特許異議申立
2024-700028
PETボトル及びPETボトルの製造方法
- 審判番号
- 2024-700028
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-067827
- 登録番号
- 7310040
- 請求日
- 2024年01月15日
- 審決日
- 2025年10月22日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】タキロンシーアイ株式会社
- 【権利者代理人】江森 健二
- 【権利者代理人】田中 有子
- 【権利者】ボンセット アメリカ コーポレーション
- 【権利者代理人】江森 健二
- 【権利者代理人】田中 有子
- 【異議申立人】早川 いづみ
- 審判長/審判官
- 審判長 天野 宏樹
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 磯貝 香苗
- 分類
- P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第113条第4号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7310040号発明「PETボトル及びPETボトルの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7310040号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕、8について訂正することを認める。
特許第7310040号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7310040号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、
2022年(令和 4年)10月 6日(優先権主張 令和 4年 4月 1日)を国際出願日とする特許出願(特願2023-509516号)の一部を、
令和 5年 4月18日に新たな特許出願とし、
令和 5年 7月 7日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、
令和 5年 7月18日に特許掲載公報が発行され、
その後、当該特許に対し、
令和 6年 1月15日に特許異議申立人 早川 いづみ(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、
令和 6年 2月29日に特許異議申立人により手続補正書(方式)(当審注:補正対象書類は異議申立書)が提出され、
令和 6年 4月22日付けで取消理由が通知され、
令和 6年 7月 5日に特許権者 タキロンシーアイ株式会社、ボンセット アメリカ コーポレーション、及びボンセット ラテン アメリカ ソシエダ アノニマから訂正請求がされると共に意見書が提出され(なお、令和 6年 7月29日にボンセット ラテン アメリカ ソシエダ アノニマの特定継承による特許権の持分移転があったため、同日以降は、タキロンシーアイ株式会社、及びボンセット アメリカ コーポレーションを「特許権者」という。)、
令和 6年 7月18日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、
令和 6年 8月16日に特許異議申立人から意見書が提出され、
令和 6年12月26日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、
令和 7年 2月14日に特許権者から訂正請求がされると共に意見書が提出され、
令和 7年 5月23日に特許権者から手続補正書(方式)(当審注:補正対象書類は令和7年2月14日付け訂正請求書)が提出され、
令和 7年 6月25日に特許権者から手続補正書(方式)(当審注:補正対象書類は令和7年5月23日付け手続補正書(方式))が提出されたものである。
なお、令和 6年 7月 5日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、令和 7年 2月14日にされた訂正請求については、すでに特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられている場合であって、後記のとおり、訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見を踏まえてさらに審理を進めたとしても、特許を維持すべきとの結論になると合議体が判断したため、特許異議申立人に改めて意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるものと判断し、意見書提出の機会を与えないこととした。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和 7年 2月14日にされ、令和 7年 5月23日及び令和 7年 6月25日に提出された手続補正書(方式)により補正された訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)における訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「構成(2):所定厚さのフィルムとした場合に、JIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を20%未満の値とする。
構成(3):所定厚さのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*を0.19~0.26の範囲内の値とする。」と記載されているのを、
「構成(2):厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を20%未満の値とする。
構成(3):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*を0.19~0.26の範囲内の値とする。」に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7についても同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「構成(4):再生PET樹脂を配合せず、かつ、所定厚さのフィルムとして、」と記載されているのを、
「構成(4):再生PET樹脂を配合しないポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとして、」に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項3ないし7についても同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「構成(5):所定厚さのフィルムとした場合に、」と記載されているのを、
「構成(5):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「構成(6):所定厚さのフィルムとした場合に、」と記載されているのを、
「構成(6):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に、
「構成(b):所定厚さのフィルムとした場合に、JIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を20%未満の値とする。
構成(c):所定厚さのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*を0.19~0.26の範囲内の値とする。」と記載されているのを、
「構成(b):厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を20%未満の値とする。
構成(c):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*を0.19~0.26の範囲内の値とする。」に訂正する。
(6)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし7について、請求項2は請求項1を引用し、請求項3ないし7は請求項1又は請求項2を引用するものであって、訂正事項1により訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
よって、訂正前の請求項1ないし7に対応する訂正後の請求項1ないし7は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1に係る訂正について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、訂正前の請求項1において、「構成(2):」のフィルムの厚さについて「所定厚さ」とあるのを「厚さ30μm」とし、かつ、訂正前の請求項1において、「構成(3):」のフィルムの厚さが「所定厚さ」であり、フィルム製造条件が記載されていなかったものを「前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルム」として、「構成(2):」と「構成(3):」のフィルムの厚さ、及び、「構成(3):」のフィルム製造条件を記載するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許明細書【0028】、【0030】、【0071】、【0072】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ここで、特許異議申立人は令和 6年 8月16日提出の意見書(第4頁)で、訂正事項1に係る訂正は実質的に権利範囲を拡張するものであるから、訂正要件違反であるとして、以下のように主張する。
すなわち、訂正事項1に係る訂正において、「構成(2):」、「構成(3):」のフィルムの厚さを「厚さ30μm」とすることは、本件特許明細書の【0028】の「構成(2)は、所定厚さ(例えば、30μm)」及び本件特許明細書の【0030】の「構成(3)は、所定厚さ(例えば、30μm)」との記載を根拠とするものであるところ、当該「例えば、30μm」という記載は、30μm以外である場合も含んで記載されているものである。
そうすると、厚さ30μmとの記載がない訂正前の請求項に係る発明では、厚さ30μmのフィルムとした場合も、それ以外の厚さのフィルムとした場合も、ヘイズ値等の請求項に記載される要件を満たす必要があったのに対し、厚さ30μmと記載した訂正後の請求項に係る発明では、厚さ30μmのフィルムとした場合にさえヘイズ値等の請求項に記載される要件を満たせばよいこととなり(厚さ30μmの場合だけ満たせばよいことになるから)、条件が緩和され、権利範囲が訂正前よりも拡張されている。
また、本件特許明細書の【0008】には、「……(略)……なお、ヘイズ値や色度座標におけるb*を測定する、所定厚さ(例えば、30μm)のフィルムは、具体的には、後述する参考例1(以下、実施例1と称する場合もある。)等に記載したシュリンクフィルムが典型例であるが、それに限られない。」と記載されており、フィルムの厚さは実施例の30μmに限られず、それ以外の厚さでもヘイズ値や色度座標におけるb*を測定することが記載されている。
以上より、本件特許明細書の「例えば、30μm」との記載と本件特許明細書の実施例を根拠にした「厚さ30μm」への訂正は実質上権利範囲を拡張するものである。
上記特許異議申立人の主張を踏まえ、以下に検討する。
訂正前の請求項1の記載は、「構成(2):」及び「構成(3):」のフィルムの厚さが、「所定厚さ」であるから、その具体的な厚さが不明瞭ではあるものの、ある所定厚さを有するフィルムについて「構成(2):」の「ヘイズ値」、「構成(3):」の「b*」が満たすべき数値範囲の条件を特定したものであり、特許異議申立人の主張するように、あらゆる厚みのフィルムとした場合であっても「構成(2):」の「ヘイズ値」、「構成(3):」の「b*」の数値範囲条件を満たさなければならないことを発明特定事項として記載したものではない。
そして、訂正事項1に係る訂正により、訂正前の請求項1において不明瞭であった「所定厚さ」の具体的な値が、「厚さ30μm」に明瞭化されたものであるから、訂正前と訂正後とで、請求項1の権利範囲が拡張ないし変更されたものではない。
したがって、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7についても同様である。
(2)訂正事項2に係る訂正について
訂正事項2に係る請求項2の訂正は、訂正前の請求項2において、「構成(4):再生PET樹脂を配合」しないフィルムの厚さが「所定厚さ」であり、「構成(4):再生PET樹脂を配合」しないフィルムのフィルム製造条件が記載されていなかったものを、「構成(4):再生PET樹脂を配合しないポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルム」として、「構成(4):」のフィルムの厚さ、及び、フィルム製造条件を記載するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、本件特許明細書【0031】、【0071】、【0072】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
そして、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
請求項2を引用する請求項3ないし7についても同様である。
(3)訂正事項3に係る訂正について
訂正事項3に係る請求項3の訂正は、訂正前の請求項3において、「構成(5):」のフィルムの厚さが「所定厚さ」であり、「構成(5):」のフィルムのフィルム製造条件が記載されていなかったものを「前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルム」として、「構成(5):」のフィルムの厚さ、及び、フィルム製造条件を記載するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3に係る請求項3の訂正は、本件特許明細書【0033】、【0071】、【0072】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
そして、訂正事項3に係る請求項3の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4に係る訂正について
訂正事項4に係る請求項4の訂正は、訂正前の請求項4において、「構成(6):」のフィルムの厚さが「所定厚さ」であり、「構成(6):」のフィルムのフィルム製造条件が記載されていなかったものを「前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルム」として、「構成(6):」のフィルムの厚さ、及び、フィルム製造条件を記載するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3に係る請求項3の訂正は、本件特許明細書【0035】、【0071】、【0072】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
そして、訂正事項3に係る請求項3の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項5に係る訂正について
訂正事項5に係る請求項8の訂正は、訂正前の請求項8において、「構成(b):」のフィルムの厚さが「所定厚さ」とあるのを「厚さ30μm」とし、かつ、訂正前の請求項2において、「構成(c):」のフィルムの厚さが「所定厚さ」であり、フィルム製造条件が記載されていなかったものを「前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルム」として、「構成(b):」と「構成(c):」のフィルムの厚さ、及び、「構成(c):」のフィルム製造条件を記載するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項5に係る請求項8の訂正は、本件特許明細書【0028】、【0030】、【0071】、【0072】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
そして、訂正事項5に係る請求項8の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(6)独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正請求による特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項、第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕、8について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明8」といい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定される次のとおりのものである。なお、下線は訂正箇所を示す。
「【請求項1】
少なくとも再生PET樹脂を含有するポリエステル系樹脂組成物に由来してなるポリエステル系シュリンクフィルムを外嵌させたPETボトルであって、前記ポリエステル系樹脂組成物が、下記の構成(1)~(3)及び(7)を満足することを特徴とするPETボトル。
構成(1):再生PET樹脂の配合量を、結晶性ポリエステル樹脂の一部又は全部として、ポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、20~50重量%の範囲内の値とする。
構成(2):厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を20%未満の値とする。
構成(3):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*を0.19~0.26の範囲内の値とする。
構成(7):非結晶性ポリエステル樹脂(但し、多価アルコール100モル%中、ネオペンチルグリコールを40~60モル%共重合した共重合ポリエステルを30~60重量%で含有した場合を除く。)を含むと共に、当該非結晶性ポリエステル樹脂の配合量をポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、50~80重量%の範囲内の値とする。
【請求項2】
前記ポリエステル系樹脂組成物が、下記構成(4)を更に満足することを特徴とする請求項1に記載のPETボトル。
構成(4):再生PET樹脂を配合しないポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとして、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*を、b*0とした場合に、b*-b*0で表される数値を、0.01以上の値とする。
【請求項3】
前記ポリエステル系樹脂組成物が、下記構成(5)を更に満足することを特徴とする請求項1又は2に記載のPETボトル。
構成(5):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるa*を-0.15~-0.05の範囲内の値とする。
【請求項4】
前記ポリエステル系樹脂組成物が、下記構成(6)を更に満足することを特徴とする請求項1又は2に記載のPETボトル。
構成(6):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるL*を90以上の値とする。
【請求項5】
前記再生PET樹脂の平均分子量(Mn)を、5000~50000の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のPETボトル。
【請求項6】
前記結晶性ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレートの一種単独又は二種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1又は2に記載のPETボトル。
【請求項7】
前記非結晶性ポリエステル樹脂が、テレフタル酸を少なくとも80モル%含んでなるジカルボン酸と、エチレングリコール50~80モル%及び、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコールから選ばれた1種以上のジオール20~50モル%からなるジオールよりなることを特徴とする請求項1又は2に記載のPETボトル。
【請求項8】
少なくとも下記工程(1)~(4)を含むことを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムを外嵌させたPETボトルの製造方法。
(1)下記の構成(a)~(d)を満足するポリエステル系樹脂組成物に由来してなるポリエステル系シュリンクフィルムから長尺筒状物を形成する工程
構成(a):再生PET樹脂の配合量を、結晶性ポリエステル樹脂の一部又は全部として、ポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、20~50重量%の範囲内の値とする。
構成(b):厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を20%未満の値とする。
構成(c):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*を0.19~0.26の範囲内の値とする。
構成(d):非結晶性ポリエステル樹脂(但し、多価アルコール100モル%中、ネオペンチルグリコールを40~60モル%共重合した共重合ポリエステルを30~60重量%で含有した場合を除く。)を含むと共に、当該非結晶性ポリエステル樹脂の配合量をポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、50~80重量%の範囲内の値とする。
(2)前記長尺筒状物を、自動ラベル装着装置に供給し、必要な長さに切断する工程
(3)必要な長さに切断された前記長尺筒状物を、内容物を充填したPETボトルに外嵌する工程
(4)前記長尺筒状物を外嵌した前記PETボトルを、熱風トンネル又はスチームトンネルの内部を通過させ、前記長尺筒状物を、加熱して熱収縮させる工程」
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要
令和 6年 1月15日に特許異議申立人が提出し、令和 6年 2月29日に提出された手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし8は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし8は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(サポート要件)
本件特許発明1ないし8についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
具体的理由はおおむね次のとおりである。
(1)非結晶性ポリエステル樹脂に関し、実施例では1種類しか示されていないのに比べ特許請求の範囲が極めて広く、発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。
(2)発明の課題として記載されている「透明性」は、再生PET樹脂配合量100%でも良好であり、本件特許発明によって発明の課題を解決できることを当業者は認識できない。
(3)本件特許明細書には、着色や透明性がシュリンクフィルムの厚みの影響を受けることが記載されているが、請求項1~8はフィルムの厚みの限定がなく、発明の課題を解決できることを当業者は認識できない。
4 申立理由4(明確性要件)
本件特許発明1ないし8についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
具体的理由はおおむね次のとおりである。
・特許請求の範囲の「所定厚さ」の記載は、不明確である。
5 証拠方法
甲第1号証:特開2004-196918号公報
甲第2号証:特開2019-163475号公報
甲第3号証:国際公開第2020/090720号
甲第4号証:「飽和ポリエステル樹脂ハンドブック」、初版第1刷、日刊工業新聞社、1989年12月22日、第224~227頁
甲第5号証:特許第4122287号公報
証拠の表記は特許異議申立書の記載におおむね従った。
以下、順に「甲1」等という。
第5 取消理由(決定の予告)の概要
令和 6年 12月26日付けで通知された取消理由(以下「取消理由(決定の予告)」という。)の概要はおおむね次のとおりである。
取消理由3(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由は次のとおりである。
請求項1ないし4及び8において特定される「JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標における」「L*」、「a*」、「b*」、「b*0」はいずれも、フィルムを製造する際の製造条件により変化する測定値であるところ、当該測定値を以て樹脂組成物を特定するにあたり、フィルムを製造する際の製造条件が特定されなければ、これらの測定値も明確でなく、したがって、本件特許発明1ないし4及び8に関し、特許請求の範囲は不明確である。
また、請求項1又は2の記載を直接又は間接的に引用して特定する本件特許発明5ないし7についても同様に、特許請求の範囲は不明確である。
なお、取消理由3(明確性要件)のフィルムを製造する際の製造条件に関する明確性要件違反のうち、フィルムの厚さに関する明確性要件違反は、申立理由4(明確性要件)と同旨であって、取消理由3(明確性要件)は、申立理由4(明確性要件)を包含している。
第6 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
当審は以下に述べるように、取消理由3(明確性要件)は理由がない、と判断する。
1 明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書及び図面の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
2 特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
3 明確性要件の判断
請求項1ないし8の記載は、それ自体明瞭であり、願書に添付した明細書及び図面の記載とも整合する。
したがって、本件特許発明1ないし8に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書及び図面の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
4 申立理由4についての特許異議申立人の主張について
取消理由3は申立理由4を包含するものであり、特許異議申立人の第4 4の主張について、ここで検討する。
本件訂正後の、請求項1ないし8は、ポリエステル系樹脂組成物をフィルムとした場合の特性に関する特定を含むところ、測定対象のフィルムは、請求項1及び8の「構成(2):」、「構成(b):」においては、「厚さ30μm」と記載され、請求項1ないし4及び8の「構成(3):」、「構成(4):」、「構成(5):」、「構成(6):」、「構成(c):」においては、「ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルム」と記載されたことにより、明確になった。
よって、取消理由3及び申立理由4の明確性要件違反は解消している。
5 取消理由3についてのまとめ
以上のとおり、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、特許法第113条第4号に該当しない。
よって、取消理由3の理由によって、本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
第7 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立理由について
取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立理由は、
・申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)
・申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)
・申立理由3(サポート要件)である。
以下、順に検討する。
1 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲1の記載事項等
ア 甲1の記載事項
甲1には、「熱収縮性フィルム用材料、ポリエステル系熱収縮性フィルム及びポリエステル系シュリンクラベル」について、次の事項が記載されている。なお、下線は強調のため当審にて付したものである。
(摘記1a)
「【請求項1】
(A)ポリエチレンテレフタレート製容器由来の再生樹脂と(B)非晶性ポリエステル樹脂とを加熱混合して得られるポリエステル樹脂からなる熱収縮性フィルム用材料。
……(略)……
【請求項3】
請求項1又は2記載の熱収縮性フィルム用材料で構成されているポリエステル系熱収縮性フィルム。
【請求項4】
ベースフィルムの少なくとも一方の面に印刷層が設けられたポリエステル系シュリンクラベルであって、前記ベースフィルムが請求項3記載のポリエステル系熱収縮性フィルムで構成されていることを特徴とするポリエステル系シュリンクラベル。」
(摘記1b)
「【0011】
ポリエチレンテレフタレート製容器由来の再生樹脂(A)としては、PETボトル等のポリエチレンテレフタレート製容器からキャップ等の異物を除去し再生された樹脂であれば、その再生法は特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート製容器の粉砕物を異物の除去、洗浄、乾燥等の処理に付し、該粉砕物を押出機等に供して得られるフレーク状やペレット状の樹脂などを使用できる。
ポリエチレンテレフタレート製容器としては、容器を構成する樹脂の主成分(例えば90重量%以上、好ましくは95重量%以上、特に100重量%を占める成分)がポリエチレンテレフタレートである容器であれば特に限定されない。なお、前記ポリエチレンテレフタレートはエチレングリコール及びテレフタル酸以外のジオール成分、ジカルボン酸成分を少量(例えば、それぞれ5モル%以下、好ましくは、それぞれ3モル%以下)含んでいてもよい。
【0012】
前記再生樹脂(A)の極限粘度(IV)は、例えば0.6~1.2、好ましくは0.7~1.0程度である。極限粘度が0.6未満の場合には、得られるフィルムが脆くなったり収縮率が低くなりやすく、1.2を超えるとフィルムの成形加工が困難になりやすい。」
(摘記1c)
「【0015】
ジオール成分としては、エチレングリコールを主として(特に、ジオール成分全量に対して80~95モル%の割合で)含有していることが好ましい。エチレングリコールと併用することができるジオール成分として、前記例示のジオール成分から適宜選択することができ、好ましくは、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。」
(摘記1d)
「【0019】
ポリエチレンテレフタレート製容器由来の再生樹脂(A)と非晶性ポリエステル樹脂(B)との割合は、熱収縮性等を損なわない範囲で適宜選択されるが、一般には前者/後者(重量比)=10/90~93/7、好ましくは前者/後者(重量比)=40/60~90/10、さらに好ましくは前者/後者(重量比)=60/40~85/15程度である。前記割合が10/90よりも小さい場合には、再生樹脂(A)の利用性、及びコストの点で不利であり、前記割合が93/7より大きい場合には、収縮率が低く実用性が低下する。」
(摘記1e)
「【0031】
ポリエステル系熱収縮性フィルムの主収縮方向の熱収縮率(温水80℃×10秒)は、各種容器等への収縮密着性の点から、30%以上(例えば、30~80%程度)が好ましい。ポリエステル系熱収縮性フィルムの厚さは、用途や取扱性等を考慮して適宜設定できるが、一般には10~100μm、好ましくは20~60μm程度である。また、ポリエステル系熱収縮性フィルムの表面は、用途等に応じて、コロナ処理等の適当な表面処理が施されていてもよい。」
(摘記1f)
「【0035】
本発明のポリエステル系シュリンクラベルは、ベースフィルムの主に延伸処理を施した方向(主延伸方向)が周方向となるように筒状に丸め、両端辺を溶剤や接着剤などで接着した後、必要に応じて所望の長さに切断することにより、筒状のシュリンクラベルとして使用することもできる。例えば、前記筒状に形成されたシュリンクラベルを自動ラベル装着装置に供給し、必要な長さに切断した後、通常内容物を充填した被装着物(例えば、PETボトルなどのプラスチック製又はガラス製の瓶状容器、金属製容器など)に連続的に被嵌し、加熱により熱収縮させることにより、シュリンクラベルを被装着物に装着することができる。被装着物に被嵌したシュリンクラベルの熱収縮は公知の何れの方法により行ってもよく、均等に温度を伝えラベルの仕上がりを良くするという理由から、例えばトンネル内の温度が70~95℃程度のスチームトンネルを通過させることにより熱収縮させるのが好ましいが、80~200℃の熱風ヒーターを用いても良好な仕上がりが得られる。」
(摘記1g)
「【0038】
実施例1
市販されている飲料用PETボトル(ポリエチレンテレフタレート100重量%の樹脂)から、内容飲料、ラベル、キャップを除き、ボトル本体を洗浄、乾燥した後、粉砕機でフレーク状に粉砕した。このフレークの極限粘度(IV)は、0.85であった。このフレーク80重量部に、非晶性ポリエステルチップ(Eastman Chemical社製、商品名「EASTBOND」、ガラス転移温度51℃、結晶融解熱0J/g)20重量部を加えて十分に混合した。この混合物100重量部に対して、ジエチレングリコール1重量部、酢酸マグネシウム0.01重量部及び球状合成シリカ粒子(平均粒径2μm)0.1重量部を添加し、混合した。
この混合物を二軸スクリュー押出機に供給して、270℃で溶融混練し、ダイからストランド状に押し出して、水冷後、回転式カッターで、長さ約3mmのチップとした。二軸スクリューのスクリュー回転方向は、同方向回転であり、且つ2個のベント孔から真空吸引して水分や揮発分を除去した。得られたチップの極限粘度(IV)は0.71、結晶融解熱は23J/gであった。
このチップをフィルム製造用の二軸押出機に供給し、2カ所のベント孔から真空吸引しつつ、260℃で溶融押出し、ギアポンプで計量後、焼結金属フィルターで濾過し、T型ダイからシート状に押出し、これを冷却ロール(表面温度20℃)に巻き付けて、冷却固化せしめ、厚さ約200μmのシートとした。このシートを80℃に予熱した後、長手方向に1.05倍延伸し、冷却し、これをテンター式横延伸機に送り込んで、幅方向に4.2倍延伸した。テンター内の予熱、延伸、熱固定の各温度は、100℃、78℃、80℃とし、熱処理部では、幅方向に約3%の弛緩を付与した。テンターから出てきたフィルムを均一冷却し、巻き取った。このフィルムロールを30℃のエイジングルームに24時間保管し、延伸歪みを除去し、次いで1000mm幅にスリットして、厚さ45μmの収縮フィルムを得た。得られたフィルムの極限粘度(IV)は0.68、結晶融解熱は10J/gであった。このフィルムを8色のグラビア印刷機に供給して、水性インキでデザインを印刷し、巻き取った。これをラベルの幅にスリットし、その両端部を接着剤で接着して、筒状のシュリンクラベルとした。印刷面は、筒の内側、つまり裏印刷とした。このラベルの幅方向収縮率(80℃の水に10秒間浸漬したときの収縮率)は41%であった。このラベルを新しいPETボトル(500ml容量の角形)に被せて、スチームトンネルを通して収縮させたところ、しわなどの外観不良もなく、きれいに仕上がっていた。」
イ 甲1に記載された発明
上記アより、甲1の【請求項1】、【請求項3】、【請求項4】、【0019】、実施例1を中心に整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」、「甲1製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「(A)ポリエチレンテレフタレート製容器由来の再生樹脂と(B)非晶性ポリエステル樹脂とを(A)/(B)(重量比)=80重量部/20重量部で加熱混合して得られるポリエステル樹脂からなる熱収縮性フィルム用材料で構成されているポリエステル系熱収縮性フィルムをベースフィルムとするポリエステル系シュリンクラベルをラベルの幅にスリットし、両端部を接着剤で接着して筒状のシュリンクラベルとし、新しいPETボトルに被せて、スチームトンネルを通して収縮させたPETボトル。」
<甲1製法発明>
「(A)ポリエチレンテレフタレート製容器由来の再生樹脂と(B)非晶性ポリエステル樹脂とを(A)/(B)(重量比)=80重量部/20重量部で加熱混合して得られるポリエステル樹脂からなる熱収縮性フィルム用材料で構成されているポリエステル系熱収縮性フィルムをベースフィルムとするポリエステル系シュリンクラベルをラベルの幅にスリットし、両端部を接着剤で接着して筒状のシュリンクラベルとし、新しいPETボトルに被せて、スチームトンネルを通して収縮させたPETボトルの製造方法。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「(A)ポリエチレンテレフタレート製容器由来の再生樹脂と(B)非晶性ポリエステル樹脂とを」「加熱混合して得られるポリエステル樹脂からなる熱収縮性フィルム用材料で構成されているポリエステル系熱収縮性フィルムをベースフィルムとするポリエステル系シュリンクラベル」は、本件特許発明1における「少なくとも再生PET樹脂を含有するポリエステル系樹脂組成物に由来してなるポリエステル系シュリンクフィルム」に相当する。
甲1発明における「ポリエステル系シュリンクラベルをラベルの幅にスリットし、両端部を接着剤で接着して筒状のシュリンクラベルとし、新しいPETボトルに被せて、スチームトンネルを通して収縮させたPETボトル」は、本件特許発明1における「ポリエステル系シュリンクフィルムを外嵌させたPETボトル」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「少なくとも再生PET樹脂を含有するポリエステル系樹脂組成物に由来してなるポリエステル系シュリンクフィルムを外嵌させたPETボトル。」
<相違点1-1>
本件特許発明1は、「構成(1):再生PET樹脂の配合量を、結晶性ポリエステル樹脂の一部又は全部として、ポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、20~50重量%の範囲内の値」とし、かつ、「構成(7):非結晶性ポリエステル樹脂(但し、多価アルコール100モル%中、ネオペンチルグリコールを40~60モル%共重合した共重合ポリエステルを30~60重量%で含有した場合を除く。)を含むと共に、当該非結晶性ポリエステル樹脂の配合量をポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、50~80重量%の範囲内の値とする。」との特定を有するのに対し、甲1発明は、「(A)ポリエチレンテレフタレート製容器由来の再生樹脂と(B)非晶性ポリエステル樹脂とを(A)/(B)(重量比)=80重量部/20重量部」であり、すなわち、ポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、再生PET樹脂の配合量は80重量%、非結晶性ポリエステル樹脂の配合量は20重量%である点。
<相違点1-2>
本件特許発明1は、「構成(2):厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を20%未満の値とする。」との特定を有するのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
<相違点1-3>
本件特許発明1は、「構成(3):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*を0.19~0.26の範囲内の値とする。」との特定を有するのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
相違点1-1について検討する。
特許異議申立人は特許異議申立書(第33頁下から3行~第34頁第4行)において「甲1発明の段落【0019】には、ポリエステルテレフタレート製容器由来の再生樹脂(A)と非晶性ポリエステル樹脂(B)との割合は、・・・一般には前者/後者(重量比)~10/90~93/7、好ましくは前者/後者(重量比)=40/60~90/10・・・である。・・・」と記載されている。即ち、再生PET樹脂の配合量が10~93重量%と40~90重量%が記載されているから、本件特許発明の構成要件Bが記載されている。」と主張している。
しかしながら、本件特許発明1の「構成(1):再生PET樹脂の配合量」は「ポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、20~50重量%の範囲内の値」であり、甲1【0019】に一部重複する範囲が記載されているとしても、甲1に記載されている再生PET樹脂の配合量の数値範囲は上限・下限共に相違点1-1に係る数値範囲よりも広いものである。
そして、甲1発明(甲1【0038】実施例1)では、再生PET樹脂の配合量は80重量部(全100重量部)であることも記載されている。
そうすると、相違点1-1の「構成(1):再生PET樹脂の配合量」は実質的な相違点である。
また、特許異議申立人は特許異議申立書(第35頁第1~15行)において、「甲1発明の段落【0019】には、「ポリエチレンテレフタレート製容器由来の再生樹脂(A)と非晶性ポリエステル樹脂(B)との割合は、・・・一般には前者/後者(重量比)=10/90~93/7、好ましくは前者/後者(重量比)=40/60~90/10、・・・である」と記載されており、非晶性ポリエステル樹脂の配合量として7~90重量%と10~60重量%が記載されている。また、甲第1号証の段落【0014】~【0015】には、「非晶性ポリエステル樹脂(B)を構成するジオール成分としては、・・・。ジオール成分としては、エチレングリコールを主として(特に、ジオール成分全量に対して80~95モル%の割合で)含有していることが好ましい。エチレングリコールと併用することができるジオール成分として、・・・好ましくは、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。よって、甲1発明のポリエステル樹脂は、構成要件Eを満たしている。」と主張している。
しかしながら、本件特許発明1の「構成(7):」「非結晶性ポリエステル樹脂の配合量」は「ポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、50~80重量%」であり、甲1【0019】には一部重複する範囲が記載されているとしても、甲1に記載されている非晶性ポリエステル樹脂の配合量の数値範囲は上限・下限共に相違点1-1に係る数値範囲よりも広いものである。
そして、甲1発明(甲1【0038】実施例1)では、非晶性ポリエステル樹脂の配合量は20重量部(全100重量部)であることも記載されている。
そうすると、相違点1-1の「構成(7):」「非結晶性ポリエステル樹脂の配合量」も実質的な相違点である。
よって、相違点1-1は、実質的な相違点である。
そして、甲1【0019】には「ポリエチレンテレフタレート製容器由来の再生樹脂(A)と非晶性ポリエステル樹脂(B)との割合は、……(略)……さらに好ましくは前者/後者(重量比)=60/40~85/15程度である」と記載されており、すなわち、再生樹脂(A)を多量成分とし、非晶性ポリエステル樹脂(B)を少量成分とすることが最も好ましいことが記載されており、甲1発明(甲1【0038】実施例1)は、この最も好ましい配合割合の具体例に当たるものであるから、甲1発明において、再生樹脂(A)と非晶性ポリエステル樹脂(B)の配合量比を逆転させて、「構成(1):再生PET樹脂の配合量を、結晶性ポリエステル樹脂の一部又は全部として、ポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、20~50重量%の範囲内の値」とし、かつ、「構成(7):非結晶性ポリエステル樹脂(但し、多価アルコール100モル%中、ネオペンチルグリコールを40~60モル%共重合した共重合ポリエステルを30~60重量%で含有した場合を除く。)を含むと共に、当該非結晶性ポリエステル樹脂の配合量をポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、50~80重量%の範囲内の値」に調整することは、甲1及び他の全ての証拠の記載をみても、当業者がそのように動機付けられる記載はない。
次に、事案に鑑み、相違点1-3について検討する。
甲1には、「構成(3):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*」の値について何ら記載はなく、甲1発明における当該数値は不明である。
相違点1-3に関し、特許異議申立人は、特許異議申立書(第34頁下から7行~末行)において、「本件特許明細書の【0030】には、b*と再生PETの配合量には優れた相関関係が(あ)ること(が)記載されている。そして、本件特許明細書には、他にはb*を0.19~0.26の範囲内の値にする方法が記載されていない。よって、再生PETの配合量が本件特許と同じ甲1発明のポリエステル樹脂のb*は本件特許発明1のポリエステル系樹脂組成物と同じ0.19~0.26の範囲内と考えられ、本件特許発明1の構成要件Dを満たしている。」と主張している。
しかしながら、本件特許明細書の【0030】等に、b*と再生PETの配合量に一定の相関関係があることが定性的に示されているとしても、再生PET樹脂の配合量からb*の測定値が直ちに導き出せるものではなく、そのような技術常識もない。
また、上記相違点1-1において検討したとおり、甲1発明は、本件特許発明1の再生PETの配合量の数値範囲を満たしておらず、甲1及び他の全ての証拠をみても、甲1発明の再生PETの配合量を相違点1-1に係る数値範囲とする動機となる記載はなく、甲1発明において、相違点1-3のb*の数値が0.19~0.26の範囲内である蓋然性が高いともいえない。
よって、相違点1-3は実質的な相違点である。
そして、甲1及び他の全ての証拠をみても、甲1発明において、「構成(3):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*を0.19~0.26の範囲内の値」に調整する動機となる記載はない。
以上、上記相違点1-1及び相違点1-3についての検討のとおり、本件特許発明1は甲1発明ではない。
そして、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2ないし7について
本件特許発明2ないし7は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明2ないし7は甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲1製法発明とを対比すると、上記アで検討したのと同様の対応関係を有する。
甲1製法発明における「ポリエステル系熱収縮性フィルムをベースフィルムとするポリエステル系シュリンクラベルをラベルの幅にスリットし、両端部を接着剤で接着して筒状のシュリンクラベルと」することは、本件特許発明8における「ポリエステル系樹脂組成物に由来してなるポリエステル系シュリンクフィルムから長尺筒状物を形成する工程」に相当する。
また、甲1製法発明における「新しいPETボトルに被せて、スチームトンネルを通して収縮させ」ることは、本件特許発明8における「(3)」「前記長尺筒状物を、内容物を充填したPETボトルに外嵌する工程」及び「(4)前記長尺筒状物を外嵌した前記PETボトルを、熱風トンネル又はスチームトンネルの内部を通過させ、前記長尺筒状物を、加熱して熱収縮させる工程」に相当する。
そうすると、本件特許発明8と甲1製法発明の一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「少なくとも下記工程を含むことを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムを外嵌させたPETボトルの製造方法。
(1)ポリエステル系樹脂組成物に由来してなるポリエステル系シュリンクフィルムから長尺筒状物を形成する工程
(3)前記長尺筒状物を、内容物を充填したPETボトルに外嵌する工程
(4)前記長尺筒状物を外嵌した前記PETボトルを、熱風トンネル又はスチームトンネルの内部を通過させ、前記長尺筒状物を、加熱して熱収縮させる工程」
<相違点1-10>
本件特許発明8は、「構成(a):再生PET樹脂の配合量を、結晶性ポリエステル樹脂の一部又は全部として、ポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、20~50重量%の範囲内の値」とし、かつ、「構成(d):非結晶性ポリエステル樹脂(但し、多価アルコール100モル%中、ネオペンチルグリコールを40~60モル%共重合した共重合ポリエステルを30~60重量%で含有した場合を除く。)を含むと共に、当該非結晶性ポリエステル樹脂の配合量をポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、50~80重量%の範囲内の値とする。」との特定を有するのに対し、甲1製法発明は、「(A)ポリエチレンテレフタレート製容器由来の再生樹脂と(B)非晶性ポリエステル樹脂とを(A)/(B)(重量比)=80重量部/20重量部」であり、すなわち、ポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、再生PET樹脂の配合量は80重量%、非結晶性ポリエステル樹脂の配合量は20重量%である点。
<相違点1-20>
本件特許発明8は、「構成(b):厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を20%未満の値とする。」との特定を有するのに対し、甲1製法発明は、そのような特定がない点。
<相違点1-30>
本件特許発明8は、「構成(c):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*を0.19~0.26の範囲内の値とする。」との特定を有するのに対し、甲1製法発明は、そのような特定がない点。
<相違点1-40>
本件特許発明8は、「(2)前記長尺筒状物を、自動ラベル装着装置に供給し、必要な長さに切断する工程」の特定を有するのに対し、甲1製法発明は、そのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点1-10及び相違点1-30について検討する。
相違点1-10及び1-30は、上記アの相違点1-1及び1-3と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明8は甲1製法発明ではないし、甲1製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)申立理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、申立理由1の理由によって取り消すことはできない。
2 申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲2の記載事項等
ア 甲2の記載事項
甲2には、「熱収縮性ポリエステル系ラベル、包装体、熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法」について次の事項が記載されている。なお、下線は強調のため当審にて付したものである。
(摘記2a)
「【請求項1】
PETボトルリサイクル原料を含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの両端部を重ねて溶剤で接着することにより形成されたチューブ状の熱収縮性ポリエステル系ラベルであって、
前記溶剤が、1,3-ジオキソラン、または、1,3-ジオキソランと1,3-ジオキソランに相溶する有機溶剤との混合溶剤を含み、
前記熱収縮性ポリエステル系ラベルの溶剤接着部に残存する1,3-ジオキソラン濃度が4000ppm以上16000ppm以下であり、
前記溶剤接着部に残存する残存溶剤100質量%中、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピルおよびメチルエチルケトンよりなる群から選択される1種以上の非環状化合物の合計量が1質量%以上10質量%以下であり、
溶剤接着部の剥離強度が3N/15mm以上、
であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベル。
……(略)……
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系ラベルを包装対象物の少なくとも外周の一部に有することを特徴とする包装体。
……(略)……
【請求項7】
PETボトルリサイクル原料を含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの両端部を重ねて有機溶剤で接着することにより形成された熱収縮性ポリエステル系ラベルであって、
前記有機溶剤は、比誘電率が6.2以上9.8以下であり、かつ芳香環構造を有する環状化合物を含み、
前記熱収縮性ポリエステル系ラベルの溶剤接着部に残存する前記環状化合物の濃度が4000ppm以上25000ppm以下であり、
溶剤接着部の剥離強度が3N/15mm以上、
であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベル。
……(略)……
【請求項11】
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みが12μm以上50μm以下である請求項7~10のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系ラベル。」
(摘記2b)
「【0002】
近年、ガラス瓶またはプラスチックボトル等の保護と商品の表示を兼ねたラベル包装、キャップシール、集積包装等の用途に、耐熱性が高く、焼却が容易であり、耐溶剤性に優れたポリエステル系の熱収縮性フィルムから得られた熱収縮性ポリエステル系ラベルが、広範に利用されるようになってきており、PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル容器等の増大に伴って、使用量が増加している傾向にある。」
「【0010】
本発明は、フィルムの厚みが薄くても溶剤突き抜けを起こさない溶剤接着部を有する熱収縮性ポリエステル系ラベルおよび包装体の提供を課題とし、特に、高速化したチュービング工程でも、あるいはPETボトルリサイクル原料を多く用いた熱収縮性ポリエステルフィルムであっても、安定的に高い剥離強度が得られる溶剤接着部を有する熱収縮性ポリエステル系ラベルおよび包装体の提供を課題としている。」
(摘記2c)
「【0037】
第2の態様においては、エチレンテレフタレートユニットは、PETボトルリサイクル原料由来のユニットを含んでいてもよい。PETボトルリサイクル原料とは、飲料用のPETボトルをフレークやペレットに加工したものである。ポリエステルフィルムを成膜するときに、このPETボトルリサイクル原料を、ポリエステル原料100質量%中、90質量%以下で使用することが好ましい。90質量%を超えてPETボトルリサイクル原料を用いると、PETボトルを構成するポリエチレンテレフタレートの結晶性が高いため、得られるフィルムの溶剤接着性や熱収縮特性が低下するおそれがある。リサイクル推進のためには、PETボトルリサイクル原料をポリエステル原料100質量%中20質量%以上使うことが望ましい。」
(摘記2d)
「【0043】
また、ポリエステルは、全ポリエステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中あるいは多価カルボン酸成分100モル%中の非晶質成分となり得る1種以上のモノマー成分の合計が15モル%以上、好ましくは16モル%以上、より好ましくは17モル%以上、特に好ましくは18モル%以上である。また非晶質成分となり得るモノマー成分の合計の上限は特に限定されないが、上限は30モル%が好ましい。
【0044】
非晶質成分となり得るモノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオールを挙げることができる。これらの中でも、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールまたはイソフタル酸を用いるのが好ましい。」
(摘記2e)
「【0056】
その後は、前記したチュービング工程を行って、所定の長さに裁断し、熱収縮性ポリエステル系ラベルとする。
【0057】
本発明には、本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルを被包装体に被覆させ、熱収縮させることにより得られる包装体、すなわち、本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルが収縮したラベルを被覆した包装体も含まれる。」
(摘記2f)
「【0068】
合成例(ポリエステルの合成)
撹拌機、温度計および部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、ジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、グリコール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%とを、グリコールがモル比でジメチルテレフタレートの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)添加して、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.025モル%(酸成分に対して)を添加し、280℃で26.6Pa(0.2トール)の減圧条件下で重縮合反応を行い、固有粘度0.70dl/gのポリエステルAを得た。このポリエステルはポリエチレンテレフタレートである。なお、上記ポリエステルAの製造の際には、滑剤としてSiO2(富士シリシア社製サイリシア266)をポリエステルに対して8000ppm添加した。また、上記と同様にして、表1に示すポリエステル(B,C,D)と表2に示すポリエステルE,F,Gを合成した。また、PETボトルリサイクル原料として、「クリアペレット」(よのペットボトルリサイクル社製;固有粘度0.63dl/g)をチップHとして用いた。
【0069】
表中、CHDMは1,4-シクロヘキサンジメタノール、NPGはネオペンチルグリコール、IPAはイソフタル酸、BDは1,4-ブタンジオールである。表1のポリエステルの固有粘度は、チップAが0.70dl/g、チップBが0.70dl/g、チップCが0.73dl/g、チップDが0.73dl/g、チップEが0.70dl/g、チップFが0.73dl/g、チップGが0.73dl/g、チップHが0.63dl/gであった。なお、各ポリエステルは適宜チップ状にした。
【0070】
【表1】
[図:0001432018000001.jpg]
【0071】
【表2】
[図:0001432018000002.jpg]
」
(摘記2g)
「【0075】
<フィルムAの製造方法>
上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、表4に示したように、チップE5質量%、チップF70質量%およびチップH25質量%で混合して押出機に投入した。この混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押し出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに接触させて急冷することにより、厚さ90μmの未延伸フィルムを得た。フィルム中の非晶成分量とTgを表4に示した。このときの未延伸フィルムの引き取り速度(金属ロールの回転速度)は約20m/minであった。
【0076】
上記未延伸フィルムをテンターへ導き、予熱ゾーンで100℃に加熱し、78℃の設定温度の延伸ゾーンで幅方向に5倍延伸した。続いて82℃で5秒間熱処理を行って、その後冷却した。両縁部を裁断除去して幅500mmでロール状に巻き取ることによって、厚さ18μmの横一軸延伸フィルムを1100mに亘って連続的に製造した。得られたフィルムAは幅方向にのみ熱収縮する熱収縮性ポリエステルフィルムであった。90℃で測定した温湯熱収縮率を表4に示した。
……(略)……
【0078】
<フィルムCの製造方法>
未延伸フィルムの厚さを90μmから225μmに変更した以外は、フィルムAと同様の方法で厚さ45μmの横一軸延伸フィルムを1000mの長さに亘って連続的に製造した。得られたフィルムCは幅方向にのみ熱収縮する熱収縮性ポリエステルフィルムであった。90℃で測定した温湯熱収縮率を表4に示した。
……(略)……
【0081】
【表4】
[図:0001432018000003.jpg]
」
イ 甲2に記載された発明
上記アより、甲2の請求項1、請求項4、【0056】ないし【0057】、【0075】ないし【0076】のフィルムA、【0078】のフィルムC、【0081】【表4】を中心に整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」、「甲2製法発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲2発明>
「ポリエステルE(ジメチルテレフタレート100モル%、エチレングリコール100モル%、滑剤添加量8000ppm、固有粘度0.70dl/g)、ポリエステルF(ジメチルテレフタレート100モル%、エチレングリコール70モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール30モル%、固有粘度0.73dl/g)、ポリエステルH(ジメチルテレフタレート98モル%、イソフタル酸2モル%、エチレングルコール100モル%、固有粘度0.63dl/gであるPETボトルリサイクル原料(「クリアペレット」(よのペットボトルリサイクル社製))をE/F/H=5:70:25で混合して押出機に投入し、溶融させてTダイから押し出し、金属ロールに接触させて急冷して未延伸フィルムを得、未延伸フィルムをテンターにて幅方向に5倍延伸し、熱収縮性ポリエステルフィルムを得、これに対し、チュービング工程を行って、所定の長さに裁断した、熱収縮性ポリエステル系ラベルを、包装対象物の少なくとも外周の一部に有する包装体。」
<甲2製法発明>
「ポリエステルE(ジメチルテレフタレート100モル%、エチレングリコール100モル%、滑剤添加量8000ppm、固有粘度0.70dl/g)、ポリエステルF(ジメチルテレフタレート100モル%、エチレングリコール70モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール30モル%、固有粘度0.73dl/g)、ポリエステルH(ジメチルテレフタレート98モル%、イソフタル酸2モル%、エチレングルコール100モル%、固有粘度0.63dl/gであるPETボトルリサイクル原料(「クリアペレット」(よのペットボトルリサイクル社製))をE/F/H=5:70:25で混合して押出機に投入し、溶融させてTダイから押し出し、金属ロールに接触させて急冷して未延伸フィルムを得、未延伸フィルムをテンターにて幅方向に5倍延伸し、熱収縮性ポリエステルフィルムを得、これに対し、チュービング工程を行って、所定の長さに裁断した、熱収縮性ポリエステル系ラベルを、包装対象物に被覆させ、熱収縮させる包装体の製造方法。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「ポリエステルH(ジメチルテレフタレート98モル%、イソフタル酸2モル%、エチレングルコール100モル%、固有粘度0.63dl/gであるPETボトルリサイクル原料(「クリアペレット」(よのペットボトルリサイクル社製))は、本件特許発明1における「再生PET樹脂」に相当する。
甲2発明における「チュービング工程を行って、所定の長さに裁断した、熱収縮性ポリエステル系ラベル」は、本件特許発明1における「ポリエステル系シュリンクフィルム」に相当する。
甲2発明における「熱収縮性ポリエステル系ラベルを、包装対象物の少なくとも外周の一部に有する包装体」は、本件特許発明1における「ポリエステル系シュリンクフィルムを」包装した包装体の点で一致する。
甲2発明における「ポリエステルE」「ポリエステルF」「ポリエステルH」が「E/F/H=5:70:25」である構成は、本件特許発明1における「構成(1):再生PET樹脂の配合量を、結晶性ポリエステル樹脂の一部または全部として、ポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、20~50重量%の範囲内の値とする。」ことに相当する。
甲2発明における「ポリエステルF(ジメチルテレフタレート100モル%、エチレングリコール70モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール30モル%、固有粘度0.73dl/g)」は、1,4-シクロヘキサンジメタノールを共重合モノマーとするものであるところ、甲1【0044】から、非晶質となるポリエステルであって、本件特許発明1における「非結晶性ポリエステル樹脂」に相当する。
甲2発明における「ポリエステルE」「ポリエステルF」「ポリエステルH」が「E/F/H=5:70:25」である構成は、本件特許発明1における「構成(7):非結晶性ポリエステル樹脂(但し、多価アルコール100モル%中、ネオペンチルグリコールを40~60モル%共重合した共重合ポリエステルを30~60重量%で含有した場合を除く。)を含むと共に、当該非結晶性ポリエステル樹脂の配合量をポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、50~80重量%の範囲内の値とする。」ことに相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明の一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「少なくとも再生PET樹脂を含有するポリエステル系樹脂組成物に由来してなるポリエステル系シュリンクフィルムを包装した包装体であって、前記ポリエステル系樹脂組成物が、下記の構成(1)及び(7)を満足する包装体。
構成(1):再生PET樹脂の配合量を、結晶性ポリエステル樹脂の一部又は全部として、ポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、20~50重量%の範囲内の値とする。
構成(7):非結晶性ポリエステル樹脂(但し、多価アルコール100モル%中、ネオペンチルグリコールを40~60モル%共重合した共重合ポリエステルを30~60重量%で含有した場合を除く。)を含むと共に、当該非結晶性ポリエステル樹脂の配合量をポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、50~80重量%の範囲内の値とする。」
<相違点2-1>
本件特許発明1は、ポリエステル系シュリンクフィルムを「外嵌させたPETボトル」との特定を有するのに対し、甲2発明は、そのような特定がない点。
<相違点2-2>
本件特許発明1は、「構成(2):厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を20%未満の値とする。」との特定を有するのに対し、甲2発明は、そのような特定がない点。
<相違点2-3>
本件特許発明1は、「構成(3):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*を0.19~0.26の範囲内の値とする。」との特定を有するのに対し、甲2発明は、そのような特定がない点
事案に鑑み、相違点2-3について検討する。
甲2には、「構成(3):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*」の値について何ら記載はなく、甲2発明における当該数値は不明である。
したがって、相違点2-3は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は甲2発明ではない。
そして、甲2及び他の全ての証拠をみても、甲2発明において、「構成(3):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*を0.19~0.26の範囲内の値とする」動機となる記載はない。
上記相違点2-3に関し、特許異議申立人は、令和 6年 8月16日提出の意見書(第2~3頁)において、「本件特許の明細書では、原料に関しては、段落番号【0023】に」「記載されており、甲2発明の「PETボトルリサイクル原料」(段落番号【0068】はこれに該当している。そして、本件特許の明細書には、再生PET樹脂が本件特許の実施例で使用された「PCR」と同じ組成でなければならない記載はない。」「また、本件特許の明細書には、非晶性ポリエステル樹脂に関し、段落番号【0020】に」「記載されており、甲2発明のフィルムAに使用されている「ポリエステル樹脂F(【表2】)はこれに該当している。」「さらに、本件特許の明細書の段落番号【0008】には「・・・なお、ヘイズ値や色度座標におけるb’を測定する、所定厚さ(例えば、30μm)のフィルムは、具体的には、後述する参考例(以下、実施例1と称する場合もある。)などに記載したシュリンクフィルムが典型例であるが、それに限らない。」と記載されている。即ち、本件特許に係る発明のフィルムは、製造条件が実施例の製造条件と同じである必要はない。また、特許権者が主張する押出温度の影響について、本件特許の発明の詳細な説明には何ら記載されておらず、また、甲2発明のフィルムAのb*値が0.26を超える高い値を示す具体的な根拠は特許権者より示されていない。以上より明らかな様に、甲2発明のフィルムAは、本件特許の明細書に記載された原料と製造条件で製造されており、本件特許発明1~8に進歩性はない。」と主張している。
特許異議申立人の主張について検討したが、甲2発明のフィルムの原料及び製造方法が本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたフィルムの原料及び製造方法等の条件と部分的に重複するものであったとしても、「構成(3):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*」は、より具体的な原料組成及び製造条件によって変動し得るものであるところ、甲2から、当該b*の値を具体的に特定できる記載はなく、また、甲2において、b*に着目してこれを調整したとの記載もない。
さらに、上記相違点2-3に関し、特許異議申立人は、令和 6年 8月16日提出の意見書(第3頁)において、「しかしながら、甲2発明は熱収縮性ポリエステル系ラベルの発明であり、ラベルはラベルを見る人に情報を(当審注:「を」を補填した)伝え良い印象を与える為のものであり、当然に見た目が重要であり、透明性や無着色性は甲2発明の自明の課題である。よって、ヘイズ値、b*、b*-b*0、a*及びL*の範囲の最適化は、当業者の通常の創作能力の発揮であり、進歩性はない。」と主張している。
特許異議申立人の主張について検討したが、ラベルにおける視認性等が自明の課題であったとしても、甲2及び他の全ての証拠をみても、甲2発明において、当該b*を具体的に「0.19~0.26の範囲内の値」に調整する動機となる記載はない。
以上のとおりであるから、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明ではなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2ないし7について
本件特許発明2ないし7は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明2ないし7は、甲2発明ではなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲2製法発明とを対比すると、上記アにおいて検討したのと同様の対応関係を有する。
甲2製法発明における「チュービング工程」は、本件特許発明8における「(1)」「ポリエステル系シュリンクフィルムから長尺筒状物を形成する工程」に相当する。
甲2製法発明における「所定の長さに裁断」する工程は、本件特許発明8における「(2)前記長尺筒状物を、」「必要な長さに切断する工程」に相当する。
さらに、甲2製法発明における「熱収縮性ポリエステル系ラベルを、包装対象物に被覆させ、熱収縮させる」工程は、本件特許発明8における「(3)前記長尺筒状物」を被覆し、「(4)前記長尺筒状物を」被覆した包装体を加熱処理して、「前記長尺筒状物を、加熱して熱収縮させる工程」に相当する。
そうすると、本件特許発明8と甲2製法発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「下記工程を含むポリエステル系シュリンクフィルムを被覆した包装体の製造方法。
(1)下記の構成(a)及び(d)を満足するポリエステル系樹脂組成物に由来してなるポリエステル系シュリンクフィルムから長尺筒状物を形成する工程
構成(a):再生PET樹脂の配合量を、結晶性ポリエステル樹脂の一部又は全部として、ポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、20~50重量%の範囲内の値とする。
構成(d):非結晶性ポリエステル樹脂(但し、多価アルコール100モル%中、ネオペンチルグリコールを40~60モル%共重合した共重合ポリエステルを30~60重量%で含有した場合を除く。)を含むと共に、当該非結晶性ポリエステル樹脂の配合量をポリエステル系樹脂組成物の全体量に対して、50~80重量%の範囲内の値とする。
(2)前記長尺筒状物を、必要な長さに切断する工程、
(3)必要な長さに裁断された前記長尺筒状物を、包装対象物に被覆する工程、
(4)前記長尺筒状物を被覆した包装体を、加熱処理して、前記長尺筒状物を、加熱して熱収縮させる工程」
<相違点2-10>
本件特許発明8は、ポリエステル系シュリンクフィルムを「外嵌させたPETボトル」との特定を有するのに対し、甲2製法発明は、そのような特定がない点。
<相違点2-20>
本件特許発明8は、「構成(b):厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を20%未満の値とする。」との特定を有するのに対し、甲2製法発明は、そのような特定がない点。
<相違点2-30>
本件特許発明8は、「構成(c):前記ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合に、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*を0.19~0.26の範囲内の値とする。」との特定を有するのに対し、甲2発明は、そのような特定がない点
<相違点2-40>
本件特許発明8は、「(2)」「自動ラベル装着装置に供給し」切断すること、「(3)」「内容物を充填した」PETボトルに外嵌し、「(4)」「熱風トンネル又はスチームトンネルの内部を通過させ」熱収縮させること、との特定を有するのに対し、甲2製法発明は、そのような特定がない点
事案に鑑み、相違点2-30について検討する。
相違点2-30は、上記アの相違点2-3と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明8は甲2製法発明ではなく、甲2製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)申立理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、申立理由2の理由によって取り消すことはできない。
3 申立理由3(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0007】「そこで、本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意努力した結果、所定量の再生PET樹脂を含有するポリエステル系樹脂組成物に由来してなるポリエステル系シュリンクフィルムを外嵌させたPETボトル等であって、少なくとも所定構成(1)~(3)及び(7)を満足することよって、従来の問題を解決するに至った。すなわち、本発明は、原材料に、再生PET樹脂(PCR)を相当量含有したとしても、透明性や無着色性を維持するポリエステル系シュリンクフィルムを外嵌させたPETボトル及びそのようなPETボトルの製造方法を提供することを目的とする。」との記載によると、本件特許発明1ないし8の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、再生PET樹脂(PCR)を相当量含有したとしても、透明性や無着色性を維持するポリエステル系シュリンクフィルムを外嵌させたPETボトル及びそのようなPETボトルの製造方法を提供することである。
また、本件特許の発明の詳細な説明の【0008】ないし【0015】には本件特許発明1ないし8の各構成に対応する記載がある。
さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0018】ないし【0019】にはポリエステル樹脂について、【0020】ないし【0021】には非結晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルについて、【0022】には非結晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルの配合量について、【0023】には再生PET樹脂について、【0024】には再生PET樹脂の平均分子量(Mn)について、【0025】には再生PET樹脂のb*について、【0026】は再生PET樹脂の配合量について、【0027】及び【0030】には再生PET樹脂の配合量とb*との関係について、【0028】にはヘイズ値について、【0029】には再生PET樹脂の配合量とヘイズ値との関係について、【0037】ないし【0053】にはポリエステル系シュリンクフィルムについて、【0054】ないし【0062】にはポリエステル系シュリンクフィルムの製造方法について、【0063】ないし【0066】にはポリエステル系シュリンクフィルムの使用方法について、それぞれ記載されている。
そして、【0067】ないし【0086】には、具体的に、再生PET樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の配合比率が100/0~0/100の間で種々調整されたポリエステル系樹脂組成物から製造されたポリエステル系シュリンクフィルムが複数例製造され、厚さ30μmのフィルムとした場合のJIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値(本件特許明細書【0083】【表1】中の評価5)、及び、ポリエステル系樹脂組成物を押出温度245℃で押し出し成形を行い厚さ150μmの原反シートを得て、前記原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度75℃、MD方向100%でTD方向500%の延伸倍率で延伸して、厚さ30μmのフィルムとした場合のJIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L*a*b*色空間の色度座標におけるb*(本件特許明細書【0083】【表1】中の評価7)の測定結果が示されており、再生PET樹脂(PCR)の配合量が10~50重量%、非晶性ポリエステル樹脂(PETG1)の配合量が90~50重量%であり、ヘイズ値が1.82%以下であり、b*値が0.15~0.26である参考例1、実施例2及び実施例3は、上記のいずれかの条件を満たしていない比較例1~3に比べて、70℃熱水中における熱収縮率(本件特許明細書【0083】【表1】中の評価2)が小さく、98℃熱水中における熱収縮率(本件特許明細書【0083】【表1】中の評価4)が大きく、透明性と熱収縮特性に優れたシュリンクフィルムであったことが理解できるから、本件特許明細書の【0084】に記載されているとおり、構成(1)~(3)及び(7)、又は、構成(a)~構成(d)を満足することにより、繰り返しリサイクルしても、優れた透明性や無着色性を維持する所定のポリエステル系樹脂組成物に由来してなるポリエステル系シュリンクフィルムを外嵌させたPETボトルが得られることが理解される。
そうすると、当業者はこれらの記載事項から、構成(1)~(3)及び(7)、又は、構成(a)~構成(d)を満たすポリエステル系シュリンクフィルムを外嵌させたPETボトルにより、発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1は上記発明の課題を解決できると認識できるポリエステル系シュリンクフィルムを外嵌させたPETボトルであり、本件特許発明2ないし7はこれを更に限定したものであり、本件特許発明8は上記課題を解決できると認識できるポリエステル系シュリンクフィルムを外嵌させたPETボトルの製造方法であるから、本件特許発明1ないし8は、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明であって、本件特許の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし8に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するといえる。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の第4 3の主張について検討する。
・主張(1)について
本件特許明細書の実施例で用いられている非晶性ポリエステル樹脂(PETG1)は、代表的な非晶性ポリエステル樹脂であり、当業者は、本件特許明細書の【0020】に例示されている他の非晶性ポリエステル樹脂を用いる場合も、本件特許明細書の実施例と同様に発明の課題を解決することができると認識することができる。また、特許異議申立人の主張は、具体的根拠を伴うものではなく、再生PET樹脂との配合を制限する特段の事情もない。
よって、特許異議申立人は採用し得ない。
・主張(2)について
上記(2)において検討したとおり、本件特許発明における発明の課題は、再生PET樹脂(PCR)を相当量含有したとしても、透明性や無着色性を維持するポリエステル系シュリンクフィルムを外嵌させたPETボトル及びそのようなPETボトルの製造方法を提供することであるから、熱収縮性を無視し、透明性のみが発明の課題であるとする特許異議申立人の主張は本件特許明細書の記載に基づくものであるとはいえず、妥当ではない。
・主張(3)について
上記第6 3及び4において検討したとおり、訂正後の本件特許発明1ないし8はフィルムの厚みについて厚さ30μmであることが特定されたため、特許異議申立人の主張の根拠がなくなった。よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
第8 結語
以上のとおり、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700028