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特許異議申立

2024-700014

緯編編み物及びその編み方

審判番号
2024-700014
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-004115
登録番号
7305896
請求日
2024年01月09日
審決日
2025年10月03日
公報発行日
2026年05月29日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】佰龍機械廠股▲ふん▼有限公司
  • 【権利者代理人】TRY国際弁理士法人
  • 【異議申立人】松井 千尋
審判長/審判官
  • 審判長 神山 茂樹
  • 審判官 田口 傑
  • 審判官 稲葉 大紀
分類
P1651.121-ZAA(D04B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7305896号発明「緯編編み物及びその編み方」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7305896号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、〔6~8〕について訂正することを認める。 特許第7305896号の請求項1~8に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7305896号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和5年1月13日に出願されたものであって、令和5年6月30日に特許権の設定登録がされ、同年7月10日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、以下のとおりである。 令和6年 1月 9日 :特許異議申立人松井千尋(以下「申立人」という。)による請求項1~8に係る特許に対する特許異議の申立て 令和6年 6月11日付け:取消理由通知書 令和6年 9月 6日 :特許権者より意見書及び訂正請求書の提出 令和6年12月10日 :申立人より意見書の提出 令和7年 3月11日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和7年 6月16日 :特許権より意見書及び訂正請求書の提出 令和7年 7月25日 :申立人より意見書の提出 なお、令和6年9月6日にされた訂正の請求は特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和7年6月16日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、請求項1~8について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「前記少なくとも1つの第1ブロックと前記少なくとも1つの第2ブロックは、それぞれ、少なくとも1つのコースを含み、前記第1ブロックでは、前記表糸と前記地糸が全てループし、前記表糸と前記地糸の相対位置は同じ前記コースで一定ではなく、前記第2ブロックでは、前記地糸が全てループし、前記表糸がループ、ウェルトのいずれかで前記地糸と組み合わせる」とあるのを、 「前記少なくとも1つの第1ブロックと前記少なくとも1つの第2ブロックは、それぞれ、少なくとも1つのコースを含み、前記1つのコースは、1本の前記表糸と1本の前記地糸とで構成され、前記第1ブロックでは、前記1つのコースにおいて、前記表糸と前記地糸が全てループし、前記表糸と前記地糸の相対位置は同じ前記コースで一定ではなく、前記第2ブロックでは、前記1つのコースにおいて、前記地糸が全てループし、前記表糸がループ、ウェルトのいずれかで前記地糸と組み合わせ、前記第2ブロックでは、一部の前記表糸が、ウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも前記地糸とループする」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に 「前記第2ブロックでは、前記表糸が、ウェルトにする前の編みとその後の編みがいずれも前記地糸とループする」とあるのを、 「前記第2ブロックでは、各前記表糸が、ウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも前記地糸とループする」に訂正する。 (請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に 「前記表糸の色は前記地糸の色と異なる」とあるのを、 「前記表糸の色は前記地糸の色と異なり、かつ前記第1ブロックと前記第2ブロックの切り替えは、前記丸編機が前記1つのコースを完成することを条件とする」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に 「前記表糸の色は前記地糸の色と異なる」とあるのを、 「前記表糸の色は前記地糸の色と異なり、かつ前記第1ブロックと前記第2ブロックの切り替えは、前記丸編機が前記1つのコースを完成することを条件とする」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に 「前記丸編機は同じコースの編みにおいて選択的に標準給糸と逆給糸のいずれかにより前記表糸と前記地糸を給糸するよう制御することにより、前記表糸と前記地糸のループを編んだ後の相対位置は同じ前記コースにおいて一定ではないことと、 前記丸編機は、同じ前記コースの編みにおいて、前記地糸が全てループを編み、前記表糸がループを編むか糸を針に掛けてウェルトにするかで前記地糸と組み合わせるよう選針するように制御することとを含む」とあるのを、 「前記丸編機は、同じコースの編みにおいて選択的に標準給糸と逆給糸のいずれかにより前記表糸と前記地糸を給糸するよう制御することにより、前記表糸と前記地糸のループを編んだ後の相対位置は同じ前記コースにおいて一定ではないことと、 前記丸編機は、同じコースの編みにおいて、前記地糸が全てループを編み、前記表糸がループを編むか糸を針に掛けずにウェルトにするかで前記地糸と組み合わせるよう選針するように制御することとを含み、 前記コースは、1本の前記表糸と1本の前記地糸とで構成され、 一部の前記表糸は、糸を針に掛けずにウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも前記表糸と前記地糸をループに編ませる」に訂正する。 (請求項6の記載を引用する請求項7、8も同様に訂正する。) (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に 「前記表糸は、糸を針に掛けてウェルトにする前の編みとその後の編みがいずれも前記表糸と前記地糸をループに編ませる」とあるのを、 「各前記表糸は、糸を針に掛けずにウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも前記表糸と前記地糸をループに編ませる」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に 「前記表糸の色は前記地糸の色と異なる」とあるのを、 「前記表糸の色は前記地糸の色と異なり、かつ前記2つの制御の動作の切り替えは、前記丸編機が1つのコースを完成することを条件とする」に訂正する。 (8)訂正事項8 明細書の【0008】に 「糸を針に掛けてウェルトにする」とあるのを、 「糸を針に掛けずにウェルトにする」に訂正する。 (9)訂正事項9 明細書の【0009】に 「糸を針に掛けてウェルトにする」とあるのを、 「糸を針に掛けずにウェルトにする」に訂正する。 (10)訂正事項10 明細書の【0014】に 「表糸30をウェルトにするとは、糸を針に掛けて実施する」とあるのを、 「表糸30をウェルトにするとは、糸を針に掛けずに実施する」に訂正する。 (11)訂正事項11 明細書の【0016】に 「Wは表糸30を針に掛けることを表す」、「糸を針に掛けてウェルトにする」とあるのを、 「Wは表糸30を針に掛けないことを表す」、「糸を針に掛けずにウェルトにする」に訂正する。 (12)訂正事項12 明細書の【0017】に 「糸を針に掛けて実施し」とあるのを、 「糸を針に掛けずに実施し」に訂正する。 (13)訂正前の請求項1~8について、請求項2~5は請求項1を引用する関係にあり、請求項7、8は請求項6を引用する関係にあるから、特許請求の範囲に係る本件訂正は、一群の請求項〔1~5〕、〔6~8〕について請求されたものである。 また、明細書に係る本件訂正は、一群の請求項〔1~5〕、〔6~8〕について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 「前記1つのコースは、1本の前記表糸と1本の前記地糸とで構成され」との記載を追加することは、1つのコースについて、1本の表糸と1本の地糸で構成されることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記訂正は、明細書の【0014】、【0016】及び図3の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当しない。 さらに、上記訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 イ 第1ブロックについて「前記1つのコースにおいて」との記載を追加することは、表糸と地糸が全てループするのが1つのコースにおけるものであることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記訂正は、明細書の【0014】、【0016】及び図3の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当しない。 さらに、上記訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 ウ 第2ブロックについて「前記1つのコースにおいて」と「前記第2ブロックでは、一部の前記表糸が、ウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも前記地糸とループする」との記載を追加することは、地糸が全てループし、表糸がループ、ウェルトのいずれかで地糸と組み合わせるのが、1つのコースにおけるものであることを限定するとともに、一部の表糸が、ウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも地糸とループすることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記訂正は、明細書の【0014】、【0016】及び図3の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当しない。 さらに、上記訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、各表糸が、ウェルトにする前後において地糸とループする編みが、ウェルトにする直前と直後のものであることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2は、明細書の【0014】、【0016】及び図3の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当しない。 さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 (3)訂正事項3、4について 訂正事項3、4は、「第1ブロック」、「第2ブロック」について、その切り替えの条件を限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項3、4は、明細書の【0017】の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当しない。 さらに、訂正事項3、4は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 (4)訂正事項5について ア 「前記丸編み機は同じコースの編み」を「前記丸編み機は、同じコースの編み」と読点を追加するとともに、「同じ前記コースの編み」を「同じコースの編み」と「前記」を削除することは、前者と後者の「同じコースの編み」が、同じ制御におけるものでないことを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、上記訂正は、明細書の【0016】及び図3の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当しない。 さらに、上記訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 イ 「糸を針に掛けてウェルトにする」を「糸を針に掛けずにウェルトにする」とすることは、誤記の訂正を目的とするものである。 また、上記訂正は、緯編編み物の編み方において針に糸を掛けずにウェルトにすることは技術常識であって、丸編機の分野における通常の知識を有する者なら、訂正前の記載について本来の意味を把握できるものであり、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるので、新規事項の追加に該当しない。 さらに、上記訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 ウ 「前記コースは、1本の前記表糸と1本の前記地糸とで構成され」との記載、及び「一部の前記表糸は、糸を針に掛けずにウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも前記表糸と前記地糸をループに編ませる」との記載を追加することは、緯編編み物の編み方において針に糸を掛けずにウェルトにすることは技術常識であることも踏まえると、上記(1)と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 (5)訂正事項6について 訂正前の「前記表糸は、糸を針に掛けてウェルトにする前の編みとその後の編みがいずれも前記表糸と前記地糸をループに編ませる」を「各前記表糸は、糸を針に掛けずにウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも前記表糸と前記地糸をループに編ませる」とすることは、上記(4)イ、ウと同様に、誤記の訂正及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)訂正事項7について 訂正事項7は、表糸がループを編むかウェルトにするかで地糸と組み合わせるよう選針する「制御」について、その動作の切り替えの条件を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項7は、明細書等の【0017】の記載に基づくものであるから新規事項を追加するものではない。 さらに、訂正事項7は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (7)訂正事項8~12について 訂正事項8~12は、上記(4)イと同様に、誤記の訂正を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 訂正の適否のまとめ 以上のとおり、訂正事項1~12に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、〔6~8〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~8に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 丸編機を用いて、表糸と地糸によって編まれる緯編編み物であって、 前記緯編編み物は、少なくとも1つの第1ブロックと少なくとも1つの第2ブロックとを含み、前記少なくとも1つの第1ブロックと前記少なくとも1つの第2ブロックは、それぞれ、少なくとも1つのコースを含み、前記1つのコースは、1本の前記表糸と1本の前記地糸とで構成され、前記第1ブロックでは、前記1つのコースにおいて、前記表糸と前記地糸が全てループし、前記表糸と前記地糸の相対位置は同じ前記コースで一定ではなく、前記第2ブロックでは、前記1つのコースにおいて、前記地糸が全てループし、前記表糸がループ、ウェルトのいずれかで前記地糸と組み合わせ、前記第2ブロックでは、一部の前記表糸が、ウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも前記地糸とループすることを特徴とする緯編編み物。 【請求項2】 前記緯編編み物は、複数の前記第1ブロックと複数の前記第2ブロックとを含み、複数の前記第1ブロックと複数の前記第2ブロックは交互に形成されることを特徴とする請求項1に記載の緯編編み物。 【請求項3】 前記第2ブロックでは、各前記表糸が、ウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも前記地糸とループすることを特徴とする請求項1又は2に記載の緯編編み物。 【請求項4】 前記表糸の色は前記地糸の色と異なり、かつ前記第1ブロックと前記第2ブロックの切り替えは、前記丸編機が前記1つのコースを完成することを条件とすることを特徴とする請求項3に記載の緯編編み物。 【請求項5】 前記表糸の色は前記地糸の色と異なり、かつ前記第1ブロックと前記第2ブロックの切り替えは、前記丸編機が前記1つのコースを完成することを条件とすることを特徴とする請求項1に記載の緯編編み物。 【請求項6】 表糸と地糸で編む丸編機で実施する緯編編み物の編み方であって、 前記丸編機は、同じコースの編みにおいて選択的に標準給糸と逆給糸のいずれかにより前記表糸と前記地糸を給糸するよう制御することにより、前記表糸と前記地糸のループを編んだ後の相対位置は同じ前記コースにおいて一定ではないことと、 前記丸編機は、同じコースの編みにおいて、前記地糸が全てループを編み、前記表糸がループを編むか糸を針に掛けずにウェルトにするかで前記地糸と組み合わせるよう選針するように制御することとを含み、 前記コースは、1本の前記表糸と1本の前記地糸とで構成され、 一部の前記表糸は、糸を針に掛けずにウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも前記表糸と前記地糸をループに編ませることを特徴とする緯編編み物の編み方。 【請求項7】 各前記表糸は、糸を針に掛けずにウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも前記表糸と前記地糸をループに編ませることを特徴とする請求項6に記載の緯編編み物の編み方。 【請求項8】 前記表糸の色は前記地糸の色と異なり、かつ前記2つの制御の動作の切り替えは、前記丸編機が1つのコースを完成することを条件とすることを特徴とする請求項6に記載の緯編編み物の編み方。」 第4 取消理由通知(決定の予告)の概要 当審において令和7年3月11日付けで通知した取消理由通知(決定の予告)の概要は以下のとおりである。 理由1(新規性)本件の請求項1、6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、当該請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 理由2(進歩性)本件の請求項1、2、5、6、8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、同請求項3、4、7に係る発明は、甲1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 引用文献一覧 甲第1号証:特許第7089126号公報 甲第2号証:特開2001-355157号公報 (以下「甲第○号証」を「甲○」という。) 第5 当審における判断 1 引用文献について (1)甲1について ア 甲1の記載 甲1には以下の記載がある。なお、下線は当審において付与したものである。以下同様。 (ア)「【0017】 図5~図9が参照されるとおり、複数の編針11のそれぞれが編成する時には表糸30及び裏糸31が給糸され、表糸30のフック部111内での位置は裏糸31より高い。複数の編針11の1つが選針装置14の制御を受けて第1ハーフステッチ軌跡20で移動する時には、編針11の1つが引き込まれてループが形成される過程で、表糸30の裏糸31に対する位置が変わらず、図6及び図7に示すように、標準プレーティング(Standard Plating)が編まれ、当該標準プレーティングとは編み物の技術上の正面から観察すると、表糸30が裏糸31の上方に位置するプレーティングである。また、複数の編針11の1つが選針装置14の制御を受けて第2ハーフステッチ軌跡21で移動する時には、編針11の1つが表糸30を牽引する過程で、表糸30がしばらくの間複数のシンカー12の1つの傾斜面121に持たれて、傾斜面121から表糸30が滑り出して、裏糸31に対する位置が変わり、図8及び図9に示すように、交換プレーティング(Interchanged Plating)が編まれ、当該交換プレーティングとは編み物の当該技術上の正面から観察すると、表糸30が裏糸31の下方に位置するプレーティングである。また、本発明により編み上げた編み物は図10に示すとおりである。さらに、本発明では表糸30の裏糸31に対する位置を変えており、表糸30がフック部111に給糸される時に、位置が裏糸31より明らかに高い他に、ラッチ部112とフック部111がつながった場所から遠く、フック部111内の広い部分にあるため、表糸30の位置が変わる過程では糸が引っかかったり糸替えが順調に行われるという問題はない。」 (イ)「【0020】 図11が参照されるとおり、一実施例では、複数の編針11のそれぞれは制御を受けて第1ハーフステッチ軌跡20、第2ハーフステッチ軌跡21及び平編軌跡23で移動することができる。第1ハーフステッチ軌跡20及び第2ハーフステッチ軌跡21のそれぞれにより複数の編針11のそれぞれが表糸30及び裏糸31を引っ掛けてプレーティングを生成させ、平編軌跡23により複数の編針11のそれぞれが裏糸31だけを引っ掛けてプレーティングを生成させる。これにより、複数の編針11のそれぞれが平編軌跡23で動作する場合には、編み物にメッシュ(MESH)を生成させて、当該編み物に変色と違う他のスタイルを付与し、当該編み物の形態は図12に示すように、図12の領域40、41はそれぞれ当該標準プレーティング又は当該交換プレーティングから形成される部分で、番号42の部分は本発明でいうメッシュである。これにより本発明では変色編成の過程で所定の編み場所でメッシュが生成されることで、編み物に変化が増える。」 (ウ)「【図10】 [図:0001435150000001.jpg] 」 イ 甲1の記載から認定できる事項 (ア)図10に示される編み物に関しての【0017】及び図の第1ハーフステッチ軌跡20と第2ハーフステッチ軌跡21についての記載、【0020】の「第1ハーフステッチ軌跡20及び第2ハーフステッチ軌跡21のそれぞれにより複数の編針11のそれぞれが表糸30及び裏糸31を引っ掛けてプレーティングを生成させ」との記載、及び図6~9において表糸30と裏糸31がフック部111内に引っ掛けられていることを踏まえると、図10の領域40及び41においては、表糸と裏糸が全てループしていることは明らかであり、また、領域40と領域41で、表糸と裏糸のどちらが上方に位置するかが入れ替わっている、すなわち、表糸と裏糸の相対位置は同じコースで一定でないことも明らかである。また、図10から、領域40と領域41で色調が異なっていることが看取できることや、【0020】の「編み物にメッシュ(MESH)を生成させて、当該編み物に変色と違う他のスタイルを付与し」との記載から、表糸の色は裏糸の色と異なることが明らかである。 (イ)上記(ア)及び【0020】の「平編軌跡23により複数の編針11のそれぞれが裏糸31だけを引っ掛けてプレーティングを生成させる。これにより、複数の編針11のそれぞれが平編軌跡23で動作する場合には、編み物にメッシュ(MESH)を生成させ」との記載から、メッシュは、裏糸だけを引っ掛けることにより生成するものであり、技術常識を考慮すると、表糸はウェルトされているといえる。 そうすると、以下の参考図のメッシュを含むコース群の図上左側部分における表側の糸を表糸とすると、メッシュ42を含むコース群は、裏糸が全てループし、表糸がループ、ウェルトのいずれかで裏糸と組み合わせるものであることが理解できる。 また、メッシュを含まないコース群は、図10に示される編み物と同様に、参考図の図上左側部分と同右側部分で色調が異なっていることが看取できるから、表糸と裏糸が全てループし、表糸と裏糸の位置のどちらが上方位置するかが入れ替わっている、すなわち、表糸と裏糸の相対位置は同じコースで一定ではないことも明らかである。 〔参考図〕(図12を基に当審において説明文等を付加したものである。) [図:0001435150000002.jpg] (ウ)甲1の「円形編み機」による編み物は、緯編みであることは技術常識から明らかである。 (エ)上記(イ)のメッシュ42を含むコース群において、メッシュ42を除く部分の色調が、参考図の図上左側部分と右側部分で異なっていることと、左側部分にメッシュ42が含まれていること、及び【0020】の記載も踏まえると、甲1の円形編み機は、同じコースの編みにおいて、選択的に標準プレーティングの給糸と交換プレーティングの給糸のいずれかにより表糸と裏糸を給糸するよう制御し、同じ前記コースの編みにおいて、裏糸が全てループを編み、表糸がループを編むか糸を針に掛けないでウェルトにするかで裏糸と組み合わせるよう選針するように制御することが理解できる。 また、上記(イ)のメッシュを含まないコース群において、参考図の図上左側部分と右側部分で色調が異なっていることが看取できるから、甲1の円形編み機は、同じコースの編みにおいて、選択的に標準プレーティングの給糸と交換プレーティングの給糸のいずれかにより表糸と裏糸を給糸するよう制御することにより、表糸と裏糸のループを編んだ後の相対位置は同じコースにおいて一定ではない制御をすることが明らかである。 ウ 甲1に記載された発明 (ア)甲1発明A 上記ア、イ(ア)~(ウ)より、甲1には、図12に示される編み物に係る次の発明(以下「甲1発明A」という。)が記載されていると認められる。 「円形編み機を用いて、表糸と裏糸によって編まれる緯編編み物であって、 緯編編み物は、 表糸の色は裏糸の色と異なり、 メッシュを含むコース群とメッシュを含まないコース群とを含み、 メッシュを含まないコース群は、表糸と裏糸が全てループし、表糸と裏糸の相対位置は同じコースで一定ではなく、 メッシュを含むコース群は、裏糸が全てループし、表糸がループ、ウェルトのいずれかで裏糸と組み合わせるものである緯編編み物。」 (イ)甲1発明B 上記ア、イ(ア)~(エ)より、甲1には、図12に示される編み物の編み方に係る次の発明(以下「甲1発明B」という。)も記載されていると認められる。 「表糸と裏糸で編む円形編み機で実施する緯編編み物の編み方であって、 表糸の色は裏糸の色と異なり、 円形編み機は、メッシュを含まないコース群における同じコースの編みにおいて、選択的に標準プレーティングの給糸と交換プレーティングの給糸のいずれかにより表糸と裏糸を給糸するよう制御することにより、表糸と裏糸のループを編んだ後の相対位置は同じコースにおいて一定ではないよう制御することと、 円形編み機は、メッシュを含むコース群における同じコースの編みにおいて、 選択的に標準プレーティングの給糸と交換プレーティングの給糸のいずれかにより表糸と裏糸を給糸するよう制御することにより、表糸と裏糸のループを編んだ後の相対位置は同じコースにおいて一定ではないよう制御することと、同じコースの編みにおいて、裏糸が全てループを編み、表糸がループを編むか糸を針に掛けないでウェルトにするかで裏糸と組み合わせるよう選針するように制御することとを含む緯編編み物の編み方。」 (2)甲2について ア 甲2の記載 甲2には以下の記載がある。 「【0002】 【従来の技術】シングルニット編機によるシングルメッシュ編成方法については、一般によく知られているように、シリンダー側のカムをメッシュ編成用カムに交換し、ダイヤルループを作らずシリンダーループだけで編成している。 【0003】図4に示すシリンダー針軌跡2において、シングルメッシュを編成するときは、第1フィーダF1でグランド糸8を全ての針6に給糸し、グランド糸8は次の第2フィーダF2でループを作る。第2フィーダF2のメッシュフィーダではシリンダー針6はニット選針2aまたはウエルト選針2bされ、ニット選針された針はメッシュ糸とグランド糸の両方の糸とともにループを作る。他方ウエルト選針された針はメッシュ糸の給糸を受けず、グランド糸のみのループを作り、メッシュ糸は編地裏をフロート状に横走りする。 【0004】一般にシングルメッシュ編地は天竺ループ部と細かい穴明き状の、いわゆるメッシュループ部で柄が構成され、図5に示すように、穴明き調のメッシュ編地として使用される。」 「図5 [図:0001435150000003.jpg] 」 イ 甲2の記載から認定できる事項 上記アの「シリンダー針軌跡2」(【0003】)との記載から、上記アの記載は丸編み機で編成される編地に関するものであることがわかる。 ウ 甲2に記載された技術的事項 上記ア、イより、甲2には以下の技術的事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「丸編み機で編成されるシングルメッシュ編地のメッシュ部分において、グランド糸8のみがループを作り、メッシュ糸10はウエルトにされることにより横走りし、メッシュ糸10はウエルトにされる直前の編みと直後の編みにおいて、グランド糸8とともにループを作っていること。」 2 取消理由の検討 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明Aを対比する。 (ア)甲1発明Aの「円形編み機」は本件発明1の「丸編機」に相当し、以下同様に、「表糸」は「表糸」に、「裏糸」は「地糸」に、「緯編編み物」は「緯編編み物」に、「コース」は「コース」に、「ループ」は「ループ」に、「ウェルト」は「ウェルト」に、それぞれ相当する。 (イ)上記(ア)を踏まえると、甲1発明Aの「円形編み機を用いて、表糸と裏糸によって編まれる緯編編み物」は、本件発明1の「丸編機を用いて、表糸と地糸によって編まれる緯編編み物」に相当する。 (ウ)本件発明1の「第1ブロック」、「第2ブロック」は、「少なくとも1つのコースを含」むものであることを踏まえると、甲1発明Aの「コース群」もブロックをなすものといえる。 そして、甲1発明Aの「メッシュを含まないコース群」は、本件発明1の「第1ブロック」に相当し、同様に、「メッシュを含むコース群」は、「第2ブロック」に相当する。 また、甲1発明Aの「コース群」のうちの1つのコースは、1本の表糸と1本の裏糸で構成されるといえるから、「メッシュを含まないコース群」は、そのうちの1つのコースにおいて、表糸と裏糸が全てループしており、「メッシュを含むコース群」は、そのうちの1つのコースにおいて、「裏糸が全てループし、表糸がループ、ウェルトのいずれかで裏糸と組み合わせるものである」ことは技術常識からみて明らかである。 (エ)上記(ア)~(ウ)を踏まえると、甲1発明Aの「緯編編み物は、」「メッシュを含むコース群とメッシュを含まないコース群とを含み、メッシュを含まないコース群は、表糸と裏糸が全てループし、表糸と裏糸の相対位置は同じコースで一定ではなく、メッシュを含むコース群は、裏糸が全てループし、表糸がループ、ウェルトのいずれかで裏糸と組み合わせるものであ」ることは、本件発明1の「前記緯編編み物は、少なくとも1つの第1ブロックと少なくとも1つの第2ブロックとを含み、前記少なくとも1つの第1ブロックと前記少なくとも1つの第2ブロックは、それぞれ、少なくとも1つのコースを含み、前記1つのコースは、1本の前記表糸と1本の前記地糸とで構成され、前記第1ブロックでは、前記1つのコースにおいて、前記表糸と前記地糸が全てループし、前記表糸と前記地糸の相対位置は同じ前記コースで一定ではなく、前記第2ブロックでは、前記1つのコースにおいて、前記地糸が全てループし、前記表糸がループ、ウェルトのいずれかで前記地糸と組み合わせ」ることに相当する。 以上を総合すると、本件発明1と甲1発明Aの一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点A1] 「丸編機を用いて、表糸と地糸によって編まれる緯編編み物であって、 前記緯編編み物は、少なくとも1つの第1ブロックと少なくとも1つの第2ブロックとを含み、前記少なくとも1つの第1ブロックと前記少なくとも1つの第2ブロックは、それぞれ、少なくとも1つのコースを含み、前記1つのコースは、1本の前記表糸と1本の前記地糸とで構成され、前記第1ブロックでは、前記1つのコースにおいて、前記表糸と前記地糸が全てループし、前記表糸と前記地糸の相対位置は同じ前記コースで一定ではなく、前記第2ブロックでは、前記1つのコースにおいて、前記地糸が全てループし、前記表糸がループ、ウェルトのいずれかで前記地糸と組み合わせる緯編編み物。」 [相違点A1] 本件発明1は、「前記第2ブロックでは、一部の前記表糸が、ウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも前記地糸とループする」のに対し、甲1発明Aは、かかる構成を有するか不明な点。 イ 判断 相違点A1について検討する。 甲1発明Aと甲2記載事項は、丸編み機で編成される、メッシュを含む編地に関するものである点で共通する。 そうすると、甲1発明Aのメッシュを含むコース群における表糸と裏糸の構成として、甲2記載事項を適用することで、相違点A1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 したがって、本件発明1は、甲1発明A及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 特許権者の主張について (ア)主張の概要 特許権者は、令和7年6月16日の意見書の5(4)(ア)(ア-2)において以下のとおり主張する。 (主張1)「甲2には、単に、全てを1針メッシュとする構造が開示されているのみであります。また、メッシュ構造を変更できるものではありません。」 (主張2)「甲1発明における「メッシュを含むコース群(第2ブロック)」を、「前記第2ブロックでは、前記1つのコースにおいて、前記地糸が全てループし、前記表糸がループ、ウェルトのいずれかで前記地糸と組み合わせ、前記第2ブロックでは、一部の前記表糸が、ウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも前記地糸とループする」ことが、当業者が容易に発明をすることができたとは到底考えられません。」 (イ)主張1についての検討 当該主張は本件発明1の請求項の記載に基づくものではない。仮に本件発明1がメッシュ構造を変更できるものであるとしても、甲2においてメッシュ構造を変更できないとする理由はない。 (ウ)主張2についての検討 上記ア、イで説示したとおり、甲1発明Aにおいては、表糸が、ウェルトとなっている部分の直前と直後において表糸がループしているか否かは不明であるが、甲1発明Aに甲2記載事項を適用することで本件発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。そして、特許権者は、前記適用が容易ではないとする具体的な根拠を何ら示していない。 仮に、上記主張2が、第2ブロックには、ウェルトを有する一つのコースとは別に、ウェルトを有しない他のコースもあることを主張しているのだとしても、甲1発明Aの「メッシュを含むコース群」のうち一部のコースをメッシュを含まないようにすることは適宜なし得たことである。 あるいは、甲1発明は、図12及び上記参考図に示されるように、メッシュを含まないコース群も有するものであるから、甲1発明Aの「メッシュを含むコース群(第2ブロック)」として、「メッシュを含まないコース群(第1ブロック)」の一部のコースを含ませることは、どのコースを「メッシュを含むコース群(第2ブロック)」の中のコースと見なし、どのコースを「メッシュを含まないコース群(第1ブロック)」の中のコースと見なすかに係るもの、すなわち、どのコースをどのブロックに含むものと見なすかに係るものに過ぎず、実質的な相違点となるものではない。 (エ)主張についてのまとめ 上記(イ)、(ウ)のとおりであるから、特許権者の上記主張1、2は採用できない。 エ 小括 したがって、本件発明1は、甲1発明A及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明2について ア 対比 本件発明2と甲1発明Aを対比すると、両者は一致点A1で一致し、相違点A1のほか、次の相違点A2で相違する。 [相違点A2] 本件発明2は、「複数の前記第1ブロックと複数の前記第2ブロックとを含み、複数の前記第1ブロックと複数の前記第2ブロックは交互に形成される」のに対し、甲1発明Aは、かかる構成を有するか不明な点。 イ 判断 相違点A1についての判断は、上記(1)で説示したとおりである。 次に相違点A2について検討する。甲1の図12又は上記参考図には、メッシュを含むコース群の上下にメッシュを含まないコース群が設けられていることが看取される。また、上記参考図の赤囲いより上下方向の外側において、別のメッシュを含まないコース群やメッシュを含むコース群が設けられていることも看取される。 そうすると、甲1発明Aにおいて、相違点A2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者であれば所望により適宜なし得た程度のことである。 ウ 小括 したがって、本件発明2は、甲1発明A及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件発明3について ア 対比 本件発明3と甲1発明Aを対比すると、両者は一致点A1で一致し、相違点A1、A2のほか、次の相違点A3で相違する。 [相違点A3] 本件発明3は、「前記第2ブロックでは、各前記表糸が、ウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも前記地糸とループする」のに対し、甲1発明Aは、かかる構成を有するか不明な点。 イ 判断 相違点A1、A2についての判断は、上記(1)、(2)で説示したとおりである。 次に相違点A3について検討する。相違点A3は、相違点A1の構成が、第2ブロックの全部の表糸に対して当てはまることを特定したものであり、その判断も、上記(1)で説示したことと同様である。 ウ 小括 したがって、本件発明3は、甲1発明A及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)本件発明4について ア 対比 本件発明4と甲1発明Aを対比すると、甲1A発明の「表糸の色は裏糸の色と異な」ることは、本件発明4の「前記表糸の色は前記地糸の色と異な」ることに相当する。 そうすると両者は、次の一致点A2で一致し、相違点A1、A2、A3のほか、次の相違点A4において相違する。 [一致点A2] 「丸編機を用いて、表糸と地糸によって編まれる緯編編み物であって、 前記緯編編み物は、少なくとも1つの第1ブロックと少なくとも1つの第2ブロックとを含み、前記少なくとも1つの第1ブロックと前記少なくとも1つの第2ブロックは、それぞれ、少なくとも1つのコースを含み、前記1つのコースは、1本の前記表糸と1本の前記地糸とで構成され、前記第1ブロックでは、前記1つのコースにおいて、前記表糸と前記地糸が全てループし、前記表糸と前記地糸の相対位置は同じ前記コースで一定ではなく、前記第2ブロックでは、前記1つのコースにおいて、前記地糸が全てループし、前記表糸がループ、ウェルトのいずれかで前記地糸と組み合わせ、 前記表糸の色は前記地糸の色と異なる緯編編み物。」 [相違点A4] 本件発明4は、「かつ前記第1ブロックと前記第2ブロックの切り替えは、前記丸編機が前記1つのコースを完成することを条件とする」のに対し、甲1発明Aは、かかる構成を有するか不明な点。 イ 判断 相違点A1、A2、A3についての判断は、上記(1)~(3)で説示したとおりである。 次に相違点A4について検討する。第1ブロックと第2ブロックの切り替えは、緯編編み物のデザイン上の要請などに応じて当業者が予め設定し得ることであり、例えば、メッシュを含むコースとメッシュを含まないコースを1つのコースごとに交互に配置すること、すなわち、相違点A4に係る本件発明4のような条件とすることは、当業者であれば適宜設定し得たことである。 ウ 小括 したがって、本件発明4は、甲1発明A及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)本件発明5について ア 対比、判断 本件発明5と甲1発明Aを対比すると、両者は、一致点A2で一致し、相違点A1、A4において相違する。 そして、相違点A1、A4についての判断は、上記(1)、(4)で説示したとおりである。 イ 小括 したがって、本件発明5は、甲1発明A及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6)本件発明6について ア 対比 本件発明6と甲1発明Bを対比する。 (ア)本件発明6と甲1発明Bの相当関係は、上記(1)アと同様のことがいえる。さらに、甲1発明Bの「編み方」は本件発明6の「編み方」に相当し、以下同様に、「標準プレーティングの給糸」は「標準給糸」に、「交換プレーティングの給糸」は「逆給糸」に、それぞれ相当する。また、甲1発明Bの「コース群」のうちの1つのコースは、1本の表糸と1本の地糸で構成され、「メッシュを含まないコース群」は、そのうちの1つのコースにおいて、表糸と地糸が全てループし、「メッシュを含むコース群」は、そのうちの1つのコースにおいて、「裏糸が全てループを編み、表糸がループを編むか糸を針に掛けないでウェルトにするかで裏糸と組み合わせる」ことは技術常識からみて明らかである。 (イ)上記(ア)を踏まえると、甲1発明Bの「表糸と裏糸で編む円形編み機で実施する緯編編み物の編み方」は、本件発明6の「表糸と地糸で編む丸編機で実施する緯編編み物の編み方」に相当する。 (ウ)上記(ア)、(イ)を踏まえると、甲1発明Bの「円形編み機は、メッシュを含まないコース群における同じコースの編みにおいて、選択的に標準プレーティングの給糸と交換プレーティングの給糸のいずれかにより表糸と裏糸を給糸するよう制御することにより、表糸と裏糸のループを編んだ後の相対位置は同じコースにおいて一定ではないよう制御することと、円形編み機は、メッシュを含むコース群における同じコースの編みにおいて、選択的に標準プレーティングの給糸と交換プレーティングの給糸のいずれかにより表糸と裏糸を給糸するよう制御することにより、表糸と裏糸のループを編んだ後の相対位置は同じコースにおいて一定ではないよう制御することと、同じコースの編みにおいて、裏糸が全てループを編み、表糸がループを編むか糸を針に掛けないでウェルトにするかで裏糸と組み合わせるよう選針するように制御することとを含む」ことは、本件発明6の「前記丸編機は、同じコースの編みにおいて選択的に標準給糸と逆給糸のいずれかにより前記表糸と前記地糸を給糸するよう制御することにより、前記表糸と前記地糸のループを編んだ後の相対位置は同じ前記コースにおいて一定ではないことと、前記丸編機は、同じコースの編みにおいて、前記地糸が全てループを編み、前記表糸がループを編むか糸を針に掛けずにウェルトにするかで前記地糸と組み合わせるよう選針するように制御することとを含み、前記コースは、1本の前記表糸と1本の前記地糸とで構成され」ることに相当する。 以上を総合すると、本件発明6と甲1発明Bの一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点B1] 「表糸と地糸で編む丸編機で実施する緯編編み物の編み方であって、 前記丸編機は、同じコースの編みにおいて選択的に標準給糸と逆給糸のいずれかにより前記表糸と前記地糸を給糸するよう制御することにより、前記表糸と前記地糸のループを編んだ後の相対位置は同じ前記コースにおいて一定ではないことと、 前記丸編機は、同じコースの編みにおいて、前記地糸が全てループを編み、前記表糸がループを編むか糸を針に掛けずにウェルトにするかで前記地糸と組み合わせるよう選針するように制御することとを含み、 前記コースは、1本の前記表糸と1本の前記地糸とで構成される緯編編み物の編み方。」 [相違点B1] 本件発明6は、「一部の前記表糸は、糸を針に掛けずにウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも前記表糸と前記地糸をループに編ませる」のに対し、甲1発明Bは、かかる構成を有するか不明な点。 イ 判断 相違点B1は相違点A1と同様のものであり、その判断も上記(1)で説示したことと同様である。 ウ 小括 したがって、本件発明6は、甲1発明B及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (7)本件発明7について ア 対比 本件発明7と甲1発明Bを対比すると、一致点B1で一致し、相違点B1のほか次の相違点B2で相違する。 [相違点B2] 本件発明7は、「各前記表糸は、糸を針に掛けずにウェルトにする直前の編みとその直後の編みがいずれも前記表糸と前記地糸をループに編ませる」のに対し、甲1発明Bは、かかる構成を有するか不明な点。 イ 判断 相違点B1についての判断は、上記(6)で説示したとおりである。 次に相違点B2について検討する。相違点B2は、相違点A3と同様のものであるから、その判断も上記(3)で説示したことと同様である。 ウ 小括 したがって、本件発明7は、甲1発明B及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (8)本件発明8について ア 対比 本件発明8と甲1発明Bを対比すると、甲1発明Bの「表糸の色は裏糸の色と異な」ることは、本件発明8の「前記表糸の色は前記地糸の色と異な」ることに相当する。 そうすると両者は、次の一致点B2で一致し、相違点B1のほか、次の相違点B3において相違する。 [一致点B2] 「表糸と地糸で編む丸編機で実施する緯編編み物の編み方であって、 前記丸編機は、同じコースの編みにおいて選択的に標準給糸と逆給糸のいずれかにより前記表糸と前記地糸を給糸するよう制御することにより、前記表糸と前記地糸のループを編んだ後の相対位置は同じ前記コースにおいて一定ではないことと、 前記丸編機は、同じコースの編みにおいて、前記地糸が全てループを編み、前記表糸がループを編むか糸を針に掛けずにウェルトにするかで前記地糸と組み合わせるよう選針するように制御することとを含み、 前記コースは、1本の前記表糸と1本の前記地糸とで構成され、 前記表糸の色は前記地糸の色と異なる緯編編み物の編み方。」 [相違点B3] 本件発明8は、「前記2つの制御の動作の切り替えは、前記丸編機が1つのコースを完成することを条件とする」のに対し、甲1発明Bは、かかる構成を有するか不明な点。 イ 判断 相違点B1についての判断は、上記(6)で説示したとおりである 次に相違点B3について検討する。相違点B3は、相違点A4と同様のものであるから、その判断も上記(4)で説示したことと同様である。 ウ 小括 したがって、本件発明8は、甲1発明B及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本件発明1~8は、甲1発明A又は甲1発明B、及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、請求項1~8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700014

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