特許異議申立
2022-700897
粘着剤組成物、及び粘着シート
- 審判番号
- 2022-700897
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-133564
- 登録番号
- 7036492
- 請求日
- 2022年09月13日
- 審決日
- 2024年08月20日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】リンテック株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大谷特許事務所
- 【権利者】日本製紙株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大谷特許事務所
- 【異議申立人】前田 健一
- 審判長/審判官
- 審判長 光本 美奈子
- 審判官 門前 浩一
- 審判官 関根 裕
- 分類
- P1651.113-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7036492号発明「粘着剤組成物、及び粘着シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7036492号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
特許第7036492号の請求項1-9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、平成30年7月13日の出願であって、令和4年3月7日に特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、同年同月15日に特許掲載公報が発行され、その後、同年9月13日に特許異議申立人 前田 健一(以下「申立人」という。)により、請求項1-9に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
その後、当審は、令和5年2月16日付けで取消理由を通知し(発送は同年同月22日)、特許権者は、その指定期間内である同年4月24日に意見書及び訂正の請求を行い、当審は、同年4月27日付けで申立人に訂正請求があった旨を通知し(発送は同年5月8日)、申立人は、その指定期間内である同年6月5日に意見書を提出した。
その後、当審は、令和5年11月16日付けで取消理由(決定の予告)を通知し(発送は同年同月21日)、特許権者は、その指定期間内である令和6年1月22日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正の内容を「本件訂正」という。)を行った。
また、当審は、同年同月31日付けで申立人に訂正請求があった旨を通知したが(発送は同年2月6日)、申立人は、その指定期間内に意見書を提出しなかった。
なお、令和5年4月24日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨
本件訂正の請求の趣旨は、「特許第7036492号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-9について訂正することを求める。」というものである。
2 本件訂正
(1)本件訂正は、次の訂正事項1~3からなるものである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「粘着性樹脂(A1)を含む有機溶剤型粘着剤(A)と、セルロースナノファイバー(B)とを含有する、粘着剤組成物。」とあるのを、「粘着性樹脂(A1)を含む有機溶剤型粘着剤(A)と、セルロースナノファイバー(B)と、有機溶剤と、水とを含有し、前記有機溶剤の含有量が20~90質量%であり、前記有機溶剤と前記水との含有量比[有機溶剤/水]が、質量比で、0.4~20である、粘着剤組成物。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~9も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する、粘着シート。」とあるのを、「請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物から粘着剤層を形成する、粘着シートの製造方法。」に訂正する(請求項8を引用する請求項9も同様に訂正する)。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9に「粘着力が10N/25mm以上である、請求項8に記載の粘着シート。」とあるのを、「粘着力が10N/25mm以上である、請求項8に記載の粘着シートの製造方法。」に訂正する。
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項1~9について、請求項2~9はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~9にそれぞれ対応する本件訂正後の請求項1~9は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
3 訂正要件についての判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、本件訂正前には、粘着剤組成物が含有する成分として、「粘着性樹脂(A1)を含む有機溶剤型粘着剤(A)」と、「セルロースナノファイバー(B)」のみが規定されていたところ、粘着剤組成物が含有する成分としてさらに「有機溶剤」と「水」が必須の成分であることを規定するとともに、当該有機溶剤の含有量を質量比で20~90質量%に、また、当該有機溶剤と当該水との含有量比[有機溶剤/水]」を質量比で、0.4~20に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
本件特許明細書の段落【0069】~【0070】には「<粘着剤組成物の有効成分濃度、有機溶剤及び水の含有量>・・・本発明の一態様の粘着剤組成物において、有機溶剤の含有量としては、好ましくは20~90質量%、より好ましくは25~80質量%、更に好ましくは30~75質量%である。・・・上記観点から、本発明の一態様の粘着剤組成物において、有機溶剤と水との含有量比[有機溶剤/水]としては、質量比で、好ましくは0.4~20、より好ましくは0.6~15、更に好ましくは0.8~10である。」と記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
また、上記アのとおり、訂正事項1は、粘着剤組成物が含有する成分としてさらに「有機溶剤」と「水」が必須の成分であることを規定するとともに、当該有機溶剤の含有量を質量比で20~90質量%に、また、当該有機溶剤と当該水との含有量比[有機溶剤/水]」を質量比で、0.4~20に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2に係る請求項8の「粘着剤層」は、「請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物から形成された」と特定されているので、本件訂正前の請求項8の「請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する、粘着シート。」という記載は、物の発明に係る請求項の記載にその物の製造方法が記載されている場合に該当し、明瞭でない記載を含んでいる。
訂正事項2は、上記明瞭でない記載を、「請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物から粘着剤層を形成する、粘着シートの製造方法。」に変更することによって解消するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項2は、物の発明に係る請求項の記載にその物の製造方法が記載されている場合に、明瞭でない記載の釈明を目的として、物の発明をその物の製造方法の発明に変更するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、本件特許明細書の段落【0084】には「〔粘着シートの製造方法〕本発明の粘着シートの製造方法としては、特に制限はなく、基材又は剥離材上に、本発明の粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させて、粘着剤層を形成する工程を有する製造方法が挙げられる。」と記載されているから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3に係る請求項9は、本件訂正前は「粘着力が10N/25mm以上である、請求項8に記載の粘着シート」の発明であったが、訂正事項2によって請求項8が「粘着シートの製造方法」の発明に変更されることに伴い請求項9が明瞭でない記載とならないよう、請求項8の記載と整合させて「粘着シートの製造方法」と訂正するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項3は、訂正事項2による訂正にともなって生じる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
(4)独立特許要件について
上記第1で述べたように、本件特許異議の申立ては、本件請求項1~9に係る特許のうち請求項1~9(全請求項)に係る特許に対してなされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件が課される請求項はない。
(5)本件訂正の適否についての小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求は認められたので、本件特許の請求項1~9に係る発明は、その特許の特許請求の範囲の請求項1~9に記載された以下のとおりのものである(請求項1~9に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明9」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)。
「【請求項1】
粘着性樹脂(A1)を含む有機溶剤型粘着剤(A)と、セルロースナノファイバー(B)と、有機溶剤と、水とを含有し、前記有機溶剤の含有量が20~90質量%であり、前記有機溶剤と前記水との含有量比[有機溶剤/水]が、質量比で、0.4~20である、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記粘着剤組成物から形成した粘着剤層のゲル分率が10%以下である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
界面活性剤の含有量が、粘着性樹脂(A1)の全量100質量部に対して、0.001質量部未満である、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
架橋剤の含有量が、粘着性樹脂(A1)の全量100質量部に対して、0.001質量部未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
セルロースナノファイバー(B)の含有量が、粘着性樹脂(A1)の全量100質量部に対して、0.05~20質量部である、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
セルロースナノファイバー(B)の直径(太さ)の平均が、1.0~1000nmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
粘着性樹脂(A1)の含有量が、前記粘着剤組成物の有効成分の全量に対して、50~99.95質量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物から粘着剤層を形成する、粘着シートの製造方法。
【請求項9】
粘着力が10N/25mm以上である、請求項8に記載の粘着シートの製造方法。」
第4 特許異議の申立ての概要
申立人は、下記2(1)の証拠方法(以下、甲第1号証を「甲1」などという。)により、下記1を申立ての理由とする特許異議の申立てをしている。
なお、申立人及び特許権者が提示したその他の証拠方法等についても下記2(2)、(3)に示す。
1 申立ての理由
(1)申立理由1(新規性)
本件発明1~9は、甲1又は甲2に記載された発明であるから、本件発明1~9は、特許法第29条第1項第3号の発明に該当する。
したがって、本件発明1~9に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件発明1~9は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明及び甲1~5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。
したがって、本件発明1~9に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 証拠方法などの一覧
(1)申立人が特許異議の申立書と共に提示したもの
甲第1号証:特開2013-167672号公報
甲第2号証:特開2018-44097号公報
甲第3号証:国際公開第2013/172429号
甲第4号証:特開2003-117515号公報
甲第5号証:特開2011-152693号公報
(2)申立人が意見書と共に提示したもの
参考資料1:特開2018-746号公報
(3)特許権者が意見書とともに提示したもの
以下、特許権者が提示した乙第1号証を乙1という。
乙1:特開平10-1545号公報
第5 証拠等の記載事項
1 甲1には次の記載がある。
「【請求項1】
液晶パネルと、
液晶パネル上に設置されたタッチパネルと、
前記タッチパネル上に積層された基材層と、
前記タッチパネルと前記基材層との間に介在する粘着層と、を有する表示装置であって、
前記基材層及び前記粘着層の少なくとも一方は、偏光を解消する性質を有する繊維を含有する
ことを特徴とする表示装置。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された多孔質粒子の大きさは最小でも直径数μmであり、多孔質粒子が入射可視光の拡散源となることでヘイズ(混濁)が大きくなり、高い透明性が要求される表示装置には適さなくなる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、表示像の偏光解消性を高めて、表示像の視認性を向上させることができる表示装置、自動車用表示装置、及び表示装置の製造方法を提供することである。」
「【0019】
粘着層36は、その一例として、偏光を解消する性質を有する繊維(以後、「偏光解消性繊維」という)を含有する偏光解消性粘着剤からなる。偏光解消性粘着剤の母材は、アクリル系、エポキシ系、フェノール系、エマルジョン系、シリコン系粘着剤を含む透明接着剤である。これにより、透明且つ耐久性に優れた粘着剤組成を得ることができる。
【0020】
偏光解消性繊維は、セルロースナノファイバーの集合体である。セルロースナノファイバーは、水酸基を含み、その水酸基の一部は化学修飾されている。偏光解消性繊維の幅は、10nm以上50nm以下であり、偏光解消性繊維のアスペクト比は、1以上200以下である。」
「【0025】
偏光解消性粘着剤は、偏光解消性繊維を母材である透明粘着剤に均一分散させたものを板状あるいはフィルム状に成形することにより製造することができる。製造方法は特に限定しないが、偏光解消性繊維からなる不織布への粘着剤塗布、ディップコート、スプレー、転写塗工などの方法がある。」
「【0028】
図1(b)に示すように、粘着層39は、他の例として、偏光解消性繊維を含有しないアクリル粘着剤からなる。」
「【0046】
<偏光解消性繊維(前処理)>
原料として、結晶性セルロースのコロイダルグレードである旭化成ケミカルズ(株)製セオラスRC-591の1wt%水溶液を高圧ホモジナイザーで10分間分散処理したものを用いる。この溶液500mlに無水酢酸25mL、酢酸400mL、トルエン500mL、過塩素酸2.5mLを加え、1時間室温で反応させ、セルロースの表面をアセチル化した。得られた含水ファイバーを繊維含有率0.1重量%の懸濁液に調整し、ろ過して水を除去し、シート状とした。さらに15kPaで72時間、55℃にてホットプレスし、水を除去し、厚さ50μmの乾燥ファイバーシートとした。
【0047】
<偏光解消性粘着剤の作製>
前記方法で得られた乾燥ファイバーシートを、減圧下、UV硬化型粘着剤ファインタックCT6010(DIC(株)製)に浸して12時間静置した。その後、ベルトコンベアー型のUV照射装置(フュージョンシステムズ製、Fusion F300 and LC6Bベンチトップコンベアー)を用い、樹脂を含浸したファイバーシートに紫外線を照射して硬化させた。このときの総照射エネルギー量は5J/cm2であった。これにより、偏光解消性粘着剤を作製した。
【0048】
<偏光解消性基材の作製>
前記方法で得られた乾燥ファイバーシートを、減圧下、光開始剤入りアクリル樹脂(TCDDMA)に浸して12時間静置した。その後、ベルトコンベアー型のUV照射装置(フュージョンシステムズ製、Fusion F300 and LC6Bベンチトップコンベアー)を用い、樹脂を含浸したファイバーシートに紫外線を照射して硬化させた。このときの総照射エネルギー量は20J/cm2(当審注:原文のママ)であった。その後、真空中、160℃で2時間アニール(加熱処理)し、偏光解消性基材を作製した。
【実施例1】
【0049】
図1(a)は実施例1に係わる表示装置の断面構成を示す。液晶パネル31は図3に示した構成を有し、液晶パネル31の出力側には、気体層ALを介して静電容量方式のタッチパネル34が配置されている。液晶パネル31と気体層ALとの界面、及びタッチパネル34と気体層ALとの界面には、それぞれARフィルム32、33が貼り付けられている。これにより、液晶パネル31と気体層ALとの界面、及びタッチパネル34と気体層ALと界面における光の反射を抑制している。
【0050】
タッチパネル34の上には直線偏光層35が積層されている。直線偏光層35の上に、粘着層36を介して、基材層37が積層されている。実施例1において、粘着層36は偏光解消性繊維を含有する偏光解消性粘着剤で構成され、基材層37は偏光解消性繊維を含有していない表面基材からなる。基材層37の上にARフィルム38が積層されている。
【0051】
実施例1において、直線偏光層35に用いる直線偏光フィルムは、PVA(ポリビニルアルコール)から成る基材フィルムをヨウ素や有機系染料で染色した後、2~3倍程度に一軸延伸することによって染料分子を規則的に並べ、吸収二色性を持たせたものである。この直線偏光フィルムは、色合いを変えることなく、光の透過率を減らす機能を発揮する。実施例1では、直線偏光層35として、日東電工(株)製AG150を用いる。また、実施例1では、ARフィルム32、33、38として、(株)美舘イメージング製 MFAR-Rollの3層ARフィルムを用いる。」
「【0071】
【表1】
[図:0001416430000001.jpg]
」
「【図1】(a)
[図:0001416430000002.jpg]
」
2 甲2には次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件(A)~(E)を満たす微細繊維状セルロースとマトリクス樹脂を含有することを特徴とする接着剤組成物。
(A)数平均繊維径が2nm以上500nm以下
(B)平均アスペクト比が10以上1000以下
(C)セルロースI型結晶構造を有する
(D)アニオン性官能基を有する
(E)(D)記載のアニオン性官能基の一部、または全てに下記式(1)で示すポリエーテルアミンが結合している
【化1】
[図:0001416430000003.jpg]
〔上記式(1)中、R1、R2、R3は炭素数1以上20以下の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、炭素数1以上20以下のアリーレン基、または水素原子を示し、n1、n2、n3はそれぞれ0以上80以下を示し、(n1+n2+n3)は10以上240以下を示し、AOは炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基を示し、xの平均値は0.5以上1以下、y、zの平均値は0以上1以下を示す。〕」
「【請求項4】
上記マトリクス樹脂が、重縮合系樹脂、重付加重合系樹脂、付加縮合系樹脂、および付加重合系樹脂から選択される、1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
上記マトリクス樹脂が、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、酸ビニル系樹脂、および炭化水素系樹脂を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
上記微細繊維状セルロースの固形分含有量が0.05質量%以上3.0質量%以下の範囲であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。」
「【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-138220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のセルロースナノファイバーは、親水性のセルロースを機械的に解繊しただけで、親油化を行っていないため、樹脂中でセルロースナノファイバー同士が凝集する。そのため、樹脂の耐熱性を期待するほど向上できない。発明の課題は、セルロース繊維を親油化することで、樹脂中で微細繊維状セルロースを均一に分散させ、耐熱性と高い接着性を有する接着剤組成物を提供する。」
「【0076】
本発明の接着剤組成物における、微細繊維状セルロースの固形分濃度はマトリクス樹脂と微細セルロースの合計量100質量%に対し、ハンドリング性と増粘性の点から、0.05質量%以上3.0質量%の範囲が好ましく、1.0質量%以上2.0質量%以下の範囲がより好ましい。」
「【0077】
[その他添加剤]
本発明の接着剤組成物には、その用途に応じて従来公知の各種添加剤を含有しても良く、例えば、加水分解防止剤、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、重合開始剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン等)、酸化防止剤、導電性付与剤、摺動性付与剤、界面活性剤、触媒、硬化促進剤、無機フィラー、有機フィラー等をあげることができる。これらの添加剤は、上記工程(2)ないし(4)で添加することもできるが、後述する接着剤組成物の調整後に添加する方が、接着剤として必要な用途に応じて調整ができるために好ましい。
【0078】
また本発明の接着剤組成物には、必要に応じて非反応性溶剤を添加することもできる。
上記非反応性溶剤としては、例えばヘキサン、ミネラルスピリット等脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メタノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で使用しても、複数種類併用しても構わない。
【0079】
[接着剤組成物の調整方法]
本発明の接着剤組成物は、上記セルロースナノファイバー、樹脂、および必要に応じて各種添加剤成分を均質に混練することにより、調製することができる。
この際に用いられる混練機としては、ディスパー、プラネタリーミキサー、ニーダー、ヘンシェルミキサー、ロール、押出機等を挙げることができる。また作製した接着剤組成物は、通常の方法、例えばスプレー、シーラーガン、刷毛塗り等の方法で被接着基板に塗布することができる。」
「【0098】
〔実施例1〕
上記セルロース繊維A1にメタノールを加えてろ過し、メタノール洗浄を繰り返して、上記セルロース繊維に含まれる水をメタノールに置換した。その後、メタノールと、上記セルロース繊維A1のカルボキシル基量と等量のポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M-2070)とを加えて、セルロース繊維濃度を2%になるように希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理し、ゲル状組成物を得た。上記ゲル状組成物にビスフェノールA(DIC社製、EPICLON 850S)を加えて、ロータリーエバポレーター(東京理化機器社製)によりメタノールを留去することで、分散溶剤をビスフェノールAに置換した。その後、ビスフェノールAと硬化剤としてジシアンジアミド(味の素社製、アミキュア AH-154)を加え、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌することにより、セルロース繊維濃度、修飾剤濃度、マトリクス樹脂濃度、硬化剤濃度を表2のように調整した接着剤組成物を得た。厚み1.6mm、幅25mm、長さ100mmの冷間圧延鋼板を被着材として使用し、150℃、1時間加熱して上記接着剤組成物を硬化させ、試験片を得た。
【0099】
上記ゲル状組成物、接着剤組成物、試験片を用いて、下記評価方法に従い、各特性の評価を行った。
【0100】
<数平均繊維径、アスペクト比の測定>
上記ゲル状組成物のセルロース繊維の数平均繊維径、および繊維長を、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子社製JEM-1400)を用いて観察した。すなわち、各セルロース繊維を親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、先に述べた方法に従い、数平均繊維径、および繊維長を算出した。さらに、これらの値を用いてアスペクト比を下記式に従い、算出した。
【0101】
【数8】
[図:0001416430000004.jpg]
【0102】
<分散安定性の評価>
上記接着剤組成物中を試験管に移しとり、一晩静置した。試験管中でのセルロース繊維の分散状態により、以下のように分散性を評価した。
○:接着剤組成物中にセルロース繊維が均一に分散していた。
×:接着剤組成物中でセルロース繊維が沈降していた。
【0103】
<接着強度の評価>
万能試験機(インストロンジャパン社製、5581型)を用いて、上記試験片を2.5mm/min.、23℃、80℃の雰囲気下にて引張せん断接着強さを測定した。<分散安定性の評価>が「×」の場合、接着強度の評価は行わないこととした。」
「【0109】
〔実施例10〕
上記セルロース繊維A2にメタノールを加えてろ過し、メタノール洗浄を繰り返して、上記セルロース繊維に含まれる水をメタノールに置換した。その後、メタノールと、上記セルロース繊維A1のカルボキシル基量と等量のポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M-2070)とを加えて、セルロース繊維濃度を2%になるように希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理し、ゲル状組成物を得た。上記ゲル状組成物にトルエンを加えて、ロータリーエバポレーター(東京理化機器社製)によりメタノールを留去することで、分散溶剤をトルエンに置換した。その後、さらにトルエンと下記表2記載のポリ酢酸ビニル(電気化学工業社製、デンカサクノール SN-10)を加え、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌することにより、セルロース繊維濃度、修飾剤濃度、マトリクス樹脂濃度を表2のように調整した接着剤組成物を得た。厚み1.6mm、幅25mm、長さ100mmの冷間圧延鋼板を被着材として使用し、150℃、1時間加熱して上記接着剤組成物を硬化させ、試験片を得た。上記ゲル状組成物、接着剤組成物、および試験片を用いて、実施例1と同様の評価方法で、各特性の評価を行った。
【0110】
〔実施例11〕
上記セルロース繊維A2にメタノールを加えてろ過し、メタノール洗浄を繰り返して、上記セルロース繊維に含まれる水をメタノールに置換した。その後、メタノールと、上記セルロース繊維A2のカルボキシル基量と等量のポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M-2070)とを加えて、セルロース繊維濃度を2%になるように希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理し、ゲル状組成物を得た。上記ゲル状組成物にアクリル系モノマー(セメダイン社製、メタルロックY610A)を加えて、ロータリーエバポレーター(東京理化機器社製)によりメタノールを留去することで、分散溶剤をアクリル系モノマーに置換した。その後、マトリクス樹脂としてアクリル系モノマーと硬化剤(セメダイン社製、メタルロックY610B)を加え、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌することにより、セルロース繊維濃度、修飾剤濃度、マトリクス樹脂濃度、硬化剤濃度を表2のように調整した接着剤組成物を得た。厚み1.6mm、幅25mm、長さ100mmの冷間圧延鋼板を被着材として使用し、室温で、1時間おくことで上記接着剤組成物を硬化させ、試験片を得た。上記ゲル状組成物、接着剤組成物、および試験片を用いて、実施例1と同様の評価方法で、各特性の評価を行った。
【0111】
〔実施例12〕
上記セルロース繊維A2にメタノールを加えてろ過し、メタノール洗浄を繰り返して、上記セルロース繊維に含まれる水をメタノールに置換した。その後、メタノールと、上記セルロース繊維A2のカルボキシル基量と等量のポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M-2070)とを加えて、セルロース繊維濃度を2%になるように希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理し、ゲル状組成物を得た。上記ゲル状組成物にニトリルゴム系接着剤(3M社製、溶剤型接着剤EC776)を加えて、ロータリーエバポレーター(東京理化機器社製)によりメタノールを留去した。その後、MEKを加え、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌することにより、セルロース繊維濃度、修飾剤濃度、マトリクス樹脂濃度を表2のように調整した接着剤組成物を得た。厚み1.6mm、幅25mm、長さ100mmの冷間圧延鋼板を被着材として使用し、室温で、1時間おくことで上記接着剤組成物を硬化させ、試験片を得た。」
「【0124】
【表2】
[図:0001416430000005.jpg]
」
3 甲3には次の記載がある。
「[0114] 製造例15
アクリル系ポリマー粘着剤(商品名:ファインタック CT-6010、DIC(株)製、不揮発分25重量%、溶剤:酢酸エチル)を、粘着剤組成物IIとして用いた。この組成物を、乾燥後の膜厚が20~30μmとなるように、離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm)に、アプリケーターで塗布した。約5分間室内で放置した後、乾燥器中にて100℃で3分間乾燥を行い、更に40℃で72時間エージングを行った後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して、粘着層としてのシート状硬化物を得た。」
4 甲4には次の記載がある。
「【請求項1】被保護物に、接着型接合剤、石膏又はクレー及び水を含有する被覆組成物を吹き付けることを特徴とする被覆層の形成方法。
【請求項2】被保護物が、焼却残渣からなる廃棄物である請求項1記載の被覆層の形成方法。
【請求項3】接着型接合剤が、合成樹脂である請求項1記載の被覆層の形成方法。
【請求項4】合成樹脂が、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン-アクリル酸エステル共重合体又はポリエチレンである請求項3記載の被覆層の形成方法。
【請求項5】接着型接合剤が、アスファルトである請求項1記載の被覆層の形成方法。
【請求項6】被覆組成物が、繊維質物質を含有する請求項1記載の被覆層の形成方法。
【請求項7】繊維質物質が、セルロース繊維である請求項6記載の被覆層の形成方法。
【請求項8】被覆組成物が、界面活性剤を含有する請求項1記載の被覆層の形成方法。」
「【0010】本発明方法に用いる被覆組成物は、繊維質物質を含有することが好ましい。被覆組成物に繊維質物質を含有させることにより、被覆組成物の粘度を高めるとともに、被保護物上に形成される被覆層に厚みを持たせ、強度を向上することができる。特に、被保護物の表層に塊状の物体などがあって凹凸を有しても、確実に被覆することができる。被覆組成物に含有させる繊維質物質に特に制限はなく、例えば、木質パルプ、古紙、コットンリンターなどのセルロース繊維、麦わら、ヤシがら繊維などの天然繊維、ポリエステル、ナイロンなどの合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維などを挙げることができる。これらの中で、セルロース繊維を好適に用いることができ、切りきざんだ古紙や解繊した古紙を特に好適に用いることができる。被覆組成物に含有させる繊維質物質の量に特に制限はないが、0.1~10重量%であることが好ましく、2~8重量%であることがより好ましい。繊維質物質の量が0.1重量%未満であると、被覆層の強度を向上する効果が十分に発現しないおそれがある。繊維質物質の量が10重量%を超えると、被覆組成物の粘度が高くなりすぎて吹き付け施工の作業性が低下するおそれがある。」
「【0013】
・・・
実施例4
エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン[不揮発分55重量%、栗田工業(株)、クリコートC720グリーン]6重量部、カオリン0.52重量部、古紙5重量部及び水88.48重量部を配合して、被覆組成物を調製した。この被覆組成物を用い、実施例1と同様にして、焼却灰の上に被覆層を形成し、人工降雨試験を行った。試験時間300分まで、充填された焼却灰の浸食は認められなかった。」
5 甲5には次の記載がある。
「【請求項1】
支持体上にガスバリア層を設けた樹脂フィルム基板であって、当該支持体が熱可塑性樹脂とマイクロフィブリル化セルロースを含有し、かつ当該ガスバリア層が、セラミック前駆体より形成された無機酸化物を含有することを特徴とする樹脂フィルム基板。」
「【0039】
〈マイクロフィブリル化セルロース〉
本発明において用いることができるマイクロフィブリル化セルロースとしては、繊維径が1μm以下の微細なセルロースとしてセルロース繊維を高圧下剪断力で解繊したマイクロフィブリル化セルロース(MFC)を使用することができる。本発明においては、特に所謂セルロースナノファイバーを用いることが好ましい。」
「【0051】
本発明において、得られたセルロースナノファイバーは、直接、又は分散液として熱可塑性樹脂に添加されるが、その含有量は0.1から50質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは5~50質量%であり、特に10~40質量%が好ましい。」
「【0186】
(ドープ液の調製)
トリアセチルセルロース 120質量部
セルロースナノファイバー分散液1 840質量部
(セルロースナノファイバー固形分として 20質量部)
可塑剤(トリメチロールプロパントリベンゾエート) 10質量部
〈支持体2及び3の作製〉
表1のマトリクス材料を用い、セルロースナノファイバー含有支持体を上記と同様な手法で作製した。」
6 乙1には次の記載がある。
「【0039】実施例3
熱可塑性樹脂(A)としてポリヘキサメチレンテレフタレート(融点150℃)250部、熱可塑性重合体(B)として酢酸ビニル樹脂〔商品名:デンカサクノールSN-10、電気化学工業(株)製、ガラス転移点29℃〕100部を混合し、170℃でエクストルーダーにて溶融混合し、熱可塑性樹脂組成物を得た。」
7 参考資料1には次の記載がある。
「【0024】
ベースポリマーは、合成により得られてもまたは市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、クイックマスター、ファインタックシリーズ(例えば、ファインタックCT-6020)(いずれもDIC株式会社製)、SKダイン(綜研化学株式会社製)、アロンタックシリーズ(東亜合成株式会社製)等のアクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製、例えば、#182907)などが挙げられる。」
「【0033】
また、ベースポリマーおよび粘着付与剤を含む市販品を使用してもよい。このような市販品としては、オリバインシリーズ(例えば、BPS6074HTF、BPS6574HTF(トーヨーケム株式会社製)、ファインタックシリーズ(例えば、ファインタックCT-5020)(DIC株式会社製)、SKダインシリーズ(例えば、SKダイン1502)などが挙げられる。なお、ベースポリマーおよび粘着付与剤を含む市販品を使用した場合に、粘着付与剤の含有量が不明である場合がある。このような場合であっても、上記(粘着付与剤の含有量の測定方法)と同様の方法によって、粘着付与剤の含有量(ベースポリマーに対する組成)を測定できる。」
第6 当審の判断
1 令和5年11月16日付けの取消理由(決定の予告)について
(1)取消理由(決定の予告)の概要
当審が令和5年11月16日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
取消理由1(新規性欠如)
本件発明1~4は、甲1に記載された発明であり、本件発明1~7は、甲2に記載された発明であるから、本件発明1~7は、特許法第29条第1項第3号の発明に該当する。したがって、本件発明1~7に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
取消理由2(進歩性欠如)
本件発明1~9は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明及び甲1~5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。したがって、本件発明1~9に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)取消理由1、2のうち、甲1を主引用例とするものについて
ア 甲1発明の認定
前記第5、1に摘記した甲1の段落【0046】、【0047】の記載から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「表面がアセチル化されたセルロースからなる偏光解消性繊維からなる乾燥ファイバーシートを、減圧下、UV硬化型粘着剤ファインタックCT6010(DIC(株)製)に浸して12時間静置し、その後、ベルトコンベアー型のUV照射装置(フュージョンシステムズ製、Fusion F300 and LC6Bベンチトップコンベアー)を用い、樹脂を含浸したファイバーシートに紫外線を照射して硬化させた偏光解消性粘着剤」
イ 本件発明1との対比
(ア)甲1発明の「ファインタックCT6010(DIC(株)製)」について、前記第5、3に摘記した甲3には「アクリル系ポリマー粘着剤(商品名:ファインタック CT-6010、DIC(株)製、不揮発分25重量%、溶剤:酢酸エチル)」と記載されている。酢酸エチルが有機溶剤であり、アクリル系ポリマーが樹脂であることは技術常識であるから、甲1発明の「UV硬化型粘着剤ファインタックCT6010(DIC(株)製)」は、本件発明1の「粘着性樹脂(A1)を含む有機溶剤型粘着剤(A)」に相当する。
(イ)甲1発明の「表面がアセチル化されたセルロースからなる偏光解消性繊維」は、前記第5、1に摘記した甲1の段落【0020】の「偏光解消性繊維は、セルロースナノファイバーの集合体である。セルロースナノファイバーは、水酸基を含み、その水酸基の一部は化学修飾されている。」という記載からみて、「セルロースナノファイバーの集合体」であるから、本件発明1の「セルロースナノファイバー(B)」に相当する。
(ウ)甲1発明の「偏光解消性粘着剤」は、本件発明1の「粘着剤組成物」に相当する。
(エ)以上から、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
一致点
「粘着性樹脂(A1)を含む有機溶剤型粘着剤(A)と、セルロースナノファイバー(B)と、を含有する粘着剤組成物」
相違点1-1
本件発明1においては、「有機溶剤」、「を含有する」と特定されているとともに、その含有量について、「20~90質量%であり」と特定されているのに対して、甲1発明においてはそのような特定がされていない点
相違点1-2
本件発明1においては、「水を含有する」と特定されているとともに、その含有量について、「前記有機溶剤と前記水との含有量比[有機溶剤/水]が、質量比で、0.4~20である」と特定されているのに対して、甲1発明においてはそのような特定がされていない点
ウ 本件発明1についての判断
(ア)事案に鑑み、相違点1-2から検討する。
甲1の段落【0046】の「原料として、結晶性セルロース・・・の表面をアセチル化した。得られた含水ファイバーを・・・ろ過して水を除去し、シート状とした。さらに15kPaで72時間、55℃にてホットプレスし、水を除去し、厚さ50μmの乾燥ファイバーシートとした」との記載から、甲1発明の「偏光解消性粘着剤」は、その原料である「表面がアセチル化されたセルロースからなる偏光解消性繊維からなる乾燥ファイバーシート」について、十分に水を除去乾燥したものを用いていることが理解できる。
そして、甲1~甲5のいずれにも、甲1発明の「偏光解消性粘着剤」において、水を含有させることを動機づける記載はなされていない。
(イ)したがって、甲1発明の「偏光解消性粘着剤」は水を含有するものとはいえず、また、甲1発明の「偏光解消性粘着剤」において、水を含有するものとすることを当業者が容易に着想し得たとはいえない。
(ウ)本件発明1は、優れた粘着力及び保持力を有する粘着シートを生産性を向上させて製造することができるという顕著な効果を奏するものである(本件特許明細書の段落【0009】)。
(エ)上記(ア)~(ウ)のとおりであるから、本件発明1は甲1に記載された発明ではなく、また、本件発明1は甲1に記載された発明及び甲1~5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(オ)本件発明1についての小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法第113条第2項の規定により、本件発明1に係る特許を取り消されるべきものであるとすることはできない。
また、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1~5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではないから、同法第113条第2項の規定により、本件発明1に係る特許を取り消されるべきものであるとすることはできない。
エ 本件発明2~9についての判断
本件発明2~9は、本件発明1を直接又は間接的に引用しさらに発明特定事項が付加されたものである。
上記ウ(オ)のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明、及び、甲1~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものでもないから、本件発明1に係る特許を取消理由1、2によって取り消すべきものとはできないものである。
そうすると、さらに発明特定事項が付加された本件発明2~9も、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明、及び、甲1~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものでもないから、本件発明2~9に係る特許を、取消理由1、2によって取り消すべきものとはできない。
(3)取消理由1、2のうち、甲2を主引用例とするものについて
ア 甲2発明の認定
前記第4、2に摘記した甲2の段落【0109】に記載の実施例10の内容から、次の発明(以下「甲2発明」という。)が読み取れる。
「微細繊維状セルロースとマトリクス樹脂としてポリ酢酸ビニル(デンカサクノール)を含有する接着剤組成物」
イ 本件発明1との対比
(ア)甲2発明におけるポリ酢酸ビニルは、甲2の前記段落【0109】の記載から、トルエンと共に微細繊維状セルロースに加えられていることから、甲2発明の組成物は「有機溶剤型」であると認められる。
(イ)甲2発明における「微細繊維状セルロース」は、本件発明1の「セルロースナノファイバー(B)」に相当する。
(ウ)以上から、本件発明1と甲2発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
一致点
「接着性樹脂(A1)を含む有機溶剤型接着剤(A)と、セルロースナノファイバー(B)とを含有する、組成物。」
相違点2-1
本件発明1は組成物が「粘着剤組成物」であるのに対し、甲2発明は「接着剤組成物」である点
相違点2-2
本件発明1においては、「有機溶剤」、「を含有する」と特定されているとともに、その含有量について、「20~90質量%であり」と特定されているのに対して、甲2発明においてはそのような特定がされていない点
相違点2-3
本件発明1においては、「水を含有する」と特定されているとともに、その含有量について、「前記有機溶剤と前記水との含有量比[有機溶剤/水]が、質量比で、0.4~20である」と特定されているのに対して、甲2発明においてはそのような特定がされていない点
ウ 本件発明1についての判断
(ア)事案に鑑み、相違点2-3から検討する。
甲2には、段落【0077】に「本発明の接着剤組成物には、その用途に応じて従来公知の各種添加剤を含有しても良く、例えば、加水分解防止剤・・・等をあげることができる。」と記載されているが、各種添加剤の中に水は含まれていない。むしろ、例示された各種添加剤の中に加水分解防止剤が含まれていることから、甲2には、甲2発明の「接着剤組成物」は、加水分解を防止することが望ましく、水が含まれないほうが望ましいものであることが示唆されていると理解できる。
以上によれば、甲2には、甲2発明の「接着剤組成物」において、水を含有するものとすることを動機づける記載はなく、甲1、3~5にも甲2発明の「接着剤組成物」において、水を含有するものとすることを動機づけるような記載はない。
したがって、甲2発明の「接着剤組成物」が水を含有するものとは認められず、また、甲2発明の「接着剤組成物」において、水を含有するものとすることを当業者が容易に着想し得たとはいえない。
(イ)本件発明1は、耐熱性と高い接着強度を有するという顕著な効果を奏するものである(本件特許明細書の段落【0008】)。
(ウ)上記(ア)、(イ)のとおりであるから、本件発明1は甲2に記載された発明ではなく、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲1~5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ)本件発明1についての小括
以上のとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法第113条第2項の規定により、本件発明1に係る特許を取り消されるべきものであるとはできない。
また、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲1~5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではないから、同法第113条第2項の規定により、本件発明1に係る特許を取り消されるべきものであるとはできない。
ウ 本件発明2~9についての判断
本件発明2~9は、本件発明1を直接又は間接的に引用しさらに発明特定事項が付加されたものである。
上記イ(エ)のとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明、及び、甲1~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものでもないから、本件発明1に係る特許を取消理由1、2によって取り消すべきものとはできないものである。
そうすると、さらに発明特定事項が付加された本件発明2~9も、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明、及び、甲1~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものでもないから、本件発明2~9に係る特許を、取消理由1、2によって取り消すべきものとはできない。
2 取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由について
特許異議の申立理由の概要は、上記第4のとおりであり、取消理由通知で通知した取消理由は、上記第6の1のとおりであるから、取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由は、本件発明5~9に対する甲1に基づく新規性欠如、及び、本件発明8、9に対する甲2に基づく新規性欠如である。
本件発明5~9は、本件発明1を直接又は間接的に引用する発明であり、甲1には「水を含有」し「前記有機溶剤と前記水との含有量比[有機溶剤/水]が、質量比で、0.4~20である」粘着剤組成物の発明は記載されていないことは、前記第6の1(2)のとおりである。
また、本件発明8~9は、本件発明1を直接的又は間接的に引用する発明であり、甲2には「水を含有」し「前記有機溶剤と前記水との含有量比[有機溶剤/水]が、質量比で、0.4~20である」粘着剤組成物の発明は記載されていないことは、前記第6の1(3)のとおりである。
したがって、上記理由を採用することはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1-9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1-9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700897