2022-700594
丸編地
- 審判番号
- 2022-700594
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-145451外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6989761
- 請求日
- 2022年07月07日
- 審決日
- 2023年02月28日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】富士紡ホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】神崎 真
- 【権利者代理人】小倉 洋樹
- 【権利者代理人】松浦 孝
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 分類
- P1651.16 -YAA(D04B) / P1651.121-YAA(D04B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
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特許第6989761号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成29年7月27日を出願日とする特許出願であり、令和3年12月7日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月12日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、概略次のとおりである。
以下、令和4年11月1日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、これに係る訂正を「本件訂正」という。
なお、当審は、上記のとおり令和4年11月18日付けで期間を指定して、申立人に訂正請求があった旨の通知をしたが、当該指定された期間内に何らの応答もなかった。
第2 本件訂正
1 訂正の内容
本件訂正請求書による訂正の請求は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求める、というものであって、その内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「横方向に編み目が連続したコースを、縦方向に複数編み込んでなる丸編地において、
異なる糸からなる第1コースと第2コースとが縦方向に交互に編み込まれるとともに、
上記第1コースの編み目長を第2コースの編み目長よりも長く設定するとともに、第1コースの編み目長と第2コースの編み目長との差を3~10%の範囲にし、かつ第1コースの糸を第2コースの糸よりも太い糸とすることを特徴とする丸編地。」とあるのを、「横方向に編み目が連続したコースを、縦方向に複数編み込んでなる丸編地において、
弾性糸ではなく、かつ異なる糸からなる第1コースと第2コースとが縦方向に交互に編み込まれるとともに、
上記第1コースの編み目長を第2コースの編み目長よりも長く設定するとともに、第1コースの編み目長と第2コースの編み目長との差を3~10%の範囲にし、かつ第1コースの糸を第2コースの糸よりも太い糸とし、太さの差を5~20番手の範囲にすることを特徴とする丸編地。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
2 訂正要件の判断
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載されていた「異なる糸からなる第1コースと第2コース」を「弾性糸ではなく、かつ異なる糸からなる第1コースと第2コース」に限定し、「第1コースの糸を第2コースの糸よりも太い糸とすること」を「第1コースの糸を第2コースの糸よりも太い糸とし、太さの差を5~20番手の範囲にすること」に限定するものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
「弾性糸ではなく、かつ異なる糸からなる第1コースと第2コース」については、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の【0009】に、「また本実施例の丸編地1にはポリウレタン系弾性繊維等の弾性糸を使用していない。」と記載されている。
「第1コースの糸を第2コースの糸よりも太い糸とし、太さの差を5~20番手の範囲にすること」については、本件明細書等の本件訂正前の請求項3に、「第1コースの糸と第2コースの糸との太さの差を5~20番手の範囲にすること」が記載されている。
以上のとおりであるから、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、既に述べたように特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項2は、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(3)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~3は、請求項2、3が本件訂正の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~3〕に対して請求するものである。
(4)小括
以上のとおりであるから、訂正事項1、2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について、訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正が認められることから、本件特許の請求項1、2に係る発明(以下「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】
横方向に編み目が連続したコースを、縦方向に複数編み込んでなる丸編地において、
弾性糸ではなく、かつ異なる糸からなる第1コースと第2コースとが縦方向に交互に編み込まれるとともに、
上記第1コースの編み目長を第2コースの編み目長よりも長く設定するとともに、第1コースの編み目長と第2コースの編み目長との差を3~10%の範囲にし、かつ第1コースの糸を第2コースの糸よりも太い糸とし、太さの差を5~20番手の範囲にすることを特徴とする丸編地。
【請求項2】
第1コースの編み目長を100W(ウェール)あたり290~330mmの範囲で設定するとともに、第2コースの編み目長を100Wあたり280~320mmの範囲で設定したことを特徴とする請求項1に記載の丸編地。
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1、2に係る特許に対して、当審が特許権者に対して令和4年9月7日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(拡大先願)本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた下記の特許出願(以下「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された発明(以下「先願発明」という。)と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
記
(以下、甲第1号証を「甲1」という。)
第5 当審の判断
1 特許権者に通知した取消理由について
(1)甲1記載事項及び甲1記載の発明
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ア 甲1記載事項
甲1には以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
「【請求項1】セルロース繊維を含む第1繊維からなる1または複数のコースと、弾性繊維を含む第2繊維からなる1または複数のコースとが、経方向に繰り返されて編成された編地を含み、前記第1繊維からなるコースの編みループ長は、前記第2繊維からなるコースの編みループ長より長い、衣服。」
「【請求項8】筒状部を有し、前記筒状部がシームレス形状である、請求項1~7のうちいずれか1項に記載の衣服。」
「【0025】以下、図面を参照して、実施形態の衣服を詳しく説明する。図1は、実施形態の衣服に用いられる編地の一例である編地10を模式的に示す図である。図2は、編地10が伸長した状態を模式的に示す図である。図3は、編地10の編成図である。図1に示すように、編地10は、第1繊維1からなるコース3と、第2繊維2からなるコース4とが、経方向に繰り返されて編成されている。図1では、上下方向(Y方向)が経方向であり、左右方向(X方向)が緯方向である。続きを表示(全44行)図1に示す編地10は、天竺組織である。編地10では、第1繊維1は、セルロース繊維を含む主繊維1aと、副繊維1bとを含む複合繊維である。【0026】編地10は、第1繊維1からなる1~3つのコース3と、第2繊維2からなる1つのコース4とが、経方向に繰り返されて編成されていることが好ましい。図1に示す編地10は、第1繊維1からなる1つのコース3と、第2繊維2からなる1つのコース4とが、経方向に繰り返されて編成されている。図4に示す編地10Aは、図1に示す編地10の第1変形例であって、第1繊維1からなる2つのコース3と、第2繊維2からなる1つのコース4とが、経方向に繰り返されて編成されている。2つのコース3は経方向に隣り合っている。図5に示す編地10Bは、図1に示す編地10の第2変形例であって、第1繊維1からなる3つのコース3と、第2繊維2からなる1つのコース4とが、経方向に繰り返されて編成されている。3つのコース3は経方向に隣り合っている。【0027】一つの繰り返し単位におけるコース3の数を1以上とすることによって、十分なストレッチ性を有し、かつ、吸放湿性、速乾性などの特性に優れた衣服が得られる。一つの繰り返し単位におけるコース3の数を3以下とすることによって、吸放湿性、速乾性などの特性を低下させることなく、十分なストレッチ性を衣服に与えることができる。【0028】編地10全体のコース3,4の比率、すなわちコース3の数N1とコース4の数N2との比率(N1/N2)は、1~3が好ましい。コース3とコース4の比率(N1/N2)を1以上とすることによって、十分なストレッチ性を有し、かつ、吸放湿性、速乾性などの特性に優れた衣服が得られる。コース3とコース4の比率(N1/N2)を3以下とすることによって、吸放湿性、速乾性などの特性を低下させることなく、十分なストレッチ性を衣服に与えることができる。【0029】第1繊維1からなるコース3の編みループ5は、第2繊維2からなるコース4の編みループ6に比べて長い。編みループ5の長さは、例えば編みループ6の長さに対して105%以上(好ましくは110%以上)とすることができる。第1繊維1の編みループ5に十分な長さが確保されるため、編地10の伸長を妨げることがなく、しかも収縮力を高めることができる。また、第2繊維2の編みループ6が比較的短いため、伸長時に引張力が第2繊維2に作用しやすいことから、第2繊維2は収縮時には高い弾性回復力を発揮する。よって、編地10の伸長性および伸長回復性を向上させることができる。また、編地10における第1繊維1の表面積が大きくなるため、セルロース繊維によって得られる特性、すなわち、吸放湿性、速乾性などを高めることができる。【0030】編みループ5,6の長さは、例えば次のようにして測定することができる。編地10を経方向および緯方向にそれぞれ30%伸長させ、その状態で、編地10に垂直な方向(図1の紙面に垂直な方向)から編地10を観察する。観察可能な編みループ5の一端5a,6aと他端5b,6bをそれぞれ始点および終点とし、始点から終点に至る編みループ5,6の長さを測定し、これを編みループ5,6の長さとすることができる。【0031】第1繊維1の編みループ5に十分な長さが確保されるため、編地10の伸長を妨げることがなく、しかも収縮力を高めることができる。また、第2繊維2の編みループ6が比較的短いため、伸長時に引張力が第2繊維2に作用しやすいことから、第2繊維2は収縮時には高い弾性回復力を発揮する。よって、編地10の伸長性および伸長回復性を向上させることができる。また、編地10における第1繊維1の表面積が大きくなるため、セルロース繊維によって得られる特性、すなわち、吸放湿性、速乾性などを高めることができる。【0032】第1繊維1からなるコース3の編みループ5は、第2繊維2からなるコース4の編みループ6に比べて径方向の寸法が大きいことが好ましい。すなわち、第1繊維1の編みループ5の径方向寸法L1は、第2繊維2の編みループ6の径方向寸法L2よりも大きいことが好ましい。寸法L1は、例えば一端5aと他端5bとを結ぶ直線から編みループ5の先端までの距離である。寸法L2は、例えば一端6aと他端6bとを結ぶ直線から編みループ6の先端までの距離である。寸法L1,L2は、編みループ5,6の長さと同様に、編地10を経方向および緯方向にそれぞれ30%伸長させた状態で測定することができる。【0033】図2に示すように、編地10は、緯方向に引張力を加えると、同方向に伸長する。この際、第1繊維1からなるコース3は、長い編みループ5を有するため、伸長過程の早期においては、第1繊維1自体はそれほど伸びず、編みループ5の曲がりが緩くなることによって緯方向に長くなる。さらに引張力が加えられると、第1繊維1自体が伸び始める。すなわち、第1繊維1は、2つの段階、すなわち、編みループ5が緩くなる第1段階と、第1繊維1自体が伸びる第2段階とを経て伸長する。そのため、第1繊維1は、第1繊維1自体の伸びが小さいにもかかわらず、編地10の伸長を妨げることはない。編地10は、引張力を弱めると収縮し、図1に示す状態に戻る。この際、コース3は、第1繊維1自体が収縮することに加え、緩くなった編みループ5が回復する動作によって緯方向に収縮する。このように、コース3は、第1繊維1自体の収縮力だけに頼ることなく収縮することから、編地10に高い伸長回復性を与えることができる。【0034】一方、第2繊維2からなるコース4は、第1繊維1からなるコース3と比較すると、伸長過程の早期から第2繊維2自体が伸び始める。第2繊維2は、弾性繊維を含むため伸びが大きいことから、編地10の伸長を妨げない。また、第2繊維2は、第2繊維2自身の弾性により編地10に伸長回復性を与えている。さらに、第2繊維2は、編みループ6が比較的短いため、伸長時に引張力が第2繊維2に作用しやすいことから、収縮時には高い弾性回復力を発揮する。このように、編地10は、引張力が加えられると十分な伸びを示し、かつ、第1繊維1と第2繊維2のそれぞれの作用により伸長回復性が高められている。したがって、編地10を用いた衣服は、セルロース繊維によって得られる特性である、吸放湿性、速乾性などに加え、優れたストレッチ性を示す。【0035】ストレッチ性は、例えば、伸長性と、伸長回復性とを含む。伸長性は、衣服を着用しようとするときに使用者が感じる抵抗に影響を与える。伸長回復性は、使用者が衣服を着用しているときのフィット性に影響を与える。編地10を用いた衣服は、ストレッチ性に優れているため、伸長性が高く、かつ伸長回復性も高い。よって、運動時や日常動作時におけるフィット性および動作性に優れ、しかも着用しやすい。なお、編みループは、繊維がループ状(例えばヘアピン形状、馬蹄形状)に形成された部分である。」
「【0039】図9に示すショーツ50は、筒状の本体部51(筒状部)と、マチ部52と、本体部51の上縁に設けられた胴縁部53と、脚開口部56の周縁前部に設けられた前脚縁部54と、脚開口部56の周縁後部に設けられた後脚縁部55とを有する。ショーツ50は、本体部51とマチ部52と胴縁部53と前脚縁部54と後脚縁部55とが組み合わされて縫製された構造である。本体部51およびマチ部52は、図1等に示す編地10からなることが好ましい。本体部51はシームレス形状であることが好ましい。」
「【0051】[実施例1]第1繊維としては、56dtex45fのキュプラ糸(旭化成せんい社製、ベンベルグ(登録商標))と21dtex20fの66ナイロン糸とを含む主繊維と、22dtexナイロン糸からなる副繊維とを引きそろえた複合繊維を用いた。主繊維の糸長は300mm~310mmとし、副繊維の糸長は330mm~345mmとした。第2繊維としては、33dtexのポリウレタン弾性糸と、33dtexのナイロン糸とを含む複合繊維を用いた。第2繊維の糸長は320mm~34mmとした。Santoni社製のTOP2S編機(28ゲージ)を使って、第1繊維と第2繊維とからなる天竺組織の編地を得た。加工のプレセット温度は約95℃、時間は20分とした。編地はシームレス形状であり、第1繊維からなる1つのコースと、第2繊維からなる1つのコースとを経方向に繰り返して編成した。図9に示すように、この編地を用いてシームレス形状の本体部51と、マチ部52とを作製し、これらを縫製してショーツ50を得た。ショーツ50において、第1繊維からなるコースの編みループが、第2繊維からなるコースの編みループに比べて長いことを確認した。」
「【図1】[図:0001397201000001.jpg]」
イ 甲1記載の発明
上記アの記載事項(特に、【0026】、【0029】、【0030】、【0051】)を総合すると、甲1には、以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる(括弧内は、甲1明細書の参照段落を示す。)。
「Santoni社製のTOP2S編機(28ゲージ)を使って(【0051】)、第1繊維1からなる1つのコース3と、第2繊維2からなる1つのコース4とが、経方向に繰り返されて編成される編地10において(【0026】)、第1繊維1としては、56dtex45fのキュプラ糸(旭化成せんい社製、ベンベルグ(登録商標))と21dtex20fの66ナイロン糸とを含む主繊維と、22dtexナイロン糸からなる副繊維とを引きそろえた複合繊維を用い、主繊維の糸長は300mm~310mmとし、副繊維の糸長は330mm~345mmとし(【0051】)、第2繊維2としては、33dtexのポリウレタン弾性糸と、33dtexのナイロン糸とを含む複合繊維を用い、第2繊維の糸長は320mm~34mmとし(【0051】)、第1繊維1からなるコース3の編みループ5は、第2繊維2からなるコース4の編みループ6に比べて長く、編みループ5の長さは、例えば編みループ6の長さに対して105%以上(好ましくは110%以上)とし(【0029】)、編地10を経方向および緯方向にそれぞれ30%伸長させ、その状態で、編地10に垂直な方向から編地10を観察し、観察可能な編みループ5,6の一端5a,6aと他端5b,6bをそれぞれ始点および終点とし、始点から終点に至る編みループ5,6の長さを測定し、これを編みループ5,6の長さとする(【0030】)、編地10。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と先願発明とを対比する。
先願発明の「コース3」、「コース4」、「第1繊維1」、「第2繊維2」、「編みループ5の長さ」、「編みループ6の長さ」は、本件発明1の「第1コース」、「第2コース」、「第1コースの糸」、「第2コースの糸」、「第1コースの編み目長」、「第2コースの編み目長」にそれぞれ相当する。
先願発明の「Santoni社製のTOP2S編機(28ゲージ)を使って、第1繊維1からなる1つのコース3と、第2繊維2からなる1つのコース4とが、経方向に繰り返されて編成される編地10」は、編地がシームレス形状であり、シームレス形状の本体部51(筒状部)を作製するのに用いられる(【請求項8】、【0039】、【0051】参照)と共に、コース3とコース4とが交互に編成されているから(図1参照)、本件発明1の「横方向に編み目が連続したコースを、縦方向に複数編み込んでなる丸編地において、」「第1コースと第2コースとが縦方向に交互に編み込まれる」ことに相当する。
先願発明の「コース3」を構成する「第1繊維1」として「56dtex45fのキュプラ糸(旭化成せんい社製、ベンベルグ(登録商標))と21dtex20fの66ナイロン糸とを含む主繊維と、22dtexナイロン糸からなる副繊維とを引きそろえた複合繊維を用い、主繊維の糸長は300mm~310mmとし、副繊維の糸長は330mm~345mmとし」たことと、「コース4」を構成する「第2繊維2」として「33dtexのポリウレタン弾性糸と、33dtexのナイロン糸とを含む複合繊維を用い、第2繊維の糸長は320mm~34mmとし」たことは、本件発明1の「第1コースと第2コース」が「異なる糸からなる」と共に「第1コースの糸を第2コースの糸よりも太い糸と」することに相当する。
先願発明の「第1繊維1からなるコース3の編みループ5は、第2繊維2からなるコース4の編みループ6に比べて長く、編みループ5の長さは、例えば編みループ6の長さに対して105%以上(好ましくは110%以上)と」することは、本件発明1の「上記第1コースの編み目長を第2コースの編み目長よりも長く設定するとともに、第1コースの編み目長と第2コースの編み目長との差を3~10%の範囲にし」たことに相当する。
よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
【一致点】
横方向に編み目が連続したコースを、縦方向に複数編み込んでなる丸編地において、
異なる糸からなる第1コースと第2コースとが縦方向に交互に編み込まれるとともに、
上記第1コースの編み目長を第2コースの編み目長よりも長く設定するとともに、第1コースの編み目長と第2コースの編み目長との差を3~10%の範囲にし、かつ第1コースの糸を第2コースの糸よりも太い糸とする丸編地。
【相違点1】
本件発明1では、第1コースの糸と第2コースの糸が「弾性糸ではな」いのに対し、先願発明では、「第2繊維2としては、33dtexのポリウレタン弾性糸と、33dtexのナイロン糸とを含む複合繊維を用い」ている点。
【相違点2】
本件発明1では、第1コースの糸と第2コースの糸との太さの差を5~20番手の範囲にするのに対して、先願発明では、「第1繊維1としては、56dtex45fのキュプラ糸(旭化成せんい社製、ベンベルグ(登録商標))と21dtex20fの66ナイロン糸とを含む主繊維と、22dtexナイロン糸からなる副繊維とを引きそろえた複合繊維を用い」、「第2繊維2としては、33dtexのポリウレタン弾性糸と、33dtexのナイロン糸とを含む複合繊維を用い」ている点。
上記相違点1について検討する。
本件発明1では、第1コースの糸と第2コースの糸が「弾性糸ではな」いのに対し、先願発明では、衣服のストレッチ性を高めるために、第2繊維に「ポリウレタン弾性糸」等の弾性糸を用いることを必須としており(【請求項1】、【0015】~【0017】、【0034】参照)、上記相違点1は、単なる周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等といえるものではなく、実質的な相違点である。
次いで上記相違点2について検討する。
先願発明の第1繊維1は、56dtex45fのキュプラ糸と21dtex20fの66ナイロン糸とを含む主繊維と、22dtexナイロン糸からなる副繊維とを引きそろえた複合繊維であるから、第1繊維1の太さは、56+21+22=99dtexであるといえる。また、先願発明の第2繊維2は、33dtexのポリウレタン弾性糸と、33dtexのナイロン糸とを含む複合繊維であるから、第2繊維2の太さは、33+33=66dtexであるといえる。これら第1繊維1、第2繊維2の太さを綿番手に換算すると、それぞれ59.7、89.5であり、その太さの差は29.8であるから、相違点2に係る「5~20番手の範囲」にない。また、先願発明の編地10において第1コースの糸と第2コースの糸との太さの差を5~20番手の範囲にすることが周知技術、慣用技術であるとも認められない。そうすると、上記相違点2は、単なる周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等といえるものではなく、実質的な相違点である。
以上のとおり、上記相違点1、2は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、先願発明と同一ではない。
イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を更に限定した発明であるから、上記アと同様に、先願発明と同一ではない。
2 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(14~18ページ)において、本件訂正前の請求項1、3に係る特許に対して、請求項1、3に係る発明は、甲第2号証(特開2010-216053号公報)(以下「甲2」という。)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨指摘する。
(2)上記申立理由についての判断
ア 甲2記載事項及び甲2記載の発明
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(ア)甲2記載事項
甲2には以下の事項が記載されている。
「【請求項1】ポリアクリル系合成繊維を30重量%以上、47重量%以下、ビスコースレーヨン系繊維を20重量%以上、30重量%以下、カチオン可染ポリエステル繊維を30重量%以上、45重量%以下、ポリウレタン系弾性繊維を3重量%以上、10重量%以下含んでなる繊維構造物。」
「【請求項7】 請求項1~6に記載の繊維構造物を用いた衣料。」
「【発明の効果】【0010】本発明により、耐久性のある保湿性を有し、かつ、生地厚が薄くても、保温性と吸放湿性を具備するため、着用快適性を目的とした肌着、Tシャツ等として好適に用いられる繊維構造物およびそれを用いた衣料を提供することができる。」
「【実施例】【0023】実施例1ビスコースに、脱脂粉乳の28重量%水溶液を添加して紡糸したビスコースレーヨンステープル1.4デシテックス、38mmを35重量(当審注:「35重量」は、「35重量%」の誤記と認める。)と、テトラアルキルアジピン酸塩を0.4owf%付与したアクリルステープル0.7デシテックス、38mm65重量%とを、カードミックスで混綿して1/64s紡績糸を得た。【0024】この紡績糸と、断面ミックス(丸断面繊維と星形断面繊維とを使用)カチオン可染ポリエステル84デシテックス-48フィラメントと、ポリウレタン系弾性繊維22デシテックスとを、釜径76.2cm、ゲージ数28本/2.54cm、ウエル数40、コース数62、組織天竺で交編して生機を得た。」
(イ)甲2記載の発明
上記(ア)の記載事項を総合すると、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「ビスコースに、脱脂粉乳の28重量%水溶液を添加して紡糸したビスコースレーヨンステープル1.4デシテックス、38mmを35重量%と、テトラアルキルアジピン酸塩を0.4owf%付与したアクリルステープル0.7デシテックス、38mm65重量%とを、カードミックスで混綿して1/64s紡績糸を得て、この紡績糸と、断面ミックス(丸断面繊維と星形断面繊維とを使用)カチオン可染ポリエステル84デシテックス-48フィラメントと、ポリウレタン系弾性繊維22デシテックスとを、釜径76.2cm、ゲージ数28本/2.54cm、ウエル数40、コース数62、組織天竺で交編して得た生機。」
イ 対比・判断
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「釜径76.2cm、ゲージ数28本/2.54cm、ウエル数40、コース数62、組織天竺で交編して得た生機」は、本件発明1の「横方向に編み目が連続したコースを、縦方向に複数編み込んでなる丸編地」に相当する。
甲2発明の「ビスコースに、脱脂粉乳の28重量%水溶液を添加して紡糸したビスコースレーヨンステープル1.4デシテックス、38mmを35重量%と、テトラアルキルアジピン酸塩を0.4owf%付与したアクリルステープル0.7デシテックス、38mm65重量%とを、カードミックスで混綿して」得た「1/64s紡績糸」と、「断面ミックス(丸断面繊維と星形断面繊維とを使用)カチオン可染ポリエステル84デシテックス-48フィラメント」と、「ポリウレタン系弾性繊維22デシテックス」とを、「釜径76.2cm、ゲージ数28本/2.54cm、ウエル数40、コース数62、組織天竺で交編」する態様と、本件発明1の「弾性糸ではなく、かつ異なる糸からなる第1コースと第2コースとが縦方向に交互に編み込まれる」態様とは、「異なる糸からなるコースが縦方向に編み込まれる」態様という限りで一致する。
よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
【一致点】
横方向に編み目が連続したコースを、縦方向に複数編み込んでなる丸編地において、
異なる糸からなるコースが縦方向に編み込まれる丸編地。
【相違点1】
「異なる糸からなるコースが縦方向に編み込まれる」ことについて、本件発明1では、「弾性糸ではなく、かつ異なる糸からなる第1コースと第2コースとが縦方向に交互に編み込まれる」のに対して、甲2発明では、「この紡績糸と、断面ミックス(丸断面繊維と星形断面繊維とを使用)カチオン可染ポリエステル84デシテックス-48フィラメントと、ポリウレタン系弾性繊維22デシテックスとを、釜径76.2cm、ゲージ数28本/2.54cm、ウエル数40、コース数62、組織天竺で交編」する点。
【相違点2】
本件発明1では、「上記第1コースの編み目長を第2コースの編み目長よりも長く設定するとともに、第1コースの編み目長と第2コースの編み目長との差を3~10%の範囲にし、かつ第1コースの糸を第2コースの糸よりも太い糸とし、太さの差を5~20番手の範囲にする」のに対して、甲2発明では、そのように特定されていない点。
事案に鑑み、上記相違点2から検討する。
甲2発明は、異なる糸である、紡績糸と、断面ミックス(丸断面繊維と星形断面繊維とを使用)カチオン可染ポリエステル84デシテックス-48フィラメントと、ポリウレタン系弾性繊維22デシテックスとを、組織天竺で交編することを特定するものの、甲2には、第1コースの編み目長を第2コースの編み目長よりも長く設定することや、その差を3~10%の範囲にすることは、記載も示唆もされておらず、それぞれの糸の編み目長に着目するところさえない。そのため、甲2発明において、第1コースの編み目長を第2コースの編み目長よりも長くするようにする動機付けはない。
そうすると、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、甲2発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を更に限定した発明であるから、上記(ア)と同様に、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
ウ 以上より、上記(1)の申立人の理由は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件訂正により、請求項3に係る特許は削除されたため、請求項3に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700594