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特許異議申立

2025-700431

硬化膜及び積層体、並びにこれらの製造方法

審判番号
2025-700431
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-128544
登録番号
7567256
請求日
2025年04月16日
審決日
2026年05月20日
公報発行日
2026年08月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三菱ケミカル株式会社
  • 【権利者代理人】田▲崎▼ 聡
  • 【権利者代理人】君塚 哲也
  • 【権利者代理人】大浪 一徳
  • 【異議申立人】鈴木 佐知子
審判長/審判官
  • 審判長 井上 千弥子
  • 審判官 渡辺 陽子
  • 審判官 関根 裕
分類
P1651.55 -YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D) / P1651.536-YAA(C09D) / P1651.121-YAA(C09D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第4号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第17条の2第3項、特許法第113条第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7567256号発明「硬化膜及び積層体、並びにこれらの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7567256号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 特許第7567256号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7567256号に係る特許(以下「本件特許」ともいう。)についての出願は、令和2年7月29日にされたものであって、令和5年10月26日に手続補正書が提出され、同年12月4日付けで拒絶査定され、令和6年3月12日に審判請求されると同時に手続補正書が提出され、同年4月23日に審判請求書を補正する手続補正書が提出され、同年10月7日に特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年同月16日に特許掲載公報が発行された。その後の特許異議の申立ての手続の経緯は次のとおりである。 令和7年 4月16日 特許異議申立人 鈴木 佐知子(以下「申立 人」という。)による全請求項に係る特許に 対する特許異議の申立て 同年 7月24日付け 取消理由通知書 同年 9月24日 意見書及び訂正請求書(特許権者) 同年10月 1日付け 訂正請求があった旨の通知書 同年11月 4日 意見書(申立人) 令和8年 1月21日付け 訂正拒絶理由通知書 同年 2月24日 意見書及び令和7年9月24日提出の訂正請 求書を補正する手続補正書(特許権者) 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和7年9月24日に提出され、令和8年2月24日提出の手続補正書により補正された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の内容は、次の訂正事項2及び3のとおりである。なお、訂正事項1は、前記手続補正書により削除された。下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項2 請求項1の「3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)であり、」の後に、「前記活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化性組成物中の不揮発分100質量部に対して10質量部以上1900質量部以下になるように有機溶剤を含み、」との記載を追加する。(請求項1の記載を直接または間接的に引用する請求項2~6も同様に訂正する。) (2)訂正事項3 請求項1の「表面が凹凸構造を有しており、」との記載を、「表面がしわ状の凹凸構造を有しており、」に訂正する。(請求項1の記載を直接または間接的に引用する請求項2~6も同様に訂正する。) 2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~6において、請求項2~6は請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項2及び3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~6は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、それらに対応する本件訂正後の請求項1~6も一群の請求項である。 3 訂正要件についての判断 (1)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、本件訂正前の請求項1の「活性エネルギー線硬化性組成物」が、「硬化性組成物中の不揮発分100質量部に対して10質量部以上1900質量部以下になるように有機溶剤を含」むことを限定するものであるから、その訂正の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項2は、本件明細書の段落【0017】に「硬化性組成物は、必要に応じて、多官能不飽和化合物(A)に該当しない活性エネルギー線硬化性の化合物(B)、有機溶剤、光重合開始剤等の成分をさらに含むことができる。」と記載され、【0031】に「(有機溶剤) 硬化性組成物を基材に塗布する際の作業性を向上させる目的で、硬化性組成物に有機溶剤を必要に応じて配合することもできる。・・・硬化性組成物に有機溶剤を配合する場合、その含有量は、塗布操作における操作性の向上の観点から、硬化性組成物中の不揮発分100質量部に対して10質量部以上1900質量部以下が好ましく、40質量部以上400質量部以下がより好ましい。」と記載され、さらに、【0090】の実施例において、「プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGM)とメチルエチルケトン(以下、MEK)の混合溶剤(PGM:MEK(質量比)が7:3)を固形分濃度が30質量%になるように添加し」と記載されていることに基づいて、硬化性組成物中の不揮発分100質量部に対する有機溶剤の質量部を「1900質量部以下」に訂正するものである。 そうすると、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか 訂正事項2は、前記アのとおり、本件訂正前の請求項1の「活性エネルギー線硬化性組成物」が、所定範囲の量の有機溶剤を含むことを特定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 (2)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3は、本件訂正前の請求項1の「凹凸構造」について、「しわ状の凹凸構造」と特定するものであるから、その訂正の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項3は、本件明細書の段落【0008】、【0016】、【0094】等の「しわ状の凹凸構造」との記載に基づいて、凹凸構造が「しわ状の凹凸構造」であることを特定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか 訂正事項3は、前記アのとおり、本件訂正前の請求項1の「凹凸構造」が、「しわ状の凹凸構造」であることを特定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 4 独立特許要件について 本件訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~6に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項により読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。 5 訂正の適否についての小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の特許請求の範囲の記載 前記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の請求項1~6に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線である真空紫外線を照射してなる硬化膜であって、 前記活性エネルギー線硬化性組成物は、E型粘度計で測定した25℃における粘度が2~7000mPa・sである多官能不飽和化合物(A)を不揮発分に対して30質量%以上含み、 前記多官能不飽和化合物(A)は、二重結合量が4.0~15.0mmol/gであり、 前記多官能不飽和化合物(A)は2官能の多官能不飽和化合物(A2)と3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)であり、 前記活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化性組成物中の不揮発分100質量部に対して10質量部以上1900質量部以下になるように有機溶剤を含み、 表面がしわ状の凹凸構造を有しており、当該凹凸構造における、JISB0601:2013に従う粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が30μm超75μm以下、ISO25178で定義される算術平均高さ(Sa)が0.2~10μm、局部傾斜角度の平均値(θa)が1.5~60°である硬化膜。 【請求項2】 前記活性エネルギー線硬化性組成物は、平均一次粒子径が0.5μm以上の粒子(C)を不揮発分に対して0.5質量%以上含む、請求項1に記載の硬化膜。 【請求項3】 前記活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分のE型粘度計で測定した25℃における粘度が4000mPa・s以下である、請求項1又は2に記載の硬化膜。 【請求項4】 活性エネルギー線硬化性組成物に、波長150~200nm、半値幅3.0~20.0nmの発光スペクトルを有する真空紫外線を照射して硬化させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化膜の製造方法。 【請求項5】 請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化膜が基材上に積層されてなる積層体。 【請求項6】 基材上に活性エネルギー線硬化性組成物を積層し、波長150~200nm、半値幅3.0~20.0nmの発光スペクトルを有する真空紫外線を照射して硬化させる請求項5に記載の積層体の製造方法。」 第4 特許異議申立書の申立理由、取消理由の概要 1 特許異議申立書による申立理由 (1)申立理由1(新規事項) 本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした出願に対してされたものであり、特許法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。 ア 令和5年10月26日提出の手続補正書において、実施例11、比較例2を削除する補正は、意に沿わない実験結果を合理的な理由なく削除し、これにより、意に沿った作用効果や技術的意義を主張するものであるから、新たな技術的意義を追加するものである。(申立書31頁(4-2-2)参照。) イ 令和6年3月12日提出の手続補正書において、平均長さ(Rsm)を30μm超75μm以下」とする補正は、本件明細書にその根拠となる数値(30μm)の記載がなく、本件明細書の【0009】で最も好ましいとされている範囲(5~25μm)を権利範囲から除外するものであるから、新規事項の追加に該当する。(申立書35頁(4-2-3)参照。) (2)申立理由2(明確性要件) 本件特許の特許請求の範囲の記載は明確性要件違反であるから、本件特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 請求項1は、硬化膜の表面の凹凸構造の状態を、「前記活性エネルギー線硬化性組成物は・・化合物(A3)であり」との記載により、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの方式で規定する一方で、「表面が凹凸構造を有しており・・・1.5~60°である硬化膜。」との記載でも構造を直接的に規定しているが、直接的な規定により硬化膜の表面の凹凸構造の状態を特定できる以上、凹凸構造の状態をプロダクト・バイ・プロセス・クレームの方式で規定する合理的理由はない。むしろ、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの方式による規定と、直接的な規定とで重畳的に規定することにより、両者が同じことを規定しているのか、仮に違うことを規定しているのであれば、具体的にどのような凹凸構造を規定しているのかを理解することができず、本件発明の技術的意味が不明確である。(申立書40頁(4-3-2)参照。) (3)申立理由3(サポート要件) 本件特許の特許請求の範囲の記載は、サポート要件違反であるから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 ア 本件はパラメータ発明であるから、パラメータを満たせば課題を解決できると認識できるように記載されていることを要するが、表3の実施例をみても、RSmの下限値、Saの範囲の上限値及び下限値、θaの範囲の上限値、粘度の範囲の上限値、二重結合量の数値範囲、化合物(A)の含有割合の数値範囲についてその臨界的意義が不明であり、これらの特定と得られる効果との関係の技術的な意味が、当業者に理解できる程度に具体例を開示して記載されているとはいえない。(申立書44頁(4-4-2)参照。) イ 本件発明に係る「前記多官能不飽和化合物(A)は2官能の多官能不飽和化合物(A2)と3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)であり」を満たす実施例は存在せず、多官能不飽和化合物(A3)及び2官能の多官能不飽和化合物(A2)の組み合わせにおいても、本件発明の技術的課題を解決できると認識し得ない。(申立書50頁(4-4-3)参照。) (4)申立理由4(実施可能要件) 本件特許の明細書の記載は、実施可能要件違反であるから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 本件発明は、RSm、Sa、θaの値の範囲を規定しているところ、具体的にどのように調整すれば、これらの凹凸構造を全て充足するように調整できるのか、その具体的方法が記載されていない。実施例では、これらを充足しているものの、その具体的な調整方法については記載されておらず、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとは認められない。(申立書52頁(4-5)参照。) (5)申立理由5(甲第1号証を主引例とした進歩性) 本件発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものあり、その特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。(申立書53頁(4-6)参照。) (6)申立理由6(甲第2号証を主引例とした進歩性) 本件発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものあり、その特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。(申立書84頁(4-7)参照。) (7)申立理由7(甲第3号証を主引例とした進歩性) 本件発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものあり、その特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。(申立書120頁(4-8)参照。) 2 令和7年7月24日付けの取消理由通知書による取消理由 (1)取消理由1(明確性要件) 請求項1の「前記多官能不飽和化合物(A)は2官能の多官能不飽和化合物(A2)と3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)であり」との記載は、「多官能不飽和化合物(A)」が、「2官能の多官能不飽和化合物(A2)」及び「3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)」であることを意味するのか、「2官能の多官能不飽和化合物(A2)」又は「3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)」であることを意味するのか、明確でない。 (2)取消理由2(サポート要件) 請求項1の「前記多官能不飽和化合物(A)は2官能の多官能不飽和化合物(A2)と3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)であり」との記載が、「多官能不飽和化合物(A)」が、「2官能の多官能不飽和化合物(A2)」及び「3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)」であることを意味するのであれば、本件明細書には、「多官能不飽和化合物(A)」が、「2官能の多官能不飽和化合物(A2)」及び「3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)」である実施例は示されていないから、サポート要件を満たしていない。 (3)取消理由3(新規事項) 令和5年10月26日提出の手続補正書による手続補正は、請求項1の「しわ状の凹凸構造」を「凹凸構造」に補正するものであって、「しわ状」でない「凹凸構造」についても本件発明の対象に含めるものであるから、当該補正は、新規事項を追加するものである。 (4)取消理由4(進歩性) 本件発明1~6は、甲2に記載された発明及び甲1~3、8~11に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 証拠方法 (1)申立人が特許異議申立書に添付した甲第1号証~甲第19号証(以下、番号順に「甲1」等という) 甲1:特開2020-111715号 甲2:国際公開第2019/034675号 甲3:欧州特許出願公開第3677347号 甲4:Wikipediaの「水銀灯」の項目の出力物、出力日令和7年4月16日 URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E9%8A580%E7%81%AF 甲5:森本幸裕、VUV~UV光の発生方法とその応用、USHIO、光技術情報誌「ライトエッジ」No.33(2010年8月発行) URL:https://www.ushio.co.jp/jp/technology/lightedge/201008/100396.html 甲6:米国特許出願公開第2013/0129980号 甲7:特開2007-224084号公報 甲8:特開2014-92657号公報 甲9:磯 慎一他5名、「30p-ZE-2、誘電体バリア放電Xe2*エキシマランプによる石英ガラスのUV/O3洗浄、UV/O3 Cleaning of Slica Glasses with Xe Excimer Lamp」、USHIO、光技術情報誌「ライトエッジ」No.1(1995年冬発行) URL:https://www.ushio.co.jp/jp/technology/lightedge/199502/100051.html 甲10:原田雅好、「粉体塗膜の平滑性について」、実務表面技術、Vol.29 No.7,1982,332~335頁 URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1970/29/7/29_7_332/_pdf/-char/ja 甲10の2:甲10の発行日は、1982年7月1日 URL:https://www.jstage.jst.go.jp/browse/sfj1970/29/7/_cont ents/-char/ja 甲11:柳原亘他1名、「表面の光学特性に影響する粗さパラメータの解明」、静岡県工業技術研究所研究報告 2020年、第13号、4~8頁 URL:https://www.iri.pref.shizuoka.jp/wp/wp-content/uploads/2022/06/IRIS_Report_132020_p.4.pdf 甲11の2:甲11の発行は2020年11月 URL:https://cir.nii.ac.jp/crid/1523106605962251520 甲12:Frank Bauer他3名、「UV curing and matting of acrylate nanocomposite coatings by 172 nm excimer irradiation, Part2」、Progress in Organic Coatings、2010年、Vol.69、287~293頁 甲13:韓国特許出願公開第10-2020-0031282号公報 甲14:特開2022-25624号公報 甲15:「日本産業規格B0601:2013」の出力物、 URL:https://kikakurui.com/b0/B0601-2013-01.html 甲16:肥田敬治、「UV硬化塗料」、表面技術、2018年2月1日発行、2018年、Vol.69 No.2、17~23頁 URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/69/2/69_73/_pdf/-char/ja 甲16の2:甲16の発行日は、2018年2月1日 URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/69/2/69_73/_arti cle/-char/ja 甲17:荻野圭三他6名、「不飽和度の異なる脂肪酸の界面化学的性質」、油化学、Vol.69 No.2、26~32頁 URL:https:// www.jstage.jst.go.jp/article/j os1956/39/6/39_6_398/_pdf 甲17の2:甲17の発行は1990年6月との記載 URL:https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902076041883888 甲18:内田博、「アリルエステル樹脂について」、熱硬化性樹脂、Vol.15 No.1 17~28頁 甲18の2:甲18の発行日は1994年3月10日との記載 甲19:左上に、「(株)DJK技術資料、UV硬化樹脂(光ラジカル重合)」、右上に「DJK、(株)DJK 受託研究部 大塚伸一」と記載されている頁の出力物、出力日令和7年4月16日 URL:https://www.djklab.com/parts/service/pdf/hikari-radical-1.pdf (2)申立人が令和7年11月4日提出の意見書に添付した甲20~甲23 甲20:新村出編、広辞苑第7版、2039頁、「と」の項(2018年) 甲21:フジ合成株式会社、光硬化のメカニズムと化学反応と題するウェブサイトの出力物 URL:https://fujigosei.co.jp/2025/03/26/photocuring-mechanism-chemistry/?utm_source=chatgpt.com 甲22:協和化工株式会社、溶剤成分一覧と題するウェブサイトの出力物 URL:https://www.kyowakako.com/pdf/list_of_solA4.pdf 甲23:DIC株式会社、UV硬化型樹脂と題するウェブサイトの出力物 URL:https;www.dic-global.com/ja/products/uv.html 4 甲号証に記載された事項 (1)甲1には、次の記載がある。 「【0007】 本発明の硬化物は表面にしわ状構造を有する。本発明において、しわ状構造とは、一般にリンクル構造として知られている、表面層が座屈して得られる波上の凹凸構造であり、たとえば図1に示すような迷路状の構造をいう。 本発明における、前記硬化物の表面の算術平均粗さRaは、0.01μm以上である。 前記算術平均粗さRaが0.01μm以下では、艶消し性が不十分となる。 前記算術平均粗さRaは、硬化物の耐擦傷性と艶消し性を両立させる観点から、0.05μm以上、2μm以下が好ましい。 また本発明における前記しわ状構造の凹凸の傾斜角θaは硬化物の耐擦傷性と艶消し性を両立させる観点から0.5°以上20°以下が好ましく、より好ましくは5°以上17°以下、さらに好ましくは7°以上15°以下である。 前記傾斜角θaは、本発明の硬化物の耐擦傷性の点から低い方が好ましく、艶消し性の点から高いほうが好ましい。 さらに本発明の硬化物の凹凸周期(粗さ曲線要素の平均長さ)Rsmは0.5μm以上30μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以上20μm以下、さらに好ましくは3μm以上15μm以下である。前記Rsmが30μmを超えると、本発明の硬化物を防眩性フィルムとして用いた場合に表面のぎらつきが問題となり、0.5μmより低いと十分な艶消し性が得られない。 また本発明における前記しわ状構造の最大高さRzは硬化物の耐擦傷性と艶消し性を両立させる観点から、0.02μm以上5μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以上4μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上3μm以下である。 前記Rzは、本発明の硬化物の耐擦傷性の点から低い方が好ましく、艶消し性の点から高いほうが好ましい。 本発明における前記しわ状構造の算術平均粗さRa、平均長さRsm、最大高さRz、傾斜角θaは、JIS B 0601-2001に準拠し、光干渉法にて測定した値である。 なお、測定は、表面形状計測システム(株式会社日立ハイテクノロジーズ「VertScan」(登録商標)R5500)を用いて、硬化物表面において、縦237.65μm、横178.25μmの四角形の領域の測定を行い、補完およびベースライン補正を行い、データを読み取った。なお、測定時における対物レンズの倍率は20倍に設定した。 また本発明のしわ状構造を有する硬化物の60°光沢度は艶消し性と透明性を両立させる観点から1以上90以下であり、より好ましくは3以上70以下、さらに好ましくは5以上50以下である。 さらに、本発明のしわ状構造を有する硬化物を防眩性フィルム等の透明性を必要とする用途に用いる場合、ヘイズ15%以上、全光線透過率85%以上であることが好ましい。」 「【実施例】 【0029】 以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、評価は以下の方法によって行った。 <評価方法> <評価サンプル> 硬化性重合体組成物の塗布液を、厚さ100μmのPETフィルム(三菱ケミカル(株)製、O321E100)に#7のバーコーターで塗布し、得られた塗膜を100℃に加熱した熱風乾燥機で60秒間乾燥を行うことで溶剤を揮発させた。次いで、アイグラフィックス株式会社製のUVコンベアを用いて、高圧水銀灯により空気下で塗膜の硬化を行ったものを評価サンプルとした。 紫外線による硬化は、波長300~390nmの積算光量が、岩崎電気株式会社製の照度計(アイ紫外線積算照度計 UVPF-A1、PD-365)で測定した際に、250mJ/cm2(250mW/J/cm2)となるように調整し、約1秒の照射を2回(500mJ/cm2)行った。 ・・・ 【0034】 <艶消し性> 蛍光灯を灯した室内で、蛍光灯と評価サンプルの距離を2.5mに設定して評価サンプルの表面への蛍光灯の映り込みを目視で評価した。 ○:蛍光灯の反射像は、強くぼやけており、蛍光灯の輪郭が確認できない。 △:蛍光灯の反射像は、ぼやけているが、うっすらと輪郭を確認することができる。 ×:蛍光灯の反射像は、鮮明ではっきりと輪郭を確認することができる。 【0035】 <硬化性> 硬化性重合体組成物を、厚さ100μmのPETフィルム(三菱ケミカル(株)製、O321E100)に#7のバーコーターで塗布し、得られた塗膜を100℃に加熱した熱風乾燥機で60秒間乾燥を行った。乾燥後に、高圧水銀灯を用いて空気下、波長300~390nmの積算光量が、岩崎電気株式会社製の照度計(アイ紫外線積算照度計 UVPF-A1、PD-365)で測定した際に、250mJ/cm2(250mW/J/cm2)となるように調整し紫外線照射を行った。硬化物表面のタック(粘着性)が無くなるまでの照射回数を測定することで、硬化性重合体組成物の硬化性を評価した。 ○:照射回数1回(250mJ/cm2)で硬化膜表面のタック性が無くなる △:照射回数2回(500mJ/cm2)で硬化膜表面のタック性が無くなる ×:照射回数3回(750mJ/cm2)でも硬化膜表面のタック性は無くならない。 【0036】 <紫外線活性基を有する重合体A-1> 撹拌機、冷却管及び温度計を備えたフラスコ中に、メチルイソブチルケトン(MIBK)78.0部を入れて撹拌した。次いで、フラスコ内を窒素置換し65℃に昇温してメチルメタクリレート(三菱ケミカル(株)製、商品名:アクリエステルM)30.0部、ステアリルメタクリレート(三菱ケミカル(株)製、商品名:アクリルエステルS)20.0部、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン(MCCユニテック(株)製)50.0部、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM-803)3.0部、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製、商品名:V-65)1.0部、MIBK78.0部の混合溶液を2時間かけて滴下した。さらに2時間後、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製、商品名:V-65)0.5部、MIBK0.6部の混合液を投入し、5時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却することで紫外線活性基を有する重合体A-1を重合した。前記A-1の固形分は40%であり、重量平均分子量(Mw)は10,700であった。また、ガラス転移温度は95℃であった。 ・・・ 【0038】 <実施例1> 撹拌子を備えたフラスコ中に、紫外線活性基を有する重合体AとしてA-1を固形分として2.5質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)(E型粘度計で測定した粘度6850mPa・s)を固形分として90.0質量部とペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製 商品名:V#300)(E型粘度計で測定した粘度500mPa・s)を固形分として10.0質量部、有機溶剤Cとして、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)105.6質量部、メチルエチルケトン(MEK)45.3質量部を添加した後に均一になるまで撹拌を行い、硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表1に示す。 ・・・ 【0041】 <実施例4> 多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として60.0質量部とペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製 商品名:V#300)を固形分として40.0質量部とした以外は実施例1と同様に硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表1に示す。 ・・・ 【0046】 【表1】 [図:0001438277000001.jpg] 」 (2)甲2は外国語で記載されているので、甲2の記載箇所の頁及び行と、当該箇所に対応する日本語訳として、申立人が提出したものを記載する。 ア 1頁3~22行 「本発明は、平面基材、特に木材、木材材料、金属、プラスチックなどの非多孔性基材上にマットコーティングを製造するプロセスに関連しています。このプロセスでは、UV硬化可能な液体組成物を使用します。 放射線によって硬化するコーティングシステム(いわゆる放射線硬化型または放射線硬化コーティングシステム)の使用は、高品質のコーティングを製造するための長年の技術です。 例えば、P. Glockneretal.(当審注:oにはウムラウトが付く)の「Radiation Curing for Coatings and Printing Inks」(Vincentz Network GmbH、ハノーバー、2008年)において概要が示されています。このようなコーティングシステムは、液体配合物であり、オリゴマーまたはポリマーが複数のエチレン不飽和二重結合を持ち、しばしばアクリル基(CH2=CH-C(O)基)の形で存在し、オプションで低分子量のエチレン的に不飽和なモノマーを含んでいます。コーティングを製造するために、液体コーティングがコーティングされる基材の表面に適用され、その後、放射線(例えば、UV放射線または電子放射線(EB放射線))によって照射され、エチレン不飽和二重結合の自由ラジカル重合が行われ、架橋されたポリマーフィルムが形成されます。」 イ 19頁36行~20頁7行 「非水性コーティング配合物Fには、1つ以上の有機溶剤が含まれる場合もあります。適切な有機溶剤は、添加からプロセスの終了までに塗料組成物に存在する官能基に対して不活性であり、エチレン不飽和二重結合を持たないものです。塗料技術で使用される適切な溶剤には、炭化水素、アルコール、ケトン、エステル(例:トルエン、キシレン、イソオクタン、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、エチルアセテート、ブチルアセテート、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなど)が含まれます。このような溶剤は好ましくは10質量%を超えず、特に 5 質量%を超えないことが望ましいです。好ましくは、コーティング配合物にはこのような有機溶剤が含まれません。」 ウ 32頁4行~33頁8行 「以下の例は、本発明を説明するためのものです。以下の略語が使用されています: DF:C=C二重結合の機能性(分子あたり) DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート EA:エポキシアクリレート GU:光沢レベル GR:滑り摩擦 HV:硬化プロセス I.O.:順序 n.i.O.:不適合 n.b.:定義不能 MK:マイクロスクラッチ耐性 MH:マーテンス硬度 Mn:数平均分子量 PEA:ポリエーテルアクリレート PESA:ポリエステルアクリレート RH:粗さ To:ガラス転移の開始温度 TBCH:tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート TPGDA:トリプロピレングリコールジアクリレート UA:ウレタンアクリレート 使用された原材料: ・脂肪族ポリエステルアクリレート(1)(PESA1):Mn=1770g/mol;粘度10.5Pa.s;DF4.1;T0=222.65K;ネットアーク長423g/mol。 ・脂肪族ポリエーテルアクリレート(1)(PEA1):Mn=1090g/mol;粘度460mPa・s;DF2.9;T0=210.65K;ネットアーク長376g/mol。 ・脂肪族ウレタンアクリレート(1)(UA1):Mn=970g/mol;粘度14.0Pa・s;DF7.2;T0=230.45K;ネットアーク長135g/mol。 ・脂肪族ポリエステルアクリレート(2)(PESA2):Mn=860g/mol;粘度約250mPa・s;DF3.8;T0=214.85K;ネットアーク長226g/mol。 ・ビスフェノールAに基づく芳香族エポキシアクリレート(1)(EA1):45%重量の3回エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートとの混合物;Mn=570g/mol;粘度4.5Pa・s;DF2.5;T0=227.95K;ネットアーク長228g/mol。 ・脂肪族ウレタンアクリレート(2)(UA2):Mn=812g/mol;粘度12.9Pa・s;DF1.9;T0=222.65K;ネットアーク長427g/mol。 ・ビスフェノールAに基づく芳香族エポキシアクリレート(2)(EA2):TPGDA中75%重量;Mn=520g/mol;粘度14.5Pa・s;DF2.0;T0=230.25K;ネットアーク長260g/mol。 ・脂肪族ポリエーテルアクリレート(2)(PEA2):Mn=320g/mol;粘度18mPa・s;DF2.0;T0=208.15K;ネットアーク長160g/mol。」 エ 34頁24行~38頁9行 「コーティング剤Fの調製(一般的な指示)塗料配合Fは、以下の表1に示された成分を23℃で混合ビーカーで混合することによって調製されました。それぞれの混合物は、視覚的に明確になるまで均一化されました。表1のすべての量は質量比で示されています。塗料配合の物理化学的特性は、表2に示されています。 [図:0001438277000002.jpg] [図:0001438277000003.jpg] 1)βは、塗料配合に含まれるすべての硬化可能な成分に対する質量平均比率a/T0であり、式(2)を使用して計算されます。 コーティングの製造:上記のコーティング配合F1-F9は、特に記載がない限り、スパイラルドクターブレードを用いて、各々6g/m2の膜厚でLenetas/wカードボード(2DXブラシアウトカード)に適用され、その後、以下の方法A1、A2、B1、B2、C1、C2またはC3によってUV放射を用いて硬化されました。 ・・・ 硬化プロセスB1(発明に従う):ステップ1:395nmのUVA放射で照射。PhoseonのLEDスポットライトを使用して生成。照射は周囲の雰囲気下で行われました。放射器の出力は、基板表面での放射線量が56mJ/cm2になるように調整されました。 ステップ2:172nmの非コヒーレントVUV放射で照射。OsramのEximer放射器XIS375x96を使用し、出力185W、ランプ表面での照射出力45mW/cm2、ランプ表面から基板までの距離5cm、窒素でパージしながら(約1000ppmの残留酸素)。 ステップ3:200から450nmの波長範囲でのUV放射で照射。ISTMetzの中圧水銀ランプを使用して生成。放射器の出力は、基板表面での放射線量が891mJ/cm2になるように調整されました。照射は周囲の雰囲気下で行われました。 硬化プロセスB2(発明に従う):方法B2は、方法B1に類似して実施され、ステップ1では放射器の出力が基板表面での放射線量が169mJ/cm2になるように設定され、ステップ3では放射器の出力が基板表面での放射線量が1370mJ/cm2になるように調整されました。 硬化プロセスC1(発明に従う):ステップ1:395nmのUVA放射で照射。PhoseonのLEDスポットライトを使用して生成。照射は周囲の雰囲気下で行われました。放射器の出力は、基板表面での放射線量が56mJ/cm2になるように調整されました。 ステップ2:172nmの非コヒーレントVUV放射で照射。OsramのEximer放射器XIS375x96を使用し、出力185W、ランプ表面での照射出力45mW/cm2、ランプ表面から基板までの距離5cm、窒素でパージしながら(約1000ppmの残留酸素)。 ステップ3:395nmのUVA放射で照射。PhoseonのLEDスポットライトを使用して生成。照射は周囲の雰囲気下で行われました。放射器の出力は、基板表面での放射線量が453mJ/cm2になるように調整されました。 硬化プロセスC2(発明に従う):方法C2は、方法C1に類似して実施され、ステップ3では放射器の出力が基板表面での放射線量が360mJ/cm2になるように調整されました。 硬化プロセスC3(発明に従う):方法C3は、方法C1に類似して実施され、ステップ3では放射器の出力が基板表面での放射線量が235mJ/cm2になるように調整されました。」 オ 39頁14行~40頁20行 「粗さ(RH):粗さは、白色光干渉計を用いて測定されました。算術平均粗さRaは、μm単位で示されます。 白色光干渉計(WLI)は、最も高い垂直分解能(サブナノメートル解像度)を持つ高速の光学的、すなわち非接触型の3D表面計測法であり、共焦点顕微鏡を除くほとんどの他の光学的手法と同等の横方向解像度を持っています。接触型の表面測定技術とは異なり、WLIは試料に損傷を与えることなく非接触測定ができる利点があり、測定時間を大幅に短縮し、低ノイズのデータを生成し、ガラスやポリマー膜などの透明な媒体を通じて表面を特性評価することができ、個別のプロファイル測定ではなく3Dイメージングに対応するように設計されています。透明で低反射率・高光吸収率の試料は、測定前に金で蒸着されました。使用された対物レンズは10XまたはFOV:1.0Xで、技術者に知られている測定方法VSI(フィルターなし)に従って評価されました。 コーティングされたLenetaフィルムは、光学顕微鏡によって外観も評価されました。このため、オリンパスのBH2-UMAモデルの光学顕微鏡と、オリンパスレンズ103689IC50が使用されました。塗料配合F1およびF2の試験結果は表3にまとめられています。塗料配合F3からF9の試験結果は表4に示されています。 表3:塗料配合F1およびF2の性能試験 [図:0001438277000004.jpg] 1)スライディング摩擦またはソフトフィール効果 2)マーテンス硬度:0.2/30/30/30:HMX/Y1/Z/Y2=結果、ここでX=試験力[N]、Y1=試験荷重の適用時間[s]、Z1=最大試験力での保持時間[N]、Y2=試験荷重の適用時間[s]、結果=マーテンス硬度[N/mm2]。 3)マイクロスクラッチ耐性:処理前後の光沢 4)BykのMicroGloss光沢計を使用して60°の角度ジオメトリでの光沢の比較 5)+=表面が整っている;-=表面が整っていない すべての配合F1およびF2は、発明に従った硬化プロセス(B1)、(C1)、(C2)、(C3)により均一でマットな表面を生成します。発明に従った表面のマッティングは、測定方法の誤差許容範囲内で、硬化方法(B1)、(C1)、(C2)、(C3)によってわずかに異なります。表面F2の感触は、硬化方法と最終硬化時に適用された硬化エネルギーによって異なります。硬化エネルギーが低いほど、表面は柔らかくベルベットのように見え、光沢、耐久性、硬度に大きな影響はありません。すでに柔らかいソフトフィール塗料F1は、一般的に非常に高いレベルにあるため、硬化技術がソフトフィール効果に与える影響はほとんど見られません。再度、光沢、耐久性、硬度に対する重要な影響はありません。」 (3)甲3は外国語で記載されているので、甲3の記載箇所の段落番号と、当該記載箇所に対応する日本語訳として、当審において作成したものを記載する。 「[0038] ワニスは、1種以上のアクリレートモノマーと、ウレタンアクリレートおよび/またはポリエステルアクリレート性質の1種以上のオリゴマーとを含んでもよい。ワニスの組成物には、このような組成物の実施に使用される界面活性剤タイプの添加剤、特に基材上のワニスの良好な濡れを保証するための展着剤も含まれ得る。」 「図の概要説明 [0044] その他の利点及び特徴は、添付の図面を参照して、本発明の方法の非限定的な例として挙げられたいくつかの変形実施形態の以下の説明からより明確に明らかになるであろう。 [図1]は、本発明による方法の実施例の顕微鏡図である。 ・・・」 「実施例1 [0048] 本発明の方法を実施するために、粘度が100mPa・s未満である3種のニスG1、G2、G3を調製した。これらのニスは主として光開始剤の含有率が異なる点で相違する。 これらと、従来使用されているEX6ニスとを比較した。EX6ニスは、厚さ8~20μmの薄膜ニス塗布に一般的に用いられているが、インクジェット技術にはあまり適しておらず、1000mPa・s超の粘度を有する。 [0049] 各ニスはPVC製床材上に液滴として塗布され、以下のいずれかの膜厚を得た。 -試験1~8:インクジェット印刷に類似した方法で、総ニス厚20~25μm -試験9、10:膜厚200μm~約1mm [0050] ニスと接触する基材は、可塑剤を含む未充填PVCからなる床材の摩耗層である。 [0051] 各ニスは床材表面の2箇所に塗布され、一方は本発明方法、他方は従来法(172nmエキシマ光+UVランプ)により処理され、比較評価が可能とされた。 [0052] 本発明では、塗布直後に一部のニス液滴を395nm、2W/cm2で1~2秒間、LED紫外線照射した。残りは照射しなかった。 [0053] このLED照射後、試料は172nmのエキシマ光照射および水銀蒸気UVランプによる紫外線照射を順に受けた。 [0054] 比較結果を表1に示す。 [表1] [図:0001438277000005.jpg] [0055] 表1におけるクリスプ化の微細さは、×20倍の顕微鏡観察により評価され、ニス表面の5点において峰から峰までの距離を測定した。均一性(距離のばらつきが小さいか否か)も評価した。 [0056] 図1は試験8のEX6ニスの結果を示す。試験1および3(LED照射なし)は、クリスプ不良を示し、星状の光沢点(幅約1mm)がランダムに現れ、触感的にも粗い。Rz、Rmax値は、LED予備架橋を行った場合より30~40倍大きい。 [0057] 試験2および4では、LEDによる予備架橋により、外観欠陥のない均一なマット性と非常に低い粗さ、すなわち「ソフトタッチ」が得られた。 [0058] 図2は試験9の巨視的なクリスプ不良(肉眼可視の筋)を示し、図3は試験10における滑らかで均一な表面を示す。 [0059] 各試験の粗さ値を比較するため、表面粗さ測定を実施した。 [0060] 試験1、2、3、4、7、8について、Ra、Rz、Rmax、RPc、Rsm(表2参照)を測定した。 [表2] [図:0001438277000006.jpg] [表3] [図:0001438277000007.jpg] [0061] 表3の数値は図4に対応する。 [0062] 試験2および4は、低Rz・Rmax、高RPc、低Rsmを示し、この粗さ特性が「ソフトな触感」の原因であることが示された。」 「[図1] [図:0001438277000008.jpg] 」 (4)甲8には、次の記載がある。 「【0001】 本発明は、マルチタッチ操作での表面の触感に優れるとともにディスプレイの視認性にも優れるマルチタッチディスプレイ用表面フィルムに関する。」 「【0028】 表面フィルムの平均傾斜角度θaは、例えば、1.5~4.5°、好ましくは2~4°、さらに好ましくは2.5~3.5°程度である。θaが小さすぎると防眩性が低下しやすく、θaが大きすぎると、表面のざらつきを感じて触感が低下しやすい。θaは、Saと同様、非接触表面・層断面形状計測機などを用いて測定できる。」 「【0090】 実施例1~2及び比較例1~6 表1に示す成分を、表1に示す割合になるように秤量し、遮光瓶に入れ混合した。この溶液を、所定のワイヤーバーを用いてPETフィルム(東洋紡績(株)製、A4300、厚さ125μm)上に流延した後、室温中で10秒間放置し、所定温度に調整した防爆オーブンにて所定時間乾燥し、窒素雰囲気下で、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製)から照射量300mJ/cm2で紫外線を約9秒間照射することにより硬化処理し、フィルムを作製した。 ・・・ 【0093】 【表1】 [図:0001438277000009.jpg] 【0094】 【表2】 [図:0001438277000010.jpg] 」 (5)その他の証拠 甲4~甲7、甲9~甲23については、甲1~甲3のいずれかを主引例とした進歩性の判断に影響を及ぼさないので、摘記を省略した。 第5 取消理由で通知した理由についての当審の判断 1 取消理由1(明確性要件) 本件特許の請求項1の「前記多官能不飽和化合物(A)は2官能の多官能不飽和化合物(A2)と3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)であり」との記載における「・・・(A2)と・・・(A3)であり」が、(A2)及び(A3)であることを意味するのか、(A2)又は(A3)であることを意味するのかについて、「と」の意味は、次の(1)及び(2)の理由から、「及び」の意味であることが明らかである。 (1)広辞苑第7版2039頁(甲20)には、「と」の語義について「5(マルに5)共同の意を表す ア(マルにア)動作・作用の共同者を表す。・・・と共に」と記載されていること。 (2)当該記載は、出願時の請求項5に「前記多官能不飽和化合物(A)は3官能以上の多官能不飽和化合物を含む、請求項2~4のいずれか1項に記載の硬化膜」と規定されていたところ、特許権者による令和5年10月26日付けの手続補正書による手続補正により、「前記多官能不飽和化合物(A)は2官能の多官能不飽和化合物(A2)と3官能以上の多官能不飽和化合物を含む、請求項2~4のいずれか1項に記載の硬化膜」と補正された記載に由来するものであるが、この「2官能の多官能不飽和化合物(A2)と3官能以上の多官能不飽和化合物」の意味は、審査経過に鑑みれば、「2官能の多官能不飽和化合物(A2)」及び「3官能以上の多官能不飽和化合物」の意味としか解されない。 してみると、請求項1の記載は、上記した点において、第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確なものとはいえない。 また、請求項1を引用する請求項2~6の記載も同様に不明確なものとはいえない。 2 取消理由2(サポート要件:申立理由3の「イ」に対応。) 本件特許の発明が解決しようとする課題は、段落【0004】等の記載からみて、「艶消し性及び耐傷付性に優れる硬化膜及び積層体、並びにこのような硬化膜及び積層体の製造方法を提供すること」であると認められる。 これに対し、本件訂正発明1の「前記多官能不飽和化合物(A)は2官能の多官能不飽和化合物(A2)と3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)であり」との特定事項について、本件明細書の実施例(【0098】の表2及び【0099】の表3参照。)では、(A2)又は(A3)を単独で用いた例は示されているものの、(A2)と(A3)を併用した直接的な例は示されていない。 しかしながら、(A2)又は(A3)を単独で用い、それ以外の条件が本件訂正発明で規定する条件を満たす活性エネルギー線硬化性組成物にエキシマ光を照射して得られた硬化膜であって、本件訂正発明1で規定するRSm、Sa、θaの値の範囲を満たす硬化膜は、本件明細書の【0098】の表2及び【0099】の表3に実施例1~5、8~10として示されたとおり、所望の性能を発揮し、前記課題を解決できることを理解できるのであるから、当業者であれば、(A2)と(A3)を併用した場合についても、前記課題を解決できることを理解できるし、逆に、申立人は(A2)と(A3)を併用した場合に課題を解決できないとする根拠を示していない。 そうすると、本件訂正発明1は、上記した点において、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。 また、本件訂正発明2~6は、課題を解決できることを理解できる本件訂正発明1の記載を引用する形式で特定されたものであるから、同様に、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。 3 取消理由3(新規事項) 当審において新規事項に該当するとした、本件特許の請求項1の「凹凸構造」との発明特定事項は、前記第2のとおり「しわ状の凹凸構造」と訂正された。したがって、令和5年10月26日提出の手続補正書による手続補正は、新規事項を追加するものではないものとなった。 4 取消理由4(甲2を主引例とした進歩性:申立理由6に対応) (1)甲2に記載された発明 甲2の表1(前記第4の4(2)エ参照。)に記載されているコーティング剤の具体例のうち、コーティング剤F2に着目すると、コーティング剤F2は、UA1を20.0質量部、PESA2を41.5質量部、PEA2を10.0質量部、DPGDAを14.5質量部、TBCHを10.0質量部、マッティング剤を3.0質量部、微粉化ワックスを0.3質量部、光重合開始剤1を0.5質量部、光重合開始剤2を0.2質量部含む組成物であり、同表3には、方法A1~C3によって硬化したことも記載されている(前記第4の4(2)オ参照。)。 また、UA1は脂肪族ウレタンアクリレート(Mn = 970 g/mol;粘度14.0Pa・s;DF7.2)であり、PESA2は脂肪族ポリエステルアクリレート(Mn =860 g/mol;粘度 約 250mPa・s;DF3.8)であり、PEA2は脂肪族ポリエーテルアクリレート(Mn =320g/mol;粘度18mPa・s;DF2.0)であり、DPGDAはジプロピレングリコールジアクリレート(Mn=242g/mol; 粘度 約8 mPa・s; DF 2.0)であり、TBCHはtert-ブチルシクロヘキシルアクリレート(Mn=210g/mol;粘度 約8mPa・s; DF1)であり、マッティング剤はシリカ酸ベース:W.R.グレースのSyloid(登録商標)MX307であり、微粉化ワックスは粒子サイズd505μm、Ceronas GmbH&Co.KGのMjuWax(登録商標)であり、光重合開始剤1は2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸塩であり、光重合開始剤2はメチルベンゾイルフォルメートである。 また、方法C1は、要するに、395 nm のUVA放射を照射するステップ1と、OsramのEzxcimer放射器XIS 375x96を用いて172 nmの非コヒーレントVUV放射を窒素でパージしながら(約1000 ppm の残留酸素)照射するステップ2と、395 nmのUVA放射を照射するステップ3からなる硬化プロセスである。 また、表3の粗さ(RH)は、算術平均粗さ Raをμm単位で示したものであって、F2を方法C1で硬化した場合のRaは3.96μmである(前記第4の4(2)オ等参照。)。 以上によれば、コーティング剤F2を方法C1で硬化して得られた硬化膜の記載に基づき、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 (甲2発明) 「UA1を20.0質量部、PESA2を41.5質量部、PEA2を10.0質量部、DPGDAを14.5部、TBCHを10.0質量部、マッティング剤を3.0質量部、微粉化ワックスを0.3質量部、光重合開始剤1を0.5質量部、光重合開始剤2を0.2質量部含む組成物を硬化した膜であって、 UA1は脂肪族ウレタンアクリレート(Mn = 970 g/mol; 粘度 14.0 Pa・s; DF 7.2:一分子あたりの二重結合数は7.2、二重結合量は7.2/970×1000=7.4mmol/g)であり、 PESA2は脂肪族ポリエステルアクリレート(Mn = 860 g/mol; 粘度 約 250 mPa・s; DF3.8:一分子あたりの二重結合数は3.8、二重結合量は3.8/860×1000=4.4mmol/g)であり、 PEA2は脂肪族ポリエーテルアクリレート(Mn = 320 g/mol; 粘度 18 mPa・s; DF 2.0:一分子あたりの二重結合数は2.0、二重結合量は2.0/320×1000=6.3mmol/g)であり、 DPGDAはジプロピレングリコールジアクリレート(Mn = 242 g/mol; 粘度 約8 Pa・s; DF 2.0:一分子あたりの二重結合数は2.0、二重結合量は2.0/242×1000=8.3mmol/g)であり、 TBCHはtert-ブチルシクロヘキシルアクリレート(Mn = 210 g/mol; 粘度 約8 Pa・s; DF 1.0:一分子あたりの二重結合数は1.0)であり、 マッティング剤はシリカ酸ベース:W.R.グレースのSyloid(登録商標)MX307であり、 微粉化ワックスは粒子サイズd505μm、Ceronas GmbH&Co.KGのMjuWax(登録商標)であり、光重合開始剤1は2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸塩であり、 光重合開始剤2はメチルベンゾイルフォルメートであり、 上記硬化は、395 nmのUVA 放射を照射するステップ1と、172 nm の非コヒーレントVUV 放射を窒素でパージしながら(約1000 ppm の残留酸素)照射するステップ2と、395 nm のUVA 放射を照射するステップ3からなる硬化プロセスで行われ、 硬化した膜の算術平均粗さRaが3.96μmである、 硬化膜。」 (2)本件訂正発明1 本件訂正発明1と甲2発明を対比すると、甲2発明の「UA1」、「PESA2」、「PEA」、「DPGDA」及び「TBCH」のうち、粘度が2~7000mPa・s、二重結合量が4~15mmol/gの多官能不飽和化合物は「PESA2」、「PEA」及び「DPGDA」であるから、甲2発明における粘度が2~7000mPa・s、二重結合量が4~15mmol/gの多官能不飽和化合物の不揮発分に対する重量%は、(41.5+10.0+14.5)/100×100=66.0重量%である。また、「DPGDA」、「PEA」は、2官能不飽和化合物(A2)に相当し、「PESA2」は、3官能以上の不飽和化合物(A3)に相当する。そうすると、甲2発明は、本件訂正発明1の「前記活性エネルギー線硬化性組成物は、E型粘度計で測定した25℃における粘度が2~7000mPa・sである多官能不飽和化合物(A)を不揮発分に対して30質量%以上含み、前記多官能不飽和化合物(A)は、二重結合量が4.0~15.0mmol/gであり、前記多官能不飽和化合物(A)は2官能の多官能不飽和化合物(A2)と3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)であり」を充足する。 甲2発明の「硬化」は、「172 nm の非コヒーレントVUV 放射を窒素でパージしながら(約1000 ppm の残留酸素)照射するステップ2」を含む硬化プロセスで行われているから、甲2発明は、本件訂正発明1の「活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線である真空紫外線を照射してなる硬化膜であって」を充足する。 甲2発明の「硬化膜」は、「算術平均粗さRaが3.96μm」であって、少なくとも凹凸構造を有しているから、本件訂正発明1の「表面がしわ状の凹凸構造を有しており」と、「表面が凹凸構造を有しており」の点で共通する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線である真空紫外線を照射してなる硬化膜であって、 前記活性エネルギー線硬化性組成物は、E型粘度計で測定した25℃における粘度が2~7000mPa・sである多官能不飽和化合物(A)を不揮発分に対して30質量%以上含み、 前記多官能不飽和化合物(A)は、二重結合量が4.0~15.0mmol/gであり、 前記多官能不飽和化合物(A)は2官能の多官能不飽和化合物(A2)と3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)であり、 表面が凹凸構造を有している硬化膜。」 <相違点2-1> 本件訂正発明1は、「活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化性組成物中の不揮発分100質量部に対して10質量部以上1900質量部以下になるように有機溶剤を含」むのに対し、甲2発明は、有機溶剤を含まない点。 <相違点2-2> 本件訂正発明1は、「表面がしわ状の凹凸構造を有しており、当該凹凸構造における、JISB0601:2013に従う粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が30μm超75μm以下、ISO25178で定義される算術平均高さ(Sa)が0.2~10μm、局部傾斜角度の平均値(θa)が1.5~60°である」と特定されているのに対し、甲2発明は、凹凸構造がしわ状であるか否かが不明であり、Raが3.96μmであるものの、硬化膜のRSm、Sa、θaの値は不明である点。 相違点2-1について、甲2発明を認定した甲2の19頁36行~20頁7行(前記第4の4(2)イ参照。)には「非水性コーティング配合物Fには、1つ以上の有機溶剤が含まれる場合もあります。・・・このような溶剤は好ましくは10質量%を超えず、特に5質量%を超えないことが望ましいです。好ましくは、コーティング配合物にはこのような有機溶剤が含まれません。」と記載され、有機溶剤が含まれない方が好ましいことが記載されているから、有機溶剤を含まない甲2発明において、有機溶剤を含むことは積極的に動機付けられない。 そして、相違点2-2について、前記したとおり、甲2発明は有機溶剤を含まないことで、本件訂正発明1とは製造方法も異なる結果、製造された甲2発明の硬化膜のRSm、Sa、θaといったパラメータが本件訂正発明1と同じであるともいえない。甲2には、RSmが30μm超75μm以下である点について、記載も示唆もされていないし、RSmが30μm超75μm以下とする動機もない。 また、RSmの好ましい範囲について、後記第6の5で検討するとおり、甲1の【0007】には「さらに本発明の硬化物の凹凸周期(粗さ曲線要素の平均長さ)Rsmは0.5μm以上30μm以下が好ましく・・・前記Rsmが30μmを超えると、本発明の硬化物を防眩性フィルムとして用いた場合に表面のぎらつきが問題となり・・・」と記載されているから、甲1の記載をもって、甲2発明のRSmの範囲を30μm超75μm以下とすることが容易とはいえない。さらに、他の甲号証にも、RSmの範囲を30μm超75μm以下とする動機付けとなるような記載は見られない。 申立人は、申立書114頁下10行~下8行において、RSmはSa及びθaに依存することから、甲2発明のSa及びθaが本件訂正発明1の範囲を満たせば、RSmも本件訂正発明1の範囲を満たす蓋然性が極めて高いとの趣旨の主張をしているが、前記したとおり、甲2発明のSa及びθaが本件訂正発明1の範囲を満たすかどうかは定かでないし、また、RSmとSaとθaの三者の間に、Saとθaの値が一致すればRSmの値も一致するというような関係があるわけでもないから、甲2発明のRSm、Sa及びθaの値が、本件訂正発明1で特定される範囲を満たすとはいえない。 また、申立人は、申立書114頁下3行~115頁2行において、甲1の比較例2、甲3の試験4に加え、甲8の表2の比較例4には、Smが66.7、Saが1.06、θaが4.36の凹凸構造が示されているから、本件訂正発明1で特定されるRSm、Sa及びθaの値の範囲は周知慣用の技術にすぎないとの趣旨の主張をしているが、甲1発明の比較例2はRSm、Saが本件訂正発明1の範囲を満たすか不明であり、甲3の試験4はSa、θaが本件訂正発明1の範囲を満たすか不明である。また、甲8の比較例4は、ギラツキや白ボケが×の比較例であって、そもそもしわ状の凹凸構造かどうかも不明なものであるから、甲2発明の硬化膜の性状として採用する動機付けがない。 そうすると、本件訂正発明1は、甲2発明及び他の甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件訂正発明2~6 本件訂正発明2~6は、本訂正件発明1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、前記(2)の相違点に係る特定事項を全て含むものである。 そうすると、本件訂正発明2~6は、前記(2)と同じ理由により、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 取消理由で通知しなかった理由についての当審の判断 1 申立理由1(新規事項) (1)実施例11、比較例2を削除する補正 申立人は、本件明細書の「実施例11」、「比較例2」を削除する補正は、意に沿わない実験結果を合理的な理由なく削除し、これにより、意に沿った作用効果や技術的意義を主張するものであるから、新たな技術的意義を追加するものであるとの主張をしている。 しかしながら、当該補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」ともいう。)に記載されていた実施例や比較例の中から、「実施例11」に関係する記載と、「多官能不飽和化合物(A)に該当しない活性エネルギー線硬化性の化合物(B)」として挙げられた「(B-2)」とそれに対応する「比較例2」に関係する記載を削除するものであって、これらの補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、これらの補正がされることにより、新たな技術事項が生じるものではない。 したがって、実施例11、比較例2を削除する補正は、新規事項の追加に該当しない。 (2)平均長さ(Rsm)の下限を「30μm超」とする補正 申立人は、本件特許の請求項1の「平均長さ(RSm)」の範囲が「1~75μm」であったものを「30μm超75μm以下」とする補正は、本件明細書にその根拠となる数値(30μm)の記載がなく、本件明細書の【0009】で最も好ましいとされている範囲(5~25μm)を権利範囲から除外するものであるから、新規事項の追加に該当するとの趣旨の主張をしている。 しかしながら、RSmの好ましい範囲について、本件明細書の【0009】には「・・・RSmの好ましい範囲は2~70μm、さらに好ましくは3~60μm、特に好ましくは4~40μm、最も好ましくは5~25μmの範囲である。・・・」と記載されるように、請求項1の「30μm超75μm以下」は、本件明細書において好ましいとされる範囲であって、本件明細書の実施例(【0098】の表2及び【0099】の表3参照。)においても、実施例1~5、8~10において、30.5~71.2μmの例が示されている。 また、当該補正は、審査段階で提示された引用文献1(特開2020-111715号公報(甲1と同じ))の【0007】に「・・・本発明の硬化物の凹凸周期(粗さ曲線要素の平均長さ)RSmは0.5μm以上30μm以下が好ましく・・・」と記載されていたため、RSmの範囲を「30μm超」に補正したにすぎず、それにより、新たな技術事項が生じるものではない。 したがって、平均長さ(RSm)の下限を「30μm超」とする補正は、新規事項の追加に該当しない。 2 申立理由2(明確性要件) 申立人は、明確性要件について、請求項1は、硬化膜の表面の凹凸構造の状態を、「前記活性エネルギー線硬化性組成物は・・化合物(A3)であり」との記載により、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの方式(以下「PBP」という。)で規定する一方で、「表面が凹凸構造を有しており・・・1.5~60°である硬化膜。」との記載でも構造を直接的に規定しているが、直接的な規定により硬化膜の表面の凹凸構造の状態を特定できる以上、凹凸構造の状態をプロダクト・バイ・プロセス・クレームの方式で規定する合理的理由はなく、むしろ、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの方式による規定と、直接的な規定とで重畳的に規定することにより、両者が同じことを規定しているのか、仮に違うことを規定しているのであれば、具体的にどのような凹凸構造を規定しているのかを理解することができず、本件発明の技術的意味が不明確である、との趣旨の主張をしている。 しかしながら、PBPによる特定について、特許権者は「今回補正後の請求項1は、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されているものですが、「凹凸構造」の形成にあたっては、照射する紫外線の波長、硬化性組成物の含有成分によって凹凸構造が変化するため、「請求項1に記載の方法によって製造される凹凸構造」の具体的な構造又は特性を一義的に特定する文言を見出すことができません。また、硬化膜の表面形状の解析技術としては、Rsm、Ra、Sa、θa等を観測する手法が挙げられますが、それらの手法だけでは「請求項1に記載の方法によって製造される凹凸構造」の具体的な構造又は特性までは特定できないことから、出願時においてその構造又は特定を直接特定する手法はありませんでした。このように、「請求項1に記載の方法によって製造される凹凸構造」に関し、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することには、不可能又はおよそ非実際的である事情が存在すると思料します。」と主張している(審判請求書を補正対象とする令和6年4月23日提出の手続補正書の「3.4.その他」の「(特許法第36条第6項第2号について)」参照。)から、この点において、請求項1の該当する記載は、不明確とはいえない。 また、パラメータによる特定は、その測定方法や数値範囲が明確であるから、この点において、請求項1の該当する記載は明確である。 さらに、請求項1におけるPBPによる特定とパラメータによる特定の関係について、PBPで特定される製法で得られた硬化膜は、構造のパラメータを必ず満たすという関係にあるわけではなく、PBPによる硬化膜の製法の特定と、硬化膜の構造をパラメータにより直接的に規定する特定とは、請求項1の「硬化膜」を、それぞれ異なる側面から特定するものであり、両者の間に不整合はない。 したがって、本件特許の請求項1の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確とはいえない。 請求項1を引用する請求項2~6の記載も同様に不明確とはいえない。 3 申立理由3の「ア」(サポート要件) 申立人は、本件はパラメータ発明であるから、パラメータを満たせば課題を解決できると認識できるように記載されていることを要するが、表3の実施例をみても、RSmの下限値、Saの範囲の上限値及び下限値、θaの範囲の上限値、粘度の範囲の上限値、二重結合量の数値範囲、化合物(A)の含有割合の数値範囲についてその臨界的意義が不明であり、これらの特定と得られる効果との関係の技術的な意味が、当業者に理解できる程度に具体例を開示して記載されているとはいえない、との趣旨の主張をしている。 しかしながら、本件明細書の実施例(【0098】の表2及び【0099】の表3参照。)には、2官能の多官能不飽和化合物(A2)と3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)を併用する点以外は、本件訂正発明1の発明特定事項を充足する実施例1~5、8~10が所望の性能を発揮し、本件特許における発明の課題を解決することが示されており、(A2)と(A3)を併用する点については、前記第5の2で検討したとおり、(A2)又は(A3)を単独で用いた実施例1~5、8~10に示された結果から、(A2)と(A3)を併用した場合にも前記課題を解決できることを理解できる。そして、本件訂正発明1で特定された範囲のうち、実施例1~5、8~10で確認された範囲以外について、上記課題を解決できないといえる具体的な理由もない。 そうすると、本件訂正発明1は、サポート要件を満たさないものとはいえない。 また、本件訂正発明1を引用する形式で特定された本件訂正発明2~6についても同様に、本件特許における発明の課題を解決することを理解できるから、サポート要件を満たさないものとはいえない。 4 申立理由4(実施可能要件) 申立人は、本件発明は、RSm、Sa、θaの値の範囲を規定しているところ、具体的にどのように調整すれば、これらのRSm、Sa、θaの値を全て充足するように調整できるのか、その具体的方法が記載されておらず、実施例では、これらを充足しているものの、その具体的な調整方法については記載されておらず、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとは認められない、との趣旨の主張をしている。 しかしながら、本件明細書の実施例(【0098】の表2及び【0099】の表3参照。)には、2官能の多官能不飽和化合物(A2)と3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)を併用する点以外は、本件訂正発明1のPBPによる硬化膜の製法の特定と、硬化膜の構造をパラメータにより直接的に規定する特定の双方の発明特定事項を充足する実施例1~5、8~10の硬化膜を製造したことが示されている。 そして、前記実施例1~5、8~10の具体的な製造方法として、本件明細書の【0094】には「ポリエステルフィルムのプライマー層上に、下記表2に示す塗布液を塗布し、70℃で1分間乾燥し、キセノン(波長172nm)によるエキシマ光(半値幅14nm)を照射量15mJ/cm2、照度5mW/cm2(ウシオ電機社製 キセノンエキシマ172nm光照射機、ランプユニット型式:SUS05(ランプハウス型式:H0011、点灯電源型式:B0005)、窒素フロー(酸素濃度1%以下))で表1の塗布液からなる塗膜に照射し、さらに空気雰囲気中にて高圧水銀灯で積算光量400mJ/cm2、照度200mW/cm2(アイグラフィックス社製 高出力UV装置(型式:US5-X1802-X1202)のUVコンベア)にて紫外線を照射し、膜厚(乾燥後)が5μmの硬化膜を有する積層体を得た。」と記載され、具体的な調整方法が記載されていないものともいえない。 そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえない。 5 申立理由5(甲1を主引例とした進歩性) (1)甲1に記載された発明 甲1(前記第4の4(1)参照。)の【0046】の【表1】の「実施例4」に着目し、その組成や製造方法について、同【0029】、【0035】、【0036】、【0038】及び【0041】の記載を参酌すれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 (甲1発明) 「紫外線活性基を有する重合体AとしてA-1を固形分として2.5質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA、E型粘度計で測定した粘度6850mPa・s)を固形分として60.0質量部とペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製 商品名:V#300、E型粘度計で測定した粘度500mPa・s)を固形分として40.0質量部、有機溶剤Cとして、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)105.6質量部、メチルエチルケトン(MEK)45.3質量部を添加して硬化性重合体組成物の塗布液を調製し、 当該硬化性重合体組成物の塗布液を、PETフィルムにバーコーターで塗布し、乾燥を行うことで溶剤を揮発させたあと、高圧水銀灯を用いて空気下、波長300~390nmの積算光量が250mJ/cm2となるように紫外線照射を行って得た硬化物であって、 当該硬化物は、硬化後の表面形状がしわ状であり、Rsmが10.13μm、Raが0.51μm、Rzが1.82μm、θaが15.19°であり、 A-1は、重量平均分子量10700、ガラス転移温度95℃、固形分40%の紫外線活性基を有する重合体である、 硬化物。」 (2)本件訂正発明1 本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「硬化物」は、「波長300~390nmの・・・紫外線照射」で得られたものであるから、本件訂正発明1の「活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線である真空紫外線を照射してなる硬化膜」と、「活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射してなる硬化膜」である点で共通する。 また、甲1発明の「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA、E型粘度計で測定した粘度6850mPa・s(当審注:測定温度不明))」は、本件明細書の【0090】に「(B-1)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製 KAYARAD DPHA)」と記載されたものと同一であって、同【0091】の【表1】によれば、そのE型粘度計で測定した25℃における粘度は7320mPa・sであり、二重結合量は10.3mmol/gである。 同様に、甲1発明の「ペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製 商品名:V#300、E型粘度計で測定した粘度500mPa・s(当審注:測定温度不明))」は、本件明細書の【0090】に「(A3-5)ペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製 V#300」と記載されたものと同一であって、同【0091】の【表1】によれば、そのE型粘度計で測定した25℃における粘度は551mPa・sであり、二重結合量は11.4mmol/gである。 そうすると、甲1発明における粘度が2~7000mPa・s、二重結合量が4~15mmol/gの多官能不飽和化合物は、3官能の「ペンタエリスリトールトリアクリレート」のみであって、その不揮発分に対する重量%は、40/(2.5+60+40)×100≒39.0重量%であるから、甲1発明は、本件訂正発明1の「前記活性エネルギー線硬化性組成物は、E型粘度計で測定した25℃における粘度が2~7000mPa・sである多官能不飽和化合物(A)を不揮発分に対して30質量%以上含み、前記多官能不飽和化合物(A)は、二重結合量が4.0~15.0mmol/gであり」を充足する。 甲1発明の不揮発分100質量部に対する有機溶剤の含有量は、(105.6+45.3)/(2.5+60+40)×100≒147.2質量部であるから、本件訂正発明1の「前記活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化性組成物中の不揮発分100質量部に対して10質量部以上1900質量部以下になるように有機溶剤を含み」を充足する。 甲1発明の「硬化後の表面形状がしわ状であり」「θaが10.40°であって」は、本件訂正発明1の「表面がしわ状の凹凸構造を有しており」「局部傾斜角度の平均値(θa)が1.5~60°である」に相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「 活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射してなる硬化膜であって、 前記活性エネルギー線硬化性組成物は、E型粘度計で測定した25℃における粘度が2~7000mPa・sである多官能不飽和化合物(A)を不揮発分に対して30質量%以上含み、 前記多官能不飽和化合物(A)は、二重結合量が4.0~15.0mmol/gであり、 前記活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化性組成物中の不揮発分100質量部に対して10質量部以上1900質量部以下になるように有機溶剤を含み、 表面がしわ状の凹凸構造を有しており、当該凹凸構造における、局部傾斜角度の平均値(θa)が1.5~60°である硬化膜。」 <相違点1-1> 本件訂正発明1は、「真空紫外線を照射してなる硬化膜」であるのに対し、甲1発明は、「紫外線照射を行って得た硬化物」である点。 <相違点1-2> 本件訂正発明1は、「多官能不飽和化合物(A)は2官能の多官能不飽和化合物(A2)と3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)」であるのに対し、甲1発明は、3官能の「ペンタエリスリトールトリアクリレート」を含むものの、2官能の多官能不飽和化合物を含まない点。 <相違点1-3> 本件訂正発明1は、「当該凹凸構造における、JIS B0601:2013に従う粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が30μm超75μm以下、ISO25178で定義される算術平均高さ(Sa)が0.2~10μm、局部傾斜角度の平均値(θa)が1.5~60°である」と特定されているのに対し、甲1発明は、硬化後の表面形状の「θaが15.19°」であるものの、Rsmは10.13μm、Raが0.51μmであり、Saの値は不明である点。 事案に鑑み、まず、相違点1-3について検討する。甲1発明の「Rsm」について、甲1の【0007】には「さらに本発明の硬化物の凹凸周期(粗さ曲線要素の平均長さ)Rsmは0.5μm以上30μm以下が好ましく・・・前記Rsmが30μmを超えると、本発明の硬化物を防眩性フィルムとして用いた場合に表面のぎらつきが問題となり・・・」と記載されている。 そして、甲1発明のRsmが10.13μmであるところ、これを30μm超75μm以下に変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。そして、この変更が容易でないことは、他の甲号証の記載によりかわるものではない。 申立人は、申立書75頁17行~20行において、等方性を有する面ではSa=Raであるところ、甲1の【表1】の実施例は本件訂正発明1の「算術平均高さ(Sa)が0.2~10μmを満たすとの趣旨の主張をしているが、甲1発明の凹凸構造は「しわ状」であって、等方性の凹凸構造ではないから、Sa=Raとはいえない。 また、申立人は、申立書78頁9行~12行において、甲1の【表1】の比較例2にはRSmが「55.45」で、本件訂正発明1の「30μm超75μm以下」を満たすものが示されているから、RSmの値は実質的な相違点ではないとの趣旨の主張をしているが、甲1発明の比較例2は「粒状」の凹凸構造であって、「しわ状」ではないから、比較例2の記載をもってRSmの値が実質的な相違点でないとはいえない。 してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明及び他の甲号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件訂正発明2~6 本件訂正発明2~6は、本訂正件発明1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、前記(2)の相違点に係る特定事項を全て含むものである。 そうすると、本件訂正発明2~6は、前記(2)と同じ理由により、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6 取消理由7(甲3を主引例とした進歩性) (1)甲3に記載された発明 甲3(前記第4の4(3)参照。)の[0054]の[表1]の「試験4」のニスの硬化物に着目し、その製造方法や構造について、同[0048]~[0053]、[0060]の[表3]の記載を参酌し、さらに、図1に、本発明による方法の実施例の顕微鏡図として、しわ状の凹凸構造が示されていることを考慮すれば、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。 (甲3発明) 「粘度が100mPa・s未満であるG2のニスを、PVC製床材上に、総ニス厚20μmで塗布し、塗布直後に395nm、2W/cm2で1~2秒間、LED紫外線を照射し、LED照射後、172nmのエキシマ光照射および水銀蒸気UVランプによる紫外線照射を順に行って得たニスの硬化物であって、 表面がしわ状の凹凸構造を有しており、Raが0.6062μmであり、Rzが5.2105μmであり、Rsmが40.9216μmである、 ニスの硬化物。」 (2)本件訂正発明1 本件訂正発明1と甲3発明を対比すると、甲3発明の「ニスの硬化物」は、「LED紫外線を照射し、LED照射後、172nmのエキシマ光照射および水銀蒸気UVランプによる紫外線照射を順に行って得た」ものであるから、本件訂正発明1の「活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線である真空紫外線を照射してなる硬化膜」に相当する。 甲3発明の「表面がしわ状の凹凸構造を有しており」、「Rsmが40.9216μmである」は、本件訂正発明1の「表面がしわ状の凹凸構造を有しており」「粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が30μm超75μm以下」に相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線である真空紫外線を照射してなる硬化膜であって、 表面がしわ状の凹凸構造を有しており、当該凹凸構造における、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が30μm超75μm以下である硬化膜。」 <相違点3-1> 本件訂正発明1は、「前記活性エネルギー線硬化性組成物は、E型粘度計で測定した25℃における粘度が2~7000mPa・sである多官能不飽和化合物(A)を不揮発分に対して30質量%以上含み、前記多官能不飽和化合物(A)は、二重結合量が4.0~15.0mmol/gであり、前記多官能不飽和化合物(A)は2官能の多官能不飽和化合物(A2)と3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)であり、前記活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化性組成物中の不揮発分100質量部に対して10質量部以上1900質量部以下になるように有機溶剤を含」むのに対し、甲3発明は、「粘度が100mPa・s未満であるG2のニス」の組成が不明である点。 <相違点3-2> 本件訂正発明1は、「当該凹凸構造における、JISB0601:2013に従う粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が30μm超75μm以下、ISO25178で定義される算術平均高さ(Sa)が0.2~10μm、局部傾斜角度の平均値(θa)が1.5~60°である」と特定されているのに対し、甲3発明は、「Rsmが40.9216μm」であるものの、Saやθaの値は不明である点。 事案に鑑み、まず、相違点3-1について検討する。甲3発明の「G2のニス」について、甲3の[0038]には「ワニスは、1種以上のアクリレートモノマーと、ウレタンアクリレートおよび/またはポリエステルアクリレート性質の1種以上のオリゴマーとを含んでもよい。・・・」と記載されるものの、「G2のニス」の二重結合量(mmol/g)や官能基の数は不明であり、「G2のニス」の不揮発分に対して、特定の粘度かつ特定の二重結合量の化合物がどの程度含まれているかについては記載も示唆もされていない。 また、甲3には、甲3発明の「G2のニス」の組成を、本件訂正発明1で特定されるようなものとする動機付けとなるような記載や示唆はない。 そうすると、例えば甲2(前記第5の4参照。)に、本件訂正発明1の「活性エネルギー線硬化性組成物は、E型粘度計で測定した25℃における粘度が2~7000mPa・sである多官能不飽和化合物(A)を不揮発分に対して30質量%以上含み、前記多官能不飽和化合物(A)は、二重結合量が4.0~15.0mmol/gであり、前記多官能不飽和化合物(A)は2官能の多官能不飽和化合物(A2)と3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)である」に相当するような組成物が記載されているとしても、甲2は前記第5の4で検討したとおり、Rsmが本件訂正発明1とは異なる範囲が好ましいとする技術に関するものであるから、甲3発明の「G2のニス」として、甲2に記載されたような組成物を採用する動機付けはない。他の甲号証についても同様である。 申立人は、申立書134頁11行~22行において、甲3発明の「G2のニス」に含まれる多官能不飽和化合物の割合を30質量%以上とすることは、甲1や甲2の記載から見て周知慣用の技術であり、「G2のニス」全体の粘度が100mPa・s未満であるから、このニスの大部分を占めると考えられる多官能不飽和化合物の粘度は本件訂正発明1の「2~7000Pa・s」を満たす蓋然性が高いとの趣旨の主張をしているが、本件訂正発明1の「多官能不飽和化合物」は、「二重結合量が4.0~15.0mmol/g」かつ「2官能の多官能不飽和化合物(A2)と3官能以上の多官能不飽和化合物(A3)」であるところ、そのような特定の範囲の二重結合量や官能基量を有する多官能不飽和化合物の割合を30重量%以上とすることが、周知慣用技術であるとはいえない。 また、申立人は、申立書136頁1行~6行において、不飽和度と粘度は相関があるから、甲3発明は、粘度が本件訂正発明1の範囲を満たしていることにより、不飽和度も本件訂正発明1の「二重結合量が4.0~15.0mmol/g」を満たしている蓋然性が高いとの趣旨の主張をしているが、粘度は不飽和度のみに相関するものではなく、不飽和度以上に、分子量や側鎖の構造等の影響を大きく受けるものであるから、甲3発明の粘度が本件訂正発明1の範囲を満たしているからといって、不飽和度も本件訂正発明1の「二重結合量が4.0~15.0mmol/g」の範囲を満たしているとはいえない。 してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明及び他の甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件訂正発明2~6 本件訂正発明2~6は、本訂正件発明1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、前記(2)の相違点に係る特定事項を全て含むものである。 そうすると、本件訂正発明2~6は、前記(2)と同じ理由により、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第7 むすび 以上のとおり、本件訂正発明1~6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことができない。 また他に取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700431

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