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特許異議申立

2024-700316

通気性を有するUV-A遮蔽性編物

審判番号
2024-700316
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-095474
登録番号
7357464
請求日
2024年04月05日
審決日
2025年08月05日
公報発行日
2025年10月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】セーレン株式会社
  • 【権利者代理人】木村 満
  • 【異議申立人】大森 隆一
審判長/審判官
  • 審判長 岩谷 一臣
  • 審判官 稲葉 大紀
  • 審判官 長清 吉範
分類
P1651.121-YAA(D04B) / P1651.537-YAA(D04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7357464号発明「通気性を有するUV-A遮蔽性編物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7357464号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。 特許第7357464号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 結論 第1 手続の経緯 特許第7357464号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和元年5月21日に出願され、令和5年9月28日にその特許権の設定登録がなされ、同年10月6日に特許掲載公報が発行された。 その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和6年 4月 5日 :特許異議申立人 大森隆一(以下「申立人」という。)による請求項1~3に係る特許に対する特許異議の申立て 同年 6月28日付け:取消理由通知書 同年 9月 2日 :特許権者による訂正請求書、意見書の提出 同年10月24日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出 同年12月 6日 :申立人による意見書の提出 令和7年 3月27日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年 5月29日 :特許権者による訂正請求書、意見書の提出 同年 7月 9日 :申立人による意見書の提出 第2 訂正請求について 1 訂正の内容 令和7年5月29日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示す。)。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「一方側が天竺編からなるダブル編物であって、」と記載されているのを、 「一方側が天竺編からなり、他方側がピンメッシュ編又はハニカム編からなるダブル編物であって、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2、3についても同様に訂正する。) (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に 「ダブル編物のカバーファクターが850~1200、」と記載されているのを、 「ダブル編物のカバーファクターが870~990、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2、3についても同様に訂正する。) (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に 「ダブル編物の見掛け密度が0.18~0.24g/cm3、」と記載されているのを、 「ダブル編物の見掛け密度が0.188~0.228g/cm3、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2、3についても同様に訂正する。) (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に 「ダブル編物のUV-A(波長が320~400nmの紫外線)の平均透過率が12%以下で、」と記載されているのを、 「ダブル編物のUV-A(波長が320~400nmの紫外線)の平均透過率が11.2%以下で、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2、3についても同様に訂正する。) (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項1に 「且つ、ダブル編物の通気度が150~300cc/cm2/sec、」と記載されているのを、 「ダブル編物の通気度が160~210cc/cm2/sec、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2、3についても同様に訂正する。) (6) 訂正事項6 上記訂正事項5の「ダブル編物の通気度が160~210cc/cm2/sec、」の後に、 「且つ、ダブル編物の可視光平均透過率が20~22%、」との記載を加える。 (請求項1の記載を引用する請求項2、3についても同様に訂正する。) (7) 訂正事項7 願書に添付した明細書の段落【0008】に 「本発明は、 (1)に、無機酸化物微粒子の含有量が2~12重量%の合成繊維、及び/又は無機酸化物微粒子の含有量が3~20重量%の芯部と、無機酸化物微粒子の含有量が3重量%以下の鞘部を有する芯鞘型合成繊維からなる仮撚加工糸を70重量%以上用いてなる、一方の面が天竺編からなるダブル編物であって、 ダブル編物のカバーファクターが850~1200、ダブル編物の見掛け密度が0.18~0.24g/cm3、ダブル編物のUV-A(波長が320~400nmの紫外線)の平均透過率が12%以下で、且つ、ダブル編物の通気度が150~300cc/cm2/sec、であることを特徴とするダブル編物である。 また、(2)に、無機酸化微粒子が、平均粒径が1.5μm以下である酸化チタンおよび/または酸化亜鉛である(1)に記載の編物である。 さらに、(3)に、(1)または(2)に記載の編物を使用した衣料である。」と記載されているのを、 「本発明は、 (1)に、無機酸化物微粒子の含有量が2~12重量%の合成繊維、及び/又は無機酸化物微粒子の含有量が3~20重量%の芯部と、無機酸化物微粒子の含有量が3重量%以下の鞘部を有する芯鞘型合成繊維からなる仮撚加工糸を70重量%以上用いてなる、一方側が天竺編からなり、他方側がピンメッシュ編又はハニカム編からなるダブル編物であって、 ダブル編物のカバーファクターが870~990、ダブル編物の見掛け密度が0.188~0.228g/cm3、ダブル編物のUV-A(波長が320~400nmの紫外線)の平均透過率が11.2%以下で、ダブル編物の通気度が160~210cc/cm2/sec、且つ、ダブル編物の可視光平均透過率が20~22%、であることを特徴とするダブル編物である。 また、(2)に、無機酸化微粒子が、平均粒径が1.5μm以下である酸化チタンおよび/または酸化亜鉛である(1)に記載の編物である。 さらに、(3)に、(1)または(2)に記載の編物を使用した衣料である。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1について 訂正事項1は、「一方側が天竺編からなるダブル編物」としていたのを「一方側が天竺編からなり、他方側がピンメッシュ編又はハニカム編からなるダブル編物」と訂正することで、ダブル編物の他方側についても編組織を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、一方側が天竺編からなり、他方側がピンメッシュ編又はハニカム編からなるダブル編物は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)の【0028】~【0031】に、記載されているから、訂正事項1は、特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (2) 訂正事項2~5について 訂正事項2~5は、「ダブル編物のカバーファクター」、「ダブル編物の見掛け密度」、「ダブル編物のUV-A(波長が320~400nmの紫外線)の平均透過率」及び「ダブル編物の通気度」の数値範囲について、それぞれ訂正前よりも狭い範囲で特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、これらの数値範囲は、特許明細書等の【0037】〔表1〕の実施例1~4に記載されているから、訂正事項2~5は、特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項2~5は、特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (3) 訂正事項6について 訂正事項6は、上記訂正事項5の「ダブル編物の通気度が160~210cc/cm2/sec、」の後に、「且つ、ダブル編物の可視光平均透過率が20~22%、」を追加するものであるから、発明を特定するための事項の直列的付加であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、可視光平均透過率が20~22%であるダブル編物は、特許明細書等の【0024】及び【0037】に記載されているから、訂正事項6は、特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項6は、特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (4) 訂正事項7について 訂正事項7は、訂正事項1~6の訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲と整合させるために行うものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項7は、訂正事項1~6で検討したのと同様に、特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 3 一群の請求項 訂正前の請求項1~3について、請求項2及び3は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1~6によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項〔1~3〕は、一群の請求項である。 また、明細書についての訂正は、一群の請求項〔1~3〕について請求されたものである。 4 訂正請求についてのむすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項~第6項の規定に適合する。 よって、明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について、訂正することを認める。 第3 本件発明 上記「第2」で説示したように本件訂正請求は認められるから、本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 無機酸化物微粒子の含有量が2~12重量%の合成繊維、及び/又は無機酸化物微粒子の含有量が3~20重量%の芯部と、無機酸化物微粒子の含有量が3重量%以下の鞘部を有する芯鞘型合成繊維からなる仮撚加工糸を70重量%以上用いてなる、 一方側が天竺編からなり、他方側がピンメッシュ編又はハニカム編からなるダブル編物であって、 ダブル編物のカバーファクターが870~990、ダブル編物の見掛け密度が0.188~0.228g/cm3、ダブル編物のUV-A(波長が320~400nmの紫外線)の平均透過率が11.2%以下で、ダブル編物の通気度が160~210cc/cm2/sec、且つ、ダブル編物の可視光平均透過率が20~22%、であることを特徴とするダブル編物。 【請求項2】 無機酸化微粒子が、平均粒径が1.5μm以下である酸化チタンおよび/または酸化亜鉛である請求項1に記載の編物。 【請求項3】 請求項1および請求項2記載の編物を使用した衣料。」 第4 取消理由通知(決定の予告)の概要 令和7年3月27日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由は、概略、以下のとおりである。 (進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 記 ・請求項1 ・甲第1、3、5~7号証、文献1 ・請求項2、3 ・甲第1、3、5~8号証、文献1 [証拠] 甲第1号証:特開2018-84014号公報 甲第3号証:特開2014-234579号公報 甲第5号証:特開2000-282345号公報 甲第6号証:特開2014-25189号公報 甲第7号証:特開2015-10282号公報 甲第8号証:特開2014-70280号公報 (以下、甲第〇号証を「甲〇」という。) 文献1:特開2013-249560号公報 第5 当審の判断 上記取消理由通知で通知した取消理由は、以下に示すように、理由がないと判断する。 1 甲号証に記載された発明等 (1) 甲1 ア 甲1の記載事項 甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した(以下、同様。)。 「【請求項1】 芯鞘複合繊維と二酸化チタンを1~3質量%含有するポリエステル繊維とを含有する編物であって、前記芯鞘複合繊維は芯部が屈折率Aの樹脂を主成分とし、鞘部が屈折率Bの樹脂を主成分とし、A及びBが|A-B|≧0.01の関係を満足し、前記芯鞘複合繊維の含有率が20~80質量%であり、前記ポリエステル繊維の含有率が20~80質量%である編物。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、芯鞘複合繊維とポリエステル繊維を含み、太陽放射の特に紫外線を遮蔽する能力に優れる編物に関する。」 「【0019】 図1に編物の乾燥時の太陽放射の透過の模式図を示す。乾燥時は編物を構成する繊維のフィラメントで太陽放射が遮られ、編物の中を透過しづらくなる。 一方で、一般に含水した編物は、図2に示すように、水が編物を構成する繊維のフィラメント間及びループ間に介在して凹レンズの役割を果たすと考えられる。水の凹レンズ役割によって編物表面に到達した太陽放射は散乱し、フィラメント間及びループ間を透過し易くなる。その為、湿潤時は乾燥時に比べて紫外線透過率が上昇すると言える。」 「【0028】 前記ポリエステル繊維が長繊維であることは、短繊維と比較してピリングになりにくく、接触冷感及び通気度も得やすくクーリング性に優れるため、スポーツウェアに適している点で好ましい。」 「【0031】 (芯鞘複合繊維を片面に含有するリバーシブル編物) 本発明の編物の組織は、特に限定されないが、芯鞘複合繊維の太陽放射を遮蔽する特長を効率よく発揮させる組織として編物の表と裏が二層構造になるリバーシブル組織が好ましい。尚、天竺組織、スムース組織は表裏の二層構造では無い。リバーシブル組織は、編物の一方の面を前記芯鞘複合繊維で構成し、他方の面を他の繊維で編成し、各々の繊維の機能又は特長が付与される。リバーシブル組織の芯鞘複合繊維の構成面は太陽放射だけでなく、人体からの放射熱を遮蔽する効果を有する。このため、リバーシブル組織による衣服等は、季節、環境の変化によって使い分けられる。なお、上記の他方の面を構成する他の繊維は、スポーツウェア用途を考えるとポリエステル繊維が好ましい。断面形状は得られる編物の風合い及び光沢等を考慮して、菊型、円形、扁平、多角形等の断面形状から選択される。スムース編地は表裏が無い。」 「【0032】 (目付が50~250g/m2である編物) 本発明の編物を得るときの編成方法、編機等は特に限定されない。前記編物は、目付が50~250g/m2であることが好ましい。目付が50g/m2以上であることは、太陽放射を遮蔽する効果が発揮し易い。目付が250g/m2以下であることは、生地厚みが増加せず蓄熱し難くい。前記観点から、目付が100~200g/m2がより好ましく、目付が120~170g/m2がさらに好ましい。」 「【0033】 (布厚が0.3~1.5mmである編物) 本発明の編物は、布厚が0.3~1.5mmであることが好ましい。布厚が0.3mm以上であることは、太陽放射を遮蔽する効果が発揮し易い。布厚が1.5mm以下であることは、編物が厚くなりすぎず蓄熱し難いので好ましい。前記観点から、布厚が0.5~1.0mmがより好ましく、布厚が0.6~0.95mmがさらに好ましい。」 「【0038】 (紫外線透過率) 分光光度計(日本分光社製V-670)を用い、以下の(a)~(f)の操作を順に行い、紫外線透過率を測定した。 (a)30mm×25mmの試料を準備し、室温20℃、60%RHの雰囲気で2時間保ち、調温湿する。または、規定量水をピペットで編物の中央に滴下する。含水時は、編物を水に1分間浸漬し、その後、試料を吊るして水滴落下がなくなるまで放置する。 (b)室温20℃の環境下で、290~400nmの範囲において5nmごとに、試料なしの状態の紫外線透過率を測定した。(Tg) (c)試料を分光光度計に取り付け、室温20℃の環境下で、290~400nmの範囲において5nmごとに、試料なし(当審注:この操作では試料を分光光度計に取り付けているから、「試料あり」の誤記と認められる。)の状態の紫外線透過率を測定した。(Ts) (d)290~400nmの範囲において5nmごとに、Tsを以下の式(2)を用いて補正した紫外線透過率を算出した。(T) T=(Ts/Tg)×100・・・式(2) (e)補正した紫外線透過率Tの算術平均値を算出し紫外線透過率(%)とする。(Tn) (f)測定回数は5回とし、Tnの平均値を紫外線透過率(%)とした。」 「【0039】 (実施例1) 表1に示すように、芯部にポリプロピレン(PP)樹脂、鞘部に二酸化チタンを2.0質量%添加したポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を使用した芯鞘複合繊維(三菱レイヨン社製、ソルシールド、84dtex48フィラメント、芯鞘体積比率1:6)の仮撚加工糸を片面に使用し、もう一方の片面には二酸化チタンを2質量%含有するポリエステル仮撚加工糸(84dtex72フィラメント)を用いて、28ゲージ(本/2.54cm)ダブルジャージのリバーシブルメッシュ編地を作製した。前記ポリプロピレン樹脂の屈折率は1.47であり、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の屈折率は1.58であった。よって、屈折率差|A-B|は、0.11であった。紫外線透過率測定用資料として30mm×25mmの試料を準備した。試料を室温20℃、60%RHの雰囲気で2時間保ち、調温湿した後に紫外線透過率測定及び含水率測定を行った。さらに、水分0.05cc滴下時の紫外線透過率、水分0.25cc滴下時の紫外線透過率、及び含水時の紫外線透過率及び含水率を測定した。」 「【0046】 【表1】 [図:0001427929000001.jpg] 」 「【産業上の利用可能性】 【0047】 本発明により得られる編物は、乾燥時の紫外線透過率が極めて低いだけでなく、湿潤時に紫外線透過率の上昇を抑制することに特長があるため、特に屋外での活動に用いるスポーツウェア等用途に好適である。」 イ 甲1の記載から認められる事項 (ア) 表1から、実施例1の編地目付は161g/m2であり、編地布厚は0.89mmであるから、計算すると、見掛け密度は、0.181g/cm3である。((161×10-4)/(0.89×10-1)=0.181) (イ) 段落【0019】によると、含水した編物は、紫外線透過率が上昇することが言えるところ、表1から、実施例1の紫外線透過率は含水時で7.2%となっており、これが最大値であると理解される。また、段落【0038】の記載から、紫外線透過率は、290nm~400nmの紫外線の平均透過率であると認められる。そうすると、実施例1は、290nm~400nmの紫外線の平均透過率の最大値が7.2%であると認められる。 ウ 甲1に記載された発明 上記ア及びイを踏まえ、特に段落【0039】及び【表1】を参照すると、甲1には、実施例1の編地に係る次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「芯部にポリプロピレン(PP)樹脂、鞘部に二酸化チタンを2.0質量%添加したポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を使用した芯鞘複合繊維の仮撚加工糸を片面に使用し、もう一方の片面には二酸化チタンを2質量%含有するポリエステル仮撚加工糸を用いたリバーシブルメッシュ編地であって、見掛け密度が0.181g/cm3であり、290nm~400nmの紫外線の平均透過率の最大値が7.2%であるリバーシブルメッシュ編地。」 (2) 甲3 ア 甲3の記載事項 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【0058】 また、本発明の織編物が織物の場合、カバーファクター(CF)が織物の場合1000~3500の範囲内であることが好ましく、1500~2500であることが特に好ましい。また、本発明の織編物が編物の場合、CFが500~2500の範囲内であることが好ましく、800~1800であることが特に好ましい。ここで、カバーファクター(CF)とは、織物の場合は下記式(III)によって算出され、編物の場合は下記式(IV)によって算出されるものである。」 「【0063】 本発明の織編物が前記カバーファクターを満たす場合、該織編物は涼感性、紫外線防止性及び湿潤時の透け防止性に特に優れたものとなる。」 イ 甲3に記載された事項 上記アから、甲3には、次の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「涼感性と紫外線防止性のため、編物のカバーファクターを800~1800とすること。」 (3) 文献1 ア 文献1の記載事項 「【0027】 本発明の編地は、内層が0.3~3.0dtexのポリプロピレン繊維を含む糸条で構成され、外層及び接結糸条が異型断面の疎水性合成繊維糸条で構成された組織であれば特に限定されないが、編地内外層を異なる組織で編成したり、編地内層を粗、外層を密にした粗密構造にしたりすることが好ましい。又、本発明の編地は、肌側となる内層と外層、これらを繋ぐ接結糸条で構成されているが、当該編地を横方向からみた断面形状において必ずしも明確に三層構造として確認できる必要はないが、ダブルフェイス編、又はダンボール編とすることが好ましい。これらの編み方とすることにより、空気層を多く含み保温性を良好とすることができ、好ましい。なお、ここで、ダブルフェイス編は、内層と外層の編組織が異なるものを、ダンボール編は、内層と外層の編組織が同じで、空間部に空気層を有しているものをいう。」 「【0039】 (実施例1) 1.内層ポリプロピレン100%繊維(繊度1.0dtex、繊維長38mm)を渦流法により紡糸した45S(英式綿番手)の紡績糸を用意した。 2.接結糸条、外層断面形状がU型のポリエステルマルチフィラメント糸(75デニール-48フィラメント、単繊維繊度1.7dtex)を用意した。 上記の構成で内層が天竺、外層がハニカム組織の編地を得た。目付は125g/m2であった。得られた編地をプレセットし、その後精練処理、120℃で分散染色、還元洗浄を実施したあと吸水仕上を施した。」 イ 文献1に記載された事項 段落【0039】に記載された「内層が天竺、外層がハニカム組織の編地」は、段落【0027】の記載から「内層と外層の編組織が異なるダブルフェイス編」であると認められる。 そうすると、文献1には、次の事項(以下「文献1記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「空気層を多く含み、保湿性を良好とすることができる編み方として、内層が天竺、外層がハニカム組織の内層と外層の編組織が異なるダブルフェイス編みがあること。」 (4) 周知の技術 ア 甲号証の記載等 (ア) 甲5 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、紫外線遮蔽性に優れ、風合いが柔らかく、かつ、高吸湿、高通気性で清涼性に優れたスポーツ、インナー、アウター等の衣料用途に供される布帛に関する。」 「【0024】一方、本発明で用いる人造セルロース繊維とは人工的に造られた再生セルロース、精製セルロース繊維等、基本的にβ-グルコースでできたもののことをいい、具体的な例としてはキュプラ、レーヨン、アセテート、ポリノジック、リヨセル等が挙げられる。繊維に含有させる無機酸化物微粒子は、原糸製造に障害を及ぼさなければ、その種類は特に限定されないが、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等を用いることができる。これらの無機酸化物微粒子は、単独もしくは2種以上を併用して用いることができる。無機酸化物微粒子の平均粒径は、一般に、約1ミクロン以下であることが好ましい。約2ミクロン以上の粗大粒子になると、紡糸時の糸切れにつながり好ましくない。より好ましくは0.5ミクロン以下である。」 「【0036】〔実施例2〕実施例1と同様の複合糸により32Gダブル丸編機にてスムース編地を作製し、精練後、180℃乾熱セットを施し、37コース/インチ、39ウエール/インチ、厚み0.84mm、目付153g/m2、見掛け密度0.18g/cm3の編物を得た。この編物の開孔率は4.8%で、SPF値は21であった。得られた編物は、紫外線による日焼けを防止し風合いも柔らかく、また、通気性、吸湿性が高く清涼性に優れる編物であった。」 「【0053】 [図:0001427929000002.jpg] 」 (イ) 甲6 「【請求項10】 編物であって、単位面積当たりの繊維面積率が90%以上で、かつ通気度が150cc/cm2/sec以上である、請求項7~9のいずれかに記載の多層構造織編物。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、高い吸水速乾性と通気性を兼ね備えた織編物を得ることができ、ソフトで独特の表面感をもった素材を提供することができるポリエステル仮撚低融着糸、ならびにこれを用いてなる多層構造織編物に関する。」 「【0050】 本実施態様の仮撚低融着糸を用いることで、通気が高くおもて面品位の良好な素材を得ることができる。本実施態様の仮撚低融着糸の特徴は、その繊維構造から通気性の高い織編物が得られることである。該仮撚低融着糸を生地おもて面の少なくとも一部に用いた場合に、通気性は該仮撚低融着糸の使用割合によって変わる。編物においては単位面積当たりの繊維面積率が90%以上で、かつ通気度が150cc/cm2/sec以上の素材を得ることが可能となり、織物においては単位面積当たりの繊維面積率が90%以上で通気度が100cc/cm2/sec以上の素材を得ることが可能となる。このように織編物では、その構造に応じ通気性の高い素材としての数値は異なるが、該仮撚低融着糸を用いることによってそれぞれに高い通気性能を得ることが可能となる。より好ましい範囲としては、織編構造においてメッシュ組織等繊維面積率の少ない組織を用いることなく、通気度が編物においては通気度が150cc/cm2/sec以上、織物においては通気度が100cc/cm2/sec以上を達成することである。」 (ウ) 甲7 「【技術分野】 【0001】 本発明は、遮熱性および放熱性に優れた織編物および繊維製品に関する。」 「【0022】 また、織編物の厚さとしては、0.1~1.0mmの範囲内であることが好ましい。該厚さが1.0mmよりも大きいと、布帛の放熱性や軽量性が損なわれるおそれがある。逆に、該厚さが0.1mmよりも小さいと、布帛の遮熱性が損なわれるおそれがある。 また、織編物の通気度としては100cc/cm2・sec以上(より好ましくは100~500cc/cm2・sec)であることが好ましい。該通気度が100cc/cm2・secよりも小さいと、織編物の放熱性が低下するおそれがある。」 「【0047】 【表1】 [図:0001427929000003.jpg] 」 (エ)甲8 「【0019】 本発明において、芯鞘型ポリエステル複合繊維の芯部及び鞘部に含有される金属酸化物微粒子として、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム又は酸化ジルコニウムからなる微粒子が挙げられる。これらは、芯部及び鞘部を構成するポリエステルに練り込まれても化学的に安定であることから好ましい。中でも、汎用性、コストの点から酸化チタン微粒子が好ましい。 【0020】 前記金属酸化物微粒子は、平均一次粒径が1μm以下であることが好ましく、最大一次粒径が5μm以下であることが好ましい。ここで、前記平均一次粒径は、金属酸化物微粒子を水などの媒体に分散させた後、レーザー回折粒度分布測定装置により得られた粒度分布から求められたメジアン径(中央累積値、50%)のことをいう。」 イ 周知技術の認定 (ア) 周知技術1 甲5には、紫外線遮蔽性に優れ、高通気性で清涼性に優れた布帛(段落【0001】)について記載され、段落【0036】及び表3(実施例2)から、通気度が156cc/cm2/sである通気性が高く清涼性に優れる編物を作製したことが記載されている。 甲6には、高い通気性を備えた織編物(段落【0001】)について記載され、請求項10や段落【0050】には、通気度が150cc/cm2/sec以上の編物を達成することが記載されている。 甲7には、放熱性に優れた織編物(段落【0001】)について記載され、段落【0022】には、放熱性には通気度が必要であることが記載され、実施例1~4では通気度が150~220cm3/cm2・sとなっている。 そうすると、甲5~甲7から、次の事項は、周知の技術(以下「周知技術1」という。)であったと認められる。 「通気性に優れる編物として、通気度を150cc/cm2/sec以上とすること。」 (イ) 周知技術2 甲5の段落【0024】及び甲8の段落【0020】の記載から、次の事項は、周知の技術(以下「周知技術2」という。)であったと認められる。 「合成繊維に含ませる無機酸化微粒子の粒径を1μm以下とすること。」 2 進歩性について (1) 本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア) 後者の「二酸化チタン」は、前者の「無機酸化物微粒子」に相当し、後者の「二酸化チタンを2質量%含有するポリエステル仮撚加工糸」は、前者の「無機酸化物微粒子の含有量が2~12重量%の合成繊維」「からなる仮撚加工糸」に相当する。 そして、後者の「二酸化チタンを2質量%含有するポリエステル仮撚加工糸を用いた」構成と、前者の「無機酸化物微粒子の含有量が2~12重量%の合成繊維、及び/又は無機酸化物微粒子の含有量が3~20重量%の芯部と、無機酸化物微粒子の含有量が3重量%以下の鞘部を有する芯鞘型合成繊維からなる仮撚加工糸を70重量%以上用いてなる」構成は、前者の択一的な記載を踏まえれば、「無機酸化物微粒子の含有量が2~12重量%の合成繊維、及び/又は無機酸化物微粒子の含有量が3~20重量%の芯部と、無機酸化物微粒子の含有量が3重量%以下の鞘部を有する芯鞘型合成繊維からなる仮撚加工糸を用いてなる」構成に限り一致する。 (イ) 後者の「リバーシブルメッシュ編地」は、前者の「一方側が天竺編からなり、他方側がピンメッシュ編又はハニカム編からなるダブル編物」と「編物」の点に限り一致する。 (ウ) 後者の「290nm~400nmの紫外線の平均透過率の最大値が7.2%」である構成は、前者の「UV-A(波長が320~400nmの紫外線)の平均透過率が11.2%以下」である構成と、「UV(紫外線)の平均透過率が11.2%以下」である点に限り一致する。 上記(ア)~(ウ)を踏まえると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] 「無機酸化物微粒子の含有量が2~12重量%の合成繊維、及び/又は無機酸化物微粒子の含有量が3~20重量%の芯部と、無機酸化物微粒子の含有量が3重量%以下の鞘部を有する芯鞘型合成繊維からなる仮撚加工糸を用いてなる、 編物であって、 編物のUV(紫外線)の平均透過率が11.2%以下である編物。」 [相違点] ・相違点1 本件発明1は「一方側が天竺編からなり、他方側がピンメッシュ編又はハニカム編からなるダブル編物」であるのに対し、甲1発明は「リバーシブルメッシュ編地」である点。 ・相違点2 無機酸化物微粒子の含有量が2~12重量%の合成繊維からなる仮撚加工糸の含有量について、本件発明1は「70重量%以上」であるのに対し、甲1発明のポリエステル仮撚加工糸は、そのように特定されていない点。 ・相違点3 紫外線の平均透過率が11.2%以下である点について、算出に用いている紫外線の波長が、本件発明1では「320~400nm」であるのに対し、甲1発明では「290nm~400nm」である点。 ・相違点4 本件発明1は「カバーファクターが870~990」と特定されているのに対し、甲1発明は、カバーファクターが特定されていない点。 ・相違点5 編物の見掛け密度について、本件発明1は「0.188~0.228g/cm3」と特定されているのに対し、甲1発明は「0.181g/cm3」である点。 ・相違点6 本件発明1は「通気度が160~210cc/cm2/sec」と特定されているのに対し、甲1発明は、通気度が特定されていない点。 ・相違点7 本件発明1は「可視光平均透過率が20~22%」と特定されているのに対し、甲1発明は、可視光平均透過率が特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、まずは相違点7について検討する。 (ア) 相違点7について 甲1の段落【0032】及び【0033】には、太陽放射を遮蔽する効果のために「目付」及び「布厚」の下限値を設定する事項が記載されている。しかしながら、【0001】を参酌すると、前記太陽放射は、特に紫外線を念頭に置いたものであり、可視光線に着目したものではないから、「可視光平均透過率」を特定の値となるように設定する動機付けはみられない。 また、甲1、3、5~8及び先の取消理由における文献1に加え、申立人が提出した甲2、4、9を加味しても、「可視光平均透過率」について記載も示唆もされていないから、甲1発明が「可視光平均透過率を20~22%」となるようにして、上記相違点7に係る本件発明1の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 (イ) 申立人の意見書での主張について 上記相違点7に関し、令和7年7月9日に提出された意見書において、申立人は「この可視光平均透過率の限定は、150cc/cm2/sec以上の通気度、および、UV-Aの遮蔽性を得るための必須事項に過ぎず、可視光平均透過率が独立してダブル編物の特徴となるものではないと思料する。このため、本訂正請求における可視光平均透過率の限定は、所定の通気性およびUV-A遮光性を得ようとすれば、必然的にその範囲となるに過ぎ」ないと主張する。 しかしながら、「可視光平均透過率」は、「通気性」及び「UV-A遮光性」のみに依存するパラメータではないことは技術常識からみて明らかであるから、仮に「可視光平均透過率」以外の発明特定事項が本件発明1の数値範囲内であったとしても、「可視光平均透過率を20~22%」になる蓋然性が高いとはいえないから、申立人の主張は採用できない。 ウ 小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 本件発明2~3について 本件発明2~3は、本件発明1にさらに限定を付したものであるから、上記(1)と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700316

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