2022-016853
吸光膜を有する導波管およびそれを形成するためのプロセス
- 審判番号
- 2022-016853
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-543944外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年10月21日
- 審決日
- 2023年10月19日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
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本願は、2018年(平成30年)3月6日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2017年(平成29年)3月14日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
同年 6月20日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月22日 :原査定の謄本の送達)
第2 令和4年10月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年10月21日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1) 本件補正後の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】複数の光学導波管を備える導波管スタックを備えるディスプレイデバイスであって、前記複数の光学導波管は、前記光学導波管間のシーラントによって継合され、前記複数の光学導波管のうちの一部の光学導波管は、前記複数の光学導波管のうちの他の光学導波管とは異なるレベルの波面発散および異なる原色を伴う光を出力するように構成され、各光学導波管は、第1の縁表面であって、前記第1の縁表面は、前記光学導波管の第1の主要表面と第2の主要表面との間に延在する、第1の縁表面と、少なくとも前記第1の縁表面の直ぐ上の吸光体であって、前記吸光体は、炭素の同素体およびブラックシリコンのうちの少なくとも1つを含む蒸着膜を備え、前記蒸着膜は、前記第1の縁表面の直ぐ上への堆積のための空中浮遊種を形成するための原材料の蒸発によって形成され、前記吸光体は、前記第1の縁表面と直接接触する垂直に整合されたナノ管アレイを含むナノ構造表面を備え、前記ナノ管アレイのナノ管は、前記ナノ管が上に配置される前記第1の縁表面に対して法線方向に延在する、吸光体と、画像コンテンツを有する光を前記導波管の中に投入するように構成される画像投入デバイスとを備え、前記蒸着膜は、吸光するように構成される前記ナノ構造表面を備える、ディスプレイデバイス。」
(2) 本件補正前の請求項1の記載
本件補正前の、令和4年4月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】複数の光学導波管を備える導波管スタックを備えるディスプレイデバイスであって、前記複数の光学導波管は、前記光学導波管間のシーラントによって継合され、前記複数の光学導波管のうちの一部の光学導波管は、前記複数の光学導波管のうちの他の光学導波管とは異なるレベルの波面発散および異なる原色を伴う光を出力するように構成され、各光学導波管は、第1の表面と、少なくとも前記第1の表面の直ぐ上の吸光体であって、前記吸光体は、炭素の同素体およびブラックシリコンのうちの少なくとも1つを含む蒸着膜を備え、前記蒸着膜は、前記第1の表面上への堆積のための空中浮遊種を形成するための原材料の蒸発によって形成される、吸光体と、画像コンテンツを有する光を前記導波管の中に投入するように構成される画像投入デバイスとを備え、前記蒸着膜は、吸光するように構成されるナノ構造表面を備える、ディスプレイデバイス。」
2 本件補正の適否
(1) 本件補正の目的
本件補正により特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、以下のア~ウの補正事項を含むものである。
ア 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の表面」を「第1の縁表面であって、前記第1の縁表面は、前記光学導波管の第1の主要表面と第2の主要表面との間に延在する、第1の縁表面」と限定する事項。
イ 同じく「蒸着膜」について、「前記第1の表面上への堆積」とあったものを「前記第1の縁表面の直ぐ上への堆積」と限定する事項。
ウ 同じく「吸光体」について、「前記第1の縁表面と直接接触する垂直に整合されたナノ管アレイを含むナノ構造表面を備え、前記ナノ管アレイのナノ管は、前記ナノ管が上に配置される前記第1の縁表面に対して法線方向に延在する」と限定する事項。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(2)独立特許要件について
ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
イ 引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
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(ア) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
a 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2015/001839号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(a) 請求の範囲
「[請求項1] (イ)観察者の頭部に装着されるフレーム、及び、(ロ)フレームに取り付けられた画像表示装置、を備えており、画像表示装置は、続きを表示(全20行)(A)画像形成装置、及び、(B)画像形成装置からの画像を観察者の瞳に導く光学装置、を備えており、光学装置は、画像形成装置からの画像を偏向させる第1偏向手段、及び、第1偏向手段によって偏向された画像を観察者の瞳に向かって偏向させる第2偏向手段を備えており、光学装置を挟んで画像形成装置と対向して配置された光反射部材を更に備えており、画像形成装置から出射された光は、光学装置を通過し、光反射部材によって反射され、光学装置に再び入射し、第1偏向手段によって偏向される表示装置。(・・・省略・・・)[請求項4] 光学装置は、(B-1)入射された光を内部を全反射により伝播させた後、出射する導光板、(B-2)第1偏向手段、及び、(B-3)導光板の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させ、導光板から出射させる第2偏向手段、を備えており、光反射部材は、導光板を挟んで画像形成装置と対向して配置されており、画像形成装置から出射された光は、導光板を通過し、光反射部材によって反射され、導光板に再び入射し、導光板の内部で全反射されるように第1偏向手段によって偏向される請求項1に表示装置。(・・・省略・・・)[請求項9] 第1偏向手段が配された側の導光板の端部には、消光処理が施されている請求項4に記載の表示装置。」
(b) [0018]
「[0018] 更には、本開示の表示装置の以上に説明した各種の好ましい構成において、第1偏向手段が配された側の導光板の端部には、消光処理が施されていることが好ましく、これによって、迷光が生じた場合であっても、迷光による悪影響の発生を、出来る限り、防止することができる。消光処理として、光を吸収する光吸収層を形成する方法(具体的には、例えば、周知の光吸収材料から成る光吸収層を、第1偏向手段が配された側の導光板の端部外面に形成する方法)、第1偏向手段が配された側の導光板の端部外面を粗面化するといった方法を挙げることができる。光吸収層は、例えば、カーボン、金属薄膜、有機樹脂、ガラスペースト等の光吸収材料から構成することができ、具体的には、感光性ポリイミド樹脂、酸化クロムや、酸化クロム/、クロム積層膜を例示することができる。」
(c) [0054]-[0064]
「[0054] 実施例1は、本開示の第1の態様に係る表示装置に関し、より具体的には、第1の構成の表示装置に関する。実施例1の画像表示装置の概念図を図1に示し、実施例1の表示装置(具体的には、頭部装着型ディスプレイ,HMD)を上方から眺めた模式図を図2に示し、側方から眺めた模式図を図3に示す。(・・・省略・・・)[0056] そして、実施例1あるいは後述する実施例2~実施例8における画像表示装置100,200,300,500は、(A)画像形成装置111,511、及び、続きを表示(全18行)(B)画像形成装置111,511からの画像を観察者の瞳21に導く光学装置(導光手段)120,220,320、を備えている。光学装置120,220,320は、シースルー型(半透過型)である。更には、画像表示装置100,200,300,500は、(C)画像形成装置111,511から出射された光をコリメートする光学系112,525、を備えており、光学系112,525を通過した光束が光学装置120,220,320に入射される。(・・・省略・・・)[0058] ここで、実施例1の表示装置において、光学装置120は、より具体的には、(B-1)入射された光を内部を全反射により伝播させた後、出射する導光板121、(B-2)第1偏向手段130、及び、(B-3)導光板121の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させ、導光板121から出射させる第2偏向手段140、を備えている。そして、光反射部材151は、導光板121を挟んで画像形成装置111と対向して配置されており、画像形成装置111から出射された光は、導光板121を通過し、光反射部材151によって反射され、導光板121に再び入射し、導光板121の内部で全反射されるように第1偏向手段130によって偏向される。(・・・省略・・・)[0060] 画像形成装置111は、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する第1の構成の画像形成装置から成り、より具体的には、有機EL素子が2次元マトリクス状に配列されて成る有機エレクトロルミネッセンス表示装置から成る。そして、導光板121と非平行に配置されている。更には、第1偏向手段130が配された側の導光板121の端部121Aには、消光処理が施されている。具体的には、周知の光吸収材料から成る光吸収層126が、第1偏向手段130が配された側の導光板121の端部121A(図示した例では、端面)の外面に形成されている。尚、光吸収層126を、端面から、後述する導光板121の第1面122及び第2面123の一部に延在するように形成してもよい。(・・・省略・・・)[0064] ここで、実施例1あるいは後述する実施例2、実施例4~実施例8において、光学ガラスやプラスチック材料から成る導光板121,221は、導光板121,221の内部全反射による光伝播方向(X軸)と平行に延びる2つの平行面(第1面122,222及び第2面123,223)を有している。第1面122,222と第2面123,223とは対向している。そして、光入射面に相当する第1面122,222あるいは第2面123,223から平行光が入射され、内部を全反射により伝播した後、光出射面に相当する第1面122,222から出射される。」
(d) [図1]
「[図1][図:0001408500000001.jpg]」
b 引用文献1から読み取れる事項の認定
上記a(c)の「更には、第1偏向手段130が配された側の導光板121の端部121Aには、消光処理が施されている。具体的には、周知の光吸収材料から成る光吸収層126が、第1偏向手段130が配された側の導光板121の端部121A(図示した例では、端面)の外面に形成されている。尚、光吸収層126を、端面から、後述する導光板121の第1面122及び第2面123の一部に延在するように形成してもよい。」([0060])及び「導光板121,221は、導光板121,221の内部全反射による光伝播方向(X軸)と平行に延びる2つの平行面(第1面122,222及び第2面123,223)を有している」([0064])との記載を踏まえて、上記a(d)の図1を見ると、導光板121の第1面122と第2面123の間に端面である端部121Aが存在することが見てとれる。
c 引用発明の認定
上記aで摘記した引用文献1の記載事項及び上記bで認定した事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、参考までに、認定の根拠とした箇所である引用文献1の段落等を括弧内に記載する。)。
<引用発明>
「 (イ)観察者の頭部に装着されるフレーム、及び、(ロ)フレームに取り付けられた画像表示装置、を備えており、画像表示装置は、続きを表示(全23行)(A)画像形成装置、及び、(B)画像形成装置からの画像を観察者の瞳に導く光学装置、を備えており、前記光学装置は、画像形成装置からの画像を偏向させる第1偏向手段、及び、第1偏向手段によって偏向された画像を観察者の瞳に向かって偏向させる第2偏向手段を備えており、前記光学装置を挟んで画像形成装置と対向して配置された光反射部材を更に備えており、前記画像形成装置から出射された光は、前記光学装置を通過し、光反射部材によって反射され、前記光学装置に再び入射し、前記第1偏向手段によって偏向され、([請求項1])前記光学装置は、(B-1)入射された光を内部で全反射により伝播させた後、出射する導光板、(B-2)第1偏向手段、及び、(B-3)導光板の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させ、導光板から出射させる第2偏向手段、を備えており、前記光反射部材は、導光板を挟んで画像形成装置と対向して配置されており、前記画像形成装置から出射された光は、導光板を通過し、光反射部材によって反射され、導光板に再び入射し、導光板の内部で全反射されるように第1偏向手段によって偏向され、([請求項4])前記第1偏向手段が配された側の導光板の端部には、消光処理が施されており、([請求項9])、前記消光処理が施されていることによって、迷光が生じた場合であっても、迷光による悪影響の発生を、出来る限り、防止することができ、消光処理として、周知の光吸収材料から成る光吸収層を、第1偏向手段が配された側の導光板の端部外面に形成する方法が挙げることができ、光吸収層は、カーボン等の光吸収材料から構成することができ、([0018])前記導光板の第1面と第2面の間に端面である端部が存在し、(上記b)前記光吸収層が導光板の端面である前記端部の外面に形成され、([0060])前記画像形成装置から出射された光をコリメートする光学系を備えており、光学系を通過した光束が光学装置に入射される、([0056])、表示装置。」
(イ) 引用文献3の記載事項及び引用文献3に記載された技術的事項の認定
a 引用文献3の記載事項
同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった米国特許出願公開第2017/0066932号明細書(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。(なお、日本語訳は当審が作成した。)
「BACKGROUND OF THE INVENTION[0002] The performance of optical devices, regardless of their complexity, is affected by stray light. The effect of stray light in optical systems may vary from low performance (reduced contrast on the image plane, obscure faint signals or false ones, false artifacts across the image plane, and magnitude errors in radiometric measurements) to physical damage (damaging fragile optical components and burning out detectors) [1].[0003] Stray light can be reduced to a tolerable level by proper design of the mechanical system or by using functional black optical coatings in elements of the optical system.[0004] A functional optical absorbing coating can be made of an ideal black material which is capable of absorbing light, at all angles and over all wavelengths. Common methods for producing such coatings are metal anodizing with an inorganic black coloring process [2-5] and electroless deposition of nickel oxide coating [6-9]. Both methods require several process steps, including substrate surface pre-treatment.[0005] Carbon nanotubes (CNTs) have unique electrical and mechanical properties, excellent light absorbing properties, and are therefore, ideal candidates for super black coating, especially when grown as vertically aligned forests.[0006] A CNT forest (aligned dense nanotubes placed perpendicularly to the surface) has been used as optical coating [10]. Although this type of coating shows good light absorption and some anti-reflective performance, its production requires unique equipment and specific conditions, since the CNT forest,which is usually grown by chemical vapor deposition (CVD) under high temperature and pressure. This process has several drawbacks, such as the coating substrate type and area, and poor adhesion to the substrate.」
(日本語訳: 背景技術
[0002] 光学デバイスの性能は、その複雑さに関わらず、迷光による影響を受ける。光学システム内での迷光の影響は、低性能(画像平面上のコントラストの低下、不明瞭な弱い信号または偽の信号、画像平面にわたる偽のアーチファクト、及び放射測定における大きさの誤差)から、物理的ダメージ(繊細な光学的構成要素のダメージおよび検出器の焼損)まで、様々である場合がある[1]。
[0003] 迷光は、メカニカルシステムの適切な設計によって、又は光学システムの要素内の機能的な黒い光学コーティングを使用することによって、許容可能なレベルまで低減させることができる。
[0004] 機能的な光吸収コーティングは、全ての角度で、かつ全ての波長にわたって光を吸収することが可能である理想的な黒色材料で形成することができる。そのようなコーティングを生成するための一般的な方法は、無機物のブラックカラーリングプロセスでの金属の陽極酸化[2~5]、及び、酸化ニッケルコーティングの無電解メッキ[6~9]である。両方の方法に、基板表面の前処理を含む、いくつかのプロセスステップが必要である。
[0005] カーボンナノチューブ(CNT)は、ユニークな電気的特性および機械的特性、優れた光吸収特性を有しており、したがって、特に垂直に並んだ森として成長する場合、高性能の黒いコーティングの理想的な候補である。
[0006] CNTの森(表面に対して垂直に配置された、整列した密なナノチューブ)が、光学コーティングとして使用されている[10]。このタイプのコーティングが、良好な光吸収性およびいくらかの反射防止性能を示すが、その製造には、ユニークな設備と特別な条件とが必要であり、この理由は、CNTの森が、高い温度および圧力の下での化学気相蒸着(CVD)によって通常は成長するためである。このプロセスには、コーティング基板のタイプおよび面積、ならびに、基板への接着性の弱さなど、いくつかの欠点がある。)
b 引用文献3に記載された技術的事項の認定
上記aで指摘した引用文献3の記載事項から、引用文献3には、次の技術的事項(以下「引用文献3に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献3に記載された技術的事項>
「光学デバイスの性能は、その複雑さに関わらず、迷光による影響を受けるが、([0002])前記迷光は、光学システムの要素内の機能的な黒い光学コーティングを使用することによって、許容可能なレベルまで低減させることができ、([0003])カーボンナノチューブ(CNT)は、優れた光吸収特性を有しており、したがって、特に垂直に並んだ森として成長する場合、高性能の黒いコーティングの理想的な候補であり、([0005])CNTの森(表面に対して垂直に配置された、整列した密なナノチューブ)が、光学コーティングとして使用され、このタイプのコーティングは、良好な光吸収性を示し、CNTの森は、高い温度および圧力の下での化学気相蒸着(CVD)によって通常は成長すること。([0006])」
(ウ) 引用文献4の記載事項及び引用文献4に記載された技術的事項の認定
a 引用文献4の記載事項
同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった米国特許出願公開第2016/0116739号明細書(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。(なお翻訳は、引用文献4のファミリー文献である特表2017-531840号公報を参考にして、当審が作成した。
「[0156] FIG. 2 illustrates an example of wearable display system 80. The display system 80 includes a display 62, and various mechanical and electronic modules and systems to support the functioning of that display 62. The display 62 constitutes eyewear and may be coupled to a frame 64, which is wearable by a display system user or viewer 60 and which is configured to position the display 62 in front of the eyes of the user 60. (・・・省略・・・)」
(日本語訳:[0156] 図2はウェアラブル表示システム80の例を示す図である。表示システム80はディスプレイ62と、このディスプレイ62の機能をサポートする様々な機械的及び電子的なモジュール及びシステムを含む。ディスプレイ62は眼鏡を構成し、フレーム64に接続され、表示システムのユーザ又は観者60に装着可能となり、ディスプレイ62をユーザ60の目の前に配置するよう構成される。(・・・省略・・・))
「[0164] FIG. 6 illustrates an example of a waveguide stack for outputting image information to a user. A display system 1000 includes a stack of waveguides, or stacked waveguide assembly, 178 that may be utilized to provide three-dimensional perception to the eye/brain using a plurality of waveguides 182, 184, 186, 188, 190. In some embodiments, the display system 1000 is the system 80 of FIG. 2, with FIG. 6 schematically showing some parts of that system 80 in greater detail. For example, the waveguide assembly 178 may be part of the display 62 of FIG. 2.」
(日本語訳:[0164] 図6は、ユーザに画像情報を出力するための導波路スタックの例を示す図である。表示システム1000は、複数の導波路182、184、186、188、190を用いて目/脳に3次元知覚を提供するのに用いられる導波路のスタック又は積層された導波路アセンブリ178を含む。ある実施形態では、表示システム1000は図2のシステム80であり、図6はシステム80の一部を図式的に詳細に表したものである。例えば、導波路群178は図2のディスプレイ62に対応する部分であってよい。)
「[0165] With continued reference to FIG. 6, the waveguide assembly 178 may also include a plurality of features 198, 196, 194, 192 between the waveguides. In some embodiments, the features 198, 196, 194, 192 may be lens. The waveguides 182, 184, 186, 188, 190 and/or the plurality of lenses 198, 196, 194, 192 may be configured to send image information to the eye with various levels of wavefront curvature or light ray divergence. Each waveguide level may be associated with a particular depth plane and may be configured to output image information corresponding to that depth plane. Image injection devices 200, 202, 204, 206, 208 may function as a source of light for the waveguides and may be utilized to inject image information into the waveguides 182, 184, 186, 188, 190, each of which may be configured, as described herein, to distribute incoming light across each respective waveguide, for output toward the eye 4. (・・・省略・・・)」
(日本語訳:[0165] 引き続き図6を参照して、導波路アセンブリ178は、導波路の間に複数の特徴198、196、194、192を含んでもよい。ある実施形態では、特徴198、196、194、192はレンズであってよい。導波路182、184、186、188、190及び/又は複数のレンズ198、196、194、192はさまざまなレベルの波面曲率又は光線傾斜角度で画像情報を目に届けるよう構成されてよい。各々の導波路のレベルは深度面に関連づけられ、その深度面に対応する画像情報を出力するよう構成されてよい。画像注入器200、202、204、206、208は導波路の光源として機能し、ここで記載するように、それぞれの導波路に入ってきた光を分配して目4に出力するよう構成された、導波路182、184、186、187、190に画像情報を注入するのに用いられてよい。(・・・省略・・・))
「[0176] FIG. 8 schematically illustrates an example of a stacked waveguide assembly in which each depth plane includes images formed using multiple different component colors. In some embodiments, a full color image may be formed at each depth plane by overlaying images in each of the component colors, e.g., three or more component colors. The illustrated embodiment shows depth planes 14a-14f, although more or fewer depths are also contemplated. Each depth plane may have three component color images associated with it: a first image of a first color, G; a second image of a second color, R; and a third image of a third color, B. Different depth planes are indicated in the figure by different numbers for diopters following the letters G, R, and B. Just as examples, the numbers following each of these letters indicate diopters (1/m), or distance of the depth plane from a viewer, and each box in the figures represents an individual component color image.」
(日本語訳:[0176] 図8は、導波路集合体の各々の深度面で複数の異なる色成分を用いて形成される画像の模式図である。ある実施形態では、それぞれの色成分、例えば3以上の色成分の画像を重ね合わせることで、各々の深度面にてフルカラー画像を形成してよい。実施形態では深度面14a-14fを図示しているが、深度の増減は考えられる。各々の深度面は関連づけられた3つの色成分画像を有してよい。すなわち、第1の色Gの第1の画像、第2の色Rの画像、第3の色Bの画像である。異なる深度面は、G、R、Bの文字の後ろの異なる視度の数値で示される。例えば、各々の文字の後ろの数字は視度(1/m)、又は深度面の観者からの距離を示し、図中の各々の箱は個別の色成分を示す。)
「[0177] In some embodiments, light of each component color may be outputted by a single dedicated waveguide and, consequently, each depth plane may have multiple waveguides associated with it. In such embodiments, each box in the figures including the letters G, R, or B may be understood to represent an individual waveguide, and three waveguides may be provided per depth plane where three component color images are provided per depth plane. While the waveguides associated with each depth plane are shown adjacent to one another in this schematic drawing for ease of description, it will be appreciated that, in a physical device, the waveguides may all be arranged in a stack with one waveguide per level. In some other embodiments, multiple component colors may be outputted by the same waveguide, such that, e.g., only a single waveguide may be provided per depth plane.」
(日本語訳:[0177] ある実施形態では、各々の色成分の光がひとつの専用の導波路から出力され、結果として、各々の深度面には複数の導波路が関連づけられる。このような実施形態では、文字G、R、Bを含む図中の各々の箱は別個の導波路を示し、深度面あたり3つの色成分画像が供給されるところ、3つの導波路が1つの深度面に対応するものと考えることができる。簡潔な説明のため模式図では各々の深度面に関連づけられた導波路が互いに隣接するよう記載されているが、実際のデバイスでは、導波路はレベルごとに1つの導波路を積層して構成し得ることが理解されよう。他の実施形態では、複数の色成分が同一の導波路から出力され、例えば深度面ごとに1つの導波路が用いられる。)
「[0211] With reference now to FIG. 11A, an example is illustrated of a cross-sectional side view of a plurality or set 1200 of stacked waveguides that are each configured to output light of a different wavelength or range of wavelengths. The set 1200 of stacked waveguides includes waveguides 1210, 1220, and 1230. Each waveguide includes an associated incoupling optical element, with, e.g., incoupling optical element 1212 disposed on a major surface (e.g., a bottom major surface) of waveguide 1210, incoupling optical element 1224 disposed on a major surface (e.g., a bottom major surface) of waveguide 1220, and incoupling optical element 1232 disposed on a major surface (e.g., a bottom major surface) of waveguide 1230. (・・・省略・・・)」
(日本語訳:[0211] 次に図11Aを参照すると、それぞれ異なる波長もしくは波長域の光を出力するよう構成された、複数の積層導波路又は積層導波路セット1200の側断面図の例が示されている。積層導波路セット1200は、導波路1210、1220及び1230を含む。それぞれの導波路は、関連づけられた入力結合光学素子、例えば導波路1210の主面(例えば底主面)に配置された入力結合光学素子1212、導波路1220の主面(例えば底主面)に配置された入力結合光学素子1222及び導波路1230の主面(例えば底主面)に配置された入力結合光学素子1232を含む。(・・・省略・・・))
「[0213] The waveguides 1210, 1220, 1230 may be spaced apart and separated by gas and/or solid layers of material. For example, as illustrated, layers 1216a and 1218a may separate waveguides 1210 and 1220; and layers 1216b and 1218b may separate waveguides 1220 and 1230. In some embodiments, the layers 1216a and 1216b are formed of materials that are indexed matched with the materials forming the immediately adjacent one of waveguides 1210, 1220, 1230.(・・・省略・・・)」
(日本語訳:[0213] 導波路1210、1220、1230は、離散配置され、気体及び/又は固体の物質層で隔てられていてよい。例えば、図示するように、層1216a及び1218aが導波路1210と1220とを隔て、層1216b及び1218bが導波路1220と1230とを隔ててよい。(・・・省略・・・))
「FIG.2[図:0001408500000002.jpg]」
「FIG.6[図:0001408500000003.jpg]」
「FIG.8[図:0001408500000004.jpg]」
「FIG.11A[図:0001408500000005.jpg]」
b 引用文献4に記載された技術的事項の認定
上記aで摘記した引用文献4の記載事項から、引用文献4には、次の技術的事項(以下「引用文献4に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献4に記載された技術的事項>
「ディスプレイと、前記ディスプレイの機能をサポートする様々な機械的及び電子的なモジュール及びシステムを含むウェアラブル表示システムであって、([0156])前記ディスプレイは眼鏡を構成し、フレームに接続され、表示システムのユーザ又は観者に装着可能となり、ディスプレイを前記ユーザの目の前に配置するよう構成され、([0156])前記ウェアラブル表示システムは、複数の導波路を用いて目/脳に3次元知覚を提供するのに用いられる導波路のスタック又は積層された導波路アセンブリを含み、([0164])前記複数の導波路はさまざまなレベルの波面曲率又は光線傾斜角度で画像情報を目に届けるよう構成され、各々の導波路のレベルは深度面に関連づけられ、その深度面に対応する画像情報を出力するよう構成されており、([0165])導波路集合体の各々の深度面で複数の異なる色成分を用いて、それぞれの色成分、例えば3以上の色成分の画像を重ね合わせることで、各々の深度面にてフルカラー画像を形成してよく、各々の深度面は関連づけられた3つの色成分画像を有し、第1の色Gの第1の画像、第2の色Rの画像、第3の色Bの画像であり、([0176])各々の色成分の光がひとつの専用の導波路から出力され、結果として、各々の深度面には複数の導波路が関連づけられ、([0177])前記複数の導波路は離散配置され、固体の物質層で隔てられること。([0213])」
ウ 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明とを対比する。
a 本件補正発明の「複数の光学導波管を備える導波管スタックを備えるディスプレイデバイスであって、前記複数の光学導波管は、前記光学導波管間のシーラントによって継合され、前記複数の光学導波管のうちの一部の光学導波管は、前記複数の光学導波管のうちの他の光学導波管とは異なるレベルの波面発散および異なる原色を伴う光を出力するように構成され[る]」「ディスプレイデバイス」との発明特定事項について
引用発明の「入射された光を内部で全反射により伝播させた後、出射する導光板」は、本件補正発明の「光学導波管」に相当するから、本件補正発明の「複数の光学導波管を備える導波管スタックを備えるディスプレイデバイス」と、引用発明の「(B-1)入射された光を内部を全反射により伝播させた後、出射する導光板」を備える「光学装置」を備える「画像表示装置」を備える「表示装置」は、「光学導波管を備えるディスプレイデバイス」である点で共通する。
b 本件補正発明の「各光学導波管は、第1の縁表面であって、前記第1の縁表面は、前記光学導波管の第1の主要表面と第2の主要表面との間に延在する、第1の縁表面」「を備える」との発明特定事項について
引用発明の「導光板」の「端面である端部」は、「前記導光板の第1面と第2面の間に」「存在し[ている]」から、本件補正発明の「光学導波管」が「備える」、「前記光学導波管の第1の主要表面と第2の主要表面との間に延在する」「第1の縁表面」に相当する。
したがって、本件補正発明の「各光学導波管は、第1の縁表面であって、前記第1の縁表面は、前記光学導波管の第1の主要表面と第2の主要表面との間に延在する、第1の縁表面」「を備える」ことと、引用発明の「前記導光板の第1面と第2面の間に端面である端部が存在し[ている]」ことは、「光学導波管は、第1の縁表面であって、前記第1の縁表面は、前記光学導波管の第1の主要表面と第2の主要表面との間に延在する、第1の縁表面」「を備え[る]」点で共通する。
c 本件補正発明の、各光学導波管は、「少なくとも前記第1の縁表面の直ぐ上の吸光体であって、前記吸光体は、炭素の同素体およびブラックシリコンのうちの少なくとも1つを含む蒸着膜を備え、前記蒸着膜は、前記第1の縁表面の直ぐ上への堆積のための空中浮遊種を形成するための原材料の蒸発によって形成され、前記吸光体は、前記第1の縁表面と直接接触する垂直に整合されたナノ管アレイを含むナノ構造表面を備え、前記ナノ管アレイのナノ管は、前記ナノ管が上に配置される前記第1の縁表面に対して法線方向に延在する、吸光体」「を備え」るとの発明特定事項について
(a) 引用発明の「光吸収層」は、「導光板の端面である前記端部の外面に形成され[ている]」ものであるから、本件補正発明の「少なくとも前記第1の縁表面の直ぐ上の吸光体」に相当する。
(b) 引用発明の「光吸収層」を構成する「光吸収材料」としての「カ―ボン」は、本件補正発明の「炭素の同素体」に相当するとともに、「光吸収層」は「膜」であるといえるから、本件補正発明と引用発明は、「前記吸光体は、炭素の同素体」「を含む」「膜を備え[る]」点で共通する。
(c) 上記(a)~(b)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「光学導波管は、」「少なくとも前記第1の縁表面の直ぐ上の吸光体であって、前記吸光体は炭素の同素体」「を含む」「膜を備え[る]」「吸光体」「を備え[る]」点で共通する。
d 本件補正発明の「画像コンテンツを有する光を前記導波管の中に投入するように構成される画像投入デバイスとを備え」るとの発明特定事項について
(a) 引用発明の「画像形成装置から出射された光」は、画像コンテンツを有することは明らかであるから、本件補正発明の「画像コンテンツを有する光」に相当する。
(b) 引用発明の「前記画像形成装置から出射された光をコリメートする光学系」であって、「光学系を通過した光束が光学装置に入射される」「光学系」は、本件補正発明の「光を前記導波管の中に投入するように構成される画像投入デバイス」に相当する。
(c) したがって、本件補正発明と引用発明は、「画像コンテンツを有する光を前記導波管の中に投入するように構成される画像投入デバイスとを備え[る]」点で一致する。
e 本件補正発明の「前記蒸着膜は、吸光するように構成される前記ナノ構造表面を備える」との発明特定事項について
引用発明の「光吸収層」は、吸光されるように構成される表面を備えるものであるといえる。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記膜は、吸光するように構成される表面を備える」点で共通する。
(イ) 一致点及び相違点の認定
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
光学導波管を備えるディスプレイデバイスであって、前記光学導波管は、
第1の縁表面であって、前記第1の縁表面は、前記光学導波管の第1の主要表面と第2の主要表面との間に延在する、第1の縁表面と、
少なくとも前記第1の縁表面の直ぐ上の吸光体であって、前記吸光体は、炭素の同素体を含む膜を備える、吸光体と、
画像コンテンツを有する光を前記導波管の中に投入するように構成される画像投入デバイスと
を備え、
前記膜は、吸光するように構成される表面を備える、ディスプレイデバイス。」
【相違点1】
「光学導波管」が、本件補正発明は、「複数の」光学導波管を備える「導波管スタック」であって、「前記複数の光学導波管は、前記光学導波管間のシーラントによって継合され、前記複数の光学導波管のうちの一部の光学導波管は、前記複数の光学導波管のうちの他の光学導波管とは異なるレベルの波面発散および異なる原色を伴う光を出力するように構成され[る]」のに対して、引用発明は、「導光板」を複数備えてこのように構成されない点。
【相違点2】
「吸光体」が、本件補正発明は、「蒸着膜を備え、前記蒸着膜は、前記第1の縁表面の直ぐ上への堆積のための空中浮遊種を形成するための原材料の蒸発によって形成され、前記吸光体は、前記第1の縁表面と直接接触する垂直に整合されたナノ管アレイを含むナノ構造表面を備え、前記ナノ管アレイのナノ管は、前記ナノ管が上に配置される前記第1の縁表面に対して法線方向に延在する」ものであって、「前記蒸着膜は、」「前記ナノ構造表面を備える」のに対して、引用発明は、「光吸収層は、カーボン等の光吸収材料から構成することができ[る]」と特定されるにとどまる点。
エ 判断
以下、相違点について検討する。
(ア) 相違点1について
a 引用発明に引用文献4に記載された技術的事項を適用することについて
引用発明と引用文献4に記載された技術的事項は、いずれも導光板を用いた頭部装着型の表示装置である点で共通するものであり、引用発明においても、引用文献4に記載された技術的事項のように、目/脳に3次元知覚を提供することや複数の色成分を用いて画像を形成することが好ましいことは当業者には明らかである。
したがって、引用発明において、目/脳に3次元知覚を提供し、複数の色成分を用いて画像を形成するために、引用文献4に記載された技術的事項を適用して、導波路のスタック又は積層された導波路アセンブリを含み、導波路集合体の各々の深度面で複数の異なる色成分を用いて、それぞれの色成分、例えば3以上の色成分の画像を重ね合わせることで、各々の深度面にてフルカラー画像を形成する構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
この結果得られる「導波路のスタック又は積層された導波路アセンブリ」は、相違点1に係る本件補正発明でいう、「複数の」光学導波管を備える「導波管スタック」に相当することとなる。
b 前記複数の光学導波管は、前記光学導波管間のシーラントによって継合される点について
前記aで検討したように引用発明に引用文献4に記載された技術的事項を適用して「導波路のスタック又は積層された導波路アセンブリ」を構成する際に、「前記複数の導波路は離散配置され、固体の物質層で隔てられる」構成を併せて適用することは当業者が容易になし得たことである。
その際には、光学部材同士を接続する際に隙間なく接続することは当業者であれば当然考慮する事項であることを勘案すれば、離散配置される複数の導波路を隔てる固体の物質層が実質的にシーラントとして機能するものとなることはごく自然な設計事項に過ぎないから、相違点1に係る本件補正発明の「前記複数の光学導波管は、前記光学導波管間のシーラントによって継合され[る]」ものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
c 前記複数の光学導波管のうちの他の光学導波管とは異なるレベルの波面発散および異なる原色を伴う光を出力するように構成される点について
引用文献4に記載された技術的事項は、「前記複数の導波路はさまざまなレベルの波面曲率または光線傾斜角度で画像情報を目に届けるよう構成され[る]」ものであって、「各々の色成分の光がひとつの専用の導波路から出力され、結果として、各々の深度面には複数の導波路が関連づけられ[る]」ものであるから、引用発明に引用文献4に記載された技術的事項を適用したものは、相違点1に係る本件補正発明の「前記複数の光学導波管のうちの他の光学導波管とは異なるレベルの波面発散および異なる原色を伴う光を出力するように構成される」との構成を満たすこととなる。
d 以上の検討によれば、引用発明に引用文献4に記載された技術的事項を適用して、「導光板」を複数備えて、複数の「導光板」は、「導光板」間のシーラントによって継合されるもとなすとともに、複数の「導光板」のうちの一部の「導光板」は、複数の「導光板」のうちの他の「導光板」とは異なるレベルの波面発散および異なる原色を伴う光を出力するように構成されるものとなして、上記相違点1に係る本件補正発明の構成となすことは当業者が容易になし得たことである。
(イ) 相違点2について
引用発明における「カーボン等の光吸収材料から構成する」「光吸収層」と、引用文献3に記載された技術的事項における「CNTの森(表面に対して垂直に配置された、整列した密なナノチューブ)」からなる「光学コーティング」は、いずれも、炭素同位体からなる光吸収層により迷光による悪影響の発生を防止する点で共通の作用を有するものである。
したがって、引用発明において、迷光による悪影響の発生をより防止するために、引用文献3に記載された技術的事項を適用して、優れた光吸収機能を有する高性能の黒いコーティングの理想的な候補である「CNTの森(表面に対して垂直に配置された、整列した密なナノチューブ)」からなる「光学コーティング」を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 この結果得られる「光学コーティング」は、相違点2に係る本件補正発明でいう、「前記吸光体は、前記第1の縁表面と直接接触する垂直に整合されたナノ管アレイを含むナノ構造表面を備え、前記ナノ管アレイのナノ管は、前記ナノ管が上に配置される前記第1の縁表面に対して法線方向に延在する」ものとなる。
また、引用文献3に記載された技術的事項には、CNTの森は化学気相蒸着(CVD)によって成長することも開示されており、相違点2に係る本件補正発明の「吸光体」が「蒸着膜を備え、前記蒸着膜は、前記第1の縁表面の直ぐ上への堆積のための空中浮遊種を形成するための原材料の蒸発によって形成され[る]」との構成及び「前記蒸着膜は、」「前記ナノ構造表面を備える」との構成も満たすこととなる。
よって、引用発明に引用文献3に記載された技術的事項を適用して、上記相違点2に係る本件補正発明の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ) 総合検討
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献3、4に記載された技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(エ) 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、概略、引用文献2は、カーボンナノチューブが縁表面に対して法線方向に延在するものであることについて言及しておらず、また、引用文献3は、吸光材に加えてバインダ材料を備える膜の使用の開示に限定されるものであって、第1の縁表面と「直接接触する」を開示していない旨主張する。
しかしながら、この点は上記(イ)で検討したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。
(オ) 独立特許要件についてのまとめ
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献3、4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(3) 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年10月21日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年4月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項(前記第2[理由]1(2))により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、この本願発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に記載された技術的事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、3、4及びその記載事項並びに引用発明等の認定は、前記第2の[理由]2(2)イに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「第1の表面」を「第1の縁表面であって、前記第1の縁表面は、前記光学導波管の第1の主要表面と第2の主要表面との間に延在する、第1の縁表面」と限定する事項、「蒸着膜」について、「前記第1の表面上への堆積」とあったものを「前記第1の縁表面の直ぐ上への堆積」と限定する事項、及び、「吸光体」について、「前記第1の縁表面と直接接触する垂直に整合されたナノ管アレイを含むナノ構造表面を備え、前記ナノ管アレイのナノ管は、前記ナノ管が上に配置される前記第1の縁表面に対して法線方向に延在する」と限定する事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおり、引用発明及び引用文献3、4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献3、4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-016853