特許異議申立
2023-700117
ハードコート剤及び積層フィルム
- 審判番号
- 2023-700117
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-529089外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7111709
- 請求日
- 2023年02月02日
- 審決日
- 2023年10月10日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (C09D) / P1651.537-Y (C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7111709号発明「ハードコート剤及び積層フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7111709号の請求項1~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、平成30年7月5日(優先権主張 平成29年7月13日(同日に3件)(以下「本件優先日」という。) 日本国受理)にされた国際出願であって、令和4年7月25日に特許権の設定登録(請求項の数11)がされ、同年8月2日に特許掲載公報が発行された。その後、令和5年2月2日に請求項1~11に係る特許について、特許異議申立人 吉田 聖子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和5年4月13日に証拠説明書について補正書が提出されたものである。
第2 本件発明
本件の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~11に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明11」といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は次のとおりである。なお、補正箇所を示す下線は当審が消去した。
「【請求項1】
(A)成分として、下記式(1)で表される化合物の一種又は二種以上、及び、下記式(2)で表される化合物の一種又は二種以上を含有するハードコート剤であって、
式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物の含有割合が、〔式(1)で表される化合物〕:〔式(2)で表される化合物〕の質量比で、9:1~1:9であるハードコート剤。
【化1】
[図:0001403675000001.jpg]
(式中、A1Oは、CH2O、CH2CH2O、又は、CH2CH(CH3)Oで表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択される一種を表し、複数のA1O同士は同一でも相異なっていてもよい。
R1は、水素原子又はメチル基を表す。
a、b、c及びdは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、aは4~58であり、b、c及びdは、それぞれ1~3である。また、複数のc同士は、同一でも相異なっていてもよい。)
【化2】
[図:0001403675000002.jpg]
(式中、A2Oは、CH2O、CH2CH2O、又は、CH2CH(CH3)Oで表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択される一種を表し、複数のA2O同士は同一でも相異なっていてもよい。
R2は、水素原子又はメチル基を表す。
e、f、g及びhは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、e+f+g+h=4~35である。)
【請求項2】
(A)成分として、下記式(1)で表される化合物の一種又は二種以上、及び、下記式(3)で表される化合物の一種又は二種以上を含有するハードコート剤であって、
式(1)で表される化合物と式(3)で表される化合物の含有割合が、〔式(1)で表される化合物〕:〔式(3)で表される化合物〕の質量比で、9:1~1:9であるハードコート剤。
【化3】
[図:0001403675000003.jpg]
(式中、A1Oは、CH2O、CH2CH2O、又は、CH2CH(CH3)Oで表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択される一種を表し、複数のA1O同士は同一でも相異なっていてもよい。
R1は、水素原子又はメチル基を表す。
a、b、c及びdは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、aは4~58であり、b、c及びdは、それぞれ1~3である。また、複数のc同士は、同一でも相異なっていてもよい。)
【化4】
[図:0001403675000004.jpg]
(式中、A3Oは、CH2O、CH2CH2O、又は、CH2CH(CH3)Oで表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択される一種を表し、複数のA3O同士は同一でも相異なっていてもよい。
R3は、水素原子又はメチル基を表す。
i、j、k、l、m及びnは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、i+j+k+l+m+n=6~12である。)
【請求項3】
さらに、(B)成分として、無機フィラーを含有する、請求項1又は2に記載のハードコート剤。
【請求項4】
前記(B)成分が、反応性官能基を有する無機フィラーである、請求項3に記載のハードコート剤。
【請求項5】
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、5~300質量部である、請求項3又は4に記載のハードコート剤。
【請求項6】
さらに、(C)成分として、反応性官能基及びポリシロキサン側鎖を有する重合体、又は、反応性官能基を有する含フッ素重合体を含有する、請求項1~5のいずれかに記載のハードコート剤。
【請求項7】
前記反応性官能基及びポリシロキサン側鎖を有する重合体の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、1~15質量部である、請求項6に記載のハードコート剤。
【請求項8】
前記反応性官能基を有する含フッ素重合体の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、0.1~10質量部である、請求項6に記載のハードコート剤。
【請求項9】
さらに、活性エネルギー線重合開始剤を含有する、請求項1~8のいずれかに記載のハードコート剤。
【請求項10】
基材層とハードコート層を有する積層フィルムであって、
前記ハードコート層が、請求項1~9のいずれかに記載のハードコート剤を用いて形成されたものである積層フィルム。
【請求項11】
JIS K5600-5-4(1999)に準じ、荷重750g、引っかき速度0.5mm/秒で行った鉛筆引っかき硬度試験によるハードコート層の鉛筆硬度がF以上である、請求項10に記載の積層フィルム。」
第3 申立の概要
1 申立理由の概要
(1)進歩性欠如
ア 申立人は、証拠方法として、甲第1号証~甲第10号証(以下「甲1」~「甲10」という。)を提示した。
イ 申立理由1
本件発明1~11は、甲1に記載された発明及び甲1~10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。
ウ 申立理由2
本件発明1~11は、甲4に記載された発明及び甲1~10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 申立理由3
本件発明1~11は、甲5に記載された発明及び甲1~10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)申立理由4(記載要件違背)
ア 本件発明1及び2における「a、b、c及びdは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、aは4~58であり、b、c及びdは、それぞれ1~3である。」との特定事項がどのような化合物を包含するかが、発明の詳細な説明を参照しても明らかでないから、本件発明1及び2並びに引用する本件発明3~6は、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
イ 本件発明1における「e、f、g及びhは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、e+f+g+h=4~35である。」との特定事項がどのような化合物を包含するかが、発明の詳細な説明を参照しても明らかでないから、本件発明1及び引用する本件発明3~6は、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
ウ 本件発明2における「i、j、k、l、m及びnは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、i+j+k+l+m+n=6~12である。」との特定事項がどのような化合物を包含するかが、発明の詳細な説明を参照しても明らかでないから、本件発明2及び引用する本件発明3~6は、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
2 証拠方法の一覧
甲1:名田 智美、「ポリグリセリン骨格を有する多官能アクリレートモノマーの特性」、第152回ラドテック研究会講演会、表紙及び29~39頁(2017年6月16日)
甲2:特開2008-45104号公報
甲3:特開2012-219170号公報
甲4:特開2016-23235号公報
甲5:特開2011-198434号公報
甲6:特開2016-8251号公報
甲7:特開2016-221914号公報
甲8:特開2006-188557号公報
甲9:特開2013-163765号公報
甲10:特開2016-166331号公報
第4 証拠方法の記載事項
1 甲1には、次の記載がある。
(1)表紙
「
[図:0001403675000005.jpg]
」
「
[図:0001403675000006.jpg]
」
(2)33頁上段
「
[図:0001403675000007.jpg]
」
(3)33頁中段
「
[図:0001403675000008.jpg]
」
(4)34頁下段
「
[図:0001403675000009.jpg]
」
(5)36頁中段
「
[図:0001403675000010.jpg]
」
(6)37頁中段
「
[図:0001403675000011.jpg]
」
(7)38頁上段
「
[図:0001403675000012.jpg]
」
2 甲2には、次の記載がある。
「【請求項1】
ポリグリセリン(平均重合度2~10)及びアルキレンオキサイド(炭素数2~4のアルキレンオキサイドであって、付加モル数4~40)を反応して得られる化合物の(メタ)アクリレートを含有することを特徴とするコーティング用樹脂組成物。」
「【0001】
本発明は、反射防止フィルム等各種機能性フィルム、傷付き防止用フィルム等各フィルム、自動車バンパーや家電製品や情報機器端末等各種成型品、CDやDVD等高密度情報記録媒体のコート層等を形成するためのコーティング用樹脂組成物に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のアクリレート修飾若しくは非修飾シリカやウレタン骨格を有するアクリレートを使用しない場合であっても、コーティング塗膜を作成した際、基材の反りやコーティング膜自体の割れを防ぎながらも密着性に優れ、コート剤としての特性を得られる速硬化型低粘度の多官能アクリル系モノマーが近年切望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究した結果、ポリグリセリン(平均重合度2~10)に対しアルキレンオキサイド(炭素数2~4のアルキレンオキサイドであって、付加モル数4~40)を付加した化合物の(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物により上記課題を解決するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明の(メタ)アクリレートを含有させることにより硬化速度が速く、基材フィルムの反りを発生させず、コーティング膜のひび割れを発生させず、かつ、有機溶剤を使用せずともコーティング樹脂組成物の粘度を低く抑えることができる活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物を得ることができる。」
「【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物は、本発明で用いられる(メタ)アクリレート以外に他の(メタ)アクリル系モノマーを単独若しくは2種以上併用することも妨げない。他のアクリル系モノマーとしては、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2-エチルヘキシルジエトキシ(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサ(メタ)アクリレート混合物、ジペンタエリスリトールポリエトキシヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリプロポキシヘキサ(メタ)アクリレート等のモノマー類を挙げることができる。」
「【0016】
本発明において上記の中で、紫外線を用いて硬化させる場合に、光重合開始剤を使用する必要がある。光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤であっても良いが配合後の貯蔵安定性の良い事が要求される。この様な光重合開始剤としては、例えばベンゾイン類、アセトフェノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられ、単独または2種以上を併用することができる。光重合開始剤を使用する必要がある場合、その使用量は、通常組成物の0.1~15重量%、好ましくは0.5~10重量%、さらに好ましくは1~7重量%である。」
「【0021】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものでない。
<合成例1>
ジグリセリン166g(1モル)にエチレンオキサイド176g(4モル)を付加した化合物に対し、アクリル酸317g(4.4モル)を85℃で10時間反応し、次いでトルエン及び多量の水及び未反応のアクリル酸を中和する量の苛性を加え、分液ロートで有機層を取り出しエバポレータにてトルエンを留去し、ジグリセリンエチレンオキサイド(4モル)付加物のアクリレート反応物を得た。生成物の粘度は、230mPa・s(25℃)であり、けん化価から求めたアクリル酸の反応割合は、水酸基に対して80%であった。以下、得られた化合物をA1という。」
「【0024】
<合成例4>
ジグリセリン166g(1モル)をテトラグリセリン314g(1モル)に、エチレンオキサイドを264g(6モル)、アクリル酸を649g(9モル)、反応時間を18時間に変更した以外は合成例1と同様の反応を行い、テトラグリセリンエチレンオキサイド(6モル)付加物のアクリレート反応物を得た。生成物の粘度は、440mPa・s(25℃)であり、けん化価から求めたアクリル酸の反応割合は、水酸基に対して95%であった。以下、得られた化合物をA4という。
【0025】
<合成例5>
ジグリセリン166g(1モル)をデカグリセリン758g(1モル)、エチレンオキサイドを1056g(24モル)、アクリル酸を1297g(18モル)、反応時間を18時間に変更した以外は合成例1と同様の反応を行い、デカグリセリンエチレンオキサイド(24モル)付加物のアクリレート反応物を得た。生成物の粘度は、890mPa・s(25℃)であり、けん化価から求めたアクリル酸の反応割合は、水酸基に対して93%であった。以下、得られた化合物をA5という。」
「【0026】
実施例1~5、比較例1~4を表1に示すような処方で(数値は重量部を示す。)各成分を混合し、各種組成物を光重合開始剤が溶解し均一になるよう調製し、各種評価を行った。実施例中の評価は、以下の方法で行った。」
「【0031】
【表1】
[図:0001403675000013.jpg]
」
3 甲3には次の記載がある。
「【請求項1】
トリグリセリン濃度とテトラグリセリン濃度の合計が60重量%以上であるポリグリセリンとアルキレンオキサイド(炭素数2~4)を反応して得られるポリグリセリンアルキレンオキサイド付加物(付加モル数4~20)に(メタ)アクリル酸(または低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル)を反応して得られることを特徴とする(メタ)アクリル酸エステル化物。
【請求項2】
ポリグリセリンを構成するトリグリセリンおよびテトラグリセリンの各々の濃度が10重量%~70重量%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の(メタ)アクリル酸エステル化物。
【請求項3】
ポリグリセリンを構成するジグリセリン濃度が10重量%未満であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の(メタ)アクリル酸エステル化物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステル化物を含有する事を特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いたコーティング用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いたインキ用樹脂組成物。」
「【0021】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成は、ポリグリセリン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化物を含有することを特徴とするが、本発明で用いられるエステル化物以外に他の(メタ)アクリル系モノマーやアクリル系オリゴマーであるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーやエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーを単独若しくは2種以上併用しても良い。樹脂組成物に対し、硬化性や粘度、耐熱性、硬度などの性能が損なわれない限り、任意の割合で併用することが出来る。
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物において、本発明で用いられる(メタ)アクリル酸エステル化物以外の他の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジエトキシ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリエトキシヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリプロポキシヘキサ(メタ)アクリレート等のモノマー類を挙げることができる。」
「【0023】
本発明の樹脂組成物は公知の方法によって硬化する事ができる。活性エネルギー線とは、電子線、X線、紫外線、低波長領域の可視光等エネルギーの高い電子線若しくは電磁波の総称であり、通常装置の簡便性及び普及性により紫外線が好ましい。紫外線を照射できる装置として多くの種類があるが、任意に選択できる。また、低波長領域側の可視光等エネルギーとして、青色LEDを用いることも可能である。
【0024】
本発明において上記の中で、紫外線を用いて硬化させる場合に、ラジカル重合系光重合開始剤を使用する必要がある。光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤であっても良いが配合後の貯蔵安定性の良い事が要求される。この様な光重合開始剤としては、例えば分子内開裂型開始剤として、ベンジルケタール類、α-ヒドロキシアセトフェノン類、アミノアセトフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾイン類等、水素引き抜き型開始剤として、ベンゾフェノン類、チオキサントン類等が挙げられ、単独または2種以上を併用することができる。光重合開始剤を使用する必要がある場合、その使用量は、通常組成物の0.1~15重量%、好ましくは0.5~10重量%、さらに好ましくは1~7重量%である。」
「【0028】
本発明の樹脂組成物は、活性エネルギー線によって硬化させる際、公知の方法により、塗膜、フィルム等様々な形態とすることができる。よって、この組成物は、コーティング剤、ライニング剤、光学材料、インキ等の用途で利用することが出来、また、硬質及び可橈性プラスチック、ガラス、金属基板など広い範囲の基板上へ適用できる。」
「【0030】
<ポリグリセリンA~Hの合成例>
温度計、撹拌機を備えた反応容器に精製グリセリン(阪本薬品工業株式会社製)、及び触媒として水酸化ナトリウムを添加し、窒素気流下にて250℃で反応させ、ポリグリセリン組成物を得た。次いで、この組成物を減圧蒸留して表1に示すポリグリセリン組成物A~Fを得た。なお、減圧蒸留工程を実施しないものとして、ポリグリセリンG、及びHを得た。
【0031】
【表1】
[図:0001403675000014.jpg]
」
「【0032】
<合成例>
温度計、撹拌機、還流冷却管、水分離管、空気吹き込み管を備えた反応器に、ポリグリセリンA(1mol)にエチレンオキサイド6mol付加した化合物200g、トルエン300g、パラトルエンスルホン酸15g、ハイドロキノン0.5g、アクリル酸228gを仕込み、一定量の空気を吹き込み、かつ撹拌しながらトルエン還流雰囲気まで昇温し、約15時間かけて脱水エステル化反応を行った。反応終了後、60℃まで冷却し、トルエンを追加した。その後、水酸化ナトリウム水溶液で未反応のアクリル酸を中和洗浄し、水層を除去した。更に有機層を塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、水層を除去してから、トルエンを減圧留去し、ポリグリセリンAのエチレンオキサイド6mol付加物のアクリル酸エステル化物(A1)を得た。以下同様に、ポリグリセリンの種類やアルキレンオキサイドの種類や付加モル数を変化させて、表2に示すポリグリセリンのアクリル酸エステル化物を合成した。
【0033】
【表2】
[図:0001403675000015.jpg]
」
「【0034】
実施例1~9、比較例1~7を表3及び表4に示すような処方で(数値は重量部を示す)各成分を混合し、各種組成物を光重合開始剤が溶解し均一になるよう調製し、各種評価を行った。なお、粘度と熱重量減少温度の測定は、光重合開始剤を配合する前に評価した。実施例中の評価は、以下の方法で行った。
・・・
【0041】
【表3】
[図:0001403675000016.jpg]
」
4 甲4には次の記載がある。
「【請求項1】
(A)重合性二重結合を有するアクリル樹脂、
(B)3個以上の重合性二重結合を有し、該重合性二重結合を含む基として下記一般式(2-1)又は(2-2)で表される一価の基を1個以上有する多官能重合性化合物、及び
(C)下記一般式(3)で表されるアルキレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを含み、
【化1】
[図:0001403675000017.jpg]
(式(2-1)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、dは2~4の整数を示し、eは1~6の整数を示す。)
【化2】
[図:0001403675000018.jpg]
(式(2-2)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、mは5であり、nは1~4の整数を示す。)
【化3】
[図:0001403675000019.jpg]
(式(3)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、fは2~5の整数を示し、g及びhは1以上の整数を示し、g+hが2~40である。)
二重結合当量が、式:二重結合当量=分子量/同一分子中の重合性二重結合の数、によって定義されるときに、前記多官能重合性化合物の二重結合当量が130以上500以下であり、
前記多官能重合性化合物が、前記アクリル樹脂とは異なる化合物である、
硬化性組成物。
・・・
【請求項6】
(D)2個以上の重合性二重結合を有し、二重結合当量が130未満である低二重結合当量重合性化合物を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」
「【0057】
アルキレンオキシド変性又はカプロラクトン変性多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、下記一般式(20)で表される。
【0058】
(HO)y-R10-(O-Z)x (20)
【0059】
式(20)中、R10は3個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールの残基(ヒドロキシル基を除いた部分)を示し、Zは式(2-1)若しくは(2-2)で示される一価の基、又はこれら以外の重合性二重結合を有する一価の基を示し、xは3以上の整数を示し、yは0以上の整数を示し、x+yはR10の価数に等しい。一分子中の複数のZは同一でも異なっていてもよく、複数のZのうち1個以上は、式(2-1)又は(2-2)で示される一価の基である。x+y(多価アルコールのヒドロキシル基の総数)は3~12であってもよく、xは3~9であってもよい。
【0060】
R10に対応する多価アルコールは、例えば、ポリグリセリン、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール及びトリメチロールプロパンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり得る。
【0061】
多官能重合性化合物の具体例としては、アルキレンオキシド変性又はカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性又はカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性又はカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性又はカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性又はカプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性又はカプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びアルキレンオキシド変性又はカプロラクトン変性ポリグリセリンのポリアクリレートが挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。例えば、アルキレンオキシド変性又はカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートと、アルキレンオキシド変性又はカプロラクトン変性ポリグリセリンのポリアクリレートとを併用してもよい。」
「【0097】
2.原材料
(A)重合性二重結合を有するアクリル樹脂(高分子アクリルアクレート)の合成
(合成例1)
グリシジルメタクリレート(GMA)80質量部、メチルメタクリレート(MMA)18質量部、及びエチルアクリレート(EA)2質量部を、メチルイソブチルケトン(MIBK)中で常法に従って溶液重合させて、グリシジルメタクリレートに由来するエポキシ基を有するアクリル樹脂を合成した。得られたアクリル樹脂のエポキシ基とアクリル酸との反応により、アクリロイルオキシ基を有するアクリル樹脂(高分子アクリルアクリレート)を得た。重合反応に用いたGMA1当量に対して、1当量のアクリル酸を反応に用いた。得られた高分子アクリルアクリレートの重量平均分子量は15000であり、二重結合当量は256であった。」
「【0103】
(B)~(E)成分
B、C、D及びE成分として以下を使用した。
(B)多官能重合性化合物
B1:カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA-20、カプロラクトン2モル付加(式(2-2)におけるnが一分子中の合計で平均2)、六官能)
B2:エチレンオキシド変性ポリグリセリンポリアクリレート(新中村化学工業株式会社製、NKエコノマー A-PG5027E、エチレンオキシド27モル付加(式(2-1)におけるeが一分子中の合計で平均27)、九官能)
B3:エチレンオキシド変性ポリグリセリンポリアクリレート(新中村化学工業株式会社製 NKエコノマー A-PG5054E、エチレンオキシド54モル付加(式(2-1)におけるnが一分子中の合計で平均54)、九官能)
(C)アルキレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート
C1:EO変性ビスフェノールAジアクリレート(日立化成株式会社製 ファンクリル FA-323A、式(3)におけるR1が水素原子、fが2、g+hが30である化合物)
C2:EO変性ビスフェノールAジアクリレート(日立化成株式会社製 ファンクリル FA-324A、式(3)におけるR1が水素原子、fが2、g+hが4である化合物)
C3:PO変性ビスフェノールAジアクリレート(第一工業製薬株式会社製 ニューフロンティア BPP-4、式(3)におけるR1が水素原子、fが3、g+hが4である化合物)
(D)低二重結合当量モノマー
D1:10官能ウレタンアクリレート(二重結合当量:116、日立化成株式会社製 ヒタロイド HA7909-1)
D2:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(二重結合当量:96、六官能、新中村化学工業株式会社製 NKエステル A-DPH)
(E)光開始剤
E1:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製 IRGACURE184)
【0104】
3.硬化性組成物の調製
各成分を、表1~6に示す比率で溶媒としてのMIBK150質量部に加え、40℃で1時間攪拌して、均一な硬化性組成物を得た。表中の数値は質量部であり、「固形分合計」は、硬化性組成物の溶剤以外の成分の合計を意味する。」
「【0110】
【表2】
[図:0001403675000020.jpg]
」
5 甲5には次の記載がある。
「【請求項1】
少なくとも基板、記録層、反射膜及び保護層を有し、青色レーザー光により記録及び/又は再生を行う光記録媒体に用いられる硬化性樹脂組成物であって、
該硬化性樹脂組成物は、
(a)アルキレンオキシド及び/又はε-カプロラクトンで変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物50~100質量%と、
(b)該(a)成分以外の(メタ)アクリレート化合物0~50質量%とを含み(但し、各数値範囲は、(a)及び(b)の総量を100質量%としたときの各成分の含有割合(質量%)を表す。)、
更に、(c)光重合開始剤を含むものであり、
該硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が、
(A)ガラス転移温度が0~40℃であり、かつ、
(B)70℃における貯蔵弾性率が45~130MPaである
ことを特徴とする光記録媒体用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(a)成分は、アルキレンオキシド及び/又はε-カプロラクトンで変性された6官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含む
ことを特徴とする光記録媒体用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の光記録媒体用硬化性樹脂組成物を硬化して得られる
ことを特徴とする硬化物。」
「【0014】
上記硬化性樹脂組成物は、(a)アルキレンオキシド及び/又はε-カプロラクトンで変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を必須成分とし、必要に応じて、更に(b)該(a)成分以外の(メタ)アクリレート化合物を含んでもよいものである。すなわち(b)成分は任意成分である。なお、本発明の作用効果を損なわない限り、他の成分を更に含有していてもよい。また、これら含有成分は、各々1種又は2種以上使用してもよく、本発明の作用効果を損なわない限り、他の成分を更に含有していてもよい。
以下では、上記(a)に該当する各化合物を「化合物(a)」と称し、化合物(a)の集合体(すなわち、1以上の化合物(a)の総称)を「(a)成分」と称す。上記(b)~(c)についても、これと同様に称す。
【0015】
上記硬化性樹脂組成物において、(a)及び(b)成分の含有割合としては、これらの総量100質量%に対し、各々、(a)50~100質量%、(b)0~50質量%であることが適当である。(a)成分の含有割合が50質量%未満であると、得られる硬化物が、長期保存安定性(反り特性、残膜性及び耐圧痕性)、耐ヒートショック性、クラック防止性及び残膜性等の特性をバランスよく発揮できないおそれがある。上記(a)及び(b)成分の含有割合として好ましくは、これらの総量100質量%に対し、各々、(a)55~100質量%、(b)0~45質量%である。
【0016】
上記硬化性樹脂組成物はまた、該硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が、(A)ガラス転移温度が0~40℃であり、かつ、(B)70℃における貯蔵弾性率が45~130MPaであることが適当である。これと、硬化性樹脂組成物の組成を、上述したように少なくとも(a)及び(c)成分を含み、かつ(a)成分の含有量が上記のように特定されてなる形態とすることとの相乗効果によって、低反り性(低収縮性)、透明性(光透過性)、基板(例えば、ポリカーボネート基板等)との密着性、低腐食性、リサイクル性、速硬化性(生産性)、防汚性、寸法安定性、長期保存安定性(反り特性、残膜性及び耐圧痕性)、耐ヒートショック性、クラック防止性等の各種特性を全て満たす保護層を実現することが可能になる。ここで、硬化性樹脂組成物の組成、上記(A)の特定事項及び上記(B)の特定事項のうち1つでも満たさないものがあると、長期保存安定性(反り特性、残膜性及び耐圧痕性)や耐ヒートショック性、クラック防止性等の諸性能を同時に充分に発揮させることができない。すなわち本発明では、長期保存安定性(反り特性、残膜性及び耐圧痕性)や耐ヒートショック性、クラック防止性等の諸性能をバランスよく同時に発揮させるには、硬化性樹脂組成物の組成、その硬化物のガラス転移温度及び70℃における貯蔵弾性率を上記のように特定することが必須となることを見いだしたのであり、ここに本発明の技術的意義を有する。」
「【0023】
〔(a)成分について〕
上記化合物(a)は、アルキレンオキシド及び/又はε-カプロラクトンで変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物である。すなわち、アルキレンオキシドで変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、ε-カプロラクトンで変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、並びに、アルキレンオキシド及びε-カプロラクトンで変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、のいずれか1以上の化合物である。このような化合物は、活性水素を3個以上有する多価アルコール(3価以上の多価アルコール)を、アルキレンオキシド及び/又はε-カプロラクトンで変性した(メタ)アクリレート、すなわち3価以上の多価アルコールにアルキレンオキシド及び/又はε-カプロラクトンを付加した化合物の(メタ)アクリル酸エステルや、アルキレンオキシド骨格を有する3価以上のアルコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0024】
上記3価以上の多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン(ポリグリセリンを含む)、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられ、置換基を有するものであってもよい。
【0025】
上記アルキレンオキシドは、例えば、炭素数2~18のアルキレンオキシドが好適である。より好ましくは炭素数2~8のアルキレンオキシドであり、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、トリメチルエチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、オクチレンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられる。中でも、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2~4のアルキレンオキシドが更に好ましい。特に好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。
なお、上記アルキレンオキシドは、1種のものであってもよく、2種以上のものであってもよい。
【0026】
上記化合物(a)におけるアルキレンオキシド及び/又はε-カプロラクトンの存在数(繰り返し数)としては、アルキレンオキシド及びε-カプロラクトンの合計量の平均繰り返し数として、化合物(a)1モルに対し、2~16モルであることが好適である。これによって、硬化物の貯蔵弾性率をより適切に調整することができ、長期保存安定性に更に優れた光記録媒体を与えることが可能になる。より好ましくは3~14モル、特に好ましくは3~12モルである。
【0027】
上記化合物(a)として具体的には、例えば、トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのε-カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンのε-カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのアルキレンオキシド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのε-カプロラクトン付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのアルキレンオキシド付加物のヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのε-カプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
上記化合物(a)はまた、アルキレンオキシド及び/又はε-カプロラクトンで変性された6官能以上の(メタ)アクリレート化合物であることが好適である。これにより、上述した3つの反り特性、残膜性、耐圧痕性、耐ヒートショック性及びクラック防止性等の諸性能をバランスよく発揮できるという本発明の作用効果をより一層発揮することが可能となる。このように、上記(a)成分が、アルキレンオキシド及び/又はε-カプロラクトンで変性された6官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含む形態もまた、本発明の好適な形態である。中でも、上記(a)成分の総量100質量%に占める、当該(メタ)アクリレート化合物の割合が、50質量%以上であることがより好ましく、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
なお、上記アルキレンオキシド及び/又はε-カプロラクトンで変性された6官能以上の(メタ)アクリレート化合物において、官能数の好ましい範囲は、6~18であり、より好ましくは6~12、更に好ましくは6~9である。
【0029】
上記化合物(a)としてはまた、上記多価アルコールとして、4級炭素を有する多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等)を使用してなる化合物であることも好適である。これによって、更に耐光性に優れる硬化物を得ることが可能になる。このように、上記(a)成分が、4級炭素を有する3価以上の多価アルコールを、アルキレンオキシド及び/又はε-カプロラクトンで変性した(メタ)アクリレート化合物を含む形態もまた、本発明の好適な形態である。中でも、上記(a)成分の総量100質量%に占める、当該(メタ)アクリレート化合物の割合が、50質量%以上であることがより好ましく、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%、すなわち上記(a)成分が、4級炭素を有する3価以上の多価アルコールを、アルキレンオキシド及び/又はε-カプロラクトンで変性した(メタ)アクリレート化合物のみから構成されることであり、また、上記硬化性樹脂組成物が、3級炭素を有する3価以上の多価アルコールを、アルキレンオキシド及び/又はε-カプロラクトンで変性した(メタ)アクリレート化合物を含まないことが最も好適である。」
「【0068】
〔(c)成分について〕
本発明の樹脂組成物はまた、必須成分として光重合開始剤(c)を含有するが、光重合開始剤を含むことにより、光照射によって速やかに硬化させることができるという効果を奏する。光重合開始剤(c)としては、光線の照射により重合開始ラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤が好適である。また、光線の照射により重合開始カチオンを発生する光カチオン重合開始剤を使用してもよい。なお、光重合開始剤(c)は、1種又は2種以上を用いることができる。」
「【0075】
上記硬化性樹脂組成物はまた、必要に応じ、光増感剤、光重合促進剤、金属酸化物粒子、表面機能調整剤、溶剤等の1種又は2種以上を含んでもよく、また、添加物として、無機充填剤、低収縮化剤(反応性オリゴマー又はポリマー、非反応性オリゴマー又はポリマー)、着色顔料、可塑剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、近赤外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃化剤、艶消し剤、染料、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、揺変化剤、揺変助剤等の1種又は2種以上を含んでもよい。
これらのその他の成分の配合量は、その種類や使用目的、組成物の用途や使用方法等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。」
「【0080】
〔硬化物〕
本発明はまた、上記光記録媒体用硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物でもある。このような硬化物は、透明性や硬度、残膜性、膜厚安定性、膜厚均一性等の諸物性に優れるのみならず、耐ヒートショック性に優れ、反りが著しく小さく、しかも圧接痕や凹み等による永久的な変形(永久変形)が充分に抑制されて、長期保存安定性に著しく優れたものである。そのため、この硬化物は、光記録媒体を構成する層(硬化膜)として特に有用なものである。」
「【0084】
〔光記録媒体〕
本発明は更に、上記光記録媒体用硬化性樹脂組成物を硬化させてなる層(硬化して得られる層)を有する光記録媒体でもある。このような光記録媒体は、青色レーザー光により記録及び/又は再生を行う光記録媒体であるが、少なくとも基板、記録層、反射膜及び保護層を有するものが好適である。これらの層(基板含む)は、それぞれ1層から構成されるものであってもよいし、多層から構成されるものであってもよい。また、更に必要に応じて他の機能層を1層以上有するものであってもよく、これらの各層の間に他の機能層を有するものであってもよい。他の機能層としては、例えば、記録層(情報記録層)を2層以上有する多層構造の光記録媒体における記録層間に形成される中間層や、また、通常保護層の上に形成される、帯電防止層、撥水層、撥油層、ハードコート層等が挙げられる。また、記録層と保護層との間に形成される界面層も好ましく挙げられる。本発明の光記録媒体として特に好ましくは、更にハードコート層を有する形態である。」
「【0119】
実施例1
(保護層の準備)
表1に記載の各成分を、それぞれ表1に記載の各配合量(部)にて混合・攪拌し、光記録媒体用硬化性樹脂組成物(1)を調製した。
【0120】
(ハードコート層の準備)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート30部、トリメチロールプロパントリアクリレート30部、アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル40部、光重合開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)5部、シリコーン系添加剤(商品名「FZ-2104」東レ・ダウコーニング社製 )0.3部を、混合・攪拌して、光記録媒体用ハードコート用樹脂組成物を調製した。
【0121】
(保護層の形成1)
次に、厚さ1.1mm、直径120mmのポリカーボネート製の円盤状光記録媒体用基板を準備し(ソリ角度0.0°)、その上に銀合金を20~40nmの膜厚でスパッタリング処理した。次に、銀合金上に雰囲気温度25℃、相対湿度50%の環境下、得られた光記録媒体用硬化性樹脂組成物(1)を厚さ約100μm設定でスピンコーターにて塗布し、キセノンフラッシュUVランプを有するUV照射機(米国キセノン社製 形式RC-801)を用いて、窒素雰囲気下、ランプ高さ2cmでフラッシュを15回照射して硬化させた。なお、320~390nmにおける照射積算光量は約0.5J/cm2であった。硬化物(保護)層の厚さをレーザーフォーカス変位計を用いて測定したところ、97±2μmであった。
【0122】
(ハードコート層の形成)
次に、得られた光記録媒体用ハードコート用硬化性樹脂組成物を、硬化物(保護)層の上に、厚さ約3μm設定でスピンコーターにて塗布し、キセノンフラッシュUVランプを有するUV照射機(米国キセノン社製 形式RC-801)を用いて、窒素雰囲気下、ランプ高さ2cmでフラッシュを10回照射して硬化させた。得られた硬化物層の積層体(保護層/ハードコート層)の厚みをレーザーフォーカス変位計を用いて測定したところ、100±2μmであった。
得られた光記録媒体用硬化性樹脂組成物(1)、及び、得られた光記録媒体(基板/保護層/ハードコート層の積層体(※))の評価を行った。結果を表1に示す。
※3つの反り増加量、反り総合評価、耐圧痕性、HCクラック防止性、残膜性及び耐ヒートショック性の評価試験以外は、ハードコート層を積層せずに、すなわち、基板/保護層の積層体について評価・測定した。」
「【0124】
実施例2~18、比較例1~6
実施例1(保護層の準備)と同様にして、各成分を表1~3に示した割合で混合・撹拌して、光記録媒体用硬化性樹脂組成物(2)~(18)、比較用樹脂組成物(1)~(6)を各々得た。その後、実施例1における光記録媒体用硬化性樹脂組成物(1)に代えて、これらの樹脂組成物の各々を用いたこと以外は、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。得られた樹脂組成物及び光記録媒体を実施例1と同様に評価した。結果を表1~3に示す。
【0125】
【表1】
[図:0001403675000021.jpg]
【0126】
【表2】
[図:0001403675000022.jpg]
」
「【0128】
表1~3中の略称は、以下のとおりである。
※1:上述した(b-2)成分に該当する化合物の分子量は数平均分子量(Mn)を意味し、それ以外の(メタ)アクリレート化合物の分子量は、構成する元素の原子量の総和として計算された値を意味する。
※2:上述した(b-2)成分に該当する化合物のTg及び貯蔵弾性率は、それぞれ、それを単独で硬化した硬化物のTg及び貯蔵弾性率(25℃)を意味する。
【0129】
TMP-3PO-A:トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド3モル付加物のトリアクリレート(商品名「SR492」、サートマー社製)
TMP-6PO-A:トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド6モル付加物のトリアクリレート(商品名「CD501」、サートマー社製)
TMP-6EO-A:トリメチロールプロパンのエチレンオキシド6モル付加物のトリアクリレート(商品名「ライトアクリレートTMP-6EO-A」、共栄社化学社製)
TMP-9EO-A:トリメチロールプロパンのエチレンオキシド9モル付加物のトリアクリレート(商品名「SR502」、サートマー社製)
G-PO-A:グリセリンのプロピレンオキシド5.5モル付加物のトリアクリレート(商品名「CD9021」、サートマー社製)
THEIC-3CL-A:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)のε-カプロラクトン3モル変性のアクリレート、商品名「アロニックスM327」、東亜合成社製
PET-4PO-A:ペンタエリスリトールのプロピレンオキシド4モル付加物のテトラアクリレート
DPCA-120:ジペンタエリスリトールのε-カプロラクトン12モル付加物のヘキサアクリレート(商品名「カヤラッドDPCA-120」、日本化薬社製)
DPCA-60:ジペンタエリスリトールのε-カプロラクトン6モル付加物のヘキサアクリレート(商品名「カヤラッドDPCA-60」、日本化薬社製)
DPHA-12EO-A:ジペンタエリスリトールのエチレンオキシド12付加物のヘキサアクリレート(商品名「NKエステル A-DPH-12E」、新中村化学社製)
PG1-A:ポリグリセリンのエチレンオキシド付加物のポリアクリレート(7官能、平均値)(商品名「NKエコノマー A-PG5009E」、新中村化学社製)
PG2-A:ポリグリセリンのエチレンオキシド付加物のポリアクリレート(9官能、平均値)(商品名「NKエコノマー A-PG5027E」、新中村化学社製)
【0130】
UA-1:製造例1で得たウレタンアクリレート
UA-2:製造例2で得たウレタンアクリレート
CN978:サートマー社製、ウレタンアクリレート
CN9178:サートマー社製、ウレタンアクリレート
CN2270:サートマー社製、ポリエステルアクリレート
P-1:製造例3で得たビニル系重合体
P-2:製造例4で得たビニル系重合体
CN UVE151:サートマー社製、エポキシアクリレート
CN981:サートマー社製、ウレタンアクリレート
【0131】
Bis-10EO-A:ビスフェノールAのエチレンオキシド10モル付加物のジアクリレート(商品名「SR-602」、サートマー社製)
APG-700:ポリプロピレングリコールのジアクリレート(商品名「NKエステル APG-700」、新中村化学社製)
HX-620:ヒドロキシピバリン酸ネオペングリコールのε-カプロラクトン4モル付加物のジアクリレート(商品名「カヤラッドHX-620」、日本化薬株式会社製)
NP-2PO-A:ネオペンチルグリコールのプロピレンオキシド付加物のジアクリレー
ト(商品名「SR9003」、サートマー社製)
【0132】
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名「SR351」、サートマー社製)
TCD-A:トリシクロデカンジアクリレート(商品名「ライトアクリレートDCP-A」、共栄社化学社製)
PEA:フェノキシエチルアクリレート(商品名「ライトアクリレートPO-A」、共栄社化学社製)
VEEA:アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(日本触媒社製)
【0133】
Irg184:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
Irg127:2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチループロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン(商品名「イルガキュア127」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
Esacure one:オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}(商品名「エスキュアONE」、ランベルティ社製)」
「【0134】
上述した実施例及び比較例の結果から、本発明の光記録媒体用硬化性樹脂組成物を、(a)アルキレンオキシド及び/又はε-カプロラクトンで変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物50~100質量%と、(b)該(a)成分以外の(メタ)アクリレート化合物0~50質量%とを含み(但し、各数値範囲は、(a)及び(b)の総量を100質量%としたときの各成分の含有割合(質量%)を表す。)、更に、(c)光重合開始剤を含み、なおかつ、該硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が、(A)ガラス転移温度(Tg)が0~40℃であり、かつ、(B)70℃における貯蔵弾性率(E2)が45~130MPaを満たすという形態とすることによって、得られた硬化物が、各種反り特性、耐圧痕性、耐ヒートショック性、残膜性等に優れ、しかもハードコート層を積層した場合のクラックの発生を防止できるという、各種特性をバランスよく同時に発揮できるという点において有利な効果を発揮し、それが顕著であることが確認された。以下に説明する。
【0135】
すなわち実施例1~18の樹脂組成物はいずれも、上記形態を満たすものであるのに対し、比較例1は、(a)成分の含有割合、Tg及びE2が上述した本発明の数値範囲を下回る例であり、比較例2は、Tg及びE2が上述した本発明の数値範囲を下回る例である。これらの場合、耐ヒートショック性、耐圧痕性及びHCクラック防止性(ハードコート層を積層した場合のクラックを防ぐ性能)が実施例に比べて格段に劣る結果となっている。」
6 甲6には次の記載がある。
「【0006】
本発明が解決しようとする課題は、耐擦傷性及び耐クラック性に優れる塗膜を得ることができる活性エネルギー線硬化性組成物及びそれを用いた物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、無機微粒子、ポリグリセリンにアルキレンオキサイドを付加した構造を有する(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリロイル基を有するアクリル重合体を特定の質量比率で含有する活性エネルギー線硬化性組成物を用いることで、耐擦傷性及び耐クラック性に優れる硬化塗膜が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、無機微粒子(A)、ポリグリセリンにアルキレンオキサイドを付加した構造を有する(メタ)アクリレート(B)、及び(メタ)アクリロイル基を有するアクリル重合体(C)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、固形分中の前記無機微粒子(A)の質量比率が30~60質量%の範囲であり、前記(メタ)アクリレート(B)の質量比率が10~50質量%の範囲であり、前記アクリル重合体(C)の質量比率が5~30質量%の範囲であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物、及びそれを用いた物品に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、耐擦傷性及び耐クラック性に優れる塗膜を得ることができる。したがって、冷蔵庫、テレビ、エアコン等の家電製品の本体及びそのリモコン、携帯電話、スマートフォン、タブレット、パソコン、ゲーム機等の情報端末の筐体、光学フィルム、自動車部品、自動車内装材などのプラスチック成形品の表面に耐擦傷性及び耐クラック性を付与することができる。」
「【0110】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、より耐擦傷性に優れる塗膜が得られることから、前記ポリグリセリンにアルキレンオキサイドを付加した構造を有する(メタ)アクリレート(B)及び前記(メタ)アクリロイル基を有するアクリル重合体(C)以外の多官能(メタ)アクリレート(D)を含有していることが好ましい。
【0111】
前記多官能(メタ)アクリレート(D)としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート単量体(D1)、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(D2)、多官能エポキシ(メタ)アクリレート(D3)等が挙げられるが、より耐擦傷性に優れる塗膜が得られ、かつ、塗工に適した低粘度の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が得られることから、前記多官能(メタ)アクリレート単量体(D1)又は前記多官能ウレタン(メタ)アクリレート(D2)を含有することが好ましい。
・・・
【0114】
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート;
【0115】
これらの(メタ)アクリレート化合物が有する(メタ)アクリロイル基の一部をε?カプロラクトンや、環状ポリエーテル化合物等で変性して得られる(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0116】
これらの多官能(メタ)アクリレート単量体(D1)の中でも、前記無機微粒子(A)を安定に分散させることができ、かつ、より耐擦傷性に優れる硬化塗膜が得られることから、前記トリ(メタ)アクリレート及び前記4官能以上の(メタ)アクリレートがより好ましい。」
7 甲7には次の記載がある。
「【請求項1】
少なくとも一方の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の硬化物からなる層を有する、光透過性基材を含む積層体であって、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)が、多官能(メタ)アクリレートである重合性成分(A)または分子中にリン原子を有する重合性成分(B)から選ばれる少なくとも1つと、光重合開始剤(E)とを含むことを特徴とする、積層体。」
「【0029】
[活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)]
<重合性成分(A)>
重合性成分(A)は、多官能(メタ)アクリレートである。多官能(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物である。重合性成分(A)は、第一の層のハードコート性や耐擦傷性を高める機能や、光透過性基材との密着性付与を補助する役割を有する。
・・・
【0036】
3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、(ポリ)グリセリンポリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ)テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(ペンタ)ヘキサ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、及びこれらのアルキレンオキサイド変性物やカプロラクトン変性物、ハイパーブランチ型ポリエステルアクリレート、3官能以上のシリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
これらの中でも、第一の層をより高硬度にするためには、例えば、ペンタエリスリトール(トリ)テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(ペンタ)ヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらと脂肪族ジイソシアネートとの反応生成物である多官能ウレタン(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
・・・
【0040】
その他に、第一の層を疎水性にしたり、滑り性や離型性を付与するためには、シリコーン(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0041】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の重合性成分100質量%中に占める重合性成分(A)の割合は、0~99質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましい。重合性成分(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。」
「【0046】
<重合性成分(C)>
本発明においては、その他の重合性成分として重合性成分(C)を含んでいてもよい。重合性成分(C)は、重合性官能基を分子内に1個有する化合物である。重合性官能基は重層性成分(A)や重合性成分(C)と共重合性を有するものであれば特に制限されるものではないが、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。重合性成分(C)は、密着性、離型性、滑り性、撥水性、耐擦傷性、親水性、帯電防止性、耐候性、紫外線遮蔽性、耐熱性、耐加水分解性、導電性、意匠性、柔軟性、などの付与を目的に用いられる。
【0047】
重合性成分(C)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、アルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリジメチルシロキサンアルキレンオキサイド変性モノ(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリレート誘導体;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリルアミド、N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル=(メタ)アクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル(メタ)アクリレート、アクリル酸2-ターシャリーブチル-6-(3-ターシャリーブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニル、アクリル酸2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-ターシャリーペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-ターシャリーペンチルフェニル、3-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェネチル=メタクリラート、α-ブチル-ω-(3-メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、α-ブチル-ω-(3-アクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、3-メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3-アクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、シリコーン(メタ)アクリレート類、フッ素を含有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の重合性成分100質量%中に占める重合性成分(C)の割合は、0~30質量%が好ましく、0~20質量%がより好ましい。重合性成分(C)は、単官能であるため活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)の硬化後に未反応のまま残りやすい。また、添加量が多過ぎるとハードコート性や耐擦傷性が低下する原因となる可能性がある。そのため、重合性成分(C)の添加量は少ない方がより好ましい。重合性成分(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。」
「【0105】
[活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X),(Y)]
実施例及び比較例で用いた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)及び/又は(Y)に含まれる重合性成分(A)、重合性成分(B)、重合性成分(C)、その他の成分(D)、光重合開始剤(E)は、下記の表1のとおりである。
【0106】
【表1】
[図:0001403675000023.jpg]
」
「【0108】
[実施例1]
第一の層用の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(X)として、表2に示す組成の樹脂を調製した。光透過性基材として、トリアセチルセルロールフィルム(富士フイルム社製、製品名T40UZ、厚さ40μm、厚さ40μm、以下TACと記す)およびを使用した。ガラス板上に置いた光透過性基材上にバーコーターを使用して樹脂組成物(X)を塗工した。続いて、第一の層の表面から無電極タイプのUVランプ(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて365nmの波長で測定した積算光量が500mJ/cm2になるように紫外線を照射し、第一の層を硬化させて2層積層体を得た。前述した評価方法に従って耐擦傷性を評価し、判定はAであった。前述した評価方法に従って鉛筆硬度を評価し、判定は2Hであった。前述した評価方法に従って密着性を評価し、判定はAであった。前述した評価方法に従って押し込み弾性率とマルテンス硬さを評価し、押し込み弾性率が3159[MPa]、マルテンス硬さが159[N/mm2]であった。また、第一の層の厚さは7μmであった。また、アクリルフィルム(三菱レイヨン社製、アクリプレン、厚さ50μm)を使用して同様の方法でサンプルを作製して密着性を評価した結果、判定はAであった。
・・・
【0111】
【表2】
[図:0001403675000024.jpg]
【0112】
[実施例6]
第一の層は実施例1と同様とし、第二の層として表3に示した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(Y)を使用し、前述のモスアイ構造転写用スタンパを使用してモスアイ構造を転写して3層積層体を得た。まず、モスアイ構造転写用スタンパと第一の層の間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(Y)を挟持し、光透過性基材側から実施例1と同じ光源を用いて500mJ/cm2の積算光量で紫外線を照射した。続いて、金型から硬化後の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(Y)からなる第二の層を離型して第二の層の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(Y)の硬化物からなる微細凹凸構造を有する3層積層体を得た。3層積層体としての評価結果を表3に示した。前述した評価方法に従って耐擦傷性を評価し、判定はAであった。前述した評価方法に従って鉛筆硬度を評価し、判定は2Hであった。また、前述の方法で測定した各層の膜厚は、第一の層が7μm、第二の層が4μmであった。
【0113】
【表3】
[図:0001403675000025.jpg]
」
8 甲8には次の記載がある。
「【請求項1】
無機酸化物粒子に、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有する有機化合物が化学的に結合してなる反応性粒子(A)と、
分子内にポリエチレンオキシド鎖および2個以上の重合性不飽和基を有し、かつ、芳香環および炭素数7個以上のアルキル鎖を有しない有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)と、
分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する有機化合物のモノマーまたはオリゴマーであって、前記有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)以外の有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(C)と、
ジアルキルシロキサン骨格を有するシロキサン系化合物(D)とを含有し、
前記有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)の含有量が20~80質量%であり、
下記式により導き出される、前記有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)中のポリエチレンオキシドの含有率が50%以上100%未満である
ことを特徴とするコーティング用組成物。
ポリエチレンオキシドの含有率=(C2H4O部位の原子量の合計/有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)の分子量)×100」
「【0011】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、指紋跡拭き取り性および帯電防止性の両方に優れたコーティング用組成物、ハードコートフィルムおよび光記録媒体を提供することを目的とする。」
「【0026】
A.反応性粒子
反応性粒子(A)は、無機酸化物粒子に、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有する有機化合物が化学的に結合してなるものである。本実施形態に係るコーティング用組成物においては、反応性粒子(A)を含有することにより、本コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層の耐摩耗性を向上させることができるとともに、コーティング用組成物の硬化収縮率を小さくし、得られるハードコートフィルムの反りを抑制することができる。
・・・
【0028】
反応性粒子(A)の無機酸化物粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化セリウム等の粒子が挙げられ、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
・・・
【0032】
反応性粒子(A)においては、上記無機酸化物粒子に、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有する有機化合物(a)が化学的に結合している。有機化合物(a)が有する重合性不飽和基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエート基、アクリルアミド基等が挙げられる。
・・・
【0035】
反応性粒子(A)は、上記無機酸化物粒子と有機化合物(a)とを反応させることにより製造することができる。上記無機酸化物粒子の表面には、有機化合物(a)と反応し得る成分が存在すると考えられており、粉末状の無機酸化物粒子または無機酸化物粒子の溶剤分散ゾルと有機化合物(a)とを、水分の存在下または不存在下で混合し、加熱、攪拌処理することにより、無機酸化物粒子の表面成分と有機化合物(a)とが反応し、反応性粒子(A)が得られる。」
「【0037】
B.第1の有機化合物
第1の有機化合物(B)は、分子内にポリエチレンオキシド鎖および2個以上の重合性不飽和基を有し、かつ、芳香環および炭素数7個以上のアルキル鎖を有しない有機化合物のモノマーまたはオリゴマーである。
【0038】
本実施形態に係るコーティング用組成物においては、第1の有機化合物(B)が有するポリエチレンオキシド鎖により親水性が向上するため、本コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層を帯電防止性に優れたものにすることができる。また、第1の有機化合物(B)は、シロキサン系化合物(D)やフッ素系化合物(E)との相溶性に優れるため、本コーティング用組成物は、それら撥水性・撥油性成分を十分に含有することができる。」
「【0055】
D.シロキサン系化合物
シロキサン系化合物(D)は、ジアルキルシロキサン骨格を有する化合物である。かかるシロキサン系化合物(D)は、本コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層
に撥水性・撥油性を付与することができるため、本実施形態に係るコーティング用組成物においては、シロキサン系化合物(D)を含有することにより、得られるコート層を指紋跡拭き取り性に優れたものにすることができる。
【0056】
シロキサン系化合物(D)は、ジアルキルシロキサン骨格を有するシロキサン系化合物であって、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有するシロキサン系化合物(D1)であることが好ましく、かつ、本実施形態に係るコーティング用組成物は、ジアルキルシロキサン骨格を有するシロキサン系化合物であって、分子内に重合性不飽和基を有しないシロキサン系化合物(D2)を実質的に含有しないことが好ましい。」
「【0065】
E.フッ素系化合物
フッ素系化合物(E)は、本コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層の接触角を著しく大きくすることができるため、本実施形態に係るコーティング用組成物においては、フッ素系化合物(E)を含有することにより、得られるコート層をさらに指紋跡拭き取り性に優れたものにすることができる。
【0066】
フッ素系化合物(E)は、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有するフッ素系化合物(E1)であることが好ましく、かつ、本実施形態に係るコーティング用組成物は、分子内に重合性不飽和基を有しないフッ素系化合物(E2)を実質的に含有しないことが好ましい。重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基等が挙げられる。
【0067】
フッ素系化合物(E2)は、コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層において遊離した状態で存在するが、コート層の表面に指紋の油脂成分が付着すると、その油脂成分とフッ素系化合物(E2)との混合物が白くなり、指紋跡を拭き取ったときに、コート層表面に白い跡が残ることがあるからである。ただし、コート層の表面に滑り性が要求される場合には、コーティング用組成物はフッ素系化合物(E2)を含有してもよい。
【0068】
コーティング用組成物中におけるフッ素系化合物(E)の含有量は、シロキサン系化合物(D)の含有量との合計(固形分換算)で、前述した範囲内、すなわち0.1~80質量%であるのが好ましく、特に2~80質量%であるのが好ましく、さらに2~50質量%であるのが好ましい。」
「【0075】
以上説明したコーティング用組成物は、所望の基材に対して塗布し、硬化させることにより、基材の表面にハードコート層を形成することができる。コーティング対象の基材としては、例えば、プラスチック製品、金属製品、ガラス製品、石製品等が挙げられる。」
「【0096】
〔実施例1〕
反応性粒子(A)(無機酸化物粒子としてシリカ微粒子を使用)および第2の有機化合物(C)の混合物としてのハードコート剤(JSR社製,デソライトZ7524,重合開始剤含有,固形分濃度:75質量%)53.3質量部と、第1の有機化合物(B)としてのEO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業社製,NKエステル ATM-35E,分子量:1892,固形分濃度:100質量%,4官能,EO含有率:81.4%)60質量部と、シロキサン系化合物(D1)としての(メタ)アクリロイル基末端ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン社製,BYK-UV3570,固形分濃度:70質量%)6.0質量部とを混合し、さらに固形分濃度が35質量%になるように希釈溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて、これをコーティング用組成物とした(D1の含有量(固形分換算):4.0質量%)。なお、使用したハードコート剤(デソライトZ7524)中の固形分の質量比は、反応性粒子(A):有機化合物(C)=39:61(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法による測定値,測定装置:東ソー社製HLC-8020,カラム:ガードナーカラムHXL-H,TSKゲルG2500HXL,TSKゲルG2000HXL,TSKゲルG1000HXL)であった。」
9 甲9には次の記載がある。
「【0008】
前記活性エネルギー線硬化性組成物は、前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)のアルキレンオキサイド鎖の付加モル数が3~15であることが好ましく、
前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)は、アルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びアルキレンオキサイド付加グリセリルトリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種であることが好ましく、
前記アルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドであることが好ましい。」
「【0013】
この硬化性化合物(A)において、アルキレンオキサイド鎖は主として耐屈曲性を付与する構造部分であると考えられる。
アルキレンオキサイド鎖としては、炭素数2~5のものが好ましく、なかでもエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが好ましい。また、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドなど、複数種のアルキレンオキサイドを組み合わせて用いることも好ましい。
アルキレンオキサイド鎖の付加モル数は、2~20であることが好ましく、3~15であることがより好ましく、3~12あることがさらに好ましい。アルキレンオキサイド鎖の付加モル数が小さくなると、硬化塗膜の耐屈曲性が低下する傾向にある。一方、アルキレンオキサイド鎖の付加モル数が大きすぎると、耐擦傷性が低下する恐れがある。」
「【0055】
(実施例1)
活性エネルギー線硬化性化合物(A)としてエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名:「SR454」、エチレンオキサイド付加モル数:3、サートマー社製)とペンタエリスリトール誘導体(B1)としてペンタエリスリトールテトラアクリレート(商品名:「アロニックスM450」東亜合成社製)とを、(A):(B1)=10:90となるよう混合し、さらに光重合開始剤としてイルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ製)5部、酢酸プロピルを混合して固形分50%となるよう調整した硬化性組成物(コーティング用組成物または塗液ともいう。)を得た。
この組成物を、厚さ約100μmの表面易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:「コスモシャインA4100」東洋紡社製)の易接着処理面にバーコーターを用いて塗布し、熱風オーブンで溶剤を除去した後、出力80w/cmの高圧水銀ランプで紫外線を照射し、塗膜を重合硬化させ、乾燥膜厚約6μmのコート層を有する硬化塗膜付き部材を得た。
【0056】
(実施例2)
エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(A)とペンタエリスリトールテトラアクリレート(B1)との比率を(A):(B1)=20:80に変更した以外は、実施例1と同様にして硬化膜付き基材を得た。
【0057】
(実施例3)
エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートの代わりに、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(商品名:「カヤラッドRP-1040」、エチレンオキサイド付加モル数4、日本化薬社製)に変更した以外は、実施例2と同様にして硬化膜付き基材を得た。」
10 甲10には次の記載がある。
「【請求項1】
エチレングリコール基を有する多官能(メタ)アクリレート(A)とシクロヘキシル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)とからなるアクリレート系単量体混合物、光開始剤、および溶剤を含み、前記アクリレート系単量体混合物は、下記の式1を満たすハードコーティング組成物。
【数1】
n<Y<2n
前記式中、
Yは、(Aの(メタ)アクリル官能基の数xAの重量比)+(Bの(メタ)アクリル官能基の数xBの重量比)であり、
nは、Aのエチレングリコールの数xAの重量比であり、
Aの重量比+Bの重量比は1である。
【請求項2】
エチレングリコール基を有する多官能(メタ)アクリレート(A)は、多価アルコールにエチレンオキサイドを付加反応させてエチレングリコール基を有する多官能アルコールを収得し、前記多官能アルコールに(メタ)アクリル酸を縮合反応させて製造される、請求項1に記載のハードコーティング組成物。
【請求項3】
多価アルコールは、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、またはジペンタエリトリトールである、請求項2に記載のハードコーティング組成物。
・・・
【請求項5】
エチレングリコール基を有する多官能(メタ)アクリレート(A)は、下記の化学式1~2で示される化合物からなる群から選択された1種以上である、請求項1に記載のハードコーティング組成物。
【化1】
[図:0001403675000026.jpg]
【化2】
[図:0001403675000027.jpg]
・・・
【請求項9】
シクロヘキシル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、下記の化学式3~4で示される化合物からなる群から選択された1種以上である、請求項1に記載のハードコーティング組成物。
【化3】
[図:0001403675000028.jpg]
【化4】
[図:0001403675000029.jpg]
【請求項10】
無機ナノ粒子を更に含む、請求項1に記載のハードコーティング組成物。」
「【0067】
製造例1~5:アクリレート系単量体混合物の製造
下記の表1で表すような組成でエチレングリコール基を有する多官能(メタ)アクリレートとシクロヘキシル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートとを混合してアクリレート系単量体混合物を製造した(単位:重量%)。
【0068】
【表1】
[図:0001403675000030.jpg]
【0069】
化学式1の化合物:M-4004(ミウォンスペシャリティケミカル社製)
化学式2の化合物:DPEA-12(日本化薬社製)
化学式3の化合物:SOU-1700B(シンアT&C社製)
化学式4の化合物:SOU-1290(シンアT&C社製)。
【0070】
実施例1~5:ハードコーティング組成物の製造
製造例1~5の混合物40重量%、イガキュア184(BASF社製)1.8重量%、BYK-333(BYKケミー社製)0.2重量%、メチルエチルケトン38重量%、ノルマルブチルアセテート20重量%を混合してハードコーティング組成物を製造した。」
第5 進歩性についての当審の判断
1 甲1を主引用例とする検討
(1)甲1発明の認定
ア 前記第4、1(5)、(7)に摘記した甲1の「汎用モノマーとの併用効果」として、SA-TE6を30%、50%及び70%配合し、DPHAを70%、50%、30%配合した組成物」が記載されている。このうち、50%ずつ配合したものを代表として、化学式の名称で記載すると、次の発明が認定できる。
「ポリグリセリン系アクリレート(SA-TE6)を50%配合し、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を50%配合した組成物。」
イ ここで、甲1に記載の「ポリグリセリン系アクリレート(SA-TE6)」は、前記第4、1(3)に摘記した甲1の33頁中段の記載によると、ポリグリセリンの重合度は4であり、水酸基は6個存在し、それに対し、EO付加数は、1である。
ウ 前記第4、1(6)に摘記したように甲1に記載されたコーティング剤は、コーティング時の鉛筆硬度が2Hであることがわかるから、ハードコート剤に相当する。
エ 甲1発明
以上から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明という。)が記載されているといえる。
「ポリグリセリンの重合度は4であり、水酸基は6個存在し、それに対し、EO付加数は、1であるポリグリセリン系アクリレート(SA-TE6)を50%配合し、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を50%配合したハードコート剤。」
(2)本件発明1と甲1発明との対比及び判断
ア 対比
甲1のポリグリセリン系アクリレートにについて、本件発明の式(1)に当てはめると、aが4であり、b、c、dがそれぞれ1であり、A1Oがエチレンオキサイドであって、CH2CH2Oに相当する。
イ 一致点
以上から、本件発明1と甲1発明との一致点は、次のとおりである。
「(A)成分として、下記式(1)で表される化合物の一種又は二種以上を含有するハードコート剤であって、
【化1】
[図:0001403675000031.jpg]
(式中、A1Oは、CH2O、CH2CH2O、又は、CH2CH(CH3)Oで表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択される一種を表し、複数のA1O同士は同一でも相異なっていてもよい。
R1は、水素原子又はメチル基を表す。
a、b、c及びdは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、aは4~58であり、b、c及びdは、それぞれ1~3である。また、複数のc同士は、同一でも相異なっていてもよい。)」
ウ 相違点1-1
本件発明1と甲1発明との相違点は、次のとおりである。
<相違点1-1>
本件発明1においては、「下記式(2)で表される化合物の一種又は二種以上を含有するハードコート剤であって、
式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物の含有割合が、〔式(1)で表される化合物〕:〔式(2)で表される化合物〕の質量比で、9:1~1:9であるハードコート剤。
【化2】
[図:0001403675000032.jpg]
(式中、A2Oは、CH2O、CH2CH2O、又は、CH2CH(CH3)Oで表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択される一種を表し、複数のA2O同士は同一でも相異なっていてもよい。
R2は、水素原子又はメチル基を表す。
e、f、g及びhは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、e+f+g+h=4~35である。)」のに対して、甲1発明1においては、アルキレンオキサイドが付加されていないジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを式(1)の化合物に対して、50:50の比率で配合されている点。
エ 相違点1-1についての判断
(ア)本件発明1の式(2)で示される化合物として、前記第4、5で摘記した甲5の段落【0129】には、「PET-4PO-A:ペンタエリスリトールのプロピレンオキシド4モル付加物のテトラアクリレート」が記載され、前記第4、6で摘記した甲6の段落【0106】【表1】には、「ATM-35Eとして、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(オキシエチレン基:約35モル)と記載されているように、本件優先日前に市販されていたことが読み取れる。
(イ)しかしながら、甲1発明は、本件特許明細書において、段落【0131】において、比較例2として用いられているように動的屈曲性評価の低いものであり、甲1発明におけるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを、ペンタエリスリトールテトラアクリレートに置き換えて、かつ、ペンタエリスルトールとアクロイル基の間の領域をエトキシ化やプロピレンオキサイド化することに動機付けがあるということはできない。
(ウ)また、前記第4に摘記した甲1~10を検討しても、相違点1-1に係る構成について動機付けとなるとはいえない。
(エ)そして、本件発明1は相違点1-1により、明細書記載の効果を奏するものであって、その効果に予測性があるということはできない。
オ 小括
したがって、本件発明1は甲1発明及び甲1~10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(3)本件発明2と甲1発明との対比及び判断
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると、前記(2)アと同様に次のように一致点、相違点が相違点が認定できる。
イ 一致点
「(A)成分として、下記式(1)で表される化合物の一種又は二種以上を含有するハードコート剤であって、
【化3】
[図:0001403675000033.jpg]
(式中、A1Oは、CH2O、CH2CH2O、又は、CH2CH(CH3)Oで表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択される一種を表し、複数のA1O同士は同一でも相異なっていてもよい。
R1は、水素原子又はメチル基を表す。
a、b、c及びdは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、aは4~58であり、b、c及びdは、それぞれ1~3である。また、複数のc同士は、同一でも相異なっていてもよい。)」
ウ 相違点1-2
本件発明2と甲1発明とは次の点で相違する。
<相違点1-2>
本件発明2においては、「下記式(3)で表される化合物の一種又は二種以上を含有するハードコート剤であって、
式(1)で表される化合物と式(3)で表される化合物の含有割合が、〔式(1)で表される化合物〕:〔式(3)で表される化合物〕の質量比で、9:1~1:9であるハードコート剤。
【化4】
[図:0001403675000034.jpg]
(式中、A3Oは、CH2O、CH2CH2O、又は、CH2CH(CH3)Oで表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択される一種を表し、複数のA3O同士は同一でも相異なっていてもよい。
R3は、水素原子又はメチル基を表す。
i、j、k、l、m及びnは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、i+j+k+l+m+n=6~12である。)」のに対して、甲1発明1においては、アルキレンオキサイドが付加されていないジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを式(1)の化合物に対して、50:50の比率で配合されている点。
エ 相違点1-2についての判断
(ア)本件発明2の式(3)で示される化合物として、前記第4、5で摘記した甲5の段落【0129】には、「DPHA-12EO-A:ジペンタエリスリトールのエチレンオキシド12付加物のヘキサアクリレート(商品名「NKエステル A-DPH-12E」、新中村化学社製)」と記載されているように、本件優先日前に市販されていたことが読み取れる。
(イ)しかしながら、甲1発明における「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」を、甲5に記載された「DPHA-12EO-A:ジペンタエリスリトールのエチレンオキシド12付加物のヘキサアクリレート(商品名「NKエステル A-DPH-12E」、新中村化学社製)」に置き換えるとどのように物性が変化するかは予想できないのであるから、このような置き換えが当業者にとって容易ということはできないし、その動機があるということはできない。
(ウ)また、前記第4に摘記した甲1~10を検討しても、相違点1-2に係る構成について動機付けとなるとはいえない。
(エ)そして、本件発明1は相違点1-2により、明細書記載の効果を奏するものであって、その効果に予測性があるということはできない。
(オ)申立人は、前記第4、9で摘記した甲9の段落【0013】に記載のように、エチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加することにより、耐屈曲性が向上することが予測できる旨主張する。しかしながら、甲1発明においては、硬度と低カール性の両立について着目しているのみであるから、更に耐屈曲性を向上させようとする動機があるということはできない。申立人の主張は、本件特許明細書を参照した上で、課題を設定し、その課題解決が容易を主張するものといえるから、事後分析的なものであり、採用できない。
オ 小括
以上のとおり、本件発明2は、甲1発明及び甲1~10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(4)本件発明3~6について
本件発明3~6は、本件発明1または2を包含し、さらに特定事項を追加したものであるから、本件発明1、2と同様に、本件発明3~6に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消すことはできない。
2 甲4を主引用例とする検討
(1)甲4発明の認定
ア 前記第4、4に摘記した甲4の段落【0110】の【表2】に記載された実施例12から次の発明が認定できる。
「高分子アクリルアクリレートとしてA1を17質量部、多官能重合性化合物としてB1及びB2をそれぞれ18及び43質量部、EO又はPO変性ビスフェノールAジアクリレートとしてC1を15質量部、低二重結合当量重合性化合物としてD2を3質量部、光重合開始剤としてE1を4質量部を含有する組成物」
イ 前記第4、4に摘記した甲4の段落【0097】によると、A1については、「アクリロイルオキシ基を有するアクリル樹脂(高分子アクリルアクリレート)を得た。重合反応に用いたGMA1当量に対して、1当量のアクリル酸を反応に用いた。得られた高分子アクリルアクリレートの重量平均分子量は15000であり、二重結合当量は256であった。」というものであるが、以降ではアクリルアクリレートA1という。
ウ 成分B~Eについては、前記第4、4に摘記した甲4の段落【0103】を参照し、甲4の実施例の評価を参照すると、前記アに記載から次の発明(以下「甲4発明」という。)が認定できる。
エ 甲4発明
「高分子アクリルアクリレート:A1を17質量部、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA-20、カプロラクトン2モル付加:B1を18質量部、エチレンオキシド変性ポリグリセリンポリアクリレート(新中村化学工業株式会社製、NKエコノマー A-PG5027E、エチレンオキシド27モル付加、九官能:B2を43質量部、EO変性ビスフェノールAジアクリレート(日立化成株式会社製 ファンクリル FA-323A:C1を15質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(二重結合当量:96、六官能、新中村化学工業株式会社製 NKエステル A-DPH):D2を3質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製 IRGACURE184):E1を4質量部を含有する硬化性組成物」
(2)本件発明1と甲4発明との対比及び判断
ア 対比
甲4発明の「エチレンオキシド変性ポリグリセリンポリアクリレート(新中村化学工業株式会社製、NKエコノマー A-PG5027E、エチレンオキシド27モル付加、九官能:B2を43質量部」について、本件発明の式(1)に対応させると、9官能であることから、グリセリンの重合度は7であって、a=7であり、本件発明1の4~58を充足する。また、A1Oがエチレンオキサイドであるから、CH2CH2Oであり、cが7つ存在し、b+c+d=27であるから、b=c=d=平均3となり、本件発明1の規定を充足する。また、甲4発明のアクリレートは、式(1)のR1=Hを充足する。
イ 一致点
本件発明1と甲4発明とは次の点で一致する。
「(A)成分として、下記式(1)で表される化合物の一種又は二種以上を含有する剤
【化1】
[図:0001403675000035.jpg]
(式中、A1Oは、CH2O、CH2CH2O、又は、CH2CH(CH3)Oで表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択される一種を表し、複数のA1O同士は同一でも相異なっていてもよい。
R1は、水素原子又はメチル基を表す。
a、b、c及びdは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、aは4~58であり、b、c及びdは、それぞれ1~3である。また、複数のc同士は、同一でも相異なっていてもよい。)」である点。
ウ 相違点4-1
本件発明1と甲4発明とは次の点で相違する。
<相違点4-1>
本件発明1においては、「下記式(2)で表される化合物の一種又は二種以上を含有するハードコート剤であって、
式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物の含有割合が、〔式(1)で表される化合物〕:〔式(2)で表される化合物〕の質量比で、9:1~1:9
【化2】
[図:0001403675000036.jpg]
(式中、A2Oは、CH2O、CH2CH2O、又は、CH2CH(CH3)Oで表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択される一種を表し、複数のA2O同士は同一でも相異なっていてもよい。
R2は、水素原子又はメチル基を表す。」であるのに対して、甲4発明においては、そのような特定がない点。
エ 相違点4-1についての判断
(ア)甲4発明における「カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA-20、カプロラクトン2モル付加:B1」は、アルキレンオキサイド変性されたものでないので、式(2)の化合物に合致しない。
(イ)また、前記第4、4に摘記した甲4の段落【0061】には、「アルキレンオキシド変性又はカプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート」という記載はあるものの、アルキレンオキシドの付加数が、式(2)におけるe、f、g、hの条件に当てはまるかが明らかでないし、式(1)と式(2)の化合物の比率が1:9~9:1範囲とすることについても記載も示唆もない。
(ウ)また、前記第4に摘記した甲1~10を検討しても、相違点4-1に係る構成について動機付けとなるとはいえない。
(エ)したがって、甲4発明に基づいて本件発明1の構成とすることは当業者が容易に想到できないものである。
(オ)そして、本件発明1は相違点4-1により、明細書記載の効果を奏するものであって、その効果に予測性があるということはできない。
オ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲4発明及び甲1~10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、本件発明1に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消すことはできない。
(3)本件発明2と甲4発明との対比及び判断
ア 対比
前記(2)アと同様である。
イ 一致点
本件発明2と甲4発明とは次の点で一致する。
「(A)成分として、下記式(1)で表される化合物の一種又は二種以上を含有する剤
【化3】
[図:0001403675000037.jpg]
(式中、A1Oは、CH2O、CH2CH2O、又は、CH2CH(CH3)Oで表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択される一種を表し、複数のA1O同士は同一でも相異なっていてもよい。
R1は、水素原子又はメチル基を表す。
a、b、c及びdは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、aは4~58であり、b、c及びdは、それぞれ1~3である。また、複数のc同士は、同一でも相異なっていてもよい。)」である点。
ウ 相違点4-2
本件発明2と甲4発明は次の点で相違する。
<相違点4-2>
本件発明2においては、「記式(3)で表される化合物の一種又は二種以上を含有するハードコート剤であって、
式(1)で表される化合物と式(3)で表される化合物の含有割合が、〔式(1)で表される化合物〕:〔式(3)で表される化合物〕の質量比で、9:1~1:9であるハードコート剤。
【化4】
[図:0001403675000038.jpg]
(式中、A3Oは、CH2O、CH2CH2O、又は、CH2CH(CH3)Oで表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択される一種を表し、複数のA3O同士は同一でも相異なっていてもよい。
R3は、水素原子又はメチル基を表す。
i、j、k、l、m及びnは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、i+j+k+l+m+n=6~12である。)」であるのに対して、甲4発明においてはそのような特定がない点。
エ 相違点4-2についての判断
(ア)甲4発明における「カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA-20、カプロラクトン2モル付加:B1」は、アルキレンオキサイド変性されたものでないので、式(3)の化合物に合致しない。
(イ)また、前記第4、4に摘記した甲4の段落【0061】には、「アルキレンオキシド変性又はカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート」という記載はあるものの、アルキレンオキシドの付加数が、式(3)におけるi~nの条件に当てはまるかが明らかでないし、式(1)と式(3)の化合物の比率が1:9~9:1の範囲とすることについても記載も示唆もない。
(ウ)また、前記第4に摘記した甲1~10を検討しても、相違点4-2に係る構成について動機付けとなるとはいえない。
(エ)したがって、甲4発明に基づいて本件発明2の構成とすることは当業者が容易に想到できないものである。
(オ)そして、本件発明2は相違点4-2により、明細書記載の効果を奏するものであって、その効果に予測性があるということはできない。
オ 小括.
以上のとおり、本件発明2は、甲4発明及び甲1~10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、本件発明2に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消すことはできない。
(4)本件発明3~6について
本件発明3~6は、本件発明1または2を包含し、さらに特定事項を追加したものであるから、本件発明1、2と同様に、本件発明3~6に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消すことはできない。
3 甲5を主引用例とする検討
(1)甲5発明の認定
前記第4、5に摘記した甲5の段落【0126】【表2】の実施例18から次の発明が認定できる。
「(a)成分としてTMP-9EOを35質量部及びPG-2を50質量部、(b)成分としてUA-1を15質量部、(c)成分としてIrg184を2質量部を含有する硬化性樹脂組成物」。
ここで、前記第4、4に摘記した甲4の請求項1から成分名を、同甲4の段落【0129】~【0133】の記載から化合物名を、転記して次の発明(以下「甲5発明」という。)が認定できる。
「(a)アルキレンオキシド及び/又はε-カプロラクトンで変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物成分としてTMP-9EO:トリメチロールプロパンのエチレンオキシド9モル付加物のトリアクリレート(商品名「SR502」、サートマー社製)を35質量部及びPG-2:ポリグリセリンのエチレンオキシド付加物のポリアクリレート(9官能、平均値)(商品名「NKエコノマー A-PG5027E」、新中村化学社製)を50質量部、(b)該(a)成分以外の(メタ)アクリレート化合物成分としてUA-1:製造例1で得たウレタンアクリレート
を15質量部、(c)光重合開始剤成分としてIrg184:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を2質量部を含有する硬化性樹脂組成物」
(2)本件発明1と甲5発明との対比及び判断
ア 対比
甲5発明のPG-2:ポリグリセリンのエチレンオキシド付加物のポリアクリレート(9官能、平均値)(商品名「NKエコノマー A-PG5027E」、新中村化学社製)は、甲4発明で検討した商品名であるから、前記2(2)アと同様に、本件発明1の式(1)を充足するものといえる。
イ 一致点
本件発明1と甲5発明との一致点は、次のとおりである。
「(A)成分として、下記式(1)で表される化合物の一種又は二種以上を含有するハードコート剤であって、
【化1】
[図:0001403675000039.jpg]
(式中、A1Oは、CH2O、CH2CH2O、又は、CH2CH(CH3)Oで表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択される一種を表し、複数のA1O同士は同一でも相異なっていてもよい。
R1は、水素原子又はメチル基を表す。
a、b、c及びdは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、aは4~58であり、b、c及びdは、それぞれ1~3である。また、複数のc同士は、同一でも相異なっていてもよい。)」.
ウ 相違点5-1
本件発明1と甲5発明との相違点は次のとおりである。
<相違点5-1>
本件発明1においては、「下記式(2)で表される化合物の一種又は二種以上を含有するハードコート剤であって、
式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物の含有割合が、〔式(1)で表される化合物〕:〔式(2)で表される化合物〕の質量比で、9:1~1:9であるハードコート剤。
【化2】
[図:0001403675000040.jpg]
(式中、A2Oは、CH2O、CH2CH2O、又は、CH2CH(CH3)Oで表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択される一種を表し、複数のA2O同士は同一でも相異なっていてもよい。
R2は、水素原子又はメチル基を表す。
e、f、g及びhは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、e+f+g+h=4~35である。)」のに対して、甲5発明においては、そのように特定されていない点。
エ 相違点5-1についての判断
(ア)前記第4、5に摘記した甲5の段落【0129】には、「PET-4PO-A:ペンタエリスリトールのプロピレンオキシド4モル付加物のテトラアクリレート」と記載されており、甲5の(a)成分の一例として示されているが、甲5の段落【0126】【表2】に12種類示された例のうち、特定の2つを組み合わせる場合、66通りになることを考慮すると、甲5発明のTMP-9EO-Aに代えて、「PET-4PO-A:ペンタエリスリトールのプロピレンオキシド4モル付加物のテトラアクリレート」を用いることが当業者が容易であるということはできない。
(イ)た、前記第4に摘記した甲1~10を検討しても、相違点5-1に係る構成について動機付けとなるとはいえない。
(ウ)そして、本件発明1は相違点5-1により、明細書記載の効果を奏するものであって、その効果に予測性があるということはできない。
オ 小括
本件発明1は、甲5発明及び甲1~10に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものといえない。
(3)本件発明2と甲5発明との対比及び判断
ア 対比
前記(2)アと同様である。
イ 一致点
本件発明2は、甲5発明と次の点で一致する。
「「(A)成分として、下記式(1)で表される化合物の一種又は二種以上を含有する剤
【化3】
[図:0001403675000041.jpg]
(式中、A1Oは、CH2O、CH2CH2O、又は、CH2CH(CH3)Oで表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択される一種を表し、複数のA1O同士は同一でも相異なっていてもよい。
R1は、水素原子又はメチル基を表す。
a、b、c及びdは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、aは4~58であり、b、c及びdは、それぞれ1~3である。また、複数のc同士は、同一でも相異なっていてもよい。)」である点。
ウ 相違点5-2
本件発明2と甲5発明とは次の点で相違する。
<相違点5-2>
本件発明2においては、「下記式(3)で表される化合物の一種又は二種以上を含有するハードコート剤であって、
式(1)で表される化合物と式(3)で表される化合物の含有割合が、〔式(1)で表される化合物〕:〔式(3)で表される化合物〕の質量比で、9:1~1:9であるハードコート剤。
【化4】
[図:0001403675000042.jpg]
式中、A3Oは、CH2O、CH2CH2O、又は、CH2CH(CH3)Oで表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択される一種を表し、複数のA3O同士は同一でも相異なっていてもよい。
R3は、水素原子又はメチル基を表す。
i、j、k、l、m及びnは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、i+j+k+l+m+n=6~12である。)」であるのに対して、甲5発明においてはそのような特定がない点。
エ 相違点5-2についての判断
(ア)前記第4、5に摘記した甲5の段落【0129】には、「DPCA-120:ジペンタエリスリトールのε-カプロラクトン12モル付加物のヘキサアクリレート(商品名「カヤラッドDPCA-120」、日本化薬社製)」と記載されており、甲5の(a)成分の一例として示されているが、甲5の段落【0126】【表2】に12種類示された例のうち、特定の2つを組み合わせる場合、66通りになることを考慮すると、甲5発明のTMP-9EO-Aに代えて、「DPCA-120:ジペンタエリスリトールのε-カプロラクトン12モル付加物のヘキサアクリレート(商品名「カヤラッドDPCA-120」、日本化薬社製)」を用いることが当業者が容易であるということはできない。
(イ)た、前記第4に摘記した甲1~10を検討しても、相違点1-1に係る構成について動機付けとなるとはいえない。
(ウ)そして、本件発明1は相違点5-2により、明細書記載の効果を奏するものであって、その効果に予測性があるということはできない。
オ 小括
本件発明2は、甲5発明及び甲1~10に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものといえない。
(4)本件発明3~6について
本件発明3~6は、本件発明1または2を包含し、さらに特定事項を追加したものであるから、本件発明1、2と同様に、本件発明3~6に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消すことはできない。
第6 記載要件についての当審の判断
1 本件発明1及び2のaの特定について
申立人は、本件発明1及び2のaの特定が不明確であると主張する。本件発明1及び2のaは、4~58と特定されているが、この数値は、グリセリンの重合度を示すものであり、技術的に不明確といえない。また、グリセリンの水酸基は3であって、重合度が1上がるごとに、水酸基が増えることになるから、本件明細書の段落【0131】に記載された、「ポリグリセリンヘキサアクリレート」は、前記aの値が4であることを示唆しており、同「ポリグリセリンデカアクリレート」は、前記aの値が8であることを示唆している。そして、前記aが実施例に示された4または8である以外の場合において本件発明の課題を解決できないと認めるに足りる証拠はない。したがって、本件発明1、2の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないといえないし、本件明細書の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないといえない。
2 本件発明1、2のb~dの特定について
本件発明1、2においては、b~dについて、「b及びc及びdは、それぞれ1~3である」と特定されている。この特定は、式(1)におけるポリグリセリンの各OH基に対して何モルのアルキレンオキサイドを付加するかにより定まるものと読み取れるから、技術的に明確であるといえる。したがって、本件発明1、2の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないといえないし、本件明細書の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないといえない。
3 本件発明1のe~hの特定について
本件発明1においては、e~hについて「e、f、g、hは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、e+f+g+h=4~35である。」と特定されている。この特定は、式(2)におけるペンタエリスリトールの各OH基に対して何モルのアルキレンオキサイドを付加するかにより定まるものと読み取れるから、技術的に明確であるといえる。したがって、本件発明1、2の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないといえないし、本件明細書の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないといえない。
4 本件発明2のi~kの特定について
本件発明2においては、i~nについて、「i、j、k、l、m及びnは、それぞれ独立して正整数を表す。但し、i+j+k+l+m+n=6~12である。」と特定されている。この特定は、式(3)におけるジペンタエリスリトールの各OH基に対して何モルのアルキレンオキサイドを付加するかにより定まるものと読み取れるから、技術的に明確であるといえる。したがって、本件発明1、2の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないといえないし、本件明細書の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないといえない。
第7 むすび
以上のとおり、本件発明1~11に係る特許は、特許法第113条第2号又は第4号の規定により、取り消すべきものといえない。
また、他に本件発明1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、結論のとおり決定する。
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2023-700117