特許異議申立
2024-701111
反射防止フィルム、偏光板およびディスプレイ装置
- 審判番号
- 2024-701111
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-566248
- 登録番号
- 7486878
- 請求日
- 2024年11月14日
- 審決日
- 2026年01月27日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】エルジー・ケム・リミテッド
- 【権利者代理人】実広 信哉
- 【権利者代理人】渡部 崇
- 【異議申立人】小林 瞳
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 高松 大
- 審判官 関根 洋之
- 分類
- P1651.113-Y (G02B) / P1651.121-Y (G02B) / P1651.536-Y (G02B) / P1651.537-Y (G02B) / P1651.55 -Y (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の3第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7486878号発明「反射防止フィルム、偏光板およびディスプレイ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7486878号の請求項1~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7486878号(以下「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願(特願2020-566248号)は、令和元年10月17日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2018年(平成30年)10月17日 (KR)韓国 2018年(平成30年)10月17日 (KR)韓国 2019年(令和元年)10月17日 (KR)韓国 2019年(令和元年)10月17日 (KR)韓国))を国際出願日とする出願であって、令和6年5月10日にその特許権の設定登録がされ、令和6年5月20日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報発行の日から6月以内である、令和6年11月14日に特許異議申立人 小林 瞳(以下「異議申立人A」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされ、令和6年11月18日に特許異議申立人 藤江 桂子(以下「異議申立人B」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。異議申立人A及び異議申立人Bの特許異議の申立ては、特許法120条の3第1項の規定により、異議2024-701111号事件として併合して審理されることとなった。以下、異議申立人A及び異議申立人Bにより提出された特許異議申立書をそれぞれ「異議申立書A」及び「異議申立書B」という。
第2 本件特許発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~12に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」などといい、また、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される、次のものである。
「 【請求項1】
低透湿性高分子フィルム;ハードコート層;および低屈折層を含み、
前記低屈折層は、光重合性化合物および光反応性官能基を含む含フッ素化合物間の架橋重合体を含むバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂に分散した無機微粒子とを含み、
前記低透湿性高分子フィルムは、一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記低透湿性高分子フィルムは、一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率が2.3以上4.1以下であり、
反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に第1ピークが現れ、24~27°の2θ値に第2ピークが現れ、
前記第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率は0.66以上0.91以下である、反射防止フィルム。
【請求項2】
前記バインダー樹脂は、反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane)をさらに含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記ポリシルセスキオキサンに置換される反応性官能基は、アルコール、アミン、カルボン酸、エポキシド、イミド、(メタ)アクリレート、ニトリル、ノルボルネン、オレフィン、ポリエチレングリコール、チオールおよびビニル基からなる群より選ばれた1種以上の官能基を含む、請求項2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物は、i)1つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも1つの炭素に1以上のフッ素が置換された脂肪族化合物または脂肪族環化合物;ii)1以上の光反応性官能基で置換され、少なくとも1つの水素がフッ素に置換され、1つ以上の炭素がケイ素に置換されたヘテロ(hetero)脂肪族化合物またはヘテロ(hetero)脂肪族環化合物;iii)1つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも1つのシリコンに1以上のフッ素が置換されたポリジアルキルシロキサン系高分子;およびiv)1以上の光反応性官能基で置換され、少なくとも1つの水素がフッ素に置換されたポリエーテル化合物;からなる群より選ばれた1種以上を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記無機微粒子は、0.5~100nmの平均直径を有するソリッド状無機ナノ粒子、および1~200nmの平均直径を有する中空状無機ナノ粒子からなる群より選ばれた1種以上を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記ハードコート層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂、および前記バインダー樹脂に分散した有機または無機微粒子;を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記ハードコート層のバインダー樹脂は、数平均分子量10,000以上の高分子量(共)重合体をさらに含む、請求項6に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
前記低透湿性高分子フィルムは、
波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のリタデーション(Rth)が5,000nm以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
前記反射防止フィルムは、380nm~780nmの波長帯領域における平均反射率が2.0%以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項10】
前記反射防止フィルムは、
平均反射率偏差が0.2%p以下であり、
透光率偏差が0.2%p以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の反射防止フィルムと、偏光子とを含む偏光板。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の反射防止フィルムを含むディスプレイ装置。」
第3 異議申立ての理由の概要及び異議申立人が提出した証拠
1 異議申立人Aの主張の概要及び異議申立人Aが提出した証拠
異議申立人Aが主張する取消しの理由は、概略、以下のとおりである。
(1)特許法29条1項3号(新規性)
本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の優先権主張の日(以下「本件優先日」という)前に、日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない。
(2)特許法29条2項(進歩性)
本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件優先日前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(3)特許法36条4項1号(実施可能要件)
本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件出願の請求項1~12に係る特許を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法36条4項1号の規定を満たしていない。
(4)特許法36条6項1号(サポート要件)
本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法36条6項1号の規定を満たしていない。
(5)異議申立人Aが提出した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特表2018-525667号公報(以下「甲A1」という。)
甲第2号証:発明推進協会公開技報公技番号2013-501898号(以下「甲A2」という。)
甲第3号証:再公表特許2011/162198号(以下「甲A3」という。)
甲第4号証の1:松本喜代一 他2名,「ポリエチレンテレフタレート乾熱法 二軸延伸フィルムの結晶配向挙動」,SEN-I GAKKAISHI,繊維学会,1972年,Vol.28,No.6,189~196頁(以下「甲A4-1」という。)
甲第4号証の2:Tomohiro Sago, et.al.,"Onset of Forming Ordering in Uniasially Stretched Poly(ethylen terephthalate) Films Due to π-π Interaction Clarified by the Fluoresecnce Technique", Macromolecules(米),2014,47,p217-226(以下「甲A4-2」という。)
甲第4号証の3:岡田一幸 他5名,「延伸ロールを用いた一軸延伸ポリエチレンテレフタラートフィルムの配向構造」,高分子論文集,2014年,Vol.71,No.11,593~600頁(以下「甲A4-3」という。)
甲第4号証の4:桜田一郎 他3名,「高分子の結晶領域における分子鎖軸に対し直角方向の弾性率の測定」,高分子化学,高分子学会,1969年,第26巻,第296号,823~832頁(以下「甲A4-4」という。)
甲第5号証:Encyclopedia of Membranes,2016,Volume3,p.2039-2040(以下「甲A5」という。)
(当合議体注:甲A1は、主引用例であり、甲A2~甲A5は、副引用例、周知技術又は技術常識を示す文献である。)
2 異議申立人Bの主張の概要及び異議申立人Bが提出した証拠
異議申立人Bが主張する取消しの理由は、概略、以下のとおりである。
(1)特許法第17条の2第3項(同法184条の12第2項参照 新規事項追加)
請求項1について令和4年11月4日に提出した手続補正書でした補正は、国際特許出願の翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものであるということができない。
(2)特許法29条1項3号(新規性)
本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件優先日前に、日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない。
(3)特許法29条2項(進歩性)
本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件優先日前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(4)特許法36条6項2号(明確性要件)
本件特許の請求項1~12に係る発明は、明確でないから、特許法36条6項2号の規定を満たしていない。
(5)特許法36条4項1号(実施可能要件)
本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件出願の請求項1~12に係る特許を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法36条4項1号の規定を満たしていない。
(6)異議申立人Bが提出した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特表2018-525667号公報(異議申立人Bが提出した甲第1号証は、甲A1と同一であり、以下、同じく「甲A1」という。)
甲第2号証:坂口亘弘 他3名,「ポリエチレンテレフタレート皮膜の延伸にともなう微結晶および非晶鎖セグメントの配向評価」,SEN-I GAKKAISHI(繊維学会誌),繊維学会,1977年,Vol.33,No.10,T-499~T-508頁(以下「甲B2」という。)
甲第3号証:桜田一郎 他3名,「高分子の結晶領域における分子鎖軸に対し直角方向の弾性率の測定」,高分子化学,高分子学会,1969年,第26巻,第296号,823~832頁(異議申立人Bが提出した甲第3号証は、甲A4-4と同一であり、以下、同じく「甲A4-4」という。)
甲第4の1号証:鈴木利武 他1名,「フラットパネルディスプレイ用フィルム材料の最新動向 -偏光板用ポリエステルフィルムを中心に-」,映像情報メディア学会技術報告,映像情報メディア学会,2016年,Vol.40,No.13,1~5頁(以下「甲B4-1」という。)
甲第4の2号証:「コスモシャインSRF(R)」,[online],東洋紡株式会社,[2024年11月14日検索],インターネット<URL:https://www.toyobo.co.jp/products/ind_film/optics/cosmoshine_srf/index.html>(「(R)」は、Rに○を代用した。以下「甲B4-2」という。)
甲第5号証:実用プラスチック成形加工事典編集委員会 編集,「実用プラスチック成形加工事典」,株式会社産業調査会 事典出版センター,1997年3月24日,374~388頁(以下「甲B5」という。)
甲第6号証:「レターデーションと複屈折」、[online]、王子計測株式会社、[2024年11月10日検索]、インターネット<URL:https://oji-keisoku.co.jp/cms/uploads/kobra_tech.pdf>(以下「甲B6」という。)
甲第7号証:多加谷明広,「プラスチック成形加工技術者のための光学講座」,成形加工,プラスチック成形加工学会,2016年,第28巻,第6号,228~231頁(以下「甲B7」という。)
甲第8号証:宮坂啓象,「高分子フィルムの微細構造と物性」,SEN-I GAKKAISHI,繊維学会,1985年,Vol.41,No.9,P-285~P-289頁(以下「甲B8」という。)
(当合議体注:甲A1は、主引用例であり、甲B2、甲A4-4及び甲B4~甲B8は、副引用例、周知技術又は技術常識を示す文献である。)
第4 当合議体の判断
1 特許法第17条の2第3項(新規事項追加)について
(1)用語の定義
国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)を以下「翻訳文等」という。
(2)補正した事項
令和4年11月4日に提出された手続補正書でした補正は、補正前の請求項1における「反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に第1ピークが現れ、24~27°の2θ値に第2ピークが現れ、前記第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率は0.4以上である」とあるのを、「反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に第1ピークが現れ、24~27°の2θ値に第2ピークが現れ、前記第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率は0.66以上0.91以下である」とする補正を含むものである(下線は、当合議体が付与した。)。
上記補正により、補正前の請求項1に係る比率を、0.4以上から補正後の0.66以上0.91以下であると限定するものである。
(3)翻訳文等の記載
翻訳文等の明細書の【0143】の【表3】は、以下のとおりである。
[図:0001433064000001.jpg]
上記表3より、補正後の請求項1に係る比率について、「0.66」、「0.71」、「0.63」、「0.59」及び「0.91」が記載されているとおり、補正後の請求項1に係る比率の上限である「0.91」が記載されている。
(4)新規事項についての判断
上記(3)の表3の記載より、補正後の請求項1に係る比率を0.66以上0.91以下とすることは、翻訳文等に記載されていたものと評価でき、新たな技術的事項を導入するものではない。
(5)異議申立人Bの主張
異議申立人Bは、異議申立書Bの15頁において「図1は、実施例1の反射防止フィルムに対するX線回折(XRD)パターンであるから、図1は、実施例1の「0.66」というピーク強度比率がP1/P2であることを示すにとどまる。国際特許出願の翻訳文等には、P1/P2が0.91である発明が記載されていることができないから、令和4年11月4日付け手続補正書でした補正は国際特許出願の翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものであるということができない。」と主張している。
しかしながら、実施例1以外の反射防止フィルムに対するX線回折(XRD)パターンが図示されていなくても、上記(4)で述べたとおり、翻訳文等の明細書の【0143】の【表3】には、補正後の請求項1に係る比率が「0.91」であることが記載されている。
したがって、異議申立人Bの上記主張は、採用できない。
(6)小括
以上のことから、令和4年11月4日に提出された手続補正書でした補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
2 特許法29条1項3号(新規性)及び特許法29条2項(進歩性)について
(1)甲号証の記載事項並びに甲号証に記載された発明及び技術事項
ア 甲A1の記載及び引用発明
甲A1には、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付与したものであり、引用発明の認定や判断に用いた箇所を示す(以下同様である。)。
(ア)
「【0002】
本発明は、反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、PDP、LCDなどの平板ディスプレイ装置には、外部から入射する光の反射を最小化するための反射防止フィルムが装着される。
【0004】
光の反射を最小化するための方法としては、樹脂に無機微粒子などのフィラーを分散させて基材フィルム上にコーティングし、凹凸を付与する方法(anti-glare:AGコーティング);基材フィルム上に屈折率の異なる多数の層を形成させて光の干渉を利用する方法(anti-reflection:ARコーティング)、またはこれらを混用する方法などがある。
【0005】
そのうち、前記AGコーティングの場合、反射する光の絶対量は、一般的なハードコーティングと同等の水準であるが、凹凸を通した光の散乱を利用して目に入る光の量を低減することによって低反射効果を得ることができる。しかし、前記AGコーティングは表面の凹凸によって画面の鮮明度が落ちるため、最近はARコーティングに対する多くの研究がなされている。
【0006】
一方、ディスプレイ装置に必須として備えられる偏光板の保護フィルムとしては、セルロースフィルムが主に使用されている。しかし、セルロースフィルムは高価であり、最近のディスプレイ装置の薄型化傾向に伴って薄い厚さに製造される場合、機械的強度および耐水性が劣化して光漏れ現象が発生するなどの問題を示している。そして、安価で薄い厚さに製造される場合でも優れた機械的強度および耐水性を示すと知られているポリエステルフィルムは複屈折性を有し、偏光板保護フィルムに使用する場合、光学的歪みによって画質が低下する問題を示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、外部に入射する光の反射による眩しさ現象を著しく改善できる低屈折層と複屈折性を有する一方で、光学的歪みによる干渉縞が発生しない基材フィルムを含む反射防止フィルムを提供する。」
(イ)
「【0009】
発明の一実施例によれば、3,000~30,000nmの面内位相差値(Rin)を有し、厚さ方向の位相差値(Rth)に対する面内位相差値(Rin)の比(Rin/Rth)が0.2~1.2であるポリエステルフィルム;および前記ポリエステルフィルム上に位置し、光重合性化合物、無機粒子、および反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンを含む光硬化性コーティング組成物の架橋重合物である低屈折層を含む反射防止フィルムが提供される。」
(ウ)
「【0011】
そこで、前記一実施例による反射防止フィルムは、基材フィルムとしてポリエステルフィルムを含むものの、位相差値が特定範囲に調節されたポリエステルフィルムを含むことで干渉縞などの発生を効果的に抑制した。
【0012】
具体的には、前記ポリエステルフィルムの面内位相差値(Rin)は、3,000~30,000nm内の範囲に調節される。より具体的には、前記面内位相差値(Rin)の下限は4,500nm以上、5,000nm以上、6,000nm以上、あるいは7,000nm以上に調節され、上限は30,000nm以下に調節される。この範囲内で干渉縞の発生を効果的に抑制し、適切な厚さに形成されて取り扱いの容易性を確保することができ、さらに薄型の偏光板および/またはディスプレイ装置を提供することができる。
【0013】
前記面内位相差値(Rin)は、ポリエステルフィルムの面内に直交する二軸の屈折率(nx、ny)とポリエステルフィルムの厚さ(d)を測定して、|nx-ny|×dに代入することにより算出される値である。前記ポリエステルフィルムの屈折率と厚さは、本発明の属する技術分野で知られている多様な方法により測定され、詳細な測定方法は、後述する試験例に記載された方法を参照すればよい。もちろん、前記面内位相差値(Rin)は、市販の自動複屈折測定装置によっても確認することができる。
【0014】
また、前記ポリエステルフィルムは、十分な機械的強度および耐水性を維持しながら干渉縞を示さないために、厚さ方向の位相差値(Rth)に対する面内位相差値(Rin)の比(Rin/Rth)が0.2~1.2の範囲を有する。前記厚さ方向の位相差値(Rth)に対する面内位相差値(Rin)の比(Rin/Rth)が大きいほど、ポリエステルフィルムの等方性を増大させて干渉縞の発生が著しく改善できる。しかし、厚さ方向の位相差値(Rth)に対する面内位相差値(Rin)の比(Rin/Rth)が2.0となる完全な一軸性フィルムの場合には、配向方向と直交する方向の機械的強度が低下する問題がある。これにより、厚さ方向の位相差値(Rth)に対する面内位相差値(Rin)の比(Rin/Rth)を上述した範囲に調節して、十分な機械的強度および耐水性を示しつつ、干渉縞が発生しないようにすることができる。」
(エ)
「【0017】
前記特定の位相差値を有するポリエステルフィルムの厚さは、15~300μmの範囲内で適切に調節される。この範囲内で前記反射防止フィルムが十分な機械的強度および耐水性を示しつつ、取り扱いの容易性を有し、さらに薄型の偏光板および/またはディスプレイ装置を提供することができる。
【0018】
前記特定の位相差値を有するポリエステルフィルム上には、光重合性化合物、無機粒子、および反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンを含む光硬化性コーティング組成物の架橋重合物である低屈折層が存在する。本明細書において、低屈折層という用語は、低い屈折率を有する層を意味することができ、例えば、約1.2~1.6の屈折率を示す層を意味することができる。以下、前記光硬化性コーティング組成物と前記光硬化性コーティング組成物により低屈折層を形成する方法について詳細に説明する。」
(オ)
「【0023】
前記光硬化性コーティング組成物には反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane)が含まれて、低い反射率および高い透光率を実現し、耐アルカリ性を向上させると同時に、優れた耐摩耗性または耐スクラッチ性を確保可能な低屈折層を提供することができる。
【0024】
このような反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンは、前記光重合性化合物100重量部対比、0.5~30重量部、1~30重量部、または2~27重量部で含まれる。
【0025】
万一、前記反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンの含有量が上述した範囲未満であれば、前記光硬化性コーティング組成物の光硬化時に形成される塗膜や高分子樹脂の耐アルカリ性や耐スクラッチ性を十分に確保しにくいことがある。反面、前記反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンの含有量が上述した範囲を超えると、前記光硬化性コーティング組成物から製造される低屈折層の透明度が低下し、耐スクラッチ性がむしろ低下することがある。
【0026】
前記ポリシルセスキオキサンに置換可能な反応性官能基は、アルコール、アミン、カルボン酸、エポキシド、イミド、(メタ)アクリレート、ニトリル、ノルボルネン、オレフィン[アリル(ally)、シクロアルケニル(cycloalkenyl)、またはビニルジメチルシリルなど]、ポリエチレングリコール、チオール、およびビニル基からなる群より選択された1種以上の官能基を含むことができ、好ましくは、エポキシドまたは(メタ)アクリレートを含むことができる。」
(カ)
【0036】
一方、前記光硬化性コーティング組成物は、光反応性官能基を含むフッ素系化合物をさらに含んでもよい。本明細書において、光反応性官能基を含むフッ素系化合物は、2,000g/mol以上の重量平均分子量を有し、フッ素で置換された化合物を意味し、このような化合物は、上述した光重合性化合物の定義に含まれないと規定する。
【0037】
前記光反応性官能基を含むフッ素系化合物が含まれることによって、前記光硬化性コーティング組成物から製造される低屈折層は、光重合性化合物、反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン、および光反応性官能基を含むフッ素系化合物の間の架橋重合体を含む高分子樹脂と、これに分散した無機粒子とを含む。このような低屈折層を含む反射防止フィルムは、より低い反射率および向上した透光率を有し、同時により向上した耐アルカリ性および耐スクラッチ性を示すことができる。
【0038】
前記フッ素系化合物には1以上の光反応性官能基が導入されており、前記光反応性官能基は、光の照射によって、例えば、可視光線または紫外線の照射によって重合反応に参加可能な官能基を意味する。前記光反応性官能基は、光の照射によって重合反応に参加可能と知られた多様な官能基を含むことができ、その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、ビニル(vinyl)基、またはメルカプト(merapto)基などが挙げられる。前記1以上の光反応性官能基は、挙げられた官能基のうちのいずれか1つであるか、あるいは挙げられた官能基の中から選択された2種以上から構成される。」
(キ)
「【0042】
具体的には、前記光反応性官能基を含むフッ素系化合物は、i)1以上の光反応性官能基で置換され、少なくとも1つの水素がフッ素に置換された脂肪族化合物または脂肪族環化合物;ii)前記脂肪族化合物または脂肪族環化合物の1つ以上の炭素がケイ素に置換されたシリコン系化合物;iii)前記脂肪族化合物または脂肪族環化合物の1つ以上の炭素がケイ素に置換され、1つ以上の-CH2-が酸素に置換されたシロキサン系化合物;iv)前記脂肪族化合物または脂肪族環化合物の1つ以上の-CH2-が酸素に置換されたフルオロポリエーテル;またはこれらの2種以上の混合物であるか、共重合体であってもよい。
【0043】
前記光硬化性コーティング組成物は、前記光重合性化合物100重量部に対して、1~75重量部の光反応性官能基を含むフッ素系化合物を含むことができる。前記光重合性化合物対比、前記光反応性官能基を含むフッ素系化合物が過剰に添加される場合、前記光硬化性コーティング組成物のコーティング性が低下したり、前記光硬化性コーティング組成物から得られた低屈折層が十分な耐久性や耐スクラッチ性を有さないことがある。また、前記光重合性化合物対比、前記光反応性官能基を含むフッ素系化合物の量が少なすぎると、前記光硬化性コーティング組成物から得られた低屈折層が十分な耐アルカリ性を有さないことがある。
【0044】
一方、前記光硬化性コーティング組成物は、数から数百ナノメートル単位の直径を有する無機粒子を含む。
【0045】
具体的には、前記無機粒子は、10~100nmの数平均粒径を有する中空シリカ粒子(silica hollow particle)を含むことができる。前記中空シリカ粒子は、ケイ素化合物または有機ケイ素化合物から導出されるシリカ粒子であって、粒子の表面および/または内部に空き空間が存在するシリカ粒子を意味する。前記中空シリカ粒子は、中実粒子に比べて低い屈折率を有し、優れた反射防止特性を示すことができる。
【0046】
前記中空シリカ粒子は、数平均粒径が10~100nm、20~70nm、あるいは30~70nmであってもよいし、粒子の形状は、球状であることが好ましいが、不定形でも構わない。
【0047】
また、前記中空シリカ粒子としては、表面に光反応性官能基が置換された中空シリカ粒子、表面が含フッ素化合物でコーティングされた中空シリカ粒子、および表面未処理の中空シリカ粒子(表面に光反応性官能基が置換されず、表面が含フッ素化合物でコーティングされない中空シリカ粒子)からなる群より選択された粒子を単独で使用したり、あるいは2以上の粒子を混合して使用したり、あるいは2以上の粒子を反応させた反応物を使用することができる。前記光反応性官能基は、(メタ)アクリレート基、ビニル基、ヒドロキシ基、アミン基、アリル(allyl)基、エポキシド基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、アミン基、およびチオール(thiol)基などであってもよい。前記中空シリカ粒子の表面を含フッ素化合物でコーティングすると、表面エネルギーをより低下させることができて、前記光硬化性コーティング組成物内で前記中空シリカ粒子がより均一に分布することができる。これにより、このような中空シリカ粒子を含む光硬化性コーティング組成物から得られるフィルムは、より向上した耐久性や耐スクラッチ性を示すことができる。」
(ク)
「【0063】
前記のように光硬化性コーティング組成物から製造された低屈折層は、光重合性化合物および反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンと、必要に応じて含まれる光反応性官能基を含むフッ素系化合物の間の架橋重合体を含む高分子樹脂と、前記高分子樹脂に分散した無機粒子とを含むことができる。」
(ケ)
「【0066】
一方、前記一実施例による反射防止フィルムにおいて、特定の位相差値を有するポリエステルフィルムと低屈折層との間にはハードコート層が介在していてよい。このようなハードコート層は、眩しさ防止機能、キズ防止機能、帯電防止機能、あるいはこれらのうちの2以上の複合機能を実現することができる。
【0067】
一例として、前記ハードコート層は、光硬化性樹脂および重量平均分子量が10,000g/mol以上の(共)重合体(以下、高分子量(共)重合体という)を含むバインダー樹脂;および前記バインダー樹脂に分散した有機または無機微粒子を含むことができる。本明細書において、(共)重合体は、共重合体(co-polymer)および単独重合体(homo-polymer)の両方ともを含む意味である。」
(コ)
「【実施例】
【0088】
以下、発明の具体的な実施例を通じて発明の作用、効果をより具体的に説明する。ただし、これは発明の例として提示されたものであり、これによって発明の権利範囲がいかなる意味でも限定されるものではない。
【0089】
実施例1~4および比較例1~4:反射防止フィルムの製造
【0090】
下記表1に記載されている基材フィルムとハードコート組成物および光硬化性コーティング組成物を用いて、次のような方法で反射防止フィルムを製造した。
【0091】
具体的には、基材フィルムにハードコート組成物を#10mayer barでコーティングし、90℃で1分間乾燥した後、150mJ/cm2の紫外線を照射して、5μmの厚さを有するハードコート層(帯電防止ハードコート層または防眩性ハードコート層)を形成した。
【0092】
そして、前記ハードコート層に光硬化性コーティング組成物を#3mayer barでコーティングし、60℃で1分間乾燥した。そして、窒素パージング下、前記乾燥物に180mJ/cm2の紫外線を照射して、110nmの厚さを有する低屈折層を形成することによって、反射防止フィルムを製造した。
【表1】
[図:0001433064000002.jpg]
【0093】
前記表1で、各基材フィルムの製造会社、位相差および透湿度のような物性は、下記表2に記載されている。HD1は、KYOEISHA社の塩タイプの帯電防止ハードコート液(固形分50重量%、製品名:LJD-1000)である。
【0094】
HD2は、ペンタエリスリトールトリアクリレート(分子量:298g/mol)13g、ウレタンアクリレートオリゴマー(306I、Kyoeish社)10g、ウレタンアクリレートオリゴマー(306T、Kyoeish社)10g、溶媒としてイソプロピルアルコール20g、光開始剤(Irgacure184、Ciba社)2g、レベリング剤(Tego glide410)0.5gを均一に混合して製造した組成物に、平均粒径が3μm、屈折率が1.555の球状の有機微粒子であるアクリル-スチレン共重合体(Techpolymer、Sekisui Plastic社)2.3gと、体積平均粒径12nmのナノシリカ分散液(MA-ST、Nissan Chemical社)0.01gを添加して製造した目眩しさ防止ハードコート組成物である。LR1、LR2およびLR3の具体的な成分および組成は、下記表3に記載されている。LR1、LR2およびLR3は、下記表3に記載された成分を記載された組成で混合し、MIBK(methyl isobutyl ketone)およびPGME(propylene glycol monomethyl ether)を1:1の重量比率で混合した溶媒に、固形分が3重量%となるように希釈して使用した。
【表2】
[図:0001433064000003.jpg]
【0095】
(1)前記基材フィルムの厚さは、Mitutoyo社のID-C112XBSを用いて測定された。
【0096】
(2)OTSUKA ELECTRONICS社のRETS-100により前記基材フィルムの面内位相差値(Rin=|nx-ny|×d)と厚さ方向の位相差値(Rth=[(nx+ny)/2-nz]d)を測定した。ただし、トリアセチルセルロースフィルム(FUJI社のUZ TAC)の位相差値は、Axo Metrics社のAxoScanにより測定された。そして、面内位相差値(Rin)を厚さ方向の位相差値(Rth)で割ってRin/Rthを求めた。
【0097】
(3)前記基材フィルムの透湿度(water vapor transmission rate、WVTS)を、Labthink社のwater vapor permeability testerのTSY-T3を用いて、40℃の温度および90%の相対湿度下で測定した。透湿度(WVTS)は、厚さが増加するほど減少するので、厚さ100μmあたりの透湿度を透水性(permeability)と定義し、透水性(permeability)を「厚さ(単位:μm)×透湿度/100」の式で求めて、表2に示した。
【表3】
[図:0001433064000004.jpg]
(単位:g)
【0098】
1)中空シリカ分散液:数平均直径が50nmの中空シリカ粒子がメチルイソブチルケトンに固形分20重量%で分散したTHRULYA4320(触媒化成製品)
【0099】
2)ポリシルセスキオキサン:Hybrid Plastics社のMA0701
【0100】
3)光反応性官能基を含むフッ素系化合物:光反応性官能基を含み、ケイ素を微量含むフッ素系化合物であって、メチルイソブチルケトンに30重量%に希釈したDIC社のRS537
【0101】
4)光開始剤:Ciba社のIrgacure-127
【0102】
試験例:反射防止フィルムの物性の測定
【0103】
1.平均反射率の測定
実施例および比較例で製造した反射防止フィルムの平均反射率を、SolidSpec3700(SHIMADZU)を用いて測定した。
【0104】
具体的には、基材フィルムのハードコート層が形成されていない面に光が透過しないように黒いテープを貼り付け、sampling interval 1nm、time constant 0.1sec、slit width20nm、medium scanning speedで測定条件を固定した後、常温で、前記反射防止フィルムの低屈折層に380nm~780nmの波長領域の光を照射した。
【0105】
ハードコート組成物としてHD2を用いた場合に100%Tモードを適用し、ハードコート組成物としてHD1を用いた場合にはMeasureモードを適用して、380nm~780nmの波長領域における反射率を測定した。そして、その結果を表4に記載した。
【0106】
2.耐スクラッチ性の測定
実施例および比較例で得られた反射防止フィルムの表面を#0000等級のスチールウールに荷重をかけて、24rpmの速度で10回往復しながら擦った。前記スチールウールにかかる荷重を増加させながらLED50Wの天井照明の下で肉眼観察した時、スクラッチの発生しない最大荷重を測定した。前記荷重は、横2cm、縦2cmの面積(2×2cm2)あたりの重量(g)で定義される。
【0107】
3.干渉縞発生有無の評価
実施例および比較例により製造した反射防止フィルムを用いて、基材フィルムのハードコート層が形成されていない面にブラックPETフィルムを貼り付け、肉眼で干渉縞が観察されるか否かを評価した。評価結果、反射防止フィルムにおいて干渉縞が観察されない
場合には、下記表4に「良好」と記し、干渉縞が明確に観察される場合には「ひどい」と記した。
【0108】
4.透湿度および透水性評価
実施例および比較例により製造した反射防止フィルムの透湿度(water vapor transmission rate、WVTS)を、Labthink社のwater vapor permeability testerのTSY-T3を用いて40℃の温度下で測定した。この時、前記反射防止フィルムの基材フィルム面は100%の相対湿度下に置かれ、低屈折層面は10%の相対湿度下に置かれるように、反射防止フィルムをローディングした。透湿度(WVTS)は厚さが増加するほど減少するので、厚さ100μmあたりの透湿度を透水性(permeability)と定義し、透水性(permeability)を「厚さ(単位:μm)×透湿度/100」の式で求めて、表4に示した。ここで、反射防止フィルムの厚さは、基材フィルムの厚さを測定する方法と同様の方法で測定した。
【表4】
[図:0001433064000005.jpg]
【0109】
前記表4を参照すれば、本発明の一実施例による反射防止フィルムは、優れた低反射率および耐スクラッチ性を示しつつ、干渉縞がほとんど発見されない一方で、優れた耐水性も示すことが確認される。これに対し、比較例1および2のように、位相差が特定範囲に調節されない光学異方性基材フィルムを用いる場合、干渉縞がひどく発生してディスプレイの反射防止フィルムとして不適であることが確認され、比較例3のように既存のセルロース基材フィルムを用いる場合、耐水性が劣化してディスプレイの寿命を短縮させる恐れがあることが確認される。また、比較例3のように基材フィルムとして位相差が特定範囲に調節された光学異方性基材フィルムを使用しても、本発明の一実施例による低屈折層を含まない場合、優れた耐スクラッチ性を確保できないことが確認される。」
(サ)甲1発明
甲A1には、実施例1として記載された「反射防止フィルム」である次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「 基材フィルムにハードコート組成物を#10mayer barでコーティングし、90℃で1分間乾燥した後、150mJ/cm2の紫外線を照射して、5μmの厚さを有するハードコート層を形成し、
ハードコート層に光硬化性コーティング組成物を#3mayer barでコーティングし、60℃で1分間乾燥し、窒素パージング下、乾燥物に180mJ/cm2の紫外線を照射して、110nmの厚さを有する低屈折層を形成することによって製造した、
平均反射率が~1.5%である、
反射防止フィルム。
<基材フィルム>
厚さ80μm、面内位相差値8400nm、厚さ方向の位相差値9200nm、温度40℃及び相対湿度90%で測定した透湿度6.38g/m2*dayであるTOYOBO社の「TA015」。
<ハードコート組成物>
固形分が50重量%で塩タイプの帯電防止ハードコート液である、KYOEISHA社の「LJD-1000」。
<光硬化性コーティング組成物>
中空シリカ分散液250g、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート37g、ポリシルセスキオキサン3g、光反応性官能基を含むフッ素系化合物13.3g、光開始剤6gを混合し、MIBK及びPGMEを1:1の重量比率で混合した溶媒で希釈した固形分が3重量%の希釈液。
<中空シリカ分散液>
数平均直径が50nmの中空シリカ粒子がメチルイソブチルケトンに固形分20重量%で分散した触媒化成の「THRULYA4320」。
<ポリシルセスキオキサン>
Hybrid Plastics社の「MA0701」。
<光反応性官能基を含むフッ素系化合物>
光反応性官能基を含み、ケイ素を微量含むフッ素系化合物であって、メチルイソブチルケトンに30重量%に希釈したDIC社の「RS537」。
<光開始剤>
Ciba社の「Irgacure-127」。
<平均反射率の測定方法>
基材フィルムのハードコート層が形成されていない面に光が透過しないように黒いテープを貼り付け、SolidSpec3700(SHIMADZU)を用いて、sampling interval 1nm、time constant 0.1sec、slit width20nm、medium scanning speedで測定条件を固定した後、常温で、前記反射防止フィルムの低屈折層に380nm~780nmの波長領域の光を照射しMeasureモードを適用して、380~780nmの波長領域における反射率を測定した。」
イ 甲A2の記載
甲A2には、以下の記載がある。なお、枠は異議申立人Aが付与した(以下同様である。)。
(ア)2葉の1行~7行
[図:0001433064000006.jpg]
(イ)3葉の7行~最下行
[図:0001433064000007.jpg]
(ウ)5葉の表1
[図:0001433064000008.jpg]
ウ 甲A4-1の記載事項及び甲A4-1に記載された技術事項
(ア)甲A4-1の記載
甲A4-1には、以下の記載がある。なお、日本語訳は当合議体で作成したものである。(以下同様。)
a 12頁の表1
[図:0001433064000009.jpg]
b 16頁の図6
[図:0001433064000010.jpg]
仮訳「図6。熱雰囲気下で延伸されたPETフィルムのX線回折強度曲線であり、(a)φ=0°、(b)φ=90°。実線は自由端(MD×TD=4.0×1’)での一軸延伸、一点鎖線は一定幅(4.0×1.0)での一軸延伸、破線は逐次二軸延伸(4.0×4.0)、点線は同時二軸延伸(4.0×4.0)」
c 甲A4-1に記載された技術事項
一軸延伸のPETフィルムの広角X線回折について、24~27°の2θ値のピーク値(P2)に対する22~24°の2θ値のピーク値(P1)の比率が、PETフィルムの延伸倍率、拘束の有無などの延伸条件によって異なること。
(イ)甲A4-2の記載
甲A4-2には、以下の記載がある。
a 222頁の図8
[図:0001433064000011.jpg]
仮訳「図8 64℃(λ=4倍)で延伸され、その後24時間異なる温度140~200℃で熱処理されたPETフィルムの広角X線回折パターン。2次元像(上図)の点線は最初の層の線を示している。」
b 甲A4-2に記載された技術事項
一軸延伸のPETフィルムの広角X線回折について、24~27°の2θ値のピーク値(P2)に対する22~24°の2θ値のピーク値(P1)の比率が、PETフィルムの延伸の後の処理温度によって異なること。
(ウ)甲A4-3の記載事項及び甲A4-3に記載された技術事項
甲A4-3には、以下の記載がある。
a 595頁の図3
[図:0001433064000012.jpg]
b 甲A4-3から把握される技術常識
一軸延伸のPETフィルムの広角X線回折について、24~27°の2θ値のピーク値(P2)に対する22~24°の2θ値のピーク値(P1)の比率が、PETフィルムの延伸倍率、延伸温度によって異なること
(エ)甲A4-1~甲A4-3から把握される技術常識
上記(ア)~(ウ)を総合すると、
一軸延伸のPETフィルムの広角X線回折について、24~27°の2θ値のピーク値(P2)に対する22~24°の2θ値のピーク値(P1)の比率が、PETフィルムの延伸倍率、拘束の有無、延伸の後の処理温度、延伸温度によって異なること。
エ 甲A5の記載
甲A5には、以下の記載がある。
2040頁の図1
[図:0001433064000013.jpg]
仮訳「広角X線回折パターン
図1 半結晶又はアモルファスポリエチレンテレフタレート(PET)の広角X線回折曲線。結晶、アモルファス、装置のバックグラウンド(ラボラトリーゴニオメータフィリップスPW1078、対称反射ジオメトリ)(この図はStribeck(2007)図8.2、102頁により得られた。)」
オ 甲B2の記載
甲B2には、以下の記載がある。
a T-501頁の図1
[図:0001433064000014.jpg]
b 図1の説明
「(Upper) Schematic diagrams illustrating the X-ray diffraction intensity distributions from semicrystalline and amorphous poly (ethylene terephthalates). The dotted line shows contribution of amorphous scattering, which is drawn in proportion to the scattering intensity distribution of the amorphous PET.
(Lower) Crystalline diffraction intensity distribution separated from the total diffraction of the semicrystalline PET by subtracting the amorphous contribution. The dotted peaks show crystalline diffractions from respective crystal planes further separated by means of a proposed trial and error method.」
仮訳「(上)半結晶性および非晶性ポリエチレンテレフタレートのX線回折強度分布を示す概略図。点線は非晶性散乱の寄与を示しており、非晶性PETの散乱強度分布に比例して描かれている。
(下)非晶性PETの全回折から非晶性の寄与を差し引くことで分離した結晶性回折強度分布。点線は、提唱する試行錯誤的な方法でさらに分離したそれぞれの結晶面からの結晶性回折を示す。」
c T-502頁
「 Fig.1下半の点線で示される結果は半試行錯誤法による各結晶面からの回析強度の分離の一例であり,各分離強度の和は実線で示される未分離強度に充分近く,満足すべきものである。」
カ 甲B4-1の記載
a 甲B4-1の記載
甲B4-1には、以下の記載がある。
(a)3頁の左欄1行~15行
[図:0001433064000015.jpg]
(b)3頁右欄1行~8行
[図:0001433064000016.jpg]
(c)3頁右欄下から4行~最下行
[図:0001433064000017.jpg]
(d)4頁左欄TableII
[図:0001433064000018.jpg]
キ 甲B4-2の記載
甲B4-2には、以下の記載がある。
1葉の「仕様・性能」の「破断強度の欄」
[図:0001433064000019.jpg]
ク 甲B5の記載
甲B5には、以下の記載がある。
379頁右欄下から2行~380頁左欄6行
「
[図:0001433064000020.jpg]
[図:0001433064000021.jpg]
[図:0001433064000022.jpg]
」
ケ 甲B6の記載
32頁の右上の表
[図:0001433064000023.jpg]
コ 甲B7の記載
228頁の図1
[図:0001433064000024.jpg]
サ 甲B8の記載
1頁左欄13行~18行
「
[図:0001433064000025.jpg]
」
(2)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、以下のとおりとなる。
(ア)「基材フィルム」、「ハードコート層」、「低屈折層」及び「反射防止フィルム」
甲1発明は、「基材フィルムにハードコート組成物を#10mayer barでコーティングし、90℃で1分間乾燥した後、150mJ/cm2の紫外線を照射して、5μmの厚さを有するハードコート層を形成し」、「ハードコート層に光硬化性コーティング組成物を#3mayer barでコーティングし、60℃で1分間乾燥し」、「窒素パージング下、乾燥物に180mJ/cm2の紫外線を照射して、110nmの厚さを有する低屈折層を形成することによって製造した」、「反射防止フィルム」である。また、甲1発明の「基材フィルム」は、「厚さ80μm、面内位相差値8400nm、厚さ方向の位相差値9200nm、温度40℃及び相対湿度90%で測定した透湿度6.38g/m2*dayであるTOYOBO社の「TA015」」である。
ここで、「透湿度6.38g/m2*day」という値は、本件特許明細書【0098】の「低透湿性高分子フィルムは、30~40℃の温度および90~100%相対湿度の条件で透湿率が50g/m2・day以下、30g/m2・day以下、20g/m2・day以下または15g/m2・day以下であってもよい」との記載からみて、フィルムとして、低透湿性といえる程度の低さである。
そうしてみると、甲1発明の「基材フィルム」、「ハードコート層」、「低屈折層」及び「反射防止フィルム」は、それぞれ、本件特許発明1の「低透湿性高分子フィルム」、「ハードコート層」、「低屈折層」及び「反射防止フィルム」に相当する。また、甲1発明の「反射防止フィルム」は、本件特許発明1の「反射防止フィルム」における、「低透湿性高分子フィルム;ハードコート層;および低屈折層を含み」という要件を満たす。
(イ)低屈折層
甲1発明の「低屈折層」は、「ハードコート層に光硬化性コーティング組成物を#3mayer barでコーティングし、60℃で1分間乾燥し」、「窒素パージング下、乾燥物に180mJ/cm2の紫外線を照射して」なるものである。また、甲1発明の「光硬化性コーティング組成物」は、「中空シリカ分散液250g、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート37g、ポリシルセスキオキサン3g、光反応性官能基を含むフッ素系化合物13.3g、光開始剤6gを混合し、MIBK及びPGMEを1:1の重量比率で混合した溶媒で希釈した固形分が3重量%の希釈液」であり、「中空シリカ分散液」は「数平均直径が50nmの中空シリカ粒子がメチルイソブチルケトンに固形分20重量%で分散した」ものである。
上記構成からみて、甲1発明の「低屈折層」は、光重合性化合物である「ジペンタエリスリトールペンタアクリレート」及び「光反応性官能基を含むフッ素系化合物」の架橋重合体をバインダー樹脂とし、バインダー樹脂に「直径が50nmの中空シリカ粒子」が分散してなるものである。また、甲1発明の「中空シリカ粒子」は、「シリカ粒子」であるとともに「直径が50nm」であるから、無機微粒子といえる。
そうしてみると、甲1発明の「ジペンタエリスリトールペンタアクリレート」、「光反応性官能基を含むフッ素系化合物」及び「中空シリカ粒子」は、それぞれ、本件特許発明1の「光重合性化合物」、「光反応性官能基を含む含フッ素化合物」及び「無機微粒子」に相当する。また、甲1発明の「低屈折層」は、本件特許発明1の「低屈折層」における、「光重合性化合物および光反応性官能基を含む含フッ素化合物間の架橋重合体を含むバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂に分散した無機微粒子とを含み」という要件を満たす。
イ 一致点及び相違点
(ア)一致点
本件特許発明1と甲1発明は、次の構成で一致する。
「 低透湿性高分子フィルム;ハードコート層;および低屈折層を含み、
前記低屈折層は、光重合性化合物および光反応性官能基を含む含フッ素化合物間の架橋重合体を含むバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂に分散した無機微粒子とを含む、反射防止フィルム。」
(イ)相違点
本件特許発明1と甲1発明は、次の点で、一応相違するか相違する。
<相違点1>
「低透湿性高分子フィルム」について、本件特許発明1は、「一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり」、「一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率が2.3以上4.1以下であ」るのに対して、甲1発明の「基材フィルム」は、「厚さ80μm、面内位相差値8400nm、厚さ方向の位相差値9200nm」「であるTOYOBO社の「TA015」」であることにとどまり、この点が明らかでない点。
<相違点2>
本件特許発明1は、「反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に第1ピークが現れ、24~27°の2θ値に第2ピークが現れ、前記第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率は、0.66以上0.91以下である」のに対して、甲1発明は、この点が明らかでない点。
ウ 相違点についての判断
(ア)新規性について
上記(1)ウ(エ)で示したように、上記相違点2に係る第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率は、一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの延伸倍率、拘束の有無、延伸温度、延伸後の熱処理によって大きく変化することが、当業者の技術常識である。そして、甲1発明の「TA015」が一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであって、上記相違点1に係る引張強度の比率の数値範囲内にあるとしても、甲1発明の「TA015」の延伸倍率、拘束の有無、延伸温度、延伸後の熱処理等が明らかでない以上、上記技術常識により、甲1発明の「TA015」が上記相違点2に係る第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率の数値範囲内にあるとまではいえない。
また、甲1発明の「TA015」と同様に、甲A2に記載された「SRF」も延伸倍率、拘束の有無、延伸温度、延伸後の熱処理等が明らかでない以上、上記技術常識により、甲A2に記載された「SRF]も上記相違点2に係る第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率の数値範囲内にあるとまではいえない。甲B4-1及び甲B4-2に記載された「SRF」についても同様である。
そうしてみると、甲1発明の「TA015」は、甲A2、甲B4-1及び甲B4-2に記載された事項を参酌しても、上記相違点2に係る第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率の数値範囲内にあるとまではいえない。
したがって、上記相違点2は実質的な相違点である。
(イ)進歩性について
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
a 相違点2について
甲A1には、上記相違点2に係る第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率について、記載も示唆もない。そうすると、甲1発明において、上記相違点2に係る第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率の数値範囲とする動機付けはない。そして、甲1発明において、第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率を上記相違点2の数値範囲とすることを窺わせる記載は他の甲号証にもない。
そうしてみると、当業者であっても、甲1発明において、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは、容易に想到し得たとはいえない。
b 本件特許発明が奏する効果について
念のため効果についても検討すると、以下のとおりとなる。
本件特許明細書の【0122】には、発明の効果として「本発明によれば、低い反射率および透過率偏差を有し且つ高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現でき、ディスプレイ装置の画面の鮮明度を高められる反射防止フィルム、前記反射防止フィルムを含む偏光板、および前記反射防止フィルムを含むディスプレイ装置を提供できる。」と記載されている。そして、本件特許明細書の【0143】の【表3】には、構成D及びEを満たす実施例が比較例と比較して、平均反射率偏差及び透光率偏差において優れた結果が得られており、このような効果は当業者が予測できない顕著なものである。
エ 異議申立人Aの主張について
(ア)異議申立人Aの主張の概要
異議申立人Aは、異議申立書Aの38頁において、「甲第1号証には、構成D『前記低透湿性高分子フィルムは、一方向の引張強度に対する、前記一方向と垂直な方向の引張強度の比率が2.3以上4.1以下であり、』と実質的に一致する構成が記載されており・・・4倍程度にTDに一軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが、必然的に構成Eを満足するのであれば、優先日前に市販されていた甲第2号証のような、一軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムや、甲第1号証で使用されたTA015も構成Eを満たす蓋然性が高い。・・・仮に、相違点2が実質的な相違点であったとしても、4倍程度TD方向に一軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが、必然的に構成Eを満足するのであれば、甲第2号証のSRFも構成Eを満足するため、甲1発明において、甲第2号証のSRFを採用する動機付けも生じるため、当業者は、相違点2に係る構成を容易に想到できると言わざるを得ない。」と主張している。
なお、上記主張において、「甲第1号証」は「甲A1」、「甲第2号証」は「甲A2」、構成E(異議申立書Aの3頁参照。)は、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成を、それぞれ示す。
(イ)異議申立人Aの主張についての判断
まず、新規性について、上記ウ(ア)で述べたとおり、上記相違点2は実質的な相違点である。
次に、進歩性について、上記ウ(イ)aで述べたように、甲1発明において、上記相違点2に係る第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率の数値範囲とする動機付けはない。
そして、甲1発明の「TA015」と同様に甲A2に記載された「SRF」も上記相違点2に係る第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率の数値範囲内にあるとまではいえない。
そうしてみると、当業者であっても、甲1発明及び甲A2に記載された事項に基づいて上記相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは、容易に想到し得たとはいえない。
なお、甲B4-1及び甲B4-2に記載された「SRF」についても同様である。
(ウ)まとめ
したがって、異議申立人Aの上記主張は、採用できない。
オ 異議申立人Bの主張について
(ア)異議申立人Bの主張の概要
異議申立人Bは、異議申立書Bの38~39頁において、「結晶化の度合いに対応する物理量である配向関数をfとするとき、f=Δn/Δn°で計算される。・・・PETの固有複屈折Δn°は0.22、TA015のΔnは8400÷80000≒0.11であるから、TA015の配向度fは0.11÷0.22=0.5と計算され、PETの約50%が結晶化しているといえる。また、甲第2号証からは、甲2記載技術(ポリエチレンテレフタレートの結晶部のX線回折強度分布における23°のピークの高さは26°のピークの高さの約67%であるのに対して、焼鈍により作製された半結晶性のポリエチレンテレフタレートのX線回折強度分布は非晶部のX線回折強度分布が加算され、23°のピークの高さが26°のピークの高さの約88%と観測された。)を把握することができる。そうしてみると、甲第1発明における第2ピークの強度(P2)に対する第1ピークの強度(P1)の比率は、0.67よりも大きく0.88よりも小さいといえるから、相違点1は、実質的な相違点ではない。」、「仮に、何らかの相違点が見出されるとしても、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。」、及び、「例えば、甲第1発明の「基材フィルム」(TA015)の厚さは80μmであるが、これを甲第4号証の1のTable IIに記載の厚さ100μmのSRFフィルムに置き換えることは、容易であろう。」と主張している。
なお、上記主張において、「甲第1号証」は「甲A1」、「甲第2号証」は「甲B2」、「甲第4号証の1」は「甲B4-1」を、それぞれ示す。また、「甲第1発明」は、上記1(1)サの「甲1発明」と同様であり、「相違点1」は、上記1(2)の「相違点2」に包含されるものとなっている。
(イ)異議申立人Bの主張についての判断
a 新規性について
甲B5の配向関数は、完全に一方向のみに配向した場合に1となり、完全にランダムに配向した場合に0となるものであって、結晶化の度合いに対応する物理量であるものの、いわゆる結晶化度そのものを示す物理量ではない。また、甲B2でいう半結晶性高分子とは結晶性部分と非晶性部分が混在した高分子を示す程度の意味であって、当該高分子の50%が結晶化していることまで意味しているとも解されない。そのうえ、甲B2の図1における縦軸のX線回折の強度は任意単位であって、結晶性高分子の強度と半結晶性高分子との強度比率が求められるものでない。
そうすると、△nが0.11(≒8400/80000)であり、PETの固有複屈折Δn°が0.22であることから、甲1発明の「TA015」の配向関数fが0.5と概算できるとしても、その結晶化度が50%であるとまではいえず、そうであるならば、半結晶PETにおけるP2に対するP1の比率が略88%であるからといって直ちに、甲1発明の「TA015」における第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率が上記相違点2に係る数値範囲内にあるとまではいえない。
したがって、上記相違点2は実質的な相違点である。
b 進歩性について
上記ウ(イ)aで述べたように、甲1発明において、第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率を上記相違点2に係る「0.66以上0.91以下」の数値範囲内にする動機付けはない。
そして、上記(エ)bで述べたように、甲1発明の「TA015」や甲A2の「SRF」と同様に、甲B4-1及び甲B4-2の「SRF]も延伸倍率、拘束の有無、延伸温度、延伸後の熱処理等が明らかでない以上、上記技術常識により、甲B4-1及び甲B4-2の「SRF」も上記相違点2に係る第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率の数値範囲内にあるとまではいえない。
そうしてみると、当業者であっても、甲1発明において、甲B4-1及び甲B4-2に記載された事項に基づいて、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは、容易に想到し得たとはいえない。
(ウ)まとめ
したがって、異議申立人Bの上記主張は、採用できない。
カ 本件特許発明1についての小括
以上のことから、本件特許発明1は、甲A1に記載された発明であるとはいえず、当業者であっても、相違点1について検討するまでもなく、甲A1に記載された発明、並びに、甲A2~甲A5及び甲B3~甲B8に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)本件特許発明2~12
本件特許発明2~12は、本件特許発明1の構成を全て具備するものであるから、本件特許発明2~12も、本件特許発明1と同じ理由により、甲A1に記載された発明とはいえず、当業者であっても、甲A1に記載された発明、並びに、甲A2~甲A5及び甲B3~甲B8に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(4)小括
本件特許発明1~12は、甲A1に記載された発明とはいえず、当業者であっても、甲A1に記載された発明、並びに、甲A2~甲A5及び甲B3~甲B8に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
3 特許法36条4項1号(実施可能要件)について
(ア) 異議申立人の主張の概要
以下の3及び4において、異議申立人Aの主張における「構成E」は、本件特許発明1に係る「反射(Reflection)モードのX線回折(XRD)パターンにおいて、22~24°の2θ値に第1ピークが現れ、24~27°の2θ値に第2ピークが現れ、前記第2ピークの強度(P2)に対する前記第1ピークの強度(P1)の比率は0.66以上0.91以下である」構成を示す(異議申立書Aの3頁参照)。
異議申立人Aは、異議申立書Aの39~40頁、40頁及び41頁において、それぞれ、「本件特許の明細書に基づいて、構成Eを満足する一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、当業者は製造することができない。」(以下「主張1」という。)、「仮に、構成Eを満足する一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが、市販品を選択することで実施可能なら・・・本件特許発明1は新規性又は進歩性を有しないことになる。また、4倍程度にTDに一軸延伸されたポリエチレンテレフタレートが、必然的に構成Eを満足するのであれば・・・当業者は、相違点2に係る構成を容易に想到できるといわざるを得ない。」(以下「主張2」という。)、及び、「本件特許の明細書には、構成Eの測定方法が十分に記載されていないため、当業者は本件特許発明を実施することができない。」(以下「主張3」という。)と主張している。
また、異議申立人Bは、異議申立書Bの51頁において、「本件特許の発明の詳細な説明には、表2に記載のそれぞれの低透湿性高分子フィルム(厚さ80μm)をどのように作成したのかについて、具体的な記載が全くない。また、引張強度比率が種々異なるということは、延伸倍率も種々異なるものと理解されるが、延伸倍率が異なるにもかかわらず「厚さ80μm」という厚さが揃った低透湿性高分子フィルムが作製できた理由も不明である。」(以下「主張4」という。)と主張している。
(イ)異議申立人の主張についての判断
a 主張1について
上記2(1)ウ(エ)で述べたとおり、一軸延伸のPETフィルムの広角X線回折について、24~27°の2θ値のピーク値(P2)に対する22~24°の2θ値のピーク値(P1)の比率が、PETフィルムの延伸倍率、拘束の有無、延伸の後の処理温度、延伸温度によって異なることは、技術常識である。上記技術常識を心得た当業者であれば、PETフィルムの延伸倍率、拘束の有無、延伸の後の処理温度、延伸温度を調整することによって、低透湿性高分子フィルムの本件特許発明に係る第2ピーク(P2)に対する第1ピーク(P1)の比率の数値範囲とすることは可能であり、過度の試行錯誤を強いられることはない。
b 主張2について
上記2(2)エで述べたように、甲1発明の「TA015」並びに甲A2、甲B4-1及び甲B4-2に記載された「SRF」が、本件特許発明に係る第2ピーク(P2)に対する第1ピーク(P1)の比率の数値範囲内にあると認めるに足りる証拠はない。また、当業者に相違点2に係る数値範囲内になるように調整する動機づけはない。
そうすると、「構成Eを満足する一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが、市販品を選択することで実施可能」及び「4倍程度にTDに一軸延伸されたポリエチレンテレフタレートが、必然的に構成Eを満足する」といった前提に誤りがあるので、上記主張2は採用できない。
c 主張3について
本件特許発明に係る第2ピーク(P2)に対する第1ピーク(P1)の比率を測定するのに際して、非晶部分等(バックグラウンド)の寄与分を除く等の記載は本件特許明細書にはない。そうすると、本件特許発明の上記「比率」の測定にあたって、特段の配慮はなされていないと解するのが相当である。また、測定条件の細部の相違が測定値に影響するとしても、その影響の程度が第三者に不測の不利益を与える程のものかは明らかでない。
したがって、測定条件についてその細部に亘るまで本件特許明細書に逐一記載がないからといって直ちに測定方法が明確かつ十分に記載されていない、すなわち、本件特許発明の反射防止フィルムを作製する当業者が過度の試行錯誤を強いられるとまではいえない。
d 主張4について
本件特許明細書には、低透湿性高分子フィルム(厚さ80μm)をどのように作製したのかについて具体的な記載はない。
しかしながら、上記2(1)ウ(エ)で述べたとおり、一軸延伸のPETフィルムの広角X線回折について、24~27°の2θ値のピーク値(P2)に対する22~24°の2θ値のピーク値(P1)の比率が、PETフィルムの延伸倍率、拘束の有無、延伸の後の処理温度、延伸温度によって異なるという技術常識を心得た当業者であれば、低透湿性高分子フィルムの延伸倍率、拘束の有無、延伸の後の処理温度、延伸温度を調整することによって、低透湿性高分子フィルムの厚さを80μmとしつつ、本件特許発明に係る要件を満たすようにすることは可能であり、過度の試行錯誤を強いられることはない。
e 小括
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである。
4 特許法36条6項1号(サポート要件)について
(ア)異議申立人の主張の概要
異議申立人Aは、異議申立書Aの41頁において、「構成Eの「強度(P2)に対する強度(P1)の比率が0.66以上0.91以下」であることが、どのような技術的意義を有するのかについて、効果が裏付けられておらず、当該数値範囲を採用することの技術的意義が明確とはいえない。また、明細書の一般的記載や技術常識を考慮しても、当該数値範囲を採用することの技術的意義が明らかでない。」と主張している。
(イ)異議申立人の主張についての判断
本件特許明細書の【0143】【表3】記載の実施例において、本件特許発明に係る「強度(P2)に対する強度(P1)の比率が0.66以上0.91以下である」例は、実施例1~5として記載されていて、平均反射率偏差及び透過率偏差が小さいという効果も示されているから、当業者であれば当該数値範囲により効果が発揮されることを理解できることから、当該数値範囲を採用することの技術的意義は明らかである。
そうしてみると、本件特許発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものである。
5 特許法36条6項2号(明確性要件)について
(ア)異議申立人の主張の概要
異議申立人Bは、異議申立書Bの48~49頁、49頁及び49~50頁において、以下のとおり主張する。
a 「本件発明の反射防止フィルムは、ハードコート層及び低屈折率層が積層された側(視認側)と、その反対側(裏面側)がある。どちらを測定したかによって、反射モードのX線回折(XRD)パターンは異なると考えられる。請求項1において、どちらを測定したかが明記されていないから、本件発明は、明確であるということができない。」(以下「主張1」という。)
b 「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、たとえ製造工程において一軸延伸のみを施したつもりであっても、二軸延伸されることは技術常識である(甲第8号証P-285頁左欄13~18行)。そうしてみると、「前記低透湿性高分子フィルムは、一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり」とされる本件発明の「低透湿性高分子フィルム」は、明確であるということができない。」(以下「主張2」という。)
c 「本件特許の明細書の【0098】には、「前記低透湿性高分子フィルムは、フィルムを通して水蒸気圧が高い所から低い所へ湿気が移動する透湿現象がほとんど行われない低透湿特性を有する高分子フィルムで、例えば、前記低透湿性高分子フィルムは、30~40℃の温度および90~100%相対湿度の条件で透湿率が50g/m2・day以下、30g/m2・day以下、20g/m2・day以下または15g/m2・day以下であってもよい。」というように、「低透湿性高分子フィルム」が多義的に記載されている。したがって、本件発明は、明確であるということができない。」(以下「主張3」という。)
d 「本件発明2は、「反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane)をさらに含む」という構成を具備する。また、本件発明3は、「前記ポリシルセスキオキサンに置換される反応性官能基は、アルコール、アミン、カルボン酸、エポキシド、イミド、(メタ)アクリレート、ニトリル、ノルボルネン、オレフィン、ポリエチレングリコール、チオールおよびビニル基からなる群より選ばれた1種以上の官能基を含む」という構成を具備する。さらに、本件発明4は、「前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物は、i)1つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも1つの炭素に1以上のフッ素が置換された脂肪族化合物または脂肪族環化合物;ii)1以上の光反応性官能基で置換され、少なくとも1つの水素がフッ素に置換され、1つ以上の炭素がケイ素に置換されたヘテロ(hetero)脂肪族化合物またはヘテロ(hetero)脂肪族環化合物;iii)1つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも1つのシリコンに1以上のフッ素が置換されたポリジアルキルシロキサン系高分子;およびiv)1以上の光反応性官能基で置換され、少なくとも1つの水素がフッ素に置換されたポリエーテル化合物;からなる群より選ばれた1種以上を含む」という構成を具備する。これら下線を付した構成は、(A)何が置換されているのか特定されていない、若しくは(B)何によって置換されているのか特定されていない、又は、(C)上記(A)及び(B)が混在していることにより、各記載によって特定される物質の構造が不明なものとなっている。」(以下「主張4」という。)
(イ)異議申立人の主張についての判断
特許法36条6項2号の定める要件を充足するか否かは、すなわち、発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
以下、上記観点から、本件特許発明が明確であるか否かについて検討する。
a 主張1について
本件特許明細書において、実施例として記載された反射防止フィルムは、低透湿性高分子フィルム、ハードコート層及び低屈折層からなるものであるところ、X線回折のピークが得られる結晶性高分子は低透湿性高分子フィルムのみであって、ハードコート層及び低屈折層はその製法からみてX線回折のピークの由来とはならない。
そうしてみると、ハードコート層及び低屈折率層が積層された側(視認側)と、その反対側(裏面側)どちらを測定したかによって、反射モードのX線回折(XRD)パターンはバックグラウンドが変化するだけで、本件特許発明に係る第2ピーク(P2)に対する第1ピーク(P1)の比率は大きくは変化することはない。仮に変化したとしてもバックグラウンドを考慮することで測定できるものであって、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
b 主張2について
一軸延伸された方向の延伸倍率に対して、該方向に直交する方向の延伸倍率が十分に小さいものを一軸延伸フィルムというのであって、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。なお、一軸延伸フィルムという技術用語は慣用されているものである。
c 主張3について
本件特許発明に係る「低透湿性高分子フィルム」は、その文言どおり、「低透湿性」を意味するものであって、臨界的意義を要するものではない。そうすると、本件特許の明細書の【0098】には、「低透湿性高分子フィルム」が多義的に記載されていても、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
d 主張4について
(a)本件特許発明2に係る「反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane)」について
まず、ポリシルセスキオキサンは、式[RSiO1.5]λにより表され、式中、λは重合度であり、Rは有機置換基(H、シロキシ、反応性官能基をさらに含み得る環状または直鎖状の脂肪族基または芳香族基)であるものを意味すること、式[RSiO1.5]λにおける有機置換基RはSiに結合したものであることは技術常識である(例えば、特表2004-516347号公報の【0028】、【0031】~【0032】参照。)。ここで、化合物中のある原子(例えば水素)又は原子団が、他の原子又は原子団で置き換わる型の反応を「置換」といい、他の原子又は原子団を「置換基」ということは技術常識である。
上記技術常識に基づけば、ポリシルセスキオキサン[RSiO1.5]λにおいては、Rの位置に、反応性官能基等を含む有機置換基が置換により導入されたものも普通であると理解できる。
そうすると、化合物における置換構造については、○○が××に(よって)置換される、と記載されることが通常であるとしても、本件特許発明2~3の記載及び技術常識に基づけば、本件特許発明2に係る「反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン」とは、式[RSiO1.5]λ中の有機置換基Rとして、「1以上」の「反応性官能基」が置換されて導入された(反応性官能基を有する)ポリシルセスキオキサンを意味する、と当業者は理解できる。
(b)本件特許発明3に係る「前記ポリシルセスキオキサンに置換される反応性官能基」について
本件特許発明3に係る「前記ポリシルセスキオキサンに置換される反応性官能基」も上記(a)で検討したことと同様ことがいえる。
そうしてみると、本件特許発明3に係る「前記ポリシルセスキオキサンに置換される反応性官能基」は、本件特許発明2に係る「反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン」における「1以上」の「反応性官能基」を意味すると、当業者は理解できる。
(c)本件特許発明4に係る「光反応性官能基を含む含フッ素化合物」について
本件特許発明4に係る「光反応性官能基を含む含フッ素化合物」についても、上記(a)で検討したことと同様のことがいえて、上記(a)で示した技術常識を考慮すると、化合物i)は、一つ以上の「光反応性官能基」が、(置換基として、)置換されて導入され(すなわち「光反応性官能基」を含み)、かつ、少なくとも一つの炭素に、(置換基として、)1以上の「フッ素」が置換されて導入された(すなわち「フッ素」を含む)、「脂肪族化合物または脂環式化合物」を意味し、化合物ii)は、1以上の「光反応性官能基」が、(置換基として、)置換されて導入され(「光反応性官能基」を含み)、かつ、少なくとも一つの水素が「フッ素」に置換された(「フッ素」を含む)、「一つ以上の炭素がケイ素に置換されたヘテロ(hetero)脂肪族化合物またはヘテロ(hetero)脂環式化合物」を意味し、化合物iii)は、一つ以上の「光反応性官能基」が、(置換基として、)置換されて導入され、かつ、少なくとも一つのシリコンに、(アルキル基に置き換わる)置換基として、1以上の「フッ素」が置換されて導入された、「ポリジアルキルシロキサン系高分子」を意味し、化合物iv)は、1以上の「光反応性官能基」が、(置換基として、)置換されて導入され、かつ、少なくとも一つの水素が「フッ素」に置換された「ポリエーテル化合物」を意味する、と当業者は理解できる。
e 小括
したがって、本件特許発明は明確である。
第5 むすび
請求項1~12に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-701111