特許異議申立
2024-700797
高吸水性樹脂の製造方法
- 審判番号
- 2024-700797
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-533154
- 登録番号
- 7438606
- 請求日
- 2024年08月23日
- 審決日
- 2025年11月05日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】エルジー・ケム・リミテッド
- 【権利者代理人】実広 信哉
- 【権利者代理人】渡部 崇
- 【異議申立人】株式会社 日本触媒
- 【異議申立人代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 審判長/審判官
- 審判長 柴田 昌弘
- 審判官 植前 充司
- 審判官 天野 宏樹
- 分類
- P1651.121-Y (C08J) / P1651.537-Y (C08J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7438606号発明「高吸水性樹脂の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7438606号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7438606号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)8月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年(平成30年)11月14日(KR)大韓民国)を国際出願日とする出願であって、令和6年2月16日にその特許権の設定登録がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、同年8月23日に特許異議申立人株式会社日本触媒(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象:全請求項)がなされたものである。
以降の手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年10月 3日付け:通知書(方式)
同年 同月24日 :特許異議申立書及び証拠説明書の手続補正書
(方式)
令和7年 1月24日付け:取消理由通知
同年 4月30日 :意見書
同年 7月16日付け:審尋(申立人宛)
同年 8月 4日 :回答書(申立人)
第2 本件発明
本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。
「[請求項1]
内部架橋剤および重合開始剤の存在下で、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して、第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);
前記含水ゲル重合体を乾燥する段階(段階2);
前記乾燥された重合体を、直径が710μm以上である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して75.0wt%以上90wt%以下になるように粉砕して、直径が180μm未満である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して8.0wt%以下になるように粉砕して、粒子を製造する段階(段階3)、および
前記粉砕された粒子を2次粉砕する段階(段階4)を含み、
前記段階4は、600μm以上850μm以下の直径範囲の中の基準直径を決定し、前記段階3で製造された粒子の中の直径が前記基準直径以上である粒子のみ2次粉砕し、前記基準直径は、710μmである、
高吸水性樹脂の製造方法。
[請求項2]
前記段階1は、発泡剤の存在下で行う、請求項1に記載の製造方法。
[請求項3]
前記段階4で製造した粒子を、前記段階3で製造された粒子の中の2次粉砕していない粒子と合わせる、請求項1または2に記載の製造方法。
[請求項4]
前記段階4で製造した粒子を、直径が850μm以下、150μm以上である粒子と、直径が150μm未満である粒子に分級する段階を追加的に含む、請求項3に記載の製造方法。
[請求項5]
前記段階3で製造された粒子の中の直径が150μm未満である粒子に水を添加して再造粒し、前記段階2に循環させる、請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として下記2.に示す甲第1号証~甲第9号証(以下、「甲1」~「甲9」という。)を提出し、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。また、申立人は、令和7年8月4日に提出した回答書(以下、「回答書」という。)に、下記2.に示す参考文献1~参考文献3を添付し、特許権者の主張に反論している。なお、特許異議申立理由の番号は当審が仮に付与した。
1.特許異議申立理由
(1)申立理由1(進歩性欠如)
ア 申立理由1-1(甲1に基づく進歩性欠如)
本件発明1~5は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
イ 申立理由1-2(甲2に基づく進歩性欠如)
本件発明1~5は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲2に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
ウ 申立理由1-3(甲3に基づく進歩性欠如)
本件発明1~5は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲3に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
エ 申立理由1-4(甲4に基づく進歩性欠如)
本件発明1~5は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲4に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由2(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明1~5についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
ア 粉砕条件について
仮に直径が710μm以上である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して75.0wt%以上90wt%以下になるように粉砕することが、甲1~甲4の記載から容易ではないという主張がなされるのであれば、本件発明1~5には、直径が710μm以上である粒子の割合を制御するための構成要件が不足している。装置については、本件明細書の段落[0045]に、「具体的に、ボールミル(ball mill)、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを使用することができるが、上述の例に限定されるのではない。」との記載がある。しかしながら、甲1の実施例7及び甲2の実施例1によれば甲1及び甲2にロールミルの記載が、甲3の[0087]によれば甲3にハンマー式粉砕機(ハンマーミル)の記載が、甲4の製造例1によれば甲4に回転軸に多数のピンを取り付けた解砕機(ピンミル)の記載がある。従って、仮に甲1~甲4で解決できない課題があるのなら、たとえ本件発明1~5にて、単に装置を特定してもなお課題を解決できると理解できない。以上、本件発明1~5は、特許法第36条第6項第1号に規定されるサポート要件を充足していない。
イ 「製造された全体粒子の総重量」について
請求項1の「前記乾燥された重合体を、直径が710μm以上である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して」における「製造された全体粒子の総重量」とは、その前の工程である段階2の乾燥工程で製造された全体粒子の総重量を指している。しかし、甲9の3頁4~10行によれば本件特許に対応する欧州出願において、2021年7月19日付意見書で、特許権者はD6(甲2に対応)の実施例1における直径が710μm以上である粒子の割合について、「審査官により参照された量は、リサイクル粒子量を除いて算出された(175/(421-175)×100=71重量%)。
しかし我々は、リサイクル粒子量を含めて算出することが正しいと考えており、41重量%が正しい量である。」と主張している。すなわち、特許権者は、乾燥工程で製造された全体粒子の総重量に対して直径が710μm以上である粒子を特定割合に制御することは間違いであり、一次粉砕する重合体の総重量に対して制御することを主張している。確かに本件発明1~5は、本件明細書の[0009]~[0011]の記載を参照すると、粉砕条件に関する技術であるから、乾燥工程で製造された全体粒子の総重量に対して制御しても課題を解決できるとは考えられない。以上のことから、本件発明1~5は、特許法第36条第6項第1号に規定されるサポート要件を充足していない。
(3)申立理由3(明確性要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、本件発明1~5についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
仮に、本件請求項1に記載の「前記乾燥された重合体を、直径が710μm以上である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して」を「一次粉砕する重合体の総重量に対して」と解釈できるというなら、2通りの解釈ができることになる。しかも、前記2通りの解釈の間には、直径が710μm以上である粒子の量を表す数値に大きな差が生じることとなる。従って、本件発明1および本件発明1を引用する本件発明2~5は、特許法第36条第6項第2号に規定される明確性要件を充足していない。
2.証拠方法
甲1:国際公開第2011/034146号
甲2:国際公開第2011/034147号
甲3:国際公開第2010/114058号
甲4:国際公開第2014/084281号
甲5:米国特許第6228930号明細書
甲6:国際公開第2012/002455号
甲7:本件特許に係る出願の審査において特許権者が令和5年11月2日付けで提出した意見書
甲8:特表2008-527116号公報
甲9:EP3708607Aに係る欧州特許出願の審査において特許権者が2021年7月19日付けで欧州特許庁に提出した意見書
参考文献1:"日本工業規格 高吸水性樹脂の吸水速度試験方法 JIS K 7224-1996",第1刷,財団法人日本規格協会,平成8年3月31日
参考文献2:国際公開第2015/093594号
参考文献3:国際公開第2010/095427号
証拠の表示は当審による。
第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要
本件発明1~5についての特許に対して、令和7年1月24日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
1.取消理由1-1(甲1に基づく進歩性欠如)
本件発明1~5は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2.取消理由1-2(甲2に基づく進歩性欠如)
本件発明1~5は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第5 取消理由通知に記載した取消理由についての判断
当審は、取消理由通知に記載したいずれの取消理由によっても、本件発明についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおり。
1.取消理由1-1(甲1に基づく進歩性欠如)について
(1)甲1に記載された事項
甲1には以下の事項が記載されている。
(1-1)「[0013] そこで本発明は、上記問題点を改善するために、原料の変更や高額な設備投資を必要とせずに、簡便な手法で、大スケールの生産において、吸水性樹脂の物性(例えば、吸水速度や耐ダメージ性)を向上および安定させる方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0014] 上記課題を解決するために、本発明者らは、従来、上記の通液性や吸水速度の改良方法でなんら注目されて来なかった吸水性樹脂の粉砕工程に着目し、所定量以上を循環させることで、(同じ粒度で比較しても)吸水性樹脂の吸水速度や耐ダメージ性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。」
(1-2)「図面の簡単な説明
[0020]・・・
[図2]図2は、粉砕重合体を分級後に別の粉砕工程(第2粉砕工程)に再度供給するフローを示す概略図である。図1の概念図において、目的粒度のon品のみを第2粉砕工程に供給した後、第2分級工程で再度、”目的粒度(例えば850~150μm)”/on品/微粉に分級して、on品のみを粉砕工程(第2の粉砕工程)に供給し、第2分級工程のon品は必要により再粉砕(例えば第1粉砕工程または第2粉砕工程)に供給する。
・・・
[図11]図11は、図5の概念図において、さらに、図8の概念図にある、第1分級工程での”on品(粗粒)”を大小2つの粒度(例えば、小粗粒として5mm~850μm、大粗粒として5mm-on)の分級して、得られた2種類のon品を異なる粉砕工程(粉砕工程1、粉砕工程1’)に供給する概念図である。言い換えれば、図8の概念図において、さらに、第1分級工程ののちにさらに、図5の概念図に記載の第2,第3の粉砕工程および分級工程を追加する、概念図である。」
(1-3)「[0043] さらに、得られる吸水性樹脂の諸物性を改善するために、アクリル酸(塩)水溶液または重合後の含水ゲル、乾燥物または粉体に、澱粉、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレンイミン等の水溶性樹脂または吸水性樹脂や、各種の発泡剤(炭酸塩、アゾ化合物、気泡等)、界面活性剤、後述の添加剤を任意成分として添加してもよい。その添加量として、上記水溶性樹脂または吸水性樹脂は、単量体100重量%に対して0~50重量%が好ましく、0~20重量%がより好ましく、0~10重量%が特に好ましく、0~3重量%が最も好ましい。また、上記発泡剤、界面活性剤または添加剤は、単量体100重量%に対して0~5重量%が好ましく、0~1重量%がより好ましい。」
(1-4)「[0066] 本発明では耐ダメージ性の観点から循環粉砕比は1.10以上、好ましくは1.15以上、より好ましくは1.20以上、さらに好ましくは1.30以上、特に好ましくは1.35以上、最も好ましくは1.40以上である。また、吸水速度(例えばFSR)の観点から、循環粉砕比の上限は1.50以下、好ましくは1.40以下、より好ましくは1.35以下、さらに好ましくは1.30以下、さらにより好ましくは1.25以下、いっそう好ましくは1.20以下、特に好ましくは1.15以下である。
[0067] 従来、粉砕の技術常識からは、目的粒度(例えば、850~150μmまたは710μm通過物)に対して可能な限り分級後のオン品(篩上部)を低減させており、通常、オン10%未満(本発明で規定する循環粉砕比が1.10未満)、さらには5%未満(同1.05未満)、特に1%未満(同1.01未満)とされてきたが、本発明では、吸水性樹脂の表面架橋工程前に、目的粒度に比べて分級後のオン品を増加させることで、表面架橋(特に有機表面架橋剤での表面架橋)後の吸水速度(FSR)を高い値に保持しつつ、吸水性樹脂の耐ダメージ性を向上させることができる。
[0068] (制御方法)
上述した範囲(1.10~1.50)に循環粉砕比を制御するには、粉砕工程を経て得られた粉砕重合体(粉砕された吸水性樹脂)が分級工程を経て分級重合体(分級された吸水性樹脂)とされたうえで、上記分級重合体の少なくとも一部が同一または別の粉砕工程に再度供給される。分級工程は国際公開特許2008/123477号などに例示の風力分級や気流分級でもよいが、効果の面で好ましくは篩分級が適用され、その際に、1種類以上の目開きの篩で分級される。その際、好ましくは、分級工程で目開きの異なる2種類以上、さらには3種類以上の篩が使用され、その最上部を含むオン品(例:粒子径850μm以上の粒子)が再度粉砕され、通過物(例:粒子径850μm未満の粒子)の分級重合体が表面架橋工程に供給される。さらに好ましくは、最上部を含むオン品(粒子径850μm以上の粒子)が再度粉砕され、通過物(例:粒子径850μm未満の粒子)から微粉(例:粒子径150μm未満の粒子)が除去されたものが表面架橋工程に供給される。好適なフローは図1~図3に示される。なお、図1~図12において、物性の向上および安定化のため、粉砕工程や分級工程は好ましくは後述の一定温度以上(さらには減圧工程)であり、また、各工程間は好ましくは空気輸送(露点0℃以下)で連結されてなる。
[0069] 本発明において用いられる篩の数や目開き(μm)は適宜決定され、目開きが1種類のみ(on品と通過物の分級)でもよいが、物性向上から好ましくは、異なる目開きで大小に2種類以上、好ましくは3~6種類、さらに好ましくは4~6種類で使用され、その目開きは大きい方の篩が710~2000μm、中間篩は850~150μm、下の篩は300~45μm、さらには250~106μmなどから選択される。また、本発明で目的粒度(例えば850~150μm)に対して、on品除去の篩(や微粉除去の篩)は1つのみ(例えば850μm)でもよく、さらに2種類以上(特に2種類、目的粒度の上限の篩とその上の篩を併用、例えば850μmと2mmの併用)でもよく、微粉除去の篩も同様に1種類または2種類以上(特に2種類)が使用される。」
(1-5)「[0181] [実施例1]
重合工程(ベルト上での静置重合)、ゲル細粒化(解砕)工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程(表面架橋剤の噴霧工程、加熱工程)、冷却工程、整粒工程および各工程間の輸送工程の各装置が接続され、各工程を連続して行うことができる吸水性樹脂の連続製造装置を用いた。各工程はそれぞれ1系列または2系列以上(並列で分岐;図4を参照)あってもよく、以下の実施例において2系列以上ある場合は全系列の合計量を示している。この連続製造装置の生産能力は、1時間あたり約3500kgである。この連続製造装置を用いて、吸水性樹脂粉体を連続製造した。
[0182]
まず、以下の組成からなる単量体水溶液(1)を作成した。
[0183]
単量体水溶液(1)
アクリル酸:193.3重量部
48重量%水酸化ナトリウム水溶液:64.4重量部
ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9):1.26重量部
0.1重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液:52重量部
脱イオン水:134重量部
次に、上記の単量体水溶液(1)の温度を40℃に調整した。得られた単量体水溶液(1)を定量ポンプによって連続フィードし、単量体水溶液(1)に、48重量%水酸化ナトリウム水溶液97.1重量部をラインミキシングにて連続混合した。この時中和熱によって、モノマーの温度は85℃まで上昇した。
[0184] 次いで、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液8.05重量部をラインミキシングにて連続混合した。このラインミキシングにより得られた連続混合物を、両端に堰を有する平面ベルトに厚み約7.5mmで供給して、連続的に3分間重合を行い、含水ゲル状架橋重合体(1)を得た。
[0185] この含水ゲル状架橋重合体(1)をベルト進行方向に対して垂直方向に、おおよそ等間隔に連続して切断した。次に、孔径22mmのミートチョッパーで約1.5mmに細分化した。この細分化されたゲルを連続通風バンド乾燥機の移動する多孔板上に広げて載せ、185℃で30分間乾燥し、乾燥重合体(1)246重量部(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量)を得た。
[0186] 当該乾燥重合体(1)(約60℃)の全量を3段ロールミルに連続供給することで粉砕し、粉砕重合体(1)を得た。この3段ロールミルのロールギャップは、上から順に、0.8mm/0.65mm/0.48mmであった。粉砕工程の減圧度は0.29kPaとした。
[0187] この粉砕工程の後、得られた粉砕重合体(1)(約60℃)を目開き710μmおよび175μmの金属篩網を有する篩い分け装置で、710μmの篩を透過しなかった粒子(A)、710μmの篩を透過し、175μmの篩を透過しなかった粒子(B)、175μmの篩を透過した粒子(C)に連続的に分級した。710μmの篩を透過しなかった粒子(A)については再度3段ロールミルに供給され粉砕された。なお、分級工程の減圧度は0.11kPaとし、露点10℃、温度75℃の空気を2[m3/hr]で篩装置内を通過させた。揺動式円形篩い分け装置(振動数:230rpm、ラジアル傾斜(勾配):11mm、タンジェンシャル傾斜(勾配):11mm、偏心量:35mm、装置の温度:55℃)で分級し、この篩い分け装置が据え付けられている架台は、接地抵抗値が5Ωの接地(除電)を行った。
[0188] この時のリサイクルされていた710μmの篩を透過しなかった粒子(A)は65重量部であった。すなわち、3段ロールミルへの総供給量は311重量部(粉砕工程への吸水性樹脂の総供給量)であり、また循環粉砕比は1.26であった。こうして、連続的に710~175μmの粒子径を有する吸水性樹脂粉体(1)を得た。
[0189] 得られた吸水性樹脂粉体(1)100重量部に1,4-ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、および脱イオン水3.0重量部の混合液である表面処理剤(共有結合性表面架橋剤を含有)を均一に混合した後、混合物を208℃にて40分間加熱処理した。次いで、これを冷却し、イオン結合性表面架橋剤としての硫酸アルミニウム27.5重量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)1.17重量部、乳酸ナトリウム60重量%水溶液0.196重量部、およびプロピレングリコール0.029重量部からなる混合液を均一に混合した。
[0190] その後、得られた粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。なお、ここで解砕とは、710~175μmの粒子径を有する吸水性樹脂粉体(1)の表面架橋時の凝集を710μm通過物としてほぐす操作である。こうして、表面架橋された吸水性樹脂粉末(1)からなる吸水剤(1)を得た。」
(1-6)「[0191] [実施例2]
実施例1と同様の操作において、175μmの篩を透過した粒子(C)を米国特許第6228930号明細書に記載されたGranulation Example 1の方法に準じて造粒した。この造粒物をミートチョッパーで細分化したゲルと共に連続通風バンド乾燥機の移動する多孔板上に広げて載せ、185℃にて30分間乾燥し、乾燥重合体(1)295重量部(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量)を得た。
[0192] 乾燥工程以降は実施例1と同じ操作を行った。こうして、表面架橋された吸水性樹脂粉末(2)からなる吸水剤(2)を得た。なおこの時にリサイクルされた710μmの篩を透過しなかった粒子(A)は63重量部であった。すなわち、3段ロールミルへの総供給量は358重量部(粉砕工程への吸水性樹脂の総供給量)であり、また循環粉砕比は1.21であった。」
(1-7)「[0199] [実施例7]
図11に示したフローで乾燥重合体を粉砕・分級した以外は実施例2と同様の操作を行った。すなわち、図11は、4つの分級機(上流側から第1分級機、第2分級機、第3分級機、第4分級機と称する。)と5つの粉砕機とから構成される。
[0200] このフローにおいて、第1分級機は、上から目開き15mm、710μm、175μmを有する3種類の篩がこの順序で設置されている。また、第2~4分級機は、上から目開き710μm、175μmを有する2種類の篩がこの順序で設置されている。
[0201] 乾燥工程で得られた乾燥重合体は、実施例2と同様に3段ロールミルで粉砕され、第1分級機に供給される。
[0202] 第1分級機において、目開き15mmの篩を透過しなかった粒子(A’)は粉砕機(PinMill)に供給され、粉砕後、再度第1分級機に供給される。次に、目開き710μmを透過しなかった粒子(A1)は上記とは異なる粉砕機(3段ロールミル)に供給され、粉砕後、第2分級機に供給される。また、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B1)は表面架橋工程に供給される。さらに、目開き175μmの篩を透過した粒子(C1)は微分リサイクル工程に供給される。
[0203] 次いで、第1分級機から排出された粒子(A1)は、3段ロールミルで粉砕された後、第2分級機で分級した。第2分級機は上述したように目開き710μmおよび175μmの篩で構成されている。なお、710μmの篩の上部に目開き710μm以上の篩が存在してもよく、この篩を透過しない粒子が存在した場合、710μmを透過しなかった粒子として扱う。第2分級機において、連続的に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A2)、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B2)、目開き175μmの篩を透過した粒子(C2)に分級した。このうち、粒子(A2)は上記とは異なる粉砕機(2段ロールミル)に供給した。
[0204] 次いで、第2分級機から排出された粒子(A2)は、2段ロールミルで粉砕された後、第3分級機で分級した。第3分級機は、第2分級機と同じ構成であり、連続的に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A3)、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B3)、目開き175μmの篩を透過した粒子(C3)に分級した。このうち、粒子(A3)は上記とは異なる粉砕機(1段ロールミル)に供給した。
[0205] 次いで、第3分級機から排出された粒子(A3)は、1段ロールミルで粉砕された後、第4分級機で分級した。第4分級機は、第2分級機と同じ構成であり、連続的に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A4)、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B4)、目開き175μmの篩を透過した粒子(A4)に分級した。このうち、粒子(A4)は上記とは異なる粉砕機(1段ロールミル)に供給した。なお、上記ロールミルのロールギャップ(ロール間の隙間距離)は、各粒子の重量比が下記になるように調整された。
[0206] 本実施例において、実施例2と同様に造粒物と共に乾燥して得られた乾燥重合体は290.8重量部(乾燥工程での吸水性樹脂の総供給量)であった。
[0207] また、各粒子の重量比は、粒子(A’)8.1重量部、粒子(A1)270.2重量部、粒子(B1)18.9重量部、粒子(C1)1.7重量部、粒子(A2)88.1重量部、粒子(B2)152.9重量部、粒子(C2)29.2重量部、粒子(A3)26.4重量部、粒子(B3)52.0重量部、粒子(C3)9.7重量部、粒子(A4)7.7重量部、粒子(B4)22.2重量部、粒子(C4)4.2重量部であった。また、粉砕系への吸水性樹脂の総供給量は400.5重量部であり、循環粉砕比は1.38であった。
[0208] 粉砕工程以降は、実施例1と同様の操作を行った。こうして、表面架橋された吸水性樹脂粉体(7)からなる吸水剤(7)を得た。」
(1-8)「[0209][表1]
[図:0001429991000001.jpg]
[0210][表2]
[図:0001429991000002.jpg]
」
(1-9)「請求の範囲
[請求項1] アクリル酸(塩)水溶液を重合して含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程;
得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥して乾燥重合体を得る乾燥工程;
得られた乾燥重合体を粉砕手段により粉砕して粉砕重合体を得る粉砕工程;
得られた粉砕重合体を分級して分級重合体を得る分級工程;および、
得られた分級重合体を表面架橋する表面架橋工程;
を順次含む吸水性樹脂粉末の製造方法であって、
前記表面架橋工程前に、前記分級重合体の少なくとも一部が同一または別の前記粉砕工程に再度供給され、
この際、前記粉砕工程における下記式:
[数1]
(循環粉砕比)
=(粉砕工程への吸水性樹脂の総供給量)/(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量)
ただし、(粉砕工程への吸水性樹脂の総供給量)=(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量)+(同一または別の粉砕工程に再度供給される分級重合体の量)である、
で表される循環粉砕比が1.10~1.50であり、
前記乾燥重合体の含水率が8重量%以下であり、
前記分級工程で目開きの異なる2種類以上の篩が使用され、その最上部を含むオン品が再度粉砕されることを特徴とする、製造方法。」
(1-10)「
[図2]
[図:0001429991000003.jpg]
・・・
[図11]
[図:0001429991000004.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明
甲1の請求項1(摘記1-9)には、「アクリル酸(塩)水溶液を重合して含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程;
得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥して乾燥重合体を得る乾燥工程;
得られた乾燥重合体を粉砕手段により粉砕して粉砕重合体を得る粉砕工程;
得られた粉砕重合体を分級して分級重合体を得る分級工程;および、
得られた分級重合体を表面架橋する表面架橋工程;
を順次含む吸水性樹脂粉末の製造方法であって、
前記表面架橋工程前に、前記分級重合体の少なくとも一部が同一または別の前記粉砕工程に再度供給され、
この際、前記粉砕工程における下記式:
[数1]
(循環粉砕比)
=(粉砕工程への吸水性樹脂の総供給量)/(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量)
ただし、(粉砕工程への吸水性樹脂の総供給量)=(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量)+(同一または別の粉砕工程に再度供給される分級重合体の量)である、
で表される循環粉砕比が1.10~1.50であり、
前記乾燥重合体の含水率が8重量%以下であり、
前記分級工程で目開きの異なる2種類以上の篩が使用され、その最上部を含むオン品が再度粉砕されることを特徴とする、製造方法。」の発明が記載されている。その実施例の一つである実施例7([0199]~[0208]、摘記1-7)には、粉砕・分級のフローが「図11に示したフローで乾燥重合体を粉砕・分級した以外は実施例2と同様の操作を行った。すなわち、図11は、4つの分級機(上流側から第1分級機、第2分級機、第3分級機、第4分級機と称する。)と5つの粉砕機とから構成される」こと、並びに粉砕及び分級された各段階における粒子の重量比が[0207]に記載されるとおりであったこと等が記載されており、実施例2([0191]~[0192]、摘記1-6)には、「実施例1と同様の操作において、175μmの篩を透過した粒子(C)を米国特許第6228930号明細書に記載されたGranulation Example 1の方法に準じて造粒した。」と記載されており、実施例1については[0181]~[0190](摘記1-5)に記載されている。
そこで、甲1における実施例7、実施例2、実施例1及び図面等の記載を参酌すると、甲1には実施例7に基づいて以下の発明が記載されている。
「アクリル酸193.3重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液:64.4重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9):1.26重量部、0.1重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液:52重量部及び脱イオン水:134重量部からなる単量体水溶液(1)を作成する工程、
上記の単量体水溶液(1)に、48重量%水酸化ナトリウム水溶液97.1重量部をラインミキシングにて連続混合し、次いで、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液8.05重量部をラインミキシングにて連続混合し、得られた連続混合物を、両端に堰を有する平面ベルトに厚み約7.5mmで供給して、連続的に3分間重合を行い、含水ゲル状架橋重合体(1)を得る工程、
得られた含水ゲル状架橋重合体(1)をベルト進行方向に対して垂直方向に、おおよそ等間隔に連続して切断し、次に、孔径22mmのミートチョッパーで約1.5mmに細分化する工程、
後記する175μmの篩を透過した粒子(C1)~(C4)を米国特許第6228930号明細書に記載されたGranulation Example 1の方法に準じて造粒する工程、
造粒物をミートチョッパーで細分化したゲルと共に連続通風バンド乾燥機の移動する多孔板上に広げて載せ、185℃にて30分間乾燥し、乾燥重合体(1)290.8重量部(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量)を得る工程、
乾燥重合体(1)を、4つの分級機(上流側から第1分級機、第2分級機、第3分級機、第4分級機と称する。)と5つの粉砕機とから構成される以下の<粉砕・分級のフロー>で粉砕・分級する工程、及び、
得られた710~175μmの粒子径を有する吸水性樹脂粉体(1)100重量部に1,4-ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、および脱イオン水3.0重量部の混合液である表面処理剤(共有結合性表面架橋剤を含有)を均一に混合した後、混合物を208℃にて40分間加熱処理し、次いで、これを冷却し、イオン結合性表面架橋剤としての硫酸アルミニウム27.5重量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)1.17重量部、乳酸ナトリウム60重量%水溶液0.196重量部、およびプロピレングリコール0.029重量部からなる混合液を均一に混合し、その後、得られた粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕する工程、
を備える、表面架橋された吸水性樹脂粉体(1)からなる吸水剤(1)の製造方法。
<粉砕・分級のフロー>
第1分級機は、上から目開き15mm、710μm、175μmを有する3種類の篩がこの順序で設置されており、第2~4分級機は、上から目開き710μm、175μmを有する2種類の篩がこの順序で設置されており、
乾燥重合体(1)は3段ロールミルで粉砕され、第1分級機に供給され、
第1分級機において、目開き15mmの篩を透過しなかった粒子(A’)は粉砕機(PinMill)に供給され、粉砕後、再度第1分級機に供給され、次に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A1)は上記とは異なる粉砕機(3段ロールミル)に供給され、粉砕後、第2分級機に供給され、また、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B1)は表面架橋工程に供給され、さらに、目開き175μmの篩を透過した粒子(C1)は微粉リサイクル工程に供給され、
次いで、第1分級機から排出された粒子(A1)は、3段ロールミルで粉砕された後、第2分級機で分級され、第2分級機は上述したように目開き710μmおよび175μmの篩で構成されており、第2分級機において、連続的に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A2)、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B2)、目開き175μmの篩を透過した粒子(C2)に分級し、このうち、粒子(A2)は上記とは異なる粉砕機(2段ロールミル)に供給し、
次いで、第2分級機から排出された粒子(A2)は、2段ロールミルで粉砕された後、第3分級機で分級し、第3分級機は、第2分級機と同じ構成であり、連続的に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A3)、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B3)、目開き175μmの篩を透過した粒子(C3)に分級し、このうち、粒子(A3)は上記とは異なる粉砕機(1段ロールミル)に供給し、
次いで、第3分級機から排出された粒子(A3)は、1段ロールミルで粉砕された後、第4分級機で分級し、第4分級機は、第2分級機と同じ構成であり、連続的に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A4)、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B4)、目開き175μmの篩を透過した粒子(C4)に分級し、このうち、粒子(A4)は再度1段ロールミルに供給した。
<各粒子の重量比>
なお、上記ロールミルのロールギャップ(ロール間の隙間距離)は、各粒子の重量比が下記になるように調整された。
乾燥重合体(1)は290.8重量部(乾燥工程での吸水性樹脂の総供給量)であった。
また、各粒子の重量比は、粒子(A’)8.1重量部、粒子(A1)270.2重量部、粒子(B1)18.9重量部、粒子(C1)1.7重量部、粒子(A2)88.1重量部、粒子(B2)152.9重量部、粒子(C2)29.2重量部、粒子(A3)26.4重量部、粒子(B3)52.0重量部、粒子(C3)9.7重量部、粒子(A4)7.7重量部、粒子(B4)22.2重量部、粒子(C4)4.2重量部であった。また、粉砕系への吸水性樹脂の総供給量は400.5重量部であり、循環粉砕比は1.38であった。」(以下、「甲1発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)」及び「4重量%過硫酸ナトリウム水溶液」は、それぞれ本件発明1における「内部架橋剤」及び「重合開始剤」に相当し、甲1発明における「アクリル酸」と「48重量%水酸化ナトリウム水溶液」との組合せは、本件発明1における「少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体」に相当し、甲1発明における「得られた連続混合物を、両端に堰を有する平面ベルトに厚み約7.5mmで供給して、連続的に3分間重合を行い」及び「含水ゲル状架橋重合体(1)を得る工程」は、それぞれ本件発明1における「架橋重合して」及び「第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);」に相当する。
甲1発明における「ミートチョッパーで細分化したゲル」を「連続通風バンド乾燥機の移動する多孔板上に広げて載せ、185℃にて30分間乾燥し、乾燥重合体(1)290.8重量部(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量)を得る工程」は、本件発明1における「前記含水ゲル重合体を乾燥する段階(段階2);」に相当する。
甲1発明における「乾燥重合体(1)を、4つの分級機(上流側から第1分級機、第2分級機、第3分級機、第4分級機と称する。)と5つの粉砕機とから構成される以下の<粉砕・分級のフロー>で粉砕・分級する工程、」のうち、
「乾燥重合体(1)は3段ロールミルで粉砕され、第1分級機に供給され、
第1分級機において、目開き15mmの篩を透過しなかった粒子(A’)は粉砕機(Pin Mill)に供給され、粉砕後、再度第1分級機に供給され、次に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A1)は上記とは異なる粉砕機(3段ロールミル)に供給され、粉砕後、第2分級機に供給され、また、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B1)は表面架橋工程に供給され、さらに、目開き175μmの篩を透過した粒子(C1)は微粉リサイクル工程に供給され、」は、
「乾燥重合体(1)」が、本件発明1における「前記乾燥された重合体」に相当し、「目開き15mmの篩を透過しなかった粒子(A’)」及び「目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A1)」が、本件発明1における「直径が710μm以上である粒子」に相当することから、まとめると本件発明1における「(段階3)」と「前記乾燥された重合体を、直径が710μm以上である粒子及び直径が180μm未満である粒子が生じるように粉砕して、粒子を製造する段階」である限りにおいて一致する。
甲1発明における「乾燥重合体(1)を、4つの分級機(上流側から第1分級機、第2分級機、第3分級機、第4分級機と称する。)と5つの粉砕機とから構成される以下の<粉砕・分級のフロー>で粉砕・分級する工程、」のうち、
「次いで、第1分級機から排出された粒子(A1)は、3段ロールミルで粉砕された後、第2分級機で分級され、第2分級機は上述したように目開き710μmおよび175μmの篩で構成されており、第2分級機において、連続的に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A2)、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B2)、目開き175μmの篩を透過した粒子(C2)に分級し、このうち、粒子(A2)は上記とは異なる粉砕機(2段ロールミル)に供給し、
次いで、第2分級機から排出された粒子(A2)は、2段ロールミルで粉砕された後、第3分級機で分級し、第3分級機は、第2分級機と同じ構成であり、連続的に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A3)、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B3)、目開き175μmの篩を透過した粒子(C3)に分級し、このうち、粒子(A3)は上記とは異なる粉砕機(1段ロールミル)に供給し、
次いで、第3分級機から排出された粒子(A3)は、1段ロールミルで粉砕された後、第4分級機で分級し、第4分級機は、第2分級機と同じ構成であり、連続的に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A4)、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B4)、目開き175μmの篩を透過した粒子(A4)に分級し、このうち、粒子(A4)は再度1段ロールミルに供給した。」は、
「3段ロールミルで粉砕」、「2段ロールミルで粉砕」及び「1段ロールミルで粉砕」が、本件発明1における「2次粉砕」に相当し、「目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A2)」、「目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A3)」及び「目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A4)」が粉砕されることは、本件発明1における「前記段階3で製造された粒子の中の直径が前記基準直径以上である粒子のみ2次粉砕し、前記基準直径は、710μmである」に相当することから、まとめると本件発明1における「(前記粉砕された粒子を2次粉砕する段階(段階4)を含み、
前記段階4は、600μm以上850μm以下の直径範囲の中の基準直径を決定し、前記段階3で製造された粒子の中の直径が前記基準直径以上である粒子のみ2次粉砕し、前記基準直径は、710μmである、」に相当する。
甲1発明における「表面架橋された吸水性樹脂粉体(1)からなる吸水剤(1)の製造方法。」は、本件発明1における「高吸水性樹脂の製造方法。」に相当する。
そうすると、両者は、
「内部架橋剤および重合開始剤の存在下で、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して、第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);
前記含水ゲル重合体を乾燥する段階(段階2);
前記乾燥された重合体を、直径が710μm以上である粒子及び直径が180μm未満である粒子が生じるように粉砕して、粒子を製造する段階、および
前記粉砕された粒子を2次粉砕する段階(段階4)を含み、
前記段階4は、600μm以上850μm以下の直径範囲の中の基準直径を決定し、前記段階3で製造された粒子の中の直径が前記基準直径以上である粒子のみ2次粉砕し、前記基準直径は、710μmである、
高吸水性樹脂の製造方法。」の点で一致し、
相違点甲1-1:本件発明1は段階3において「前記乾燥された重合体を、直径が710μm以上である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して75.0wt%以上90wt%以下になるように粉砕して、」と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されない点
相違点甲1-2:本件発明1は段階3において「直径が180μm未満である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して8.0wt%以下になるように粉砕して、」と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されない点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。
イ 相違点甲1-1について
甲1発明における「目開き15mmの篩を透過しなかった粒子(A’)」、「目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A1)」、「目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B1)」及び「目開き175μmの篩を透過した粒子(C1)」の各粒子の重量比は、「粒子(A’)8.1重量部、粒子(A1)270.2重量部、粒子(B1)18.9重量部、粒子(C1)1.7重量部」であるから、直径が710μm以上である粒子が全体粒子の総重量に対して占める割合は、{(A’)+(A1)}/{(A’)+(A1)+(B1)+(C1)}×100=(8.1+270.2)/(8.1+270.2+18.9+1.7)×100=93.1重量%と計算される。よって、相違点甲1-1は実質的な相違点である。
また、甲1の[0013](摘記1-1)には、甲1発明が解決しようとする課題が「原料の変更や高額な設備投資を必要とせずに、簡便な手法で、大スケールの生産において、吸水性樹脂の物性(例えば、吸水速度や耐ダメージ性)を向上および安定させる方法を提供すること」にあることが記載され、その解決手段として「循環粉砕比が1.10~1.50である」(請求項1(摘記1-9)及び[0066]~[0069](摘記1-4))製造方法を採用することが記載されているところ、甲1発明における循環粉砕比というのは、{(A’)+(A1)+(A2)+(A3)+(A4)}/{乾燥重合体(1)(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量、[0185](摘記1-5)参照。)+(C1)+(C2)+(C3)+(C4)}という計算式で計算される値(具体的には、(8.1+270.2+88.1+26.4+7.7)/(246+1.7+29.2+9.7+4.2)=1.38と計算され、[0206]~[0207](摘記1-7)の記載と整合する。)であるから、甲1の記載に接した当業者が、循環粉砕比とは異なる相違点甲1-1に係る{(A’)+(A1)}/{(A’)+(A1)+(B1)+(C1)}×100という指標を用いて粉砕条件を調整することを動機付けられることはなく、まして、当該指標を「75.0wt%以上90wt%以下」という特定の数値範囲に調整することを動機付けられるものでもない。さらに、他の全ての証拠の記載を参照しても、当業者が甲1発明において、循環粉砕比とは異なる相違点甲1-1に係る{(A’)+(A1)}/{(A’)+(A1)+(B1)+(C1)}×100を指標とする動機があったとはいえず、当該指標を75.0wt%以上90wt%以下という特定の数値範囲に調整することを動機付けられたともいえない。よって、相違点甲1-1は甲1及び他の全ての証拠の記載を参酌しても、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は特許異議申立書及び回答書において以下のように主張するが、いずれの主張も採用することはできない。
(ア)特許異議申立書における主張について
申立人は、特許異議申立書の34~35頁において、甲1発明における2回目の粉砕後の直径が710μm以上である粒子(A2)の重量は、製造された全体粒子の総重量に対して88.1/290.8×100=30.3重量%であり、その割合が同一である範囲にて1回目の粉砕後の直径が710μm以上である粒子(A’)+(A1)の割合を制御すること、具体的には、甲1発明の1回目の粉砕の条件について、{(A’)+(A1)}/{(A’)+(A1)+(B1)+(C1)}×100を30.3超~93.1重量%の範囲で変更して、90重量%以下の範囲に変更することに対する阻害要因となる事項は、甲1には開示されていないと主張する。
しかし、上記イに記載したとおり、甲1に記載された課題解決手段は循環粉砕比を1.10~1.50に調整することであるから、甲1及び他の全ての証拠の記載を参照しても、当業者が甲1発明の1回目の粉砕の条件に着目する動機があったとはいえないし、まして、甲1発明における93.1重量%重量と計算される上記条件を「75.0wt%以上90wt%以下」という特定の数値範囲に変更する動機があったともいえない。
(イ)回答書の主張1について
申立人は、回答書の4~5頁において、「本件特許の明細書及び実施例にも「製造された全体粒子の総重量に対する直径が710μm以上である粒子の割合が90wt%以下」であることの有利な効果が記載されているとはいえない。」と主張している。
しかし、申立人の主張は、当業者が甲1発明において、循環粉砕比とは異なる1回目の粉砕の条件({(A’)+(A1)}/{(A’)+(A1)+(B1)+(C1)}×100)に着目し、当該条件を93.1重量%から「75.0wt%以上90wt以下」という特定の数値範囲に変更する動機があったことを、証拠の記載に基づいて具体的に論証するものではないから、上記イの判断を覆すには足りない。
(ウ)回答書の主張2について
申立人は、回答書の5~8頁において、甲2の実施例7では、2次粉砕後の吸水性樹脂粉体について、直径が710μm以上である粒子が全体粒子の総重量に対して占める割合が93.1wt%となるように粗粉砕されているが、本件実施例2~4に記載の吸水性樹脂粒子(相対微粉発生量=14.3~16.1%)と同等の微粉発生量の低減効果(14.7%ないしそれ以下)を奏しているといえ、よって、上記割合が75~90wt%となるように粗粉砕されている本件の実施例2~4が、当該割合が90wt%超(93.1wt%)となるように粗粉砕されている場合の例(例えば、甲2の実施例7)に対して優れた微粉発生量の低減効果を示すとはいえないから、本件発明1は「循環粉砕比が1.50より大きい」粉砕を規定する甲2とその実施例7から進歩性がないと主張している。
しかし、下記2.に記載するとおり、甲2の記載を参照しても、当業者が甲2の実施例7において、循環粉砕比とは異なる1回目の粉砕の条件({(A’)+(A1)}/{(A’)+(A1)+(B1)+(C1)}×100)を指標として用いて粉砕条件を調整することを動機付けられることはなく、まして、当該指標を「75.0wt%以上90wt%以下」という特定の数値範囲に調整することを動機付けられるものでもない。甲1発明と甲2の記載及び他の全ての証拠の記載を合わせても同様である。申立人の主張は甲1発明ないし甲2の実施例7において、上記指標を93.1重量%から「75.0wt%以上90wt以下」という特定の数値範囲に変更する動機があったことを、証拠の記載に基づいて具体的に論証するものではないから、上記イの判断を覆すには足りない。
(エ)回答書の主張3について
申立人は、回答書の8~13頁において、(主張3-1)粉砕の技術常識からも本件効果(相対微粉発生量、180μm以下の粒子量)は、当業者が予測可能な一般的な効果(粗く粉砕することで微粉発生量を低減、粉体工学の技術常識)にすぎないこと、(主張3-2)本件発明1の段階3の粉砕(粗粉砕)は、甲1及び甲2に記載の粉砕と同じく、甲1及び甲2の請求項1の定義から「全乾燥物中で710μm以上の再粉砕量で実質規定される」循環粉砕比が高い粉砕を意図することは自明であり、したがって、甲1及び甲2には本件発明1の段階3に相当する粉砕(710μm以上の粒子が75.0~90wt%)は直接開示されていないが、甲1及び甲2に記載の循環粉砕比の記載に基づき、当業者であれば吸水性樹脂の製造方法を構成する段階として適宜選択できる段階にすぎないこと、(主張3-3)甲1及び甲2の粉砕において、粒径が710μm以上である粒子の含有量が90~75wt%となるように、吸水性樹脂の粒度を粗くする方向に制御すれば、当該吸水性樹脂の粒度分布が粗くシフトするから、本件発明1における段階3において、粒径が180μm以下の粒子の含有量が8.0wt%以下であることは、粒径が710μm以上である粒子の含有量が90~75wt%であるとの特徴に内在し、それゆえ、本件発明1における段階3において、粒径が180μm以下の粒子の含有量を8.0wt%以下となるように粉砕するすることは、甲1及び甲2に記載の粉砕からの設計事項にすぎず、進歩性がないこと、を主張している。
しかし、上記のいずれの主張も、当業者が甲1発明において、循環粉砕比とは異なる1回目の粉砕の条件({(A’)+(A1)}/{(A’)+(A1)+(B1)+(C1)}×100)に着目し、当該条件を93.1重量%から「75.0wt%以上90wt以下」という特定の数値範囲に変更する動機があったことを、証拠の記載に基づいて具体的に論証するものではないから、上記イの判断を覆すには足りない。
(オ)回答書の主張4について
申立人は、回答書の13~18頁において、特許権者の意見書における主張は、同じ重量平均粒子径の吸水性樹脂粒子における粒度分布、特に粒径が180μm以下の粒子の含有量を比較するものではなく、単に、得られる吸水性樹脂粉体の粒径が粗くなるように粉砕すれば、当該吸水性樹脂粉体の粒度分布が粗い側にシフトして、粉砕後の重量平均粒径(μm)が増大するとともに微粉の量が減少するという粉体工学の技術常識を述べたにすぎず、また、粉砕後の重量平均粒子径(μm)と相対微粉発生量(%)は直線上にプロットでき、縦軸(相対微粉発生量)と横軸(重量平均粒子径)に特に変曲点や臨界的な意義がないことがわかるから、粉砕の一般常識からしても、甲1及び甲2に記載の循環粉砕比、並びに甲1の請求項1及び[0066]~[0067]、並びに甲2の請求項1及び[0066]~[0067]に開示された、710μmオン量が10wt%以上の粉砕から、粉砕後の微粉発生量を低減することを目的として、乾燥した重合体を粉砕(粗粉砕)する際に、得られる全粒子中の粒径が710μm以上である粒子の含有量を90~75wt%に制御することに進歩性はないと主張している。
しかし、甲1、甲2及び他の全ての証拠の記載を参照しても、当業者が甲1発明ないし甲2の実施例7において、循環粉砕比とは異なる1回目の粉砕の条件({(A’)+(A1)}/{(A’)+(A1)+(B1)+(C1)}×100)を指標として用いて粉砕条件を調整することの動機付けとなる記載はなく、当該指標を「75.0wt%以上90wt%以下」という特定の数値範囲に調整することを動機付ける記載もなく、さらに、本件特許の優先日において、甲1及び甲2において、得られる全粒子中の粒径が710μm以上である粒子の含有量を90~75wt%に制御することが一般常識であったことを裏付ける証拠も示されていないから、申立人の主張は上記イの判断を覆すには足りない。
(カ)回答書の主張5について
申立人は、回答書の18~24頁において、本件発明の課題である「優れた物性を維持しながら微粉発生を減少させること」について、本件発明1の高吸水性樹脂の製造方法による吸水速度の大幅な低下が実施例の表1で確認されており、また、B/D(嵩密度)の低下も確認されているから、本件請求項1で規定される要件、特に段階3に関する要件を充足することによって本件発明の課題を解決できることは何ら実証されていないこと、一方、粉砕循環比を特定の範囲に制御することにより規定される甲1及び甲2に記載の吸水性樹脂粉末(高吸水性樹脂)の製造方法の発明では、製造される吸水性樹脂粉末(高吸水性樹脂)に、SFC向上、FSR吸水速度の向上が確認されていることから、本件発明1は耐ダメージ性向上(微粉の低減)、SFC向上、FSR吸水速度の向上等の明確な物性向上が確認されている甲1及び甲2に記載の発明に対し、進歩性がないと主張している。
しかし、申立人の主張は、当業者が甲1発明ないし甲2の実施例7において、循環粉砕比とは異なる1回目の粉砕の条件({(A’)+(A1)}/{(A’)+(A1)+(B1)+(C1)}×100)に着目し、当該条件を93.1重量%から「75.0wt%以上90wt以下」という特定の数値範囲に変更する動機があったことを、証拠の記載に基づいて具体的に論証するものではないから、上記イの判断を覆すには足りない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~5について
本件発明2~5は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5はいずれも甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)取消理由1-1(甲1に基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1~5は、いずれも甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、取消理由1-1(甲1に基づく進歩性欠如)により本件発明1~5についての特許を取り消すことはできない。
2.取消理由1-2(甲2に基づく進歩性欠如)について
(1)甲2に記載された事項
甲2には以下の事項が記載されている。
(2-1)「[0013] そこで本発明は、上記問題点を改善するために、原料の変更や高額な設備投資を必要とせずに、簡便な手法で、大スケールの生産において、吸水性樹脂の物性(例えば、通液性や耐ダメージ性)を向上および安定させる方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0014] 上記課題を解決するために、本発明者らは、従来、上記の通液性や吸水速度の改良方法でなんら注目されて来なかった吸水性樹脂の粉砕工程に着目し、所定量以上を循環させることで、(同じ粒度で比較しても)吸水性樹脂の通液性や耐ダメージ性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。」
(2-2)「図面の簡単な説明
[0019]・・・
[図2]図2は、粉砕重合体を分級後に別の粉砕工程(第2粉砕工程)に再度供給するフローを示す概略図である。図1の概念図において、on品のみを第2粉砕工程に供給した後、第2分級工程で再度、”目的粒度(例えば850~150μm)”/on品/微粉に分級して、on品のみを粉砕工程(第2の粉砕工程)に供給し、第2分級工程のon品は必要により再粉砕(例えば第1粉砕工程または第2粉砕工程)に供給する。
・・・
[図11]図11は、図5の概念図において、さらに、図8の概念図にある、第1分級工程での”on品(粗粒)”を大小2つの粒度(例えば、小粗粒として5mm~850μm、大粗粒として5mm-on)に分級して、得られた2種類のon品を異なる粉砕工程(粉砕工程1、粉砕工程1’)に供給する概念図である。」
(2-3)「[0042] さらに、得られる吸水性樹脂の諸物性を改善するために、アクリル酸(塩)水溶液または重合後の含水ゲル、乾燥物または粉体に、澱粉、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレンイミン等の水溶性樹脂または吸水性樹脂や、各種の発泡剤(炭酸塩、アゾ化合物、気泡等)、界面活性剤、後述の添加剤を任意成分として添加してもよい。その添加量として、上記水溶性樹脂または吸水性樹脂は、単量体100重量%に対して0~50重量%が好ましく、0~20重量%がより好ましく、0~10重量%が特に好ましく、0~3重量%が最も好ましい。また、上記発泡剤、界面活性剤または添加剤は、単量体100重量%に対して0~5重量%が好ましく、0~1重量%がより好ましい。」
(2-4)「[0065] 本発明では、通液性(例えばSFC)の観点から、循環粉砕比の下限は1.50よりも大きく、さらには1.60以上、1.70以上、1.80以上、1.90以上、2.00以上、2.10以上の順に好ましい。一方、吸水速度(例えばFSR)の観点から、循環粉砕比の上限は、3.00以下、2.50以下、2.40以下、2.30以下、2.10以下、1.90以下、1.70以下、1.60以下の順に好ましい。
[0066] すなわち、吸水速度と通液性のバランスの観点から、循環粉砕比は上記の範囲で適宜決定されるが、好ましくは1.50超3.00以下である。このうち、通液性を目指す場合には好ましくは1.70~2.80、さらには1.90~2.70、特には2.10~2.50に制御される。
[0067] 従来、粉砕の技術常識からは、目的粒度(例えば、850~150μmまたは710μm通過物)に対して可能な限り分級後のオン品(篩上部)を低減させており、通常、on10%未満(本発明で規定する循環粉砕比が1.10未満)、さらには5%未満(同1.05未満)、特に1%未満(同1.01未満)とされてきたが、本発明では、吸水性樹脂の表面架橋工程前に、目的粒度に比べて分級後のオン品を増加させることで、表面架橋(特に有機表面架橋剤での表面架橋)後の吸水性樹脂の耐ダメージ性の低下を抑えつつ、通液性(SFC)を向上させることができる。
[0068] (制御方法)
上述した範囲(1.50超)に循環粉砕比を制御するには、粉砕工程を経て得られた粉砕重合体(粉砕された吸水性樹脂)が分級工程を経て分級重合体(分級された吸水性樹脂)とされたうえで、上記分級重合体の少なくとも一部が同一または別の粉砕工程に再度供給される。分級工程は国際公開特許2008/123477号などに例示の風力分級や気流分級でもよいが、効果の面で好ましくは篩分級が適用され、その際に、1種類以上の目開きの篩で分級される。その際、好ましくは、分級工程で目開きの異なる2種類以上、さらには3種類以上の篩が使用され、その最上部を含むオン品(例:粒子径850μm以上の粒子)が再度粉砕され、通過物(例:粒子径850μm未満の粒子)の分級重合体が表面架橋工程に供給される。さらに好ましくは、最上部を含むオン品(粒子径850μm以上の粒子)が再度粉砕され、通過物(例:粒子径850μm未満の粒子)から微粉(例:粒子径150μm未満の粒子)が除去されたものが表面架橋工程に供給される。好適なフローは図1~図3に示される。なお、図1~図12において、物性の向上および安定化のため、粉砕工程や分級工程は好ましくは後述の一定温度以上(さらには減圧工程)であり、また、各工程間は好ましくは空気輸送(露点0℃以下)で連結されてなる。
[0069] 本発明において用いられる篩の数や目開き(μm)は適宜決定され、目開きが1種類のみ(on品と通過物の分級)でもよいが、物性向上から好ましくは、異なる目開きで大小に2種類以上、好ましくは3~6種類、さらに好ましくは4~6種類で使用され、その目開きは大きい方の篩が710~2000μm、中間篩は850~150μm、下の篩は300~45μm、さらには250~106μmなどから選択される。また、本発明で目的粒度(例えば850~150μm)に対して、on品除去の篩(や微粉除去の篩)は1つのみ(例えば850μm)でもよく、さらに2種類以上(特に2種類、例えば850μmと2mm)でもよく、微粉除去の篩も同様に1種類または2種類以上(特に2種類)が使用される。」
(2-5)「[0172] [実施例1]
重合工程(ベルト上での静置重合)、ゲル細粒化(解砕)工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程(表面架橋剤の噴霧工程、加熱工程)、冷却工程、整粒工程および各工程間の輸送工程の各装置が接続され、各工程を連続して行うことができる吸水性樹脂の連続製造装置を用いた。各工程はそれぞれ1系列または2系列以上(並列で分岐;図4を参照)あってもよく、以下の実施例において2系列以上ある場合は全系列の合計量を示している。この連続製造装置の生産能力は、1時間あたり約3500kgである。この連続製造装置を用いて、吸水性樹脂粉体を連続製造した。
[0173] まず、以下の組成からなる単量体水溶液(1)を作成した。
[0174] 単量体水溶液(1)
アクリル酸:193.3重量部
48重量%水酸化ナトリウム水溶液:64.4重量部
ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9):1.26重量部
0.1重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液:52重量部
脱イオン水:134重量部
次に、上記の単量体水溶液(1)の温度を40℃に調整した。得られた単量体水溶液(1)を定量ポンプによって連続フィードし、単量体水溶液(1)に、48重量%水酸化ナトリウム水溶液97.1重量部をラインミキシングにて連続混合した。この時中和熱によって、モノマーの温度は85℃まで上昇した。
[0175] 次いで、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液8.05重量部をラインミキシングにて連続混合した。このラインミキシングにより得られた連続混合物を、両端に堰を有する平面ベルトに厚み約7.5mmで供給して、連続的に3分間重合を行い、含水ゲル状架橋重合体(1)を得た。
[0176] この含水ゲル状架橋重合体(1)をベルト進行方向に対して垂直方向に、おおよそ等間隔に連続して切断した。次に、孔径22mmのミートチョッパーで約1.5mmに細分化した。この細分化されたゲルを連続通風バンド乾燥機の移動する多孔板上に広げて載せ、185℃で30分間乾燥し、乾燥重合体(1)246重量部(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量)を得た。
[0177] 当該乾燥重合体(1)(約60℃)の全量を3段ロールミルに連続供給することで粉砕し、粉砕重合体(1)を得た。この3段ロールミルのロールギャップは、上から順に、0.8mm/0.65mm/0.48mmであった。粉砕工程の減圧度は0.29kPaとした。
[0178] この粉砕工程の後、得られた粉砕重合体(1)(約60℃)を目開き710μmおよび175μmの金属篩網を有する篩い分け装置で、710μmの篩を透過しなかった粒子(A)、710μmの篩を透過し、175μmの篩を透過しなかった粒子(B)、175μmの篩を透過した粒子(C)に連続的に分級した。710μmの篩を透過しなかった粒子(A)については再度3段ロールミルに供給され粉砕された。なお、分級工程の減圧度は0.11kPaとし、露点10℃、温度75℃の空気を2[m3/hr]で篩装置内を通過させた。揺動式円形篩い分け装置(振動数:230rpm、ラジアル傾斜(勾配):11mm、タンジェンシャル傾斜(勾配):11mm、偏心量:35mm、装置の温度:55℃)で分級し、この篩い分け装置が据え付けられている架台は、接地抵抗値が5Ωの接地(除電)を行った。
[0179] この時のリサイクルされていた710μmの篩を透過しなかった粒子(A)は175重量部であった。すなわち、3段ロールミルへの総供給量は421重量部(粉砕工程への吸水性樹脂の総供給量)であり、また循環粉砕比は1.71であった。こうして、連続的に710~175μmの粒子径を有する吸水性樹脂粉体(1)を得た。
[0180] 得られた吸水性樹脂粉体(1)100重量部に1,4-ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、および脱イオン水3.0重量部の混合液である表面処理剤(共有結合性表面架橋剤を含有)を均一に混合した後、混合物を208℃にて40分間加熱処理した。次いで、これを冷却し、イオン結合性表面架橋剤としての硫酸アルミニウム27.5重量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)1.17重量部、乳酸ナトリウム60重量%水溶液0.196重量部、およびプロピレングリコール0.029重量部からなる混合液を均一に混合した。
[0181] その後、得られた粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。なお、ここで解砕とは、710~175μmの粒子径を有する吸水性樹脂粉体(1)の表面
架橋時の凝集を710μm通過物としてほぐす操作である。こうして、表面架橋された吸水性樹脂粉末(1)からなる吸水剤(1)を得た。」
(2-6)「[0182] [実施例2]
実施例1と同様の操作において、175μmの篩を透過した粒子(C)を米国特許第6228930号明細書に記載されたGranulation Example 1の方法に準じて造粒した。この造粒物をミートチョッパーで細分化したゲルと共に連続通風バンド乾燥機の移動する多孔板上に広げて載せ、185℃にて30分間乾燥し、乾燥重合体(1)295重量部(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量)を得た。
[0183] 乾燥工程以降は実施例1と同じ操作を行った。こうして、表面架橋された吸水性樹脂粉末(2)からなる吸水剤(2)を得た。なおこの時にリサイクルされた710μmの篩を透過しなかった粒子(A)は172重量部であった。すなわち、3段ロールミルへの総供給量は467重量部(粉砕工程への吸水性樹脂の総供給量)であり、また循環粉砕比は1.58であった。」
(2-7)「[0189] [実施例7]
図11に示す粉砕系を用いた以外は実施例2と同様の操作を行った。
[0190] この粉体系において、最初のふるいの最上段のふるいは目開き15mmであり、15mmの網を透過しなかった粒子(A’)は粉砕機(PinMill)へ供給された。次に、15mmの網の下には目開き710μmの篩があり、この網を透過しなかった粒子(A1)は3段ロールミルへと供給された。次に、710μmの網の下には目開き175μmの篩があり、この網を透過しなかった粒子(B1)は表面架橋工程へと供給された。次に、目開き175μmの網を透過した粒子(C1)は微粉リサイクル工程へと供給された。
[0191] 粒子(A1)は3段ロールミルで粉砕された後、2つ目のふるいにて分級された。2つ目のふるいは、上段から目開き710μm、175μmの網で構成され(710μmの上段に目開き710μm以上の網が存在していてもよい。もし、この網が存在した場合は710μmを透過しなかった粒子として扱われる)、710μmの網を透過しなかった粒子(A2)、710μmの篩を透過し、175μmの篩を透過しなかった粒子(B2)、175μmの篩を透過した粒子(C2)に連続的に分級された。このうち粒子(A2)は、2段ロールミルへと供給された。
[0192] 粒子(A2)は2段ロールミルで粉砕された後、3つ目のふるいにて分級された。3つ目のふるいは、2つ目のふるいと同じ構成であり、同様に710μmの網を透過しなかった粒子(A3)、710μmの篩を透過し、175μmの篩を透過しなかった粒子(B3)、175μmの篩を透過した粒子(C3)に連続的に分級された。このうち粒子(A3)は、1段ロールミルへと供給された。
[0193] 粒子(A3)は1段ロールミルで粉砕された後、4つ目のふるいにて分級された。4つ目のふるいは、3つ目のふるいと同じ構成であり、同様に710μmの網を透過しなかった粒子(A4)、710μmの篩を透過し、175μmの篩を透過しなかった粒子(B4)、175μmの篩を透過した粒子(C4)に連続的に分級された。このうち粒子(A4)は、再度1段ロールミルへと供給された。
[0194] 上記、ロールミルのロールミルギャップ(ロール間の隙間距離)は、各粒子の重量比が下記になるように調整された。
[0195] 本実施例において、実施例2と同様に造粒物と共に乾燥して得られた乾燥重合体は282.7重量部(乾燥工程での吸水性樹脂の総供給量)であった。
[0196] また、各粒子の重量比は、粒子(A’)7.9重量部、粒子(A1)262.6重量部、粒子(B1)18.4重量部、粒子(C1)1.7重量部、粒子(A2)127.9重量部、粒子(B2)116.6重量部、粒子(C2)18.1重量部、粒子(A3)56.3重量部、粒子(B3)61.5重量部、粒子(C3)10.1重量部、粒子(A4)22.5重量部、粒子(B4)49.5重量部、粒子(C4)6.8重量部であった。また、粉砕系への吸水性樹脂の総供給量は477.2重量部であり、循環粉砕比は1.69であった。
[0197] 粉砕工程以降は、実施例1と同様の操作を行った。こうして、表面架橋された吸水性樹脂粉体(7)からなる吸水剤(7)を得た。」
(2-8)「[0199][表1]
[図:0001429991000005.jpg]
[0200][表2]
[図:0001429991000006.jpg]
」
(2-9)「特許請求の範囲
[請求項1] アクリル酸(塩)水溶液を重合して含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程;
得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥して乾燥重合体を得る乾燥工程;
得られた乾燥重合体を粉砕手段により粉砕して粉砕重合体を得る粉砕工程;
得られた粉砕重合体を分級して分級重合体を得る分級工程;および、
得られた分級重合体を表面架橋する表面架橋工程;
を順次含む吸水性樹脂粉末の製造方法であって、
前記表面架橋工程前に、前記分級重合体の少なくとも一部が同一または別の前記粉砕工程に再度供給され、
この際、前記粉砕工程における下記式:
[数1]
(循環粉砕比)
=(粉砕工程への吸水性樹脂の総供給量)/(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量)
ただし、(粉砕工程への吸水性樹脂の総供給量)=(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量)+(同一または別の粉砕工程に再度供給される分級重合体の量)である、
で表される循環粉砕比が1.50よりも大きく、
前記分級工程で目開きの異なる2種類以上の篩が使用され、その最上部を含むオン品が再度粉砕されることを特徴とする、製造方法。」
(2-10)「
[図2]
[図:0001429991000007.jpg]
・・・
[図11]
[図:0001429991000008.jpg]
」
(2)甲2に記載された発明
甲2の請求項1(摘記2-9)には、「アクリル酸(塩)水溶液を重合して含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程;
得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥して乾燥重合体を得る乾燥工程;
得られた乾燥重合体を粉砕手段により粉砕して粉砕重合体を得る粉砕工程;
得られた粉砕重合体を分級して分級重合体を得る分級工程;および、
得られた分級重合体を表面架橋する表面架橋工程;
を順次含む吸水性樹脂粉末の製造方法であって、
前記表面架橋工程前に、前記分級重合体の少なくとも一部が同一または別の前記粉砕工程に再度供給され、
この際、前記粉砕工程における下記式:
[数1]
(循環粉砕比)
=(粉砕工程への吸水性樹脂の総供給量)/(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量)
ただし、(粉砕工程への吸水性樹脂の総供給量)=(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量)+(同一または別の粉砕工程に再度供給される分級重合体の量)である、
で表される循環粉砕比が1.50よりも大きく、
前記分級工程で目開きの異なる2種類以上の篩が使用され、その最上部を含むオン品が再度粉砕されることを特徴とする、製造方法。」の発明が記載されている。その実施例の一つである実施例7([0189]~[0197]、摘記2-7)には、粉砕・分級のフローが「図11に示す粉砕系を用いた以外は実施例2と同様の操作を行った」ものであること、並びに粉砕及び分級された各段階における粒子の重量比が[0196]に記載されるとおりであったこと等が記載されており、実施例2([0182]~[0183]、摘記2-6)には、「実施例1と同様の操作において、175μmの篩を透過した粒子(C)を米国特許第6228930号明細書に記載されたGranulation Example 1の方法に準じて造粒した。」と記載されており、実施例1については[0172]~[0181](摘記2-5)に記載されている。
そこで、甲2における実施例7、実施例2、実施例1及び図面等の記載を参酌すると、甲2には実施例7に基づいて以下の発明が記載されている。
「アクリル酸193.3重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液:64.4重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9):1.26重量部、0.1重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液:52重量部及び脱イオン水:134重量部からなる単量体水溶液(1)を作成する工程、
上記の単量体水溶液(1)に、48重量%水酸化ナトリウム水溶液97.1重量部をラインミキシングにて連続混合し、次いで、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液8.05重量部をラインミキシングにて連続混合し、得られた連続混合物を、両端に堰を有する平面ベルトに厚み約7.5mmで供給して、連続的に3分間重合を行い、含水ゲル状架橋重合体(1)を得る工程、
得られた含水ゲル状架橋重合体(1)をベルト進行方向に対して垂直方向に、おおよそ等間隔に連続して切断し、次に、孔径22mmのミートチョッパーで約1.5mmに細分化する工程、
後記する175μmの篩を透過した粒子(C1)~(C4)を米国特許第6228930号明細書に記載されたGranulation Example 1の方法に準じて造粒する工程、
造粒物をミートチョッパーで細分化したゲルと共に連続通風バンド乾燥機の移動する多孔板上に広げて載せ、185℃にて30分間乾燥し、乾燥重合体(1)282.7重量部(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量)を得る工程、
乾燥重合体(1)を、図11に示される4つの分級機(上流側から最初のふるい、2つ目のふるい、3つ目のふるい、4つ目のふるいと称する。)と5つの粉砕機とから構成される以下の<粉砕・分級のフロー>で粉砕・分級する工程、及び、
得られた710~175μmの粒子径を有する吸水性樹脂粉体(1)100重量部に1,4-ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、および脱イオン水3.0重量部の混合液である表面処理剤(共有結合性表面架橋剤を含有)を均一に混合した後、混合物を208℃にて40分間加熱処理し、次いで、これを冷却し、イオン結合性表面架橋剤としての硫酸アルミニウム27.5重量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)1.17重量部、乳酸ナトリウム60重量%水溶液0.196重量部、およびプロピレングリコール0.029重量部からなる混合液を均一に混合し、その後、得られた粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕する工程、
を備える、表面架橋された吸水性樹脂粉体(1)からなる吸水剤(1)の製造方法。
<粉砕・分級のフロー>
最初のふるいの最上段のふるいは目開き15mmであり、15mmの網の下には目開き710μmの篩があり、710μmの篩の下には目開き175μmの篩があり、
2つ目のふるいは上段から目開き710μm、175μmの網で構成され、3つ目のふるい及び4つ目のふるいは2つ目のふるいと同じ構成であり、
乾燥重合体(1)は3段ロールミルで粉砕され、最初のふるいに供給され、
最初のふるいにおいて、目開き15mmの篩を透過しなかった粒子(A’)は粉砕機(PinMill)に供給され、粉砕後、再度最初のふるいに供給され、次に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A1)は上記とは異なる粉砕機(3段ロールミル)に供給され、粉砕後、2つ目のふるいに供給され、また、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B1)は表面架橋工程に供給され、さらに、目開き175μmの篩を透過した粒子(C1)は微粉リサイクル工程に供給され、
次いで、最初のふるいから排出された粒子(A1)は、3段ロールミルで粉砕された後、2つ目のふるいで分級され、2つ目のふるいは上述したように目開き710μmおよび175μmの篩で構成されており、2つ目のふるいにおいて、連続的に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A2)、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B2)、目開き175μmの篩を透過した粒子(C2)に分級し、このうち、粒子(A2)は上記とは異なる粉砕機(2段ロールミル)に供給し、
次いで、2つ目のふるいから排出された粒子(A2)は、2段ロールミルで粉砕された後、3つ目のふるいで分級し、3つ目のふるいは、2つ目のふるいと同じ構成であり、連続的に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A3)、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B3)、目開き175μmの篩を透過した粒子(C3)に分級し、このうち、粒子(A3)は上記とは異なる粉砕機(1段ロールミル)に供給し、
次いで、3つ目のふるいから排出された粒子(A3)は、1段ロールミルで粉砕された後、4つ目のふるいで分級し、4つ目のふるいは、3つ目のふるいと同じ構成であり、連続的に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A4)、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B4)、目開き175μmの篩を透過した粒子(C4)に分級し、このうち、粒子(A4)は再度1段ロールミルに供給した。
<各粒子の重量比>
なお、上記ロールミルのロールミルギャップ(ロール間の隙間距離)は、各粒子の重量比が下記になるように調整された。
乾燥重合体(1)は282.7重量部(乾燥工程での吸水性樹脂の総供給量)であった。
また、各粒子の重量比は、粒子(A’)7.9重量部、粒子(A1)262.6重量部、粒子(B1)18.4重量部、粒子(C1)1.7重量部、粒子(A2)127.9重量部、粒子(B2)116.6重量部、粒子(C2)18.1重量部、粒子(A3)56.3重量部、粒子(B3)61.5重量部、粒子(C3)10.1重量部、粒子(A4)22.5重量部、粒子(B4)49.5重量部、粒子(C4)6.8重量部であった。また、粉砕系への吸水性樹脂の総供給量は477.2重量部であり、循環粉砕比は1.69であった。」(以下、「甲2発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲2発明との対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)」及び「4重量%過硫酸ナトリウム水溶液」は、それぞれ本件発明1における「内部架橋剤」及び「重合開始剤」に相当し、甲2発明における「アクリル酸」と「48重量%水酸化ナトリウム水溶液」との組合せは、本件発明2における「少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体」に相当し、甲2発明における「得られた連続混合物を、両端に堰を有する平面ベルトに厚み約7.5mmで供給して、連続的に3分間重合を行い」及び「含水ゲル状架橋重合体(1)を得る工程」は、それぞれ本件発明1における「架橋重合して」及び「第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);」に相当する。
甲2発明における「ミートチョッパーで細分化したゲル」を「連続通風バンド乾燥機の移動する多孔板上に広げて載せ、185℃にて30分間乾燥し、乾燥重合体(1)282.7重量部(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量)を得る工程」は、本件発明1における「前記含水ゲル重合体を乾燥する段階(段階2);」に相当する。
甲2発明における「乾燥重合体(1)を、図11に示される4つの分級機(上流側から最初のふるい、2つ目のふるい、3つ目のふるい、4つ目のふるいと称する。)と5つの粉砕機とから構成される以下の<粉砕・分級のフロー>で粉砕・分級する工程、」のうち、
「乾燥重合体(1)は3段ロールミルで粉砕され、最初のふるいに供給され、
最初のふるいにおいて、目開き15mmの篩を透過しなかった粒子(A’)は粉砕機(PinMill)に供給され、粉砕後、再度最初のふるいに供給され、次に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A1)は上記とは異なる粉砕機(3段ロールミル)に供給され、粉砕後、2つ目のふるいに供給され、また、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B1)は表面架橋工程に供給され、さらに、目開き175μmの篩を透過した粒子(C1)は微粉リサイクル工程に供給され、」は、
「乾燥重合体(1)」が、本件発明1における「前記乾燥された重合体」に相当し、「目開き15mmの篩を透過しなかった粒子(A’)」及び「目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A1)」が、本件発明1における「直径が710μm以上である粒子」に相当することから、まとめると本件発明1における「(段階3)」と「前記乾燥された重合体を、直径が710μm以上である粒子及び直径が180μm未満である粒子が生じるように粉砕して、粒子を製造する段階」である限りにおいて一致する。
甲2発明における「乾燥重合体(1)を、図11に示される4つの分級機(上流側から最初のふるい、2つ目のふるい、3つ目のふるい、4つ目のふるいと称する。)と5つの粉砕機とから構成される以下の<粉砕・分級のフロー>で粉砕・分級する工程、」のうち、
「次いで、最初のふるいから排出された粒子(A1)は、3段ロールミルで粉砕された後、2つ目のふるいで分級され、2つ目のふるいは上述したように目開き710μmおよび175μmの篩で構成されており、2つ目のふるいにおいて、連続的に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A2)、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B2)、目開き175μmの篩を透過した粒子(C2)に分級し、このうち、粒子(A2)は上記とは異なる粉砕機(2段ロールミル)に供給し、
次いで、2つ目のふるいから排出された粒子(A2)は、2段ロールミルで粉砕された後、3つ目のふるいで分級し、3つ目のふるいは、2つ目のふるいと同じ構成であり、連続的に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A3)、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B3)、目開き175μmの篩を透過した粒子(C3)に分級し、このうち、粒子(A3)は上記とは異なる粉砕機(1段ロールミル)に供給し、
次いで、3つ目のふるいから排出された粒子(A3)は、1段ロールミルで粉砕された後、4つ目のふるいで分級し、4つ目のふるいは、3つ目のふるいと同じ構成であり、連続的に、目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A4)、目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B4)、目開き175μmの篩を透過した粒子(C4)に分級し、このうち、粒子(A4)は再度1段ロールミルに供給した。」は、
「3段ロールミルで粉砕」、「2段ロールミルで粉砕」及び「1段ロールミルで粉砕」が、本件発明1における「2次粉砕」に相当し、「目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A2)」、「目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A3)」及び「目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A4)」が粉砕されることは、本件発明1における「前記段階3で製造された粒子の中の直径が前記基準直径以上である粒子のみ2次粉砕し、前記基準直径は、710μmである」に相当することから、まとめると本件発明1における「(前記粉砕された粒子を2次粉砕する段階(段階4)を含み、
前記段階4は、600μm以上850μm以下の直径範囲の中の基準直径を決定し、前記段階3で製造された粒子の中の直径が前記基準直径以上である粒子のみ2次粉砕し、前記基準直径は、710μmである、」に相当する。
甲2発明における「表面架橋された吸水性樹脂粉体(1)からなる吸水剤(1)の製造方法。」は、本件発明1における「高吸水性樹脂の製造方法。」に相当する。
そうすると、両者は、
「内部架橋剤および重合開始剤の存在下で、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して、第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);
前記含水ゲル重合体を乾燥する段階(段階2);
前記乾燥された重合体を、直径が710μm以上である粒子及び直径が180μm未満である粒子が生じるように粉砕して、粒子を製造する段階、および
前記粉砕された粒子を2次粉砕する段階(段階4)を含み、
前記段階4は、600μm以上850μm以下の直径範囲の中の基準直径を決定し、前記段階3で製造された粒子の中の直径が前記基準直径以上である粒子のみ2次粉砕し、前記基準直径は、710μmである、
高吸水性樹脂の製造方法。」の点で一致し、
相違点甲2-1:本件発明1は段階3において「前記乾燥された重合体を、直径が710μm以上である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して75.0wt%以上90wt%以下になるように粉砕して、」と特定するのに対し、甲2発明はそのように特定されない点
相違点甲2-2:本件発明1は段階3において「直径が180μm未満である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して8.0wt%以下になるように粉砕して、」と特定するのに対し、甲2発明はそのように特定されない点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。
イ 相違点甲2-1について
甲2発明における「目開き15mmの篩を透過しなかった粒子(A’)」、「目開き710μmの篩を透過しなかった粒子(A1)」、「目開き175μmの篩を透過しなかった粒子(B1)」及び「目開き175μmの篩を透過した粒子(C1)」の各粒子の重量比は、「粒子(A’)7.9重量部、粒子(A1)262.6重量部、粒子(B1)18.4重量部、粒子(C1)1.7重量部」であるから、直径が710μm以上である粒子が全体粒子の総重量に対して占める割合は、{(A’)+(A1)}/{(A’)+(A1)+(B1)+(C1)}×100=(7.9+262.6)/(7.9+262.6+18.4+1.7)×100=93.1重量%と計算される。よって、相違点甲2-1は実質的な相違点である。
また、甲2の[0013](摘記2-1)には、甲2発明が解決しようとする課題が「原料の変更や高額な設備投資を必要とせずに、簡便な手法で、大スケールの生産において、吸水性樹脂の物性(例えば、吸水速度や耐ダメージ性)を向上および安定させる方法を提供すること」にあることが記載され、その解決手段として「循環粉砕比が1.50よりも大きい」(請求項1(摘記2-9)及び[0065]~[0069](摘記2-4))製造方法を採用することが記載されているところ、甲2発明における循環粉砕比というのは、{(A’)+(A1)+(A2)+(A3)+(A4)}/{乾燥重合体(1)(乾燥工程での吸水性樹脂の総排出量、[0176](摘記2-5)参照。)+(C1)+(C2)+(C3)+(C4)}という計算式で計算される値(具体的には、(7.9+262.6+127.9+56.3+22.5)/(246+1.7+18.1+10.1+6.8)=1.69と計算され、[0195]~[0196](摘記2-7)の記載と整合する。)であるから、甲2の記載に接した当業者が、循環粉砕比とは異なる相違点甲2-1に係る{(A’)+(A1)}/{(A’)+(A1)+(B1)+(C1)}×100という指標を用いて粉砕条件を調整することを動機付けられることはなく、まして、当該指標を「75.0wt%以上90wt%以下」という特定の数値範囲に調整することを動機付けられるものでもない。さらに、他の全ての証拠の記載を参照しても、当業者が甲2発明において、循環粉砕比とは異なる相違点甲2-1に係る{(A’)+(A1)}/{(A’)+(A1)+(B1)+(C1)}×100を指標とする動機があったとはいえず、当該指標を75.0wt%以上90wt%以下という特定の数値範囲に調整することを動機付けられたともいえない。よって、相違点甲2-1は甲2及び他の全ての証拠の記載を参酌しても、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は特許異議申立書及び回答書において、上記1.(3)ウと同様の主張をするが、甲2発明についても甲1発明の場合と同様のことがいえ、また、申立人の主張は、当業者が甲2発明において、循環粉砕比とは異なる1回目の粉砕の条件({(A’)+(A1)}/{(A’)+(A1)+(B1)+(C1)}×100)に着目し、当該条件を93.1重量%から「75.0wt%以上90wt以下」という特定の数値範囲に変更する動機があったことを、証拠の記載に基づいて具体的に論証するものではないから、上記イの判断を覆すには足りない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~5について
本件発明2~5は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5はいずれも甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)取消理由1-2(甲2に基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1~5は、いずれも甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、取消理由1-2(甲2に基づく進歩性欠如)により本件発明1~5についての特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由についての判断
当審は、取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由はいずれも理由がないものと判断する。理由は以下のとおり。
1.取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由の概要
上記第3に記載した特許異議申立理由のうち、取消理由通知で採用しなかった理由は、
・申立理由1-3(甲3に基づく進歩性欠如)
・申立理由1-4(甲4に基づく進歩性欠如)
・申立理由2(サポート要件違反)
・申立理由3(明確性要件違反)
である。以下、検討する。
2.申立理由1-3(甲3に基づく進歩性欠如)について
(1)甲3に記載された事項
甲3には以下の事項が記載されている。
(3-1)「[0011] よって、本発明は、上記従来の問題点に鑑みられたものであり、物性の低下なく、より簡便に吸水性樹脂の粒子径を本質的に制御できる、吸水性樹脂の製造方法を提供することにある。
[0012] 本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、従来、上記特許文献1~26等でなんら着目されてこなかった「乾燥終了後から粉砕開始までの時間」に初めて着目した。そして、乾燥工程の終了時点から粉砕工程の開始時点までの時間を一定時間以上に制御することで、微粉の発生を抑え、効率的に粉砕できることを見出し、本発明を完成させた。」
(3-2)「[0062] (2-3)含水ゲル状重合体を細粒化する工程(細粒化工程)
乾燥効率の面と乾燥後の粉砕効率の面から、乾燥前の含水ゲル状重合体が重合中ないし重合後に細粒化されていることが好ましい。ここで、細粒化方法としては、特に制限されず、公知の方法が同様にして使用できる。例えば、粉砕機(ニーダー、ミートチョパー、カッターミルなど)を用いてゲルを細粒化(粉砕)できる。ゲル細粒化時の含水ゲルの温度は、特に制限されないが、物性面から、好ましくは40~100℃、さらには50~70℃で行われる。含水ゲルの樹脂固形分は上記範囲である。水や、多価アルコール、水と多価アルコールの混合液、水に多価金属を溶解した溶液あるいはこれらの蒸気等を添加しても良い。」
(3-3)「[0073] 本発明は(2-4)乾燥工程と(2-6)粉砕工程の間の時間に注目し、ある時間を持った中間工程を加えるという構成となっている。本発明は、一般的な乾燥方法および粉砕方法における課題を解決する方法であって、乾燥物保持時間を置くことで、粉砕が容易になる。この推定メカニズムを以下に述べるが、本発明はこの推定メカニズムにとらわれない。得られた乾燥物は全体としては一様に乾燥されているように見えても、一粒子内部では水分分布が不均一であり、熱風、伝熱管などの加熱媒体が接触している粒子表面は含水率が低く、粒子内部は含水率が高くなっており、粒子径が大きくなるほど、粒子表面と内部の含水率の差は大きくなっていると考えられる。一方、一定の乾燥物保持時間を経た乾燥物は水分分布が均一に近付いていると考えられる。本発明において、粉砕時の粒子径制御の容易さはこの水分分布の均一性によるものと推定される。
[0074] (b)時間と温度
乾燥機を出たときから粉砕機に入るまで、乾燥物保持時間は3分以上(10時間以内)、5分~3時間、7分~2時間、10分~1時間半、10分~1時間、15分~1時間、20分~1時間、20分~50分の順で好ましい。このような乾燥物保持時間であれば、粉砕物中の、150μm以上850μm未満の所望の粒子径をもつ粒子の割合を十分(全粒子に対して、好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上にまで)向上することができる。中でも、乾燥物の含水率が比較的高い場合、特に9重量%以上の場合、実施例1~7の図2、実施例23~26の図6、実施例27~30の図7および実施例31~34の図8に示されるように、粒度制御の面から乾燥物保持時間は長いほど好ましく(例えば、10分以上が好ましく、15分以上がより好ましく、20分以上が特に好ましい)、また、含水率が比較的低い場合、特に9重量%未満の場合、実施例8~12の図3、実施例13~18の図4および実施例19~22の図5に示されるように、乾燥物保持時間は乾燥物の含水率が高い場合に比して短いことが好ましく、例えば、このような場合には、乾燥物保持時間は3分以上が好ましく、より好ましくは5分以上で十分である。この理由としては以下のように想像される。乾燥工程において、まず粒子状含水ゲルの表面の含水率が低下し、続いて乾燥物内部の含水率が低下する。すなわち、初めは粒子状含水ゲルの表面と内部の含水率の差は広がると考えられるが、乾燥が進行すると粒子状含水ゲルの内部でも乾燥が進んで、表面と内部の含水率の差は広がらなくなり、さらに乾燥が進行し、表面が十分乾燥されると逆に表面と内部の含水率の差は狭まると考えられる。従って、乾燥物の含水率が高い場合、特に含水率が9重量%以上の場合に、好ましい乾燥物保持時間に比べ、さらに乾燥が進む(表面と内部の含水率の差を小さくする)ように、乾燥物保持時間を比較的長くすることが好ましい。これに対して、乾燥物の含水率が低く、特に含水率が9重量%未満の場合には、好ましい乾燥物保持時間が比較的短くても、表面が十分乾燥されて、表面と内部の含水率を十分小さくすることができると考えられる。ただし、表面と内部の含水率の差を減らして乾燥物保持時間を3分未満とするためには、長時間の乾燥が必要となり、乾燥機が大きくなる上に、乾燥物が劣化する。なお、本発明は、上記推測に限定されない。」
(3-4)「[0084] (e)粗解砕工程
本発明では、乾燥工程の後に凝集した乾燥物の粗解砕工程を任意にもつ。すなわち、乾燥工程後に凝集した乾燥物の粗解砕工程を行うことができる。ここで、粗解砕とは得られた乾燥物が凝集物(ブロック状物)である場合、流動性ある粒子状にする機械的操作であり、さらに、粗解砕とは凝集物を構成する乾燥粒子の物理的破壊や粒子径の有意な減少にまでは至らず、数mm~数10mm程度にまで軽く凝集を解す機械的操作である。特に乾燥物が3mm以上の乾燥粒子ないし凝集物を含む場合、特に5重量%以上含む場合に好適に適用される。
[0085] なお、後述の粉砕と粗解砕との違いは、前者が粒子の粉砕が主であるのに対して、後者は粒子間(乾燥粒子)の凝集を解砕することが主になる。一般的には粗解砕で粒子径850μm以上が主成分(50重量%超)、好ましくは80重量%以上であり、また、粉砕工程では850μm未満が主成分、好ましくは70重量%、特に80重量%以上とされる。」
(3-5)「[0093] (g)分級工程
乾燥後の凝集物が粒子状にされたのち、粉砕前に分級してもよい(図10中の「分級工程-1」に相当)。すなわち、粉砕工程の前に、更に乾燥物の分級工程を行うことが好ましい。粉砕前の分級によって目的粒度を満たす粒子はあえて粉砕せずとも、次の工程(例;表面架橋工程など)に送付することで、粉砕の負荷や粉砕に伴う微粉の発生を低減することができる。
[0094] ここで、必要により分級する場合、例えば、目的の粒子径(例;850μm通過物)の粒子を分級により取得して、目的外の粒子径(例;850μm以上)の粒子のみを粉砕すればよく、また、必要により上記目的外の粒子径(粒度)の中でもさらに目開きが2~10mmの篩で分けて、粒度ごとに本願の必須とする乾燥物保持時間を変化させてもよい。一般に粒子径が大きい乾燥物は含水率が高くなりやすく、乾燥物保持時間を長くとることが好ましい。
[0095] 必要により行われる分級には、後述の各種分級装置が用いられる。その際に、分級工程は減圧さらには除電される。」
(3-6)「[0114] このようにして粉砕された粉砕物の大きさは、特に制限されず、所望の用途に応じて適宜選択される。好ましくは、粉砕物の60重量%以上、より好ましくは70~99重量%が、さらにより好ましくは75~97重量%、さらに好ましくは80~95重量%が粒子径850μm未満の粒子である。また、粉砕物の、好ましくは75~99重量%、より好ましくは79~97重量%、さらにより好ましくは80~95重量%、特に好ましくは83~90重量%が150μm以上850μm未満の粒子である。粉砕物の重量平均粒子径(D50)は、下記に制限されないが、好ましくは200~700μm、より好ましくは300~600μmに調整される。
[0115] (2-7)分級工程(粉砕後の分級)
(a)目的の粒度
粉砕により得られた粒子状吸水性樹脂は、分級工程で、質量平均粒子径(D50)としては200~600μm、好ましくは200~550μm、より好ましくは250~500μm、特に好ましくは350~450μmに調整され、衛材向けであれば、その後に通常は表面架橋が施されることが好ましい。分級工程により得られる吸水性樹脂は、衛材向けであれば、好ましくは150μm以上850μm未満の粒子が80~99重量%、さらには90~99重量%を占めるように粉砕される。150μm通過物の微粉が多いと物性低下が起り、微粉を1%未満に低減させるには粉砕効率が低下することもある。微粉は適宜除去されて、後述のようにリサイクルされる。また、150μm未満の粒子が少ないほどよく、通常0~5重量%、好ましくは0~3重量%、特に好ましくは0~1重量%に調整される。さらに、850μm以上の粒子が少ないほどよく、通常0~20重量%、好ましくは0~5重量%、特に好ましくは0~1重量%に調整される。粉砕工程で発生し、分級工程で分離された微粉は必要により、リサイクルされる。また、目的外の大きい粒子(例えば粒子径が850μm以上)は再び粉砕工程に戻しても良いが、粉砕機の負荷を上げないために、その割合は粉砕量の20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。上記表面架橋前の粒子状吸水性樹脂の粒度は好ましくは表面架橋後さらには最終製品にも適用され、表面架橋後に再度分級してもよい。また、上記粒度分布の対数標準偏差(σζ)が好ましくは0.2~0.6、より好ましくは0.2~0.5、さらに好ましくは0.2~0.4、さらにより好ましくは0.27~0.4、最も好ましくは0.3~0.4とされる。これらの測定方法については、標準篩を用いて、例えば、国際公開第2004/069915号やEDANA-ERT420.2-02に記載されている。」
(3-7)「[0189] 〔製造例3〕
48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液を6.50g/秒、アクリル酸を7.68g/秒、1重量%N,N’-メチレンビスアクリルアミド水溶液(流量0.668g/秒)と1重量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液(流量0.048g/秒)との混合溶液を0.199g/秒、および水を6.27g/秒の流量になるように設定して連続的にミキサーに供給することによって、単量体水溶液を調整した。このとき、単量体水溶液の温度は85℃であった。
[0190] この調製された単量体水溶液に、さらに、1.0重量%過硫酸ナトリウム水溶液を流量1.30g/秒で加えた後、約100℃に保温された200cm/分の速度で走行するエンドレスベルトに、単量体水溶液を連続的に供給した。ベルト上に連続的に供給された単量体水溶液は速やかに重合を開始し、帯状の含水ゲルシート(含水ゲル状重合体)が得られた。
[0191] この含水ゲルシートを直径7.5mmのスクリーンを有するミートチョッパー(平賀工作所製)を用いて連続的に細粒化して、粒子状含水ゲル(e)を得た。このとき粒子状含水ゲル(e)の含水率は50重量%であった。また、湿式法により粒子状含水ゲル(e)の粒子径分布を測定したところ、重量平均粒子径(D50)は1.3mm、粒子状含水ゲル(e)の全重量に対して、3mm以上の粒子径をもつゲル粒子は24.2重量%、850μm未満の粒子径をもつゲル粒子は29.0重量%であった。」
(3-8)「[0201] 〔実施例19〕
上記製造例3で得られた粒子状含水ゲル(e)250gを縦20cm、横14cm、20メッシュの金網の上に厚さ約30mmで堆積させ、熱風乾燥機(商品名「通気流回分式乾燥機71-S6型」、(株)佐竹化学機械工業)で180℃、20分間乾燥させた。得られた乾燥物(g)は含水率が6重量%で、ゆるやかに凝集し、ブロック状となっていた。
[0202] この乾燥物(g)を乾燥機から取り出した後、すぐに凝集を解し、目開きが850μmおよび150μmの篩で2分間、分級を行った。このとき、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子は全乾燥物(g)の2.5重量%であり、粒子径が150μm未満の粒子は全乾燥物(g)の0.4重量%であった。また、粒子径が850μm以上の粗大粒子(On品)は、発泡スチロール製容器に移し、1.5分間貯蔵した。乾燥機から取り出してから3.5分(即ち、乾燥物保持時間=3.5分)後に、粒子径が850μm以上の粗大粒子(On品)を、ロールクリアランスが0.3mmに設定されたロールミル(WML型ロールミル粉砕機、有限会社井ノ口技研製)を1kg/分の速度で、一回通して粉砕した。なお、粉砕に供される粗大粒子(On品)の温度は85℃であった。
[0203] このようにして得られた粉砕物(C9)を、目開き850μmと150μmの篩で分級し、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子状吸水性樹脂の割合(重量%)を測定した。乾燥物保持時間(3.5分)と、得られたロールミル粉砕物(C9)の150μm以上850μm未満の粒子径をもつ粒子の割合(重量%)との関係を下記表4および図5に示す。」
(3-9)「[0208]
[表4]
[図:0001429991000009.jpg]
」
(3-10)「請求の範囲
[請求項1] アクリル酸(塩)を含む水溶液の重合工程、得られる含水ゲル状重合体の乾燥工程、乾燥物の粉砕工程、粉砕物の分級工程、及び、必要により分級物の表面架橋工程を含むポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の連続製造方法であって、
(a)上記乾燥工程と上記粉砕工程とが、貯蔵工程と輸送工程を含んで連結され、かつ、
(b)上記乾燥工程の終了時点から上記粉砕工程の開始時点までの乾燥物保持時間を3分以上とすることを特徴とする、粒子状吸水性樹脂の製造方法。
[請求項2] 上記貯蔵工程および上記輸送工程の少なくとも一部を減圧下とする、請求項1に記載の製造方法。
[請求項3] 上記乾燥工程後に乾燥物を冷却する工程を行う、請求項1または2に記載の製造方法。
[請求項4] 上記乾燥工程後に凝集した乾燥物の粗解砕工程を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項5] 上記乾燥物の含水率が3~15重量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
[請求項6] 上記粉砕工程の前に、更に乾燥物の分級工程を行う、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。」
(2)甲3に記載された発明
甲3の請求項1、4及び6(摘記3-10)には、「アクリル酸(塩)を含む水溶液の重合工程、得られる含水ゲル状重合体の乾燥工程、乾燥物の粉砕工程、粉砕物の分級工程、及び、必要により分級物の表面架橋工程を含むポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の連続製造方法であって、
(a)上記乾燥工程と上記粉砕工程とが、貯蔵工程と輸送工程を含んで連結され、かつ、
(b)上記乾燥工程の終了時点から上記粉砕工程の開始時点までの乾燥物保持時間を3分以上とすることを特徴とする、粒子状吸水性樹脂の製造方法。」、「上記乾燥工程後に凝集した乾燥物の粗解砕工程を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。」及び「上記粉砕工程の前に、更に乾燥物の分級工程を行う、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。」の発明が記載されており、[0062](摘記3-2)には、「乾燥効率の面と乾燥後の粉砕効率の面から、乾燥前の含水ゲル状重合体が重合中ないし重合後に細粒化されていることが好ましい」ことが記載されている。そして、上記の工程を備えた実施例の一つである実施例19([0201]~[0203]、摘記3-8)には、「製造例3で得られた粒子状含水ゲル(e)」を用いた粒子状吸水性樹脂の製造方法が記載され、[0208]の[表4](摘記3-9)には、得られた粒子状吸水性樹脂粒子の粒子径分布が記載され、製造例3については[0189]~[0191](摘記3-7)に記載されている。
そこで、甲3における実施例19、製造例3及び表4等の記載を参酌すると、甲3には実施例19に基づいて以下の発明が記載されている。
「48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液を6.50g/秒、アクリル酸を7.68g/秒、1重量%N,N’-メチレンビスアクリルアミド水溶液(流量0.668g/秒)と1重量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液(流量0.048g/秒)との混合溶液を0.199g/秒、および水を6.27g/秒の流量になるように設定して連続的にミキサーに供給することによって、単量体水溶液を調製する工程、
調製された単量体水溶液に、さらに、1.0重量%過硫酸ナトリウム水溶液を流量1.30g/秒で加えた後、約100℃に保温された200cm/分の速度で走行するエンドレスベルトに、単量体水溶液を連続的に供給し、ベルト上に連続的に供給された単量体水溶液を重合させ、帯状の含水ゲルシート(含水ゲル状重合体)を得る工程、
得られた含水ゲルシートを直径7.5mmのスクリーンを有するミートチョッパー(平賀工作所製)を用いて連続的に細粒化して、粒子状含水ゲル(e)を得る工程であって、粒子状含水ゲル(e)の含水率は50重量%であり、湿式法により粒子状含水ゲル(e)の粒子径分布を測定したとき、重量平均粒子径(D50)は1.3mm、粒子状含水ゲル(e)の全重量に対して、3mm以上の粒子径をもつゲル粒子は24.2重量%、850μm未満の粒子径をもつゲル粒子は29.0重量%である工程、
得られた粒子状含水ゲル(e)250gを縦20cm、横14cm、20メッシュの金網の上に厚さ約30mmで堆積させ、熱風乾燥機(商品名「通気流回分式乾燥機71-S6型」、(株)佐竹化学機械工業)で180℃、20分間乾燥させ、含水率が6重量%で、ゆるやかに凝集し、ブロック状となっている乾燥物(g)を得る工程、
乾燥物(g)を乾燥機から取り出した後、すぐに凝集を解し、目開きが850μmおよび150μmの篩で2分間、分級を行う工程であって、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子は全乾燥物(g)の2.5重量%であり、粒子径が150μm未満の粒子は全乾燥物(g)の0.4重量%である工程、
粒子径が850μm以上の粗大粒子(On品)を、発泡スチロール製容器に移し、1.5分間貯蔵し、乾燥機から取り出してから3.5分(即ち、乾燥物保持時間=3.5分)後に、粒子径が850μm以上の粗大粒子(On品)を、ロールクリアランスが0.3mmに設定されたロールミル(WML型ロールミル粉砕機、有限会社井ノ口技研製)を1kg/分の速度で、一回通して粉砕する工程、
得られた粉砕物(C9)を、目開き850μmと150μmの篩で分級する工程であって、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子状吸水性樹脂の割合が81.1重量%であり、粒子径が150μm未満の粒子状吸水性樹脂の割合が6.6重量%である工程、
を備える、粒子状吸水性樹脂の製造方法。」(以下、「甲3発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲3発明との対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明における「N,N’-メチレンビスアクリルアミド」及び「1.0重量%過硫酸ナトリウム水溶液」は、それぞれ本件発明1における「内部架橋剤」及び「重合開始剤」に相当し、甲3発明における「アクリル酸」と「48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液」との組合せは、本件発明1における「少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体」に相当し、甲3発明における「約100℃に保温された200cm/分の速度で走行するエンドレスベルトに、単量体水溶液を連続的に供給し、ベルト上に連続的に供給された単量体水溶液を重合させ、」及び「帯状の含水ゲルシート(含水ゲル状重合体)を得る工程、」は、それぞれ本件発明1における「架橋重合して」及び「第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);」に相当する。
甲3発明における「得られた含水ゲルシートを直径7.5mmのスクリーンを有するミートチョッパー(平賀工作所製)を用いて連続的に細粒化」して「得られた粒子状含水ゲル(e)250gを縦20cm、横14cm、20メッシュの金網の上に厚さ約30mmで堆積させ、熱風乾燥機(商品名「通気流回分式乾燥機71-S6型」、(株)佐竹化学機械工業)で180℃、20分間乾燥させ、含水率が6重量%で、ゆるやかに凝集し、ブロック状となっている乾燥物(g)を得る工程、」は、本件発明1における「前記含水ゲル重合体を乾燥する段階(段階2);」に相当する。
甲3発明における「乾燥物(g)を乾燥機から取り出した後、すぐに凝集を解し、目開きが850μmおよび150μmの篩で2分間、分級を行う工程」に続く「粒子径が850μm以上の粗大粒子(On品)を、発泡スチロール製容器に移し、1.5分間貯蔵し、乾燥機から取り出してから3.5分(即ち、乾燥物保持時間=3.5分)後に、粒子径が850μm以上の粗大粒子(On品)を、ロールクリアランスが0.3mmに設定されたロールミル(WML型ロールミル粉砕機、有限会社井ノ口技研製)を1kg/分の速度で、一回通して粉砕する工程、」は、本件発明1における「前記乾燥された重合体を、直径が710μm以上である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して75.0wt%以上90wt%以下になるように粉砕して、直径が180μm未満である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して8.0wt%以下になるように粉砕して、粒子を製造する段階(段階3)」と、「前記乾燥された重合体を、粉砕して、粒子を製造する段階」である限りにおいて一致する。
甲3発明における「粒子状吸水性樹脂の製造方法。」は、本件発明1における「高吸水性樹脂の製造方法。」に相当する。
そうすると、両者は、
「内部架橋剤および重合開始剤の存在下で、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して、第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);
前記含水ゲル重合体を乾燥する段階(段階2);
前記乾燥された重合体を、粉砕して、粒子を製造する段階を含む、
高吸水性樹脂の製造方法。」の点で一致し、
相違点甲3-1:本件発明1は段階3において「前記乾燥された重合体を、直径が710μm以上である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して75.0wt%以上90wt%以下になるように粉砕して、」と特定するのに対し、甲3発明はそのように特定されない点
相違点甲3-2:本件発明1は段階3において「直径が180μm未満である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して8.0wt%以下になるように粉砕して、」と特定するのに対し、甲3発明はそのように特定されない点
相違点甲3-3:本件発明1は「前記粉砕された粒子を2次粉砕する段階(段階4)を含み、前記段階4は、600μm以上850μm以下の直径範囲の中の基準直径を決定し、前記段階3で製造された粒子の中の直径が前記基準直径以上である粒子のみ2次粉砕し、前記基準直径は、710μmである、」と特定するのに対し、甲3発明はそのように特定されない点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。
イ 相違点甲3-1及び相違点甲3-3について
まず、甲3発明における「乾燥物(g)を乾燥機から取り出した後、すぐに凝集を解し、目開きが850μmおよび150μmの篩で2分間、分級を行う工程」は、甲3の[0084]~[0085](摘記3-4)に記載された「粗解砕工程」に相当する工程であり、同段落に「粗解砕とは凝集物を構成する乾燥粒子の物理的破壊や粒子径の有意な減少にまでは至らず、数mm~数10mm程度にまで軽く凝集を解す機械的操作である。・・・なお、後述の粉砕と粗解砕との違いは、前者が粒子の粉砕が主であるのに対して、後者は粒子間(乾燥粒子)の凝集を解砕することが主になる。」と記載されていることを参酌すると、上記工程は本件発明1における段階3及び段階4のいずれの粉砕工程にも当たらないことが明らかである。
また、甲3発明において上記工程に引き続いて行われる「粒子径が850μm以上の粗大粒子(On品)を、発泡スチロール製容器に移し、1.5分間貯蔵し、乾燥機から取り出してから3.5分(即ち、乾燥物保持時間=3.5分)後に、粒子径が850μm以上の粗大粒子(On品)を、ロールクリアランスが0.3mmに設定されたロールミル(WML型ロールミル粉砕機、有限会社井ノ口技研製)を1kg/分の速度で、一回通して粉砕する工程、」及び「得られた粉砕物(C9)を、目開き850μmと150μmの篩で分級する工程であって、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子状吸水性樹脂の割合が81.1重量%であり、粒子径が150μm未満の粒子状吸水性樹脂の割合が6.6重量%である工程、」については、「一回」の粉砕で「粒子径が150μm以上850μm未満の粒子状吸水性樹脂の割合が81.1重量%」の粉砕物を得ているから、相違点甲3-1に係る「直径が710μm以上である粒子」の割合に着目した粉砕を行うものではなく、さらに、仮に粒子径の点を措くとしても、「目開き850μmと150μmの篩で分級」した後に、相違点甲3-3に係る粗大粒子を二次粉砕する工程を行うものでもない点で明らかに相違する。ここで、甲3の[0114](摘記3-6)には、粉砕物の大きさに関し、「粉砕物の重量平均粒子径(D50)は、下記に制限されないが、好ましくは200~700μm、より好ましくは300~600μmに調整される。」という、710μmを下回る粒子径(D50)を中心とする分布を推奨する記載があり、さらに、[0115](摘記3-6)には、分級工程に関し、「目的外の大きい粒子(例えば粒子径が850μm以上)は再び粉砕工程に戻しても良いが、粉砕機の負荷を上げないために、その割合は粉砕量の20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。」とも記載されているから、これらの記載に接した当業者が、甲3発明の粉砕工程において「目的外の大きい粒子」に当たる相違点甲3-1に係る「直径が710μm以上である粒子」を「製造された全体粒子の総重量に対して75.0wt%以上90wt%以下になるように粉砕」することを動機付けられることはなく、さらに、当該「75.0wt%以上90wt%以下」という高い割合の粗大粒子を粉砕工程に戻すことにより相違点3-3に係る「2次粉砕」を行うことを動機付けられることもない。そして、甲3以外の全ての証拠の記載を参照しても、甲3発明において相違点甲3-1及び相違点甲3-3に係る粉砕工程を採用する動機となる記載は見いだせない。
ウ 申立人の主張について
申立人は特許異議申立書の48~49頁において、甲3発明の「粗解砕工程」について「前記粗解砕工程は、前記乾燥物を凝集物(ブロック状物)である場合、流動性ある粒子状にする機械的操作であり、当該乾燥物を粉砕して粒子を製造する工程であり、本件発明1の段階3に相当する。」と主張している。しかし、上記イに記載したとおり、甲3の[0084]~[0085](摘記3-4)の記載を参酌すると、「粗解砕」は粒子の「粉砕」とは異なる工程であるから、申立人の主張は失当である。
また、甲3発明は、乾燥前の「含水ゲルシート」を、「直径7.5mmのスクリーンを有するミートチョッパー(平賀工作所製)を用いて連続的に細粒化して、粒子状含水ゲル(e)を得る工程であって、粒子状含水ゲル(e)の含水率は50重量%であり、湿式法により粒子状含水ゲル(e)の粒子径分布を測定したとき、重量平均粒子径(D50)は1.3mm、粒子状含水ゲル(e)の全重量に対して、3mm以上の粒子径をもつゲル粒子は24.2重量%、850μm未満の粒子径をもつゲル粒子は29.0重量%である工程、」を備えているから、上記解砕工程に代えて、乾燥後に再び同様の粒度分を得るための粉砕工程を設けることの動機も欠くといえる。
すなわち、甲3の[0011]~[0012](摘記3-1)には、甲3発明が「物性の低下なく、より簡便に吸水性樹脂の粒子径を本質的に制御できる、吸水性樹脂の製造方法を提供すること」を課題とし、その解決手段が「乾燥工程の終了時点から粉砕工程の開始時点までの時間を一定以上に制御すること」にあることが記載され、[0073]~[0074](摘記3-3)には、課題解決の推定メカニズムとして「得られた乾燥物は全体としては一様に乾燥されているように見えても、一粒子内部では水分分布が不均一であり、・・・粒子径が大きくなるほど、粒子表面と内部の含水率の差は大きくなっていると考えられる。一方、一定の乾燥物保持時間を経た乾燥物は水分分布が均一に近付いていると考えられる。本発明において、粉砕時の粒子径制御の容易さはこの水分分布の均一性によるものと推定される。」と記載され、[0062](摘記3-2)には、「乾燥効率の面と乾燥後の粉砕効率の面から、乾燥前の含水ゲル状重合体が重合中ないし重合後に細粒化されていることが好ましい。」と記載されているから、これらの記載に接した当業者は、甲3発明における乾燥前の「含水ゲルシート」を粉砕する工程は、発明の課題解決に寄与する工程であると理解し、この工程をなくすことを動機付けられることはなく、したがって、乾燥後に再び同様の粒度分を得るための粉砕工程を設けることを動機付けられることもない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~5について
本件発明2~5は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5はいずれも甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立理由1-3(甲3に基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1~5は、いずれも甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、申立理由1-3(甲3に基づく進歩性欠如)により本件発明1~5についての特許を取り消すことはできない。
3.申立理由1-4(甲4に基づく進歩性欠如)について
(1)甲4に記載された事項
甲4には以下の事項が記載されている。
(4-1)「[0016] そこで本発明は、上記問題点を改善するために、原料の変更や高額な設備投資を必要とせずに、簡便な手法で、吸水性樹脂の物性(例えば通液性)を向上及び安定させる方法を提供することを目的とする。特に大スケールの吸水性樹脂の生産において有用な方法を提供することを目的とする。
[0017] 本発明者らは粉砕工程を検討したところ、吸水性樹脂の大量生産、特に1(t/hr)以上の連続生産において、ラボスケールとの粉砕の違い、更には得られる吸水性樹脂の物性の悪化が見られた。
[0018] 本発明者らは更に検討した結果、従来のロールミルを用いた粉砕では、ロールの一部での磨耗が過大であり、その箇所に粉砕負荷が集中していることが判明し、このことが原因となって、吸水性樹脂の生産性や物性低下を招いていたと考えられる。そこで、乾燥後の吸水性樹脂(乾燥重合体)をロールの軸方向に分散させて、ロールミルに供給することにより、上記課題を解決できることを見出した。」
(4-2)「[[0176] (ロールミル粉砕前の乾燥重合体)
本発明において、乾燥工程で得られた乾燥重合体は、そのまま全量をロールミルで粉砕してもよいが、乾燥重合体の形状に応じて、ロールミルで粉砕する前に、別の工程、例えば、粗粉砕工程や粗解砕工程に供してもよく、更に分級工程に供してもよい。
[0177] なお、上記「粗粉砕工程」とは一次粒子を粉砕する工程をいい、また、上記「粗解砕工程」とは凝集粒子を解す(ほぐす)工程をいう。したがって、バンド乾燥等で乾燥重合体が板状、又はブロック状等に凝集している場合、ロールミルでの粉砕を効率よく行うため、予め乾燥重合体を粗粉砕又は粗解砕しておくこともできる。
[0178] 更に、乾燥工程で得られた乾燥重合体は、ロールミルで粉砕する前に分級工程に供され、所定の目開きを有する篩の通過物・非通過物を予め分離しておくことが好ましい。この場合、篩の目開き(JIS Z8801-1(2000)で規定)として好ましくは1~100mm、より好ましくは2~80mm、更に好ましくは5~50mmである。
[0179] 上記篩で分離された非通過物(例えば、目開きが10~30mmの篩の非通過物)は、吸水性樹脂の製造工程から除去してもよいが、収率や生産性の観点から、ロールミル以外の粉砕方法で粉砕した後、必要に応じて再乾燥し、その後、ロールミルから排出される粉砕物と混合されることが好ましい。すなわち、乾燥工程で得られる乾燥重合体をロールミルで粉砕する前に分級する分級工程を含み、当該分級工程において用いられる篩の非通過物を分離し、当該分離された非通過物がロールミル以外の粉砕方法で粉砕されることが好ましい。なお、上記ロールミル以外の粉砕方法としては、ナイフミル、ハンマーミル、ピンミル、スクリューミル、振動ミル、ジャイレクトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が挙げられ、中でもピンミルが特に好ましい。一方、上記篩で分離された通過物(例えば、目開き10~30mmの篩の通過物)は、ロールミルで粉砕すればよい。
[0180] また、ロールミル粉砕前に、例えば、目開き850μm(JIS Z8801-1(2000)で規定)の篩を用いて乾燥重合体の分級を行う場合、当該篩の通過物(粒子径が850μm未満の乾燥重合体)を、ロールミル以外の粉砕方法での粉砕、造粒又は微粉回収に供することもできるが、好ましくはそのままの状態で吸水性樹脂粉末と混合され、吸水性樹脂として使用する。一方、当該篩の非通過物(粒子径が850μm以上の乾燥重合体)は、ロールミルで粉砕すればよい。
[0181] 即ち、例えば、上記目開き10~30mmの篩の非通過物を分離することで、粗大粒子の粉砕によるロールミルでの過負荷が生じず、更にロールミルの停止や生産性の低下がないため、効率的にロールミル粉砕を行うことができる。また、例えば、上記目開き850μmの篩の通過物を分離することで、必要以上に粉砕されず、微粉の発生量が低減する。
[0182] (乾燥重合体のロールミル粉砕前の性状)
本発明の乾燥重合体の含水率(実施例に記載の方法で規定)は、例えば、1~20重量%、2~15重量%、3~10重量%である。また、本発明の乾燥重合体の含水率は、ロールミルによる粉砕直前で好ましくは3.0~15重量%、より好ましくは3.5~12重量%、更に好ましくは4.0~9.0重量%である。なお、乾燥工程を経て得られる乾燥後の乾燥重合体全体の平均値と、上記粉砕前の分級によりロールミル粉砕される乾燥重合体とでは、含水率が異なる場合がある。また、本発明の乾燥重合体の粒度(実施例に記載の方法で規定)は、ロールミルによる粉砕前で重量平均粒子径(D50)が0.5~50mm、より好ましくは0.7~10mm、さらに好ましくは1.0~5.0mmである
。なお、乾燥重合体の性状は、ゲル粉砕工程や乾燥工程に大きく依存するため、その他の性状については適宜、後述のゲル粉砕工程や乾燥工程の記載が参照される。
[0183] (分級工程)
本発明では、分級工程を、乾燥工程後又は粉砕工程後に行う。ここで、「乾燥工程後又は粉砕工程後の分級工程」および「分級工程を、乾燥工程後又は粉砕工程後に行う」とは、乾燥工程および粉砕工程の少なくとも一方の工程の後に分級工程を行うことを意味し、具体的には、(a)重合工程→乾燥工程→粉砕工程→分級工程を順次行う形態;(b)重合工程→乾燥工程→分級工程→粉砕工程を順次行う形態;および(c)重合工程→乾燥工程→分級工程→粉砕工程→分級工程を順次行う形態を包含する。好ましくは、(a)および(c)の形態が好ましい。
[0184] 本発明での分級方法としては、特に限定されないが、JIS標準篩(JIS Z8801-1(2000))又はその相当品を用いた篩分級、気流分級等が挙げられるが、中でも篩分級が特に好ましい。また、上記特許文献26~28、35~40に開示される分級方法についても、適宜、適用される。
[0185] なお、上記の分級方法は、ロールミル粉砕前の分級、又はロールミル粉砕後の分級の何れにも適用される。
[0186] なお、本発明の吸水性樹脂の粒度調整は、当該粉砕工程や分級工程に限らず、重合工程(特に逆相懸濁重合や噴霧液滴重合)やその他の工程(例えば、造粒工程、微粉回収工程)においても、適宜実施される。」
(4-3)「[0192] (粉砕物の粒度)
本発明における粉砕物の粒度として、重量平均粒子径(D50)は200~600μmが好ましく、200~550μmがより好ましく、250~500μmが更に好ましく、300~500μmが特に好ましい。また、粒子径150μm未満の粒子の割合は、給水性樹脂粉末全体の0~30重量%が好ましく、0~25重量%がより好ましく、0~20重量%が更に好ましく、0~15重量%が特に好ましく、粒子径850μm以上の粒子の割合は0~8重量%が好ましく、0~5重量%がより好ましく、0~4重量%が更に好ましく、0~3重量%が特に好ましい。更に、粒子径分布の対数標準偏差(σζ)は0.20~0.62が好ましく、0.25~0.60がより好ましく、0.27~0.58が更に好ましい。なお、これらの粒度は、米国特許出願公開第2006/0204755号やEDANA ERT420.2-02に開示されている測定方法に準じて、標準篩を用いて測定される。」
(4-4)「[0250] [製造例1]
(重合工程)
先ず、単量体水溶液(1)として、中和率73モル%、単量体濃度43重量%のアクリル酸部分中和ナトリウム塩水溶液を作製した。その際、内部架橋剤として、0.09モル%(対単量体)のポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量523)と、キレート剤として、100ppm(対単量体)のジエチレントリアミン5酢酸・4ナトリウム
とを当該単量体水溶液(1)に添加した。
[0251] 次に、上記単量体水溶液(1)を、送液ポンプを用いて連続的に重合装置に供給(送液)した。その際、送液配管の途中から窒素ガスを連続的に吹き込み、単量体水溶液(1)中の溶存酸素の濃度を0.5ppm(0.5mg/l)以下とした。続いて、単量体水溶液(1)を95℃に昇温した後、重合開始剤として、過硫酸ナトリウムを連続的に混合(ラインミキシング)した。なお、過硫酸ナトリウムの添加量は、単量体1モルに対して0.12g(0.05モル%)であった。
[0252] 上記重合装置に供給された液は、平面スチールベルト上で沸騰を伴いながら重合した。重合時間は約3分間であった。当該操作によって、シート状の含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)(1)を得た。なお、上記重合装置は、両端に堰を有する平面スチールベルト重合装置であり、平面スチールベルトはポリテトラフルオロエチレン(PFA)で被覆されていた。
[0253] (ゲル粉砕工程)
次に、上記シート状の含水ゲル(1)(表面温度約80℃)を、上記平面スチールベルトの進行方向に対して垂直方向に等間隔に切断した後、孔径22mmのミートチョッパーに連続的に供給して、細分化(ゲル粉砕)した。その際、含水ゲル(1)100重量部に対して、80℃の温水を7重量部添加した。当該操作によって、重量平均粒子径(D50)が1.1mm、粒子径分布の対数標準偏差(σζ)が1.7、固形分が49重量%である粒子状含水ゲル(1)を得た。
[0254] (乾燥工程)
続いて、上記粒子状含水ゲル(1)を、連続通気ベルト式乾燥機の多孔板上にトラバースフィーダーを用いて連続的に積載した後、170℃の熱風を38分間通気させて乾燥した。
[0255] 当該連続通気ベルト式乾燥機は、同じ大きさの乾燥室を7室有する構造であり、熱風を、第1室では風速1.6(m/s)で上向きに、第2~6室は風速1.0(m/s)で下向きに通気するように制御した。また、乾燥機末尾の第7室においては、60℃の温風を通気させることで乾燥重合体を強制冷却し、その温度を100℃以下とした。なお、上記熱風の露点は71℃であった。
[0256] 上記操作によって、乾燥重合体は乾燥機出口において緩く凝集しブロック状となっていたが、回転軸に多数のピンを取り付けた解砕機を用いて解すこと(粗解砕)で、流動性のある乾燥重合体(1)として得られた。
[0257] 当該乾燥重合体(1)の重量平均粒子径(D50)は2.6mm、粒子径分布の対数標準偏差(σζ)は0.80、固形分は95重量%であった。
[0258] (貯蔵工程)
上記乾燥重合体(1)を、バケットコンベアを用いて輸送し、ホッパーに投入した。当該ホッパーや輸送配管は蒸気トレスで加温されており、ホッパー内の乾燥重合体(1)の温度は約60℃であった。当該ホッパーにおいて、平均15分間程度、滞留させた。」
(4-5)「[0259] [比較例1]
(粉砕工程)
製造例1で得られた乾燥重合体(1)をホッパー底部から定量フィーダーを用いて、600(kg/hr)で抜き出した。その後、管径10cmのステンレスパイプ中を落下させて、乾燥重合体(1)をロールミル中央部に投入して粉砕した。
[0260] 上記ロールミルの仕様及び運転条件として、仕様は、ロール長:60cm、ロール径:30cm、ロール材質:遠心チルド鋳鉄、ロールミル内壁面:SUS304バフ仕上げ、ロール表面:ロールの回転軸と3°の角度をなす溝を有し、当該溝の傾斜は一対のロールで同じ向きであり、運転条件は、ロール回転数:220rpm及び500rpm(一対のロールが非等速、周速比1:2.27)、ロールクリアランス:0.4mm、ロールミル温度:約60℃、ロールミル内の雰囲気温度:約60℃、ロールミル内の雰囲気露点:約11℃(相対湿度7%RH)、乾燥重合体(1)の温度:60℃、ロールミル内部及び周辺配管の減圧度:0.1kPaとした。なお、粉砕物の重量平均粒子径に対するロールクリアランスの最小値(Gap/D50)は、0.8(=0.4/0.48)である。
[0261] なお、上記ロールミルは整備直後であったため、ロールクリアランス変化幅は実質0μm(10μm未満)であり、ロールクリアランス変化率も実質0%であった。
[0262] 上記ロールミルに投入される乾燥重合体(1)について、ロール長を3等分した各部分における乾燥重合体(1)の流量(供給量)を測定した。その結果、中央部で100重量%あった。即ち、乾燥重合体(1)の全量が、ロールミル中央部に投入されたことになる。なお、フィード幅比は30%であった。
[0263] 上記操作によって、比較粉砕物(a1)を得た。得られた比較粉砕物(a1)をサンプリングし、粒度を測定した。結果を表1に示す。
[0264] (分級工程)
続いて、比較粉砕物(a1)全量を、分級装置(1)(目開きが上から順に850μm/150μmの金属篩で構成される分級装置/MINOX製;篩直径600mm)に連続的に供給して分級した。
[0265] 当該操作により、目開き850μmの篩と目開き150μmの篩との間に存在する粒子を比較吸水性樹脂粉末(1)、目開き150μmの篩を通過した粒子を比較吸水性樹脂微粉(1)として取得した。得られた比較吸水性樹脂粉末(1)の粒子径分布を測定したところ、150μm未満の粒子が1.3重量%含有していた。
[0266] (表面架橋工程)
次に、比較吸水性樹脂粉末(1)100重量部に対して、エチレンカーボネート0.5重量部、工業用純水3重量部からなる比較表面架橋剤溶液(1)を作成した後、高速混合機(タービュライザー/1000rpm;ホソカワミクロン社製)中で噴霧添加した。その後、パドルドライヤーに移送し、198℃(熱媒温度)で35分間の熱処理を行った。
[0267] 上記熱処理後、パドル型冷却機を用いて、表面架橋された比較吸水性樹脂粉末(1)の温度が60℃となるまで、強制的に冷却を行った。
[0268] (再加湿工程)
上記冷却の際、表面架橋された比較吸水性樹脂粉末(1)100重量部に対して、硫酸アルミニウム0.3重量部、水1重量部及びプロピレングリコール0.03重量部からなる処理剤を添加した。
[0269] (整粒工程)
続いて、目開き850μmのJIS標準篩を備えた分級装置(2)で上記表面処理後の比較吸水性樹脂粉末(1)を分級し、その全量が通過するまでフラッシュミルで粉砕した。以上の操作により、粒子径が850μm未満の比較吸水性樹脂(p1)を得た。比較吸水性樹脂(p1)の物性を表1に示す。」
(4-6)「[0270] [実施例1]
比較例1において、図1及び図2に示すスクリュー型フィーダーの回転式分散機をロールミルの入口(直上)に用いた以外は、比較例1と同様の操作を行って、粉砕物(A1)及び吸水性樹脂(P1)を得た。得られた粉砕物(A1)の粒度及び吸水性樹脂(P1)の物性を表1に示した。
[0271] なお、当該スクリューフィーダー型分散機は羽根を回転させることで、乾燥重合体(1)をロールミルの中央部から両端方向に移動させることができる。
[0272] 上記ロールミルに投入される乾燥重合体(1)について、ロール長を3等分した各部分における乾燥重合体(1)の流量(供給量)を測定した。その結果、中央部が40重量%、両端部がそれぞれ30重量%であった。即ち、乾燥重合体(1)が、ほぼロールミル全体に投入されたことになる。なお、当該スクリューフィーダー型分散機の長さはロール長の90%であり、フィード幅比は95%であった。ロール軸方向にロールを3等分した際、乾燥重合体の供給量が最も多い部分は最も少ない部分の1.3倍であった。」
(4-7)「[0280] [実施例4]
実施例1において、下記(微粉再利用工程)を追加した以外は、実施例1と同様の操作を行って、粉砕物(A4)及び吸水性樹脂(P4)を得た。得られた粉砕物(A4)の粒度及び吸水性樹脂(P4)の物性を表1に示した。
[0281] (微粉再利用工程)
分級工程で得られた吸水性樹脂微粉(4)100重量部に対して、工業用純水120重量部を表面架橋工程とは異なる高速混合機(タービュライザー/1000rpm;ホソカワミクロン社製)中で噴霧添加し、微粉造粒を行った。当該操作で得られた吸水性樹脂微粉(4)由来の造粒ゲルを、前述のゲル粉砕工程で得られる粒子状含水ゲル(1)に添加した後は、前述と同様の乾燥操作等を行った。」
(4-8)「[0283] [実施例5]
実施例4において、ロールミル(1段目)の下部に、1段目のロールミルと平行となるように、ロールミル2基を上下に直結(上から2段目のロールミル、3段目のロールミルと称する)し、仕様を以下の条件に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、粉砕物(A5)及び吸水性樹脂(P5)を得た。得られた粉砕物(A5)の粒度及び吸水性樹脂(P5)の物性を表1に示した。
[0284] なお、1段目のロールミルと2段目のロールミルとの間、2段目のロールミルと3段目のロールミルとの間には分散機を設置していないが、1段目のロールミル粉砕物及び2段目のロールミル粉砕物は、それぞれロール幅で排出されるため、そのままの幅でそれぞれ2段目のロールミル及び3段目のロールミルに供給された。
[0285] また、ロールミルの仕様の変更点として、1段目のロールミルは、ロールクリアランス:0.7mmであり、2段目のロールミルは、ロールクリアランス:0.4mmであり、3段目のロールミルは、ロールクリアランス:0.2mmであった。」
(4-9)「[0287] [実施例6]
実施例5において、下記(粉砕前分級工程)を追加した以外は、実施例5と同様の操作を行って、粉砕物(A6)及び吸水性樹脂(P6)を得た。得られた粉砕物(A6)の粒度及び吸水性樹脂(P6)の物性を表1に示した。
[0288] (粉砕前分級工程)
前述の乾燥工程において、乾燥機出口において緩く凝集しブロック状となっていた乾燥重合体を、回転軸に多数のピンが取り付けられた解砕機を用いて解した。その後、目開きが10mm、850μm、150μmの篩を有する分級装置(0)に供給して、連続的に分級した。
[0289] 当該分級操作によって得られる各成分は以下のように取り扱った。即ち、粒子径が10mm以上の粗大粒子はピンミル(ホソカワミクロン社製)で粉砕し、再度、分級装置(0)に供給した。また、粒子径が850μm以上10mm未満の粒子は前述した(貯蔵工程)に、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子は前述した(貯蔵工程)、(粉砕工程)、(分級工程)を経ずに直接(表面架橋工程)に、粒子径が150μm未満の吸水性樹脂微粉は(微粉再利用工程)に、それぞれ移送した。」
(4-10)「[0290]
[表1]
[図:0001429991000010.jpg]
」
(4-11)「請求の範囲
[請求項1] アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、乾燥工程で得られる乾燥重合体の粉砕工程と、乾燥工程後又は粉砕工程後の分級工程とを順次含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、
上記粉砕工程において用いられるロールミルに乾燥重合体を供給する際、当該ロールミルのロール軸方向に、乾燥重合体を分散させて供給することを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法。」
(2)甲4に記載された発明
甲4の請求項1(摘記4-11)には、「アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程と、乾燥工程で得られる乾燥重合体の粉砕工程と、乾燥工程後又は粉砕工程後の分級工程とを順次含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、
上記粉砕工程において用いられるロールミルに乾燥重合体を供給する際、当該ロールミルのロール軸方向に、乾燥重合体を分散させて供給することを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法。」の発明が記載されており、その実施例の一つである実施例6([0287]~[0289]、摘記4-9)には、「実施例5において、下記(粉砕前分級工程)を追加した以外は、実施例5と同様の操作を行って、粉砕物(A6)及び吸水性樹脂(P6)を得た。」ことが記載され、[0290]の[表1](摘記4-10)には、得られた粉砕物(A6)の粒度及び吸水性樹脂(P6)の物性が記載され、実施例5([0283]~[0285]、摘記4-8)については実施例4の工程の一部を変更したことが記載され、実施例4([0280]~[0281]、摘記4-7)については実施例1の工程の一部を変更したことが記載され、実施例1([0270]~[0272]、摘記4-6)については比較例1の工程の一部を変更したことが記載され、比較例1([0259]~[0269]、摘記4-5)については製造例1で得られた乾燥重合体(1)を用いたことが記載され、製造例1は[0250]~[0258](摘記4-4)に記載されている。
そこで、甲4における実施例6、5、4、1、比較例1、製造例1及び表1等の記載を参酌すると、甲4には実施例6に基づいて以下の発明が記載されている。
「単量体水溶液(1)として、中和率73モル%、単量体濃度43重量%のアクリル酸部分中和ナトリウム塩水溶液を作製し、その際、内部架橋剤として、0.09モル%(対単量体)のポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量523)と、キレート剤として、100ppm(対単量体)のジエチレントリアミン5酢酸・4ナトリウムとを当該単量体水溶液(1)に添加し、
次に、上記単量体水溶液(1)を、送液ポンプを用いて連続的に重合装置に供給(送液)し、重合開始剤として、過硫酸ナトリウムを単量体1モルに対して0.12g(0.05モル%)の割合で連続的に混合(ラインミキシング)し、平面スチールベルト上で沸騰を伴いながら重合させ、シート状の含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)(1)を得る工程、
上記シート状の含水ゲル(1)(表面温度約80℃)を、上記平面スチールベルトの進行方向に対して垂直方向に等間隔に切断した後、孔径22mmのミートチョッパーに連続的に供給して、細分化(ゲル粉砕)する工程であって、その際、含水ゲル(1)100重量部に対して、80℃の温水を7重量部添加し、重量平均粒子径(D50)が1.1mm、粒子径分布の対数標準偏差(σζ)が1.7、固形分が49重量%である粒子状含水ゲル(1)を得る工程、
後記する分級工程で得られた吸水性樹脂微粉(6)100重量部に対して、工業用純水120重量部を表面架橋工程とは異なる高速混合機(タービュライザー/1000rpm;ホソカワミクロン社製)中で噴霧添加し、微粉造粒を行い、当該操作で得られた吸水性樹脂微粉(6)由来の造粒ゲルを、前述のゲル粉砕工程で得られる粒子状含水ゲル(1)に添加する工程、
続いて、上記粒子状含水ゲル(1)を、連続通気ベルト式乾燥機の多孔板上にトラバースフィーダーを用いて連続的に積載した後、170℃の熱風を38分間通気させて乾燥する工程、
乾燥機出口において緩く凝集しブロック状となっている乾燥重合体を、回転軸に多数のピンが取り付けられた解砕機を用いて解し、流動性のある乾燥重合体(1)とし、得られた乾燥重合体(1)を目開きが10mm、850μm、150μmの篩を有する分級装置(0)に供給して、連続的に分級し、粒子径が10mm以上の粗大粒子はピンミル(ホソカワミクロン社製)で粉砕し、再度、分級装置(0)に供給し、また、粒子径が850μm以上10mm未満の粒子は後記する(貯蔵工程)に移送し、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子は後記する(貯蔵工程)、(粉砕工程)、(分級工程)を経ずに直接(表面架橋工程)に移送し、粒子径が150μm未満の吸水性樹脂微粉は前記した(微粉再利用工程)に、それぞれ移送する工程、
上記乾燥重合体(1)を、加温されたバケットコンベアを用いて輸送し、加温されたホッパーに投入し、ホッパー内の乾燥重合体(1)の温度を約60℃として、当該ホッパーにおいて、平均15分間程度、滞留させる工程(貯蔵工程)、
得られた乾燥重合体(1)をホッパー底部から定量フィーダーを用いて、600(kg/hr)で抜き出し、その後、スクリュー型フィーダーの回転式分散機をロールミル(1段目)の入口(直上)に用いて、乾燥重合体(1)をロールミル(1段目)中央部に投入して粉砕し、ロールミル(1段目)の下部に、1段目のロールミルと平行となるように、ロールミル2基を上下に直結(上から2段目のロールミル、3段目のロールミルと称する)し、粉砕物(A6)を得る工程(粉砕工程)であって、得られた粉砕物(A6)をサンプリングし、粒度を測定したとき、粒子径850μm以上が1.2wt%であり、粒子径150μm未満が12.8wt%であり、
続いて、粉砕物(A6)全量を、分級装置(1)(目開きが上から順に850μm/150μmの金属篩で構成される分級装置/MINOX製;篩直径600mm)に連続的に供給して分級し、当該操作により、目開き850μmの篩と目開き150μmの篩との間に存在する粒子を吸水性樹脂粉末(6)、目開き150μmの篩を通過した粒子を吸水性樹脂微粉(6)として取得する工程(分級工程)、
次に、吸水性樹脂粉末(6)100重量部に対して、エチレンカーボネート0.5重量部、工業用純水3重量部からなる比較表面架橋剤溶液(1)を作成した後、高速混合機(タービュライザー/1000rpm;ホソカワミクロン社製)中で噴霧添加し、その後、パドルドライヤーに移送し、198℃(熱媒温度)で35分間の熱処理を行い、上記熱処理後、パドル型冷却機を用いて、表面架橋された吸水性樹脂粉末(6)の温度が60℃となるまで、強制的に冷却を行い(表面架橋工程)、上記冷却の際、表面架橋された吸水性樹脂粉末(6)100重量部に対して、硫酸アルミニウム0.3重量部、水1重量部及びプロピレングリコール0.03重量部からなる処理剤を添加する工程(再加湿工程)、
続いて、目開き850μmのJIS標準篩を備えた分級装置(2)で上記表面処理後の吸水性樹脂粉末(6)を分級し、その全量が通過するまでフラッシュミルで粉砕し、以上の操作により、粒子径が850μm未満の吸水性樹脂(P6)を得る工程(整粒工程)、
を備える、吸水性樹脂の製造方法。」(以下、「甲4発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲4発明との対比
本件発明1と甲4発明とを対比すると、甲4発明における「内部架橋剤として、0.09モル%(対単量体)のポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量523)」及び「重合開始剤として、過硫酸ナトリウム」は、それぞれ本件発明1における「内部架橋剤」及び「重合開始剤」に相当し、甲4発明における「中和率73モル%」の「アクリル酸部分中和ナトリウム塩」は、本件発明1における「少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体」に相当し、甲4発明における「次に、上記単量体水溶液(1)を、送液ポンプを用いて連続的に重合装置に供給(送液)し、重合開始剤として、過硫酸ナトリウムを単量体1モルに対して0.12g(0.05モル%)の割合で連続的に混合(ラインミキシング)し、平面スチールベルト上で沸騰を伴いながら重合させ、」及び「シート状の含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)(1)を得る工程、」は、それぞれ本件発明1における「架橋重合して」及び「第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);」に相当する。
甲4発明における「上記シート状の含水ゲル(1)(表面温度約80℃)を、上記平面スチールベルトの進行方向に対して垂直方向に等間隔に切断した後、孔径22mmのミートチョッパーに連続的に供給して、細分化(ゲル粉砕)」して得られた「上記粒子状含水ゲル(1)を、連続通気ベルト式乾燥機の多孔板上にトラバースフィーダーを用いて連続的に積載した後、170℃の熱風を38分間通気させて乾燥する工程、」は、本件発明1における「前記含水ゲル重合体を乾燥する段階(段階2);」に相当する。
甲4発明における「乾燥機出口において緩く凝集しブロック状となっている乾燥重合体を、回転軸に多数のピンが取り付けられた解砕機を用いて解し、流動性のある乾燥重合体(1)とし、得られた乾燥重合体(1)を目開きが10mm、850μm、150μmの篩を有する分級装置(0)に供給して、連続的に分級」する工程に続き、「粒子径が850μm以上10mm未満の粒子」を「(貯蔵工程)に移送」し、引き続き「得られた乾燥重合体(1)をホッパー底部から定量フィーダーを用いて、600(kg/hr)で抜き出し、その後、スクリュー型フィーダーの回転式分散機をロールミル(1段目)の入口(直上)に用いて、乾燥重合体(1)をロールミル(1段目)中央部に投入して粉砕し、ロールミル(1段目)の下部に、1段目のロールミルと平行となるように、ロールミル2基を上下に直結(上から2段目のロールミル、3段目のロールミルと称する)し、粉砕物(A6)を得る工程(粉砕工程)であって、得られた粉砕物(A6)をサンプリングし、粒度を測定したとき、粒子径850μm以上が1.2wt%であり、粒子径150μm未満が12.8wt%」である工程は、本件発明1における「前記乾燥された重合体を、直径が710μm以上である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して75.0wt%以上90wt%以下になるように粉砕して、直径が180μm未満である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して8.0wt%以下になるように粉砕して、粒子を製造する段階(段階3)」と、「前記乾燥された重合体を、粉砕して、粒子を製造する段階」である限りにおいて一致する。
甲4発明における「吸水性樹脂の製造方法。」は、本件発明1における「高吸水性樹脂の製造方法。」に相当する。
そうすると、両者は、
「内部架橋剤および重合開始剤の存在下で、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して、第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);
前記含水ゲル重合体を乾燥する段階(段階2);
前記乾燥された重合体を、粉砕して、粒子を製造する段階を含む、
高吸水性樹脂の製造方法。」の点で一致し、
相違点甲4-1:本件発明1は段階3において「前記乾燥された重合体を、直径が710μm以上である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して75.0wt%以上90wt%以下になるように粉砕して、」と特定するのに対し、甲4発明はそのように特定されない点
相違点甲4-2:本件発明1は段階3において「直径が180μm未満である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して8.0wt%以下になるように粉砕して、」と特定するのに対し、甲4発明はそのように特定されない点
相違点甲4-3:本件発明1は「前記粉砕された粒子を2次粉砕する段階(段階4)を含み、前記段階4は、600μm以上850μm以下の直径範囲の中の基準直径を決定し、前記段階3で製造された粒子の中の直径が前記基準直径以上である粒子のみ2次粉砕し、前記基準直径は、710μmである、」と特定するのに対し、甲4発明はそのように特定されない点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。
イ 相違点甲4-1及び相違点甲4-3について
まず、甲4発明における「乾燥機出口において緩く凝集しブロック状となっている乾燥重合体を、回転軸に多数のピンが取り付けられた解砕機を用いて解し、流動性のある乾燥重合体(1)と」する工程は、甲4の[0177](摘記4-2)に記載された「粗解砕工程」に相当する工程であり、同段落に「上記「粗粉砕工程」とは一次粒子を粉砕する工程をいい、また、上記「粗解砕工程」とは凝集粒子を解す(ほぐす)工程をいう。」と、粉砕とは区別して記載されていることからも明らかに、上記解砕工程は本件発明1における段階3及び段階4のいずれの粉砕工程にも当たらない。
また、甲4発明において上記工程に引き続いて行われる「粒子径が850μm以上10mm未満の粒子」を、「スクリュー型フィーダーの回転式分散機をロールミル(1段目)の入口(直上)に用いて、乾燥重合体(1)をロールミル(1段目)中央部に投入して粉砕し、ロールミル(1段目)の下部に、1段目のロールミルと平行となるように、ロールミル2基を上下に直結(上から2段目のロールミル、3段目のロールミルと称する)し、粉砕物(A6)を得る工程(粉砕工程)」については、一連のロールミルによる粉砕で「粒子径850μm以上が1.2wt%であり、粒子径150μm未満が12.8wt%」の粉砕物を得ているから、相違点甲4-1に係る「直径が710μm以上である粒子」の割合に着目した粉砕を行うものではなく、さらに、仮に粒子径の点を措くとしても、「目開き850μmと150μmの篩で分級」した後に、相違点甲4-3に係る粗大粒子を二次粉砕する工程を行うものでもない点で相違する。ここで、甲4の[0192](摘記4-3)には、粉砕物の大きさに関し、「粉砕物の粒度として、重量平均粒子径(D50)は200~600μmが好ましく、200~550μmがより好ましく、250~500μmが更に好ましく、300~500μmが特に好ましい。」という、710μmを下回る粒子径(D50)を中心とする分布を推奨する記載があり、「粒子径850μm以上の粒子の割合は0~8重量%が好ましく、0~5重量%がより好ましく、0~4重量%が更に好ましく、0~3重量%が特に好ましい。」という、粗大粒子の割合を低減することが好ましいとする記載もあるから、相違点甲4-1に係る「直径が710μm以上である粒子が製造された全体粒子の総重量に対して75.0wt%以上90wt%以下になるように」ロールミルで粉砕することは、甲4において推奨されていないといえる。さらに、[0181](摘記4-2)には、ロールミルで粉砕する前の分級工程に関し、「上記目開き10~30mmの篩の非通過物を分離することで、粗大粒子の粉砕によるロールミルでの過負荷が生じず、更にロールミルの停止や生産性の低下がないため、効率的にロールミル粉砕を行うことができる。また、例えば、上記目開き850μmの篩の通過物を分離することで、必要以上に粉砕されず、微粉の発生量が低減する。」とも記載されているから、甲4発明におけるロールミルによる粉砕工程がは、「粒子径が850μm以上10mm未満の粒子」を「目開き850μmと150μmの篩」の間に分級される粒子に一度に粉砕することを目的とする工程であって、粗大粒子を繰り返しロールミルに供給することは想定しないといえる。よって、これらの記載に接した当業者が、相違点甲4-1に係る「直径が710μm以上である粒子」を「製造された全体粒子の総重量に対して75.0wt%以上90wt%以下になるように粉砕」することを動機付けられることはなく、さらに、当該「75.0wt%以上90wt%以下」という高い割合の粗大粒子を粉砕工程に戻すことにより相違点4-3に係る「2次粉砕」を行うことを動機付けられることもない。そして、甲4以外の全ての証拠の記載を参照しても、甲4発明において相違点甲4-1及び相違点甲4-3に係る粉砕工程を採用する動機となる記載は見いだせない。
ウ 申立人の主張について
申立人は特許異議申立書の55頁において、甲4発明は「粉砕工程の前に、前記乾燥工程で得られる乾燥重合体を粉砕するあるいは解す工程である「粗粉砕工程」または「粗解砕工程」を含み得る」ものであり、「前記「粗粉砕工程」および前記「粗解砕工程」は、本件発明1の「段階3」に相当する。」と主張している。しかし、上記イに記載したとおり、甲4の[0177](摘記4-2)の記載を参酌すると、「粗解砕」は粒子の「粉砕」とは異なる工程である。
また、甲4発明は、乾燥前の「シート状の含水ゲル(1)」を、「孔径22mmのミートチョッパーに連続的に供給して、細分化(ゲル粉砕)する工程であって、その際、含水ゲル(1)100重量部に対して、80℃の温水を7重量部添加し、重量平均粒子径(D50)が1.1mm、粒子径分布の対数標準偏差(σζ)が1.7、固形分が49重量%である粒子状含水ゲル(1)を得る工程、」を備えているから、上記解砕工程に代えて、乾燥後に再び同様の粒度分を得るための粉砕工程を設けることの動機も欠くといえる。
さらに、仮に「粗粉砕」が行われるとしても、それに引き続く工程は「得られた乾燥重合体(1)を目開きが10mm、850μm、150μmの篩を有する分級装置(0)に供給して、連続的に分級し、粒子径が10mm以上の粗大粒子はピンミル(ホソカワミクロン社製)で粉砕し、再度、分級装置(0)に供給し、また、粒子径が850μm以上10mm未満の粒子は後記する(貯蔵工程)に移送し、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子は後記する(貯蔵工程)、(粉砕工程)、(分級工程)を経ずに直接(表面架橋工程)に移送し、粒子径が150μm未満の吸水性樹脂微粉は前記した(微粉再利用工程)に、それぞれ移送する工程、」というものであるから、相違点甲4-1に係る「直径が710μm以上である粒子」という粒度分布に着目する動機がなく、かつ、その割合を「製造された全体粒子の総重量に対して75.0wt%以上90wt%以下」に調整する動機となる記載はない。そして、甲4以外の全ての証拠の記載を参照しても、甲4発明において相違点甲4-1に係る条件を満たす「粗粉砕」工程を採用する動機となる記載は見いだせない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~5について
本件発明2~5は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5はいずれも甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立理由1-4(甲4に基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1~5は、いずれも甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、申立理由1-4(甲4に基づく進歩性欠如)により本件発明1~5についての特許を取り消すことはできない。
4.申立理由2(サポート要件違反)について
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件発明の課題について
本件明細書の[0007]等の記載から見て、本件発明1~5の課題は「高吸水性樹脂の優れた物性を維持しながらも微粉発生を減少させることができる高吸水性樹脂の製造方法を提供する」ことにあるものと認められる。
(3)本件明細書の記載について
本件明細書の[0011]には、課題解決手段に関し、「本発明では後述のように含水ゲル重合体の粉砕時に微粉発生量を減らすことができるように微粉砕条件を限定することを特徴とし、高吸水性樹脂の物性は維持しながらも高吸水性樹脂の製造方法を改善することができる。」と記載されている。また、[0013]~[0034]には、「含水ゲル重合体を形成する段階」である「段階1」について、単量体、内部架橋剤、重合開始剤、重合方法等について例示を伴って具体的に記載され、[0035]~[0039]には、「段階1で製造した含水ゲル重合体を乾燥する段階」である「段階2」について、乾燥前の粗粉砕工程、乾燥手段及び乾燥条件が具体的に記載され、[0040]~[0046]には、「前記段階2で乾燥された重合体を粉砕して粒子を製造する段階」である「段階3」について、微粉の発生を減らすことのできる粉砕の粒径分布及び粉砕手段について具体的に記載され、[0047]~[0052]には、「前記段階3で粉砕された粒子を再び粉砕する段階」である「段階4」について、粒径範囲及び粉砕手段について具体的に記載されている。さらに、[0066]~[0091]には、含水ゲル重合体乾燥物の製造例、及び上記「段階3」及び「段階4」の条件を満たす粉砕を行った実施例、何れかの条件を満たさない比較例、並びに製造された粒子の粒度分布及び物性が記載されている。
(4)サポート要件についての判断
本件明細書の発明の詳細な説明の記載、実施例及び比較例の粒度分布と物性の記載に接した当業者は、高吸水性樹脂となる含水ゲル重合体を製造する工程、乾燥工程、[0042]等に記載された微粉の発生を減らすことができるとされる「直径が710μm以上である粒子が、製造された全体粒子の総重量に対して75.0wt%以上」になるように1次粉砕する工程、及び「直径150μm~850μm」の粒子を製造するために2次粉砕する工程を備えた高吸水性樹脂の製造方法により、「微粉発生量を減少させて、微粉再造粒、乾燥、粉砕及び分級工程の負荷を減らすことができ、発明の課題を解決できると認識することができる。
そして、本件発明1~5は、当業者が上記課題を解決できると認識できる製造方法をさらに限定した発明であるから、いずれも当業者が発明の課題を解決することができると認識することができるものといえる。
(5)申立人の主張について
申立人は、上記第3 1.(2)ア及びイのように主張するが、いずれも採用することはできない。
ア 粉砕条件について
本件明細書の[0045]に例示された粉砕装置の記載及び実施例等の記載を参酌することにより、当業者は本件発明1の段階3に相当する粒度分布を備えた重合体粉砕物を製造し、さらに段階4に相当する2次粉砕を行うことができると認識することができる。
イ 「製造された全体粒子の総重量」について
本件請求項1における「製造された全体粒子の総重量」という過去形の表現は、段階3の粉砕によって製造された粒子全体の総重量を意味すると理解することができるから、「段階2の乾燥工程で製造された全体粒子の総重量を指している」ことを前提とした申立人の主張は、前提において誤っており、妥当ではない。
(6)申立理由2(サポート要件違反)についてのまとめ
以上のことから、本件発明1~5は、いずれも発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、申立理由2(サポート要件違反)により本件発明1~5についての特許を取り消すことはできない。
5.申立理由3(明確性要件違反)について
(1)明確性要件の判断手法
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(2)明確性要件についての判断
本件特許の請求項1~5の記載は上記第2のとおりであり、請求項1~5の記載それ自体は明確である。また、本件明細書における技術用語の定義又は説明によって、請求項の記載が不明確になることもない。
よって、本件発明1~5については、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、本件特許に係る出願の出願当時における当業者の技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
(3)申立人Bの主張について
申立人Bは、上記第3 1.(3)のように主張しているが、以下のとおり主張を採用することはできない。
本件請求項1における「製造された全体粒子の総重量」という過去形の表現は、段階3の粉砕によって製造された粒子全体の総重量を意味すると一義的に理解することができるから、「2通りの解釈ができることになる」ことを前提とした申立人の主張は、前提において誤っており、妥当ではない。
(4)申立理由3(明確性要件違反)についてのまとめ
以上のことから、本件発明1~5は、いずれも特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益をもたらすほど不明確であるとはいえないから、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、申立理由3(明確性要件違反)により本件発明1~5についての特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても、本件発明1~5についての特許を取り消すことはできない。また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700797