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特許異議申立

2023-700314

アルミニウムでコーティングされた一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物及びその製造方法

審判番号
2023-700314
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-547173
登録番号
7145225
請求日
2023年03月27日
審決日
2024年12月04日
公報発行日
2025年03月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ポスコ フューチャー エム
  • 【権利者代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
  • 【権利者代理人】弁理士法人浅村特許事務所
  • 【異議申立人】藤央弁理士法人
審判長/審判官
  • 審判長 深草 祐一
  • 審判官 原 賢一
  • 審判官 後藤 政博
分類
P1652.113-YAA(C01G) / P1652.121-YAA(C01G) / P1652.536-YAA(C01G) / P1652.537-YAA(C01G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7145225号発明「アルミニウムでコーティングされた一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7145225号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 特許第7145225号の請求項1~5、8に係る特許を維持する。 特許第7145225号の請求項6、7、9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7145225号の請求項1~12に係る特許についての出願は、2019年(平成31年)3月12日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2018年3月12日 (KR)大韓民国)を国際出願日とする出願であり、令和4年9月21日にその特許権の設定登録がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行され、その後、令和5年3月27日に、その請求項1~9に係る特許を対象として特許異議申立人藤央弁理士法人(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。以降の主な手続きは以下のとおりである。 令和5年 8月15日付け 取消理由通知 同年11月21日 意見書の提出及び訂正請求(特許権者) 令和6年 1月12日 意見書の提出(異議申立人) 同年 3月26日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年 6月28日 意見書の提出及び訂正請求(特許権者)(以下、この訂正を「本件訂正」という。) 同年 8月 5日 手続補正書の提出(特許権者、同年6月28日に提出された訂正請求書を補正するもの) 同年 9月13日 意見書の提出(異議申立人) なお、令和5年11月21日にされた訂正の請求(以下、その訂正を「先の訂正」ということがある。)は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正事項 本件訂正は、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを求めるものであって、その具体的な訂正事項は次のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「アルミニウムコーティングが施された一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物であって、」とあるのを、「リチウムチタン複合酸化物の一次粒子とアルミニウム化合物との混合物を溶媒に分散させたスラリーを噴霧乾燥し、さらに熱処理を行って形成する、硫酸アルミニウムを用いてアルミニウムコーティングが施された一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物であって、」に訂正する。 (請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~5、8も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記二次粒子のサイズは、」とあるのを、「前記二次粒子のサイズ分布D50は、」に訂正する。 (請求項2を直接又は間接的に引用する請求項8も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のうちのいずれか1項に記載の」とあるのを、「請求項1~5のうちのいずれか1項に記載の」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び新規事項の有無 (1)訂正事項1 ア 上記訂正事項1は、「アルミニウムコーティングが施された一次粒子」を、「リチウムチタン複合酸化物の一次粒子とアルミニウム化合物との混合物を溶媒に分散させたスラリーを噴霧乾燥し、さらに熱処理を行って形成する」工程であって、このアルミニウム化合物が、「硫酸アルミニウム」である工程を経ることにより得られた「アルミニウムコーティングが施された一次粒子」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記訂正事項1は、請求項1に記載される「アルミニウムコーティングが施された一次粒子」をさらに限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 本件明細書の【0079】で「<実施例3>一次粒子がアルミニウムでコーティングされたリチウムチタン複合酸化物の製造」とされる同【0080】の「上述の実施例2で粉砕されたスラリーに、アルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを混合し、溶媒として水に混合し及び粉砕し、撹拌することで、一次粒子にアルミニウムによるコーティングを施した。」との記載によれば、アルミニウムによるコーティングが施されるリチウムチタン複合酸化物は、一次粒子であること、アルミニウム化合物である硫酸アルミニウムと混合されること、そして、同【0081】の「熱風温度を250℃、排気熱風温度を110℃として噴霧乾燥し、再度二次粒子に再凝集させ、450℃の空気雰囲気下で10時間、熱処理を行うことで、一次粒子がアルミニウムで表面処理されたリチウムチタン複合酸化物を製造した。」との記載によれば、アルミニウムによるコーティングは、噴霧乾燥、その後に熱処理を行って形成されること、また、同【0031】の「vi)前記粉砕された粒子とアルミニウム化合物との混合物を溶媒に分散させ、粉砕してスラリーを製造するステップ;」との記載によれば、噴霧乾燥が行われるリチウムチタン複合酸化物とアルミニウム化合物を含む混合液は、スラリーであることが記載されているといえる。 以上の記載によれば、本件明細書には、アルミニウムコーティングが施された一次粒子を、「リチウムチタン複合酸化物の一次粒子とアルミニウム化合物との混合物を溶媒に分散させたスラリーを噴霧乾燥し、さらに熱処理を行って形成する」こと、アルミニウム化合物として「硫酸アルミニウムを用い」ることが記載されているといえるから、上記訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 (2)訂正事項2 ア 「二次粒子のサイズ」の記載は、記載上「サイズ」が多義的に解釈され、必ずしも明確でない記載であったものを、「サイズ分布D50」とすることにより、サイズがD50により表されるものであることを明確にするものであるから、上記訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ (ア)本件明細書の【0052】~【0065】に記載される「<実施例1>リチウムチタン複合酸化物の製造」において、「異種金属としてZrがドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を製造」(【0053】)する際の湿式粉砕において、「湿式粉砕の際に使用されたジルコニアビーズ粒子、及び湿式粉砕時間によるスラリー粒子のサイズを測定」(【0056】)したとされる図1は、以下のものであり、 【図1】 [図:0001420292000001.jpg] この際のスラリー粒子のサイズは、図1の縦軸にあるように、D50で表されている。 (イ)また、ジルコニウムと湿式粉砕時間を調節して粒度を変化させて製造されたスラリーの粒度が表されている(【0057】)以下の表1と、 【表1】 [図:0001420292000002.jpg] 上述の実施例1で製造されたスラリーの粒度を表すとされている(【0062】)以下の表2を見比べると、 【表2】 [図:0001420292000003.jpg] 表2のSPL-1~SPL-5の「スラリー粒度」の数値が、表1のDin~Damの粒径のうち、D50の小数点以下3桁目を四捨五入したものとなっている。 以上(ア)及び(イ)によれば、(ア)及び(イ)におけるD50は、アルミニウムコーティングが形成される前のリチウムチタン複合酸化物が製造された際のスラリー中の粒子のものであるものの、本件明細書においては、粒子の大きさを表すにはD50が典型的に使用されていることが理解できるから、請求項1を引用する請求項2で、複数個のアルミニウムコーティングが施された一次粒子が凝集して形成される二次粒子の「サイズ」についても、「サイズ」の指標に特段の明示がない状況では、D50で記載されていると理解するのが合理的である。 そうすると、上記訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 上記ア及びイによれば、訂正事項2は、「二次粒子のサイズ」との記載を、本件明細書の内容から理解される本来の意味に正すものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3、4、6 訂正事項3、4、6は、それぞれ請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項5 訂正事項5は、設定登録時の請求項8が引用する請求項に請求項6、7が含まれていたところ、訂正事項3、4の訂正により請求項6、7が削除されたことに伴い、これに整合させるため引用する請求項から請求項6、7を削除し、引用請求項数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項5は、設定登録時の請求項8が引用していた請求項の数を減少させるもので、本件訂正後の請求項8の内容は、設定登録時の請求項8の範囲内のものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 訂正についてのまとめ 本件訂正の請求は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~9〕について訂正することを求めるものであるところ、上記2のとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件特許異議申立てに係る本件訂正後の請求項1~9に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応させて「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)は、次のとおり特定されるものである。 「【請求項1】 リチウムチタン複合酸化物の一次粒子とアルミニウム化合物との混合物を溶媒に分散させたスラリーを噴霧乾燥し、さらに熱処理を行って形成する、硫酸アルミニウムを用いてアルミニウムコーティングが施された一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物であって、 リチウムチタン複合酸化物が、複数個のアルミニウムコーティングが施された一次粒子が凝集して形成される二次粒子である、前記のリチウムチタン複合酸化物。 【請求項2】 前記二次粒子のサイズ分布D50は、7~20umである、請求項1に記載のリチウムチタン複合酸化物。 【請求項3】 前記リチウムチタン複合酸化物は、残留リチウムが2,000ppm以下である、請求項1に記載のリチウムチタン複合酸化物。 【請求項4】 前記リチウムチタン複合酸化物は、LTOのメインピークに対するルチル型二酸化チタンのピーク強度比が3%以内である、請求項1に記載のリチウムチタン複合酸化物。 【請求項5】 前記リチウムチタン複合酸化物は、LTOのメインピークに対するアナターゼ型二酸化チタンのピーク強度比が1%以内である、請求項1に記載のリチウムチタン複合酸化物。 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 請求項1~5のうちのいずれか1項に記載のリチウムチタン複合酸化物を含むリチウム二次電池用電極。 【請求項9】 (削除)」 第4 令和6年3月26日付けで通知した取消理由(決定の予告)、令和5年8月15日付けで通知した取消理由、及び異議申立人による特許異議の申立理由の概要 なお、削除された請求項に対する理由の記載は省略している。 1 令和6年3月26日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要 (1)特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)及び同法同条第2項所定の規定違反(進歩性欠如) ア 本件訂正前の請求項1、2、4、5、8に係る発明は、後記4の甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。また、本件訂正前の請求項1~5、8に係る発明は、同甲第3号証に記載された発明及び同甲第5号証に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「取消理由1」とする。)。 イ 本件訂正前の請求項1、2、4、5、8に係る発明は、後記4の甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。また、本件訂正前の請求項1~5、8に係る発明は、同甲第4号証に記載された発明及び同甲第5号証に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「取消理由2」とする。)。 (2)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反) 本件特許は、本件訂正前の請求項1~5、8の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「取消理由3」とする。)。 記 本件発明の課題は、「リチウムチタン複合酸化物の一次粒子を異種の金属でコーティングすることにより、ガスの発生を効果的に調節することができる、新しい構造のアルミニウムコーティングが施された一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物を提供すること」にあるといえるところ、本件明細書の記載によれば、本件発明の課題を解決するには、少なくとも、リチウムチタン複合酸化物が、噴霧乾燥後、熱処理を行うものであること、リチウムチタン複合酸化物に混合されるアルミニウム化合物が硫酸アルミニウムであることが肝要であるといえる。 しかしながら、本件訂正前の請求項1~5、8に係る発明では、リチウムチタン複合酸化物が、噴霧乾燥後、熱処理を行うものであること、リチウムチタン複合酸化物に混合されるアルミニウム化合物が硫酸アルミニウムであることが特定されていないから、本件訂正前の請求項1~5、8に係る発明は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできないし、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない。 そうすると、本件訂正前の請求項1~5、8に係る発明は、サポート要件を満たしていない。 2 令和6年3月26日付けで通知した取消理由(決定の予告)とは異なる令和5年8月15日付けで通知した取消理由の概要 (1)特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)及び同法同条第2項所定の規定違反(進歩性欠如) ア 設定登録時の請求項1、2、8に係る発明は、後記4の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。また、設定登録時の請求項1~5、8に係る発明は、同甲第1号証に記載された発明及び同甲第3、5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「取消理由4」とする。)。 イ 設定登録時の請求項1、8に係る発明は、後記4の甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。また、設定登録時の請求項1~5、8に係る発明は、同甲第2号証に記載された発明及び同甲第3、5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「取消理由5」とする。)。 ウ 設定登録時の請求項1、2、8に係る発明は、後記4の甲第5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。また、設定登録時の請求項1~5、8に係る発明は、同甲第5号証に記載された発明及び同甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「取消理由6」とする。)。 (2)特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反) 本件特許は、設定登録時の請求項2の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「取消理由7」とする。)。 記 設定登録時の請求項2に係る発明は、「前記二次粒子のサイズは、7~20umである、請求項1に記載のリチウムチタン複合酸化物。」と特定されるものであるが、本件明細書等の記載で、二次粒子の「サイズ」に関する定義がないから、「サイズ」が何を意味しているのか不明である。 仮に、二次粒子の粒径を意味するとしても、個々の粒子の粒径を意味しているのか、平均粒径を意味しているのか不明であるし、さらには、粒径の定義にも、複数の定義があり、それぞれ意味する内容が異なるのであるから、「7~20um」と記載されていても、「二次粒子の粒径」が一義的に定まるとはいえない。 そうすると、設定登録時の請求項2の記載は、明確でない。 3 令和6年3月26日付けで通知した取消理由(決定の予告)及び令和5年8月15日付けで通知した取消理由に採用していない異議申立人による特許異議の申立理由の概要 ・特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反及びサポート要件違反) 本件特許は、設定登録時の請求項3~5に対応する本件明細書の発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。また、設定登録時の請求項3~5の記載が、同じく下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「申立理由」とする。)。 記 (1)設定登録時の請求項3に係る発明について 設定登録時の請求項3に係る発明は、「前記リチウムチタン複合酸化物は、残留リチウムが2,000ppm以下である、請求項1に記載のリチウムチタン複合酸化物。」を内容とするものである。 その一方で、本件明細書には、【0039】に、「本発明によるアルミニウムコーティングが施された一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物を含む電池では、従来の、リチウムチタン複合酸化物のチタンイオンによる電解液の分解、残留リチウムによるガスの発生を抑制する効果が得られる。」との記載があるものの、リチウムチタン複合酸化物中の残留リチウムを2,000ppm以下とするための具体的な方法について記載されておらず、さらには、リチウムチタン複合酸化物中の残留リチウムを2,000ppm以下とした具体的な実験例等についても開示されていない。 よって、本件明細書の発明の詳細な説明からは、設定登録時の請求項3に係る発明をどのように実施するかについて理解できず、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が、設定登録時の請求項3に係る発明を実施できる程度に記載されたものであるとはいえない。 また、設定登録時の請求項3に係る発明は、その実施ができないものであるから、本件発明の課題を解決できるものであるのか否かが不明である。 (2)設定登録時の請求項4、5に係る発明について 設定登録時の請求項4に係る発明は、「前記リチウムチタン複合酸化物は、LTOのメインピークに対するルチル型二酸化チタンのピーク強度比が3%以内である、請求項1に記載のリチウムチタン複合酸化物。」を内容とするものであり、設定登録時の請求項5に係る発明は、「前記リチウムチタン複合酸化物は、LTOのメインピークに対するアナターゼ型二酸化チタンのピーク強度比が1%以内である、請求項1に記載のリチウムチタン複合酸化物。」を内容とするものである。 その一方で、本件明細書には、【0019】に、「本発明によるリチウムチタン複合酸化物は、LTOのメインピークに対するルチル型二酸化チタンのピーク強度比が3%以内であり、また、LTOのメインピークに対するアナターゼ型二酸化チタンのピーク強度比が1%以内であることを特徴とする。」との記載があるのみであり、ルチル型二酸化チタン及びアナターゼ型二酸化チタンのピーク強度比を、それぞれ3%及び1%以内とするための具体的な方法について記載されておらず、さらには、ルチル型二酸化チタン及びアナターゼ型二酸化チタンのピーク強度比を、それぞれ3%及び1%以内とした具体的な実験例等についても開示されていない。 よって、本件明細書の発明の詳細な説明からは、設定登録時の請求項4、5に係る発明をどのように実施するかについて理解できず、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が、設定登録時の請求項4、5に係る発明を実施できる程度に記載されたものであるとはいえない。 また、設定登録時の請求項4、5に係る発明は、その実施ができないものであるから、本件発明の課題を解決できるものであるのか否かが不明である。 4 提出された証拠 甲第1号証:国際公開第2017/111566号 甲第2号証:特開2004-235144号公報 甲第3号証:国際公開第2015/030192号 甲第4号証:特開2016-1591号公報 甲第5号証:国際公開第2017/095074号 甲第6号証:特表2018-537833号公報(甲第1号証の訳文) 甲第7号証:特表2018-525787号公報(甲第5号証の訳文) (以下、甲第1号証を略して、「甲1」などという。) 第5 当審の判断 当審は、上記取消理由1~7及び申立理由のいずれにも理由がないと判断する。 以下、その理由について詳述する。 1 取消理由1、2、4~6(新規性欠如及び進歩性欠如)について (1)甲1~甲5に記載された事項 ア 甲1に記載された事項(甲1は外国語による国際出願であるところ、当該国際出願の対応日本国出願の公表公報である甲6を訳文として用い、甲1の外国語の摘示は省略し、その記載箇所のみを記載する。) (ア)「14頁2~27行」 (【請求項1】 一次粒子が凝集して形成された二次粒子の形態を有し、前記一次粒子は、コア及び前記コア表面の全部または少なくとも一部を被覆するシェルを含むコア-シェル構造を有し、前記コアはリチウムチタンオキシドの一次粒子であり、前記シェルは金属酸化物を含むことを特徴とするMO-LTO複合粒子。 ・・・ 【請求項4】 前記金属酸化物が、Al2O3及びZrO2から構成された群より選択された一種以上であることを特徴とする請求項1に記載のMO-LTO複合粒子。 【請求項5】 前記一次粒子は、D50(体積基準密度分布)が0.1~1μmであることを特徴とする請求項1に記載のMO-LTO複合粒子。 【請求項6】 前記二次粒子は、D50(体積基準密度分布)が2-50μmであることを特徴とする請求項1に記載のMO-LTO複合粒子。) (イ)「2頁14~21行」 (【発明が解決しようとする課題】 【0011】 本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、入出力特性が優秀であり、電池使用中におけるガス発生量が少ない負極活物質を提供することを目的とする。 【0012】 また、本発明は、前記負極活物質を含む電気化学素子用電極を提供することを他の目的とする。 【0013】 なお、本発明の他の目的及び長所は、下記する説明によって理解でき、本発明の実施例によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。) (ウ)「4頁17行~5頁30行」 (【0030】 本発明の一具現例によれば、前記複合粒子は、一次粒子の形態であり得る。また、前記複合粒子は、前記一次粒子が凝集して形成された二次粒子の形態を有し得る。本発明の一実施様態において、前記複合粒子は、二次粒子を含む。前記一次粒子は、LTO一次粒子表面の全部または少なくとも一部が金属酸化物によって被覆されている。本発明において、二次粒子は、一次粒子が相互物理的に凝集した形態で複合化するか、または化学的に結合して複合化できる。 ・・・ 【0032】 複合一次粒子 図1は、本発明による金属酸化物-リチウムチタン酸化物複合粒子(MO-LTO複合粒子)のうちコア-シェル構造を有する一次粒子を図式化して示したものである。これを参照すれば、前記一次粒子は、コア部と前記コア部の表面の全部または一部を被覆しているシェル部を含むコア-シェル構造を有する。本発明の具体的な一実施様態によれば、前記コア部はLTO一次粒子であり、シェル部は金属酸化物を含む。 ・・・ 【0038】 本発明の具体的な一実施様態によれば、前記一次粒子は、体積基準粒度分布であるD50が0.1~1μmであり得る。本明細書において体積基準粒度分布であるD50は、粒径を測定して小さい粒子から体積を累積する場合、全体積の50%となる粒子の粒径を意味する。 【0039】 複合二次粒子 本発明において、前記複合粒子は、MO-LTO複合一次粒子が造粒化した複合二次粒子を含む。本発明の具体的な一実施様態によれば、前記MO-LTO複合二次粒子は、D50(体積基準密度分布)が2μm~50μmである。もし、粒子の大きさが前記範囲に及ばない場合には粒子が相互凝集し、電極の形成に際し、電極合剤が集電体の表面に均一に分散せず電極内で粒子が偏って配置され得る。一方、前記範囲を超過する場合には、電極の空隙の大きさが過度に増加してしまい、内部抵抗が増加して出力特性が低下し得る。) (エ)「8頁31~35行」 (【0055】 また、本発明は、前記のようにして製造された負極を含むリチウムイオン二次電池またはハイブリッドスーパーキャパシタを提供する。リチウムイオン二次電池は、通常、負極、正極及び前記正極と負極との間に介される分離膜、及び電解液を含む単位セルで構成される。また、本発明は、前記のようにして製造された負極を含むリチウムイオン電池の負極またはハイブリッドスーパーキャパシタを提供する。) (オ)「11頁25行~12頁23行」 (【0065】 実施例 MO-LTO複合粒子の製造 TiO2(純度99.0重量%、粒径約10μm)及びLi2CO3(純度99.5重量%、粒径約15μm)を用いてLi/Ti比が0.80になるよう分散媒である水に入れ、振動ミルを用いて粉砕及び混合してスラリーを製造した。前記スラリーを約800℃の温度で焼成し、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)一次粒子を得た。続いて、前記粒子を粉砕して濾して、粒径を0.5μm~1μmにした。 【0066】 前記のようにして得られたリチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)一次粒子粉末とAl2O3(純度99.0%、粒径5μm)粉末を容器に入れた後、これを、ピンミル(pin mill)を用いて機械的に混合し、リチウムチタン酸化物(LTO)一次粒子の表面にAl2O3を被覆した。 【0067】 その後、Al2O3が被覆されたLTO一次粒子を蒸溜水に入れ、噴霧液を準備した。準備した噴霧液を噴霧乾燥装備のチャンバ内に供給し、チャンバ内で噴霧して乾燥した。この際、前記噴霧乾燥の条件は、乾燥温度130℃、内部圧力-20mbar、流速45ml/分にした。前記噴霧乾燥の結果、MO-LTO二次粒子を得た。前記二次粒子は、一次粒子が凝集して形成されたものである。続いて、得られた二次粒子を700℃/10hrの還元雰囲気(N2)下で焼成した。 【0068】 前記工程によってMO-LTO二次粒子を得た。前記MO-LTO二次粒子は、一次粒子及び二次粒子の表面の少なくとも一部を金属酸化物が被覆するように構成されている。 【0069】 電池の製造 実施例1 負極活物質として前記製造されたMO-LTO二次粒子を用いた。前記二次粒子、導電材(カーボンブラック)、バインダー(PVDF)を各々90:5:5の重量比でNMPに入れてミキシングすることで負極合剤を製造し、製造された負極合剤を電流集電体として20μm厚さの銅ホイルに60μmの厚さでコーティングした後、乾燥することで負極を製造した。 【0070】 次に、LiMnO2、導電材(カーボンブラック)、バインダー(PVDF)を各々90:5:5の重量比でNMPに入れてミキシングして正極スラリーを製造し、これを75μmの厚さでアルミニウム集電体の上にコーティングして薄板形態にした後、135℃で3時間以上乾燥した後に圧延することで正極を製造した。 【0071】 前記負極と正極との間に分離膜(ポリエチレン素材の分離膜、厚さ:16μm)を介して電極組立体を製造した後、前記電極組立体は、電池ケースに収納してLiPF61Mの濃度及び有機溶媒(エチレンカーボネート:メチルエチルカーボネート=2:1の体積比)を電解液としてフルセルを製造した。) (カ)「図面1/2」 (【図1】 [図:0001420292000004.jpg] ) イ 甲2に記載された事項 (ア)「【請求項1】 アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属 を含むスピネル構造からなるリチウム遷移金属複合酸化物を有する非水電解質二次電池用負極活物質。 ・・・ 【請求項7】 前記リチウム遷移金属複合酸化物は、一般式LiaTibO4+c(aは0.8≦a≦1.5を満たす数を表し、bは1.5≦b≦2.2を満たす数を表し、cは-0.5≦c≦0.5を満たす数を表す。)で表される請求項1~6のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極活物質。 ・・・ 【請求項10】 請求項1~9のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極活物質に用いられるリチウム遷移金属複合酸化物は、表面の少なくとも一部にAl2O3及び/又はLiTiO2を有する非水電解質二次電池用負極活物質。」 (イ)「【0005】 特許文献1には、一般式Li4/3Ti5/3-xFexO4(0<x≦0.2)で表されるチタン酸リチウムを負極活物質として使用することが記載されている。そして、チタン元素の一部を鉄元素で置換することにより、結晶中のTi元素の価数が変化して活物質の導電性が改善されるものと推定され、高エネルギー密度を有し、かつ、リチウムの析出反応が起こらず、安全性および信頼性が向上することが記載されている。 また、特許文献2には、一般式LixTi5/3-yLyO4(Lは1種以上の遷移金属で、Ti以外の元素、4/3≦x≦7/3,0≦y≦5/3)で表されるスピネル型構造を有する酸化物焼成体を負極活物質の主成分とすることが記載されている。そして、この負極活物質は、電解質との副反応が起こりにくいため保存特性に優れた非水電解質リチウム二次電池が得られることが記載されている。 【0006】 しかしながら、これらの負極活物質では、サイクル特性を向上させることはできなかった。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明の目的は、より一層厳しい使用環境下においても優れた電池特性を有する非水電解質二次電池用負極活物質および非水電解質二次電池を提供することにある。すなわち、優れたサイクル特性(サイクル充放電特性)を有する非水電解質二次電池用負極活物質および非水電解質二次電池を提供することにある。」 (ウ)「【0031】 Al2O3を被覆層とすることにより、リチウムイオンの易動度が上昇し、負荷特性、出力特性が改善されると考えられる。LiTiO2を被覆層とすることにより、リチウムイオンの易動度が上昇し、負荷特性、出力特性が改善されると考えられる。」 (エ)「【0052】 本発明において、リチウム遷移金属複合酸化物は、粒子の形態で存在する。具体的には、上記リチウム遷移金属複合酸化物が、一次粒子およびその凝集体である二次粒子の一方または両方からなる粒子の形態で存在する。即ち、リチウム遷移金属複合酸化物は、粒子の形態で存在し、その粒子は、一次粒子のみからなっていてもよく、一次粒子の凝集体である二次粒子のみからなっていてもよく、一次粒子と二次粒子の両者からなっていてもよい。」 (オ)「【0056】 本発明において、非水電解質二次電池用負極活物質に用いられるリチウム遷移金属複合酸化物は、表面の少なくとも一部にAl2O3及び/又はLiTiO2を有することが好ましい。Al2O3及び/又はLiTiO2は、リチウム遷移金属複合酸化物の粒子の表面にどのような形で存在していても本発明の効果を発揮する。例えば、Al2O3及び/又はLiTiO2がリチウム遷移金属複合酸化物の粒子の表面の全体に被膜されている場合であっても、Al2O3及び/又はLiTiO2がリチウム遷移金属複合酸化物の粒子の一部に被覆されている場合であっても、サイクル充放電特性、保存特性、安全性が向上する。また、Al2O3及び/又はLiTiO2は、少なくとも粒子の表面に存在していればよい。したがって、Al2O3及び/又はLiTiO2の一部が粉末本体の内部に存在していてもよい。 ・・・ 【0059】 Al2O3の大きさは、特に限定されないが、中心粒子径が0.3μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。大きすぎると被覆部分が不均一になり効果を発現できないからである。 LiTiO2の大きさは、特に限定されないが、中心粒子径が3μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。この範囲であればリチウム遷移金属複合酸化物を容易に被覆することができ、また大きすぎると放電容量が低下するからである。Al2O3及び/又はLiTiO2の形状は、粉末の球状に限定されない。 ・・・ 【0062】 上記粉末本体に、Al2O3及び/又はLiTiO2を被覆させる方法は特に限定されず、一般に用いられている混合機を用いることができる。中でも、微量添加を行うため、高速でせん断性の高い高速流動式混合機が好ましい。」 (カ)「【0079】 本発明の負極活物質は、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池等の非水電解質二次電池に好適に用いられる。 即ち、本発明の非水電解質二次電池は、本発明の負極活物質を用いた非水電解質二次電池である。本発明の非水電解質二次電池は、その負極活物質の少なくとも一部として本発明の負極活物質を用いていればよい。」 ウ 甲3に記載された事項 (ア)「請求の範囲 [請求項1] Li4Ti5O12を主成分とするチタン酸リチウム粉末であって、 BET法によって求めた比表面積から算出される比表面積相当径をDBETとし、Li4Ti5O12の(111)面のピーク半値幅からScherrerの式より算出される結晶子径をDXとしたときに、DBETが0.1~0.6μmであり、 DXが80nmより大きく、 DBETとDXの比DBET/DX(μm/μm)が3以下であることを特徴とする、チタン酸リチウム粉末。 ・・・ [請求項4] M(ただし、Mは、2族、12族、または13族から選ばれる少なくとも一種の金属元素である)を含有することを特徴とする請求項1~3いずれか一項に記載の、チタン酸リチウム粉末。 [請求項5] 前記Mが、Mg、Zn、Al、Ga、またはInから選ばれる少なくとも一種の金属元素であることを特徴とする請求項4に記載の、チタン酸リチウム粉末。 ・・・ [請求項7] 走査透過型電子顕微鏡を用いた前記チタン酸リチウム粒子の断面分析において、エネルギー分散型X線分光法により測定される、前記チタン酸リチウム粒子の表面から、前記チタン酸リチウム粒子の表面の接線に対して垂直な向きに引いた直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって5nmの位置における、前記Mの元素濃度をD1(atm%)とし、前記直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって100nmの位置における、前記Mの元素濃度をD2(atm%)とすると、下記式(I)を満たすことを特徴とする請求項1~6いずれか一項に記載の、チタン酸リチウム粉末。 D1>D2 (I) ・・・ [請求項11] リチウムイオン二次電池の電極用である請求項1~10いずれか一項に記載の、チタン酸リチウム粉末。」 (イ)「発明が解決しようとする課題 ・・・ [0008] 以上のように、従来は、リチウムイオン電池などの蓄電デバイスに電極材料として適用した場合に、初期充放電容量が大きく、入力特性も良好なチタン酸リチウム粉末は得られていなかった。 [0009] そこで、本発明は、蓄電デバイスなどの電極材料として適用した場合に、初期充放電容量が大きく、入出力特性に優れるチタン酸リチウム粉末、それを含む活物質材料、それが用いられた蓄電デバイスを提供することを目的とする。 課題を解決するための手段 [0010] 本発明者らは、前記の目的を達成すべく種々検討した結果、特定の大きさのBET径(比表面積相当径)及び結晶子径を有し、結晶子径に対するBET径の大きさが特定の値以下であるチタン酸リチウム粉末を見出し、そのチタン酸リチウム粉末が電極材料として適用された蓄電デバイスが、初期充放電容量が大きく、入出力特性に優れることを見出して本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の事項に関する。」 (ウ)「[0029] [チタン酸リチウム粉末] ・・・ [0030] ここで、Li4Ti5O12を主成分とするとは、X線回折法によって測定されるピークのうち、Li4Ti5O12のメインピークに相当するピーク強度を100としたときに、アナターゼ型二酸化チタンのメインピーク強度が5以下であり、ルチル型二酸化チタンのメインピーク強度が5以下であり、Li2TiO3のメインピークに相当するピーク強度が5以下であることを言う。ただし、これらのLi4Ti5O12以外の成分が存在すると相対的にLi4Ti5O12の含有量が低下してレート特性及び容量が低下するため、これらのLi4Ti5O12以外の成分は少ないことが好ましい。特にルチル型二酸化チタンは、レート特性及び容量への悪影響が大きいため、ルチル型二酸化チタンのメインピーク強度が3以下であることが好ましい。 ・・・ [0035] 本発明のチタン酸リチウム粉末は、実質的にLi、TiおよびOのみからなるものであってもよいし、あるいは、Li、TiおよびO以外の異種元素を含有しても良い。本発明のチタン酸リチウム粉末は、異種元素として、M(ただし、Mは2、12、13族から選ばれる少なくとも1種の金属元素である)を含有することが好ましい。低温での入力特性、特に充電容量維持率が高くなるからである。Mとしては、特に、Mg、Zn、Al、Ga、またはInから選ばれる少なくとも1種の金属元素であることがより好ましい。Mg、Zn、Al、Ga、およびInは、これらのイオンにおけるポーリングのイオン半径が、Ti4+のポーリングのイオン半径の±20pmの範囲内(すなわち、Ti4+のポーリングのイオン半径は68pmであるため、68pm±20pmの範囲内)にある金属元素であり、Ti4+と価数が異なる金属元素なので、Liイオンの拡散速度を改善させるものと推測され、特に低温での入力特性を向上させる効果がある。 ・・・ [0037] 前記Mは、前記チタン酸リチウム粉末を構成するチタン酸リチウム粒子の内部領域よりも、表面領域の方に多く含有されることが好ましい。例えば、走査透過型電子顕微鏡を用いた前記チタン酸リチウム粒子の断面分析において、前記チタン酸リチウム粒子の表面から、前記チタン酸リチウム粒子の表面の接線に対して垂直な向きに引いた直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって5nmの位置における、エネルギー分散型X線分光(EDS)法により測定される前記Mの元素濃度をD1(atm%)とし、前記直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって100nmの位置における、エネルギー分散型X線分光(EDS)法により測定される前記Mの元素濃度をD2(atm%)とすると、下記式(1)を満たすことが好ましい。 D1>D2 (1) ・・・ [0042] <体積中位粒径> 本発明のチタン酸リチウム粉末は、造粒操作が行われずに得られた粉末でも、焼成前後のいずれかに造粒操作が行われて得られた粉末でも良く、造粒操作が行われずに得られた粉末の場合は、本発明のチタン酸リチウム粉末の体積中位粒径(平均粒径、以下D50と記す)は、0.01~2μmである。電極を作製する際に、チタン酸リチウム粉末の凝集を抑制し取扱性を良くするためには、造粒操作が行われずに得られた、本発明のチタン酸リチウム粉末のD50は、0.1μm以上が好ましく、入出力特性を良好にするには1μm以下が好ましい。これらの観点から、造粒操作が行われずに得られた、本発明のチタン酸リチウム粉末のD50は、より好ましくは0.1~1μmであり、更に好ましくは0.2~0.9μmである。また、造粒操作が行われて得られた粉末の場合は、本発明のチタン酸リチウム粉末のD50は50μm以下であることが好ましい。」 (エ)「[0060] <後処理工程> 以上のようにして得られた焼成後のチタン酸リチウム粉末は、軽度の凝集はあるものの、粒子を破壊するような粉砕を行わなくても良く、必要に応じて凝集を解す程度の解砕や分級を行えば良い。」 (オ)「[0073] (チタン酸リチウム粉末と前記M源とを混合し熱処理する方法) 前記Mを含有するチタン酸リチウム粉末であり、粒子の内部領域よりも、表面領域の方にMを多く含有する、本発明のチタン酸リチウム粉末は、上記の[チタン酸リチウム粉末の製造方法]に説明する方法にて得られた、基材のチタン酸リチウム粉末を、前記Mを含有する化合物と混合する混合工程と、得られた混合粉末を熱処理する熱処理工程とからなる製造方法によって得ることができる。 [0074] <混合工程> 前記Mを含有する化合物としては、熱処理によって拡散する化合物なら、どのような化合物でも良く、たとえば、前記Mの酸化物、前記Mの水酸化物および前記Mを含有する金属塩化合物が挙げられる。前記Mをチタン酸リチウム粉末の粒子表面に均一に拡散させるためには、後述の湿式法を用いるのが適しており、その場合は、溶媒に可溶なMを含有する化合物を、その溶媒に溶解させて、基材のチタン酸リチウム粉末と混合することが好ましい。Mを含有する化合物が前記Mを含有する金属塩化合物である場合、充放電容量を高くする点で、アニオン種としては、熱処理後にアニオン種由来の不純物が粒子表面に残存しないアニオン種が適しており、例えば、前記Mを含有する有機酸化合物や前記Mを含有する硝酸化合物が好ましい。また、pHを低減する点では、前記Mのフッ化物が好ましい。 [0075] 基材のチタン酸リチウム粉末とMを含有する化合物との混合方法に特に制限はなく、湿式混合または乾式混合のいずれの方法も採用することができるが、チタン酸リチウム粒子の表面領域のMの元素濃度を、内部領域のMの元素濃度より、より大きくするためには、チタン酸リチウム粒子の表面にMを含有する化合物を均一に分散させることが好ましく、その点においては湿式混合が好ましい。 ・・・ [0077] 湿式混合としては、水またはアルコール溶媒中に前記Mを含有する化合物とチタン酸リチウム粉末を投入し、スラリー状態で混合させる。アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど沸点が100℃以下のものが溶媒除去しやすい点で好ましい。また、回収、廃棄のしやすさから、工業的には水溶媒が好ましい。 ・・・ [0079] 湿式混合の場合は、熱処理方法にもよるが、混合工程の後に行う熱処理の前に溶媒を除去することが好ましい。溶媒の除去は、溶媒を蒸発乾固させることで行うことが好ましく、溶媒を蒸発乾固させる方法としては、スラリーを撹拌羽で撹拌しながら加熱し蒸発させる方法、コニカルドライヤーなど撹拌させながら乾燥が可能な乾燥装置を用いる方法およびスプレードライヤーを用いる方法が挙げられる。熱処理が、ロータリーキルン炉を用いて行われる場合は、混合した原料をスラリーのまま炉内に供することができる。 [0080] <熱処理工程> 熱処理における加熱方法は特に限定されるものではない。利用できる熱処理炉としては、固定床式焼成炉、ローラーハース式焼成炉、メッシュベルト式焼成炉、流動床式、ロータリーキルン式焼成炉などが挙げられる。熱処理時の雰囲気としては、大気雰囲気でも、窒素雰囲気などの不活性雰囲気のどちらでも良い。Mを含有する化合物として前記Mを含有する金属塩化合物を用いた場合は、粒子表面からアニオン種が除去されやすい大気雰囲気が好ましい。熱処理温度としては、前記Mが、基材のチタン酸リチウム粒子の、少なくとも表面領域に拡散する温度であって、基材のチタン酸リチウムが焼結することによる、比表面積の大幅な減少が発生しない温度が良い。熱処理温度の上限値としては600℃であり、好ましくは550℃、より好ましくは500℃である。熱処理温度の下限値としては、250℃である。熱処理時間としては、0.5~8時間であり、より好ましくは2~5時間である。前記Mが、基材のチタン酸リチウム粒子の、少なくとも表面領域に拡散する温度および時間は、Mを含有する化合物によって反応性が異なるため、適宜設定するのが良い。」 (カ)「[0119] [実施例1] Li2CO3(平均粒径 4.6μm)とアナターゼ型TiO2(平均粒径 0.6μm)をTiに対するLiの原子比Li/Ti:0.84になるように秤量し、固形分濃度41重量%となるようにイオン交換水を加え撹拌し混合スラリーを作製した。この混合スラリーをビーズミル(ウィリー・エ・バッコーフェン社製、形式:ダイノーミル KD-20BC型、アジテーター材質:ポリウレタン、ベッセル内面材質:ジルコニア)を使用して、ジルコニア製(外径:0.65mm)のビーズをベッセルに80体積%充填し、アジテーター周速13m/s、スラリーフィード速度55kg/hrで、ベッセル内圧が0.02~0.03MPa以下になるように制御しながら、粉砕・混合を行った。ビーズミル粉砕・混合前の混合スラリーの混合粉末の粒度分布を図1に、ビーズミル粉砕・混合後の混合スラリーの混合粉末の粒度分布を図2に示す。得られた図2の粒度分布より、ビーズミル粉砕・混合後の混合粉末、すなわち焼成に供する混合粉末のD95を算出した。その結果を表1に示す。本実施例の混合粉末のD95は0.73μmであった。 [0120] 得られた混合スラリーを、付着防止機構を備えたロータリーキルン式焼成炉(炉芯管長さ:4m、炉芯管直径:30cm、外部加熱式)の原料供給側から炉心管内に導入し、乾燥し、焼成した。このときの、炉心管の水平方向からの傾斜角度を2度、炉心管の回転速度を20rpm、焼成物回収側から炉心管内に導入する窒素の流速を20L/分として、炉心管の加熱温度を、原料供給側:900℃、中央部:900℃、焼成物回収側:900℃とし、焼成物の、加熱域での滞留時間を26分とした。その後、炉心管の焼成物回収側から回収した焼成物を、ハンマーミル(ダルトン製、AIIW-5型)を使用して、スクリーン目開き:0.5mm、回転数:8,000rpm、粉体フィード速度:25kg/hrの条件で解砕した。解砕した粉末を、篩(目の粗さ:45μm)分けし、篩を通過した粉末を収集した。 [0121] 得られたチタン酸リチウム粉末について、XRD、D50(μm)、BET比表面積(m2/g)、及びpHを測定し、XRDによって測定される構成相のピーク強度比、BET径DBET(μm)、結晶子径DX(nm)、およびDBETとDXの比DBET/DX(μm/μm)を算出した。その結果を表1に示す。本実施例のチタン酸リチウム粉末のXRDの測定結果からは、Li4Ti5O12のピーク以外には、Li4Ti5O12のメインピークに相当するピーク強度を100としたときの強度が1.7の、微量のルチル型二酸化チタンのピークのみが確認された。また、本実施例のチタン酸リチウム粉末のD50は0.75μm、BET比表面積は6.36m2/gでDBETは0.27μm、DXは257nmであり、DBET/DX(μm/μm)は1.06と、DBETとDXとの比は小さい値を示した。pHは11.3であった。 ・・・ [0155] [実施例7] M源(Al源)を可溶性酢酸アルミニウム(Al含有量7%)とし、該可溶性酢酸アルミニウムと実施例1で得られたチタン酸リチウム粉末を、これらの混合物における、Tiに対するAlの原子比がAl/Ti:0.011になるように秤量し、チタン酸リチウム粉末に対して3倍量の水に投入し混合した。このとき可溶性酢酸アルミニウムは100%溶解していた。得られたスラリーを、撹拌しながら、90℃に加温することで、水を蒸発乾固させた。得られた混合粉末を大気中500℃で5時間熱処理することによって、実施例7のチタン酸リチウム粉末を作製した。 [0156] 得られたチタン酸リチウム粉末について、XRD、D50(μm)、BET比表面積(m2/g)、及びpHを測定し、XRDによって測定される構成相のピーク強度比、BET径DBET(μm)、結晶子径DX(nm)、およびDBETとDXの比DBET/DX(μm/μm)を算出した。その結果を表3に示す。本実施例のチタン酸リチウム粉末のXRDの測定結果からは、Li4Ti5O12のピーク以外には、Li4Ti5O12のメインピークに相当するピーク強度を100としたときの強度が1.7の、微量のルチル型二酸化チタンのピークのみが確認された。また、本実施例のチタン酸リチウム粉末のD50は0.78μm、BET比表面積は5.75m2/gでDBETは0.302μm、DXは273nmであり、DBET/DX(μm/μm)は1.11と、DBETとDXとの比は小さい値を示した。pHは11.2であった。 ・・・ [0167] [実施例10] M源(Al源)を硫酸アルミニウム16水和物に変えた以外は実施例7と同様にして実施例10のチタン酸リチウム粉末を作製した。 [0168] 得られたチタン酸リチウム粉末について、XRD、D50(μm)、BET比表面積(m2/g)、及びpHを測定し、XRDによって測定される構成相のピーク強度比、BET径DBET(μm)、結晶子径DX(nm)、およびDBETとDXの比DBET/DX(μm/μm)を算出した。その結果を表3に示す。本実施例のチタン酸リチウム粉末のXRDの測定結果からは、Li4Ti5O12のピーク以外には、Li4Ti5O12のメインピークに相当するピーク強度を100としたときの強度が1.7の、微量のルチル型二酸化チタンのピークのみが確認された。また、本実施例のチタン酸リチウム粉末のD50は0.77μm、BET比表面積は5.63m2/gでDBETは0.309μm、DXは278nmであり、DBET/DX(μm/μm)は1.11と、DBETとDXとの比は小さい値を示した。pHは11.1であった。」 エ 甲4に記載された事項 (ア)「【請求項1】 Li4Ti5O12を主成分とするチタン酸リチウム粉末であって、 BET法によって求めた比表面積から算出される比表面積相当径をDBETとし、Li4Ti5O12の(111)面のピーク半値幅からScherrerの式より算出される結晶子径をDXとしたときに、DBETが0.1~0.6μmであり、 DXが80nmより大きく、 DBETとDXの比DBET/DX(μm/μm)が3以下であり、 M(ただし、Mは、Mg、Zn、Al、Ga、またはInから選ばれる少なくとも一種の金属元素である)を含有し、 走査透過型電子顕微鏡を用いた前記チタン酸リチウム粒子の断面分析において、エネルギー分散型X線分光法により測定される、前記チタン酸リチウム粒子の表面から、前記チタン酸リチウム粒子の表面の接線に対して垂直な向きに引いた直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって5nmの位置における、前記Mの原子濃度をD1(atm%)およびチタンの原子濃度をDti(atm%)とし、前記直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって100nmの位置における、前記Mの原子濃度をD2(atm%)とすると、下記式(I)および(II)を満たすことを特徴とする、蓄電デバイスの電極用チタン酸リチウム粉末。 D1/D2≧5 (I) 0.02≦D1/Dti≦0.4 (II) ・・・ 【請求項5】 請求項1~4いずれか一項に記載の、蓄電デバイスの電極用チタン酸リチウム粉末を含む活物質材料。 【請求項6】 請求項5に記載の活物質材料を含むことを特徴とする、蓄電デバイスの電極シート。 ・・・ 【請求項8】 請求項5に記載の活物質材料を用いることを特徴とするリチウムイオン二次電池。」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 ・・・ 【0012】 以上のように、従来は、リチウムイオン電池などの蓄電デバイスに電極材料として適用した場合に、初期充放電容量が大きく、入力特性が良く、極低温時における入力特性も良好なチタン酸リチウム粉末は得られていなかった。 【0013】 そこで、本発明は、蓄電デバイスに電極材料として適用した場合に、初期充放電容量が大きく、入出力特性に優れ、極低温時での入力特性に優れるチタン酸リチウム粉末、それを含む活物質材料、それが用いられた蓄電デバイスを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0014】 本発明者らは、前記の目的を達成すべく種々検討した結果、特定の大きさのBET径及び結晶子径を有し、結晶子径に対するBET径の大きさが特定の値以下であり、特定の金属元素を含有し、粒子表面におけるその金属元素の濃度の、粒子内部におけるそれとの比が特定の値以上であり、粒子表面におけるその金属元素の濃度の、粒子表面におけるTiの濃度に対する比が特定の範囲にあるチタン酸リチウム粉末を見出し、そのチタン酸リチウム粉末が電極材料として適用された蓄電デバイスが、初期充放電容量が大きく、入出力特性に優れることに加え、極低温時の入力特性に優れることを見出して本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の事項に関する。」 (ウ)「【0026】 [チタン酸リチウム粉末] ・・・ 【0027】 ここで、Li4Ti5O12を主成分とするとは、X線回折法によって測定されるピークのうち、Li4Ti5O12のメインピークに相当するピーク強度を100としたときに、アナターゼ型二酸化チタンのメインピーク強度が5以下であり、ルチル型二酸化チタンのメインピーク強度が5以下であり、Li2TiO3のメインピークに相当するピーク強度が5以下であることを言う。ただし、これらのLi4Ti5O12以外の成分が存在すると相対的にLi4Ti5O12の含有量が低下してレート特性及び容量が低下するため、これらのLi4Ti5O12以外の成分は少ないことが好ましい。特にルチル型二酸化チタンは、レート特性及び容量への悪影響が大きくメインピーク強度が3以下であることが好ましい。 ・・・ 【0032】 本発明のチタン酸リチウム粉末は、異種元素として、M(ただし、Mは2、12、13族から選ばれる少なくとも1種の金属元素である)を含有する。Mとしては、特に、Mg、Zn、Al、Ga、またはInから選ばれる少なくとも1種の金属元素であることがより好ましい。Mg、Zn、Al、Ga、およびInは、これらのイオンにおけるポーリングのイオン半径が、Ti4+のポーリングのイオン半径の±20pmの範囲内(すなわち、Ti4+のポーリングのイオン半径は68pmであるため、68pm±20pmの範囲内)にある金属元素であり、Ti4+と価数が異なる金属元素なので、Tiサイトを置換し易く、本願発明のチタン酸リチウムのように、チタン酸リチウム表面に局在化した形にてTiと価数の異なる特定の異種金属原子を比較的少ない濃度で含んだ状態とすることで、電解液からチタン酸リチウム内へLiイオンが移動する際の電荷移動エネルギーを小さくできると推測される。 ・・・ 【0034】 前記Mは、前記チタン酸リチウム粉末を構成するチタン酸リチウム粒子の内部領域よりも、表面領域の方に多く含有される。走査透過型電子顕微鏡を用いた前記チタン酸リチウム粒子の断面分析において、エネルギー分散型X線分光法により測定される、前記チタン酸リチウム粒子の表面から、前記チタン酸リチウム粒子の表面の接線に対して垂直な向きに引いた直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって5nmの位置における、エネルギー分散型X線分光(EDS)法により測定される、前記Mの原子濃度をD1(atm%)およびチタンの原子濃度をDti(atm%)とし、前記直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって100nmの位置における、前記Mの原子濃度をD2(atm%)とすると、下記式(I)および(II)を満たす。 D1/D2≧5 (I) 0.02≦D1/Dti≦0.4 (II) ・・・ 【0039】 <体積中位粒径> 本発明のチタン酸リチウム粉末は、造粒操作が行われずに得られた粉末でも、焼成前後のいずれかに造粒操作が行われて得られた粉末でも良く、造粒操作が行われずに得られた粉末の場合は、本発明のチタン酸リチウム粉末の体積中位粒径(平均粒径、以下D50と記す)は、0.01~2μmである。電極を作製する際に、チタン酸リチウム粉末の凝集を抑制し取扱性を良くするためには、造粒操作が行われずに得られた、本発明のチタン酸リチウム粉末のD50は、0.1μm以上が好ましく、入出力特性を良好にするには1μm以下が好ましい。これらの観点から、造粒操作が行われずに得られた、本発明のチタン酸リチウム粉末のD50は、より好ましくは0.1~1μmであり、更に好ましくは0.2~0.9μmである。また、造粒操作が行われて得られた粉末の場合は、本発明のチタン酸リチウム粉末のD50は50μm以下であることが好ましい。」 (エ)「【0043】 [チタン酸リチウム粉末の製造方法] 本発明のチタン酸リチウム粉末は、Ti源およびLi源を粉砕・混合する工程、高温かつ短時間(高温短時間)で焼成する工程、M源を追加し混合する工程、M源を含むチタン酸リチウム粉末を熱処理する工程、及び、必要に応じて行う解砕・分級・磁選などの後処理工程により得ることができる。」 (オ)「【0061】 <M源の添加・混合工程> 以上の工程により得られたチタン酸リチウム粉末(以下、基材のチタン酸リチウム粉末と記すことがある)を、前記Mを含有する化合物と混合して熱処理する。前記Mを含有する化合物としては、熱処理によって拡散する化合物なら、どのような化合物でも良く、たとえば、前記Mの酸化物、前記Mの水酸化物および前記Mを含有する金属塩化合物が挙げられる。前記Mをチタン酸リチウム粉末の粒子表面に均一に拡散させるためには、後述の湿式法を用いるのが適しており、その場合は、溶媒に可溶なMを含有する化合物を、その溶媒に溶解させて、基材のチタン酸リチウム粉末と混合することが好ましい。Mを含有する化合物が前記Mを含有する金属塩化合物である場合、充放電容量を高くする点で、アニオン種としては、熱処理後にアニオン種由来の不純物が粒子表面に残存しないアニオン種が適しており、例えば、前記Mを含有する有機酸化合物や前記Mを含有する硝酸化合物が好ましい。 ・・・ 【0063】 基材のチタン酸リチウム粉末とMを含有する化合物との混合方法に特に制限はなく、湿式混合または乾式混合のいずれの方法も採用することができるが、チタン酸リチウム粒子の表面領域のMの原子濃度を、内部領域のMの原子濃度より、より大きくするためには、チタン酸リチウム粒子の表面にMを含有する化合物を均一に分散させることが好ましく、その点においては湿式混合が好ましい。 ・・・ 【0065】 湿式混合としては、水またはアルコール溶媒中に前記Mを含有する化合物とチタン酸リチウム粉末を投入し、スラリー状態で混合させる。アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど沸点が100℃以下のものが溶媒除去しやすい点で好ましい。また、回収、廃棄のしやすさから、工業的には水溶媒が好ましい。 ・・・ 【0067】 湿式混合の場合は、熱処理方法にもよるが、混合工程の後に行う熱処理の前に溶媒を除去することが好ましい。溶媒の除去は、溶媒を蒸発乾固させることで行うことが好ましく、溶媒を蒸発乾固させる方法としては、スラリーを撹拌羽で撹拌しながら加熱し蒸発させる方法、コニカルドライヤーなど撹拌させながら乾燥が可能な乾燥装置を用いる方法およびスプレードライヤーを用いる方法が挙げられる。熱処理が、ロータリーキルン炉を用いて行われる場合は、混合した原料をスラリーのまま炉内に供することができる。 【0068】 <M源の添加・混合後の熱処理工程> 前記工程によって基材のチタン酸リチウム粉末とM源とを混合した後、Mを、粒子表面のチタン酸リチウムのTiサイトを置換させる目的で熱処理を行う。熱処理における加熱方法は特に限定されるものではない。利用できる熱処理炉としては、固定床式焼成炉、ローラーハース式焼成炉、メッシュベルト式焼成炉、流動床式、ロータリーキルン式焼成炉などが挙げられる。熱処理時の雰囲気としては、大気雰囲気でも、窒素雰囲気などの不活性雰囲気のどちらでも良い。Mを含有する化合物に前記Mを含有する金属塩化合物を用いた場合は、粒子表面からアニオン種が除去されやすい大気雰囲気が好ましい。熱処理温度としては、前記Mが、基材のチタン酸リチウム粒子の、少なくとも表面領域に拡散する温度であって、基材のチタン酸リチウムが焼結して、比表面積が大幅に減少しない温度が良い。熱処理温度の上限値としては600℃であり、好ましくは550℃、より好ましくは500℃である。熱処理温度の下限値としては、250℃である。熱処理時間としては、0.5~8時間であり、より好ましくは2~5時間である。前記Mが、基材のチタン酸リチウム粒子の、少なくとも表面領域に拡散する温度および時間は、Mを含有する化合物によって反応性が異なるため、適宜設定するのが良い。」 (カ)「【0112】 [参考例1] Li2CO3(平均粒径 4.6μm)とアナターゼ型TiO2(平均粒径 0.6μm)をTiに対するLiの原子比Li/Ti:0.84になるように秤量し、固形分濃度41重量%となるようにイオン交換水を加え撹拌し混合スラリーを作製した。この混合スラリーをビーズミル(ウィリー・エ・バッコーフェン社製、形式:ダイノーミル KD-20BC型、アジテーター材質:ポリウレタン、ベッセル内面材質:ジルコニア)を使用して、ジルコニア製(外径:0.65mm)のビーズをベッセルに80体積%充填し、アジテーター周速13m/s、スラリーフィード速度55kg/hrで、ベッセル内圧が0.02~0.03MPa以下になるように制御しながら、粉砕・混合を行った。ビーズミル粉砕・混合前の混合スラリーの混合粉末の粒度分布を図1に、ビーズミル粉砕・混合後の混合スラリーの混合粉末の粒度分布を図2に示す。得られた図2の粒度分布より、ビーズミル粉砕・混合後の混合粉末、すなわち焼成に供する混合粉末のD95を算出した。その結果を表1に示す。本参考例の混合粉末のD95は0.73μmであった。 得られた混合スラリーを、付着防止機構を備えたロータリーキルン式焼成炉(炉芯管長さ:4m、炉芯管直径:30cm、外部加熱式)の原料供給側から炉心管内に導入し、乾燥し、焼成した。このときの、炉心管の水平方向からの傾斜角度を2度、炉心管の回転速度を20rpm、焼成物回収側から炉心管内に導入する窒素の流速を20L/分として、炉心管の加熱温度を、原料供給側:900℃、中央部:900℃、焼成物回収側:900℃とし、焼成物の、加熱域での滞留時間を26分とした。その後、炉心管の焼成物回収側から回収した焼成物を、ハンマーミル(ダルトン製、AIIW-5型)を使用して、スクリーン目開き:0.5mm、回転数:8,000rpm、粉体フィード速度:25kg/hrの条件で解砕した。解砕した粉末を、篩(目の粗さ:45μm)分けし、篩を通過した粉末を収集した。 得られたチタン酸リチウム粉末について、上述の各種物性測定を行い、得られたチタン酸リチウム粉末を電極材料として使用したコイン型電池を上述の方法で作製し、各種電池特性評価を行った。結果を表1に示す。 ・・・ 【0115】 [実施例1] M源(Al源)として可溶性酢酸アルミニウム(Al含有量7%)を、基材のチタン酸リチウム粉末として参考例1で得られたチタン酸リチウム粉末をそれぞれ用い、これらを、これらの混合物における、Tiに対するAlの原子比Al/Tiが0.011になるように秤量し、チタン酸リチウム粉末に対して3倍量の水に投入し混合した。このとき可溶性酢酸アルミニウムは100%溶解していた。得られたスラリーを、撹拌しながら、90℃に加温することで、水を蒸発乾固させた。得られた混合粉末を大気中500℃で5時間熱処理することによって、実施例1のチタン酸リチウム粉末を作製した。得られたチタン酸リチウム粉末について、上述の各種物性測定および各種電池特性評価を行った。結果を表1に示す。また、図3に、実施例1のチタン酸リチウム粉末の走査透過型電子顕微鏡写真(50万倍)を示す。図3中、チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって5nmの位置、すなわち、本願発明において、チタンの原子濃度がD1で表される位置を「D1」とし、チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって100nmの位置、すなわち、本願発明において、チタンの原子濃度がD2で表される位置を「D2」として示した。 ・・・ 【0117】 [実施例3] M源(Al源)を硫酸アルミニウム16水和物に変えたこと以外は実施例1と同様にして実施例3のチタン酸リチウム粉末を作製した。得られたチタン酸リチウム粉末について参考例1と同様に各種物性測定を行い、また参考例1と同様にコイン型電池を作製し各種電池特性評価を行った。結果を表1に示す。」 (キ)「【0138】 【表1】 [図:0001420292000005.jpg] 」 オ 甲5に記載された事項(甲5は外国語による国際出願であるところ、当該国際出願の対応日本国出願の公表公報である甲7を訳文として用い、甲5の外国語の摘示は省略し、その記載箇所のみを記載する。) (ア)「17頁2~11行」 (【請求項1】 下記化学式(1)で表されるリチウムチタン酸化物;及び、 前記リチウムチタン酸化物にドーピングまたはコーティングされるか、ドーピング及びコーティングされた金属元素;を含有するチタン系複合体を含み、 前記金属元素はM1及びAlを含み、前記M1は、Zr及びNbでなる群より選択される1種以上の遷移金属元素であるものである二次電池用負極活物質: [化学式(1)] LixTiyOz 前記化学式(1)で、 x、y及びzは、0.1≦x≦4、1≦y≦5及び2≦z≦12を満たす。) (イ)「2頁4~22行」 (【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明の目的は、リチウムチタン酸化物の構造的な特徴から起因する固有の抵抗差を克服するため、リチウムチタン酸化物に特定の元素をドーピングまたはコーティングしたチタン系複合体を提供し、出力特性に優れて高出力が求められる自動車電池に好適なリチウム二次電池を提供し、それぞれの二次電池の抵抗の変化幅が少なくてBMS予測アルゴリズムが単純化された電池パックを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 前記目的を達成するため、本発明の一実施形態によれば、下記化学式(1)で表されるリチウムチタン酸化物;及び、前記リチウムチタン酸化物にドーピングまたはコーティングされた金属元素;を含有するチタン系複合体を含み、前記金属元素は、M1、Al及びこれらの組み合わせでなる群より選択されるいずれか一つを含み、前記M1は、Zr及びNbでなる群より選択される1種以上の遷移金属元素であるものである二次電池用負極活物質が提供される。 [化学式(1)] LixTiyOz 前記化学式(1)で、x、y及びzは、0.1≦x≦4、1≦y≦5及び2≦z≦12を満たす。) (ウ)「3頁9~17行」 (【0012】 実施例1 1)負極の製造 リチウム前駆体としてLiOH・H20 13.43g、チタン前駆体としてTiO231.88g、及びM1前駆体としてZrO20.10gをボールミル装置に注入し、60分間ミリングを行って均等に混合して前駆体混合粉末を製造した。次に、前記前駆体混合粉末を焼成炉(furnace)に装入して約10時間の間800℃の温度で熱処理し、以後、再度Al前駆体としてAl2O30.08gを添加して3時間の間500℃の温度で熱処理し、チタン系複合体Li4Ti4.99Zr0.01O12/Al2O3(ドーピング及びコーティング量2000ppm)を合成した。) (エ)「9頁9~15行」 (【0047】 前記チタン系複合体は、その1次粒子の粒径(D50)が1μm以下であるものであってよく、好ましく200から700nmであるものであってよく、2次粒子の粒径(D50)は前記1次粒子が凝集された程度によって異なり得るが、大体1から10μmであるものであってよい。前記粒子の大きさは、後述する製造方法によって正常に製造されたものである場合に満たされるものであって、活物質としての適用に適した大きさであり得る。また、前記範囲の大きさである粒子を利用する場合、1次粒子間の凝集を防止することができ、これを利用して製造される負極の多孔性と関連付けられて適した効果を奏することができる。) (オ)「9頁30~36行」 (【0050】 チタン系複合体を含む負極活物質の製造方法 本発明によれば、(a)リチウム前駆体及びチタン前駆体を混合して前駆体混合物を製造する段階;及び、(b)前記前駆体混合物を800から1100℃で熱処理する段階;を含み、(a-1)前記前駆体混合物にM1前駆体をさらに添加する段階;または、(b-1)前記熱処理後、Al前駆体を混合して300から500℃で熱処理する段階;のうち少なくともいずれか一つの工程をさらに含むものである二次電池用負極活物質の製造方法が提供される。) (カ)「11頁25行~12頁18行」 (【0065】 熱処理温度が800℃より低くて十分な熱の供給ができなくなる場合は、未反応のリチウム前駆体や副反応によるリチウム化合物などのリチウム塩が前記チタン系複合体内に残留する恐れがあり、このような不純物が多量残留している場合、副反応やガスの発生などで電池の貯蔵性能や、出力特性に影響を及ぼすことになる恐れがあり、1100℃より高い場合は、エネルギー供給の過剰でリチウムチタン酸化物が変性されるか粒子の成長が発生する恐れがあり、これも電池の出力特性に影響を与え得る。よって、適宜熱処理温度を調節することが必要なことがある。 ・・・ 【0068】 また、前記段階(b)の熱処理が行なわれた後、Al前駆体を混合した状態で前記チタン系複合体を2次で熱処理を施す工程を行うことができる。このときの熱処理は大凡300から500℃で行なわれてよく、このような熱処理が行なわれる場合は、Alがチタン系複合体の表面上にコーティング、または内部にドーピングされてよい。 【0069】 前記温度範囲で熱処理することにより、Alが完全にコーティング層を形成することができ、熱処理温度が500℃に近い場合は、Alがドーピングされた形態でチタン系複合体に存在することができ、300℃に近い場合は、Alはコーティングされた形態で存在することができ、熱処理温度が500℃を超過する場合は、粒子の粗大化など、Alのドーピングまたはコーティング以外の他の付随的な変化が起こる恐れがあり、熱処理温度が300℃より低い場合は、Alのコーティングさえもなされない恐れがある。 【0070】 このとき用いられるAl前駆体は、Alの酸化物または水酸化物であってよく、これらが単独でまたは混合して用いられてよい。) (2)甲1~甲5に記載された発明 ア 甲1に記載された発明 甲1の上記(1)ア(ア)の請求項1には、「一次粒子が凝集して形成された二次粒子の形態を有し、前記一次粒子は、コア及び前記コア表面の全部または少なくとも一部を被覆するシェルを含むコア-シェル構造を有し、前記コアはリチウムチタンオキシドの一次粒子であり、前記シェルは金属酸化物を含むMO-LTO複合粒子。」が記載されているところ、請求項1を引用する請求項4には、請求項1の「金属酸化物」が、Al2O3及びZrO2から構成された群より選択された一種以上であること、請求項1を引用する請求項5には、請求項1の「一次粒子」について、D50(体積基準密度分布)が0.1~1μmであるものであること、請求項1を引用する請求項6には、請求項1の「二次粒子」について、D50(体積基準密度分布)が2~50μmであるものであることが記載されているから、まとめると甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「一次粒子が凝集して形成された二次粒子の形態を有し、前記一次粒子は、コア及び前記コア表面の全部または少なくとも一部を被覆するシェルを含むコア-シェル構造を有し、前記コアはリチウムチタンオキシドの一次粒子であり、前記シェルは金属酸化物を含むMO-LTO複合粒子であって、上記金属酸化物が、Al2O3及びZrO2から構成された群より選択された一種以上であり、上記一次粒子のD50(体積基準密度分布)が0.1~1μmであり、上記二次粒子のD50(体積基準密度分布)が2~50μmである、MO-LTO複合粒子。」 イ 甲2に記載された発明 甲2の上記(1)イ(ア)には、【請求項1】を引用する【請求項7】をさらに引用する【請求項10】として、以下の「リチウム遷移金属複合酸化物を有する非水電解質二次電池用負極活物質」が記載されているといえる。 「アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含むスピネル構造からなるリチウム遷移金属複合酸化物を有する非水電解質二次電池用負極活物質であって、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、一般式LiaTibO4+c(aは0.8≦a≦1.5を満たす数を表し、bは1.5≦b≦2.2を満たす数を表し、cは-0.5≦c≦0.5を満たす数を表す。)で表され、表面の少なくとも一部にAl2O3及び/又はLiTiO2を有する、非水電解質二次電池用負極活物質。」 そして、同(エ)の【0052】には、「リチウム遷移金属複合酸化物は、粒子の形態で存在し、その粒子は、一次粒子のみからなっていてもよく、一次粒子の凝集体である二次粒子のみからなっていてもよく、一次粒子と二次粒子の両者からなっていてもよい」ことが記載されている。 また、「リチウム遷移金属複合酸化物を有する非水電解質二次電池用負極活物質」は、リチウム遷移金属複合酸化物に着目すると、「非水電解質二次電池用負極活物質として用いられるリチウム遷移金属複合酸化物」と見ることができるから、以上の記載を、リチウム遷移金属複合酸化物についての記載としてまとめると、甲2には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 「アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含むスピネル構造からなり、非水電解質二次電池用負極活物質として用いられるリチウム遷移金属複合酸化物であって、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、一般式LiaTibO4+c(aは0.8≦a≦1.5を満たす数を表し、bは1.5≦b≦2.2を満たす数を表し、cは-0.5≦c≦0.5を満たす数を表す。)で表され、表面の少なくとも一部にAl2O3及び/又はLiTiO2を有し、粒子の形態で存在し、その粒子は、一次粒子のみからなっていてもよく、一次粒子の凝集体である二次粒子のみからなっていてもよく、一次粒子と二次粒子の両者からなっていてもよい、リチウム遷移金属複合酸化物。」 ウ 甲3に記載された発明 甲3の上記(1)ウ(ア)には、[請求項1]、[請求項4]及び[請求項5]を直列的に引用する[請求項7]として、「Li4Ti5O12を主成分とするチタン酸リチウム粉末であって、 BET法によって求めた比表面積から算出される比表面積相当径をDBETとし、Li4Ti5O12の(111)面のピーク半値幅からScherrerの式より算出される結晶子径をDXとしたときに、DBETが0.1~0.6μmであり、 DXが80nmより大きく、 DBETとDXの比DBET/DX(μm/μm)が3以下であり、 M(ただし、Mは、2族、12族、または13族から選ばれる少なくとも一種の金属元素である)を含有し、 前記Mが、Mg、Zn、Al、Ga、またはInから選ばれる少なくとも一種の金属元素であり、 走査透過型電子顕微鏡を用いた前記チタン酸リチウム粒子の断面分析において、エネルギー分散型X線分光法により測定される、前記チタン酸リチウム粒子の表面から、前記チタン酸リチウム粒子の表面の接線に対して垂直な向きに引いた直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって5nmの位置における、前記Mの元素濃度をD1(atm%)とし、前記直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって100nmの位置における、前記Mの元素濃度をD2(atm%)とすると、下記式(I)を満たす、チタン酸リチウム粉末。 D1>D2 (I)」が記載されているといえる。 そして、チタン酸リチウム粉末について、同(ウ)の[0030]には、チタン酸リチウム粉末の具体的な材料である「Li4Ti5O12のメインピークに相当するピーク強度を100としたときに、アナターゼ型二酸化チタンのメインピーク強度が5以下であり、ルチル型二酸化チタンのメインピーク強度が5以下であ」ることが記載されている。 また、上記チタン酸リチウム粉末について、同[0042]には、「本発明のチタン酸リチウム粉末は、造粒操作が行われずに得られた粉末でも、焼成前後のいずれかに造粒操作が行われて得られた粉末でも良く、造粒操作が行われずに得られた粉末の場合は、本発明のチタン酸リチウム粉末の体積中位粒径(平均粒径、以下D50と記す)は、0.01~2μmである。・・・造粒操作が行われて得られた粉末の場合は、本発明のチタン酸リチウム粉末のD50は50μm以下であることが好ましい。」と記載されている。 さらに、上記の、式(I)を満たすチタン酸リチウム粒子を製造するには、同(オ)の[0073]には、「基材のチタン酸リチウム粉末を、前記Mを含有する化合物と混合する混合工程と、得られた混合粉末を熱処理する熱処理工程とからなる製造方法によって得ることができる」こと、同[0074]には、この混合工程では、「前記Mをチタン酸リチウム粉末の粒子表面に均一に拡散させるためには、後述の湿式法を用いるのが適しており、その場合は、溶媒に可溶なMを含有する化合物を、その溶媒に溶解させて、基材のチタン酸リチウム粉末と混合することが好ましい」こと、同[0074]には、この「湿式法」では、「水またはアルコール溶媒中に前記Mを含有する化合物とチタン酸リチウム粉末を投入し、スラリー状態で混合させる」ことが記載されている。また、同[0079]には、上記[0073]に記載される熱処理工程の前には、「溶媒を除去することが好まし」く、「溶媒の除去は、溶媒を蒸発乾固させることで行うことが好ましく、溶媒を蒸発乾固させる方法としては、スラリーを撹拌羽で撹拌しながら加熱し蒸発させる方法、コニカルドライヤーなど撹拌させながら乾燥が可能な乾燥装置を用いる方法およびスプレードライヤーを用いる方法」により行うことが記載されている。 以上に記載の事項をまとめると、甲3には、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。 「Li4Ti5O12を主成分とするチタン酸リチウム粉末であって、 BET法によって求めた比表面積から算出される比表面積相当径をDBETとし、Li4Ti5O12の(111)面のピーク半値幅からScherrerの式より算出される結晶子径をDXとしたときに、DBETが0.1~0.6μmであり、 DXが80nmより大きく、 DBETとDXの比DBET/DX(μm/μm)が3以下であり、 M(ただし、Mは、2族、12族、または13族から選ばれる少なくとも一種の金属元素である)を含有し、 前記Mが、Mg、Zn、Al、Ga、またはInから選ばれる少なくとも一種の金属元素であり、 走査透過型電子顕微鏡を用いた前記チタン酸リチウム粒子の断面分析において、エネルギー分散型X線分光法により測定される、前記チタン酸リチウム粒子の表面から、前記チタン酸リチウム粒子の表面の接線に対して垂直な向きに引いた直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって5nmの位置における、前記Mの元素濃度をD1(atm%)とし、前記直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって100nmの位置における、前記Mの元素濃度をD2(atm%)とすると、下記式(I)を満たし、 D1>D2 (I) チタン酸リチウムのメインピークに相当するピーク強度を100としたときに、アナターゼ型二酸化チタンのメインピーク強度が5以下であり、ルチル型二酸化チタンのメインピーク強度が5以下であり、 造粒操作が行われずに得られた粉末でも、焼成前後のいずれかに造粒操作が行われて得られた粉末でも良く、造粒操作が行われずに得られた粉末の場合は、チタン酸リチウム粉末の体積中位粒径(平均粒径、以下D50と記す)は、0.01~2μmであり、造粒操作が行われて得られた粉末の場合は、D50は50μm以下であり、 上記チタン酸リチウム粒子を製造するには、基材のチタン酸リチウム粉末を、前記Mを含有する化合物と混合する混合工程と、得られた混合粉末を熱処理する熱処理工程とからなる製造方法によって得ることができ、この混合工程では、水またはアルコール溶媒中に前記Mを含有する化合物とチタン酸リチウム粉末を投入し、スラリー状態で混合させ、熱処理工程の前には、溶媒の除去を、スラリーを撹拌羽で撹拌しながら加熱し蒸発させる方法、コニカルドライヤーなど撹拌させながら乾燥が可能な乾燥装置を用いる方法およびスプレードライヤーを用いる方法により行う、 チタン酸リチウム粉末。」 イ 甲4に記載された発明 甲4の上記(1)エ(ア)には、【請求項1】として、「Li4Ti5O12を主成分とするチタン酸リチウム粉末であって、 BET法によって求めた比表面積から算出される比表面積相当径をDBETとし、Li4Ti5O12の(111)面のピーク半値幅からScherrerの式より算出される結晶子径をDXとしたときに、DBETが0.1~0.6μmであり、 DXが80nmより大きく、 DBETとDXの比DBET/DX(μm/μm)が3以下であり、 M(ただし、Mは、Mg、Zn、Al、Ga、またはInから選ばれる少なくとも一種の金属元素である)を含有し、 走査透過型電子顕微鏡を用いた前記チタン酸リチウム粒子の断面分析において、エネルギー分散型X線分光法により測定される、前記チタン酸リチウム粒子の表面から、前記チタン酸リチウム粒子の表面の接線に対して垂直な向きに引いた直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって5nmの位置における、前記Mの原子濃度をD1(atm%)およびチタンの原子濃度をDti(atm%)とし、前記直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって100nmの位置における、前記Mの原子濃度をD2(atm%)とすると、下記式(I)および(II)を満たすことを特徴とする、蓄電デバイスの電極用チタン酸リチウム粉末。 D1/D2≧5 (I) 0.02≦D1/Dti≦0.4 (II)」が記載されている。 そして、チタン酸リチウム粉末について、同(ウ)の【0027】には、チタン酸リチウム粉末の具体的な材料である「Li4Ti5O12のメインピークに相当するピーク強度を100としたときに、アナターゼ型二酸化チタンのメインピーク強度が5以下であり、ルチル型二酸化チタンのメインピーク強度が5以下であ」ることが記載されている。 また、上記チタン酸リチウム粉末について、同【0039】には、「本発明のチタン酸リチウム粉末は、造粒操作が行われずに得られた粉末でも、焼成前後のいずれかに造粒操作が行われて得られた粉末でも良く、造粒操作が行われずに得られた粉末の場合は、本発明のチタン酸リチウム粉末の体積中位粒径(平均粒径、以下D50と記す)は、0.01~2μmである。・・・造粒操作が行われて得られた粉末の場合は、本発明のチタン酸リチウム粉末のD50は50μm以下であることが好ましい。」と記載されている。 さらに、上記の、式(I)及び(II)を満たすチタン酸リチウム粉末を製造するには、同(オ)の【0061】には、「チタン酸リチウム粉末(以下、基材のチタン酸リチウム粉末と記すことがある)を、前記Mを含有する化合物と混合して熱処理する」こと、同【0063】には、この混合は、「チタン酸リチウム粒子の表面領域のMの原子濃度を、内部領域のMの原子濃度より、より大きくするためには、チタン酸リチウム粒子の表面にMを含有する化合物を均一に分散させることが好ましく、その点においては湿式混合が好ましい。」こと、同【0065】には、この「湿式混合」では、「水またはアルコール溶媒中に前記Mを含有する化合物とチタン酸リチウム粉末を投入し、スラリー状態で混合させる」ことが記載されている。また、同【0067】には、上記【0061】に記載される熱処理の前には、「溶媒を除去することが好まし」く、「溶媒の除去は、溶媒を蒸発乾固させることで行うことが好ましく、溶媒を蒸発乾固させる方法としては、スラリーを撹拌羽で撹拌しながら加熱し蒸発させる方法、コニカルドライヤーなど撹拌させながら乾燥が可能な乾燥装置を用いる方法およびスプレードライヤーを用いる方法」により行うことが記載されている。 以上に記載の事項をまとめると、甲4には、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる。 「Li4Ti5O12を主成分とするチタン酸リチウム粉末であって、 BET法によって求めた比表面積から算出される比表面積相当径をDBETとし、Li4Ti5O12の(111)面のピーク半値幅からScherrerの式より算出される結晶子径をDXとしたときに、DBETが0.1~0.6μmであり、 DXが80nmより大きく、 DBETとDXの比DBET/DX(μm/μm)が3以下であり、 M(ただし、Mは、Mg、Zn、Al、Ga、またはInから選ばれる少なくとも一種の金属元素である)を含有し、 走査透過型電子顕微鏡を用いた前記チタン酸リチウム粒子の断面分析において、エネルギー分散型X線分光法により測定される、前記チタン酸リチウム粒子の表面から、前記チタン酸リチウム粒子の表面の接線に対して垂直な向きに引いた直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって5nmの位置における、前記Mの原子濃度をD1(atm%)およびチタンの原子濃度をDti(atm%)とし、前記直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって100nmの位置における、前記Mの原子濃度をD2(atm%)とすると、下記式(I)および(II)を満たし、 D1/D2≧5 (I) 0.02≦D1/Dti≦0.4 (II) チタン酸リチウムのメインピークに相当するピーク強度を100としたときに、アナターゼ型二酸化チタンのメインピーク強度が5以下であり、ルチル型二酸化チタンのメインピーク強度が5以下であり、 造粒操作が行われずに得られた粉末でも、焼成前後のいずれかに造粒操作が行われて得られた粉末でも良く、造粒操作が行われずに得られた粉末の場合は、チタン酸リチウム粉末の体積中位粒径(平均粒径、以下D50と記す)は、0.01~2μmであり、造粒操作が行われて得られた粉末の場合は、D50は50μm以下であり、 上記チタン酸リチウム粉末を製造するには、チタン酸リチウム粉末を、前記Mを含有する化合物と混合して熱処理し、この混合は、水またはアルコール溶媒中に前記Mを含有する化合物とチタン酸リチウム粉末を投入し、スラリー状態で混合させ、熱処理の前には、溶媒の除去を、スラリーを撹拌羽で撹拌しながら加熱し蒸発させる方法、コニカルドライヤーなど撹拌させながら乾燥が可能な乾燥装置を用いる方法およびスプレードライヤーを用いる方法により行う、 チタン酸リチウム粉末。」 オ 甲5に記載された発明 甲5の上記(1)オ(ア)には、【請求項1】として、以下の「二次電池用負極活物質」が記載されている。 「下記化学式(1)で表されるリチウムチタン酸化物;及び、 前記リチウムチタン酸化物にドーピングまたはコーティングされるか、ドーピング及びコーティングされた金属元素;を含有するチタン系複合体を含み、 前記金属元素はM1及びAlを含み、前記M1は、Zr及びNbでなる群より選択される1種以上の遷移金属元素であるものである二次電池用負極活物質: [化学式(1)] LixTiyOz 前記化学式(1)で、 x、y及びzは、0.1≦x≦4、1≦y≦5及び2≦z≦12を満たす。」 そして、同(エ)の【0047】には、「前記チタン系複合体は、その1次粒子の粒径(D50)が1μm以下であるものであってよく、好ましく200から700nmであるものであってよく、2次粒子の粒径(D50)は前記1次粒子が凝集された程度によって異なり得るが、大体1から10μmであるものであってよい」ことが記載されている。 また、「チタン系複合体を含」む「二次電池用負極活物質」は、「チタン系複合体」に着目すると、「二次電池用負極活物質として用いられるチタン系複合体」と見ることができるから、以上の記載を、「チタン系複合体」についての記載としてまとめると、甲5には、以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されているといえる。 「下記化学式(1)で表されるリチウムチタン酸化物;及び、 前記リチウムチタン酸化物にドーピングまたはコーティングされるか、ドーピング及びコーティングされた金属元素;を含有する二次電池用負極活物質として用いられるチタン系複合体であって、 前記金属元素はM1及びAlを含み、前記M1は、Zr及びNbでなる群より選択される1種以上の遷移金属元素であり、 前記チタン系複合体は、その1次粒子の粒径(D50)が1μm以下であるものであってよく、2次粒子の粒径(D50)は、大体1から10μmであるものであってよい、二次電池用負極活物質として用いられるチタン系複合体: [化学式(1)] LixTiyOz 前記化学式(1)で、 x、y及びzは、0.1≦x≦4、1≦y≦5及び2≦z≦12を満たす。」 (3)取消理由1(甲3を主引用例とする)について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲3発明を対比する。 a 本件発明1の「リチウムチタン複合酸化物」は、本件発明1で特定されているように、「一次粒子が凝集して形成される二次粒子」であるものである。また、甲3発明において、「焼成前後のいずれかに造粒操作が行われて得られた粉末」は、二次粒子であるといえるから、甲3発明の「焼成前後のいずれかに造粒操作が行われて得られた粉末」の場合の「チタン酸リチウム粒子」は、本件発明1の「一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物であって」、「リチウムチタン複合酸化物が」、「複数個の」「一次粒子が凝集して形成される二次粒子である、前記のリチウムチタン複合酸化物」に相当する。 b 甲3発明は、「Mが、Mg、Zn、Al、Ga、またはInから選ばれる少なくとも一種の金属元素」とされるとおり、Mが「Al」である場合を含むところ、甲3発明の「Mを含有する化合物」は、本件発明1の「アルミニウム化合物」に相当し、甲3発明の「スラリー状態」の「溶媒の除去を、」「スプレードライヤーを用いる方法により行う」ことは、本件発明1の「スラリーを噴霧乾燥して形成」することに相当するから、甲3発明の「水またはアルコール溶媒中に前記Mを含有する化合物とチタン酸リチウム粉末を投入し、スラリー状態で混合させ、熱処理工程の前には、溶媒の除去を、」「スプレードライヤーを用いる方法により行」い「得られた混合粉末を熱処理する」ことは、本件発明1の「リチウムチタン複合酸化物の一次粒子とアルミニウム化合物との混合物を溶媒に分散させたスラリーを噴霧乾燥し、さらに熱処理を行って形成する」ことと、「リチウムチタン複合酸化物の粒子とアルミニウム化合物との混合物を溶媒に分散させたスラリーを噴霧乾燥し、さらに熱処理を行って形成する」点で共通している。 c 甲3発明において、「前記Mが、Mg、Zn、Al、Ga、またはInから選ばれる少なくとも一種の金属元素であり、走査透過型電子顕微鏡を用いた前記チタン酸リチウム粒子の断面分析において、エネルギー分散型X線分光法により測定される、前記チタン酸リチウム粒子の表面から、前記チタン酸リチウム粒子の表面の接線に対して垂直な向きに引いた直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって5nmの位置における、前記Mの元素濃度をD1(atm%)とし、前記直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって100nmの位置における、前記Mの元素濃度をD2(atm%)とすると、下記式(I)を満たし、 D1>D2 (I)」とは、チタン酸リチウム粒子の表面におけるAl等のMの元素濃度が高いことを意味している。そして、チタン酸リチウム粒子の表面におけるAl等のMの元素濃度が高いことは、甲3発明に、「上記チタン酸リチウム粒子を製造するには、基材のチタン酸リチウム粉末を、前記Mを含有する化合物と混合する混合工程と、得られた混合粉末を熱処理する熱処理工程とからなる製造方法によって得ることができ、この混合工程では、水またはアルコール溶媒中に前記Mを含有する化合物とチタン酸リチウム粉末を投入し、スラリー状態で混合させ、熱処理工程の前には、溶媒の除去を、スラリーを撹拌羽で撹拌しながら加熱し蒸発させる方法、コニカルドライヤーなど撹拌させながら乾燥が可能な乾燥装置を用いる方法およびスプレードライヤーを用いる方法により行う」とあるように、熱処理工程前にチタン酸リチウム粒子をMを含有する化合物で被覆しているといえることに対応するものであるといえるから、熱処理後のチタン酸リチウム粒子のAl等のMの元素濃度が高い表面部分は、被覆層と見ることができる。 そうすると、甲3発明において、チタン酸リチウム粒子の表面におけるAl等のMの元素濃度が高いことは、本件発明1の「硫酸アルミニウムを用いてアルミニウムコーティングが施され」ることと、「アルミニウムを含むコーティングが施され」ることで共通している。 また、甲3発明において、チタン酸リチウム粒子の表面におけるAl等のMの元素濃度が高い状態は、「チタン酸リチウム粒子」が「焼成前後のいずれかに造粒操作が行われて得られた粉末」の場合、少なくとも、造粒操作が行われて形成される二次粒子の表面を形成する一次粒子の表面にはコーティングが施されていることになるから、甲3発明の「焼成前後のいずれかに造粒操作が行われて得られた粉末」の場合の「前記Mが、Mg、Zn、Al、Ga、またはInから選ばれる少なくとも一種の金属元素であり、走査透過型電子顕微鏡を用いた前記チタン酸リチウム粒子の断面分析において、エネルギー分散型X線分光法により測定される、前記チタン酸リチウム粒子の表面から、前記チタン酸リチウム粒子の表面の接線に対して垂直な向きに引いた直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって5nmの位置における、前記Mの元素濃度をD1(atm%)とし、前記直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって100nmの位置における、前記Mの元素濃度をD2(atm%)とすると、下記式(I)(D1>D2)を満た」す「チタン酸リチウム粒子」は、「コーティングが施された一次粒子」を含むことになる。 d そうすると、甲3発明は、本件発明1と「リチウムチタン複合酸化物の粒子とアルミニウム化合物との混合物を溶媒に分散させたスラリーを噴霧乾燥し、さらに熱処理を行って形成する、アルミニウムを含むコーティングが施された一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物であって、リチウムチタン複合酸化物が、複数個のアルミニウムを含むコーティングが施された一次粒子が凝集して形成される二次粒子である、前記のリチウムチタン複合酸化物。」の点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点1> アルミニウムを含むコーティングが施された一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物が、本件発明1では、アルミニウム化合物と混合するのが「リチウムチタン複合酸化物の一次粒子」であると共に、このアルミニウム化合物が「硫酸アルミニウム」であるのに対し、甲3発明では、アルミニウム化合物と混合するのが「リチウムチタン複合酸化物の一次粒子」であるのか明らかでないと共に、このアルミニウム化合物が「硫酸アルミニウム」であるのか明らかでない点。 (イ)上記相違点1に対する判断 a 本件発明1では、リチウムチタン複合酸化物の一次粒子に、硫酸アルミニウムのコーティングがなされた後、噴霧乾燥により一次粒子が凝集した二次粒子を形成し、その後、熱処理により所定のアルミニウムコーティングが施された一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物が形成されているといえる。 他方、甲3には、甲3発明において、最終的に得られるチタン酸リチウム粉末が、「焼成前後のいずれかに造粒操作が行われて得られた粉末」、すなわち二次粒子の場合に、アルミニウム化合物と混合するチタン酸リチウム粉末を「一次粒子」とする記載はない。 ここで、甲3において、Mを含有する化合物と混合する前のチタン酸リチウム粉末の具体的な製造例に相当する甲3の上記(1)ウ(カ)の[0119]~[0121]の実施例1の記載によれば、製造されたチタン酸リチウム粉末は、「ハンマーミル(ダルトン製、AIIW-5型)を使用して、スクリーン目開き:0.5mm、回転数:8,000rpm、粉体フィード速度:25kg/hrの条件で解砕し」、「解砕した粉末を、篩(目の粗さ:45μm)分けし、篩を通過した粉末を収集した」もの([0120])であり、「D50は0.75μm」である([0121])ことが記載されている。そして、この実施例1で製造されたチタン酸リチウム粉末を、同[0155]、[0156]に記載される実施例7では、甲3発明の「Mを含有する化合物」に相当する可溶性酢酸アルミニウムと混合している。 そして、Mを含有する化合物と混合する前のチタン酸リチウム粉末の具体的な製造例におけるチタン酸リチウム粉末は、「解砕」され、D50は0.75μmであるところ、本件明細書の【0080】の「上述の実施例2で粉砕されたスラリーに、アルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを混合し、溶媒として水に混合し及び粉砕し、撹拌することで、一次粒子にアルミニウムによるコーティングを施した。」との記載によれば、本件発明1では、アルミニウム化合物と混合されるリチウムチタン複合酸化物の一次粒子が、「一次粒子へ粉砕」(【0071】)とされる実施例2に記載されるものであり、この実施例2では、スラリー粒度別の焼成後における微粉砕粒度を表した【0075】【表3】の記載によれば、この一次粒子のD50が、1.73~1.36μm程度であるとされている(なお、硫酸アルミニウムと混合する際には、さらに粉砕されている。)。 以上を考慮すると、D50が0.75μmであり、本件発明1の一次粒子の範囲よりも小さい、甲3におけるMを含有する化合物と混合する前のチタン酸リチウム粉末は、「一次粒子」であるといえる。 しかしながら、上述のように、一次粒子であるといえる実施例1で製造されたチタン酸リチウム粉末を「Mを含有する化合物」に相当する可溶性酢酸アルミニウムと混合し、その後、熱処理を行うことにより、「アルミニウムを含むコーティング」が形成されたといえるチタン酸リチウム粉末のD50は「0.78μm」であり([0156])、コーティングを施す前のチタン酸リチウム粉末とD50がほとんど変化していないことから、最終的に得られるチタン酸リチウム粉末も「一次粒子」であるといえる。同様に、甲3において、チタン酸リチウム粉末に対してMを含有するコーティングを施すといえる他の実施例8~16においても、最終的に得られるチタン酸リチウム粉末のD50は、0.75μm(実施例12)~0.81μm(実施例16)の範囲であり、Mを含有するコーティングが施されたチタン酸リチウム粉末は、全て「一次粒子」であるといえる。 そうすると、甲3には、アルミニウムを含有するコーティングが施された「一次粒子」のチタン酸リチウム粒子を得る場合には、アルミニウム化合物と混合するチタン酸リチウム粒子を「一次粒子」とすることは記載されているといえるものの、アルミニウムを含有するコーティングが施された「二次粒子」のチタン酸リチウム粉末を得る場合に、アルミニウム化合物と混合するチタン酸リチウム粉末を「一次粒子」とすることは記載されていない。 以上によれば、甲3発明において、「焼成前後のいずれかに造粒操作が行われて得られた粉末」である場合を前提とする上記相違点1において、アルミニウム化合物と混合するものが「リチウムチタン複合酸化物の一次粒子」であることは、甲3に記載されているとはいえないから、上記相違点1は、実質的な相違点であるといえる。 b 次に、上記相違点1に係る本件発明1の構成が、容易に想到し得るものであるのか否かについて、検討する。 甲3発明は、「造粒操作が行われずに得られた粉末でも、焼成前後のいずれかに造粒操作が行われて得られた粉末でも良く」とあるように、チタン酸リチウム粉末が、一次粒子か二次粒子かに特に着目するものではないか、あえていえば、チタン酸リチウム粉末にMを含有するコーティングを施しチタン酸リチウム粉末を得ている全ての実施例(実施例7~実施例15)で一次粒子であるチタン酸リチウム粉末を得ていることから、むしろ、一次粒子のチタン酸リチウム粉末を指向しているともいえるところ、最終的に得るチタン酸リチウム粉末が二次粒子であるならば、チタン酸リチウム粉末とアルミニウム化合物と混合後、造粒操作が必要となることなどから、アルミニウム化合物と混合するチタン酸リチウム粉末をあえて一次粒子にする動機付けが甲3発明にあるとはいえない。 また、本件発明1は、本件明細書の【0018】の記載によれば、「残留リチウム、すなわち、未反応のLiOH、及びLi2CO3と電解液などとの反応によるガス発生及びスウェリング(swelling)現象の誘発」を防ぐために、「アルミニウムでコーティングされた一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物」を得ることにより、「電池内の残留リチウムを減少させる」ものであるところ、このような課題に対しては、一次粒子に対してアルミニウムを含むコーティングを施した方が、リチウムチタン複合酸化物のより多くの部分を被覆することができ、電池内の残留リチウムを減少させることができるといえる。 他方、甲3発明は、甲3の上記(1)ウ(イ)の[0009]の記載によれば、「蓄電デバイスなどの電極材料として適用した場合に、初期充放電容量が大きく、入出力特性に優れるチタン酸リチウム粉末」を得ようとするものではあるが、本件発明1のように、「電池内の残留リチウムを減少させる」ことを目的としてはいなから、「電池内の残留リチウムを減少させる」ことに適した一次粒子に対してアルミニウムを含むコーティングを施すことを、最終的に得るチタン酸リチウム粉末が二次粒子である場合にも採用する動機付けがあるとはいえない。 さらに、甲5にも、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、後記(7)ア(イ)でも述べるように何ら記載されていない。 そうすると、上記相違点3において、少なくとも、アルミニウムを含有するコーティングが施された「二次粒子」のチタン酸リチウム粉末を得る場合に、アルミニウム化合物と混合するチタン酸リチウム粉末を「一次粒子」とすることは、当業者が容易に想到し得るとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおり、上記相違点1は、実質的な相違点であると共に、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1は、甲3発明ではないし、甲3発明及び甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~5、8について 本件発明2~5、8は、本件発明1を引用し、これを、さらに限定するものであるか、本件発明1の構成を少なくとも全て含むものであるところ、本件発明1が、甲3発明ではないし、甲3発明及び甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2、4、5、8は、甲3発明ではないし、本件発明2~5、8は、甲3発明及び甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)取消理由2(甲4を主引用例とする)について ア 本件発明1について (ア)対比 甲3発明と甲4発明を比較すると、記載形式等での相違を除き両者間での実質的な相違は、甲3発明では、「走査透過型電子顕微鏡を用いた前記チタン酸リチウム粒子の断面分析において、エネルギー分散型X線分光法により測定される、前記チタン酸リチウム粒子の表面から、前記チタン酸リチウム粒子の表面の接線に対して垂直な向きに引いた直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって5nmの位置における、前記Mの元素濃度をD1(atm%)とし、前記直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって100nmの位置における、前記Mの元素濃度をD2(atm%)とすると、下記式(I)を満たし、 D1>D2 (I)」であるのが、甲4発明では、「走査透過型電子顕微鏡・・・前記Mの原子濃度をD1(atm%)およびチタンの原子濃度をDti(atm%)とし、前記直線の線上の、前記チタン酸リチウム粒子の表面から内部に向かって100nmの位置における、前記Mの原子濃度をD2(atm%)とすると、下記式(I)および(II)を満たし、 D1/D2≧5 (I) 0.02≦D1/Dti≦0.4 (II)」である点のみであるが、両者のこれらの特定は、共にチタン酸リチウム粒子の表面のAl等のMの元素(原子)濃度が高いということを意味している点では共通しているから、本件発明1との対比においては、甲4発明は、甲3発明と異なるものではないといえる。 そうすると、上記(3)ア(ア)で述べた、本件発明1と甲3発明との対比の場合と同様に、本件発明1と甲4発明との間には、以下の相違点が存在することになる。 <相違点2> アルミニウムを含むコーティングが施された一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物について、本件発明1では、アルミニウム化合物と混合するのが「リチウムチタン複合酸化物の一次粒子」であると共に、このアルミニウム化合物が「硫酸アルミニウム」であるのに対し、甲4発明では、アルミニウム化合物と混合するのが「リチウムチタン複合酸化物の一次粒子」であるのか明らかでないと共に、このアルミニウム化合物が「硫酸アルミニウム」であるのか明らかでない点。 (イ)上記相違点2に対する判断 a 取消理由1における上記(3)ア(イ)aで述べたのと同様に、甲4には、甲4発明において、最終的に得られるチタン酸リチウム粒子が、「焼成前後のいずれかに造粒操作が行われて得られた粉末」、すなわち二次粒子の場合に、アルミニウム化合物と混合するチタン酸リチウム粒子を「一次粒子」とする記載はない。 ここで、甲4にも、Mを含有する化合物と混合する前のチタン酸リチウム粉末として、D50が0.75μmのもの(甲4の上記(1)エ(キ)の【0138】【表1】の参考例1)を用い、このチタン酸リチウム粉末を、同(カ)の【0115】に記載される実施例1では、甲4発明の「Mを含有する化合物」に相当する可溶性酢酸アルミニウムと混合することが記載され、このチタン酸リチウム粉末は、「一次粒子」といえるが、「アルミニウムを含むコーティング」が形成されたといえるチタン酸リチウム粉末のD50は「0.78μm」(同(キ)の【0137】【表1】)であり、最終的に得られるチタン酸リチウム粉末も「一次粒子」であるといえる。同様に、甲4において、チタン酸リチウム粉末に対してMを含有するコーティングを施すといえる他の実施例2~12においても、最終的に得られるチタン酸リチウム粉末のD50は、0.74μm(実施例11)~0.80μm(実施例8、10)の範囲である。 そうすると、甲4にも、甲3と同様に、アルミニウムを含有するコーティングが施された「一次粒子」のチタン酸リチウム粉末を得る場合には、アルミニウム化合物と混合するチタン酸リチウム粉末を「一次粒子」とすることは記載されているといえるものの、アルミニウムを含有するコーティングが施された「二次粒子」のチタン酸リチウム粉末を得る場合に、アルミニウム化合物と混合するチタン酸リチウム粉末を「一次粒子」とすることは記載されていない。 以上によれば、甲4発明において、「焼成前後のいずれかに造粒操作が行われて得られた粉末」である場合を前提とする上記相違点4において、アルミニウム化合物と混合するものが「リチウムチタン複合酸化物の一次粒子」であることは、甲4に記載されているとはいえないから、上記相違点2は、実質的な相違点であるといえる。 b 次に、上記相違点2に係る本件発明1の構成が、容易に想到し得るものであるのか否かについて、検討するが、上記(3)ア(イ)bで、甲3発明について述べたのと同様に、最終的に得るチタン酸リチウム粒子が二次粒子である場合に、アルミニウム化合物と混合するチタン酸リチウム粉末をあえて一次粒子にする動機付けが甲4発明にあるとはいえない。 さらに、甲5に記載の事項を考慮したとしても、上記相違点2において、アルミニウムを含有するコーティングが施された「二次粒子」のチタン酸リチウム粉末を得る場合に、アルミニウム化合物と混合するチタン酸リチウム粉末を「一次粒子」とすることは、当業者が容易に想到し得るとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおり、上記相違点2は、実質的な相違点であると共に、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1は、甲4発明ではないし、甲4発明及び甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~5、8について 本件発明2~5、8は、本件発明1を引用し、これを、さらに限定するものであるか、本件発明1の構成を少なくとも全て含むものであるところ、本件発明1が、甲4発明ではないし、甲4発明及び甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2、4、5、8は、甲4発明ではないし、本件発明2~5、8は、甲3発明及び甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)取消理由4(甲1を主引用例とする)について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 本件発明1の「リチウムチタン複合酸化物」は、本件発明1で特定されているように、「一次粒子が凝集して形成される二次粒子」であるから、甲1発明の「一次粒子が凝集して形成された二次粒子の形態を有」する「MO-LTO複合粒子」は、本件発明1の「一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物であって」、「リチウムチタン複合酸化物が」、「複数個の」「一次粒子が凝集して形成される二次粒子である、前記のリチウムチタン複合酸化物」に相当する。 そして、甲1発明における「シェル」は、「コア」に対する「コーティング」と見ることができると共に、「Al2O3」から形成される「コア」は、「アルミニウムを含む」ものであるといえるから、甲1発明の「コア及び前記コア表面の全部または少なくとも一部を被覆するシェルを含むコア-シェル構造を有し、前記コアはリチウムチタンオキシドの一次粒子であり、前記シェルは金属酸化物を含むMO-LTO複合粒子であって、上記金属酸化物が、Al2O3及びZrO2から構成された群より選択された一種以上であ」るものは、本件発明1の「リチウムチタン複合酸化物の一次粒子とアルミニウム化合物との混合物を溶媒に分散させたスラリーを噴霧乾燥し、さらに熱処理を行って形成する、硫酸アルミニウムを用いてアルミニウムコーティングが施された一次粒子」と、「リチウムチタン複合酸化物にアルミニウムを含むコーティングが施された一次粒子」の点で共通している。 そうすると、本件発明1と甲1発明は、「リチウムチタン複合酸化物にアルミニウムを含むコーティングが施された一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物であって、リチウムチタン複合酸化物が、複数個のアルミニウムを含むコーティングが施された一次粒子が凝集して形成される二次粒子である、前記のリチウムチタン複合酸化物。」の点で一致し、以下の点で一応相違しているといえる。 <相違点3> リチウムチタン複合酸化物にアルミニウムを含むコーティングが施された一次粒子が、本件発明1では、「リチウムチタン複合酸化物の一次粒子とアルミニウム化合物との混合物を溶媒に分散させたスラリーを噴霧乾燥し、さらに熱処理を行って形成する、硫酸アルミニウムを用いてアルミニウムコーティングが施された一次粒子」であるのに対し、甲1発明では、「コア及び前記コア表面の全部または少なくとも一部を被覆するシェルを含むコア-シェル構造を有し、前記コアはリチウムチタンオキシドの一次粒子であり、前記シェルは金属酸化物を含むMO-LTO複合粒子であって、上記金属酸化物が、Al2O3及びZrO2から構成された群より選択された一種以上であ」るものである点。 (イ)上記相違点3に対する判断 a リチウムチタン複合酸化物の一次粒子に施される「コーティング」に着目すると、本件発明1の「コーティング」は、リチウムチタン複合酸化物の一次粒子と硫酸アルミニウムとの混合物を溶媒に分散させたスラリーを噴霧乾燥し、さらに熱処理を行って形成したものであり、熱処理によって、リチウムチタン複合酸化物の一次粒子上の硫酸アルミニウムが分解し、アルミニウムを含むコーティングが形成されたものであるといえる。 他方、甲1発明の「シェル」は、甲1の上記(1)ア(オ)の【0066】の「前記のようにして得られたリチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)一次粒子粉末とAl2O3(純度99.0%、粒径5μm)粉末を容器に入れた後、これを、ピンミル(pin mill)を用いて機械的に混合し、リチウムチタン酸化物(LTO)一次粒子の表面にAl2O3を被覆した。」との記載によれば、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)一次粒子粉末表面が、Al2O3粉末により被覆されるもので、本件発明1の「コーティング」とは、より大きな粒子状のAl2O3により被覆されているという点で相違し、本件発明1の「コーティング」は、甲1発明の「シェル」より、より均一な「コーティング」である等、構造的及びそれに起因する特性的にも、異なるものであることが理解できる。 そうすると、上記相違点3において、本件発明1の「コーティング」は、甲1発明の「シェル」とは異なるものであるから、上記相違点3は、実質的な相違点であるといえる。 b 次に、上記相違点3に係る本件発明1の構成が、容易に想到し得るものであるのか否かについて、検討する。 ここで、本件明細書の【0018】の「電池内において、残留リチウム、すなわち、未反応のLiOH、及びLi2CO3と電解液などとの反応によるガス発生及びスウェリング(swelling)現象の誘発は、電池の高温安全性が深刻に低下するという問題を招来する。しかし、本願発明に係るアルミニウムでコーティングされた一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物は、電池内の残留リチウムを減少させることで電池内のガス発生量を減少させるため、電池の高温安定性をも向上させることができる(本願の[表11]を参照)。」との記載によれば、本件発明1において、上記相違点3に係るコーティングは、未反応のLiOH、及びLi2CO3と電解液などとの反応によるガス発生及びスウェリング(swelling)現象の誘発を防ぐのに適したものであるといえる。 他方、甲1の上記(1)ア(イ)の【0011】の「本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、入出力特性が優秀であり、電池使用中におけるガス発生量が少ない負極活物質を提供することを目的とする。」との記載によれば、甲1発明は、電池使用中におけるガス発生量を少なくすることについては、本件発明1と共通するものではあるものの、「未反応のLiOH、及びLi2CO3と電解液などとの反応による」ことまでの認識は、甲1発明にあるとはいえない。 そうすると、甲1発明には、「残留リチウム、すなわち、未反応のLiOH、及びLi2CO3と電解液などとの反応によるガス発生及びスウェリング(swelling)現象」を防ぐのに適した、本件発明1の上記相違点3に係るコーティングを採用する動機付けがあるとはいえない。 さらには、甲1発明は、「入出力特性が優秀であり、電池使用中におけるガス発生量が少ない負極活物質を提供することを目的」とし、「シェル」を、Al2O3等の金属酸化物等を含むものとするものであるところ、甲1の記載からは、この目的を達成するには、「シェル」に、Al2O3等の金属酸化物等を含んでいればこと足りることが理解でき、そうであるならば、上記aで記載した甲1の【0066】にあるように、リチウムチタン酸化物一次粒子粉末上にAl2O3粉末を直接被覆するのが、簡便で効率的な方法であるといえる。 そうすると、本件発明1にあるように、リチウムチタン複合酸化物の一次粒子と、Al2O3ではない硫酸アルミニウムとの混合物を溶媒に分散させたスラリーを噴霧乾燥し、さらに熱処理を行ってアルミニウムコーティングを形成する、といった手順のかかる方法を採用する動機付けが、甲1発明にあるとはいえない。 c 甲3には、上記(1)ウ(カ)の実施例に記載されるように、チタン酸リチウム粉末と、水に溶解する酢酸アルミニウムを混合したスラリーを乾燥し、さらに熱処理することにより、チタン酸リチウム粉末にアルミニウムを含むコーティングを施すという、本件発明1のアルミニウムコーティングの形成方法に共通する方法が記載されているといえるが、上記bで述べたように、甲1発明には、このような方法を採用しようとする動機付けがないのであるから、当業者が仮に甲3の記載に接したとしても、甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明1の構成を有するものとすることはできない。 (ウ)小括 以上のとおり、上記相違点3は、実質的な相違点であると共に、上記相違点3に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~5、8について 本件発明2~5、8は、本件発明1を引用し、これを、さらに限定するものであるか、本件発明1の構成を少なくとも全て含むものであるところ、本件発明1が、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2、8は、甲1発明ではないし、本件発明2~5、8は、甲1発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)取消理由5(甲2を主引用例とする)について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明を対比する。 本件発明1の「リチウムチタン複合酸化物」は、本件発明1で特定されているように、「一次粒子が凝集して形成される二次粒子」であるものであるから、甲2発明の「一次粒子の凝集体である二次粒子のみからなっていてもよ」い「一般式LiaTibO4+c(aは0.8≦a≦1.5を満たす数を表し、bは1.5≦b≦2.2を満たす数を表し、cは-0.5≦c≦0.5を満たす数を表す。)で表され」る「リチウム遷移金属複合酸化物」は、本件発明1の「一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物であって」、「リチウムチタン複合酸化物が」、「複数個の」「一次粒子が凝集して形成される二次粒子である、前記のリチウムチタン複合酸化物」に相当する。 そして、甲2発明において、(リチウム遷移金属複合酸化物の)「表面の少なくとも一部にAl2O3及び/又はLiTiO2を有」するということは、甲2の上記(1)イ(オ)の【0056】の「Al2O3及び/又はLiTiO2がリチウム遷移金属複合酸化物の粒子の表面の全体に被膜されている場合であっても、Al2O3及び/又はLiTiO2がリチウム遷移金属複合酸化物の粒子の一部に被覆されている場合であっても、サイクル充放電特性、保存特性、安全性が向上する。」との記載によれば、リチウム遷移金属複合酸化物の表面の少なくとも一部にAl2O3及び/又はLiTiO2の被覆がなされている、すなわちコーティングがなされていることであると理解できるから、甲2発明の「表面の少なくとも一部にAl2O3及び/又はLiTiO2を有」することは、本件発明1の「アルミニウムコーティングが施され」ることと、「アルミニウムを含むコーティングが施さ」ることで共通している。 また、甲2発明において、リチウム遷移金属複合酸化物は、「一次粒子の凝集体である二次粒子のみからなっていてもよ」いところ、リチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子の「表面の少なくとも一部にAl2O3及び/又はLiTiO2を有」する場合、少なくとも、二次粒子の表面を形成する一次粒子の表面にはAl2O3及び/又はLiTiO2の被覆がなされていることになるから、甲2発明の「一次粒子の凝集体である二次粒子のみからなっていてもよ」い「リチウム遷移金属複合酸化物」は、「コーティングが施された一次粒子」を含むことになる。 そうすると、甲2発明は、本件発明1と「アルミニウムを含むコーティングが施された一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物であって、リチウムチタン複合酸化物が、複数個のアルミニウムを含むコーティングが施された一次粒子が凝集して形成される二次粒子である、前記のリチウムチタン複合酸化物。」の点で一致し以下の点で一応相違しているといえる。 <相違点4> アルミニウムを含むコーティングが施された一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物が、本件発明1では、「リチウムチタン複合酸化物の一次粒子とアルミニウム化合物との混合物を溶媒に分散させたスラリーを噴霧乾燥し、さらに熱処理を行って形成する、硫酸アルミニウムを用いてアルミニウムコーティングが施された一次粒子を含む」ものであるのに対し、甲2発明では、「一般式LiaTibO4+c(aは0.8≦a≦1.5を満たす数を表し、bは1.5≦b≦2.2を満たす数を表し、cは-0.5≦c≦0.5を満たす数を表す。)で表され」る「リチウム遷移金属複合酸化物」の「表面の少なくとも一部にAl2O3及び/又はLiTiO2を有」するものである点。 (イ)上記相違点4に対する判断 a 本件発明1では、リチウムチタン複合酸化物の一次粒子に、硫酸アルミニウムのコーティングがなされた後、噴霧乾燥により一次粒子が凝集した二次粒子を形成し、その後、熱処理により所定のアルミニウムコーティングが施された一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物が形成されているといえる。 他方、甲2には、リチウム遷移金属複合酸化物にAl2O3を被覆する方法としては、甲2の上記(1)イ(オ)の【0062】の「上記粉末本体に、Al2O3及び/又はLiTiO2を被覆させる方法は特に限定されず、一般に用いられている混合機を用いることができる。中でも、微量添加を行うため、高速でせん断性の高い高速流動式混合機が好ましい。」との記載があるのみであるが、この記載を見ても、リチウム遷移金属複合酸化物の一次粒子にAl2O3等を被覆するのか明らかでないし、リチウム遷移金属複合酸化物をAl2O3粒子で被覆しているといえるところ、上記(5)ア(イ)aでの甲1発明の「シェル」における検討を踏まえると、甲2発明におけるAl2O3等の粒子による被覆は、本件発明1のアルミニウムコーティングとは相違するものである。 そうすると、上記相違点2は、実質的な相違点であるといえる。 b 次に、上記相違点4に係る本件発明1の構成が、容易に想到し得るものであるのか否かについて、検討する。 甲2発明は、「その粒子は、一次粒子のみからなっていてもよく、一次粒子の凝集体である二次粒子のみからなっていてもよく、一次粒子と二次粒子の両者からなっていてもよい」とあるように、リチウム遷移金属複合酸化物が、一次粒子か二次粒子かに特に着目するものではないところ、最終的なリチウム遷移金属複合酸化物が二次粒子であるならば、Al2O3等を被覆する際のリチウム遷移金属複合酸化物をあえて一次粒子にする動機付けがあるとはいえない。 また、リチウム遷移金属複合酸化物に対し、粒子状のAl2O3等を被覆することについて、甲2の上記(1)イ(ウ)の【0031】に「Al2O3を被覆層とすることにより、リチウムイオンの易動度が上昇し、負荷特性、出力特性が改善されると考えられる。LiTiO2を被覆層とすることにより、リチウムイオンの易動度が上昇し、負荷特性、出力特性が改善されると考えられる。」と記載されるように、Al2O3を被覆層としさえすれば、甲2における目的が達成される状況において、上記相違点4に係る本件発明1で特定される方法によって形成されるアルミニウムコーティングを採用する動機付けが、甲2発明にはないことは、甲1発明の場合と同様である。 ここで、当業者が仮に甲3の記載に接したとしても、甲2発明において、上記相違点2に係る本件発明1の構成を有するものすることはできないことは、上記(5)ア(イ)cで述べたのと同様であるし、甲5には、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、何ら記載されていない。 (ウ)小括 以上のとおり、上記相違点4は、実質的な相違点であると共に、上記相違点4に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1は、甲2発明ではないし、甲2発明及び甲3、5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~5、8について 本件発明2~5、8は、本件発明1を引用し、これを、さらに限定するものであるか、本件発明1の構成を少なくとも全て含むものであるところ、本件発明1が、甲2発明ではないし、甲2発明及び甲3、5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明8も同様に、甲2発明ではないし、本件発明2~5、8は、甲2発明及び甲3、5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)取消理由6(甲5を主引用例とする)について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲5発明を対比する。 本件発明1の「リチウムチタン複合酸化物」は、本件発明1で特定されているように、「一次粒子が凝集して形成される二次粒子」であるものであるから、甲5発明の「2次粒子」「であってよい」「下記化学式(1)(LixTiyOz)で表されるリチウムチタン酸化物」は、本件発明1の「一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物であって」、「リチウムチタン複合酸化物が」、「複数個の」「一次粒子が凝集して形成される二次粒子である、前記のリチウムチタン複合酸化物」に相当する。 そして、甲5発明において、「M1及びAlを含」む「金属元素」で「リチウムチタン酸化物」を「コーティング」することは、本件発明1の「アルミニウムコーティングが施され」ることと、「アルミニウムを含むコーティングが施され」ることで共通している。 また、甲5発明において、リチウムチタン酸化物は、「2次粒子」「であってよい」といえるところ、リチウムチタン酸化物の2次粒子に「コーティング」が施されている場合、少なくとも、2次粒子の表面を形成する一次粒子の表面にのみコーティングが施されている場合も、2次粒子を形成する複数個の1次粒子の表面の少なくとも一部にコーティングが施されていることになるから、甲5発明の「2次粒子」「であってよい」といえる「下記化学式(1)(LixTiyOz)で表されるリチウムチタン酸化物」は、「コーティングが施された一次粒子」を含むことになる。 そうすると、甲5発明は、本件発明1と「アルミニウムを含むコーティングが施された一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物であって、リチウムチタン複合酸化物が、複数個のアルミニウムを含むコーティングが施された一次粒子が凝集して形成される二次粒子である、前記のリチウムチタン複合酸化物。」の点で一致し以下の点で一応相違しているといえる。 <相違点5> アルミニウムを含むコーティングが施された一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物が、本件発明1では、「リチウムチタン複合酸化物の一次粒子とアルミニウム化合物との混合物を溶媒に分散させたスラリーを噴霧乾燥し、さらに熱処理を行って形成する、硫酸アルミニウムを用いてアルミニウムコーティングが施された一次粒子を含む」ものであるのに対し、甲5発明では、「前記リチウムチタン酸化物にドーピングまたはコーティングされるか、ドーピング及びコーティングされた金属元素;を含有」し、「前記金属元素はM1及びAlを含み、前記M1は、Zr及びNbでなる群より選択される1種以上の遷移金属元素であ」るものである点。 (イ)上記相違点5に対する判断 a 本件発明1では、リチウムチタン複合酸化物の一次粒子に、硫酸アルミニウムのコーティングがなされた後、噴霧乾燥により一次粒子が凝集した二次粒子を形成し、その後、熱処理により所定のアルミニウムコーティングが施された一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物が形成されているといえる。 他方、甲5には、リチウムチタン酸化物にAl等を含むものをコーティングする方法としては、甲5の上記(1)オ(ウ)の【0012】の「実施例1 1)負極の製造 リチウム前駆体としてLiOH・H20 13.43g、チタン前駆体としてTiO231.88g、及びM1前駆体としてZrO20.10gをボールミル装置に注入し、60分間ミリングを行って均等に混合して前駆体混合粉末を製造した。次に、前記前駆体混合粉末を焼成炉(furnace)に装入して約10時間の間800℃の温度で熱処理し、以後、再度Al前駆体としてAl2O30.08gを添加して3時間の間500℃の温度で熱処理し、チタン系複合体Li4Ti4.99Zr0.01O12/Al2O3(ドーピング及びコーティング量2000ppm)を合成した。」との記載があるが、この記載を見ても、リチウム遷移金属複合酸化物の一次粒子にAl2O3等を被覆するのか明らかでないし、Li4Ti4.99Zr0.01O12をAl2O3粒子でコーティングしているといえるところ、上記(5)ア(イ)aでの甲1発明の「シェル」における検討を踏まえると、甲5発明におけるAl2O3等の粒子による被覆は、本件発明1のアルミニウムコーティングとは相違するものである。 そうすると、上記相違点5は、実質的な相違点であるといえる。 b 次に、上記相違点5に係る本件発明1の構成が、容易に想到し得るものであるのか否かについて、検討する。 甲5発明は、「前記チタン系複合体は、その1次粒子の粒径(D50)が1μm以下であるものであってよく、2次粒子の粒径(D50)は、大体1から10μmであるものであってよい」とあるように、リチウム遷移金属複合酸化物が、一次粒子か二次粒子かに特に着目するものではないところ、最終的なリチウム遷移金属複合酸化物が二次粒子であるならば、Al2O3等を被覆する際のリチウム遷移金属複合酸化物をあえて一次粒子にする動機付けが、甲5発明にあるとはいえない。 また、リチウム遷移金属複合酸化物に対し、粒子状のAl2O3等の被覆で、甲5の上記(1)オ(イ)の【0007】にあるような「リチウムチタン酸化物の構造的な特徴から起因する固有の抵抗差を克服するため、リチウムチタン酸化物に特定の元素をドーピングまたはコーティングしたチタン系複合体を提供し、出力特性に優れて高出力が求められる自動車電池に好適なリチウム二次電池を提供し、それぞれの二次電池の抵抗の変化幅が少なくてBMS予測アルゴリズムが単純化された電池パックを提供すること」が達成されるのであるから、このような状況において、上記相違点5に係る本件発明1で特定される方法によって形成されるアルミニウムコーティングを採用する動機付けが、甲5発明にはないことは、甲1発明の場合と同様である。 ここで、当業者が仮に甲3の記載に接したとしても、甲5発明において、上記相違点5に係る本件発明1の構成を有するものすることはできないことは、上記(5)ア(イ)cで述べたのと同様である。 (ウ)小括 以上のとおり、上記相違点5は、実質的な相違点であると共に、上記相違点5に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1は、甲5発明ではないし、甲5発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~5、8について 本件発明2~5、8は、本件発明1を引用し、これを、さらに限定するものであるか、本件発明1の構成を少なくとも全て含むものであるところ、本件発明1が、甲5発明ではないし、甲5発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2、8も同様に、甲5発明ではないし、本件発明2~5、8は、甲5発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 取消理由3、7、申立理由(サポート要件違反、明確性要件違反、実施可能要件違反)について (1)取消理由3(サポート要件違反)について 上記第4の1(2)にあるように、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に照らすと、本件発明の課題を解決するには、少なくとも、リチウムチタン複合酸化物が、噴霧乾燥後、熱処理を行うものであること、リチウムチタン複合酸化物に混合されるアルミニウム化合物が硫酸アルミニウムであることが肝要であるといえる。 これに対し、上記第2の1(1)における訂正事項1によって、本件発明1において、リチウムチタン複合酸化物が、噴霧乾燥後、熱処理を行うものであること、リチウムチタン複合酸化物に混合されるアルミニウム化合物が硫酸アルミニウムであることが特定されることにより、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~5、8は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとなった。 以上によれば、本件発明1~5、8は、サポート要件を満たしているといえるから、取消理由3には、理由がない。 (2)取消理由7(明確性要件違反)について 取消理由7に対し、上記第2の1(2)における訂正事項2によって、「二次粒子のサイズ」は、「二次粒子のサイズ分布D50」と訂正され、サイズがサイズ分布D50(体積中位粒径、例えば甲3の上記1(1)ウ(ウ)の[0042]等参照)とされることにより、その意味することが明確となり、一義的にも定まるものとなった。 なお、上記の訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であることは、上記第2の2(2)イで述べたとおりである。 以上によれば、本件発明2は、明確であるから、取消理由7には、理由がない。 (3)申立理由(実施可能要件違反及びサポート要件違反)について ア 本件発明3について 本件明細書の【0007】には、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)を製造する際に用いるリチウム化合物について、「LiOH及び/又はLi2CO3が使用されるが、このようなリチウム化合物が使用される場合、正極活物質の表面にLiOH、Li2CO3の形態で存在する残留リチウム量が高いという問題点がある。」ことが記載されているところ、【0018】の「電池内において、残留リチウム、すなわち、未反応のLiOH、及びLi2CO3と電解液などとの反応によるガス発生及びスウェリング(swelling)現象の誘発は、電池の高温安全性が深刻に低下するという問題を招来する。しかし、本願発明に係るアルミニウムでコーティングされた一次粒子を含むリチウムチタン複合酸化物は、電池内の残留リチウムを減少させることで電池内のガス発生量を減少させるため、電池の高温安定性をも向上させることができる(本願の[表11]を参照)。」との記載によれば、【0007】に記載される問題点に対し、リチウムチタン複合酸化物の一次粒子にアルミニウムを含むコーティングを施すことで、残留リチウムを減少させることができることが理解できる。 そして、リチウムチタン複合酸化物の一次粒子にアルミニウムを含むコーティングを施すことについては、【0052】~【0081】に記載される実施例1~3で、その具体的な手順が記載されていると共に、実際に得られたリチウムチタン複合酸化物について、残留するLiOH、Li2CO3の濃度を測定し、リチウムチタン複合酸化物の一次粒子にアルミニウムを含むコーティングを施したものについては、濃度が2000ppm以下であることを確認している(【0086】【表4】~【0111】【表9】)。 そうすると、リチウムチタン複合酸化物中の残留リチウムを2000ppm以下とするための具体的な方法が記載されていないということはないし、具体的な実験例等が記載されていないということもないから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明3を実施できる程度に記載されたものであるとはいえない、ということはないし、本件発明3は、その実施ができないものであるから、本件発明の課題を解決できるものではない、ということもない。 イ 本件発明4、5について 本件明細書の【0053】の実施例1の「出発物質として、炭酸リチウム1モルと、アナターゼ型酸化チタン1モル、及び水酸化ジルコニウム1.5モルを固相混合し、水に撹拌して溶解した。次に、ジルコニアビーズを用いて3000rpmで湿式粉砕した後、熱風温度を250℃、排気熱風温度を110℃で噴霧乾燥し、700~800℃の空気雰囲気下で10~20時間、熱処理を行うことで、異種金属としてZrがドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を製造した。」との記載によれば、リチウムチタン複合酸化物を製造するのに、原料として「酸化チタン」を用いている。 これによれば、原料である「酸化チタン」の残留は、少ないほど好ましいことは明らかであり、本件発明4の「LTOのメインピークに対するルチル型二酸化チタンのピーク強度比が3%以内である」、本件発明5の「LTOのメインピークに対するアナターゼ型二酸化チタンのピーク強度比が1%以内である」とは、リチウムチタン複合酸化物中に、リチウムチタン複合酸化物になっていない「酸化チタン」が少ないことを意味しているといえる。 ここで、本件発明の背景技術である【0004】~【0006】の例えば【0006】の「このようなLTOの製造方法としては、例えば、固相法、準固相法、ゾル-ゲル法などが挙げられ、このうち、準固相法は、固相の反応原料を混合した後、スラリー化してLTOを製造する方法であって、乾燥、第1の粉砕、熱処理、及び第2の粉砕などのような多数の工程を含んでいるため、製造工程が複雑になり、各工程ステップが適切に制御できない場合は、希望の物性を有するLTOを製造することが難しく、LTOから不純物を除去し難いという短所がある。」との記載によれば、LTOの製造方法自体は、従来の技術であって、工程ステップを適切に制御することによって、「二酸化チタン」の存在量を、本件発明4及び本件発明5で特定される程度の存在量とすることは、既に実施されているといえる。このような状況であれば、本件明細書の上記実施例1の手順に従って、リチウムチタン複合酸化物の製造を行えば、本件発明4及び本件発明5の条件を満足するリチウムチタン複合酸化物を製造することができるとするのが合理的である。 そうすると、本件明細書には、ルチル型二酸化チタン及びアナターゼ型二酸化チタンのピーク強度比を、それぞれ3%及び1%以内とするための具体的な方法が記載されていないということはないから、実際に、ルチル型二酸化チタン及びアナターゼ型二酸化チタンのピーク強度比を測定していないとしても、申立理由にあるように、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明4及び本件発明5を実施できる程度に記載されたものであるとはいえない、ということはないし、本件発明4及び本件発明5は、その実施ができないものであるから、本件発明の課題を解決できないものである、ということもない。 ウ 上記ア及びイで述べたとおりであるから、申立理由には、理由がない。 第6 むすび 上記第5で検討したとおり、本件特許1~5、8は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであるとも、同法第36条第4項第1号並びに同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということもできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記取消理由1~7及び上記申立理由では、本件特許1~5、8を取り消すことはできない。 また、他に本件特許1~5、8を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件特許6、7、9は、本件訂正により削除され、本件特許6、7、9に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700314

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