特許拒絶査定不服審判
2024-018722
ウェアラブル視覚化デバイスシステムおよび方法
- 審判番号
- 2024-018722
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-539873
- 請求日
- 2024年11月25日
- 審決日
- 2026年03月31日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ユニバーサル シティ スタジオズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】須田 洋之
- 【請求人代理人】山崎 一夫
- 【請求人代理人】近藤 直樹
- 【請求人代理人】那須 威夫
- 【請求人代理人】鈴木 信彦
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 東松 修太郎
- 審判官 三橋 健二
- 分類
- P18 .113-Z (G02B) / P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-539873「ウェアラブル視覚化デバイスシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 7月16日国際公開、WO2020/146780、令和 4年 3月10日国内公表、特表2022-517775〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)1月10日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2019年(平成31年)1月11日、米国及び2020年(令和2年)1月9日、米国)、その出願後の手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 1月 6日 :手続補正書の提出
令和6年 1月10日付け:拒絶理由通知
同年 4月12日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 7月 4日付け:拒絶査定
(同月23日 :原査定の謄本の送達)
同年11月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年 4月18日 :上申書の提出
以下、平成31年1月11日を「最先の優先日」という。
第2 令和6年11月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年11月25日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年11月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであって、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年4月12日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項14の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項14の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項14】
拡張現実、仮想現実、および/または複合現実体験をユーザに提供するように構成されたウェアラブル視覚化デバイスであって、
レンズ部と、
前記レンズ部の表面に向けられるとともに前記表面の第1の場所上へと仮想特徴を投影するように構成されたディスプレイ画面と、
前記レンズ部の表面に向けられるとともに前記レンズ部の表面によって反射された反射を示す画像データを取得するように構成され、前記ディスプレイ画面側に設けられたカメラであって、前記反射が前記ユーザの第1の目の第1の反射と前記ユーザの第2の目の第2の反射とを備えるカメラと、
前記カメラおよび前記ディスプレイ画面に通信可能に結合されたプロセッサであって、前記画像データに基づいて前記第1の場所から前記レンズ部の前記表面上の第2の場所への前記仮想特徴の投影を調整するように構成されたプロセッサと、
を備える、ウェアラブル視覚化デバイス。」
(2) 本件補正後
「【請求項14】
拡張現実、仮想現実、および/または複合現実体験をユーザに提供するように構成されたウェアラブル視覚化デバイスであって、
前記ユーザの目に向けられる表面を有するレンズ部と、
前記レンズ部に対して前記ユーザの目と同じ側に設けられたディスプレイ画面であって、前記レンズ部の前記表面に向けられるとともに前記表面の第1の場所上へと仮想特徴を投影するように構成されたディスプレイ画面と、
前記レンズ部の表面に向けられるとともに前記レンズ部の表面によって反射された反射を示す画像データを取得するように構成され、前記レンズ部に対して前記ディスプレイ画面側と同じ側に設けられたカメラであって、前記反射が前記ユーザの第1の目の第1の反射と前記ユーザの第2の目の第2の反射とを備えるカメラと、
前記カメラおよび前記ディスプレイ画面に通信可能に結合されたプロセッサであって、前記画像データに基づいて前記第1の場所から前記レンズ部の前記表面上の第2の場所への前記仮想特徴の投影を調整するように構成されたプロセッサと、
を備える、ウェアラブル視覚化デバイス。」
2 補正の目的
(1) 本件補正のうち請求項14についてする補正は、本件補正前の請求項14に記載された発明を特定するために必要な事項について、次のアからウの限定をするものである。
ア 「レンズ部」について、「前記ユーザの目に向けられる表面を有する」ことを限定すること。
イ 「ディスプレイ画面」が設けられた位置について「前記レンズ部に対して前記ユーザの目と同じ側」に限定すること。
ウ 「カメラ」が設けられた位置について、「前記レンズ部に対して前記ディスプレイ画面側と同じ側」に限定すること。
(2) そして、本件補正前の請求項14に記載された発明と本件補正後の請求項14に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3) したがって、本件補正により請求項14についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項14に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項14に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Aから構成Dまでと構成Xに分説する。また、参考図として、本願の【図4】及び【図3】を元に部材名を記入したもの(符号の一部は削除した。)を掲載する。
<本件補正発明の分説>
(構成X) 拡張現実、仮想現実、および/または複合現実体験をユーザに提供するように構成されたウェアラブル視覚化デバイスであって、
(構成A) 前記ユーザの目に向けられる表面を有するレンズ部と、
(構成B) 前記レンズ部に対して前記ユーザの目と同じ側に設けられたディスプレイ画面であって、前記レンズ部の前記表面に向けられるとともに前記表面の第1の場所上へと仮想特徴を投影するように構成されたディスプレイ画面と、
(構成C) 前記レンズ部の表面に向けられるとともに前記レンズ部の表面によって反射された反射を示す画像データを取得するように構成され、前記レンズ部に対して前記ディスプレイ画面側と同じ側に設けられたカメラであって、前記反射が前記ユーザの第1の目の第1の反射と前記ユーザの第2の目の第2の反射とを備えるカメラと、
(構成D) 前記カメラおよび前記ディスプレイ画面に通信可能に結合されたプロセッサであって、前記画像データに基づいて前記第1の場所から前記レンズ部の前記表面上の第2の場所への前記仮想特徴の投影を調整するように構成されたプロセッサと、
(構成X) を備える、ウェアラブル視覚化デバイス。
<参考図A(【図4】を元に作成)>
[図:0001438802000001.jpg]
<参考図B(【図3】を元に作成)>
[図:0001438802000002.jpg]
イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、図も適宜挿入して示した。また、下線は合議体が付したものである。
「【0030】
本明細書に開示されるウェアラブル視覚化デバイスの実施形態は、ウェアラブル視覚化デバイスとアトラクション(たとえば、アミューズメントパークの乗り物)との統合を容易化する様々な統合特徴も含みうる。たとえば、統合特徴は、ウェアラブル視覚化デバイスのハウジングに結合され、ウェアラブル視覚化デバイスを着用しているゲストの生体情報(たとえば、瞳孔間距離)を取得するように構成されたカメラを含みうる。特に、カメラは、ゲストがウェアラブル視覚化デバイスを頭に最初に装着したとき(たとえば、ゲストがアトラクションの乗り物車両に最初に搭乗したときなど)にそのような生体情報を取得しうる。ウェアラブル視覚化デバイスの処理システムは、ゲストの取得された生体情報に基づいてウェアラブル視覚化デバイスの特定のコンポーネント(たとえば、1以上のディスプレイ画面)をキャリブレーションするように構成され、その結果、ウェアラブル視覚化デバイスは、ゲストにAR/VR体験をより効果的に提供しうる。いくつかの実施形態において、処理システムは、ウェアラブル視覚化デバイスがゲストの頭に適切に取り付けられているか否かを判定するために、カメラによって取得された画像データをさらに利用しうる。一例として、処理システムは、取得した画像データを利用して、ウェアラブル視覚化デバイスの1以上のレンズまたはディスプレイがゲストの目と適切に位置合わせされているか否かを判定するために(たとえば、ゲストへのAR/VRコンテンツの効果的な提示を容易化する方法で)、取得された画像データを利用しうる。ウェアラブル視覚化デバイスがゲストの頭上で(たとえば、ゲストの目に対して)ずれていると処理システムが判定する場合、処理システムは、是正措置を実行するようにアトラクションを操作するゲストおよび/または乗り物技術者に指示するアラートを生成しうる。これらおよび他の特徴は、図面を参照して以下で詳細に説明される。」
「【0058】
以下の検討は、図3を参照して継続される。上記で簡単に論じられたように、カメラ84は、凹部72内に配置されうるとともに、レンズ部16上(たとえば、レンズ部16の内面97上)で見ることができる反射を示す画像データを取得するように構成されうる。たとえば、いくつかの実施形態において、カメラ84は、正中線90の方向に向けられ、その結果、カメラ84は、第1のレンズ28の一部および第2のレンズ30の一部の画像データを取得しうる。つまり、1つのカメラ84が、第1および第2のレンズ28、30の両方の画像データを取得しうる。特に、一実施形態において、カメラ84は、第1のレンズ28の第1のセクション122および第2のレンズ30の第1のセクション124の画像データを取得しうる。他の実施形態において、カメラ84は、レンズ部16の実質的にすべてから反射する光を示す画像データを取得しうる。
【図3】
[図:0001438802000003.jpg]
【0059】
そのため、第1および第2の画面74、76の間にカメラ84を配置することによって、1つのカメラ84が、それぞれ、第1および第2の画面74および76の両方によって第1および第2のレンズ28、30に投影された光(たとえば、仮想特徴)を示す画像データを取得するために使用されうる、ということに留意することが重要である。たとえば、カメラ84は、第1の画面74によって第1のレンズ28に投影されるとともに(たとえば、第1のレンズ28の反射層100を介して)カメラ84に向かって反射されて戻る光を観察しうる。同様に、カメラ84は、第2の画面76によって第2のレンズ30に投射されるとともに(たとえば、第2のレンズ30の反射層100を介して)カメラ84に向かって反射して戻る光を観察しうる。
【0060】
それに追えてまたは代えて、カメラ84は、(たとえば、ウェアラブル視覚化デバイス12およびインターフェースデバイス14を有するウェアラブル視覚化システム11がユーザの頭に取り付けられている場合に、)レンズ部16におけるユーザの目98の反射を観察することによってユーザの目98の画像データを取得しうる。いくつかの実施形態において、プロセッサ166(または電子ボード142の別の適切なコンポーネント)は、カメラ84によって取得された画像データを受信し、取得された画像データを、ユーザの生体情報を判定するために利用しうる。たとえば、以下で論じられるように、プロセッサ166は、ユーザの目98の取得された画像データを、ユーザの瞳孔間距離(たとえば、ユーザの目98のそれぞれの瞳孔間の距離)を決定するために利用しうる。プロセッサ166は、ウェアラブル視覚化デバイス12のパフォーマンス(たとえば、知覚されるユーザ体験)を改善する方法で、画面78によるAR/VR画像の投影を調整するために、導出された生体情報を利用しうる。
【0061】
たとえば、検討を容易化するために、図10は、(たとえば、ウェアラブル視覚化システム11がユーザの頭に取り付けられている場合に)カメラ84によって取得されうる画像200の実施形態である。明確さのため、上記のように、画像200は、(たとえば、ウェアラブル視覚化システム11がユーザの頭に取り付けられている場合に)カメラ84によって観察可能なレンズ部16の内面97での反射に対応しうる。そのため、第1の目92および第2の目94の位置は、画像200に見られるように、図3および5における第1の目92および第2の目94の図示された位置に対してミラーリングされる、ということを理解されたい
【図10】
[図:0001438802000004.jpg]
【図5】
[図:0001438802000005.jpg]
【0062】
図10の図示された実施形態に示されているように、画像200は、ユーザの第1の目92(たとえば、第1のレンズ28で反射されうるユーザの左目)の反射の少なくとも一部と、ユーザの第2の目94(たとえば、第2のレンズ30に反射されうるユーザの右目)と、を含みうる。画像200は、いくつかの実施形態では反射された特徴を何も含まないレンズ部16の正中線90を示す非光学領域202を含みうる。特定の実施形態では、画像200の取得を容易化するために、画面78の一方または両方は、レンズ部16におけるユーザの目の反射を強化するために一時的に明るくなる(たとえば、カメラフラッシュを提供する)ように構成されうる。
【0063】
カメラ84は、プロセッサ166に通信可能に結合されうるとともに、画像200を示すフィードバックをプロセッサ166に提供するように構成されうる。プロセッサ166は、ユーザの目98の瞳孔206のそれぞれのエッジ204を検出するために画像200を分析するように構成されうる。画像200内のエッジ204の位置に基づいて、プロセッサ166は、ユーザの第1の目92の第1の瞳孔周囲208およびユーザの第2の目94の第2の瞳孔周囲209を推定しうる。プロセッサ166は、第1の瞳孔周囲208の第1の重心を判定しうるとともに、第2の瞳孔周囲209の第2の重心を決定しうる。そのため、第1の重心は、第1の目92の第1の瞳孔の推定重心を示しうるとともに、第2の重心は、第2の目94の第2の瞳孔の推定重心を示しうる。
【0064】
瞳孔206の推定重心に基づいて、プロセッサ166は、ユーザの瞳孔206のそれぞれの重心間の距離を示しうるユーザの瞳孔間距離210(たとえば、図5参照)を判定しうる。いくつかの実施形態において、プロセッサ166は、ユーザの瞳孔間距離210を定量化するように構成されうる。他の実施形態において、プロセッサ166は、測定された瞳孔間距離210を複数の範囲セット(たとえば、小さい瞳孔間距離、中程度の瞳孔間距離、大きい瞳孔間距離)のうちの1つに分類するように構成されうる。
【0065】
以下の検討は、図5および図10を共に参照しながら継続する。プロセッサ166は、ウェアラブル視覚化デバイス12を現在利用している特定のユーザの瞳孔間距離210に基づいて画面78によって投影される仮想特徴の提示を調整するインストラクションを(たとえば、電子ボード142、ディスプレイドライバボード144に)送信するように構成されうる。たとえば、ユーザの瞳孔間距離210が比較的小さい(たとえば、第1のしきい値以下である)とプロセッサ166が判定した場合、プロセッサ166は、レンズ部16の正中線90により近い仮想特徴を画面78に投影させるインストラクションを送信し、その結果、仮想特徴の中心領域は、ユーザの瞳孔206と(その中央視内で)実質的に位置合わせされる。逆に、ユーザの瞳孔間距離210が比較的大きい(たとえば、第1のしきい値を超える、第1のしきい値よりも大きい第2のしきい値を超える)とプロセッサ166が判定した場合、プロセッサ166は、レンズ部16の周辺エッジ205により近い仮想特徴を画面78に投影させるインストラクションを送信し、その結果、仮想特徴は、ユーザの瞳孔206と(その中央視内で)再び実質的に位置合わせされる。
【0066】
いくつかの実施形態において、プロセッサ166は、画像200に基づいて、ウェアラブル視覚化システム11がユーザの頭に適切に配向および/または配置されているか否かを評価するように構成されうる。たとえば、図5を参照すると、ウェアラブル視覚化システム11がユーザの頭に適切に取り付けられている(たとえば、ユーザの頭でずれていない、オフセットされていない、または傾いていない)場合、第1のレンズ28の第1の頂点222と、ユーザの第1の目92の第1の瞳孔224の中心と、の間の第1の距離220は、第2のレンズ30の第2の頂点228と、ユーザの第2の目94の第2の瞳孔230の中心と、の間の第2の距離226と実質的に等しくなりうる。そのため、ウェアラブル視覚化システム11がユーザの頭に適切に取り付けられている場合、本明細書において参照軸234(たとえば、ウェアラブル視覚化デバイス12に関連する既知のまたは所定の軸)と呼ばれる、第1のレンズ28の第1の頂点222と第2のレンズ30の第2の頂点228とので延びる線は、瞳孔間距離210の瞳孔間軸236(たとえば、瞳孔206のそれぞれの中心間で延びる軸)と実質的に平行に延びうる。
【0067】
図10を参照すると、プロセッサ166は、参照軸234と瞳孔間軸236との間の角度240を判定しうる。参照軸234と瞳孔間軸236との間の角度240の大きさが許容値(たとえば、5度)よりも大きいが第1のしきい値角度値(たとえば、15度)以下であるとプロセッサ166が判定した場合、プロセッサ166は、角度240に基づいて画面78によって投影された仮想特徴の提示を調整するインストラクションを(たとえば、電子ボード142および/またはディスプレイドライバボード144に)送信しうる。
【0068】
たとえば、第1の目92の第1の瞳孔224が(たとえば、参照軸234に対して)第2の目94の第2の瞳孔230の下に配置されているとプロセッサ166が(たとえば、角度240に基づいて)判定した場合、プロセッサ166は、第1の画面74の投影された仮想特徴が第1のレンズ28の下部252に向かってより近くにオーバーレイされるように、第1の画面74の下部250により近い仮想特徴の投影を第1の画面74に調整させるインストラクションを送信しうる。それに加えてまたは代えて、プロセッサ166は、第2の画面76の投影された仮想特徴が第2のレンズ30の上部256に向かってより近くにオーバーレイされるように、第2の画面76の上部254により近い仮想特徴の投影を第2の画面76に調整させるインストラクションを送信しうる。この方法において、プロセッサ166は、ウェアラブル視覚化システム11がユーザの頭でわずかにオフセットされている(たとえば、傾いている)場合であっても、第1および第2のレンズ28、30に表示される投影された仮想特徴が、ユーザの第1および第2の目92、94の瞳孔206とそれぞれ実質的に位置合わせされることを可能とする。
【0069】
逆に、第1の目92の第1の瞳孔224が(たとえば、参照軸234に対して)第2の目94の第2の瞳孔230の上に配置されているとプロセッサ166が(たとえば、角度240に基づいて)判定した場合、プロセッサ166は、第1の画面74の投影された仮想特徴が第1のレンズ28の上部262に向かってより近くにオーバーレイされるように、第1の画面74の上部260により近い仮想特徴の投影を第1の画面74に調整させるインストラクションを送信しうる。それに追えてまたは代えて、プロセッサ166は、第2の画面76の投影された仮想特徴が第2のレンズ30の下部266に向かってより近くにオーバーレイされるように、第2の画面76の下部264により近い仮想特徴の投影を第2の画面76に調整させるインストラクションを送信しうる。したがって、上記で論じられたのと同様に、プロセッサ166は、ウェアラブル視覚化システム11がユーザの頭でわずかにオフセットされている(たとえば、傾いている)場合であっても、第1および第2のレンズ28に表示される投影された仮想特徴が、ユーザの第1および第2の目92、94の瞳孔206とそれぞれ実質的に位置合わせされうることを保証しうる。言い換えれば、プロセッサ166は、ユーザの頭でのウェアラブル視覚化システム11の位置ずれを修正するためのソフトウェア修正を実行しうる。
【0070】
いくつかの実施形態において、角度240の大きさが第1のしきい値角度値よりも大きいとプロセッサ166が判定した場合、プロセッサ166は、(たとえば、ユーザの頭のウェアラブル視覚化デバイス12を再配置するための)修正措置を手動で実行するようにユーザに指示するアラートを生成しうる。たとえば、プロセッサ166は、瞳孔間軸236が参照軸234と実質的に平行に調整させられるように、ユーザの頭の特定の方向(たとえば、左、右)にウェアラブル視覚化システム11を傾けるようにユーザに指示するメッセージをレンズ20に投影するように画面78に指示しうる。それに加えてまたは代えて、プロセッサ166は、ウェアラブル視覚化システム11を適切に再配置するようにユーザに指示する記録されたメッセージを提供する聴覚的アラートを(たとえば、音響スピーカを介して)生成しうる。この目的を達成するために、プロセッサ166は、ユーザの頭でのAR/VRシステム10の位置ずれを修正するためのハードウェア修正を実行するようにユーザに指示しうる。
【0071】
特定の実施形態では、カメラ84が、レンズ部16またはその近くに配置されうるとともに、ユーザの目の画像データを直接的に取得するように構成されうる、ということに留意されたい。つまり、そのような実施形態において、カメラ84は、レンズ部16の内面97上で見ることができる目98の反射の画像(たとえば、画像200)を取得する代わりに、目98の画像を取得するために目98の方に向けられうる。さらに、特定の実施形態において、ウェアラブル視覚化デバイス12は、レンズ部16で見ることができる反射の画像データを取得するように構成された第1のカメラと、ユーザの目に向けられ、ユーザの目の画像データを直接的に取得するように構成された追加のカメラと、を含みうる。いくつかの実施形態において、カメラ84は、ユーザの注視方向を判定するために、またはユーザの他の適切な使用情報を判定するために使用されうる。」
(2) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、最先の優先日前に発行された文献である国際公開第2014/017348号(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、下線は、当合議体が付したもので、後記イの「引用文献1の記載事項から読み取れる事項」において参照する記載、及び、後記ウの「引用発明の認定」において引用発明の認定に直接用いる記載を示す。図は、関連する記載の近傍に適宜挿入して示した。
(ア) 技術分野、背景技術、発明の概要、[図14]
「技術分野
[0001] 本技術は、画像表示装置および画像表示方法に関し、特に、表示素子に表示された画像を拡大光学系によって観察者眼に導くように構成されたヘッドマウントディスプレイなどの画像表示装置等に関する。
背景技術
[0002] 近年、使用者の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head-Mounted Display)が知られている。このヘッドマウントディスプレイは、原理的には、小型の表示素子に表示された画像を、拡大光学系で拡大して、観察者眼に導く構成である。つまり、ヘッドマウントディスプレイは、表示素子に表示された画像を光学的に拡大し、拡大された虚像として使用者に観察させるように構成されている。
[0003] この種のヘッドマウントディスプレイでは、例えば、図14(a)に示すように、光学系の中心と観察者眼の位置にずれが生じた場合、快適な画像観察に映像を及ぼす。この場合、例えば、ずれ量に応じて、色ずれが発生したり、コントラストが低下したり、画像歪が発生したりする。なお、図14(b)は、光学系の中心と観察者眼の位置にずれがない場合を示している。
[図14]
[図:0001438802000006.jpg]
[0004] 例えば、特許文献1には、光学系を移動可能に構成し、観察者が光学系を手動で移動調整して観察者眼と光学系の位置ずれを補正し得るヘッドマウントディスプレイが提案されている。
先行技術文献
特許文献
[0005] 特許文献1:特開2009-116196号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0006] 上述の特許文献1に記載される補正技術にあっては、観察者は、観察者眼と光学系の位置ずれがどの程度であるかを正確に知る手段がなく、光学系の位置を最適な位置に移動調整することが困難であった。
[0007] 本技術の目的は、光学系と観察者眼の位置ずれの補正を適切に行い得るようにすることにある。
課題を解決するための手段
[0008] 本技術の概念は、
観察者眼の眼球位置に基づいて、表示素子に表示された画像を上記観察者眼に導く光学系と上記観察者眼の位置関係を検出する位置関係検出部と、
上記位置関係検出部で検出された位置関係に基づいて、上記光学系と上記観察者眼の位置関係を補正する位置関係補正部とを備える
画像表示装置にある。
[0009] 本技術においては、位置関係検出部により、表示素子に表示された画像を上記観察者眼に導く光学系と観察者眼の位置関係が検出される。表示素子に表示された画像が、光学系により、観察者眼に導かれる。これにより、表示素子に表示された画像は、光学的に拡大され、拡大された虚像として観察者に観察される。例えば、光学系として、表示素子に表示された左眼画像を観察者の左眼に導く第1の光学系と、表示素子に表示された右眼画像を観察者の右眼に導く第2の光学系が存在する、ようにされてもよい。例えば、表示素子に表示された画像を観察者眼に導く光学系を更に備える、ようにされてもよい。
[0010] 例えば、観察者眼の眼球位置を推定する眼球位置推定部を更に備え、位置関係検出部は、この眼球位置推定部により推定された眼球位置に基づいて、光学系と観察者眼の位置関係を検出する、ようにされてもよい。この眼球位置の推定は、例えば、強膜反射法、EOG(Electro-Oculogram)法、顔認識技術の応用などにより行う、ようにされてもよい。位置関係検出部により、推定された眼球位置に基づいて、光学系と観察者眼の位置関係が検出される。
[0011] 位置関係補正部により、位置関係検出部で検出された位置関係に基づいて、光学系と観察者眼の位置関係が補正される。例えば、位置関係補正部は、位置関係検出部で検出された位置関係に基づいて、表示素子に表示される画像の表示位置をシフトする、ようにされてもよい。また、例えば、位置関係補正部は、位置関係検出部で検出された位置関係に基づいて、光学系を移動させる、ようにされてもよい。
[0012] また、例えば、位置関係補正部は、位置関係検出部で検出された位置関係を観察者に提示する位置関係提示部と、観察者の操作に応じて、光学系と観察者眼の位置関係を制御する制御部とを有する、ようにされてもよい。
[0013] 例えば、この場合、制御部は、観察者の操作に応じて、表示素子に表示される画像の表示位置のシフト制御を行う、ようにされてもよい。また、例えば、この場合、制御部は、観察者の操作に応じて、光学系の移動制御を行う、ようにされてもよい。
[0014] また、例えば、この場合、位置関係提示部は、表示素子に、位置関係検出部で検出された位置関係を表示する、ようにされてもよい。この場合、例えば、光学系と観察者眼のずれがゲージや文字等により表示されてもよい。また、この際、ずれを小さくするための、例えばリモコン装置の操作方法を表示する、ようにされてもよい。なお、この位置関係の表示を、上述の表示素子とは別個の表示素子に表示するようにされてもよい。また、この位置関係の提示を、音声、振動、さらには発光の強弱によって行う、ようにされてもよい。
[0015] このように本技術においては、光学系と観察者眼の位置関係の検出結果に基づいて、光学系と観察者眼の位置ずれが補正される。そのため、光学系と観察者眼の位置ずれの補正を適切に行うことが可能となる。
[0016] なお、本技術において、例えば、光学系の傾きを推定する傾き推定部をさらに備え、位置関係検出部は、推定された眼球位置と共に、推定された傾きに基づいて、光学系と観察者眼の位置関係を検出する、ようにされてもよい。この場合、光学系が傾いている場合にあっても、光学系と観察者眼の位置関係を精度よく検出でき、光学系と観察者眼の位置ずれの補正を適切に行うことが可能となる。
[発明の効果]
[0017] 本技術によれば、光学系と観察者眼の位置ずれの補正を適切に行うことができる。」
(イ) <第1の実施の形態>([0020]~[0045]、[図1]~[図4])
「[0020] <1.第1の実施の形態>
[ヘッドマウントディスプレイ(両眼)の構成例]
図1は、第1の実施の形態としての光学透過のヘッドマウントディスプレイ(HMD)100の概略的な構成例を示している。この構成例は両眼HMDである。このHMD100は、左側のメガネレンズ部101Lと、右側のメガネレンズ部101Rを有している。メガネレンズ部101Lとメガネレンズ部101Rは、接続部材102により一体的に接続されている。
[図1]
[図:0001438802000007.jpg]
[0021] メガネレンズ部101L,101Rは、それぞれ、メガネレンズとHOE(Holographic Optical Element)シートとが一体化されたものである。このHOEシートは、外界光と表示光とを合成するハーフミラーのような機能と、表示画像を拡大する凹面や自由曲面の機能を併せ持っている。
[0022] メガネレンズ部101L,101Rに、それぞれ、赤外線センサ103L,103Rが取り付けられている。この場合、赤外線センサ103Lは、メガネレンズ部101Lの水平方向の中心位置(左眼光学系の水平方向の中心位置)に取り付けられている。また、赤外線センサ103Rは、メガネレンズ部101Rの水平方向の中心位置(右眼光学系の水平方向の中心位置)に取り付けられている。また、メガネレンズ部101Lに、メガネレンズ部101L,101Rを含む光学系の傾きを検出するためのジャイロセンサ104が取り付けられている。
[0023] 赤外線センサ103L,103Rのセンサ出力は、強膜反射法による眼球位置推定のために使用される。強膜反射法は、角膜(黒目)と強膜(白目)においての反射率が異なることを利用した手法である。この場合、赤外線センサは、観察者眼側に照射する微弱赤外線を水平方向にスキャンし、その反射光を検出する。角膜(黒目)と強膜(白目)における反射光の強さが大きく異なるので、センサ出力から観察者の眼球位置を推定することが可能となる。
[0024] また、HMD100は、画像補正部111と、ディスプレイドライバ112L,112Rと、ディスプレイ113L,113Rと、眼球位置推定部114と、傾き推定部115と、表示制御部116を有している。
[0025] ディスプレイ113Lは、表示素子を構成し、左眼画像を表示する。このディスプレイ113Lは、例えばLCD(Liquid Crystal Display)により構成され、ディスプレイドライバ112Lにより駆動されて、立体画像を構成する左眼画像を表示する。また、ディスプレイ113Rは、表示素子を構成し、右眼画像を表示する。このディスプレイ113Rは、例えばLCD(Liquid Crystal Display)により構成され、ディスプレイドライバ112Rにより駆動されて、立体画像を構成する右眼画像を表示する。
[0026] 眼球位置推定部114は、赤外線センサ103L,103Rからのセンサ出力に基づいて、観察者の左眼、右眼の眼球位置を推定する。この場合、眼球位置推定部114は、赤外線センサ103Lのセンサ出力のレベルに基づいて、角膜(黒目)スキャン時の角度ωLを、左眼の眼球位置の推定結果とする。また、この場合、眼球位置推定部114は、赤外線センサ103Rのセンサ出力のレベルに基づいて、角膜(黒目)スキャン時の角度ωRを、右眼の眼球位置の推定結果とする。
[0027] 傾き推定部115は、ジャイロセンサ104のセンサ出力に基づいて、メガネレンズ部101L,101Rを含む光学系の水平方向に対する傾きθを推定する。表示制御部116は、左眼、右眼の眼球位置推定結果および光学系の傾き推定結果に基づいて、左眼光学系と左眼との位置関係を検出すると共に、右眼光学系と右眼との位置関係を検出する。
[0028] すなわち、表示制御部116は、左眼の眼球位置の推定結果である角度ωLに基づいて左眼光学系の観察者の左眼に対する位置ずれdLを求め、右眼の眼球位置の推定結果である角度ωRに基づいて右眼光学系の観察者の右眼に対する位置ずれdRを求める。そして、表示制御部116は、このように求められた位置ずれdL,dRと、既知である赤外線センサ103L,103Rのセンサ間距離dsに基づいて、両眼間隔deを算出する。
[0029] 図2は、光学系と眼球との位置関係の一例を示している。この例の場合、両眼間隔dsは、以下の数式(1)に示すように表される。
de=ds-dL-dR ・・・(1)
[図2]
[図:0001438802000008.jpg]
[0030] なお、図2の例は、光学系の傾きθが0である場合を示している。しかし、光学系の傾きθが0でない場合もある。その場合、表示制御部116は、このように求められた位置ずれdL,dRと、既知である赤外線センサ103L,103Rのセンサ間距離dsと、さらに傾きθに基づいて、両眼間隔deを算出する。
[0031] 図3は、その場合における光学系と眼球との位置関係の一例を示している。この例の場合、両眼間隔deは、以下の数式(2)に示すように表される。このように傾きθを考慮することで、両眼間隔deを精度よく取得することが可能となる。
de=ds/cosθ-dL/cosθ+dR/cosθ
=(ds-dL+dR)/cosθ ・・・(2)
[図3]
[図:0001438802000009.jpg]
[0032] 表示制御部116は、両眼間隔deに基づいて、左眼画像、右眼画像の表示位置を、水平方向の互いに逆方向にシフト制御する。つまり、表示制御部116は、画像を操作し、電子的に光学系を移動させることにより、自動で光学系と観察者の眼球位置の位置ずれを補正する。
[0033] 表示制御部116は、両眼間隔deと、傾きθを考慮したセンサ間距離ds・cosθとの差s(de-ds・cosθ)に応じて、左眼画像、右眼画像の表示位置をシフトさせる。図4は、左眼画像、右眼画像の表示位置のシフト制御を概略的に示している。S=0である場合には、図4(a)に示すように、左眼画像、右眼画像の水平方向へのシフト量は0とされる。
[図4]
[図:0001438802000010.jpg]
[0034] また、S>0である場合には、図4(b)に示すように、左眼画像、右眼画像の水平方向へのシフト量はそれぞれs/2とされ、表示位置が互いに離れるようにされる。また、S<0である場合には、図4(c)に示すように、左眼画像、右眼画像の水平方向へのシフト量はそれぞれ|s|/2とされ、表示位置が互いに近づくようにされる。
[0035] 図1に戻って、画像補正部111は、立体(3D)画像を表示するための左眼画像データ、右眼画像データに対して、表示制御部116の制御のもと、表示位置をシフトさせるための画像補正処理を行う。画像補正部111は、補正後の左眼画像データをディスプレイドライバ112Lに供給し、補正後の右眼画像データをディスプレイドライバ112Rに供給する。
[0036] [位置ずれ補正時の動作]
図1に示すHMD100における光学系と観察者眼の位置ずれ補正時の動作を説明する。この位置ずれ補正時には、例えば、テスト用の左眼画像データおよび右眼画像データが使用される。
[0037] 左眼画像データは、画像補正部111を介してディスプレイドライバ112Lに供給される。このディスプレイドライバ112Lによりディスプレイ113Lが駆動され、このディスプレイ113Lに左眼画像が表示される。同様に、右眼画像データは、画像補正部111を介してディスプレイドライバ112Rに供給される。このディスプレイドライバ112Rによりディスプレイ113Rが駆動され、このディスプレイ113Rに右眼画像が表示される。
[0038] ディスプレイ113Lに表示された左眼画像からの光は、メガネレンズ部101Lで反射されて観察者の左眼に届く。これにより、ディスプレイ113Lに表示された左眼画像は、メガネレンズ部101Lで光学的に拡大され、拡大された虚像として、観察者の左眼で観察される。同様に、ディスプレイ113Rに表示された右眼画像からの光は、メガネレンズ部101Rで反射されて観察者の右眼に届く。これにより、ディスプレイ113Rに表示された右眼画像は、メガネレンズ部101Rで光学的に拡大され、拡大された虚像として、観察者の右眼で観察される。このように観察者の左眼、右眼にそれぞれ左眼画像、右眼画像が観察されることで、観察者には拡大された立体(3D)画像が知覚される。
[0039] この画像表示状態で、メガネレンズ部101Lの水平方向の中心位置(左眼光学系の水平方向の中心位置)に取り付けられている赤外線センサ103Lから観察者眼側に微弱赤外線が照射されて水平方向にスキャンされる。また、この画像表示状態で、メガネレンズ部101Rの水平方向の中心位置(右眼光学系の水平方向の中心位置)に取り付けられている赤外線センサ103Rから観察者眼側に微弱赤外線が照射されて水平方向にスキャンされる。
[0040] 赤外線センサ103L,103Rのセンサ出力はそれぞれ眼球位置推定部114に供給される。この眼球位置推定部114では、赤外線センサ103L,103Rからのセンサ出力に基づいて、観察者の左眼、右眼の眼球位置が推定される。この眼球位置推定部114からは、左眼、右眼の眼球位置の推定結果として、角膜(黒目)スキャン時の角度ωL,ωRが出力される(図2、図3参照)。
[0041] また、メガネレンズ部101Lに取り付けられているジャイロセンサ104のセンサ出力は傾き推定部115に供給される。この傾き推定部115では、ジャイロセンサ104のセンサ出力に基づいて、メガネレンズ部101L,101Rを含む光学系の水平方向に対する傾きθが推定される(図3参照)。
[0042] 眼球位置推定部114の推定結果である角度ωL,ωRは表示制御部116に供給される。また、傾き推定部115の推定結果である傾きθは表示制御部116に供給される。表示制御部116では、左眼、右眼の眼球位置推定結果および光学系の傾き推定結果に基づいて、左眼光学系の観察者の左眼に対する位置ずれdLと、右眼光学系の観察者の右眼に対する位置ずれdRが求められる(図2、図3参照)。
[0043] 表示制御部116では、位置ずれdL,dRと、既知である赤外線センサ103L,103Rのセンサ間距離dsと、さらに傾きθに基づいて、両眼間隔deが算出される((2)式参照)。この場合、傾きθが考慮されることで、両眼間隔deが高い精度で求められる。
[0044] そして、表示制御部116により、画像補正部111が制御され、ディスプレイ113L,113Rに表示される左眼画像、右眼画像の表示位置がシフト制御される。この場合、両眼間隔deと、傾きθを考慮したセンサ間距離ds・cosθとの差s(de-ds・cosθ)に応じて、その差sが0となるように制御される。これにより、観察者の左眼に左眼画像の水平方向の中心が一致するようにされ、観察者の右眼に右眼画像の水平方向の中心が一致するようにされ、光学系と観察者眼の位置ずれが補正される。
[0045] 上述したように、図1に示すHMD100においては、光学系と観察者眼の位置関係の検出結果に基づいて、左眼画像、右眼画像の表示位置がシフト制御され、光学系と観察者眼の位置ずれが電子的に補正される。そのため、光学系と観察者眼の位置ずれの補正を適切に行うことができる。」
(ウ) <変形例>([0129]~[0135]、[図13])
「[0129] <9.変形例>
…中略…
[0131] また、上述実施の形態では、ディスプレイ113L,113Rに表示される左眼画像、右眼画像を水平方向にシフト制御することで、光学系と観察者眼の水平方向の位置ずれを補正する例を示した。詳細説明は省略するが、同様にして、さらに、光学系と観察者眼の垂直方向の位置ずれを補正することも考えられる。
[0132] また、上述実施の形態では、各メガネレンズ部に1個の赤外線センサが取り付けられ、観察者側に照射される微弱赤外線がスキャン操作される例を示した。しかし、例えば、図13(a)に示すように、メガネレンズ部GLに複数個の赤外線センサIRSを取り付け、各赤外線センサIRSのセンサ出力に基づいて観察者眼の位置を総合的に判断するように構成することも考えられる。この場合、赤外線センサIRSの個数が多い場合には、各赤外線センサIRSから観察者側に照射される微弱赤外線をスキャン操作しなくてもよくなる。
[0133] また、上述実施の形態では、各メガネレンズ部に赤外線センサが取り付けられる例を示した。しかし、例えば、図13(b)に示すように、反射シートRSを利用することで、赤外線センサIRSをメガネレンズ部GLからある程度離れた場所に設置することも可能である。なお、この場合にあっても、図13(c)に示すように、複数個の赤外線センサIRSを配置して、各赤外線センサIRSのセンサ出力に基づいて観察者眼の位置を総合的に判断するように構成することも考えられる。
[図13]
[図:0001438802000011.jpg]
[0134] また、上述実施の形態では、画像補正部111では、画像の表示位置を水平方向にシフトさせる例を示した。厳密に、さらに、垂直方向へのシフト、回転、拡大、縮小等により位置合わせを行うことも考えられる。
[0135] また、上述実施の形態では、眼球位置推定を強膜反射法を応用することで行っている。しかし、その他の技術、例えばEOG(Electro-Oculogram)法や顔認識技術等を応用することも考えられる。」
イ 引用文献1の記載事項から当業者が認識できる技術事項
(ア) 認定事項1
a 引用文献1の第1の実施の形態においては、各メガネレンズ部に赤外線センサが取り付けられる例を示しているところ、その変形例として、図13(b)に示す「反射シートRSを利用することで、赤外線センサIRSをメガネレンズ部GLからある程度離れた場所に設置する」([0133])ものが記載されている。
そして、図13(b)から、赤外線センサIRSは、メガネレンズ部GLに対し、目と同じ側に配置されていることが見て取れる。
そうすると、当業者は、第1の実施例の変形例として、次の技術事項(以下「認定事項1」という。)が認識できる。
<認定事項1>
「赤外線センサ103L,103Rを有し、赤外線センサ103L,103Rは、メガネレンズ部101L,101Rに対し、観察者眼と同じ側に、メガネレンズ部101L,101Rからある程度離れた場所に設置されること。」
b さらに、図13(b)から、メガネレンズ部GLの観察者眼に面した表面には反射シートRSが設けられ、該反射シートRSから目に向かって矢印がひかれ、目と反射シートRSの間に線がひかれ、その線と反射シートRSが接する位置から赤外線センサIRSに向かって、矢印がひかれている様子が見て取れる。
ここで、実施の形態1においては、「赤外線センサ103L,103R」は、「観察者眼側に照射する微弱赤外線を水平方向にスキャンし、その反射光を検出」し、「角膜(黒目)と強膜(白目)における反射光の強さが大きく異なるので、センサ出力から観察者の眼球位置を推定することが可能となる」([0023])とされていることから、当業者は、第1の実施例の変形例として、次の技術事項(以下「認定事項2」という。)を認識できる。
<認定事項2>
「赤外線センサ103L,103Rは、観察者眼側に照射する微弱赤外線を水平方向にスキャンし、その反射光を検出し、角膜(黒目)と強膜(白目)における反射光の強さが大きく異なるので、センサ出力から観察者の眼球位置を推定することが可能となるものであり、
赤外線センサ103L,103Rから照射された微弱赤外線は、メガネレンズ部101L,101Rの観察者眼に面した表面に設けられた反射シートRSで反射され、観察者眼を照射し、その角膜(黒目)と強膜(白目)における反射光は、再び反射シートRSに向かい反射され、赤外線センサ103L,103Rにより検出されること。」
ウ 引用発明の認定
前記アに摘記した引用文献1の記載事項及び前記イで認定した認定事項1、2を総合すると、引用文献1には、実施の態様の変形例に係る発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた箇所の段落番号及び認定事項を参考までに括弧内に付した。)。
<引用発明>
「光学透過のヘッドマウントディスプレイ(HMD)100であって、
左側のメガネレンズ部101Lと、右側のメガネレンズ部101Rを有し、
メガネレンズ部101Lとメガネレンズ部101Rは、接続部材102により一体的に接続されており、([0020])
メガネレンズ部101L,101Rは、それぞれ、メガネレンズとHOE(Holographic Optical Element)シートとが一体化されたものであり、このHOEシートは、外界光と表示光とを合成するハーフミラーのような機能と、表示画像を拡大する凹面や自由曲面の機能を併せ持っており、([0021])、
画像補正部111と、ディスプレイドライバ112L,112Rと、ディスプレイ113L,113Rと、眼球位置推定部114と、傾き推定部115と、表示制御部116を有しており、([0024])、
ディスプレイ113Lは、表示素子を構成し、立体画像を構成する左眼画像を表示し、また、ディスプレイ113Rは、表示素子を構成し、立体画像を構成する右眼画像を表示するものであり、([0025])
ディスプレイ113Lに表示された左眼画像からの光は、メガネレンズ部101Lで反射されて観察者の左眼に届き、これにより、ディスプレイ113Lに表示された左眼画像は、メガネレンズ部101Lで光学的に拡大され、拡大された虚像として、観察者の左眼で観察され、
同様に、ディスプレイ113Rに表示された右眼画像からの光は、メガネレンズ部101Rで反射されて観察者の右眼に届き、これにより、ディスプレイ113Rに表示された右眼画像は、メガネレンズ部101Rで光学的に拡大され、拡大された虚像として、観察者の右眼で観察され、
このように観察者の左眼、右眼にそれぞれ左眼画像、右眼画像が観察されることで、観察者には拡大された立体(3D)画像が知覚されるものであり、([0038])
赤外線センサ103L,103Rを有し、赤外線センサ103L,103Rは、メガネレンズ部101L,101Rに対し、観察者眼と同じ側に、メガネレンズ部101L,101Rからある程度離れた場所に設置されており、(認定事項1)
赤外線センサ103L,103Rは、観察者眼側に照射する微弱赤外線を水平方向にスキャンし、その反射光を検出し、角膜(黒目)と強膜(白目)における反射光の強さが大きく異なるので、センサ出力から観察者の眼球位置を推定することが可能となるものであり、
赤外線センサ103L,103Rから照射された微弱赤外線は、メガネレンズ部101L,101Rの観察者眼に面した表面に設けられた反射シートRSで反射され、観察者眼を照射し、その角膜(黒目)と強膜(白目)における反射光は、再び反射シートRSに向かい反射され、赤外線センサ103L,103Rにより検出されるものであり、(「認定事項2」)
赤外線センサ103L,103Rのセンサ出力はそれぞれ眼球位置推定部114に供給され、この眼球位置推定部114では、赤外線センサ103L,103Rからのセンサ出力に基づいて、観察者の左眼、右眼の眼球位置が推定され、([0040])
光学系と観察者眼の位置関係の検出結果に基づいて、左眼画像、右眼画像の表示位置がシフト制御され、光学系と観察者眼の位置ずれが電子的に補正され、そのため、光学系と観察者眼の位置ずれの補正を適切に行うことができる、([0045])
光学透過のヘッドマウントディスプレイ(HMD)100。([0020])」
(3) 周知技術の認定
ア 引用文献2~4に記載された事項
(ア) 引用文献2に記載された事項
当審において新たに引用する、最先の優先日前に発行された文献である特開2016-9083号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば使用者が眼鏡をかけた状態で、使用者の視界を遮ることなく、視点検出等を行うことができる眼鏡レンズを有する光学装置、及びそれを用いた眼鏡、並びに眼鏡型表示装置に関する。
…中略…
【0066】
次に、図1、図2で説明した眼鏡レンズを用いた具体的なアプリケーションについて説明する。図5は、第1の実施の形態を示す眼鏡の模式図(斜視図)である。
【0067】
図5に示すように、眼鏡30は、眼鏡レンズ1と眼鏡レンズ1を支持するフレーム31とを有して構成される。図5に示すように、眼鏡30にはフレーム31のテンプル部分の内面31a(使用者と対向する側の面)に、CCDカメラやCMOS等の撮像素子(画像光機能部)32と、眼鏡レンズ1に向けて照明光を照射する照明部33とが設けられている。
【図5】
[図:0001438802000012.jpg]
【0068】
照明部33は、拡散照明やパルス発光可能な構成等であるが、使用者に照明光の影響を与えないように照明部33は、例えば、近赤外LED照明であることが好ましい。近赤外照明により、眼鏡レンズ1の光反射層を介して瞳周辺を眩しくない状態で照明でき、瞳孔画像を撮像素子32で適切に撮影できる。
【0069】
図5に示すように、眼鏡30を装着した使用者の瞳孔E1、あるいは瞳孔E1の周辺も含んだ画像光L5が眼鏡レンズ1で反射されて撮像素子32に取り込まれる。ここで「瞳孔画像」とは、瞳孔のみの画像、瞳孔と瞳孔周辺を含む画像の双方が含まれる。」
「【0081】
図7は、第3の実施の形態を示す眼鏡型表示装置の模式図(斜視図)である。図10は、第3の実施の形態の眼鏡の光学機構を説明するための模式図(断面図)である。図5、図6、図8、図9と同じ符号の部分は、各図面と同じ部材を示している。
【図7】
[図:0001438802000013.jpg]
【0082】
図7は、ヘッドマウントディスプレイ(眼鏡型表示装置)44を構成している。図7に示すように、フレーム31のテンプル部分の内面31aには、プロジェクタ(投影装置)45が配置されている。図7に示すように、プロジェクタ45は、光軸方向に対して傾いた位置であって、光反射層4(図1等参照)を介した反射光路上に配置されている。このため、プロジェクタ45から出射された画像光L6は、眼鏡レンズ1の光反射層4にて反射されるので、ヘッドマウントディスプレイ44を装着した使用者がプロジェクタ45にて映し出された画像を見ることができる。このとき光反射層4にて反射した画像光L6を、光軸方向と平行な方向に出射できる。
【0083】
図7では、フレーム31テンプル部分の内面31aに図5で説明した撮像素子32及び照明部33が配置されている。」
【0084】
図10に示すように、撮像素子32により瞳孔E1の画像を取得できる。図10に示す制御部42では、撮像素子32にて取得された瞳孔画像と、プロジェクタ45(図7参照)からの表示画像とをマッチングさせて、表示画像内での瞳孔位置を検出することができる。これにより、視点位置に基づいて、表示画像に対する所定の処理、命令等を行うことができる。例えば、表示画像がキーボードであり、視点の動きに基づいて文字入力を可能とする。あるいは表示画像がゲーム画像であり、視点の動きに基づいて、ゲームを進行させることができる。このように、目の動きに合わせて画像を動かしたり画像内に所定の指示を与える等、手を使わずとも所定の動作を行うことが可能になる。
【図10】
[図:0001438802000014.jpg]
」
(イ) 引用文献3に記載された事項
当審において新たに引用する、最先の優先日前に発行された文献である特表2017-514169号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「【0010】
本開示は、目の瞳孔を照らすための光学装置において有用な光学素子、詳細にはアイトラッキング(視線計測)機能を備えることができるヘッドマウントディスプレイと使用するための光学素子を提供するものである。本光学装置は、光源と、光を透過する光学素子とを有し、光源から放射された光が光学素子によって目の瞳孔に向けられることで、カメラなどの光学センサによって目の特性を検出することができる。光源は、人の目には見えない赤外光を放射することができるため、ヘッドマントディスプレイの世界像及び/又は合成デジタル画像の質を低下させない。
…中略…
【0022】
図1Aは、ヘッドマウントディスプレイシステム100の概略断面図を示し、図1Bは、本開示の一態様に基づく図1Aの光学素子の概略断面図を示す。ヘッドマウントディスプレイ100は、ヘッドマウントディスプレイシステムを使用者の頭部(図に示されていない)に配置するために使用することができるフレーム140を有している。フレーム140は、主光線103によって画像を生成する画像源101を支持している。画像源101は、画像生成装置101a及びカメラのような画像センサ101bの両方を含むことができる。画像生成装置101aは、他で述べるように、現実世界像150と合成することができる二次的画像を生成するために使用することができる。ヘッドマウントディスプレイはまた、他で述べるように、フレーム140に取り付けられた光源102を更に有することができる。主光線103は、1/4波長移相子109と接合された、第1の表面114を有するベースレンズ113を有する光学素子105に向けられており、1/4波長移相子109は更に線形反射型偏光子107と接合されている。光学素子105もフレーム140に取り付けられている。
【図1A】
[図:0001438802000015.jpg]
【図1B】
[図:0001438802000016.jpg]
」
「【0026】
図2は、本開示の一態様に基づく、ヘッドマウントトラッキング装置200の概略断面図を示す。図2に示される要素201~250のそれぞれは、上記に述べた図1に示される同様の番号が付された要素101~150に対応している。例えば、図2に示されるフレーム240は、図1のフレーム140に対応している、といった具合である。図2では、ヘッドマウントトラッキング装置200は目229の光彩を光で照らしており、光源202(イルミネーター202とも呼ばれる)が光線束204を形成する光を放射し、光線束204はここで部分リフレクター207を備えた表面を有する光学素子205を照らしている。光線束203の少なくとも一部は部分リフレクター207により反射されて光線束206を形成し、これが目229の光彩を照らす。カメラ201bが光彩の画像を生成し、この画像を処理することで目229の1つ以上の特性を測定することができる。
【図2】
[図:0001438802000017.jpg]
」
「【0034】
本明細書に述べられる目のモニタリングシステムのいずれも、本明細書と同日に出願された、発明の名称が「Near-Eye Display」である、代理人整理番号が74975US002である同時係属中の米国特許出願に述べられるものなどのペリクル反射素子を有するニアアイディスプレイシステムと組み合わせることができる点は理解されよう。検出することが可能な目のモニタリング特性としては、以下のもの、すなわち、目の視線の方向、瞳孔の直径及び直径の変化、まぶたの瞬き、目が追跡する物体、及び衝動性眼球運動(サッケード運動)の1つ以上が挙げられる。アイトラッキングのパラメータとしては、眼球の回転の速度、及び物体の運動と眼球の運動との間の時間のずれ又は位相が挙げられる。サッケード運動としては、運動の時間的長さ、速度、及びパターンを挙げることができる。記載したペリクルは、当業者には直ちに理解されるように、瞳孔イルミネーター及び画像受信光学素子の反射面を与えるうえで、また、ニアアイディスプレイの反射面を与えるうえで有用でありうる。」
(ウ) 引用文献4に記載された事項
当審において新たに引用する、最先の優先日前に発行された文献である中国特許出願公開第103500012号明細書(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。なお、括弧書きの仮訳は当合議体が作成した。
「
[図:0001438802000018.jpg]
」
(要約
本発明は、ヘッドマウント型眼球運動データ取得装置を開示するものであり、眼球運動データ取得分野に属する。本装置は、眼鏡本体、近赤外反射膜及び近赤外照明カメラ装置を含む。近赤外反射膜は、前記眼鏡本体のレンズ内表面に被覆される。近赤外照明カメラ装置は、前記眼鏡本体のテンプル内側に設置され、近赤外照明カメラ装置の画像取得端は、前記眼鏡本体のレンズ内表面に被覆された近赤外反射膜の反射面に対応する。本装置は、眼鏡本体に集積された近赤外反射膜と近赤外照明カメラ装置の連携により、ユーザーが眼鏡で通常視認する機能を損なうことなく、容易に眼球運動データを取得できる。ハードウェア占有スペースが小さく構造がコンパクトで、集積度が高く軽量である。懸垂部品がなく装着・使用・保管が容易で、ユーザーに受け入れられやすく悪影響を与えず、信頼性が高い。)
「
[図:0001438802000019.jpg]
」
(技術分野
[0001] 本発明は眼球運動データの取得した分野に関し、特にヘッドマウント眼球運動データ取得手段に関する。
背景技術
[0002] 視線追跡技術は、人間の眼球運動情報をリアルタイムに感知し、注視点の位置を推定する新技術であり、ヒューマンマシンインタラクション、拡張現実、人間行動分析、心理学研究などの分野で重要かつ革新的な応用を持つ。視覚ベースの視線追跡システムは、カメラで眼球画像を撮影することで眼球運動情報を取得する。現在のヘッドマウント型視線追跡システムは、カメラを眼球の上方又は前方に設置する方式が主流であり、見た目が良くない上に装着も不便である。さらに使用や保管過程において、スタンドのずれや変形など人為的な機械的損傷が発生しやすく、システムの精度と実用性に影響を及ぼす。これらの問題が視線追跡システムの普及を妨げている。
発明の開示
[0003] 本発明が解決しようとする技術課題は、外観の隠蔽性に優れ、構造がコンパクトで軽量なヘッドマウント型眼球運動データ取得装置を提供することである。この装置は眼球運動データをリアルタイムで取得でき、カメラを外部に設置する必要がなく、またカメラ用の複雑な支持構造を構築する必要もない。)
「
[図:0001438802000020.jpg]
」
([0022] 図1に示すように、本発明の実施例の眼球運動データ取得装置は、眼鏡フレーム1を基本構造とし、近赤外反射膜2は既存の工程でレンズ11の内表面に蒸着可能である。近赤外を採用する目的は、可視光下における人眼の正常な視覚機能に影響を与えないこと、すなわち人眼がレンズを通して正常に物を見られるようにするためである。眼鏡本体1のテンプル12内側に設置されたマイクロ近赤外線カメラ31と近赤外線光源32(両者は一体構造でも、コンパクトに配置された分離構造でもよい)が近赤外線照明撮影装置3を構成する。マイクロ近赤外線カメラ31の体積は必要に応じてカスタマイズ可能であり、当該眼鏡本体を装着した際にユーザーに影響を与えないことを基準とする。マイクロ近赤外線カメラ31の焦点距離は、レンズ上に反射した赤外線眼部画像を鮮明に撮影できる範囲に調整可能である。
[0023] 本装置を使用する際、ユーザーは装置の眼鏡本体1を装着する。レンズ11の内層にある近赤外反射膜2が近赤外光源の光を眼部領域に反射し、ユーザーの眼部が近赤外光を反射することで、レンズ11上に反射された近赤外眼部領域画像4が生成される。ただしこの画像は人間の目には見えない。レンズ11上の眼部領域画像4はマイクロ近赤外線カメラ31に反射され、 マイクロ近赤外線カメラ31が捕捉した眼部領域画像4は、さらにデータ伝送装置5を介して有線または無線方式で後端コンピュータ6に伝送され、さらなる処理が行われる。)
「
[図:0001438802000021.jpg]
」
(図1)
イ 周知技術の認定
前記アに摘記した引用文献2~4の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術A」という。)。
<周知技術A>
「眼鏡型のヘッドマウントディスプレイにおいて、目(瞳孔周辺)からの眼鏡レンズ部での反射光をカメラで撮像して、眼鏡レンズ部に対する目(瞳孔周辺)の位置関係を求めること。」
(4) 本件補正発明と引用発明との対比
ア 対比分析
(ア) 構成Xの観点(ウェアラブル視覚化デバイス)
構成Xは、「拡張現実、仮想現実、および/または複合現実体験をユーザに提供するように構成されたウェアラブル視覚化デバイス」の発明であることを特定するものである。
a 引用発明は、「光学透過のヘッドマウントディスプレイ(HMD)100」の発明であり、頭部に装着して使用するディスプレイであるから、本件補正発明にいうところの「ウェアラブル視覚化デバイス」であるといえる。
b(a) 引用発明の「光学透過のヘッドマウントディスプレイ(HMD)100」は、「ディスプレイ113L」、「ディスプレイ113R」に、それぞれ、「左眼画像」、「右眼画像」を表示し、「観察者の左眼、右眼にそれぞれ左眼画像、右眼画像が観察されることで、観察者には拡大された立体(3D)画像が知覚され」るものである。
(b) そして、「光学透過のヘッドマウントディスプレイ(HMD)100」が有する「メガネレンズ部101L,101R」には、「外界光と表示光とを合成するハーフミラーのような機能」が備わっており、「ヘッドマウントディスプレイ(HMD)100」は「光学透過の」ものとされていることから、「観察者」(「ユーザ」に相当する。)は、ある程度外部の様子を見ることができるものであり、外部の様子とともに「拡大された立体(3D)画像」を知覚できると理解される。
(c) そうすると、引用発明の「光学透過のヘッドマウントディスプレイ(HMD)100」は、本件補正発明にいうところの「拡張現実、仮想現実、および/または複合現実体験をユーザに提供するように構成された」ものであるといえる。
c 前記a及びbの検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の発明である点において一致する。
「拡張現実、仮想現実、および/または複合現実体験をユーザに提供するように構成されたウェアラブル視覚化デバイス」の発明
(イ) 引用発明の構成と本件補正発明の構成の相当関係
本件補正発明と引用発明の対比分析の見通しをよくするために、引用発明の構成と本件補正発明の構成との相当関係を最初にまとめると、次の引用発明の欄に記載した引用発明の各構成は、それぞれ、対応する本件補正発明の欄に記載した次の本件補正発明の構成に相当する。
<引用発明> <本件補正発明>
「観察者」 「ユーザ」
「観察者眼」 「目」
「メガネレンズ部101L,101R」 「レンズ部」
「ディスプレイ113L,113R」 「ディスプレイ画面」
「立体(3D)画像」 「仮想特徴」
「左眼」 「第1の目」
「右眼」 「第2の目」
(ウ) 構成Aの観点(レンズ部)
構成Aは、「前記ユーザの目に向けられる表面を有するレンズ部」を備えることである。
a 引用発明における「メガネレンズ部101L,101R」(「レンズ部」に相当する。)の「観察者眼に面し」「反射シートRS」が設けられている面は、本件補正発明における「レンズ部」の「前記ユーザの目に向けられる表面」に相当する。
b したがって、本件補正発明は引用発明と、構成Aの点である次の点において一致する。
「前記ユーザの目に向けられる表面を有するレンズ部」を備える点。
(エ) 構成Bの観点(ディスプレイ画面)
構成Bは、「前記レンズ部に対して前記ユーザの目と同じ側に設けられたディスプレイ画面であって、前記レンズ部の前記表面に向けられるとともに前記表面の第1の場所上へと仮想特徴を投影するように構成されたディスプレイ画面」を備えることである。
a 引用発明において、「ディスプレイ113Lに表示された左眼画像からの光は、メガネレンズ部101Lで反射されて観察者の左眼に届き、これにより、ディスプレイ113Lに表示された左眼画像は、メガネレンズ部101Lで光学的に拡大され、拡大された虚像として、観察者の左眼で観察され」るから、「ディスプレイ113L」は、「メガネレンズ部101L」に対し光が入射して反射する側にある、「左眼」と同じ側、すなわち、「観察者眼」と同じ側に設けられ、「メガネレンズ部101L」の表面に向けられていることが理解される。
同様に、「ディスプレイ113R」は、「メガネレンズ部101R」に対し光が入射して反射する側にある、「右眼」と同じ側、すなわち、「観察者眼」と同じ側に設けられ、「メガネレンズ部101R」の表面に向けられていることが理解される。
したがって、引用発明における「ディスプレイ113L、113R」(「ディスプレイ画面」に相当する。)は、本件補正発明いうところの「前記レンズ部に対して前記ユーザの目と同じ側に設けられたディスプレイ画面であって、前記レンズ部の前記表面に向けられる」との構成を満たすものである。
b(a) 引用発明における「メガネレンズ部101L」及び「メガネレンズ部101R」の表面の「ディスプレイ113Lに表示された左眼画像からの光」及び「ディスプレイ113Rに表示された右眼画像からの光」を「反射」する部分は、本件補正発明における(ユーザの目に向けられる)「表面の第1の場所」に相当する。
(b) ここで、引用発明において、「ディスプレイ113Lに表示された左眼画像は、メガネレンズ部101Lで光学的に拡大され、拡大された虚像として、観察者の左眼で観察され」、「ディスプレイ113Rに表示された右眼画像は、メガネレンズ部101Rで光学的に拡大され、拡大された虚像として、観察者の右眼で観察され」、「観察者には拡大された立体(3D)画像が知覚され」るところ、このとき、「立体(3D)画像」をなす「左眼画像」及び「右眼画像」は、まず「メガネレンズ部101L,101R」の表面上に投影され、反射し、「拡大された虚像」となるから、引用発明の「ディスプレイ113L,113R」は、「メガネレンズ部101L,101R」の表面上へと「立体(3D)画像」を投影されるように構成されているといえる。
c 前記a及びbの検討結果をまとめると、本件補正発明は引用発明と、構成Bの点である次の点において一致する。
「前記レンズ部に対して前記ユーザの目と同じ側に設けられたディスプレイ画面であって、前記レンズ部の前記表面に向けられるとともに前記表面の第1の場所上へと仮想特徴を投影するように構成されたディスプレイ画面」を備える点。
(オ) 構成Cの観点(カメラ)
構成Cは、「前記レンズ部の表面に向けられるとともに前記レンズ部の表面によって反射された反射を示す画像データを取得するように構成され、前記レンズ部に対して前記ディスプレイ画面側と同じ側に設けられたカメラであって、前記反射が前記ユーザの第1の目の第1の反射と前記ユーザの第2の目の第2の反射とを備えるカメラ」を備えることである。
a(a) 引用発明において、「赤外線センサ103L,103Rから照射された微弱赤外線は、メガネレンズ部101L,101Rの観察者眼に面した表面に設けられた反射シートRSで反射され、観察者眼を照射し、その角膜(黒目)と強膜(白目)における反射光は、再び反射シートRSに向かい反射され、赤外線センサ103L,103Rにより検出されるもの」である。
そうすると、上記「赤外線センサ103L,103R」は、「メガネレンズ部101L,101R」の表面に向けられているとともに前記「メガネレンズ部101L,101R」の表面によって反射された「角膜(黒目)と強膜(白目)における反射光」を取得するように構成されているといえる。
(b) ここで、引用発明においては、「赤外線センサ103L,103Rにより検出され」た情報は、「微弱赤外線を水平方向にスキャンし、その反射光を検出し、角膜(黒目)と強膜(白目)における反射光の強さが大きく異なる」ことを利用して「センサ出力から観察者の眼球位置を推定する」ためのものであるところ、この「センサ出力」は、「微弱赤外線を水平方向にスキャンし」たことで得られる「角膜(黒目)と強膜(白目)」の位置についての「画像データ」ということができる。
(c) したがって、引用発明における「赤外線センサ103L,103R」は、本件補正発明にいうところの「前記レンズ部の表面に向けられるとともに前記レンズ部の表面によって反射された反射を示す画像データを取得するように構成され[た]」ものであるといえる。
b 前記(エ)aにおいて検討したように、「ディスプレイ113L,113R」は、「メガネレンズ部101L,101R」に対し「観察者眼」と同じ側に設けられているから、「メガネレンズ部101L,101R」に対し「観察者眼と同じ側」に設置されている「赤外線センサ103L,103R」は、「メガネレンズ部101L,101R」(「レンズ部」に相当する。)に対し「ディスプレイ113L,113R」(「ディスプレイ画面」に相当する。)側と同じ側に設けられているといえる。
したがって、引用発明における「赤外線センサ103L,103R」は、本件補正発明にいうところの「前記レンズ部に対して前記ディスプレイ画面側と同じ側に設けられた」ものであるといえる。
c 引用発明における「赤外線センサ103L,103R」は、「左目」、「右目」の「角膜(黒目)と強膜(白目)における反射光」をそれぞれ検出すると理解されるところ、「左目」についての「角膜(黒目)と強膜(白目)における反射光」は、本件補正発明における「ユーザの第1の目の第1の反射」に相当し、「右目」についての「角膜(黒目)と強膜(白目)における反射光」は、本件補正発明における「ユーザの第2の目の第2の反射」に相当する。
したがって、引用発明における「赤外線センサ103L,103R」により取得される「前記レンズ部の表面によって反射された反射」光は、「前記ユーザの第1の目の第1の反射と前記ユーザの第2の目の第2の反射とを備える」ものといえる。
d 本件補正発明における「カメラ」と引用発明における「赤外線センサ103L,103R」は、光学デバイスの点で共通する。
e 前記a~dの検討結果をまとめると、構成Cの観点における本件補正発明の引用発明との一致点及び相違点は、それぞれ次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 構成Cの観点における一致点
「前記レンズ部の表面に向けられるとともに前記レンズ部の表面によって反射された反射を示す画像データを取得するように構成され、前記レンズ部に対して前記ディスプレイ画面側と同じ側に設けられた光学デバイスであって、前記反射が前記ユーザの第1の目の第1の反射と前記ユーザの第2の目の第2の反射とを備える光学デバイス」を備える点。
(b) 構成Cの観点における相違点
光学デバイスが、
本件補正発明においては「カメラ」であるのに対して、
引用発明においては、「赤外線センサ103L,103R」である点。
(カ) 構成Dの観点(プロセッサ)
構成Dは、「前記カメラおよび前記ディスプレイ画面に通信可能に結合されたプロセッサであって、前記画像データに基づいて前記第1の場所から前記レンズ部の前記表面上の第2の場所への前記仮想特徴の投影を調整するように構成されたプロセッサ」を備えることである。
a 引用発明においては、「眼球位置推定部114では、赤外線センサ103L,103Rからのセンサ出力に基づいて、観察者の左眼、右眼の眼球位置が推定され」、「光学系と観察者眼の位置関係の検出結果に基づいて、左眼画像、右眼画像の表示位置がシフト制御され、光学系と観察者眼の位置ずれが電子的に補正され[る]」。
上記「左眼画像、右眼画像の表示位置がシフト制御」され「位置ずれが電子的に補正され」たとき、引用発明の「メガネレンズ部101L,101R」の表面に向かって投影された(「立体(3D)画像」をなす)「左眼画像、右眼画像」の、当該「メガネレンズ部101L,101R」の表面上の位置も、補正前の位置から移動し、補正後の位置に調整されるものと理解され、上記補正後の位置は、本件補正発明の「表面上の第2の場所」に相当する。
b また、引用発明において、赤外線センサ103L,103Rからのセンサ出力に基づいて、観察者の左眼、右眼の眼球位置を推定し、光学系と観察者眼の位置関係の検出結果に基づいて、左眼画像、右眼画像の表示位置をシフト制御することを、「ディスプレイ113L,113R」(「ディスプレイ画面」に相当する。)及び「赤外線センサ103L,103R」に通信可能に接続されたプロセッサで行うことは、技術常識からして記載されているに等しい自明のことである。
c そうすると、前記(オ)までの検討結果も踏まえると、構成Dの観点における本件補正発明の引用発明との一致点及び相違点は、それぞれ次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 構成Dの観点における一致点
「光学デバイス」および「前記ディスプレイ画面」「に通信可能に結合されたプロセッサであって、前記画像データに基づいて前記第1の場所から前記レンズ部の前記表面上の第2の場所への前記仮想特徴の投影を調整するように構成されたプロセッサ」を備える点。
(b) 構成Dの観点における相違点
光学デバイスが、
本件補正発明においては「カメラ」であるのに対して、
引用発明においては、「赤外線センサ103L,103R」である点。
イ 一致点及び相違点
上記アの対比分析の結果を踏まえると、本件補正発明の引用発明との一致点及び相違点は、それぞれ次の(ア)及び(イ)に示すとおりである。
(ア) 一致点
「拡張現実、仮想現実、および/または複合現実体験をユーザに提供するように構成されたウェアラブル視覚化デバイスであって、
前記ユーザの目に向けられる表面を有するレンズ部と、
前記レンズ部に対して前記ユーザの目と同じ側に設けられたディスプレイ画面であって、前記レンズ部の前記表面に向けられるとともに前記表面の第1の場所上へと仮想特徴を投影するように構成されたディスプレイ画面と、
前記レンズ部の表面に向けられるとともに前記レンズ部の表面によって反射された反射を示す画像データを取得するように構成され、前記レンズ部に対して前記ディスプレイ画面側と同じ側に設けられた光学デバイスであって、前記反射が前記ユーザの第1の目の第1の反射と前記ユーザの第2の目の第2の反射とを備える光学デバイスと、
前記光学デバイスおよび前記ディスプレイ画面に通信可能に結合されたプロセッサであって、前記画像データに基づいて前記第1の場所から前記レンズ部の前記表面上の第2の場所への前記仮想特徴の投影を調整するように構成されたプロセッサと、
を備える、ウェアラブル視覚化デバイス」の発明である点。
(イ) 相違点
光学デバイスが、
本件補正発明においては「カメラ」であるのに対して、
引用発明においては、「赤外線センサ103L,103R」である点。
(5) 判断
ア 新規性の欠如
請求人は、審査段階から審判請求の段階まで、引用発明における「赤外線センサ103Lおよび103R」が本件補正発明(又は後記の「本願発明」)における「カメラ」と異なることを主張した経緯はなく、むしろ審判請求書において「引用文献1に記載の発明では、赤外線センサ103Lおよび103R(「カメラ」)が、ディスプレイ113Lおよび113R(「ディスプレイ画面」)と対向するメガネレンズ部101Lおよび101R(「レンズ部」)側に設けられており、(後略)」と説明しているように、引用発明における「赤外線センサ103Lおよび103R」が本件補正発明における「カメラ」に相当することを認めていると解される。
すなわち、本願においては、「カメラ」という用語は、画像を結像する結像光学系を用いていなくても、画像データを取得できるものを包摂する広義の「カメラ」の意味で用いているといえる。
そうすると、「赤外線センサ103L,103R」は、広義の「カメラ」に包摂されるから、前記相違点は、相違点ではない。
イ 進歩性の欠如
仮に、本件補正発明における「カメラ」が、引用発明における「赤外線センサ103L,103R」を包摂しない狭義の「カメラ」であるとしても、「眼鏡型のヘッドマウントディスプレイにおいて、目(瞳孔周辺)からの眼鏡レンズ部での反射光をカメラで撮像して、眼鏡レンズ部に対する目(瞳孔周辺)の位置関係を求めること」は、前記(3)イにおいて周知技術Aとして認定したように、ヘッドマウントディスプレイの分野における周知技術であるから、かかる相違点は、観察者眼の位置を検出するための具体化手段における微差にすぎず、相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとっては自明の設計変更である。
なお、周知技術Aを採用したことによる、予測困難かつ格別顕著な効果も認められない。
したがって、仮に、引用発明と本件補正発明の間に相違点があったとしても、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、本件補正発明が進歩性を有することの根拠として、本件補正発明では、「ディスプレイ画面」および「カメラ」が共に「レンズ部」に対して同じ側に設けられているということが特定されているのに対して、引用発明では、赤外線センサ103Lおよび103R(「カメラ」)が、ディスプレイ113Lおよび113R(「ディスプレイ画面」)と対向するメガネレンズ部101Lおよび101R(「レンズ部」)側に設けられていることを主張している。
しかし、本件補正発明が係る構成を備えることは、前記(4)ア(ウ)及び(エ)において検討したとおりであるから、上記請求人の主張は採用することができない。
エ 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は引用発明であるから、本件補正発明は特許法29条1項3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、少なくとも、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項14についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記3(5)エのとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項14に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項14(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
理由1(新規性の欠如)
本願発明は、最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2(進歩性の欠如)
本願発明は、最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記の引用文献1に記載された発明に基いて、最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.国際公開第2014/017348号
3 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定等
引用文献1に記載された事項及び引用発明は、前記第2の3(2)ア~ウにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
(1) 本願発明は、前記第2の2において検討した、本件補正発明における次のア~ウまでの限定を省いたものである。
ア 「レンズ部」についての「前記ユーザの目に向けられる表面を有する」ことの限定
イ 「ディスプレイ画面」が設けられた位置について、「前記レンズ部に対して前記ユーザの目と同じ側」であることの限定
ウ 「カメラ」が設けられた位置について、「前記レンズ部に対して前記ディスプレイ画面側と同じ側」であることの限定
(2) そうすると、本願発明の構成を全て含む本件補正発明は、前記第2の3(5)において説示したとおり、引用発明であるから、本願発明も、同様の理由により引用発明である。少なくとも、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、また、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-018722