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特許異議申立

2026-700374

研磨パッド及びその製造方法

審判番号
2026-700374
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-059713
登録番号
7765194
請求日
2026年04月28日
審決日
2026年06月19日
公報発行日
2026年07月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】富士紡ホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】田中 伸一郎
  • 【権利者代理人】須田 洋之
  • 【権利者代理人】山崎 一夫
  • 【権利者代理人】服部 博信
  • 【権利者代理人】松田 七重
  • 【権利者代理人】佐々木 康匡
  • 【異議申立人】芳野 理之
審判長/審判官
  • 審判長 小宮 慎司
  • 審判官 松永 稔
  • 審判官 原田 貴志
分類
P1651.121-Y (H10P) / P1651.537-Y (H10P)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7765194号発明「研磨パッド及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7765194号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7765194号の請求項1~8に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和3年3月31日に出願され、令和7年10月28日にその特許権の設定登録がされ、同年11月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和8年4月28日に特許異議申立人 芳野理之(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。(申立人により提出された特許異議申立書を以下「申立書」という。) 第2 本件発明 特許第7765194号の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 複数の涙形状気泡を含むポリウレタンシートを有する研磨層を備える研磨パッドであって、 前記ポリウレタンシートが、ポリアルキレンオキシド単位を含むノニオン性界面活性剤を含まず、且つ、撥水剤及びイオン性界面活性剤を含む、前記研磨パッド。 【請求項2】 前記ポリウレタンシートが、エーテル結合由来の酸素原子を有するノニオン性界面活性剤を含まない、請求項1に記載の研磨パッド。 【請求項3】 前記イオン性界面活性剤がアニオン性界面活性剤である、請求項1又は2に記載の研磨パッド。 【請求項4】 前記アニオン性界面活性剤がスルホコハク酸アルキルエステルナトリウム塩である、請求項3に記載の研磨パッド。 【請求項5】 前記撥水剤が、フッ素系撥水剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の研磨パッド。 【請求項6】 酸性スラリー又はアルカリ性スラリーを用いた化学機械研磨に用いるための、請求項1~5のいずれか1項に記載の研磨パッド。 【請求項7】 酸性スラリーを用いた化学機械研磨に用いるための、請求項1~6のいずれか1項に記載の研磨パッド。 【請求項8】 ポリウレタン樹脂、撥水剤及びイオン性界面活性剤を含む溶液であって、且つポリアルキレンオキシド単位を含むノニオン性界面活性剤を含まない前記溶液を用意する工程、前記溶液を成膜基材上に塗布する工程、及び前記溶液が塗布された成膜基材を凝固液に浸漬してポリウレタン樹脂を凝固させ、ポリウレタンシートを得る工程を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、次の甲第1号証~甲第3号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲3」という。)を証拠方法とし、以下の申立理由1~2により、本件特許を取り消すべきものである旨申し立てた。 甲1: 特開2017-74649号公報 甲2: 特開2006-297515号公報 甲3: 特開2021-8002号公報 1 申立理由1(進歩性欠如) 本件発明1~8は、甲1及び甲2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~8に係る特許は、同法第113条第2号により取消されるべきものである。 2 申立理由2(サポート要件違反) 本件発明1~4、7は、特許法第36条第6項第1号を満たしていないから、本件の請求項1~4、7に係る特許は、同法第113条第4号により取消されるべきものである。 第4 申立理由の検討 1 申立理由1(進歩性欠如)について (1) 甲1発明 ア 甲1の記載 甲1には次の記載がある。(下線は、引用箇所を示すために、当審において付加した。) 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 特許文献1に記載されているような研磨パッドを用いた場合、研磨面の吸水性が高いことに起因して、研磨レートを向上させることができる。しかしながら、このような研磨パッドを用いると、研磨パッドと被研磨物との吸着力が増大し、その吸着に起因して、様々な問題が発生してしまう。その問題として、具体的には、スラリの流動性低下による研磨品質の低下、被研磨物の飛び出し、研磨機への負荷の増大が挙げられる。一方、特許文献2に記載されているような研磨パッドを用いた場合、研磨面の吸水性が低くなることに起因して、一定程度の被研磨物との吸着の抑制を図ることができるが、100%モジュラスが10MPa以下であるような軟質な樹脂からなり、研磨面を有する樹脂シートを備える研磨パッドとしたときは、当該樹脂自体が有する粘着性に起因して、被研磨物との吸着の抑制を十分に図ることができない。 【0006】 そこで、本発明は、高い研磨レートを維持しつつ、かつ、研磨パッドと被研磨物との吸着を抑制した、研磨パッドを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは、上記従来技術の課題を解決すべく鋭意検討した結果、所定値以下の100%モジュラスであるポリウレタン樹脂からなり、研磨面を有するポリウレタン樹脂シートを備える研磨パッドであって、該ポリウレタン樹脂シートが、所定値以上の平均開口径及び所定値以上の開口率を有し、撥水剤を含有し、当該研磨面と水との接触角が所定値以上である研磨パッドを用いることで、高い研磨レートを維持しつつ、かつ、研磨パッドと被研磨物との吸着を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。 【0008】 すなわち、本発明は以下のとおりである。 [1] 被研磨物を研磨するための研磨面を有し、100%モジュラスが10MPa以下であるポリウレタン樹脂からなるポリウレタン樹脂シートを備え、 前記ポリウレタン樹脂シートの平均開口径が、40μm以上であり、かつ、前記ポリウレタン樹脂シートの開口率が、15%以上であり、 前記ポリウレタン樹脂シートは、撥水剤を含有し、 前記研磨面と水との接触角が、100度以上である、研磨パッド。 ・・・(中略)・・・ 【0009】 【図1】本発明に係る研磨パッドの一例を模式的に示す断面図である。 【発明を実施するための形態】 ・・・(中略)・・・ 【0021】 樹脂シート112は、樹脂等のマトリックスを構成する材料(以下、「マトリックス材料」という。)中に複数の気泡(図示しない。)を有するものであり、所謂湿式成膜法により形成されたものであっても、乾式成型法により形成されたものであってもよいが、本発明の目的をより有効かつ確実に達成する観点から、好ましくは湿式成膜法により形成されたものである。樹脂シート112が湿式成膜法により形成されたものである場合、研磨面P側に図示しない緻密な微多孔が形成されたスキン層を有していてもよい。スキン層の表面は微細な平坦性を有している。一方、スキン層のより内側(樹脂シート112の内部)には、スキン層の微多孔よりも大きな孔径で樹脂シート112の厚さ方向に沿って丸みを帯びた断面三角状の空孔(連続気泡;図示しない。)が形成されていてもよい。その空孔は、研磨面P側の大きさが、研磨面Pと反対の面側よりも小さく形成されていてもよい。樹脂シート112には、スキン層の微多孔よりも大きく空孔よりも小さいサイズの孔(図示しない。)が形成されていてもよい。スキン層の微多孔、空孔及び小さいサイズの孔は互いに連通孔で網目状につながっていてもよい。 【0022】 研磨面Pの接触角は、研磨面Pにおける水の接触角であり、100度以上であり、100度以上150度以下であることが好ましく、100度以上140度以下であることがより好ましく、110度以上140度以下であることがさらに好ましく、120度以上130度以下がよりさらに好ましい。また、研磨面Pの撥水性をより正確に評価するために、滴下後120秒後に接触角を測定する。接触角が100度以上であることにより、被研磨物との吸着が抑制される。この要因は、接触角が100℃以上であることにより、被研磨物との親和性が低下することに起因するものと推察される(ただし、要因はこれに限定されない)。接触角がこのような範囲にある研磨面Pを得るためには、例えば、後述する撥水剤の種類及び含有量を調整することや樹脂シート112を構成するマトリックス材料の種類及び量を調整すればよい。接触角は、後述する実施例に記載の方法により測定する。 ・・・(中略)・・・ 【0037】 樹脂シート112は、樹脂、撥水剤、カーボンブラック以外に、本発明の課題解決を阻害しない範囲で、研磨パッドの樹脂シートに通常用いられる材料を含んでもよい。さらには、樹脂シート112には、樹脂シート112の製造過程において用いられた溶媒等の各種の材料が、本発明の課題解決を阻害しない範囲で残存していてもよい。 ・・・(中略)・・・ 【実施例】 【0056】 以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 【0057】 (実施例1) 原料の樹脂として、100%モジュラスが6.0MPaのポリエステル系MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)ポリウレタン樹脂を用いた。このポリウレタン樹脂をDMFに溶解させた20質量%の溶液100質量部に対して、溶媒としてDMFを45質量部、顔料としてカーボンブラックを15質量%含むDMF分散液40質量部(全固形分に対する含有量は22.8質量%)と、撥水剤として、パーフルオロヘキシル化合物を含むDIC株式会社製の商品名「クリスボンアシスター SD-38」(有効成分は、全量に対して60質量%)を0.60質量部(全固形分に対する有効成分の含有割合が1.4質量%)添加して、混合撹拌し、樹脂溶液を調製した。次に、成膜用基材として、PETフィルムを用意し、そこに、上記樹脂溶液を塗布した。この際、塗布装置のクリアランスを0.72mmに設定した。 【0058】 次いで、得られた塗膜を成膜用基材と共に、凝固液である水と10質量%のDMFとからなる18℃の凝固浴に浸漬し、樹脂を凝固再生して前駆体シートを得た。前駆体シートを凝固浴から取り出し、成膜用基材を前駆体シートから剥離した後、前駆体シートを水からなる室温の洗浄液(脱溶剤浴)に浸漬し、溶媒であるDMFを除去して樹脂シートを得た。その後、樹脂シートを乾燥しつつ巻き取った。次に、樹脂シートの表面スキン層(成膜用基材に接触していなかった面)に対してバフ処理を施して、0.4mmの厚さとした。その後、樹脂シートの表面側から表面をエンボス加工し、表面に溝(溝幅(凹部と凹部との幅):3.0mm、溝間隔(凸部と凸部との幅):17mm、平面形状:格子状、断面形状:矩形状)を設けた研磨パッドを得た。 【0059】 次に、樹脂シートのバフ処理を施した面に対して反対側の面に、PET製の基材の両面に接着層(材質:アクリル系樹脂)を有し、更に片面に剥離紙を有する両面テープを、その剥離紙とは反対側の接着層で貼り合わせた後、外径90cmの円形に裁断し研磨パッドを得た。 【0060】 (接触角) 研磨パッドについて、接触角を次のように測定した。接触角計として固液界面解析装置(協和界面科学社製、商品名「DropMaster500」)を用い、温度20℃、湿度60%の条件の下、注射針から水滴1滴(2μL)を研磨パッドの研磨面に滴下し、120秒後の接触角(研磨前)を測定した。測定結果を表1に示す。表中の「測定不可」とは、滴下した水滴が研磨パッドに吸水されてしまい、測定できなかったことを示す。 【0061】 (吸着力) 研磨パッドについて、被研磨物との吸着力を次のように測定した。80mm角試料に加工した研磨パッドを水に15分以上浸漬した後、付着した水を拭き取らずに100mm角ガラスに試料を貼り付けた。その後、100mm角ガラスの上に10kgの重りを乗せ、1分間保持した。重りを乗せたまま、速度100mm/minで、測定装置(エー・アンド・デイ社製の商品名「テンシロン万能試験機RTC」)により100mm角ガラスを1cm程度の距離を、滑車を介して水平方向に引っ張り、荷重ピーク値を測定した。さらに、この荷重ピーク値の測定を5回繰り返し、計6回の荷重ピーク値の平均を吸着力(研磨前)とした。また、後述する研磨パッド(研磨後)の試料を用いて、上記同様に吸着力(研磨後)を測定した。測定結果を表1に示す。 【0062】 (研磨レート) 研磨パッドについて、以下の研磨条件で研磨加工を行い、研磨レートを測定した。測定では、研磨パッドを研磨機の所定位置に装着し、ワーク(被研磨物)としてシリコンウエハを用い、まず10枚のシリコンウエハ(ダミーウエハ)を研磨加工後、10枚のシリコンウエハについて研磨加工を行い、研磨レートを測定した。研磨レートは、研磨加工前後のシリコンウエハの厚さの差である研磨量を、研磨時間で除して表したものであり、研磨加工前後のシリコンウエハについて、各々121箇所の厚み測定結果の平均値から求めた。厚み測定は、光学式膜厚膜質測定器(KLAテンコール社製、商品名「ASET-F5x」、測定:DBSモード)を用い、研磨レート(研磨前)を測定した。なお、研磨パッドは、その表面を、予め、ダイヤモンドドレッサを用いて、圧力9N、研磨ヘッドおよび研磨定盤の回転数54rpm、超純水供給量200mL/min、ドレッシング時間30分のドレッシング条件でドレッシングしてから測定に用いた。また、研磨パッドの樹脂シートの厚さを、初期の厚さに対して、90%の厚さになるまで研磨した研磨パッド(研磨後)を準備した。この研磨パッドを用いて、上記同様に研磨レート(研磨後)を測定した。測定結果を表1に示す。 【0063】 <研磨条件> 使用研磨機:(株)荏原製作所製、商品名「F-REX300」 研磨速度(定盤回転数):70rpm 研磨ヘッド回転数:71rpm 加工圧力:220g/cm2 スラリ:コロイダルシリカスラリ(pH:11.5) スラリ流量:200mL/分 研磨時間:60秒 被研磨物:TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)付きシリコンウエハ(12インチ) 【0064】 (実施例2) 撥水剤の添加量を、ポリウレタン樹脂溶液100質量部に対して0.50質量部(全固形分に対する有効成分の含有割合が1.1質量%)に変更した以外は実施例1と同様にして研磨パッドを作製し、各測定を行った。各測定の結果を表1に示す。 ・・・(中略)・・・ 【0069】 【表1】 [図:0001437448000001.jpg] 」 イ 甲1発明 (ア) 上記アの段落0008、0056~0064、0069の記載によると、表1には、実施例1、2として、撥水剤を含有し、且つ、ノニオン界面活性剤を含まない、被研磨物を研磨するための研磨面を有するポリウレタン樹脂シートを備える研磨パッドが記載されているといえる。 (イ) 上記(ア)を踏まえると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。(括弧内は引用元の段落番号等を示す。なお「樹脂シート112」との記載は、「ポリウレタン樹脂シート」と改めて認定した。) 「被研磨物を研磨するための研磨面を有し、100%モジュラスが10MPa以下であるポリウレタン樹脂からなるポリウレタン樹脂シートを備え、 前記ポリウレタン樹脂シートの平均開口径が、40μm以上であり、かつ、前記ポリウレタン樹脂シートの開口率が、15%以上であり、 前記ポリウレタン樹脂シートは、撥水剤を含有し、 前記研磨面と水との接触角が、100度以上である、研磨パッド(段落0008)であって、 ポリウレタン樹脂シートは、樹脂等のマトリックスを構成する材料中に複数の気泡を有するものであり、好ましくは湿式成膜法により形成されたものであり(段落0021)、 樹脂、撥水剤、カーボンブラック以外に、本発明の課題解決を阻害しない範囲で、研磨パッドの樹脂シートに通常用いられる材料を含んでもよく(段落0037)、ノニオン界面活性剤を含まない(上記(ア))、 研磨パッド。」 (2) 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 ア 本件発明1と甲1発明とは、いずれも「研磨パッド」に係る発明である点で共通する。 ここで、本件特許に係る明細書(以下「本件明細書」という。)の段落0011の「本発明の複数の涙形状気泡を有するポリウレタンシートは、湿式成膜法により形成されたポリウレタンシートと言い換えることができる。」との記載によると、甲1発明の「ポリウレタン樹脂シート」も、「湿式成膜法により形成されたもの」であるから、「複数の涙形状気泡を含むポリウレタンシート」といえる。 そして、甲1発明が備える「ポリウレタン樹脂シート」は、「被研磨物を研磨するための研磨面」を有するから、「複数の涙形状気泡を含むポリウレタンシートを有する研磨層」といえる。 そうすると、甲1発明が備える「ポリウレタン樹脂シート」は、「複数の涙形状気泡を含むポリウレタンシートを有する研磨層を備える研磨パッド」といえる点で、本件発明1の「研磨パッド」と共通する。 イ 甲1発明が備える「ポリウレタン樹脂シート」は、「撥水剤を含有し」、「ノニオン界面活性剤を含まない」から、「ポリアルキレンオキシド単位を含むノニオン性界面活性剤を含まず、且つ、撥水剤を含む」点で本件発明1と共通する。 ウ 一致点・相違点 以上を踏まえると、本件発明1と甲1発明とは次の点で一致し、相違する。 (ア) 一致点 「複数の涙形状気泡を含むポリウレタンシートを有する研磨層を備える研磨パッドであって、 前記ポリウレタンシートが、ポリアルキレンオキシド単位を含むノニオン性界面活性剤を含まず、且つ、撥水剤を含む、前記研磨パッド。」 (イ) 相違点 本件発明1が「イオン性界面活性剤」を含むのに対し、甲1発明の「ポリウレタン樹脂シート」が「樹脂、撥水剤、カーボンブラック以外に、本発明の課題解決を阻害しない範囲で、研磨パッドの樹脂シートに通常用いられる材料を含んでもよい」ものであるところ、「イオン性界面活性剤」について特定していない点。 (3) 相違点の判断 甲1発明において、相違点に係る本件発明1の構成とすることは、いずれの証拠にも、記載も示唆もされていないから、本件発明1は甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 また、本件発明1の構成をすべて含む本件発明2~8についても同様である。 したがって、申立理由1(進歩性欠如)は理由がない。 (4) 申立人の主張について ア 申立人は、申立書18ページ7行~19ページ下から3行において、相違点について、甲1発明に、甲2に記載された「研磨パッドのポリウレタン樹脂に用いられている親水性添加剤であるラウリル硫酸ナトリウムを添加すること」は当業者が容易に想到できる旨主張する。 イ しかしながら、甲1の段落0007の記載によると、甲1発明は、「研磨面と水との接触角が所定値以上である研磨パッドを用いることで、高い研磨レートを維持しつつ、かつ、研磨パッドと被研磨物との吸着を抑制」するものである。 そして、甲1発明に界面活性剤を含有させた場合に、研磨面と水との接触角がより小さくなることは技術常識であって、界面活性剤を含有させることは、本発明の課題解決を阻害するものといえるから、甲2の記載にかかわらず、甲1発明に「イオン性界面活性剤」を含有させ、相違点に係る本件発明1の構成とすることには阻害要因が存在する。 したがって、申立人の主張は採用できない。 ウ 加えて、甲2には次の記載がある。 「【0017】 (研磨パッドの製造) 研磨パッド1は、図2に示す各工程を経て製造される。まず、準備工程では、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒のN,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)、発泡3及び微細発泡4の形成させるための親水性添加剤を混合してポリウレタン樹脂を溶解させる。ポリウレタン樹脂には、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂から選択して用い、例えば、ポリウレタン樹脂が30%となるようにDMFに溶解させる。また、ポリウレタン樹脂の溶解時に、別の添加剤として、カーボンブラック等の顔料、ポリウレタン樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性活性剤等を適宜添加することができる。 【0018】 親水性添加剤としては、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、燐酸エステル塩等のアニオン界面活性剤を使用する。ポリウレタン樹脂に対する親水性添加剤の添加量は、発泡3及び微細発泡4のスキン層2a側での孔径、数に応じて設定する。得られた混合溶液を濾過することで凝集塊等を除去した後、真空下で脱泡してポリウレタン樹脂溶液を得る。 ・・・(中略)・・・ 【0026】 ここで、発泡3及び微細発泡4の形成について説明すると、ポリウレタン樹脂溶液45の凝固液25との界面でポリウレタン樹脂が凝固再生するときに、ポリウレタン樹脂溶液45に添加した親水性添加剤の作用で脱溶媒(凝固液25の浸入)の生じるポイントが増加するため、微多孔の数が増加すると共に、樹脂溶液層への水の浸透性を向上させ、DMFの置換速度を増大させる。その後の脱溶媒がスキン層2aの微多孔を通じて生じるため、スキン層2aに形成された微多孔数が増加したことで脱溶媒が速やかに進行するので、発泡3及び微細発泡4の数が増加し孔径が小さくなると共に、細長い発泡が形成される。このため、発泡3及び微細発泡4は、スキン層2aからポリウレタンシート2の厚さの少なくとも15%を超えるまで平均25μm以下の孔径が維持され、この範囲では、発泡3及び微細発泡4の数がスキン層2aに沿う方向の長さ1mmあたりで30個以上となる。また、PET製フィルムの成膜基材43が水を浸透させないため、脱溶媒がスキン層2a側でのみ生じることから、発泡3及び微細発泡4は成膜基材43側がスキン層2a側より大きく形成され、発泡3及び微細発泡4を連通する連通孔の孔径は微多孔の孔径より大きくなる。」 エ 上記ウによると、甲2において、親水性添加剤としてのアニオン界面活性剤は、平均25μm以下の孔径の発泡3及び微細発泡4を形成するために添加されるものである。 そして、甲1発明は、「平均開口径が、40μm以上」であって、敢えて、孔径を25μm以下とするアニオン界面活性剤を添加する動機付けも存在しないから、甲1発明に「イオン性界面活性剤」を含有させ、相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものではない。 (5) 申立理由1のまとめ 以上のとおり、申立理由1は理由がない。 2 申立理由2(サポート要件違反)について (1) 申立人の主張 ア 申立人は、申立書24~26ページの「3.(4)オ.(ア)」において、撥水剤としてフッ素ポリウレタン樹脂を含有する実施例1に係る研磨パッドの内容を、撥油性の有無に起因して挙動が異なるフッ素系以外の撥水剤を含有する本件発明1~4の範囲まで拡張ないし一般化することができないから、本件発明1~4は、サポート要件を満たしていない旨主張する。 イ また、申立人は、申立書26~27ページの「3.(4)オ.(イ)」において、酸性スラリーが含む砥粒として導電点がpH8~9程度のアルミナを含む酸性スリラーを用いる場合、負のゼータ電位を持つポリウレタンシートの発泡表面に正のゼータ電位を持つアルミナが吸着することにより、発泡内部にアルミナが凝集・蓄積することによって、砥粒として、等電点がpH1~3程度のシリカを含む酸性スラリーを用いる場合と、挙動が異なるから、砥粒の種類を特定しない本件発明7の範囲まで拡張ないし一般化することはできないから、本件発明7は、サポート要件を満たしていない旨主張する。 (2) 当審の判断 ア 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ そして、本件特許明細書の段落0016の記載によると、発明の詳細な説明には、ポリウレタンシート中にポリアルキレンオキシド単位を含むノニオン性界面活性剤が含まれると、ポリアルキレンオキシド由来の複数の酸素原子とスラリー中に含まれる砥粒(例えばコロイダルシリカ)表面に存在するヒドロキシル基(OH)との間で水素結合が生じ、砥粒がポリウレタンシート内のノニオン性界面活性剤部分に吸着し、砥粒が吸着した界面活性剤部分が核となって、砥粒が凝集・蓄積されていき、涙形状気泡内部に大きな凝集物が生成され、砥粒がポリウレタンシート内に凝集・蓄積されると、ポリウレタンシートが次第に硬化し、弾性が失われ、これにより、ポリウレタンシートが伸びを有さなくなるため、脆化することとなり、摩耗劣化が激しくなって、耐摩耗性が低下するとの発明の課題が記載されているといえる。 そして、撥水剤の種類、化学機械研磨におけるスラリーの種類にかかわらず、当業者は、本件発明1が、ポリウレタンシートがポリアルキレンオキシド単位を含むノニオン性界面活性剤を含まないことにより、水素結合を介した砥粒のポリウレタンシート内への付着・凝集を抑制し、耐摩耗性を向上させるによって、上記発明の課題を解決するものと認識できるから、本件発明1~4、7はサポート要件に適合する。 したがって、申立人の主張は採用できない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2026-700374

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