特許異議申立
2022-700487
インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法、インクセット
- 審判番号
- 2022-700487
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-188445
- 登録番号
- 6977752
- 請求日
- 2022年06月07日
- 審決日
- 2024年01月10日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】セイコーエプソン株式会社
- 【権利者代理人】布施 行夫
- 【権利者代理人】大渕 美千栄
- 【権利者代理人】川▲崎▼ 通
- 【権利者代理人】松本 充史
- 【権利者代理人】仲井 智至
- 【権利者代理人】松岡 宏紀
- 【異議申立人】目黒 茂
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 亀ヶ谷 明久
- 分類
- P1651.121-ZB (C09D) / P1651.537-ZB (C09D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項1号特許法113条2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6977752号発明「インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法、インクセット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6977752号の請求項1~8に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6977752号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成27年2月24日の出願である特願2015-33764号の一部を令和元年10月15日に新たな特許出願としたものであって、令和3年11月15日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年12月8日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~8に係る特許に対し、令和4年6月7日に特許異議申立人 目黒 茂(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年8月17日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年10月24日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。当審は、特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年11月2日付けで特許異議申立人に通知し、それに対して、特許異議申立人は、その指定期間内である同年12月7日に意見書を提出し、当審は、令和5年1月16日付けで訂正拒絶理由を通知し、それに対して、特許権者は何ら応答しなかった。当審は、同年3月22日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年5月25日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年同月31日付けで特許異議申立人に通知し、それに対して、特許異議申立人は、その指定期間内である同年7月4日に意見書を提出し、当審は、同年9月27日付けで訂正拒絶理由を通知し、それに対して、特許権者は、その指定期間内である同年10月31日に意見書を提出した。
なお、令和4年10月24日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否についての判断
1.本件訂正
令和5年5月25日の訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)による訂正の「請求の趣旨」は『特許第6977752号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。』というものであり、その内容は、訂正事項1及び2からなるものであり、以下の訂正事項1を含む。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が140℃以下である溶剤の少なくとも1種と、を含み、」との記載を、「一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が140℃以下70℃超である溶剤の少なくとも1種と、を含み、」との記載へ変更し、「前記一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が140℃以下である溶剤の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対して、45.5質量%以上90質量%以下であり、」との記載を、「一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が140℃以下である溶剤の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対して、45.5質量%以上90質量%以下であり、」との記載へ変更し、「前記引火点が140℃以下である溶剤が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及び、トリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上である」との記載を、「前記引火点が140℃以下70℃超である溶剤が、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及び、トリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上である」との記載に変更する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~8も同様に訂正する)。
(2)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~8は、請求項1を直接または間接的に引用するものであり、訂正事項1は請求項1~8からなる一群の請求項ごとにされたものといえる。
2.訂正の適否
(1)令和5年5月25日提出の訂正請求書における特許権者の主張
特許権者は、令和5年5月25日提出の訂正請求書の第4~6ページにおいて、「訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである」、「訂正事項1は、訂正後の請求項1における一般式(1)で表される溶剤の引火点や化合物の種類を更に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである」と主張する。
(2)当審の判断
訂正前の請求項1において「一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が140℃以下である溶剤の少なくとも1種・・・を含み、前記一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が140℃以下である溶剤の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対して、45.5質量%以上90質量%以下であり・・・前記引火点が140℃以下である溶剤が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及び、トリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上である」と規定されているから、「引火点が140℃以下である溶剤」は、「ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及び、トリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上」に特定されている。
しかし、訂正後の請求項1において、「引火点が140℃以下70℃超である溶剤」が、「ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及び、トリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上」に特定されるものの、「一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が140℃以下である溶剤の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対して、45.5質量%以上90質量%以下であり、」における「引火点が140℃以下である溶剤」は、訂正前の「前記」という文言が削除されたことによって、「ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及び、トリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上」と特定されておらず、訂正前の「ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及び、トリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上」にも特定されていないから、例えば、引火点が65℃のジプロピレングリコールジメチルエーテルのような、一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が70℃以下である溶剤としてあらゆるものを含むものとなるから、訂正前の請求項1にかかる発明の技術的範囲に属さない、「ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及び、トリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上」以外の一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が70℃以下である溶剤を含むものが、訂正後の請求項1にかかる発明の技術的範囲に属することとなる。
そうすると、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるとはいえない。
(3)令和5年10月31日提出の意見書における訂正案及び再度の訂正の機会の求めについて
特許権者は令和5年10月31日提出の意見書において訂正案と共に再度の訂正の機会を求める旨が記載されているが、特許権者には令和4年10月24日及び令和5年5月25日の2回訂正の機会があった以上、合議体がこれ以上訂正の機会を特許権者に与えないことに手続的に何ら不合理な点はない。
3.まとめ
以上総括するに、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものではないから、その余の事項について検討するまでもなく、訂正後の請求項1~8に係る一群の請求項に係る訂正を認めることができない。
第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められないので、本件特許の請求項1~8に係る発明は、その特許権の設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明8」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。
「【請求項1】
一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が140℃以下である溶剤の少なくとも1種と、環状エステル化合物と、顔料としてC.I.ピグメントオレンジ-43(PO-43)と、樹脂とを含み、前記一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が140℃以下である溶剤の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対して、45.5質量%以上90質量%以下であり、前記環状エステル化合物の含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、5.0質量%以上40.0質量%以下であり、前記樹脂の含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、1質量%以上10質量%以下であり、
前記引火点が140℃以下である溶剤が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及び、トリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上である、
非水系インクジェットインク組成物。
R1O-(R2O)m-R3 ・・・(1)
[一般式(1)中、R1及びR3は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表し、R2は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2~6の整数を表す。ただし、R1及びR3の少なくとも何れかは炭素数1以上5以下のアルキル基である。]
【請求項2】
請求項1において、
前記一般式(1)で表される化合物の合計含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、45.5質量%以上95質量%以下である、非水系インクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が70℃以下である溶剤を含む、請求項1又は2に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される溶剤であって、R1及びR3の一方が水素であるグリコールモノエーテルを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項5】
記録媒体へインクジェット法によりインク組成物を付着させる工程の際の記録媒体表面温度が35℃以上である記録方法に用いるものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項6】
塩化ビニル系記録媒体への記録に用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の非水系インクジェットインク組成物。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の前記非水系インクジェットインク組成物と、それぞれが前記一般式(1)で表される溶剤であって引火点が140℃以下である溶剤の少なくとも1種と顔料とを含む、非水系シアンインクジェットインク組成物と、非水系マゼンタインクジェットインク組成物と、非水系イエローインクジェットインク組成物と、を少なくとも備えるインクセット。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物または請求項7のインクセットを用いて、記録媒体にインクジェット法により記録を行う、インクジェット記録方法。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
特許権の設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~8に係る特許に対して、当審が令和4年8月17日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりであり、当審が令和5年3月22日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨も同じである。
1 理由1(進歩性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証、甲第3号証及び甲第10号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲第2号証:特開2014-237803号公報
甲第3号証:橋本勲 Organic Pigments Handbook 有機顔料ハンドブック、カラーオフィス、2006年5月 初版発行、p.248、499-500
甲第10号証:特許2009-227812号公報
2 理由2(サポート要件)本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・請求項1~8について
本件特許明細書には、本件特許発明1が解決しようとする課題は、「暖色系の色再現領域が広く、かつ耐候性、発色性、画質の優れた画像を形成できるインクジェットインク組成物を提供することにある」と記載されている(【0008】)。
ここで、本件特許明細書の段落【0005】~【0007】には、「しかしながら、非水系インクジェットインク組成物を、サイン用途に使用する場合には、記録物の耐候性が不十分となる場合があった。すなわち、サイン用途の記録物は、雨や日光等にさらされる屋外環境で使用されることが多く、屋内での使用よりも高い耐候性が求められている。発明者らによると、インクのうちでも、オレンジ色系の顔料を含むインクを使用することで暖色系の色再現領域を広げようとする際に、耐候性にも優れたインクとすることが重要であること、暖色系の色再現領域の特に広いインクとすることが重要であることがわかってきた。また、インクの発色性がよいことも色再現領域を広げる機能を十分発揮するために重要であることが分かってきた。」「インクジェットインク組成物の耐候性を向上させるための手段の一つとしては、耐候性の高い色材を用いることが考えられる。しかし、インクジェット記録においては、インク組成物、記録装置、記録媒体などの複数の構成のそれぞれに対して多くの性能が要求され、その上、各構成間の高度なバランスが要求される。そのため、単に色材に耐候性の高いものを選択するだけではインクジェットインク組成物の他の性能が不十分となることが懸念される。さらに、記録物の画質を優れたものとするために、非水系インク組成物に溶剤として比較的沸点の低い溶剤を含有させた場合、インクの発色性が劣ってしまうことがあった。」「発明者らは、インクジェットインク組成物の総合的な性能を維持しつつ暖色系色再現領域を広げ、記録物の画質、耐候性、発色性、向上させるために、特定の顔料種と溶剤の組み合わせが重要であることを見出し本発明を為すに至った。」と記載されていることに鑑みると、実際には、本件特許発明1が解決しようとする課題は、「暖色系の色再現領域が広く、かつ耐候性、発色性、画質がいずれも優れた画像を形成できるインクジェットインク組成物を提供すること」であると考えられる。
しかしながら、本件特許発明1の範囲に属する組成物1~12を用いた記録例で、耐候性、発色性、画質(なお、画質に関係する評価項目は、【0047】及び【0101】の記載に鑑みるに、光沢性及び凝集ムラである)の【表2】の評価項目において評価結果が1~5のうちのいくつ以上で上記課題を解決できたことを示すのか不明である。
したがって、そのような評価結果を示す組成物1~12から、本件特許発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
本件特許発明2~8についても同様である。
第5 前記第4における1 理由1(進歩性)についての判断
1 甲号証について
前記第4 1のとおり。
2 甲号証の記載について
(1)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
2a「【請求項1】
色材と、環状エステルと、引火点が70℃以下であって下記一般式(I)で表される第1有機溶剤と、引火点が90℃以上の第2有機溶剤と、を含有し、
前記環状エステルの含有量a(質量%)が、6質量%以上30質量%以下であり、
前記環状エステルの含有量a(質量%)と、前記第1有機溶剤の含有量b(質量%)と、前記第2有機溶剤の含有量c(質量%)とが、下記式(1)および(2)の関係を満たす、インクジェット記録用インク組成物。
R1-O-(R2-O)2-R3 ・・・(I)
(上記一般式(I)において、R1は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R2はエチレン基またはプロピレン基を表し、R3は水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)
a<b ・・・(1)
c<(a+b)/2 ・・・(2)」
2b「【0031】
本実施形態のインク組成物を、オレンジまたはイエローのインクとする場合には、配合される色材、特に顔料として、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155およびC.I.ピグメントイエロー180等を例示することができ、これらは単独または組み合わせて用いることができる。
・・・
【0045】
引火点が70℃以下である一般式(I)で表される化合物の具体例としては、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(64℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(56℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(65℃)等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。なお、括弧内の数値は引火点を示す。」
2c「【0106】
3.実施例
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに説明するが、本発明は以下の例によってなんら限定されるものではない。
【0107】
3.1.インク組成物の調製
各実施例および各比較例のインク組成物を、表1に示す配合で調製した。
【0108】
表1に記載された成分において、顔料は、ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン顔料:クラリアント社製)を用いた。
【0109】
表1に記載の化合物のうち、環状エステルとしては、γ-ブチロラクトン(関東化学株式会社製)を用いた。
【0110】
表1に記載の化合物のうち、第1有機溶剤としては、DEGMEE(ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、商品名「ハイソルブEDM」、東邦化学工業株式会社製)、DEGdME(ジエチレングリコールジメチルエーテル、商品名「ジエチレングリコールジメチルエーテル」、東京化成工業株式会社製)を用いた。
【0111】
表1に記載の化合物のうち、第2有機溶剤としては、DEGBME(ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、商品名「ハイソルブBDM」、東邦化学工業株式会社製)、TetraEGmBE(テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、商品名「ブチセノール40」、KHネオケム株式会社製)を用いた。
【0112】
表1に記載の化合物のうち、その他の溶剤としては、DEGDEE(ジエチレングリコールジエチルエーテル、商品名「ジエチレングリコールジエチルエーテル」、東京化成工業株式会社製、引火点71℃)を用いた。
【0113】
表1中、ソルスパース37500(商品名、LUBRIZOL社製)は、分散剤である。パラペットG-1000P(株式会社クラレ製)は、アクリル樹脂(定着樹脂)である。表1中、BYK340(ビックケミー・ジャパン株式会社製)は、フッ素系界面活性剤(滑剤)である。
・・・
【0116】
また、各評価試験では、プラテン及びプラテンより下流の記録媒体排出部にて、記録中及び記録後1分間、記録媒体を45℃で加熱した。
【0117】
3.2.1.印刷ムラ
上記プリンターを用いて、実施例および比較例の各インク組成物を塩ビバナーシート(3M社製、型番IJ51(ポリ塩化ビニル))上に100%濃度で記録解像度720×720dpiのベタ印刷をした後、60分間、25℃65%RH(相対湿度)にて乾燥させ
た。その後、目視および光学顕微鏡を用いて印刷面を観察し、印刷ムラの少ないものを6点として、1点まで6水準で評価し、その結果を表1に記載した。
【0118】
3.2.2.光沢
上記プリンターを用いて、実施例および比較例の各インク組成物を光沢ポリ塩化ビニルシート(ローランドDG社、型番SV-G-1270G)上に記録解像度720×720dpiの100%濃度でベタ印刷をした後、25℃65%RH(相対湿度)にて1日間、乾燥させて各例の記録物を作成した。各例のベタ印刷部の20°光沢をMULTI GLOSS 268(コニカミノルタ株式会社製)にて測定し、光沢度が26未満を1点、26以上、28未満を2点とし、光沢度を2毎に刻んで光沢を点数で評価し、その結果を表1に記載した。光沢が優れる場合、特にフィルムなどの光沢性を有する記録媒体において、記録物に記録媒体自身と同様の光沢感を得ることができる利点がある。
【0119】
3.2.3.ドットサイズ
上記プリンターを用いて実施例および比較例の各インク組成物を、塩ビバナーシート(3M社製、型番IJ51(ポリ塩化ビニル))上に記録解像度720×720dpiの30%濃度で1辺3cmの正方形を印刷した後、25℃65%RH(相対湿度)にて60分間乾燥させた。その後、光学顕微鏡を用いて印刷部分のドットサイズを観察してドットの直径を10μm毎に分類した。なお、にじみが大きい場合には、ドット形状が円状になっておらず、測定できなかった。また、にじみが小さくなることで真円に近くなっていたが、ドットサイズ(直径)は小さくなっていた。ドットサイズが20μm以下のものを1点として、20μmを超え30μm以下のものを2点、というように10μm毎にランク分けして、各例の点数を算出し、その結果を表1に記載した。ドットサイズが良好であるということは、インクの記録媒体上での濡れ拡がり性が良いということであり、記録媒体をインクで覆うことができることにより記録物の発色性が良くなるなどの利点がある。
【0120】
3.2.4.耐擦性
上記プリンターを用いて、実施例および比較例の各インク組成物を、光沢ポリ塩化ビニルシート(ローランドDG社、型番SV-G-1270G)上に記録解像度720×720dpiの100%濃度で印刷した後、25℃65%RH(相対湿度)にて1日間、乾燥させて各例の記録物を作成した。次に、JIS L 0849に基づいて、I型試験機にて乾式試験を行った。その後、試験綿布のODをスペクトロリーノ(グレタグマクベス社製)にて測定し、0.4以上を1点、0.4より小さく0.35以上のものを2点と、0.05毎に色移りに関して点数を付け、その結果を表1に記載した。
【0121】
3.2.5.表面乾燥性
セイコーエプソン株式会社製プリンター「SC-S30650」を用いて、実施例および比較例の各インク組成物を、光沢ポリ塩化ビニルシート(ローランドDG社、型番SV-G-1270G)上に記録解像度720×720dpiの100%濃度で印刷し、25℃65%RH(相対湿度)にて5分間乾燥させた。次に、巻き取り装置を用いて巻き取った後の印刷面のスリ痕を観察した。観察はレーザー顕微鏡(キーエンス株式会社製、形式VK-8700 Generation2)にて表面粗さを測定することで、スリ痕のある面積の割合を算出した。スリ痕面積が印刷領域の10%以下のものを5点として、20%以下10%より多いものを4点、というように10%毎にランク分けした。6点はスリ痕面積がないものとした。その結果を表1に記載した。
【0122】
3.3.評価結果
以上の評価試験の結果を表1に示す。
【0123】
【表1】
[図:0001407789000001.jpg]
」
(2)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
3a「
[図:0001407789000002.jpg]
[図:0001407789000003.jpg]
」(第499ページ第14行~第500ページ第17行)
(3)甲第10号証(以下、「甲10」という。)
10a「【請求項1】
少なくとも第1の油性インク、第2の油性インクおよび第3の油性インクがそれぞれ色材を含有すると共に組み合わされる油性インクセットであり、かつ、該第1の油性インク、第2の油性インクおよび第3の油性インクがいずれも波長領域400~700nmの範囲において記録媒体上での反射率が80%から5%に変わる波長領域を有する油性インクセットであって、上記第1の油性インクにおける反射率80%から5%に変わる波長領域において、上記第2の油性インクにおける反射率が第1の油性インクの反射率よりも連続して高く、且つ、第2の油性インクにおける反射率80%から5%に変わる波長領域において、第3の油性インクにおける反射率が前記第2の油性インクの反射率よりも連続して高く、さらに、前記第1の油性インク、第2の油性インクおよび第3の油性インクにおける色材がすべて異なることを特徴とする油性インクセット。」
10b「【0001】
本発明は、インクジェット記録用油性インクセットに関し、特に、ポリ塩化ビニル原反上での色再現性、色彩度の高い画像を得ることができる油性インクセットに関する。」
10c「【0074】
以下、本発明の実施例及び比較例を示すが、これらの実施例は本発明を明確にするためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。尚、実施例及び比較例中の部は特に断らない限り、質量部とする。
【0075】
なお、分析には、樹脂溶液から樹脂のみをヘキサンにて精製したサンプルを使用した。重量平均分子量は、東ソー(株)製の「HLC-8220GPC」にて、ポリスチレンを標準としたゲル浸透クロマトグラフ(GPC)により測定を行った。また、ガラス転移温度(Tg)は、島津製作所(株)製の示差走査熱量計「DSC-50」にて測定した。平均粒径(D50)は、日機装(株)製の粒度分析計マイクロトラックUPA150を使用して測定した。
【0076】
(重合体1の合成)
100℃に保たれたジエチレングリコールジエチルエーテル300g中に、メタクリル酸メチル200gとt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート3.6gを1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後に冷却し、無色透明のポリメタクリル酸メチルの重合体1溶液を得た。Tgは105℃であった。重合体1の重量平均分子量は30,000であった。熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計を使用して分析したところ、ジエチレングリコールジエチルエーテルとメタクリル酸メチルが結合した分子が検出された。
・・・
【0078】
(インク1の調製)
溶媒として下記の組成とした。
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・ 60.0質量部
・ テトラエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 15.0質量部
・ γ-ブチロラクトン ・・・ 15.0質量部。
【0079】
次に、上記組成の溶媒の一部に、ピグメントイエロー150(ランクセス社製、YELLOW PIGMENT E4GN-GT)を3.0質量部と分散剤としてルブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散した。得られる顔料粒子の平均粒径は5μm以下であった。更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、顔料分散液を得た。この本分散で得られる顔料粒子の平均粒径は250nmであった。
【0080】
得られた顔料分散液を1,500rpmで攪拌しながら、バインダー樹脂として上記で合成した重合体1を5.0質量部と、上記で得た混合溶媒の残部とを添加して、油性インク1(20℃での粘度4.3mPa・s)を調製した。
【0081】
(インク2の調製)
溶媒として下記の組成とした。
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・ 60.0質量部
・ テトラエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 15.0質量部
・ γ-バレロラクトン ・・・ 15.0質量部。
【0082】
次に、上記組成の溶媒の一部に、ピグメントイエロー180(クラリアント社製、NOVOPERM YELLOW P-HG)を3.0質量部と分散剤としてルーブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散した。得られる顔料粒子の平均粒径は5μm以下であった。更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、顔料分散液を得た。この本分散で得られる顔料粒子の平均粒径は250nmであった。
【0083】
得られた顔料分散液を1,500rpmで攪拌しながら、バインダー樹脂として上記で合成した重合体1を4.0質量部とダウケミカル社「VAGC」(ヒドロキシアルキルアクリレート変性塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、Tg65℃、重量平均分子量24,000)を1.0質量部、上記で得た混合溶媒の残部とを添加して油性インク2(20℃での粘度4.7mPa・s)を調製した。
【0084】
(インク3の調製)
溶媒として下記の組成とした。
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・ 51.0質量部
・ テトラエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 25.0質量部
・ γ-ブチロラクトン ・・・ 15.0質量部。
【0085】
次に、上記組成の溶媒の一部にピグメントオレンジ64(チバスペシャリティーケミカルズ社製、CROMOPHTAL(R) ORANGE GP)を3.0質量部と分散剤として味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」を1.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散した。得られる顔料粒子の平均粒径は5μm以下であった。更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、顔料分散液を得た。この本分散で得られる顔料粒子の平均粒径は250nmであった。
【0086】
得られた顔料分散液を1,500rpmで攪拌しながら、バインダー樹脂として上記で合成した重合体1を5.0質量部と、上記で得た混合溶媒の残部とを添加して、油性インク3(20℃での粘度4.3mPa・s)を調製した。
【0087】
(インク4の調製)
溶媒として下記の組成とした。
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・ 48.0質量部
・ テトラエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 18.0質量部
・ テトラエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・ 5.0質量部
・ γ-バレロラクトン ・・・ 20.0質量部。
【0088】
次に、上記組成の溶媒の一部に、ピグメントオレンジ71(チバスペシャリティーケミカルズ社製、CROMOPHTAL(R) DPP ORANGE TR)を3.0質量部と分散剤としてルーブリゾール社製「ソルスパース32000」を1.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散した。得られる顔料粒子の平均粒径は5μm以下であっ
た。更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、顔料分散液を得た。この本分散で得られる顔料粒子の平均粒径は250nmであった。
【0089】
得られた顔料分散液を1,500rpmで攪拌しながら、バインダー樹脂としてロームアンドハース社の「パラロイドB99N」(メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート共重合体)Tg82℃、重量平均分子量15,000)を4.0質量部とダウケミカル社「VAGC」(ヒドロキシアルキルアクリレート変性塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、Tg65℃、重量平均分子量24,000)を1.0質量部、上記で得た混合溶媒の残部とを添加して油性インク4(20℃での粘度4.0mPa・s)を調製した。
【0090】
(インク5の調製)
溶媒として下記の組成とした。
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・ 55.0質量部
・ テトラエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 20.0質量部
・ γ-ブチロラクトン ・・・ 10.0質量部
・ γ-バレロラクトン ・・・ 5.0質量部。
【0091】
次に、上記組成の溶媒の一部に、ピグメントレッド254(チバスペシャリティーケミカルズ社製、Ciba(R) IRGAPHOR(R) RED BT-CF)を3.0質量部と分散剤としてルーブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散した。得られる顔料粒子の平均粒径は5μm以下であった。更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、顔料分散液を得た。この本分散で得られる顔料粒子の平均粒径は250nmであった。
【0092】
得られた顔料分散液を1,500rpmで攪拌しながら、バインダー樹脂としてロームアンドハース社の「パラロイドB60」(メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート共重合体)Tg75℃、重量平均分子量50,000)を5.0質量部、上記で得た混合溶媒の残部とを添加して油性インク5(20℃での粘度4.7mPa・s)を調製した。
【0093】
(インク6の調製)
溶媒として下記の組成とした。
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・ 48.0質量部
・ テトラエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 28.0質量部
・ γ-ブチロラクトン ・・・ 15.0質量部。
【0094】
次に、上記組成の溶媒の一部に、ピグメントレッド122(大日本インキ化学工業社製、FASTGEN SUPER MAGENTA RG)を3.0質量部と分散剤として味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」を1.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散した。得られる顔料粒子の平均粒径は5μm以下であった。更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、顔料分散液を得た。この本分散で得られる顔料粒子の平均粒径は250nmであった。
【0095】
得られた顔料分散液を1,500rpmで攪拌しながら、バインダー樹脂として上記で合成した重合体1を5.0質量部と、上記で得た混合溶媒の残部とを添加して、油性インク6(20℃での粘度4.2mPa・s)を調製した。
【0096】
(インク7の調製)
溶媒として下記の組成とした。
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・ 60.0質量部
・ テトラエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 10.0質量部
・ γ-ブチロラクトン ・・・ 20.0質量部。
【0097】
次に、上記組成の溶媒の一部に、ピグメントブルー15:4(大日精化社製、シアニンブルーCP-1)を3.0質量部と分散剤としてルーブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散した。得られる顔料粒子の平均粒径は5μm以下であった。更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、顔料分散液を得た。この本分散で得られる顔料粒子の平均粒径は250nmであった。
【0098】
得られた顔料分散液を1,500rpmで攪拌しながら、バインダー樹脂として上記で合成した重合体1を5.0質量部と、上記で得た混合溶媒の残部とを添加して、油性インク7(20℃での粘度4.1mPa・s)を調製した。
・・・
【0108】
(インク11の調製)
溶媒として下記の組成とした。
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・ 62.0質量部
・ テトラエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 10.0質量部
・ γ-ブチロラクトン ・・・ 18.0質量部。
【0109】
次に、上記組成の溶媒の一部に、ピグメントブラック7(三菱化学社製、CARBON BLACK MA-8)を3.0質量部と分散剤としてルーブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散した。得られる顔料粒子の平均粒径は5μm以下であった。更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、顔料分散液を得た。この本分散で得られる顔料粒子の平均粒径は250nmであった。
【0110】
得られた顔料分散液を1,500rpmで攪拌しながら、バインダー樹脂として上記で合成した重合体1を5.0質量部と、上記で得た混合溶媒の残部とを添加して、油性インク11(20℃での粘度4.3mPa・s)を調製した。
・・・
【0132】
(第1の油性インクセット)
下記表1に示す各油性インクを組合せて実施例1~6、比較例A、比較例1、2のインクセットとし、実施例1~6、比較例A、比較例1、2を用いて第1の油性インクセットについて説明する。
【0133】
【表1】
[図:0001407789000004.jpg]
【0134】
セイコーエプソン社製「4色インクジェットプリンター MJ8000C」に上記で得た各油性インクを充填し、軟質ポリ塩化ビニルシート(リンテック社製、LAGマウントP-223RW)上に印字し、印字された各インクにおける反射率スペクトル、L* 値、a* 値、b* 値、色相角H°を、グレタグ社製「GRETAG Spedtrolino」(D65光源、視野角2°)で測定した。」
3 甲2に記載された発明
甲2には実施例1として「顔料としてPB-15:3を4.0質量%、分散剤としてソルパース37500を4.0質量%、環状エステルとしてGBLを10.0質量%、第1有機溶剤としてDEGMEEを59.0質量%、第2有機溶剤としてTetraEGmBEを20.0質量%、界面活性剤としてBYK340を1.5質量%及び定着樹脂としてパラペットG-1000Pを1.5質量%からなるインク組成物。」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる(摘記2c参照)。
4 対比・判断
(1)本件特許発明1
ア 甲2発明との対比
甲2発明の「インク組成物」は、インクジェット記録用インク組成物であり(摘記2a参照)、水を含まないから、本件特許発明1の「非水系インクジェットインク組成物」に相当する。
甲2発明の「顔料としてPB-15:3」は、本件特許発明1の「顔料としてC.I.ピグメントオレンジ-43(PO-43)」と、「顔料」の限りにおいて一致する。
甲2発明の「第1有機溶剤としてDEGMEEを59.0質量%」は、DEGMEEはジエチレングリコールメチルエチルエーテルであるから(摘記2c参照)、本件特許発明1の「一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が140℃以下である溶剤の少なくとも1種」、「前記一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が140℃以下である溶剤の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対して、45.5質量%以上90質量%以下であり」及び「前記引火点が140℃以下である溶剤が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及び、トリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上である、
非水系インクジェットインク組成物。
R1O-(R2O)m-R3 ・・・(1)
[一般式(1)中、R1及びR3は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表し、R2は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2~6の整数を表す。ただし、R1及びR3の少なくとも何れかは炭素数1以上5以下のアルキル基である。]」に相当する。
甲2発明の「環状エステルとしてGBLを10.0質量%」は、GBLがγ-ブチロラクトンであることは明らかであるから、本件特許発明1の「環状エステル化合物」、「前記環状エステル化合物の含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、5.0質量%以上40.0質量%以下であり」に相当する。
甲2発明の「定着樹脂としてパラペットG-1000Pを1.5質量%」は、本件特許発明1の「樹脂」及び「前記樹脂の含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、1質量%以上10質量%以下であり」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明は、「一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が140℃以下である溶剤の少なくとも1種と、環状エステル化合物と、顔料と、樹脂とを含み、前記一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が140℃以下である溶剤の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対して、45.5質量%以上90質量%以下であり、前記環状エステル化合物の含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、5.0質量%以上40.0質量%以下であり、前記樹脂の含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、1質量%以上10質量%以下であり、
前記引火点が140℃以下である溶剤が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及び、トリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上である、
非水系インクジェットインク組成物。
R1O-(R2O)m-R3 ・・・(1)
[一般式(1)中、R1及びR3は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表し、R2は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2~6の整数を表す。ただし、R1及びR3の少なくとも何れかは炭素数1以上5以下のアルキル基である。]。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
顔料が、本件特許発明1ではC.I.ピグメントオレンジ-43(PO-43)であるのに対し、甲2発明ではPB-15:3である点。
イ 相違点についての検討
甲2には、インク組成物をオレンジのインクとする場合に、甲2発明において用いることのできる顔料としてC.I.ピグメントオレンジ-43が例示されている(摘記2bの【0031】参照)。
さらに、甲2には、「本実施形態のインク組成物は、・・・シアン・・・オレンジ・・・のインクとすることができる。」(【0029】)と記載されていることから、インク組成物をシアンのインクとする場合として例示されたピグメントブルー15:3(PB-15:3)(【0032】)を顔料として用いたものである甲2発明において、インク組成物をオレンジのインクとすることは、当業者が適宜変更し得ることであって、その場合に、顔料として、PB-15:3に代えて、甲2の【0031】に例示されたC.I.ピグメントオレンジ-43(PO-43)を採用することも、当業者が適宜選択し得ることである。
ウ 本件特許発明の効果について
本件特許明細書の【表1】及び【表2】の記載からみて、本件特許発明1に含まれる顔料としてC.I.ピグメントオレンジ-43(PO-43)を含む組成物No.1~12は、顔料としてPO-31、PO-61又はPO-71を含む組成物No.16~18より、耐候性が優れているという効果を奏するが、C.I.ピグメントオレンジ-43(PO-43)は耐候性に優れていることが知られているし(摘記3a参照)、また、PB-15:3を含む甲2発明のものより耐候性が優れていることは示されていないから、そのような効果は、甲2発明のものに対して、当業者が予測できない顕著なものであるとはいえない。
エ 小括
したがって、本件特許発明1は、甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
(2)本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1において「前記一般式(1)で表される化合物の合計含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、45.5質量%以上95質量%以下である」と特定するものであるが、甲2発明において、第1有機溶剤としてDEGMEEを59.0質量%含むから、この点は、甲2発明との対比において、新たな相違点とはならない。
(3)本件特許発明3
本件特許発明3は、本件特許発明1において「前記一般式(1)で表される溶剤であって、引火点が70℃以下である溶剤を含む」と特定するものであるが、甲2発明に含まれるDEGMEEの引火点は、64℃であるから(摘記2b参照)、この点は、甲2発明との対比において、新たな相違点とはならない。
(4)本件特許発明4
本件特許発明4は、本件特許発明1において「前記一般式(1)で表される溶剤であって、R1及びR3の一方が水素であるグリコールモノエーテルを含む」と特定するものであるが、甲2発明に含まれるTetraEGmBEはテトラエチレングリコールモノブチルエーテルであり(摘記2c参照)、本件特許発明1の一般式(1)で表される溶剤であって、R1及びR3の一方が水素であるグリコールモノエーテルであるから、この点は、甲2発明との対比において、新たな相違点とはならない。
(5)本件特許発明5
本件特許発明5は、本件特許発明1において「記録媒体へインクジェット法によりインク組成物を付着させる工程の際の記録媒体表面温度が35℃以上である記録方法に用いるものである」と特定するものであるが、甲2発明が印刷される記録媒体表面温度が45℃でるから(摘記2cの段落【0116】参照)、この点は、甲2発明との対比において、新たな相違点とはならない。
(6)本件特許発明6
本件特許発明6は、本件特許発明1において「塩化ビニル系記録媒体への記録に用いられる」と特定するものであるが、甲2発明は、塩ビバナーシートに印刷されるものであるから(摘記1b参照)、この点は、甲2発明との対比において、新たな相違点とはならない。
(7)本特許発明7
本件特許発明7は、本件特許発明1~6の何れか一項に記載の前記非水系インクジェットインク組成物と、それぞれが前記一般式(1)で表される溶剤であって引火点が140℃以下である溶剤の少なくとも1種と顔料とを含む、非水系シアンインクジェットインク組成物と、非水系マゼンタインクジェットインク組成物と、非水系イエローインクジェットインク組成物と、を少なくとも備えるインクセットであるが、甲10には、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びピグメントイエロー180を含み、水を含まない、インクジェット記録用油性インク2、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びピグメントオレンジ64を含み、水を含まない、インクジェット記録用油性インク3、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びピグメントレッド122を含み、水を含まない、インクジェット記録用油性インク6、並びに、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びピグメントブルー15:4を含み、水を含まない、インクジェット記録用油性インク7を含む、インクセットが、記載され(摘記10a、10b、10c参照)、ジエチレングリコールジエチルエーテルは本件特許発明1の一般式(1)で表される溶剤であって引火点が140℃以下である溶剤であるから、甲2発明のインクを、甲10に記載のインク3のようなオレンジインクとセットにする、インク3、インク6及びインク7とセットにして、一般式(1)で表される溶剤であって引火点が140℃以下である溶剤の少なくとも1種と顔料とを含む、非水系シアンインクジェットインク組成物と、非水系マゼンタインクジェットインク組成物と、非水系イエローインクジェットインク組成物とセットとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(8)本件特許発明8
本件特許発明8は、本件特許発明1~6のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物または本件特許発明7のインクセットを用いて、記録媒体にインクジェット法により記録を行う、インクジェット記録方法であるが、甲2発明のインクは記録媒体にインクジェット法により記録を行う、インクジェット記録方法に用いるものであり(摘記2c参照)、上記キのようにインクセットとすることができるものであるから、甲2発明を、場合によりインクセットとして、記録媒体にインクジェット法により記録を行う、インクジェット記録方法とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
第6 前記第4の2 理由2(サポート要件)についての判断
前記第4における2 理由2のとおり、本件特許発明1~8の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証、甲第3号証及び甲第10号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700487