特許拒絶査定不服審判
2024-008662
検出器システムのための機能化された導波路
- 審判番号
- 2024-008662
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-544287
- 請求日
- 2024年05月24日
- 審決日
- 2026年01月09日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】カール・ツァイス・イェナ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
- 【請求人代理人】曾我 道治
- 【請求人代理人】梶並 順
- 【請求人代理人】中尾 圭介
- 審判長/審判官
- 審判長 波多江 進
- 審判官 東松 修太郎
- 審判官 堀井 康司
- 分類
- P18 .575-Z (G02B) / P18 .113-Z (G02B) / P18 .121-Z (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-544287「検出器システムのための機能化された導波路」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月 6日国際公開、WO2020/157306、令和 4年 3月22日国内公表、特表2022-519222〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)1月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年2月1日、ドイツ国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年 9月27日 :翻訳文の提出
令和5年 7月26日付け:拒絶理由通知書
同年10月31日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 1月22日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月30日 :原査定の謄本の送達)
同年 5月24日 :審判請求書、手続補正書の提出
以下、2019年(平成31年)2月1日を「優先日」という。
第2 令和6年5月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年5月24日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和6年5月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年10月31日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「検出器システムのための機能化された導波路であって、
前記導波路(1)は、前面(7)及び後面(8)を有する透明基材(6)を含み、
前記基材(6)は、部分的に透明な入力結合領域(4)と、そこから第一の方向(R1)に離間された出力結合領域(5)とを含み、
前記入力結合領域(4)は回折構造を含み、これは検出対象の物体から入射し、前記前面(7)に衝突した放射の一部のみを偏向させ、それによって前記偏向された部分は、入力結合された放射として前記基材(6)内を反射によって前記出力結合領域(5)まで伝搬して、前記出力結合領域(5)に衝突し、
前記出力結合領域(5)は回折構造を含み、そこに衝突した前記入力結合された放射の少なくとも一部を偏向させ、それによって前記偏向された部分は、前記基材(6)から前記前面(7)又は後面(8)を介して出て、前記検出器システム(2)に衝突し、
前記入力結合領域(4)の前記第一の方向(R1)を横断する第二の方向(R2)への範囲は、前記出力結合領域(5)の前記第二の方向(R2)への範囲より大きく、
前記入力結合領域(4)及び/又は前記出力結合領域(5)はまた、前記入力結合領域(4)及び/又は前記出力結合領域(5)による前記偏向に加えて画像生成光学機能を含む、機能化された導波路。」
(2) 本件補正後
「検出器システムのための機能化された導波路であって、
前記導波路(1)は、前面(7)及び後面(8)を有する透明基材(6)を含み、
前記基材(6)は、部分的に透明な入力結合領域(4)と、そこから第一の方向(R1)に離間された出力結合領域(5)とを含み、
前記入力結合領域(4)は回折構造を含み、これは検出対象の物体から入射し、前記前面(7)に衝突した放射の一部のみを偏向させ、それによって前記偏向された部分は、入力結合された放射として前記基材(6)内を反射によって前記出力結合領域(5)まで伝搬して、前記出力結合領域(5)に衝突し、
前記出力結合領域(5)は回折構造を含み、そこに衝突した前記入力結合された放射の少なくとも一部を偏向させ、それによって前記偏向された部分は、前記基材(6)から前記前面(7)又は後面(8)を介して出て、前記検出器システム(2)に衝突し、
前記入力結合領域(4)の前記第一の方向(R1)を横断する第二の方向(R2)への範囲は、前記出力結合領域(5)の前記第二の方向(R2)への範囲より大きく、
前記入力結合領域(4)及び/又は前記出力結合領域(5)はまた、前記入力結合領域(4)及び/又は前記出力結合領域(5)による前記偏向に加えて、前記各回折構造により提供された画像生成光学機能を含む、機能化された導波路。」
2 本件補正の目的
本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された「画像生成光学機能」について、「前記各回折構造により提供された」ものであることを限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Fまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1】、
【図2】、【図3】、【図7A】に部材名を記入したものを掲載する。
<本件補正発明の分説>
X 検出器システムのための機能化された導波路であって、
A 前記導波路(1)は、前面(7)及び後面(8)を有する透明基材(6)を含み、
B 前記基材(6)は、部分的に透明な入力結合領域(4)と、そこから第一の方向(R1)に離間された出力結合領域(5)とを含み、
C 前記入力結合領域(4)は回折構造を含み、これは検出対象の物体から入射し、前記前面(7)に衝突した放射の一部のみを偏向させ、それによって前記偏向された部分は、入力結合された放射として前記基材(6)内を反射によって前記出力結合領域(5)まで伝搬して、前記出力結合領域(5)に衝突し、
D 前記出力結合領域(5)は回折構造を含み、そこに衝突した前記入力結合された放射の少なくとも一部を偏向させ、それによって前記偏向された部分は、前記基材(6)から前記前面(7)又は後面(8)を介して出て、前記検出器システム(2)に衝突し、
E 前記入力結合領域(4)の前記第一の方向(R1)を横断する第二の方向(R2)への範囲は、前記出力結合領域(5)の前記第二の方向(R2)への範囲より大きく、
F 前記入力結合領域(4)及び/又は前記出力結合領域(5)はまた、前記入力結合領域(4)及び/又は前記出力結合領域(5)による前記偏向に加えて、前記各回折構造により提供された画像生成光学機能を含む、
X 機能化された導波路。
<参考図>
【図1】
[図:0001435608000001.jpg]
【図2】
[図:0001435608000002.jpg]
【図3】
[図:0001435608000003.jpg]
【図7A】
[図:0001435608000004.jpg]
イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は検出器システムのための機能化された導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、窓又は自動車のフロントガラス等のガラス又はプラスチック製の透明表面は、透明基材を含み、一般には単に人又は物体を風、温度、粒子、又は放射等の環境影響から保護する役割を果たす。
【0003】
追加的な光学的機能を提供するこのような透明基材を提示することに対する関心が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、追加的な光学的機能を有する透明基材を提供することである。
【0005】
本発明は特許請求の範囲の独立項において定義される。有利な構成は従属項に明記されている。
【0006】
本発明による機能化された導波路によれば、部分的に透明な入力結合領域と、そこから第一の方向に離間された出力結合領域とが透明基材内に提供され、又は埋め込まれる。部分的に透明な入力結合領域は回折構造を含むことができ、これはそれを通じた直視中に入力結合領域の透明性を大きい角度及び波長範囲にわたって保持するために使用される。それゆえ、透明基材の前面に衝突した放射の一部のみを透明な入力結合領域によって偏向させることができ、それによって偏向部分は基材内へと入力結合された放射を反射によって出力結合領域まで伝搬し、出力結合領域に衝突する。
…(中略)…
【0018】
入力結合領域と出力結合領域は、これらが偏向以外に光学画像生成機能をもたらさないように具現化できる。しかしながら、入力結合領域及び/又は出力結合領域は、偏向に加えて光学画像生成機能を提供し、それゆえ光学画像生成をもたらすようにすることもできる。この点において、光学画像生成機能は、例えば収束レンズ素子又は発散レンズ素子、凹面若しくは凸面ミラーの機能を実現でき、湾曲表面は(中心を合わせた、又は偏心の)球面状の湾曲又は非球面の湾曲表面とすることができる。
【0019】
入力結合領域の回折構造は、埋込み式回折構造として、2つの基板間の回折構造として、又は前若しくは後面上に具現化された回折構造として実現できる。
【0020】
さらに、出力結合領域は回折構造を含むことができる。出力結合領域の回折構造は、埋込み式回折構造として、又は前面若しくは後面上の回折構造として具現化できる。
…(中略)…
【0023】
さらに、本発明による機能化された導波路(全ての発展型を含む)を含む検出器システムが提供される。検出器システムは、本明細書においては検出システムとも呼ばれるが、検出器を含むことができ、そこに放射のうち出力結合領域により偏向された部分が衝突する。検出器は、基材の前面又は後面に接続できる。特に、直接接続させることができる。検出器は、デジタルイメージセンサ(例えば、CCDセンサ若しくはCMOSセンサ)、検出器アレイ、又は例えばソーラセルとすることができる。
【0024】
さらに、検出器システムは、少なくとも1つの光学画像生成素子が検出器と前面及び/又は後面との間の領域に配置されるように具現化できる。少なくとも1つの光学画像生成素子は、例えばレンズとして、屈折レンズとして、又は屈折カメラレンズとして具現化できる。また、検出器と前面及び/又は後面との間の領域には画像生成光学素子を設けないようにすることも可能である。換言すれば、出力結合領域から出力結合された放射はそれゆえ、別の光学画像生成素子を通過することなく検出器に衝突する。この場合、出力結合領域が偏向のほかに光学画像生成特性を有していれば有利である。
【0025】
機能化された導波路は、それが無限-無限画像生成を実行するように具現化できる。しかしながら、前記導波路が有限-無限画像生成、無限-有限画像生成、又は有限-有限画像生成を実行することも可能である。
…(中略)…
【0027】
機能化された導波路の場合、入力結合領域の、第一の方向を横断する第二の方向への範囲は出力結合領域の第二の方向への範囲より大きくすることができる。入力結合領域の範囲(又は、例えば幅)とは、本明細書では、特に所期の通りに有効に使用される範囲、すなわち光学的に使用される範囲を意味すると理解されたい。これは例えば、入力結合領域のうち、検出器システムに衝突した偏向された放射が発せられた区域の範囲である。出力結合領域の範囲(又は、例えば幅)とは、本明細書では、特に所期の通りに有効に使用される範囲、すなわち光学的に使用される範囲を意味すると理解されたい。これは例えば、出力結合領域のうち、検出器システムに衝突した偏向された放射が発せられた区域の範囲である。
…(中略)…
【0109】
導波路1の上述の無限-無限構成の代替案として、入力結合領域4及び/又は出力結合領域5は、例えばレンズ素子機能又は凹面鏡機能の形態の画像生成機能を有することができる。その結果、有限-無限、無限-有限、又は有限-有限画像生成構成を導波路1によって実現できる。入力結合領域4の場合、これは例えば、導波路1に近すぎて、無限遠にある物体を光学的に想定できなくなるように位置付けられた物体9を記録するために使用できる。出力結合領域5の場合、このようなレンズ素子又は凹面鏡機能の実装により、出力結合された角度スペクトルをこのように実装されたレンズ素子又は鏡機能の焦点平面内の位置分布に直接変換することが可能である。この場合、例えばレンズ9は省くことができる。この場合、検出器システム2が検出器11と出力結合領域5のレンズ素子及び/又は凹面鏡機能とを含む、と言うことができる。レンズ10を省くことができるため、検出器11は導波路1の前面7上に位置付け、及び/又は例えば直接固定することができ、それによって非常に高い集積度、最小限の体積、及び高い堅牢性を実現できる。
…(中略)…
【0113】
瞳(ビーム制限絞り、すなわち全ての視野角の主要光線が交差する箇所)の位置は、導波路1の無限-無限構成の場合、入力結合領域4の幅B1(第一の方向R1を横断して、ここではx方向に対応する第二の方向R2に沿って延びる)(図2)と、出力結合領域5の幅B2との比により特定されるが、方向R2への導波路1の視野はそれに加えて、伝搬方向R1、すなわち導波路1内の第一の方向R1に沿った入力結合領域4と出力結合領域5との間の距離Dにも依存する。
【0114】
勿論、入力結合領域4と出力結合領域5の寸法は絞りにより限定される可能性がある。ここでは常に、光学的に使用される寸法又は光学的に使用される幅が想定される。これらはまた、以下、有効幅とも呼ばれる。
【0115】
図7A、7B、及び7Cは、3つの基本的に異なる入力結合領域4と出力結合領域5との幅の比を図解している。瞳の位置の解析においては、ビネッティングが発生しない視野角だけが考慮される。
【0116】
図7Aは、比B1/B2>1の場合、導波路1の出力結合領域5が瞳として機能することを明らかにしている。それゆえ、全ての角度が出力結合領域5の各位置にある。
…(中略)…
【0124】
B1/B2>1の場合、出力結合領域5は導波路1の瞳を形成する。ビネッティングを生じさせないビームの全てを考慮すると、出力結合領域5の各位置に全ての視野角が存在する。したがって、全ての視野角、すなわち導波路1の完全なFoVが、十分に大きいFoVの、十分に大きい入射瞳としての1つの検出器システム2だけで捕捉できる。導波路1の大きいFoVを実現するために、それゆえ、入力結合領域4を出力結合領域5より広くすることが有利である。さらに、入力結合領域4と出力結合領域5との間の小さい距離が有利である。
…(後略)…」
(2) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である米国特許出願公開第2016/0209657号明細書(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。当合議体による翻訳を括弧内に示した。また、下線は引用発明の認定に直接用いる記載に当合議体が付したものである。
(ア) 背景([0003]~[0017])
「…(前略)…
[0014] The inventors have found that diffractive optical elements offer a route to providing compact, transparent, wide field of view eye trackers. One important class of diffractive optical elements is based on Switchable Bragg Gratings (SBGs). SBGs are fabricated by first placing a thin film of a mixture of photopolymerizable monomers and liquid crystal material between parallel glass plates. One or both glass plates support electrodes, typically transparent indium tin oxide films, for applying an electric field across the film. A volume phase grating is then recorded by illuminating the liquid material (often referred to as the syrup) with two mutually coherent laser beams, which interfere to form a slanted fringe grating structure. During the recording process, the monomers polymerize and the mixture undergoes a phase separation, creating regions densely populated by liquid crystal micro-droplets, interspersed with regions of clear polymer. The alternating liquid crystal-rich and liquid crystal-depleted regions form the fringe planes of the grating. The resulting volume phase grating can exhibit very high diffraction efficiency, which may be controlled by the magnitude of the electric field applied across the film. When an electric field is applied to the grating via transparent electrodes, the natural orientation of the LC droplets is changed causing the refractive index modulation of the fringes to reduce and the hologram diffraction efficiency to drop to very low levels. Note that the diffraction efficiency of the device can be adjusted, by means of the applied voltage, over a continuous range. The device exhibits near 100% efficiency with no voltage applied and essentially zero efficiency with a sufficiently high voltage applied. In certain types of HPDLC devices magnetic fields may be used to control the LC orientation. In certain types of HPDLC phase separation of the LC material from the polymer may be accomplished to such a degree that no discernible droplet structure results.
…(後略)…」
(発明者らは、回折光学素子が、コンパクトで透明な広視野の眼球追跡装置を提供するための手段となることを見出した。回折光学素子の重要な一群は、切り替え可能ブラッグ格子(SBG)に基づくものである。SBGは、まず光重合可能モノマーと液晶材料の混合物の薄膜を平行なガラス板間に配置することにより製造される。一方又は両方のガラス板は、通常は透明な酸化インジウムスズ膜である電極を支持し、膜に電界を印加するために用いられる。その後、液状材料(しばしばシロップと称される)を、互いにコヒーレントな二本のレーザ光線で照射することにより、体積位相格子が記録され、これらのレーザ光線は干渉して傾斜した縞格子構造を形成する。記録工程中に、モノマーは重合し、混合物は相分離を起こし、液晶微小滴で密に満たされた領域と透明なポリマー領域とが形成される。液晶に富む領域と液晶に乏しい領域とが交互に並び、格子の縞面を形成する。得られた体積位相格子は、非常に高い回折効率を示し得、その効率は膜に印加される電界の大きさによって制御される。透明電極を介して格子に電界が印加されると、液晶滴の自然な配向が変化し、縞の屈折率変調が減少し、ホログラムの回折効率が極めて低いレベルまで低下する。なお、装置の回折効率は、印加電圧によって連続的な範囲で調整可能である。電圧が印加されない場合、装置はほぼ100%の効率を示し、十分に高い電圧が印加された場合、実質的にゼロの効率となる。ある種のHPDLC装置では、液晶の配向を制御するために磁界が使用され得る。ある種のHPDLCでは、液晶材料のポリマーからの相分離が、識別可能な滴構造が生じない程度まで達成され得る。)
(イ) 詳細な説明([0108]~[0186])
「…(前略)…
[0112] An eye tracker according to the principles of the invention provides an infrared illumination channel for delivering infrared illumination to the eye and an imaging channel for forming an image of the eye at a sensor. In one embodiment of the invention illustrated in FIGS.1-2, the eye tracker comprises a waveguide 100 for propagating illumination light towards an eye 116 and propagating image light reflected from at least one surface of an eye; a light source 112 optically coupled to the waveguide; and a detector 113 optically coupled to the waveguide. Disposed in the waveguide are: at least one input grating 114 for deflecting illumination light from the source into a first waveguide path; at least one illumination grating 102 for deflecting the illumination light towards the eye; at least one imaging grating 101 for deflecting the image light into a second waveguide path; and at least one output grating 115 for deflecting the image light towards the detector. The inventors also refer to the waveguide 100 as the DigiLens. The illumination and imaging gratings are arrays of switchable beam deflection grating elements with the preferred grating technology being a SBG as described above. In one embodiment of the invention shown in FIG.1B the grating elements in the imaging grating 120 are elongate as indicated by 121 with longer dimension orthogonal to the beam propagation direction. In one embodiment of the invention shown in FIG.1C the imaging grating may comprise a two dimensional array 122 of elements 123 each having optical power in two orthogonal planes. Typically the first and second waveguide paths, that is, the imaging and illumination paths in the waveguide are in opposing directions as illustrated in FIG.1A. The illumination light will typically be fully collimated while the image light will have some divergence of angle determined by the scattering angle from eye services, the angular bandwidth of the gratings and the numerical aperture of the grating elements. As will be discussed later, in one embodiment the imaging and illumination gratings are provided by a single grating with the illumination and imaging ray paths. Where separate imaging and illumination gratings are used the two gratings may employ different TIR angles within the waveguide. This is advantageous in terms of avoiding the risk of cross coupling of illumination light into the detector and image light into the light source.」
(本発明の原理に基づく眼球追跡装置は、眼に赤外線照明を供給するための赤外線照明チャネルと、眼の画像をセンサ上に形成するための撮像チャネルを備えている。図1及び図2に示される本発明の一実施形態では、眼球追跡装置は、照明光を眼116に向けて伝搬させるとともに、眼の少なくとも一つの表面から反射された画像光を伝搬させる導波路100と、導波路に光学的に結合された光源112と、導波路に光学的に結合された検出器113とを備える。導波路内には、光源からの照明光を第1の導波路経路に偏向させるための少なくとも一つの入力回折格子114、照明光を眼に向けて偏向させる少なくとも一つの照明回折格子102、画像光を第2の導波路経路に偏向させる少なくとも一つの撮像回折格子101、そして画像光を検出器に向けて偏向させる少なくとも一つの出力回折格子115が配置されている。発明者らは、導波路100を「DigiLens」とも呼称している。照明及び撮像回折格子は、切り替え可能なビーム偏向回折格子素子の配列で構成されており、好ましい回折格子技術としては、前述のSBGが採用されている。図1Bに示される本発明の一実施形態では、撮像回折格子120内の回折格子素子は細長い形状をしており、121で示されるように、その長辺方向はビームの伝搬方向に対して直交している。図1Cに示される別の実施形態では、撮像回折格子は、各素子が二つの直交する面に光学的なパワーを持つ素子123からなる2次元配列122で構成されている。通常、導波路内の第1及び第2の経路、すなわち撮像経路と照明経路は、図1Aに示されるように互いに反対方向に配置される。照明光は通常、完全にコリメートされるが、画像光は眼の表面からの散乱角、回折格子の角度帯域幅、及び回折格子素子の開口数によって決定されるある程度の角度的な広がりを持つ。後述するように、本発明の一実施形態では、照明及び撮像回折格子は、照明及び撮像の光線経路を有する単一の回折格子によって構成される。一方で、撮像及び照明回折格子が別々に構成される場合には、それぞれの回折格子が導波路内で異なる全反射角を用いることができる。これは、照明光が検出器に誤って結合されることや、画像光が光源に誤って結合されることを防止する上で有利である。)
「図1A~2
[図:0001435608000005.jpg]
[図:0001435608000006.jpg]
」
「[0113] In FIG.1A the illumination light path is illustrated by the light 1010 from the source which is directed into a TIR path 1011 by the input grating and diffracted out of the waveguide as the light generally indicated by 1012. Typically the eye tracker will have a pupil of size 20-30 mm. to allow capture of light reflected from the eye to continue should the waveguide change position relative to the eye. Since the eye tracker will usually be implemented as part of a HMD its pupil should desirably match that of the HMD. FIG.1A shows return light 1013 reflected from the front surface of the cornea 117 and light 1014 reflected from the retina 118. The corneal and retinal image light enters the waveguide along tray paths such 1015, 1016 and is deflected into a TIR path such as 1017 by an active element of the imaging grating which is switched one element at a time. The light 1017 is deflected into a ray path 1018 toward the detector by the output grating. Advantageously, the detector reads out the image signal in synchronism with the switching of the SBG lens array elements. The detector is connected to an image processing apparatus for determining at least one spatio-temporal characteristic of an eye movement. The image processor, which is not illustrated, detects pre-defined features of the backscattered signals from the cornea and retina. For example, the image processor may be used to determine the centroid of an eye feature such as the pupil. Other trackable features of the eye will be well known to those skilled in arts of eye tracker design and visual optics.(当合議体注:「tray paths such 1015, 1116」は、図1Aの記載からみて、「tray paths such 1015, 1016」の誤記であると認められるため、誤記を正して摘記した。)
…(中略)…」
(図1Aにおいて、照明光の経路は、光源からの光1010によって示されており、この光は入力回折格子によって全反射経路1010に導かれ、導波路から出射される光として、一般的に1012で示されている。通常、眼球追跡装置は、導波路が眼に対して位置を変えた場合でも、眼からの反射光を継続して捕捉できるように、20~30mm程度の瞳孔サイズを有している。眼球追跡装置は通常、HMDの一部として実装されるため、その瞳はHMDの瞳と一致することが望ましい。図1Aには、角膜117の前面から反射された戻り光1013及び網膜118から反射された光1014が示されている。角膜及び網膜からの画像光は、光線経路1015及び1016に沿って導波路に入射し、撮像回折格子の能動素子によって、1素子ずつ切り替えられながら、全反射経路1017に偏向される。光線1017は、出力回折格子によって検出器に向かう光線経路1018に偏向される。利点として、検出器はSBGレンズ配列素子の切り替えと同期して画像信号を読み出す。検出器は、眼球の動きに関する少なくとも一つの時空間的特性を判定するための画像処理装置に接続されている。図示されていない画像プロセッサは、角膜及び網膜からの後方散乱信号に含まれるあらかじめ定義された特徴を検出する。例えば、画像プロセッサは、瞳孔などの眼球特徴の重心を特定するために使用される可能性がある。その他の追跡可能な眼球特徴については、眼球追跡装置の設計及び視覚光学の分野に精通した技術者には広く知られている。)
「[0116] The gratings may be implemented as lamina within or adjacent an external surface of the waveguide. In other words the grating may be disposed adjacent an optical surface of the waveguide. comprising at least one of an internal surface or an external surface of the waveguide. For the purposes of discussing the invention we will consider Bragg gratings disposed within the waveguide. Advantageously the gratings are switchable Bragg gratings (SBGs). In certain embodiments of the invention passive gratings may be used. However, passive gratings lack the advantage of being able to direct illumination and collect image light from precisely defined areas of the pupil. In one embodiment the gratings are reverse mode SBGs. Although the invention is discussed in relation to transmission gratings it should be apparent to those skilled in the art that equivalent embodiments using reflection gratings should be feasible in most cases. The gratings may be surface relief gratings. However, such gratings will be inferior to Bragg gratings in terms of their optical efficiency and angular/wavelength selectivity.」
(回折格子は、導波路の内部又は外部表面に隣接するラミナとして実装することができる。言い換えれば、回折格子は導波路の光学面に隣接して配置される場合があり、その光学面は導波路の内部表面又は外部表面の少なくとも一方を含む。本発明の説明においては、導波路内部に配置されたブラッグ格子を考慮する。有利な点として、回折格子は切り替え可能なブラッグ格子(SBG)である。特定の実施形態では、パッシブ格子を使用することも可能である。しかし、パッシブ格子には、照明光を指向し、瞳孔の厳密に定義された領域から画像光を収集するという利点が欠けている。一つの実施形態では、回折格子は逆モードSBGである。本発明は透過型格子に関連して説明されているが、当業者には、反射型回折格子を使用する同等の実施形態がほとんどの場合において実現可能であることが明らかである。回折格子は表面レリーフ回折格子であっても良い。しかし、そのような回折格子は、光学効率及び角度/波長選択制の点でブラッグ回折格子に劣る。)
「[0117] The input and illumination gratings may be configured in many different ways. FIG.2 is a schematic plan view showing one possible implementation for use with the embodiment of FIG.1. Here the input grating comprises two grating elements 114A,114B and the illumination grating is also divided into the upper and lower gratings 120A,120B, each providing narrow beam deflecting grating strips above and below the imaging grating 102. The detector grating 115 is also indicated. Since the guided beams in the input and illumination grating are collimated, and likewise the guided beams in the imaging and detector gratings, there is no cross talk between the two regions of the waveguide.」
(入力及び照明回折格子は、さまざまな方法で構成することができる。図2は、図1の実施形態で使用するための一つの可能な実装例を示す概略平面図である。ここで、入力回折格子は二つの格子要素114A及び114Bから構成され、照明回折格子も上部及び下部の格子120A、120Bに分割されており、それぞれが撮像回折格子102の上下に狭いビームを偏向する格子ストリップを提供している。検出回折格子115も示されている。入力及び照明回折格子内の導波ビームはコリメートされており、同様に撮像及び検出回折格子内の導波ビームもコリメートされているため、導波路の二つの領域間にクロストークは生じない。)
「[0118] In the embodiment of the invention shown in FIGS.3-4, which is similar to the one of FIG.2, the upper and lower illumination grating may be arrays of switchable grating elements 121A,121B comprising switchable grating elements such as 122A,122B. The SBG deflector arrays scroll illumination across the exit pupil in step with the activation of the imaging grating elements. Finally, in the embodiment of FIG.4 the illumination grating comprises just one strip 123 containing elements 124 disposed along the top edge of the imaging grating.」
(図3及び図4に示される本発明の実施形態は、図2のものと類似しており、この構成においては、上部及び下部の照明回折格子が、切り替え可能な回折格子素子121A及び121Bからなる配列で構成されていて、それぞれの配列には、122A及び122Bのような切り替え可能な回折格子素子が含まれている。SBG偏向素子の配列は、照明を射出瞳全体にわたってスクロールさせるように動作し、撮像回折格子素子の活性化と同期して照明を制御する。最後に、図4に示される実施形態では、照明回折格子は、撮像回折格子の上端に沿って配置された素子124を含む一本のストリップ状構造123のみで構成されている。)
「図3、4
[図:0001435608000007.jpg]
」
「[0119] The invention does not assume any particular configuration of the grating elements. It is important to note that the SBGs are formed as continuous lamina. Hence the illumination gratings elements may be considered to be part of the imaging grating. This is a significant advantage in terms of fabrication and overall form factor. In embodiments where the illumination grating is split into two elements as discussed above the input laser light may be provided by one laser with the upper and lower beam being provided by a beam splitting means. Alternatively, two separate laser modules may be used to provide light that is coupled into the waveguide via the input gratings 114A,114B are illustrated in FIGS. 3-4. The invention does not assume any particular method for providing the laser input illumination or coupling the laser light into the waveguide. Many alternative schemes should be apparent to those skilled in the art of optical design.」
(本発明は、回折格子要素のいかなる特定の構成も前提としないことに留意すべきである。SBGは連続したラミナとして形成される。したがって、照明回折格子要素は撮像回折格子の一部と見なし得る。これは製造及び全体的な形状係数の点で重要な利点である。前述のように照明回折格子が二つの要素に分割される実施形態においては、入力レーザ光は1つのレーザにより供給され、上部及び下部のビームはビーム分岐手段により提供され得る。又は、二つの独立したレーザモジュールを用いて、図3~図4に示される入力回折格子114A、114Bを介して波導に結合される光を供給することもできる。本発明は、レーザ入力照明を供給する方法、又はレーザ光を波導に結合させる方法について、いかなる特定の方式にも依存しない。光学設計の当業者には、多くの代替方式が明らかであろう。)
「[0120] The illumination grating may provide illumination light of any beam geometry. For example, the light may be a parallel beam emitted normally to the surface of the eye tracker waveguide. The illuminator grating is illustrated in more detail in the schematic side elevation view of FIG.5 in which the SBG linear array 130 is sandwiched between transparent substrates 130A,130B. Note that the substrate layers extended to cover the entire waveguide and therefore also act as the substrates for the imaging grating. Advantageously, the ITO layers are applied to the opposing surfaces of the substrates with at least one ITO layer being patterned such that SBG elements may be switched selectively. The substrates and SBG array together form a light guide. Each SBG array element has a unique optical prescription designed such that input light incident in a first direction is diffracted into output light propagating in a second direction. FIG.5 shows TIR illumination beam 1020 being deflected by the active element 131 to provide divergent illumination light 1021.
…(中略)…」
(照明回折格子は、任意のビーム形状の照明光を提供することができる。例えば、光は眼球追跡装置の導波路表面に対して垂直に放射される平行光束であってもよい。照明回折格子の詳細は、図5の側面概略図に示されており、そこではSBG線形アレイ130が透明基板130A及び130Bの間に挟まれている。基板層は導波路全体を覆うように拡張されており、したがって撮像回折格子の基板としても機能することに留意すべきである。有利な点として、ITO層は基板の対向面に塗布され、少なくとも一方のITO層はパターン化されており、これによりSBG素子を選択的に切り替えることが可能となっている。基板とSBGアレイは一体となって導波路を形成する。各SBGアレイ素子は、特定の光学的設計を有しており、これにより第一方向から入射した光が第二方向へと進行する出射光へと回折されるようになっている。図5では、全反射照明ビーム1020がアクティブ素子131によって偏向され、発散性の照明光1021が提供される様子が示されている。)
「図5
[図:0001435608000008.jpg]
」
「[0123] In one embodiment of the invention the imaging grating may also encode optical power. A two layer SBG imaging grating that encodes optical power is illustrated in FIGS.7-10. The arrays are shown in their stacked configuration in FIG.7. The substrates 136A,136B and 139A,139B together provide the imaging waveguide as illustrated in FIG.8 where the ray path from the eye into the waveguide via an activated SBG element 142 is represented by rays 1025-1028. The arrays are shown in front, plan and side elevation views in FIGS.9-10. The arrays comprise linear arrays of column elements each having the optical characteristics of a cylindrical lens. The column vectors in the two arrays are orthogonal. The first array comprises the SBG array 135 sandwiched by the substrates 136A,136B with one particular element 137 being indicated. The second array comprises the SBG array 140 sandwiched by the substrates 139A,139B with one particular element 141 being indicated.
…(中略)…」(当合議体注:「the SBG array 40」は、図10A及びCの記載からみて、「the SBG array 140」の誤記であると認められるため、誤記を正して摘記した。)
(本発明の一実施形態において、撮像回折格子は光学的パワーを付加することも可能である。光学的パワーを付加する2層構造のSBG撮像回折格子は、図7~図10に示されている。図7では、これらの格子配列が積層された構成で示されている。図8に示されるように、基板136A、136B及び139A、139Bは合わせて撮像用導波路を構成しており、眼から導波路へと入射する光線経路は、活性化されたSBG素子42を介して、光線1025~1028として表されている。図9及び図10では、これらの格子配列が正面図、平面図、側面図で示されている。これらの配列は、各素子が円筒レンズの光学特性を有する縦方向の線形配列で構成されている。二つの配列における縦方向ベクトルは互いに直交している。第1の配列は、基板136A及び136Bに挟まれたSBGアレイ135で構成されており、特定の素子137が示されている。第2の配列は、基板139A及び139Bに挟まれたSBGアレイ140で構成されており、特定の素子141が示されている。)
「図7~10C
[図:0001435608000009.jpg]
[図:0001435608000010.jpg]
」
「[0181] It should also be noted that the gratings used in the eye tracker are not necessarily all switching gratings. Switching gratings may be used in combination with passive grating technologies. As has been indicated by the description and drawings more than one grating layer (lamina) may be used. The grating layers discussed above are SBGs disposed between internal waveguide surfaces (or in other words sandwiched between transparent substrates that combine to form the waveguide. However in equivalent embodiments some of the gratings layers could be applied to external waveguide surfaces. This would apply in the case of surface relief gratings.
…(後略)…」
(眼球追跡装置で使用される格子は、必ずしもすべてがスイッチング格子である必要はない。スイッチング格子は、パッシブ格子技術と組み合わせて使用することができる。記述及び図面で示されているように、複数の格子層(ラミナ)を使用することが可能である。上記で説明した格子層は、導波路の内部表面の間に配置されたSBGであり、言い換えれば、透明基板の間に挟まれており、それら基板が組み合わさって導波路を形成している。しかし、同等の実施形態では、格子層の一部を導波路の外部表面に適用することもできる。この場合は、表面レリーフ格子に該当する。)
イ 引用文献1の記載事項から当業者が把握できる事項の認定
(ア) 引用文献1の[0112]、[0118]及び[0123]の記載を踏まえると、当業者は、図1A、1C、4、5に示される眼球追跡装置において、図7~10に示される光学的パワーを付加する2層構造のSBG撮像用回折格子を備える実施形態を把握することができる。
(イ) 引用文献1の[0112]、[0117]、[0118]の記載、特に、[0118]の「照明回折格子は、撮像回折格子の上端に沿って配置された素子124を含む一本のストリップ状構造123のみで構成されている」との記載を踏まえつつ図1、2、4を参照すると、当業者は、図4に示される実施形態について、次の事項を把握することができる。
「撮像回折格子101と出力回折格子115は離間しており、撮像回折格子101と出力回折格子115が離間する方向に直交する方向において、撮像回折格子101の長さは、出力回折格子115の長さよりも長いこと。」
(ウ) 引用文献1の[0123]の記載を踏まえつつ図7~10を参酌すると、当業者は、次の事項を把握することができる。
「第1の配列と第2の配列が積層されていること。」
ウ 引用発明の認定
前記アに摘記した引用文献1の記載事項及び前記イにおいて認定した事項を総合すると、引用文献1には、図1A、1C、4、5に示される眼球追跡装置において、図7~10に示される光学的パワーを付加する2層構造のSBG撮像用回折格子を備える実施形態(前記イ(ア))の眼球追跡装置の導波路100に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「眼球追跡装置の導波路100であって、([0112])
眼球追跡装置は、眼に赤外線照明を供給するための赤外線照明チャネルと、眼の画像をセンサ上に形成するための撮像チャネルを備え、([0112])
眼球追跡装置は、照明光を眼116に向けて伝搬させるとともに、眼の少なくとも一つの表面から反射された画像光を伝搬させる導波路100と、導波路に光学的に結合された光源112と、導波路に光学的に結合された検出器113とを備え、([0112])
導波路内には、光源からの照明光を第1の導波路経路に偏向させるための少なくとも一つの入力回折格子114、照明光を眼に向けて偏向させる少なくとも一つの照明回折格子102、画像光を第2の導波路経路に偏向させる少なくとも一つの撮像回折格子101、そして画像光を検出器に向けて偏向させる少なくとも一つの出力回折格子115が配置されており、([0112])
撮像回折格子は、切り替え可能なビーム偏向回折格子素子の配列で構成されており、回折格子技術としては、切り替え可能ブラッグ格子(SBG)が採用されており、([0112]・[0014])
撮像回折格子は、各素子が二つの直交する面に光学的なパワーを持つ素子123からなる2次元配列122で構成されており、([0112])
角膜及び網膜からの画像光は、光線経路1015及び1116に沿って導波路に入射し、撮像回折格子の能動素子によって、1素子ずつ切り替えられながら、全反射経路1017に偏向され、光線1017は、出力回折格子によって検出器に向かう光線経路1018に偏向され、([0113])
検出器はSBGレンズ配列素子の切り替えと同期して画像信号を読み出し、検出器は、眼球の動きに関する少なくとも一つの時空間的特性を判定するための画像処理装置に接続されており、([0113])
照明回折格子は、撮像回折格子の上端に沿って配置された素子124を含む一本のストリップ状構造123のみで構成されており、([0118])
照明回折格子は、SBG線形アレイ130が透明基板130A及び130Bの間に挟まれており、基板層は導波路全体を覆うように拡張されており、したがって撮像回折格子の基板としても機能し([0120])
基板とSBGアレイは一体となって導波路を形成しており、([0120])
撮像回折格子は光学的パワーを付加することも可能であり、光学的パワーを付加する2層構造のSBG撮像回折格子であり、([0123])
基板136A、136B及び139A、139Bは合わせて撮像用導波路を構成しており、([0123])
これらの格子配列は、各素子が円筒レンズの光学特性を有する縦方向の線形配列で構成されており、二つの配列における縦方向ベクトルは互いに直交しており、第1の配列は、基板136A及び136Bに挟まれたSBGアレイ135で構成されており、第2の配列は、基板139A及び139Bに挟まれたSBGアレイ140で構成されており、([0123])
撮像回折格子101と出力回折格子115は離間しており、撮像回折格子101と出力回折格子115が離間する方向に直交する方向において、撮像回折格子101の長さは、出力回折格子115の長さよりも長く、(前記イ(イ))
第1の配列と第2の配列が積層されている、(前記イ(ウ))
導波路100」
(3) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点
a 構成Xの観点は、「検出器システムのための機能化された導波路」の発明であることである。
b 「導波路」の発明である本件補正発明と「導波路100」の発明である引用発明は、「導波路」の発明である点において一致する。
c 引用発明において、「眼球追跡装置は」「眼の少なくとも一つの表面から反射された画像光を伝搬させる導波路100」「を備え」([0112])、「導波路100内には」、「画像光を第2の導波路経路に偏向させる少なくとも一つの撮像回折格子101、そして画像光を検出器に向けて偏向させる少なくとも一つの出力回折格子115が配置されて[いる]」([0112])。そして、「画像光は、光線経路1015及び1116に沿って導波路に入射し、撮像回折格子の能動素子によって、1素子ずつ切り替えられながら、全反射経路1017に偏向され、光線1017は、出力回折格子によって検出器に向かう光線経路1018に偏向され[る]」([0113])。そうすると、「眼球追跡装置」及び「導波路100」の構成及び機能からして、引用発明における「導波路100」は、本件補正発明と同様に「検出器システムのための機能化された」ものであるといえる。
d したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「検出器システムのための機能化された導波路」の発明である点。
(イ) 構成Aの観点
a 構成Aは、「導波路(1)は、前面(7)及び後面(8)を有する透明基材(6)を含[む]」ことである。
b 引用発明において、「第1の配列は、基板136A及び136Bに挟まれたSBGアレイ135で構成されており、第2の配列は、基板139A及び139Bに挟まれたSBGアレイ140で構成されており」([0123])、前記「第1の配列と第2の配列」は「積層されている」(前記(2)イ(ウ))。そして、「基板とSBGアレイは一体となって導波路を形成して[いる]」([0120])こと及び「基板136A、136B及び139A、139Bは合わせて撮像用導波路を構成して[いる]」([0123])ことから、引用発明における「第1の配列と第2の配列が積層されている」(前記(2)イ(ウ))積層体は、導波路であることが理解でき、導波路である以上、透明であることは、当業者には自明のことである。したがって、引用発明における「第1の配列と第2の配列が積層されている」(前記(2)イ(ウ))積層体は、本件補正発明における「透明基材(6)」に相当するといえるとともに、「導波路100」に含まれるものであるといえる。
c 引用発明における前記「第1の配列と第2の配列が積層されている」(前記(2)イ(ウ))積層体において、「角膜及び網膜からの画像光」が「光線経路1015及び1016に沿って導波路に入射[する]」([0113])面は、本件補正発明における「前面」に、向かい合う他方の面は本件補正発明における「後面」に相当するといえる。
d したがって、前記a~cをまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「導波路(1)は、前面(7)及び後面(8)を有する透明基材(6)を含[む]」点。
(ウ) 構成Bの観点
a 構成Bは、「前記基材(6)は、部分的に透明な入力結合領域(4)と、そこから第一の方向(R1)に離間された出力結合領域(5)とを含[む]」ことである。
b 引用発明における「撮像回折格子101」は、「画像光を第2の導波路経路に偏向させる」([0112])ものであるから、本件補正発明における「入力結合領域(4)」に相当するといえる。また、引用発明は、「基板とSBGアレイは一体となって導波路を形成して[いる]」([0120])ことから、「SBGアレイ135」及び「SBGアレイ140」も撮像用導波路を構成していることが理解でき、撮像用導波路を構成するものである以上、「SBGアレイ135」及び「SBGアレイ140」が透明であることは、当業者には自明のことである。そして、当該「SBGアレイ135」及び「SBGアレイ140」は、「光学的パワーを付加する2層構造のSBG撮像回折格子」([0123])であるから、引用発明における「撮像回折格子101」は、本件補正発明でいう「部分的に透明な」ものであるといえる。
c 引用発明における「出力回折格子115」は、「画像光を検出器に向けて偏向させる」([0112])ものであるから、本件補正発明における「出力結合領域(5)」に相当する。
d 引用発明は、「照明回折格子は、SBG線形アレイ130が透明基板130A及び130Bの間に挟まれており、基板層は導波路全体を覆うように拡張されており、したがって撮像回折格子の基板としても機能[する]」([0120])のであるから、引用発明においては、各回折格子は、共通の基板に挟まれていることが理解できる。したがって、引用発明における前記「第1の配列と第2の配列が積層されている」(前記(2)イ(ウ))積層体は、「撮像回折格子101」及び「出力回折格子115」を含むといえる。
e 引用発明において、「撮像回折格子101と出力回折格子115は離間して[いる]」(前記(2)イ(イ))から、引用発明における「出力回折格子115」は、本件補正発明と同様に「入力結合領域(4)」「から第一の方向(R1)に離間された」ものであるといえる。
f したがって、前記a~eをまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記基材(6)は、部分的に透明な入力結合領域(4)と、そこから第一の方向(R1)に離間された出力結合領域(5)」を含む点。
(エ) 構成Cの観点
a 構成Cは、「前記入力結合領域(4)は回折構造を含み、これは検出対象の物体から入射し、前記前面(7)に衝突した放射の一部のみを偏向させ、それによって前記偏向された部分は、入力結合された放射として前記基材(6)内を反射によって前記出力結合領域(5)まで伝搬して、前記出力結合領域(5)に衝突」することである。
b 前記(ウ)bで検討したとおり、引用発明における「撮像回折格子101」は、本件補正発明における「入力結合領域(4)」に相当し、「撮像回折格子は、切り替え可能なビーム偏向回折格子素子の配列で構成されて[いる]」([0112])から、引用発明における「撮像回折格子」は、本件補正発明と同様に「回折構造を含[む]」ものであるといえる。
c 引用発明において、「角膜及び網膜からの画像光は、光線経路1015及び1016に沿って導波路に入射し、撮像回折格子の能動素子によって、1素子ずつ切り替えられながら、全反射経路1017に偏向され」([0113])、「撮像回折格子101」は「画像光を第2の導波路経路に偏向させる」([0112])ものである。そして、上記(ウ)bで検討したように、「撮像回折格子」は部分的に透明である。そうすると、引用発明における「撮像回折格子」は、本願補正発明と同様に「検出対象の物体から入射し、前記前面(7)に衝突した放射の一部のみを偏向させ[る]」ものであるといえる。
d 引用発明において、「撮像回折格子の能動素子によって、1画素ずつ切り換えられながら、全反射経路1017に偏向され[た]」「画像光」である「光線」は、「出力回折格子によって検出器に向かう光線経路1018に偏向され[る]」([0113])から、引用発明における「撮像回折格子」は、本件補正発明と同様に、「それによって前記偏向された部分は、入力結合された放射として前記基材(6)内を反射によって前記出力結合領域(5)まで伝搬して、前記出力結合領域(5)に衝突[する]」ものであるといえる。
e したがって、前記a~dをまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記入力結合領域(4)は回折構造を含み、これは検出対象の物体から入射し、前記前面(7)に衝突した放射の一部のみを偏向させ、それによって前記偏向された部分は、入力結合された放射として前記基材(6)内を反射によって前記出力結合領域(5)まで伝搬して、前記出力結合領域(5)に衝突[する]」点。
(オ) 構成Dの観点
a 構成Dは、「出力結合領域(5)は回折構造を含み、そこに衝突した前記入力結合された放射の少なくとも一部を偏向させ、それによって前記偏向された部分は、前記基材(6)から前記前面(7)又は後面(8)を介して出て、前記検出器システム(2)に衝突[する]」ことである。
b 引用発明における「出力回折格子」は、その名称からして、本件補正発明と同様に「回折構造」を含むといえる。
c 引用発明における「検出器」は、本件補正発明における「検出器システム(2)」に相当する。そして、引用発明における「出力回折格子115」は、「画像光を検出器に向けて偏向させる」([0112])ものであるから、前記(エ)dで検討した点も踏まえると、本件補正発明と同様に「そこに衝突した前記入力結合された放射の少なくとも一部を偏向させ、それによって前記偏向された部分は、前記基材(6)から前記前面(7)又は後面(8)を介して出て、前記検出器システム(2)に衝突[する]」ものであるといえる。
d したがって、前記a~cをまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「出力結合領域(5)は回折構造を含み、そこに衝突した前記入力結合された放射の少なくとも一部を偏向させ、それによって前記偏向された部分は、前記基材(6)から前記前面(7)又は後面(8)を介して出て、前記検出器システム(2)に衝突[する]」点。
(カ) 構成Eの観点
a 構成Eは、「前記入力結合領域(4)の前記第一の方向(R1)を横断する第二の方向(R2)への範囲は、前記出力結合領域(5)の前記第二の方向(R2)への範囲より大き[い]」ことである。
b 引用発明においては、「撮像回折格子101と出力回折格子115は離間しており、撮像回折格子101と出力回折格子115が離間する方向に直交する方向において、撮像回折格子101の長さは、出力回折格子115の長さよりも長[い]」(前記(2)イ(イ))。
c そして、前記(ウ)bで検討したように、引用発明における「撮像回折格子101」は本件補正発明における「入力結合領域(4)」に相当し、前記(ウ)cで検討したように、引用発明における「出力回折格子115」は本件補正発明における「出力結合領域(5)」に相当し、前記(ウ)eで検討したように、引用発明における「撮像回折格子102と出力回折格子115が離間する方向」は、本件補正発明における「第一の方向(R1)」に相当するから、引用発明における「撮像回折格子101と出力回折格子115が離間する方向に直交する方向」は、本件補正発明における「前記第一の方向(R1)を横断する第二の方向(R2)」に相当するといえる。
d そうすると、引用発明の「撮像回折格子102」は、本件補正発明と同様に、その「第一の方向(R1)を横断する第二の方向(R2)への範囲は、前記出力結合領域(5)の前記第二の方向(R2)への範囲より大き[い]」といえる。
e したがって、前記a~dをまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記入力結合領域(4)の前記第一の方向(R1)を横断する第二の方向(R2)への範囲は、前記出力結合領域(5)の前記第二の方向(R2)への範囲より大き[い]」点。
(キ) 構成Fの観点
a 構成Fは、「前記入力結合領域(4)及び/又は前記出力結合領域(5)はまた、前記入力結合領域(4)及び/又は前記出力結合領域(5)による前記偏向に加えて、前記各回折構造により提供された画像生成光学機能を含む」ことである。
b 引用発明においては、「眼球追跡装置は、眼の画像をセンサ上に形成するための撮像チャネルを備え」([0112])、「検出器はSBGレンズ配列素子の切り替えと同期して画像信号を読み出し、検出器は、眼球の動きに関する少なくとも一つの時空間的特性を判定するための画像処理装置に接続されて[いる]」([0113])ことから、引用発明の「検出器」上に画像光が結像していることは明らかである。
c 引用発明においては、「撮像回折格子は光学的パワーを付加することも可能であり、光学的パワーを付加する2層構造のSBG撮像回折格子であり」([0123])、「各素子が円筒レンズの光学特性を有する縦方向の線形配列で構成されて[いる]」([0123])ところ、引用発明における当該「光学的パワー」、「円筒レンズの光学特性」とは、前記bでの検討を踏まえれば、「検出器」上に画像光を結像させるための光学的な機能、すなわち、本件補正発明でいう「画像生成光学機能」を意味していることは当業者には明らかである。したがって、前記(エ)で検討した点も踏まえると、本件補正発明における「撮像回折格子」は、本件補正発明と同様に、「偏向に加えて、前記」「回折構造により提供された画像生成光学機能を含む」ものであるといえる。
d したがって、前記a~cをまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記入力結合領域(4)」「はまた、前記入力結合領域(4)」「による前記偏向に加えて、前記」「回折構造により提供された画像生成光学機能を含む」点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次に示す一致点において一致し、相違点はない。
[一致点]
「検出器システムのための機能化された導波路であって、
前記導波路(1)は、前面(7)及び後面(8)を有する透明基材(6)を含み、
前記基材(6)は、部分的に透明な入力結合領域(4)と、そこから第一の方向(R1)に離間された出力結合領域(5)とを含み、
前記入力結合領域(4)は回折構造を含み、これは検出対象の物体から入射し、前記前面(7)に衝突した放射の一部のみを偏向させ、それによって前記偏向された部分は、入力結合された放射として前記基材(6)内を反射によって前記出力結合領域(5)まで伝搬して、前記出力結合領域(5)に衝突し、
前記出力結合領域(5)は回折構造を含み、そこに衝突した前記入力結合された放射の少なくとも一部を偏向させ、それによって前記偏向された部分は、前記基材(6)から前記前面(7)又は後面(8)を介して出て、前記検出器システム(2)に衝突し、
前記入力結合領域(4)の前記第一の方向(R1)を横断する第二の方向(R2)への範囲は、前記出力結合領域(5)の前記第二の方向(R2)への範囲より大きく、
前記入力結合領域(4)及び/又は前記出力結合領域(5)はまた、前記入力結合領域(4)及び/又は前記出力結合領域(5)による前記偏向に加えて、前記各回折構造により提供された画像生成光学機能を含む、機能化された導波路」である点。
ウ 小括
前記ア及びイにおいて検討したとおり、本件補正発明は引用発明である。また、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえる。
エ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張
請求人は審判請求書において、引用文献1には、入力結合領域及び/又は出力結合領域が、偏向に加えて、それぞれの回折構造により提供された画像生成光学機能を含むことは開示されていないと主張している。
(イ) 請求人の主張についての検討
前記ア(キ)において検討したように、本件補正発明における「入力結合領域(4)」に相当する引用発明における「撮像回折格子」は、本件補正発明と同様に、回折構造により提供された画像生成光学機能を含むものであると認められる。
したがって、請求人の主張は採用できない。
オ 独立特許要件の判断のまとめ
以上のとおり、本件補正発明は引用発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、同項の規定より、特許出願の際独立して特許を受けることができない。また、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記3(3)オのとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由である理由2(新規性の欠如)及び理由3(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由2(新規性の欠如) 本願発明は、その優先日前に発行された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3(進歩性の欠如) 本願発明は、その優先日前に発行された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.米国特許出願公開第2016/0209657号明細書
3 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
引用文献1の記載事項及び引用発明の認定は、前記第2の3(2)において示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明から「画像生成光学機能」について、「前記各回折構造により提供された」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(3)において説示したとおり、引用発明であり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も、引用発明であり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、同項の規定により、特許を受けることができない。また、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-008662