特許拒絶査定不服審判
2023-005961
光学フィルタ装置を備える内視鏡およびその使用
- 審判番号
- 2023-005961
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-142775外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年04月12日
- 審決日
- 2024年05月20日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オリンパス ビンテル ウント イーベーエー ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】名古屋国際弁理士法人
- 分類
- P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第159条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-142775「光学フィルタ装置を備える内視鏡およびその使用」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月 8日出願公開、特開2021- 56498〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)8月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年(令和元年)8月28日、独国。以下、この日を「優先日」という。)の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 3年 1月15日 :手続補正書の提出
同年12月 8日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 3月11日 :意見書・手続補正書の提出
同年 6月10日付け:拒絶理由通知書
同年 9月28日 :意見書・手続補正書の提出
同年11月28日付け:拒絶査定
令和 5年 4月12日 :審判請求書・手続補正書の提出
同年10月25日 :上申書の提出
第2 令和5年4月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年4月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項6の記載は、次のとおり補正されることになる(下線部は、補正箇所である。)。
「光学フィルタ装置(30、130、230)を備える内視鏡(10)であって、前記光学フィルタ装置(30、130、230)は、ホルダ(32、132、232)内に、異なる方向における異なるフィルタ特性を有する1つの光学フィルタ(34)、または異なるフィルタ特性を有する複数の光学フィルタ(134、136、138、140;234、236、238、240)を備え、前記内視鏡(10)の対物レンズ(13)内またはその後方への光入射方向において、かつ画像取込ユニットまたは接眼部(16)の前方において、前記内視鏡(10)の少なくとも1つの光路に、回転軸(38)を中心に回転可能に配置されており、前記フィルタ装置(30、130、230)は、前記フィルタ装置(30、130、230)が前記回転軸(38)を中心に第1目標回転位置と第2目標回転位置の間を任意の回転方向に90°回転するごとに、第1フィルタ特性と第2フィルタ特性との間の変更を交互に行うように構成されており、
前記内視鏡(10)は2つの平行な光路(220、222)を備える立体内視鏡として構成され、前記フィルタ装置(230)は二対のフィルタ(234、238; 236、240)を備えるフィルタホイール(232)として構成され、第1フィルタ対の前記フィルタ(234、238)は前記第1フィルタ特性を有し、第2フィルタ対の前記フィルタ(236、240)は前記第2フィルタ特性を有し、前記フィルタ装置(230)の前記回転軸は前記光路(220、222)の間の中心軸に相当し、かつ/または前記中心軸と平行に延びており、前記第1フィルタ対の前記フィルタ(234、238)は、前記第1目標回転位置において前記光路(220、222)と一直線に並び、前記第2フィルタ対の前記フィルタ(236、240)は、前記第2目標回転位置において前記光路(220、222)と一直線に並ぶことを特徴とする、内視鏡(10)。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和4年9月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項6の記載は次のとおりである。
「光学フィルタ装置(30、130、230)を備える内視鏡(10)であって、前記光学フィルタ装置(30、130、230)は、ホルダ(32、132、232)内に、異なる方向における異なるフィルタ特性を有する1つの光学フィルタ(34)、または異なるフィルタ特性を有する複数の光学フィルタ(134、136、138、140;234、236、238、240)を備え、前記内視鏡(10)の対物レンズ(13)内またはその後方への光入射方向において、かつ画像取込ユニットまたは接眼部(16)の前方において、前記内視鏡(10)の少なくとも1つの光路に、回転軸(38)を中心に回転可能に配置されており、前記フィルタ装置(30、130、230)は、前記フィルタ装置(30、130、230)が前記回転軸(38)を中心に第1目標回転位置と第2目標回転位置の間を90°回転するごとに、第1フィルタ特性と第2フィルタ特性との間の変更を交互に行うように構成されており、
前記内視鏡(10)は2つの平行な光路(220、222)を備える立体内視鏡として構成され、前記フィルタ装置(230)は二対のフィルタ(234、238;236、240)を備えるフィルタホイール(232)として構成され、第1フィルタ対の前記フィルタ(234、238)は前記第1フィルタ特性を有し、第2フィルタ対の前記フィルタ(236、240)は前記第2フィルタ特性を有し、前記フィルタ装置(230)の前記回転軸は前記光路(220、222)の間の中心軸に相当し、かつ/または前記中心軸と平行に延びており、前記第1フィルタ対の前記フィルタ(234、238)は、前記第1目標回転位置において前記光路(220、222)と一直線に並び、前記第2フィルタ対の前記フィルタ(236、240)は、前記第2目標回転位置において前記光路(220、222)と一直線に並ぶことを特徴とする、内視鏡(10)。」
2 本件補正の適否
本件補正で請求項6についてする補正は、本件補正前の請求項6の「前記フィルタ装置(30、130、230)が前記回転軸(38)を中心に第1目標回転位置と第2目標回転位置の間を90°回転するごとに、第1フィルタ特性と第2フィルタ特性との間の変更を交互に行う」事項における「90°回転する」ことが、「任意の回転方向に90°回転する」ことであることを限定するものである。そして、本件補正前の請求項6に記載された発明と本件補正後の請求項6に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正で請求項6についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項6に記載される発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明の認定
本件補正後の請求項6に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、上記1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。
(2)本件補正発明の技術的意義
本件補正発明は、光学フィルタ装置を備える内視鏡、及び内視鏡における光学フィルタ装置の使用に関する発明であるところ(【0001】)、
内視鏡は、特に医療分野において光学的検査に用いられ、多くの場合、特別な検査モダリティを実現するために光学フィルタが用いられており、様々な用途のために、医師達は可視光による通常の腹腔鏡検査用と、赤外線腹腔鏡検査用の2つの異なる腹腔鏡を所有して、それらを使い分ける必要があるため、1つの内視鏡で両方の用途を実施できることが望ましいことから(【0002】、【0003】)、
本件補正発明は、内視鏡の大型化を要することなく、単一の内視鏡内において異なるフィルタ特性を実現することを目的とするものである(【0006】)。
そして、本件補正発明のこの目的は本件補正発明の構成を採用することによって達成されるものであるところ、
本件補正発明は、回転可能なフィルタ装置が、単にフィルタ装置を90°回転させることにより、光路を離れることなく第1フィルタ特性と第2フィルタ特性との間で切り替え可能である、という基本的な考え方に基づいており、これにより、回転可能なフィルタ装置の各設定において、それぞれの検査の要件に応じた光のフィルタリングが確実なものとなって、フィルタ装置自体が光路内に留まるため、内視鏡の大きさを変えることなく、あるいは大型化を抑えながら、これを行うことが可能であるという効果を奏するものであって(【0009】)、
本件補正発明によるフィルタ装置230は、画像取込面に対して垂直に延びる回転軸を中心に回転可能なフィルタホイール232を備え、90°の回転により、2つのフィルタ234、238が光路を外れ、フィルタ236、240が光路に入るように回転するものであり、これには、形状の変更が不要であるという効果を奏する(【0038】)。
(3)引用文献の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献2(米国特許出願公開第2011/0299174号明細書)の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に発行された文献である米国特許出願公開第2011/0299174号明細書(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている(翻訳は当審で作成し、下線は当審が付した。)。
[0003] 本発明は、光学素子用交換装置、及びこのような交換装置を含む光学装置、特に手術用顕微鏡、実体顕微鏡、マイクロスコープ、内視鏡又はステレオ内視鏡に関する。
[0043] 交換装置の使用増加の動機は、光学装置の多機能化に対する要求である。手術用顕微鏡や内視鏡の場合、最近では、例えば、非常に危険な脳腫瘍の一種である膠芽腫の検出にALA5を使用したり、動脈瘤の検出にICGを使用するなど、手術の際のイメージング技術としての地位を確立しつつある、汎用性の高い蛍光アプリケーションなどがこれにあたる。しかし、耳鼻咽喉科の分野では、造影効果を高める目的でグリーンフィルタを使用することが以前から行われている。蛍光応用の場合、新しい蛍光色素が次々と開発されるため、日進月歩の特性を持つフィルタが必要となる。フィルタの選択が最も確立された手術に限定されるとしても、それでもいくつかのフィルタを用意し、異なる観察モードと照明モードの切り替えが迅速かつ確実に行えるようにしなければならない。これには、光路へのフィルタの挿入だけでなく、光路からのフィルタの取り外しも含まれる。
[0044] 本発明によれば、この交換装置は、回転軸と、光軸を構成する少なくとも1つの光路のための少なくとも1つの光学素子とを有し、この交換装置は、回転運動によって、又は少なくとも回転運動が加わることによって、少なくとも1つの光学素子をこの少なくとも1つの光路に導入し、又はこの光路から除去する。この少なくとも1つの光路は、好ましくは、空間的に接続された少なくとも2つの光路のうちの1つである。
[0069] 図1には、光学素子用交換装置の場合の従来技術に関する第1の例として、フィルタホイール100が示されている。フィルタ支持体101は、軸103を中心に回転するように移動することができ、それによってフィルタ120、121、122、123、124、125のうちの1つを光路104に挿入し、及び/又はフィルタを取り外すことができる。
[0070] 図2は、ダブル交換装置200により、従来技術のさらなる例を表している。ステレオ光路又は空間的に接続された2つの光路204、204’は、それぞれの場合において、フィルタ220及び200’のうちの1つによって、又は2つのフィルタホイールの支持体201及び201’上にそれぞれ配置された、それぞれ6つのフィルター220、221、222、223、224、225及び220’、221’、222’、223’、224’、225’から選択されて重ねられる。
[0071] 図3は、本発明による交換装置の第1の実施形態300を表している。光学素子、ここではフィルタ320のための機械的支持体301は、図1及び図2よりもかなり小さいことが判明した。他の形状の支持体も可能である。いずれにせよ、支持体は、ステレオ光路又は2つの空間的に接続された光路304、304’を、それぞれ、フィルタの枢動した非アクティブ状態においてのみ解放するものである。支持体301とフィルタ320は、軸303を中心に回転できるように動かすことができる。図3aは、フィルタ320が非活性状態で枢動したときの配置を表し、図3bは、活性状態で光路304に枢動したときの配置を表す。
[0072] 図4は、本発明による交換装置のさらなる実施形態400を表している。光学素子用の機械的支持体401は、2つの光学素子、ここではフィルタ420及び420’を収容する。この配置は、順番に、軸403を中心に回転可能であるように動かすことができる。図4は、回動していない状態の配置を示している。図4aは、回動していない状態の配置を示している。図3aですでにわかるように、この配置は、ハウジング410内の余分な空間を占めるだけである。図4bにおいて、フィルタ420及び420’は、それぞれ光路404及び404’に枢動された。フィルタ420及び420’は、同じ特性を包含することができるが、異なる特性も包含することができる。光路404及び404’がステレオ光路である場合、同じ特性は明らかであるが、絶対必要ではない。
[0075] 図5は、本発明による交換装置のさらなる実施形態500を表している。光学素子用の機械的支持体501は、4つの光学素子、ここではフィルタ520、520’、521及び521’を収容する。この配置は、再び軸503を中心に回転させることができる。ステレオ光路又は2つの空間的に接続された光路504、504’は、交換装置500の回転に応答して、2つの異なる光学素子の組520、520’、521、521’によって重ね合わされ、ここで、520と520’又は521と521’は、それぞれ、同じであるか、又は4つの好ましくは異なる光学素子520、520’、521、521’によって重ね合わされる。この装置は、単純な手術用顕微鏡、又は図3及び図4a及び図4bの状況と同様に、主観察器と180°共観察器とからなる顕微鏡であり得る。
[0077] 図6は、ステレオ光路又は空間的に接続された2つの光路の光路間の異なる相対配置と、例示的な態様における交換装置内の4つより多く(ここでは6つ)の光学素子を有する本発明による交換装置とを示す。図6aにおいて、回転軸603aは、光路間の大きな距離に対応して、光路604aと604a’との間の中央に位置している。光路間距離が大きいとは、光路の広がりよりも大きい場合である。これにより、それぞれの光路の次の点間の距離を光路間距離とする必要がある。図6b及び図6cにおいて、回転軸603b及び603は、それぞれ、光路604b及び604b’並びに604c及び604c’の間の中心に位置せず、光路の光軸(図示せず)の接続線の実質的に外側に位置する。図3から図5までの配置と比較した図6の配置の利点は、交換装置内の可能な光学素子620aから625a、620bから625b又は620cから625cの数が多いことである。
[0078] 光路の距離と交換装置に必要な光学素子の数によって、選択される配置が決定される。手近な状況に応じて、図3から図6に示されている、又は本明細書で提案されている配置、特に、互いの上に配置された部分的な交換装置からなる配置の特定の1つを選択することが特に有利になり得る。これらの解決策はすべて、それによってすでに従来技術より優れている。
[0079] 図7は、少なくとも1つの交換装置とステレオ光路の光路、又は空間的に接続された2つの光路の、実際に起こり得る相対配置のいくつかの例を示している。ステレオ顕微鏡、特に手術用顕微鏡の高度に単純化された図700aが図7aに示されている。2つの交換装置790a、790a’は、ステレオ光路の2つの光路704a、704a’内において、対物レンズ730aと結像レンズ731a、731a’との間に互いに重ねて配置されている。交換装置は共通の軸703aを有することができるが、少なくとも部分的には互いに独立して移動できるようにする。交換装置は、観察者の目によって、又は画像平面733a及び733a’の光学検出器732a及び732a’によって、それぞれ知覚又は検出されるように、物体平面735aに配置される物体の光学的画像化に影響を与える。通常、手術用顕微鏡には、分かりやすくするために本明細書では図示していないが、例えば接眼レンズなど、目で観察するために必要な多くの追加要素がある。検出器732aの場合、それは像面733aに配置される。眼の場合、眼は接眼レンズ(写真には写っていない)を通して像面733a内の像を観察し、像から間隔をあけて配置される。
【図1】
[図:0001415891000001.jpg]
【図2】
[図:0001415891000002.jpg]
【図3a】
[図:0001415891000003.jpg]
【図3b】
[図:0001415891000004.jpg]
【図4a】
[図:0001415891000005.jpg]
【図4b】
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【図4c】
[図:0001415891000007.jpg]
【図4d】
[図:0001415891000008.jpg]
【図5】
[図:0001415891000009.jpg]
【図6a】
[図:0001415891000010.jpg]
【図7a】
[図:0001415891000011.jpg]
イ 引用文献2から当業者が把握できる事項
(ア) 図5の実施形態について、[0075]には、「光路504、504’」が「ステレオ光路」であることが記載されているところ、当該実施形態に係る記載においては、当該ステレオ光路がステレオ内視鏡のステレオ光路であることは明記されていない。しかしながら、[0003]には、本発明が光学素子用交換装置を含むステレオ内視鏡に関するものであることが記載されているから、図5の実施形態に係るステレオ光路が、ステレオ内視鏡のステレオ光路に適用可能であることが読み取れる。
(イ) 図5で510の符号により表記される点線の円周について、[0075]には記載がないが、図3で点線の円周を示す310や図4で点線の円周を示す410について、いずれもハウジングとして説明されており、図5の510の点線の円周もハウジングを示していると理解することができる。そして、ハウジングという用語の意味や、図3~5のハウジングと回転装置との配置関係からみて、当該ハウジングが回転装置を内部に配置する空間を規定する部材を示すものであると理解することができる。
(ウ) 図5の実施形態について、当該図から、4つのフィルタが、軸503を中心に回転方向の90°毎に配置されていることが見て取れる。
(エ)a 図5の実施形態について、当該図からは、4つのフィルタの図面番号が「520」、「521」、「522」及び「523」であることが見て取れる一方、当該図に対応する記載である[0075]では、フィルタを「520」、「520’」、「521」及び「521’」の符号を用いて説明していることから、当該図そのものに記載された符号と当該図に対応する記載中の符号が整合していないことになるが、以下のとおり、前者の図面番号の記載には誤記があり、後者の図面番号が正しいものと認められる。
すなわち、図4a及び図4bでは、軸403を挟んで対向するフィルタ同士を「420」及び「420’」という同じ数字を用いて表しており、[0072]の図4aの説明及び図4bの説明からすれば、これらの同じ数字を用いて表されるフィルタ同士は、二つの光路404、404’に対して同時に重なり、また、同時に外れる関係を有していることが理解できる。同様の表記は図4dのフィルタ454と454’の組、及び、フィルタ456と456’の組についても用いられている。
そうすると、図5においてフィルタ520と軸503を挟んで対向し、二つの光路504、504’に対して同時に重なり、同時に外れる関係を有しているフィルタ522は、[0075]においてフィルタ520と組を形成するフィルタ520’であると理解でき、図5においてフィルタ521と軸503を挟んで対向し、二つの光路504、504’に対して同時に重なり、同時に外れる関係を有しているフィルタ523は、[0075]においてフィルタ521と組を形成するフィルタ521’であると理解できる。したがって、当業者は、図5におけるフィルタ522の表記は520’の誤記であり、フィルタ523の表記は521’の誤記であることが理解できる。
b そして、引用文献2は、いくつかのフィルタを用意し、異なる観察モードの切り替えが迅速かつ確実に行えるようにすることを開示するものであるところ、図5の実施形態の4つのフィルタが全て同じフィルタであるとすると、交換装置500により異なるフィルタを光路に重ねても異なる観察モードに切り替えられず不合理であるし、また、[0075]に「520と520’又は521と521’は、それぞれ、同じである」と記載されて、「フィルタ520と520’」と「フィルタ521と521’」を区別して記載されていることから、一つの組のフィルタ520、520’と、もう一つの組のフィルタ521、521’は組同士の間で同じフィルタではないことが読み取れる。
(オ) 図5の実施形態は、上記(ア)のとおり「ステレオ光路」に係るものであるところ、引用文献2には、当該実施形態で用いられる交換装置500の光学素子用の機械的支持体501がステレオ光路のどの部分に配置されるのかは明記されていない。この点、[0079]及び図7からは、交換装置がステレオ光路に配置されるにあたり、ステレオ光路の2つの光路704a、704a’内において、対物レンズ730aと結像レンズ731a、731a’との間に互いに重ねて配置されるとともに、交換装置の軸703aが、2つの光路704a、704a’内において中心軸に相当する位置に配置され、かつ、前記中心軸と平行に延びていることが理解できる。そうすると、当業者であれば、図5の実施形態の光学素子用の機械的支持体501も、ステレオ光路の2つの光路504、504’内において、対物レンズと結像レンズとの間に互いに重ねて配置され、交換装置の軸503が、2つの光路504、504’内において中心軸に相当する位置に配置され、かつ、前記中心軸と平行に延びていることを読み取れるといえる。
(カ) 引用文献2の「ステレオ内視鏡」の「ステレオ光路」の配置について、内視鏡の技術分野における光学素子の配置についての技術常識を踏まえれば、図7のステレオ光路のように2つの光路が平行に配置されていると理解することができる。
(キ) 図6aの実施形態について、フィルタ620a~628aは、601aで示される部材に支持されていると解されるところ、引用文献2には601aで示される部材についての説明が記載されていないが、以下のとおり、当業者であれば、この部材がフィルタホイールであることを読み取れるといえる。
すなわち、まず、図6において、601aで示される部材は、「601」という三桁の数字の2桁目及び3桁目が「01」という数値で示されるところ、この部材は、2つの実線からなる同心の円周(内側円周が細線であり、外側円周が太線である。)と、その中心にある三桁の数字の2桁目及び3桁目が「03」で示される点603aとにより表現されていることが見て取れる。
次に、図1及び図2をみると、図1においては、フィルタ120~125はフィルタホイール101により支持され([0069])、図2においては、フィルタ220~225及び220’~225’はフィルタホイール201及び201’により支持されている([0070])。そして、当該各図においては、フィルタホイールに係る部材を示す三桁の数字の2桁目及び3桁目が「01」という数値で示されるとともに、当該部材が、2つの実線からなる同心の円周(内側円周が細線であり、外側円周が太線である。)と、その中心にある三桁の数字の2桁目及び3桁目が「03」で示される点により表現されていることが見て取れる。このように、図1及び図2では、フィルタホイールに係る部材が、図6においてフィルタを支持する部材601aと同様の表現手法により図示されていることになる。
そうすると、当業者であれば、図6においてフィルタを支持する部材601aも、図1及び図2のフィルタホイール(101、201、201’)と同様にフィルタホイールであることが読み取れる。
ウ 引用発明の認定
上記ア及びイによれば、引用文献2には、実施形態(図5)に係る交換装置を備えるステレオ内視鏡(前記イ(ア))について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。)。
「ステレオ内視鏡のステレオ光路に適用可能である交換装置500を備え、(前記イ(ア))
交換装置はハウジングの内部に配置され、(前記イ(イ))
交換装置はいくつかのフィルタを用意し、異なる観察モードの切り替えが迅速かつ確実に行えるようにするものであり、([0043])
光学素子用の機械的支持体501は、4つの光学素子、ここではフィルタ520、520’、521及び521’を収容し、この配置は、軸503を中心に回転させることができ、([0075])
ステレオ内視鏡のステレオ光路504、504’は、交換装置500の回転に応答して、2つの異なる光学素子の組520、520’、521、521’によって重ね合わされ、ここで、520と520’又は521と521’は、それぞれ、同じであり、(前記イ(ア)、[0075])
4つのフィルタは、軸503を中心に回転方向の90°毎に配置され、(前記イ(ウ))
一つの組のフィルタ520、520’と、もう一つの組のフィルタ521、521’は組同士の間で同じフィルタではなく、(前記イ(エ))
交換装置500の光学素子用の機械的支持体501は、ステレオ光路の2つの光路504、504’内において、対物レンズと結像レンズとの間に互いに重ねて配置され、交換装置500の軸503が、2つの光路504、504’内において中心軸に相当する位置に配置され、かつ、前記中心軸と平行に延びており、(前記イ(オ))
ステレオ内視鏡のステレオ光路は、2つの光路が平行である、(前記イ(カ))
ステレオ内視鏡。」
(4)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明を対比すると、以下のとおりである。
(ア) 引用発明の「ステレオ内視鏡」は、本件補正発明の「内視鏡」に相当する。
(イ) 引用発明の「光学素子」である「フィルタ520、520’、521及び521’」を収納する「光学素子用の機械的支持体501」を備える「交換装置500」は、本件補正発明の「光学フィルタ装置」に相当する。
(ウ) 引用発明の「交換装置はハウジングの内部に配置され」ることは、本件補正発明の「前記光学フィルタ装置は、ホルダ内」に、「異なるフィルタ特性を有する複数の光学フィルタを備え」るように構成されていることに相当する。
(エ) 引用発明の「2つの異なる光学素子の組520、520’、521、521’」は、「それぞれ、同じ」であることから、一つの組のフィルタ520、520’が同じフィルタであり、もう一つの組のフィルタ521、521’が同じフィルタであることは明らかである。
このように、引用発明の「交換装置500」(本件補正発明の「光学フィルタ装置」に相当。)は、それに含まれる一つの組のフィルタ520、520’が同じフィルタであり、もう一つの組のフィルタ521、521’が同じフィルタであって、かつ、「一つの組のフィルタ520、520’と、もう一つの組のフィルタ521、521’は組同士の間で同じフィルタではない」ものであることから、当該「交換装置500」は、本件補正発明でいう「異なるフィルタ特性を有する複数の光学フィルタを備え」るものといえる。
そして、当該「一つの組のフィルタ520、520’」及び「もう一つの組のフィルタ521、521’」が、それぞれ、本件補正発明の「第1フィルタ対」及び「第2フィルタ対」に相当するとともに、それぞれ、本件補正発明でいう「第1フィルタ特性」及び「第2フィルタ特性」を備えるといえる。
(オ) 引用発明の「交換装置500」(本件補正発明の「光学フィルタ装置」に相当。)は、それに含まれる「光学素子用の機械的支持体501」が、「ステレオ光路の2つの光路504、504’内において、対物レンズと結像レンズとの間に互いに重ねて配置されて」いることから、内視鏡の技術分野の技術常識にも照らせば、当該「交換装置500」は、本件補正発明でいう「前記内視鏡の対物レンズ内またはその後方への光入射方向において、かつ画像取込ユニットまたは接眼部の前方において、前記内視鏡の少なくとも1つの光路に、」「配置されて」いるものといえる。
そして、当該「交換装置500」は、同じくそれに含まれる「光学素子用の機械的支持体501」が、「フィルタ520、520’、521及び521’を収容し、この配置は、軸503を中心に回転させることができ」るものであることから、当該「交換装置500」は、本件補正発明でいう「回転軸を中心に回転可能に配置されて」いるものといえる。
(カ) 引用発明は、「ステレオ内視鏡のステレオ光路504、504’は、交換装置500の回転に応答して、2つの異なる光学素子の組520、520’、521、521’によって重ね合わされ、ここで、520と520’又は521と521’は、それぞれ、同じであり、4つのフィルタは、軸503を中心に回転方向の90°毎に配置され、一つの組のフィルタ520、520’と、もう一つの組のフィルタ521、521’は組同士の間で同じフィルタではな」いものである。
そうすると、前記(エ)及び(オ)にも照らせば、引用発明の「一つの組のフィルタ520、520’」(本件補正発明の「第1フィルタ対」に相当。)及び「もう一つの組のフィルタ521、521’」本件補正発明の「第2フィルタ対」に相当。)が、それぞれ、「ステレオ光路504、504’」に重ね合わされているときに、本件補正発明でいう「第1目標回転位置」及び「第2目標回転位置」に存在することになる。そして、本件補正発明と引用発明とは、「前記フィルタ装置は、前記フィルタ装置が前記回転軸を中心に第1目標回転位置と第2目標回転位置の間を」「90°回転するごとに、第1フィルタ特性と第2フィルタ特性との間の変更を交互に行うように構成されて」いる点で共通する。
(キ) 引用発明の「ステレオ内視鏡のステレオ光路」が2つの光路が平行であることは、本件補正発明でいう「前記内視鏡は2つの平行な光路を備える立体内視鏡として構成され」ていることに相当する。
(ク) 引用発明の「交換装置500」(本件補正発明の「光学フィルタ装置」に相当。)は、そ「の光学素子用の機械的支持体501」が、「4つの光学素子、ここではフィルタ520、520’、521及び521’を収容し、この配置は、軸503を中心に回転させることができ」るものであることから、前記(エ)にも照らせば、本件補正発明と引用発明とは、「前記フィルタ装置は二対のフィルタを備える」回転可能なフィルタ支持構造「として構成され」ている点で共通する。
(ケ) 前記(エ)に照らせば、引用発明は、本件補正発明でいう「第1フィルタ対の前記フィルタは前記第1フィルタ特性を有し、第2フィルタ対の前記フィルタは前記第2フィルタ特性を有し」ているものといえる。
(コ) 引用発明の「交換装置の軸503が、2つの光路504、504’内において中心軸に相当する位置に配置され、かつ、前記中心軸と平行に延びている」ことは、本件補正発明の「前記フィルタ装置の前記回転軸は前記光路の間の中心軸に相当し、かつ/または前記中心軸と平行に延びて」いることに相当する。
(サ) 前記(カ)のとおり、引用発明の「一つの組のフィルタ520、520’」(本件補正発明の「第1フィルタ対」に相当。)及び「もう一つの組のフィルタ521、521’」(本件補正発明の「第2フィルタ対」に相当。)は、それぞれ、「ステレオ光路504、504’」に重ね合わされているときに、本件補正発明でいう「第1目標回転位置」及び「第2目標回転位置」に存在することになるところ、各フィルタが「ステレオ光路504、504’」に重ね合わされているときには、対物レンズと結像レンズとの間で一直線に並ぶといえることを踏まえれば、引用発明は、本件補正発明でいう「前記第1フィルタ対の前記フィルタは、前記第1目標回転位置において前記光路と一直線に並び、前記第2フィルタ対の前記フィルタは、前記第2目標回転位置において前記光路と一直線に並ぶ」ものといえる。
イ 上記アから、本件補正発明と引用発明とは、下記(ア)の点で一致し、また、下記の(イ)及び(ウ)の点で相違する。
(ア)一致点
「光学フィルタ装置を備える内視鏡であって、
前記光学フィルタ装置は、ホルダ内に、異なる方向における異なるフィルタ特性を有する1つの光学フィルタ、または異なるフィルタ特性を有する複数の光学フィルタを備え、前記内視鏡の対物レンズ内またはその後方への光入射方向において、かつ画像取込ユニットまたは接眼部の前方において、前記内視鏡の少なくとも1つの光路に、回転軸を中心に回転可能に配置されており、
前記フィルタ装置は、前記フィルタ装置が前記回転軸を中心に第1目標回転位置と第2目標回転位置の間を90°回転するごとに、第1フィルタ特性と第2フィルタ特性との間の変更を交互に行うように構成されており、
前記内視鏡は2つの平行な光路を備える立体内視鏡として構成され、
前記フィルタ装置は二対のフィルタを備える回転可能なフィルタ支持構造として構成され、
第1フィルタ対の前記フィルタは前記第1フィルタ特性を有し、第2フィルタ対の前記フィルタは前記第2フィルタ特性を有し、
前記フィルタ装置の前記回転軸は前記光路の間の中心軸に相当し、かつ/または前記中心軸と平行に延びており、前記第1フィルタ対の前記フィルタは、前記第1目標回転位置において前記光路と一直線に並び、前記第2フィルタ対の前記フィルタは、前記第2目標回転位置において前記光路と一直線に並ぶ、内視鏡。」
(イ)相違点1
「前記フィルタ装置は、前記フィルタ装置が前記回転軸を中心に第1目標回転位置と第2目標回転位置の間を90°回転するごとに、第1フィルタ特性と第2フィルタ特性との間の変更を交互に行うように構成されて」いる点について、本件補正発明は「前記フィルタ装置は、前記フィルタ装置が前記回転軸を中心に第1目標回転位置と第2目標回転位置の間を任意の回転方向に90°回転するごとに、第1フィルタ特性と第2フィルタ特性との間の変更を交互に行うように構成されて」いるのに対して、引用発明は、「交換装置500の光学素子用の機械的支持体501」が、任意の回転方向に回転するか不明である点。
(ウ)相違点2
「前記フィルタ装置は二対のフィルタを備える回転可能なフィルタ支持構造として構成され」ている点について、本件補正発明は、「前記フィルタ装置は二対のフィルタを備えるフィルタホイールとして構成され」るのに対して、引用発明は、4つのフィルタ520、520’、521及び521’が光学素子用の機械的支持体501に収容されており、フィルタホイールとして構成されていない点。
(5)検討
上記相違点1及び2について併せて検討する。
引用発明は、実施形態(図5)に係る交換装置を備えるステレオ内視鏡であるところ、ア、引用発明を開示する引用文献2に記載された図3~図6の実施の形態は、光路の距離と交換装置に必要な光学素子の数によって、選択される配置が決定されるものの一つであり([0078])、このことから、図3~6の実施形態は互いに関連する実施形態であることが示唆されているといえること、イ、図5の実施形態と関連する図6の実施形態において、前記(3)イ(キ)のとおり、フィルタをフィルタホイールにより支持していることが読み取れること、ウ、図3におけるフィルタ320のための機械的支持体301は、他の形状の支持体も可能であることが記載されており([0071])、このことは、引用発明の光学素子用の機械的支持体501も他の支持体でもよいことが示唆されているといえること、を合わせ読めば、引用文献2には、引用発明における光学素子用の機械的支持体501をフィルタホイールにより構成することが示唆されているといえる。
そして、光学装置のフィルタを交換する装置として、フィルタホイール又はターレットと呼ばれる回転部材は周知であるし(原査定が引用した特開2017-94124号公報の【0023】、同、特開2002-330320号公報の【0033】、特開2001-208986号公報の【0037】、特開2006-75240号公報の【0068】等参照)、また、フィルタホイール又はターレットと呼ばれる回転部材が任意の回転方向に回転してフィルタを交換できる部材であることも周知であるから(特開2001-208986号公報の【0037】、特開2006-75240号公報の【0068】等参照)、引用発明の機械的支持体501に代えて、周知のフィルタホイールによりフィルタ520、520’、521及び521’を支持し、任意の回転方向に回転可能に構成して、相違点1及び相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(6)本件補正発明の効果について
前記(5)のとおり、相違点1及び2に係る本件補正発明の構成は当業者が容易に想到し得たものであり、当該相違点を備える本件補正発明の効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(7)請求人の主張について
ア 請求人は、引用文献2の図5には、符号520’、521’は記載されておらず、4つの光学素子(520、520’、521、521’)が互いにどのような位置関係で配置されるのか不明であることを主張するが、図5におけるフィルタ522は、フィルタ520’であると理解でき、図5においてフィルタ523は、フィルタ521’であると理解できることは前記(3)イ(エ)のとおりである。
イ 請求人は、引用発明の「2つの異なる光学素子の組520、520’、521、521’」は、「それぞれ、同じ」であることは、どの光学要素の組み合わせが同一であるか不明であると主張するが、引用発明の一つの組のフィルタ520、520’が同じフィルタであり、もう一つの組のフィルタ521、521’が同じフィルタであることは明らかであることは、前記(4)ア(エ)のとおりである。
ウ 請求人は、4つの光学フィルタが全て異なる場合には、回転軸を中心にフィルタ装置を90°回転させるごとに、第1フィルタ特性と第2フィルタ特性との間の変更を交互に行わせることは不可能であることを主張するが、引用発明において、「交換装置500」の「一つの組のフィルタ520、520’が同じフィルタであり、もう一つの組のフィルタ521、521’が同じフィルタであり」、かつ、「一つの組のフィルタ520、520’と、もう一つの組のフィルタ521、521’は組同士の間で同じフィルタではない」ものであることは上記(4)ア(エ)のとおりであり、引用発明の4つのフィルタは、軸503を中心に回転方向の90°毎に配置されているから、交換装置を90°回転させるごとにフィルタ特性を交互に変更することができることは明らかである。
(8)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~13に係る発明は、令和4年9月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)において本件補正前の請求項6として記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である上記の引用文献2に記載された引用発明及び周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
3 引用文献の記載事項及び引用発明の認定
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2の記載事項及び引用発明の認定は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記フィルタ装置(30、130、230)が前記回転軸(38)を中心に第1目標回転位置と第2目標回転位置の間を90°回転するごとに、第1フィルタ特性と第2フィルタ特性との間の変更を交互に行う」事項について「任意の回転方向に90°回転するごとに、第1フィルタ特性と第2フィルタ特性との間の変更を交互に行う」という限定事項を削除したものである。
そして、削除された上記限定事項は、上記第2の2(4)イ(イ)の相違点1に係る事項であるから、本願発明と引用発明との相違点は、上記第2の2(4)イ(ウ)の相違点2のみであり、相違点2に係る本願発明の構成が、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであることは、上記第2の2(5)のとおりである。
よって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-005961