特許異議申立
2025-700512
電子情報記憶媒体、ICチップ、レコード処理方法、及びプログラム
- 審判番号
- 2025-700512
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-018300
- 登録番号
- 7582527
- 請求日
- 2025年05月12日
- 審決日
- 2025年08月21日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人インテクト国際特許事務所
- 【異議申立人】赤松 智信
- 審判長/審判官
- 審判長 林 毅
- 審判官 脇岡 剛
- 審判官 福西 章人
- 分類
- P1651.121-Y (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7582527号発明「電子情報記憶媒体、ICチップ、レコード処理方法、及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7582527号の請求項1~20に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許第7582527号(以下、「本件特許」という。)についての特許出願は、令和6年2月9日を出願日とする特願2024-18300号であって、令和6年11月5日にその特許権が設定登録され、令和6年11月13日にその特許公報が発行された。そして、令和7年5月12日に、特許異議申立人 赤松 智信(以下、単に「申立人」という。)による特許異議の申立てがなされた。本件特許に係る手続の経緯は、以下のとおりである。
令和6年 5月10日付け:拒絶理由通知
令和6年 7月17日 :意見書及び補正書の提出
令和6年 9月26日付け:特許査定
令和6年11月 5日 :特許権の設定登録
令和6年11日13日 :特許掲載公報の発行
令和7年 5月12日 :特許異議申立書の提出
第2 本件特許発明
特許第7582527号の請求項1~20に係る発明(以下、それぞれ本件特許発明1~本件特許発明20という。)は、特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体であって、
前記レコードの識別情報を管理するための管理テーブルを保持する保持手段と、
外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信する受信手段と、
前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合に、当該管理テーブルの要素に対応付けられる前記レコード記憶領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを当該レコード記憶領域に書き込む処理手段と、
を備えることを特徴とする電子情報記憶媒体。
【請求項2】
レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体であって、
前記レコードの識別情報を管理するための管理テーブルを保持する保持手段と、
外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信する受信手段と、
前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合に、前記書き込みコマンドに含まれるレコードを前記レコード記憶領域に書き込むことなく、エラーを示すレスポンスを前記外部装置へ送信する処理手段と、
を備えることを特徴とする電子情報記憶媒体。
【請求項3】
前記処理手段は、前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていないと判定された場合に、前記複数のレコード記憶領域のうち、前記レコードが書き込まれていないレコード記憶領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込み、且つ、当該レコード記憶領域に対応付けられる管理テーブルの要素に前記書き込みコマンドに含まれる識別情報を登録することを特徴とする請求項1または2に記載の電子情報記憶媒体。
【請求項4】
前記受信手段は、前記外部装置から読み出し対象となるレコードの識別情報を含む読み出しコマンドを受信し、
前記処理手段は、前記読み出しコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が登録されている管理テーブルの要素を検索し、当該検索された管理テーブルの要素に対応付けられる前記レコード記憶領域から前記レコードを読み出し、当該読み出されたレコードを含むレスポンスを前記外部装置へ送信することを特徴とする請求項1または2に記載の電子情報記憶媒体。
【請求項5】
アプリケーションにより使用されるファイルに論理的に格納されるレコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体であって、
外部装置からレコード、及び当該レコードのレコード番号と当該レコードが格納されるファイルの識別子とを結合した値を含む書き込みコマンドを受信する受信手段と、
前記複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域の第1領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込み、且つ、当該レコードが書き込まれる当該レコード記憶領域の第2領域に前記書き込みコマンドに含まれる前記レコード番号と前記識別子とを結合した値を書き込む処理手段と、
を備えることを特徴とする電子情報記憶媒体。
【請求項6】
前記書き込みコマンドに含まれる前記レコード番号と前記識別子とを結合した値と一致するレコード番号とファイルの識別子とを結合した値が何れかの前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されているか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記処理手段は、前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる前記レコード番号と前記識別子とを結合した値と一致するレコード番号とファイルの識別子とを結合した値が前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されていると判定された場合に、当該レコード記憶領域の第1領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを当該第1領域に書き込むことを特徴とする請求項5に記載の電子情報記憶媒体。
【請求項7】
レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体であって、
外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信する受信手段と、
前記複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域の第1領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込み、且つ、当該レコードが書き込まれる当該レコード記憶領域の第2領域に前記書き込みコマンドに含まれる識別情報を書き込む処理手段と、
前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が何れかの前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されているか否かを判定する判定手段と、
を備え、
前記処理手段は、前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されていると判定された場合に、前記書き込みコマンドに含まれるレコードを前記レコード記憶領域に書き込むことなく、エラーを示すレスポンスを前記外部装置へ送信することを特徴とする電子情報記憶媒体。
【請求項8】
レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体であって、
外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信する受信手段と、
前記複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域の第1領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込み、且つ、当該レコードが書き込まれる当該レコード記憶領域の第2領域に前記書き込みコマンドに含まれる識別情報を書き込む処理手段と、
前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が何れかの前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されているか否かを判定する判定手段と、
を備え、
前記処理手段は、前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されていると判定された場合に、当該レコード記憶領域の第1領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを当該第1領域に書き込み、
前記処理手段は、前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されていないと判定された場合に、前記レコード記憶領域の配列に基づいて、前記レコードが書き込まれていないレコード記憶領域を検索し、当該検索されたレコード記憶領域の第1領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込み、且つ、当該レコードが書き込まれる当該レコード記憶領域の第2領域に前記書き込みコマンドに含まれる識別情報を書き込むことを特徴とする電子情報記憶媒体。
【請求項9】
前記処理手段は、前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されていないと判定された場合に、前記レコード記憶領域の配列に基づいて、前記レコードが書き込まれていないレコード記憶領域を検索し、当該検索されたレコード記憶領域の第1領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込み、且つ、当該レコードが書き込まれる当該レコード記憶領域の第2領域に前記書き込みコマンドに含まれる識別情報を書き込むことを特徴とする請求項7に記載の電子情報記憶媒体。
【請求項10】
前記受信手段は、複数の前記書き込みコマンドを順次受信し、
それぞれの前記書き込みコマンドに含まれる前記レコードの内容は互いに異なることを特徴とする請求項5乃至9の何れか一項に記載の電子情報記憶媒体。
【請求項11】
前記受信手段は、前記外部装置から読み出し対象となるレコードのレコード番号と当該レコードが格納されるファイルの識別子とを結合した値を含む読み出しコマンドを受信し、
前記処理手段は、前記読み出しコマンドに含まれる前記レコード番号と前記識別子とを結合した値と一致するレコード番号とファイルの識別子とを結合した値が記憶されている前記レコード記憶領域を検索し、当該検索されたレコード記憶領域から前記レコードを読み出し、当該読み出されたレコードを含むレスポンスを前記外部装置へ送信することを特徴とする請求項5または6に記載の電子情報記憶媒体。
【請求項12】
レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備えるICチップであって、
前記レコードの識別情報を管理するための管理テーブルを保持する保持手段と、
外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信する受信手段と、
前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合に、当該管理テーブルの要素に対応付けられる前記レコード記憶領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを当該レコード記憶領域に書き込む処理手段と、
を備えることを特徴とするICチップ。
【請求項13】
レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備えるICチップであって、
前記レコードの識別情報を管理するための管理テーブルを保持する保持手段と、
外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信する受信手段と、
前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合に、前記書き込みコマンドに含まれるレコードを前記レコード記憶領域に書き込むことなく、エラーを示すレスポンスを前記外部装置へ送信する処理手段と、
を備えることを特徴とするICチップ。
【請求項14】
アプリケーションにより使用されるファイルに論理的に格納されるレコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備えるICチップであって、
外部装置からレコード、及び当該レコードのレコード番号と当該レコードが格納されるファイルの識別子とを結合した値を含む書き込みコマンドを受信する受信手段と、
前記複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域の第1領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込み、且つ、当該レコードが書き込まれる当該レコード記憶領域の第2領域に前記書き込みコマンドに含まれる前記レコード番号と前記識別子とを結合した値を書き込む処理手段と、
を備えることを特徴とするICチップ。
【請求項15】
レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体により実行されるレコード処理方法であって、
前記レコードの識別情報を管理するための管理テーブルを保持するステップと、
外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信するステップと、
前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されているか否かを判定するステップと、
前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合に、当該管理テーブルの要素に対応付けられる前記レコード記憶領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを当該レコード記憶領域に書き込むステップと、
を含むことを特徴とするレコード処理方法。
【請求項16】
レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体により実行されるレコード処理方法であって、
前記レコードの識別情報を管理するための管理テーブルを保持するステップと、
外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信するステップと、
前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されているか否かを判定するステップと、
前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合に、前記書き込みコマンドに含まれるレコードを前記レコード記憶領域に書き込むことなく、エラーを示すレスポンスを前記外部装置へ送信するステップと、
を含むことを特徴とするレコード処理方法。
【請求項17】
アプリケーションにより使用されるファイルに論理的に格納されるレコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体により実行されるレコード処理方法であって、
外部装置からレコード、及び当該レコードのレコード番号と当該レコードが格納されるファイルの識別子とを結合した値を含む書き込みコマンドを受信するステップと、
前記複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域の第1領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込み、且つ、当該レコードが書き込まれる当該レコード記憶領域の第2領域に前記書き込みコマンドに含まれる前記レコード番号と前記識別子とを結合した値を書き込むステップと、
を含むことを特徴とするレコード処理方法。
【請求項18】
レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体に含まれるコンピュータに、
前記レコードの識別情報を管理するための管理テーブルを保持するステップと、
外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信するステップと、
前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されているか否かを判定するステップと、
前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合に、当該管理テーブルの要素に対応付けられる前記レコード記憶領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを当該レコード記憶領域に書き込むステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項19】
レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体に含まれるコンピュータに、
前記レコードの識別情報を管理するための管理テーブルを保持するステップと、
外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信するステップと、
前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されているか否かを判定するステップと、
前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合に、前記書き込みコマンドに含まれるレコードを前記レコード記憶領域に書き込むことなく、エラーを示すレスポンスを前記外部装置へ送信するステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項20】
アプリケーションにより使用されるファイルに論理的に格納されるレコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体に含まれるコンピュータに、
外部装置からレコード、及び当該レコードのレコード番号と当該レコードが格納されるファイルの識別子とを結合した値を含む書き込みコマンドを受信するステップと、
前記複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域の第1領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込み、且つ、当該レコードが書き込まれる当該レコード記憶領域の第2領域に前記書き込みコマンドに含まれる前記レコード番号と前記識別子とを結合した値を書き込むステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。」
第3 特許異議の申立ての理由及び証拠
特許異議申立書の全趣旨からして、申立人が主張する特許異議の申立ての理由(以下、「申立理由」という。)及び証拠は、以下のとおりのものと認められる。
1 申立理由(進歩性欠如)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~20に係る発明は、甲第1号証に記載の発明を主引用発明として、甲第2~第7号証に記載の周知技術に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、請求項1~20に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
2 申立人が提出した証拠
甲第1号証:特開2016-212497号公報
甲第2号証:特開平8-241393号公報
甲第3号証:特開2008-171257号公報
甲第4号証:特開2010-134572号公報
甲第5号証:特開平1-284993号公報
甲第6号証:特開2008-310596号公報
甲第7号証:特開2000-231608号公報
なお、上記甲第1~第7号証を、以下単に、「甲1」~「甲7」などという場合がある。
第4 甲号証の記載事項、甲1発明、周知技術
1 甲1について
(1)甲1記載事項
甲1には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、摘記箇所や下線は、異議申立書における申立人による甲1の摘記箇所および申立人が付した下線を概ね採用した。
ア 「【0012】
次に、図2を参照して、本実施形態のICカード1のハードウェア構成について説明する。
図2は、本実施形態のICカード1のハードウェア構成例を示す図である。
図2に示すように、ICカード1は、コンタクト部3と、ICチップ100とを備えたICモジュール10を備えている。そして、ICチップ100は、通信部4と、CPU5と、ROM(Read Only Memory)6と、RAM(Random Access Memory)7と、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)8とを備えている。
【0013】
通信部4は、ICカード1と外部装置2との間の通信(コマンド/レスポンスの送受信)を行う。通信部4は、例えば、EEPROM8(記憶部)が有する所定の領域に情報を記憶させる書き込み要求(書き込みコマンド)などの各種コマンドを外部装置2から受信する。また、通信部4は、各種コマンドに応じた処理の実行結果であるレスポンスを外部装置2に送信する。
CPU5は、ROM6又はEEPROM8に記憶されているプログラムを実行して、ICカード1の各種処理を行う。CPU5は、例えば、コンタクト部3を介して、通信部4が受信したコマンドに応じたコマンド処理を実行する。
【0014】
ROM6は、例えば、マスクROMなどの不揮発性メモリであり、ICカード1の各種処理を実行するためのプログラム、及びコマンドテーブルなどのデータを記憶する。
RAM7は、例えば、SRAM(Static RAM)などの揮発性メモリであり、ICカード1の各種処理を行う際に利用されるデータを一時記憶する。
【0015】
EEPROM8は、例えば、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである。EEPROM8は、ICカード1が利用する各種データを記憶する。EEPROM8は、例えば、使用者氏名、使用者ID、カードID、各種鍵情報などをICカード1の用途に応じて記憶する。
【0016】
次に、図3を参照して、本実施形態によるICカード1の機能構成例について説明する。
図3は、本実施形態のICカード1の機能構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、ICカード1は、通信部4と、制御部50と、データ記憶部80とを備えている。
ここで、図3に示されるICカード1の各部は、図2に示されるICカード1のハードウェアを用いて実現される。
【0017】
データ記憶部80は、例えば、EEPROM8により構成される記憶部である。データ記憶部80は、例えば、管理領域81と、データ領域82とを備えている。
管理領域81は、ICカード1のOS(オペレーティングシステム)によって利用される情報や、ICカード1の用途に応じてデータ領域82に記憶されるデータや鍵情報を格納するファイルや領域を管理するための情報を記憶する。
データ領域82は、各種データや鍵情報を、管理領域81によって管理されている所定の領域に記憶する。なお、当該所定の領域は、ファイル、論理レコード、TLV(Tag Length Value)形式の領域として規定される。また、ファイル、論理レコード、TLVの領域として規定される当該所定の領域に、情報(データ)を記憶させる場合には、当該所定の領域を識別する領域識別情報(例えば、ファイルID、レコードID、タグIDなど)により指定される。
【0018】
仮設定情報記憶部60は、例えば、ROM6により構成された記憶部である。仮設定情報記憶部60は、上述した領域識別情報に対応する当該所定の領域に記憶させる仮設定情報を予め記憶する。この仮設定情報は、例えば、各領域のデフォルト値(初期設定値)として、仮設定情報記憶部60に予め記憶されている情報である。仮設定情報記憶部60は、例えば、領域識別情報と、仮設定情報とを対応付けて記憶する。
【0019】
制御部50は、例えば、CPU5と、RAM7と、ROM6又はEEPROM8とにより実現され、ICカード1を統括的に制御する。制御部50は、例えば、外部装置2からICカード1に送信された各種コマンドの処理(コマンド処理)を実行する。また、制御部50は、例えば、書き込み処理部51を備えている。」
【0020】
書き込み処理部51は、通信部4によって受信した書き込み要求が、領域識別情報と、当該領域識別情報に対応する当該所定の領域に書き込む情報とを含む第1の状態に設定されている場合に、当該所定の領域に当該書き込む情報を記憶させる第1の処理を実行する。ここで、書き込み要求とは、データ記憶部80の所定の領域に情報を書き込む処理を実行する書き込みコマンドである。書き込みコマンドには、例えば、STORE DATAコマンド、PUT DATAコマンド、WRITE RECORDコマンド、WRITE BINARYコマンドなどが含まれる。」
イ 「【0058】
(第2の実施形態)
次に、図面を参照して、第2の実施形態のICカードについて説明する。
図11は、本実施形態のICカード1aの機能構成例を示すブロック図である。
なお、本実施形態のICカード1aの外観図及びハード構成は、図1及び図2に示す第1の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0059】
図11に示すように、ICカード1aは、通信部4と、制御部50aと、データ記憶部80aとを備えている。
ここで、図11に示されるICカード1aの各部は、図2に示されるICカード1のハードウェアを用いて実現される。
なお、この図において、図3に示す構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
本実施形態のICカード1aは、仮設定情報記憶部60を備えずに、制御部50aの書き込み処理部51aと、データ記憶部80aの管理領域81aとを備える点が第1の実施形態と異なる。
【0061】
データ記憶部80aは、例えば、EEPROM8により構成される記憶部である。データ記憶部80aは、例えば、管理領域81aと、データ領域82とを備えている。
管理領域81aは、ICカード1aのOSによって利用される情報や、ICカード1aの用途に応じてデータ領域82に記憶されるデータや鍵情報を格納するファイルや領域を管理するための情報を記憶する。管理領域81aは、例えば、ファイルやTLV形式の領域が有効な状態であるか否かを示す有効化情報を記憶する。管理領域81aは、例えば、領域識別情報と、有効化情報とを対応付けて記憶する。管理領域81aは、例えば、対応する所定の領域が無効な状態である場合に、有効化情報として“0”を記憶する。また、管理領域81aは、例えば、対応する所定の領域が有効な状態である場合に、有効化情報として“1”を記憶する。
【0062】
制御部50aは、例えば、CPU5と、RAM7と、ROM6又はEEPROM8とにより実現され、ICカード1aを統括的に制御する。制御部50aは、例えば、書き込み処理部51aを備えている。
書き込み処理部51aは、第1の状態に設定された書き込みコマンドを通信部4が受信した場合には、第1の実施形態と同様に、第1の処理を実行する。なお、書き込み処理部51aは、第1の処理を実行する際に、指定された領域識別情報に対応する管理領域81aの有効化情報を“1”にして、領域識別情報に対応するデータ記憶領域82の所定の領域を有効にする。
【0063】
また、書き込み処理部51aは、第2の状態に設定された書き込みコマンドを通信部4が受信した場合には、第2の処理として、所定の領域に予め記憶されている情報を有効にする。なお、ここで、領域識別情報に対応する所定の領域には、予め情報(例えば、仮設定情報など)が記憶されており、書き込み処理部51aは、領域識別情報に対応する管理領域81aの有効化情報を“1”にして、所定の領域を有効にする。この場合、第1の実施形態と同様に、ICカード1aは、書き込みデータを外部装置2から受信する必要がない。
【0064】
次に、図面を参照して、本実施系によるICカード1aの動作について説明する。
図12は、本実施形態の書き込みコマンドの動作の一例を示すフローチャートである。
【0065】
図12において、ステップS301、ステップS302、及びステップS306の処理は、図8に示すステップS101、ステップS102、及びステップS105の処理と同様であるのでここではその説明を省略する。
なお、本実施形態では、ステップS302において、書き込み処理部51aは、書き込みデータが含まれている(第1の状態である)場合(ステップS302:YES)に、処理をステップS303に進める。また、書き込み処理部51aは、書き込みデータが含まれていない(上述した図5及び図7に示すような第2の状態である)場合(ステップS302:NO)に、処理をステップS305に進める。
【0066】
ステップS303において、書き込み処理部51aは、指定された領域に書き込みデータを記憶させる。すなわち、書き込み処理部51aは、第1の処理として、領域識別情報(例えば、タグIDなど)に対応する所定の領域に、受信した書き込みデータを記憶させる。
次に、書き込み処理部51aは、指定された領域識別情報に対応する管理領域81aの有効化情報を“1”にして、所定の領域を有効にする(ステップS304)。ステップS304の処理後に、書き込み処理部51aは、処理をステップS306に進める。」
(2)甲1の構成
上記の摘記事項から、甲1に記載の「第2の実施形態」として以下の構成を認定することができる。なお、構成の認定は異議申立書における申立人による認定を概ね採用した。
ア 上記(1)アによれば「ICカード1は、コンタクト部3と、ICチップ100とを備えたICモジュール10を備え」、「ICチップ100は、通信部4と、CPU5と、ROM(Read Only Memory)6と、RAM(Random Access Memory)7と、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)8とを備えている」(【0012】)。
そして(1)イによれば、甲1の「第2の実施形態」について「本実施形態のICカード1aの外観図及びハード構成は、図1及び図2に示す第1の実施形態と同様である」(【0058】)とされている。
したがって、甲1には、下記の構成が記載されている。
「 通信部4と、CPU5と、ROM6と、RAM7と、EEPROM8とを備えるICチップ100」
イ 上記(1)アによれば「データ記憶部80は、例えば、EEPROM8により構成される記憶部」であり、「データ記憶部80は、例えば、管理領域81と、データ領域82とを備え」、「データ領域82は、各種データや鍵情報を、管理領域81によって管理されている所定の領域に記憶する。なお、当該所定の領域は、ファイル、論理レコード、TLV(Tag Length Value)形式の領域として規定される。また、ファイル、論理レコード、TLVの領域として規定される当該所定の領域に、情報(データ)を記憶させる場合には、当該所定の領域を識別する領域識別情報(例えば、ファイルID、レコードID、タグIDなど)により指定される」(【0017】)。
そして、上記構成を前提として、(1)イによれば「管理領域81aは・・データ領域82に記憶されるデータや鍵情報を格納するファイルや領域を管理するための情報を記憶する」ものであり、「管理領域81aは、例えば、領域識別情報と、有効化情報とを対応付けて記憶する。管理領域81aは、例えば、対応する所定の領域が無効な状態である場合に、有効化情報として“0”を記憶する。また、管理領域81aは、例えば、対応する所定の領域が有効な状態である場合に、有効化情報として“1”を記憶する」(【0061】)
したがって、甲1には、下記の構成が記載されている。
「管理領域81と、データ領域82とを備えるデータ記憶部80と、
レコードIDなどの領域識別情報と、有効化情報とを対応付けて記憶する管理領域81a」
ウ 上記(1)アによれば「通信部4は、例えば、EEPROM8(記憶部)が有する所定の領域に情報を記憶させる書き込み要求(書き込みコマンド)などの各種コマンドを外部装置2から受信する。また、通信部4は、各種コマンドに応じた処理の実行結果であるレスポンスを外部装置2に送信する」(【0013】)。
したがって、甲1には、下記の構成cが記載されている。
「 EEPROM8(記憶部)が有する所定の領域に情報を記憶させる書き込み要求(書き込みコマンド)などの各種コマンドを外部装置2から受信し、各種コマンドに応じた処理の実行結果であるレスポンスを外部装置2に送信する通信部4」
エ 上記(1)イによれば「書き込み処理部51aは、第1の状態に設定された書き込みコマンドを通信部4が受信した場合には、第1の実施形態と同様に、第1の処理を実行」する際に「指定された領域識別情報に対応する管理領域81aの有効化情報を“1”にして、領域識別情報に対応するデータ記憶領域82の所定の領域を有効にする」(【0062】)。
ここで、第1の実施形態の「第1の処理」とは「通信部4によって受信した書き込み要求が、領域識別情報と、当該領域識別情報に対応する当該所定の領域に書き込む情報とを含む第1の状態に設定されている場合に、当該所定の領域に当該書き込む情報を記憶させる第1の処理」である(【0020】)。
また、「領域識別情報に対応する所定の領域には、予め情報(例えば、仮設定情報など)が記憶されて」いるものである(【0063】)。
したがって、甲1には、下記の構成が記載されている。
「 領域識別情報に対応する所定の領域には、予め情報(例えば、仮設定情報など)が記憶されており、通信部4によって受信した書き込み要求が、領域識別情報と、当該領域識別情報に対応する当該所定の領域に書き込む情報とを含む第1の状態に設定されている場合に、当該所定の領域に当該書き込む情報を記憶させるとともに、指定された領域識別情報に対応する管理領域81aの有効化情報を“1”にして、領域識別情報に対応するデータ記憶領域82の所定の領域を有効にする書込み処理部51a」
オ 上記(1)ア、イによれば、甲1の「第2の実施形態」の「ICチップ100」は、上記イ~エに係る機能手段を備えているといえる。
(3)甲1発明
上記(2)から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「 通信部4と、CPU5と、ROM6と、RAM7と、EEPROM8とを備えるICチップ100であって、
管理領域81と、データ領域82とを備えるデータ記憶部80と、
レコードIDなどの領域識別情報と、有効化情報とを対応付けて記憶する管理領域81aと、
EEPROM8(記憶部)が有する所定の領域に情報を記憶させる書き込み要求(書き込みコマンド)などの各種コマンドを外部装置2から受信し、各種コマンドに応じた処理の実行結果であるレスポンスを外部装置2に送信する通信部4と、
領域識別情報に対応する所定の領域には、予め情報(例えば、仮設定情報など)が記憶されており、通信部4によって受信した書き込み要求が、領域識別情報と、当該領域識別情報に対応する当該所定の領域に書き込む情報とを含む第1の状態に設定されている場合に、当該所定の領域に当該書き込む情報を記憶させるとともに、指定された領域識別情報に対応する管理領域81aの有効化情報を“1”にして、領域識別情報に対応するデータ記憶領域82の所定の領域を有効にする書込み処理部51aと、
を備えるICチップ100。」
2 周知技術
(1)甲2記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。なお、摘記箇所や下線は、異議申立書における申立人による甲2の摘記箇所および申立人が付した下線をそのまま採用した。
「【請求項1】原稿面に接して回転する車輪と、
前記車輪の回転を検出する回転検出器と、
前記原稿面を走査して前記原稿画像を順次読み取るイメージセンサと、
前記イメージセンサの読み取った画像データを格納する画像メモリと、
前記回転検出器によって検出された移動距離に基づいて、前記イメージセンサの読み取った画像データに対応する位置座標を算出し、前記画像メモリ内の格納アドレスを決定して格納する写像手段と、
前記画像メモリ内の任意の格納アドレスに画像データが格納されたかどうかを示す複数の画像データ書き込みフラグと、
前記画像データ書き込みフラグに基づき、前記画像メモリ内の画像データが格納されている領域には写像しないように制御する書き込み制御手段と、を備えることを特徴とする画像処理装置。」
(2)甲3記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている。なお、摘記箇所や下線は、異議申立書における申立人による甲3の摘記箇所および申立人が付した下線をそのまま採用した。
「【0069】
ある所定の論理アドレスのデータは、同じオリジナルブロックに書き込まれる。そして、オリジナルブロックに書き込み済みのデータの更新要求が来る度に、このデータはキャッシュブロック内の空いているページに、低位の物理アドレスから高位の物理アドレスへと順次書き込まれる。このとき、メモリカード2は、ある論理アドレスの最新のデータがキャッシュブロックのどこのページに書き込まれているかを示す対応表を作成しておく。このため、ある論理アドレスに対して頻繁に更新要求が発生しても、引越し処理を行うことを回避して、高速な書き込みを実現できる。キャッシュブロックが用いられる場合、すなわち上書き型論理アドレスについては、1つのセクタの論理アドレスと1つのページの物理アドレスとの対応が管理される。
【0070】
ファイルデータが小容量である場合、このようなファイルデータに上書き型論理アドレスを割り当てることもできる。
【0071】
一方、コントローラ7は、ファイルデータブロック52に属する論理アドレスを割り当てられたデータについては、上書きを禁止し、追記のみを許可する。「追記」とは、データが既に割り当てられている論理アドレスより高位の論理アドレスのみを書き込みデータに割り当てる方式である。すなわち、コントローラ7は、割り当て済みの論理アドレスより高位の論理アドレスが割り当てられている場合のみ、書き込み要求を受け付ける。この条件に合致しない書き込み要求に対しては、コントローラ7は、書き込みを行わないとともに、ライトプロテクトエラーを示すステータスをホスト1に対して送信する。以下、ファイルデータブロック52に属する論理アドレスを追記型論理アドレスと称する。」
(3)甲4記載事項
甲4には、以下の事項が記載されている。なお、摘記箇所や下線は、異議申立書における申立人による甲4の摘記箇所および申立人が付した下線をそのまま採用した。
「【請求項1】
セキュリティ装置であって、
プロセッサと、
前記プロセッサに内蔵されたデバッグ支援部と、
少なくとも前記プロセッサの命令を配置される主記憶メモリと、
前記プロセッサと主記憶メモリとの間の転送に用いられるメモリバスと、
前記主記憶メモリは複数の領域に分割されており、それぞれに対するアクセスを制限する主記憶メモリアクセス制限部と、
前記プロセッサに内蔵された、前記主記憶メモリの内容の一部を保持するプロセッサ内部メモリと、
前記プロセッサ内部メモリへのアクセス権限を管理するために、その要素毎に保持されるフラグと、
前記フラグに応じて前記プロセッサ内部メモリに対するアクセスを制限する内部メモリアクセス制限部と、
前記セキュリティ装置上で動作しているプログラムをデバッグしている開発者の権限を、前記主記憶メモリ上の複数の領域毎に判定するデバッガ認証部を有し、
前記主記憶メモリアクセス制限部は、上記認証部の結果に応じ開発者のアクセス権を判定し、その判定結果から個々のアクセスを制限する機能を少なくとも有し、
前記フラグには前記判定結果に対応した値を開発者権限判定フラグとして少なくとも有することを特徴とするセキュリティ装置。」
(4)甲5記載事項
甲5には、以下の事項が記載されている。なお、摘記箇所や下線は、異議申立書における申立人による甲5の摘記箇所および申立人が付した下線をそのまま採用した。
「データ格納部16の各データエリアには、第1図に示すようなフォーマットでデータが記憶される。第1図はデータ記憶フォーマットを示しており、データDは1ビツトのバリッドフラグF1.1ビツトのデリートフラグF2、およびその他の制御情報Cが付加されて記憶される。バリッドフラグF1は、データ格納エリアが存在するか否かを識別する識別情報として機能し、またデリートフラグF2は、記憶データが存在するか否かを識別する識別情報として機能する。
第2図はあるデータエリアのデータ記憶状態を示しており、各データはデータエリアの先頭から順次記憶され、その記憶順に「1」「2」「3」……とレコード番号が付与される。」(第3頁左上欄)
(5)甲6記載事項
甲6には、以下の事項が記載されている。なお、摘記箇所や下線は、異議申立書における申立人による甲6の摘記箇所および申立人が付した下線をそのまま採用した。
「【0023】
次に、上記ICカード1内のデータメモリ14へのデータの書込み処理について説明する。
図3は、データメモリ14におけるデータAの書込み領域(データA領域)40の構成例を示している。
図3に示すように、データAの書込み領域40は、所定のデータ長からなる複数の領域(以下、これの領域をブロックと称する)41a、41b、…ごとにフラグ領域42a、42b、…が設けられている。すなわち、データAの書込み領域40は、それぞれにフラグ領域42a、42b、…が設けられている複数のブロック41a、41b、…から構成されている。
【0024】
ここでは、各ブロック(各ブロック領域)は、データメモリ14に一度に書込めるデータ長ごとの領域として設定されているものとする。たとえば、32バイト、64バイト、128バイトごとに、データメモリ14へデータを書込む仕様であれば、各ブロック41a、41b、…としては、32バイト、64バイト、128バイトごとの領域が設けられる。すなわち、当該ICカード1では、所定のデータサイズごとにデータメモリ14における各ブロック41a、41b、…に対して書込み処理を行う。
【0025】
各フラグ領域42a、42b、…は、それぞれ対応する各ブロック41a、41b、…へのデータの書込み状態を示す情報が格納される。すなわち、各ブロック41a、41b、…へのデータの書込みが完了するごとに、対応する各フラグ領域42a、42b、…には、データ書込みが完了していることを示す情報(図3に示す例では「1」)が格納される。また、各フラグ領域42a、42b、…は、初期状態において、対応する各ブロック41a、41b、…へのデータ書込みが未了であることを示す情報(図3に示す例では「0」)が格納されている。」
(6)甲7記載事項
甲7には、以下の事項が記載されている。なお、摘記箇所や下線は、異議申立書における申立人による甲7の摘記箇所および、申立人が付した下線をそのまま採用した。
「【請求項7】書込み可能なメモリを搭載したICカードにおいて、
上記メモリのメモリ空間は、複数のデータ領域と上記各データ領域への端末種別ごとのアクセスの可否を示すフラグとを有することを特徴とするICカード。」
「【0015】図5は、ICカードのメモリ構成の例である。この例では、メモリは512バイトの容量を持つ。メモリは16ワード(32バイト)単位のレコードに分けられている。それぞれのレコードの最初のワードは、そのレコードに対する読み書きの権利を管理するアクセス権ワード325、残りの15ワードはデータ領域326である。最も下位アドレスのレコードは、ID・カード情報領域321、次の2つのレコードは、認証データ領域322、更に次の2つのレコードは、履歴データ領域323、残りの11レコードはユーザデータ領域324である。」
「【0022】次に、図6に従ってアクセス権ワード325の構成を説明する。アクセス権ワード325は、ビット0Hからビット7HまでのWRITE権バイト343とビット8HからビットFHまでのREAD権バイト342から構成される。WRITE権バイト343では、ビット0H~7Hが、それぞれ8種類の端末種別0H~7Hの該当レコードに対するWRITEアクセスの権利の有無を表している。例えば、WRITE権バイトの値が34Hであった場合は、端末種別2、4、5の質問器のみが該当レコードに書き込みを行うことができる。同様にREAD権バイト342では、ビット8H~FHが、それぞれ8種類の端末種別0H~7Hの該当レコードに対するREADアクセスの権利の有無を表している。例えば、READ権バイトの値がCBHであった場合は、端末種別0、1、3、6、7の質問器のみが該当レコードに読み出しを行うことができる。アクセス権ワードは、何らかの方法であらかじめ初期化しておく必要がある。」
(7)周知技術1
上記(1)~(6)によると、異議申立書における申立人の認定のとおり、以下の技術(以下、周知技術1という)が本件特許出願時において周知であったと認められる。
「記憶領域にデータが既に登録済であるか否か等を示すフラグの内容を判定して、新たなデータの書込みを制御すること」
(8)周知技術2
上記(4)~(6)によると、異議申立書における申立人の認定のとおり、以下の技術(以下、周知技術2という)が本件特許出願時において周知であったと認められる。
「記憶領域に利用者データなどの「レコード」を書き込むための領域(第1領域)と、各データの管理情報(データの有効/無効を示すフラグ、その他の制御情報等)を格納するための領域(第2領域)とを対応させて記憶すること」
第5 申立理由について
1 申立理由(進歩性欠如)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
以下、本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「当該領域識別情報に対応する当該所定の領域」に記憶された「書き込む情報」は、「領域識別情報」が「レコードIDなど」であることを踏まえると、本件特許発明1の「レコード」に相当する。
(イ)甲1発明の「所定の領域」は「領域識別情報に対応する」ものであるから、「領域識別情報」毎に存在することは明らかである。また、「所定の領域」は「書き込む情報」を書き込むためのものであるから、上記(ア)を踏まえると、甲1発明の「領域識別情報」毎に存在する各「所定の領域」は、本件特許発明1の「レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域」に相当する。
(ウ)甲1発明の「所定の領域」を有する「EEPROM8(記憶部)」は、本件特許発明1の「レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリ」に相当する。
(エ)甲1発明の「EEPROM8」「を備えるICチップ100」は、本件特許発明1の「レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体」に相当する。
(オ)甲1発明の「管理領域81a」は、「レコードIDなどの領域識別情報と、有効化情報とを対応付けて記憶する」ものであるから、本件特許発明1の「前記レコードの識別情報を管理するための管理テーブル」に相当する。
(カ)甲1発明の「レコードIDなどの領域識別情報」は、本件特許発明1の「レコードの識別情報」に相当する。
(キ)甲1発明の「管理領域81a」「を備えるデータ記憶部80」は、上記(オ)を踏まえると、本件特許発明1の「前記レコードの識別情報を管理するための管理テーブルを保持する保持手段」に相当する。
(ク)甲1発明の「外部装置2」は、本件特許発明1の「外部装置」に相当する。
(ケ)甲1発明の「領域識別情報と、当該領域識別情報に対応する当該所定の領域に書き込む情報とを含む」「書き込み要求」は、本件特許発明1の「外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンド」相当する。
(コ)上記(ケ)を踏まえると、甲1発明の「書き込み要求(書き込みコマンド)などの各種コマンドを外部装置2から受信」する「通信部4」は、本件特許発明1の「外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信する受信手段」に相当する。
(サ)甲1発明の「書込み処理部51a」は「領域識別情報に対応する所定の領域には、予め情報(例えば、仮設定情報など)が記憶されており、通信部4によって受信した書き込み要求が、領域識別情報と、当該領域識別情報に対応する当該所定の領域に書き込む情報とを含む第1の状態に設定されている場合に、当該所定の領域に当該書き込む情報を記憶させる」ものであるから、、本件特許発明1の「前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合に、当該管理テーブルの要素に対応付けられる前記レコード記憶領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを当該レコード記憶領域に書き込む処理手段」とは、「前記レコード記憶領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを当該レコード記憶領域に書き込む処理手段」である点で共通する。
(シ)甲1発明の「ICチップ100」が「データ記憶部80」と「通信部4」と「書込み処理部51a」とを「備える」ことは、本件特許発明1の「電子情報記憶媒体」が「保持手段と、」「受信手段と、」「処理手段と、」「を備える」ことに相当する。
イ 一致点、相違点
以上から、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の点において一致ないし相違する。
【一致点】
「レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体であって、
前記レコードの識別情報を管理するための管理テーブルを保持する保持手段と、
外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信する受信手段と、
前記レコード記憶領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを当該レコード記憶領域に書き込む処理手段と、
を備えることを特徴とする電子情報記憶媒体。」
【相違点】
〔相違点1-1〕
本件特許発明1は「前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されているか否かを判定する判定手段」を備えるのに対して、甲1発明は、このような「判定手段」を備えるものではない点。
〔相違点1-2〕
共通点である「前記レコード記憶領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを当該レコード記憶領域に書き込む処理手段」おいて、上書きの対象となる「当該レコード記憶領域に記憶されているレコード」は、本件特許発明1では「前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合に、当該管理テーブルの要素に対応付けられる前記レコード記憶領域に記憶されているレコード」であるのに対して、甲1発明では、「通信部4によって受信した書き込み要求」に「含」まれる「領域識別情報」「に対応する当該所定の領域」に「予め」「記憶されて」いる「情報(例えば、仮設定情報など)」である点。
ウ 相違点についての判断
〔相違点1-1〕について
甲1発明は、「レコードIDなどの領域識別情報と、有効化情報とを対応付けて記憶する」ものである。一方、「記憶領域にデータが既に登録済であるか否か等を示すフラグの内容を判定して、新たなデータの書込みを制御すること」(周知技術1)は、本件特許出願時における周知技術である。そうすると、甲1発明に上記の周知技術1を適用すると、「レコードIDなどの領域識別情報」に「対応付けて記憶」された「有効化情報」の内容を判定して、新たなデータの書き込みを制御することとなる。しかしながら、本件特許発明1の「判定手段」は、有効化情報の内容、すなわち「フラグの内容」を判定するものではなく、「前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されているか否かを判定する」ものである。この点について、甲1発明は、「管理領域81a」において、「レコードIDなどの領域識別情報」が、対応する「有効化情報」の値に関わらず、「有効化情報」と「対応付けて記憶」、すなわち登録される前提であり、このような構成において「受信した書き込み要求」に含まれる「領域識別情報」が「管理領域81a」に登録されているか否かを判定しても、「有効化情報」の値に関わらずに登録されていると判定されることとなり意味がなく、また、周知技術1を適用したとしても、フラグである「有効化情報」の内容を判定することとなるに過ぎず、「前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されているか否かを判定する」こととはならない。また、周知技術2を参酌してもフラグである「有効化情報」の内容を判定するに過ぎない点で同じである。
そうすると、「前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されているか否かを判定する」ことは、甲1~甲7のいずれにも記載されておらず、また、そのような構成が本件特許出願時における技術常識であったともいえないから、〔相違点1-1〕に係る本件特許発明1の構成は、当業者が容易に想到できたものではない。
〔相違点1-2〕について
上記「〔相違点1-1〕について」で検討のとおりであるから、〔相違点1-2〕に係る「前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合」に何らかの処理を行う構成は、甲1~甲7のいずれにも記載されておらず、また、そのような構成が本件特許出願時における技術常識であったともいえないから、〔相違点1-2〕に係る本件特許発明1の構成は、当業者が容易に想到できたものではない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、当業者が、甲1に記載された発明に基いて、甲2~甲7に記載された事項を参酌して、容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明2について
ア 対比
以下、本件特許発明2と甲1発明とを対比する。
(ア)本件特許発明2の構成のうち、本件特許発明1と共通する
「レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体であって、
前記レコードの識別情報を管理するための管理テーブルを保持する保持手段と、
外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信する受信手段と、
前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合に、」という構成および、「を備えることを特徴とする電子情報記憶媒体。」という構成に係る対比については、上記(1)ア(ア)~(コ)、(シ)を参照されたい。
(イ)本件特許発明2の構成のうち、上記(ア)で摘記した、本件特許発明1と共通する構成以外の構成については、甲1発明と共通しない。
イ 一致点、相違点
以上から、本件特許発明2と甲1発明とは、以下の点において一致ないし相違する。
【一致点】
「レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体であって、
前記レコードの識別情報を管理するための管理テーブルを保持する保持手段と、
外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信する受信手段と、
前記レコード記憶領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを当該レコード記憶領域に書き込む処理手段と、
を備えることを特徴とする電子情報記憶媒体。」
【相違点】
〔相違点2-1〕
本件特許発明2は「前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されているか否かを判定する判定手段」を備えるのに対して、甲1発明は、このような「判定手段」を備えるものではない点。
〔相違点2-2〕
本件特許発明2は、「前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合に、前記書き込みコマンドに含まれるレコードを前記レコード記憶領域に書き込むことなく、エラーを示すレスポンスを前記外部装置へ送信する処理手段」を備えるのに対して、甲1発明は、上記〔相違点2-1〕に係る「判定手段」を備えていないので、「前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合」という前提が存在せず、そのような場合に何らかの処理を行うものでもなく、さらに、「前記書き込みコマンドに含まれるレコードを前記レコード記憶領域に書き込むことなく、エラーを示すレスポンスを前記外部装置へ送信する処理手段」を備えるものでもない点。
ウ 相違点についての判断
〔相違点2-1〕について
〔相違点1-1〕についての判断と同様である。
〔相違点2-2〕について
〔相違点1-2〕についての判断と同様である。
エ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明2は、当業者が、甲1に記載された発明に基いて、甲2~甲7に記載された事項を参酌して、容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明3、4について
本件特許発明3、4は、本件特許発明1または本件特許発明2の構成をすべて含む発明であるから、本件特許発明1または本件特許発明2と同様に、当業者が、甲1に記載された発明に基いて、甲2~甲7に記載された事項を参酌して、容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件特許発明5について
ア 対比
以下、本件特許発明5と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「当該領域識別情報に対応する当該所定の領域」に記憶された「書き込む情報」は、「領域識別情報」が「レコードIDなど」であることを踏まえると、本件特許発明5の「レコード」に相当する。
(イ)甲1発明の「所定の領域」は「領域識別情報に対応する」ものであるから、「領域識別情報」毎に存在することは明らかである。また、「所定の領域」は「書き込む情報」を書き込むためのものであるから、上記(ア)を踏まえると、甲1発明の「領域識別情報」毎に存在する各「所定の領域」は、本件特許発明5の「レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域」に相当する。
(ウ)甲1発明の「所定の領域」を有する「EEPROM8(記憶部)」は、本件特許発明5の「レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリ」に相当する。
(エ)甲1発明の「EEPROM8」「を備えるICチップ100」は、本件特許発明5の「レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体」に相当する。
(オ)甲1発明の「外部装置2」は、本件特許発明5の「外部装置」に相当する。
(カ)甲1発明の「領域識別情報」と本件特許発明5の「当該レコードのレコード番号と当該レコードが格納されるファイルの識別子とを結合した値」とは、「レコードを識別する情報」である点で共通する。
(キ)上記(ア)、(カ)を踏まえると、甲1発明の「領域識別情報と、当該領域識別情報に対応する当該所定の領域に書き込む情報とを含む」「書き込み要求」は、本件特許発明5の「レコード、及び当該レコードのレコード番号と当該レコードが格納されるファイルの識別子とを結合した値を含む書き込みコマンド」とは、「レコード、及びレコードを識別する情報を含む書き込みコマンド」である点で共通する。
(ク)上記(キ)を踏まえると、甲1発明の「書き込み要求(書き込みコマンド)などの各種コマンドを外部装置2から受信」する「通信部4」は、本件特許発明5の「外部装置からレコード、及び当該レコードのレコード番号と当該レコードが格納されるファイルの識別子とを結合した値を含む書き込みコマンドを受信する受信手段」とは、「外部装置からレコード、及びレコードを識別する情報を含む書き込みコマンドを受信する受信手段」である点で共通する。
(ケ)甲1発明の「書込み処理部51a」は「通信部4によって受信した書き込み要求が、領域識別情報と、当該領域識別情報に対応する当該所定の領域に書き込む情報とを含む第1の状態に設定されている場合に、当該所定の領域に当該書き込む情報を記憶させる」ものであるから、本件特許発明5の「前記複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域の第1領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込み、且つ、当該レコードが書き込まれる当該レコード記憶領域の第2領域に前記書き込みコマンドに含まれる前記レコード番号と前記識別子とを結合した値を書き込む処理手段」とは、「前記複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域」「に前記書き込みコマンドに含まれるレコード」「を書き込む処理手段」である点で共通する。
(コ)甲1発明の「ICチップ100」が「通信部4」と「書込み処理部51a」とを「備える」ことは、本件特許発明5の「電子情報記憶媒体」が「受信手段と、」「処理手段と、」「を備える」ことに相当する。
イ 一致点、相違点
以上から、本件特許発明5と甲1発明とは、以下の点において一致ないし相違する。
【一致点】
「レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体であって、
外部装置からレコード、及びレコードを識別する情報を含む書き込みコマンドを受信する受信手段と、
前記複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込む処理手段と、
を備えることを特徴とする電子情報記憶媒体。」
【相違点】
〔相違点5-1〕
本件特許発明5の「レコード」は、「アプリケーションにより使用されるファイルに論理的に格納される」ものであるのに対して、甲1発明の「当該領域識別情報に対応する当該所定の領域」に記憶された「書き込む情報」は、「アプリケーションにより使用されるファイルに論理的に格納される」ものであることが特定されていない点。
〔相違点5-2〕
本件特許発明5の「書き込みコマンド」は、「当該レコードのレコード番号と当該レコードが格納されるファイルの識別子とを結合した値を含む」ものであるのに対して、甲1発明の「書き込み要求」は「レコードIDなどの領域識別情報」を含むものの、「当該レコードのレコード番号と当該レコードが格納されるファイルの識別子とを結合した値」を含むものではない点。
〔相違点5-3〕
本件特許発明5は、「前記複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域の第1領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込」むものであるのに対して、甲1発明は、「書き込み要求」に「含」まれる「当該領域識別情報に対応する当該所定の領域に」「書き込み要求」に「含」まれる「当該書き込む情報を記憶させる」ものの、「当該所定の領域」が「複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域の第1領域」であることが特定されていない点。
〔相違点5-4〕
本件特許発明5は、「当該レコードが書き込まれる当該レコード記憶領域の第2領域に前記書き込みコマンドに含まれる前記レコード番号と前記識別子とを結合した値を書き込む」ものであるが、甲1発明には、「第2領域」に相当する領域が存在せず、「前記書き込みコマンドに含まれる前記レコード番号と前記識別子とを結合した値」を書き込むものでもない点。
ウ 相違点についての判断
〔相違点5-4〕に関して、「前記書き込みコマンドに含まれる前記レコード番号と前記識別子とを結合した値を書き込む」ことは、甲1~甲7のいずれにも記載されておらず、また、そのような構成が本件特許出願時における技術常識であったともいえないから、〔相違点5-4〕に係る本件特許発明5の構成は、当業者が容易に想到できたものではない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明5は、〔相違点5-4〕以外の相違点について検討するまでもなく、当業者が、甲1に記載された発明に基いて、甲2~甲7に記載された事項を参酌して、容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件特許発明6、11について
本件特許発明6、11は、本件特許発明5の構成をすべて含む発明であるから、本件特許発明5と同様に、当業者が、甲1に記載された発明に基いて、甲2~甲7に記載された事項を参酌して、容易に発明をすることができたものではない。
(6)本件特許発明7について
ア 対比
以下、本件特許発明7と甲1発明とを対比する。
(ア)本件特許発明7の構成のうち、本件特許発明1と共通する
「レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体であって、」
「外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信する受信手段と、」
「を特徴とする電子情報記憶媒体。」
に係る対比について、上記(1)ア(ア)~(エ)、(カ)~(コ)、(シ)と同様である。
(イ)甲1発明の「書込み処理部51a」は「通信部4によって受信した書き込み要求が、領域識別情報と、当該領域識別情報に対応する当該所定の領域に書き込む情報とを含む第1の状態に設定されている場合に、当該所定の領域に当該書き込む情報を記憶させる」ものであるから、本件特許発明7の「前記複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域の第1領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込み、且つ、当該レコードが書き込まれる当該レコード記憶領域の第2領域に前記書き込みコマンドに含まれる識別情報を書き込む処理手段」とは、「前記複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域」「に前記書き込みコマンドに含まれるレコード」「を書き込む処理手段」である点で共通する。
(ウ)甲1発明の「ICチップ100」が「通信部4」と「書込み処理部51a」とを「備える」ことは、本件特許発明7の「電子情報記憶媒体」が「受信手段と、」「処理手段と、」「を備え」ることに相当する。
イ 一致点、相違点
以上から、本件特許発明7と甲1発明とは、以下の点において一致ないし相違する。
【一致点】
「レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体であって、
外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信する受信手段と、
前記複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込む処理手段と、
を備え
ることを特徴とする電子情報記憶媒体」
【相違点】
〔相違点7-1〕
本件特許発明7は、「前記複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域の第1領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込」むものであるのに対して、甲1発明は、「書き込み要求」に「含」まれる「当該領域識別情報に対応する当該所定の領域に」「書き込み要求」に「含」まれる「当該書き込む情報を記憶させる」ものの、「当該所定の領域」が「複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域の第1領域」であることが特定されていない点。
〔相違点7-2〕
本件特許発明7は、「当該レコードが書き込まれる当該レコード記憶領域の第2領域に前記書き込みコマンドに含まれる識別情報を書き込む」ものであるが、甲1発明には、「第2領域」に相当する領域が存在せず、「前記書き込みコマンドに含まれる識別情報」を書き込むものでもない点。
〔相違点7-3〕
本件特許発明7は「前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が何れかの前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されているか否かを判定する判定手段」を備えるのに対して、甲1発明は、このような「判定手段」を備えるものではない点。
〔相違点7-4〕
本件特許発明7の「前記処理手段」は、「前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されていると判定された場合に、前記書き込みコマンドに含まれるレコードを前記レコード記憶領域に書き込むことなく、エラーを示すレスポンスを前記外部装置へ送信する」のに対して、引用発明は、上記〔相違点7-3〕に係る「判定手段」を備えていないので、「前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されていると判定された場合」という前提が存在せず、そのような場合に何らかの処理を行うものでもなく、さらに、「前記書き込みコマンドに含まれるレコードを前記レコード記憶領域に書き込むことなく、エラーを示すレスポンスを前記外部装置へ送信する」ものでもない点。
ウ 相違点についての判断
〔相違点7-2〕について
「前記書き込みコマンドに含まれる識別情報を書き込む」ことは、甲1~甲7のいずれにも記載されておらず、また、そのような構成が本件特許出願時における技術常識であったともいえないから、〔相違点7-2〕に係る本件特許発明7の構成は、当業者が容易に想到できたものではない。
〔相違点7-3〕、〔相違点7-4〕について
「前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が何れかの前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されているか否かを判定する判定手段」は、甲1~甲7のいずれにも記載されておらず、また、そのような構成が本件特許出願時における技術常識であったともいえないから、〔相違点7-3〕、〔相違点7-4〕に係る本件特許発明7の構成は、当業者が容易に想到できたものではない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明7は、〔相違点7-1〕について検討するまでもなく、当業者が、甲1に記載された発明に基いて、甲2~甲7に記載された事項を参酌して、容易に発明をすることができたものではない。
(7)本件特許発明8について
ア 対比
以下、本件特許発明8と甲1発明とを対比する。
(ア)本件特許発明8の構成のうち、本件特許発明7と共通する
「レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体であって、
外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信する受信手段と、
前記複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域の第1領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込み、且つ、当該レコードが書き込まれる当該レコード記憶領域の第2領域に前記書き込みコマンドに含まれる識別情報を書き込む処理手段と、
前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が何れかの前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されているか否かを判定する判定手段と、
を備え、」
「る電子情報記憶媒体。」
に係る対比について、上記(6)ア(ア)~(ウ)と同様である。
(イ)甲1発明の「書き込み処理部51a」が、「領域識別情報に対応する所定の領域には、予め情報(例えば、仮設定情報など)が記憶されており、通信部4によって受信した書き込み要求が、領域識別情報と、当該領域識別情報に対応する当該所定の領域に書き込む情報とを含む第1の状態に設定されている場合に、当該所定の領域に当該書き込む情報を記憶させる」ことは、本件特許発明8の「前記処理手段は、前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されていると判定された場合に、当該レコード記憶領域の第1領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを当該第1領域に書き込み」とは、「前記処理手段は、当該レコード記憶領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込」む点で共通する。
(ウ)甲1発明の「書き込み処理部51a」が、が「所定の領域」に「書き込み要求」に「含」まれる「書き込む情報」を「記憶させる」ことは、本件特許発明8の「前記処理手段は、前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されていないと判定された場合に、前記レコード記憶領域の配列に基づいて、前記レコードが書き込まれていないレコード記憶領域を検索し、当該検索されたレコード記憶領域の第1領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込み、且つ、当該レコードが書き込まれる当該レコード記憶領域の第2領域に前記書き込みコマンドに含まれる識別情報を書き込む」とは、「前記処理手段は、」「レコード記憶領域」「に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込」む点で共通する。
イ 一致点、相違点
以上から、本件特許発明8と甲1発明とは、以下の点において一致ないし相違する。
【一致点】
「レコードを書き込むための複数のレコード記憶領域を有するメモリを備える電子情報記憶媒体であって、
外部装置からレコード及び当該レコードの識別情報を含む書き込みコマンドを受信する受信手段と、
前記複数のレコード記憶領域のうち何れかのレコード記憶領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込む処理手段と、
を備え、
前記処理手段は、当該レコード記憶領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込み、
前記処理手段は、レコード記憶領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込むことを特徴とする電子情報記憶媒体。」
【相違点】
〔相違点8-1〕
〔相違点7-1〕の判断と同様である。
〔相違点8-2〕
〔相違点7-2〕の判断と同様である。
〔相違点8-3〕
〔相違点7-3〕の判断と同様である。
〔相違点8-4〕
共通点である「前記処理手段は、当該レコード記憶領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込み」という処理において、上書きの対象となる「当該レコード記憶領域に記憶されているレコード」は、本件特許発明8では「前記処理手段は、前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されていると判定された場合に、当該レコード記憶領域の第1領域に記憶されているレコード」であるのに対して、甲1発明では、「通信部4によって受信した書き込み要求」に「含」まれる「領域識別情報」「に対応する当該所定の領域」に「予め」「記憶されて」いる「情報(例えば、仮設定情報など)」である点。
〔相違点8-5〕
本件特許発明8は、「前記処理手段は、前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されていないと判定された場合に、前記レコード記憶領域の配列に基づいて、前記レコードが書き込まれていないレコード記憶領域を検索し、当該検索されたレコード記憶領域の第1領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込み、且つ、当該レコードが書き込まれる当該レコード記憶領域の第2領域に前記書き込みコマンドに含まれる識別情報を書き込む」ものであるのに対して、甲1発明は、上記〔相違点8-3〕に係る「判定手段」を備えていないので、「前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されていないと判定された場合」という前提が存在せず、そのような場合に何らかの処理を行うものでもなく、さらに、「前記レコード記憶領域の配列に基づいて、前記レコードが書き込まれていないレコード記憶領域を検索」するものでもなく、「当該検索されたレコード記憶領域の第1領域に前記書き込みコマンドに含まれるレコードを書き込」むものでもなく、且つ、「当該レコードが書き込まれる当該レコード記憶領域の第2領域に前記書き込みコマンドに含まれる識別情報を書き込む」ものでもない点。
ウ 相違点についての判断
〔相違点8-2〕について
上記(6)ウ「〔相違点7-2〕について」と同様である。
〔相違点8-3〕~〔相違点8-5〕について
「前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が何れかの前記レコード記憶領域の第2領域に記憶されているか否かを判定する判定手段」は、甲1~甲7のいずれにも記載されておらず、また、そのような構成が本件特許出願時における技術常識であったともいえないから、〔相違点8-3〕~〔相違点8-5〕に係る本件特許発明8の構成は、当業者が容易に想到できたものではない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明8は、〔相違点8-1〕について検討するまでもなく、当業者が、甲1に記載された発明に基いて、甲2~甲7に記載された事項を参酌して、容易に発明をすることができたものではない。
(9)本件特許発明9について
本件特許発明9は、本件特許発明7の構成をすべて含む発明であるから、本件特許発明7と同様の理由により、当業者が、甲1に記載された発明に基いて、甲2~甲7に記載された事項を参酌して、容易に発明をすることができたものではない。
(10)本件特許発明10について
本件特許発明10は、本件特許発明5、本件特許発明7、あるいは本件特許発明8のいずれかの構成をすべて含む発明であるから、本件特許発明5、本件特許発明7、あるいは本件特許発明8と同様の理由により、当業者が、甲1に記載された発明に基いて、甲2~甲7に記載された事項を参酌して、容易に発明をすることができたものではない。
(11)本件特許発明12、15、18について
本件特許発明12、15、18は、上記(1)イ〔相違点1-1〕、〔相違点1-2〕に係る本件特許発明1の構成に対応する構成を備えているので、本件特許発明1と同様の理由により、当業者が、甲1に記載された発明に基いて、甲2~甲7に記載された事項を参酌して、容易に発明をすることができたものではない。
(12)本件特許発明13、16、19について
本件特許発明13、16、19は、上記(2)イ〔相違点2-1〕、〔相違点2-2〕に係る本件特許発明2の構成に対応する構成を備えているので、本件特許発明2と同様の理由により、当業者が、甲1に記載された発明に基いて、甲2~甲7に記載された事項を参酌して、容易に発明をすることができたものではない。
(13)本件特許発明14、17、20について
本件特許発明14、17、20は、上記(4)イ〔相違点5-1〕~〔相違点5-4〕に係る本件特許発明5の構成に対応する構成を備えているので、本件特許発明5と同様の理由により、当業者が、甲1に記載された発明に基いて、甲2~甲7に記載された事項を参酌して、容易に発明をすることができたものではない。
(14)申立人の主張について
申立人は特許異議申立書において、甲1発明と本件特許発明1あるいは本件特許発明2とを対比し、以下のとおり主張している。(下線は申立人が付したもの。)
「エ 構成要件1D(2D)、1E、2E
1D(2D) 前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されているか否かを判定する判定手段と、
1E 前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合に、当該管理テーブルの要素に対応付けられる前記レコード記憶領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを当該レコード記憶領域に書き込む処理手段と、
2E 前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合に、前記書き込みコマンドに含まれるレコードを前記レコード記憶領域に書き込むことなく、エラーを示すレスポンスを前記外部装置へ送信する処理手段と、
本件発明1、2は「1D(2D) 前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されているか否かを判定する判定手段」を備え、「前記判定手段により前記書き込みコマンドに含まれる識別情報と一致する識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されていると判定された場合」に、本件発明1は「当該管理テーブルの要素に対応付けられる前記レコード記憶領域に記憶されているレコードに代えて前記書き込みコマンドに含まれるレコードを当該レコード記憶領域に書き込む」(1E)ことにより、既に記憶されているレコードを上書きする構成である。
そして、本件発明2は「前記書き込みコマンドに含まれるレコードを前記レコード記憶領域に書き込むことなく、エラーを示すレスポンスを前記外部装置へ送信する」(2E)ことにより、既に記憶されているレコードを上書きすることなくエラーとする構成である。
これに対して、甲1発明の構成dにおいては「当該所定の領域に当該書き込む情報を記憶させるとともに、指定された領域識別情報に対応する管理領域81aの有効化情報を“1”にして、領域識別情報に対応するデータ記憶領域82の所定の領域を有効にする」から、「書き込みコマンドに含まれる識別情報」を「管理テーブルの要素に登録」するといえる。
そして「指定された領域識別情報に対応する管理領域81aの有効化情報を“1”」とされていることは、「識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されている」ことを示すものといえる。」
以上によれば、申立人は、甲1発明の「当該所定の領域に当該書き込む情報を記憶させるとともに、指定された領域識別情報に対応する管理領域81aの有効化情報を“1”にして、領域識別情報に対応するデータ記憶領域82の所定の領域を有効にする」ことは、本件特許発明1または2の「書き込みコマンドに含まれる識別情報」を「管理テーブルの要素に登録」することに相当する旨、および、「指定された領域識別情報に対応する管理領域81aの有効化情報を“1”」とされていることは、本件特許発明1または2の「識別情報が前記管理テーブルの要素に登録されている」ことに相当する旨主張していると認められるが、本件特許発明1または2における「識別情報」の「登録」とは、本件特許明細書の段落【0037】の記載からも明らかなように、「書き込みコマンドに含まれる識別情報」自体を「管理テーブル」に記憶する処理である一方、上記(1)ウ「〔相違点1-1〕について」等で述べたように、甲1発明においては、有効化情報の値に関わらずに領域識別情報と有効化情報とを対応づけて記憶するものであって、「書き込みコマンドに含まれる識別情報」自体を「管理テーブルの要素に登録」するものではない点において本件特許発明1あるいは本件特許発明2とは相違するところ、当該相違点に係る構成は、周知技術1及び周知技術2のいずれからも容易想到とはいえず、本件特許発明1または本件特許発明2に対する申立人の当該主張は採用できない。
また、本件特許発明3~20についても、特許異議申立書において、甲1発明の「当該所定の領域に当該書き込む情報を記憶させるとともに、指定された領域識別情報に対応する管理領域81aの有効化情報を“1”にして、領域識別情報に対応するデータ記憶領域82の所定の領域を有効にする」ことが、本件特許発明の「書き込みコマンドに含まれる識別情報」を「管理テーブルの要素に登録」あるいは「第2領域に」「書き込む」ことに相当する前提で対比されており、本件特許発明3~20に対する申立人の主張も同様の理由で採用できない。
(15)むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1~20は、当業者が、甲1に記載された発明に基いて、甲2~甲7に記載された事項を参酌して、容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1~20に係る発明は、取消理由通知書に記載した取消理由並びに各特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由及びその証拠によって取り消すことはできない。
また、他に請求項1~20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-700512