との記載を「23℃、50RH%で測定した粘着力は、10gf/inch以上300gf/inch以下」に訂正する。また、請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2~11も同様に訂正する。
(3) 訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「であるフォルダブルディスプレイ用保護フィルム。」とある記載を「であり、前記粘着剤層は、シリコーン系粘着剤を含む、フォルダブルディスプレイ用保護フィルム。」に訂正する。また、請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2~11も同様に訂正する。
(4) 訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5) 訂正事項5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5における「請求項1から4のいずれか一項」との記載を「請求項1から3のいずれか一項」に訂正する。また、請求項5の記載を直接的または間接的に引用する請求項6~11も同様に訂正する。
(6) 訂正事項6
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6における「前記粘着剤層の前記保護基材と接する面の反対面;」との記載を「前記粘着剤層の前記保護基材側の面の反対面;」に訂正する。また、請求項6の記載を直接的または間接的に引用する請求項7~11も同様に訂正する。
(7) 訂正事項7
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6における「請求項1から5のいずれか一項」との記載を「請求項1から3及び請求項5のいずれか一項」に訂正する。また、請求項6の記載を直接的または間接的に引用する請求項7~11も同様に訂正する。
(8) 訂正事項8
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7における「請求項1~6のいずれか1項」との記載を「請求項1から3及び請求項5から6のいずれか1項」に訂正する。また、請求項7の記載を直接的または間接的に引用する請求項8~11も同様に訂正する。
(9) 本件訂正は、一群の請求項〔1~11〕に対して請求されたものである。
2 本件訂正の適否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「前記保護基材の前記粘着剤層と接する面の反対面に備えられた第1ハードコート層」及び「前記粘着剤層と前記保護基材との間に第2ハードコート層」と記載され、保護基材と粘着剤層とが接するとされる一方で、保護基材と粘着剤層との間に第2ハードコート層が存在しており、不明瞭な記載となっていたものを、「前記保護基材の前記粘着剤層側の面の反対面に備えられた第1ハードコート層」として、各部材の配置関係を明瞭な記載に改めると共に、同様な記載の訂正前の「前記粘着剤層の前記保護基材と接する面の反対面をPI基材に対して」とあるのを「前記粘着剤層の前記保護基材側の面の反対面をPI基材に対して」と明瞭にするものである。
したがって、訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正前の請求項1に係る発明は、「前記粘着剤層と前記保護基材との間に第2ハードコート層」を備えるので、保護基材は粘着剤層と接しておらず、「前記保護基材の前記粘着剤層と接する面」及び「前記粘着剤層の前記保護基材と接する面」は存在していない。さらに、本件特許明細書には、「本出願の一実施態様において、前記粘着剤層と前記保護基材との間に第2ハードコート層をさらに含むフォルダブルディスプレイ用保護フィルムを提供する。」(【0037】)と記載され、粘着剤層と保護基材との間に位置する第2ハードコート層は任意の層構成であったものが、訂正前の請求項1において、発明特定事項として特定されたことに照らせば、「前記保護基材の前記粘着剤層と接する面」という記載は「前記保護基材の前記粘着剤層側の面」を意図し、「前記粘着剤層の前記保護基材と接する面」という記載は「前記粘着剤層の前記保護基材側の面」を意味していることは明らかである。
そうすると、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲
訂正事項1は、本件特許明細書の【0038】及び【図2】に基づくものであり、【0038】には、粘着剤層2、第2ハードコート層3、保護基材4、および第1ハードコート層5が順に積層された構造が記載され、【図2】にも係る層構成が記載されている。
そうすると、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、所定の方法で測定した粘着力を訂正前の「10gf/inch以上」から「10gf/inch以上300gf/inch以下」と粘着力の範囲を更に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、上記アのとおり、特許請求の範囲における粘着力の数値範囲について上限を定めて、特許請求の範囲の減縮をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲
訂正事項2は、本件特許明細書の「前記粘着剤層の前記保護基材と接する面の反対面をPI基材に対して接合後、23℃、50RH%で測定した粘着力は、500gf/inch以下、好ましくは400gf/inch以下、さらに好ましくは300gf/inch以下であってもよい。」(【0027】)と記載に基づくものである。
そうすると、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたのものである。
(3) 訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、「前記粘着剤層は、シリコーン系粘着剤を含む」という記載を追加することで粘着剤層が含む粘着剤の種類を更に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、上記アのとおり、粘着剤層が含む粘着剤の種類を限定するものであって、特許請求の範囲の減縮をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲
訂正事項3は、訂正前の請求項4及び本件特許明細書「本出願の一実施態様において、前記粘着剤層は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、およびゴム系粘着剤からなる群より選択される1以上の粘着剤を含むフォルダブルディスプレイ用保護フィルムを提供する。」(【0046】)との記載に基づくものである。
そうすると、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(4) 訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、上記アのとおり、請求項を削除するものであって、特許請求の範囲の減縮をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲
訂正事項4は、上記アのとおり、請求項を削除するものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであることは、明らかである。
(5) 訂正事項5、7、8について
ア 訂正の目的について
訂正事項5、7、8は、訂正事項4における請求項4の削除に伴い、請求項5、6、7が請求項4を引用しないように訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5、7、8は、上記アのとおり、請求項4を引用しないように訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲
訂正事項5、7、8は、上記アの通り、請求項4を引用しないようにするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であることは明らかである。
(6) 訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項6において、訂正事項1と同様に、「前記粘着剤層の前記保護基材と接する面」という明瞭でない記載を「前記粘着剤層の前記保護基材側の面」と明瞭な記載とするものであるから、訂正事項6は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、訂正事項1と同様に、「前記粘着剤層の前記保護基材と接する面」という記載は「前記粘着剤層の前記保護基材側の面」を意味していること明らかである。
そうすると、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲
訂正事項6は、本件特許明細書の【0038】及び図2に基づくものであり、【0038】には、粘着剤層2、第2ハードコート層3、保護基材4、および第1ハードコート層5が順に積層された構造が記載され、図2にも係る層構成が記載されている。
そうすると、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(7) むすび
したがって、本件訂正の訂正事項1~8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたから、本件訂正後の請求項1~3、5~11に係る発明(以下「訂正発明1」等といい、まとめて「訂正発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3、5~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
粘着剤層と、
前記粘着剤層の一面に備えられた保護基材と、
前記保護基材の前記粘着剤層側の面の反対面に備えられた第1ハードコート層と
前記粘着剤層と前記保護基材との間に第2ハードコート層と
を含むフォルダブルディスプレイ用保護フィルムであって、
前記保護基材の厚さは、10μm以上150μm以下であり、
前記第1ハードコート層の厚さは、1μm以上10μm以下であり、
前記第2ハードコート層の厚さは、1μm以上10μm以下であり、
前記粘着剤層の前記保護基材側の面の反対面をPI基材に対して接合後、23℃、50RH%で測定した粘着力は、10gf/inch以上300gf/inch以下であり、
前記粘着剤層は、シリコーン系粘着剤を含む、
フォルダブルディスプレイ用保護フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層の厚さは、5μm以上50μm以下である、請求項1に記載のフォルダブルディスプレイ用保護フィルム。
【請求項3】
前記保護基材は、TPU、GLASS、PET(polyethylene terephthalate)、ポリエステル(polyester)、PC(Polycarbonate)、PI(polyimide)、PEN(polyethylene naphthalate)、PEEK(polyether ether ketone)、PAR(polyarylate)、PCO(polycyclicolefin)、ポリノルボルネン(polynorbornene)、PES(polyethersulphone)、およびCOP(cycloolefin polymer)からなる群より選択されるものである、請求項1または2に記載のフォルダブルディスプレイ用保護フィルム。
【請求項5】
前記粘着剤層は、架橋性化合物、分散剤、シランカップリング剤、光硬化剤、熱硬化剤、金属塩、および粘着付与剤からなる群より選択された1つ以上を追加的に含むものである、請求項1から3のいずれか一項に記載のフォルダブルディスプレイ用保護フィルム。
【請求項6】
前記粘着剤層の前記保護基材側の面の反対面;または前記第1ハードコート層の前記保護基材と接する面の反対面に離型フィルムをさらに含むものである、請求項1から3及び請求項5のいずれか一項に記載のフォルダブルディスプレイ用保護フィルム。
【請求項7】
フォルダブルディスプレイと、
前記フォルダブルディスプレイの一面に備えられた、請求項1から3及び請求項5から6のいずれか1項に記載のフォルダブルディスプレイ用保護フィルムと
を含むフォルダブルディスプレイ装置であって、
前記フォルダブルディスプレイ用保護フィルムの前記粘着剤層と前記フォルダブルディスプレイの一面とが接するフォルダブルディスプレイ装置。
【請求項8】
前記フォルダブルディスプレイは、フレキシブル基材と、
有機発光層と、
偏光板と、
カバーウィンドウとが順次に積層された構造であって、
前記カバーウィンドウの前記偏光板と接する面の反対面に、前記フォルダブルディスプレイ用保護フィルムの前記粘着剤層が備えられる、請求項7に記載のフォルダブルディスプレイ装置。
【請求項9】
前記フレキシブル基材は、TPU、GLASS、PET(polyethylene terephthalate)、ポリエステル(polyester)、PC(Polycarbonate)、PI(polyimide)、PEN(polyethylene naphthalate)、PEEK(polyether ether ketone)、PAR(polyarylate)、PCO(polycyclicolefin)、ポリノルボルネン(polynorbornene)、PES(polyethersulphone)、およびCOP(cycloolefin polymer)からなる群より選択されるものである、請求項8に記載のフォルダブルディスプレイ装置。
【請求項10】
前記フォルダブルディスプレイの前記粘着剤層が接する面の反対面は、折り畳み部を有する第1領域と、非折り畳み部を有する第2領域とで備えられ、
前記第1領域は、前記フォルダブルディスプレイの長手方向に配置されるものである、請求項7から9のいずれか一項に記載のフォルダブルディスプレイ装置。
【請求項11】
前記フォルダブルディスプレイが前記第1領域を基準として折り畳まれる場合、前記第2領域の周縁は、互いに当接するものである、請求項10に記載のフォルダブルディスプレイ装置。
第4 取消理由通知の概要
当審において特許権者に通知した令和5年6月16日付け取消理由の概要は、次のとおりである。
1.(進歩性)本件訂正前の請求項1~11に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明、甲第4、7、8号証に記載された事項及び周知技術(甲第4~6号証に基づく)に基いて、又は、甲第2号証に記載された発明、甲第2、4、7、8号証に記載された事項及び周知技術(甲第3~6号証に基づく)に基いて、又は、甲第3号証に記載された発明、甲第2、4、7、8号証に記載された事項及び周知技術(甲第4~6号証に基づく)に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。よって、訂正前の請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2.(明確性)この出願は、本件訂正前の請求項1~11の特許請求の範囲の記載について、請求項1には、「前記保護基材の前記粘着剤層と接する面」と特定され、請求項1、6には、「前記粘着剤層の前記保護基材と接する面」と特定されていて、保護基材と粘着剤層は接していることが規定されているが、他方、請求項1には、「前記粘着剤層と前記保護基材との間に第2ハードコート層」と特定され、粘着剤層と保護基材との間には、第2ハードコート層が設けられているので、保護基材と粘着剤層は接していないことになり、この点で、訂正前の請求項1~11は、不明瞭な記載となっている。
よって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
<引用文献一覧>
(以下、甲第1号証を「甲1」といい、以下、他の甲各号証についても同様とする。)
第5 取消理由通知についての当審の判断
1 明確性要件に係る取消理由2についての判断
事案に鑑み、まず、記載要件についての取消理由である、取消理由2について検討する。
上記第2の2の(1)及び(6)に示したように、訂正事項1及び6に係る訂正より、「保護基材」と「粘着剤層」との配置関係が明瞭となったから、取消理由2は、解消した。
2 進歩性に係る取消理由1についての判断
(1) 甲1を主引用例とする理由について
ア 甲1に記載された発明
甲1の記載(【請求項1】、【0017】、【0023】、【0027】、【0051】~【0054】、【0061】、【0065】表1)から、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「透明基材;前記透明基材の一方の面に形成された第1ハードコーティング層;及び前記透明基材の他方の面に形成された第2ハードコーティング層を含み、第2ハードコーティング層に粘着剤層が配置され、前記透明基材の厚さは、20~150μmであり、前記第1ハードコーティング層及び前記第2ハードコーティング層は、それぞれ厚さが5~50μmであり、下記の数式1で定義される強直性の値の範囲が15~130kPa・mであるフレキシブルディスプレイ用ハードコーティングフィルム。[図:0001407819000001.jpg]」
イ 訂正発明1について
(ア) 訂正発明1と甲1発明を対比する。
a 甲1発明の「透明基材」、「第1ハードコーティング層」、「第2ハードコーティング層」、「粘着剤層」は、その機能、構造及び技術的意義を考慮すると、それぞれ、訂正発明1の「保護基材」、「第1ハードコート層」、「第2ハードコート層」、「粘着剤層」に相当する。
そうすると、甲1発明の「前記透明基材の厚さは、20~150μmであ」ることは、訂正発明1の「前記保護基材の厚さは、10μm以上150μm以下であ」ることに相当する。
甲1発明の「前記第1ハードコーティング層及び前記第2ハードコーティング層は、それぞれ厚さが5~50μmであ」ることと、訂正発明1の「前記第1ハードコート層の厚さは、1μm以上10μm以下であり、
前記第2ハードコート層の厚さは、1μm以上10μm以下であ」ることは、「前記第1ハードコート層の厚さは、5μm以上10μm以下であり、前記第2ハードコート層の厚さは、5μm以上10μm以下であ」る限りで一致する。
甲1発明の「透明基材;
前記透明基材の一方の面に形成された第1ハードコーティング層;及び
前記透明基材の他方の面に形成された第2ハードコーティング層を含み、
第2ハードコーティング層に粘着剤層が配置され」ることは、各部材の配置から見て、透明基材が粘着剤層の一面側に備えられており、他方、訂正発明1の「前記粘着剤層の一面に備えられた保護基材」とは、訂正発明1の各部材の相互の配置から、粘着剤層の一面側に備えられていることといえるので、訂正発明1の
「粘着剤層と、前記粘着剤層の一面に備えられた保護基材と、前記保護基材の前記粘着剤層側の面の反対面に備えられた第1ハードコート層と前記粘着剤層と前記保護基材との間に第2ハードコート層とを含む」ことに相当する。
甲1発明の「フレキシブルディスプレイ用ハードコーティングフィルム」と、訂正発明1の「フォルダブルディスプレイ用保護フィルム」とは、その機能からみて、「ディスプレイ用保護フィルム」の限りで一致する。
b そうすると、訂正発明1と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
《一致点1》
「粘着剤層と、前記粘着剤層の一面に備えられた保護基材と、前記保護基材の前記粘着剤層側の面の反対面に備えられた第1ハードコート層と前記粘着剤層と前記保護基材との間に第2ハードコート層とを含むディスプレイ用保護フィルムであって、前記保護基材の厚さは、10μm以上150μm以下であり、前記第1ハードコート層の厚さは、5μm以上10μm以下であり、前記第2ハードコート層の厚さは、5μm以上10μm以下であり、ディスプレイ用保護フィルム。」
《相違点1》
ディスプレイ用保護フィルムについて、訂正発明1は、「フォルダブル」であるのに対して、甲1発明は、「フレキシブルディスプレイ用」である点。
《相違点2》
「前記第1ハードコート層の厚さは、5μm以上10μm以下であり、前記第2ハードコート層の厚さは、5μm以上10μm以下であ」ることについて、訂正発明1は、「前記第1ハードコート層の厚さは、1μm以上10μm以下であり、前記第2ハードコート層の厚さは、1μm以上10μm以下であ」るのに対して、甲1発明は、「前記第1ハードコーティング層及び前記第2ハードコーティング層は、それぞれ厚さが5~50μmであ」るとされている点。
《相違点3》
訂正発明1は、「粘着剤層は、シリコーン系粘着剤を含む」とされ、「前記粘着剤層の前記保護基材側の面の反対面をPI基材に対して接合後、23℃、50RH%で測定した粘着力は、10gf/inch以上300gf/inch以下であ」るとされているのに対して、甲1発明は、そのような特定はなされていない点。
(イ) 事案に鑑み、まず上記相違点3について検討する。
甲4には、フレキシブルディスプレイに用いる光学粘着剤層付偏光板の接着力が、実施例1~33において、2.1N/25mm~5.6N/25mmであることが記載されている(【0239】【表3-1】、【0240】【表3-2】)。ここで、2.1N/25mm~5.6N/25mmを、gf/inch単位に換算すると、217.56gf/inch(=2.1×101.97/(25×0.03937))~580.17gf/inch(=5.6×101.97/(25×0.03937)となる。
しかしながら、甲4における接着力を測定する測定条件は、「<接着力>上記耐久性試験で用いたものと同じサンプルを、新たに準備し、それぞれ、幅25mm×長さ100mmに裁断し、次いで50℃、0.5Mpaで15分間オートクレーブ処理して完全に密着させた。その後、23℃/55%RHの雰囲気下1時間静置後、かかるサンプルの接着力を測定した。」(【0235】)と記載されており、さらに、「接着力は、サンプルを、恒温槽付き引張り試験機(オリエンテック社製 テンシロン万能材料試験機 STA-1150)にて、23℃、相対湿度55%RHの条件下、剥離角度180°、剥離速度300mm/minでJIS Z0237(2009)の粘着テープおよび粘着シート試験の方法に準拠して、引き剥がす際の接着力(N/25mm)を測定することにより求めた。」(【0236】)というものである。
他方、訂正発明1の粘着力は、「前記粘着力は、180゜の角度および300mm/分の剥離速度でテクスチャーアナライザー(Texture analyzer(Stable Micro Systems社)を用いて測定し、本発明の粘着剤層にPI基材を2kgのゴムローラで1回往復して前記粘着剤層に付着させた後、23℃、50RH%下、180゜の角度および300mm/分の剥離速度で剥離して測定した値である。」(【0025】)というものである。
そうすると、甲4に開示された接着力について、甲4には、訂正発明1と、測定方法において、「PI基材に対して接合後」、「50RH%」下、「テクスチャーアナライザー(Texture analyzer(Stable Micro Systems社)を用いて」、「2kgのゴムローラで1回往復して」の条件を用いることが記載されておらず、条件が異なれば接着力の数値も異なるものになるといえるから、甲4は、相違点3に係る訂正発明1の粘着力を示すものとはいえない。
さらに、甲4には、第1ハードコート層、第2ハードコート層、及び10μm以上150μm以下である保護基材を備えたフィルムを前提とする接着力をいうものでもない。
また、甲5には、フレキシブル画像表示装置用粘着層の粘着力が、5N/25mm~40N/25mmであることが記載されている(【0071】)。ここで、5N/25mm~40N/25mmを、gf/inch単位に換算すると、518.01gf/inch(=5×101.97/(25×0.03937))~4144.07gf/inch(=40×101.97/(25×0.03937)となる。
しかしながら、訂正発明1の粘着力である、「粘着剤層の前記保護基材側の面の反対面をPI基材に対して接合後、23℃、50RH%で測定した粘着力は、10gf/inch以上300gf/inch以下」とは大きく異なり、相違点3に係る訂正発明1の粘着力を示唆するものではない。
さらに、甲6には、フレキシブルデバイスに用いる樹脂フィルムと粘着層との接着強度は、0.1N/cm以上であることが記載されている([0078])。ここで、0.1N/cmを、gf/inch単位に換算すると、25.90gf/inch(=0.1×101.97/0.03937)となる。
しかしながら、接着強度を求めるための条件について甲6には記載されておらず、条件が異なれば接着力の数値も異なるものになるといえるから、甲6は、相違点3に係る訂正発明1の粘着力を示すものとはいえない。また、甲6には、フレキシブルデバイスに用いる樹脂フィルムについて記載されるものの保護フィルムというものでもない。
以上のことから、フレキシブルディスプレイに用いられるフィルムの粘着剤層として、粘着剤層の前記保護基材側の面の反対面をPI基材に対して接合後、23℃、50RH%で測定した粘着力は、10gf/inch以上300gf/inch以下であることは、甲4~甲6に記載されておらず、示唆する記載もない。また、甲4~甲6に基づいて周知の技術ともいえない。
そして、相違点3に係る訂正発明1の発明特定事項を備えることにより、訂正発明1は、「本出願の一実施態様に係るフォルダブルディスプレイ用保護フィルムの場合、粘着剤層とPI基材との粘着力を特定範囲の条件に維持して、フォルダブルディスプレイ装置を数回折ったり広げたりを繰り返しても、保護基材と後のフォルダブルディスプレイのカバーウィンドウとの浮き上がり現象が発生しない特徴を有する。」(【0014】)との当業者が予測し得ない格別な作用効果を奏するものである(【0100】【表1】4Rフォールディング評価(1day)で「保持」の評価。)。
よって、甲1発明において、相違点3に係る訂正発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、甲1発明、甲4~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
ウ 訂正発明2、3、5~11について
訂正発明2、3、5~11は、訂正発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イ(イ)で検討したものと同じ理由により、訂正発明2、3、5~11は、甲1発明、甲4~甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
エ 小括
したがって、訂正発明1~3、5~11は、甲1発明、甲4~甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2) 甲2を主引用例とする理由について
ア 甲2に記載された発明
甲2の記載(【0012】、【0017】、【0038】、【0041】、【0069】)から、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「折り畳み式の部材の表面保護フィルムとして使用できるタッチパネル用ハードコートフィルムにおいて、ハードコート層は、基材フィルム側に設けられた第一ハードコート層と、前記第一ハードコート層の前記基材フィルム側と反対側の面上に設けられた第二ハードコート層とを有し、前記基材フィルムは、厚さが10~100μmであり、前記第一ハードコート層の厚さが10.0~40.0μmであり、前記第二ハードコート層の厚さが0.5~15μmである、タッチパネル用ハードコートフイルム。」
イ 訂正発明1について
(ア) 訂正発明1と甲2発明を対比する。
a 甲2発明の「基材フィルム」、「第一ハードコート層」、「第二ハードコート層」は、その機能、構造及び技術的意義を考慮すると、それぞれ、訂正発明1の「保護基材」、「第1ハードコート層」、「第2ハードコート層」に相当する。
そうすると、甲2発明の「前記基材フィルムは、厚さが10~100μmであ」ることは、訂正発明1の「前記保護基材の厚さは、10μm以上150μm以下であ」ることに相当する。
甲2発明の「前記第一ハードコート層の厚さが10.0~40.0μmであり、
前記第二ハードコート層の厚さが0.5~15μmである」ことと、訂正発明1の「前記第1ハードコート層の厚さは、1μm以上10μm以下であり、
前記第2ハードコート層の厚さは、1μm以上10μm以下であ」ることは、
「前記第1ハードコート層の厚さは、10μmであり、前記第2ハードコート層の厚さは、1μm以上10μm以下であ」る限りで一致する。
甲2発明の「ハードコート層は、基材フィルム側に設けられた第一ハードコート層と、前記第一ハードコート層の前記基材フィルム側と反対側の面上に設けられた第二ハードコート層とを有」することと、訂正発明1の「粘着剤層と、
前記粘着剤層の一面に備えられた保護基材と、
前記保護基材の前記粘着剤層側の面の反対面に備えられた第1ハードコート層と
前記粘着剤層と前記保護基材との間に第2ハードコート層と
を含む」ことは、その配置から見て、「保護基材と、
前記保護基材の面に備えられた第1ハードコート層と
第2ハードコート層と
を含む」限りで一致する。
甲2発明の「折り畳み式の部材の表面保護フィルムとして使用できるタッチパネル用ハードコートフィルム」は、訂正発明1の「フォルダブルディスプレイ用保護フィルム」に相当する。
b そうすると、訂正発明1と甲2発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
《一致点2》
「保護基材と、前記保護基材の面に備えられた第1ハードコート層と第2ハードコート層とを含むフォルダブルディスプレイ用保護フィルムであって、前記保護基材の厚さは、10μm以上150μm以下であり、前記第1ハードコート層の厚さは、10μmであり、前記第2ハードコート層の厚さは、1μm以上10μm以下である、フォルダブルディスプレイ用保護フィルム。」
《相違点4》
フォルダブルディスプレイ用保護フィルムについて、訂正発明1は、「粘着剤層と、
前記粘着剤層の一面に備えられた保護基材と、
前記保護基材の前記粘着剤層側の面の反対面に備えられた第1ハードコート層と、
前記粘着剤層と前記保護基材との間に第2ハードコート層と、
を含む」と「粘着剤層」と他の層との配置関係を特定しているのに対して、甲2発明は、粘着剤層について特定はなく、また、粘着剤層と「基材フィルム」、「第一ハードコート層」、「第二ハードコート層」との配置関係についても特定していない点。
《相違点5》
「前記第1ハードコート層の厚さは、10μmであ」ることについて、訂正発明1は、「前記第1ハードコート層の厚さは、1μm以上10μm以下」とされているのに対して、甲2発明は、「前記第一ハードコート層の厚さが10.0~40.0μm」とされている点。
《相違点6》
訂正発明1は、「粘着剤層は、シリコーン系粘着剤を含む」とされ、「前記粘着剤層の前記保護基材側の面の反対面をPI基材に対して接合後、23℃、50RH%で測定した粘着力は、10gf/inch以上300gf/inch以下であ」るとされているのに対して、甲2発明は、そのような特定はなされていない点。
(イ) 事案に鑑み、まず上記相違点6について検討する。
相違点6は、相違点3と同じであり、そうすると(1)イ(イ)で検討したと同様に、甲2発明において、相違点6に係る訂正発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、甲2発明、甲4~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
ウ 訂正発明2、3、5~11について
訂正発明2、3、5~11は、訂正発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(イ)で検討したものと同じ理由により、訂正発明2、3、5~11は、甲2発明、甲3~甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
エ 小括
したがって、訂正発明1~3、5~11は、甲2発明、甲3~甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3) 甲3を主引用例とする理由について
ア 甲3に記載された発明
甲3の記載(【請求項1】、【0040】、【0081】~【0093】)から、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
「光透過性及び導電性を有する、光透過性導電フィルムと、前記光透過性導電フィルムの表面上に積層された、粘着剤層と、前記粘着剤層の前記光透過性導電フィルムとは反対側の表面上に積層された、保護フィルムと、を備え、続きを表示(全14行)前記光透過性導電フィルムが、導電層と、前記導電層の表面上に配置された第1のハードコート層と、前記第1のハードコート層の前記導電層とは反対側の表面上に配置された第1の基材フィルムと、前記第1の基材フィルムの前記第1のハードコート層とは反対側の表面上に配置された第2のハードコート層と、を有し、前記保護フィルムが、前記粘着剤層とは反対側に配置された第2の基材フィルムと、前記第2の基材フィルムの表面上に配置されており、かつ前記粘着剤層側に配置されたオリゴマー防止層と、を有し、前記第1の基材フィルムの厚さは10μm以上100μm以下であり、前記第1のハードコート層の厚みが、0.5μm以上、3.0μm以下であり、前記第2のハードコート層の厚みが、0.5μm以上、3.0μm以下であり、前記オリゴマー防止層の厚みが、0.01μm以上、0.1μm以下であり、前記第1のハードコート層の鉛筆硬度が、5B以上、3B以下であり、前記第2のハードコート層の鉛筆硬度が、5B以上、3B以下であり、前記オリゴマー防止層の鉛筆硬度が、F以上、2H以下であり、前記粘着剤層の周波数1Hz、かつ温度23℃における貯蔵弾性率が、4.0×104Pa以上、2.0×105Pa以下である、光透過性導電フィルム積層体。」
イ 訂正発明1について
(ア) 訂正発明1と甲3発明を対比する。
a 甲3発明の「第1の基材フィルム」、「第1のハードコート層」、「第2のハードコート層」、「粘着剤層」は、その機能、構造及び技術的意義を考慮すると、それぞれ、訂正発明1の「保護基材」、「第1ハードコート層」、「第2ハードコート層」、「粘着剤層」に相当する。
そうすると、甲3発明の「前記第1の基材フィルムの厚さは10μm以上100μm以下であ」ることは、訂正発明1の「前記保護基材の厚さは、10μm以上150μm以下であ」ることに相当する。
甲3発明の「前記第1のハードコート層の厚みが、0.5μm以上、3.0μm以下であり、
前記第2のハードコート層の厚みが、0.5μm以上、3.0μm以下であ」ることと、訂正発明1の「前記第1ハードコート層の厚さは、1μm以上10μm以下であり、
前記第2ハードコート層の厚さは、1μm以上10μm以下であ」ることは、
「前記第1ハードコート層の厚さは、1μm以上、3.0μmであり、前記第2ハードコート層の厚さは、1μm以上10.0μm以下であ」る限りで一致する。
甲3発明の「光透過性及び導電性を有する、光透過性導電フィルムと、
前記光透過性導電フィルムの表面上に積層された、粘着剤層と、
前記粘着剤層の前記光透過性導電フィルムとは反対側の表面上に積層された、保護フィルムと、
を備え、
前記光透過性導電フィルムが、導電層と、前記導電層の表面上に配置された第1のハードコート層と、前記第1のハードコート層の前記導電層とは反対側の表面上に配置された第1の基材フィルムと、前記第1の基材フィルムの前記第1のハードコート層とは反対側の表面上に配置された第2のハードコート層と、を有し」ていることは、各部材の配置から見て、第1の基材フィルムが粘着剤層の一面側に備えられており、他方、訂正発明1の「前記粘着剤層の一面に備えられた保護基材」とは、訂正発明1の各部材の相互の配置から、粘着剤層の一面側に備えられているといえるので、訂正発明1の「 粘着剤層と、
前記粘着剤層の一面に備えられた保護基材と、
前記保護基材の前記粘着剤層側の面の反対面に備えられた第1ハードコート層と
前記粘着剤層と前記保護基材との間に第2ハードコート層と
を含む」ことに相当する。
甲3発明の「光透過性導電フィルム積層体」と、訂正発明1の「フォルダブルディスプレイ用保護フィルム」とは、「フィルム」という限りで一致する。
b そうすると、訂正発明1と甲3発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
《一致点3》
「粘着剤層と、前記粘着剤層の一面に備えられた保護基材と、前記保護基材の前記粘着剤層と接する面の反対面に備えられた第1ハードコート層と前記粘着剤層と前記保護基材との間に第2ハードコート層とを含むフィルムであって、前記保護基材の厚さは、10μm以上150μm以下であり、前記第1ハードコート層の厚さは、1μm以上、3.0μmであり、前記第2ハードコート層の厚さは、1μm以上10.0μm以下である、フィルム。」
《相違点7》
フィルムについて、訂正発明1は、「フォルダブルディスプレイ用保護フィルム」であるのに対して、甲3発明は、「光透過性導電フィルム積層体」である点。
《相違点8》
「前記第1ハードコート層の厚さは、1μm以上、3.0μmであ」ることについて、訂正発明1は、「前記第1ハードコート層の厚さは、1μm以上10μm以下」とされているのに対して、甲3発明は、「前記第一ハードコート層の厚さが0.5μm以上、3.0μm以下」とされている点。
《相違点9》
訂正発明1は、「粘着剤層は、シリコーン系粘着剤を含む」とされ、「前記粘着剤層の前記保護基材と接する面の反対面をPI基材に対して接合後、23℃、50RH%で測定した粘着力は、10gf/inch以上300gf/inch以下である」とされているのに対して、甲3発明は、そのような特定はなされていない点。
(イ) 事案に鑑み、まず上記相違点9について検討する。
相違点9は、相違点3と同じであり、そうすると上記(1)イ(イ)で検討したと同様に、甲3発明において、相違点9に係る訂正発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、訂正発明1は、甲3発明、甲4~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
(ウ) 訂正発明2、3、5~11について
訂正発明2、3、5~11は、訂正発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(イ)で検討したものと同じ理由により、訂正発明2、3、5~11は、甲3発明、甲2、甲4~甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
(エ) 小括
したがって、訂正発明1~3、5~11は、甲3発明、甲2、甲4~甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~3、5~11に係る特許を取り消すことはできない。他に本件請求項1~3、5~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項4に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700175