特許拒絶査定不服審判
2024-001238
光ファイバ
- 審判番号
- 2024-001238
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-571189外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年01月24日
- 審決日
- 2025年06月02日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】古河電気工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-571189「光ファイバ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月13日国際公開、WO2020/162406〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)2月3日(優先権主張 平成31年2月5日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 5年 6月26日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 8月25日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年10月 2日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 6年 1月24日 :審判請求書、手続補正書(以下、この手続
補正書による補正を「本件補正」とい
う。)の提出
第2 令和6年1月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年1月24日に提出された手続補正書による補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項11の記載
本件補正後の請求項11の記載は、次のとおりである(下線は、補正箇所である。)。
「ゲルマニウムが添加されたガラスからなるコア部と、
前記コア部の外周に位置し、前記コア部の屈折率よりも低い屈折率を有するガラスからなるクラッド部と、
前記クラッド部の外周を覆うコーティング部と、
を備え、
トレンチ型の屈折率プロファイルを有し、
前記コア部のセンタコアの比屈折率差の平均値が0.35%~0.5%であり、
前記センタコアの直径が8μm以上9μm以下であり、
前記センタコアの外周を囲んでおり、屈折率が前記センタコアの屈折率よりも小さく内径が2aで外径が2bの中間層と、
前記中間層の外周を囲んでおり、屈折率が前記クラッド部の屈折率よりも小さく内径が2bで外径が2cのトレンチ層と、
を有し、
b/aが2.5以上5以下であり、
c/aが2.5以上6以下であり、
前記コーティング部を含むファイバ径が220μm以下であり、
実効カットオフ波長が1260nmよりも長く1530nmよりも短くかつ1550nmの光のモードフィールド径が9μm以上である
ことを特徴とする光ファイバ。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び12の記載
前記(1)で記載した本件補正後の請求項11に対応する本件補正前の請求項は、請求項1の記載を引用する請求項12であるところ、当該請求項1及び請求項12の記載は、次のとおりである。
[請求項1]
「ゲルマニウムが添加されたガラスからなるコア部と、
前記コア部の外周に位置し、前記コア部の屈折率よりも低い屈折率を有するガラスからなるクラッド部と、
前記クラッド部の外周を覆うコーティング部と、
を備え、
前記コア部のセンタコアの比屈折率差の平均値が0.35%~0.5%であり、
前記コーティング部を含むファイバ径が220μm以下であり、
実効カットオフ波長が1260nmよりも長く1530nmよりも短くかつ1550nmの光のモードフィールド径が9μm以上である
ことを特徴とする光ファイバ。」
[請求項12]
「トレンチ型の屈折率プロファイルを有する
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一つに記載の光ファイバ。」
2 補正の適否
本件補正のうち、本件補正後の請求項11の記載に係る補正は、本件補正前の請求項12の記載について、引用する請求項の記載を請求項1~9の記載から請求項1の記載のみに限定しつつ独立項化した上で、当該請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「コア部」について、「前記センタコアの直径が8μm以上9μm以下であり、前記センタコアの外周を囲んでおり、屈折率が前記センタコアの屈折率よりも小さく内径が2aで外径が2bの中間層と、前記中間層の外周を囲んでおり、屈折率が前記クラッド部の屈折率よりも小さく内径が2bで外径が2cのトレンチ層と、を有し、b/aが2.5以上5以下であり、c/aが2.5以上6以下であ」るとの限定を付加することからなるものであって、本件補正前の請求項12に記載された発明と本件補正後の請求項11に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項11に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)の記載のとおりに特定されるものである。
(2)引用文献の記載及び引用発明
ア 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である米国特許出願公開第2018-0120503号明細書(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。以下、引用文献2の日本語ファミリー文献である特表2019-537055号公報(以下「対応日本語公報」という。)に基づいて当合議体が作成した翻訳を、対応日本語公報の段落番号等とともに記載している(下線は、当合議体が付した。以下同じ。)。
「【請求項1】
3.0≦r1≦7.0マイクロメートルの外半径r1、及び0.32%≦Δ1max≦0.5%の相対屈折率Δ1maxを備える、コア領域;
前記コア領域を取り囲む屈折率抑制クラッド領域であって、外半径r3と、-0.2%未満の相対屈折率Δ3と、45%Δ-マイクロメートル2≦│V3│≦200%Δ-マイクロメートル2となるようなトレンチ体積V3とを備える、屈折率抑制クラッド領域;
前記屈折率抑制クラッド領域を取り囲む第1の外側クラッド領域であって、相対屈折率Δ4及び外半径r4を備える、第1の外側クラッド領域;並びに
相対屈折率Δ5を備える第2の外側クラッド層であって、前記第2の外側クラッド領域は、5~20重量%のチタニアでドープされたシリカ系ガラスを含み、3マイクロメートル≦TM≦30マイクロメートルとなるような厚さTMを有し、前記第2の外側層は、65マイクロメートル以下の外半径r5を有する、第2の外側クラッド層
を備える、光ファイバであって、
前記光ファイバは、
8.3マイクロメートル≦MFD1550≦10.5マイクロメートルの、1550nmでのモードフィールド直径(MFD1550);
半径2.5mmのマンドレルの周囲で1周だけ曲げた場合に1550nm未満のファイバカットオフ波長;
最低65マイクロメートル2、かつ85マイクロメートル2未満の、1550nmでの有効面積;
及び1.0dB/turn以下の、半径2.5mmのマンドレルを用いたマンドレル巻き付け試験で決定される1550nmでの曲げ損失;
を備える、光ファイバ。」(対応日本語公報の【請求項1】)
「【0021】 いくつかの実施形態では、1550nmでのモードフィールド直径(MFD1550)は、9マイクロメートル≦MFD1550≦10マイクロメートルである。いくつかの実施形態では、1550nmでのモードフィールド直径(MFD1550)は、9.5マイクロメートル≦MFD1550≦10.3マイクロメートルである。」(対応日本語公報の【0016】)
「【0043】 用語「相対屈折率パーセント(relative refractive index percent)」(ここでは相対屈折率(relative refractive index)」及び「屈折率デルタ(refractive index delta)」とも呼ばれる)は、Δ%=100×(ni2-nc2)/2ni2として定義され、本明細書中で使用される場合、特段の記載がない限り、ncは(いくつかの実施形態では非ドープシリカである)第1の外側クラッド領域40の平均屈折率である。本明細書中で使用される場合、相対屈折率はΔで表され、その値は特段の記載がない限り単位「%」で与えられる。用語:デルタ、Δ、Δ%、%Δ、デルタ%、%デルタ及びパーセントデルタは、本明細書中では相互交換可能なものとして使用され得る。即ち本明細書中で使用される場合、所与のファイバ領域の相対屈折率パーセント(又は相対屈折率若しくは屈折率デルタ)は、非ドープシリカに関して測定される。ある領域の屈折率が非ドープシリカの平均屈折率未満である場合、相対屈折率パーセントは負となり、「下降領域又は下降屈折率を有する」と表現できる。ある領域の屈折率がドープシリカの平均屈折率より大きい場合、相対屈折率パーセントは正である。本明細書中では、「アップドーパント(updopant)」は、純粋な非ドープSiO2に対して屈折率を上昇させる性質を有するドーパントであるとみなされる。本明細書中では、「ダウンドーパント(downdopant)」は、純粋な非ドープSiO2に対して屈折率を低下させる性質を有するドーパントであるとみなされる。アップドーパントの例としては、GeO2(ゲルマニア)、Al2O3、P2O5、TiO2、Cl、Brが挙げられる。ダウンドーパントの例としては、フッ素及びホウ素が挙げられる。」(対応日本語公報の【0027】)
「【0046】 用語「アルファパラメータ(alpha parameter)」又は「α‐パラメータ(α‐parameter)」又は「アルファ値(alpha value)」又は単に「α」は、単位が「%」であるΔ(r)に関して表される、コアの相対屈折率プロファイルを定義するために使用されるパラメータを指し、ここでrは半径であり、またΔ(r)は:
Δ(r)=Δ(ro)(1-[|r-ro|/(r1-ro)]α)
に従っており、ここでroは、Δ(r)が最大となる点(Δ1maxとも呼ばれる)であり、r1は、Δ(r)%がゼロとなる点であり、rはri≦r≦rfの範囲内であり、Δは上で定義されており、riはαプロファイルの始点であり、rfはαプロファイルの終点であり、αは、実数のべき指数コアアルファである。本明細書に記載の光ファイバのいくつかの実施形態では(例えばファイバコア内に中心線ディップを有しないファイバでは)、Δ(r0)=Δ(ri)である。いくつかの実施形態ではr1≡rfである。」(対応日本語公報の【0030】)
「【0047】 用語「トレンチ(trench)」及び「屈折率抑制クラッド領域(depressed index cladding region)」は、本明細書中では相互交換可能なものとして使用され、接触して隣接する複数の領域の相対屈折率より低い最小相対屈折率を有するクラッド領域を指す。トレンチ体積V3は:
V3=2∫Δ3-2(r)rdr
として定義され、
【0048】 ここで、径方向位置r3と径方向位置r2との間にある所与の径方向位置rに関して、Δ3-2(r)=Δ3-Δ2(r)であり、r2はクラッド領域30の内半径であり、r3はクラッド領域30の外半径である。よって、V3の積分の極限はr2からr3までである。」(対応日本語公報の【0031】)
「【0049】 モードフィールド径(MFD)はPeterman II法を用いて測定され、2w=MFDであり、ここでw2=(2∫f2rdr/∫[df/dr]2rdr)であり、積分限界は0~∞であり、MFD1550は、波長1550nmでのモードフィールド直径である。」(対応日本語公報の【0033】)
「【0053】 本明細書中で使用される「ケーブルカットオフ波長」、又は「ケーブルカットオフ」とは、EIA‐TIAファイバ光学標準(EIA‐TIA Fiber Optics Standards)、即ちエレクトロニクス産業連合‐遠距離通信産業境界ファイバ光学標準(Electronics Industry Alliance ‐ Telecommunications Industry Association Fiber Optics Standards)の一部であるEIA‐445ファイバ光学試験手順に記載された22mケーブルカットオフ試験によって測定された、シングルモードカットオフを意味する。」(対応日本語公報の【0037】)
「【0058】 図2Aは、光ファイバ(100)のある例示的実施形態の断面図である。光ファイバ(100)は:中心軸Acに関してセンタリングされた中心コア領域10と;任意の内側クラッド領域20と;トレンチの形状であるため「トレンチ領域」30又は「ディプレストクラッド領域」と呼ばれる、第3の領域30と;第1の外側クラッドを構成するため「外側クラッド領域」40と呼ばれる(本明細書中では第1の外側クラッド領域40とも呼ばれる)第4の領域40とを備える。任意の内側クラッド20、トレンチ領域30、及び第1の外側クラッド領域40は、併せてクラッドセクション50(本明細書中では「クラッド」(50)とも呼ばれる)を画定する。本明細書に記載の例示的実施形態では、クラッド50のクラッド領域20、30、40は好ましくはガラスであり、チタニア(TiO2)ドープシリカから構成される機械的信頼性層ML(最外クラッド層又は領域60)で取り囲まれる。外側クラッド層60(即ち機械的安定性層ML)は、一次コーティングP及び二次コーティングSを含むコーティング70によって取り囲むことができ、これは、ファイバ100を曲げてシリコンフォトニクスデバイスに結合する前に、ファイバ100から剥離させることができる。」(対応日本語公報の【0042】)
[図:0001425273000001.jpg]
「【0059】 図2Bは、光ファイバ(100)のある例示的実施形態の、ファイバ半径rに対する相対屈折率プロファイルΔ(%)を概略図で示す。このプロットは中心軸ACから径方向外向き、即ちr=0からのものである。コア領域10は、外半径r1及び相対屈折率Δ1を有する。内側クラッド領域20は、径方向位置r1から径方向位置r2まで延在し、相対屈折率Δ2を有する。トレンチ領域30(即ち屈折率抑制クラッド領域)は、径方向位置r2から径方向位置r3まで延在し、相対屈折率Δ3を有する。外側クラッド領域40は、径方向位置r3から径方向位置r4まで延在し、相対屈折率Δ4を有する。第2の外側クラッド60(即ち最外クラッド領域60)は、第1の外側クラッド領域40を取り囲む。第2の外側クラッド領域60は、径方向位置r4から径方向位置r5まで延在し、相対屈折率Δ5>Δ4を有する。・・・略・・・」(対応日本語公報の【0043】))
[図:0001425273000002.jpg]
「【0064】 図2Bのプロファイルでは、クラッド内のトレンチ領域30は、内側クラッド領域20及び第1の外側クラッド領域40の屈折率未満の、一定の屈折率を有してよい。光ファイバ100のコア領域10は、ファイバ領域20、30又は40に比べて最も高い相対屈折率を有する。いくつかの実施形態では、コア領域10は、図2Bに示すように、中心線に又は中心線付近に比較的低屈折率の領域を含んでよい(当該技術分野においては「中心線ディップ(centerline dip)」として知られる。)。」(対応日本語公報の【0048】)
「【0065】 なお、上述の通り内側クラッド領域20は任意であり、削除してもよい。内側クラッド領域20が存在しない場合、屈折率抑制領域30は、コア領域10に直接隣接する。相対屈折率Δ1、Δ3、及びΔ4の相対的な順序付けは、条件Δ1>Δ4>Δ3を満たす。」(対応日本語公報の【0049】)
「【0066】 本明細書で開示されている実施形態では、相対屈折率Δ1、Δ2、Δ3、及びΔ4の相対的な順序付けは、条件Δ1>Δ4>Δ3及びΔ1>Δ2>Δ3を満たす。Δ2及びΔ4の値は、等しくても、又は他方より大きくてもよいが、Δ2及びΔ4はいずれもΔ1とΔ3との間にある。」(対応日本語公報の【0050】)
「【0067】 本明細書に記載の光ファイバ100の実施形態によると、(外側クラッド領域40のΔ4に対する)コア領域10の最大相対屈折率Δ1は、0.3%~0.6%、より好ましくは0.32%~0.5%である。いくつかの実施形態によると、コア領域10は、3~6μm、より好ましくは4μm~5μmの半径r1を有する。コア領域10は、α>10でステップインデックスプロファイルを有することができ、あるいはα≦10、例えばα≦5(例えば1≦α≦10、又は1≦α≦5)でグレーデッドインデックスプロファイルを示すことができる。(外側クラッド領域40のΔ4に対する)内側クラッド領域20の相対屈折率Δ2は、-0.05~0.05%である。内側クラッド領域20は、純シリカガラス、又はCl若しくはGeO2といったアップドーパントでドープされたシリカガラスとすることができる。(外側クラッド領域40のΔ4に対する)トレンチ領域30の最小相対屈折率Δ3は、-0.2~-0.7%、及びいくつかの実施形態では-0.3~-0.5%である。例示的実施形態では、トレンチ領域30は、ホウ素又はフッ素でドープされたシリカ系ガラスである。トレンチ領域30の幅w(w=r3-r2)は、3~20マイクロメートル、いくつかの実施形態では4~15マイクロメートルである。外側クラッド領域40は、純シリカガラス、又はCl若しくはGeO2といったアップドーパントでドープされたシリカガラスとすることができる。(本明細書中では「最外クラッド層」、第2の外側クラッド層、又は「機械的信頼性層」とも呼ばれる)クラッド層60は、5~20重量%のTiO2、及びいくつかの実施形態では5~15重量%のTiO2を含む。最外クラッド層60は、3~30マイクロメートル、及びいくつかの実施形態では5~15マイクロメートルの径方向厚さTMを有する。最外クラッド層60は、ファイバ100の機械的安定性/信頼性を改善する。少なくともいくつかの実施形態では、Δ5>Δ1である。」(対応日本語公報の【0051】。当合議体注:第2文の「The core region 10 can have a step index profile with α10,・・・」の「α10」は文脈に照らして、「α>10」の明らかな誤記であることから、誤記を正した上で訳出した。)
「【0071】 コーティング済みファイバのガラス部分は、ガラスを軟化させるために十分な温度、例えばシリカガラスに関して約2000°の温度まで局所的かつ対称に加熱された、特別に調製された円筒状プリフォームからドロー加工できる。プリフォームを炉に入れて炉を通過させる等によって、プリフォームを加熱し、ガラスファイバを溶融材料からドロー加工する。ファイバ作製プロセスの更なる詳細に関しては、例えば米国特許第7,565,820号明細書;米国特許第5,410,567号明細書;米国特許第7,832,675号明細書;及び米国特許第6,027,062号明細書(これらの開示は参照により本出願に援用される)を参照されたい。」(対応日本語公報の【0055】)
「【0076】 いくつかの例示的実施形態(例えば表1~4の実施形態)によると、内側クラッド領域20及び/又は外側クラッド領域40は、略一定の相対屈折率プロファイルを有し、即ち内側クラッド内のいずれの2つの半径における相対屈折率の間の差が、0.02%未満、及びいくつかの好ましい実施形態では0.01%未満となる。よって、本明細書で開示されている少なくともいくつかの実施形態によると、外側クラッド領域40の相対屈折率プロファイルは、略平坦な形状を有する。また、本明細書で開示されている少なくともいくつかの実施形態によると、内側クラッド領域20の相対屈折率プロファイルは、略平坦な形状を有する」(対応日本語公報の【0060】)
「【0077】 中心コア領域(1)は、階段状屈折率コアであってよく、又は例えば図2Bに示されているように、これはあるアルファ(α)形状を備えてよい(例えば以下の図4も参照)。」(対応日本語公報の【0061】)
[図:0001425273000003.jpg]
「【0083】 いくつかの実施形態によると、1200nm<ケーブルカットオフ波長<1540nmである。いくつかの実施形態によると、半径2.5mmのマンドレルの周囲で更に1周だけ曲げて配備した場合に、1200nm<ケーブルカットオフ波長<1540nmである。」(対応日本語公報の【0063】)
「【0090】 以下の表1A、1B、及び2~5は、図2Bに示したものと同様の屈折率を有する例示的なモデル化されたファイバ実施例1~21の特徴を列挙したものである。特に、各実施例に関して以下に記載されているのは:中心コア10の相対屈折率Δ1、コアアルファ、及び外半径r1;第1のクラッド領域20の相対屈折率Δ2及び外半径r2;並びにトレンチ領域30の、r2とr3との間で計算されるプロファイル体積V3、及び相対屈折率Δ3である。また記載されているのは:1310nmでの波長分散及び分散勾配;1550nmでの波長分散及び分散勾配;1310nm及び1550nmでのモードフィールド直径;ファイバカットオフ波長、1310nmでのMAC数;並びに曲げ半径rbが2.5mm及び5mmの場合それぞれの、波長1550nmで計算したマクロ曲げ誘発損失(dB/turn)である。表1A~1C及び表2~4の例示的実施形態では、外側クラッド領域40は純シリカであり、Δ4=0である。同様に、表1A~1C及び表2~4の例示的実施形態では、内側クラッド領域20は純シリカであり、Δ2=0であり;またこれらの例示的実施形態では、外側クラッド層60のデルタ(Δ5)は約2%であった。よってこれらの例示的実施形態では、内側クラッド領域20の屈折率は、外側クラッド領域40の屈折率と同一である。」(対応日本語公報の【0069】)
【表2】
[図:0001425273000004.jpg]
【表3】
[図:0001425273000005.jpg]
「【0093】 本明細書で開示されている光ファイバ(100)は、第2の外側クラッド層60を取り囲む保護コーティング70で取り囲まれていてよい。保護コーティングは、外側クラッド領域60に接触してこれを取り囲む一次コーティングPを備えてよく、この一次コーティングPは、1.0MPa未満、好ましくは0.9MPa未満、及びいくつかの実施形態では0.8MPa以下、及びいくつかの実施形態では0.5MPa以下、及びいくつかの実施形態では0.3MPa以下、例えば0.1~1MPa、及びいくつかの実施形態では0.1~0.5MPaのヤング率を有する。保護コーティング70は更に、一次コーティングPに接触してこれを取り囲む二次コーティングSを備え、二次コーティングSは、1200MPa超、及びいくつかの実施形態では1400MPa超、例えば少なくとも1500MPa、又は少なくとも1600MPa、少なくとも1800MPa、又は1400MPa~2500MPa、又は1500MPa~2500MPaのヤング率を有する。一次コーティングの比較的低い弾性(例えば<0.5MPa)は、良好なミクロ曲げ性能をサポートし、二次コーティングの比較的高い弾性(例えば>1500MPa)は、二次コーティングの厚さが低減された場合であっても、二次コーティングの穿刺耐性の改善をサポートする。いくつかの実施形態によると、二次コーティングSの外径は、250マイクロメートル以下、例えば242マイクロメートル以下(例えば≦225マイクロメートル、≦210マイクロメートル、若しくは≦200マイクロメートル)、例えば175~242マイクロメートル、又は175~225マイクロメートル、又は180~200マイクロメートルである。以上のようなファイバの設計により、コーティングの直径が225マイクロメートル未満であっても、良好なミクロ及びマクロ曲げ性能を実現でき、これにより、直径がより小さく、コストがより低く、ファイバ密度がより高い、優れた光学的性能を有するケーブルを実現できる。」(対応日本語公報の【0080】)
イ 前記アの記載によれば、引用文献2の【0093】(対応日本語公報の【0080】。以下同じ。)に記載された、第2の外側クラッド層60を取り囲む保護コーティング70で取り囲まれている光ファイバ100(以下「所定光ファイバ」という。)について、当業者は次の技術的事項を把握することができると認められる(以下の段落番号は、対応日本語公報の段落番号である。)。
(ア)所定光ファイバの保護コーティング70は、第2の外側クラッド層60に接触してこれを取り囲む一次コーティングPと、一次コーティングPに接触してこれを取り囲む二次コーティングSからなること(【0080】)。
(イ)所定光ファイバの二次コーティングSの外径は、225μm未満であり、175~225マイクロメートル、又は180~200マイクロメートルであってよいこと(【0080】)。
(ウ)二次コーティングSの外径が小さくなると、ファイバ密度がより高くなること(【0080】)。
(エ)所定光ファイバには、請求項1に記載された技術的事項が妥当すること。
すなわち、引用文献2には、光ファイバに係る独立項として請求項1のみが記載されており、所定光ファイバも光ファイバにほかならないから、当業者は、所定光ファイバには、請求項1に記載された技術的事項が妥当することを理解できる。
(オ)所定光ファイバは、中心軸Acに関してセンタリングされた中心コア領域10(外半径r1)と、内側クラッド領域20(外半径r1から外半径r2まで延在)と、トレンチ領域30(外半径r2から外半径r3まで延在)と、第1の外側クラッド領域40(外半径r3から外半径r4まで延在)と、第2の外側クラッド領域60(外半径r4から外半径r5まで延在)とをこの順に備えていること(図2A・【0042】・【0043】)。
すなわち、引用文献2に記載された図2Aに係る光ファイバ100について、当該図2Aは「光ファイバ(100)のある例示的実施形態の断面図」に係るものであるが、引用文献2には、光ファイバ100の断面構造について他に記載された図は存在しないことから、当業者は、所定光ファイバが当該図2Aに係る構造を少なくとも典型的には有していることを理解できる。
(カ)所定光ファイバは、中心コア領域10の最大相対屈折率Δ1、内側クラッド領域20の相対屈折率Δ2、トレンチ領域30の相対屈折率Δ3、及び第1の外側クラッド領域40の相対屈折率Δ4について、Δ1>Δ4>Δ3及びΔ1>Δ2>Δ3を満たし、Δ2及びΔ4の値は、等しくても、又は他方より大きくてもよいこと(【0050】)。ここで、相対屈折率Δ%は100×(ni2-nc2)/2ni2(ncは第1の外側クラッド領域の平均屈折率)として定義される(【0027】)。なお、引用文献2の当該【0050】には、Δ1が「最大相対屈折率」であると記載されておらず「相対屈折率」であると記載されているが、中間コア領域10はアルファ形状を備えてもよい(【0061】)とされていることから、この「相対屈折率」は「最大相対屈折率」の意味と解される。
(キ)所定光ファイバは、中心コア領域10の屈折率プロファイルが、階段状でもアルファ形状でもよいこと(【0061】)。
(ク)所定光ファイバは、保護コーティング70を除き、シリカガラスから構成されていること。
すなわち、引用文献2の【0055】の「コーティング済みファイバのガラス部分は、ガラスを軟化させるために十分な温度、例えばシリカガラスに関して約2000°の温度まで局所的かつ対称に加熱された、特別に調製された円筒状プリフォームからドロー加工できる。」の記載からみて、当業者はそのように理解できる。
ウ 前記ア及びイによれば、引用文献2には、所定光ファイバについて、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明等の認定に根拠とした段落の段落番号等を参考までに括弧内に付してある。また、光ファイバの各領域の名称は、前記イ(オ)で用いた用語の例に倣って書き換えている。)。
「3.0≦r1≦7.0マイクロメートルの外半径r1、及び0.32%≦Δ1max≦0.5%の相対屈折率Δ1maxを備える、中心コア領域10;
前記中心コア領域10を取り囲むトレンチ領域30であって、外半径r3と、-0.2%未満の相対屈折率Δ3と、45%Δ-マイクロメートル2≦│V3│≦200%Δ-マイクロメートル2となるようなトレンチ体積V3とを備える、トレンチ領域30;
前記トレンチ領域30を取り囲む第1の外側クラッド領域40であって、相対屈折率Δ4及び外半径r4を備える、第1の外側クラッド領域40;並びに
相対屈折率Δ5を備える第2の外側クラッド領域60であって、前記第2の外側クラッド領域60は、5~20重量%のチタニアでドープされたシリカ系ガラスを含み、3マイクロメートル≦TM≦30マイクロメートルとなるような厚さTMを有し、前記第2の外側クラッド領域60は、65マイクロメートル以下の外半径r5を有する、第2の外側クラッド領域60を備える、光ファイバ100であって、
前記光ファイバ100は:8.3マイクロメートル≦MFD1550≦10.5マイクロメートルの、1550nmでのモードフィールド直径(MFD1550);半径2.5mmのマンドレルの周囲で1周だけ曲げた場合に<1550nmの、ファイバカットオフ波長;最低65マイクロメートル2、かつ85マイクロメートル2未満の、1550nmでの有効面積;及び1.0dB/turn以下の、半径2.5mmのマンドレルを用いたマンドレル巻き付け試験で決定される1550nmでの曲げ損失を備える、光ファイバ100であり、(請求項1)
トレンチ体積V3は:V3=2∫Δ3-2(r)rdrとして定義され、ここで、径方向位置r3と径方向位置r2との間にある所与の径方向位置rに関して、Δ3-2(r)=Δ3-Δ2(r)であり、r2はクラッド領域30の内半径であり、r3はクラッド領域30の外半径であり、よって、V3の積分の極限はr2からr3までであり、(【0031】)
光ファイバ100は、中心軸Acに関してセンタリングされた中心コア領域10(外半径r1)と、内側クラッド領域20(外半径r1から外半径r2まで延在)と、トレンチ領域30(外半径r2から外半径r3まで延在)と、第1の外側クラッド領域40(外半径r3から外半径r4まで延在)と、第2の外側クラッド領域60(外半径r4から外半径r5まで延在)とをこの順に備えており、(前記イ(オ))
保護コーティング70は、第2の外側クラッド層60に接触してこれを取り囲む一次コーティングPと、一次コーティングPに接触してこれを取り囲む二次コーティングSからなり、(前記イ(ア))
二次コーティングSの外径は、225μm未満であり、175~225マイクロメートル、又は180~200マイクロメートルであってよく、(前記イ(イ))
中心コア領域10の最大相対屈折率Δ1、内側クラッド領域20の相対屈折率Δ2、トレンチ領域30の相対屈折率Δ3、及び第1の外側クラッド領域40の相対屈折率Δ4について、Δ1>Δ4>Δ3及びΔ1>Δ2>Δ3を満たし、Δ2及びΔ4の値は、等しくても、又は他方より大きくてもよく、相対屈折率Δ%は100×(ni2-nc2)/2ni2(ncは第1の外側クラッド領域の平均屈折率)として定義され、(前記(イ(カ))
中心コア領域10の屈折率プロファイルは、階段状でもアルファ形状でもよく、(前記イ(キ))
保護コーティング70を除き、シリカガラスから構成されている、(前記イ(ク))
光ファイバ100。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 本件補正発明の「光ファイバ。」との特定事項について
引用発明の「光ファイバ100」は、本件補正発明の「光ファイバ」に相当する。したがって、本件補正発明と引用発明は「光ファイバ」の発明である点で一致する。
イ 本件補正発明の「ゲルマニウムが添加されたガラスからなるコア部と、前記コア部の外周に位置し、前記コア部の屈折率よりも低い屈折率を有するガラスからなるクラッド部と、前記クラッド部の外周を覆うコーティング部と、を備え、」「トレンチ型の屈折率プロファイルを有し、」「前記センタコアの外周を囲んでおり、屈折率が前記センタコアの屈折率よりも小さく内径が2aで外径が2bの中間層と、前記中間層の外周を囲んでおり、屈折率が前記クラッド部の屈折率よりも小さく内径が2bで外径が2cのトレンチ層と、を有し、」との特定事項について
(ア)本件補正発明の「コア部」は、「センタコア」、「中間層」及び「トレンチ層」からなる構造を意味すると解される。すなわち、本件補正発明は「トレンチ型の屈折率プロファイル」を有しているところ、その場合の「コア部」について、本件補正後の明細書及び図面(以下「本件補正明細書等」という。)の【0032】には、「トレンチ型の屈折率プロファイルでは、コア部1aは、直径が2aのセンタコアと、センタコアの外周を囲んでおり、屈折率がセンタコアの屈折率よりも小さく内径が2aで外径が2bの中間層と、中間層の外周を囲んでおり、屈折率がクラッド部の屈折率よりも小さく内径が2bで外径が2cのトレンチ層とで構成されている。」と記載されているから、そのように解される。
これを引用発明についてみると、引用発明は、「中心コア領域10」と「内側クラッド領域20」と「トレンチ領域30」と「第1の外側クラッド領域40」と「第2の外側クラッド領域60」とをこの順に備えているところ、これらのうち、「中心コア領域10」、「内側クラッド領域20」及び「トレンチ領域30」を合わせた構造は、その外側に「第1の外側クラッド領域40」を備えており、当該「第1の外側クラッド領域40」が「相対屈折率」の基準とされていること(Δ%は100×(ni2-nc2)/2ni2(ncは第1の外側クラッド領域の平均屈折率)として定義され」ていることからこのようにいえる。)にも照らせば、当該構造が本件補正発明の「コア部」に相当するといってよい。
そして、当該「中心コア領域10」、「内側クラッド領域20」及び「トレンチ領域30」は、それぞれ、本件補正発明の「センタコア」、「中間層」及び「トレンチ層」に相当し、また、引用発明に係る光ファイバ100は、本件補正発明でいう「トレンチ型の屈折率プロファイルを有し」ているといえる。さらに、当該「中心コア領域10」、「内側クラッド領域20」及び「トレンチ領域30」は、いずれも「シリカガラスから構成されている」ことから、本件補正発明でいう「ガラスからなる」ものといえる。
(イ)引用発明の「内側クラッド領域20」(本件補正発明の「中間層」に相当。)は、本件補正発明でいう「前記センタコアの外周を囲んでおり、」「内径が2aで外径が2bの」ものといえる。
ここで、「内側クラッド領域20」は「外半径r1から外半径r2まで延在」しているところ、「外半径r1」及び「外半径r2」が、それぞれ、本件補正発明の「a」及び「b」に相当することになる。
(ウ)引用発明の「第1の外側クラッド領域40」は、前記(ア)で説示したとおり、当該「第1の外側クラッド領域40」が「相対屈折率」の基準とされていることに照らせば、本件補正発明の「クラッド層」に相当するといってよい。そして、当該「第1の外側クラッド領域40」は、「シリカガラスから構成されて」おり、「中心コア領域30」の相対屈折率Δ1maxが0.32%以上0.5%以下であることにも照らせば、当該「第1の外側クラッド領域40」は、本件補正発明でいう「前記コア部の外周に位置し、前記コア部の屈折率よりも低い屈折率を有するガラスからなる」ものといえる。
ここで、本件補正発明において「クラッド部」の屈折率が「前記コア部の屈折率よりも低い」という特定事項を満たすといえるためには、「クラッド部」の屈折率が、(「コア部」を構成するいずれの層の屈折率よりも低いということではなく)「コア部」の最大屈折率よりも低ければ足りると解される。すなわち、本件補正発明では、「コア部」には「トレンチ層」も含まれており、この屈折率についてみると、本件補正発明には、当該「トレンチ層」の屈折率が、「前記クラッド部の屈折率よりも小さ」いことも特定されていることから、上記特定事項を、「クラッド部」の屈折率が「コア部」を構成するいずれの層の屈折率よりも低いという意味に解することは相当ではなく、そのため、本件補正明細書等の【0027】の「クラッド部1bは、コア部1aの最大屈折率よりも低い屈折率を有する。」の記載を踏まえて、上記のとおり解するのが相当である。
(エ)引用発明の「トレンチ領域30」(本件補正発明の「トレンチ層」に相当。)は、その相対屈折率Δ3が「第1の外側クラッド領域40」(本件補正発明の「クラッド層」に相当。)の相対屈折率Δ4よりも小さいことにも照らせば、本件補正発明でいう「前記中間層の外周を囲んでおり、屈折率が前記クラッド部の屈折率よりも小さく内径が2bで外径が2cの」ものといえる。
ここで、「トレンチ領域30」は「外半径r2から外半径r3まで延在」しているところ、「外半径r2」及び「外半径r3」が、それぞれ、本件補正発明の「b」及び「c」に相当することになる。
(オ)引用発明の「保護コーティング70」は、本件補正発明の「コーティング部」に相当し、本件補正発明でいう「前記クラッド部の外周を覆う」ものといえる。
(カ)以上によれば、本件補正発明と引用発明は、「ガラスからなるコア部と、前記コア部の外周に位置し、前記コア部の屈折率よりも低い屈折率を有するガラスからなるクラッド部と、前記クラッド部の外周を覆うコーティング部と、を備え、トレンチ型の屈折率プロファイルを有し、」「前記センタコアの外周を囲んでおり、」「内径が2aで外径が2bの中間層と、前記中間層の外周を囲んでおり、屈折率が前記クラッド部の屈折率よりも小さく内径が2bで外径が2cのトレンチ層と、を有」する点で共通する。しかしながら、「コア部」が、本件補正発明は「ゲルマニウムが添加されたガラスからなる」に対し、引用発明は「シリカガラスから構成されて」おり、中心コア領域10は、「0.32%≦Δ1max≦0.5%の相対屈折率Δ1maxを備え」るものであり、「中間層」の屈折率が、本件補正発明は、「前記センタコアの屈折率よりも小さ」いのに対し、引用発明は、中心コア領域10の屈折率プロファイルは、階段状でもアルファ形状でもよく、中心コア領域10の最大相対屈折率Δ1は内側クラッド領域20の相対屈折率Δ2よりも大きい。
ウ 本件補正発明の「前記コア部のセンタコアの比屈折率差の平均値が0.35%~0.5%であり、」との特定事項について
引用発明の「中心コア領域10」(本件補正発明の「センタコア」に相当。)は、0.32%≦Δ1max≦0.5%の相対屈折率Δ1maxを備えており(ここで、相対屈折率Δ%は100×(ni2-nc2)/2ni2(ncは第1の外側クラッド領域の平均屈折率)である。)、屈折率プロファイルは、階段状でもアルファ形状でもよいものであり、内側クラッド領域20の相対屈折率Δ2と第1の外側クラッド領域40の相対屈折率Δ4の値は、等しくても、又は他方より大きくてもよいものであるが、上記特定事項を満たしているのかは不明である。
エ 本件補正発明の「前記センタコアの直径が8μm以上9μm以下であり、」との特定事項について
本件補正発明は、前記センタコアの直径が8μm以上9μm以下であるのに対し、引用発明は、中心コア領域10が3.0≦r1≦7.0マイクロメートルの外半径r1を備えるものである。
オ 本件補正発明の「b/aが2.5以上5以下であり、c/aが2.5以上6以下であり、」との特定事項について
引用発明は、「外半径r1」(本件補正発明の「a」に相当。)が「3.0≦r1≦7.0マイクロメートル」であり、「トレンチ領域30」(本件補正発明でいう「内径が2bで外径が2c」のものである。)が、「-0.2%未満の相対屈折率Δ3と、45%Δ-マイクロメートル2≦│V3│≦200%Δ-マイクロメートル2となるようなトレンチ体積V3とを備える」ものであるが、本件補正発明の上記特定事項を満たしているのかは不明である。
カ 本件補正発明の「前記コーティング部を含むファイバ径が220μm以下であり、」との特定事項について
引用発明の「二次コーティングSの外径」は、本件補正発明の「前記コーティング部を含むファイバ径」に相当する。そして、本件補正発明と引用発明は「前記コーティング部を含むファイバ径が」所定の大きさである点で共通するが、所定の大きさが、本件補正発明は「220μm以下」であるのに対し、引用発明は「225μm未満であり、175~225マイクロメートル、又は180~200マイクロメートルであってよ」いものである。
キ 本件補正発明の「実効カットオフ波長が1260nmよりも長く1530nmよりも短くかつ1550nmの光のモードフィールド径が9μm以上である」との特定事項について
引用発明は、「8.3マイクロメートル≦MFD1550≦10.5マイクロメートルの、1550nmでのモードフィールド直径(MFD1550);半径2.5mmのマンドレルの周囲で1周だけ曲げた場合に<1550nmの、ファイバカットオフ波長;最低65マイクロメートル2、かつ85マイクロメートル2未満の、1550nmでの有効面積;及び1.0dB/turn以下の、半径2.5mmのマンドレルを用いたマンドレル巻き付け試験で決定される1550nmでの曲げ損失を備える」ものであるが、本件補正発明の上記特定事項を満たしているのかは不明である。
(4)一致点及び相違点の認定
前記(3)によれば、本件補正発明と引用発明は、下記の点で一致し、下記の点で相違する。
【一致点】
「ガラスからなるコア部と、
前記コア部の外周に位置し、前記コア部の屈折率よりも低い屈折率を有するガラスからなるクラッド部と、
前記クラッド部の外周を覆うコーティング部と、
を備え、
トレンチ型の屈折率プロファイルを有し、
前記センタコアの外周を囲んでおり、内径が2aで外径が2bの中間層と、
前記中間層の外周を囲んでおり、屈折率が前記クラッド部の屈折率よりも小さく内径が2bで外径が2cのトレンチ層と、
を有し、
前記コーティング部を含むファイバ径が所定の大きさである、
光ファイバ。」
【相違点1】
コア部が、本件補正発明は、「ゲルマニウムが添加されたガラスからなる」のに対し、引用発明は、「シリカガラスから構成されて」おり、「中心コア領域10」は、「0.32%≦Δ1max≦0.5%の相対屈折率Δ1maxを備え」るものである点。
【相違点2】
「中間層」の屈折率が、本件補正発明は、「前記センタコアの屈折率よりも小さ」いのに対し、引用発明は、「中心コア領域10の屈折率プロファイルは、階段状でもアルファ形状でもよく」、「中心コア領域10」(本件補正発明の「センタコア」に相当。)の最大相対屈折率Δ1は内側クラッド領域20(本件補正発明の「中間層」に相当。)の相対屈折率Δ2よりも大きい点。
【相違点3】
「前記コア部のセンタコア」について、本件補正発明は、比屈折率差の平均値が0.35%~0.5%であるのに対し、引用発明は、「0.32%≦Δ1max≦0.5%の相対屈折率Δ1maxを備え」ており、「屈折率プロファイルは、階段状でもアルファ形状でもよ」いものであり、内側クラッド領域20の相対屈折率Δ2と第1の外側クラッド領域40の相対屈折率Δ4の値は、等しくても、又は他方より大きくてもよいものである点。
【相違点4】
本件補正発明は、「前記センタコアの直径が8μm以上9μm以下であ」るのに対し、引用発明は、「中心コア領域10」が「3.0≦r1≦7.0マイクロメートルの外半径r1」を備えるものである点。
【相違点5】
本件補正発明は、「b/aが2.5以上5以下であり、c/aが2.5以上6以下であ」るのに対し、引用発明は、「外半径r1」(本件補正発明の「a」に相当。)が「3.0≦r1≦7.0マイクロメートル」であり、「トレンチ領域30」(本件補正発明でいう「内径が2bで外径が2c」のものである。)が、「-0.2%未満の相対屈折率Δ3と、45%Δ-マイクロメートル2≦│V3│≦200%Δ-マイクロメートル2となるようなトレンチ体積V3とを備える」ものである点。
【相違点6】
「前記コーティング部を含むファイバ径」の所定の大きさが、本件補正発明は、「220μm以下」であるのに対し、引用発明は、「225μm未満であり、175~225マイクロメートル、又は180~200マイクロメートルであってよ」いものである点。
【相違点7】
本件補正発明は、「実効カットオフ波長が1260nmよりも長く1530nmよりも短くかつ1550nmの光のモードフィールド径が9μm以上である」のに対し、引用発明は、「8.3マイクロメートル≦MFD1550≦10.5マイクロメートルの、1550nmでのモードフィールド直径(MFD1550);半径2.5mmのマンドレルの周囲で1周だけ曲げた場合に<1550nmの、ファイバカットオフ波長;最低65マイクロメートル2、かつ85マイクロメートル2未満の、1550nmでの有効面積;及び1.0dB/turn以下の、半径2.5mmのマンドレルを用いたマンドレル巻き付け試験で決定される1550nmでの曲げ損失を備える」ものである点。
(5)判断
ア 相違点1について
相違点1に係る本件補正発明の構成では「コア部」が「ゲルマニウムが添加されたガラスからなる」と特定されているところ、当該特定を満たすといえるためには、少なくとも「センタコア」が「ゲルマニウムが添加されたガラス」からなれば足りると解される。
すなわち、「ゲルマニウム」はこれをガラスに添加すると屈折率が上昇することが技術常識であるところ、本件補正発明に係る「光ファイバ」では、「トレンチ層」が「コア部」に含まれるにもかかわらず、その屈折率が「クラッド部の屈折率より小さい」ことから、「トレンチ層」には「ゲルマニウム」が添加されていないことが典型的に想定されているといえる。とすれば、「コア部」のうち「トレンチ層」以外のどこにゲルマニウムが添加されているのかが問題となるが、本件補正発明に係る図2Cをみると、「センタコア」のみが「クラッド部」よりも屈折率が大きくなっており、そのため、ゲルマニウムが添加されているならば「センタコア」のみである態様が典型的であると解される。そうすると、本件補正発明の上記構成には、「コア部」のうち、少なくとも「センタコア」に「ゲルマニウム」が添加されている態様が含まれると解するのが相当である。
これを引用発明についてみると、引用発明の「中心コア領域10」(本件補正発明の「センタコア」に相当。)は、「0.32%≦Δ1max≦0.5%の相対屈折率Δ1maxを備え」ており、前記(3)イで説示したとおり、この相対屈折率は「第1の外側クラッド領域40」(本件補正発明の「クラッド層」に相当。)を基準とするものであるから、当該「中心コア領域10」の屈折率は当該「第1の外側クラッド領域40」の屈折率よりも大きいことになる。そして、引用発明を開示する引用文献2の【0027】(対応日本語公報の段落番号。以下同じ。)には、アップドーパントの例としてGeO2(ゲルマニア)が記載されている。そうすると、引用発明の「中心コア領域10」にゲルマニアを添加することは当業者が適宜なし得たことであり、そのようにすることにより、当業者は相違点1に係る本件補正発明の構成に至ったことになる。
イ 相違点2~7について
(ア)a 引用発明は、その特定事項の内容からみて、「光ファイバ100」の仕様ないし特性と各領域の構造が特定されているといえるところ、これらのうち仕様ないし特性についてみれば、1550nm帯の波長において小半径(半径2.5mm程度)に曲げられる環境下での使用が少なくとも想定されるものであって、相当程度の二次コーティングSの径(つまり「光ファイバ100」のファイバ径)の細径化(225μm未満であり、前記(2)イ(ウ)で説示したとおり、これによりファイバ密度をより高くすることができる。)、使用波長(1550nm)での相当程度の大きさのMFD(8.3マイクロメートル以上10.5マイクロメートル以下)、使用波長(1550nm)での相当程度の大きさの有効面積(最低65マイクロメートル2、85マイクロメートル2未満)、使用環境での相当程度の小ささの曲げ損失(1.0dB/turn以下)が実現されているものといえる。そして、光ファイバの技術分野においては、各領域の構造によって得られる特性が左右されるのが技術常識であることにも照らせば、引用発明に特定された具体的な各領域の構造は、これらの仕様ないし特性を実現するために必要となる光ファイバ100の具体的構造、つまり、積層された各領域の内容並びにそれら各領域の径、屈折率プロファイル及び相対屈折率が満たすべき指針がどのようなものであるかを明らかにするものといえる(なお、「トレンチ領域30」については、「トレンチ体積V3」も特定されているが、その定義からみて、「トレンチ体積V3」も上記の意味での指針に含まれるといえる。)。
ところで、引用発明に特定された仕様ないし特性にはケーブルカットオフ波長が含まれていないものの、引用発明に係る「光ファイバ100」もケーブル化して使用されることが当然に想定されることから、実効的なカットオフ波長の値としてのケーブルカットオフ波長(EIA-445ファイバ光学試験手順に記載された22mケーブルカットオフ試験によって測定された、シングルモードカットオフである。【0037】を参照。)も当然に問題となる。この点について、引用発明では、使用波長が上記のとおり1550nmである一方で、引用発明を開示する引用文献2の【0063】には、ケーブルカットオフ波長が1200nm超1540nm未満であることも記載されているところ、使用波長は一般にケーブルカットオフ波長を超えるものであることから、このケーブルカットオフ波長の値が上記の使用波長の値を受けてのものであることを理解できる。そして、引用文献2に記載された各実施例(例えば、実施例9~実施例12等)をみると、ファイバ径(二次コーティングSの径)こそ明記がないものの、ファイバクラッドのガラス部分の外半径が最大62.5μm(直径でいうと135μm)となっており、引用発明で特定されたファイバ径の上限である上記の225μmに比べて十分に小さいものであって、しかも、ケーブルカットオフ波長が上記の1200nm超1540nm未満に該当する例が相当数記載されている。
そうすると、引用発明及びそれを開示する引用文献2には、ケーブルカットオフ波長を含めた上記の各仕様ないし特性を満たす光ファイバについて、その具体的な各領域の構造を得るための指針が特定ないし記載されているといえるのであり、そうである以上、引用発明から出発した当業者は、ケーブルカットオフ波長を含めた上記の各仕様ないし特性を満たす光ファイバの具体的な各領域の構造を、これらの指針に基づいて設計するといえる。
b そこで、以下、引用発明から出発した当業者がどのような設計を行うかを検討することとするが、これに先立ち、引用発明に特定された各領域の構造の具体的な内容を整理すると、次のとおりであるといえる。
(a)中心コア領域10(本件補正発明の「センタコア」に相当。)
外半径r1(本件補正発明の「a」に相当。)が3.0μm≦r1≦7.0μmである。【0051】には、r1が、より好ましくは、4μm~5μmであると記載されている。
屈折率プロファイルは、階段状でもアルファ形状でもよく、最大相対屈折率Δ1maxは0.32%≦Δ1max≦0.5%である。【0051】には、中心コア領域10は、α>10で階段状屈折率プロファイルを有することができると記載されている。
(b)内側クラッド領域20(本件補正発明の「中間層」に相当。)
外半径r1から外半径r2まで延在するものであって、外半径r1(本件補正発明の「a」に相当。)が3.0μm≦r1≦7.0μmであり、外半径r2(本件補正発明の「b」に相当。)は特定されていない。
相対屈折率Δ2は、Δ1とΔ3の間にあり、Δ4の値(後記(d)のとおり0である。)と等しくても異なっていてもよい。
屈折率プロファイルは、引用文献2に文言として特段の明記がないことから、典型的には平坦であることが想定されているといえる。
(c)トレンチ領域30(本件補正発明の「トレンチ層」に相当。)
外半径r2(本件補正発明の「b」に相当。)から外半径r3(本件補正発明の「c」に相当。)まで延在するものであって、45%Δ・μm2≦│V3│≦200%Δ・μm2となるようなトレンチ体積V3を備えている。【0051】には、トレンチ領域30の幅は、3μm~20μmであり、いくつかの実施形態では4μm~15μmであることが記載されている。
相対屈折率Δ3は、-0.2%未満であり、Δ1~Δ4のいずれよりも小さい。【0051】には、トレンチ領域30の最小相対屈折率Δ3は、-0.2%~-0.7%であり、いくつかの実施形態では、-0.3%~-0.5%であることが記載されている。
(d)第1の外側クラッド領域40(本件補正発明の「クラッド部」に相当。)
外半径r3(本件補正発明の「c」に相当。)から外半径r4まで延在するものであって、相対屈折率の定義によれば、相対屈折率Δ4は0であり、Δ2の値と等しくても異なっていてもよい。
(e)第2の外側クラッド領域60
外半径r4から外半径r5まで延在するものであって、外半径r5は65μm以下であり、その厚さTMは3μm以上30μm以下である。【0051】には、第2の外側クラッド領域60が、いくつかの実施形態では5μm~15μmの厚さを有すると記載されている。
5~20重量%のチタニアでドープされたシリカガラスを含んでいる。
(f)保護コーティング70(本件補正発明の「コーティング部」に相当。)
第2の外側クラッド層60に接触してこれを取り囲む一次コーティングPと、一次コーティングPに接触してこれを取り囲む二次コーティングSからなっている。
二次コーティングSの外径は、225μm未満であり、175~225マイクロメートル、又は180~200マイクロメートルであってよい。
(イ)前記(ア)を踏まえた上で、引用発明から出発した当業者が、相違点2~7に係る本件補正発明の構成に容易に至るといえるかどうかについて検討する。
a 引用発明から出発した当業者が相違点2~7に係る本件補正発明の構成に至るためには、
(i)実効カットオフ波長を1260nmよりも長く1530nmよりも短いものとし、1550nmの光のモードフィールド径を9μm以上とし、ファイバ径を220μm以下とすること(相違点6及び7関係)、
(ii)「中心コア領域10」の屈折率プロファイルとして階段状(ないしこれに近い状態)を選択すること、
(iii)「内側クラッド領域20」の相対屈折率Δ2を0とすること、
(iv)「中心コア領域10」の相対屈折率Δ1maxとして0.35%~0.5%の値を選択すること(以上、相違点2及び3関係)、
(v)「中心コア領域」の外半径r1として4.0~4.5μmの値を選択すること(相違点4関係)、
(vi)「内側クラッド領域20」の外半径r2/外半径r1の値を2.5以上5以下とすること(相違点5関係)、
(vii)「トレンチ領域30」の外半径r3/外半径r2の値を2.5以上6以下とすること(相違点5関係)、
を満たせば足りる。
ここで、(ii)~(iv)については、本件補正発明における「前記コア部のセンタコアの比屈折率差の平均値」(以下「本件比屈折率差」という。)は、「中間層」に対する「センタコア」の比屈折率差の平均値であると解される(本件補正後明細書等の【0032】・【0047】・【0048】)一方で、引用発明の「中心コア領域10」の比屈折率差は、前記(3)イ(ア)のとおり、「外側クラッド領域40」が基準とされていることから、(ii)及び(iii)の構成に至れば、引用発明の上記比屈折率差を本件比屈折率差と実質的に同じ概念とみることができることになり、そのため、上記のとおりにいうことができる。
b そこで検討すると、まず、(i)について、前記(ア)aで説示したとおり、引用発明では、ケーブルカットオフ波長を含めた各仕様ないし特性を満たす光ファイバについて、その具体的な各領域の構造を得るための指針が特定ないし記載されているといえるところ、これらの各仕様ないし特性は、求められる用途に応じて、当業者が具体的な各領域の構造を設計するに先立って少なくとも暫定的には定めるべきものである。そして、(i)に係る細径化の程度、実効カットオフ波長の大きさ及び1550nmの光のモードフィールド径の大きさは、引用発明に係る上記の各仕様ないし特性における細径化の程度(225μm未満)、ケーブルカットオフ波長の程度(1200nm超1540nm未満)及びモードフィールド径の程度(8.3マイクロメートル以上10.5マイクロメートル以下)と相当程度重複しているといえるものであるし、モードフィールド径の程度についていえば、引用文献2の【0016】等には、9マイクロメートル以上10マイクロメートル以下、及び、9.5マイクロメートル以上10.3マイクロメートル以下といった記載もある。
そうすると、引用発明から出発した当業者は、(i)に係る仕様ないし特性とすることを、適宜選択できるといえる。
c 次に、当業者は、(i)に係る仕様ないし特性をも満たす光ファイバ100の具体的な各領域の構造を、前記(ア)aで説示したとおり、引用発明及びそれを開示する引用文献2の記載に基づいて把握される指針に基づいて設計するところ、以下のとおり、(ii)~(vii)に係る構成に容易に至るといえる。
(a)「中心コア領域10」の屈折率プロファイルは、階段状でもアルファ形状でもよいところ、製造の便宜に照らせば、階段状とすることが、まずは自然な選択であるといえる(各実施例でもコアアルファの値は20とされているが、これは、【0051】のとおり階段状といってよいものである。)。そして、内側クラッド領域20の相対屈折率Δ2については、Δ4の値(前記(ア)b(d)のとおり、0となる。)と等しくても異なっていてもよいところ、まずは、Δ2の値をΔ4の値と等しくする、つまり、Δ2=0とするのが自然な選択であるといえる(【0069】でもそのように設定している。)。このようにして、引用発明から出発した当業者は、(ii)及び(iii)に自然に至るといえる。
そして、引用発明の「中心コア領域10」の相対屈折率Δ1maxは0.32%~0.5%であるところ、コアのクラッドに対する比屈折率差が大きいほど光がコア内に閉じ込められやすいことが技術常識であることに照らせば、この相対屈折率が大きいほど、光閉じ込めの効果が上がり、その結果として、引用発明で求められる曲げ損失は低下することが期待される一方で、逆に、モードフィールド径は小さくなることがたやすく予想される。そうすると、Δ1maxの値として、曲げ損失の低下の観点をより重視して、引用発明で特定された下限の0.32%よりもやや高めの値を選択することは、当業者が適宜なし得たことであり、そのように選択した結果、当業者は(iv)の構成に至ることになる。
(b)その際、当業者は、引用発明における各領域の外半径も当然に設計するところ、「中心コア領域10」(本件補正発明の「センタコア」に相当。)の外半径r1として、引用文献2には、より好ましくは4μm~5μmであることが記載されている(【0051】)。そして、モードフィールド径がコア径よりも若干大きくなるのが技術常識であり、「中心コア領域10」のすぐ外側に、前記(a)のとおり相対屈折率Δ2=0の「内側クラッド領域20」が存在することに照らせば、前記bのとおり1550nmの光のモードフィールド径として9μm以上の値を選択した場合において、外半径r1の値として(v)程度の値を選択することは、通常程度のことにすぎないといえる。この点、そのような選択をした際にケーブルカットオフ波長に影響がある可能性があるが、実施例9~実施例12等では、外半径r1が(v)を満たす場合におけるケーブルカットオフが1252nm~1521nmであることからみて、(i)に係る仕様ないし特性を選択したことを維持できると解される。
また、引用発明では「内側クラッド領域20」(本件補正発明の「中間層」に相当。)の外半径r2(本件補正発明の「b」に相当。)は特定されていないが、「トレンチ領域30」(本件補正発明の「トレンチ層」に相当。)は、外半径r2(本件補正発明の「b」に相当。)から外半径r3(本件補正発明の「c」に相当。)まで延在するものであって、相対屈折率Δ3は、-0.2%未満であり、45%Δ・μm2≦│V3│≦200%Δ・μm2となるようなトレンチ体積V3を備えている。しかるに、外半径r2をある程度まで大きくすれば、「トレンチ領域30」までの距離が大きくなることから、「トレンチ領域30」による光閉じ込めに対する影響が少なくなり、その結果、中心コア領域の外半径r1及び相対屈折率Δ1maxの選択、つまり、(v)及び(iv)の選択によっておおむね定まるモードフィールド径の大きさが維持されるのがたやすく予想される(なお、引用発明における「トレンチ領域30」は、曲げ損失の低減に寄与していると考えられる。)。そうすると、前記bのとおり、1550nmの光のモードフィールド径として9μm以上の値を選択し、外半径r1及び相対屈折率Δ1maxの値としてそれぞれ(v)及び(iv)程度の値を選択した場合において、外半径r2の値をある程度大きくすることも当業者が適宜設計できるといえるのであり、その結果として、(vi)を満たすようにすることも、実施例9及び10(中心コア領域の外半径r1が4.3μm、内側クラッド領域の外半径r2が13μmとなっている。なお、1550nmでのモードフィールド径は10.3μmである。)等からみて格別のものではない。そして、「トレンチ領域30」の外半径r3は、上記の相対屈折率Δ3及びトレンチ体積V3の条件を満たすように当業者が適宜設計できるのであり、その結果として、(vii)を満たすようにすることも、やはり、実施例9及び10(トレンチ領域30の外半径r3が17μm又は19μmとなっている。)等からみて格別のものではない。
(c)以上のとおり、引用発明から出発した当業者は、(i)に係る仕様ないし特性をも満たす光ファイバ100の具体的な各領域の構造を、引用発明及びそれを開示する引用文献2の記載に基づいて把握される指針に照らして設計することを通じて、(ii)~(vii)の構成に容易に至るといえる。
(ウ)したがって、引用発明から出発した当業者は、引用文献2に記載された技術的事項及び技術常識に基づいて、相違点2~7に係る本件補正発明の構成に容易に至る。
ウ 本件補正発明の効果について
本件補正発明のモードフィールド径が拡大されても伝送損失(【0045】によればマイクロベンド損失が想定されていると解される。)を十分低く抑えることが可能になるという効果(【0023】)は、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び技術常識に基づいて当業者が予測できる範囲を超える顕著なものとはいえない。すなわち、前記イ(イ)c(a)で説示したとおり、比屈折率差が大きいほど、光閉じ込めの効果が上がることから、モードフィールド径が小さくなるのは当業者にとって予測できることであるし、また、同様の理由で、伝送損失が小さくなるのも当業者にとって予測できることであるといえる。そして、そうである以上、上記効果は、当業者が予測できる範囲を超える顕著なものとはいえない。
エ 請求人の主張について
請求人は、引用文献2には、本件補正発明における屈折率差や光学的特徴などの、屈折率プロファイルの組み合わせや、屈折率プロファイルに関するパラメータの種々の組み合わせが何ら開示も示唆もされていない旨主張するが、前記イで説示したとおりである。
(6)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反することから、同法第159条1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項12に係る発明(前記第2の1(2)で説示したとおり、本件補正発明に対応するものであって、以下「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりに特定されるものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献2に記載された発明に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないという内容を含むものである。
3 引用文献2の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2の記載及び引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「コア部」について、「前記センタコアの直径が8μm以上9μm以下であり、前記センタコアの外周を囲んでおり、屈折率が前記センタコアの屈折率よりも小さく内径が2aで外径が2bの中間層と、前記中間層の外周を囲んでおり、屈折率が前記クラッド部の屈折率よりも小さく内径が2bで外径が2cのトレンチ層と、を有し、b/aが2.5以上5以下であり、c/aが2.5以上6以下であり、」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2で認定判断したとおり、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-001238