2021-700520
バリア性積層フィルムおよびレトルト食品用包装体
- 審判番号
- 2021-700520
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-132785外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6807668
- 請求日
- 2021年05月26日
- 審決日
- 2022年07月29日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三井化学東セロ株式会社
- 【権利者代理人】速水 進治
- 【異議申立人】渡辺 陽子
- 【異議申立人】松永 健太郎
- 分類
- P1651.537-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.83 -YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第4号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
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特許第6807668号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成28年7月4日の特許出願であり、令和2年12月10日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月6日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、概略次のとおりである。
第2 本件訂正
1 訂正の内容
令和4年4月15日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正」という。)は、特許第6807668号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める、というものであって、その内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりであり。
(1)訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1の記載の「前記無機物層の厚みが5nm以上15nm未満であり、」を「前記無機物層の厚みが7nm以上12nm以下であり、」にする。
(2)訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1の記載の「少なくとも一種とを含む」を「少なくとも一種とを含み、前記無機物層を構成する無機物が酸化アルミニウムである」にする。
(3)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4の記載の「請求項1乃至3いずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、」を「請求項1または2に記載のバリア性積層フィルムにおいて、」にする。
(5)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5の記載の「請求項1乃至4いずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、」を「請求項1、2および4のいずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、」にする。
(6)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6の記載の「請求項1乃至5いずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、」を「請求項1、2、4および5のいずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、」にする。
(7)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7の記載の「請求項1乃至6いずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、」を「請求項1、2、4乃至6のいずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、」にする。
(8)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8の記載の「請求項1乃至7いずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、」を「請求項1、2、4乃至7のいずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、」にする。
(9)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9の記載の「請求項1乃至8いずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、」を「請求項1、2、4乃至8のいずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、」にする。
(10)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~10は、請求項2~10が本件訂正の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正の請求は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1~10〕に対して請求するものである。
2 訂正要件の判断
(1)訂正事項1-1及び1-2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1-1は、本件訂正前の請求項1に記載されていた「無機物層の厚み」につきその範囲を狭めるものであり、また、訂正事項1-2は、本件訂正前の請求項1に記載されていた「無機物層」につきそれを構成する無機物を特定するものであるから、いずれの目的も特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「本件明細書等」という。)の段落【0016】には「無機物層102の厚みの下限値は5nm以上、好ましくは7nm以上・・・である。無機物層102の厚みの上限値は、・・・さらに好ましくは12nm以下である。」と記載され、また、段落【0035】には「さらに、上記無機物の中でも、バリア性やコスト等のバランスに優れていることから、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、およびアルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物が好ましい。・・・上記無機物の中でも、酸化アルミニウムはレトルト処理による耐水性にも優れることから特に好ましい。」と記載されていることから、訂正事項1-1、訂正事項1-2は、いずれも、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1-1、訂正事項1-2は、既に述べたように特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項3を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
請求項の削除は、新規事項を追加するものでもなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3~8について
訂正事項3~8は、訂正事項2により請求項3を削除することにともない、請求項4~9の記載において引用する請求項から請求項3を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
引用する請求項から一部の請求項を削除することは、新規事項を追加するものでもなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)小括
以上のとおりであるから、訂正事項1-1~訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について、訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正が認められることから、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明10」という。)は、令和4年4月15日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】
基材層と、無機物層と、有機・無機ハイブリッド層と、をこの順番に備えるバリア性積層フィルムであって、
前記無機物層の厚みが7nm以上12nm以下であり、
前記有機・無機ハイブリッド層が水酸基含有高分子と有機ケイ素化合物との3次元架橋物を含み、
前記有機ケイ素化合物が、式(1):Si(OR1)4で示されるケイ素アルコキシド化合物(R1はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3である)およびその加水分解生成物から選択される少なくとも一種と、式(2):(R2Si(OR3)3)nで示されるケイ素アルコキシド化合物(R3はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3であり、R2はビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、ウレイド基、またはイソシアネート基を含む。nは1以上5以下である)およびその加水分解生成物から選択される少なくとも一種とを含み、
前記無機物層を構成する無機物が酸化アルミニウムであるバリア性積層フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
前記水酸基含有高分子がポリビニルアルコール系樹脂を含むバリア性積層フィルム。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
請求項1または2に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
前記無機物層と前記基材層との間にアンダーコート層をさらに備えるバリア性積層フィルム。
【請求項5】
請求項1、2および4のいずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
前記無機物層の厚みをP(nm)とし、温度40℃、湿度90%RHの条件で測定される水蒸気透過度をX(g/(m2・24h))としたとき、
X/Pが0.030以下であるバリア性積層フィルム。
【請求項6】
請求項1、2、4および5のいずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
前記無機物層の厚みをP(nm)とし、下記の方法により測定される180度剥離による剥離強度をQ1(N/15mm)としたとき、
Q1/Pが0.20以上であるバリア性積層フィルム。
(方法)
厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルムの片面に、厚みが3μmのポリウレタン系接着剤層を形成する。次いで、当該バリア性積層フィルムの前記有機・無機ハイブリッド層面と前記無延伸ポリプロピレンフィルムの前記ポリウレタン系接着剤層とが接するようにして、前記バリア性積層フィルムと前記無延伸ポリプロピレンフィルムとをドライラミネートし、多層フィルムを得る。得られた前記多層フィルムを15mm幅に切断した後、300(mm/分)の剥離速度で、前記バリア性積層フィルムと前記無延伸ポリプロピレンフィルムとの間の180度ラミネート剥離強度を測定する。
【請求項7】
請求項1、2、4乃至6のいずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
前記無機物層の厚みをP(nm)とし、下記の方法により測定される、130℃で30分間レトルト処理した後の180度剥離による剥離強度をQ2(N/15mm)としたとき、
Q2/Pが0.15以上であるバリア性積層フィルム。
(方法)
厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルムの片面に、厚みが3μmのポリウレタン系接着剤層を形成する。次いで、当該バリア性積層フィルムの前記有機・無機ハイブリッド層面と前記無延伸ポリプロピレンフィルムの前記ポリウレタン系接着剤層とが接するようにして、前記バリア性積層フィルムと前記無延伸ポリプロピレンフィルムとをドライラミネートし、多層フィルムを得る。得られた前記多層フィルムに対して、高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理を行う。前記レトルト処理をおこなった前記多層フィルムを15mm幅に切断した後、300(mm/分)の剥離速度で、前記バリア性積層フィルムと前記無延伸ポリプロピレンフィルムとの間の180度ラミネート剥離強度を測定する。
【請求項8】
請求項1、2、4乃至7のいずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
温度40℃、湿度90%RHの条件で測定される、水蒸気透過度が0.3g/(m2・24h)未満であるバリア性積層フィルム。
【請求項9】
請求項1、2、4乃至8のいずれか一項に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
レトルト食品用包装材に用いられるバリア性積層フィルム。
【請求項10】
請求項9に記載のバリア性積層フィルムを含むレトルト食品用包装体。
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~10に係る特許に対して、当審が特許権者に対して令和4年2月8日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
1 サポート要件: 本件請求項1~10に係る特許は、本件請求項1~10に記載された発明が発明の詳細な説明に記載したものでないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 進歩性: 本件特許の請求項1~10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
・ 国際公開第2004/048081号(申立人Bが提出した甲第1号証{申立人Aは、同号証の再公表特許を甲第1号証として提出。})
第5 当審の判断
1 特許権者に通知した取消理由について
(1)理由1(サポート要件)
ア 本件訂正により、本件発明1、2、4~10における無機物層は、それを構成する材料が「酸化アルミニウム」であり、かつ、その厚みが「7nm以上12nm以下」と特定されるに至った。
本件明細書等に開示された実施例1~3によれば、無機物層として、それを構成する材料が「酸化アルミニウム」であり、かつ、その厚みが「7nm以上12nm以下」であるものについて効果が確認されているといえる。
具体的には、バリア性積層フィルムは、基材層として、12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとし、基材層のアンダーコート層のコロナ処理面に、実施例として、7、10、12nm、比較例として、15、4nmになるように酸化アルミニウムを蒸着し、さらに、有機・無機ハイブリッド層として、ポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製、商品名:クラレポバールPVA124)、テトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBE-04)、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM-9659)を用い、配合比は、KBE-04の加水分解物(SiO2換算):PVA124:KBM-9659の加水分解物(R2-SiO1.5)3換算)=6/4/0.72=56.0/37.3/6.7としたものである(【0062】~【0067】)。
そして、酸化アルミニウム層の厚みが、実施例の7、10、12nm、比較例の15、4nmについて、レトルト処理後の180度剥離強度(Q1)をみると、それぞれ、2.0、2.4、4.2、1.3、0.3(N/15mm)となり(【0066】【表1】)、比較例との対比において、酸化アルミニウム層の厚みを、比較的に極めて狭い範囲である「7nm以上12nm以下」とすることにより、レトルト処理後の、有機・無機ハイブリッド層と、有機・無機ハイブリッド層上に積層される、熱溶着層との接着性が不十分になることを考慮し(【0006】)、その効果を確認したといえるものである。
イ 本件訂正後の本件発明1、2、4~10における「有機・無機ハイブリッド層」は、水酸基含有高分子と有機ケイ素化合物との3次元架橋物について、「水酸基含有高分子と有機ケイ素化合物との3次元架橋物を含み、前記有機ケイ素化合物が、式(1):Si(OR1)4で示されるケイ素アルコキシド化合物(R1はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3である)およびその加水分解生成物から選択される少なくとも一種と、式(2):(R2Si(OR3)3)nで示されるケイ素アルコキシド化合物(R3はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3であり、R2はビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、ウレイド基、またはイソシアネート基を含む。nは1以上5以下である)およびその加水分解生成物から選択される少なくとも一種とを含み」と特定していて、実施例1~3との対比において、広い範囲のものを含むとしても、有機・無機ハイブリッド層と、有機・無機ハイブリッド層上に積層される熱溶着層との剥離強度の調整に、有機・無機ハイブリッド層と基材層との間に位置する酸化アルミニウム層の厚みが影響するということは上記アで述べたとおりであり、有機・無機ハイブリッド層の厚みや、実施例1~3と同様に、水酸基含有高分子と上記式(1)と上記式(2)の組成物を骨格とした3次元架橋物であれば、その種類によらず、酸化アルミニウム層を比較的に極めて狭い範囲である「7nm以上12nm以下」とすることにより、有機・無機ハイブリッド層上に積層される熱溶着層との剥離強度の調整できることは理解できる。
なお、本件訂正後の本件発明1、2、4~10における「有機・無機ハイブリッド層」の特定には、その厚みが含まれていないところ、本件明細書等に開示された実施例における「有機・無機ハイブリッド層」は、約0.4μmとされている。
そして、本件発明1、2、4~10において、無機物層を構成する材料及び厚み並びに有機・無機ハイブリッド層を構成する材料が上述のように特定されていることをふまえると、「有機・無機ハイブリッド層」の厚みを約0.4μmに限定されなくても、本件発明1、2、4~10の発明特定事項によって当業者が所与の課題を解決し得ると認識するのに足りるといえる。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1、2、4~10は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではなく、発明の詳細な説明に記載されたものである。
したがって、本件請求項1、2、4~10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当しない。
(2)理由2(進歩性)について
ア 国際公開第2004/048081号(申立人Bが提出した甲第1号証。以下、「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「本発明は、食品及び医薬品や電子部材等の非食品等の包装分野に用いられる包装用のプラスチックフィルム積層体において、特に高いガスバリア性を持つことで、大気中の酸素や水蒸気から内容物を遮断し、内容物の劣化や変質を抑制するガスバリア積層フィルムに関するものである。」(明細書1ページ4~8行)
(イ)「本発明は、以上のような従来技術の課題を解決しようとするものであり、透明性に優れ、内容物が透視可能であり、且つ金属探知器に適用可能であり、高温高湿下でのガスバリア性を持ち、ボイル及びレトルト包材として使用可能であり、環境を破壊する物質を使用せず、包装材料として最適なガスバリア機能のあるフィルムを提供することを目的とする。」(明細書3ページ8~13行)
(ウ)「また、基材上に、上記ガスバリア被覆層を、上記ガスバリア蒸着層と組み合わせて設けることにより、高いガスバリア性が得られる。さらに、たとえ基材と無機化合物蒸着層との間に、密着性コーティング層いわゆるプライマー層、あるいは特殊処理層が無くても、ボイル殺菌処理及びレトルト殺菌処理後も、酸素透過率、及びラミネート強度等の劣化が見られず、さらに、蒸着層が基材から剥離することがほとんどない、安価で実用性の高い積層フィルムを提供することができる。」(明細書5ページ9~17行)
(エ)「蒸着層に使用される無機化合物としては、例えばケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、錫、及びマグネシウムなどの酸化物、それらの窒化物、及びそれらの弗化物、及びこの酸化物、窒化物、及び弗化物の複合物があげられる。」(明細書11ページ11~14行)
(オ)「ボイル及びレトルト殺菌処理に好適な本発明のガスバリア積層フィルムは、蒸着層と、次に説明するガスバリア被覆層3との組み合わせにより実現するため、Al:O=1:1.5~2.0であることが好ましい。蒸着層の膜厚は、用途や、ガスバリア被覆層の膜厚によって多少異なるが、数十Åから5000Åの範囲がのぞましい。しかし50Å以下では薄膜の連続性に問題があり、また3000Åを超えるとクラックが発生しやすく、可撓性が低下するため、好ましくは50~3000Åである。」(明細書12ページ15~23行)
(カ)「 実施例1-8厚さ12μmの片面にコロナ処理を施した二軸延伸PET(東レ(株)製、P60)を基材とし、そのコロナ処理された面にアルミニウムを蒸着源とし、電子線加熱方式により加熱蒸着させ、酸素ガスを導入しながら所定の膜組成になるよう調整し、膜厚150Åの酸化アルミニウム蒸着層を形成した。上記酸化アルミニウム蒸着層のアルミニウムと酸素とによる膜組成は、X線光電子分光分析装置(ESCA)(日本電子(株)製、JPS-90SXV)にて、アルゴンエッチングを用いたDepth Profiling法により測定を行い、調整した膜組成が以下のものを用いた。実施例1~5,8および比較例・Al:O=1:1.8続きを表示(全22行)実施例6・・・・・・・・・・・Al:O=1:1.0実施例7・・・・・・・・・・・Al:O=1:2.2上記酸化アルミニウム蒸着層に、下記方法にて調液した塗布液用溶液(A)~(E)を下記の割合で混合し、これを塗布液とした。これをバーコーターにより得られた蒸着層の上面に塗布し、乾燥機で120℃、1分間乾燥させ、膜厚約0.3μmのガスバリア被覆層を形成し、図1と同様の構成を有するガスバリア積層フィルムを得た。ガスバリア被覆層用溶液(A):テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4、以下TEOSと称す)17.9gと、メタノール10gに塩酸(0.1N)72.1gを加え、30分間撹拌し、加水分解させた固形分5%(重量比SiO2換算)の加水分解溶液(B):ポリビニルアルコールの5%(重量比)、水/メタノールアルコール=95/5(重量比)水溶液(C):β-(3,4エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランとイソプロピルアルコール(IPA溶液)に塩酸(1N)を徐々に加え、30分間撹拌し、加水分解させた後、水/IPA=1/1溶液で加水分解を行い、固形分5%(重量比R2Si(OH)3換算)に調整した加水分解溶液。(D):γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとIPA溶液に塩酸(1N)を徐々に加え、30分間撹拌し、加水分解させた後、水/IPA=1/1溶液で加水分解を行い、固形分5%(重量比R2Si(OH)3換算)に調整した加水分解溶液。(E):1,3,5-トリス(3-メトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを、水/IPA=1/1溶液で、固形分5%(重量比R2Si(OH)3換算)に希釈、調整した溶液。(F):ビニルトリメトキシシランとIPA溶液に塩酸(1N)を徐々に加え、30分間撹拌し、加水分解させた後、水/IPA=1/1溶液で加水分解を行い固形分5%(重量比R2Si(OH)3換算)に調整した加水分解溶液。ガスバリア被覆層塗布液の成分配合比A:TEOSのSiO2固形分(換算値)B:PVA固形分C:β-(3,4エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランのR2Si(OH)3固形分(換算値)D:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランのR2Si(OH)3固形分(換算値)E:1,3,5-トリス(3-メトキシシリルプロピル)イソシアヌレートのR2Si(OH)3固形分(換算値)F:ビニルトリメトキシシランのR2Si(OH)3固形分(換算値)配合比はすべて固形分重量比率である。」(17ページ下から7行~19末行)
(キ)「 実施例11-15厚さ12μmの片面にコロナ処理を施したPETを基材とし、そのコロナ処理された面に下記プライマー層塗布液(G)を膜厚0.1μmになるようにグラビアコーターにて塗工し、プライマー層を設けた。(G):アクリルポリオールとトリイジルイソシアネートをアクリルポリオールのOH基に対し、NCO基が等量となるように加え、全固形分が5wt%になるよう酢酸エチルで希釈し、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランを全固形分に対し、5wt%添加して混合した溶液。プライマー層上に、実施例1と同様にして酸化アルミニウム蒸着層を形成した。さらに、上記(A)~(E)の溶液を下記の組成で組み合わせ、混合してなる塗布液を調製し、酸化アルミニウム蒸着層上にこの塗布液をバーコーターにより塗布し、乾燥機で120℃、1分間乾燥させ、膜厚約0.3μmのガスバリア被覆層を形成し、図2と同様の構成を有するガスバリア積層フィルムを得た。続きを表示(全25行)ガスバリア被覆層塗布液の成分配合比配合比はすべて固形分重量比率である。実施例11・・・・・A/B/C=70/20/10実施例12・・・・・A/B/D=70/20/10実施例13・・・・・A/B/E=70/20/10実施例14・・・・・A/B/C=20/20/60実施例15・・・・・A/B/C=90/5/5比較例3・・・・・・A/B=70/30得られたガスバリア積層フィルムのガスバリア被覆層の表面に、油性ペン(黒)で3cm×3cmの正方形を書いて塗りつぶし、該被膜層3表面を上にして、積層体の4方を台紙に固定後、121℃、30分間レトルト処理を行った。処理後、ガスバリア被覆層3表面の油性ペン(黒)の状態を目視で観察し、ガスバリア被覆層の耐水性を評価した。その結果を下記表3に示す。目視評価基準1:ガスバリア被覆層表面が溶けて、インキが全く残っていない。2:ガスバリア被覆層表面の一部インキが残っている。3:ガスバリア被覆層表面のインキが完全な状態で残っている。さらに、得られたガスバリア積層フィルムを用いて、実施例1と同様に包装フィルムを作成した。得られた包装フィルムを図4に示す。図示するように、この包装フィルムは、基材1上に、プライマー層4、酸化アルミニウム蒸着層2、ガスバリア被覆層3、図示しない接着剤層を介して延伸ナイロン層5、及び図示しない接着剤層を介してヒートシール層6が順に積層された構成を有する。また、得られた包装フィルムを用いて、実施例1と同様にパウチを作成し、同様にして、レトルト処理前後の酸素透過度、90度剥離を行い、そのときの剥離強度を求めた。その結果を下記表3に示す。また、実施例8と同様の構成を有する包装フィルムについても同様のレトルト処理前後の酸素透過度、90度剥離試験を行なった。その結果を併せて下記表3に示す。[図:0001390547000001.jpg]表3より、比較例3により得られたガスバリア積層フィルムは、実施例8,11~15により得られたガスバリア積層フィルムに比べ、レトルト処理において、そのガスバリア被覆層が単膜では溶けてしまうのに対し、実施例8,11~15のガスバリア積層フィルムのガスバリア被覆層は、被膜の耐水性が向上しているため溶けないことがわかった。また、比較例3は、レトルト処理後の酸素透過度は劣化するのに対し、実施例8,11~15では、レトルト処理前の酸素バリア性は、バリアの孔になることなく、高いバリア性を示し、また、レトルト処理後も良好な酸素バリア性を維持し続け、ほとんど劣化しないことがわかった。またラミネート強度を損なうこともないことがわかった。」(明細書24ページ下から11行~27ページ末行)
(ク)「1.樹脂基材と、該樹脂基材上に設けられ、主に無機化合物を含むガスバリア蒸着層と、該ガスバリア蒸着層上に設けられ、一般式Si(OR1)4…(1)で表されるケイ素化合物及びその加水分解物のうち1つ、続きを表示(全17行)一般式(R2Si(OR3)3)n…(2)で表されるケイ素化合物、及びその加水分解物のうち1つ(但し、一般式(1)および(2)中、R1,R3はCH3,C2H5,またはC2H4OCH3、R2は有機官能基を表す)、及び水酸基を有する水溶性高分子を含有する塗布液を塗布、乾燥して得られたガスバリア被覆層とを含むことを特徴とするガスバリア積層フィルム。2.前記無機化合物は、透明性を有することを特徴とする請求項1に記載のガスバリア積層フィルム。3.前記無機化合物は、酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項2に記載のガスバリア積層フィルム。4.前記酸化アルミニウムは、アルミニウムと酸素との存在比が、Al:O=1:1.5~1:2.0で表されることを特徴とする請求項3記載のガスバリア積層フィルム。5.前記一般式Si(OR1)4…(1)は、その加水分解性基(R1)がC2H5であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のガスバリア積層フィルム。6.前記一般式(R2Si(OR3)3)n…(2)は、その有機官能基(R2)が、ビニル、エポキシ、メタクリロキシ、ウレイド、イソシアネートからなる群から選択される少なくとも1つの基からなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のガスバリア積層フィルム。7.Si(OR1)4をSiO2に、R2Si(OR3)3をR2Si(OH)3に換算した場合、R2Si(OH)3の固形分が全固形分に対し1~50重量%であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のガスバリア積層フィルム。8.前記一般式(R2Si(OR3)3)n…(2)は、式(NCO-R4Si(OR3)3)3(但し、式中R4は(CH2)n、nは1以上)で表される三量体1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートであることを特徴とする請求項6記載のガスバリア積層フィルム。9.前記有機官能基(R2)が3-グリシドキシプロピル基、及び2-(3,4エポキシシクロヘキシル)基のうち1つであることを特徴とする請求項6に記載のガスバリア積層フィルム。10.Si(OR1)4をSiO2に、R2Si(OR3)3をR2Si(OH)3に換算した場合、固形分の配合比が重量比率でSiO2/(R2Si(OH)3/水溶性高分子)=100/100~100/30の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のガスバリア積層フィルム。11.前記基材と前記ガスバリア蒸着層との間に、アクリルポリオール、イソシアネート、及びシランカップリング剤からなるプライマー層をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載のガスバリア積層フィルム。12.前記ガスバリア被覆層上に、ヒートシール層をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載のガスバリア積層フィルム。」(29ページ2行~31ページ8行)
イ 上記アの(ア)~(ク)の記載事項、特にその実施例8に着目すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「厚さ12μmの片面にコロナ処理を施したPETを基材とし、そのコロナ処理された面に下記プライマー層塗布液(G)を膜厚0.1μmになるようにグラビアコーターにて塗工し、プライマー層を設け、プライマー層上に、アルミニウムを蒸着源とし、電子線加熱方式により加熱蒸着させ、酸素ガスを導入しながら所定の膜組成になるよう調整し、膜厚150Åの酸化アルミニウム蒸着層を形成し、上記酸化アルミニウム蒸着層のアルミニウムと酸素とによる膜組成は、X線光電子分光分析装置(ESCA)(日本電子(株)製、JPS-90SXV)にて、アルゴンエッチングを用いたDepth Profiling法により測定を行い、調整した膜組成がAl:O=1:1.8であり、さらに、下記(A)、(B)及び(E)の溶液を、固形分重量比率でA/B/E=70/20/10の組成で組み合わせ、混合してなる塗布液を調製し、酸化アルミニウム蒸着層上にこの塗布液をバーコーターにより塗布し、乾燥機で120℃、1分間乾燥させ、膜厚約0.3μmのガスバリア被覆層を形成して得た、ガスバリア積層フィルム。(A):テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4、以下TEOSと称す)17.9gと、メタノール10gに塩酸(0.1N)72.1gを加え、30分間撹拌し、加水分解させた固形分5%(重量比SiO2換算)の加水分解溶液。(B):ポリビニルアルコールの5%(重量比)、水/メタノールアルコール=95/5(重量比)水溶液。(E):1,3,5-トリス(3-メトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを、水/IPA=1/1溶液で、固形分5%(重量比R2Si(OH)3換算)に希釈、調整した溶液。(G):アクリルポリオールとトリイジルイソシアネートをアクリルポリオールのOH基に対し、NCO基が等量となるように加え、全固形分が5wt%になるよう酢酸エチルで希釈し、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランを全固形分に対し、5wt%添加して混合した溶液。」
ウ 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用発明との対比
引用発明の「厚さ12μmの片面にコロナ処理を施したPET」である「基材」は、本件発明1の「基材層」に相当する。
引用発明の「アルミニウムを蒸着源とし、電子線加熱方式により加熱蒸着させ、酸素ガスを導入しながら所定の膜組成になるよう調整し、」「形成し」た「酸化アルミニウム蒸着層」は、本件発明1の「構成する無機物が酸化アルミニウムである」「無機物層」に相当する。
引用発明の「下記(A)、(B)及び(E)の溶液を、固形分重量比率でA/B/E=70/20/10の組成で組み合わせ、混合してなる塗布液を調製し、酸化アルミニウム蒸着層上にこの塗布液をバーコーターにより塗布し、乾燥機で120℃、1分間乾燥させ、」「形成し」た「膜厚約0.3μmのガスバリア被覆層」は、本件発明1の「水酸基含有高分子と有機ケイ素化合物との3次元架橋物を含み、前記有機ケイ素化合物が、式(1):Si(OR1)4で示されるケイ素アルコキシド化合物(R1はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3である)およびその加水分解生成物から選択される少なくとも一種と、式(2):(R2Si(OR3)3)nで示されるケイ素アルコキシド化合物(R3はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3であり、R2はビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、ウレイド基、またはイソシアネート基を含む。nは1以上5以下である)およびその加水分解生成物から選択される少なくとも一種とを含む」「有機・無機ハイブリッド層」に相当する。
そうすると、引用発明の「基材」と、「基材」「のコロナ処理された面に」「設けられた」「プライマー層」の「上に、」「形成」された「酸化アルミニウム蒸着層」と、「酸化アルミニウム蒸着層上に」「形成」された「ガスバリア被覆層」「を形成して得た、ガスバリア積層フィルム」は、本件発明の「基材層と、無機物層と、有機・無機ハイブリッド層と、をこの順番に備えるバリア性積層フィルム」に相当する。
したがって、本件発明1と引用発明の一致点、相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「基材層と、無機物層と、有機・無機ハイブリッド層と、をこの順番に備えるバリア性積層フィルムであって、前記有機・無機ハイブリッド層が水酸基含有高分子と有機ケイ素化合物との3次元架橋物を含み、前記有機ケイ素化合物が、式(1):Si(OR1)4で示されるケイ素アルコキシド化合物(R1はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3である)およびその加水分解生成物から選択される少なくとも一種と、式(2):(R2Si(OR3)3)nで示されるケイ素アルコキシド化合物(R3はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3であり、R2はビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、ウレイド基、またはイソシアネート基を含む。nは1以上5以下である)およびその加水分解生成物から選択される少なくとも一種とを含み、前記無機物層を構成する無機物が酸化アルミニウムである、バリア性積層フィルム。」
[相違点]
本件発明1は「前記無機物層の厚みが7nm以上12nm以下」であるのに対し、引用発明は「酸化アルミニウム蒸着層」が「膜厚150Å」である点。
(イ)判断
引用文献には「蒸着層の膜厚は、用途や、ガスバリア被覆層の膜厚によって多少異なるが、数十Åから5000Åの範囲がのぞましい。しかし50Å以下では薄膜の連続性に問題があり、また3000Åを超えるとクラックが発生しやすく、可撓性が低下するため、好ましくは50~3000Åである。」という記載が存在している(上記ア(オ))。
ここで蒸着層の好ましい膜厚として記載された50~3000Åという厚みの範囲は、本件発明1における無機物層の厚みの範囲を含むものであるが、そうであるからといって、引用文献の記載の限りでは、それを「7nm以上12nm以下」に限定する要因は見いだせない。
さらに、申立人A、Bが提出した他の証拠方法をみても、引用発明において無機物が酸化アルミニウムで構成される無機物層の厚みを「7nm以上12nm以下」に限定することを示唆するところはない。
そして、本件発明1は、相違点に係る発明特定事項を備えたこと、つまり、「無機物層の厚みが7nm以上12nm以下」と限定したことによって、レトルト処理後における水蒸気バリア性およびレトルト処理後におけるラミネートフィルムとの接着性に優れたものとなる(上記(1)参照。)、という引用発明から予期されない効果がもたらされるものである。
そうすると、引用発明において、相違点に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではなく、本件発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明2、4~10について
本件発明2、4~10は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て含み他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様に、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 小括
以上をふまえると、本件発明1、4~10は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。
したがって、請求項1、4~10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
2 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立人Aは、特許異議申立書において、本件各発明が明確でない旨指摘する(「(4-4-2)明確性要件」)。
まず、本件発明1の発明特定事項である「有機・無機ハイブリッド層」が含む水酸基含有高分子と有機ケイ素化合物との「3次元架橋物」については、「[有機・無機ハイブリッド層]本実施形態に係る有機・無機ハイブリッド層103は、例えば、水酸基含有高分子および有機ケイ素化合物を含む混合物を加熱して3次元架橋させることにより形成されたものである。」(本件明細書【0022】)と記載されていて、水酸基含有高分子と2種類の有機ケイ素化合物が含まれてそれらの結合によって構造体をなしていることが自明であって、そのような態様を「3次元架橋物」と称したと理解できるものである。
次に、本件発明5において水蒸気透過度を無機物層の厚みで除算していること、及び、本件発明6において剥離強度を無機物層の厚みで除算していることについては、これらの発明は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て備えた上でさらに限定を付したものであって、本件発明5、6で付加された発明特定事項は文言上不明確とするところはない。
したがって、本件請求項1、2、4~10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当しない。
(2)申立人Aは、また、特許異議申立書において、本件各発明が実施可能でない旨指摘する(「(4-4-3)実施可能要件」)。
しかし、既に上記1(1)で述べたように、本件発明1、2、4~10は、所与の課題を解決することが確認された実施例1~3の開示に照らして当業者が課題を解決することができたと認識できる範囲のものである。
そうすると、当業者は、実施例1~3という具体的な構成の開示を参酌して、本件発明1、2、4~10を実施することができるというべきである。
したがって、本件請求項1、2、4~10に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当しない。
第6 むすび
以上のとおり、本件請求項1、2、4~10に係る特許は、特許権者に通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によってはによって取り消されるべきものではない。また、他に請求項1、2、4~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件請求項3は、本件訂正により削除された。したがって、申立人A、Bによる本件請求項3に係る特許についての特許異議の申立ては、いずれも、その対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700520