特許異議申立
2025-700528
多層基材、該多層基材を備える多層フィルム、該多層フィルムを備える積層体および該積層体を備える包装材料
- 審判番号
- 2025-700528
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-130304
- 登録番号
- 7594744
- 請求日
- 2025年05月14日
- 審決日
- 2026年03月12日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】伏見 俊介
- 【異議申立人】赤松 智信
- 審判長/審判官
- 審判長 岩谷 一臣
- 審判官 長清 吉範
- 審判官 一ノ瀬 薫
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7594744号発明「多層基材、該多層基材を備える多層フィルム、該多層フィルムを備える積層体および該積層体を備える包装材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7594744号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第7594744号の請求項1~5、8に係る特許を維持する。
特許第7594744号の請求項6~7に係る特許についての特許異議申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7594744号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和元年7月31日に出願した特願2019-141727号の一部を令和5年8月9日に新たな特許出願としたものであって、令和6年11月27日にその特許権の設定登録がされ、令和6年12月5日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和7年5月14日:特許異議申立人赤松智信(以下「申立人」という。)による、請求項1~8に係る特許に対する特許異議の申立て
令和7年7月18日付け:取消理由通知書
令和7年9月16日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和7年11月19日:申立人による意見書の提出(以下「意見書」という。)
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は、訂正箇所に当審において付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「無機酸化物」との記載を、「酸化珪素」に訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~5、8も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1における「極性基を有する樹脂材料」との記載を、「極性基を有する樹脂材料(但し、ポリウレタンを除く)」に訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~5、8も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1における「かつ前記コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、」との記載の後に、「前記コート層における前記極性基を有する樹脂材料の含有量は、70質量%以上であり、」の記載を追加する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~5、8も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3における「前記コート層の前記樹脂材料」との記載を、「前記コート層の前記極性基を有する樹脂材料」に訂正する(請求項3を直接的又は間接的に引用する請求項4、5、8も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3における「MXDナイロン、アモルファスナイロンおよびポリウレタンから選択される1以上の樹脂材料である」との記載を、「MXDナイロンおよびアモルファスナイロンから選択される1以上の樹脂材料である」に訂正する(請求項3を直接的又は間接的に引用する請求項4、5、8も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8における「請求項1~7」との記載を「請求項1~5」と訂正する。
(9)一群の請求項について
請求項2~8は、訂正の対象である請求項1を引用するものであるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~8〕に対して請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「無機酸化物」を「酸化珪素」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書の【0046】に基づく訂正であるから、新規事項の追加に該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「極性基を有する樹脂材料」との記載を、「極性基を有する樹脂材料(但し、ポリウレタンを除く)」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、新規事項の追加に該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項1の「コート層」について、「コート層における前記極性基を有する樹脂材料の含有量は、70質量%以上であ」るものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書の【0038】に基づく訂正であるから、新規事項の追加に該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
訂正前の請求項1には「コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み」と記載されていたが、訂正前の請求項1を引用している訂正前の請求項3には「前記コート層の前記樹脂材料」と記載されており、不明瞭な状態であった。訂正事項4は、訂正前の請求項3の「前記コート層の前記樹脂材料」を、「前記コート層の前記極性基を有する樹脂材料」に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4は、願書に添付した明細書の【0035】、【0036】の記載に基づく訂正であるから、新規事項の追加に該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、請求項3の「MXDナイロン、アモルファスナイロンおよびポリウレタンから選択される1以上の樹脂材料である」を、「MXDナイロンおよびアモルファスナイロンから選択される1以上の樹脂材料である」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5は、選択肢を限定するものであって、新規事項の追加に該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)訂正事項6、7について
訂正事項6、7は、それぞれ訂正前の請求項6、7を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(7)訂正事項8について
訂正事項8は、訂正前の請求項8の「請求項1~7」を「請求項1~5」と引用する請求項数を減少させる訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項8は、本件訂正によって削除される請求項6、7を引用するという不明瞭な状態を解消するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。
そして、訂正事項8は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、本件訂正のとおり訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求は認められるから、本件特許の請求項1~5、8に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5、8に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
積層フィルムとシーラント層とを備える積層体であって、
前記積層フィルムは、多層基材と、酸化珪素を含む蒸着膜と、バリアコート層とを備え、
当該多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層とコート層とを備え、
前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、
かつ前記コート層が、極性基を有する樹脂材料(但し、ポリウレタンを除く)を含み、
前記コート層における前記極性基を有する樹脂材料の含有量は、70質量%以上であり、
前記多層基材の総厚さに対する、前記コート層の厚さの割合が、1%以上20%以下であり、
前記積層フィルムは、前記コート層上に前記蒸着膜を備え、
前記積層フィルムは、前記蒸着膜上に前記バリアコート層を備え、
前記バリアコート層は、金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種を含み、且つ、無機層状化合物は含まないガスバリア性塗布膜からなり、
前記シーラント層がポリエチレンにより構成され、
前記多層基材は、前記コート層を除き、ポリプロピレンとは異種の樹脂材料により構成される基材を備えない
ことを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記コート層の厚さが、0.1μm以上10μm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記コート層の前記極性基を有する樹脂材料が、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエステル、ポリエチレンイミン、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、MXDナイロンおよびアモルファスナイロンから選択される1以上の樹脂材料である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
コート層は、水系エマルジョンまたは溶剤系エマルジョンを用いて形成された層である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
包装材料用途に用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。」
「【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体を備えることを特徴とする、包装材料。」
第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、当審において通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(進歩性)
請求項1~8に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2に例示される周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)取消理由2(明確性要件)
本件特許は、特許請求の範囲の請求項7、8の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
<引用文献一覧>
甲1:国際公開第2014/157652号(申立人が提出した甲第1号証)
甲2:特開2010-89321号公報(同甲第2号証)
第5 当審の判断
1 取消理由1(進歩性)について
(1)引用文献の記載及び引用発明
ア 甲1発明
甲1には、特に[0090]に記載の実施例1に着目すると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「二軸延伸後の熱固定処理により、面配向係数ΔPを0.011に調整した厚さ20μmのOPPフィルム(基材)を用意し、
基材の一方の面に、シランカップリング剤、アクリルポリオール及びイソシアネート化合物を含む複合物と溶媒とを混合して得られた塗液をグラビアコートし、加熱乾燥することで約0.3μmのウレタン系樹脂からなるアンカーコート層を形成し、
次に、アンカーコート層上に、電子線加熱方式により、O/Alの比が1.2、厚さ15nmの酸化アルミニウム薄膜を形成し、
次いで、テトラエトキシシラン加水分解溶液とポリビニルアルコール/水/イソプロピルアルコール混合溶液を混合することによって溶液を用意し、この溶液をグラビアコートによって塗工することによって厚さ500nmのオーバーコート層を酸化アルミニウム薄膜上に形成した、ガスバリア積層体。」
イ 周知技術
甲2の【0002】、【0034】を踏まえると、以下の事項は周知の技術であると認められる。
「食品の包装材料に用いられる、ガスバリア層を持つ合成樹脂フィルムにおいて、ポリエチレンからなるシーラント層を形成すること。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「OPPフィルム(基材)」、「アンカーコート層」及び「オーバーコート層」は、それぞれ、本件発明1の「ポリプロピレン樹脂層」、「コート層」、及び「バリアコート層」に相当する。また、甲1発明の「酸化アルミニウム薄膜」は、本件発明1の「酸化珪素を含む蒸着膜」と、「無機酸化物の蒸着膜」である限りで一致する。
甲1発明の「ガスバリア積層体」は、本件発明1の「積層フィルム」に相当するとともに、積層体であることにほかならないから、同「積層フィルムとシーラント層とを備える積層体」と、「積層フィルムを備える積層体」である限りにおいて一致する。
甲1発明における「OPPフィルム(基材)」と、その一方の面に形成された「アンカーコート層」は、まとめて本件発明1の「多層基材」に相当するとともに、その構成からみて、本件発明1の「当該多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層とコート層とを備え」たものに相当する。
甲1発明の「OPPフィルム(基材)」は、「二軸延伸」されたものであるから、本件発明1と同様、「前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施され」たものである。
甲1発明の「ウレタン系樹脂からなるアンカーコート層」は、ウレタン系樹脂が極性基を有する樹脂であることは明らかであるから、本件発明1の「前記コート層が、極性基を有する樹脂材料(但し、ポリウレタンを除く)を含」むことと、「前記コート層が、極性基を有する樹脂材料を含」む限りで一致する。
甲1発明の「厚さ20μmのOPPフィルム(基材)を用意し、基材の一方の面に・・・約0.3μmのウレタン系樹脂からなるアンカーコート層を形成し」ている構成は、OPPフィルム(基材)とアンカーコート層の総厚さに対して、アンカーコート層の厚さの割合が、約1.5%(=0.3/(20+0.3)×100=約1.48)であるから、本件発明1の「前記多層基材の総厚さに対する、前記コート層の厚さの割合が、1%以上20%以下であ」る構成に相当する。
甲1発明の「ガスバリア積層体」において、「アンカーコート層上に・・・酸化アルミニウム薄膜を形成し」た構成は、本件発明1の「前記積層フィルムは、前記コート層上に前記蒸着膜を備え」る構成に相当する。
甲1発明の「ガスバリア積層体」において、「オーバーコート層を酸化アルミニウム薄膜上に形成し」た構成は、本件発明1の「前記積層フィルムは、前記蒸着膜上に前記バリアコート層を備え」る構成に相当する。
甲1発明の「テトラエトキシシラン加水分解溶液とポリビニルアルコール/水/イソプロピルアルコール混合溶液を混合することによって溶液を用意し、この溶液をグラビアコートによって塗工することによって厚さ500nmのオーバーコート層を・・・形成し」た構成は、本件発明1の「前記バリアコート層は、金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種を含み、且つ、無機層状化合物は含まないガスバリア性塗布膜からな」る構成に相当する。
上記のとおり、甲1発明の「OPPフィルム(基材)」と「アンカーコート層」は、本件発明1の「多層基材」に相当するところ、その構造からみて、本件発明1の「前記多層基材は、前記コート層を除き、ポリプロピレンとは異種の樹脂材料により構成される基材を備えない」構成に相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(ア)一致点
「積層フィルムを備える積層体であって、
前記積層フィルムは、多層基材と、無機酸化物を含む蒸着膜と、バリアコート層とを備え、
当該多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層とコート層とを備え、
前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、
かつ前記コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、
前記多層基材の総厚さに対する、前記コート層の厚さの割合が、1%以上20%以下であり、
前記積層フィルムは、前記コート層上に前記蒸着膜を備え、
前記積層フィルムは、前記蒸着膜上に前記バリアコート層を備え、
前記バリアコート層は、金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種を含み、且つ、無機層状化合物は含まないガスバリア性塗布膜からなり、
前記多層基材は、前記コート層を除き、ポリプロピレンとは異種の樹脂材料により構成される基材を備えない、積層体。」
(イ)相違点1
「積層体」について、本件発明1は「積層フィルムとシーラント層とを備える積層体であって、」「前記シーラント層がポリエチレンにより構成され」ているのに対して、甲1発明の「ガスバリア積層体」は、シーラント層を備えていない点。
(ウ)相違点2
「無機酸化物を含む蒸着膜」について、本件発明1は「酸化珪素を含む蒸着膜」であるのに対し、甲1発明は「酸化アルミニウム薄膜」である点。
(エ)相違点3
「コート層」について、本件発明1は「極性基を有する樹脂材料(但し、ポリウレタンを除く)を含」むものであるのに対し、甲1発明は「ウレタン系樹脂からなる」点。
ウ 判断
事案に鑑み、まず上記相違点2について検討する。
甲1発明は、「フィルム基材に酸化アルミニウムを積層した従来のガスバリア積層体においては、基材と酸化アルミニウム薄膜との密着性が弱い」([0006])という知見を前提に、「ボイル・レトルト処理においても、OPPフィルム基材に対する酸化アルミニウム薄膜の密着性を維持できるガスバリア積層体及びガスバリア積層体の製造方法を提供すること」([0008])を課題としたものである。
すなわち、甲1発明においては、フィルム基材に酸化アルミニウムを積層したものであることが発明の前提となっており、必須の事項である。
そうすると、仮に、ガスバリア積層体の技術分野において、蒸着膜として酸化珪素を含むものを用いることや、酸化アルミニウム薄膜に替えて酸化珪素を含むものを用いることが周知技術であったとしても、甲1発明において、必須の事項である酸化アルミニウム薄膜を酸化珪素を含むものに変更することには動機付けがなく、むしろ、阻害事由が存在する。
そして、申立人が提示した全ての証拠をみても、当該事情を覆滅するに足る記載も示唆も見いだせない。
したがって、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
以上より、本件発明1は、上記相違点1、3について検討するまでもなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~5、8について
本件発明2~5、8は、本件発明1の有する発明特定事項をすべて含むものであるから、上記(2)ウと同様、本件発明2~5、8は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明とすることができたものではない。
(4)まとめ
よって、本件発明1~5、8は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
2 取消理由2(明確性)について
本件訂正により請求項7は削除されたため、請求項7及び請求項7を引用する請求項8に係る当該取消理由2は、その理由が解消した。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~5、8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~5、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項6~7に係る特許は、本件訂正により削除されたため、申立人による特許異議の申立てにおける請求項6~7に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700528