特許異議申立
2024-701082
粘着剤及び液晶セル
- 審判番号
- 2024-701082
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-574207
- 登録番号
- 7480938
- 請求日
- 2024年11月07日
- 審決日
- 2026年02月09日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エルジー・ケム・リミテッド
- 【権利者代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 古屋野 浩志
- 審判官 高松 大
- 審判官 川村 大輔
- 分類
- P1652.121-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第113条、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7480938号発明「粘着剤及び液晶セル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7480938号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。
特許第7480938号の請求項1~4、6~14に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7480938号(以下「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願(特願2022-574207号)は、2021年(令和3年)7月2日(パリ条約による優先権主張 2020年7月2日 韓国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、令和6年4月30日にその特許権の設定登録がされ、令和6年5月10日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報発行の日から6月以内である令和6年11月7日に特許異議申立人 角田 朗(以下「申立人」という。)から請求項1~4に対して特許異議の申立て(以下「本件特許異議の申立て」という。)がされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和7年 3月18日付け:取消理由通知書
令和7年 6月23日提出:意見書、訂正請求書(特許権者)
令和7年 8月 8日提出:手続補正書(特許権者)
なお、令和7年8月8日に提出された手続補正書により、これに添付された訂正請求書のとおりに訂正請求がなされたが(以下「本件訂正請求」という。)、当該訂正は令和7年6月23日に提出がなされた訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおりのものであると認める。
また、以下で述べるように、本件訂正により、実質的に特許異議の申立てがされていない請求項のみとなったため、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情がある(特許法第120条の5第5項)と判断して、当審から異議申立人に対して訂正請求があった旨の通知を行っていない。
第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
(1) 訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7480938号の特許請求の範囲を、補正前の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1から14について訂正することを求める。」というものである。
(2) 訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、令和7年8月8日付け手続補正書に添付された訂正請求書のとおりに訂正請求がなされ、令和7年6月23日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された、以下のとおりのものであると認める。なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「25℃温度及び6rad/sec周波数における貯蔵弾性率が700kPa以上であり、下記式1で定義されるゲル分率が35%以上である、粘着剤であって、
[式1]
G(%)=B/A×100
式1において、Aは前記粘着剤の初期質量(g)であり、Bは前記粘着剤を60℃で24時間溶媒に浸漬した後、150℃で30分間乾燥した後の、不溶解分の質量(g)であり、
付加硬化型シリコーン系粘着剤である、粘着剤。」を、「上部基材フィルム及び上部基材フィルムの一面に形成された粘着剤の層を含む上部基板、下部基材フィルム及び下部基材フィルムの一面に形成されたスペーサを含む下部基板、及び前記上部基板と前記下部基板の間に液晶層を含む、液晶セルであって、
前記粘着剤は、25℃温度及び6rad/sec周波数における貯蔵弾性率が700kPa以上であり、下記式1で定義されるゲル分率が35%以上であり、
[式1]
G(%)=B/A×100
式1において、Aは前記粘着剤の初期質量(g)であり、Bは前記粘着剤を60℃で24時間溶媒に浸漬した後、150℃で30分間乾燥した後の、不溶解分の質量(g)であり、
付加硬化型シリコーン系粘着剤である、液晶セル。」に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2における「粘着剤。」を「液晶セル。」に訂正する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3における「粘着剤。」を「液晶セル。」に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4における「粘着剤。」を「液晶セル。」に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6における「請求項5」を「請求項1から4のいずれか一項」に訂正する。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7における「請求項5または6」を「請求項1から4及び6のいずれか一項」に訂正する。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8における「請求項5から7のいずれか一項」を「請求項1から4、6、及び7のいずれか一項」に訂正する。
ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9における「請求項5から8のいずれか一項」を「請求項1から4、及び6から8のいずれか一項」に訂正する。
コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10における「請求項5から9のいずれか一項」を「請求項1から4、及び6から9のいずれか一項」に訂正する。
サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11における「請求項5から10のいずれか一項」を「請求項1から4、及び6から10のいずれか一項」に訂正する。
シ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項12における「請求項5から11のいずれか一項」を「請求項1から4、及び6から11のいずれか一項」に訂正する。
ス 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項13における「請求項5から12のいずれか一項」を「請求項1から4、及び6から12のいずれか一項」に訂正する。
セ 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項14における「請求項5から13のいずれか一項」を「請求項1から4、及び6から13のいずれか一項」に訂正する。
(3) 一群の請求項について
訂正事項1~14に係る訂正前の請求項1~14について、請求項2~14は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1~14によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~14に対応する訂正後の請求項1~14は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の適否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「粘着剤」との事項に対して、訂正前の請求項5に記載から、「上部基材フィルム及び上部基材フィルムの一面に形成された」ものであるとともに「層」をなすことを限定し、さらに、当該「粘着剤」の「層」を「上部基板」が「含」むこと、及び、当該「上部基材フィルム及び上部基材フィルムの一面に形成された」「粘着剤」の「層」を「含」む「上部基板」が、「下部基材フィルム及び下部基材フィルムの一面に形成されたスペーサを含む下部基板、及び前記上部基板と前記下部基板の間に液晶層」と併せて、これらを「含む」「液晶セル」であることを限定するものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項1は、上記アで述べたとおり、願書に添付した明細書または特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。
請求項1の記載を引用して特定する請求項2~14についても、同様である。
イ 訂正の対象となる一群の請求項である訂正前の請求項5には、特許異議の申立てがされていないから、訂正後の請求項1に係る発明については、独立特許要件を検討する必要がある。しかし、下記第6で述べるとおり、訂正後の請求項1に係る特許を取り消すべき理由は発見されず、また、他に訂正後の請求項1に係る特許を取り消すべき理由も発見しないから、訂正後の請求項1に係る発明が、独立して特許を受けることができるものであることは明らかである。
(2) 訂正事項2~4について
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項1を引用する請求項2に対して、訂正事項1によって「液晶セル」との限定をしたことに基づいて、訂正前の請求項2の「粘着剤」を訂正後の「液晶セル」としたものである。したがって、訂正事項2に係る訂正は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項2の記載を引用して特定する請求項3、4、6~14についても、同様である。
また、訂正事項3及び4についても同様である。
(3) 訂正事項5について
訂正事項5に係る訂正は、請求項5を削除するものであることから、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。
(4) 訂正事項6~14について
ア 訂正事項6~14に係る訂正は、訂正事項1で訂正前の請求項5の発明特定事項が追加されたこと、及び訂正事項5で請求項5が削除されたことに伴い、訂正前の請求項5を引用していた訂正前の請求項6~14について、請求項間の引用関係を整合させるための訂正であるから、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。
イ 訂正の対象となる一群の請求項である訂正前の請求項6~14には、特許異議の申立てがされていないから、訂正後の請求項6~14に係る発明については、独立特許要件を検討する必要がある。しかし、下記第6で述べるとおり、訂正後の請求項6~14が引用する訂正後の請求項1に係る特許を取り消すべき理由は発見されず、また、他に訂正後の請求項6~14に係る特許を取り消すべき理由も発見しないから、訂正後の請求項6~14に係る発明が、独立して特許を受けることができるものであることは明らかである。
(5) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~14に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」などといい、これらの発明を総称して「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される、次のものである。
「 【請求項1】
上部基材フィルム及び上部基材フィルムの一面に形成された粘着剤の層を含む上部基板、下部基材フィルム及び下部基材フィルムの一面に形成されたスペーサを含む下部基板、及び前記上部基板と前記下部基板の間に液晶層を含む、液晶セルであって、
前記粘着剤は、25℃温度及び6rad/sec周波数における貯蔵弾性率が700kPa以上であり、下記式1で定義されるゲル分率が35%以上であり、
[式1]
G(%)=B/A×100
式1において、Aは前記粘着剤の初期質量(g)であり、Bは前記粘着剤を60℃で24時間溶媒に浸漬した後、150℃で30分間乾燥した後の、不溶解分の質量(g)であり、
付加硬化型シリコーン系粘着剤である、液晶セル。
【請求項2】
前記粘着剤の25℃温度及び6rad/sec周波数における貯蔵弾性率は、700kPa~2000kPaの範囲内である、請求項1に記載の液晶セル。
【請求項3】
前記粘着剤のゲル分率は、35%~50%の範囲内である、請求項1または2に記載の液晶セル。
【請求項4】
前記粘着剤は、液晶配向性粘着剤である、請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶セル。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記上部基材フィルム及び前記下部基材フィルムは、それぞれポリマーフィルムである、請求項1から4のいずれか一項に記載の液晶セル。
【請求項7】
前記上部基板の前記粘着剤の層と前記下部基板の前記スペーサが付着した状態で存在する、請求項1から4及び6のいずれか一項に記載の液晶セル。
【請求項8】
前記下部基板は、前記スペーサ上に形成された下部配向膜をさらに含む、請求項1から4、6、及び7のいずれか一項に記載の液晶セル。
【請求項9】
前記上部基板は、前記上部基材フィルム上に形成された上部電極層をさらに含み、前記下部基板は、前記下部基材フィルム上に形成された下部電極層をさらに含む、請求項1から4、及び6から8のいずれか一項に記載の液晶セル。
【請求項10】
前記スペーサは、硬化性樹脂を含む、請求項1から4、及び6から9のいずれか一項に記載の液晶セル。
【請求項11】
前記スペーサは、隔壁形状を有する、請求項1から4、及び6から10のいずれか一項に記載の液晶セル。
【請求項12】
前記スペーサの線幅は、5μm~50μmの範囲内であり、前記スペーサの高さは、3μm~20μmの範囲内である、請求項1から4、及び6から11のいずれか一項に記載の液晶セル。
【請求項13】
前記上部基板と前記下部基板は前記スペーサによって間隔を維持し、前記上部基板と前記下部基板の間に前記スペーサが存在しない領域に前記液晶層が存在する、請求項1から4、及び6から12のいずれか一項に記載の液晶セル。
【請求項14】
請求項1から4、及び6から13のいずれか一項に記載の液晶セルを含む、サンルーフ。」
第4 申立ての理由及び証拠方法
1 申立ての理由の概要
本件特許発明1~4は、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明夫々に、公知技術ないし甲第3~7号証に記載の発明を組み合わせて容易に想到できたものである。
2 証拠方法
異議申立人が提出した証拠方法は以下のとおりである。
甲第1号証:特表2020-517800号公報(以下、「甲1」という。)
甲第2号証:特開2007-197659号公報(以下、「甲2」という。)
甲第3号証:特開2006-52384号公報(以下、「甲3」という。)
甲第4号証:特開2018-39870号公報(以下、「甲4」という。)
甲第5号証:特開2012-144701号公報(以下、「甲5」という。)
甲第6号証:特表2021-519852号公報(以下、「甲6」という。)
甲第7号証:国際公開第2009/028455号(以下、「甲7」という。)
甲第8号証:韓国特許第10-2513848号公報、2022年11月22日付の審査意見通知書及び2023年1月25日付の補正書及び意見書(以下、「甲8」という。)
甲第9号証:台湾特許公告第I804912号公報、2022年12月30日付の審査意見通知書及び2023年3月30日付の補正書(以下、「甲9」という。)
甲第10号証:欧州特許出願公開第21833441号明細書に関する2023年11月28日付の拡張サーチレポート及び2024年5月28日付の補正書(以下、「甲10」という。)
第5 取消理由の概要
令和7年3月18日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由は、概略、以下のとおりである。
理由1:(新規性)本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2:(進歩性)本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(当合議体注:甲6は主引用文献であり、甲1~2は周知技術を示す文献である。なお、甲6について、実際に提出されている証拠は、国際公開第2019/235843号に係る公表公報であるが、該国際公開が証拠として提出されたものとして扱う。)
第6 取消理由についての当合議体の判断
令和7年3月18日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由についての当合議体の判断は、以下のとおりである。
1 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について
(1) 甲号証について
ア 甲6の記載事項
令和7年3月18日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由で引用した甲6に係る国際公開第2019/235843号は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であるところ、以下の記載事項がある。(当合議体注:下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。なお、合議体訳は、甲6の該当箇所の記載を使用した。)
(ア) 「
[図:0001435168000001.jpg]
(合議体訳:[2] 本出願は、伸縮性粘着フィルムおよびこれを含むディスプレイ装置に関する。)(甲6【0001】)
・・・(略)・・・
[図:0001435168000002.jpg]
(合議体訳:[22] 本出願の一実施態様に係る伸縮性粘着フィルムは、基材との粘着力に優れ、特に、伸縮性粘着フィルムが上記式1を満たしていて、疲労耐久性に優れた特徴を有し、これによって、20%水準の歪みを加えても元の状態に回復できる物性を示す。)(甲6【0013】)
[図:0001435168000003.jpg]
(合議体訳:[23] 本出願の一実施態様に係る伸縮性粘着フィルムは、前記のような特徴を有し、追って伸縮性ディスプレイ装置に用いられる場合、元の状態への回復能力に優れ、耐久性に優れていて、ディスプレイをなしているフィルムを支持する役割が特に優れている。)(甲6【0014】)
・・・(略)・・・
[図:0001435168000004.jpg]
[図:0001435168000005.jpg]
(合議体訳:[110] 本出願の一実施態様において、本出願の一実施態様に係る伸縮性粘着フィルムと、前記伸縮性粘着フィルムの一面に備えられた蒸着層と、前記蒸着層の前記伸縮性粘着フィルムと接する面の反対面に備えられた基材フィルムとを含むディスプレイ装置であって、前記伸縮性粘着フィルムの第1粘着層と前記蒸着層とが互いに接するディスプレイ装置を提供する。)(甲6【0081】)
・・・(略)・・・
[図:0001435168000006.jpg]
(合議体訳:[119] 本出願の一実施態様において、前記ディスプレイ装置は、有機発光素子、または有機電気素子を意味し、伸縮性を有するディスプレイ装置であればこれに限定されない。」(甲6【0089】)
(イ) 「
[図:0001435168000007.jpg]
(合議体訳:[123] <製造例>
[124] 本願の実施例および比較例に使用された伸縮性粘着フィルムの基材層および第1粘着層の成分、重量比および厚さを下記表1に記載した。)(甲6【0093】)
[図:0001435168000008.jpg]
(合議体訳:[125][表1]
[図:0001435168000009.jpg]
)(甲6【0094】)
[図:0001435168000010.jpg]
(合議体注:[126] 前記表1において、LSR(液状シリコーンゴム、Liquid silicone rubber)はDOW CORNING社のXiameter 9050 30Pの物質を用い、二液型タイプで主剤A(Part A)と硬化剤B(Part B)とをそれぞれ20:1、10:1および5:1の比率で混合したことを意味し、TPUはLG化学社の製品でポリウレタン系物質を意味する。)(甲6【0095】)
・・・(略)・・・
[図:0001435168000011.jpg]
(合議体訳:[132] 3.伸縮性粘着フィルムの製造(実施例7~9の伸縮性粘着フィルム)
[133] 基材層として、前記表1の実施例7~9に記載の成分および重量比率で混合して撹拌および脱泡を進行させた。以後、混合液をTACS社のTS502(フッ素系離型フィルム)のフッ素離型面にコーティングした後、150℃のオーブンで5分間乾燥させて、最終厚さが前記表1の実施例7~9に記載の厚さとなるように作製した。)(甲6【0099】)
[図:0001435168000012.jpg]
(合議体訳:[134] 以後、信越社のKR-3700樹脂100重量部に、白金触媒であるCAT-PL 50T0.5重量部を混合して固形分含有量が20%となるようにトルエンに分散させた後、フッ素離型フィルム上にコーティングした。以後、140℃のオーブンで3分間乾燥させて、最終厚さが前記表1の実施例7~9に記載の厚さに合わされるように作製した。以後、基材層と第1粘着層とをラミネーション(lamination)して伸縮性粘着フィルムを作製した。)(甲6【0100】)
・・・(略)・・・
[図:0001435168000013.jpg]
(合議体訳:[149] すなわち、前記表2の実施例1~9の伸縮性粘着フィルムをディスプレイ装置に用いる場合、前記比較例1~3の伸縮性粘着フィルムをディスプレイ装置に適用する場合に比べて、耐久性に優れていることを確認することができ、また、伸長による回復能力にも優れていて、伸縮性を有するディスプレイ装置およびウェアラブル(wearable)ディスプレイ装置への使用に適することを確認することができた。)(甲6【0112】)」
イ 甲6発明
上記ア(イ)によれば、甲6には、次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているものと認める。
「 基材層として、LSR(液状シリコーンゴム、Liquid silicone rubber)を用い、二液型タイプで主剤A(Part A)と硬化剤B(Part B)とを10:1の比率で混合し、LSR(液状シリコーンゴム、Liquid silicone rubber)はDOW CORNING社のXiameter 9050 30Pの物質を用い、
混合液を、フッ素系離型フィルムのフッ素離型面にコーティングし、乾燥させて、最終厚さが125μmの厚さとなるように作製し、
信越社のKR-3700樹脂100重量部に、白金触媒0.5重量部を混合して固形分含有量が20%となるようにトルエンに分散させた後、フッ素離型フィルム上にコーティングし、乾燥させ、基材層と第1粘着層とをラミネーションした、
伸縮性ディスプレイ装置に用いられる、ディスプレイをなしているフィルムを支持する役割が特に優れている伸縮性粘着フィルム。」
ウ 甲1について
令和7年3月18日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由で引用した甲1は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であるところ、以下の記載事項がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するために、段部埋め込み性および段差克服性に優れ、硬化後、被着剤の表面から浮き上がり現象が最小化された光学透明粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(メタ)アクリレート単量体を部分重合させて製造された樹脂シロップおよび光開始剤を含む光学透明粘着シートであって、
前記光学透明粘着シートは、1次紫外線架橋結合後の貯蔵弾性率が25℃および1Hzで1.0×106~1.0×107Pa、70℃および1Hzで5.0×104~5.0×105Paであり、2次紫外線架橋結合後の硬化後の25℃貯蔵弾性率増加率が前記1次紫外線架橋結合後の25℃貯蔵弾性率対比10~100%である、光学透明粘着シートを提供する。
・・・(略)・・・
【0029】
本発明の光学透明粘着シートは、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、眩しさ防止フィルム、光視野角補償フィルム、または輝度向上フィルムなどの光学フィルムを互いに積層したり、前記光学フィルムまたはその積層体をディスプレイパネルなどのような被着体に付着させるための用途に使用できる。
・・・(略)・・・
【0032】
本発明の光学透明粘着シート組成物で形成された光学透明粘着シートを含むことを特徴とする平板表示装置を提供する。
【0033】
前記平板表示装置は、フレキシブルディスプレイ装置であることがさらに好ましい。
以下、本発明を実施例および比較例を用いてより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明は、下記の実施例によって限定されず、多様に修正および変更可能である。」
エ 甲2について
令和7年3月18日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由で引用した甲2は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であるところ、以下の記載事項がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような状況下で、偏光板、特に視野角拡大フィルムなどと一体化してなる偏光板に、又は偏光板に位相差板が積層される場合に好適に適用され、該偏光板を液晶セルに耐久性よく接着し得ると共に、得られた液晶表示装置が、高温高湿環境下でも光漏れが生じにくいなどの特性を有し、かつ貼合からある時間が経過した後であっても、液晶セルから剥離すること(以下「再剥離」ということがある。)が容易にできる偏光板用粘着剤及び該粘着剤付き偏光板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記の特性を有する偏光板用粘着剤を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のアクリル系共重合体と、活性エネルギー線硬化型化合物を含む粘着性材料に、活性エネルギー線を照射してなる偏光板用粘着剤が、その目的に適合し得ることを見出した。
また、上記粘着剤付きの偏光板は、剥離シートの剥離層上に設けられた粘着性材料層に偏光板を貼合し、剥離シート側から活性エネルギー線を照射することにより、効率よく製造し得ることを見出した。
・・・(略)・・・
【0035】
本発明の偏光板用粘着剤は、偏光フィルム単独からなる偏光板に適用して、該偏光板を、例えば液晶ガラスセルに接着させるのに用いることができるが、特に偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化してなる偏光板に適用し、この偏光板を、例えば液晶ガラスセルに接着させるのに、好ましく用いることができる。」
(2) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲6発明とを対比する。
甲6発明の「第1粘着層」は、本件特許発明1の「粘着剤の層」に相当し、甲6発明の「基材層」は、「第1粘着層」と「ラミネーション」したものであるから、本件特許発明1の「上部基材フィルム」と、「基材フィルム及び」「基材フィルムの一面に形成された粘着剤の層を含む」「基板」である点において一致する。
また、甲6発明の「第1粘着層」は、シリコーン系の粘着剤である「信越社のKR-3700樹脂」からなり、白金触媒が混合されることからみて、本件特許発明1と甲6発明とは「粘着剤」が「付加硬化型シリコーン系粘着剤である」点において一致する。
イ 一致点及び相違点
本件特許発明1と甲6発明は、「基材フィルム及び基材フィルムの一面に形成された粘着剤の層を含む基板」を含み、「粘着剤」が「付加硬化型シリコーン系粘着剤である」点において一致し、下記の点において相違する。
(ア) 相違点1
「基板」の適用に関して、本件特許発明1では、「上部」基板として、「下部基材フィルム及び下部基材フィルムの一面に形成されたスペーサを含む下部基板、及び前記上部基板と前記下部基板の間に液晶層」とともに、「液晶セル」を構成するのに対して、甲6発明ではそのようなものであるかが明らかではない点。
(イ) 相違点2
「粘着剤」の性質に関して、本件特許発明1では、「25℃温度及び6rad/sec周波数における貯蔵弾性率が700kPa以上であり、下記式1で定義されるゲル分率が35%以上であり、
[式1]
G(%)=B/A×100
式1において、Aは前記粘着剤の初期質量(g)であり、Bは前記粘着剤を60℃で24時間溶媒に浸漬した後、150℃で30分間乾燥した後の、不溶解分の質量(g)であ」るのに対して、甲6発明ではそのようなものであるか否かが明らかではない点。
ウ 判断
上記相違点1及び2は互いに関連するため併せて検討すると、甲6発明の「伸縮性粘着フィルム」は、「伸縮性ディスプレイ装置」に適用されるものではあるものの、「ディスプレイをなしているフィルムを支持する」のに適するものであるにすぎないから、相違点1に係る本件特許発明1の構成をなす「液晶セル」に適用する動機付けが見いだせないし、当該構成が甲1~5、甲7~10のいずれにおいても開示されていないから、甲6発明に基づいて相違点1に係る本件特許発明1の構成が容易に想到し得るものであるとはいえない。
また、仮に動機付けがあったとしても、当該適用にあたり甲6発明の粘着剤層を粘着剤に要求される相違点2に係る本件特許発明1の構成の性質のものとすることが、当業者にとって容易であると認められるだけの理由が見いだせない。
そして、本件特許発明1は、実質的に訂正前の本件特許の請求項5に記載された発明のうち、請求項1のみを引用するものであるから、本件特許異議の申立てにおける申立てがなされていないものでもあると認められる。
エ 小括
以上より、本件特許発明1は、甲6発明であるとはいえないし、甲6発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。
(3) 本件特許発明2~4について
本件特許発明2~4は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備え、さらに限定するものであるから、本件特許発明2~4も、本件特許発明1と同じ理由により、甲6発明であるとはいえないし、当業者であっても、甲6発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたともいえない。
2 まとめ
上述のとおり、本件特許発明1~4は、甲6発明であるとはいえず、また、当業者であっても、甲6発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえず、本件特許発明1~4は、特許法29条1項3号及び29条2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、特許法113条2号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1~4に係る特許は、取消理由1及び2によって取り消すことはできない。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
第6の1(1)ウで述べたとおり、甲1に記載の「光学透明粘着シート」は、「例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、眩しさ防止フィルム、光視野角補償フィルム、または輝度向上フィルムなどの光学フィルムを互いに積層したり、前記光学フィルムまたはその積層体をディスプレイパネルなどのような被着体に付着させるための用途に使用」するものであって、上記第6の1(2)イ(ア)で述べた相違点1に係る本件特許発明1の構成をなす「液晶セル」に適用する動機付けが見いだせない。
また、仮に動機付けがあったとしても、当該適用にあたり甲6発明の粘着剤層を粘着剤に要求される、上記第6の1(2)イ(イ)で述べた相違点2に係る本件特許発明1の構成の性質のものとすることは、当業者にとって容易であると認められるだけの理由が見いだせない。
そして、同様のことが、甲2に記載の「粘着剤付き偏光板」(上記第6の1(1)エを参照)についてもいえる。
そうしてみると、本件特許発明1~4は、甲1又は2の夫々に記載された発明及び公知技術ないしは甲3~7の記載に基づき、容易に発明をすることができたものとはいえない。
第8 むすび
本件特許の請求項1~4に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。また、他に本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701082