特許拒絶査定不服審判
2024-014184
光電気モジュール
- 審判番号
- 2024-014184
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-012456
- 請求日
- 2024年09月04日
- 審決日
- 2026年01月26日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アイオーコア株式会社
- 【請求人代理人】山本 修
- 【請求人代理人】宮前 徹
- 【請求人代理人】松尾 淳一
- 【請求人代理人】大房 直樹
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 横井 亜矢子
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P18 .121-Z (G02B) / P18 .57 -Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 12456「光電気モジュール」拒絶査定不服審判事件〔令和4年8月9日出願公開、特開2022-115723〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年1月28日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和6年 2月19日付け:拒絶理由通知書
同年 4月25日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月 3日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月 6日 :原査定の謄本の送達)
同年 9月 4日 :審判請求書、手続補正書の提出
同月26日付け:前置報告書
令和7年 1月 8日 :上申書の提出
第2 令和6年9月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年9月4日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正前後の請求項1の記載
令和6年9月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年4月25日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正前後の補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
基板の一方の面上に電子回路および前記電子回路によって駆動される光回路が搭載された光電気混載デバイスであって、前記基板の前記一方の面と同じ側の第1面および前記第1面と反対側の第2面を有し、前記第1面に前記電子回路との電気入出力部および前記光回路との光入出力部が配置され、前記基板の前記一方の面と反対側の他方の面が前記第2面をなす、光電気混載デバイスと、
前記光電気混載デバイスの前記第1面側に配置されたインターフェイス基板であって、前記電気入出力部に結合された電気配線と、前記光入出力部に結合された光配線と、前記電気配線に接続されるとともに外部の電気配線に接続可能な電気インターフェイスと、前記光配線に接続されるとともに外部の光配線に接続可能な光インターフェイスと、を備えるインターフェイス基板と、
前記光電気混載デバイスの前記第2面に接して配置された放熱部材と、
を備える光電気モジュール。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
基板の一方の面上に電子回路および前記電子回路によって駆動される光回路が実装された光電気混載デバイスであって、前記基板の前記一方の面と同じ側の第1面および前記第1面と反対側の第2面を有し、前記第1面に前記電子回路との電気入出力部および前記光回路との光入出力部が配置され、前記基板の前記一方の面と反対側の他方の面が前記第2面をなす、光電気混載デバイスと、
前記光電気混載デバイスの前記第1面側に配置されたインターフェイス基板であって、前記電気入出力部に結合された電気配線と、前記光入出力部に結合された光配線と、前記電気配線に接続されるとともに外部の電気配線に接続可能な電気インターフェイスと、前記光配線に接続されるとともに外部の光配線に接続可能な光インターフェイスと、を備えるインターフェイス基板と、
前記光電気混載デバイスの前記第2面に接して配置された放熱部材と、
を備える光電気モジュール。」
2 本件補正の目的
(1) 本件補正による請求項1の補正事項(補正事項A)
本件補正により次のアに示す本件補正前の請求項1の記載は、イに示す本件補正後の請求項1の記載に補正された。下線は、補正により変更された部分に係る対応する記載を示す。以下、当該補正事項を「補正事項A」といい、ア及びイの記載をそれぞれ「本件補正前の技術事項Aの記載)」及び「本件補正後の技術事項Aの記載)」という。
ア 本件補正前の記載(本件補正前の技術事項Aの記載)
「基板の一方の面上に電子回路および前記電子回路によって駆動される光回路が搭載された光電気混載デバイス」
イ 本件補正後の記載(本件補正前の技術事項Aの記載)
「基板の一方の面上に電子回路および前記電子回路によって駆動される光回路が実装された光電気混載デバイス」
(2) 本件補正の目的について
前記補正事項Aに係る補正が、特許法17条の2第5項の規定に適合するものであるか否かについて検討する。
ア 技術常識(「搭載」及び「実装」という用語の意味)
(ア) 「搭載」及び「実装」の用語の意味について、技術常識に係る文献として、例えば、日本規格協会、「JIS C 61191-2:2020、プリント配線板実装-第2部:部門規格-表面実装はんだ付け要求事項、2020」(以下「JIS規格文書」という。)を参照すると、次のとおり記載されている(下線は合議体による。)。
「5 部品の表面実装
5.1 一般事項
この箇条は,基板表面に搭載して機械又は手作業によってはんだ付けする部品(表面実装用に設計した部品及び表面実装技術を適用する挿入部品を含む。)を対象とする。」
(イ) 前記(ア)に摘記したJIS規格文書の記載によると、出願時、プリント配線基板を用いた電気回路分野において、「搭載」及び「実装」という用語は、次のa及びbに示す意味であると理解できる。
a 「搭載」
電子部品をプリント配線板の表面に物理的に配置する行為
b 「実装」
電子部品をプリント配線板の表面に配置して取り付ける一連の工程全体
イ 発明の詳細な説明の記載
(ア) 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、補正事項Aに関連する記載としては、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、光電気モジュールに関し、特に、光電気モジュールにおける実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品および光部品が多数搭載された光電気モジュール(例えば特許文献1、2参照)において、伝送信号の高速化に伴い、各部品からの発熱が増加の一途をたどっている。」
「【0011】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記光結合部は、前記インターフェイス基板に内蔵またはその表面に搭載されたミラーである、光電気モジュールである。」
「【0019】
基板102の表面には更に、半導体レーザ103およびドライバIC108が実装される。半導体レーザ103は、その出射光が第1光導波路105へ入射するように第1光導波路105の一方の端部に近接して配置される。ドライバIC108は、ドライバIC108側の電気端子(不図示)と基板102側の電気配線109bとを電気的に接続する接続電極115(例えばボールグリッドアレイ(BGA)等)を用いて、基板102上に実装される。ドライバIC108は、電気配線109bを介して半導体レーザ103、光変調器104、およびビア109aに接続されており、ビア109aから入力された電気信号に基づいて半導体レーザ103および光変調器104を駆動するように構成される。」
「【0024】
受光素子110は、例えば、シリコンフォトニクス技術を用いて基板102の表面に直接形成することもできるし、あるいは別途作製したチップ型の受光素子110を基板102上に実装してもよい。受光素子110は、電気配線109bを介してドライバIC108に接続される。ドライバIC108は、受光素子110から出力される光電変換された電流信号をIV(電流電圧)変換するためのトランスインピーダンスアンプ(TIA)であってもよい。」
(イ) 前記(ア)に摘記した本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、前記ア(イ)に示した「搭載」及び「実装」の意味で用いられていることが理解できる。そして、審判請求書において補正の根拠とされた本願明細書の【0019】の記載において、「実装」を「搭載」に変更したとしても、意味は変わらない。
これらの点も踏まえると、本件補正前の技術事項Aと本件補正後の技術事項Aとの間に、実質的な差違は認められない。
ウ 審判請求書における主張
請求人は、審判請求書において、前記イ(イ)のとおり本件補正が特許法17条の2第3項の規定に適合することの根拠は示しているものの、本件補正の目的については説明をしていない。
エ 本件補正の目的のまとめ
以上のとおりであるから、「搭載」という用語を「実装」に補正する補正事項Aは、「請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの」に該当するとはいえず、特許法17条の2第5項2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しない。
また、補正事項Aが、特許法17条の2第5項1号、3号及び4号にそれぞれ掲げる「請求項の削除」、「誤記の訂正」及び「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」のいずれにも該当しないことは明らかである。
そうすると、補正事項Aにより請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれを目的とするものにも該当しなから、本件補正による請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項の規定に適合しない。
3 独立特許要件違反について
本件補正により請求項1についてする補正が特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するとした場合についても念のため検討する。
この場合、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合することが必要である、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであることが必要があるところ、後記の第3における検討において「搭載」を「実装」と読み替えることにより、本件補正発明には進歩性が認められず、特許法29条2項の規定に違反するとの結論が得られることから、本件補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
よって、本件補正により請求項1についてする補正が特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するとしたとしても、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記2(2)のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
また、本件補正による請求項1についてする補正が特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するとしても、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定等
(1) 本願発明の認定と分説
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。
ここで、検討の便宜上、本願発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Cまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1】及び【図3】に部材名を記入したものを掲載する。
<本願発明の分説>
A 基板の一方の面上に電子回路および前記電子回路によって駆動される光回路が搭載された光電気混載デバイスであって、
A1 前記基板の前記一方の面と同じ側の第1面および前記第1面と反対側の第2面を有し、
A2 前記第1面に前記電子回路との電気入出力部および前記光回路との光入出力部が配置され
A3 前記基板の前記一方の面と反対側の他方の面が前記第2面をなす、光電気混載デバイスと、
B 前記光電気混載デバイスの前記第1面側に配置されたインターフェイス基板であって、
B1 前記電気入出力部に結合された電気配線と、
B2 前記光入出力部に結合された光配線と、
B3 前記電気配線に接続されるとともに外部の電気配線に接続可能な電気インターフェイスと、
B4 前記光配線に接続されるとともに外部の光配線に接続可能な光インターフェイスと、を備えるインターフェイス基板と、
C 前記光電気混載デバイスの前記第2面に接して配置された放熱部材と、を備える
X 光電気モジュール。
<参考図(【図1】)>
[図:0001433692000001.jpg]
<参考図(【図3】)>
[図:0001433692000002.jpg]
(2) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある(下線は合議体による。)。
ア 【技術分野】、【背景技術】、【発明の概要】等
「【技術分野】
【0001】
本発明は、光電気モジュールに関し、特に、光電気モジュールにおける実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品および光部品が多数搭載された光電気モジュール(例えば特許文献1、2参照)において、伝送信号の高速化に伴い、各部品からの発熱が増加の一途をたどっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/012213号
【特許文献2】国際公開第2014/156962号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、冷却を効率的に行うことが可能な光電気モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、電子回路および前記電子回路によって駆動される光回路を備えた光電気混載デバイスであって、第1面および前記第1面と反対側の第2面を有し、前記第1面に前記電子回路との電気入出力部および前記光回路との光入出力部が配置された光電気混載デバイスと、前記光電気混載デバイスの前記第1面側に配置されたインターフェイス基板であって、前記電気入出力部に結合された電気配線と、前記光入出力部に結合された光配線と、前記電気配線に接続されるとともに外部の電気配線に接続可能な電気インターフェイスと、前記光配線に接続されるとともに外部の光配線に接続可能な光インターフェイスと、を備えるインターフェイス基板と、前記光電気混載デバイスの前記第2面に接して配置された放熱部材と、を備える光電気モジュールである。
…(中略)…
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光電気モジュールを効率的に冷却することが可能である。」
イ 【発明を実施するための形態】
「【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る光電気モジュールを構成する要素の1つである光電気混載デバイス100の断面構成図である。光電気混載デバイス100は、基板102、半導体レーザ103、光変調器104、第1光導波路105、第2光導波路106、グレーティングカプラ107、ドライバIC108、および電気配線109を備える。電気配線109は、光電気混載デバイス100の第1面100A(図1において上側の面)と基板102の表面とを導通するためのビア109aと、基板102の表面上に形成された電気配線109bとを含む。図1は光電気混載デバイス100をその断面方向から見た図であるため1組の半導体レーザ103、光変調器104、第1光導波路105、第2光導波路106、グレーティングカプラ107、および電気配線109しか描かれていないが、複数組の半導体レーザ103、光変調器104、第1光導波路105、第2光導波路106、グレーティングカプラ107、および電気配線109が、図1における断面と垂直な方向に配列されていてもよい。また、光電気混載デバイス100は、複数のドライバIC108を備えていてもよい。
…(中略)…
【0027】
図3は、本発明の実施形態に係る光電気モジュール10の断面構成図である。光電気モジュール10は、図1を参照して説明した光電気混載デバイス100と、インターフェイス基板200と、放熱部材300とを備える。光電気モジュール10は、図1の光電気混載デバイス100の代わりに、図2を参照して説明した光電気混載デバイス101、あるいは、図1のデバイス100と図2のデバイス101の両方の構成を統合することにより光送受信機能を有する光電気混載デバイスを備えてもよい。なお、以下では、光電気モジュール10が図1の光電気混載デバイス100を備えている構成に関して説明する。
…(中略)…
【0030】
図3の光電気モジュール10において、光電気混載デバイス100は、その第1面100Aをインターフェイス基板200側に向けて、インターフェイス基板200に実装される(フリップチップ実装)。図1を参照して前述したように、光電気混載デバイス100の第1面100Aには、ビア109aの端部と第2光導波路106の端部が位置している。光電気混載デバイス100のビア109aは、例えばBGA等の接続電極250を介して、インターフェイス基板200の表面に露出した電気配線202に接続される。また、第2光導波路106は、光結合部203aを介してインターフェイス基板200の光配線203と光学的に接続される。
…(中略)…
【0032】
上記のように、光電気混載デバイス100はインターフェイス基板200にフリップチップ実装されており、そのため、光電気混載デバイス100の第2面100B(すなわち光電気混載デバイス100を構成している基板102の裏面であって段差のない平坦な面)は、インターフェイス基板200と反対側に向けられている。この光電気混載デバイス100の第2面100Bに、放熱部材300が配置される。放熱部材300は、その放熱面(図3において上側の面)が大きな表面積を有するような形状を備えた金属(銅やアルミニウム)またはセラミック製の部材(ヒートシンク)である。放熱部材300は、その光電気混載デバイス100側の面(図3において下側の面)が平坦面として構成され、この平坦面が光電気混載デバイス100の第2面100B(すなわち基板102の平坦な裏面)に密接している。両者の接触面の間に、熱伝導性の高いグリースまたは接着剤が設けられてもよい。
【0033】
本実施形態の光電気モジュール10では、放熱部材300が光電気混載デバイス100の第2面100Bと広い面積で(すなわち基板102の裏面全面と)接触していることにより、光電気混載デバイス100内の電子回路・光回路(例えばドライバIC108および半導体レーザ103)やその他の発熱部品において発生した熱が、効率良く放熱部材300に伝達される。そのため、放熱部材300を介して光電気混載デバイス100からの熱をより大量に放熱することができ、光電気モジュール10の冷却性能を高めることができる。」
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由のうち理由2(進歩性の欠如)の要旨は、次のとおりである。
理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、出願前に発行された特開2006-270037号公報(以下「引用文献1」という。)に記載された発明に基づいて、出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
3 各引用文献の記載事項並びに引用発明及び技術常識Aの認定
(1) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献であって、本願の出願前に発行された文献である引用文献1(特開2006-270037号公報)には、次の記載がある(合議体により、引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。また、図は、対応する記載の近くに挿入して示した。)。
(ア) 【発明の開示】等(【0001】~【0024】)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板上に複数個のIC(Integrated Circuit)素子やLSI(LargeScalIntegration)素子或いはメモリ素子等の半導体回路素子や電子部品或いは光学素子等の実装部品を搭載するとともに配線層を有するハイブリットモジュール及びその製造方法並びに上述したハイブリットモジュールを配線基板に実装してなるハイブリット回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、ビデオレコーダ或いはオーディオ機器等の各種の電子機器には、各種のIC素子やLSI素子或いはメモリ素子等の半導体回路素子や電子部品が備えられている。電子機器においては、例えば同一機能を奏する上述した半導体回路素子や電子部品等を配線層を形成したベース基板に搭載することによってハイブリット化したいわゆるハイブリットモジュールが備えられている。
【0003】
ハイブリットモジュールは、電子機器の小型化や多機能化或いは高機能化の対応に基づいてシリコン基板等により多くの実装部品が搭載されるとともに、高密度実装化や小型軽量化等が図られている。例えば、特許文献1或いは特許文献2には、多数個の実装部品をそれぞれの入出力部形成面が互いに同一面を形成するようにして樹脂基体内に封装するとともに、この樹脂基体の主面上に配線層を形成したハイブリットモジュールが開示されている。かかるハイブリットモジュールおいては、各実装部品上にも配線層を介して他の部品実装を可能として薄型化を図りながら高密度実装化を実現する。
【0004】
一方、電子機器等においては、一般にボード内に搭載された各実装部品間の信号伝送が配線層に形成された配線パターンによって行われる。電子機器等においては、さらなる高速処理化が求められているが、配線パターンによる電気的な信号伝送では配線パターンの微細化の限界、配線パターン内で発生するCR(Capacitance-Resistance)時定数による信号伝送の遅延、EMI(Electromagnetic Interference)やEMC(Electromagnetic Compability)或いは各配線パターン間のクロストーク等の問題によりその対応が極めて困難である。
【0005】
電子機器等においては、上述した電気信号の伝送構造による問題を解決してさらなる高速化や多機能、高機能化等を実現する対応として、光学信号伝送路(光学バス)や光学インターコネクション等の光学部品を備える光学信号伝送構造の採用が検討されている。光学信号伝送構造は、各機器間や各機器に搭載されたボード間、或いは各ボード内の実装部品間における比較的短距離の信号伝送を行う場合に好適である。光学信号伝送構造は、実装部品を実装した配線基板に光学信号伝送路を形成し、この光学信号伝送路を伝送路として光学信号を高速かつ大容量で伝送することを可能とする。光学素子混載ハイブリットモジュールについては、例えば特許文献3に開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平7-7134号公報
【特許文献2】特開2000-106417公報
【特許文献3】特開2004-193221公報
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1や特許文献2に開示されたハイブリットモジュールは、基部に支持された基部シート上に半導体チップや機能ディバイス等の複数個の実装部品を並べて搭載し、これら実装部品を封止するようにして基部シート上に樹脂によって基板体を形成して構成する。かかるハイブリットモジュールにおいては、各実装部品の接点パッドが略同一面を構成することで回路基板等に対して各実装部品を一括して接続することが可能であるとともに、基板体を最大外形寸法の実装部品に合わせて研磨されることによって全体として薄型化が図られるようになる。
【0008】
しかしながら、かかるハイブリットモジュールにおいては、複数個の実装部品を樹脂によって形成した基板体によって封止した構造であることから、樹脂が硬化する際に硬化収縮が生じて基板体に大きな寸法変化が生じてしまう。ハイブリットモジュールにおいては、このために基板体に大きな反り等の現象が生じることによって、各実装部品の接続パッドが回路基板側の実装用ランドに対して位置がズレてしまったり接続部位において断線が発生する等により実装精度が悪くなるといった問題があった。また、ハイブリットモジュールにおいては、各実装部品の外周部に熱変形による応力によってクラックが生じることで、実装強度の低下や水分の滲入による内部ショートや錆発生等が生じて信頼性が低下するといった問題もあった。
【0009】
一方、ハイブリットモジュールにおいては、上述した特許文献2に開示されるように光学信号伝送構造を備えることによってさらなる高速化や多機能、高機能化等が図られる。ハイブリットモジュールにおいては、高速処理化や高容量化が図られたLSI素子等から入出力される電気的信号を、半導体レーザや発光ダイオード或いはフォトディテクタ等の光学素子によって光学的信号に変換する。したがって、ハイブリットモジュールにおいては、電気的信号伝送構造とともに光学信号伝送構造を混載した電気・光信号混載型ハイブリットモジュールも提供されている。
【0010】
電気・光混載型ハイブリットモジュールにおいては、光学信号伝送構造を介することによる信号伝達の高速化に伴い、電気的信号伝送構造における上述したCR時定数による信号伝送の遅延、EMIノイズやEMC等の低減による低寄生容量化の対応が極めて重要となる。また、電気・光混載型ハイブリットモジュールにおいては、光学部品が電気・光変換動作を行う際に熱を発生し、混載した電気部品の特性に影響を及ぼす虞もある。
【0011】
したがって、電気・光混載型ハイブリットモジュールにおいては、一般に光学部品や光学信号伝送路を配線層の主面上や回路基板等に対して別工程によって実装していた。電気・光混載型ハイブリットモジュールにおいては、電気部品と光学部品とを別工程によって実装することによって、実装工程が複雑かつ低効率となるとともに歩留まりも低下するといった問題があった。電気・光混載型ハイブリットモジュールにおいては、電気部品と光学部品との個別実装によってこれら部品間を接続する電気配線パターンも必要となり、その接続容量が低寄生容量化の実現を困難とさせる。
【0012】
したがって、本発明は、多数個の実装部品を薄型化を図りかつ実装精度や実装効率或いは信頼性の向上を図って実装し、また電気的信号伝送機能と光学信号伝送機能とにより情報信号等の高速・高容量伝送化を図るハイブリットモジュール及びその製造方法並びにハイブリット回路装置を提供することを目的とする。
…(中略)…
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、シリコン基板に形成した部品装填開口部内に入出力部形成面が主面と略同一面を構成するようにして実装部品を封止層によって埋め込んだ状態で一体化するとともにシリコン基板の主面上に各実装部品と電気的に接続される配線層を形成してハイブリットモジュールを構成する。したがって、本発明によれば、小型化と薄型化とが図られるとともに各実装部品と配線層とを最短で接続して寄生容量を低減したハイブリットモジュールを得ることが可能となる。本発明によれば、熱等の影響による寸法や形状変化がほとんど生じないシリコン基板をベース基板とすることによって、各実装部品が高精度に位置決めされて一体化されるとともに配線層との間において断線等の発生を抑制した高精度のハイブリットモジュールを得ることが可能となる。本発明によれば、シリコン基板が各実装部品や配線層の電源部やグランド部としても機能するとともに良好な放熱作用も奏することから、安定した機能動作が奏されて信頼性の向上を図ったハイブリットモジュールを得ることが可能となる。本発明によれば、電気信号の伝送系と光学信号の伝送系とを混載することによって、情報信号等の高速・高容量化を図って伝送することが可能となる。」
(イ) 【発明を実施するための最良の形態】(【0025】~【0061】
「【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態として図面に示したハイブリットモジュール1及びこのハイブリットモジュール1を搭載したハイブリット回路装置2について説明する。ハイブリットモジュール1は、図1に示すように、複数個の実装部品4A、4D(以下、個別に説明する場合を除いて実装部品4と総称する。)を埋め込んだシリコン基板3を挟むようにして、第1主面3Aに配線層5を形成するとともに第2主面3Bに放熱プレート6を接合した積層体によって構成される。ハイブリットモジュール1は、詳細を後述するように実装部品4の厚みよりもやや大きな厚みとなるまで研磨したシリコン基板3を用いることによって薄型化が図られる。
【図1】
[図:0001433692000003.jpg]
【0026】
ハイブリットモジュール1は、図2に示すように配線層5を実装面として詳細を後述するベース基板部7上に搭載されることによってハイブリット回路装置2を構成する。ハイブリット回路装置2は、ベース基板部7がマザーボードやインタポーザ等に実装され、例えばパーソナルコンピュータや携帯電話機或いは各種の電子機器に備えられる。ハイブリット回路装置2は、ハイブリットモジュール1を備えることによって、電気的な制御信号やデータ信号の授受或いは電源供給を行う電気配線構造と光学的な制御信号やデータ信号の授受を行う光学配線構造とを備え、制御信号やデータ信号等を高速化かつ高容量化を図って処理する。
【図2】
[図:0001433692000004.jpg]
【0027】
ハイブリットモジュール1は、互いに関連動作を行う例えば第1LSI4Aや第2LSI4B或いは半導体素子4C等の電子部品と光学素子4D等の実装部品4をシリコン基板3に実装する。第1LSI4Aや第2LSI4Bは、詳細を省略するが高速処理化や高容量化が図られた多ピン構成のLSIである。半導体素子4Cは、例えば半導体メモリや各種の半導体ディバイス或いはデカップリングコンデンサ等の電子部品である。光学素子4Dは、第1LSI4Aや第2LSI4B或いは半導体素子4Cによって制御されて光学信号を出射する例えば半導体レーザや発光ダイオード等の発光素子或いはフォトディテクタ等の受光素子である。なお、光学素子4Dは、発光機能と受光機能とを備えた複合の光学素子であってもよいことは勿論である。
【0028】
ハイブリットモジュール1は、後述するようにこれら実装部品4がシリコン基板3に形成した第1部品装填開口部8A乃至第4部品装填開口部8D(以下、個別に説明する場合を除いて部品装填開口部8と総称する。)内にそれぞれ装填され、第1封止樹脂層9A乃至第4封止樹脂層9D(以下、個別に説明する場合を除いて封止樹脂層9と総称する。)に埋め込まれてシリコン基板3と一体化される。なお、ハイブリットモジュール1は、代表的な実装部品4をそれぞれ1個ずつ示したが、それぞれ所定の個数が備えられるようにしてもよいことは勿論である。
【0029】
実装部品4は、それぞれの第1主面10A~10D(以下、個別に説明する場合を除いて入出力部形成面10と総称する。)に詳細を省略する電気信号を入出力する所定個数の入出力パッド11A~11D(以下、個別に説明する場合を除いて入出力パッド11と総称する。)を形成して入出力部形成面10を構成する。実装部品4は、上述したように異なる種類(異なる特性)の部品であることから、それぞれが大きさを異にするとともに仕様も異にしている。
【0030】
実装部品4は、後述するようにそれぞれの入出力部形成面10を装填面として相対する部品装填開口部8内に装填される。実装部品4は、入出力部形成面10と対向する第2主面12A~12D(以下、個別に説明する場合を除いて底面12と総称する。)側に放熱プレート6が積層される。なお、光学素子4Dには、入出力部形成面10Dに、入出力パッド11Dとともに光学信号を出射する出射部或いは光学信号を受光する受光部からなる光学信号入出力部13が設けられている。
【0031】
ハイブリットモジュール1は、例えば第1LSI4Aや第2LSI4B或いは光学素子4Dのように熱を発生させる実装部品4が封止樹脂層9によってシリコン基板3に埋め込まれる。ハイブリットモジュール1は、これらの実装部品4からの発生熱を放熱プレート6に効率よく伝達して放熱を行うために、必要に応じて実装部品4にそれぞれ個別放熱プレート14A、14B、14D(以下、個別に説明する場合を除いて個別放熱プレート14と総称する。)が設けられている。
…(中略)…
【0033】
シリコン基板3には、詳細を後述するエッチング処理を施して、それぞれ厚み方向に貫通して第1主面3Aと第2主面3Bとに開口するとともに相対する実装部品4を内部に装填するに足る開口寸法を有する上述した部品装填開口部8が形成される。シリコン基板3は、上述したように予め所定の厚みまで研磨して薄型化されていることから、各部品装填開口部8を効率よくかつ高精度に形成することが可能である。なお、シリコン基板3は、第2主面3B側から所定の深さまで部品装填開口部8に対応した凹部を形成した状態で底面に研磨処理を施すことにより、部品装填開口部8を貫通させて第1主面3Aを形成するようにしてもよい。
…(中略)…
【0038】
ハイブリットモジュール1は、実装部品4を被覆するようにしてシリコン基板3の第1主面3A上に配線層5が積層形成される。配線層5は、一般的な多層配線技術によって形成され、第1絶縁樹脂層17Aと第2絶縁樹脂層17B(以下、個別に説明する場合を除いて絶縁樹脂層17と総称する。)、第1配線パターン18Aと第2配線パターン18B(以下、個別に説明する場合を除いて配線パターン18と総称する。)、それぞれ多数個の第1ビア19Aと第2ビア19B(以下、個別に説明する場合を除いてビア19と総称する。)等によって構成される。配線層5は、配線パターン18やビア19が銅めっき処理を施した銅パターンによって形成される。配線層5には、ベース基板部7への実装面となる表面5Aの適宜の位置に多数個のバンプ20が設けられている。なお、配線層5は、絶縁樹脂層17に2層の配線パターン18を形成したが、1層若しくはさらに多層の配線パターン18を形成するようにしてもよいことは勿論である。
【0039】
配線層5は、絶縁層17が、絶縁樹脂材として感光性の光透過性を有する絶縁樹脂、例えばエポキシ系樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂或いはゴム系樹脂が用いられて形成される。絶縁層17は、絶縁樹脂として高周波特性に優れた光透過性を有するベンゾシクロブテン樹脂を用いるようにしてもよい。
【0040】
配線層5には、第1絶縁樹脂層17Aに第1ビア19Aと第1配線パターン18Aとが形成されるとともに、第2絶縁樹脂層17Bに第2ビア19Bと第2配線パターン18Bとが形成される。配線層5は、後述するように第1絶縁樹脂層17A内に実装部品4の入出力パッド11や導電層16をそれぞれ外方に臨ませて形成した多数個の第1ビアホール21Aに導電処理を施して第1ビア19Aを形成し、これら第1ビア19Aを介して入出力パッド11や導電層16と第1配線パターン18Aとを直接接続させる。
【0041】
配線層5は、第1絶縁樹脂層17A上に第1配線パターン18Aを被覆して第2絶縁樹脂層17Bが形成される。配線層5は、第2絶縁樹脂層17B内に第1配線パターン18Aのランドをそれぞれ外方に臨ませて形成した多数個の第2ビアホール21Bに導電処理を施して第2ビア19Bが形成される。配線層5は、第2ビア19Bを介して第1配線パターン18Aと第2配線パターン18Bとを直接接続させる。
…(中略)…
【0044】
配線層5は、上述したように光透過性を有する絶縁樹脂によって絶縁層17を形成することにより、この絶縁層17を光学素子4Dに対する光学信号伝送路として構成する。すなわち、配線層5は、光学素子4Dの光学信号入出力部13と対向する部位が、絶縁層17中に厚み方向の全域に亘って配線パターン18が形成されない部位とされて光学信号伝送路5Bを構成する。
【0045】
配線層5は、図1に矢印で示すように、光学素子4Dの光学信号入出力部13から出射される光学信号が、この光学信号伝送路5Bを透過して表面5Aから出射されるようにする。また、配線層5は、表面5Aから入射される光学信号が、光学信号伝送路5Bを透過して光学素子4Dの光学信号入出力部13で受光されるようにする。なお、ハイブリットモジュール1は、配線層5の一部を光学信号伝送路5Bとして構成したが、より効率的な光学信号の伝送を行うために、光学素子4Dの光学信号入出力部13に対向して透明な樹脂材によって形成された導光部材を芯材としてクラッド材によって被覆した光導波路部材を設けるようにしてもよい。
【0046】
バンプ20は、第2配線パターン18Bのランド上に、例えば金めっき等により所定の高さを有して形成され、ハイブリットモジュール1がベース基板部7上にフリップチップ実装されることによって図2に示したハイブリット回路装置2を製造する。なお、バンプ20は、ハイブリットモジュール1のベース基板部7に対する実装方法によって適宜の構造が採用され、第2配線パターン18Bのランド上に設けられる例えば半田ボールや金属ボール等であってもよい。
【0047】
放熱プレート6は、軽量で熱伝導率が大きな金属プレート、例えば銅プレートやアルミプレート等の金属プレートやシリコンプレートによって形成され、シリコン基板3の第2主面3Bの全面に接着層22によって接合される。放熱プレート6は、上述したようにシリコン基板3の第2主面3Bや実装部品4に接合した個別放熱プレート14が研磨処理を施されて平坦化されていることから、全面に亘って密着した状態で接合されて効率的な熱伝導が行われるようになる。
…(中略)…
【0049】
なお、ハイブリットモジュール1においては、実装部品4に個別放熱プレート14を接合するとともにシリコン基板3に放熱プレート6を接合して実装部品4から発生する熱の放熱構造を構成したが、実装部品4からの発生熱がさほど大きくない場合には特に設ける必要も無い。また、ハイブリットモジュール1は、ベース基板部7に実装されてハイブリット回路装置2を構成した状態において、図2に示すように放熱プレート6にヒートスプレッダー23を接合してさらに効率的な放熱が行われるようにしてもよい。
…(中略)…
【0053】
以上のように構成されたハイブリットモジュール1は、図2に示すように配線層5の表面5Aを実装面として、バンプ20を相対するベース配線基板25のランドと位置決めされて接合されることによって他の電子部品24とともにベース基板部7上に実装されてハイブリット回路装置2を構成する。なお、ハイブリット回路装置2は、同図に示すようにベース基板部7に2個のハイブリットモジュール1A、1Bを実装するとともにハイブリットモジュール1A側にヒートスプレッダー23を接合したものを示したが、ハイブリットモジュール1を1個或いはさらに多数個を実装しかつ多数個の電子部品24を実装して構成するようにしてもよい。
【0054】
ハイブリット回路装置2は、ベース基板部7が、従来周知の多層配線基板技術によって製作したベース配線基板25に光導波路部材26を搭載して構成される。ベース配線基板25は、例えばガラスエポキシ等の有機基板やセラミック等の無機基板等を基材として絶縁層を介してベース配線層を構成する多層の配線パターンを形成するとともに、各層の配線パターン間をビアによって層間接続して構成する。ベース配線基板25は、例えばプリプレグを介して両面基板を接合する等の適宜の多層配線基板技術によって製作される。
【0055】
ベース配線基板25には、詳細を省略するが最上層の配線パターンにハイブリットモジュール1A、1Bや電子部品24を実装するランドが形成されており、これら実装部品を各層の配線パターンによって電気的に接続する。ベース配線基板25には、ハイブリットモジュール1に対して電源を供給する比較的大きな面積を有する電源パターン或いはグランドパターンが形成され、ハイブリットモジュール1に対してレギュレーションの高い電源供給を行う。
【0056】
ハイブリット回路装置2は、例えば第1ハイブリットモジュール1A側に光学素子4Dとして発光素子を備えるとともに、第2ハイブリットモジュール1B側に光学素子4Dとして受光素子を備える。ハイブリット回路装置2は、ベース配線基板25の配線パターンによって第1ハイブリットモジュール1Aと第2ハイブリットモジュール1Bとの間で電気信号の授受が行われるようにするとともに、第2ハイブリットモジュール1B側の光学素子4Dから出射された光学信号が第1ハイブリットモジュール1A側の光学素子4Dによって受光されて授受が行われるようにする。なお、ハイブリット回路装置2は、ベース配線基板25の底面側に多数個の電極パッドが形成されており、これら電極パッドにバンプを設けて図示しないマザーボード等に実装されるようにする。
【0057】
ベース配線基板25には、ハイブリットモジュール1を実装する主面に絶縁保護層27が形成されている。ベース配線基板25は、ハイブリットモジュール1の上述したバンプ20に対応して絶縁保護層27に形成した開口部に臨んで配線パターンに多数のランドが形成される。ベース配線基板25には、ハイブリットモジュール1が位置決めされて組み付けられ、バンプ20が相対する開口部からランド上に接合される。なお、絶縁保護層27は、後述するようにハイブリットモジュール1の光学素子4Dと光導波路部材21とを光学的に接続することから、光透過性を有する絶縁樹脂材によって形成される。
【0058】
ベース基板部7には、ベース配線基板25の絶縁層内に、隣り合って実装されたハイブリットモジュール1A、1Bとに跨って対向するようにして光導波路部材26が設けられている。光導波路部材26は、周知のようにポリイミド樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂或いはゴム系樹脂等の光透過性を有する樹脂によって形成された導光材を、光屈折率を異にするクラッド層によって封装して構成される。光導波路部材26は、光学信号を2次元的或いは3次元的に封じ込めた状態で伝送する光閉じ込め型光導波路を構成する。
【0059】
光導波路部材26は、詳細を省略するが入射部や出射部を構成する両端部がそれぞれ45°にカットされたミラー面として構成され、内部を導光された光学信号の光路を90°変換する。光導波路部材26は、ベース基板部7にハイブリットモジュール1A、1Bが実装された状態において、両端部がそれぞれの配線層5の光学信号伝送路5B、換言すれば光学素子4Dの光学信号入出力部13と対向される。したがって、光導波路部材26は、例えばハイブリットモジュール1Aの光学素子(発光素子)4Dから出射された光学信号を一端部から入射させて内部を導光し、他端側から出射させてハイブリットモジュール1B側の光学素子(受光素子)4Dに受光させるようにする。
【0060】
以上のように構成されたハイブリット回路装置2は、上述したように小型かつ薄型であり高密度実装化による多機能化や高機能化を図ることが可能な高精度で安定した動作を行うハイブリットモジュール1をベース基板部7に搭載して構成される。ハイブリット回路装置2は、ハイブリットモジュール1がシリコン基板3をベース基板とすることによって熱等による変形の発生が抑制されることで、ベース基板部7との接続部位において断線やクラックの発生が抑制されて信頼性の向上が図られる。
【0061】
ハイブリット回路装置2は、ベース基板部7に搭載したハイブリットモジュール1A、1Bが、それぞれ第1LSI4Aや第2LSI4B或いは半導体素子4C等の電子部品と光学素子4Dとを配線層5を介して精密かつ最短で電気的に接続されることで全体として低寄生容量化が図られており、また各ハイブリットモジュール1A、1Bとの間において光学素子4Dと光導波路部材21とを介して光学信号を高速かつ高容量化をはかった伝送されるようにする。」
イ 引用発明の認定
前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、第1の実施の形態(図1及び図2)のハイブリット回路装置2に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。なお、【0061】における「光導波路部材21」は「光導波路部材26」の明らかな誤記であるため、「光導波路部材26」の記載に修正した。参考図として、引用文献1の【図1】及び【図2】に部材名を記入したものを掲載する。
<引用発明>
「ハイブリットモジュール1を搭載したハイブリット回路装置2であって、(【0025】)
ハイブリットモジュール1は、複数個の実装部品4A、4D(実装部品4と総称する。)を埋め込んだシリコン基板3を挟むようにして、第1主面3Aに配線層5を形成するとともに第2主面3Bに放熱プレート6を接合した積層体によって構成されたものであり、(【0025】)
ハイブリット回路装置2は、ベース基板部7がマザーボードやインタポーザ等に実装されるものであり、(【0026】)
ハイブリットモジュール1は、互いに関連動作を行う、第1LSI4Aや第2LSI4B或いは半導体素子4C等の電子部品と光学素子4D等の実装部品4をシリコン基板3に実装したものであり、(【0027】)
光学素子4Dは、第1LSI4Aや第2LSI4B或いは半導体素子4Cによって制御されて光学信号を出射する例えば半導体レーザや発光ダイオード等の発光素子或いはフォトディテクタ等の受光素子であり、(【0027】)
ハイブリットモジュール1は、実装部品4がシリコン基板3に形成した第1部品装填開口部8A乃至第4部品装填開口部8D(以下、個別に説明する場合を除いて部品装填開口部8と総称する。)内にそれぞれ装填され、第1封止樹脂層9A乃至第4封止樹脂層9D(以下、個別に説明する場合を除いて封止樹脂層9と総称する。)に埋め込まれてシリコン基板3と一体化されたものであり、(【0028】)
実装部品4は、それぞれの第1主面10A~10D(入出力部形成面10と総称する。)に電気信号を入出力する所定個数の入出力パッド11A~11D(入出力パッド11と総称する。)を形成して入出力部形成面10を構成し、(【0029】)
光学素子4Dには、入出力部形成面10Dに、入出力パッド11Dとともに光学信号を出射する出射部或いは光学信号を受光する受光部からなる光学信号入出力部13が設けられており、(【0030】)
部品装填開口部8は、シリコン基板3の厚み方向に貫通して第1主面3Aと第2主面3Bとに開口するとともに相対する実装部品4を内部に装填するに足る開口寸法を有するものであり、(【0033】)
ハイブリットモジュール1は、実装部品4を被覆するようにしてシリコン基板3の第1主面3A上に配線層5が積層形成され、(【0038】)
配線層5には、ベース基板部7への実装面となる表面5Aの適宜の位置に多数個のバンプ20が設けられ、(【0038】)
配線層5は、光学素子4Dの光学信号入出力部13と対向する部位が、光学信号伝送路5Bを構成し、(【0044】)
ハイブリットモジュール1がベース基板部7上にフリップチップ実装されることによってハイブリット回路装置2を製造し、(【0046】)
ハイブリットモジュール1は、配線層5の表面5Aを実装面として、バンプ20を相対するベース配線基板25のランドと位置決めされて接合されることによってベース基板部7上に実装されてハイブリット回路装置2を構成し、(【0053】)
ハイブリット回路装置2は、ベース基板部7が、ベース配線基板25に光導波路部材26を搭載して構成され、(【0054】)
ベース配線基板25は、ベース配線層を構成する多層の配線パターンを形成し、(【0054】)
ベース配線基板25には、ハイブリットモジュール1に対して電源を供給する比較的大きな面積を有する電源パターン或いはグランドパターンが形成され、ハイブリットモジュール1に対してレギュレーションの高い電源供給を行い、(【0055】)
光導波路部材26は、ベース基板部7にハイブリットモジュール1A、1Bが実装された状態において、両端部がそれぞれの配線層5の光学信号伝送路5B、換言すれば光学素子4Dの光学信号入出力部13と対向され、(【0059】)
ハイブリット回路装置2は、各ハイブリットモジュール1A、1Bとの間において光学素子4Dと光導波路部材26とを介して光学信号を高速かつ高容量化をはかった伝送されるようにし、(【0061】)
ハイブリットモジュール1を搭載したハイブリット回路装置2。」
<参考図(【図1】)>
[図:0001433692000005.jpg]
<参考図(【図2】)>
[図:0001433692000006.jpg]
(2) 引用文献3、4の記載事項及び技術常識Aの認定
ア 引用文献3、4の記載事項
(ア) 引用文献3の記載事項
当審において新たに引用する文献であって、本願明細書の【0003】において【特許文献2】として引用された文献である本願出願前に発行された国際公開第2014/156962号(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている(なお、引用文献の参照番号を審査と審判において共通のものとするため、「引用文献2」と表記せず、「引用文献3」の表記とした。)。
「技術分野
[0001]
本発明は、インターポーザ、AOC(Active Optical Cable)基板等のデータ伝送用のモジュールに組み込まれる信号変換素子として使用されるのに好適な、電気信号を光信号に、光信号を電気信号に変換する光電気混載デバイス及びその製造方法に関する。」
「発明が解決しようとする課題
…(中略)…
[0010]
また、光電気混載デバイスに関しては、基板上に搭載された電子部品の湿度や水分に対する信頼性を確保するために、例えば、ガラス製のカバーで基板上の電子部品の全体を覆って封止することが考えられる。…(後略)」
「[0054]
図1Aは、光送受信タイプの光電気混載デバイス100の透視模式図であり、実際は5×5mm程度のスケールを有するものである。シリコン基板102内には、不図示の光導波路、受光器、光変調器等がシリコンフォトニクス技術を用いて形成されており、シリコン基板102上には、光変調の制御やレーザダイオード112の制御を行うドライバICや受光信号の増幅等を行うレシーバICを含むIC回路104や不図示の電気配線等が設けられており、シリコン基板(光回路基板)102、IC回路104、電気配線等により光電気混載基板を形成している。封止構造106は、例えば、ガラス材料で作成されており、シリコン基板102の光信号の入出力を担う特定部分を除き、シリコン基板102を覆っている。また、封止構造106は、部材の表裏を貫通する複数の孔を備え、該孔内に導電ピン108が嵌合されているとともに、該導電ピン108の表面頂部には半田バンプ110が形成されている。
[図:0001433692000007.jpg]
…(中略)…
[0060]
図3及び図4は、光電気混載デバイス内部の断面構造を説明するための模式図であり、図3は、光送信部分の断面構造を示すもの、図4は、光受信部分の断面構造を示すものである。
[図:0001433692000008.jpg]
[図:0001433692000009.jpg]
[0061]
光送信部分の断面構造を示す図3に基づき、光信号送信の際の作動態様を説明する。半導体レーザ326からの出力光は、不図示のスポットサイズ変換器、光導波路312を介して光変調器314に入力され、光変調器314により変調された光信号が出力される。該変調された光信号は、光導波路312を介してグレーティングカプラ316に到達し、該グレーティングカプラ316で回折により光軸が変換されて、光導波路318を介して外部に出力される。なお、導電ピン320及び電気配線322を介して外部より与えられる電気信号は、光変調器314及び半導体レーザ326を制御するドライバIC324に入力され、変調制御信号(電気信号)として、電気配線322を介して光変調器314に供給されるものである。なお、光導波路312、光変調器314、グレーティングカプラ316等は、シリコン基板310内に、シリコンフォトニクスト技術により作成されるものである。
…(中略)…
[0115]<第1実施形態>
図29は、第1実施形態に係る光電気混載デバイス29100の断面構成図である。同図において、基板29110の上部には、光硬化性樹脂からなる光導波路コア29120が、基板29110に対して斜めに立設して(基板29110の法線nから数度傾いた方向に沿って延在して)形成されている。光導波路コア29120の基板29110側の端部291202は、基板29110上に形成又は実装された不図示の光素子(光回路等)と光学的に結合される。この光素子としては、光導波路、発光素子、又は受光素子を例示することができる。光導波路コア29120の周囲は、クラッド層29130としての樹脂によって覆われている。光導波路コア29120の上側(基板29110と反対側)の端部291204は、クラッド層29130上に設置された不図示の光素子(光ファイバ等)と光学的に結合される。
[図:0001433692000010.jpg]
」
(イ) 引用文献4の記載事項
当審において新たに引用する文献であって、本願明細書の【0003】において【特許文献1】として引用された本願出願前に発行された文献である国際公開第2015/012213号(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
「技術分野
[0001]
本発明は、光電気混載基板に設けた光送信機または光送受信機の送信部に関し、更に特定すれば、このような光送信機または光送受信機の送信部のうち、半導体レーザの配置および光導波路の配設に特徴を有する光集積回路に関するものである。」
「[0021]
図3に示すように、本実施形態による光送信機用の集積回路200は、光電気混載基板上に、1以上のチャンネルでレーザ光を出射する単チャンネルまたは多チャンネル型の半導体レーザ10、チャンネルごとにスポットサイズ変換器20を介して半導体レーザ10から光学的に結合され、レーザ光を主に横方向に伝搬する光導波路30、光導波路30にそれぞれ結合され、レーザ光を2以上の入力光に分岐する光カプラ4aを備える光分岐部40a、各光分岐部に設けられた2以上の光出力端子にそれぞれ結合され入力光を変調して光信号を生成する光変調器6、光変調器6にそれぞれ結合され光変調器から伝搬される光信号を外部に出力する光信号出力部80aを備える。
…(中略)…
[0032]
図6は、本発明の実施形態による光送信機用の光集積回路の断面図を示す。図6を用いて光信号送信の際の作動態様を説明する。光出力部側に設けた半導体レーザ10からのレーザ光は、スポットサイズ変換器20、光導波路30、導電ピン9a側に設けた光分岐部40a等を介して光変調器6に入力され((i)~(iii))、光変調器6で変調された光信号を出力する(iv)。変調された光信号は、光導波路を介してグレーティング・カプラ8bに到達し、このグレーティング・カプラ8bで回折により光軸が変換されて、光ピン8aを介して外部に出力される(v)。なお、導電ピン9aを通じて外部より入力される電気信号は、光変調器6及び半導体レーザ10を制御するドライバIC50に入力され((I)~(II))、変調制御信号(電気信号)として、電気配線を介して光変調器6に供給される(III)。
[図:0001433692000011.jpg]
」
イ 技術常識Aの認定
前記アに摘記した引用文献3、4の記載事項に例示されるとおり、次の技術事項は、本願出願前における技術常識(以下「技術常識A」という。)であると認められる。
<技術常識A>
「光電気混載デバイスにおいて、基板の一方の面上にドライバIC及びドライバICにより駆動されるレーザを搭載又は実装すること。」
4 対比
(1) 対比分析
以下、本願発明の構成ごとに、本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Aの観点(光電気混載デバイス)
(ア) 構成Aは、「基板の一方の面上に電子回路および前記電子回路によって駆動される光回路が搭載された光電気混載デバイス」を備えることである。
(イ) 引用発明における「互いに関連動作を行う、第1LSI4Aや第2LSI4B或いは半導体素子4C等の電子部品」(【0027】)は、本願発明における「電子回路」に相当する。
(ウ) 本願明細書の【0033】には「(前略)…光電気混載デバイス100内の電子回路・光回路(例えばドライバIC108および半導体レーザ103)…(後略)」との記載があり、本願発明における「光回路」には、半導体レーザが包摂されることが理解される。
この点を踏まえると、引用発明においては「光学素子4Dは、第1LSI4Aや第2LSI4B或いは半導体素子4Cによって制御されて光学信号を出射する例えば半導体レーザ」(【0027】)であることから、引用発明における「光学素子4D」は、本願発明における「前記電子回路によって駆動される光回路」に相当する。
(エ)a 引用発明における「ハイブリットモジュール1」の「シリコン基板3」は、「互いに関連動作を行う、第1LSI4Aや第2LSI4B或いは半導体素子4C等の電子部品と光学素子4D等の実装部品4をシリコン基板3に実装したものであ[る]」(【0027】)ことから、前記(イ)及び(ウ)を踏まえると、本願発明における「電子回路および前記電子回路によって駆動される光回路が搭載された」「基板」に相当する。
b その一方で、「電子回路および前記電子回路によって駆動される光回路」を「基板」に「搭載」する態様が、本願発明においては、「基板の一方の面上に」搭載するのに対して、引用発明においては、「実装部品4がシリコン基板3に形成した部品装填開口部8内にそれぞれ装填され、封止樹脂層9に埋め込まれてシリコン基板3と一体化されたものであり」、「部品装填開口部8は、シリコン基板3の厚み方向に貫通して第1主面3A(「基板の一方の面」に相当する。)と第2主面3Bとに開口するとともに相対する実装部品4を内部に装填するに足る開口寸法を有するものであ[る]」点において相違する。
(オ) (イ)~(エ)の検討結果を踏まえると、引用発明における「ハイブリットモジュール1」は、本願発明における「光電気混載デバイス」に相当する。
(カ) 以上の検討結果をまとめると、構成Aの観点における本願発明の引用発明との一致点及び相違点は、それぞれ次のa及びbに示すとおりである。
a 構成Aの観点における一致点
「基板に電子回路および前記電子回路によって駆動される光回路が搭載された光電気混載デバイス」を備える点。
b 構成Aの観点における相違点
「電子回路および前記電子回路によって駆動される光回路」を「基板」に搭載する態様が、
本願発明においては、「基板の一方の面上に」搭載するのに対して、
引用発明においては、「実装部品4がシリコン基板3に形成した部品装填開口部8内にそれぞれ装填され、封止樹脂層9に埋め込まれてシリコン基板3と一体化されたものであり」、「部品装填開口部8は、シリコン基板3の厚み方向に貫通して第1主面3A(「基板の一方の面」に相当する。)と第2主面3Bとに開口するとともに相対する実装部品4を内部に装填するに足る開口寸法を有するものであ[る]」点。
イ 構成A1の観点(第1面と第2面)
(ア) 構成A1は、「光電気混載デバイス」が「前記基板の前記一方の面と同じ側の第1面および前記第1面と反対側の第2面を有[する]」ことである。
(イ) 引用発明においては、「ハイブリットモジュール1は、複数個の実装部品4A、4D(実装部品4と総称する。)を埋め込んだシリコン基板3を挟むようにして、第1主面3Aに配線層5を形成するとともに第2主面3Bに放熱プレート6を接合した積層体によって構成されたものであ[る]。」(【0025】)
そして、引用発明においては、「ハイブリットモジュール1は、配線層5の表面5Aを実装面として、バンプ20を相対するベース配線基板25のランドと位置決めされて接合されることによってベース基板部7上に実装されてハイブリット回路装置2を構成[する]。」(【0053】)
(ウ) 引用発明における「第1主面3A」が本願発明における「基板の一方の面」に相当することを踏まえると(前記ア(カ)b参照)、引用発明における「配線層5」の「ベース基板部7への実装面となる表面5A」は、本願発明における「第1の面」に相当する。
そして、引用発明における「ハイブリットモジュール1」の「放熱プレート6を接合した」「第2主面3B」は、本願発明における「第2面」に相当する。
(エ) 前記(イ)及び(ウ)の検討結果をまとめると、本願発明は、引用発明と、構成A1の観点である次の点において一致する。
「光電気混載デバイス」が「前記基板の前記一方の面と同じ側の第1面および前記第1面と反対側の第2面を有[する]」点。
ウ 構成A2の観点(電気入出力部と光入出力部)
(ア) 構成A2は、「光電気混載デバイス」は「前記第1面に前記電子回路との電気入出力部および前記光回路との光入出力部が配置され[る]」ことである。
(イ) 引用発明においては、「ハイブリットモジュール1は、配線層5の表面5Aを実装面として、バンプ20を相対するベース配線基板25のランドと位置決めされて接合されることによってベース基板部7上に実装されてハイブリット回路装置2を構成[する]」(【0053】)ものであり、引用発明における「配線層5」の「ベース基板部7への実装面となる表面5A」は、本願発明における「第1の面」に相当すること(前記イ(ウ)参照)を踏まえると、引用発明における「ハイブリットモジュール装置1」(「光電気混載デバイス」に相当する。)における「配線層5の表面5A」に「設けられ」た「バンプ20」は、「前記第1面に」「配置され[た]」「前記電子回路との電気入出力部」に相当する。
(ウ)a 引用発明においては、「光学素子4Dには、入出力部形成面10Dに」「光学信号を出射する出射部或いは光学信号を受光する受光部からなる光学信号入出力部13が設けられ」、「配線層5は、光学素子4Dの光学信号入出力部13と対向する部位が、光学信号伝送路5Bを構成[する]」。
b また、引用発明において、「ハイブリット回路装置2」の「ベース基板部7には、光導波路部材26が設けられ」「光導波路部材26は、ベース基板部7にハイブリットモジュール1A、1Bが実装された状態において」「光学素子4Dの光学信号入出力部13と対向され[る]」。
c そうすると、引用発明における「ハイブリットモジュール装置1」(「光電気混載デバイス」に相当する。)が、本願発明における「第1面に」「配置され[た]」「前記光回路との光入出力部」に相当する構成を備えることは、明らかである。
(エ) 以上の検討結果をまとめると、本願発明は、引用発明と、構成A2の観点である次の点において一致する。
「光電気混載デバイス」は「前記第1面に前記電子回路との電気入出力部および前記光回路との光入出力部が配置され[る]」点。
エ 構成A3の観点(第2面)
(ア) 構成A3は、「光電気混載デバイス」において「前記基板の前記一方の面と反対側の他方の面が前記第2面をなす」ことである。
(イ) 前記イで検討したとおり、引用発明における「第1主面3A」が本願発明における「基板の一方の面」に相当し、これと反対側の、引用発明における「ハイブリットモジュール1」の「放熱プレート6を接合した」「第2主面3B」は、本願発明における「第2面」に相当する。
(ウ) そうすると、本願発明は、引用発明と、構成A3の観点である次の点において一致する。
「光電気混載デバイス」において、「前記基板の前記一方の面と反対側の他方の面が前記第2面をなす」点。
オ 構成Bの観点(インターフェイス基板)
(ア) 構成Bは、「前記光電気混載デバイスの前記第1面側に配置されたインターフェイス基板」を備えることである。
(イ)a 引用発明においては、「ハイブリットモジュール1を搭載したハイブリット回路装置2であって、」(【0025】)「ハイブリット回路装置2は、ベース基板部7がマザーボードやインタポーザ等に実装されるものであ[る]」(【0026】)ことから、引用発明における「ベース基板部7」は、本願発明でいうところの「インターフェイス基板」であるといえる。
b そして、引用発明においては、「ハイブリットモジュール1がベース基板部7上にフリップチップ実装されることによってハイブリット回路装置2を製造[する]」ものであり、「ハイブリットモジュール1」(「光電気混載デバイス」に相当する。)の「配線層5」の「表面5A」(「第1面」に相当する。)は、「ベース基板部7への実装面となる」のであるから、引用発明における「ベース基板部7」は、本願発明の「前記光電気混載デバイスの前記第1面側に配置されたインターフェイス基板」に相当する。
(ウ) したがって、本願発明は、引用発明と、構成Bの観点である次の点において一致する。
「前記光電気混載デバイスの前記第1面側に配置されたインターフェイス基板」を備える点。
カ 構成B1の観点(電気配線)
(ア) 構成B1は、「インターフェイス基板」が「前記電気入出力部に結合された電気配線」を備えることである。
(イ)a 引用発明における「ベース基板部7」の「ベース配線基板25」は、「ベース配線層を構成する多層の配線パターンを形成し」(【0054】)、「ハイブリットモジュール1は、配線層5の表面5Aを実装面として、バンプ20を相対するベース配線基板25のランドと位置決めされて接合されることによってベース基板部7上に実装されてハイブリット回路装置2を構成[する]」(【0053】)のであるから、引用発明の「ベース配線基板25」に「形成」された「配線パターン」は、「ベース配線基板25のランド」を介して、「ハイブリットモジュール1」の「バンプ20」に電気的に接続されることは明らかである。
b そうすると、引用発明の「ベース配線基板25」に「形成」された「配線パターン」は、本願発明の「インターフェイス基板」の備える「前記電気入出力部に結合された電気配線」に相当する。
(ウ) したがって、本願発明は引用発明と、構成B1の観点である次の点において一致する。
「インターフェイス基板」が「前記電気入出力部に結合された電気配線」を備える点。
キ 構成B2の観点(インターフェイス基板)
(ア) 構成B2は、「インターフェイス基板」が「前記光入出力部に結合された光配線」を備えることである。
(イ) 引用発明において「ベース基板部7」は「ベース配線基板25に光導波路部材26を搭載して構成され」(【0054】)、「光導波路部材26は、ベース基板部7にハイブリットモジュール1A、1Bが実装された状態において」「端部が」「光学素子4Dの光学信号入出力部13と対向され[る]」(【0059】)ことから、前記ウ(ウ)の検討結果も踏まえると、引用発明における「光導波路部材26」は、本願発明における「前記光入出力部に結合された光配線」に相当する。
(ウ) したがって、本願発明は、引用発明と、構成B2の観点である次の点において一致する。
「インターフェイス基板」が「前光入出力部に結合された光配線」を備える点。
ク 構成B3の観点(インターフェイス基板)
(ア) 構成B3は、「インターフェイス基板」が「電気配線に接続されるとともに外部の電気配線に接続可能な電気インターフェイス」を備えることである。
(イ) 引用発明において、「ベース基板部7」の「ベース配線基板25は、ベース配線層を構成する多層の配線パターンを形成し、ベース配線基板25には、ハイブリットモジュール1に対して電源を供給する比較的大きな面積を有する電源パターン或いはグランドパターンが形成され、ハイブリットモジュール1に対してレギュレーションの高い電源供給を行[う]」(【0055】)ものであり、「配線パターン」が、電源供給を行うために外部の電気配線に接続されること、及び、接続のために電気的なインターフェイスを備えることは、明らかである。
(ウ) したがって、本願発明は、引用発明と、構成B3の観点である次の点において一致する。
「インターフェイス基板」が「電気配線に接続されるとともに外部の電気配線に接続可能な電気インターフェイス」を備える点。
ケ 構成B4の観点(インターフェイス基板)
(ア) 構成B4は、「インターフェイス基板」が「前記光配線に接続されるとともに外部の光配線に接続可能な光インターフェイス」を備えることである。
(イ)a 引用発明の「ハイブリット回路装置2」は、「各ハイブリットモジュール1A、1Bとの間において光学素子4Dと光導波路部材26とを介して光学信号を高速かつ高容量化をはかった伝送されるように[する]」(【0061】)ものである。
b そうすると、一方のハイブリットモジュールから発した光学信号は、ベース基板部7の光導波路部材26を介して、外部の素子に伝送されるものといえる。
c そして、外部の素子への伝送のために、「外部の光配線に接続可能な光インターフェイス」を備えることは明らかである。
(ウ) したがって、本願発明は、引用発明と、構成B4の観点である次の点において一致する。
「インターフェイス基板」が「前記光配線に接続されるとともに外部の光配線に接続可能な光インターフェイス」を備える点。
コ 構成Cの観点(放熱部材)
(ア) 構成Cは、「前記光電気混載デバイスの前記第2面に接して配置された放熱部材」を備えることである。
(イ) 引用発明における「ハイブリットモジュール1」(「光電気混載デバイス」に相当する。)の「第2主面3B」(「第2面」に相当する。(前記イ(ウ)参照))に「接合[されれた]」「放熱プレート6」は、本願発明における「前記光電気混載デバイスの前記第2面に接して配置された放熱部材」に相当する。
(ウ) したがって、本願発明は、引用発明と、構成Cの観点である次の点において一致する。
「前記光電気混載デバイスの前記第2面に接して配置された放熱部材」を備える点。
サ 構成Xの観点(光電気モジュール)
(ア) 構成Xは、「光電気モジュール」に係る発明であることを特定するものである。
(イ) 引用発明の「ハイブリット回路装置2」は、次のa及びbを備えることから、本願発明にいうところの「光電気モジュール」であるといえる。
a 「基板」に「電子回路および前記電子回路によって駆動される光回路」が搭載された「光電気混載デバイス」に相当する「ハイブリットモジュール1」(前記ア参照)
b 「前記光電気混載デバイスの第1面側に配置されたインターフェイス基板」に相当する「ベース基板部7」(前記オ参照)
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、「光電気モジュール」の発明である点において一致する。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)ア~サの対比分析の結果をまとめると、本願発明の引用発明との一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「基板に電子回路および前記電子回路によって駆動される光回路が搭載された光電気混載デバイスであって、前記基板の前記一方の面と同じ側の第1面および前記第1面と反対側の第2面を有し、前記第1面に前記電子回路との電気入出力部および前記光回路との光入出力部が配置され、前記基板の前記一方の面と反対側の他方の面が前記第2面をなす、光電気混載デバイスと、
前記光電気混載デバイスの前記第1面側に配置されたインターフェイス基板であって、前記電気入出力部に結合された電気配線と、前記光入出力部に結合された光配線と、前記電気配線に接続されるとともに外部の電気配線に接続可能な電気インターフェイスと、前記光配線に接続されるとともに外部の光配線に接続可能な光インターフェイスと、を備えるインターフェイス基板と、
前記光電気混載デバイスの前記第2面に接して配置された放熱部材と、を備える
光電気モジュール」の発明である点。
イ 相違点
「電子回路および前記電子回路によって駆動される光回路」を「基板」に搭載する態様が、
本願発明においては、「基板の一方の面上に」搭載するのに対して、
引用発明においては、「実装部品4がシリコン基板3に形成した部品装填開口部8内にそれぞれ装填され、封止樹脂層9に埋め込まれてシリコン基板3と一体化されたものであり」、「部品装填開口部8は、シリコン基板3の厚み方向に貫通して第1主面3A(「基板の一方の面」に相当する。)と第2主面3Bとに開口するとともに相対する実装部品4を内部に装填するに足る開口寸法を有するものであ[る]」点。
5 判断
(1) 本願発明の想到容易性について
前記3(2)イにおいて技術常識Aとして認定したとおり、「光電気混載デバイスにおいて、基板の一方の面上にドライバIC及びドライバICにより駆動されるレーザを搭載又は実装すること」は、技術常識であって、光電気混載デバイスにおける電子回路又は光素子の実装態様としてよく知られた選択肢である。
そうすると、引用発明の「ハイブリット回路装置2」に搭載された「ハイブリットモジュール1」における、電子回路および前記電子回路によって駆動される光回路を基板に搭載する態様として、「実装部品4がシリコン基板3に形成した部品装填開口部8内にそれぞれ装填され、封止樹脂層9に埋め込まれてシリコン基板3と一体化されたものであり」、「部品装填開口部8は、シリコン基板3の厚み方向に貫通して第1主面3A(「基板の一方の面」に相当する。)と第2主面3Bとに開口するとともに相対する実装部品4を内部に装填するに足る開口寸法を有するものであ[る]」という実装態様に代えて、技術常識Aを採用して、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者には自明の設計変更にすぎない。
そして、本願発明の効果としては、本願発明の構成が奏するものとして、当業者が予測することが困難な効果であって、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、引用文献1には、基板の一方の面に電子回路および光回路が実装され他方の面に放熱部材が接している構成は、開示も示唆もされていない旨主張している。
しかしながら、基板の一方の面に電子回路及び光回路が実装された光電気混載デバイスは、前記3(2)イにおいて技術常識Aとして認定したとおり本願出願時における技術常識である。そして、かかる技術常識を引用発明の「ハイブリット回路装置2」に搭載された「ハイブリットモジュール1」における電子回路又は光素子の実装態様に適用して前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることが当業者には自明の設計変更であることは、前記(1)において検討したとおりであるから、請求人の主張は前記(1)の結論を左右するものではない。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-014184